説明

電子放出源用ペースト

【課題】カーボンナノチューブを有する感光性樹脂組成物においても、フォトリソグラフィーによって高感度で微細なパターンが加工可能な電子放出源用ペーストおよびそれを用いた電子放出素子を提供する。
【解決手段】針状炭素、無機粉末および感光性有機成分を含む電子放出源用ペーストであって、感光性有機成分が感光性樹脂および特定のアシルオキシム化合物から選ばれる少なくとも1種以上の光重合開始剤を含み、前記感光性樹脂は1)エチレン性不飽和基を有し、2)重量平均分子量が110,000〜300,000である電子放出源用ペースト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子放出源用ペーストおよびそれを用いた電子放出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは物理的・化学的耐久性に優れているだけでなく、電界放出に適した先鋭な先端形状と大きなアスペクト比を持っている。そのため、カーボンナノチューブを電子放出源とした電界放出型ディスプレイ(FED)、電界放出を用いた液晶用バックライトや照明機器等の研究が盛んに行われている。
【0003】
このカーボンナノチューブを用いた電子放出源を作製する方法の一つに、カーボンナノチューブをペーストにして印刷することにより、カソード電極上にカーボンナノチューブを有する膜を作製する方法がある(特許文献1参照)。この方法は、カソード電極上にカーボンナノチューブを含むペーストをスクリーン印刷し、その後焼成することによってペースト中の有機成分を分解し、さらにレーザー法、プラズマ法、テープ剥離法等の起毛処理を、カーボンナノチューブを有する膜に行うことによって電子放出源を作製するものである。しかしながら、本方法ではスクリーンマスクのメッシュ限界により、100μm以下の微細な電子放出源のパターンを形成することが困難であった。
【0004】
その他の技術として、カーボンナノチューブを含むペーストに感光性有機成分を加えることで、フォトリソグラフィーによって微細なパターンを一括形成することができる電子放出源の作製方法が提案されている(特許文献2、3参照)。この方法によれば、光重合開始剤と光硬化可能なモノマーを含むペーストをカソード電極上に全面印刷した後、乾燥させたペースト塗膜に光を照射して現像し、微細な電子放出源のパターンを形成することが可能である。しかし、本方法を用いて電子放出源のパターンを形成した場合に、カーボンナノチューブによる遮光性によって十分な感度が得られなかった。
【0005】
一方、高感度な感光性樹脂組成物として、アシルオキシム化合物の光重合開始剤を添加したカーボンブラックなどの黒色樹脂組成物が提案されている(特許文献4、5参照)。
【特許文献1】特開2001−176380号公報(第8段落)
【特許文献2】特表2004−504690号公報(第18段落)
【特許文献3】特開2005−56818号公報(請求項6)
【特許文献4】特開2005−242279号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2006−162784号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アシルオキシム系化合物の光重合開始剤をカーボンナノチューブを有するペーストに添加しただけでは、1J/cm以下の実用レベルの露光量において、微細パターン形成性は得られないという問題があった。
【0007】
本発明は上記課題に着目し、カーボンナノチューブを有する感光性樹脂組成物においても、フォトリソグラフィーによって高感度で微細なパターンが加工可能な電子放出源用ペーストおよびそれを用いた電子放出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は針状炭素、無機粉末および感光性有機成分を含む電子放出源用ペーストであって、感光性有機成分が感光性樹脂および下記一般式(I)から(III)で表されるアシルオキシム化合物から選ばれる少なくとも1種以上の光重合開始剤を含み、前記感光性樹脂は1)エチレン性不飽和基を有し、2)重量平均分子量が110,000〜300,000である電子放出源用ペーストである。
【0009】
【化1】

【0010】
(一般式(I)中、R11はアルキル基を表す。R13、R14、R16及びR17は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。R12及びR15は、それぞれ独立にアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。m及びnが2以上の場合、複数のR12及びR15は異なる基であっても良い。Lは酸素原子、硫黄原子、又はNHを表す。)
【0011】
【化2】

【0012】
(一般式(II)中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表し、これらは一部ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基、スルフィド基、チオール基、アミノ基、アミド基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基または複素環基などで置換されていてもよい。R24はアルキル基またはハロゲン原子を表し、pは0から5の整数を表す。pが2以上の場合、複数のR24は異なる基であっても良い。)
【0013】
【化3】

【0014】
(一般式(III)中、Aはシクロアルキルキアルキル基を表す。R31、R32及びR33は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表し、これらは一部ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基、スルフィド基、チオール基、アミノ基、アミド基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基または複素環基などで置換されていてもよい。R34はアルキル基またはハロゲン原子を表し、qは0から4の整数を表す。qが2以上の場合、複数のR34は異なる基であっても良い。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、カーボンナノチューブを有する感光性樹脂組成物においても、フォトリソグラフィーによって高感度で微細なパターンが加工可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、針状炭素、無機粉末および感光性有機成分を含む電子放出源用ペーストであって、感光性有機成分が感光性樹脂および特定のアシルオキシムエステル化合物から選ばれる少なくとも1種以上の光重合開始剤を含み、前記感光性樹脂は1)エチレン性不飽和基を有し、2)重量平均分子量が110,000〜300,000である電子放出源用ペーストである。以下、詳細に説明する。
【0017】
一般に電界放出型ディスプレイなどに用いられる電子放出源には、モリブデンに代表される金属材料や、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーン、カーボンナノコイル、カーボンナノツイストといった針状炭素、ダイアモンド、ダイアモンドライクカーボン、グラファイト、カーボンブラック、フラーレンに代表される炭素系材料があり、本発明では低い仕事関数特性によって低電圧駆動が可能であることから針状炭素を用いる。針状炭素の中でもカーボンナノチューブは高アスペクト比であるために良好な電気放出特性を持つことからより好ましい。以下、針状炭素の代表としてカーボンナノチューブを用いた電子放出源用ペーストについて一例として述べる。
【0018】
本発明で用いるカーボンナノチューブには単層、または2層、3層等の多層カーボンナノチューブがある。層数の異なるカーボンナノチューブの混合物としてもよいし、未精製カーボンナノチューブ粉末はアモルファスカーボンや触媒金属等の不純物を含むことがあるため、精製することによって純度を高めて使用することもできる。また、カーボンナノチューブの長さを調整するため、ボールミルやビーズミル等でカーボンナノチューブ粉末を粉砕してもよい。
【0019】
電子放出源用ペースト全体に対するカーボンナノチューブの含有量は0.1〜20重量%が好ましい。また0.1〜10重量%であることが好ましく、0.5〜5重量%であることがさらに好ましい。カーボンナノチューブの含有量が前記範囲内であると、電子放出源用ペーストの良好な分散性、印刷性、塗布膜厚みおよびパターン形成性が得られる。
【0020】
本発明の電子放出源用ペーストに用いる感光性樹脂は、側鎖にエチレン性不飽和基を有し、重量平均分子量が110,000〜300,000である。
【0021】
側鎖にエチレン性不飽和基を有する感光性樹脂は、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基やメルカプト基等の活性水素含有基を有する樹脂とエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させて得ることができる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、酢酸ビニルまたはこれらの酸無水物などのカルボキシル基含有モノマーおよびメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどのモノマーを選択し、ラジカル重合開始剤を用いて重合または共重合させてポリマーを得る。このポリマー中の活性水素含有基に対して、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジル、イソクロトン酸グリシジル、アクリロイルイソシアネート、メタアクリロイルイソシアネート、アクリロイルエチルイソシアネート、メタアクリロイルエチルイソシアネートなどのグリシジル基やイソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドまたはアリルクロライドを付加反応させることにより得ることができる。
【0022】
前記感光性樹脂は、電子放出源用ペーストの塗膜形成性やカーボンナノチューブの分散性といったバインダーとしての機能を有するだけでなく、側鎖にエチレン性不飽和基を有することでそれ自身が光硬化可能であるため、硬化膜の架橋密度が向上し、高感度な電子放出源用ペーストを得ることができる。
【0023】
さらに感光性樹脂の重量平均分子量は110,000〜300,000である。重量平均分子量が前記範囲内である感光性樹脂は、電子放出源用ペーストの現像液への溶解性を保持しつつ、十分な耐溶剤性を有する硬化膜を得ることができる。また、本発明においては感光性樹脂の重量平均分子量を110,000以上とすることが特に重要である。一般に、感光性樹脂の分子量が大きくなるとパターン加工時の感度が低下したり、微細なパターンが得られなくなる。しかし本発明においては、分子量を大きくすることにより、逆に高感度で、高解像度なパターンが得られるものである。これは、カーボンナノチューブが本来ラジカル補足性が高いという性質を有するところ、感光性樹脂の高分子量化によりカーボンナノチューブのラジカル捕捉性を著しく低減させることができたためと推測される。未露光部の現像液への溶解性が良好で、微細なパターン形成性が得られる点で、感光性樹脂の重量平均分子量はさらに好ましくは130,000〜250,000であり、特に好ましくは150,000〜200,000である。感光性樹脂の重量平均分子量が110,000より小さいと感光性樹脂の耐現像液性が低いことや、カーボンナノチューブのラジカル捕捉効果によって感度が低下するため好ましくない。また、感光性樹脂の重量平均分子量が300,000より大きいと感光性樹脂の現像液への溶解性が著しく低下するために微細なパターン形成が困難であることや、電子放出源用ペーストの高粘度化によってゲル化を引き起こすため好ましくない。
【0024】
本発明における感光性樹脂の重量平均分子量はテトラヒドロフランを移動相としたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した値である。カラムはShodex KF−803を用い、重量平均分子量はポリスチレン換算により計算することができる。
【0025】
感光性樹脂中のエチレン性不飽和基の含有量は、0.5〜3.0mol/kgが好ましく、0.5〜1.5mol/kgがさらに好ましい。エチレン性不飽和基の含有量が0.5mol/kg以上であると、光重合による硬化性が得られるため好ましく、3.0mol/kg以下であると、良好な熱分解性を有して有機残渣が低減されるため好ましい。エチレン性不飽和基の含有量はJIS−K0070(1992)に準拠して測定されたヨウ素価から求めることができる。また、エチレン性不飽和基の含有量は、感光性樹脂中に含まれるカルボキシル基の量と、エチレン性不飽和基を有する化合物の付加量によって制御することができる。
【0026】
本発明に用いられる感光性樹脂は、さらに酸性基を有していることが好ましい。酸性基は何でも良いが、好ましくはカルボキシル基である。前記感光性樹脂は側鎖にカルボキシル基を含有することにより、アルカリ水溶液での現像を可能にする。この場合、感光性樹脂の酸価は50〜200mgKOH/gであることが好ましい。酸価を50mgKOH/g以上とすることで、可溶部分の現像液に対する溶解性が低下することがなく、200mgKOH/g以下とすることで、現像許容幅を広くすることができる。なお、酸価の測定は、JIS−K0070(1992)に準拠して求めることができる。
【0027】
本発明の感光性樹脂の含有量は、全感光性有機成分に対し、好ましくは30〜95重量%の範囲であり、より好ましくは50〜90重量%である。感光性樹脂の含有量が30重量%以上であると、カーボンナノチューブと無機粉末の良好な分散性と高感度でのパターン形成性が得られるため好ましく、感光性樹脂の含有量が95重量%以下であると、現像液に対する溶解性と微細なパターン形成性が得られるため好ましい。
【0028】
本発明の電子放出源用ペーストは、下記一般式(I)〜(III)で表されるアシルオキシム化合物から選ばれる少なくとも1種以上の光重合開始剤を含む。
【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
電子放出源用ペースト中のカーボンナノチューブは遮光性による感度低下を引き起こすが、前記光重合開始剤を用いることで高感度なパターン形成性が得られる。特に側鎖にエチレン性不飽和基を有し、重量平均分子量が110,000〜300,000である感光性樹脂と組み合わせて用いることで、カーボンナノチューブのラジカル捕捉性が低減されることから、著しい感度の向上効果が得られる。
【0033】
一般式(I)中、R11はアルキル基を表す。R13、R14、R16及びR17は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。R12及びR15は、それぞれ独立にアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。m及びnが2以上の場合、複数のR12及びR15は異なる基であっても良い。Lは酸素原子、硫黄原子、又はNHを表す。R11で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R12、R13、R14、R15、R16及びR17で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。一般式(I)で表されるアシルオキシム化合物の好ましい具体例としては、化学式(IV)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化7】

【0035】
一般式(II)中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表し、これらは一部ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基、スルフィド基、チオール基、アミノ基、アミド基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基または複素環基などで置換されていてもよい。R24はアルキル基またはハロゲン原子を表し、pは0から5の整数を表す。pが2以上の場合、複数のR24は異なる基であっても良い。R21、R22及びR23で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R21、R22及びR23で表されるアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスレニル基等が挙げられる。R21、R22及びR23で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、クロロベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。R21、R22及びR23で表される複素環基としては、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、モルホニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基等が挙げられる。R24で表されるアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R24で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。一般式(II)で表されるアシルオキシム化合物の好ましい具体例としては、化学式(V)で表される化合物が挙げられる。
【0036】
【化8】

【0037】
一般式(III)中、Aはシクロアルキルアルキル基を表す。R31、R32及びR33は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表し、これらは一部ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基、スルフィド基、チオール基、アミノ基、アミド基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基または複素環基などで置換されていてもよい。R34はアルキル基またはハロゲン原子を表し、qは0から4の整数を表す。qが2以上の場合、複数のR34は異なる基であっても良い。
【0038】
Aで表されるシクロアルキルアルキル基としては、シクロプロピルメチル基、2−シクロプロピルエチル基、3−シクロプロピルプロピル基、シクロブチルメチル基、2−シクロブチルエチル基、3−シクロブチルプロピル基、シクロペンチルメチル基、2−シクロペンチルエチル基、3−シクロペンチルプロピル基、シクロヘキシルメチル基、2−シクロヘキシルエチル基、3−シクロヘキシルプロピル基、2−クロロ−3−シクロヘキシルプロピル基等が挙げられる。
【0039】
31、R32及びR33で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R31、R32及びR33で表されるアリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスレニル基等が挙げられる。R31、R32及びR33で表されるアラルキル基としては、ベンジル基、クロロベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。R31、R32及びR33で表される複素環基としては、ピロリル基、フラニル基、チオフェニル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジル基、ピラジニル基、モルホニル基、ピペラジニル基、ピペリジニル基等が挙げられる。R34で表されるアルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。R34で表されるハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。一般式(III)で表されるアシルオキシム化合物の好ましい具体例としては、化学式(VI)で表される化合物が挙げられる。
【0040】
【化9】

【0041】
前記化学式(IV)〜(VI)で表される化合物は、溶媒への溶解性、易熱分解性、入手の容易性といった点から好ましく用いられ、高感度であることから化学式(V)、(VI)がさらに好ましい。
【0042】
一般式(I)〜(III)で表されるアシルオキシム化合物から選ばれる少なくとも1種以上の光重合開始剤の含有量は、感光性有機成分に対して0.05〜20重量%の範囲が好ましく、0.1〜10重量%がより好ましく、1〜10重量%がさらに好ましい。光重合開始剤の含有量を0.05重量%以上とすることでパターン形成するために十分な光硬化性が得られ、20重量%以下とすることで深部硬化性と良好なパターン形状が得られるため好ましい。
【0043】
また、本発明の電子放出源用ペーストには、本発明のアシルオキシム化合物の他に、必要に応じて他の光重合開始剤および/または増感剤を含むことができる。本発明のアシルオキシム化合物に他の光重合開始剤および/または増感剤を併用することで、反応に有効な波長領域を拡大させて感度を向上させることができる。
【0044】
本発明に用いることができる他の光重合開始剤および増感剤としては、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、チオキサントン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、ホスフィン系化合物、チタノセン系化合物、オキサジアゾール系化合物、キノン系化合物、ジケトン系化合物、チオール系化合物などが挙げられる。
【0045】
本発明の電子放出源用ペーストは無機粉末を含む。無機粉末としては接着剤としての役割を果たすものであればいずれも用いることができる。カーボンナノチューブの耐熱性が500〜600℃であること、基板ガラスとしてソーダライムガラス(軟化点500℃程度)を用いることなどを考慮すると、無機粉末の焼結温度は500℃以下が好ましく、450℃以下がさらに好ましい。前記焼結温度を有する無機粉末を用いることで、カーボンナノチューブの焼失を抑制し、ソーダライムガラスなどの安価な基板ガラスを使用することができる。このような無機粉末の具体例としては銀、銅、ニッケル、合金、はんだなどの金属粉末、ガラス粉末、もしくはそれらを混ぜて使用することができる。金属粉末は触媒作用によってカーボンナノチューブの焼失を促進することから、本発明の電子放出源用ペーストにおいてはガラス粉末が好ましく用いられる。
【0046】
ガラス粉末の焼結温度を表すガラス軟化点はガラス組成によって異なるため、ガラス組成の選択によって制御することができる。本発明の電子放出源用ペーストに含むガラス粉末としてはBi系ガラス、アルカリ系ガラス、SnO−P系ガラス、SnO−B系ガラスが好ましく用いられる。前記ガラス粉末を用いると、ガラス軟化点を300℃〜450℃の範囲に制御することができるため好ましい。
【0047】
電子放出源とカソード電極は強固に接着している必要があるが、電子放出源用ペーストに含まれるカーボンナノチューブとガラス粉末の比は、カーボンナノチューブ100重量部に対し、ガラス粉末が200〜8000重量部であると、優れた接着性を得ることができる。
【0048】
ガラス粉末の平均粒径は2μm以下が好ましい。さらに好ましくは1μmより小さいことである。ガラス粉末の平均粒径が2μm以下であると、電子放出源用ペーストに紫外線を照射したときに起こるペースト内部でのガラス粉末による光散乱を抑制することができ、電子放出源パターン以外の部分でのカーボンナノチューブを含むペースト残渣を大幅に減少させることができるため好ましい。また、ガラス粉末の粒径が小さくなるとガラス粉末が軟化しやすくなるため、より少ないガラス粉末の含有量で電子放出源とカソード電極の接着性を得ることができる。そのため、ガラスの平均粒径が1〜2μmのときはカーボンナノチューブ100重量部に対してガラス粉末が3000〜8000重量部が好ましく、ガラスの平均粒径が1μmより小さいときは、カーボンナノチューブ100重量部に対してガラス粉末が200〜3000重量部であることが好ましい。
【0049】
ここで平均粒径とは、累積50%粒径(D50)のことをさす。これは一つの粉体の集団の全体積を100%として体積累積カーブを求めたとき、その体積累積カーブが50%となる点の粒径を表したものであり、累積平均径として一般的に粒度分布を評価するパラメータの1つとして利用されているものである。なお、ガラス粉末の粒度分布の測定はマイクロトラック法(日機装(株)製マイクロトラックレーザー回折式粒度分布測定装置による方法)で測定することができる。
【0050】
本発明の電子放出源用ペーストは感光性樹脂、光重合開始剤を含み、必要に応じて光硬化性モノマー、溶媒、紫外線吸収剤、重合禁止剤、増感助剤、可塑剤、増粘剤、酸化防止剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤やレベリング剤等の添加成分を含んでもよい。
【0051】
本発明の電子放出源用ペーストは、光硬化性モノマーを含むことで架橋密度を向上させることができる。光硬化性モノマーの具体的な例としては、光反応性を有する炭素−炭素不飽和結合(エチレン性不飽和基)を含有する化合物を用いることができ、例えばアルコール類(例えば、エタノール、プロパノール、ヘキサノール、オクタノール、シクロヘキサノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル、カルボン酸(例えば、酢酸プロピオン酸、安息香酸、アクリル酸、メタクリル酸、コハク酸、マレイン酸、フタル酸、酒石酸、クエン酸など)とアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジル、またはテトラグリシジルメテキシリレンジアミンとの反応生成物、アミド誘導体(例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミドなど)、エポキシ化合物とアクリル酸またはメタクリル酸との反応物などを挙げることができる。また、多官能の光硬化性モノマーにおいて、不飽和基は、アクリル、メタクリル、ビニル、アリル基が混合して存在してもよい。本発明では、これらを1種または2種以上使用することができる。
【0052】
光硬化性モノマーを用いる場合、その含有量は、全感光性有機成分に対し、好ましくは1〜50重量%の範囲であり、より好ましくは5〜30重量%である。光硬化性モノマーの含有量を1重量%以上とすることで、露光部の架橋密度が向上し、50重量%以下とすることで、現像液耐性と良熱分解性が得られる。
【0053】
本発明の電子放出源用ペーストは、紫外線吸収剤を含むことで電子放出源用ペーストのパターン加工性を向上させることができる。紫外線吸収剤は、波長領域300〜550nmの範囲に紫外線吸収がある有機系染料が好ましく、紫外線吸収スペクトルの最大吸収波長(λmax)が波長300〜550nmの範囲にある有機系染料がさらに好ましい。これらの波長領域に紫外線吸収を持つ有機系染料を用いることで、紫外線照射時の電子放出源用ペースト内部での光散乱を抑制することが可能となる。これにより、非紫外線照射部の光硬化が抑制されるため、電子放出源パターン以外の部分でのカーボンナノチューブを含む残渣を大幅に減少させることができる。
【0054】
紫外線吸収剤の具体的な例としては、アゾ系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、クマリン系、キサテン系、キノリン系、アントラキノン系、ベンゾエート系、ベンゾイン系、ケイ皮酸系、サリチル酸系、ヒンダードアミン系、シアノアクリレート系、トリアジン系、アミノ安息香酸系、キノン系などが挙げられ、1種または複数を組み合わせて用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
紫外線吸収剤を用いる場合、その含有量は、全感光性有機成分に対し、好ましくは0.001〜10重量%であり、より好ましくは0.01〜5重量%である。紫外線吸収剤の含有量を0.001重量%以上とすることで露光散乱光の抑制効果が得られ、10重量%以下とすることで深部まで光が透過することができる。
【0056】
本発明の電子放出源用ペーストは重合禁止剤を含んでもよく、その具体的な例としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンのモノエステル化物、N−ニトロソジフェニルアミン、フェノチアジン、p−t−ブチルカテコール、N−フェニルナフチルアミン、2,6−ジ−t−ブチル−p−メチルフェノール、クロラニール、ピロガロールなどが挙げられ、1種または複数を組み合わせて用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
重合禁止剤を用いる場合、その含有量は、全感光性有機成分に対し、好ましくは0.01〜10重量%であり、より好ましくは0.02〜5重量%である。重合禁止剤の含有量を0.01重量%以上とすることでラジカル捕捉効果が得られ、10重量%以下とすることで光重合が阻害されない。
【0058】
溶媒はバインダーポリマー等有機成分を溶解するものが好ましい。例えば、エチレングリコールやグリセリンに代表されるジオールやトリオールなどの多価アルコール、アルコールをエーテル化および/またはエステル化した化合物(エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート)などが挙げられる。具体的には、テルピネオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、ブチルカルビトールアセテートなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0059】
溶媒を用いる場合、その含有量は、電子放出源用ペースト全量に対し、好ましくは10〜90重量%の範囲であり、より好ましくは20〜80重量%である。溶媒の含有量が前記範囲内であれば、電子放出源用ペーストの良好な分散安定性、印刷特性、塗膜形成性が得られる。
【0060】
電子放出源用ペースト中で無機粉末やカーボンナノチューブをさらに十分に分散させるために、分散剤を用いてもよい。分散剤はアミン系くし形ブロックコポリマーが好ましい。アミン系くし形ブロックコポリマーとしては、たとえば、アビシア(株)製のソルスパース13240、ソルスパース13650、ソルスパース13940、ソルスパース24000SC、ソルスパース24000GR、ソルスパース28000(いずれも商品名)などが挙げられる。
【0061】
本発明の電子放出源用ペーストは、各種成分を所定の組成になるよう調合した後、3本ローラー、ボールミル、ビーズミル等の混練機で均質に混合分散することによって作製することができる。ペースト粘度は、ガラス粉末、増粘剤、有機溶媒、可塑剤および沈殿防止剤等の添加割合によって適宜調整されるが、その範囲は2〜200Pa・sである。例えば、基板への塗布をスリットダイコーター法やスクリーン印刷法以外にスピンコート法やスプレー法で行う場合は、0.001〜5Pa・sが好ましい。
【0062】
以下に、本発明の感光性電子放出源用ペーストを用いたトライオード型とダイオード型のフィールドエミッション用電子放出素子の作製方法について説明する。なお、電子放出素子の作製は、その他の公知の方法を用いてもよく、後述する作製方法に限定されない。
【0063】
はじめにトライオード型電子放出素子用背面基板の作製方法を説明する。ガラス基板上にITO等の導電性膜を成膜しカソード電極を形成する。次いで、絶縁材料を印刷法により5〜15μm積層し絶縁層を作製する。次に、絶縁層上に真空蒸着法によりゲート電極層を形成する。ゲート電極層上にレジスト塗布し、露光、現像によりゲート電極および絶縁層をエッチングすることによって、エミッタホールパターンを作製する。この後、電子放出源用ペーストをエミッタホールパターン上にスクリーン印刷またはスリットダイコーター等により塗布した後、熱風オーブンなどで乾燥する。乾燥後の電子放出源用ペーストに対して、上面(電子放出源用ペースト側)からフォトマスクを通じて紫外線を照射するか、もしくはカソード電極にITO等の透明な導電性膜を用いた場合は、背面(ガラス基板側)から直接電子放出源用ペーストに紫外線を照射する。露光後はアルカリ現像液や有機現像液などで現像し、エミッタホール内に電子放出源パターンを形成し、400〜500℃で焼成して電子放出源を作製する。最後にレーザー照射法やテープはく離法により電子放出源の起毛処理を行う。
【0064】
次に、前面基板を作製する。ガラス基板上にITOを成膜しアノード電極を形成する。アノード電極上に蛍光体を印刷法により積層する。背面基板と前面基板をスペーサーをはさんで貼り合わせ、容器に接続した排気管により真空排気することによりトライオード型電子放出素子を作製することができる。電子放出状態を確認するために、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、カーボンナノチューブから電子が放出され蛍光体発光を得ることができる。
【0065】
ダイオード型電子放出素子用前面板を作製する場合は、カソード電極上に電子放出源用ペーストをスクリーン印刷またはスリットダイコーター等により所定のパターンで印刷後、大気中400〜500℃の温度で加熱し、電子放出源を得て、これをテープはく離法やレーザー処理法により起毛処理を行う。新たにITOをスパッタしたガラス基板上に蛍光体を印刷し、アノード電極を作製し、これら2枚のガラス基板をスペーサーを挟んで貼り合わせ、容器に接続した排気管で真空排気することによりダイオード型電子放出素子を作製することができる。電子放出状態を確認するために、アノード電極に1〜5kVの電圧を供給することで、カーボンナノチューブから電子が放出され蛍光体発光を得ることができる。
【実施例】
【0066】
以下に、本発明を実施例に具体的に説明する。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。実施例に用いたカーボンナノチューブ、無機粉末および感光性有機成分は次の通りである。
【0067】
A.針状炭素
2層カーボンナノチューブ(東レ(株)社製)
B.無機粉末
ガラス粉末:Bi(84重量%)、B(7重量%)、SiO(1重量%)、ZnO(8重量%)の組成のものを用いた。このガラス粉末の軟化点は380℃、平均粒径は0.5μmのものを用いた。
【0068】
C.感光性有機成分および添加剤
感光性樹脂I:メタクリル酸iso−ブチル/メタクリル酸n−ブチル/メタクリル酸= 40/40/20重量部からなる共重合体のカルボキシル基に対して、0.5当量のグリシジルメタクリレートを付加反応させたもので重量平均分子量が90,000の樹脂
感光性樹脂II:感光性樹脂Iで重量平均分子量が110,000の樹脂
感光性樹脂III:感光性樹脂Iで重量平均分子量が150,000の樹脂
感光性樹脂IV:感光性樹脂Iで重量平均分子量が190,000の樹脂
感光性樹脂V:感光性樹脂Iで重量平均分子量が230,000の樹脂
感光性樹脂VI:感光性樹脂Iで重量平均分子量が280,000の樹脂
感光性樹脂VII:感光性樹脂Iで重量平均分子量330,000の樹脂
光硬化性モノマー:テトラプロピレングリコールジメタクリレート
光重合開始剤I: 化学式(IV)で表される化合物
光重合開始剤II:化学式(V)で表される化合物
光重合開始剤III:化学式(VI)で表される化合物
光重合開始剤IV:“イルガキュア369”(チバ・スペシャリティケミカルズ社製)
光重合開始剤V:“イルガキュア907”(チバ・スペシャリティケミカルズ社製)
光重合開始剤VI:“DETX−S”(日本化薬(株)社製)
紫外線吸収剤:“スダンIV”(東京化成工業(株)製)
重合禁止剤:ハイドロキノンモノメチルエーテル
分散剤:“ソルスパース24000GR”(アビシア(株)製)
溶剤:テルピネオール 。
【0069】
D.重量平均分子量の測定
感光性樹脂の重量平均分子量はテトラヒドロフランを移動相としたサイズ排除クロマトグラフィーにより測定した。カラムはShodex KF−803を用い、重量平均分子量はポリスチレン換算により計算した。
【0070】
E.感度、解像度の評価
電子放出源用ペーストをガラス基板上にスクリーン印刷法で塗布し、熱風乾燥機中85℃で15分間乾燥させて、ガラス基板上に電子放出源用ペーストの塗布膜を形成した。塗布膜の厚みは2μmであった。前記電子放出源用ペーストの塗布膜に、5〜30μmφのホールパターンを有するフォトマスクを介して、50mW/cm出力の超高圧水銀灯から紫外線を100〜100000mJ/cmの範囲で照射した後、炭酸ナトリウム1重量%水溶液をシャワーで150秒間かけることにより現像し、シャワースプレーを用いて水洗浄して光硬化していない部分を除去した。現像後、光学顕微鏡を用いて各ホールパターンの観察を行い、形成された最小ホールパターン径(μm)を解像度として評価し、最小ホールパターン径が形成されるのに必要な最小の露光量(mJ/cm)を感度として評価した。
【0071】
実施例1
2層カーボンナノチューブ(東レ(株)製)を直径3mmのジルコニアボールを用いたボールミルにより粉砕し、0.5μmφのガラス粉末、感光性樹脂II、光重合開始剤II、光硬化性モノマー、紫外線吸収剤、分散剤、溶剤を表1に示す組成比で添加して3本ローラーにて混練し、電子放出源用ペーストを作製した。
【0072】
次に、ガラス基板上に電子放出源用ペーストをスクリーン印刷法により10mm角の膜を印刷した後、熱風乾燥機中85℃で15分間乾燥した。乾燥後の電子放出源用ペースト塗膜の膜厚を走査型電子顕微鏡で測定した結果、膜厚は2μmであった。乾燥後の電子放出源用ペーストに対して、上記の方法でホールパターンを形成した。最小ホールパターン径が形成されるのに必要な最小の露光量は500mJ/cmであった。また、光学顕微鏡を用いて最小ホールパターン径を調べたところ、10μmであった。
【0073】
実施例2〜10
実施例1と同様に、表1に示す組成比の電子放出源用ペーストを作製し、ガラス基板上に電子放出源用ペーストの塗布膜を形成した後、露光、現像を行ってホールパターンを作製した。結果を表1に示した。
【0074】
【表1】

【0075】
比較例1
2層カーボンナノチューブ(東レ(株)製)を直径3mmのジルコニアボールを用いたボールミルにより粉砕し、0.5μmφのガラス粉末、感光性樹脂I、光重合開始剤II、光硬化性モノマー、紫外線吸収剤、分散剤、溶剤を表2に示す組成比で添加して3本ローラーにて混練し、電子放出源用ペーストを作製した。
【0076】
次に、ガラス基板上に電子放出源用ペーストをスクリーン印刷法により10mm角の膜を印刷した後、熱風乾燥機中85℃で15分間乾燥した。乾燥後の電子放出源用ペースト塗膜の膜厚を走査型電子顕微鏡で測定した結果、膜厚は2μmであった。乾燥後の電子放出源用ペーストに対して、上記の方法でホールパターンを形成した。最小ホールパターン径が形成されるのに必要な最小の露光量は2000mJ/cmであり、実用レベルで使用できる露光量ではなかった。また、光学顕微鏡を用いて最小ホールパターン径を調べたところ、16μmであった。
【0077】
比較例2
比較例1と同様に、表2に示す組成比の電子放出源用ペーストを作製したが、3本ローラーにて混練したのちにゲル化したため評価できなかった。
【0078】
比較例3〜4
比較例1と同様に、表2に示す組成比の電子放出源用ペーストを作製し、ガラス基板上に電子放出源用ペーストの塗布膜を形成した後、露光、現像を行ってホールパターンを作製した。結果を表2に示した。
【0079】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
針状炭素、無機粉末および感光性有機成分を含む電子放出源用ペーストであって、感光性有機成分が感光性樹脂および下記一般式(I)から(III)で表されるアシルオキシム化合物から選ばれる少なくとも1種以上の光重合開始剤を含み、前記感光性樹脂は1)エチレン性不飽和基を有し、2)重量平均分子量が110,000〜300,000である電子放出源用ペースト。
【化1】

(一般式(I)中、R11はアルキル基を表す。R13、R14、R16及びR17は、それぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表す。R12及びR15は、それぞれ独立にアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ独立に0から5の整数を表す。m又はnが2以上の場合、複数のR12及びR15は異なる基であっても良い。Lは酸素原子、硫黄原子、又はNHを表す。)
【化2】

(一般式(II)中、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表し、これらは一部ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基、スルフィド基、チオール基、アミノ基、アミド基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基または複素環基で置換されていてもよい。R24はアルキル基またはハロゲン原子を表し、pは0から5の整数を表す。pが2以上の場合、複数のR24は異なる基であっても良い。)
【化3】

(一般式(III)中、Aはシクロアルキルアルキル基を表す。R31、R32及びR33は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表し、これらは一部ハロゲン原子、アルコキシ基、フェニル基、スルフィド基、チオール基、アミノ基、アミド基、シアノ基、ホルミル基、アルカノイル基または複素環基などで置換されていてもよい。R34はアルキル基またはハロゲン原子を表し、qは0から4の整数を表す。qが2以上の場合、複数のR34は異なる基であっても良い。)
【請求項2】
光重合開始剤が化学式(IV)から(VI)で表される少なくとも1種以上を含む請求項1記載の電子放出源用ペースト。
【化4】

【化5】

【化6】

【請求項3】
請求項1または2に記載の電子放出源用ペーストを用いて作製された電子放出源。
【請求項4】
請求項3に記載の電子放出源を用いて作製された電子放出素子。

【公開番号】特開2009−289712(P2009−289712A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144189(P2008−144189)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】