説明

電子制御ユニットの製造方法、コネクタおよび前記電子制御ユニットの製造方法により製造された電子制御ユニット

【課題】筐体内に収容された配線板の反りに起因した配線板と端子のはんだ付け部分に生ずる応力を低減させる。
【解決手段】本発明の電子制御ユニット100の製造方法は、電子部品3が実装される配線板2と、複数の端子41およびハウジング42を含み、これらの端子41が配線板2上にはんだ付けされるコネクタ4と、配線板2を保持する筐体5とを有する電子制御ユニット100の製造方法である。とくに、配線板2上にコネクタ4の各端子41をはんだ付けする第1の工程と、前記はんだ付けにより一体となった配線板2および複数のコネクタ4を筐体5内に収容する第2の工程とを含み、第1の工程では、配線板2に対して前記配線板2の反りを防ぐための荷重を加えながら端子41と配線板2とのはんだ付けを行い、第2の工程では、反りを矯正するように配線板2を拘束する状態でこの配線板2を筐体5に保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御ユニットの製造方法、コネクタ、および前記製造方法により製造された電子制御ユニットに関する。さらに詳しくは、自動車のエンジンや変速機などの電気的な制御を総合的に行う電子制御ユニットの製造方法、コネクタおよび前記製造方法により製造された電子制御ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンや変速機などの電気的な制御を総合的に行うために電子制御ユニットが自動車などに搭載されている。電子制御ユニットは、配線板上に電子部品やコネクタを実装した回路基板が筐体の中に収容されているものである。一般的に、電子制御ユニットに設けられるコネクタは、複数の端子と、これらの端子を保持する絶縁ハウジングとから構成されている。
【0003】
特許文献1には、共通の配線板上に複数のコネクタが実装されたオンボードコネクタが開示されている。各コネクタの端子は基板接続部を有する。これらの基板接続部は特定方向に並び、それぞれ前記配線板上にはんだ付けされている。
【特許文献1】特開2007−26875号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術では、配線板に多少なりとも反りが存在する。その一方で、配線板は、筐体に収容される際に、その反りが矯正された状態で筐体に保持される場合が多い。しかしながら、電子部品やコネクタは配線板に反りがある状態ではんだ付けされているため、筐体内で配線板の反りが矯正されると、その矯正による配線板の変形に起因して、配線板と端子のはんだ付け部分に応力が発生する。この応力は、はんだにクラックが発生する原因となるので、その低減が課題となっている。
【0005】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、筐体内に収容された配線板の反りに起因した配線板と端子のはんだ付け部分に生ずる応力を低減させる電子制御ユニットの製造方法、コネクタおよび前記製造方法により製造された電子制御ユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電子制御ユニットの製造方法は、電子部品が実装される配線板と、複数の端子およびハウジングを含み、これらの端子が前記配線板上にはんだ付けされるコネクタと、前記配線板を保持する筐体とを有する電子制御ユニットの製造方法であって、前記配線板上に前記コネクタの各端子をはんだ付けする第1の工程と、前記はんだ付けにより一体となった配線板および複数のコネクタを筐体内に収容する第2の工程とを含み、前記第1の工程では、前記配線板に対して前記配線板の反りを防ぐための荷重を加えながら前記端子と前記配線板とのはんだ付けを行い、前記第2の工程では、前記反りを矯正するように前記配線板を拘束する状態でこの配線板を前記筐体に保持させることにより上記目的が達成される。
【0007】
また、前記第1の工程では、平坦な基準面上に配線板を押し付けることで前記配線板の反りを矯正することが好ましい。
【0008】
また、前記第1の工程では、前記配線板よりも高い位置で前記ハウジングを押圧することにより前記配線板に該配線板の反りを防ぐための荷重を加えることが好ましい。
【0009】
また、前記第1の工程では、前記配線板上の所定の位置にあらかじめ塗布されたはんだの上に前記コネクタの各端子をセットした状態で前記配線板を局所的に加熱することで、前記各端子を前記配線板にはんだ付けすることが好ましい。
【0010】
また、前記コネクタのハウジングは、前記端子を前記配線板に対して垂直な状態で保持するための本体部と、該本体部を支持するために、前記本体部に一体的に設けられ、かつ、前記配線板に対して前記端子のはんだ付け位置と近接する位置に直立状態で当接するように設けられた少なくとも一対の脚部とを有し、前記第1の工程では、前記ハウジングを押圧することにより、前記配線板の反りを防ぐための荷重を前記脚部を介して前記配線板に伝達することが好ましい。
【0011】
また、前記コネクタのハウジングには、前記コネクタをそれぞれ前記配線板上の所定の位置に位置決めするための凹部が形成され、前記第1の工程では、前記位置決めするための凹部を押圧することで、前記配線板に対して前記配線板の反りを防ぐための荷重を加えることが好ましい。
【0012】
また、前記第1の工程は、位置決め手段を用いて、前記コネクタをそれぞれ前記配線板上の所定の位置に位置決めする工程を含み、前記ハウジングの所定の位置に形成された凹部に、前記位置決め手段の所定の位置に設けられた突出部を係合させることにより、前記コネクタをそれぞれ位置決めし、さらに、前記位置決め手段の前記突出部により前記ハウジングを押圧することで、前記配線板に前記配線板の反りを防ぐための荷重を伝達することが好ましい。
【0013】
本発明のコネクタは、前記第2の工程は、前記配線板に接触するように設けられる一方の部材と、前記ハウジングに接触するように設けられる他方の部材からなる前記筐体により、前記配線板および前記複数のコネクタの前記ハウジングを挟持することにより前記配線板に対して前記配線板の反りを防ぐための荷重を加えることが好ましい。
【0014】
また、複数の端子およびハウジングを含み、前記端子が、電子部品が実装された配線板上にはんだ付けされるコネクタであって、前記ハウジングは、前記配線板に対して平行に設けられた、前記端子を保持するための本体部と、該本体部を支持するために、前記本体部に一体的に設けられ、かつ、前記配線板に直立するように設けられた少なくとも一対の脚部とを有し、前記ハウジングは、前記端子を前記配線板に対して垂直な状態に支持することにより上記目的が達成される。
【0015】
また、前記ハウジングには、前記コネクタをそれぞれ前記配線板上の所定の位置に位置決めするための凹部が形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の電子制御ユニットは、上記の電子制御ユニットの製造方法により製造された電子制御ユニットであって、上記のコネクタを含み、前記筐体の内部に収容された前記配線板に、該配線板の反りを防ぐための荷重が加えられていることにより上記目的が達成される。
【0017】
また、前記筐体の前記一方の部材に、前記配線板の前記脚部が当接している面の反対の面を支持するための弾性シートが設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、第1の工程では、配線板を反りが矯正された状態に近づけて、端子と配線板とのはんだ付けを行う。したがって、第2の工程において、筐体内に配線板の反りを矯正した状態で配線板を収容しても、はんだ付け時の配線板の形状と筐体内で拘束される配線板の形状とを近似あるいは合致させることが可能である。したがって、筐体内に収容された配線板の反りに起因した、配線板と端子のはんだ付け部分に生ずる応力を低減させることができる。
【0019】
請求項2記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、平坦な基準面上に配線板を押し付けることで配線板の反りを矯正することにより、たとえば、配線板を配線板の両面から押さえつけるよりも簡単に配線板の反りを矯正することができる。
【0020】
請求項3記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、配線板よりも高い位置でハウジングを押圧することにより配線板に対して配線板の反りを防ぐための荷重を加える。このことにより、電子部品やコネクタの端子が配線板の周縁部まで実装されている場合であっても、配線板に対して荷重を加えるのが容易になる。
【0021】
請求項4記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、配線板の所定の位置にあらかじめ塗布されたはんだを、配線板を局所的に加熱することにより、コネクタの端子を配線板にはんだ付けする場合であっても、配線板に対して荷重を加える作業が、はんだ付けの作業の邪魔にならない。
【0022】
請求項5記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、ハウジングが本体部と、脚部とを有し、ハウジングが配線板上の電子部品を跨ぐように設けられていることにより、コネクタの大きさが、配線板の大きさと比べて比較的大きな場合にも、配線板上の電子部品を実装する部分の面積が狭まるのを避けることができる。
【0023】
請求項6記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、コネクタのハウジングの所定の位置に凹部が形成されていることにより、治具を用いてコネクタを配線板上の所定の位置に位置決めすることができる。
【0024】
請求項7記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、位置決め用の位置決め手段の突出部をコネクタのハウジングに形成された凹部に挿入することによって、コネクタの位置決めを行い、さらにそのまま位置決め手段をハウジングに対して押圧する。これにより、配線板に対して配線板を矯正するための荷重を加えるために別途装置を設けなくても、コネクタの位置決め用の位置決め手段を用いて、配線板を矯正するための荷重を、配線板に加えることができる。
【0025】
請求項8記載の電子制御ユニットの製造方法によれば、第2の工程において、一方の部材と他方の部材からなる筐体を用いて、回路基板を挟持した状態で回路基板を筐体内に収容することにより、配線板の反りを継続的に矯正しながら筐体内に回路基板を収容しておくことができる。
【0026】
請求項9記載のコネクタによれば、ハウジングが、本体部と配線板に先端が当接した脚部とを有することにより、ハウジングの本体部および脚部が押圧されると、脚部を介して配線板に配線板の反りを矯正するための力が伝達されるので、筐体内に収容された配線板の反りに起因した配線板と端子のはんだ付け部分に生ずる応力を低減させることができる。
【0027】
請求項10記載のコネクタによれば、コネクタのハウジングの所定の位置に凹部が形成されていることにより、治具を用いてコネクタを配線板上の水平方向の所定の位置に位置決めすることができる。
【0028】
請求項11記載の電子制御ユニットによれば、配線板を反りが矯正された状態に近づけて、端子と配線板とのはんだ付けを行い、さらに、筐体内に配線板の反りを矯正した状態で配線板が収容されている。したがって、筐体内に収容された配線板の反りに起因した、配線板と端子のはんだ付け部分に生ずる応力を低減させることができる。
【0029】
請求項12記載の電子制御ユニットによれば、筐体と回路基板の配線板との隙間に弾性シートを設けることによって、ハウジングの脚部によって、配線板が押圧されても、配線板が変形するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の電子制御ユニットの製造方法は、配線板上にコネクタの各端子をはんだ付けする第1の工程と、はんだ付けにより一体となった配線板および複数のコネクタを筐体内に収容する第2の工程とを含み、第1の工程では、配線板に対して配線板の反りを防ぐための荷重を加えながら端子と配線板とのはんだ付けを行い、第2の工程では、反りを矯正するように配線板を拘束する状態でこの配線板を筐体に保持させる。すなわち、本発明は、筐体内に収容された段階の配線板の状態を考慮して、回路基板の製造段階において、配線板が筐体内に収容された状態で受ける荷重を配線板に加えた状態で回路基板を製造することにより、電子制御ユニットの配線板の反りに起因する不具合を防ぐものである。
【0031】
以下で、本発明の電子制御ユニット、コネクタ、および、電子制御ユニットの製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
【0032】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態の電子制御ユニット100を説明するための断面図である。実施の形態1の電子制御ユニット100は、図2に示されるように、プリント配線板(配線板)2上に電子部品3およびコネクタ4を実装した回路基板1と、回路基板1を内部に収容した筐体5と、筐体5およびプリント配線板2の隙間に設けられた弾性シート6とから構成されている。
【0033】
図2は、本実施の形態のプリント配線板2上に電子部品3およびコネクタ4が接続された回路基板1を説明するための斜視図である。回路基板1は、図2に示されるように、プリント配線板2の一方の面上に、抵抗器、コンデンサ、集積回路などの電子部品3と、3つのコネクタ4とが実装されている。
【0034】
コネクタ4は、それぞれ、導電性材料からなる複数の端子41と、端子41を所定の位置に所定の姿勢で保持するための絶縁性を有するハウジング42とから構成されている。
【0035】
各端子41は、外部機器との電気的接触部分である外部機器接続部41aと、外部機器接続部41aをプリント配線板2に接続するための基板接続部41bとを含む。外部機器接続部41aは、図2に示されるように、プリント配線板2に対してほぼ垂直な状態になるようにハウジング42によって保持される。また、基板接続部41bは、その一方の端が、各外部機器接続部41aに繋がり、他方の端が、プリント配線板2の周縁部にはんだ付けによって接続されている。
【0036】
各ハウジング42は、プリント配線板2から離間してプリント配線板2に対して平行な状態で設けられた本体部42bと、プリント配線板2に対して直立した状態で本体部42bに一体的に設けられた脚部42aとから構成されている。本体部42bは、端子41を直接保持する。また、脚部42aは、3本または4本で、本体42bをプリント配線板2に対して平行な状態に支えている(図3(a)、(b)参照)。脚部42aは、その端部をプリント配線板2の表面に当接させている。また、ハウジング42の上面には、ハウジング4の上面の所定の位置に、コネクタ4をプリント配線板2上の所定の位置に配置するための位置決め穴(凹部)B、位置決め穴(凹部)C、位置決め穴(凹部)D、位置決め穴(凹部)E、位置決め孔Aおよび位置決め孔Fが形成されている。このうち、位置決め孔Aおよび位置決め孔Fは貫通孔である。また、位置決め穴B、位置決め穴C、位置決め穴D、位置決め穴Eは、コネクタ4をプリント配線板2上の所定の位置に配置する機能のほか、回路基板1の製造時に、これらの穴の底面で治具からの荷重を受ける機能をも有している。
【0037】
以上のように、コネクタ4は、端子41の外部機器接続部41aおよびハウジング42の本体部42bが、ハウジング42の脚部42aによって電子部品3の上方で宙に浮いたような状態で支持され、また、ハウジング4の脚部42aおよび端子41の基板接続部41bが、プリント配線板2にプリント配線板2の周縁部で接続されている。これにより、コネクタ4の大きさが、プリント配線板2の大きさに対して比較的大きな場合にも、プリント配線板2上の電子部品3を実装する部分の面積が狭まるのを避けることができる。
【0038】
プリント配線板2としては、とくに限定されるものではなく、たとえば、基材に樹脂を含浸させて得た基板に対して、その表面に、銅箔などの導電性材料からなる配線を印刷したものを用いることができる。
【0039】
筐体5は、図1に示されるように、上下に分割された一対の部材51、52から構成されている。
【0040】
一方の部材(以下、筐体下部という)51は、回路基板1のプリント配線板2の下面側を収容する。筐体下部51は、回路基板1のプリント配線板2を載置するための載置部51aと、プリント配線板2の両面に電子部品3が実装された場合に対応するためのくぼみ部51bと、筐体上部52と筐体下部51とを一体に締結し、かつ、コネクタ4のハウジング42を介してプリント配線板2に対してプリント配線板2の反りを防ぐための荷重を加えるための締結部51cとを含む。載置部51aは、筐体下部51の内側周縁に沿って内方へ突出するように設けられている。くぼみ部51bは、載置部51aの載置面より筐体下部51の内方の部分であり、凹状に凹んだ部分である。締結部51cは、筐体下部51の外側周縁に沿って複数個所に形成された雌螺子である。
【0041】
他方の部材(以下、筐体上部という)52は、回路基板1のプリント配線板2のコネクタ4が接続されている側を収容する。筐体上部52は、回路基板1を覆い、かつ、回路基板1のコネクタ4のハウジング42に対して押圧力を加えるための覆設部52bと、相手方コネクタの位置決めのためのフード部52aと、筐体上部52と筐体下部51とを一体に締結し、かつ、コネクタ4のハウジング42を介してプリント配線板2に対してプリント配線板2の反りを防ぐための荷重を加えるための締結部52cと、回路基板1の筐体5内での水平方向の位置決めを行うための凸部52dとを含む。
【0042】
覆設部52bは、筐体5内に回路基板1を収容した際に、プリント配線板2に対して平行な状態になるように設けられている。覆設部52bには、端子41の外部機器接続部41aがそれぞれ貫通可能な孔が複数形成されている。筐体下部51に回路基板1が載置された状態で筐体上部52を覆い被せると、覆設部52bに形成された各孔を外部機器接続部41aが貫通し、覆設部52bの内側面が、ちょうどハウジング42の本体部42bの上面に当接する。
【0043】
フード部52aは、覆設部52bの外側面から突出するように外方へ向けて設けられている。
【0044】
締結部52cは、筐体上部52の外側周縁に沿って複数個所に形成された螺子孔である。筐体上部52の締結部52cにねじを貫通させ、筐体下部51の締結部51cにねじを螺合することにより、筐体上部52と筐体下部51とが、プリント配線板2の反りを矯正した状態で回路基板1を拘束する。
【0045】
凸部52dは、覆設部52bの内側面の所定の位置から内方へ向けて突出した柱状のものである。この筐体上部52を、筐体下部51に載置された回路基板1に覆い被せる際に、凸部52dをハウジング42に形成された位置決め孔A、位置決め孔Fに嵌め入れることにより、筐体5内での回路基板1の水平方向の位置決めが行われる。
【0046】
弾性シート6は、筐体5の筐体下部51に形成されたくぼみ部51b上に設けられた弾性を有する薄板状のものである。弾性シート6を回路基板1のプリント配線板2の下面に接するように設けることで、プリント配線板2が反りを矯正するための荷重を受けた際に、プリント配線板2が変形するのを防止することができる。弾性シート6としては、とくに限定されるものではなく、たとえば、ゴムなどを用いることができる。
【0047】
この構成により、以下で本実施の形態の電子制御ユニット100の製造方法について説明する。本実施の形態の電子制御ユニット100の製造方法は、(1)プリント配線板2上に電子部品3およびコネクタ4を配置する工程(第1の工程)と、(2)プリント配線板2に電子部品3およびコネクタ4をはんだ付けする工程(第1の工程)と、(3)回路基板1を筐体5に収容する工程(第2の工程)とを含む。
【0048】
(1)プリント配線板2上に電子部品3およびコネクタ4を配置する工程
この工程では、プリント配線板2上の所定の位置に電子部品3およびコネクタ4を配置する。図3は、実施の形態1の電子制御ユニット100の製造方法を説明するための図であり、(a)は、プリント配線板2上に電子部品3およびコネクタ4を配置した状態の平面図、(b)は、(a)の側面図である。まず、プリント配線板2を、図3(a)および(b)に示されるように、上面が平坦な台Stの上面(基準面)S1の上に載置する。このような上面S1が平坦な台Stの上で、プリント配線板2を上面S1に押し付けることにより、たとえば、プリント配線板2をプリント配線板2の両面から押え付けるよりも、簡単にその反りを矯正した状態が実現される。
【0049】
つぎに、プリント配線板2上の所定の位置に、電子部品3を配置する。
【0050】
つぎに、コネクタ4をプリント配線板2の所定の位置に配置する。具体的には、プリント配線板2に対して平行に設けられた連結部材71と、連結部材71の所定の位置から突出するように設けられた挿入部材(突出部)72A、72B、72C、72D、72E、72Fとを有する治具(位置決め手段)7を用いてコネクタ4の位置決めを行う。具体的には、挿入部材72Aの先端をハウジング42の所定の位置に形成された位置決め孔Aに挿入し、挿入部材72Bの先端をハウジング42の所定の位置に形成された位置決め穴Bに挿入し、挿入部材72Cの先端をハウジング42の所定の位置に形成された位置決め穴Cに挿入し、挿入部材72Dの先端をハウジング42の所定の位置に形成された位置決め穴Dに挿入し、挿入部材72Eの先端をハウジング42の所定の位置に形成された位置決め穴Eに挿入し、挿入部材72Fの先端をハウジング42の所定の位置に形成された位置決め孔Fに挿入する。このように、各挿入部材の先端を各位置決め穴または位置決め孔に係合させることにより、コネクタ4をプリント配線板2上の所定の位置に位置決めする。
【0051】
(2)プリント配線板2に電子部品3およびコネクタ4をはんだ付けする工程
この工程では、(1)の工程でプリント配線板2上の所定の位置に配置された電子部品3およびコネクタ4を、プリント配線板2に対してはんだにより固定する。
【0052】
プリント配線板2に電子部品3およびコネクタ4をはんだ付けする際のはんだ付けの方法としては、とくに限定されるものではなく、たとえば、プリント配線板2に塗布されたはんだを局所的に加熱する方式、リフロー方式、フロー方式、などがあげられる。本実施の形態では、プリント配線板2を台Stの上面S1(基準面)に押し付けた状態のまま、はんだ付けを行う必要があることから、プリント配線板2の所定の位置にあらかじめ塗布されたはんだをヒータなどにより上から局所的に加熱する方式によってはんだ付けを行う。
【0053】
とくに、本実施の形態では、このはんだ付けの際に、(1)の工程でコネクタ4の位置決めに用いた治具7を用いて、プリント配線板2よりも高い位置でハウジング42を押圧することにより、プリント配線板2の反りを防ぐための荷重を、プリント配線板2に対して加え続ける。具体的には、(1)の工程でハウジング42に形成された位置決め穴Bに挿入された挿入部材72B、位置決め穴Cに挿入された挿入部材72C、位置決め穴Dに挿入された挿入部材72D、位置決め穴Eに挿入された挿入部材72Eをそれぞれ垂直下方(図4紙面下方向)に押圧することにより、ハウジング42を介してプリント配線板2の反りが矯正された状態ではんだ付けが行われる。はんだ付けの時に、ハウジング42の脚部42aを介して、プリント配線板2の反りを防ぐための荷重を、プリント配線板2に対して伝達するので、電子部品3やコネクタ4の端子41がプリント配線板2の周縁部まで実装されている場合であっても、プリント配線板2にその反りを防ぐための荷重を加えるのが容易である。また、第1の工程において、プリント配線板2に対して、その反りを防ぐための荷重を加えるために別途装置を設ける必要がない。さらに、プリント配線板2の反りを防ぐための荷重を加える作業が、はんだ付けの作業の邪魔にならない。
【0054】
このようにして、プリント配線板2に電子部品3およびコネクタ4をはんだ付けして回路基板1が完成する。したがって、回路基板1のコネクタ4は、プリント配線板2にほとんど反りが生じていない状態(プリント配線板2の反りが矯正された状態)ではんだ付けされたことになる。
【0055】
(3)回路基板1を筐体5に収容する工程
この工程では、(2)の工程で完成した回路基板1を筐体5内に収容する。
【0056】
図1に示されるように、まず、筐体5の筐体下部51に設けられたくぼみ部51bに、くぼみ部51bを埋めて、弾性シート6の上面と載置部51aの上面とが、ほぼ同一の高さになるように弾性シート6を設置する。そして、プリント配線板2の下面(コネクタ4が設けられていない側の面)が、筐体下部51に設けられた弾性シート6および載置部51aに当接するように、回路基板1を筐体5の筐体下部51に設けられた弾性シート6および載置部51a上に載置する。
【0057】
つぎに、筐体下部51に載置された回路基板1を覆うように筐体上部52を被せる。このとき、端子41の外部機器接続部41aを、それぞれ、覆設部52bに形成された複数の孔に貫通させる。これにより、端子41の外部機器接続部41aは、筐体上部52の外方へ突出し、外部の機器と電気的な接触を得やすい状態になる。また、覆設部52bの内側面は、ハウジング42の本体部42bの上面に当接する。さらに、凸部52dが、ハウジング42の本体部42bに形成された位置決め孔Aおよび位置決め孔Bにそれぞれ挿入されて、筐体5内で回路基板1が位置決めされる。
【0058】
最後に、筐体下部51と筐体上部52とを締結してプリント配線板2を拘束する状態で、筐体下部51、筐体上部52および回路基板1を一体にする。筐体上部52の締結部52cの各螺子孔に螺子を貫通させ、筐体下部51の締結部51cの各雌螺子に前記螺子を螺合する。前記螺子で締結部51c、52cを締め付けていくにしたがって、筐体下部51は、載置部51aから直接的に、または、弾性シート6を介して間接的にプリント配線板2に荷重を加え、筐体上部52は、コネクタ4のハウジング42を介して間接的にプリント配線板に荷重を加える。そして、本実施の形態の電子制御ユニット100は、電子制御ユニット100が完成した状態でも常に、プリント配線板2に対してプリント配線板2の反りを防ぐための荷重が掛けられている(図1参照)。
【0059】
以上の実施の形態によれば、(3)の工程において筐体5内にプリント配線板2を、プリント配線板2の反りが矯正された状態で収容しても、(2)の工程において、プリント配線板2に対するコネクタ4のはんだ付けを、プリント配線板2を矯正した状態で行っている。したがって、(2)の工程でプリント配線板2の反りを矯正しない場合(すなわち、(3)の工程だけでプリント配線板2の反りを矯正する場合)よりも、筐体5内でプリント配線板2のはんだ付け部分に生じる応力を低減させることが可能である。
【0060】
なお、上記実施の形態では、コネクタ4のハウジング42が複数である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、コネクタ4は単一のハウジング42であってもよい。この場合、ハウジング42の脚部42aを単一の本体部42bに対して3本以上設けることが好ましい。
【0061】
また、上記実施の形態では、筐体下部51にくぼみ部51bが形成されている形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、くぼみ部51bを形成せずに、筐体下部51の底面全体を載置部51aとした形態であってもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、コネクタ4のハウジング42を介して、筐体5内のプリント配線板2の反りを矯正する形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、筐体にプリント配線板の反りを矯正するための突条を設け、筐体を締め付けた際にこの突条でプリント配線板を直接押圧し、プリント配線板に対してプリント配線板を矯正するための荷重を加えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1の電子制御ユニットを説明するための断面図である。
【図2】実施の形態1のプリント配線板上に電子部品およびコネクタが接続された回路基板を説明するための斜視図である。
【図3】実施の形態1の電子制御ユニットの製造方法を説明するための図であり、(a)は、プリント配線板上に電子部品およびコネクタを配置した状態の平面図、(b)は、(a)の側面図である。
【図4】実施の形態1の電子制御ユニットの製造方法を説明するための図であり、プリント配線板上のコネクタを、治具を用いて水平方向の所定の位置に位置決めし、位置決めされた状態で治具を押圧することによりプリント配線板に対して荷重を加えている状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0064】
1 回路基板
2 プリント配線板(配線板)
3 電子部品
4 コネクタ
41 端子
42 ハウジング
42a 脚部
42b 本体部
5 筐体
51 筐体下部(一方の部材)
52 筐体上部(他方の部材)
6 弾性シート
7 治具(位置決め手段)
72A、72B、72C、72D、72E、72F 挿入部材(突出部)
B、C、D、E、F 位置決め穴(凹部)
100 電子制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装される配線板と、複数の端子およびハウジングを含み、これらの端子が前記配線板上にはんだ付けされるコネクタと、前記配線板を保持する筐体とを有する電子制御ユニットの製造方法であって、
前記配線板上に前記コネクタの各端子をはんだ付けする第1の工程と、
前記はんだ付けにより一体となった配線板および複数のコネクタを筐体内に収容する第2の工程とを含み、
前記第1の工程では、前記配線板に対して前記配線板の反りを防ぐための荷重を加えながら前記端子と前記配線板とのはんだ付けを行い、
前記第2の工程では、前記反りを矯正するように前記配線板を拘束する状態でこの配線板を前記筐体に保持させることを特徴とする電子制御ユニットの製造方法。
【請求項2】
前記第1の工程では、平坦な基準面上に配線板を押し付けることで前記配線板の反りを矯正する請求項1記載の電子制御ユニットの製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程では、前記配線板よりも高い位置で前記ハウジングを押圧することにより前記配線板に該配線板の反りを防ぐための荷重を加える請求項1または2記載の電子制御ユニットの製造方法。
【請求項4】
前記第1の工程では、前記配線板上の所定の位置にあらかじめ塗布されたはんだの上に前記コネクタの各端子をセットした状態で前記配線板を局所的に加熱することで、前記各端子を前記配線板にはんだ付けする請求項3記載の電子制御ユニットの製造方法。
【請求項5】
前記コネクタのハウジングは、
前記端子を前記配線板に対して垂直な状態で保持するための本体部と、
該本体部を支持するために、前記本体部に一体的に設けられ、かつ、前記配線板に対して前記端子のはんだ付け位置と近接する位置に直立状態で当接するように設けられた少なくとも一対の脚部とを有し、
前記第1の工程では、前記ハウジングを押圧することにより、前記配線板の反りを防ぐための荷重を前記脚部を介して前記配線板に伝達する請求項3記載の電子制御ユニットの製造方法。
【請求項6】
前記コネクタのハウジングには、前記コネクタをそれぞれ前記配線板上の所定の位置に位置決めするための凹部が形成され、前記第1の工程では、前記位置決めするための凹部を押圧することで、前記配線板に対して前記配線板の反りを防ぐための荷重を加える請求項5記載の電子制御ユニットの製造方法。
【請求項7】
前記第1の工程は、
位置決め手段を用いて、前記コネクタをそれぞれ前記配線板上の所定の位置に位置決めする工程を含み、
前記ハウジングの所定の位置に形成された凹部に、前記位置決め手段の所定の位置に設けられた突出部を係合させることにより、前記コネクタをそれぞれ位置決めし、さらに、前記位置決め手段の前記突出部により前記ハウジングを押圧することで、前記配線板に前記配線板の反りを防ぐための荷重を伝達することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子制御ユニットの製造方法。
【請求項8】
前記第2の工程は、前記配線板に接触するように設けられる一方の部材と、前記ハウジングに接触するように設けられる他方の部材からなる前記筐体により、前記配線板および前記複数のコネクタの前記ハウジングを挟持することにより前記配線板に対して前記配線板の反りを防ぐための荷重を加えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電子制御ユニットの製造方法。
【請求項9】
複数の端子およびハウジングを含み、前記端子が、電子部品が実装された配線板上にはんだ付けされるコネクタであって、
前記ハウジングは、前記配線板に対して平行に設けられた、前記端子を保持するための本体部と、該本体部を支持するために、前記本体部に一体的に設けられ、かつ、前記配線板に直立するように設けられた少なくとも一対の脚部とを有し、
前記ハウジングは、前記端子を前記配線板に対して垂直な状態に支持するコネクタ。
【請求項10】
前記ハウジングには、前記コネクタをそれぞれ前記配線板上の所定の位置に位置決めするための凹部が形成されている請求項9記載のコネクタ。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の電子制御ユニットの製造方法により製造された電子制御ユニットであって、
請求項9または10のいずれかに記載のコネクタを含み、
前記筐体の内部に収容された前記配線板に、該配線板の反りを防ぐための荷重が加えられている電子制御ユニット。
【請求項12】
前記筐体の前記一方の部材に、前記配線板の前記脚部が当接している面の反対の面を支持するための弾性シートが設けられている請求項11記載の電子制御ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−44109(P2009−44109A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210638(P2007−210638)
【出願日】平成19年8月13日(2007.8.13)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】