説明

電子パッケージング

(A)一般式(1)(式中、R1〜R9は、それぞれ独立して、水素原子、1〜6個の炭素原子を有する非環状もしくは環状アルキル基、置換もしくは非置換フェニル基、またはハロゲン原子を表わす)と、(B)官能基数が2個以上の多官能性エポキシ化合物と、(C)フェノール性ヒドロキシル基を含有するエポキシ硬化剤とを含み、エポキシ化合物(A)の比率が、エポキシ化合物(A)および(B)の総質量に対して1〜99質量%であるエポキシ樹脂組成物であって、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面改質され、ボールミルによって構造改質された、熱分解法シリカを含有するエポキシ樹脂組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気・電子材料、とりわけ電気部品、例えば接着剤、塗料、絶縁材、および積層品を封止するために有用なエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
近年、半導体、例えばLSI、IC、トランジスタなどを封止するために、経済的に有用なエポキシ樹脂組成物のトランスファー成形が実施されている。
【0003】
特に、近年はLSIの表面実装が実施されており、はんだ槽への直接浸漬が増加している。この処理では封止材料が高温に曝されることから、封止材料に吸収された水分が膨張し、材料にクラックが形成され、ダイパットとの界面に剥離が生じる。
【0004】
そのため、エポキシ樹脂封止材は、低い吸湿性、高い耐クラック性、および改善された密着性を有することが求められている。さらに、低吸湿性を得るために、充填剤を高濃度で充填できる低粘度のエポキシ樹脂が望まれている。現状では、多官能性エポキシ樹脂としてo−クレゾールノボラックのグリシジルエーテルが使用され、硬化剤としてフェノールノボラックが使用された封止材料が主に用いられているが、この封止材料が保管時に水分を吸収すると、前述の問題が生じる。したがって、このような問題を回避する目的で、実用の際は、吸湿を防ぐために封止材料を梱包する。
【0005】
一方、現在使用されているビフェニル型エポキシ樹脂は、多官能性エポキシ樹脂よりも低い粘度を有し、多官能性エポキシ樹脂よりも高い濃度で充填剤を含有することが可能である。これは、ビフェニルエポキシ樹脂が二官能性エポキシ樹脂であり、低分子量を有するためである。したがって、ビフェニル型エポキシ樹脂に依存する吸湿性をパッケージ全体として低下させることができ、その強度を向上させることができる。その結果、o−クレゾールノボラックのグリシジルエーテルの形態のエポキシ樹脂と比較して、優れた耐クラック性を得ることが可能となる。しかしながら、ビフェニル型エポキシ樹脂は、多官能性エポキシ樹脂と比較すると、その硬化物の成形性が低いという問題を有する。
【0006】
また、この現用のビフェニル型エポキシ樹脂とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂とを組み合わせることによって、樹脂粘度を適切なレベルに維持しながら、成形性が改善される方法もある。しかしながら、ビフェニル型エポキシ樹脂とクレゾールノボラック型エポキシ樹脂との混合物は、溶融混合後に半固体状態(蜂蜜様の状態)になり、定型を有さず、このためこの樹脂の取扱性が不十分である。さらに、混合樹脂は、互いに接着しやすく、そのため大量の樹脂を取り扱う際に問題がある。
【0007】
一方、ビフェニル型エポキシ樹脂のものとクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のものとの中間の硬化能力を有する、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂が市販されている。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂には、融点が低く、互いに接着しやすいという問題があり、そのためこの樹脂は冷却して保存しなければならず、したがって上記と同様に、大量の樹脂を取り扱う際に問題がある。
【0008】
さらに、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂は、樹脂の単位質量当たりに含有するエポキシ基が少数であるため、その硬化および成形性が不十分であることがある。さらに、この樹脂は非反応性のジシクロペンタジエンから誘導された脂環式構造を有することから、硬化成形物の耐熱性も不十分なことがある。
【0009】
ビフェニル型二官能性エポキシ樹脂は、クレゾールノボラック型多官能性エポキシ樹脂とは異なり、1分子当たりのエポキシ官能基の数が少ないため、硬化および成形性が低いという問題を有する。具体的には、ビフェニル型樹脂のバーコル硬度は、多官能性エポキシ樹脂と比較して、成形時にわずかに低くなる。そのため、バーコル硬度を向上させるための方法が望まれている。
【0010】
本発明の目的は、室温でも優れた成形性と優れた取扱性とを有するエポキシ樹脂を用いて得られた樹脂組成物であって、エポキシ半導体封止材料として優れた材料である樹脂組成物と、この樹脂組成物を用いた樹脂封止半導体装置とを提供することである。
【0011】
すなわち、本発明は、
(A)一般式(1):
【化1】

[式中、R1〜R9は、それぞれ独立して、水素原子、1〜6個の炭素原子を有する非環状もしくは環状アルキル基、置換もしくは非置換フェニル基、またはハロゲン原子である]で表わされるエポキシ化合物と、
(B)官能基数が2個以上の多官能性エポキシ化合物と、
(C)フェノール性ヒドロキシル基を含有するエポキシ硬化剤と、
を含み、
エポキシ化合物(A)の比率が、エポキシ化合物(A)および(B)の総質量に対して1〜99質量%である、エポキシ樹脂組成物である。
【0012】
さらに、本発明は、上記のエポキシ樹脂組成物を用いて半導体素子を封止することによって得られる、樹脂封止半導体装置にも関する。
【0013】
本発明で使用する一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂の置換基R1〜R9それぞれの具体例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、トリル基、キシリル基(それぞれの異性体を含む)、塩素原子、臭素原子などがある。
【0014】
一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂は、従来の方法により、スチルベンフェノールをグリシジルエーテル化することによって得られる。
【0015】
ある文献(von Rolf H. Sieber, Liebigs Ann. Chem. 730, 31−46 (1969))は、エポキシ樹脂の原料であるスチルベン系ビスフェノール化合物の製造方法、および4,4’−ジヒドロキシスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベンなどの化合物の物理的特性を開示している。別の文献(METHODEN DER ORGANISCHEN CHEMIE (HOUBEN−WEYL) BAND IV/ 1c Phenol Teil 2 P1034)は、出発物質としてフェノールおよびクロロアセトンを用いた、4,4’−ジヒドロキシ−α−メチルスチルベンなどの製造方法を記載している。
【0016】
一般式(1)で表わされるエポキシ樹脂の原料として使用されるスチルベン系フェノールの具体例には、4,4’−ジヒドロキシ−3−メチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3−エチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3−プロピルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3−アミルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3−ヘキシルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−2,3−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−2,6−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−2,3’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5−トリメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−2’,3,5,6’−テトラメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’−メチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5,3’−ジメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,6−ジメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’−メチル−5−プロピルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5−ブチル−3’−メチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5−アミル−3’−メチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5−ヘキシル−3’−メチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−5−シクロヘキシル−3’−メチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3,5,5’−トリメチルスチルベン、3−t−ブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5−ジメチル−5’−プロピルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,6−ジメチル−5’−プロピルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルスチルベン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジヒドロキシスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジプロピルスチルベン、3,3’−ジアミル−4,4’−ジヒドロキシスチルベン、3,3’−ジヘキシル−4,4’−ジヒドロキシスチルベン、3,3’−ジシクロヘキシル−4,4’−ジヒドロキシスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−t−ブチルスチルベンなど(置換位置が異なる異性体を含む)がある。また、これらのスチルベン化合物の炭素−炭素二重結合の炭素原子をメチル基で置換することによって得られるα−メチルスチルベンのエポキシ化合物も例示する。これらの化合物のうち、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチル−α−メチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルスチルベン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,2’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、2,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−6,6’−ジメチルスチルベン、3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5,5’−トリメチルスチルベン、3−t−ブチル−2,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベン、および3−t−ブチル−4,4’−ジヒドロキシ−3’,5’,6−トリメチルスチルベンは、合成の容易さ、性能、および原料の価格の観点から特に好ましい。
【0017】
これらのエポキシ樹脂は、アルカリ、例えば水酸化ナトリウムなどの存在下で、ビスフェノールとエピハロヒドリンとを反応させることによって得ることができる。とりわけ、高純度のエポキシ樹脂を得る場合には、日本特許出願公開第60−31,517号に記載されているように、非プロトン性溶媒の存在下での反応が適している。
【0018】
本発明のエポキシ樹脂組成物中に、官能基数が2個以上の多官能性エポキシ化合物(B)として、既知の化合物を使用することができる。これらの例には、ホルムアルデヒドとフェノール類、例えばフェノール、o−クレゾールなどとの反応生成物であるノボラック系エポキシ樹脂;3官能性以上のフェノール類、例えばフロログリシン、トリス−(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどから誘導されたグリシジルエーテル化合物;フェノール類と芳香族カルボニル化合物との縮合反応によって得られる多価フェノール類のグリシジルエーテル化合物;p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、4−アミノメタクレゾール、6−アミノメタクレゾール、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、1,3−シクロヘキサンビス−(メチルアミン)などから誘導されたアミン系エポキシ樹脂があり、これらのエポキシ樹脂のうちの1種または複数種が使用される。これらの中でも、ホルムアルデヒドとフェノール類、例えばフェノール、o−クレゾールなどどの反応生成物であるノボラック系エポキシ樹脂、およびフェノール類と芳香族カルボニル化合物との縮合反応によって得られるトリスメタン基を含有する多価フェノール類のグリシジルエーテル化合物が、耐熱性、入手の容易さ、および価格の観点から特に好ましい。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、芳香族カルボン酸、例えばp−オキシ安息香酸、m−オキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸などから誘導されたグリシジルエステル系化合物、例えばビスフェノールA、ビスフェノールF、テトラメチルビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−チオジ(2,6−ジメチルフェノール)、ジヒドロキシナフタレン、ビス(ヒドロキシフェニル)ジシクロペンタン、ビス(ヒドロキシフェニル)メンタンなど;5,5−ジメチルヒダントインなどから誘導されたヒダントイン系エポキシ化合物;脂環式エポキシ樹脂、例えば2,2−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロピル)シクロヘキシル]プロパン、ビニルシクロヘキセンジオキシド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレートなど;二価のグリシジルエーテル化合物、例えば二価フェノール類、例えばN,N−ジグリシジルアニリンなど、アミン類、またはハロゲン化ビスフェノール類、例えばテトラブロモビスフェノールAなどから誘導されたジグリシジルエーテル化合物などを含有してもよい。さらに、本発明の樹脂組成物は、シアネート樹脂、例えば2,2−ビス(4−シアネートフェニル)プロパンなども含有してよい。
【0020】
本発明のエポキシ樹脂成分は、一般式(1)で表わされるスチルベン系エポキシ化合物(A)を多官能性エポキシ化合物(B)と混合することによって得られる。
【0021】
エポキシ化合物(A)の含有量は、エポキシ化合物(A)とエポキシ化合物(B)との総量に対して、例えば1〜99質量%、好ましくは20〜99質量%、より好ましくは30〜90質量%である。
【0022】
多官能性エポキシ化合物(B)のみを使用する場合、樹脂の溶融粘度が高いため、充填剤を大量に使用した場合、加熱溶融時に樹脂組成物全体の流動性が低下し、成形性が損なわれ、硬化成形物表面の光沢が失われ、場合によっては硬化物中に未充填部分が形成される。スチルベン系エポキシ化合物(A)を多官能性エポキシ化合物(B)と組み合わせることによって、多官能性エポキシを単独で使用した場合には困難である充填剤の高充填を容易に実現することができ、さらに、優れた成形性を有する硬化物が得られる。
【0023】
エポキシ化合物(A)の含有量が、エポキシ化合物(A)とエポキシ化合物(B)との総量に対して例えば1〜60質量%である場合、組成物全体の流動性が向上し、高いバーコル硬度を有する成形物を得ることができる。エポキシ樹脂成分である、エポキシ化合物(A)の含有量は、好ましくは20〜60質量%、より好ましくは30〜60質量%である。この含有量が1質量%未満の場合、軟化点が低下して、取扱性が不十分となる。
【0024】
エポキシ化合物(A)は、溶融粘度が低く、樹脂組成物全体の流動体を損なうことなく、大量の充填剤を含有することが可能であるが、エポキシ化合物(A)単独では、高いバーコル硬度を有する成形物が得られないことがある。多官能性エポキシ化合物(B)をスチルベン系エポキシ化合物(A)と組み合わせることによって、架橋密度を増加させ、バーコル硬度を上昇させることが可能になる。
【0025】
上記の目的で、多官能性エポキシ化合物(B)の含有量は、エポキシ化合物(A)とエポキシ化合物(B)との総量に対して、例えば1質量%以上40質量%以下、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは10〜30質量%である。この含有量が1質量%未満の場合、バーコル硬度を向上させる効果は不十分である。
【0026】
本発明のエポキシ化合物(A)は、150℃での溶融粘度が、好ましくは1ポイズ未満、より好ましくは0.5ポイズ未満である。多官能性エポキシ化合物(B)は、150℃での溶融粘度が、好ましくは10ポイズ未満、より好ましくは5ポイズ未満である。
【0027】
実用の際には、エポキシ化合物(A)と多官能性エポキシ樹脂(B)とを充填剤などと混合してもよく、あるいはエポキシ成分をあらかじめ溶融混合しても、またはエポキシ硬化剤などの樹脂成分(C)とともにあらかじめ溶融混合してから使用してもよい。
【0028】
エポキシ硬化剤(C)としては、既知の硬化剤を使用することができる。これらの例には、多価フェノール類、例えばフェノールノボラックなど、アミン系硬化剤、例えばジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンなど、酸無水物硬化剤、例えばピロメリト酸無水物、トリメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などがあり、耐湿性の観点から、多価フェノール類が好ましい。さらに、エポキシ硬化剤としての多価フェノール類の例には、1種または複数種のフェノール類、例えばフェノール、種々のアルキルフェノール、ナフトールなどと、アルデヒド類、例えばホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、グリオキサル、ベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒドなどと、またはケトン、例えばシクロヘキサノン、アセトフェノンなどとの重縮合物;ビニル重合型多価フェノール類、例えばポリビニルフェノール、ポリイソプロペニルフェノールなど;フェノール類と、ジオール類、例えば次式
【化2】

で表わされる化合物などと、またはジアルコキシ類、例えば次式
【化3】

[式中、Rは、1〜6個の炭素原子を有する非環状もしくは環状アルキル基、または置換もしくは非置換フェニル基を表わす]で表わされる化合物などと、またはジハロゲン類、例えば次式
【化4】

[式中、Xは、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素などから選択されたハロゲン原子を表わす]で表わされる化合物などとの反応生成物;およびフェノール類とジオレフィン類、例えばジシクロペンタジエン、ジイソプロペニルベンゼンなどとのフリーデル・クラフツ型反応生成物があり、加工性および硬化性の観点から、フェノールノボラックが特に好適である。これらの硬化剤は、単独で使用しても、あるいは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
通常は、硬化剤の量は、エポキシ樹脂に対して、好ましくは0.7〜1.2当量である。この量が0.7当量を下回るか、または1.2当量を上回る場合、いずれの場合も硬化が不完全となる。
【0030】
本発明のエポキシ樹脂組成物を硬化させるときに、既知の硬化促進剤を使用することもできる。
【0031】
このような硬化促進剤の例には、有機ホスフィン化合物、例えばトリフェニルホスフィン、トリ−4−メチルフェニルホスフィン、トリ−4−メトキシフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリ−2−シアノエチルホスフィンなど、およびそれらのテトラフェニルホウ酸塩;tert−アミン類、例えばトリブチルアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリアミルアミンなど;4級アンモニウム塩、例えばベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレートなど;イミダゾール類などがあるが、これらに限定されない。これらの中でも、有機ホスフィン化合物、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、およびイミダゾール類が、耐湿性および硬化性の観点から好適であり、トリフェニルホスフィンが特に好適である。
【0032】
本発明のエポキシ樹脂組成物中の無機充填剤(D)の例には、シリカ、アルミナ、チタンホワイト、水酸化アルミニウム、タルク、粘土、ガラス、繊維などがあり、とりわけシリカおよびアルミナが好適である。また、異なる形状(球状もしくは破砕型)または異なるサイズのこれらの充填剤を混合して、充填量を増加して使用することもできる。
【0033】
耐湿性および成形性の観点から、無機充填剤の配合比は、樹脂組成物の総量に対して25〜95質量%、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%、より好ましくは80〜92質量%である。
【0034】
無機充填剤として球状粉末を使用する場合、その形状は、有利には、鋭角を含まない、アスペクト比1.0〜1.2の実質的な球体であってよい。スプレーコーティング法またはゾルゲル法によって製造された市販の球状シリカ粉末のものと近似する球形度を有する球体が好適であり、真球のものにより近い球形度を有する球体はより好ましい。球状化処理が困難な場合には、無機材料を微粉末に加工し、その後その粉末にバインダーを添加し、メカノケミカル法によって球状粉末を形成する。
【0035】
破砕粉末の形状は、角度のある多面体などの異形体であってよい。なかでも、合成または天然の石英塊を粉砕することによって得られる非晶質または結晶質の石英破砕粉末が適しており、具体的には溶融破砕シリカなどが適している。
【0036】
本発明で使用する球状粉末としては任意の粉末を使用することができる。一例として、3つの群、すなわちx、y、およびz成分から構成されるものについてを説明する。x、y、およびz成分は、それぞれ平均粒径0.1〜1.5μm、平均粒径2〜15μm、および平均粒径20〜70μmであり、より好ましくは、それぞれ平均粒径0.1〜1.0μm、平均粒径2〜10μm、および平均粒径20〜50μmである。平均粒径0.1μm未満の粉末を使用した場合、粉末同士が凝集するため、樹脂組成物中での均一な分散が困難となって、流動性が失われることがあり、また平均粒径が70μmを上回る粉末は、半導体素子の微細な部分に容易に充填することができない。x、y、およびz成分それぞれの平均粒径が上記の範囲外の場合、樹脂組成物の流動性が低下する。本発明で使用する各球状粉末の粒径分布は狭い方が好ましく、さらに単分散系の粉末が好適である。したがって、x、y、およびz成分をそれぞれの粒径を均一化するために篩過作業で処理した粉末を使用することが好ましい。この平均粒径は、レーザー散乱粒径分布測定装置などの装置を用いて測定した累積粒径分布の50%の粒径として定義する。
【0037】
球状粉末x、y、およびzの配合比に関しては、x、y、およびz成分の総体積の計算値に対するx、y、およびz成分の体積比は、有利には、それぞれ10〜24体積%、0.1〜66体積%、および24〜76体積%、より有利には、それぞれ10〜24体積%、0.1〜36体積%、および57〜76体積%、より好ましくは、それぞれ10〜20体積%、4〜30体積%、60〜76体積%であってよい。これらの比が上記の範囲外の場合、樹脂組成物の流動性が低下する。
【0038】
前述の本発明における質量%の記載は、それぞれの成分の体積として、x、y、およびz成分それぞれの質量をそれぞれの真比重で除して得た値を用いた計算によって得たものである。一般に、粒径分布を有する粒子の見掛け体積は、計量器への充填の仕方によって変化し、また異種の粒子の集合体を混合する場合には、混合前後の見掛け体積が異なる。したがって、上記の記載において、粒子集合体の各成分の体積%の計算に見掛け体積は使用していない。
【0039】
本発明で使用する破砕粉末(m成分)は、平均粒径1〜70μm、好ましくは1〜30μmを有する。破砕粉末(m成分)の配合比に関しては、球状粉末成分と破砕粉末m成分との総質量に対するm成分の質量比は、好ましくは1〜30質量%である。配合比がこの範囲を下回る場合、樹脂の種類や封止装置および金型の形状によって生じるバリ(finまたはflash:樹脂成分の流出による樹脂の薄膜)を減少させる効果が低く、配合比がこの範囲を上回る場合、樹脂組成物の流動性が低下する。
【0040】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面改質され、ボールミルによって構造改質された、熱分解法シリカを含有する。
【0041】
この熱分解法シリカは、米国特許第5,959,005号から既知である。
【0042】
本発明の好適な対象において、熱分解法により製造され、疎水化および構造改質されたシリカはAEROSIL R8200であってよく、これは以下の物理化学的データを有する。
【表1】

データは、標準値であり、生産パラメータではない。
【0043】
【表2】

【0044】
本発明で使用する充填剤は、あらかじめ十分に混合してあることが好ましい。具体的には、この混合は、回転翼または空気を利用するミキサーやコニーダーなどの装置、容器を振動、振盪、または回転させる装置などを用いて実施することができる。充填剤が十分に混練されているかどうかを判断するために、さまざまな位置の試料の粒径分布を測定し、それらが実質的に同一であるかどうかを確認することは有利となりうる。さらに、場合によっては、充填剤をカップリング剤または樹脂であらかじめ処理して使用することもできる。この処理方法としては、溶媒を用いて混合を行なってから、その溶媒を留去する方法、およびカップリング剤または樹脂と充填剤とを直接混合し、その混合物をミキサー(mixed)を用いて処理する方法がある。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物中には、場合によっては、さらに離型剤、例えば天然ワックス、合成ワックス、高級脂肪酸およびその金属塩、またはパラフィンなど、あるいは着色剤、例えばカーボンブラック、さらに表面処理剤、例えばシランカップリング剤などを場合により添加してもよい。さらに、難燃剤、例えば三酸化アンチモン、リン化合物、臭素化エポキシ樹脂などを添加してもよい。難燃作用を示すには、臭素化エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0046】
さらに、応力を低下させるために、種々のエラストマーを添加するか、またはあらかじめ反応させて使用することができる。これらの例には、添加型または反応型のエラストマーなど、例えばポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリルコポリマー、シリコンゴム、シリコンオイルなどがある。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物を用いて、半導体などの電子部品を封止する目的、および樹脂封止半導体装置を製造する目的で、従来から既知の成形法、例えばトランスファー成形、圧縮成形、射出成形などによって、硬化成形を有利に実施することができる。
【0048】
本発明によるエポキシ樹脂は、以下の利点を示す:
親水性充填剤と比較した場合の低吸湿性
高い充填可能量
改善された保存安定性
改善された応用性

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(1):
【化1】

[式中、R1〜R9は、それぞれ独立して、水素原子、1〜6個の炭素原子を有する非環状もしくは環状アルキル基、置換もしくは非置換フェニル基、またはハロゲン原子を表わす]で表わされるエポキシ化合物と、
(B)官能基数が2個以上の多官能性エポキシ化合物と、
(C)フェノール性ヒドロキシル基を含有するエポキシ硬化剤と、
を含むエポキシ樹脂組成物であって、
前記エポキシ化合物(A)の比率が、前記エポキシ化合物(A)および(B)の総質量に対して0.1〜99質量%であり、該エポキシ樹脂組成物がヘキサメチルジシラザン(HMDS)で表面改質され、且つボールミルによって構造改質された熱分解法シリカを含有する、エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物(A)の比率が、前記エポキシ化合物(A)および(B)の総質量に対して20〜99質量%である、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物全体の質量に対して25〜95質量%の量で、無機充填剤(D)をさらに含む、請求項1に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機充填剤(D)が、前記樹脂組成物全体の質量に対して50〜95質量%の量である、請求項3に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項5】
前記多官能性エポキシ化合物(B)が、フェノールノボラックのグリシジルエーテル化合物、またはトリスフェノールメタンノボラックのグリシジルエーテル化合物である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項6】
前記フェノール性ヒドロキシル基を含有するエポキシ硬化剤(C)がアラルキルフェノ−ル樹脂である、請求項1または2に記載のエポキシ樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1または3に記載のエポキシ樹脂組成物を使用して半導体素子を封止することによって得られる、樹脂封止半導体装置。

【公表番号】特表2011−521033(P2011−521033A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−508855(P2011−508855)
【出願日】平成21年4月14日(2009.4.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054393
【国際公開番号】WO2009/138301
【国際公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】