説明

電子データ格納装置、プログラム及び方法

【課題】外部のダウンロード先に電子データのダウンロードする際のセキュリティを向上させる。
【解決手段】電子データとしての印刷文書を格納する印刷文書格納サーバ24では、格納者クライアント12,14から印刷文書の格納を受け付けると、印刷文書を格納するとともに、A文字列生成部26でこの印刷文書を識別するための暗号データであるA文字列を生成し、格納者クライアントに送信する。携帯電話42を所有する印刷実施者は、格納者クライアントからA文字列を受け取り、店舗内プリンタ52や企業内プリンタ62等に送信する。これらのプリンタは、受信したA文字列を印刷文書格納サーバに送信し、A文字列認証部28によって正当なA文字列であるとの認証を受けると、対応する印刷文書を受け取って印刷を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダウンロードの対象となる電子文書を格納する技術、特に、格納する電子文書を安全に管理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
外出先などの外部環境下において、印刷文書の印刷を行いたい場合がある。下記特許文献1には、ノートパソコンに携帯電話を接続し、携帯電話の回線網から画像形成装置に印刷させる技術が開示されている。下記特許文献2には、携帯電話からサーバに格納されている印刷文書を赤外線等で画像形成装置に送信し、印刷させる技術が開示されている。下記特許文献3には、電子メールに印刷文書を添付して送信し、印刷を行う技術が開示されている。下記特許文献4には、電子メールを通じて印刷ジョブを制御する技術が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−108469号公報
【特許文献2】特開2002−366314号公報
【特許文献3】特開2001−084191号公報
【特許文献4】特開2003−202970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1乃至4の技術では、外部の画像形成装置と通信する過程におけるセキュリティの確保に不安な部分があった。また、不特定ユーザなど多数のユーザに対し簡易に印刷を行わせることが難しかった。なお、このような問題は、画像形成装置に印刷文書を印刷させる場合だけでなく、各種の電子データをダウンロードする場合にも生じる。
【0005】
本発明の目的は、外部のダウンロード先に電子データのダウンロードする際のセキュリティを向上させることにある。
【0006】
本発明の別の目的は、多数のユーザが各ダウンロード先に電子データをダウンロードするための仕組みを効率化することにある。
【0007】
本発明のさらに別の目的は、印刷文書を外部の画像形成装置に印刷するための新たなシステム構成を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電子データ格納装置は、電子データのアップロードを受け付ける電子データ入力手段と、アップロードされた電子データを格納する電子データ格納手段と、格納される電子データと対応づけて、この電子データにアクセスするための認証データを生成する認証データ生成手段と、生成された認証データを出力する認証データ出力手段と、ダウンロード先を特定する特定データとともに認証データを入力する認証データ入力手段と、入力された認証データを認証する認証手段と、認証成功の場合に、特定データにより特定されるダウンロード先に、認証データに対応づけられた電子データをダウンロードする電子データ出力手段と、を備える。
【0009】
この電子データ格納装置は、電子データを格納するサーバとして機能する装置である。電子データ格納装置は、ワークステーション、PC(パーソナルコンピュータ)、複合機(プリンタ、スキャナ、ファクシミリなどが搭載された装置)など、演算・記憶機能を備えたハードウエアとその動作を規定するソフトウエアを用いたコンピュータによって構築することができる。電子データ格納装置における各種手段は、一つのハードウエアを用いた集中処理により実現されてもよいし、通信可能な複数のハードウエアを用いた分散処理により実現されてもよい。
【0010】
電子データ入力手段は、アップロードされる電子データを受け付ける手段である。ここで、アップロードとは、ネットワークを通じて、クライアントとしてのアップロード元がもつ電子データをサーバとしての電子データ格納装置に転送することをいう。また、ダウンロードとは、逆に、電子データ格納装置から、クライアントとしてのダウンロード先に電子データを転送することをいう。電子データは、電子的に生成されたデータであるが、ここでは、特に、文書、音楽、動画、プログラムなどのように格納して管理する価値があるデータであることを想定している。電子データのアップロード元は、典型的には、有線あるいは無線のネットワークを通じて通信される装置であるが、専用ケーブルや無線を通じて直接通信される装置であってもよい。電子データ格納手段は、電子データ入力手段により入力された電子データを半導体メモリやハードディスクなどの記憶装置に格納する。認証データ生成手段は、電子データ格納手段が格納する電子データにアクセスするための認証データを生成する。認証データは、きめ細かなアクセス制御を行う観点からは電子データ毎に作成されることが望ましいが、アクセス制御を簡易化する観点からは複数の電子データに対し共通のものが作成されてもよい。認証データ出力手段は、認証データ生成手段により生成された認証データを他の装置に対して出力する。
【0011】
認証データ入力手段は、ダウンロード先を特定する特定データとともに、認証データを入力する。ダウンロード先は、電子データのダウンロードを行うクライアントとして動作する装置である。ダウンロード先は、単体のハードウエアからなっていてもよいし、通信可能に接続された複数のハードウエアからなっていてもよい。ダウンロード先の例としては、画像形成装置、PC、携帯電話、携帯音楽プレーヤなど様々な装置を挙げることができる。特定データとは、電子データ出力手段における電子データの出力先を明示するデータである。また、入力する認証データは、簡単には、認証データ出力手段で出力する認証データと同一のものとすればよいが、ダウンロード先で加えられた付加データを含むなど、出力した認証データと異なるものであってもよい。さらに、特定データ及び認証データの入力元は、認証データ出力手段による認証データの出力先と同じであっても異なっていてもよいし、あるいは、特定データにより特定されるダウンロード先と同じであっても異なっていてもよい。
【0012】
認証手段は、入力された認証データに対する認証処理を行い、認証の成功・不成功を判断する。認証処理は、例えば、認証データ生成手段で生成した認証データと対比したり、認証データ生成手段での認証データ生成に対応するアルゴリズムで演算処理したりして行われる。電子データ出力手段は、認証手段による認証が成功した場合に、生成された認証データに対応づけられた電子データを、特定データにより特性されるダウンロード先に出力する。
【0013】
この構成によれば、電子データ格納装置は、正当な認証データを入力したダウンロード先に対して電子データをダウンロードする。ゆえに、ユーザの側では、自身で電子データを保持していなくても、正当な認証データを適切に管理しておき、ダウンロード時に電子データ格納装置へ送信すれば、電子データをダウンロードすることができる。しかも、電子データ格納装置は、認証データを認証するため、ダウンロードの安全性が確保される。また、認証データは、複数のユーザに持たせることもできるため、複数のユーザに電子データを配布するような場合にも簡単に対応することができる。
【0014】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、認証データ生成手段は、格納される電子データ毎に、その電子データを一意に識別できる認証データを生成する。これにより、各電子データに対するセキュリティを向上させることができる。また、この認証データを用いると、認証データの入力元から電子データを識別する情報を入力しなくても、ダウンロードの対象となる電子データが識別されることになる。つまり、電子データ格納装置に対する指示内容が簡略化できることとなる。
【0015】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、認証データ生成手段は、電子メール本体で送信可能な文字列からなる認証データを生成する。電子メール本体で送信可能とは、添付することなく送信可能であることをいう。具体的には、テキスト形式の文字列などを挙げることができる。
【0016】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、認証データ出力手段は、生成された認証データを電子メールで出力する。電子メールは、広く普及している通信手段であり、例えば出力先が携帯電話であっても送信可能となる。認証データ出力手段が認証データを電子メールで出力する場合には、認証データ入力手段においても、認証データを電子メールで入力できるようにすることが望ましい。なお、言うまでもないが、アップロード元やダウンロード先を含む外部装置と電子データ格納装置との間の通信には、httpやftpなど、電子メール以外の通信プロトコルを採用することも可能である。
【0017】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、認証データ生成手段は、暗号化手段を備え、暗号化手段により暗号化された認証データを生成する。この場合、認証手段では、暗号化された認証データを入力すると、必要に応じて復号化を行い、その後に認証処理を実施する。また、本発明の電子データ格納装置の一態様においては、暗号化手段は、当該電子データ格納装置のみが復号化可能な鍵で暗号化を行う。この態様においては、電子データ格納装置以外では認証データを復号化できないため、セキュリティを向上させることができる。なお、鍵は、固定された値である必要はなく、ワンタイムパスワードであってもよい。
【0018】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、認証データ出力手段は、生成された認証データを対応する電子データのアップロード元に出力する。また、本発明の電子データ格納装置の一態様においては、認証データ出力手段は、生成された認証データを設定された相手方に出力する。後者の態様をとる場合、例えば、仕事上の繋がりがある第三者や、メールマガジンの購読者などの第三者などに電子データをダウンロードさせることが可能となる。
【0019】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、電子データ入力手段は、電子データのアップロード元から入力されるパスワードも受け付け、認証データ入力手段は、認証データの入力元から入力されるパスワードも受け付け、当該電子データ格納装置は、入力した両パスワードに基づいて、入力元の認証を行う。両パスワードは同じであっても、対応関係にある異なるものであってもよい。パスワードによる認証も加わることで、一層セキュリティが高められる。なお、この態様の下、格納する電子データのセキュリティを確保するために、電子データのアップロード元から入力されるパスワードで、電子データを暗号化し、認証データの入力元から入力したパスワードで、電子データを復号化することも有効である。また、この変形例として、当該電子データ格納装置でパスワードによる暗号化を行う代わりにアップロード元で暗号化したり、当該電子データ格納装置でパスワードによる復号化を行う代わりにダウンロード先で復号化したりする態様も考えられる。
【0020】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、さらに、電子データの利用に対し、課金を行う課金手段を備える。課金は、例えば、ダウンロード先のユーザや、アップロード元のユーザに対し直接行ってもよいし、予め設定されたり実行時に指示されたりした第三者に対して行ってもよい。
【0021】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、ダウンロードの対象となる電子データは印刷文書である。印刷文書は、印刷対象となる電子文書であり、文字、図形、画像などが、ベクトル形式やラスタ形式などの適当な形式で記載されたデータを指す。
【0022】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、ダウンロード先は、画像形成システムである。ここで、画像形成システムとは、印刷を行うプリンタ(画像形成装置)とその制御部とを含む装置である。画像形成システムは、プリンタ機能のみを備えた装置であってもよいし、スキャナ機能やファクシミリ機能も含む複合機などであってもよい。
【0023】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、認証データ入力手段は、ダウンロード先の画像形成システムから認証データを入力する。こうすることで、電子データ格納装置に対するユーザからの直接アクセスの必要性を無くし、電子データ格納装置の秘匿化や、電子データ格納装置への不正アクセスの防止を図ることが可能となる。
【0024】
本発明の電子データ格納装置の一態様においては、電子データ入力手段は、電子データのアップロード元から入力される印刷設定の指示データも受け付け、認証データ入力手段は、認証データの入力元から入力される印刷設定の指示データも受け付け、当該電子データ格納装置は、受け付けた両印刷設定の指示データに基づいて、採用すべき印刷設定の指示データを生成する指示データ生成手段を備え、電子データ出力手段は、生成された印刷設定の指示データも画像形成システムに出力する。印刷設定の指示データとは、両面印刷、N−up印刷、ステープル処理などの印刷制御指示をいう。なお、両指示データの内容が相容れないものである場合も考えられるため、例えば、指示データに優先順位をつけるなど、指示データを決定するアルゴリズムを定めておくことが望ましい。
【0025】
なお、上記本発明においては、電子データのアップロード過程もしくはダウンロード過程または認証データの出力過程もしくは入力過程などに対し、公開鍵暗号方式などを利用した暗号化技術やユーザ認証技術を導入して、通信セキュリティを一層向上させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本実施の形態にかかるシステム構成を説明する図である。図示した社内システム10は、ある会社に設けられたコンピュータ・ネットワークシステムである。社内システム10には、格納者クライアント12,14が設けられ、LAN20に接続されている。格納者クライアント12,14は、社外で印刷文書の印刷を行えるように設定を行う格納者が使用する装置であり、格納者が日常使用するPCなどを用いて構築される。LAN20には、さらに、メールサーバ22と印刷文書格納サーバ24が接続されている。メールサーバ22は、LAN20内、及びLAN20と外部とで電子メールを送受信する場合に使用されるサーバである。また、印刷文書格納サーバ24は、電子データたる印刷文書を格納して管理する装置であり、格納者クライアント12,14から電子メール等により印刷文書のアップロードを受け付けて内部に格納するとともに、外部のプリンタからの要求に基づいてこのプリンタに対し印刷文書をダウンロードさせる。つまり、印刷文書格納サーバ24は、社内システム10内における電子文書を、外部のプリンタに出力するための橋渡しをする。
【0027】
印刷文書格納サーバ24には、この過程で印刷文書のセキュリティを確保するべく、A文字列生成部26と、A文字列認証部28が設けられている。A文字列生成部26は、格納する印刷文書に対応するデータであって、内部に保持する鍵で暗号化した文字列データ(これをA文字列と呼ぶ)を作成するものである。作成されたA文字列は印刷文書格納サーバ24によって格納者クライアント12,14等に送信される。また、A文字列認証部28は、プリンタから受信したA文字列を認証し、このアクセスが正当化否かの確認を行うものである。すなわち、A文字列認証部28は、A文字列生成部26が生成したA文字列を所有するユーザからの要求であるか否かを認証して、アクセスの正当性を確認するのである。なお、印刷文書格納サーバ24は、格納する印刷文書の暗号化を行う機能なども備えている。
【0028】
社内システム10は、インターネットなどのWAN(Wide Area Network)30に接続されている。このWAN30には、携帯電話回線網40が接続されており、携帯電話42との間の通信が可能となっている。そこで、格納者クライアント12,14を操作する格納者は、プリンタを格納した後で受信するA文字列をメールサーバ22を介して携帯電話42をもつ印刷実施者にメール送信することができる。WAN30には、さらに、外部からのアクセス制限を行うファイヤーウォール50,60を介して、画像形成システムとしての店舗内プリンタ52と企業内プリンタ62がそれぞれ接続されている。店舗内プリンタ52は、コンビニエンスストアに置かれたプリンタであり、一般サービス用として用いられる。また、企業内プリンタ62は、他の会社や、ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)などに置かれたプリンタである。A文字列を受け取った印刷実施者は、A文字列を含む電子メールを店舗内プリンタ52や企業内プリンタ62に送信し、対応する印刷文書の印刷を行わせることができる。店舗内プリンタ52や企業内プリンタ62では、受信したA文字列を印刷文書格納サーバ24に送信して認証を受けた後、A文字列に対応する印刷文書をダウンロードして、その印刷を行う。
【0029】
次に、図2乃至図6の各図を参照しながら、図1に示したシステムを利用して印刷文書の印刷を行う処理について説明する。
【0030】
図2は、格納者クライアント12,14において行われる処理の流れを示すフローチャートである。格納者クライアント12,14では、まず、印刷対象となる印刷文書を用意する(S10)。印刷文書は、例えば、ワープロソフトや表計算ソフトを用いたり、紙文書をスキャンしたりして作成される。また、印刷文書の形式は特に限定されるものではないが、PDFのように多くのプリンタで利用できる形式であることが特に望ましい。
【0031】
続いて、格納者クライアント12,14では、格納時に印刷文書を暗号化するか否かを決定する(S12)。暗号化は、機密性の高い印刷文書に対して行うことが望ましく、他方、機密性の低い一般的な印刷文書(例えば、広告、カタログ、一般資料など)に対しては、必ずしも暗号化をせず簡易な処理を優先することも有効である。格納者は、暗号化を行わない場合には、印刷文書をそのまま印刷文書格納サーバ24に送信する。また、暗号化を行う場合には、暗号化のためのパスワードを入力して(S16)、このパスワードとともに印刷文書を印刷文書格納サーバ24に送信する(S18)。そして、印刷文書の印刷設定を指示した場合には、その指示も印刷文書格納サーバ24に送信する(S20)。ここで、印刷設定とは、両面印刷、ステープル処理、N−up印刷など、プリンタに対し実行時に指示する設定をいう。
【0032】
格納後、格納者クライアント12,14に対しては、印刷文書格納サーバ24から、A文字列が送信される(S22)。A文字列は、格納した印刷文書毎に作成される電子文書である。ここで、図3を用いて、A文字列の例について説明する。A文字列は、印刷文書を一意に特定する識別情報、印刷文書の格納位置の情報、印刷文書の暗号化の有無を示す情報などを、印刷文書格納サーバ24内に保持された鍵で暗号化することで作成される。図示したA文字列は、14文字×5行の70文字からなる文字列であり、各文字としては、数字(0〜9)及びアルファベット大文字(A−Z)・小文字(a−z)を重複を許して用いている。このA文字列は、電子メールの本文に記述可能であり、ゆえに電子メールを用いて送信することができる。
印刷文書格納サーバ24から格納した印刷文書を取り出すためには、このA文字列が必要となる。そこで、印刷実施者が格納者と異なる場合や、印刷実施者が格納者と同じであるが印刷に使用する端末が異なる場合には、格納者クライアント12,14からA文字列を含む電子メールが印刷実施者(の使用する装置)に送信される(S24)。電子メールには、印刷実施者に対する印刷方法の説明書きの他、もちろん、一般的なメッセージを記載することもできる。
【0033】
図4は、印刷文書格納サーバ24において行われる処理の流れを示すフローチャートである。印刷文書格納サーバ24では、格納者クライアント12,14から入力される印刷文書を受け付け(S30)、また、入力がある場合には暗号化のためのパスワードや印刷設定に関する指示も受け付ける。続いて、印刷文書格納サーバ24は、パスワードが入力されて暗号化が指示されたかを確認する(S32)。そして、暗号化の指示がない場合には、印刷文書を暗号化することなく適当な場所に格納し(S34)、この印刷文書に対するA文字列を作成する(S36)。他方、暗号化の指示がある場合には、印刷文書は入力したパスワードで暗号化された後に適当な場所に格納され(S38)、暗号化した旨の情報を含むA文字列が作成される(S40)。こうして作成されたA文字列は、印刷文書を入力した格納者クライアント12,14に電子メールにより送信される(S42)。なお、格納者クライアント12,14からA文字列の送信先を指定する指示を受けた場合に、その送信先に送信するようにすることも可能である。
【0034】
図5は、印刷実施者が携帯電話42を用いて行う処理の流れを示すフローチャートである。携帯電話42には、格納者クライアント12,14より、A文字列を含んだ電子メールが送信される(S50)。印刷実施者は、A文字列に対応する印刷文書を印刷したい場合、印刷を実施する画像形成装置(ここでは店舗内プリンタ52であるとする)の電子メールアドレスを携帯電話42に入力する(S52)。入力は、例えば、店舗内プリンタ52の周辺に電子メールアドレスが記載されているならば、ユーザがそれを手入力したり写真入力したりして行われる。続いて、印刷実施者は、A文字列と、実現したい印刷設定の指示とを含んだ電子メールを、携帯電話42上で作成する(S54)。印刷設定を標準設定のままとする場合には、印刷設定の指示を行う必要はない。また、A文字列には、印刷文書の情報が含まれているため、印刷実施者は、印刷文書を特定する他の情報を特に指定する必要はない。こうして作成された電子メールは、店舗内プリンタ52に送信される(S56)。
【0035】
店舗内プリンタ52(あるいは印刷文書格納サーバ24)の側で印刷文書が暗号化されており、復号化のためのパスワード入力が必要であると判断された場合には、その旨の通知が携帯電話42に行われ、印刷実施者は復号化パスワードを店舗内プリンタ52に送信する(S58,S60)。その後、印刷実施者は、印刷文書が印刷されるのを待ち(S62)、印刷された印刷文書を受け取る(S64)。なお、印刷時に印刷実施者が店舗内プリンタ52の前にいない場合には、印刷された印刷文書を他人に見られてしまうおそれがある。そこで、印刷のための前処理を済ませた後に処理を休止し、印刷実施者が店舗内プリンタ52の操作パネルから行う直接指示を待って、印刷を再開するようにしてもよい。
【0036】
図6は、画像形成装置としての店舗内プリンタ52と、印刷文書格納サーバ24における処理の流れを示すフローチャートである。店舗内プリンタ52では、印刷実施者が操作する携帯電話42からA文字列を含んだ電子メールを受信することで、印刷文書の印刷指示を受け付ける(S70)。そして、電子メール中のA文字列や、印刷設定の指示情報を取り出して(S72)、印刷文書格納サーバ24に送信する(S74)。
【0037】
印刷文書格納サーバ24では、送信されたA文字列を復号化して受け付け(S76)、内部データと照合することでその認証を行う(S78)。そして、認証に成功した場合には、A文字列が含む情報に基づいて、対応する印刷文書を検索する(S80)。また、印刷設定の指示がある場合には、格納時にこの印刷文書に設定された印刷設定の指示との調整を行って、採用すべき印刷指示を生成する。生成した印刷指示は、例えば、ジョブチケットと呼ばれる指示書として実現され、印刷文書と組み合わされて(S82)、店舗内プリンタ52に送信される(S84)。
【0038】
なお、印刷文書の送信時には課金処理が行われる。課金先は、典型的には、予め設定された支払先に対して行われる。支払先の例としては、印刷実施者もしくは印刷文書格納者、またはこれらの所属会社などを挙げることができる。課金先を、店舗内プリンタ52から入力される情報に基づいて動的に決定することも有効である。例えば、印刷文書が印刷される用紙の裏面に広告が記載される場合に、広告主の情報を印刷文書格納サーバ24に伝えることで、その広告主に課金することが可能となる。また、印刷文書格納サーバ24では、課金上の制限の観点あるいは不正アクセスやいたずらの防止の観点から、印刷文書の送信上限回数を超えている場合に、印刷文書を削除したり印刷禁止としたりする処理を行うことができる(S86)。
【0039】
店舗内プリンタ52では、印刷文書格納サーバ24から送信される印刷文書を受け付けると、この印刷文書が暗号化されているか否かを確認する(S90)。その結果、暗号化されている場合には、印刷実施者へ復号化パスワードの入力要求を行い(S92)、入力された復号化パスワードで印刷文書を復号化する(S94)。そして、店舗内プリンタ52は、印刷文書を用紙に印刷してその処理を終了する(S96)。
【0040】
以上の説明では、印刷文書を画像形成装置にダウンロードして、印刷する態様について示した。しかし、この技術は、様々な電子データをダウンロードする場合に、広く適用することが可能である。具体例としては、音楽データを携帯音楽プレーヤーにダウンロードする音楽配信システムや、動画データを携帯電話にダウンロードしたりする動画配信システムなどを挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施の形態にかかるシステム構成例を説明する図である。
【図2】格納者側の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】A文字列の例を示す図である。
【図4】印刷文書格納サーバ側の格納処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】印刷実施者側の流れを示すフローチャートである。
【図6】画像形成装置と印刷文書格納サーバにおける印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0042】
10 社内システム、12,14 格納者クライアント、20 LAN、22 メールサーバ、24 印刷文書格納サーバ、26 A文字列生成部、28 A文字列認証部、30 WAN、40 携帯電話回線網、42 携帯電話、50,60 ファイヤーウォール、52 店舗内プリンタ、62 企業内プリンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子データのアップロードを受け付ける電子データ入力手段と、
アップロードされた電子データを格納する電子データ格納手段と、
格納される電子データと対応づけて、この電子データにアクセスするための認証データを生成する認証データ生成手段と、
生成された認証データを出力する認証データ出力手段と、
ダウンロード先を特定する特定データとともに認証データを入力する認証データ入力手段と、
入力された認証データを認証する認証手段と、
認証成功の場合に、特定データにより特定されるダウンロード先に、認証データに対応づけられた電子データをダウンロードする電子データ出力手段と、
を備える、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
認証データ生成手段は、格納される電子データ毎に、その電子データを一意に識別できる認証データを生成する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
認証データ生成手段は、電子メール本体で送信可能な文字列からなる認証データを生成する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子データ格納装置において、
認証データ出力手段は、生成された認証データを電子メールで出力する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
認証データ生成手段は、暗号化手段を備え、暗号化手段により暗号化された認証データを生成する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電子データ格納装置において、
暗号化手段は、当該電子データ格納装置のみが復号化可能な鍵で暗号化を行う、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
認証データ出力手段は、生成された認証データを対応する電子データのアップロード元に出力する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
認証データ出力手段は、生成された認証データを設定された相手方に出力する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
電子データ入力手段は、電子データのアップロード元から入力されるパスワードも受け付け、
認証データ入力手段は、認証データの入力元から入力されるパスワードも受け付け、
当該電子データ格納装置は、入力した両パスワードに基づいて、入力元の認証を行う、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
さらに、電子データの利用に対し、課金を行う課金手段を備える、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電子データ格納装置において、
ダウンロードの対象となる電子データは印刷文書である、電子データ格納装置。
【請求項12】
請求項11に記載の電子データ格納装置において、
ダウンロード先は、画像形成システムである、電子データ格納装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電子データ格納装置において、
認証データ入力手段は、ダウンロード先の画像形成システムから認証データを入力する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項14】
請求項12に記載の電子データ格納装置において、
電子データ入力手段は、電子データのアップロード元から入力される印刷設定の指示データも受け付け、
認証データ入力手段は、認証データの入力元から入力される印刷設定の指示データも受け付け、
当該電子データ格納装置は、受け付けた両印刷設定の指示データに基づいて、採用すべき印刷設定の指示データを生成する指示データ生成手段を備え、
電子データ出力手段は、生成された印刷設定の指示データも画像形成システムに出力する、ことを特徴とする電子データ格納装置。
【請求項15】
コンピュータに対し、
電子データのアップロードを受け付ける電子データ入力手順と、
アップロードされた電子データを格納する電子データ格納手順と、
格納される電子データと対応づけて、この電子データにアクセスするための認証データを生成する認証データ生成手順と、
生成された認証データを出力する認証データ出力手順と、
ダウンロード先を特定する特定データとともに認証データを入力する認証データ入力手順と、
入力された認証データを認証する認証手順と、
認証成功の場合に、特定データにより特定されるダウンロード先に、認証データに対応づけられた電子データをダウンロードする電子データ出力手順と、
を実行させる、ことを特徴とする電子データ格納プログラム。
【請求項16】
コンピュータが実行する方法であって、
電子データのアップロードを受け付ける電子データ入力手順と、
アップロードされた電子データを格納する電子データ格納手順と、
格納される電子データと対応づけて、この電子データにアクセスするための認証データを生成する認証データ生成手順と、
生成された認証データを出力する認証データ出力手順と、
ダウンロード先を特定する特定データとともに認証データを入力する認証データ入力手順と、
入力された認証データを認証する認証手順と、
認証成功の場合に、特定データにより特定されるダウンロード先に、認証データに対応づけられた電子データをダウンロードする電子データ出力手順と、
を含む、ことを特徴とする電子データ格納方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−233846(P2007−233846A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−56497(P2006−56497)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】