説明

電動車両の電装部品搭載構造

【課題】車両前部のモータルーム内に、モータユニット78とトランスアクスル73とを車幅方向に並ぶように一体に結合してなるパワーユニット71を配設する場合に、高電圧系の回路を含む電装部品を効率良く配置して、高電圧系の電力ケーブルを効率良く配索し、該電力ケーブルにおけるノイズや電力損失の低減及び部品コストの低減を図る。
【解決手段】モータルーム内におけるパワーユニット71の上側に、インバータ31、車載充電器32及び補機バッテリ33をこの順に車幅方向に並ぶように配設し、インバータ31を、モータユニット78の上側に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部のモータルーム内に電装部品が配設された電動車両の電装部品搭載構造に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気自動車等の電動車両において、車両前部にパワーユニットを配設して、このパワーユニットにより前輪を駆動するようにすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。上記パワーユニットは、通常、モータを含むモータユニットと、該モータユニットのモータの駆動力を前輪へ伝達するための動力伝達機構(減速機構及び差動機構)を含むトランスアクスルとを有していて、車両前部のモータルーム内に配設される。
【0003】
そして、特許文献1では、パワーユニットは、モータユニットとトランスアクスルとが車幅方向に並ぶように一体に結合されてなり、このパワーユニットの上側に部品載置フレームを挟んでコントロールユニットとモータ補機類とを配設して、ユニットアッセンブリを構成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、車両前部のモータルーム内に、モータユニットとトランスアクスルとを車幅方向に並ぶように一体に結合してなるパワーユニットを配置するようにすれば、車両前部のスペースを有効に活用して、比較的大型のモータを配置することが可能になり、有利である。
【0006】
ここで、電動車両では、モータユニットのモータを駆動するための主バッテリの直流電力を交流電力に変換して該モータに電力を供給するインバータや、車両の外部の電源から電力を入力して上記主バッテリを充電する車載充電器といった、高電圧系の回路を含む電装部品が必要になり、これら電装部品の配置によっては、インバータと主バッテリとを接続する電力ケーブルや、インバータとモータユニットとを接続する電力ケーブル、車載充電器と主バッテリとを接続する電力ケーブルといった高電圧系の電力ケーブルの長さが長くなって、大きなノイズや電力損失を生じたりコストアップを招いたりするという問題がある。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両前部のモータルーム内に、モータユニットとトランスアクスルとを車幅方向に並ぶように一体に結合してなるパワーユニットを配設する場合に、高電圧系の回路を含む電装部品を効率良く配置して、高電圧系の電力ケーブルを効率良く配索できるようにし、これにより、高電圧系の電力ケーブルにおけるノイズや電力損失の低減を図るとともに、部品コストの低減を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明では、車両前部のモータルーム内に電装部品が配設された電動車両の電装部品搭載構造を対象として、上記モータルーム内に、モータを含むモータユニットと該モータユニットのモータの駆動力を前輪へ伝達するための動力伝達機構を含むトランスアクスルとが車幅方向に並ぶように一体に結合されてなるパワーユニットと、上記モータユニットのモータを駆動するための主バッテリからの直流電力を交流電力に変換して該モータに電力を供給する、上記電装部品としてのインバータと、上記車両の外部の電源から電力を入力して上記主バッテリを充電する、上記電装部品としての車載充電器と、上記車両の補機に電力を供給するための、上記電装部品としての補機バッテリと、が配設されており、上記モータルーム内における上記パワーユニットの上側に、上記インバータ、上記車載充電器及び上記補機バッテリがこの順に車幅方向に並ぶように配設され、上記インバータは、上記パワーユニットのモータユニットの上側に位置している、という構成とした。
【0009】
上記の構成により、パワーユニットの上側のスペースを効率良く利用して、インバータ、車載充電器及び補機バッテリを配置することができるとともに、高電圧系の電力ケーブルを効率良く配索することができる。すなわち、インバータがパワーユニットのモータユニットの上側に位置しているので、インバータとモータユニットとを接続する電力ケーブルの長さを極めて短くすることができる。また、主バッテリは、通常、モータルームよりも車両後側(例えば車室フロアの下側)に配設されており、インバータと主バッテリとを接続する電力ケーブル及び車載充電器と主バッテリとを接続する電力ケーブルを、主バッテリから車両の車幅方向の略中央を通ってインバータ及び車載充電器にそれぞれ接続させるようにすれば、それら電力ケーブルの長さを短くすることができる。さらに、補機バッテリには、主バッテリから電圧を降圧して供給することが好ましいが、その電圧を降圧するDC/DCコンバータを車載充電器内又は車載充電器の近傍に設ければ、DC/DCコンバータと主バッテリとを接続する電力ケーブルの全体又は大部分を、車載充電器と主バッテリとを接続する電力ケーブルと共用することができ、必要な電力ケーブルのトータル長さを短くすることができる。したがって、高電圧系の電力ケーブルを効率良く配索することができる。よって、高電圧系の電力ケーブルにおけるノイズや電力損失を低減することができるとともに、部品コストを低減することができる。
【0010】
上記電動車両の電装部品搭載構造において、上記車載充電器は、上記主バッテリの電圧を降圧して上記補機バッテリに供給するためのDC/DCコンバータを含む、ことが好ましい。
【0011】
このことにより、上記の如く、DC/DCコンバータと主バッテリとを接続する電力ケーブルの全体を、車載充電器と主バッテリとを接続する電力ケーブルと共用することができる。また、DC/DCコンバータの取扱い性が向上する。
【0012】
上記電動車両の電装部品搭載構造において、上記主バッテリは、上記モータルームよりも車両後側に配設され、上記インバータと上記主バッテリとが、第1電力ケーブルを介して接続され、上記インバータと上記モータユニットとが、第2電力ケーブルを介して接続されており、上記インバータにおける上記第1電力ケーブルとの接続部位及び上記第2電力ケーブルとの接続部位が、該インバータの車両後側の面に設けられていて、該第1電力ケーブルとの接続部位が、該第2電力ケーブルとの接続部位よりも上記車両の車幅方向の中央に近い側に設けられている、ことが好ましい。
【0013】
このことで、第1電力ケーブルが主バッテリから車両の車幅方向の略中央を通ってインバータに接続される場合に、第1電力ケーブルの長さを出来る限り短くすることができる。
【0014】
上記電動車両の電装部品搭載構造において、上記モータルーム内における上記インバータないし車載充電器の車両前側及び後側には、車幅方向に延びかつ両端部が車体部材に連結される前側及び後側ステーがそれぞれ配設され、上記インバータ及び車載充電器は共に、上記前側及び後側ステーに支持されており、上記後側ステーの車幅方向中央部が、該後側ステーの車両後側に位置する車体部材に補強メンバを介して連結され、上記補強メンバは、車両前側に向かって下側に傾斜した状態で車両前後方向に延びている、ことが好ましい。
【0015】
このことにより、前側及び後側ステーによりインバータ及び車載充電器を、パワーユニットの上側において確実に支持することができる。また、車両の前面衝突時に、補強メンバが突っ張ることによりインバータ及び車載充電器の後退を抑制することができる。そして、たとえインバータ及び車載充電器に後退するような大きな衝突荷重が作用したとしても、補強メンバが車両前側に向かって下側に傾斜しているので、補強メンバの車両前側端部がインバータ及び車載充電器によって後方へ押圧されたときに、その補強メンバには、補強メンバの車両後側端部を中心にして、車両前側端部が下側へ移動する向きに回動するようなモーメントが作用する。このため、インバータ及び車載充電器の後部も下側へ移動しようとする。この結果、後退するインバータ及び車載充電器が、後側ステーの車両後側に位置する車体部材(ダッシュパネルやカウルボックス)に勢い良く衝突するのを防止することができる。また、インバータと主バッテリとを接続する電力ケーブルは、その長さを短くする観点から、通常、インバータの車両後側の面に接続され、同様に、車載充電器と主バッテリとを接続する電力ケーブルも、車載充電器の車両後側の面に接続されるが、この場合、インバータ及び車載充電器が真っ直ぐに後退すると、上記電力ケーブルがインバータ及び車載充電器と後側ステーの車両後側に位置する車体部材との間で挟まれる可能性が高くなる。しかし、上記のように補強メンバが車両前側に向かって下側に傾斜した状態で車両前後方向に延びていれば、その補強メンバにより生じる上記モーメントの作用により、上記電力ケーブルがそれらの間に挟まれるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の電動車両の電装部品搭載構造によると、モータルーム内におけるパワーユニット(モータユニットとトランスアクスルとが車幅方向に並ぶように一体に結合されてなる)の上側に、インバータ、車載充電器及び補機バッテリがこの順に車幅方向に並ぶように配設され、上記インバータが、上記パワーユニットのモータユニットの上側に位置していることにより、高電圧系の電力ケーブルを効率良く配索することができて、高電圧系の電力ケーブルにおけるノイズや電力損失を低減することができるとともに、部品コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る電装部品搭載構造が適用された電動車両の前部のモータルーム内におけるパワーユニットの構成を示す、車両左前側かつ上側から見た斜視図である。
【図2】上記電動車両のモータルーム内におけるパワーユニットの構成を示す、車両後側かつ上側から見た斜視図である。
【図3】上記パワーユニットの上側に電装部品を配設した状態を示す平面図である。
【図4】上記パワーユニットの上側に電装部品を配設した状態を示す、車両後側から見た図である。
【図5】前側及び後側ステーの構成を示す、車両前側かつ上側から見た斜視図である。
【図6】前側及び後側ステーの構成を示す、車両左前側かつ上側から見た斜視図である。
【図7】後側ステー及び補強メンバの構成を示す、車両左前側かつ上側から見た斜視図である。
【図8】インバータ及び補強メンバを車両左側から見た側面図であり、(a)は車両の前面衝突前の状態を示し、(b)は車両の前面衝突後の状態を示す。
【図9】電装部品の接続関係を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る電装部品搭載構造が適用された電動車両(本実施形態では、電気自動車であり、以下、単に車両という)の前部のモータルーム内におけるパワーユニット71の構成を示し、図1は、車両左前側かつ上側から見た図であり、図2は、車両後側かつ上側から見た図である。これら図1及び図2では、電装部品の記載は省略している。上記車両についての前、後、左、右、上及び下を、それぞれ単に前、後、左、右、上及び下という。また、図1、図3及び図5〜図8において、車両前側を矢印Frで示す。
【0020】
上記モータルーム内の車幅方向両端部には、左右一対のフロントサイドフレーム8が前後方向に延びるように配設されている。これら左右のフロントサイドフレーム8間に、上記車両を駆動するパワーユニット71が配設されている。上記各フロントサイドフレーム8におけるパワーユニット71よりも後側部分には、サスペンションタワー5が取付固定されている。
【0021】
上記各フロントサイドフレーム8の後部は、その高さ位置が後側に向かって徐々に低くなるキック部8a(図8参照)とされている。このキック部8aに対応する前後位置には、上記モータルームと車室とを仕切るダッシュパネル6が設けられている。このダッシュパネル6の上下方向中央部には、車幅方向に延びるレインフォースメント6aが設けられており、このレインフォースメント6aの両端部が左右のフロントサイドフレーム8にそれぞれ連結されている。
【0022】
上記パワーユニット71は、モータを含むモータユニット78と、該モータユニット78のモータの駆動力を前輪へ伝達するための動力伝達機構(減速機構及び差動機構)を含むトランスアクスル73とが車幅方向に並ぶように一体に結合されてなるものである。パワーユニット71の全体としての軸心は、車幅方向に延びている。本実施形態では、トランスアクスル73がモータユニット78の左側に位置する。
【0023】
本実施形態では、上記モータユニット78は、モータ本体ユニット72と軸受ユニット74とモータ巻線切替ユニット77とがトランスアクスル73側からこの順に並ぶように一体に結合されたものである。
【0024】
上記モータ本体ユニット72は、軸心が車幅方向に延びる略円筒状のモータハウジング72aを有し、このモータハウジング72a内に上記モータが配設されている。このモータは、図示は省略するが、ロータとステータとを有している。このロータは、モータ軸(つまり駆動軸)の周囲に、永久磁石を保持するロータコアが固定されてなり、モータ軸はモータハウジング72aと同軸上に位置して、車幅方向に延びている。一方、上記ステータは、モータハウジング72aの内面に上記ロータコアの周囲を覆うように配設されていて、コイルが巻かれている。
【0025】
上記モータは3相交流モータであり、U相、V相及びW相の3つのコイルが中性点に共通接続されている。そして、各相のコイルは、複数の巻線が直列に接続されてなり、各相のコイルにおいて電流を流す巻線の数を変えることが可能に構成されている。すなわち、上記モータは、巻線切替を行うことが可能なものであり、車両の走行状態に応じて、電流を流す最適な巻線の数が決定される。この巻線切替は、上記モータ巻線切替ユニット77によってなされる。
【0026】
モータ本体ユニット72の右側(トランスアクスル73とは反対側)の端部に、上記軸受ユニット74が一体に結合されている。この軸受ユニット74は、モータハウジング72aに結合された略円筒状の軸受ハウジング74aと、この軸受ハウジング74a内に配設され、上記モータ軸の右側端部を回転自在に支持する軸受とを有している。一方、上記モータ軸の左側端部は、モータハウジング72aの左側端部に設けられた軸受に回転自在に支持されている。このモータ軸は、トランスアクスル73(減速機構)の入力軸に連結される。この入力軸は、トランスアクスル73における後述のアクスルハウジング73aの減速機構収容部73b内において車幅方向に延びている。
【0027】
トランスアクスル73は、アクスルハウジング73aを有し、このアクスルハウジング73aの右側端部と上記モータハウジング72aの左側端部とが複数のボルト75により結合されて結合部76とされている。
【0028】
アクスルハウジング73aは、減速機構を収容する減速機構収容部73bと、該減速機構からモータの駆動力が伝達される差動機構を収容する差動機構収容部73cとを有する。差動機構収容部73cは、減速機構収容部73bの後側に位置している。そして、差動機構収容部73cの左右両側側面から、トランスアクスル73(差動機構)の出力軸(パワーユニット71の出力軸でもある)として、2本のジョイントシャフト81が左右両側へそれぞれ延びている(図2参照)。すなわち、ジョイントシャフト81は、パワーユニット71の後側において車幅方向に延びている。左側のジョイントシャフト81は、その中間部に配設された等速ジョイント82によって内側部81aと外側部81bとに2分割され、外側部81bが等速ジョイント84を介して、左側前輪に連結された左側のドライブシャフト83に連結されている。また、同様に、右側のジョイントシャフト81も、その中間部に配設された等速ジョイント82によって内側部81aと外側部81bとに2分割され、外側部81bが等速ジョイント84を介して、右側前輪に連結された右側のドライブシャフト83に連結されている。右側のジョイントシャフト81の内側部81aにおける等速ジョイント82近傍部は、軸受ハウジング74aの後側下部に設けられたシャフト支持部74bに回転自在に支持されている。
【0029】
上記軸受ユニット74の右側(モータ本体ユニット72とは反対側)の端部に、上記モータ巻線切替ユニット77が一体に結合されている。このモータ巻線切替ユニット77は、軸受ハウジング74aに結合された略円筒状の巻線切替ケース77aと、この巻線切替ケース77a内に配設され、上記モータの巻線切替を行うための回路とを有している。巻線切替ケース77aの右側端面には、該巻線切替ケース77aの右側開口を覆う閉塞部材77bが固定されている。
【0030】
パワーユニット71の左右両端部は、左側及び右側マウント装置88,89を介して、左右のフロントサイドフレーム8にそれぞれマウント支持(弾性支持)されている。左側マウント装置88は、トランスアクスル73のアクスルハウジング73a上部に固定されたパワーユニット側ブラケット90と、左側のフロントサイドフレーム8に固定された車体側ブラケット91と、これら両ブラケット90,91間に配設された、ゴムブッシュを含むマウント本体(図示せず)とを有している。
【0031】
また、右側マウント装置89は、パワーユニット側ブラケット93と、車体側ブラケット94と、これら両ブラケット93,94間(詳しくは、後述の第1及び第3ブラケット95,98間)に配設された、ゴムブッシュを含むマウント本体(図示せず)とを有している。上記パワーユニット側ブラケット93は、上記マウント本体に連結された第1ブラケット95と、第1ブラケット95と締結部材97(ボルト及びナット)を介して結合されかつ上記閉塞部材77bの上部と軸受ハウジング74aの上部において上側に突出した突出部74cの右側側面とに固定された第2ブラケット96とからなる。また、上記車体側ブラケット94は、上記マウント本体に連結された第3ブラケット98と、第3ブラケット98と締結部材100(ボルト及びナット)を介して結合されかつ右側のフロントサイドフレーム8に固定された第4ブラケット99とからなる。
【0032】
図2に示すように、アクスルハウジング73aの差動機構収容部73cの右側下部には、トルクロッド101が後側に延びるように設けられている。このトルクロッド101の前端部は、ゴムブッシュ102を介して、車幅方向に延びる軸回りに回動可能にパワーユニット71の車幅方向中央部(アクスルハウジング73aの差動機構収容部73cの右側下部)に連結され、トルクロッド101の後端部は、ゴムブッシュ103を介して、車幅方向に延びる軸回りに回動可能に不図示のサスペンションクロスメンバの車幅方向中央部に連結されている。パワーユニット71の車幅方向両端部における上記弾性支持により、パワーユニット71全体が車幅方向に延びる軸回りに回動(揺動)することになるが、上記トルクロッド101は、パワーユニット71全体が上記軸回りに回動し過ぎるのを規制する。尚、上記サスペンションクロスメンバは、車幅方向に延びかつ左右の前輪サスペンションアーム17を支持するものであって、その左右両側端部は、左右のフロントサイドフレーム8にそれぞれ結合されている。
【0033】
図3及び図4に示すように、上記モータルーム内における上記パワーユニット71の上側には、電装部品としてのインバータ31、車載充電器32及び補機バッテリ33がこの順に車幅方向に並ぶように配設されている。また、上記モータルーム(ダッシュパネル6)よりも後側、つまり車室フロアの下側には、モータ本体ユニット72のモータを駆動するための高電圧の主バッテリ21が配設されている。この主バッテリ21は、複数のバッテリモジュールが、該バッテリモジュールを支持する支持部材と共にユニット化されたものである。尚、図3及び図4では、ダッシュパネル6(レインフォースメント6aを除く)や車室フロア等の記載を省略している。
【0034】
上記インバータ31は、主バッテリ21からの直流電力を交流電力に変換して上記モータに電力を供給するものである。このインバータ31は、略矩形箱状のインバータケース31aと、該インバータケース31a内に収容されたインバータ回路とを有していて、パワーユニット71のモータユニット78の上側に位置している。
【0035】
図9に示すように、インバータ31と主バッテリ21とは、2本の第1電力ケーブル35を介して接続され、インバータ31とモータユニット78の軸受ユニット74とが、3本の第2電力ケーブル36を介して接続されている。すなわち、インバータ31は、主バッテリ21から第1電力ケーブル35を介して直流電力を入力して、その直流電力を交流電力に変換した後、その交流電力を、第2電力ケーブル36及び上記モータユニット78内に配設された不図示の配線を介して、モータ本体ユニット72のモータへ供給する。
【0036】
上記第1電力ケーブル35は、図3及び図4に示すように、主バッテリ21の前端部における車幅方向中央部に設けられた接続端子21a(車両自体の車幅方向中央部に位置する)から、車両の車幅方向の略中央を通って前側に延びてモータルーム内に入り、ダッシュパネル6とパワーユニット71(モータ本体ユニット72)との間の空間にて上側に延び、インバータ31と略同じ高さ位置で前側に曲がって、インバータケース31aの後面に接続される。
【0037】
また、第2電力ケーブル36は、ダッシュパネル6とパワーユニット71(モータユニット78の主として軸受ユニット74)との間の空間にて、インバータケース31aの後面と軸受ハウジング74aの後面におけるケーブル接続部74d(図2及び図4参照)とを接続するべく、後側に凸状となるように湾曲して延びている。尚、第2電力ケーブル36は、ケーブル接続部74dからモータ本体ユニット72のモータハウジング72a内及びモータ巻線切替ユニット77の巻線切替ケース77a内に入り込む。
【0038】
上記インバータ31(インバータケース31aの後面)における第1電力ケーブル35との接続部位は、該インバータ31(インバータケース31aの後面)における第2電力ケーブル36との接続部位よりも上記車両の車幅方向の中央に近い側に設けられている。これにより、第1電力ケーブル35は、車両の車幅方向の略中央を通るので、車幅方向に大きく曲がることなくインバータ31に接続される。また、インバータ31における第2ケーブル36との接続部位が、上記ケーブル接続部74dの略真上に位置し、第2電力ケーブル36も、車幅方向に大きく曲がらずに済む。
【0039】
上記車載充電器32は、上記車両の外部の電源(本実施形態では、100V又は200Vの家庭用電源)から電力を入力して主バッテリ21を充電するものである。この車載充電器32は、インバータ31と同様の略矩形箱状の充電器ケース32aと、該充電器ケース32a内に収容された充電回路とを有していて、トランスアクスル73の左側端部(左側マウント装置88のパワーユニット側ブラケット90が固定された部分)を除く部分の上側に位置している。
【0040】
上記車載充電器32と主バッテリ21とは、第3電力ケーブル37(図9にのみ示す)を介して接続されている。図示は省略するが、この第3電力ケーブル37も、第1ケーブル35と同様に、主バッテリ21の接続端子21aから、車両の車幅方向の略中央(第1ケーブル35よりも左側)を通って前側に延びてモータルーム内に入り、ダッシュパネル6の直ぐ前側を上側に延び、車載充電器32と略同じ高さ位置で前側に曲がって、充電器ケース32aの後面に接続される。車載充電器32が上記車両の車幅方向の中央に近い位置に位置しているので、第3電力ケーブル37も、第1電力ケーブル35と同様に、車幅方向に大きく曲がることなく車載充電器32に接続される。
【0041】
上記車載充電器32は、第1接続コード38(図9にのみ示す)を介して、上記車両の左側又は右側の側面を構成する部材(例えばフェンダ)に設けられた充電レセプタクル40(図9にのみ示す)と接続されている。この充電レセプタクル40は、一端部が家庭用電源に接続されるコードの他端部が接続されるものである。そして、車載充電器32は、家庭用電源からの電力を、その電圧が主バッテリ21の充電に適した電圧になるように昇圧した状態で、第3電力ケーブル37を介して主バッテリ21に供給する。
【0042】
また、車載充電器32は、主バッテリ21の電圧を降圧して上記補機バッテリ33に供給するためのDC/DCコンバータ41(図9にのみ示す)を含む。つまり、充電器ケース32a内に上記充電回路と共にDC/DCコンバータ41が収容されている。このDC/DCコンバータ41は、第2接続コード39(図9にのみ示す)を介して上記補機バッテリ33と接続されている。この補機バッテリ33は、主バッテリ21よりも低電圧(例えば12V)のものである。そして、DC/DCコンバータ41は、主バッテリ21が充電されていないときに、主バッテリ21から上記第3電力ケーブル37を介して入力した電力を、その電圧が補機バッテリ33の充電に適した電圧になるように降圧した状態で、第2接続コード39を介して、補機バッテリ33に供給する。
【0043】
上記補機バッテリ33は、上記車両の補機に電力を供給するものある。この補機としては、例えば電動パワーステアリング用モータ、ワイパーモータ、パワーウインドモータといった各種のアクチュエータ等である。この補機バッテリ33は、トランスアクスル73の左側端部(左側マウント装置88のパワーユニット側ブラケット90が固定された部分)の上側に位置していて、不図示のブラケットを介して左側のフロントサイドフレーム8に取付固定されている。
【0044】
図5及び図6に示すように、上記モータルーム内における上記インバータ31ないし車載充電器32の車両前側及び後側には、車幅方向に延びる前側及び後側ステー45,46がそれぞれ配設されている。前側ステー46の両端部は、左右のフロントサイドフレーム8(車体部材)にそれぞれ取付固定され、後側ステー46の両端部は、左右のサスペンションタワー5(車体部材)にそれぞれ取付固定されている。尚、後側ステー46の右側端部近傍は、右側のフロントサイドフレーム8にも取付固定されている。
【0045】
インバータ31は、インバータケース31aの前後両端部において前側及び後側ステー45,46の取付部45a,46aにそれぞれ取り付けられて支持されている。また、車載充電器32は、充電器ケース32aの前後両端部において前側及び後側ステー45,46の取付部45b,46bにそれぞれ取り付けられて支持されている。前側ステー45における車載充電器32及びインバータ31の取付部分は、左右のフロントサイドフレーム8から延びる左右の補強ステー47によってそれぞれ補強支持されている。
【0046】
後側ステー46の車幅方向中央部(インバータ31の取付部分と車載充電器32の取付部分との間)は、該後側ステー46の車両後側に位置するダッシュパネル6(車体部材)に補強メンバ49(図7及び図8にのみ示す)を介して連結されている。すなわち、補強メンバ49の前端部は、後側ステー46に後側に突出するように取付固定された取付部材50の後端部に連結されている一方、補強メンバ49の後端部は、ダッシュパネル6の前面(固定部材50の高さ位置よりも高い部分)に連結されている。そして、補強メンバ49は、前側に向かって下側に傾斜した状態で前後方向に延びている。
【0047】
上記のような補強メンバ49を設けることによって、車両の前面衝突時に、補強メンバ49が突っ張ることによりインバータ31及び車載充電器32の後退が抑制される。そして、たとえインバータ31及び車載充電器32に後退するような大きな衝突荷重が作用したとしても、補強メンバ49が前側に向かって下側に傾斜しているので、補強メンバ49の前端部がインバータ31及び車載充電器32によって後方へ押圧されたときに、その補強メンバ49には、補強メンバ49の後端部を中心にして、前端部が下側へ移動する向きに回動するようなモーメントが作用する(図8(b)の矢印参照)。このため、インバータ31及び車載充電器32の後部も下側へ移動しようとする。この結果、後退するインバータ31及び車載充電器32が、ダッシュパネル6に勢い良く衝突するのを防止することができる。また、インバータ31及び車載充電器32が真っ直ぐ後退すると、上記第1〜第3電力ケーブル35〜37がインバータ31及び車載充電器32とダッシュパネル6との間で挟まれる可能性が高くなるが、上記補強メンバ49により生じる上記モーメントの作用により、第1〜第3電力ケーブル35〜37がそれらの間に挟まれるのを防止することができる。
【0048】
本実施形態では、パワーユニット71の上側に、インバータ31、車載充電器32及び補機バッテリ33がこの順に車幅方向に並ぶように配設され、インバータ31が、パワーユニット71のモータユニット78の上側に位置しているので、パワーユニット71の上側のスペースを効率良く利用して、インバータ31、車載充電器32及び補機バッテリ33を配置することができるとともに、高電圧系の電力ケーブルである第1〜第3電力ケーブル35〜37を効率良く配索して、その長さを短くすることができる。また、車載充電器32がDC/DCコンバータ41を含むので、DC/DCコンバータ41と主バッテリ21とを接続する電力ケーブルの全体を、第3電力ケーブル37と共用することができ、電力ケーブルの本数を減らすことができる。したがって、高電圧系の電力ケーブルにおけるノイズや電力損失を低減することができるとともに、部品コストの低減を図ることができる。
【0049】
本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0050】
例えば、上記実施形態では、DC/DCコンバータ41が車載充電器32の充電器ケース32a内に設けられているが、これに限らず、充電器ケース32a外に設けてもよい。この場合、DC/DCコンバータ41は、車載充電器32の近傍に配設することが好ましい。こうすることで、DC/DCコンバータ41と主バッテリ21とを接続する電力ケーブルの大部分を、第3電力ケーブル37と共用することができる。
【0051】
上述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、車両前部のモータルーム内に電装部品が配設された電動車両の電装部品搭載構造に有用であり、特に、モータルーム内に、モータユニットとトランスアクスルとを車幅方向に並ぶように一体に結合してなるパワーユニットが配設される場合に有用である。
【符号の説明】
【0053】
21 主バッテリ
31 インバータ
32 車載充電器
33 補機バッテリ
35 第1電力ケーブル
36 第2電力ケーブル
45 前側ステー
46 後側ステー
49 補強メンバ
71 パワーユニット
72 モータ本体ユニット(モータユニット)
73 トランスアクスル
74 軸受ユニット(モータユニット)
77 巻線切替ユニット(モータユニット)
78 モータユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部のモータルーム内に電装部品が配設された電動車両の電装部品搭載構造であって、
上記モータルーム内に、
モータを含むモータユニットと該モータユニットのモータの駆動力を前輪へ伝達するための動力伝達機構を含むトランスアクスルとが車幅方向に並ぶように一体に結合されてなるパワーユニットと、
上記モータユニットのモータを駆動するための主バッテリからの直流電力を交流電力に変換して該モータに電力を供給する、上記電装部品としてのインバータと、
上記車両の外部の電源から電力を入力して上記主バッテリを充電する、上記電装部品としての車載充電器と、
上記車両の補機に電力を供給するための、上記電装部品としての補機バッテリと、
が配設されており、
上記モータルーム内における上記パワーユニットの上側に、上記インバータ、上記車載充電器及び上記補機バッテリがこの順に車幅方向に並ぶように配設され、
上記インバータは、上記パワーユニットのモータユニットの上側に位置していることを特徴とする電動車両の電装部品搭載構造。
【請求項2】
請求項1記載の電動車両の電装部品搭載構造において、
上記車載充電器は、上記主バッテリの電圧を降圧して上記補機バッテリに供給するためのDC/DCコンバータを含むことを特徴とする電動車両の電装部品搭載構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の電動車両の電装部品搭載構造において、
上記主バッテリは、上記モータルームよりも車両後側に配設され、
上記インバータと上記主バッテリとが、第1電力ケーブルを介して接続され、
上記インバータと上記モータユニットとが、第2電力ケーブルを介して接続されており、
上記インバータにおける上記第1電力ケーブルとの接続部位及び上記第2電力ケーブルとの接続部位が、該インバータの車両後側の面に設けられていて、該第1電力ケーブルとの接続部位が、該第2電力ケーブルとの接続部位よりも上記車両の車幅方向の中央に近い側に設けられていることを特徴とする電動車両の電装部品搭載構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の電動車両の電装部品搭載構造において、
上記モータルーム内における上記インバータないし車載充電器の車両前側及び後側には、車幅方向に延びかつ両端部が車体部材に連結される前側及び後側ステーがそれぞれ配設され、
上記インバータ及び車載充電器は共に、上記前側及び後側ステーに支持されており、
上記後側ステーの車幅方向中央部が、該後側ステーの車両後側に位置する車体部材に補強メンバを介して連結され、
上記補強メンバは、車両前側に向かって下側に傾斜した状態で車両前後方向に延びていることを特徴とする電動車両の電装部品搭載構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−96587(P2012−96587A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243902(P2010−243902)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】