電動車両用電源装置
【課題】所望の出力を確保しつつ、高電圧系での損失を抑制する。
【解決手段】電動車両用電源装置1は、第1ノードAと第2ノードBとの間に接続されたバッテリ11と、第2ノードBと第3ノードCとの間に接続された第1スイッチ14と、第3ノードCと第4ノードDとの間に接続された燃料電池スタック12と、第1ノードAと第3ノードCとの間に接続された第2スイッチ15と、第2ノードBに接続されたDC−DCコンバータ13とを備える。DC−DCコンバータ13は、第1ノードAを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更することで第2ノードBからバッテリ11を介した第1ノードAの電位VAを調整する、又は、第2ノードBを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位VBを変更しており、第1ノードAと第4ノードDとの間から取り出される出力電力は電動機(M)2に供給される。
【解決手段】電動車両用電源装置1は、第1ノードAと第2ノードBとの間に接続されたバッテリ11と、第2ノードBと第3ノードCとの間に接続された第1スイッチ14と、第3ノードCと第4ノードDとの間に接続された燃料電池スタック12と、第1ノードAと第3ノードCとの間に接続された第2スイッチ15と、第2ノードBに接続されたDC−DCコンバータ13とを備える。DC−DCコンバータ13は、第1ノードAを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更することで第2ノードBからバッテリ11を介した第1ノードAの電位VAを調整する、又は、第2ノードBを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位VBを変更しており、第1ノードAと第4ノードDとの間から取り出される出力電力は電動機(M)2に供給される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば燃料電池スタックと蓄電装置とを直列に接続して成る電池回路に対して単一のDC−DCコンバータを備え、DC−DCコンバータのスイッチングデューティーを変更することで燃料電池スタックと蓄電装置との電力分担割合を調整し、複数の動作モードを切り換える電源システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る電源システムにおいては、例えば電源システムを大型の車両に搭載する場合などにおいて、燃料電池スタックおよび蓄電装置の出力を増大させると、直列電圧が増大することに伴って、車両を駆動するモータのインバータにおいてスイッチング損失が増大してしまい、例えば坂道発進などの高トルクの走行モードにおいてインバータの過熱を抑制するために出力制限が生じてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、所望の出力を確保しつつ、高電圧系での損失を抑制することが可能な電動車両用電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電動車両用電源装置は、第1ノード(例えば、実施の形態での第1ノードA)と第2ノード(例えば、実施の形態での第2ノードB)との間に接続された第1電源(例えば、実施の形態でのバッテリ11および燃料電池スタック12の一方)と、前記第2ノードと第3ノード(例えば、実施の形態での第3ノードC)との間に接続された第1スイッチ(例えば、実施の形態での第1スイッチ(SW1)14)と、前記第3ノードと第4ノード(例えば、実施の形態での第4ノードD)との間に接続された第2電源(例えば、実施の形態でのバッテリ11および燃料電池スタック12の他方)と、前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第2スイッチ(例えば、実施の形態での第2スイッチ(SW2)15)と、前記第2ノードに接続されたDC−DCコンバータ(例えば、実施の形態でのDC−DCコンバータ13)とを備え、前記DC−DCコンバータは、前記第1ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更することによって、前記第2ノードから前記第1電源を介した前記第1ノードの電位を調整する、又は、前記第2ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更しており、前記第1ノードと前記第4ノードとの間から取り出される出力電力は電動機(例えば、実施の形態での電動機(M)2)に供給され、前記第1電源および前記第2電源のうち、何れか一方が燃料電池(例えば、実施の形態での燃料電池スタック12)であり、何れか他方が二次電池(例えば、実施の形態でのバッテリ11)である。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る電動車両用電源装置は、前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを閉として前記第1ノードと前記第3ノードとを接続する第1接続状態と、前記第1スイッチを閉かつ前記第2スイッチを開として前記第2ノードと前記第3ノードとを接続する第2接続状態と、前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを開として前記第3ノードと前記第1ノード及び前記第2ノードとを切り離す第3接続状態とを切り替え可能な切替手段(例えば、実施の形態での接続切替制御部31)を備え、前記切替手段は、前記第3接続状態を経由して前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替える。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る電動車両用電源装置では、前記DC−DCコンバータは、前記第2接続状態と前記第3接続状態との接続切替時の時間的前後においてスイッチング動作を継続する。
【0009】
さらに、本発明の第4態様に係る電動車両用電源装置では、前記第3ノードと前記第4ノードとの間に補機(例えば、実施の形態での補機16)が接続されている。
【0010】
さらに、本発明の第5態様に係る電動車両用電源装置では、前記DC−DCコンバータの低電圧側端子(例えば、実施の形態での低電圧側端子13L)は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子(例えば、実施の形態での高電圧側端子13H)は前記第1ノードに接続され、共通端子(例えば、実施の形態での共通端子13C)は前記第4ノードに接続されている。
【0011】
さらに、本発明の第6態様に係る電動車両用電源装置では、前記DC−DCコンバータの低電圧側端子(例えば、実施の形態での低電圧側端子13L)は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子(例えば、実施の形態での高電圧側端子13H)は前記第4ノードに接続され、共通端子(例えば、実施の形態での共通端子13C)は前記第1ノードに接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様に係る電動車両用電源装置によれば、電動機の負荷が小さく、電動機で必要とされる駆動電圧が小さい場合には、第1スイッチを開かつ第2スイッチを閉として電動機に対して第1電源と第2電源とを並列に接続する。
一方、電動機の負荷が大きく、電動機で必要とされる駆動電圧が大きい場合には、第1スイッチを閉かつ第2スイッチを開として電動機に対して第1電源と第2電源とを直列に接続する。
【0013】
これらにより、電動機の負荷が大きい場合には、電動機の駆動電圧を増大させて所望の動力性能を確保することができ、電動機の負荷が小さい場合には、電動機の駆動電圧が過大になることを防止して電動機および電動機を駆動制御するインバータの運転効率を増大させることができる。
したがって、例えば坂道発進などの高トルクの走行モードであっても、電動機を駆動制御するインバータにおいてスイッチング損失が増大したり、過熱が生じることを防止し、走行制御に対して出力制限が生じてしまうことを防止することができる。
【0014】
本発明の第2態様に係る電動車両用電源装置によれば、電動機に対する第1電源と第2電源との接続を、電動機の負荷の増大に応じて、並列と直列との間で切り替える場合には、第1スイッチおよび第2スイッチを開として第2電源を電動機から切り離し、第3ノードと第1ノード及び第2ノードとを切り離し、第1電源のみによって電動機に電力を供給する第3接続状態を経由する。
【0015】
これにより、電動機に対する電力供給を維持した状態で電動機の負荷の大きさに応じて、電動機に対する第1電源と第2電源との接続を並列と直列との間で切り替えることができ、例えば内燃機関などの動力を用いずに電源から供給される電力のみで走行を行なうAER(All Electric Range)走行時であっても、少なくとも第1電源から供給される電力により走行制御を継続することができる。
【0016】
本発明の第3態様に係る電動車両用電源装置によれば、電動機に対して第1電源と第2電源とが直列に接続される第2接続状態においてDC−DCコンバータのスイッチング動作を行なうことにより、第1電源と第2電源との間における出力配分を調整することができる。
【0017】
本発明の第4態様に係る電動車両用電源装置によれば、補機の消費電力を第2電源から供給することができ、電動機に対する第1電源と第2電源との接続を並列と直列との間で切り替えるときに電動機の消費電力を負担する第1電源からより多くの電力を電動機に供給することができる。
【0018】
本発明の第5態様に係る電動車両用電源装置によれば、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータのハイサイドアームのスイッチング素子は第1ノードに接続され、ローサイドアームのスイッチング素子は第4ノードに接続され、チョークコイルは第2ノードに接続される。
【0019】
本発明の第6態様に係る電動車両用電源装置によれば、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータのハイサイドアームのスイッチング素子は第4ノードに接続され、ローサイドアームのスイッチング素子は第1ノードに接続され、チョークコイルは第2ノードに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)とを並列に接続する状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対するバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続状態と、DC−DCコンバータの動作とに対応するバッテリ電流および燃料電池電流および電動機駆動電圧の変化の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る電動機損失マップの例を示す図である。
【図8】図6に示す直列接続から並列接続への切替処理を示すフローチャートである。
【図9】図6に示す並列接続から直列接続への切替処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置の構成図である。
【図11】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)とを並列に接続する状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による電動車両用電源装置1は、例えば図1に示すように、車両の走行駆動力を発生する電動機(M)2を駆動制御する駆動用インバータ3に電力を供給する電源を成している。
【0022】
電動車両用電源装置1は、第1ノードAおよび第2ノードBおよび第3ノードCおよび第4ノードDと、バッテリ11と、燃料電池スタック(FC)12と、DC−DCコンバータ13と、第1スイッチ(SW1)14および第2スイッチ(SW2)15と、補機16と、制御装置17とを備えて構成されている。
そして、第1ノードAおよび第4ノードDに対して駆動用インバータ3が並列に接続されている。
【0023】
バッテリ11は第1ノードAと第2ノードBとの間に接続されている。
燃料電池スタック12は第3ノードCと第4ノードDとの間に接続されている。
【0024】
燃料電池スタック12は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
【0025】
燃料電池スタック12のカソードには酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアポンプ(図示略)から供給され、アノードには水素を含む燃料ガス(反応ガス)が、例えば高圧の水素タンク(図示略)から供給されている。
そして、アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
【0026】
なお、エアポンプは、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとして燃料電池スタック12のカソードに供給する。
このエアポンプを駆動するポンプ駆動用モータ(図示略)の回転数は、制御装置17から出力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータなどからなるエアポンプインバータ(図示略)により制御されている。
このエアポンプインバータは、バッテリ11などから電力が供給される。
【0027】
DC−DCコンバータ13は第2ノードBに接続され、より詳細には、低電圧側端子13Lが第2ノードBに接続され、高電圧側端子13Hが第1ノードAに接続され、共通端子13Cが第4ノードDに接続されている。
【0028】
DC−DCコンバータ13は、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータであって、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)が接続されてなるスイッチング回路21と、チョークコイル22と、第1および第2平滑コンデンサ23,24とを備えて構成されている。
【0029】
スイッチング回路21は、例えば、対をなすハイ側スイッチング素子21Hおよびロー側スイッチング素子21Lが接続されて構成されている。
そして、ハイ側スイッチング素子21Hのコレクタは高電圧側端子13Hに接続され、ロー側スイッチング素子21Lのエミッタは共通端子13Cに接続され、ハイ側スイッチング素子21Hのエミッタはロー側スイッチング素子21Lのコレクタに接続されている。
そして、各ハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21L毎のエミッタ−コレクタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向になるようにしてダイオードが接続されている。
【0030】
このスイッチング回路21は、制御装置17から出力されて各スイッチング素子21H,21Lのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、ハイ側スイッチング素子21Hがオンかつロー側スイッチング素子21Lがオフになる状態と、ハイ側スイッチング素子21Hがオフかつロー側スイッチング素子21Lがオンになる状態とが、交互に切り替えられる。
【0031】
例えばPWM信号の1周期におけるハイ側スイッチング素子21Hのオン時間THonとロー側スイッチング素子21Lのオン時間TLonとなどにより定義されるスイッチングデューティーduty(=THon/(THon+TLon)など)に応じて、ハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21Lのオン/オフが切り替えられる。
なお、ハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21Lは、オン/オフの切り換え時に、同時にオンとなることが禁止され、同時にオフとなる適宜のデッドタイムが設けられている。
【0032】
そして、本発明においては、後述するように、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する状態および直列に接続する状態および並列と直列との接続切替の状態などにおいて、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作が継続される(スイッチングデューティーduty≠0)ようになっている。
【0033】
チョークコイル22は、一端がスイッチング回路21のハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21Lのエミッタ−コレクタ間に接続され、他端が低電圧側端子13Lに接続されている。
第1平滑コンデンサ23は低電圧側端子13Lおよび共通端子13C間に接続され、第2平滑コンデンサ24は高電圧側端子13Hおよび共通端子13C間に接続されている。
【0034】
このDC−DCコンバータ13は、低電圧側から高電圧側への昇圧動作時には、先ず、ハイ側スイッチング素子21Hがオフかつロー側スイッチング素子21Lがオンとされ、低電圧側端子13Lから入力される電流によってチョークコイル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、ハイ側スイッチング素子21Hがオンかつロー側スイッチング素子21Lがオフとされ、チョークコイル22に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル22の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。
これに伴い、チョークコイル22に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧が低電圧側の入力電圧に上積みされて低電圧側の入力電圧よりも高い昇圧電圧が高電圧側に印加される。
この切替動作に伴って発生する電圧変動は第1および第2平滑コンデンサ23,24により平滑化され、昇圧電圧が高電圧側端子13Hから出力される。
【0035】
なお、高電圧側から低電圧側への降圧動作時には、先ず、ハイ側スイッチング素子21Hがオフかつロー側スイッチング素子21Lがオンとされ、高電圧側から入力される電流によってチョークコイル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、ハイ側スイッチング素子21Hがオンかつロー側スイッチング素子21Lがオフとされ、チョークコイル22に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル22の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。
このチョークコイル22に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧は、スイッチングデューティーdutyに応じて高電圧側の入力電圧が降圧された降圧電圧となり、降圧電圧が低電圧側に印加される。
【0036】
第1スイッチ(SW1)14は第2ノードBと第3ノードCとの間に接続されている。
第2スイッチ(SW2)15は第1ノードAと第3ノードCとの間に接続されている。
第1および第2スイッチ14,15は、例えばスイッチング素子(IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistorなど)であって、制御装置17から出力される信号に応じてオン/オフが制御される。
【0037】
なお、例えばスイッチング素子である第1スイッチ(SW1)14は、エミッタが第2ノードBに接続され、コレクタが第3ノードCに接続され、エミッタ−コレクタ間にはエミッタからコレクタに向けて順方向になるようにしてダイオードが接続されている。
また、例えばスイッチング素子である第2スイッチ(SW2)15は、コレクタが第1ノードAに接続され、エミッタが第3ノードCに接続され、エミッタ−コレクタ間にはエミッタからコレクタに向けて順方向になるようにしてダイオードが接続されている。
【0038】
補機16は第3ノードCと第4ノードDとの間に接続され、燃料電池スタック12から電力が供給される。
【0039】
制御装置17は、例えば、接続切替制御部31と、可変電圧制御部32と、電動機制御部33とを備えて構成されている。
【0040】
そして、制御装置17には、例えば、バッテリ11の電圧(バッテリ電圧)Vbを検出する電圧センサ41aおよび電流(バッテリ電流)Ibを検出する電流センサ42aから出力される信号と、燃料電池スタック12の電圧(燃料電池電圧)Vfcを検出する電圧センサ41bおよび電流(燃料電池電流)Ifcを検出する電流センサ42bから出力される信号と、DC−DCコンバータ13の第1平滑コンデンサ23の電圧つまり低電圧側端子13Lと共通端子13Cとの間の電圧(第1DC−DCコンバータ電圧)V1を検出する電圧センサ41cおよびDC−DCコンバータ13の入力電流(DC−DCコンバータ入力電流)Idcを検出する電流センサ42cから出力される信号と、電動機(M)2の回転数および発生トルクを検出する各センサ(図示略)から出力される信号とが入力されている。
【0041】
接続切替制御部31は、第1スイッチ(SW1)14および第2スイッチ(SW2)15のオン/オフを制御する。
可変電圧制御部32は、例えばパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)のスイッチングデューティー(duty)に応じてDC−DCコンバータ13のスイッチング動作、つまり各スイッチング素子21H,21Lのオン/オフを制御する。
なお、スイッチングデューティー(duty)は、例えばPWM信号の1周期における各スイッチング素子21H,21Lのオン期間の比率などである。
【0042】
そして、可変電圧制御部32は、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作によって、例えば第1ノードAを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更することによって、第2ノードBからバッテリ11を介した第1ノードAの電位を調整する、あるいは、例えば第2ノードBを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更する。
【0043】
電動機制御部33は、例えば3相のブラシレスDCモータなどの電動機(M)2の駆動時において、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御(ベクトル制御)を行ない、バッテリ11および燃料電池スタック12から供給される直流電力を交流電力に変換する駆動用インバータ3の電力変換動作を制御する。
【0044】
例えば、電動機制御部33は、電動機(M)2に対するトルク指令に応じた目標d軸電流及び目標q軸電流を演算し、目標d軸電流及び目標q軸電流に基づいて3相の各相出力電圧Vu,Vv,Vwを算出し、各相出力電圧Vu,Vv,Vwに応じて駆動用インバータ3にゲート信号であるPWM信号を入力する。
そして、実際に駆動用インバータ3から電動機(M)2に供給される各相電流Iu,Iv,Iwの検出値をdq座標上に変換して得たd軸電流及びq軸電流と、目標d軸電流及び目標q軸電流との各偏差がゼロとなるようにフィードバック制御を行なう。
【0045】
本発明の実施形態による電動車両用電源装置1は上記構成を備えており、次に、電動車両用電源装置1の動作について説明する。
【0046】
制御装置17は、例えば電動機(M)2の負荷が小さく、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が小さい場合などには、図2(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)かつ第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)として、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する。
この並列接続時において、例えば図3に示す時刻t0から時刻t1の期間のようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作は継続される。
【0047】
これに伴い、例えば図2(B)に示すように、第1ノードAの電位VAと第3ノードCの電位VCとは同一かつ第4ノードDの電位VDよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1およびバッテリ電圧Vbの加算値(=V1+Vb)だけ高くなる。また、第2ノードBの電位VBは第4ノードDの電位VDよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1だけ高くなる。
そして、この並列接続の状態(第1接続状態)において、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(1)に示すように記述される。
【0048】
【数1】
【0049】
この並列接続の状態において、電動機(M)2の駆動用インバータ3に供給される電動機駆動電圧は、例えば図3に示す時刻t0から時刻t1の期間のように、燃料電池電圧Vfcに等しく、いわば燃料電池スタック12がメイン電源として設定され、バッテリ11がアシスト電源として設定されている。
そして、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分は、例えば下記数式(2)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)に応じた第1DC−DCコンバータ電圧V1によって制御される。
【0050】
【数2】
【0051】
そして、この並列接続の状態において、例えば電動機(M)2の負荷の増大に伴い、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が大きくなった場合などには、制御装置17は、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続するように切り替える。
【0052】
この接続切替時において、制御装置17は、先ず、例えば図4(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)に維持しつつ、第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
これにより、第3ノードCと第1ノードA及び第2ノードBとを切り離す
そして、例えば下記数式(3)に示すように記述されるDC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)を低下傾向に変化させてスイッチング動作を実行させる。
【0053】
【数3】
【0054】
これに伴い、例えば図4(B)および下記数式(4)に示すように、第1DC−DCコンバータ電圧V1は増大傾向に変化し、第2ノードBの電位VBは第3ノードCの電位VCに向かい高くなり、第1ノードAの電位VAは第3ノードCの電位VCよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1の増大分だけ高くなる。
【0055】
【数4】
【0056】
そして、この接続切替時の状態(第3接続状態)においては、例えば図3に示す時刻t1から時刻t3の期間のように、第1DC−DCコンバータ電圧V1の増大に伴い、電動機(M)2の駆動用インバータ3に供給される電動機駆動電圧は増大傾向に変化する。
また、バッテリ電流Ibは、所定のハイ側電流値まで増大傾向に変化した後に、このハイ側電流値を維持する。
また、燃料電池電流Ifcは、所定のロー側電流値まで減少傾向に変化した後に、このロー側電流値を維持する。
【0057】
次に、制御装置17は、第1DC−DCコンバータ電圧V1が燃料電池電圧Vfcに到達した時点、つまり第2ノードBを第3ノードCに接続可能になった時点で、例えば図5(A)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しつつ、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)から閉(オン)へと切り替える。これと共に、第2スイッチ(SW2)15を開(オフ)に維持し、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続する。
【0058】
これに伴い、例えば図5(B)に示すように、第2ノードBの電位VBと第3ノードCの電位VCとは同一かつ第4ノードDの電位VDよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1(つまり燃料電池電圧Vfcと同一の第1DC−DCコンバータ電圧V1)だけ高くなり、第1ノードAの電位VAは第3ノードCの電位VCよりもバッテリ電圧Vbだけ高くなる。
そして、例えば図3に示す時刻t3以降のように、バッテリ電流Ibは、所定のハイ側電流値から減少傾向に変化し、燃料電池電流Ifcは、所定のロー側電流値から増大傾向に変化する。
【0059】
この直列接続の状態(第2接続状態)において、制御装置17はDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しており、スイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(5)に示すように記述される。
これにより、例えば下記数式(6)に示すように、スイッチングデューティー(duty)によって燃料電池スタック12の燃料電池電圧Vfcとバッテリ11のバッテリ電圧Vbとの比が記述され、この比は、燃料電池スタック12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比に対応する。
【0060】
【数5】
【0061】
【数6】
【0062】
制御装置17は、スイッチングデューティー(duty)により燃料電池スタック12の動作点とバッテリ11の動作点との比が記述されることを用いて、負荷の総消費電力を燃料電池スタック12およびバッテリ11などの電力供給側の出力電力で賄いつつ、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分を制御する。
これにより、電動機(M)2の駆動時および回生時における各種の運転モードを実行可能とし、各種の運転モード毎に対して燃料電池電流Ifcに対する目標電流を設定し、燃料電池電流Ifcが目標電流に一致するようにしてフィードバック制御を行なうことによって、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
【0063】
なお、電動機(M)2の駆動時におけるモードは、例えば、バッテリ11の出力のみが駆動用インバータ3に供給されるEVモードと、バッテリ11および燃料電池スタック12の出力が駆動用インバータ3に供給される(バッテリ+FC)モードと、燃料電池スタック12の出力のみが駆動用インバータ3に供給される第1のFCモードと、燃料電池スタック12の出力のみが駆動用インバータ3およびバッテリ11に供給されてバッテリ11が充電される第2のFCモードとなどである。
【0064】
また、電動機(M)2の回生時におけるモードは、例えば、駆動用インバータ3の回生電力によりバッテリ11が充電される回生モードと、駆動用インバータ3の回生電力および燃料電池スタック12の出力がバッテリ11に供給されてバッテリ11が充電される(回生+FCによるバッテリ充電)モードとなどである。
【0065】
例えば、制御装置17は、燃料電池スタック12の出力のみが駆動用インバータ3に供給される第1のFCモードなどにおいて、電動機(M)2に要求される出力に対して燃料電池スタック12の出力が不足する場合、あるいは、電動機(M)2に要求される出力が低いことで燃料電池スタック12の運転効率が低下してしまう場合、あるいは、燃料電池スタック12の劣化が促進される運転状態である場合などにおいて、バッテリ11の出力配分を増大させる。
【0066】
以下に、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を並列または直列に切り替える処理について説明する。
先ず、例えば図9に示すステップS01においては、バッテリ電圧Vbと燃料電池電圧Vfcとを検出する。
【0067】
次に、ステップS02においては、直列接続時における直列電圧Vs(=Vfc+Vb)を算出する。
【0068】
次に、ステップS03においては、並列接続時の並列電圧に相当する燃料電池電圧Vfcと、電動機(M)2の回転数および発生トルクと応じて、例えば図7に示すような電動機損失マップを検索して、第1電動機損失値Qmot1を取得する。
なお、電動機損失マップは、予め実施される試験の試験結果などに応じて作成されており、例えば、電動機(M)2の回転数または発生トルクの増大に伴い、電動機損失値が増大傾向に変化し、電圧の増大に伴い、電動機損失値が減少傾向に変化するような特性を有している。
【0069】
次に、ステップS04においては、直列電圧Vsと、電動機(M)2の回転数および発生トルクと応じて、例えば図7に示すような電動機損失マップを検索して、第2電動機損失値Qmot2を取得する。
【0070】
次に、ステップS05においては、第1電動機損失値Qmot1は第2電動機損失値Qmot2未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS08に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
【0071】
そして、ステップS06においては、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とは直列に接続されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進み、このステップS07においては、後述する直列接続から並列接続への切替処理を実行し、エンドに進む。
【0072】
また、ステップS08においては、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とは並列に接続されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS09に進み、このステップS09においては、後述する並列接続から直列接続への切替処理を実行し、エンドに進む。
【0073】
以下に、上述したステップS07での直列接続から並列接続への切替処理について説明する。
先ず、例えば図8に示すステップS11においては、DC−DCコンバータ入力電流Idcがバッテリ電流Ibと同一になるようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を実行する。
【0074】
次に、ステップS12においては、第1スイッチ(SW1)14を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
次に、ステップS13においては、第1ノードAを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更することによって、第2ノードBからバッテリ11を介した第1ノードAの電位VAを調整して、第1DC−DCコンバータ電圧V1が所定値(第1ノードAを第3ノードCに接続可能な所定値)になるようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を実行する。
次に、ステップS14においては、第2スイッチ(SW2)15を開(オフ)から閉(オン)へと切り替え、リターンに進む。
【0075】
以下に、上述したステップS09での並列接続から直列接続への切替処理について説明する。
先ず、例えば図9に示すステップS21においては、第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
次に、ステップS22においては、第2ノードBを第3ノードCに接続可能にするようにして、第1DC−DCコンバータ電圧V1が燃料電池電圧Vfcと同一になるようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を実行する。
【0076】
次に、ステップS23においては、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)から閉(オン)へと切り替える。
次に、ステップS24においては、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続して、リターンに進む。
【0077】
上述したように、本発明の実施形態による電動車両用電源装置1によれば、電動機(M)2の負荷が小さく、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が小さい場合には、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する。
一方、電動機の負荷が大きく、電動機で必要とされる駆動電圧が大きい場合には、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続する。
【0078】
これらにより、電動機(M)2の負荷が大きい場合には、電動機(M)2の駆動電圧を増大させて所望の動力性能を確保することができ、電動機(M)2の負荷が小さい場合には、電動機(M)2の駆動電圧が過大になることを防止して電動機(M)2および駆動用インバータ3の運転効率を増大させることができる。
したがって、例えば坂道発進などの高トルクの走行モードであっても、電動機(M)2を駆動制御する駆動用インバータ3においてスイッチング損失が増大したり、過熱が生じることを防止し、走行制御に対して出力制限が生じてしまうことを防止することができる。
【0079】
さらに、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を、電動機(M)2の負荷の増大に応じて、並列と直列との間で切り替える場合には、第1スイッチ(SW1)14および第2スイッチ(SW2)15を開として燃料電池スタック12を電動機(M)2から切り離し、第3ノードCと第1ノードA及び第2ノードBとを切り離し、バッテリ11のみによって電動機(M)2に電力を供給する第3接続状態を経由する。
【0080】
これにより、電動機(M)2に対する電力供給を維持した状態で電動機(M)2の負荷の大きさに応じて、電動機(M)2に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を並列と直列との間で切り替えることができ、例えば内燃機関などの動力を用いずに電源から供給される電力のみで走行を行なうAER(All Electric Range)走行時であっても、少なくともバッテリ11から供給される電力により走行制御を継続することができる。
【0081】
さらに、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とが直列に接続される第2接続状態において、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を行ない、スイッチングデューティー(duty)を変更することによって、バッテリ11と燃料電池スタック12との間における出力配分を容易に調整することができる。
【0082】
また、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とが並列に接続される第1接続状態において、バッテリ11の一端(つまり、第1ノードA側の端子)と燃料電池スタック12の一端(つまり、第3ノードC側の端子)とのみが同電位で接続された状態で、メイン電源とアシスト電源とを区別しつつ、第1DC−DCコンバータ電圧V1によってバッテリ11と燃料電池スタック12との間における出力配分を容易に調整することができる。
【0083】
さらに、補機16の消費電力を燃料電池スタック12から供給することができ、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を並列と直列との間で切り替えるときに、電動機(M)2の消費電力を負担するバッテリ11からより多くの電力を電動機(M)2に供給することができる。
【0084】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図10に示す変形例のように、電動車両用電源装置1を構成する各要素の極性を反転させてもよい。
この変形例に係る電動車両用電源装置1において、上述した実施の形態に係る電動車両用電源装置1と異なる点は、DC−DCコンバータ13の高電圧側端子13Hが第4ノードDに接続され、共通端子13Cが第1ノードAに接続され、電圧センサ41cの代わりに高電圧側端子13Hと低電圧側端子13Lとの間の電圧(第2DC−DCコンバータ電圧)V2を検出する電圧センサ41dを備えている点である。
【0085】
以下に、上述した実施の形態の変形例に係る電動車両用電源装置1の動作について説明する。
【0086】
制御装置17は、例えば電動機(M)2の負荷が小さく、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が小さい場合などには、図11(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)かつ第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)として、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する。
この並列接続時において、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作は継続される。
【0087】
これに伴い、例えば図11(B)に示すように、第1ノードAの電位VAと第3ノードCの電位VCとは同一、かつ、第2ノードBの電位VBは第1ノードAの電位VAおよび第3ノードCの電位VCよりもバッテリ電圧Vbだけ高く、第4ノードDの電位VDは第2ノードBの電位VBよりも第2DC−DCコンバータ電圧V2だけ高くなる。
そして、この並列接続の状態(第1接続状態)において、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(7)に示すように記述される。
【0088】
【数7】
【0089】
この並列接続の状態において、電動機(M)2の駆動用インバータ3に供給される電動機駆動電圧は、燃料電池電圧Vfcに等しく、いわば燃料電池スタック12がメイン電源として設定され、バッテリ11がアシスト電源として設定されている。
そして、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分は、例えば下記数式(8)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)に応じた第2DC−DCコンバータ電圧V2によって制御される。
【0090】
【数8】
【0091】
そして、この並列接続の状態において、例えば電動機(M)2の負荷の増大に伴い、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が大きくなった場合などには、制御装置17は、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続するように切り替える。
【0092】
この接続切替時において、制御装置17は、先ず、例えば図12(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)に維持しつつ、第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
これにより、第3ノードCと第1ノードA及び第2ノードBとを切り離す
そして、例えば下記数式(9)に示すように記述されるDC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)を低下傾向に変化させてスイッチング動作を実行させる。
【0093】
【数9】
【0094】
これに伴い、例えば図12(B)および下記数式(10)に示すように、第2DC−DCコンバータ電圧V2は増大傾向に変化し、第3ノードCの電位VCは第1ノードAの電位VAよりも第2DC−DCコンバータ電圧V2の増大分だけ高くなり、第3ノードCの電位VCと第2ノードBの電位VBとの差が小さくなる。
【0095】
【数10】
【0096】
次に、制御装置17は、第2DC−DCコンバータ電圧V2が燃料電池電圧Vfcに到達した時点、つまり第2ノードBを第3ノードCに接続可能になった時点で、例えば図13(A)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しつつ、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)から閉(オン)へと切り替える。これと共に、第2スイッチ(SW2)15を開(オフ)に維持し、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続する。
これに伴い、例えば図13(B)に示すように、第2ノードBの電位VBと第3ノードCの電位VCとは同一かつ第1ノードAの電位VAよりもバッテリ電圧Vbだけ高くなる。
【0097】
この直列接続の状態(第2接続状態)において、制御装置17はDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しており、スイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(11)に示すように記述される。
これにより、例えば下記数式(12)に示すように、スイッチングデューティー(duty)によって燃料電池スタック12の燃料電池電圧Vfcとバッテリ11のバッテリ電圧Vbとの比が記述され、この比は、燃料電池スタック12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比に対応する。
【0098】
【数11】
【0099】
【数12】
【0100】
制御装置17は、スイッチングデューティー(duty)により燃料電池スタック12の動作点とバッテリ11の動作点との比が記述されることを用いて、負荷の総消費電力を燃料電池スタック12およびバッテリ11などの電力供給側の出力電力で賄いつつ、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分を制御する。
これにより、電動機(M)2の駆動時および回生時における各種の運転モードを実行可能とし、各種の運転モード毎に対して燃料電池電流Ifcに対する目標電流を設定し、燃料電池電流Ifcが目標電流に一致するようにしてフィードバック制御を行なうことによって、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
【0101】
なお、上述した実施の形態および変形例においては、バッテリ11と燃料電池スタック12とは配置位置が入れ替えられてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 電動車両用電源装置
2 電動機(M)
3 駆動用インバータ
11 バッテリ(二次電池)
12 燃料電池スタック
13 DC−DCコンバータ
13L 低電圧側端子
13H 高電圧側端子
13C 共通端子
14 第1スイッチ(SW1)
15 第2スイッチ(SW2)
16 補機
17 制御装置
31 接続切替制御部
32 可変電圧制御部
33 電動機制御部
【技術分野】
【0001】
この発明は、電動車両用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば燃料電池スタックと蓄電装置とを直列に接続して成る電池回路に対して単一のDC−DCコンバータを備え、DC−DCコンバータのスイッチングデューティーを変更することで燃料電池スタックと蓄電装置との電力分担割合を調整し、複数の動作モードを切り換える電源システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術に係る電源システムにおいては、例えば電源システムを大型の車両に搭載する場合などにおいて、燃料電池スタックおよび蓄電装置の出力を増大させると、直列電圧が増大することに伴って、車両を駆動するモータのインバータにおいてスイッチング損失が増大してしまい、例えば坂道発進などの高トルクの走行モードにおいてインバータの過熱を抑制するために出力制限が生じてしまう虞がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、所望の出力を確保しつつ、高電圧系での損失を抑制することが可能な電動車両用電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して係る目的を達成するために、本発明の第1態様に係る電動車両用電源装置は、第1ノード(例えば、実施の形態での第1ノードA)と第2ノード(例えば、実施の形態での第2ノードB)との間に接続された第1電源(例えば、実施の形態でのバッテリ11および燃料電池スタック12の一方)と、前記第2ノードと第3ノード(例えば、実施の形態での第3ノードC)との間に接続された第1スイッチ(例えば、実施の形態での第1スイッチ(SW1)14)と、前記第3ノードと第4ノード(例えば、実施の形態での第4ノードD)との間に接続された第2電源(例えば、実施の形態でのバッテリ11および燃料電池スタック12の他方)と、前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第2スイッチ(例えば、実施の形態での第2スイッチ(SW2)15)と、前記第2ノードに接続されたDC−DCコンバータ(例えば、実施の形態でのDC−DCコンバータ13)とを備え、前記DC−DCコンバータは、前記第1ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更することによって、前記第2ノードから前記第1電源を介した前記第1ノードの電位を調整する、又は、前記第2ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更しており、前記第1ノードと前記第4ノードとの間から取り出される出力電力は電動機(例えば、実施の形態での電動機(M)2)に供給され、前記第1電源および前記第2電源のうち、何れか一方が燃料電池(例えば、実施の形態での燃料電池スタック12)であり、何れか他方が二次電池(例えば、実施の形態でのバッテリ11)である。
【0007】
さらに、本発明の第2態様に係る電動車両用電源装置は、前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを閉として前記第1ノードと前記第3ノードとを接続する第1接続状態と、前記第1スイッチを閉かつ前記第2スイッチを開として前記第2ノードと前記第3ノードとを接続する第2接続状態と、前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを開として前記第3ノードと前記第1ノード及び前記第2ノードとを切り離す第3接続状態とを切り替え可能な切替手段(例えば、実施の形態での接続切替制御部31)を備え、前記切替手段は、前記第3接続状態を経由して前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替える。
【0008】
さらに、本発明の第3態様に係る電動車両用電源装置では、前記DC−DCコンバータは、前記第2接続状態と前記第3接続状態との接続切替時の時間的前後においてスイッチング動作を継続する。
【0009】
さらに、本発明の第4態様に係る電動車両用電源装置では、前記第3ノードと前記第4ノードとの間に補機(例えば、実施の形態での補機16)が接続されている。
【0010】
さらに、本発明の第5態様に係る電動車両用電源装置では、前記DC−DCコンバータの低電圧側端子(例えば、実施の形態での低電圧側端子13L)は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子(例えば、実施の形態での高電圧側端子13H)は前記第1ノードに接続され、共通端子(例えば、実施の形態での共通端子13C)は前記第4ノードに接続されている。
【0011】
さらに、本発明の第6態様に係る電動車両用電源装置では、前記DC−DCコンバータの低電圧側端子(例えば、実施の形態での低電圧側端子13L)は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子(例えば、実施の形態での高電圧側端子13H)は前記第4ノードに接続され、共通端子(例えば、実施の形態での共通端子13C)は前記第1ノードに接続されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の第1態様に係る電動車両用電源装置によれば、電動機の負荷が小さく、電動機で必要とされる駆動電圧が小さい場合には、第1スイッチを開かつ第2スイッチを閉として電動機に対して第1電源と第2電源とを並列に接続する。
一方、電動機の負荷が大きく、電動機で必要とされる駆動電圧が大きい場合には、第1スイッチを閉かつ第2スイッチを開として電動機に対して第1電源と第2電源とを直列に接続する。
【0013】
これらにより、電動機の負荷が大きい場合には、電動機の駆動電圧を増大させて所望の動力性能を確保することができ、電動機の負荷が小さい場合には、電動機の駆動電圧が過大になることを防止して電動機および電動機を駆動制御するインバータの運転効率を増大させることができる。
したがって、例えば坂道発進などの高トルクの走行モードであっても、電動機を駆動制御するインバータにおいてスイッチング損失が増大したり、過熱が生じることを防止し、走行制御に対して出力制限が生じてしまうことを防止することができる。
【0014】
本発明の第2態様に係る電動車両用電源装置によれば、電動機に対する第1電源と第2電源との接続を、電動機の負荷の増大に応じて、並列と直列との間で切り替える場合には、第1スイッチおよび第2スイッチを開として第2電源を電動機から切り離し、第3ノードと第1ノード及び第2ノードとを切り離し、第1電源のみによって電動機に電力を供給する第3接続状態を経由する。
【0015】
これにより、電動機に対する電力供給を維持した状態で電動機の負荷の大きさに応じて、電動機に対する第1電源と第2電源との接続を並列と直列との間で切り替えることができ、例えば内燃機関などの動力を用いずに電源から供給される電力のみで走行を行なうAER(All Electric Range)走行時であっても、少なくとも第1電源から供給される電力により走行制御を継続することができる。
【0016】
本発明の第3態様に係る電動車両用電源装置によれば、電動機に対して第1電源と第2電源とが直列に接続される第2接続状態においてDC−DCコンバータのスイッチング動作を行なうことにより、第1電源と第2電源との間における出力配分を調整することができる。
【0017】
本発明の第4態様に係る電動車両用電源装置によれば、補機の消費電力を第2電源から供給することができ、電動機に対する第1電源と第2電源との接続を並列と直列との間で切り替えるときに電動機の消費電力を負担する第1電源からより多くの電力を電動機に供給することができる。
【0018】
本発明の第5態様に係る電動車両用電源装置によれば、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータのハイサイドアームのスイッチング素子は第1ノードに接続され、ローサイドアームのスイッチング素子は第4ノードに接続され、チョークコイルは第2ノードに接続される。
【0019】
本発明の第6態様に係る電動車両用電源装置によれば、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータのハイサイドアームのスイッチング素子は第4ノードに接続され、ローサイドアームのスイッチング素子は第1ノードに接続され、チョークコイルは第2ノードに接続される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置の構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)とを並列に接続する状態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対するバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続状態と、DC−DCコンバータの動作とに対応するバッテリ電流および燃料電池電流および電動機駆動電圧の変化の例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施形態に係る電動機損失マップの例を示す図である。
【図8】図6に示す直列接続から並列接続への切替処理を示すフローチャートである。
【図9】図6に示す並列接続から直列接続への切替処理を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置の構成図である。
【図11】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)とを並列に接続する状態を示す図である。
【図12】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【図13】本発明の実施形態の変形例に係る電動車両用電源装置において電動機(M)の駆動用インバータに対してバッテリと燃料電池スタック(FC)との接続を並列から直列に切り替える状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る電動車両用電源装置について添付図面を参照しながら説明する。
本実施の形態による電動車両用電源装置1は、例えば図1に示すように、車両の走行駆動力を発生する電動機(M)2を駆動制御する駆動用インバータ3に電力を供給する電源を成している。
【0022】
電動車両用電源装置1は、第1ノードAおよび第2ノードBおよび第3ノードCおよび第4ノードDと、バッテリ11と、燃料電池スタック(FC)12と、DC−DCコンバータ13と、第1スイッチ(SW1)14および第2スイッチ(SW2)15と、補機16と、制御装置17とを備えて構成されている。
そして、第1ノードAおよび第4ノードDに対して駆動用インバータ3が並列に接続されている。
【0023】
バッテリ11は第1ノードAと第2ノードBとの間に接続されている。
燃料電池スタック12は第3ノードCと第4ノードDとの間に接続されている。
【0024】
燃料電池スタック12は、陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を、アノード触媒およびガス拡散層からなる燃料極(アノード)と、カソード触媒およびガス拡散層からなる酸素極(カソード)とで挟持してなる電解質電極構造体を、更に一対のセパレータで挟持してなる燃料電池セルを多数組積層して構成され、燃料電池セルの積層体は一対のエンドプレートによって積層方向の両側から挟み込まれている。
【0025】
燃料電池スタック12のカソードには酸素を含む酸化剤ガス(反応ガス)である空気がエアポンプ(図示略)から供給され、アノードには水素を含む燃料ガス(反応ガス)が、例えば高圧の水素タンク(図示略)から供給されている。
そして、アノードのアノード触媒上で触媒反応によりイオン化された水素は、適度に加湿された固体高分子電解質膜を介してカソードへと移動し、この移動に伴って発生する電子が外部回路に取り出され、直流の電気エネルギーとして利用される。このときカソードにおいては、水素イオン、電子及び酸素が反応して水が生成される。
【0026】
なお、エアポンプは、例えば車両の外部から空気を取り込んで圧縮し、この空気を反応ガスとして燃料電池スタック12のカソードに供給する。
このエアポンプを駆動するポンプ駆動用モータ(図示略)の回転数は、制御装置17から出力される制御指令に基づき、例えばパルス幅変調(PWM)によるPWMインバータなどからなるエアポンプインバータ(図示略)により制御されている。
このエアポンプインバータは、バッテリ11などから電力が供給される。
【0027】
DC−DCコンバータ13は第2ノードBに接続され、より詳細には、低電圧側端子13Lが第2ノードBに接続され、高電圧側端子13Hが第1ノードAに接続され、共通端子13Cが第4ノードDに接続されている。
【0028】
DC−DCコンバータ13は、例えばチョッパ型のDC−DCコンバータであって、複数のスイッチング素子(例えば、IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)が接続されてなるスイッチング回路21と、チョークコイル22と、第1および第2平滑コンデンサ23,24とを備えて構成されている。
【0029】
スイッチング回路21は、例えば、対をなすハイ側スイッチング素子21Hおよびロー側スイッチング素子21Lが接続されて構成されている。
そして、ハイ側スイッチング素子21Hのコレクタは高電圧側端子13Hに接続され、ロー側スイッチング素子21Lのエミッタは共通端子13Cに接続され、ハイ側スイッチング素子21Hのエミッタはロー側スイッチング素子21Lのコレクタに接続されている。
そして、各ハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21L毎のエミッタ−コレクタ間には、エミッタからコレクタに向けて順方向になるようにしてダイオードが接続されている。
【0030】
このスイッチング回路21は、制御装置17から出力されて各スイッチング素子21H,21Lのゲートに入力されるパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)によって駆動され、ハイ側スイッチング素子21Hがオンかつロー側スイッチング素子21Lがオフになる状態と、ハイ側スイッチング素子21Hがオフかつロー側スイッチング素子21Lがオンになる状態とが、交互に切り替えられる。
【0031】
例えばPWM信号の1周期におけるハイ側スイッチング素子21Hのオン時間THonとロー側スイッチング素子21Lのオン時間TLonとなどにより定義されるスイッチングデューティーduty(=THon/(THon+TLon)など)に応じて、ハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21Lのオン/オフが切り替えられる。
なお、ハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21Lは、オン/オフの切り換え時に、同時にオンとなることが禁止され、同時にオフとなる適宜のデッドタイムが設けられている。
【0032】
そして、本発明においては、後述するように、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する状態および直列に接続する状態および並列と直列との接続切替の状態などにおいて、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作が継続される(スイッチングデューティーduty≠0)ようになっている。
【0033】
チョークコイル22は、一端がスイッチング回路21のハイ側およびロー側スイッチング素子21H,21Lのエミッタ−コレクタ間に接続され、他端が低電圧側端子13Lに接続されている。
第1平滑コンデンサ23は低電圧側端子13Lおよび共通端子13C間に接続され、第2平滑コンデンサ24は高電圧側端子13Hおよび共通端子13C間に接続されている。
【0034】
このDC−DCコンバータ13は、低電圧側から高電圧側への昇圧動作時には、先ず、ハイ側スイッチング素子21Hがオフかつロー側スイッチング素子21Lがオンとされ、低電圧側端子13Lから入力される電流によってチョークコイル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、ハイ側スイッチング素子21Hがオンかつロー側スイッチング素子21Lがオフとされ、チョークコイル22に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル22の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。
これに伴い、チョークコイル22に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧が低電圧側の入力電圧に上積みされて低電圧側の入力電圧よりも高い昇圧電圧が高電圧側に印加される。
この切替動作に伴って発生する電圧変動は第1および第2平滑コンデンサ23,24により平滑化され、昇圧電圧が高電圧側端子13Hから出力される。
【0035】
なお、高電圧側から低電圧側への降圧動作時には、先ず、ハイ側スイッチング素子21Hがオフかつロー側スイッチング素子21Lがオンとされ、高電圧側から入力される電流によってチョークコイル22が直流励磁されて磁気エネルギーが蓄積される。
次に、ハイ側スイッチング素子21Hがオンかつロー側スイッチング素子21Lがオフとされ、チョークコイル22に流れる電流が遮断されることに起因する磁束の変化を妨げるようにしてチョークコイル22の両端間に起電圧(誘導電圧)が発生する。
このチョークコイル22に蓄積された磁気エネルギーによる誘導電圧は、スイッチングデューティーdutyに応じて高電圧側の入力電圧が降圧された降圧電圧となり、降圧電圧が低電圧側に印加される。
【0036】
第1スイッチ(SW1)14は第2ノードBと第3ノードCとの間に接続されている。
第2スイッチ(SW2)15は第1ノードAと第3ノードCとの間に接続されている。
第1および第2スイッチ14,15は、例えばスイッチング素子(IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistorなど)であって、制御装置17から出力される信号に応じてオン/オフが制御される。
【0037】
なお、例えばスイッチング素子である第1スイッチ(SW1)14は、エミッタが第2ノードBに接続され、コレクタが第3ノードCに接続され、エミッタ−コレクタ間にはエミッタからコレクタに向けて順方向になるようにしてダイオードが接続されている。
また、例えばスイッチング素子である第2スイッチ(SW2)15は、コレクタが第1ノードAに接続され、エミッタが第3ノードCに接続され、エミッタ−コレクタ間にはエミッタからコレクタに向けて順方向になるようにしてダイオードが接続されている。
【0038】
補機16は第3ノードCと第4ノードDとの間に接続され、燃料電池スタック12から電力が供給される。
【0039】
制御装置17は、例えば、接続切替制御部31と、可変電圧制御部32と、電動機制御部33とを備えて構成されている。
【0040】
そして、制御装置17には、例えば、バッテリ11の電圧(バッテリ電圧)Vbを検出する電圧センサ41aおよび電流(バッテリ電流)Ibを検出する電流センサ42aから出力される信号と、燃料電池スタック12の電圧(燃料電池電圧)Vfcを検出する電圧センサ41bおよび電流(燃料電池電流)Ifcを検出する電流センサ42bから出力される信号と、DC−DCコンバータ13の第1平滑コンデンサ23の電圧つまり低電圧側端子13Lと共通端子13Cとの間の電圧(第1DC−DCコンバータ電圧)V1を検出する電圧センサ41cおよびDC−DCコンバータ13の入力電流(DC−DCコンバータ入力電流)Idcを検出する電流センサ42cから出力される信号と、電動機(M)2の回転数および発生トルクを検出する各センサ(図示略)から出力される信号とが入力されている。
【0041】
接続切替制御部31は、第1スイッチ(SW1)14および第2スイッチ(SW2)15のオン/オフを制御する。
可変電圧制御部32は、例えばパルス幅変調(PWM)された信号(PWM信号)のスイッチングデューティー(duty)に応じてDC−DCコンバータ13のスイッチング動作、つまり各スイッチング素子21H,21Lのオン/オフを制御する。
なお、スイッチングデューティー(duty)は、例えばPWM信号の1周期における各スイッチング素子21H,21Lのオン期間の比率などである。
【0042】
そして、可変電圧制御部32は、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作によって、例えば第1ノードAを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更することによって、第2ノードBからバッテリ11を介した第1ノードAの電位を調整する、あるいは、例えば第2ノードBを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更する。
【0043】
電動機制御部33は、例えば3相のブラシレスDCモータなどの電動機(M)2の駆動時において、回転直交座標をなすdq座標上で電流のフィードバック制御(ベクトル制御)を行ない、バッテリ11および燃料電池スタック12から供給される直流電力を交流電力に変換する駆動用インバータ3の電力変換動作を制御する。
【0044】
例えば、電動機制御部33は、電動機(M)2に対するトルク指令に応じた目標d軸電流及び目標q軸電流を演算し、目標d軸電流及び目標q軸電流に基づいて3相の各相出力電圧Vu,Vv,Vwを算出し、各相出力電圧Vu,Vv,Vwに応じて駆動用インバータ3にゲート信号であるPWM信号を入力する。
そして、実際に駆動用インバータ3から電動機(M)2に供給される各相電流Iu,Iv,Iwの検出値をdq座標上に変換して得たd軸電流及びq軸電流と、目標d軸電流及び目標q軸電流との各偏差がゼロとなるようにフィードバック制御を行なう。
【0045】
本発明の実施形態による電動車両用電源装置1は上記構成を備えており、次に、電動車両用電源装置1の動作について説明する。
【0046】
制御装置17は、例えば電動機(M)2の負荷が小さく、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が小さい場合などには、図2(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)かつ第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)として、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する。
この並列接続時において、例えば図3に示す時刻t0から時刻t1の期間のようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作は継続される。
【0047】
これに伴い、例えば図2(B)に示すように、第1ノードAの電位VAと第3ノードCの電位VCとは同一かつ第4ノードDの電位VDよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1およびバッテリ電圧Vbの加算値(=V1+Vb)だけ高くなる。また、第2ノードBの電位VBは第4ノードDの電位VDよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1だけ高くなる。
そして、この並列接続の状態(第1接続状態)において、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(1)に示すように記述される。
【0048】
【数1】
【0049】
この並列接続の状態において、電動機(M)2の駆動用インバータ3に供給される電動機駆動電圧は、例えば図3に示す時刻t0から時刻t1の期間のように、燃料電池電圧Vfcに等しく、いわば燃料電池スタック12がメイン電源として設定され、バッテリ11がアシスト電源として設定されている。
そして、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分は、例えば下記数式(2)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)に応じた第1DC−DCコンバータ電圧V1によって制御される。
【0050】
【数2】
【0051】
そして、この並列接続の状態において、例えば電動機(M)2の負荷の増大に伴い、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が大きくなった場合などには、制御装置17は、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続するように切り替える。
【0052】
この接続切替時において、制御装置17は、先ず、例えば図4(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)に維持しつつ、第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
これにより、第3ノードCと第1ノードA及び第2ノードBとを切り離す
そして、例えば下記数式(3)に示すように記述されるDC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)を低下傾向に変化させてスイッチング動作を実行させる。
【0053】
【数3】
【0054】
これに伴い、例えば図4(B)および下記数式(4)に示すように、第1DC−DCコンバータ電圧V1は増大傾向に変化し、第2ノードBの電位VBは第3ノードCの電位VCに向かい高くなり、第1ノードAの電位VAは第3ノードCの電位VCよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1の増大分だけ高くなる。
【0055】
【数4】
【0056】
そして、この接続切替時の状態(第3接続状態)においては、例えば図3に示す時刻t1から時刻t3の期間のように、第1DC−DCコンバータ電圧V1の増大に伴い、電動機(M)2の駆動用インバータ3に供給される電動機駆動電圧は増大傾向に変化する。
また、バッテリ電流Ibは、所定のハイ側電流値まで増大傾向に変化した後に、このハイ側電流値を維持する。
また、燃料電池電流Ifcは、所定のロー側電流値まで減少傾向に変化した後に、このロー側電流値を維持する。
【0057】
次に、制御装置17は、第1DC−DCコンバータ電圧V1が燃料電池電圧Vfcに到達した時点、つまり第2ノードBを第3ノードCに接続可能になった時点で、例えば図5(A)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しつつ、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)から閉(オン)へと切り替える。これと共に、第2スイッチ(SW2)15を開(オフ)に維持し、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続する。
【0058】
これに伴い、例えば図5(B)に示すように、第2ノードBの電位VBと第3ノードCの電位VCとは同一かつ第4ノードDの電位VDよりも第1DC−DCコンバータ電圧V1(つまり燃料電池電圧Vfcと同一の第1DC−DCコンバータ電圧V1)だけ高くなり、第1ノードAの電位VAは第3ノードCの電位VCよりもバッテリ電圧Vbだけ高くなる。
そして、例えば図3に示す時刻t3以降のように、バッテリ電流Ibは、所定のハイ側電流値から減少傾向に変化し、燃料電池電流Ifcは、所定のロー側電流値から増大傾向に変化する。
【0059】
この直列接続の状態(第2接続状態)において、制御装置17はDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しており、スイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(5)に示すように記述される。
これにより、例えば下記数式(6)に示すように、スイッチングデューティー(duty)によって燃料電池スタック12の燃料電池電圧Vfcとバッテリ11のバッテリ電圧Vbとの比が記述され、この比は、燃料電池スタック12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比に対応する。
【0060】
【数5】
【0061】
【数6】
【0062】
制御装置17は、スイッチングデューティー(duty)により燃料電池スタック12の動作点とバッテリ11の動作点との比が記述されることを用いて、負荷の総消費電力を燃料電池スタック12およびバッテリ11などの電力供給側の出力電力で賄いつつ、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分を制御する。
これにより、電動機(M)2の駆動時および回生時における各種の運転モードを実行可能とし、各種の運転モード毎に対して燃料電池電流Ifcに対する目標電流を設定し、燃料電池電流Ifcが目標電流に一致するようにしてフィードバック制御を行なうことによって、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
【0063】
なお、電動機(M)2の駆動時におけるモードは、例えば、バッテリ11の出力のみが駆動用インバータ3に供給されるEVモードと、バッテリ11および燃料電池スタック12の出力が駆動用インバータ3に供給される(バッテリ+FC)モードと、燃料電池スタック12の出力のみが駆動用インバータ3に供給される第1のFCモードと、燃料電池スタック12の出力のみが駆動用インバータ3およびバッテリ11に供給されてバッテリ11が充電される第2のFCモードとなどである。
【0064】
また、電動機(M)2の回生時におけるモードは、例えば、駆動用インバータ3の回生電力によりバッテリ11が充電される回生モードと、駆動用インバータ3の回生電力および燃料電池スタック12の出力がバッテリ11に供給されてバッテリ11が充電される(回生+FCによるバッテリ充電)モードとなどである。
【0065】
例えば、制御装置17は、燃料電池スタック12の出力のみが駆動用インバータ3に供給される第1のFCモードなどにおいて、電動機(M)2に要求される出力に対して燃料電池スタック12の出力が不足する場合、あるいは、電動機(M)2に要求される出力が低いことで燃料電池スタック12の運転効率が低下してしまう場合、あるいは、燃料電池スタック12の劣化が促進される運転状態である場合などにおいて、バッテリ11の出力配分を増大させる。
【0066】
以下に、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を並列または直列に切り替える処理について説明する。
先ず、例えば図9に示すステップS01においては、バッテリ電圧Vbと燃料電池電圧Vfcとを検出する。
【0067】
次に、ステップS02においては、直列接続時における直列電圧Vs(=Vfc+Vb)を算出する。
【0068】
次に、ステップS03においては、並列接続時の並列電圧に相当する燃料電池電圧Vfcと、電動機(M)2の回転数および発生トルクと応じて、例えば図7に示すような電動機損失マップを検索して、第1電動機損失値Qmot1を取得する。
なお、電動機損失マップは、予め実施される試験の試験結果などに応じて作成されており、例えば、電動機(M)2の回転数または発生トルクの増大に伴い、電動機損失値が増大傾向に変化し、電圧の増大に伴い、電動機損失値が減少傾向に変化するような特性を有している。
【0069】
次に、ステップS04においては、直列電圧Vsと、電動機(M)2の回転数および発生トルクと応じて、例えば図7に示すような電動機損失マップを検索して、第2電動機損失値Qmot2を取得する。
【0070】
次に、ステップS05においては、第1電動機損失値Qmot1は第2電動機損失値Qmot2未満であるか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、後述するステップS08に進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS06に進む。
【0071】
そして、ステップS06においては、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とは直列に接続されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS07に進み、このステップS07においては、後述する直列接続から並列接続への切替処理を実行し、エンドに進む。
【0072】
また、ステップS08においては、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とは並列に接続されているか否かを判定する。
この判定結果が「NO」の場合には、エンドに進む。
一方、この判定結果が「YES」の場合には、ステップS09に進み、このステップS09においては、後述する並列接続から直列接続への切替処理を実行し、エンドに進む。
【0073】
以下に、上述したステップS07での直列接続から並列接続への切替処理について説明する。
先ず、例えば図8に示すステップS11においては、DC−DCコンバータ入力電流Idcがバッテリ電流Ibと同一になるようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を実行する。
【0074】
次に、ステップS12においては、第1スイッチ(SW1)14を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
次に、ステップS13においては、第1ノードAを第3ノードCに接続可能にするようにして第2ノードBの電位を変更することによって、第2ノードBからバッテリ11を介した第1ノードAの電位VAを調整して、第1DC−DCコンバータ電圧V1が所定値(第1ノードAを第3ノードCに接続可能な所定値)になるようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を実行する。
次に、ステップS14においては、第2スイッチ(SW2)15を開(オフ)から閉(オン)へと切り替え、リターンに進む。
【0075】
以下に、上述したステップS09での並列接続から直列接続への切替処理について説明する。
先ず、例えば図9に示すステップS21においては、第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
次に、ステップS22においては、第2ノードBを第3ノードCに接続可能にするようにして、第1DC−DCコンバータ電圧V1が燃料電池電圧Vfcと同一になるようにDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を実行する。
【0076】
次に、ステップS23においては、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)から閉(オン)へと切り替える。
次に、ステップS24においては、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続して、リターンに進む。
【0077】
上述したように、本発明の実施形態による電動車両用電源装置1によれば、電動機(M)2の負荷が小さく、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が小さい場合には、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する。
一方、電動機の負荷が大きく、電動機で必要とされる駆動電圧が大きい場合には、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続する。
【0078】
これらにより、電動機(M)2の負荷が大きい場合には、電動機(M)2の駆動電圧を増大させて所望の動力性能を確保することができ、電動機(M)2の負荷が小さい場合には、電動機(M)2の駆動電圧が過大になることを防止して電動機(M)2および駆動用インバータ3の運転効率を増大させることができる。
したがって、例えば坂道発進などの高トルクの走行モードであっても、電動機(M)2を駆動制御する駆動用インバータ3においてスイッチング損失が増大したり、過熱が生じることを防止し、走行制御に対して出力制限が生じてしまうことを防止することができる。
【0079】
さらに、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を、電動機(M)2の負荷の増大に応じて、並列と直列との間で切り替える場合には、第1スイッチ(SW1)14および第2スイッチ(SW2)15を開として燃料電池スタック12を電動機(M)2から切り離し、第3ノードCと第1ノードA及び第2ノードBとを切り離し、バッテリ11のみによって電動機(M)2に電力を供給する第3接続状態を経由する。
【0080】
これにより、電動機(M)2に対する電力供給を維持した状態で電動機(M)2の負荷の大きさに応じて、電動機(M)2に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を並列と直列との間で切り替えることができ、例えば内燃機関などの動力を用いずに電源から供給される電力のみで走行を行なうAER(All Electric Range)走行時であっても、少なくともバッテリ11から供給される電力により走行制御を継続することができる。
【0081】
さらに、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とが直列に接続される第2接続状態において、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を行ない、スイッチングデューティー(duty)を変更することによって、バッテリ11と燃料電池スタック12との間における出力配分を容易に調整することができる。
【0082】
また、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とが並列に接続される第1接続状態において、バッテリ11の一端(つまり、第1ノードA側の端子)と燃料電池スタック12の一端(つまり、第3ノードC側の端子)とのみが同電位で接続された状態で、メイン電源とアシスト電源とを区別しつつ、第1DC−DCコンバータ電圧V1によってバッテリ11と燃料電池スタック12との間における出力配分を容易に調整することができる。
【0083】
さらに、補機16の消費電力を燃料電池スタック12から供給することができ、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対するバッテリ11と燃料電池スタック12との接続を並列と直列との間で切り替えるときに、電動機(M)2の消費電力を負担するバッテリ11からより多くの電力を電動機(M)2に供給することができる。
【0084】
なお、上述した実施の形態においては、例えば図10に示す変形例のように、電動車両用電源装置1を構成する各要素の極性を反転させてもよい。
この変形例に係る電動車両用電源装置1において、上述した実施の形態に係る電動車両用電源装置1と異なる点は、DC−DCコンバータ13の高電圧側端子13Hが第4ノードDに接続され、共通端子13Cが第1ノードAに接続され、電圧センサ41cの代わりに高電圧側端子13Hと低電圧側端子13Lとの間の電圧(第2DC−DCコンバータ電圧)V2を検出する電圧センサ41dを備えている点である。
【0085】
以下に、上述した実施の形態の変形例に係る電動車両用電源装置1の動作について説明する。
【0086】
制御装置17は、例えば電動機(M)2の負荷が小さく、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が小さい場合などには、図11(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)かつ第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)として、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを並列に接続する。
この並列接続時において、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作は継続される。
【0087】
これに伴い、例えば図11(B)に示すように、第1ノードAの電位VAと第3ノードCの電位VCとは同一、かつ、第2ノードBの電位VBは第1ノードAの電位VAおよび第3ノードCの電位VCよりもバッテリ電圧Vbだけ高く、第4ノードDの電位VDは第2ノードBの電位VBよりも第2DC−DCコンバータ電圧V2だけ高くなる。
そして、この並列接続の状態(第1接続状態)において、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(7)に示すように記述される。
【0088】
【数7】
【0089】
この並列接続の状態において、電動機(M)2の駆動用インバータ3に供給される電動機駆動電圧は、燃料電池電圧Vfcに等しく、いわば燃料電池スタック12がメイン電源として設定され、バッテリ11がアシスト電源として設定されている。
そして、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分は、例えば下記数式(8)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)に応じた第2DC−DCコンバータ電圧V2によって制御される。
【0090】
【数8】
【0091】
そして、この並列接続の状態において、例えば電動機(M)2の負荷の増大に伴い、電動機(M)2で必要とされる駆動電圧が大きくなった場合などには、制御装置17は、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続するように切り替える。
【0092】
この接続切替時において、制御装置17は、先ず、例えば図12(A)に示すように、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)に維持しつつ、第2スイッチ(SW2)15を閉(オン)から開(オフ)へと切り替える。
これにより、第3ノードCと第1ノードA及び第2ノードBとを切り離す
そして、例えば下記数式(9)に示すように記述されるDC−DCコンバータ13のスイッチングデューティー(duty)を低下傾向に変化させてスイッチング動作を実行させる。
【0093】
【数9】
【0094】
これに伴い、例えば図12(B)および下記数式(10)に示すように、第2DC−DCコンバータ電圧V2は増大傾向に変化し、第3ノードCの電位VCは第1ノードAの電位VAよりも第2DC−DCコンバータ電圧V2の増大分だけ高くなり、第3ノードCの電位VCと第2ノードBの電位VBとの差が小さくなる。
【0095】
【数10】
【0096】
次に、制御装置17は、第2DC−DCコンバータ電圧V2が燃料電池電圧Vfcに到達した時点、つまり第2ノードBを第3ノードCに接続可能になった時点で、例えば図13(A)に示すように、DC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しつつ、第1スイッチ(SW1)14を開(オフ)から閉(オン)へと切り替える。これと共に、第2スイッチ(SW2)15を開(オフ)に維持し、電動機(M)2の駆動用インバータ3に対してバッテリ11と燃料電池スタック12とを直列に接続する。
これに伴い、例えば図13(B)に示すように、第2ノードBの電位VBと第3ノードCの電位VCとは同一かつ第1ノードAの電位VAよりもバッテリ電圧Vbだけ高くなる。
【0097】
この直列接続の状態(第2接続状態)において、制御装置17はDC−DCコンバータ13のスイッチング動作を継続しており、スイッチングデューティー(duty)は、例えば下記数式(11)に示すように記述される。
これにより、例えば下記数式(12)に示すように、スイッチングデューティー(duty)によって燃料電池スタック12の燃料電池電圧Vfcとバッテリ11のバッテリ電圧Vbとの比が記述され、この比は、燃料電池スタック12の動作点(例えば、電圧または電流または電力)とバッテリ11の動作点(例えば、電圧または電流または電力)との比に対応する。
【0098】
【数11】
【0099】
【数12】
【0100】
制御装置17は、スイッチングデューティー(duty)により燃料電池スタック12の動作点とバッテリ11の動作点との比が記述されることを用いて、負荷の総消費電力を燃料電池スタック12およびバッテリ11などの電力供給側の出力電力で賄いつつ、燃料電池スタック12とバッテリ11との出力配分を制御する。
これにより、電動機(M)2の駆動時および回生時における各種の運転モードを実行可能とし、各種の運転モード毎に対して燃料電池電流Ifcに対する目標電流を設定し、燃料電池電流Ifcが目標電流に一致するようにしてフィードバック制御を行なうことによって、DC−DCコンバータ13のスイッチングデューティーを制御する。
【0101】
なお、上述した実施の形態および変形例においては、バッテリ11と燃料電池スタック12とは配置位置が入れ替えられてもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 電動車両用電源装置
2 電動機(M)
3 駆動用インバータ
11 バッテリ(二次電池)
12 燃料電池スタック
13 DC−DCコンバータ
13L 低電圧側端子
13H 高電圧側端子
13C 共通端子
14 第1スイッチ(SW1)
15 第2スイッチ(SW2)
16 補機
17 制御装置
31 接続切替制御部
32 可変電圧制御部
33 電動機制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ノードと第2ノードとの間に接続された第1電源と、
前記第2ノードと第3ノードとの間に接続された第1スイッチと、
前記第3ノードと第4ノードとの間に接続された第2電源と、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第2スイッチと、
前記第2ノードに接続されたDC−DCコンバータとを備え、
前記DC−DCコンバータは、
前記第1ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更することによって、前記第2ノードから前記第1電源を介した前記第1ノードの電位を調整する、又は、
前記第2ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更しており、
前記第1ノードと前記第4ノードとの間から取り出される出力電力は電動機に供給され、
前記第1電源および前記第2電源のうち、何れか一方が燃料電池スタックであり、何れか他方が二次電池であることを特徴とする電動車両用電源装置。
【請求項2】
前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを閉として前記第1ノードと前記第3ノードとを接続する第1接続状態と、
前記第1スイッチを閉かつ前記第2スイッチを開として前記第2ノードと前記第3ノードとを接続する第2接続状態と、
前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを開として前記第3ノードと前記第1ノード及び前記第2ノードとを切り離す第3接続状態とを切り替え可能な切替手段を備え、
前記切替手段は、前記第3接続状態を経由して前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電動車両用電源装置。
【請求項3】
前記DC−DCコンバータは、前記第2接続状態と前記第3接続状態との接続切替時の時間的前後においてスイッチング動作を継続することを特徴とする請求項2に記載の電動車両用電源装置。
【請求項4】
前記第3ノードと前記第4ノードとの間に補機が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の電動車両用電源装置。
【請求項5】
前記DC−DCコンバータの低電圧側端子は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子は前記第1ノードに接続され、共通端子は前記第4ノードに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の電動車両用電源装置。
【請求項6】
前記DC−DCコンバータの低電圧側端子は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子は前記第4ノードに接続され、共通端子は前記第1ノードに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の電動車両用電源装置。
【請求項1】
第1ノードと第2ノードとの間に接続された第1電源と、
前記第2ノードと第3ノードとの間に接続された第1スイッチと、
前記第3ノードと第4ノードとの間に接続された第2電源と、
前記第1ノードと前記第3ノードとの間に接続された第2スイッチと、
前記第2ノードに接続されたDC−DCコンバータとを備え、
前記DC−DCコンバータは、
前記第1ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更することによって、前記第2ノードから前記第1電源を介した前記第1ノードの電位を調整する、又は、
前記第2ノードを前記第3ノードに接続可能にするようにして前記第2ノードの電位を変更しており、
前記第1ノードと前記第4ノードとの間から取り出される出力電力は電動機に供給され、
前記第1電源および前記第2電源のうち、何れか一方が燃料電池スタックであり、何れか他方が二次電池であることを特徴とする電動車両用電源装置。
【請求項2】
前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを閉として前記第1ノードと前記第3ノードとを接続する第1接続状態と、
前記第1スイッチを閉かつ前記第2スイッチを開として前記第2ノードと前記第3ノードとを接続する第2接続状態と、
前記第1スイッチを開かつ前記第2スイッチを開として前記第3ノードと前記第1ノード及び前記第2ノードとを切り離す第3接続状態とを切り替え可能な切替手段を備え、
前記切替手段は、前記第3接続状態を経由して前記第1接続状態と前記第2接続状態とを切り替えることを特徴とする請求項1に記載の電動車両用電源装置。
【請求項3】
前記DC−DCコンバータは、前記第2接続状態と前記第3接続状態との接続切替時の時間的前後においてスイッチング動作を継続することを特徴とする請求項2に記載の電動車両用電源装置。
【請求項4】
前記第3ノードと前記第4ノードとの間に補機が接続されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1つに記載の電動車両用電源装置。
【請求項5】
前記DC−DCコンバータの低電圧側端子は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子は前記第1ノードに接続され、共通端子は前記第4ノードに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の電動車両用電源装置。
【請求項6】
前記DC−DCコンバータの低電圧側端子は前記第2ノードに接続され、高電圧側端子は前記第4ノードに接続され、共通端子は前記第1ノードに接続されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1つに記載の電動車両用電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−152080(P2012−152080A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10585(P2011−10585)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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