説明

電子制御液圧ブレーキ装置

【課題】差圧制御弁の制御電流と差圧との関係を表した動作特性上の変曲点を通過するような制動操作量の低下時に、制御のハンチングが生じないようにする。
【解決手段】S14でブレーキペダルの戻し操作中と判定し、S15で変曲点付近の差圧制御中と判定し、S16でマスターシリンダ液圧Pmcが上昇中と判定するとき、つまり、変曲点付近での差圧制御中、ブレーキペダル戻し中なのにマスターシリンダ液圧Pmcが上昇しているとき、制御のハンチングを生ずるタイミングに至ったと見なし、S17でブレーキアクチュエータ6の停止により差圧制御の圧力源であるポンプをOFFする。これにより、制御のハンチングを防止することができ、マスターシリンダ液圧の上下変動も発生せず、液圧変動に起因した違和感のある振動を運転者に感じさせなくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御液圧ブレーキ装置、特に、マスターシリンダなど制動操作ユニットからの液圧を、ホイールシリンダなどのブレーキ作動ユニットへ導く一般的なブレーキ液圧系に対し、ブレーキ作動ユニットへの液圧を制動操作ユニットからの液圧と切り離して増圧制御可能なブレーキアクチュエータを付加した電子制御液圧ブレーキ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子制御液圧ブレーキ装置としては従来、例えば特許文献1に記載のようなものが知られている。
この電子制御液圧ブレーキ装置は、
マスターシリンダなど制動操作ユニットからの液圧を、ホイールなどのブレーキ作動ユニットに導くブレーキ配管中に挿置した差圧制御弁と、
該差圧制御弁の上流側からブレーキ液を吸入して、このブレーキ液を差圧制御弁の下流側へ吐出するポンプとで上記のブレーキアクチュエータを構成し、
上記した差圧制御弁とポンプとの共働により、差圧制御弁の上流側および下流側間における差圧を制御して、ブレーキ作動ユニットによる制動力を決定し得るようにしたものである。
【0003】
上記の差圧制御に際しては、制動操作ユニットの操作状態(ブレーキペダル踏み込み量および制動操作ユニットの出力液圧)から目標減速度(目標制動力)を求め、
制動操作ユニットの出力液圧により得られるべき制動力および回生制動力の和値で目標制動力を賄い得ない場合、制動力不足分を、ブレーキアクチュエータによる(差圧制御弁とポンプとの共働による)上記の差圧制御(下流側液圧の増圧制御)によって補充し、
これにより、結果として目標減速度(目標制動力)を達成することができる。
【特許文献1】特開2006−096218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、制動操作中における目標減速度(目標制動力)の変化割合が小さな制動操作領域と、大きな制動操作領域とで異なり、それにもかかわらずリニヤな制御が可能となるよう差圧制御弁は、制御入力(制御電流)変化に対する差圧変化割合を、小さな制動操作領域と、大きな制動操作領域とで異ならせてある。
従って、差圧制御弁の制御入力と差圧との関係を表した差圧制御弁特性は、小さな制動操作領域と、大きな制動操作領域との境界において、制御入力変化に対する差圧変化割合が変化する変曲点を有する。
【0005】
かかる変曲点の存在故に、制動操作量を低下させている間、これに伴って低下する目標差圧が上記の変曲点を通過するとき、差圧制御弁の制御入力(制御電流)が急低下し、これをきっかけとして、目標差圧が上記の変曲点相当値まで低下したとき以降、差圧制御弁の制御入力(制御電流)が変曲点を跨いでハンチングする制御のハンチングを生ずる。
かかる制御のハンチングにより上流側液圧が上下変動を繰り返すこととなるが、かかる上流側液圧の上下変動は、制動操作ユニットにキックバックされ、当該ユニットを操作する運転者の足などに振動として伝わり、運転者に違和感を与えるという問題を生ずる。
【0006】
本発明は、上記のような制御のハンチングを生ずることのないようにして、上流側液圧の繰り返し上下変動が発生することのないようにし、
もって、制動操作ユニットを操作する運転者の足などに振動が伝達されるという上記の違和感を解消し得るようにした電子制御液圧ブレーキ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため本発明による電子制御液圧ブレーキ装置は、請求項1に記載のごとくに構成する。
先ず前提となる電子制御液圧ブレーキ装置を説明するに、これは、
制動操作ユニットからの液圧をブレーキ作動ユニットに導くブレーキ配管中に差圧制御弁を挿置し、
該差圧制御弁よりも前記制動操作ユニットに近い上流側ブレーキ配管部分からブレーキ液を吸入し、このブレーキ液を、前記差圧制御弁よりも前記ブレーキ作動ユニットに近い下流側ブレーキ配管部分に吐出するポンプを具え、
これら差圧制御弁とポンプとの共働により、前記上流側ブレーキ配管部分および下流側ブレーキ配管部分間の差圧を制御して、前記ブレーキ作動ユニットによる制動力を決定し得るようにしたものである。
【0008】
本発明は、かかる電子制御液圧ブレーキ装置に対し、
前記差圧制御弁の制御入力変化に対する差圧変化割合が変化する変曲点付近での差圧制御中であるのを検知する変曲点近傍差圧制御検知手段と、
前記制動操作ユニットの制動操作量が低下しているのを検知する制動操作量低下検知手段と、
前記制動操作ユニットから前記上流側ブレーキ配管部分への上流側液圧の上昇を検知する上流側液圧上昇検知手段と、
これら3手段からの信号に応答し、前記変曲点付近での差圧制御中、前記制動操作量が低下しているのに、前記上流側液圧が上昇するハンチング開始時に、前記差圧制御を禁止する差圧制御禁止手段とを設けた構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0009】
かかる本発明の電子制御液圧ブレーキ装置によれば、
差圧制御弁の制御入力変化に対する差圧変化割合が変化する変曲点付近での差圧制御中、制動操作ユニットの制動操作量が低下しているのに、制動操作ユニットから上流側ブレーキ配管部分への上流側液圧が上昇するハンチング開始時に、差圧制御弁とポンプとの共働による差圧制御を禁止するため、
この差圧制御が強行されて差圧制御弁の制御入力が変曲点を跨いでハンチングするのを回避することができ、このハンチングに伴う上流側液圧の繰り返し上下変動も回避することができる。
従って、上流側液圧の上下変動が、制動操作ユニットを操作する運転者の足などに振動としてキックバックされる違和感を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明のー実施例になる電子制御液圧ブレーキ装置のシステム図で、
本実施例においては、図示しなかったが交流同期モータを用いた回生ブレーキと併用して目標減速度(目標制動力)を達成するようブレーキ液圧を電子制御することで、回生エネルギーを効率的に回収するようにした「回生協調ブレーキ制御システム」に応用するのに有利な電子制御液圧ブレーキ装置として構成する。
【0011】
図1において1は、運転者が希望する車両の目標減速度(目標制動力)に応じて踏み込むブレーキペダルで、
該ブレーキペダル1の踏力がバキュームブースタ2により倍力され、倍力された力でマスターシリンダ3の図示せざるピストンカップが押し込まれることによりマスターシリンダ3は、ブレーキペダル1の踏力に応じたマスターシリンダ液圧Pmcを、X配管における一方のブレーキ配管4aおよび他方のブレーキ配管4bに出力するものとする。
従って、バキュームブースタ2およびマスターシリンダ3は、本発明における制動操作ユニットに相当する。
【0012】
一方のブレーキ配管4aは、ブレーキ作動ユニットである右前輪ホイールシリンダ5FRおよび左後輪ホイールシリンダ5RL用のブレーキ液圧系を構成し、
他方のブレーキ配管4bは、ブレーキ作動ユニットである左前輪ホイールシリンダ5FLおよび右後輪ホイールシリンダ5RR用のブレーキ液圧系を構成する。
このため、一方のブレーキ配管4aおよび他方のブレーキ配管4bはそれぞれ、以下のようなブレーキアクチュエータ6を介して、右前輪ホイールシリンダ5FRおよび左後輪ホイールシリンダ5RLと、左前輪ホイールシリンダ5FLおよび右後輪ホイールシリンダ5RRとに接続する。
【0013】
ブレーキアクチュエータ6は、差圧制御弁11a,11bと、増圧弁12FR,12RL,12FL,12RRと、減圧弁13FR,13RL,13FL,13RRと、リザーバ14a,14bと、ポンプ15a,15bと、逆止弁16a,16bとで構成する。
差圧制御弁11a,11bはそれぞれ常開式の比例電磁弁とし、詳しくは後述するが、ソレノイドへの制御電流が大きくなるにつれて全開状態から開度を低下されるものとする。
増圧弁12FR,12RL,12FL,12RRはそれぞれ常開電磁弁とし、ソレノイドへの通電により閉じるものとする。
減圧弁13FR,13RL,13FL,13RRはそれぞれ常閉電磁弁とし、ソレノイドへの通電により開くものとする。
【0014】
差圧制御弁11aの入力ポートに、マスターシリンダ3から延在する一方のブレーキ配管4aを接続する。
差圧制御弁11aの出力ポートから延在する配管17aは、配管18FRにより増圧弁12FRの入力ポートに接続すると共に、配管18RLにより増圧弁12RLの入力ポートに接続する。
増圧弁12FRの出力ポートは配管19FRにより右前輪ホイールシリンダ5FRに接続し、増圧弁12RLの出力ポートは配管19RLにより左後輪ホイールシリンダ5RLに接続する。
【0015】
配管19FR,19RLの途中はそれぞれ、減圧弁13FR,13RLを介して共通な配管20aに接続し、この配管20aを、リザーバ14aの出力ポートおよびポンプ15aの吸入ポート間における配管21aに接続する。
リザーバ14aの入力ポートは、配管22aを経て一方のマスターシリンダ液圧配管4aに通じさせる。
ポンプ15aの吐出ポートは、配管23aにより配管17aに接続し、配管23a中に逆止弁16aを挿置する。
なお逆止弁16aは、ポンプ15aの吐出ポートから配管17aへの液流を許容し、逆向きの液流を阻止する向きに配置する。
【0016】
差圧制御弁11bの入力ポートに、マスターシリンダ3から延在する他方のブレーキ配管4bを接続する。
差圧制御弁11bの出力ポートから延在する配管17bは、配管18FLにより増圧弁12FLの入力ポートに接続すると共に、配管18RRにより増圧弁12RRの入力ポートに接続する。
増圧弁12FLの出力ポートは配管19FLにより左前輪ホイールシリンダ5FLに接続し、増圧弁12RRの出力ポートは配管19RRにより右後輪ホイールシリンダ5RRに接続する。
【0017】
配管19FL,19RRの途中はそれぞれ、減圧弁13FL,13RRを介して共通な配管20bに接続し、この配管20bを、リザーバ14bの出力ポートおよびポンプ15bの吸入ポート間における配管21bに接続する。
リザーバ14bの入力ポートは、配管22bを経て一方のマスターシリンダ液圧配管4bに通じさせる。
ポンプ15bの吐出ポートは、配管23bにより配管17bに接続し、配管23b中に逆止弁16bを挿置する。
なお逆止弁16bは、ポンプ15bの吐出ポートから配管17bへの液流を許容し、逆向きの液流を阻止する向きに配置する。
【0018】
図1につき上述した液圧ブレーキ系は、図2にブロック線図で示すブレーキコントローラ31により制御する。
このブレーキコントローラ31は、目標減速度算出部32および回生協調ブレーキ制御部33により構成する。
目標減速度算出部32には、図1に示すごとくに設けてブレーキペダル1の踏み込みストローク量Stおよびマスターシリンダ液圧Pmcをそれぞれ検出するペダルストロークセンサ34および圧力センサ35からの信号を入力する。
目標減速度算出部32は、これらセンサ34,35で検出したブレーキペダル1の踏み込みストローク量Stおよびマスターシリンダ液圧Pmcから、運転者による制動操作力(ブレーキペダル踏力)Fを推定し、この制動操作力Fから運転者が希望している車両の目標減速度を算出し、この目標減速度を実現するための目標制動力Tboを求める。
【0019】
なお目標減速度の算出に際し、ブレーキペダル1の踏み込みストローク量Stおよびマスターシリンダ液圧Pmcの双方を用いる理由は、
制動操作初期においてはマスターシリンダ液圧Pmcの変化が小さくてペダルストローク量Stを重視して制動操作力Fを推定する必要があり、
制動操作後期においてはペダルストローク量Stの変化が小さくてマスターシリンダ液圧Pmcを重視して制動操作力Fを推定する必要があるためである。
【0020】
回生協調ブレーキ制御部33には、上記目標減速度算出部32で求めた目標制動力Tboと、センサ35で検出したマスターシリンダ液圧Pmcと、車速VSPを検出する車速センサ36からの信号と、ハイブリッド車両からの実行回生制動力などの信号とを入力する。
回生協調ブレーキ制御部33は、これら入力情報をもとに可能最大回生制動力を求め、これと、マスターシリンダ液圧Pmcにより発生し得る制動力Tmcとで(Tmcが零の場合は、可能最大回生制動力のみで)目標制動力Tboを賄い得る場合、目標制動力Tboからマスターシリンダ液圧Pmcによる制動力Tmcを差し引いた差値を回生制動力指令値Tmgとしてハイブリッド車両へ指令する。
【0021】
この場合、ポンプ15a,15bおよび差圧制御弁11a,11bとの共働による差圧制御、つまり、差圧制御弁11a,11bから対応するホイールシリンダに至る下流側ブレーキ配管部分の増圧制御が不要であるから、
回生協調ブレーキ制御部33は、ポンプ15a,15bへのポンプON,OFF指令を「OFF」にすると共に、差圧制御弁11a,11bへの差圧制御弁制御電流Iを零にする。
【0022】
この時における図1の液圧ブレーキ系の作用は以下の通りである。
マスターシリンダ液圧配管4a,4bからのマスターシリンダ液圧Pmcによる制動作用は共に同じであるため、ここでは、一方のマスターシリンダ液圧配管4aからのマスターシリンダ液圧Pmcによる制動作用についてのみ代表的に説明する。
【0023】
差圧制御弁11aへの差圧制御弁制御電流Iが上記の通り零であるため、差圧制御弁11aは全開状態を保つ。
よって、配管4aからのマスターシリンダ液圧Pmcは、差圧制御弁11aおよび配管17aを経て配管18FR,18RLに達する。
配管18FRへのマスターシリンダ液圧Pmcは、常開増圧弁12FRおよび配管19FRを通流し、ホイールシリンダ液圧Pwcとして右前輪ホイールシリンダ5FRに供給され、右前輪を制動することができる。
配管18RLへのマスターシリンダ液圧Pmcは、常開増圧弁12RLおよび配管19RLを通流し、ホイールシリンダ液圧Pwcとして左後輪ホイールシリンダ5RLに供給され、左後輪を制動することができる。
【0024】
ちなみに、バキュームブースタ2およびマスターシリンダ3より成る制動操作ユニットは、前記のように推定した制動操作力Fに対し図3にTmcで例示するごとき制動力を発生するようなマスターシリンダ液圧Pmcを発生する構成とする。
これにより、マスターシリンダ液圧Pmcが上記のごとく、そのままホイールシリンダ液圧Pwcとして右前輪ホイールシリンダ5FRおよび左後輪ホイールシリンダ5RLに供給された時の制動力Tmcを、制動操作力Fに対応した目標制動力(目標減速度)よりも小さくして、できるだけ回生制動力を用いるようにすることで、エネルギー回収効率を高める。
【0025】
上記の制動中、ホイールシリンダ5FRにより制動されている右前輪、および/または、ホイールシリンダ5RLにより制動されている左後輪がロック傾向になるとき、対応する増圧弁12FRおよび/または12RLをONにより閉じてホイールシリンダ液圧Pwcを保圧したり、対応する減圧弁13FRおよび/または13RLをONにより開いてホイールシリンダ液圧Pwcを減圧することで対応車輪の上記ロック傾向を解消する。
【0026】
かかるロック傾向の解消により対応車輪の回転が復活すると、対応する減圧弁13FRおよび/または13RLをOFFにより閉じると共に、対応する増圧弁12FRおよび/または12RLをOFFにより開いてホイールシリンダ液圧Pwcを増圧させる。
かかるアンチスキッドサイクルの繰り返しにより、右前輪および/または左後輪のスリップ率を理想スリップ率(路面との摩擦係数が最大となる15%程度のスリップ率)に保ち、制動距離が最短となるようにするアンチスキッド制御を遂行する。
【0027】
ちなみに、右前輪ホイールシリンダ5FRおよび左後輪ホイールシリンダ5RLはホイールシリンダ液圧Pwcを個別に制御されることから、右前輪ホイールシリンダ5FRのホイールシリンダ液圧Pwcおよび左後輪ホイールシリンダ5RLのホイールシリンダ液圧Pwcは相互に異なるが、図1では両輪のホイールシリンダ液圧Pwcを便宜上同じ符号で示した。
【0028】
図2の回生協調ブレーキ制御部33は、可能最大回生制動力と、マスターシリンダ液圧Pmcにより発生し得る制動力Tmcとで(Tmcが零の場合は、可能最大回生制動力のみで)目標制動力Tboを賄い得ない場合、可能最大回生制動力を回生制動力指令値Tmgとしてハイブリッド車両へ指令する。
更に回生協調ブレーキ制御部33は、図3にシーン1およびシーン2の場合につき例示するごとく、目標制動力Tboから、マスターシリンダ液圧Pmcによる制動力Tmc、および上記の回生制動力指令値Tmgを差し引いて得られる制動力不足分Tupを求め、
この制動力不足分Tupを、差圧制御弁11aおよびポンプ15aの共働による差圧制御、つまり、差圧制御弁11a,11bから対応するホイールシリンダに至る下流側ブレーキ配管部分の増圧制御により補足するため、ポンプ15a,15bへのポンプON,OFF指令を「ON」にすると共に、差圧制御弁11a,11bへの差圧制御弁制御電流Iを以下のように決定する。
【0029】
差圧制御弁制御電流Iの決定に際して回生協調ブレーキ制御部33は、制動力不足分Tupを補償するのに必要なホイールシリンダ液圧Pwcの増圧分、つまり、上流側液圧であるマスターシリンダ液圧Pmcと、下流側液圧であるホイールシリンダ液圧Pwcとの間における目標差圧ΔPを求め、
図4に例示する差圧制御弁11a,11bの動作特性をもとに、目標差圧ΔPを発生させるのに必要な制御電流Iを検索し、これを指令値として差圧制御弁11a,11bに供給する。
【0030】
図4の差圧制御弁特性は、差圧制御弁11a,11bに供給する制御電流Iと、この電流Iを供給されたとき差圧制御弁11a,11bが、ホイールシリンダ液圧Pwcをマスターシリンダ液圧Pmcに対し如何様な差圧ΔPで上昇させるかを示すものである。
ところで、制動操作中における目標減速度(目標制動力Tbo)の変化割合が小さな制動操作領域と、大きな制動操作領域とで異なり、それにもかかわらずリニヤな制御が可能となるよう差圧制御弁11a,11bは、制御電流Iの変化に対する差圧ΔPの変化割合が図4に例示するごとく、小さな制動操作領域と、大きな制動操作領域とで異なるよう構成されている。
従って、差圧制御弁11a,11bの制御電流Iと差圧ΔPとの関係を表した差圧制御弁特性は図4に示すごとく、小さな制動操作領域と、大きな制動操作領域との境界において、制御電流変化に対する差圧変化割合が変化する変曲点Zを有する。
【0031】
以下、図1の液圧ブレーキ系において行われる差圧制御作用を詳述する。
マスターシリンダ液圧配管4aに係わるブレーキ液圧系の差圧制御作用、および、マスターシリンダ液圧配管4bに係わるブレーキ液圧系の差圧制御作用は共に同じであるため、
ここでは、一方のマスターシリンダ液圧配管4aに係わるブレーキ液圧系の差圧制御作用についてのみ代表的に説明する。
【0032】
ポンプ15aが上記の「ON」指令により作動され、このポンプ15aは、管路4a,22aからリザーバ14aおよび配管21aを経てブレーキ液を吸入し、このブレーキ液を、逆止弁16aが挿置された配管23aを経て配管17aに吐出し、配管17aへのブレーキ液は配管18FR,18RLに達する。
配管18FRへのブレーキ液は、常開増圧弁12FRおよび配管19FRを経て右前輪ホイールシリンダ5FRに供給され、これへのホイールシリンダ液圧Pwcを増圧させることができ、
配管18RLへのブレーキ液は、常開増圧弁12RLおよび配管19RLを経て左後輪ホイールシリンダ5RLに供給され、これへのホイールシリンダ液圧Pwcを増圧させることができる。
【0033】
右前輪および左後輪ホイールシリンダ液圧Pwcの増圧程度はそれぞれ、制御電流Iに応動する差圧制御弁11aの開度で決まり、
従って、これらホイールシリンダ液圧Pwcをマスターシリンダ液圧Pmcに対し前記の目標差圧ΔPだけ上昇させることができる。
これにより右前輪および左後輪の制動力が、図3の制動力不足分Tpuだけ増大され、前記した回生協調ブレーキ制御と相まって、目標制動力Tbo(目標減速度)を実現することができる。
【0034】
ところで、図4につき前述したごとく、差圧制御弁11a,11bの制御電流Iと差圧ΔPとの関係を表した差圧制御弁特性に変曲点Zが存在し、この変曲点Zを跨いでその前後で、制御電流Iの変化に対する差圧ΔPの変化割合が異なるため、以下のような問題を生ずる懸念がある。
【0035】
ブレーキペダルストローク量Stを図5のごとくに低下させている間、これに伴って低下する目標差圧ΔPが図4における上記の変曲点を通過する図5の瞬時t0より、差圧制御弁11a,11bの制御電流Iが図5に示すように急低下する。
かかる制御電流Iの急低下は、差圧制御弁11a,11bを差圧減少用に開度増大させることから、差圧制御弁11a,11bの下流側(ホイールシリンダ側)から上流側(マスターシリンダ側)へブレーキ液を逆流させることとなり、結果として上流側液圧であるマスターシリンダ液圧Pmを図5の瞬時t1以後、図示のように上昇させる。
かかるマスターシリンダ液圧Pmcの上昇は、ブレーキペダルストローク量Stが低下中であるにもかかわらず、マスターシリンダ液圧Pmcから求めている目標減速度(目標制動力Tbo)を増大させ、これに伴う目標差圧ΔPの増大に呼応して差圧制御弁11a,11bの制御電流Iが、図5の瞬時t2以降におけるごとく閉弁用に増大される。
【0036】
かかる制御電流Iの増大による差圧制御弁11a,11bの閉弁動作で、ポンプ15a,15bが差圧制御弁11a,11bの上流側からブレーキ液を吸い込んで上流側液圧であるマスターシリンダ液圧Pmcを、図5の瞬時t3以降におけるごとく低下させる。
かかるマスターシリンダ液圧Pmcの低下は、このマスターシリンダ液圧Pmcから求めている目標減速度(目標制動力Tbo)を低下させ、これに伴う目標差圧ΔPの低下に呼応して差圧制御弁11a,11bの制御電流Iが、図5の瞬時t4以降におけるごとく開弁用に低下される。
【0037】
かかる制御電流Iの低下は、差圧制御弁11a,11bを差圧減少用に開度増大させること から、差圧制御弁11a,11bの下流側(ホイールシリンダ側)から上流側(マスターシリンダ側)へブレーキ液を逆流させることとなり、結果として上流側液圧であるマスターシリンダ液圧Pmを図5の瞬時t5以後、図示のように上昇させる。
かかるマスターシリンダ液圧Pmの上昇は、ブレーキペダルストローク量Stが低下中であるにもかかわらず、マスターシリンダ液圧Pmから求めている目標減速度(目標制動力Tbo)を増大させ、これに伴う目標差圧ΔPの増大に呼応して差圧制御弁11a,11bの制御電流Iが、図5の瞬時t6以降におけるごとく閉弁用に増大される。
【0038】
かかる制御電流Iの増大による差圧制御弁11a,11bの閉弁動作で、ポンプ15a,15bが差圧制御弁11a,11bの上流側からブレーキ液を吸い込んで上流側液圧であるマスターシリンダ液圧Pmcを、図5の瞬時t7以降におけるごとく低下させる。
かかるマスターシリンダ液圧Pmcの低下は、このマスターシリンダ液圧Pmcから求めている目標減速度(目標制動力Tbo)を低下させ、これに伴う目標差圧ΔPの低下に呼応して差圧制御弁11a,11bの制御電流Iが、図5の瞬時t8以降におけるごとく開弁用に低下される。
【0039】
以上の作用が繰り返されることで、ブレーキペダルストローク量Stの低下により目標差圧ΔPが図4の変曲点Zに相当する値まで低下した図5の瞬時t0以降、差圧制御弁11a,11bの制御電流Iが変曲点Zを跨いで図示のごとくハンチングし、これに伴って上流側液圧であるマスターシリンダ液圧Pmcも図5に示すような上下変動を繰り返す。
ところでマスターシリンダPmcの上下変動は、マスターシリンダ3を経てブレーキペダル1にキックバックされ、当該ブレーキペダル1を操作する運転者の足などに振動として伝わり、運転者に違和感を与えるという問題を生ずる。
【0040】
本実施例においては、上記のような制御のハンチングを生ずることのないようにして、マスターシリンダ液圧Pmcの繰り返し上下変動が発生することのないようにし、もって、マスターシリンダ液圧Pmcの繰り返し上下変動が運転者に振動として伝達される違和感をなくすため、
図2のブレーキコントローラ31が、図6に示す制御プログラムを実行して以下のような差圧制御を遂行するようになす。
【0041】
先ずステップS11において、マスターシリンダ液圧Pmcおよびブレーキペダル1の踏み込みストローク量Stを読み込む。
ステップS12においては、マスターシリンダ液圧Pmcおよびブレーキペダル踏み込みストローク量Stから車両の目標減速度を演算し、これを達成するのに必要な車両の目標制動力Tboを求める。
【0042】
ステップS13においては、差圧制御弁11a,11bの制御電流Iを、前記したと同様の演算により求めて、差圧制御弁11a,11bに指令する。
つまり、図3につき前述した制動力不足分Tupを補償するのに必要なホイールシリンダ液圧Pwcの増圧分、つまり、上流側液圧であるマスターシリンダ液圧Pmcと、下流側液圧であるホイールシリンダ液圧Pwcとの間における目標差圧ΔPを求め、
図4に例示する差圧制御弁11a,11bの動作特性をもとに、目標差圧ΔPを発生させるのに必要な制御電流Iを検索し、これを指令値として差圧制御弁11a,11bに供給する。
【0043】
ステップS11〜ステップS13は、前記した通常の差圧制御であるが、前記したハンチング防止用に制御をステップS14以降に進める。
制動操作量低下検知手段に相当するステップS14においては、ブレーキペダルストローク量StとSt(前回値)とを対比し、St−St(前回値)<0か否かにより、ブレーキペダル1を戻し操作中か否かをチェックする。
ブレーキペダル1を戻し操作中でなければ、前記したハンチングの問題を生じないから制御をそのまま終了する。
【0044】
ステップS14でブレーキペダル1の戻し操作中と判定する場合は、変曲点近傍差圧制御検知手段に相当するステップS15において、ステップS13で求めた差圧制御電流Iが図4の変曲点Z付近の値まで低下したか否かをチェックする。
差圧制御電流Iが変曲点Z付近の値まで低下していなかれば、前記したハンチングの問題を生じないから制御をそのまま終了する。
【0045】
ステップS15で差圧制御電流Iが変曲点Z付近の値まで低下したと判定する場合、上流側液圧上昇検知手段に相当するステップS16において、マスターシリンダ液圧PmcとPmc(前回値)とを対比し、Pmc−Pmc(前回値)>0か否かにより、マスターシリンダ液圧Pmcが上昇中か否かをチェックする。
マスターシリンダ液圧Pmcが上昇中でなければ、未だ前記したハンチングを生ずるタイミングに至っていないから制御をそのまま終了する。
【0046】
ステップS16でマスターシリンダ液圧Pmcが上昇していると判定する場合、ステップS14でのブレーキペダル戻し判定、および、ステップS15での変曲点付近判定と相まって、前記のハンチングを生ずるタイミングに至ったと見なし得ることから、
制御をステップS17に進めて、図1のブレーキアクチュエータ6を停止させ、図2のポンプON,OFF指令を「OFF」にする。
従ってステップS17は、本発明における差圧制御禁止手段に相当する。
【0047】
本実施例におけるステップS14〜ステップS17の差圧制御によれば、以下のような作用効果を奏し得る。
図7に基づき説明すると、図示のようにブレーキペダルストローク量Stを低下させている間、瞬時t1に変曲点Z付近での差圧制御になったと判定し(ステップS15)、かかる変曲点Z近傍での差圧制御中、ブレーキペダルストローク量Stが低下しているのに(ステップS14)、マスターシリンダ液圧Pmcが上昇したと判定する(ステップS16)瞬時t2をもってハンチング開始タイミングと見なし、
この時以後、ブレーキアクチュエータ6を停止させて、ポンプON,OFF指令を「OFF」にする(ステップS17)。
【0048】
従って、ハンチング開始判定時t2以後は、差圧制御弁制御電流Iが実線で示すごとくハンチングすることがなく、マスターシリンダ液圧Pmcも実線で示すごとく上下変動することがない。
ハンチング開始判定時t2以後も通常の差圧制御を強行すると、図5につき前述したごとく、また、図7に破線で示すように、差圧制御弁制御電流Iが変曲点を跨いでハンチングし、このハンチングに伴ってマスターシリンダ液圧Pmcが繰り返し上下変動し、この液圧変動が運転者に振動としてキックバックされる違和感を生ずる。
しかし本実施例によれば、ハンチング開始判定時t2以後、ブレーキアクチュエータ6を停止させて、ポンプ15a,15bをOFFさせるため、マスターシリンダ液圧Pmcの上下変動を生ずることがなく、この液圧変動が運転者に振動としてキックバックされる違和感を回避することができる。
【0049】
本実施例においては更に、変曲点Z付近での差圧制御中であるのを判定するに際し、
制動操作量(ブレーキペダルストローク量St、マスターシリンダ液圧Pmc)、および、差圧制御弁11a,11bの制御電流Iと差圧ΔPとの関係を表した図4に示す差圧制御弁特性を用い、
制動操作量(ブレーキペダルストローク量St、マスターシリンダ液圧Pmc)から目標差圧ΔPを求め、この目標差圧ΔPを実現する差圧制御弁11a,11bの制御電流Iを図4に示す差圧制御弁特性から求め、この差圧制御電流Iが図4の変曲点Z付近にある時をもって、変曲点Z付近での差圧制御中であると判定するため、
通常の差圧制御に際して用いる信号や格納データのみから当該判定を行うことができてコスト的に大いに有利である。
【0050】
また、制動操作量(ブレーキペダルストローク量St、マスターシリンダ液圧Pmc)から目標差圧ΔPを求めるに際しても、図3につき前述したごとく、制動操作量(ブレーキペダルストローク量St、マスターシリンダ液圧Pmc)により運転者が希望する目標制動力Tboから、マスターシリンダ液圧Pmcにより得られる制動力Tmcおよび回生制動力Tmgを差し引いて得られる制動力不足分Tpuを補足するのに必要なホイールシリンダ液圧Pwcの上昇量を目標差圧ΔPとするため、
通常の差圧制御に際して用いる信号や格納データのみから当該目標差圧ΔPを求めることができてコスト的に大いに有利である。
【0051】
上記の差圧制御は、ブレーキペダル1の再踏み込みが行われるまで継続し、ブレーキペダル1の再踏み込みがあった時、図6のステップS18でこれを検知し、制御をステップS19以降の通常制御復帰ループに進める。
ステップS19では、ブレーキペダル1の再踏み込み速度が設定速度α以上であるか否かにより、運転者が本当に再制動を希望してブレーキペダル1を再踏み込みしたのか否かの再踏み込み判定を、誤判定なく高精度に行う。
再踏み込み判定がなされる前は、運転者が本当に再制動を希望してブレーキペダル1を再踏み込みしていなくて、上記の差圧制御を継続する必要があることから、制御をそのまま終了させる。
【0052】
ステップS19でブレーキペダル1の再踏み込判定がなされた後は、ステップS20で、ブレーキアクチュエータ6を作動させて、ポンプ15a,15bのON,OFF指令を「ON」にすると共に、差圧制御弁11a,11bへの制御電流Iを制御最大値にする。
かように差圧制御弁11a,11bへの制御電流Iを最大値にする理由は、上記のハンチング防止用の差圧制御で上昇を抑制されていたホイールシリンダ液圧Pwcを速やかに通常制御値へ上昇させて、通常制御復帰応答を高めるためである。
【0053】
かかるブレーキアクチュエータ6の作動(ポンプ15a,15bのON)および差圧制御電流Iの最大値指令によるホイールシリンダ液圧Pwcの上昇で、車両の実減速度(負値)は、ステップS12で求めた目標減速度に向かう。
ステップS21においては、車両の実減速度(負値)が目標減速度に達したか否かをチェックし、実減速度(負値)が目標減速度に達するまでは、制御をステップS20に戻してホイールシリンダ液圧Pwcを通常制御値へ向けて更に上昇させる。
【0054】
かかるホイールシリンダ液圧Pwcの通常制御値への上昇で車両の実減速度(負値)が目標減速度に達すると、ステップS21はこれを判定して制御をステップS22に進め、ここで差圧制御弁11a,11bへの制御電流Iを通常制御値として通常の差圧制御に復帰する。
よって、通常の差圧制御への復帰を、制動力段差がない時のタイミングで、滑らかに行うことができる。
【0055】
従って、ステップS18〜ステップS22も、ステップS17と同じく、本発明における差圧制御禁止手段を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一実施例になる電子制御液圧ブレーキ装置のシステム図である。
【図2】同電子制御液圧ブレーキ装置におけるブレーキコントローラの機能別ブロック線図である。
【図3】図1に示す液圧ブレーキシステムの制動力変化特性図である。
【図4】図1に示す液圧ブレーキシステムにおける差圧制御弁の動作特性図である。
【図5】図4に示す差圧制御弁動作特性に起因して発生する制御のハンチング現象を示すタイムチャートである。
【図6】図5に示すハンチング現象を解消するための差圧制御プログラムを示すフローチャートである。
【図7】図6に示す差圧制御によるハンチング現象の抑制状態を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 ブレーキペダル
2 バキュームブースタ(制動操作ユニット)
3 マスターシリンダ(制動操作ユニット)
4a 一方のマスターシリンダ液圧配管
4b 他方のマスターシリンダ液圧配管
5FL,5FR 左右前輪ホイールシリンダ
5RL,5RR 左右後輪ホイールシリンダ
6 ブレーキアクチュエータ
11a,11b 差圧制御弁
12FL,12FR 左右前輪ホイールシリンダ用増圧弁
12RL,12RR 左右後輪ホイールシリンダ用増圧弁
13FL,13FR 左右前輪ホイールシリンダ用減圧弁
13RL,13RR 左右後輪ホイールシリンダ用減圧弁
14a,14b リザーバ
15a,15b ポンプ
16a,16b 逆止弁
31 ブレーキコントローラ
32 目標減速度算出部
33 回生協調ブレーキ制御部
34 ペダルストロークセンサ
35 圧力センサ
36 車速センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制動操作ユニットからの液圧をブレーキ作動ユニットに導くブレーキ配管中に差圧制御弁を挿置し、
該差圧制御弁よりも前記制動操作ユニットに近い上流側ブレーキ配管部分からブレーキ液を吸入し、このブレーキ液を、前記差圧制御弁よりも前記ブレーキ作動ユニットに近い下流側ブレーキ配管部分に吐出するポンプを具え、
これら差圧制御弁とポンプとの共働により、前記上流側ブレーキ配管部分および下流側ブレーキ配管部分間の差圧を制御して、前記ブレーキ作動ユニットによる制動力を決定し得るようにした電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記差圧制御弁の制御入力変化に対する差圧変化割合が変化する変曲点付近での差圧制御中であるのを検知する変曲点近傍差圧制御検知手段と、
前記制動操作ユニットの制動操作量が低下しているのを検知する制動操作量低下検知手段と、
前記制動操作ユニットから前記上流側ブレーキ配管部分への上流側液圧の上昇を検知する上流側液圧上昇検知手段と、
これら3手段からの信号に応答し、前記変曲点付近での差圧制御中、前記制動操作量が低下しているのに、前記上流側液圧が上昇するハンチング開始時に、前記差圧制御を禁止する差圧制御禁止手段とを具備してなることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記変曲点近傍差圧制御検知手段は、前記制動操作量、および、前記差圧制御弁の制御入力と差圧との関係を表した差圧制御弁特性から、前記変曲点付近での差圧制御中を検知するものであることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記変曲点近傍差圧制御検知手段は、前記制動操作量から前記差圧の目標値を求め、該目標差圧を実現する前記差圧制御弁の制御入力を前記差圧制御弁特性から求め、該差圧制御弁の制御入力が前記変曲点付近にあるとき、該変曲点付近での差圧制御中であると判定するものであることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記変曲点近傍差圧制御検知手段は、前記制動操作量対応の目標制動力から、前記上流側液圧により得られるべき制動力を差し引いて得られる制動力不足分を補うのに必要な下流側液圧上昇量を前記目標差圧とするものであることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。
【請求項5】
回生制動力との協調により、前記制動操作量対応の目標制動力を実現するようにした、請求項3に記載の電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記変曲点近傍差圧制御検知手段は、前記目標制動力から、前記上流側液圧により得られるべき制動力および前記回生制動力を差し引いて得られる制動力不足分を補うのに必要な下流側液圧上昇量を前記目標差圧とするものであることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記差圧制御禁止手段は、前記制動操作量が低下から増大に転じたことに呼応して前記差動圧制御の禁止を解除するとき、前記差圧制御弁を一時的に全閉して前記下流側液圧を急上昇させるものであることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記差圧制御禁止手段は、前記制動操作量の増大速度が設定値以上である時をもって前記制動操作量が低下から増大に転じたと判定し、前記差動圧制御の禁止を解除するものであることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電子制御液圧ブレーキ装置において、
前記差圧制御禁止手段は、前記差圧制御弁の一時的な全閉を、車両制動力が前記制動操作量対応の目標制動力に到達するまで継続し、以後は差圧制御弁を通常制御に復帰させるものであることを特徴とする電子制御液圧ブレーキ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−12841(P2010−12841A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172873(P2008−172873)
【出願日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】