説明

電子キー及び個人別設定装置

【課題】電子キーの仕様を融通よく設定することができる電子キー及び個人別設定装置を提供する。
【解決手段】電子キー2にモーションセンサ21を搭載し、電子キー2を設定回数振ることにより電子キー2の仕様を設定する。電子キー2の仕様は、電子キー2の振り回数に応じて設定される。電子キー2が車両1とワイヤレス通信するとき、電子キー2の仕様情報Sbsを車両1に通知して、車両環境を電子キー2の仕様に応じたものに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線により識別信号を通信対象に送信してID照合する電子キー及び個人別設定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの車両には、電子キーからIDコードを無線により車両に送信してID照合を行う電子キーシステムが搭載されている。一般的な電子キーは、ユーザに合わせて電子キーの仕様(使用設定)を切り換える個人設定機能がなく、全ユーザで共通のキーとなっている。そこで、特許文献1には、生体情報によって電子キーのユーザを特定し、ユーザに応じて電子キーの仕様を切り換えることが可能な電子キーが開示されている。このため、電子キーのユーザに合わせて、車内環境をユーザごとに切り換え可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2002−516937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術は、電子キーに個人設定機能を設けるものではあるが、ユーザ登録した者しか電子キーを使用することができない。よって、電子キーに使用登録していない者が、緊急のときなどに車両を動かそうとしても、車両を操作することができない状況に陥る。また、1人のユーザが電子キーに複数の仕様を登録しておき、その時々の状況に応じて仕様を使い分けたい要望もあった。
【0005】
本発明の目的は、電子キーの仕様を融通よく設定することができる電子キー及び個人別設定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明では、無線により識別信号を通信対象に送信してID照合する電子キーにおいて、キー本体に加わる外力を検出するモーションセンサと、
前記モーションセンサの検出信号を基に、前記電子キーの仕様を、前記キー本体に加えられた外力に応じたものに設定する仕様設定手段とを備え、キー使用の前に当該仕様の設定を済ませ、この仕様設定完了後に前記電子キーの使用に入ることを要旨とする。
【0007】
この構成によれば、電子キーにモーションセンサを搭載し、電子キーを例えば振ったり回したりしたときの動きをモーションセンサで検出して、電子キーの仕様を動きに応じて変更する。このため、1つの電子キーを複数のユーザ間で使い分けることが可能となるので、1つの電子キーを複数ユーザの共通キーとして使用することが可能となる。よって、ユーザごとにそれぞれ個別の電子キーを用意する必要がないので、電子キーの管理が楽になる。
【0008】
また、本例の電子キーは電子キーを振ったり回したりすることで仕様変更するものであるため、仮に第三者に電子キーを貸し渡しても、電子キーはそのまま使用可能である。よって、車両を第三者に貸し出したいときも、新たな登録作業を課すことがないので、車両貸出時に面倒さが生じない。また、1人のユーザが電子キーに複数の仕様を設定しておくことも可能となるので、電子キーの利便性がよくなる。
【0009】
本発明では、前記モーションセンサは、前記キー本体に加わる前記外力として、傾き、振動、加速度又は角速度を検出するものであることを要旨とする。
この構成によれば、例えば傾き、振動、加速度、角速度等を操作機能変更のパラメータとしたので、例えば電子キーを傾けたり振ったりする自然な操作によって、操作手段の操作機能を切り換えることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記仕様設定手段により設定された前記仕様が何であるのかを前記キー本体において通知する通知手段を備えたことを要旨とする。
この構成によれば、電子キーに設定中の仕様が何であるのかを、通知手段によってユーザに知らせることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記仕様設定手段は、前記電子キーに外力が与えられて仕様が設定された後、ある特定の操作態様が実行されると、該設定を確定することを要旨とする。
この構成によれば、ある特定の操作態様を行うというユーザ意志がないと設定が確定されないので、電子キーの仕様を設定するときに誤設定が生じ難くなる。
【0012】
本発明では、前記通信対象とID照合するとき、前記仕様設定手段により設定された前記仕様が何であるのかを、仕様情報として前記通信対象に送信する送信手段を備え、前記通信対象は、前記電子キーから受信した前記仕様情報を基に、自身に登録された個人設定情報を読み出し、当該個人設定情報により自身の環境を設定することを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、電子キーが通信対象と通信を行うとき、電子キーは記号的な仕様情報を通信対象に送信することで、自らに登録された仕様を通信対象に通知する。そして、通信対象は、電子キーから受信した仕様情報を基に電子キーの仕様を把握し、自身に登録された個人設定情報を読み出して、通信対象の環境を電子キーの仕様に応じたものに設定する。よって、電子キーから個人設定情報を通信対象に直接送信せずに済むので、信号のデータ量を少なく抑えることが可能となる。このため、電子キーの送信負荷を軽くすることが可能となる。
【0014】
本発明では、電子キーから無線により識別信号を通信対象に送信して、当該電子キーをID照合する電子キーシステムに使用される個人別設定装置において、前記電子キーに加わる外力を検出するモーションセンサと、前記モーションセンサの検出信号を基に、前記電子キーの仕様を、前記電子キーに加えられた外力に応じたものに設定する仕様設定手段とを備え、前記電子キーの使用の前に当該仕様の設定を済ませ、この仕様設定完了後に前記電子キーの使用に入ることを要旨とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子キーの仕様を融通よく設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施形態の個人別設定装置の構成図。
【図2】振り回数と仕様とが対応付けられたテーブル。
【図3】仕様と個人設定情報とが対応付けられたテーブル。
【図4】電子キーを1回振って仕様を設定するときの動作遷移図。
【図5】電子キーを2回振って仕様を設定するときの動作遷移図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した電子キー及び個人別設定装置の一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、電子キー2と無線によりID照合を実行する電子キーシステム3が搭載されている。電子キー2は、無線により車両1にIDコードを送信するキーである。電子キーシステム3には、車両1側からの通信をトリガとしてID照合を実行するキー操作フリーシステムと、電子キー2側からの通信をトリガとしてID照合を実行するワイヤレスキーシステムとがある。なお、車両1が通信対象に相当する。
【0018】
この場合、車両1には、ID照合装置4、ドアロック装置5及びエンジン始動装置6が設けられ、これらが車内のバス7を介して接続されている。ID照合装置4には、ID照合装置4のコントロールユニットとして照合ECU8が設けられている。照合ECU8のメモリ9には、電子キー2のIDコードが登録されている。照合ECU8には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外発信機10と、車内にLF電波を送信可能な車内発信機11と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信可能な車両チューナ12とが接続されている。
【0019】
電子キー2には、電子キー2の動作を管理するキー制御部13が設けられている。キー制御部13のメモリ14には、電子キー2のIDコードが登録されている。キー制御部13には、LF電波を受信可能なLF受信機15と、UHF電波を送信可能なUHF送信機16とが接続されている。電子キー2には、電子キー2の電源として電池17が搭載されている。
【0020】
電子キー2が車外に位置するとき、車外発信機10は、ID返信要求として車外にリクエスト信号Srqを断続的に送信する。電子キー2がリクエスト信号Srqの通信エリアに進入すると、電子キー2が待機状態から起動し、ID信号Sidを車両1に送信する。そして、車外の電子キー2と車両1との間でID照合、いわゆる車外照合が成立すると、ドアロック装置5による車両ドアのドアロック施解錠が許可又は実行される。
【0021】
ユーザの乗車が例えば車両1のカーテシスイッチ(図示略)により検出されると、車外発信機10に代えて、今度は車内発信機11からリクエスト信号Srqが送信される。そして、車内の電子キー2と車両1との間でID照合、いわゆる車内照合が成立すると、エンジンスイッチ18によるエンジンの始動操作が許可される。
【0022】
また、電子キー2には、ワイヤレス通信用の操作ボタン(以下、ワイヤレス操作ボタンと記す)19が設けられている。ワイヤレス操作ボタン19には、例えば車両1のドアロックを施解錠するときに操作する施解錠ボタンがある。電子キー2でこのワイヤレス操作ボタン19が操作されると、電子キー2からワイヤレス信号Swlが送信される。このワイヤレス信号Swlには、IDコードと、ワイヤレス操作ボタン19の機能コードとが含まれる。照合ECU8は、車両チューナ12でワイヤレス信号Swlを受信すると、ID照合(ワイヤレス照合)を実行し、照合が成立すると、ドアロック装置5にドアロック施解錠を実行させる。なお、ID信号Sid、ワイヤレス信号Swlが識別信号を構成する。
【0023】
本例の電子キーシステム3には、電子キー2を振ることにより電子キー2の仕様を設定する個人別設定装置20が設けられている。個人別設定装置20は、電子キー2の振り回数に応じた仕様に電子キー2の仕様を設定する。例えば、1回の振り操作の場合、電子キー2が仕様Aに設定され、2回の振り操作の場合、電子キー2が仕様Bに設定される。
【0024】
この場合、電子キー2には、キー本体2aに加わる動きを検出するモーションセンサ21が設けられている。モーションセンサ21は、例えば傾斜センサ、振動センサ、加速度センサ、角速度センサ、荷重センサ等が使用される。本例のモーションセンサ21は、電子キー2の動き方向をX−Y−Z方向の3次元で検出し、その動き方向と動き量とを検出信号としてキー制御部13に出力する。
【0025】
キー制御部13のメモリ14には、電子キー2の振り回数と仕様とが対応付けられたテーブル22が登録されている。図2に示すように、テーブル22は、振り回数が1回なら仕様A、振り回数が2回なら仕様Bというように、振り回数に応じて仕様が一義的に設定されている。振り回数が一巡すると、仕様は先頭の仕様Aに復帰する。なお、テーブル22が仕様設定手段を構成する。
【0026】
キー制御部13には、モーションセンサ21の検出信号を基にテーブル22を参照して電子キー2の仕様を設定する仕様設定部23が設けられている。仕様設定部23は、モーションセンサ21から検出信号を基に電子キー2の振り回数を把握し、その振り回数を基にテーブル22を参照して、電子キー2の仕様を、電子キー2の振り回数に応じた仕様に設定する。また、仕様設定部23は、電子キー2が振り操作されることで仕様が設定された後、電子キー2においてボタン操作(ここでは、どのボタンでも可)が実行されると、設定を確定する。これにより、電子キー2が振り回数に応じた機能を持つキーとなる。なお、仕様設定部23が仕様設定手段を構成する。
【0027】
電子キー2には、電子キー2の仕様を切り換えるときの動作状態をユーザに通知する通知部24が設けられている。通知部24は、例えばLEDが使用され、キー制御部13に接続されている。また、電子キー2には、例えば液晶画面からなるディスプレイ25が設けられている。キー制御部13には、通知部24やディスプレイ25の動作を管理する通知制御部26が設けられている。通知制御部26は、電子キー2の仕様が変更される度に通知部24を点灯(点滅)させる。また、通知制御部26は、電子キー2に現在設定中の仕様をディスプレイ25に画面表示する。なお、通知部24、ディスプレイ25及び通知制御部26が通知手段を構成する。
【0028】
キー制御部13には、電子キー2に設定された仕様をID照合時に車両1に通知する送信実行部27が設けられている。送信実行部27は、ID信号Sidやワイヤレス信号Swlを送信するとき、これら信号に、電子キー2に設定済みとなっている仕様が何であるのかを通知する仕様情報Sbsを付加して車両1に送信する。仕様情報Sbsは、単なる記号的な情報である。なお、送信実行部27が送信手段に相当する。
【0029】
照合ECU8のメモリ9には、電子キー2の仕様と具体的な個人設定情報Kとを対応付けたテーブル28が登録されている。ここで、個人設定情報Kとは、例えばシート位置、ハンドル位置、選択音楽等の、ユーザが個別に設定した固有情報である。図3に示すように、テーブル28には、電子キー2にて選択可能な各仕様と、それぞれの仕様の具体的な設定内容である個人設定情報Kとが、それぞれ対応付けられている。例えば、仕様Aには、個人設定情報Kaが登録され、仕様Bには、個人設定情報Kbが登録されている。なお、テーブル28が仕様設定手段を構成する。
【0030】
照合ECU8には、電子キー2から通知された仕様情報Sbsを基に車内環境を設定する車両環境設定部29が設けられている。車両環境設定部29は、電子キー2から送信された仕様情報Sbsを車両チューナ12で受信すると、テーブル28を参照して、取得した仕様情報Sbsに応じた個人設定情報Kを割り出す。そして、車両環境設定部29は、車内環境が個人設定情報Kに応じた状態をとるように、車内の各ECUに指令を出力する。なお、車両環境設定部29が仕様設定手段を構成する。
【0031】
次に、本例の個人別設定装置20の動作を、図4及び図5に従って説明する。
本例の場合、電子キー2の仕様は、仕様Aを初期状態とし、仕様がAから他に変更されたとき、仕様変更後から一定時間が経過すれば、自動で仕様がAに戻ることとする。よって、最初は、電子キー2の仕様がAに設定されていることを条件に話を進める。なお、初期状態のときにとる仕様は、必ずしもAである必要はなく、例えば仕様の使用回数(使用頻度)を逐次計数して、最も使用頻度の多いものが初期状態の仕様として設定されてもよい。
【0032】
電子キー2の仕様を初期状態のAから他の仕様に変更するには、設定したい仕様に応じた数だけ電子キー2を振る。例えば、電子キー2の仕様をAからBにしたいときは、図4に示すように、例えば電子キー2を1回振る。なお、電子キー2の振り方向は、右左問わない。
【0033】
このとき、仕様設定部23は、モーションセンサ21からの検出信号を基に、このときの電子キー2の振り回数が1回であることを把握する。そして、仕様設定部23は、テーブル22を参照して振り回数1回に対応した仕様を読み出し、この仕様に電子キー2の仕様を設定する。ここでは、電子キー2を1回振った場合を想定しているので、電子キー2の仕様がBに変更される。
【0034】
通知制御部26は、電子キー2の振り操作時に電子キー2の仕様が切り換わると、通知部24を点灯(点滅)させる。また、通知制御部26は、現在設定中の仕様が何であるのかをディスプレイ25で通知する。このとき、ディスプレイ25には、例えば「現在の仕様は「B」です。」などのメッセージが表示される。よって、電子キー2に設定中の仕様が何であるのかが分かる。
【0035】
電子キー2の仕様をBに切り換えた後、例えばワイヤレス操作ボタン19が押圧操作されたとする。このとき、送信実行部27は、電子キー2の仕様がBであることを通知する仕様情報Sbsをワイヤレス信号Swlに付加して、ワイヤレス信号SwlをUHF送信機16から送信させる。仕様情報Sbsは、単なる記号情報であるので、例えば数ビットのデータから構築される。
【0036】
車両1が車両チューナ12でワイヤレス信号Swlを受信すると、車両環境設定部29は、ワイヤレス信号Swl内に含まれる仕様情報Sbsを読み取り、電子キー2の仕様がBであることを確認する。車両環境設定部29は、電子キー2の仕様を把握すると、テーブル28を参照して、仕様Bに対応した個人設定情報Kbを読み出す。そして、車両環境設定部29は、読み出した個人設定情報Kbに基づく指令を他のECUに出力し、仕様Bに応じたシート位置、ハンドル位置、音楽等に設定させる。
【0037】
また、電子キー2の仕様をAからCに変更するときには、図5に示すように、電子キー2を連続して2回振る。このとき、仕様設定部23は、電子キー2が1回振られた時点で電子キー2の仕様をBに切り換えるとともに、もう1回振られた時点で電子キー2の仕様をCに切り換える。
【0038】
通知制御部26は、電子キー2の仕様が切り換わる度に通知部24を点灯させるので、電子キー2の仕様がBに切り換わったときと、Cに切り換わったときとで、それぞれ通知部24を点灯させる。つまり、電子キー2の仕様がA→B→Cに切り換わる過程で、合計2回点灯する。また、通知制御部26は、電子キー2の仕様がCに切り換わったとき、ディスプレイ25にそのことをメッセージ表示する。
【0039】
電子キー2の仕様をCに切り換えた後、例えばワイヤレス操作ボタン19が押圧操作されたとすると、送信実行部27は、電子キー2の仕様がCであることを通知する仕様情報Sbsをワイヤレス信号Swlに付加して、ワイヤレス信号SwlをUHF送信機16から送信させる。車両環境設定部29は、仕様情報Sbsから電子キー2の仕様を把握すると、テーブル28を参照して、仕様Cに対応した個人設定情報Kcを読み出す。そして、車両環境設定部29は、読み出した個人設定情報Kcに基づく指令を他のECUに出力し、仕様Cに応じたシート位置、ハンドル位置、音楽等に設定させる。
【0040】
なお、ここでは、電子キー2の仕様をA→B→Cに変更した例を説明したが、仕様を以降の状態に変更するときも実質的な動作は同じであるので、説明は省略する。また、ここでは、ワイヤレス通信の動作態様を説明したが、スマート通信も実質的な動作は同じであるので、これについても説明を省略する。
【0041】
以上により、本例においては、電子キー2にモーションセンサ21を搭載し、電子キー2を設定回数振ることにより、電子キー2の仕様を切り換え可能とした。このため、1つの電子キー2に複数ユーザの仕様を登録しておき、電子キー2を特定回数振ることによって、特定の1仕様を選択することにより、電子キー2を各ユーザ固有のキーとして仕様することが可能となる。よって、1つの電子キー2を複数ユーザが共通して使用することが可能となるので、管理する電子キーの個数が少なく済む。
【0042】
また、電子キー2の個人設定は単に電子キー2を振るだけの操作であるので、正規ユーザのみならず、例えば他人でも電子キー2を使用可能である。よって、例えば緊急時に第三者に車両1を動かして欲しいときにも、これに対応することが可能となる。さらに、1ユーザが複数の仕様を電子キー2に登録しておくことも可能となるので、電子キー2の使い勝手がよくなる。以上のことから、本例は電子キー2の仕様を融通よく切り換えることが可能となる。
【0043】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)電子キー2にモーションセンサ21を搭載し、電子キー2を設定回数振ることにより電子キー2の仕様を設定し、電子キー2で車両1とワイヤレス通信するとき、電子キー2の仕様情報Sbsを車両1に通知して、車両環境を電子キー2の仕様に応じたものに設定する。よって、電子キー2を手元で振ることにより電子キー2の仕様を切り換えるので、電子キー2の仕様を融通よく切り換えることができる。
【0044】
(2)電子キー2の仕様を手元において切り換え、電子キー2の仕様が決まった後、電子キー2のワイヤレス操作ボタン19を押し操作することにより車両1とワイヤレス通信する。よって、手元で電子キー2の仕様を確認してから、実際のワイヤレス通信に移行するので、設定間違いのまま通信してしまう状況を防止することができる。
【0045】
(3)電子キー2のディスプレイ25に設定中の仕様を表示可能であるので、電子キー2の利便性を向上することができる。
(4)電子キー2を振って仕様を設定した際、ボタン操作を行うことで、設定した機能が確定される。よって、ボタン操作というユーザ意志があって初めて設定が確定されるので、電子キー2の機能を設定するときに誤設定を生じ難くすることができる。
【0046】
(5)電子キー2が車両1とワイヤレス通信するとき、電子キー2は単なる記号的な仕様情報Sbsを車両1に送信することで、自らに登録された仕様を車両1に通知する。そして、車両1は、この仕様情報Sbsを基にテーブル28を参照して仕様情報Sbsに応じた個人設定情報Kを読み出し、この個人設定情報Kを基に車両環境を設定する。よって、電子キー2から車両1に個人設定情報Kを直接送信せずに済むので、信号のデータ量を少なく抑えることができる。このため、電子キー2の送信負荷を軽く済ませることができる。
【0047】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・電子キー2を設定回数振ったとき、電子キー2の仕様が省電力モードに入るようにしてもよい。省電力モードは、例えば電子キー2が待機状態(スリープ状態)に入るモードである。電子キー2が省電力モードに入ったときは、その旨をディスプレイ25に表示してユーザに通知する。また、電子キー2を通常モードに復帰させるには、利便性を落とさないように、電子キー2を何度も振動させることを条件とする。
【0048】
・ワイヤレス操作ボタン19は、ドアロック施解錠用の他に、例えばパワースライドドア開閉用、テールゲート開閉用、トランク開閉用、窓ガラス開閉用などがでもよい。もちろん、これら以外の種類を採用してもよい。
【0049】
・個人設定情報Kは、シート位置、ハンドル位置、選択音楽の情報に限定されない。例えば、エンジンスタータの暖気時間や、車内空調の設定温度や風向き等でもよい。
・テーブル22,28は、固定値に限らず、書き換え可能としてもよい。
【0050】
・電子キー2を振り操作した後の設定確定は、電子キー2上のボタンを操作することに限定されない。例えば、電子キー2を振り操作した際、振った後の傾き状態を一定時間保つことにより、設定が確定するものでもよい。
【0051】
・通知手段は、ディスプレイ25や通知部24に限定されず、設定中の仕様を通知できれば、どのようなものを採用してもよい。
・通知部24は、LEDに限らず、ブザーやスピーカでもよい。
【0052】
・電子キー2は、仕様が必ずしも初期状態に戻ることに限定されず、設定中の仕様が保持されるものでもよい。
・モーションセンサ21は、3次元対応のものに限定されず、動きを2次元で検出するものでもよい。
【0053】
・モーションセンサ21は、実施形態で述べた種類のものに限定されず、電子キー2に加わる外力を検出可能であれば、何を使用してもよい。
・モーションセンサ21は、センサ類に限らず、例えば機械的なスイッチでもよい。
【0054】
・電子キー2の仕様を変更するときにユーザに課す操作は、電子キー2を振ることに限定されない。例えば、電子キー2を回したり叩いたりするなど、電子キー2に所定の外力を加える操作であれば何でもよい。
【0055】
・電子キー2から車両1に個人設定情報Kを直接送信してもよい。
・キー操作フリーシステムは、往路がLFで復路がUHFに限定されない。例えば、往路復路の両方ともUHFとしてもよい。また、使用周波数は、LFやUHFに限定されず、HF(High Frequency)等の他の周波数を使用してもよい。
【0056】
・電子キー2を仕様変更モードに切り換える専用スイッチ(操作手段)を設け、この専用スイッチを操作してから電子キー2を振るなどして、電子キー2の仕様を設定してもよい。
【0057】
・ワイヤレス通信は、電子キー2から車両1にのみ電波が送信される単方向に限定されず、電子キー2と車両1とが信号をやり取りする双方向も含む。
・操作ボタン19は、モーメンタリ式のプッシュボタンに限定されず、他の形式のものに変更可能である。
【0058】
・本例の電子キー2は、車両1に適用されることに限らず、他の装置に採用可能である。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0059】
(イ)請求項1〜5のいずれかにおいて、前記モーションセンサの検出信号を基に、前記キー本体を省電力モードに設定する省電力処理手段を備えた。この構成よれば、電子キーの電源を有効に使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1…通信対象としての車両、2…電子キー、2a…キー本体、3…電子キーシステム、20…個人別設定装置、21…モーションセンサ、22…仕様設定手段を構成するテーブル、23…仕様設定手段を構成する仕様設定部、24…通知手段を構成する通知部、25…通知手段を構成するディスプレイ、26…通知手段を構成する通知制御部、27…送信手段としての送信実行部、28…仕様設定手段を構成するテーブル、29…仕様設定手段を構成する車両環境設定部、Sid…識別信号を構成するID信号、Swl…識別信号を構成するワイヤレス信号、Sbs…仕様情報、K(Ka,Kb,Kc)…個人設定情報、A〜C…仕様。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線により識別信号を通信対象に送信してID照合する電子キーにおいて、
キー本体に加わる外力を検出するモーションセンサと、
前記モーションセンサの検出信号を基に、前記電子キーの仕様を、前記キー本体に加えられた外力に応じたものに設定する仕様設定手段とを備え、
キー使用の前に当該仕様の設定を済ませ、この仕様設定完了後に前記電子キーの使用に入る
ことを特徴とする電子キー。
【請求項2】
前記モーションセンサは、前記キー本体に加わる前記外力として、傾き、振動、加速度又は角速度を検出するものである
ことを特徴とする請求項1に記載の電子キー。
【請求項3】
前記仕様設定手段により設定された前記仕様が何であるのかを前記キー本体において通知する通知手段を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電子キー。
【請求項4】
前記仕様設定手段は、前記電子キーに外力が与えられて仕様が設定された後、ある特定の操作態様が実行されると、該設定を確定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の電子キー。
【請求項5】
前記通信対象とID照合するとき、前記仕様設定手段により設定された前記仕様が何であるのかを、仕様情報として前記通信対象に送信する送信手段を備え、
前記通信対象は、前記電子キーから受信した前記仕様情報を基に、自身に登録された個人設定情報を読み出し、当該個人設定情報により自身の環境を設定する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の電子キー。
【請求項6】
電子キーから無線により識別信号を通信対象に送信して、当該電子キーをID照合する電子キーシステムに使用される個人別設定装置において、
前記電子キーに加わる外力を検出するモーションセンサと、
前記モーションセンサの検出信号を基に、前記電子キーの仕様を、前記電子キーに加えられた外力に応じたものに設定する仕様設定手段とを備え、
前記電子キーの使用の前に当該仕様の設定を済ませ、この仕様設定完了後に前記電子キーの使用に入る
ことを特徴とする個人別設定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−46984(P2012−46984A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190787(P2010−190787)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】