説明

電子回路装置および電子機器

【課題】高温化に晒すことなく、配線基板と電子部品とを電気的に接合して、電子部品が配線基板に確実に実装された信頼性に優れる電子回路装置、および、かかる電子回路装置を備える電子機器を提供すること。
【解決手段】電子回路装置10は、基板1と、所定形状にパターニングされ、端子を備える配線パターン2とを有する配線基板7と、本体部4の両端側に設けられた電極5を備えるチップコンデンサ6とを有しており、電極5が導電性を有する接合膜3を介して端子と電気的に接合されることにより、チップコンデンサ6は配線基板7に固定されている。接合膜3は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含むものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
配線パターンが形成されたプリント配線板(配線基板)に、チップコンデンサ、チップ抵抗等のチップ型の電子部品(チップ部品)を実装する手法として、電子部品が備える端子(電極)と導体パターンの一部に備える端子とを接合する表面実装技術(SMT(Surface Mount Technology))が知られている。
このような表面実装技術では、端子間の接合に、半田リフロー処理が広く用いられている。より具体的には、例えば、プリント配線板が備える端子と、チップ部品が備える端子との間に半田ボールを介して、プリント配線板上にチップ部品を載置する。そして、これらを加熱して、半田を溶融させた後に、再固化させることにより、プリント配線板とチップ部品とが端子間で電気的に接合される。
【0003】
以上のような半田を溶融、固化させる半田リフロー処理では、近年、環境性の問題から、鉛フリー半田が用いられ、このような鉛フリー半田を溶融させるために、チップ部品が高温下(260℃程度)に晒される。このように、チップ部品がかかる高温下に晒されると、チップ部品にクラックが発生するという問題があった。また、チップ部品を配線基板に電気的に接続する方法として、半田リフロー処理よりも低温(約150℃)で導通、固定することが可能な、Agペーストのように金属粒子を含有する導電性接着剤を用いる試みがある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このような導電性接着剤は、金属粒子の点接触により導通するものであり、抵抗率が高かかったり、金属粒子同士が接触せずに、端子間で導通が得られないという問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2000−244105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高温化に晒すことなく、配線基板と電子部品とを電気的に接合して、電子部品が配線基板に確実に実装された信頼性に優れる電子回路装置、および、かかる電子回路装置を備える電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的は以下の本発明により達成される。
本発明の電子回路装置は、平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子と前記第2の端子とが導電性を有する接合膜で接合されることにより、前記電子部品が前記配線基板に対して、固定されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の端子と前記第2の端子とを接合していることを特徴とする。
これにより、高温化に晒すことなく、配線基板と電子部品とを電気的に接合して、電子部品が配線基板に確実に実装された信頼性に優れる電子回路装置を提供することができる。
【0007】
本発明の電子回路装置は、平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子は、導電性を有する接合膜で構成され、前記第2の端子に、前記第1の端子が接合することにより、前記電子部品が前記配線基板に対して固定されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第2の端子に接合していることを特徴とする。
これにより、高温化に晒すことなく、配線基板と電子部品とを電気的に接合して、電子部品が配線基板に確実に実装された信頼性に優れる電子回路装置を提供することができる。
【0008】
本発明の電子回路装置では、前記電気配線は、前記接合膜と同様の接合膜で構成され、前記第1の端子と一体的に形成されていることが好ましい。
これにより、一体化して、1つの工程で電気配線と接合膜を形成することができる。これにより、電子回路装置の生産性を高めることができる。
本発明の電子回路装置では、前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種であることが好ましい。
接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性と伝熱性とを発揮するものとなる。その結果、電子回路装置は、回路内での不本意な電流の損失がなく、より低電圧で駆動することができるものとなる。
【0009】
本発明の電子回路装置では、前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接合膜の接着性をより高度化することができる。結果として、得られる電子回路装置の信頼性をさらに高いものとすることができる。
【0010】
本発明の電子回路装置では、前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものであることが好ましい。
かかる構成の接合膜は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜は、電子部品が備える端子に対して特に強固に接着することにより、配線基板に対して、電子部品がより確実に固定される。また、かかる構成の接合膜は、優れた導電性、伝熱性を有するものとなる。結果として、製造される電子回路装置の信頼性をさらに高いものとすることができる。
本発明の電子回路装置では、前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、接合膜を介して電子部品と配線基板とをより強固に接合することができるようになる。
【0011】
本発明の電子回路装置は、平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子と前記第2の端子とが導電性を有する接合膜で接合されることにより、前記電子部品が前記配線基板に対して、固定されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の端子と前記第2の端子とを接合していることを特徴とする。
これにより、高温化に晒すことなく、配線基板に確実に実装し得る、信頼性に優れた電子回路装置を提供することができる。
【0012】
本発明の電子回路装置は、平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子は、導電性を有する接合膜で構成され、前記第2の端子に、前記第1の端子が接合することにより、前記電子部品が前記配線基板に対して固定されており、
前記接合膜は、金属原子と有機成分で構成された脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第2の端子に接合していることを特徴とする。
これにより、高温化に晒すことなく、配線基板に確実に実装し得る、信頼性に優れた電子回路装置を提供することができる。
【0013】
本発明の電子回路装置では、前記電気配線は、前記接合膜と同様の接合膜で構成され、前記第1の端子と一体的に形成されていることが好ましい。
これにより、配線基板上に電子部品を効率良く実装することができ、製造される電子回路装置の生産性を高めることができる。
本発明の電子回路装置では、前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものであることが好ましい。
かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜を成膜することができる。
【0014】
本発明の電子回路装置では、前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものであることが好ましい。
これにより、接合膜として、純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜を形成することができる。すなわち、接合膜を介した電子部品と配線基板との接合強度が特に優れたものとなる。
【0015】
本発明の電子回路装置では、前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものであることが好ましい。
このように成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基として用いる構成とすることにより、形成された金属膜中に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜を成膜することができる。
【0016】
本発明の電子回路装置では、前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成されることが好ましい。
これらの脱離基は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、エネルギーを付与することによって比較的簡単に、かつ均一に脱離する脱離基が得られることとなり、接合膜の接着性をより高度化することができる。結果として、得られる電子回路装置の信頼性をさらに高いものとすることができる。
【0017】
本発明の電子回路装置では、前記脱離基は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基で構成される脱離基は、化学的な安定性が高い。そのため、脱離基としてアルキル基を備える接合膜は、劣化するのが好適に抑制される。また、このような接合膜は、優れた撥水性を発現するものであり、電子回路装置を多湿な環境下で使用した場合でも、接合膜が吸湿することなく、接合膜が変性(劣化)するのがより確実に防止される。結果として、電子回路装置の信頼性を長期間にわたって特に優れたものとすることができる。
【0018】
本発明の電子回路装置では、前記有機金属材料は、金属錯体であることが好ましい。
金属錯体を用いて接合膜を成膜することにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、確実に接合膜を形成することができる。
本発明の電子回路装置では、前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
これにより、接合膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、接合膜は、優れた導電性、伝熱性を発揮するものとなる。
【0019】
本発明の電子回路装置では、前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
これにより、接合膜の安定性が高くなり、接合膜を介して電子部品と配線基板とをより強固に接合することができるようになる。その結果、電子回路装置の信頼性は特に優れたものとなる。
【0020】
本発明の電子回路装置では、前記電子部品は、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップインダクタ、トランジスタまたはダイオードであることが好ましい。
このような電子部品は、配線基板に対して接合膜を介して、より好適に接合することができる。また、電子回路装置を製造する際(電子部品を配線基板に接合する際)に、高温での熱処理を必要としないため、これらの電子部品の機能が十分に発揮された電子回路装置となる。
【0021】
本発明の電子回路装置では、前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じることが好ましい。
これにより、電子部品や配線基板に対して、化学的結合に基づいて強固に接合可能な接合膜が得られる。
本発明の電子回路装置では、前記活性手は、未結合手または水酸基であることが好ましい。
これにより、電子部品や配線基板に対して、特に強固な接合が可能となる。
【0022】
本発明の電子回路装置では、前記接合膜の平均厚さは、50〜1000nmであることが好ましい。
これにより、電子部品を配線基板に高い寸法精度で強固に接合することができる。その結果、近年の、電子部品の配線基板への高集積化(高密度実装化)に伴う、導体パターンの細線化、および電子部品の小型化にも好適に対応可能な電子回路装置となる。
【0023】
本発明の電子回路装置では、前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしていることが好ましい。
これにより、接合膜を用いて得られた電子回路装置の寸法精度は、従来に比べて格段に高いものとなる。また、従来に比べ、短時間で強固な接合が可能になる。
本発明の電子回路装置では、前記接合膜が接する少なくとも一方の面には、予め、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されていることが好ましい。
これにより、接合膜が接する表面を清浄化および活性化し、接合膜の接合強度を高めることができる。
【0024】
本発明の電子回路装置では、前記表面処理は、プラズマ処理であることが好ましい。
これにより、接合膜が接する表面を特に最適化することができる。
本発明の電子回路装置では、前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、接合膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
【0025】
本発明の電子回路装置では、前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線であることが好ましい。
これにより、接合膜に付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜中の脱離基を確実に脱離させることができる。その結果、接合膜の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜に接着性を発現させることができる。
【0026】
本発明の電子回路装置では、前記加熱の温度は、25〜100℃であることが好ましい。
これにより、接合体が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。さらに、電子部品の特性に影響を及ぼすのを確実に防止することができる。
【0027】
本発明の電子回路装置では、前記圧縮力は、0.2〜10MPaであることが好ましい。
これにより、圧力が高すぎて電子部品や配線基板に損傷等が生じるのを防止しつつ、これらの接合強度を確実に高めることができる。結果として、電子回路装置の信頼性を特に優れたものとすることができる。
本発明の電子回路装置では、前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われることが好ましい。
これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギーの付与をより簡単に行うことができる。
【0028】
本発明の電子回路装置では、さらに、前記配線基板と前記電子部品とを接合する絶縁性接合膜を有し、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
当該絶縁性接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記配線基板と前記電子部品とを接合していることが好ましい。
これにより、電子部品と配線基板との接合強度を特に優れたものとすることができる。
本発明の電子機器では、本発明の電子回路装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の電子回路装置および電子機器を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0030】
<電子回路装置>
まず、本発明の電子回路装置について説明する。
なお、以下の説明では、電子部品としてチップ型のコンデンサ(チップコンデンサ)を用いた場合を一例として説明する。
<<第1実施形態>>
図1は、本発明の電子回路装置の第1実施形態を示す上面図、図2は、図1に示す電子回路装置のA−A線断面図、図3は、図1に示す電子回路装置におけるIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図4は、図1に示す電子回路装置におけるIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図5は、Iの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図、図6は、図5に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図、図7は、IIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図8は、IIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図9は、IIの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜図9中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0031】
本実施形態の電子回路装置10は、配線基板(回路基板)7と、チップコンデンサ(電子部品)6とを有している。配線基板7は、絶縁性の基板1と、基板1上に設けられ、端子(第1の端子)21を備える配線パターン2とを有し、チップコンデンサ6は、本体部4と、電極(第2の端子)5とを有している。本実施形態では、配線基板7が有する端子21と、電子部品6が有する電極5とが導電性を有する接合膜3を介して接合されている。このように接合膜3を介して端子21と電極5とが接合することにより、チップコンデンサ6と配線基板7とが固定されている。以下、各部の構成について詳細に説明する。
【0032】
図1、図2に示すように、電子回路装置10において、配線基板7は、基板1と配線パターン2とで構成されている。
基板1は、絶縁基板であり、例えば、ポリイミド等の各種樹脂材料や、ガラス等の各種セラミック材料で構成されている。基板1の平面視形状は正方形、長方形等の四角形とされる。
【0033】
この基板1上には、例えば、銅等の導電性金属材料で構成される配線パターン2が所定形状で設けられている。そして、配線パターン2の一部には、チップコンデンサ6が有する電極(外部電極)5に対応するように、端子21が設けられている。
また、チップコンデンサ6は、本体部4の両端側に電極(外部電極)5が設けられた構成となっている。
【0034】
このような電極5は、例えば、Ag、Ag−Pd、Ag−Pt、Cu、Ni等の厚膜や、Ni、Sn、Sn−Pb、Cu等のめっき等で構成されている。
かかる構成の電子回路装置10において、導電性を有する接合膜3が、配線基板7が有する端子21上に設けられている。そして、この接合膜3を介して、チップコンデンサ6の電極5が、配線基板7の端子21に接合されることにより、チップコンデンサ6と配線基板7とが電気的に接続されるとともに、配線基板7上にチップコンデンサ6が固定される。
【0035】
本発明では、この接合膜3の構成に特徴を有しており、具体的には、接合膜3としては、次のようなIまたはIIの構成のものが用いられる。
以下、IおよびIIの構成の接合膜3について、それぞれ、詳述する。また、本実施形態では、端子21側に設けられた接合膜3について説明した後、この接合膜3で電極5を端子21に接合する場合について説明する。
【0036】
I:まず、Iの構成の接合膜3は、端子21上に設けられ、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子と、これら金属原子および酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基303とを含むものである(図3参照。)。換言すれば、接合膜3は、金属酸化物で構成される金属酸化物膜に脱離基303を導入したものと言うことができる。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3(金属原子および酸素原子の少なくとも一方)から脱離し、図4に示すように、接合膜3の少なくとも表面35の付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、チップコンデンサ6の電極5を、接合膜3を備えた端子21に強固に接合、固定することができる。
【0037】
この接合膜3と電極5との接合は、半田リフロー処理を用いた接合のように、高温下(260℃以上)に晒すことなく行うことができるため、チップコンデンサ6において、本体部4の電極5との接合部分等でクラックが発生するのを確実に防止することができ、電子回路装置10は、信頼性に優れたものとなる。また、チップコンデンサをかかる高温下に晒すと、チップコンデンサの構成、構成材料によっては、(静電)容量値の低下や、温度特性(コンデンサが本来有する容量値を担保することができる温度範囲)の変質(劣化)を引き起こすが、本実施形態において、このような問題が発生するのを確実に防止することができる。
【0038】
また、接合膜3は、金属原子と、この金属原子と結合する酸素原子とで構成されるもの、すなわち主として金属酸化物で構成されるものであることから、変形し難い強固な膜となる。このため、電子回路装置10では、電極5の端子21からの剥離をより確実に防止することができる。結果として、チップコンデンサ6と配線基板7との間での剥離の発生が確実に防止される。
また、Iの構成の接合膜3は、優れた導電性を有している。接合膜3は、Agペーストのように、Ag粒子の点接触により導通するのではなく、それ自体が導電性を有するものであるから、接合膜3を介した電極5と端子21との電気的な接続が、特に低抵抗率なものとなる。
【0039】
さらに、接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、リフロー処理中の半田や、導電性接着剤のように、液状または粘液状(半固形状)で流動性を有する接合媒体に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状が変化しない。その結果、配線パターン2に設けられた端子21およびチップコンデンサ6が有する電極5の大きさが比較的小さい、高集積、高密度の電子回路装置10において、チップコンデンサ6を配線基板7により正確に接合、固定することができる。さらに、半田リフロー処理のように、配線基板上に電子部品を固定する時間が不要になり、短時間で強固な接合が可能となる。
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子が選択される。
【0040】
具体的には、金属原子としては、特に限定されないが、例えば、Li、Be、B、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、La、Hf、Ta、W、TiおよびPb等が挙げられる。中でも、In(インジウム)、Sn(スズ)、Zn(亜鉛)、Ti(チタン)およびSb(アンチモン)のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いるのが好ましい。接合膜3を、これらの金属原子を含むもの、すなわちこれらの金属原子を含む金属酸化物に脱離基303を導入したものとすることにより、接合膜3は、優れた導電性を発揮するものとなる。なお、かかる接合膜3は、高い透明性および高い伝熱性も有する。
【0041】
より具体的には、金属酸化物としては、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)および二酸化チタン(TiO)等が挙げられる。
なお、金属酸化物としてインジウム錫酸化物(ITO)を用いる場合には、インジウムとスズとの原子比(インジウム/スズ比)は、191〜80/20であるのが好ましく、97/3〜85/15であるのがより好ましい。これにより、前述したような効果をより顕著に発揮させることができる。
【0042】
また、接合膜3中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と酸素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、端子21と電極5とをより強固に接合することができるようになる。
また、脱離基303は、前述したように、金属原子および酸素原子の少なくとも一方から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
【0043】
かかる観点から、脱離基303には、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種が好適に用いられる。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
【0044】
なお、上記の各原子で構成される原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基およびスルホン酸基等が挙げられる。
以上のような各原子および原子団の中でも、Iの構成の接合膜3では、脱離基303は、特に、水素原子であるのが好ましい。水素原子で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303として水素原子を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0045】
以上のことを考慮すると、接合膜3としては、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)の金属酸化物に、脱離基303として水素原子が導入されたものが好適に選択される。
かかる構成の接合膜3は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、このような接合膜3は、端子21に対して特に強固に接着するとともに、電極5に対しても特に強い被着力を示し、その結果として、端子21と電極5とを強固に接合することができる。
【0046】
また、接合膜3の平均厚さは、50〜1000nm程度であるのが好ましく、100〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、電極5と端子21との接合強度を十分に高いものとしつつ、接合膜3の導電性、伝熱性は特に優れたものとなる。特に、電子回路装置10を起動する際に、チップコンデンサ6が発する熱を、接合膜3を介して端子21、配線パターン2に好適に伝熱することができ、結果として、電子回路装置10の外部へと放熱される。これにより、電子回路装置10は長期間にわたって信頼性により優れたものとなる。
【0047】
なお、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、接合膜3の材料等によっては、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合膜の抵抗率が高くなり易い。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、端子21の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、端子21と電極5とを接合した際に、接合膜3の電極5に対する密着性を高めることができる。
【0048】
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の伝熱性、および膜自体の機械的強度の低下が認められない範囲で、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
以上説明したような接合膜3は、接合膜3のほぼ全体に脱離基303を存在させる場合には、例えば、I−A:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成することができる。また、接合膜3の表面35付近に偏在させる場合には、例えば、I−B:金属原子と前記酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成することができる。
【0049】
以下、I−AおよびI−Bの方法を用いて、接合膜3を成膜する場合について、詳述する。
I−A:I−Aの方法では、接合膜3は、上記のように、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で、物理的気相成膜法(PVD法)により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物材料を成膜することにより形成される。このようにPVD法を用いる構成とすれば、金属酸化物材料を端子21に向かって飛来させる際に、比較的容易に金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することができるため、接合膜3のほぼ全体に亘って脱離基303を導入することができる。
【0050】
さらに、PVD法によれば、緻密で均質な接合膜3を効率よく成膜することができる。これにより、PVD法で成膜された接合膜3は、電極5に対して特に強固に接合し得るものとなる。また、PVD法で成膜された接合膜3は、端子21に対しても高い密着性を示す。このため、端子21と電極5との間に高い接合強度が得られる。さらに、PVD法で成膜された接合膜3は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持される。このため、電子回路装置10の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0051】
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気中に、金属酸化物の粒子を叩き出すことができる。そして、金属酸化物の粒子が叩き出された状態で、脱離基303を構成する原子成分を含むガスと接触させることができるため、金属酸化物(金属原子または酸素原子)への脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。
【0052】
以下、PVD法により接合膜3を成膜する方法として、スパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により、接合膜3を成膜する場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、端子21上にイオンビームスパッタリング法により接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200について説明する。
図5に示す成膜装置200は、イオンビームスパッタリング法による接合膜3の形成がチャンバー(装置)内で行えるように構成されている。
【0053】
具体的には、成膜装置200は、チャンバー(真空チャンバー)211と、このチャンバー211内に設置され、配線基板7(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)212と、チャンバー211内に設置され、チャンバー211内に向かってイオンビームBを照射するイオン源(イオン供給部)215と、イオンビームBの照射により、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物(例えば、ITO)を発生させるターゲット(金属酸化物材料)216を保持するターゲットホルダー(ターゲット保持部)217とを有している。
【0054】
また、チャンバー211には、チャンバー211内に、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を供給するガス供給手段260と、チャンバー211内の排気をして圧力を制御する排気手段230とを有している。
なお、本実施形態では、基板ホルダー212は、チャンバー211の天井部に取り付けられている。この基板ホルダー212は、回動可能となっている。これにより、端子21上に接合膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
【0055】
イオン源(イオン銃)215は、図5に示すように、開口(照射口)250が形成されたイオン発生室256と、イオン発生室256内に設けられたフィラメント257と、グリッド253、254と、イオン発生室256の外側に設置された磁石255とを有している。
また、イオン発生室256には、図6に示すように、その内部にガス(スパッタリング用ガス)を供給するガス供給源219が接続されている。
【0056】
このイオン源215では、イオン発生室256内に、ガス供給源219からガスを供給した状態で、フィラメント257を通電加熱すると、フィラメント257から電子が放出され、放出された電子が磁石255の磁場によって運動し、イオン発生室256内に供給されたガス分子と衝突する。これにより、ガス分子がイオン化する。このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254との間の電圧勾配により、イオン発生室256内から引き出されるとともに加速され、開口250を介してイオンビームBとしてイオン源215から放出(照射)される。
【0057】
イオン源215から照射されたイオンビームBは、ターゲット216の表面に衝突し、ターゲット216からは粒子(スパッタ粒子)が叩き出される。このターゲット216は、前述したような金属酸化物材料で構成されている。
この成膜装置200では、イオン源215は、その開口250がチャンバー211内に位置するように、チャンバー211の側壁に固定(設置)されている。なお、イオン源215は、チャンバー211から離間した位置に配置し、接続部を介してチャンバー211に接続した構成とすることもできるが、本実施形態のような構成とすることにより、成膜装置200の小型化を図ることができる。
【0058】
また、イオン源215は、その開口250が、基板ホルダー212と異なる方向、本実施形態では、チャンバー211の底部側を向くように設置されている。
なお、イオン源215の設置個数は、1つに限定されるものではなく、複数とすることもできる、イオン源215を複数設置することにより、接合膜3の成膜速度をより速くすることができる。
【0059】
また、ターゲットホルダー217および基板ホルダー212の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができる第1のシャッター220および第2のシャッター221が配設されている。
これらシャッター220、221は、それぞれ、ターゲット216、配線基板7および接合膜3が、不用な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
【0060】
また、排気手段230は、ポンプ232と、ポンプ232とチャンバー211とを連通する排気ライン231と、排気ライン231の途中に設けられたバルブ233とで構成されており、チャンバー211内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
さらに、ガス供給手段260は、脱離基303を構成する原子成分を含むガス(例えば、水素ガス)を貯留するガスボンベ264と、ガスボンベ264からこのガスをチャンバー211に導くガス供給ライン261と、ガス供給ライン261の途中に設けられたポンプ262およびバルブ263とで構成されており、脱離基303を構成する原子成分を含むガスをチャンバー211内に供給し得るようになっている。
【0061】
以上のような構成の成膜装置200を用いて、以下のようにして端子21上に接合膜3が形成される。
まず、配線基板7の配線パターン2が設けられた側の面に、端子21の表面を除いてマスクを形成する。そして、この配線基板7を、配線パターン2が設けられた側の面が第2のシャッター221側を向くように、成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
【0062】
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
さらに、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
【0063】
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
また、チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、金属原子または酸素原子と、前記原子成分を含むガスとの反応が効率良く行われ、金属原子および酸素原子に確実に、前記原子成分を含むガスを導入することができる。
【0064】
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
【0065】
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出される。このとき、チャンバー211内が脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)であることから、チャンバー211内に叩き出された粒子に含まれる金属原子および酸素原子に脱離基303が導入される。そして、この脱離基303が導入された金属酸化物が端子21上に被着することにより、接合膜3が形成される。
【0066】
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
以上のようにして、厚さ方向のほぼ全体に亘って脱離基303が存在する接合膜3を成膜することができる。
【0067】
I−B:また、I−Bの方法では、接合膜3は、金属原子と酸素原子とを含む金属酸化物膜を成膜した後、この金属酸化物膜の表面付近に含まれる金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303を導入することにより形成される。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を偏在させた状態で導入することができ、接合膜および金属酸化物膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
【0068】
ここで、金属酸化物膜は、いかなる方法で成膜されたものでもよく、例えば、PVD法(物理的気相成膜法)、CVD法(化学的気相成膜法)、プラズマ重合法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により成膜することができるが、中でも、特に、PVD法により成膜するのが好ましい。PVD法によれば、緻密で均質な金属酸化物膜を効率よく成膜することができる。
【0069】
また、PVD法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法およびレーザーアブレーション法等が挙げられるが、中でも、スパッタリング法を用いるのが好ましい。スパッタリング法によれば、金属原子と酸素原子との結合が切断することなく、雰囲気中に金属酸化物の粒子を叩き出して、端子21上に供給することができるため、特性に優れた金属酸化物膜を成膜することができる。
【0070】
さらに、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を導入する方法としては、各種方法が用いられ、例えば、I−B1:脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で金属酸化物膜を熱処理(アニール)する方法、I−B2:イオンインプラテーション法等が挙げられるが、中でも、特に、I−B1の方法を用いるのが好ましい。I−B1の方法によれば、比較的容易に、脱離基303を金属酸化物膜の表面付近に選択的に導入することができる。また、熱処理を施す際の、雰囲気温度や処理時間等の処理条件を適宜設定することにより、導入する脱離基303の量、さらには脱離基303が導入される金属酸化物膜の厚さの制御を的確に行うことができる。
【0071】
以下、金属酸化物膜をスパッタリング法(イオンビームスパッタリング法)により成膜し、次に、得られた金属酸化物膜を、脱離基303を構成する原子成分を含む雰囲気下で熱処理することにより、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
なお、I−Bの方法を用いて接合膜3の成膜する場合も、I−Aの方法を用いて接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置200と同様の成膜装置が用いられるため、成膜装置に関する説明は省略する。
【0072】
まず、配線基板7の配線パターン2が設けられた側の面に、端子21の表面を除いてマスクを形成する。そして、この配線基板7を、配線パターン2が設けられた側の面が第2のシャッター221側を向くように、成膜装置200のチャンバー211内に搬入し、基板ホルダー212に装着(セット)する。
次に、排気手段230を動作させ、すなわちポンプ232を作動させた状態でバルブ233を開くことにより、チャンバー211内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
【0073】
また、このとき、加熱手段を動作させ、チャンバー211内を加熱する。チャンバー211内の温度は、25℃以上であればよいが、25〜100℃程度であるのが好ましい。かかる範囲内に設定することにより、膜密度の高い金属酸化物膜を成膜することができる。
次に、第2のシャッター221を開き、さらに第1のシャッター220を開いた状態にする。
【0074】
この状態で、イオン源215のイオン発生室256内にガスを導入するとともに、フィラメント257に通電して加熱する。これにより、フィラメント257から電子が放出され、この放出された電子とガス分子が衝突することにより、ガス分子がイオン化する。
このガスのイオンIは、グリッド253とグリッド254とにより加速されて、イオン源215から放出され、陰極材料で構成されるターゲット216に衝突する。これにより、ターゲット216から金属酸化物(例えば、ITO)の粒子が叩き出され、端子21上に被着して、金属原子と、この金属原子に結合する酸素原子とを含む金属酸化物膜が形成される。
【0075】
なお、本実施形態で説明したイオンビームスパッタリング法では、イオン源215のイオン発生室256内で、放電が行われ、電子eが発生するが、この電子eは、グリッド253により遮蔽され、チャンバー211内への放出が防止される。
さらに、イオンビームBの照射方向(イオン源215の開口250)がターゲット216(チャンバー211の底部側と異なる方向)に向いているので、イオン発生室256内で発生した紫外線が、成膜された接合膜3に照射されるのがより確実に防止されて、接合膜3の成膜中に導入された脱離基303が脱離するのを確実に防止することができる。
【0076】
次に、第2のシャッター221を開いた状態で、第1のシャッター220を閉じる。
この状態で、加熱手段を動作させ、チャンバー211内をさらに加熱する。チャンバー211内の温度は、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303が導入される温度に設定され、100〜600℃程度であるのが好ましく、150〜300℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、次工程において、端子21および金属酸化物膜を変質・劣化させることなく、金属酸化物膜の表面に効率良く脱離基303を導入することができる。
【0077】
次に、ガス供給手段260を動作させ、すなわちポンプ262を作動させた状態でバルブ263を開くことにより、チャンバー211内に脱離基303を構成する原子成分を含むガスを供給する。これにより、チャンバー211内をかかるガスを含む雰囲気下(水素ガス雰囲気下)とすることができる。
このように、前工程でチャンバー211内が加熱された状態で、チャンバー211内を、脱離基303を構成する原子成分を含むガスを含む雰囲気下(例えば、水素ガス雰囲気下)とすると、金属酸化物膜の表面付近に存在する金属原子および酸素原子の少なくとも一方に脱離基303が導入されて、接合膜3が形成される。
【0078】
脱離基303を構成する原子成分を含むガスの流量は、1〜100ccm程度であるのが好ましく、10〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、金属原子および酸素原子の少なくとも一方に確実に脱離基303を導入することができる。
なお、チャンバー211内は、前記工程において、排気手段230を動作させることにより調整された減圧状態を維持しているのが好ましい。これにより、金属酸化物膜の表面付近に対する脱離基303の導入をより円滑に行うことができる。また、前記工程の減圧状態を維持したまま、本工程においてチャンバー211内を減圧する構成とすることにより、再度減圧する手間が省けることから、成膜時間および成膜コスト等の削減を図ることができるという利点も得られる。
【0079】
この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、熱処理を施す時間は、15〜120分程度であるのが好ましく、30〜60分程度であるのがより好ましい。
【0080】
導入する脱離基303の種類等によっても異なるが、熱処理を施す際の条件(チャンバー211内の温度、真空度、ガス流量、処理時間)を上記範囲内に設定することにより、金属酸化物膜の表面付近に脱離基303を選択的に導入することができる。
以上のようにして、表面35付近に脱離基303が偏在する接合膜3を成膜することができる。
【0081】
II:次に、IIの構成の接合膜3は、端子21上に設けられ、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303を含むものである(図7参照。)。
このような接合膜3は、エネルギーが付与されると、脱離基303が接合膜3の少なくとも表面35付近から脱離し、図8に示すように、接合膜3の少なくとも表面35付近に、活性手304が生じるものである。そして、これにより、接合膜3の表面に接着性が発現する。かかる接着性が発現すると、電極5を、接合膜3を備えた端子21に強固に接合、固定することができる。
【0082】
この接合膜3と電極5との接合は、半田リフロー処理を用いた接合のように、高温下(260℃以上)に晒すことなく行うことができるため、チップコンデンサ6において、本体部4の電極5との接合部分等でクラックが発生するのを確実に防止することができ、電子回路装置10は、信頼性に優れたものとなる。また、チップコンデンサをかかる高温下に晒すと、チップコンデンサの構成、構成材料によっては、(静電)容量値の低下や、温度特性(コンデンサが本来有する容量値を担保することができる温度範囲)の変質(劣化)を引き起こすが、本実施形態において、このような問題が発生するのを確実に防止することができる。
【0083】
また、接合膜3は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基303とを含むもの、すなわち有機金属膜であることから、変形し難い強固な膜となる。このため、電子回路装置10では、電極5の端子21からの剥離をより確実に防止することができる。結果として、チップコンデンサ6と配線基板7との間での剥離の発生が確実に防止される。
また、Iの構成の接合膜3は、優れた導電性を有している。接合膜3は、Agペーストのように、Ag粒子の点接触により導通するのではなく、それ自体が導電性を有するものであるから、接合膜3を介した電極5と端子21との電気的な接続が、特に低抵抗率なものとなる。
【0084】
さらに、接合膜3は、流動性を有さない固体状をなすものである。このため、リフロー処理中の半田や、導電性接着剤のように、液状または粘液状(半固形状)で流動性を有する接合媒体に比べて、接着層(接合膜3)の厚さや形状が変化しない。その結果、配線パターン2が備える端子21およびチップコンデンサ6が有する電極5の大きさが比較的小さい、高集積、高密度の電子回路装置10において、チップコンデンサ6を配線基板7により正確に接合、固定することができる。さらに、半田リフロー処理のように、配線基板上に電子部品を固定する時間が不要になり、短時間で強固な接合が可能となる。
【0085】
以上のような接合膜3としての機能が好適に発揮されるように、金属原子および脱離基303が選択される。
具体的には、金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
【0086】
ここで、遷移金属元素は、各遷移金属元素間で、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、金属原子として遷移金属元素を用いた場合、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。また、それとともに、接合膜3の導電性および伝熱性をより高めることができる。
【0087】
また、金属原子として、Cu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いた場合、接合膜3は、優れた導電性および伝熱性を発揮するものとなる。また、接合膜3を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的容易かつ均一な膜厚の接合膜3を成膜することができる。
【0088】
また、脱離基303は、前述したように、接合膜3から脱離することにより、接合膜3に活性手を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基303には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないよう接合膜3に確実に結合しているものが好適に選択される。
【0089】
具体的には、IIの構成の接合膜3では、脱離基303としては、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団が好適に選択される。かかる脱離基303は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜3の接着性をより高度なものとすることができる。
【0090】
より具体的には、原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような原子団の中でも、脱離基303は、特に、アルキル基であるのが好ましい。アルキル基で構成される脱離基303は、化学的な安定性が高いため、脱離基303としてアルキル基を備える接合膜3は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0091】
また、かかる構成の接合膜3において、金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜3の安定性が高くなり、端子21と電極5とをより強固に接合することができるようになる。また、接合膜3を優れた導電性および伝熱性を発揮するものとすることができる。
【0092】
また、接合膜3の平均厚さは、50〜1000nm程度であるのが好ましく、100〜800nm程度であるのがより好ましい。接合膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、電極5と端子21との接合強度を十分に高いものとしつつ、接合膜3の導電性、伝熱性は特に優れたものとなる。特に、電子回路装置10を起動する際に、チップコンデンサ6が発熱した際にも、接合膜3を介して端子21、配線パターン2に好適に伝熱することができる。これにより、電子回路装置10は長期間にわたって信頼性により優れたものとなる。
【0093】
なお、接合膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、接合膜3の材料等によっては、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、接合膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合膜の抵抗率が高くなり易い。
さらに、接合膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、接合膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、端子21の接合面(接合膜3に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように接合膜3を被着させることができる。その結果、接合膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、端子21と電極5とを接合した際に、接合膜3の電極5に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、接合膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合膜3の伝熱性、および膜自体の機械的強度の低下が認められない範囲で、接合膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0094】
以上説明したような接合膜3は、いかなる方法で成膜してもよいが、例えば、II−A:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜のほぼ全体に付与して接合膜3を形成する方法、II−B:金属原子で構成される金属膜に、脱離基(有機成分)303を含む有機物を、金属膜の表面付近に選択的に付与(化学修飾)して接合膜3を形成する方法、II−C:金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、II−Cの方法により接合膜3を成膜するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の接合膜3を形成することができる。
【0095】
以下、II−Cの方法、すなわち金属原子と、脱離基(有機成分)303を含む有機物とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて接合膜3を形成する方法により、接合膜3を得る場合を代表に説明する。
まず、接合膜3の成膜方法を説明するのに先立って、接合膜3を成膜する際に用いられる成膜装置500について説明する。
【0096】
図9に示す成膜装置500は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による接合膜3の形成をチャンバー511内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置500は、チャンバー(真空チャンバー)511と、このチャンバー511内に設置され、端子21(成膜対象物)を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)512と、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段560と、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段570と、チャンバー511内の排気をして圧力を制御する排気手段530と、基板ホルダー512を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
【0097】
基板ホルダー512は、本実施形態では、チャンバー511の底部に取り付けられている。この基板ホルダー512は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、端子21上に接合膜を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー512の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター521が配設されている。このシャッター521は、端子21および接合膜3が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
【0098】
有機金属材料供給手段560は、チャンバー511に接続されている。この有機金属材料供給手段560は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽562と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ565と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に導くガス供給ライン561と、ガス供給ライン561の途中に設けられたポンプ564およびバルブ563とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段560では、貯留槽562は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ563を開放した状態で、ポンプ564を作動させて、キャリアガスをガスボンベ565から貯留槽562に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン561内を通過してチャンバー511内に供給されるようになっている。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
【0099】
また、本実施形態では、ガス供給手段570がチャンバー511に接続されている。ガス供給手段570は、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ575と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー511内に導くガス供給ライン571と、ガス供給ライン571の途中に設けられたポンプ574およびバルブ573とで構成されている。かかる構成のガス供給手段570では、バルブ573を開放した状態で、ポンプ574を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ575から、供給ライン571を介して、チャンバー511内に供給されるようになっている。ガス供給手段570をかかる構成とすることにより、チャンバー511内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて接合膜3を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を脱離基303として残存させた状態で接合膜3が成膜される。
チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0100】
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、接合膜3に過度の酸素原子が残存することなく、接合膜3を成膜することができる。その結果、この接合膜3は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性を発揮することとなる。
【0101】
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段530は、ポンプ532と、ポンプ532とチャンバー511とを連通する排気ライン531と、排気ライン531の途中に設けられたバルブ533とで構成されており、チャンバー511内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
【0102】
以上のような構成の成膜装置500を用いてMOCVD法により、以下のようにして端子21上に接合膜3が形成される。
まず、配線基板7の配線パターン2が設けられた側の面に、端子21の表面を除いてマスクを形成する。そして、この配線基板7を、配線パターン2が設けられた側の面がシャッター521側を向くように、成膜装置500のチャンバー511内に搬入し、基板ホルダー512に装着(セット)する。
【0103】
次に、排気手段530を動作させ、すなわちポンプ532を作動させた状態でバルブ533を開くことにより、チャンバー511内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
また、ガス供給手段570を動作させ、すなわちポンプ574を作動させた状態でバルブ573を開くことにより、チャンバー511内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段570による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5sccm程度であるのがより好ましい。
【0104】
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー512を加熱する。基板ホルダー512の温度は、形成する接合膜3の種類、すなわち、接合膜3を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜300℃程度で有るのが好ましく、100〜275℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する接合膜3を成膜することができる。
【0105】
次に、シャッター521を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽562が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ564を動作させるとともに、バルブ563を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
【0106】
このように、前記工程で基板ホルダー512が加熱された状態で、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、端子21上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、端子21上に接合膜3を形成することができる。
すなわち、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が脱離基303としての機能を発揮する接合膜3を端子21上に形成することができる。
【0107】
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、接合膜3を確実に形成することができる。
【0108】
また、本実施形態では、ガス供給手段570を動作させることにより、チャンバー511内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、端子21上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた接合膜3を形成することができる。
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、接合膜3を成膜することができる。
【0109】
以上のように、接合膜3を成膜した際に膜中に残存する残存物を脱離基303として用いる構成とすることにより、形成した金属膜等に脱離基を導入する必要がなく、比較的簡単な工程で接合膜3を成膜することができる。
なお、有機金属材料を用いて形成された接合膜3に残存する前記有機物の一部は、その全てが脱離基303として機能するものであってもよいし、その一部が脱離基303として機能するものであってもよい。
【0110】
以上のようにして、端子21上にIまたはIIの構成の接合膜3を成膜することができ、その後、各種エッチング法を用いて、接合面43を除いて形成したマスクを除去する。
なお、端子21の少なくとも接合膜3を形成すべき領域には、上記の方法により接合膜3を形成するのに先立って、端子21(配線パターン2)の構成材料に応じて、予め、端子21と接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
【0111】
かかる表面処理としては、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。このような処理を施すことにより、端子21の接合膜3を形成すべき領域を清浄化するとともに、該領域を活性化させることができる。これにより、接合膜3と端子21との接合強度を高めることができる。
【0112】
また、これらの各表面処理の中でもプラズマ処理を用いることにより、接合膜3を形成するために、端子21の表面を特に最適化することができる。
なお、上記では、接合膜3を端子21に設ける構成について説明したが、接合膜3は、チップコンデンサ6が有する電極5に設けるようにしてもよい。この場合、電極5の少なくとも接合膜3を形成すべき領域に、予め、前述したような表面処理を施してもよい。
さらに、接合膜3は、端子21と電極5との双方に設けるようにしてもよい。この場合には、表面処理は、端子21と電極5の双方に行ってもよく、いずれか一方に選択的に行うようにしてもよい。
【0113】
<製造方法>
次に、本実施形態の電子回路装置10の製造方法について説明する。
図10、図11は、本実施形態の電子回路装置10の製造方法を説明するための図である。なお、以下では、説明の便宜上、図10中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
[1]まず、基板1上に、端子21を備える配線パターン2を有する配線基板(回路基板)7を準備する(図10(a)参照)。その後、前述したような方法で、端子21上に接合膜3をパターニングして形成する(図10(b)参照)。なお、このような接合膜3を形成する領域は、後に接合する電極5の形状に合わせた領域のみに形成してもよいし、端子21の上面全体に形成してもよい。
【0114】
[2]次に、接合膜3の表面35に対してエネルギーを付与する。なお、表面35へのエネルギーの付与は、端子21の上面全体にわたってエネルギーを付与することにより行われてもよいし、表面35に選択的にエネルギーを付与することにより行われてもよい。
ここで、接合膜3にエネルギーを付与すると、接合膜3では、脱離基303の結合手が切れて接合膜3の表面35付近から脱離し、脱離基303が脱離した後には、活性手が接合膜3の表面35付近に生じる。これにより、接合膜3の表面35に、電極5との接着性が発現する。
【0115】
このような状態の接合膜3は、電極5と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
ここで、接合膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、接合膜3にエネルギー線を照射する方法、接合膜3を加熱する方法、接合膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、接合膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、接合膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、接合膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、接合膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、接合膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
【0116】
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図10(c)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、接合膜3中の脱離基303を確実に脱離させることができる。これにより、接合膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、接合膜3に接着性を確実に発現させることができる。
【0117】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基303の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、接合膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと接合膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0118】
また、紫外線を照射する時間は、接合膜3の表面35付近の脱離基303を脱離し得る程度の時間、すなわち、接合膜3に必要以上に紫外線が照射されない程度の時間とするのが好ましい。これにより、接合膜3が変質・劣化するのを効果的に防止することができる。具体的には、紫外線の光量、接合膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、0.5〜30分程度であるのが好ましく、1〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0119】
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、接合膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による接合膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、接合膜3の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0120】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って接合膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0121】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜3の表面35付近から確実に切断することができる。
【0122】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、脱離基303を接合膜3から確実に切断することができる。
【0123】
また、接合膜3に照射するレーザ光は、その焦点を、接合膜3の表面35に合わせた状態で、この表面35に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面35付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、接合膜3の表面35に存在する脱離基303を選択的に脱離させることができる。
また、接合膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0124】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、接合膜3の表面35付近に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による端子21および接合膜3の変質・劣化を防止することができる。特に、従来の半田リフロー処理のように、端子21と電極5とを電気的に接続する際に、チップコンデンサ6および配線基板7を高温下に晒す必要がないため、チップコンデンサ6にクラックが発生したり、チップコンデンサ6の特性(容量値、温度特性)が変質してしまうのをより確実に防止することができる。結果として、電子回路装置10の信頼性をさらに高めることができる。
【0125】
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、接合膜3から脱離する脱離基303の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基303の脱離量を調整することにより、接合膜3と電極5との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基303の脱離量を多くすることにより、接合膜3の表面35付近に、より多くの活性手が生じるため、接合膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基303の脱離量を少なくすることにより、接合膜3の表面35付近に生じる活性手を少なくし、接合膜3に発現する接着性を抑えることができる。
【0126】
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ここで、エネルギーが付与される前の接合膜3は、図3および図7に示すように、その表面35付近に脱離基303を有している。かかる接合膜3にエネルギーを付与すると、脱離基303(図3では、水素原子、図7では、メチル基)が接合膜3から脱離する。これにより、図4および図8に示すように、接合膜3の表面35に活性手304が生じ、活性化される。その結果、接合膜3の表面に接着性が発現する。
【0127】
ここで、本明細書中において、接合膜3が「活性化された」状態とは、上述のように接合膜3の表面35および内部の脱離基303が脱離して、接合膜3の構成原子において終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、接合膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0128】
したがって、活性手304とは、図4および図8に示すように、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手304が存在するようにすれば、電極5に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、接合膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成されることとなる。
【0129】
[3]次に、両端側に設けられた電極(外部電極)5が導通することにより電子部品として機能するチップコンデンサ6を用意する。そして、図11(d)に示すように、活性化させた接合膜3と電極5とが密着するようにして、接合膜3を電極5に接触させる。これにより、前記工程[2]において、接合膜3が電極5(被着体)に対する接着性が発現していることから、接合膜3と電極5とが化学的に結合することとなり、接合膜3が電極5に接着して、電極5が端子21に実装(搭載)された電子回路装置10を得ることができる。(図11(e)参照)。
【0130】
このようにして接合膜3と電極5とが接合された電子回路装置10では、電子部品の外部電極と回路基板の端子とを接合する半田リフロー処理のように、半田を溶融、再固化させる必要がなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、接合膜3と電極5とが接合されている。このため、電子回路装置10の製造時間を短縮することができ、電子回路装置10の生産性を高めることができる。また、接合膜3と電極5とが極めて剥離し難く、結果として、電極5と端子21との接合強度を優れたものとすることができ、クラックの発生が確実に防止された、信頼性の高い電子回路装置10を得ることができる。
【0131】
以上説明したような電極5の接合膜3との接合に供される領域には、端子21と同様に、電極5の接合膜3と接する表面に、接合膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。これにより、接合膜3と電極5との接合強度をより高めることができる。
なお、表面処理としては、端子21に対して施す前述したような表面処理と同様の処理を適用することができる。
【0132】
ここで、本工程において、接合膜3と電極5とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、電極5の接合膜3との接合に供される領域に、水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、接合膜3と電極5とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、接合膜3の表面35に存在する水酸基と、電極5の前記領域に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、接合膜3と電極5とが接合されると推察される。
【0133】
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合を伴って表面から切断される。その結果、接合膜3と電極5との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が結合する。これにより、接合膜3と電極5とがより強固に接合されると推察される。
なお、前記工程[2]で活性化された接合膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[2]の終了後、できるだけ早く本工程[3]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[2]の終了後、60分以内に本工程[3]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、接合膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、本工程で接合膜3を電極5に貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0134】
換言すれば、活性化させる前の接合膜3は、脱離基303を備えた状態で化学的に比較的安定な膜であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の接合膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、配線基板7が有する端子21に接合膜3を形成した状態で保存しておき、チップコンデンサ6を搭載する(本行程の貼り合わせを行う)直前に、必要な端子21のみに前記工程[2]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、電子回路装置10の製造効率の観点から有効である。
なお、上述した工程[3]の後、接合膜3を介して接合された端子21と電極5に対して、必要に応じ、以下の2つの工程[4]([4A]および[4B])のうちの少なくとも1つの工程(端子21と電極5との接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、電子回路装置10の接合強度のさらなる向上を図ることができる。
【0135】
[4A] 本工程では、接合膜3を介して接合された、端子21と電極5とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、端子21の表面および電極5の表面に、それぞれ接合膜3の表面がより近接し、端子21と電極5との接合強度をより高めることができる。
また、端子21と電極5とを加圧することにより、接合膜3と端子21との接合界面、および接合膜3と電極5との接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合膜3を介した端子21と電極5との接合をより確実なものとすることができる。
【0136】
このとき、端子21と電極5とを加圧する際の圧力は、チップコンデンサ6および配線基板7が損傷を受けない程度の圧力で、できるだけ高い方が好ましい。これにより、この圧力に比例して端子21と電極5との接合強度を高めることができる。
なお、この圧力は、端子21および電極5の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、端子21および電極5の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、端子21と電極5との接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、端子21および電極5の各構成材料によっては、端子21および電極5に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、電極5を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0137】
[4B] 本工程では、得られた端子21と電極5との接合体を加熱する。
これにより、端子21と電極5との接合強度をより高めることができる。
このとき、端子21と電極5との接合体を加熱する際の温度は、室温より高く、端子21および電極5の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、端子21、電極5が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。また、かかる温度下であれば、チップコンデンサ6の特性が変質するのを確実に防止することができる。
【0138】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[4A]、[4B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、端子21と電極5とを加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、端子21と電極5との接合強度を特に高めることができる。
なお、以上の工程は、必要に応じて、電極5を端子21に実装(搭載)する際、または、実装した後に、適用することもできる。
以上のような工程を行うことにより、電極5と端子21との強固な接合をより確実なものとすることができる。
【0139】
<<第2実施形態>>
次に、本発明の電子回路装置の第2実施形態について説明する。
図12は、本発明の電子回路装置の第2実施形態を示す断面図である。なお、以下では、説明の都合上、図12中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0140】
以下、第2実施形態について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
第2実施形態では、配線パターン2全体が、第1実施形態で説明した導電性の接合膜3で構成されており、電極5が配線パターン2が備える端子21に直接接合されている以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0141】
すなわち、図12に示す電子回路装置10’では、配線パターン2が、端子21と一体的に形成された導電性を有する電気配線としての機能を発揮するとともに、端子21において、電極5に接合する接合膜としての機能も発揮するものである。
かかる構成の電子回路装置10’では、配線パターン2が備える端子21に、第1実施形態の接合膜に接着性を発現させる処理と同様の処理を行うことにより、簡易に端子21と電極5とを導通させることができるとともに、配線基板7にチップコンデンサ6を強固に固定することができる。結果として、チップコンデンサ6にクラックが発生したり、チップコンデンサ6と配線基板7との間で剥離が生じたりするのが確実に防止され、製造される電子回路装置10’の信頼性は優れたものとなる。
【0142】
また、このような配線パターン2は、第1実施形態の接合膜を成膜する図5、図9に示すような装置を用いて、繊細なパターニングをすることが可能である。このため、高集積、高密度の電子回路装置10’を効率良く得ることができる。
なお、本実施形態の場合、端子21(配線パターン2)の平均厚さは、1〜1000nm程度であるのが好ましく、50〜800nm程度であるのがより好ましい。これにより、チップコンデンサ6の配線基板7への接合精度(実装精度)が特に優れたものとなるとともに、電極5と端子21とを(チップコンデンサ6と配線基板7とを)より強固に接合することができる。
【0143】
なお、端子21(配線パターン2)の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、端子21(配線パターン2)の材料等によっては、十分な接合強度が得られないおそれがある。一方、端子21(配線パターン2)の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、端子21の抵抗率が高くなり易い。
さらに、端子21(配線パターン2)の平均厚さが前記範囲内であれば、端子21にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、チップコンデンサ6が有する電極5の接合面(端子21に隣接する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように端子21と電極5とを接合することができる。その結果、端子21は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、端子21と電極5との密着性をさらに高めることができる。
【0144】
なお、上記のような形状追従性の程度は、端子21の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、接合条件等によって生じ得るチップコンデンサ6と配線基板7との接合精度の低下が認められない範囲で、端子21(配線パターン2)の厚さをできるだけ厚くすればよい。
かかる電極5を有するチップコンデンサ6と、導電性の接合膜で構成された配線パターン2を有する配線基板7とは、前記第1実施形態で説明したのと同様にして、すなわち、前記工程[1]〜[3](または、前記工程[1]〜[4])を経て接合することができ、その結果、電子回路装置10を得ることができる。
なお、本実施形態では、配線パターン2全体を導電性の接合膜3で構成するものとして説明したが、これに限られず、例えば、端子のみがこのような接合膜で構成され、配線パターンの端子以外の部分は、第1実施形態で説明した配線パターン2と同様の配線パターンであってもよい。
【0145】
<<第3実施形態>>
次に、本発明の電子回路装置の第3実施形態について説明する。
図13は、本発明の電子回路装置の第3実施形態を示す断面図、図14は、図13に示す電子回路装置における絶縁性の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図、図15は、図13に示す電子回路装置における絶縁性の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図、図16は、図13に示す電子回路装置における絶縁性の接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す図、図17は、図13に示す電子回路装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図13〜図17中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」と言う。
【0146】
第3実施形態では、端子21と電極5との接合の他に、さらに、チップコンデンサ6の本体部4と配線基板7の基板1とが接合され、それ以外は、前記第2実施形態と同様である。
すなわち、図13に示す電子回路装置10”は、導電性の接合膜3で構成された配線パターン2が備える端子21とチップコンデンサ6が有する電極5とが接合され、さらにチップコンデンサ6の本体部4と配線基板7の基板1とが接合膜8を介して接合されている。これにより、チップコンデンサ6と配線基板7との全体としての接合強度(電子回路装置10”の接合強度)をより向上させることができる。
【0147】
このような接合膜8は、例えば、シリコーン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤のような各種接着剤で構成することもできるが、所定の処理を施すことにより接着性を発現する、絶縁性を有する接合膜(絶縁性接合膜)で構成するのが好ましい。接合膜8が絶縁性であることにより、本体部4の両端側に設けられた一対の電極5間で短絡(ショート)するのが確実に防止される。また、端子21と電極5との導通を確実に確保することができる。
【0148】
この材料としては、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含む材料が好適に使用される。
かかる材料で構成される接合膜8は、エネルギーを付与する前の状態では、図14に示すように、シロキサン(Si−O)結合802を含み、ランダムな原子構造を有するSi骨格801と、このSi骨格801に結合する脱離基803とを含むものである。
【0149】
そして、この接合膜8にエネルギーを付与すると、図15に示すように、一部の脱離基803がSi骨格801から脱離し、代わりに活性手804が生じる。これにより、接合膜8の表面85に接着性が発現する。このようにして接着性が発現した接合膜8により、基板1と本体部4とが接合されている。
このような接合膜8は、シロキサン結合802を含みランダムな原子構造を有するSi骨格801の影響によって、変形し難い強固な膜となる。このため、基板1と本体部4との間の距離、すなわち、チップコンデンサ6と配線基板7との間の距離を高い寸法精度で一定に保持することができる。
【0150】
また、接合膜8を用いて基板1と本体部4とを接合したことにより、接着剤を用いて接合した場合に、接着剤がはみ出すといった問題が生じることが防止される。したがって、はみ出した接着剤を除去する手間も省略できるという利点もある。
また、このような接合膜8は、流動性を有しない固体状のものとなる。このため、流動性を有する液状または粘液状の接着剤を用いる場合に比べて、接着層(接合膜8)の厚さや形状がほとんど変化しない。このため、接合膜8を用いて製造された電子回路装置10”の寸法精度は、格段に高いものとなる。さらに、接着剤を用いる場合に比較して、その硬化に要する時間が不要になるため、短時間で強固な接合を可能にするものである。
【0151】
このような接合膜8としては、特に、接合膜8を構成する全原子からH原子を除いた原子のうち、Si原子の含有率とO原子の含有率の合計が、10〜90原子%程度であるのが好ましく、20〜80原子%程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子とが、前記範囲の含有率で含まれていれば、接合膜8は、Si原子とO原子とが強固なネットワークを形成し、接合膜8自体がより強固なものとなる。また、かかる接合膜8は、基板1および本体部4に対して、特に高い接合強度を示すものとなる。
【0152】
また、接合膜8中のSi原子とO原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。Si原子とO原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、接合膜8の安定性が高くなり、基板1と本体部4とをより強固に接合することができるようになる。
なお、接合膜8中のSi骨格801の結晶化度は、45%以下であるのが好ましく、40%以下であるのがより好ましい。これにより、Si骨格801は十分にランダムな原子構造を含むものとなる。このため、前述したSi骨格801の特性が顕在化し、接合膜8の寸法精度および接着性がより優れたものとなる。
【0153】
また、Si骨格801に結合する脱離基803は、前述したように、Si骨格801から脱離することによって、接合膜8に活性手804を生じさせるよう振る舞うものである。したがって、脱離基803には、エネルギーを付与されることによって、比較的簡単に、かつ均一に脱離するものの、エネルギーが付与されないときには、脱離しないようSi骨格801に確実に結合しているものである必要がある。
【0154】
かかる観点から、脱離基803には、H原子、B原子、C原子、N原子、O原子、P原子、S原子およびハロゲン系原子、またはこれらの各原子を含み、これらの各原子がSi骨格801に結合するよう配置された原子団からなる群から選択される少なくとも1種で構成されたものが好ましく用いられる。かかる脱離基803は、エネルギーの付与による結合/脱離の選択性に比較的優れている。このため、このような脱離基303は、上記のような必要性を十分に満足し得るものとなり、接合膜8の接着性をより高度なものとすることができる。
【0155】
なお、上記のような各原子がSi骨格801に結合するよう配置された原子団(基)としては、例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基、ビニル基、アリル基のようなアルケニル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ハロゲン化アルキル基、メルカプト基、スルホン酸基、シアノ基、イソシアネート基等が挙げられる。
【0156】
これらの各基の中でも、脱離基803は、特にアルキル基であるのが好ましい。アルキル基は化学的な安定性が高いため、アルキル基を含む接合膜8は、耐候性に(電子回路装置10”が使用される環境に対して)優れたものとなる。
このような特徴を有する接合膜8の構成材料としては、例えば、ポリオルガノシロキサンのようなシロキサン結合を含む重合物等が挙げられる。
【0157】
ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜8は、それ自体が優れた機械的特性を有している。また、多くの材料に対して特に優れた接着性を示すものである。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜8は、基板1と本体部4とをより強固に接合することができる。
また、ポリオルガノシロキサンは、通常、撥水性(非接着性)を示すが、エネルギーを付与されることにより、容易に有機基を脱離させることができ、親水性に変化し、接着性を発現するが、この非接着性と接着性との制御を容易かつ確実に行えるという利点を有する。
【0158】
なお、この撥水性(非接着性)は、主に、ポリオルガノシロキサン中に含まれたアルキル基による作用である。したがって、ポリオルガノシロキサンで構成された接合膜8は、エネルギーを付与された領域に接着性が発現するとともに、エネルギーを付与しなかった領域においては、前述したアルキル基による優れた撥液性が得られるという利点も有する。したがって、電子回路装置10を湿度が比較的高い場所で用いても、チップコンデンサ6と配線基板7との接合性を高い状態で維持することができ、電子回路装置10の耐久性をさらに優れたものとすることができる。
【0159】
また、ポリオルガノシロキサンの中でも、特に、オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とするものが好ましい。オクタメチルトリシロキサンの重合物を主成分とする接合膜8は、接着性に特に優れることから、基板1と本体部4との接合に特に好適に適用できるものである。また、オクタメチルトリシロキサンを主成分とする原料は、常温で液状をなし、適度な粘度を有するため、取り扱いが容易であるという利点もある。
【0160】
なお、接合膜8の厚さは、配線パターン2(端子21)よりも厚いのが好ましい。これにより、チップコンデンサ6と配線基板7とをより強固に接合することができる。
このような接合膜8は、いかなる方法で作製されたものでもよく、プラズマ重合法、CVD法、PVD法のような各種気相成膜法や、各種液相成膜法等により作製した膜にエネルギーを付与することによって作製することができるが、これらの中でも、プラズマ重合法により作製された膜を用いるのが好ましい。プラズマ重合法によれば、最終的に、緻密で均質な接合膜8を効率よく作製することができる。これにより、プラズマ重合法で作製された接合膜8は、基板1と本体部4とを特に強固に接合し得るものとなる。また、緻密な接合膜8で基板1と本体部4とが接合されるため、電子回路装置10”の耐久性はさらに優れたものとなり、電子回路装置10”の信頼性のさらなる向上を図ることができる。さらに、プラズマ重合法で作製された接合膜8は、エネルギーが付与されて活性化された状態が比較的長時間にわたって維持することができる。このため、電子回路装置10”の製造過程の簡素化、効率化を図ることができる。
【0161】
次に、一例として、基板1の上面(基板1の配線パターン2が形成されている側の面)の、配線パターン2が設けられていない領域に、プラズマ重合法により、接合膜8を作製して、基板1とチップコンデンサ6の本体部4とを接合して、電子回路装置10”を製造する方法について説明する。プラズマ重合法は、例えば、強電界中に、原料ガスとキャリアガスとの混合ガスを供給することにより、原料ガス中の分子を重合させ、重合物を基板1(配線基板7)の上面に堆積させ、膜を得る方法である。
【0162】
以下、接合膜8をプラズマ重合法にて形成する方法について詳述するが、まず、接合膜8の形成方法を説明するのに先立って、基板1の上面にプラズマ重合法を行いて接合膜8を作製する際に用いるプラズマ重合装置について説明し、その後、接合膜8の形成方法を含む電子回路装置10”の製造方法について説明する。
図16に示すプラズマ重合装置100は、チャンバー101と、基板1(配線基板7)を支持する第1の電極130と、第2の電極140と、各電極130、140間に高周波電圧を印加する電源回路180と、チャンバー101内にガスを供給するガス供給部190と、チャンバー101内のガスを排気する排気ポンプ170とを備えている。これらの各部のうち、第1の電極130および第2の電極140がチャンバー101内に設けられている。以下、各部について詳細に説明する。
【0163】
チャンバー101は、内部の気密を保持し得る容器であり、内部を減圧(真空)状態にして使用されるため、内部と外部との圧力差に耐え得る耐圧性能を有するものとされる。
図16に示すチャンバー101は、軸線が水平方向に沿って配置されたほぼ円筒形をなすチャンバー本体と、チャンバー本体の左側開口部を封止する円形の側壁と、右側開口部を封止する円形の側壁とで構成されている。
【0164】
チャンバー101の上方には供給口103が、下方には排気口104が、それぞれ設けられている。そして、供給口103にはガス供給部190が接続され、排気口104には排気ポンプ170が接続されている。
なお、本実施形態では、チャンバー101は、導電性の高い金属材料で構成されており、接地線102を介して電気的に接地されている。
【0165】
第1の電極130は、板状をなしており、基板1を支持している。
この第1の電極130は、チャンバー101の側壁の内壁面に、水平方向に沿って設けられている。また、第1の電極130は、チャンバー101を介して電気的に接地されている。
第1の電極130の基板1を支持する面には、静電チャック(吸着機構)139が設けられている。
この静電チャック139により、図16に示すように、基板1を保持することができる。また、基板1に多少の反りがあっても、静電チャック139に吸着させることにより、その反りを矯正した状態で基板1をプラズマ処理に供することができる。
【0166】
第2の電極140は、基板1を介して、第1の電極130と対向して設けられている。なお、第2の電極140は、チャンバー101の側壁の内壁面から離間した(絶縁された)状態で設けられている。
この第2の電極140には、配線184を介して高周波電源182が接続されている。また、配線184の途中には、マッチングボックス(整合器)183が設けられている。これらの配線184、高周波電源182およびマッチングボックス183により、電源回路180が構成されている。
このような電源回路180によれば、第1の電極130は接地されているので、第1の電極130と第2の電極140との間に高周波電圧が印加される。これにより、第1の電極130と第2の電極140との間隙には、高い周波数で向きが反転する電界が誘起される。
【0167】
ガス供給部190は、チャンバー101内に所定のガスを供給するものである。
図16に示すガス供給部190は、液状の膜材料(原料液)を貯留する貯液部191と、液状の膜材料を気化してガス状に変化させる気化装置192と、キャリアガスを貯留するガスボンベ193とを有している。また、これらの各部とチャンバー101の供給口103とが、それぞれ配管194で接続されており、ガス状の膜材料(原料ガス)とキャリアガスとの混合ガスを、供給口103からチャンバー101内に供給するように構成されている。
【0168】
貯液部191に貯留される液状の膜材料は、プラズマ重合装置100により、重合して基板1(基板1)の表面に重合膜を形成する原材料となるものである。
このような液状の膜材料は、気化装置192により気化され、ガス状の膜材料(原料ガス)となってチャンバー101内に供給される。なお、原料ガスについては、後に詳述する。
【0169】
ガスボンベ193に貯留されるキャリアガスは、電界の作用により放電し、およびこの放電を維持するために導入するガスである。このようなキャリアガスとしては、例えば、Arガス、Heガス等が挙げられる。
また、チャンバー101内の供給口103の近傍には、拡散板195が設けられている。
【0170】
拡散板195は、チャンバー101内に供給される混合ガスの拡散を促進する機能を有する。これにより、混合ガスは、チャンバー101内に、ほぼ均一の濃度で分散することができる。
排気ポンプ170は、チャンバー101内を排気するものであり、例えば、油回転ポンプ、ターボ分子ポンプ等で構成される。このようにチャンバー101内を排気して減圧することにより、ガスを容易にプラズマ化することができる。また、大気雰囲気との接触による基板1の汚染・酸化等を防止するとともに、プラズマ処理による反応生成物をチャンバー101内から効果的に除去することができる。
また、排気口104には、チャンバー101内の圧力を調整する圧力制御機構171が設けられている。これにより、チャンバー101内の圧力が、ガス供給部190の動作状況に応じて、適宜設定される。
【0171】
次に、本実施形態の電子回路装置10”の製造方法、すなわち、配線基板7とチップコンデンサ6との接合方法について説明する。
[1”]まず、前記第2実施形態と同様にして、基板1上に、導電性の接合膜3で構成される配線パターン2が一体的に形成された配線基板7を準備する。次に、基板1の配線パターン2が設けられた側の面に、上述した絶縁性の接合膜8を形成する領域を除いてマスクを形成する。そして、この配線基板7を、プラズマ重合装置100のチャンバー101内に収納して封止状態とした後、排気ポンプ170の作動により、チャンバー101内を減圧状態とする。
【0172】
そして、ガス供給部190を作動させ、チャンバー101内に原料ガスとキャリアガスの混合ガスを供給する。供給された混合ガスは、チャンバー101内に充填される。
ここで、混合ガス中における原料ガスの占める割合(混合比)は、原料ガスやキャリアガスの種類や目的とする成膜速度等によって若干異なるが、例えば、混合ガス中の原料ガスの割合を20〜70%程度に設定するのが好ましく、30〜60%程度に設定するのがより好ましい。これにより、重合膜の形成(成膜)の条件の最適化を図ることができる。
【0173】
また、供給するガスの流量は、ガスの種類や目的とする成膜速度、膜厚等によって適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、原料ガスおよびキャリアガスの流量を、それぞれ、1〜100ccm程度に設定するのが好ましく、10〜60ccm程度に設定するのがより好ましい。
次いで、電源回路180を作動させ、一対の電極130、140間に高周波電圧を印加する。これにより、一対の電極130、140間に存在するガスの分子が電離し、プラズマが発生する。このプラズマのエネルギーにより原料ガス中の分子が重合し、重合物が基板1上に付着・堆積する。これにより、図17(a)に示すように、基板1上にプラズマ重合膜で構成された接合膜8が形成される。
【0174】
原料ガスとしては、例えば、メチルシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、メチルフェニルシロキサンのようなオルガノシロキサン等が挙げられる。
このような原料ガスを用いて得られるプラズマ重合膜、すなわち接合膜8は、これらの原料が重合してなるもの(重合物)、すなわちポリオルガノシロキサンで構成されることとなる。
【0175】
プラズマ重合の際、一対の電極130、140間に印加する高周波の周波数は、特に限定されないが、1kHz〜100MHz程度であるのが好ましく、10〜60MHz程度であるのがより好ましい。
また、高周波の出力密度は、特に限定されないが、0.01〜10W/cm程度であるのが好ましく、0.1〜1W/cm程度であるのがより好ましい。
また、成膜時のチャンバー101内の圧力は、133.3×10−5〜1333Pa(1×10−5〜10Torr)程度であるのが好ましく、133.3×10−4〜133.3Pa(1×10−4〜1Torr)程度であるのがより好ましい。
【0176】
原料ガス流量は、0.5〜200sccm程度であるのが好ましく、1〜100sccm程度であるのがより好ましい。一方、キャリアガス流量は、5〜750sccm程度であるのが好ましく、10〜500sccm程度であるのがより好ましい。
処理時間は、1〜10分程度であるのが好ましく、4〜7分程度であるのがより好ましい。なお、成膜される接合膜8の厚さは、主に、この処理時間に比例する。したがって、この処理時間を調整することのみで、接合膜8の厚さを容易に調整することができる。
また、基板1(配線基板7)の温度は、25℃以上であるのが好ましく、25〜100℃程度であるのがより好ましい。
以上のようにして、接合膜8を得ることができる。その後、各種エッチング法を用いて、形成したマスクを除去する。
【0177】
[2”]次に、この接合膜8が形成された配線基板7に設けられた端子21および接合膜8に対してエネルギーを付与する(図17(b)参照)。
エネルギーが付与されると、接合膜8では、図14に示すように、脱離基803がSi骨格801から脱離する。そして、脱離基803が脱離した後には、図15に示すように、接合膜8の表面および内部に活性手804が生じる。これにより、接合膜8の表面(上面)に接着性が発現する。また、このとき、前記第1実施形態で説明したように、接合膜3で構成される端子21の表面(上面)にも、接着性が発現する。
ここで、エネルギーの付与には、前記第1実施形態で説明したのと同様の方法を用いることができる。
【0178】
[3”]次に、チップコンデンサ6を用意する。そして、図17(c)に示すように、電極5と端子21とが密着するようにするとともに、併せて、本体部4と接合膜8とが密着するように、チップコンデンサ6と配線基板7とを接触させる。これにより、チップコンデンサ6は、電極5が端子21と電気的に接合されるとともに、本体部4が接合膜8を介して基板1(配線基板7)に接合され、図17(d)に示すような電子回路装置10”が得られる。
【0179】
なお、接合膜8は、基板1の上面に代えて、チップコンデンサ6の本体部4の下面に設けるようにしてもよく、基板1の上面および本体部4の下面の双方に設けるようにしてもよい。
ここで、基板1および本体部4の各熱膨張率が互いに異なる場合には、基板1と本体部4とを貼り合わせる際の条件を以下のように最適化するのが好ましい。これにより、チップコンデンサ6を配線基板7に高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0180】
例えば、基板1と本体部4との熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、基板1と本体部4との熱膨張率差にもよるが、基板1および本体部4の温度が25〜50℃程度である状態下で、基板1と本体部4とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、基板1と本体部4との熱膨張率差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、電子回路装置10”における反りや剥離等の発生を確実に防止することができる。
【0181】
また、この場合、基板1と本体部4との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。なお、接合膜8を用いることにより、上述したような低温下でも、基板1と本体部4と(配線基板7とチップコンデンサ6と)を強固に接合することができる。
また、基板1と本体部4とは、互いに剛性が異なっているのが好ましい。これにより、接合界面に熱応力が発生したとしても、この熱応力を基板1と本体部4とのいずれか一方で吸収して、基板1と本体部4とをより強固に接合することができる。
【0182】
また、基板1および本体部4の各熱膨張率が互いに異なる場合には、例えば、接合膜8の熱膨張係数を、基板1の熱膨張係数と本体部4の熱膨張係数との間に調整するようにしてもよい。これにより、電子回路装置10”が熱膨張した場合でも、配線基板7とチップコンデンサ6との剥離をより確実に防止することができる。
かかる接合膜8の熱膨張係数は、その成膜時の原料の比率、成膜条件等を適宜設定することにより調整可能である。
なお、このような接合膜8は、第2実施形態の電子回路装置のみならず、第1実施形態の電子回路装置に適用することができることは言うまでもない。
【0183】
<電子機器>
次に、上述した電子回路装置10(10、10’、10’’)を備える本発明の電子機器について説明する。
なお、以下では、本発明の電子機器の一例として、携帯電話を代表に説明する。
図18は、携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
図18に示す携帯電話は、表示部1001を備える携帯電話本体1000を有している。携帯電話本体1000には、上述した電子回路装置10が内蔵されており、これらは、携帯電話機本体1000において光信号出力手段などとして用いられる。
【0184】
なお、電子回路装置10は、図18で説明した携帯電話の他に、種々の電子機器に対して適用できる。
例えば光ファイバ通信モジュール、レーザプリンタ、レーザビーム投射器、レーザビームスキャナ、リニアエンコーダ、ロータリエンコーダ、変位センサ、圧力センサ、ガスセンサ、血液血流センサ、指紋センサ、高速電気変調回路、無線RF回路、無線LAN等にも適用できる。
【0185】
電子回路装置10は、上述したように、半田リフロー処理のような高温下(260℃程度)に晒されることなく、電極5と端子21とが強固に接合されることにより、チップコンデンサ6が配線基板7に固定されている。このような電子回路装置10は、クラックの発生が抑えられた信頼性の高いものである。したがって、このような電子回路装置10を搭載した電子機器は、使用環境によらず、長期間にわたって誤作動の発生が抑制された、信頼性の高いものとなる。
【0186】
以上、本発明の電子回路装置および電子機器を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、電子回路装置および電子機器を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
例えば、本発明の電子回路装置および電子機器は、前記実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
また、上記の説明では、電子部品として、チップコンデンサを用いた場合について説明したが、本発明の電子回路装置を構成する(電子回路装置に実装される)電子部品はこれに限定されない。例えば、チップコンデンサの代わりに、チップ抵抗、チップインダクタ、ダイオード、またはトランジスタ等を好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0187】
【図1】本発明の電子回路装置の第1実施形態を示す上面図である。
【図2】図1に示す電子回路装置のA−A線断面図である。
【図3】図1に示す電子回路装置におけるIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図4】図1に示す電子回路装置におけるIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図5】Iの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図6】図5に示す成膜装置が備えるイオン源の構成を示す模式図である。
【図7】IIの構成の接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図8】IIの構成の接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図9】IIの構成の接合膜を成膜する際に用いられる成膜装置を模式的に示す縦断面図である。
【図10】第1実施形態の電子回路装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。
【図11】第1実施形態の電子回路装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。
【図12】本発明の電子回路装置の第2実施形態を示す横断面図である。
【図13】本発明の電子回路装置の第3実施形態を示す横断面図である。
【図14】図13に示す電子回路装置における接合膜のエネルギー付与前の状態を示す部分拡大図である。
【図15】図13に示す電子回路装置における接合膜のエネルギー付与後の状態を示す部分拡大図である。
【図16】図13に示す電子回路装置における絶縁性接合膜の作製に用いられるプラズマ重合装置を模式的に示す図である。
【図17】図13に示す電子回路装置の製造方法(製造工程)を説明するための図である。
【図18】携帯電話の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0188】
1……基板 2……配線パターン 21…端子(第1の端子) 3……接合膜(導電性の接合膜) 303……脱離基 304……活性手 35……表面 4……本体部 5……電極(第2の端子) 6……チップコンデンサ 7…配線基板 8…接合膜(絶縁性の接合膜) 85……表面 10、10’、10’’……電子回路装置 200……成膜装置 211……チャンバー 212……基板ホルダー 215……イオン源 216……ターゲット 217……ターゲットホルダー 219……ガス供給源 220……第1のシャッター 221……第2のシャッター 230……排気手段 231……排気ライン 232……ポンプ 233……バルブ 250……開口 253……グリッド 254……グリッド 255……磁石 256……イオン発生室 257……フィラメント 260……ガス供給手段 261……ガス供給ライン 262……ポンプ 263……バルブ 264……ガスボンベ 500……成膜装置 511……チャンバー 512……基板ホルダー 521……シャッター 530……排気手段 531……排気ライン 532……ポンプ 533……バルブ 560……有機金属材料供給手段 561……ガス供給ライン 562……貯留槽 563……バルブ 564……ポンプ 565……ガスボンベ 570……ガス供給手段 571……ガス供給ライン 573……バルブ 574……ポンプ 575……ガスボンベ 801……Si結合 802……シロキサン(Si−O)結合 803……脱離基 804……活性手 100……プラズマ重合装置 101……チャンバー 102……接地線 103……供給口 104……排気口 130……第1の電極 139……静電チャック 140……第2の電極 170……排気ポンプ 171……圧力制御機構 180……電源回路 182……高周波電源 183……マッチングボックス 184……配線 190……ガス供給部 191……貯液部 192……気化装置 193……ガスボンベ 194……配管 195……拡散板 1000…携帯電話本体 1001…表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子と前記第2の端子とが導電性を有する接合膜で接合されることにより、前記電子部品が前記配線基板に対して、固定されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の端子と前記第2の端子とを接合していることを特徴とする電子回路装置。
【請求項2】
平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子は、導電性を有する接合膜で構成され、前記第2の端子に、前記第1の端子が接合することにより、前記電子部品が前記配線基板に対して固定されており、
前記接合膜は、金属原子と、該金属原子と結合する酸素原子と、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方に結合する脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が、前記金属原子および前記酸素原子の少なくとも一方から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第2の端子に接合していることを特徴とする電子回路装置。
【請求項3】
前記電気配線は、前記接合膜と同様の接合膜で構成され、前記第1の端子と一体的に形成されている請求項2に記載の電子回路装置。
【請求項4】
前記金属原子は、インジウム、スズ、亜鉛、チタン、およびアンチモンのうちの少なくとも1種である請求項1ないし3のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項5】
前記脱離基は、水素原子、炭素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子、またはこれらの各原子で構成される原子団のうちの少なくとも1種である請求項1ないし4のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項6】
前記接合膜は、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、アンチモン錫酸化物(ATO)、フッ素含有インジウム錫酸化物(FTO)、酸化亜鉛(ZnO)または二酸化チタン(TiO)に、脱離基として水素原子が導入されたものである請求項1ないし5のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項7】
前記接合膜中の金属原子と酸素原子の存在比は、3:7〜7:3である請求項1ないし6のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項8】
平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子と前記第2の端子とが導電性を有する接合膜で接合されることにより、前記電子部品が前記配線基板に対して、固定されており、
前記接合膜は、金属原子と、有機成分で構成される脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第1の端子と前記第2の端子とを接合していることを特徴とする電子回路装置。
【請求項9】
平板状の基材と、該基材の一方の面側に設けられ、所定形状にパターニングされた第1の端子を備える電気配線とを有する配線基板と、
第2の端子を備える電子部品とを有しており、
前記第1の端子は、導電性を有する接合膜で構成され、前記第2の端子に、前記第1の端子が接合することにより、前記電子部品が前記配線基板に対して固定されており、
前記接合膜は、金属原子と有機成分で構成された脱離基とを含み、
当該接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面付近に存在する前記脱離基が前記接合膜から脱離し、前記接合膜の表面の前記領域に発現する接着性によって、前記第2の端子に接合していることを特徴とする電子回路装置。
【請求項10】
前記電気配線は、前記接合膜と同様の接合膜で構成され、前記第1の端子と一体的に形成されている請求項9に記載の電子回路装置。
【請求項11】
前記接合膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成長法を用いて成膜されたものである請求項8ないし10のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項12】
前記接合膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものである請求項8ないし11のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項13】
前記脱離基は、前記有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存したものである請求項8ないし12のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項14】
前記脱離基は、炭素原子を必須成分とし、水素原子、窒素原子、リン原子、硫黄原子およびハロゲン原子のうちの少なくとも1種を含む原子団で構成される請求項8ないし13のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項15】
前記脱離基は、アルキル基である請求項14に記載の電子回路装置。
【請求項16】
前記有機金属材料は、金属錯体である請求項8ないし15のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項17】
前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種である請求項8ないし16のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項18】
前記接合膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3である請求項8ないし17のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項19】
前記電子部品は、チップコンデンサ、チップ抵抗、チップインダクタ、トランジスタまたはダイオードである請求項1ないし18のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項20】
前記接合膜は、その少なくとも表面付近に存在する前記脱離基が、当該接合膜から脱離した後に、活性手が生じる請求項1ないし19のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項21】
前記活性手は、未結合手または水酸基である請求項20に記載の電子回路装置。
【請求項22】
前記接合膜の平均厚さは、50〜1000nmである請求項1ないし21のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項23】
前記接合膜は、流動性を有さない固体状をなしている請求項1ないし22のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項24】
前記接合膜が接する少なくとも一方の面には、予め、前記接合膜との密着性を高める表面処理が施されている請求項1ないし23のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項25】
前記表面処理は、プラズマ処理である請求項24に記載の電子回路装置。
【請求項26】
前記エネルギーの付与は、前記接合膜にエネルギー線を照射する方法、前記接合膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項1ないし25のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項27】
前記エネルギー線は、波長126〜300nmの紫外線である請求項26に記載の電子回路装置。
【請求項28】
前記加熱の温度は、25〜100℃である請求項26または27に記載の電子回路装置。
【請求項29】
前記圧縮力は、0.2〜10MPaである請求項26ないし28のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項30】
前記エネルギーの付与は、大気雰囲気中で行われる請求項26ないし29のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項31】
さらに、前記配線基板と前記電子部品とを接合する絶縁性接合膜を有し、
前記接合膜は、シロキサン(Si−O)結合を含みランダムな原子構造を有するSi骨格と、該Si骨格に結合する脱離基とを含み、
当該絶縁性接合膜は、その少なくとも一部の領域にエネルギーを付与することにより、前記接合膜の表面の前記領域に発現した接着性によって、前記配線基板と前記電子部品とを接合している請求項1ないし30のいずれかに記載の電子回路装置。
【請求項32】
請求項1ないし31のいずれかに記載の電子回路装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2009−158868(P2009−158868A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338256(P2007−338256)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】