説明

電子地図表示装置、電子地図表示方法およびナビゲーション装置

【課題】 カーナビなどの電子地図装置において、目標位置までのおおよそ距離を、直感的に、かつ、容易に知ることができるようにする。
【解決手段】 地図を平面図形式または俯瞰図形式に表示する電子地図表示装置とする。地図を表示するための地図データが記録された記録媒体30から地図データを読み出して地図を平面図形式または俯瞰図形式表示するための地図表示手段10と、所定の位置を中心として中心位置からの等距離を結んだ地図上での等距離線を示す複数の同心状線を描画するための距離表示手段10とを設ける。距離表示手段10によって描画された同心状線を地図表示手段10によって表示された平面図形式または俯瞰図形式表示の地図上に重畳して表示する重畳表示手段18を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子地図表示装置、電子地図表示方法およびナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用のナビゲーション装置においては、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)などから読み出した地図データにしたがってディスプレイ上に地図が表示されるが、例えば図5Aに示すように、緯線および経線に沿ったラインを、地図に重ねて所定の間隔で碁盤状に描画する機能が用意されている。
【0003】
したがって、この描画機能を利用すれば、例えば、自車位置から走行の目標となる地点や建物までのおおよその距離を知ることができる。
【0004】
また、パーソナルコンピュータなどにおいて実行される電子地図ビューワーアプリケーションソフトウェアにおいては、表示された地図の外枠部分に距離を示す目盛りを表示する機能が用意されている。したがって、この距離目盛りにより、やはり距離を知ることができる。
【0005】
なお、先行技術文献として例えば以下のものがある。
【特許文献1】特開平6−109828号公報
【特許文献2】特開平7−27844号公報
【特許文献3】特開平9−145390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記のような距離の表現方法の場合、車の運転中に、目標となる地点や建物までのおおよその距離を知ろうとしても、その距離を瞬時に知ることは困難である。特に、緯線および経線に対して斜め方向の距離の場合は、なおさら困難である。
【0007】
また、図5Aは、地図を平面図形式に表示している場合であるが、車載用のナビゲーション装置には、一般に、もとの地図データを変換することにより例えば図5Bに示すように、地図を俯瞰図(鳥瞰図)形式に表示する機能も用意されている。
【0008】
すると、この俯瞰図形式では、地図上の単位長あたりの距離が、地図上の位置や方向によって異なるので、実際の距離を直感的に、かつ、迅速に把握することは、さらに困難になってしまう。
【0009】
この発明は、このような問題点を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明においては、
地図を平面図形式または俯瞰図形式に表示する電子地図表示装置であって、
上記地図を表示するための地図データが記録された記録媒体から該地図データを読み出して上記地図を上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示するための地図表示手段と、
所定の位置を中心として中心位置からの等距離を結んだ上記地図上での等距離線を示す複数の同心状線を描画するための距離表示手段と、
上記距離表示手段によって描画された上記同心状線を上記地図表示手段によって表示された上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示の上記地図上に重畳して表示する重畳表示手段と
を備えることを特徴とする電子地図表示装置
とするものである。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、自車位置などを中心とし、この中心から距離が等しい地図上の点をそれぞれ結んで距離表示円を表示するようにしているので、目標までのおおよその距離を、直感的に、かつ、迅速に把握することができる。また、電子地図を俯瞰図形式で表示している場合であっても、さらに、目標が斜めの方向にあっても、問題なく距離を把握することができる。
【0012】
さらに、おおよその距離を電子地図上で視覚的に迅速に把握できるので、ドライブ計画の参考にしやすい。また、電子地図を俯瞰図形式に表示する場合には、立体感が向上する。しかも、そのためには、そのような距離表示円を描画するプログラムを追加するだけでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
ところで、車載用のナビゲーション装置においては、通常、ディスプレイに表示された電子地図上に、自車の位置を表示する機能が用意されている。
【0014】
また、車載用のナビゲーション装置や電子地図ビューワーアプリケーションソフトにおいては、ユーザが、カーソルキーやマウスなどを使用してディスプレイに表示された電子地図をスクロールさせる場合、スクロール後の操作対象となる地点を明示するため、通常、アプリケーションソフトは、地図の中心付近に「+字カーソル」や「指マーク」などのスクロール中心マークを表示している。
【0015】
この発明は、これらの点に着目して電子地図上の距離を、迅速に、かつ、直感的に知ることができるようにしたものである。
【0016】
以下、この発明を車載用のナビゲーション装置に適用した場合の一形態について、図1により説明する。
【0017】
図1において、このナビゲーション装置には、これを制御するための制御回路としてマイクロコンピュータ10が設けられている。このマイクロコンピュータ10は、各種のプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)11と、それらのプログラムの書き込まれたROM(Read Only Memory)12と、ワークエリア用のRAM(Random Access Memory)13と、各種のデータを保存しておくための不揮発性のメモリ14とを有し、これらがシステムバス19を通じて互いに接続されている。
【0018】
さらに、システムバス19には、各種の操作キー15がキーインターフェイス回路16を通じて接続されるとともに、表示デバイス、例えばカラーLCD(Liquid Crystal Display)18がLCDコントローラ回路17を通じて接続されている。
【0019】
そして、図1のナビゲーション装置は、地図データを有する大容量のメディアとしてDVD−ROM(DVD Read Only Memory)30を使用する場合であり、すなわち、DVD−ROM30には、ナビゲーションに必要な各種の地図データ、例えば、地図を表示するためのデータやマップマッチングのための道路のデータなどが収容されている。そして、このDVD−ROM30からのデータを読み出すためのDVD−ROMドライブ装置21が設けられ、このドライブ装置21がシステムバス19に接続されている。
【0020】
さらに、このナビゲーション装置には、自律航法ユニット、例えばジャイロ22が設けられ、このジャイロ22からは、自分の移動する速度などのデータが取り出され、このデータがマイクロコンピュータ10に供給される。また、車の走行速度を検出する車速センサ23が設けられ、その出力信号がマイクロコンピュータ10に供給される。
【0021】
さらに、航法衛星、例えばGPS衛星からの電波が、GPSアンテナ24により受信され、その受信信号がGPSユニット(受信回路)25に供給され、GPSユニット25からは、自分の位置などのデータが取り出され、このデータがマイクロコンピュータ10に供給される。
【0022】
このような構成において、ジャイロ22、車速センサ23およびGPSユニット25の出力信号がCPU11により処理されて自車位置が判別され、DVD−ROM30からは自車位置を含む地図の地図データが読み出される。そして、この読み出された地図データにしたがって、例えば図2Aに示すように、LCD18には、自車位置付近を中心とする電子地図40が表示されるとともに、その自車位置に自車を示す例えば逆V字型のマーク41が表示される。なお、図2Aは、地図40を俯瞰図形式に表示させた場合である。
【0023】
そして、キー15のうちの所定のキーを操作すると、図2Bに示すように、地図40には、自車マーク(すなわち、自車位置)41を中心とした距離表示円42、43、44が同心状に表示される。この距離表示円42〜44は、自車マーク41を中心とし、この中心から距離が等しい地図40上の点をそれぞれ結ぶ等距離線であり、図2Bの場合には、地図40が俯瞰図形式に表示されているので、距離表示円42〜44は、ほぼ楕円形に表示されている。
【0024】
また、図2Bにおいては、距離表示円42〜44は、自車マーク41から等比級数的に、200m、400m、800mの点をそれぞれ結んだ場合であり、この円42〜44の近傍には、自車マーク41からの距離を示す数値45が表示される。
【0025】
なお、距離表示円42〜44の対応する距離およびその数は、表示される地図40の縮尺に対応して、例えば、50m、100m、200m、400mなどのように変更されるものである。また、距離表示円42〜44は、CPU11が円42〜44を描画するプログラムを実行することにより表示されるものであり、そのプログラムはROM12に用意される。さらに、図2Bにおいては、円44は、その一部だけが地図40内に表示された弧状の等距離線である。
【0026】
こうして、このナビゲーション装置においては、LCD18に電子地図40を表示するとともに、自車マーク41を中心とし、この中心から距離が等しい地図上の点をそれぞれ結ぶ距離表示円42〜44を表示するようにしているので、目標となる地点や建物などまでのおおよその距離を、直感的に、かつ、迅速に把握することができる。
【0027】
しかも、その場合、電子地図40を俯瞰図形式で表示している場合であっても、あるいはさらに、目標が斜め方向にあっても、問題なく距離を把握することができる。
【0028】
また、自車位置から目標地点までのおおよその距離を電子地図上で視覚的に迅速に把握できるので、ドライブ計画の参考にしやすい。さらに、電子地図40を俯瞰図形式に表示する場合には、距離表示円42〜44により立体感が向上する。そして、距離表示円42〜44を表示するためのプログラムを描画ドライバ(描画プログラム)に追加するだけで、以上の効果を得ることができる。
【0029】
図3は、俯瞰図形式の電子地図40の中心付近に、スクーロール中心を示す+字カーソル46が表示され、さらに、この+字カーソル46を中心とし、この中心から200m、400m、800mの点を結んだ距離表示円42、43、44が表示された場合である。
【0030】
また、図4は、俯瞰図形式に表示した地図40において、自車マーク41が地図40の中央よりも下(進行後方)に位置するように地図40を表示して進行前方についての地図情報をより多く表示するようにした場合である。そして、このような場合には、図4にも示すように、距離表示円42〜44(およびその外側の距離表示円)の一部あるいは全部を、弧状の等距離線とすることができる。
【0031】
なお、上述において、距離表示円42〜44に、シャドウあるいはハイライトをつけることにより、あるいは、円42〜44をその描画される部分の地色の例えば補色とすることにより、距離表示円42〜44をより明瞭に見えるようにすることができる。
【0032】
また、電子地図40を俯瞰図形式に表示する場合には、自車マーク41を中心にした円周上に、方位を示す文字や記号などを表示させれば、俯瞰図形式の場合には把握しにくい自車の進行方位を容易に、かつ、瞬時に知ることができる。
【0033】
さらに、自車位置あるいは電子地図の中心から、放射状にラインを表示するとともに、各ラインに、自車位置あるいは電子地図の中心からの距離を示す目盛りを表示することもできる。
【0034】
また、距離表示円42〜44の代わりに、円42〜44を境界として色分けして電子地図40を表示することもできる。例えば、表示処理のハードウェアが2層以上のレイヤ構成であれば、下位レイヤに電子地図40を描画し、上位レイヤを半透明レイヤとするとともに、これを円42〜44を境界とした色で塗りつぶせばよい。
【0035】
さらに、上述においては、この発明を車載用ナビゲーション装置に適用した場合であるが、PDA(Personal Digital Assistant)やパーソナルコンピュータなどにおいて、地図データにしたがって地図を表示する場合にも、この発明を適用することができる。また、DVD−ROM30の代わりに、CD−ROMなどの大容量メディアであってもよい。さらに、電子地図40を表示するための地図データの形式は問わない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】この発明の一形態を示す系統図である。
【図2】この発明による表示例を示す俯瞰図である。
【図3】この発明による表示例を示す俯瞰図である。
【図4】この発明による表示例を示す俯瞰図である。
【図5】この発明による表示例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0037】
10…マイクロコンピュータ、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…メモリ、15…キー、16…キーインターフェイス回路、17…LCDコントローラ回路、18…カラーLCD、19…システムバス、21…DVD−ROMドライブ装置、22…ジャイロ、23…車速センサ、24…GPSアンテナ、25…GPSユニット、30…DVD−ROM、40…電子地図、41…自車マーク、42〜44…距離表示円(等距離線)、45…距離表示数値、46…+字カーソル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図を平面図形式または俯瞰図形式に表示する電子地図表示装置であって、
上記地図を表示するための地図データが記録された記録媒体から該地図データを読み出して上記地図を上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示するための地図表示手段と、
所定の位置を中心として中心位置からの等距離を結んだ上記地図上での等距離線を示す複数の同心状線を描画するための距離表示手段と、
上記距離表示手段によって描画された上記同心状線を上記地図表示手段によって表示された上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示の上記地図上に重畳して表示する重畳表示手段と
を備えることを特徴とする電子地図表示装置。
【請求項2】
上記同心状線は円線または楕円線または円弧線である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項3】
上記同心状線の近傍に上記所定の位置からの距離を示す数値を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項4】
上記地図上に表示する上記同心状線の数は、上記地図の表示縮尺に対応して変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項5】
上記所定の位置は、車両の現在位置を示す位置である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項6】
上記同心状線にシャドウまたはハイライトを付けて表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項7】
上記同心状線を境界として色分けして表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項8】
上記同心状線の円周上に方位を示す文字、記号を表示する
ことを特徴とする請求項1に記載の電子地図表示装置。
【請求項9】
地図を平面図形式または俯瞰図形式に表示する電子地図表示方法であって、
地図を表示するための地図データを記録した記録媒体から該地図データを読み出して上記地図を上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示するための地図表示ステップと、
所定の位置を中心として中心位置からの等距離を結んだ上記地図上での等距離線を示す複数の同心状線を描画するための距離表示ステップと、
上記距離表示ステップによって描画された上記同心状線を上記地図表示ステップによって表示された上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示の地図上に重畳して表示する重畳表示ステップと
を備えることを特徴とする電子地図表示方法。
【請求項10】
上記同心状線は円線または楕円線または円弧線である
ことを特徴とする請求項9に記載の電子地図表示方法。
【請求項11】
GPS(Global Positioning System)衛星からの信号を受信して車両の現在位置を測位するGPS受信機と車両の移動速度を検出する自律航法装置とを備え、
測位した上記現在位置を中心として地図を平面図形式または俯瞰図形式に表示するナビゲーション装置であって、
上記地図を表示するための地図データを記録した記録媒体から該地図データを読み出して上記地図を上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示するための地図表示手段と、
所定の位置を中心として中心位置からの等距離を結んだ上記地図上での等距離線を示す複数の同心状線を描画するための距離表示手段と、
上記距離表示手段によって描画された上記同心状線を上記地図表示手段によって表示された上記平面図形式または上記俯瞰図形式表示の地図上に重畳して表示する重畳表示手段と
を備えることを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項12】
上記同心状線は円線または楕円線または円弧線である
ことを特徴とする請求項11に記載のナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−330745(P2006−330745A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178063(P2006−178063)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【分割の表示】特願平11−113381の分割
【原出願日】平成11年4月21日(1999.4.21)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】