説明

電子機器およびその製造方法

【課題】部品の破損を効果的に防いだ上で、軽量且つ安価な電子機器およびその製造方法を提供する。
【解決手段】電子機器は、ケース1と、前記ケース1の底部1aに下面2aが対向して、前記ケース1の内部に配置された回路基板2と、前記回路基板2の上面2bに実装された電子部品3と、上部開口端4aと下部開口端4bとを有し、前記電子部品3を囲み且つ前記回路基板2の上面2bに前記下部開口端4bが接するように配置されたチューブ状部材4と、前記チューブ状部材4内で前記電子部品3を封止する第1のモールド樹脂5と、前記ケース1内で、前記チューブ状部材4で囲まれた領域の外側の前記回路基板2を封止する第2のモールド樹脂6と、を備える。前記回路基板2の上面2bに垂直な方向の前記第2のモールド樹脂6の厚さh2は、前記回路基板2の上面2bに垂直な方向の前記第1のモールド樹脂5の厚さh1より薄い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品をモールド樹脂で封止した電子機器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5(a)に示すように、電子部品3が実装された回路基板2と、その回路基板2が内部に配置されたケース1とを備える電子機器が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような電子機器は屋外で用いられることがある。そこで、防水や防振のために、ケース1内で、回路基板2と、電子部品3の本体3aの下部及びリード(電極)3bと、をモールド樹脂50で封止している(ハーフモールド)。つまり、電子部品3の本体3aの上部は空気中に露出していてモールド樹脂50には接しておらず、電子部品3の本体3aの下部及びリード3b部分はモールド樹脂50に接している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−160034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の電子機器では、温度変化によってモールド樹脂50が膨張または収縮した場合、モールド樹脂50に接している電子部品3の本体3aの下部及びリード(電極)3bにのみ力が加わり、モールド樹脂50から空気中に露出している電子部品3の本体3aの上部には力が加わらない。このように電子部品3に不均一な力が加わることにより、図5(b)のX−X断面図に示すように、コンデンサなどの扁平状の電子部品3は、その厚み方向に裂けて割れる恐れがある。即ち、空気の膨張係数とモールド樹脂50の線膨張係数との差が大きく、温度変化によって電子部品3が破損する恐れがある。
【0005】
そこで、図6に示すように、電子部品3の破損を回避するため、モールド樹脂50の量を増加させて、電子部品3の全体をモールド樹脂50で封止した電子機器が知られている。この電子機器では、電子部品3の全体に線膨張係数が等しい同一のモールド樹脂50が接しているので、温度変化の際に電子部品3の全体に均一に力が加わり、電子部品3の破損を防止できる。しかし、モールド樹脂50の量が増加するため、電子機器の重量およびコストが増加するという問題がある。
【0006】
以上より、従来の電子機器は、部品の破損を効果的に防いだ上で、軽量且つ安価に構成できない問題がある。
そこで、本発明に係る実施例では、部品の破損を効果的に防いだ上で、軽量且つ安価な電子機器およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る実施例に従った電子機器は、
ケースと、
前記ケースの底部に下面が対向して、前記ケースの内部に配置された回路基板と、
前記回路基板の上面に実装された部品と、
上部開口端と下部開口端とを有し、前記部品を囲み且つ前記回路基板の上面に前記下部開口端が接するように配置されたチューブ状部材と、
前記チューブ状部材内で前記部品を封止する第1のモールド樹脂と、
前記ケース内で、前記チューブ状部材で囲まれた領域の外側の前記回路基板を封止する第2のモールド樹脂と、を備え、
前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第2のモールド樹脂の厚さは、前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第1のモールド樹脂の厚さより薄い
ことを特徴とする。
【0008】
また、前記電子機器において、
前記第1のモールド樹脂の線膨張係数と前記第2のモールド樹脂の線膨張係数は、等しくても良い。
【0009】
また、前記電子機器において、
前記第1のモールド樹脂と前記第2のモールド樹脂は、同一の材料で形成されていても良い。
【0010】
さらに、前記電子機器において、
前記チューブ状部材の前記上部開口端における前記第1のモールド樹脂の露出面は、前記上部開口端よりも突出した凸状の曲面形状を有していても良い。
【0011】
また、前記電子機器において、
前記チューブ状部材は、導電性を有していると共に、所定の電位が供給されていても良い。
【0012】
さらに、前記電子機器において、
前記第1のモールド樹脂の熱伝導率は、前記第2のモールド樹脂の熱伝導率より高くても良い。
【0013】
また、前記電子機器において、
前記回路基板の上面と平行な断面において、前記チューブ状部材で囲まれる領域の形状は、前記部品の断面形状と相似形であっても良い。
【0014】
また、前記電子機器において、
前記部品は、前記回路基板の上面と垂直な面に扁平なコンデンサであっても良い。
【0015】
本発明の一態様に係る実施例に従った電子機器の製造方法は、
上面に部品が実装された回路基板を、ケースの底部に前記回路基板の下面が対向するように、前記ケースの内部に配置する第1の配置工程と、
上部開口端と下部開口端とを有するチューブ状部材を、前記部品を囲み且つ前記回路基板の上面に前記下部開口端が接するように配置する第2の配置工程と、
前記第1の配置工程の後、前記回路基板と、前記部品の下部とが埋没するように、前記ケース内にモールド樹脂材料を充填する第1の充填工程と、
前記第1の配置工程、前記第2の配置工程および前記第1の充填工程の後、前記モールド樹脂材料を硬化させて、前記ケース内で、前記回路基板と、前記チューブ状部材内の前記部品の下部とを、モールド樹脂によって封止する第1の封止工程と、
前記第1の封止工程の後、前記部品が埋没するように、前記チューブ状部材内の前記モールド樹脂上に前記モールド樹脂材料をさらに充填する第2の充填工程と、
前記第2の充填工程の後、前記モールド樹脂材料を硬化させて、前記チューブ状部材内で前記部品を前記モールド樹脂によって封止する第2の封止工程と、を含む
ことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様に係る実施例に従った電子機器の製造方法は、
上面に部品が実装された回路基板を、ケースの底部に前記回路基板の下面が対向するように、前記ケースの内部に配置する第1の配置工程と、
上部開口端と下部開口端とを有するチューブ状部材を、前記部品を囲み且つ前記回路基板の上面に前記下部開口端が接するように配置する第2の配置工程と、
前記第1及び第2の配置工程の後、前記部品が埋没するように、前記チューブ状部材内に第1のモールド樹脂材料を充填する第3の充填工程と、
前記第3の充填工程の後、前記第1のモールド樹脂材料を硬化させて、前記チューブ状部材内の前記部品を、第1のモールド樹脂によって封止する第3の封止工程と、
前記第3の封止工程の後、前記チューブ状部材で囲まれた領域の外側の前記回路基板が埋没するように、前記ケース内に第2のモールド樹脂材料を充填する第4の充填工程と、
前記第4の充填工程の後、前記第2のモールド樹脂材料を硬化させて、前記ケース内で、前記チューブ状部材で囲まれた領域の外側の前記回路基板を第2のモールド樹脂によって封止する第4の封止工程と、を含み、
前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第2のモールド樹脂の厚さは、前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第1のモールド樹脂の厚さより薄い
ことを特徴とする。
【0017】
また、前記電子機器の製造方法において、
前記第3の充填工程及び第3の封止工程において、前記第1のモールド樹脂材料は、前記チューブ状部材内に滞留可能な粘性を有していても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様に係る電子機器およびその製造方法によれば、部品を囲み且つ回路基板の上面に下部開口端が接するようにチューブ状部材を設け、チューブ状部材内の部品を第1のモールド樹脂で封止するようにしている。従って、チューブ状部材内の部品の全体が同一の第1のモールド樹脂で封止されるようになるので、温度変化により第1のモールド樹脂が膨張または収縮しても、チューブ状部材内の部品の全体に均一な力が加わるようにできる。これにより、部品の破損を防ぐことができる。また、ケース内で回路基板を第2のモールド樹脂で封止して、回路基板の上面における第2のモールド樹脂の厚さを、回路基板の上面における第1のモールド樹脂の厚さより薄くしているので、第2のモールド樹脂の量を減らすことができる。これにより、電子機器の重量およびコストの増加を抑制できる。このように、部品の破損を効果的に防いだ上で、電子機器を軽量且つ安価に構成できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1(a)は、本発明の実施例1に係る電子機器の平面図であり、図1(b)は、図1(a)の電子機器のA−A断面図であり、図1(c)は、図1(b)の電子機器のB−B断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1に係る電子機器の製造方法を説明する断面図である。
【図3】図3は、図2に続く、電子機器の製造方法を説明する断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施例2に係る電子機器の製造方法を説明する断面図である。
【図5】図5(a)は、従来の電子機器の断面図であり、図5(b)は、図5(a)の電子機器のX−X断面図である。
【図6】図6は、従来の他の電子機器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る各実施例について図面に基づいて説明する。なお、本明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【実施例1】
【0021】
図1(a)は、本発明の実施例1に係る電子機器の平面図であり、図1(b)は、図1(a)の電子機器のA−A断面図であり、図1(c)は、図1(b)の電子機器のB−B断面図である。
【0022】
図1(a),(b)に示すように、この電子機器は、ケース1と、回路基板2と、電子部品3と、チューブ状部材4と、第1のモールド樹脂5と、第2のモールド樹脂6と、を備えている。
【0023】
ケース1は、箱状に構成されており、底部1aと、側面部と、底部1aと対向する開口部1bと、を有している。このケース1の底部1aには、ケース1の内部側に突出した、回路基板2を支持する2つの支持部1cが設けられている。
【0024】
回路基板2は、ケース1の内部に配置されている。回路基板2は、下面2aの両端部が支持部1cで支持されて、ケース1の底部1aに下面2aが対向して配置されている。また、開口部1b側から回路基板2を観察すると、回路基板2は、底部1aの中央付近に配置されている。
【0025】
電子部品3は、本体3aと、本体3aから導出された2本のリード(電極)3bとを有している。本実施例では、電子部品3は、回路基板2の上面2bとほぼ垂直な面に扁平なコンデンサである。電子部品3の2本のリード3bは、回路基板2を上面2bから下面2aに貫通して、回路基板2の下面2aに形成された配線パターン(図示せず)に半田付けされている。このようにして、電子部品3は、その本体3aを回路基板2の上面2bにほぼ垂直に、回路基板2の上面2bに実装されている。なお、電子部品3以外にも、様々な形状の複数の電子部品が回路基板2の上面2b又は下面2aに実装されている(図示せず)。
【0026】
チューブ状部材4は、中空の楕円柱状に構成されており、上部開口端4aと下部開口端4bとを有している。上部開口端4aと下部開口端4bの形状は、ほぼ楕円形である。このチューブ状部材4は、電子部品3を囲み且つ回路基板2の上面2bに下部開口端4bが接するように配置されている。また、チューブ状部材4は、その中心軸が回路基板2の表面2bにほぼ垂直に配置されている。回路基板2の表面2b側の電子部品3がチューブ状部材4内に隠れるように、チューブ状部材4の高さは、基板2の表面2b側の電子部品3の高さより高い。下部開口端4bの一部は、回路基板2の上面2bに接していなくとも良い。つまり、下部開口端4bと回路基板2の上面2bとの間に、隙間が形成されていても良い。
【0027】
図1(c)に示すように、回路基板2の上面2bと平行なB−B断面において、電子部品3の本体3aの断面形状はほぼ楕円形であり、チューブ状部材4の断面形状もほぼ楕円形である。チューブ状部材4の断面形状をなす楕円は、長軸と短軸が電子部品3の本体3aの断面形状をなす楕円の長軸と短軸より長い。つまり、この断面において、チューブ状部材4で囲まれる領域の形状は、電子部品3の本体3aの断面形状とほぼ相似形である。これら2つの楕円の中心は、ほぼ等しく、且つ、これらの長軸がほぼ重なるように構成されている。また、この断面において、電子部品3の本体3aの外側には、ほぼ均等な厚みの第1のモールド樹脂5が存在するように構成されている。このチューブ状部材4は、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)により形成されている。
【0028】
第1のモールド樹脂5は、チューブ状部材4内で、電子部品3の本体3aと、本体3aから回路基板2の上面2bに至るリード3bと、を封止している。この第1のモールド樹脂5は、チューブ状部材4の上部開口端4aにおいて露出している露出面5aを有している。この露出面5aは、上部開口端4aよりも突出した凸状の曲面形状を有している。また、露出面5aと上部開口端4aとの境界部分は、窪みがないように構成されている。
【0029】
第2のモールド樹脂6は、ケース1内で、チューブ状部材4で囲まれた領域の外側の回路基板2を封止している。第2のモールド樹脂6の上面は、回路基板2の上面2bとほぼ平行に形成されている。回路基板2の上面2bに垂直な方向の第2のモールド樹脂6の厚さh2は、回路基板2の上面2bに垂直な方向の第1のモールド樹脂5の厚さh1より薄くなっている。つまり、チューブ状部材4及び第1のモールド樹脂5の一部は、第2のモールド樹脂6から突出している。
【0030】
本実施例では、第1のモールド樹脂5および第2のモールド樹脂6は、同一のモールド樹脂材料から形成された同一の樹脂である。つまり、第1のモールド樹脂5と第2のモールド樹脂6の線膨張係数は等しい。第1のモールド樹脂5および第2のモールド樹脂6として、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、または、その他の絶縁性樹脂を用いることができる。
【0031】
また、例えば、第1のモールド樹脂5および第2のモールド樹脂6は、半透明の樹脂である。そこで、本実施例では、図1(a)の平面図において、開口部1b側から、第2のモールド樹脂6に封止された回路基板2と、第1のモールド樹脂5に封止された電子部品3とを目視可能となっている。
【0032】
以上の構造により、電子部品3のリード3bと、回路基板2の上面2b及び下面2aの配線パターンとが、第1のモールド樹脂5および第2のモールド樹脂6により保護されて、水で濡れないようになる。また、電子部品3は、第1のモールド樹脂5及び第2のモールド樹脂6により回路基板2及びケース1に固定されるようになるので、振動により劣化しないようになる。
【0033】
(製造方法)
次に、図2,3を参照して、上述した図1の電子機器の製造方法を説明する。
図2は、本発明の実施例1に係る電子機器の製造方法を説明する断面図である。図3は、図2に続く、電子機器の製造方法を説明する断面図である。図2,3は、図1(b)に示した断面図に対応する。
【0034】
(第1の配置工程)
まず、図2(a)に示すように、上面2bに電子部品3が実装された回路基板2を、ケース1の底部1aに回路基板2の下面2aが対向するように、ケース1の内部に配置する。このとき、回路基板2の下面2aの端部がケース1の支持部1cで支持されるようにして、例えばネジ等(図示せず)で両者を固定する。
【0035】
(第2の配置工程)
次に、図2(b)に示すように、チューブ状部材4を、電子部品3を囲み且つ回路基板2の上面2bに下部開口端4bが接するように配置する。
但し、第2の配置工程を行った後に第1の配置工程を行っても良い。
【0036】
(第1の充填工程)
第1及び第2の配置工程の後、回路基板2と、チューブ状部材4内における電子部品3の本体3aの下部とが埋没するように、ケース1内にモールド樹脂材料10を充填する。このモールド樹脂材料10は、例えば、第1の充填工程を行う常温ではヨーグルト状の粘性を有している。そこで、例えば、モールド樹脂材料10を、開口部1bからケース1内に充填すると共に、上部開口端4aからチューブ状部材4内に充填するようにして、回路基板2と、チューブ状部材4内における電子部品3の本体3aの下部とが埋没するようにする。
但し、第1の配置工程を行った後に、回路基板2と電子部品3の本体3aの下部とが埋没するようにケース1内にモールド樹脂材料10を充填する第1の充填工程を行い、その後、第2の配置工程を行っても良い。
【0037】
(第1の封止工程)
第1の配置工程、第2の配置工程および第1の充填工程の後、加熱等によりモールド樹脂材料10を硬化させる。このとき、加熱によって、モールド樹脂材料10は、一旦粘性が低下してケース1、回路基板2、電子部品3及びチューブ状部材4の隅々まで行き渡り、図3(a)に示すように、回路基板2の上面2b及び下面2aと、チューブ状部材4内の電子部品3の下部と、回路基板2の下面2aから出ているリード3bとを覆うようになる。
【0038】
そして、継続して加熱することで、モールド樹脂材料10を硬化させて、ケース1内で、チューブ状部材4で囲まれた領域の外側の回路基板2を第2のモールド樹脂6によって封止すると共に、チューブ状部材4内において、電子部品3の本体3aの下部と、本体3aから回路基板2の上面2bに至るリード3bと、を第1のモールド樹脂5によって封止する。この段階では、モールド樹脂材料10の粘性が一旦低下することに起因して、回路基板2の上面2bに垂直な方向の第2のモールド樹脂6の厚さは、回路基板2の上面2bに垂直な方向の第1のモールド樹脂5の厚さとほぼ等しくなっている。
【0039】
(第2の充填工程)
第1の封止工程の後、第1のモールド樹脂5から露出している電子部品3の本体3aの上部が埋没するように、チューブ状部材4内の第1のモールド樹脂5上にモールド樹脂材料10をさらに充填する。このモールド樹脂材料10は、第1の充填工程で用いたものと同一である。このとき、モールド樹脂材料10がチューブ状部材4の上部開口端4aから盛り上がるように充填する。
【0040】
(第2の封止工程)
第2の充填工程の後、加熱等により、チューブ状部材4内の第1のモールド樹脂5上のモールド樹脂材料10を硬化させる。このとき、加熱によって、モールド樹脂材料10は、一旦粘性が低下して、図3(b)に示すように、表面張力によって上部開口端4aよりも突出した凸状の曲面形状を有するようになる。そして、継続して加熱することで、モールド樹脂材料10を硬化させて、チューブ状部材4内で電子部品3を第1のモールド樹脂5によって封止する。これにより、図1(a)〜(c)に示した構造の電子機器が得られる。
【0041】
以上のように、本実施例に係る電子機器および電子機器の製造方法によれば、電子部品3を囲み且つ回路基板2の上面2bに下部開口端4bが接するようにチューブ状部材4を設け、チューブ状部材4内の電子部品3を第1のモールド樹脂5で封止するようにしている。従って、チューブ状部材4内の電子部品3の全体が同一の第1のモールド樹脂5で封止されるようになるので、温度変化により第1のモールド樹脂5が膨張または収縮しても、チューブ状部材4内の電子部品3の全体に均一な力が加わるようにできる。これにより、電子部品3の破損を防ぐことができる。
【0042】
また、ケース1内で、チューブ状部材4で囲まれた領域の外側の回路基板2を第2のモールド樹脂6で封止して、回路基板2の上面2bに垂直な方向の第2のモールド樹脂6の厚さh2を、回路基板2の上面2bに垂直な方向の第1のモールド樹脂5の厚さh1より薄くしているので、第2のモールド樹脂6の量を、図6の従来技術より減らすことができる。また、チューブ状部材4を軽量且つ安価なPVCで形成している。これらにより、電子機器の重量およびコストの増加を抑制できる。
【0043】
さらに、第1のモールド樹脂5と第2のモールド樹脂6を同じ樹脂で構成しているため、両者の線膨張係数は等しい。従って、温度変化により第1のモールド樹脂5と第2のモールド樹脂6が膨張または収縮しても、チューブ状部材4内の電子部品3の本体3a及びリード3bに加わる力と、回路基板2の下面2aから出ているリード3bに加わる力とが、ほぼ等しくなる。これにより、チューブ状部材4内外の電子部品3の全体に均一な力が加わるようにできるので、より確実に電子部品3の破損を防ぐことができる。
【0044】
また、回路基板2の上面2bと平行なB−B断面において、チューブ状部材4で囲まれる領域の形状を、電子部品3の本体3aの断面形状と相似形に構成している。その上で、この断面において、チューブ状部材4で囲まれる領域のほぼ中心に、電子部品3の本体3aを配置して、電子部品3の本体3aの外側には、ほぼ均等な厚みの第1のモールド樹脂5が存在するようにしている。従って、電子部品3の本体3aに加わる力を、より均一にできるので、さらに確実に電子部品3の破損を防ぐことができる。
【0045】
また、第1のモールド樹脂5の露出面5aを、上部開口端4aよりも突出した凸状の曲面形状を有するように構成している。これにより、ケース1内に水が浸入した場合であっても、水は露出面5aの曲面形状に沿って流れるようになるので、露出面5aに水が溜まり難くできる。従って、第1のモールド樹脂5が吸水することによる特性の劣化を防止することができる。
【0046】
なお、第1のモールド樹脂5として、吸水することによる特性の劣化が少ない樹脂を用いる場合など、排水性能が不要であれば、露出面5aは上部開口端4aより低く構成しても良い。
【実施例2】
【0047】
実施例2は、第1のモールド樹脂5と第2のモールド樹脂6が、互いに異なる樹脂である点が、実施例1と異なる。より詳細には、本実施例の電子機器は、図1に示した第1のモールド樹脂5として、熱伝導率が第2のモールド樹脂6の熱伝導率より高い樹脂を用いている。その他の構成は、図1の実施例1と同一であるため、同一の要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0048】
(製造方法)
図4を参照して、実施例2に係る電子機器の製造方法を説明する。図4は、本発明の実施例2に係る電子機器の製造方法を説明する断面図である。
最初に行われる第1および第2の配置工程は、実施例1と同一であるため、説明を省略する。
【0049】
(第3の充填工程)
第1及び第2の配置工程の後、電子部品3の本体3aと、本体3aから回路基板2の上面2bに至るリード3bとが埋没するように、チューブ状部材4内に第1のモールド樹脂材料11を充填する。このとき、実施例1の第2の充填工程と同様に、モールド樹脂材料11がチューブ状部材4の上部開口端4aから盛り上がるように充填する。
【0050】
この第1のモールド樹脂材料11として、例えば、以下に説明する第2のモールド樹脂材料12に熱伝導率の高いフィラーを混入させた材料を用いることができる。
【0051】
(第3の封止工程)
次に、図4(a)に示すように、第3の充填工程の後、第1のモールド樹脂材料11を硬化させて、チューブ状部材4内の電子部品を、第1のモールド樹脂5によって封止する。このとき、実施例1の第2の封止工程と同様に、加熱によって、モールド樹脂材料11は、一旦粘性が低下して、表面張力によって上部開口端4aよりも突出した凸状の曲面形状を有するようになる。
【0052】
第1のモールド樹脂材料11として、これら第3の充填工程及び第3の封止工程においてチューブ状部材4内に滞留可能な粘性を有している材料を用いる。但し、これらの工程において、第1のモールド樹脂材料11の一部が、チューブ状部材4の下部開口端4bと回路基板2の上面2bとの間の隙間から、チューブ状部材4の外側に漏れ出しても良い。これにより、より確実に、第1のモールド樹脂材料11を、下部開口端4bと回路基板2の上面2bとの間の隙間にも行き渡らせることができる。
【0053】
(第4の充填工程)
第3の封止工程の後、チューブ状部材4で囲まれた領域の外側の回路基板2が埋没するように、ケース1内に第2のモールド樹脂材料12を充填する。
【0054】
(第4の封止工程)
第4の充填工程の後、加熱等により第2のモールド樹脂材料12を硬化させて、図4(b)に示すように、ケース1内で、チューブ状部材4で囲まれた領域の外側の回路基板2を第2のモールド樹脂6によって封止する。これにより、図1(a)〜(c)に示した構造と同様の電子機器が得られる。
【0055】
ここでは、実施例1の図1(b)と同様に、回路基板2の上面2bに垂直な方向の第2のモールド樹脂6の厚さは、回路基板2の上面2bに垂直な方向の第1のモールド樹脂5の厚さより薄くなっている。
【0056】
なお、実施例1で説明したように、より確実に電子部品3の破損を防ぐという観点では、第1のモールド樹脂5と第2のモールド樹脂6の線膨張係数は、近い値であることが好ましい。つまり、第1のモールド樹脂5と第2のモールド樹脂6の線膨張係数は、温度変化により第1のモールド樹脂5と第2のモールド樹脂6が膨張または収縮しても、電子部品3が破損しないような値とする。
【0057】
このように、実施例2の電子機器によれば、熱伝導率が第2のモールド樹脂6の熱伝導率より高い第1のモールド樹脂5によって電子部品3を封止しているので、実施例1の効果に加え、第1のモールド樹脂5を介して電子部品3から効率的に放熱できる。従って、電子機器の放熱性能を向上できる。
【0058】
さらに、第2のモールド樹脂6より重く且つ高価な第1のモールド樹脂5を、チューブ状部材4内のみに設けるようにしたので、電子機器を軽量且つ安価に構成できる。
【0059】
なお、チューブ状部材4を金属で構成しても良い。これにより、第1のモールド樹脂5を伝わってチューブ状部材4に達した熱を、より効率的に空気中へ放熱することができる。
【0060】
また、第2の配置工程において、チューブ状部材4の下部開口端4bと、回路基板2の上面2bとの間を接着剤などで塞いで、隙間が無いようにしても良い。この場合、第1のモールド樹脂材料11は、第3の充填工程及び第3の封止工程においてチューブ状部材4内に滞留可能な粘性を有していなくともよい。
【実施例3】
【0061】
実施例3は、チューブ状部材4として導電性を有しているものを用いて、そのチューブ状部材4に所定の電位を供給するようにしている点が、実施例1と異なる。その他の構成は、図1の実施例1と同一であるため、同一の要素に同一の符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施例のチューブ状部材4は、例えば、アルミニウムから構成されている。このチューブ状部材4は、回路基板2に形成されている接地パターンに電気的に接続されて、接地電位が供給される。これにより、チューブ状部材4に囲まれている電子部品3を電気的にシールドして、電気的特性を改善できる。
【0063】
なお、チューブ状部材4に供給する所定の電位は、接地電位に限られず、電源電位や任意のバイアス電位などでも良い。
【0064】
以上、本発明の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。
【0065】
例えば、以上の実施例では、電子部品3はコンデンサである一例について説明したが、これに限られない。電子部品3は、ハーフモールドされた場合に温度変化によって破損しやすいヒューズ、リレーおよびトランスなどでも良い。例えば、トランスがハーフモールドされた場合、特にフェライトコアが破損しやすいが、以上の実施例によれば、フェライトコアの破損を防止できる。
【0066】
また、電子部品3は、回路基板2に直線的に伸びる細いリードを有する電子部品でも良い。このような電子部品は、ハーフモールドされた場合に温度変化によってリードに張力が加わり、リードが切断される恐れがあるが、以上の実施例によれば、切断を防止できる。
また、電子部品3は、表面実装型の電子部品(例えば、セラミックコンデンサ)でも良い。
また、電子部品3の代わりに、ハーフモールドされた場合に温度変化によって破損しやすい構造部品を用いても良い。このような構造部品として、例えば、樹脂製の構造部品などがある。以上の実施例によれば、このような構造部品の破損を防止できる。
【0067】
また、以上の実施例では、チューブ状部材4は中空の楕円柱状を有している一例について説明したが、これに限られない。チューブ状部材4は、中空の円柱形状や角柱形状を有していてもよい。つまり、回路基板2の上面2bと平行なB−B断面において、チューブ状部材4で囲まれる領域の形状は、電子部品3の本体3aの断面形状と相似形でなくとも良い。また、上部開口端4aと下部開口端4bの形状や大きさは、互いに異なっていても良い。チューブ状部材4の材質も、適宜変更可能である。
【0068】
また、以上の実施例では、1つのチューブ状部材4を設ける一例について説明したが、これに限られない。複数の壊れ易い電子部品を、それぞれ対応するチューブ状部材4で囲んで第1のモールド樹脂5で封止しても良い。壊れ易い電子部品のみを第1のモールド樹脂5で封止できるので、壊れ易い電子部品の破損を防いだ上で、電子機器を軽量且つ安価に構成できる。
【0069】
さらに、電子部品3の本体3aの形状も、以上で説明した扁平形状に限られず、適宜変更しても良い。
【0070】
また、実施例2では、第1のモールド樹脂5として、熱伝導率が第2のモールド樹脂6の熱伝導率より高い樹脂を用いた一例について説明したが、これに限られない。第1のモールド樹脂5として、第2のモールド樹脂6と異なる物理的特性を有した任意の樹脂を用いることができる。
また、以上で説明した複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 ケース
2 回路基板
3 電子部品
4 チューブ状部材
5 第1のモールド樹脂
6 第2のモールド樹脂
10 モールド樹脂材料
11 第1のモールド樹脂材料
12 第2のモールド樹脂材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケースの底部に下面が対向して、前記ケースの内部に配置された回路基板と、
前記回路基板の上面に実装された部品と、
上部開口端と下部開口端とを有し、前記部品を囲み且つ前記回路基板の上面に前記下部開口端が接するように配置されたチューブ状部材と、
前記チューブ状部材内で前記部品を封止する第1のモールド樹脂と、
前記ケース内で、前記チューブ状部材で囲まれた領域の外側の前記回路基板を封止する第2のモールド樹脂と、を備え、
前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第2のモールド樹脂の厚さは、前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第1のモールド樹脂の厚さより薄い
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記第1のモールド樹脂の線膨張係数と前記第2のモールド樹脂の線膨張係数は、等しい
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記第1のモールド樹脂と前記第2のモールド樹脂は、同一の材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子機器。
【請求項4】
前記チューブ状部材の前記上部開口端における前記第1のモールド樹脂の露出面は、前記上部開口端よりも突出した凸状の曲面形状を有していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の電子機器。
【請求項5】
前記チューブ状部材は、導電性を有していると共に、所定の電位が供給されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の電子機器。
【請求項6】
前記第1のモールド樹脂の熱伝導率は、前記第2のモールド樹脂の熱伝導率より高い
ことを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の電子機器。
【請求項7】
前記回路基板の上面と平行な断面において、前記チューブ状部材で囲まれる領域の形状は、前記部品の断面形状と相似形である
ことを特徴とする請求項1から請求項6の何れかに記載の電子機器。
【請求項8】
前記部品は、前記回路基板の上面と垂直な面に扁平なコンデンサである
ことを特徴とする請求項1から請求項7の何れかに記載の電子機器。
【請求項9】
上面に部品が実装された回路基板を、ケースの底部に前記回路基板の下面が対向するように、前記ケースの内部に配置する第1の配置工程と、
上部開口端と下部開口端とを有するチューブ状部材を、前記部品を囲み且つ前記回路基板の上面に前記下部開口端が接するように配置する第2の配置工程と、
前記第1の配置工程の後、前記回路基板と、前記部品の下部とが埋没するように、前記ケース内にモールド樹脂材料を充填する第1の充填工程と、
前記第1の配置工程、前記第2の配置工程および前記第1の充填工程の後、前記モールド樹脂材料を硬化させて、前記ケース内で、前記回路基板と、前記チューブ状部材内の前記部品の下部とを、モールド樹脂によって封止する第1の封止工程と、
前記第1の封止工程の後、前記部品が埋没するように、前記チューブ状部材内の前記モールド樹脂上に前記モールド樹脂材料をさらに充填する第2の充填工程と、
前記第2の充填工程の後、前記モールド樹脂材料を硬化させて、前記チューブ状部材内で前記部品を前記モールド樹脂によって封止する第2の封止工程と、を含む
ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項10】
上面に部品が実装された回路基板を、ケースの底部に前記回路基板の下面が対向するように、前記ケースの内部に配置する第1の配置工程と、
上部開口端と下部開口端とを有するチューブ状部材を、前記部品を囲み且つ前記回路基板の上面に前記下部開口端が接するように配置する第2の配置工程と、
前記第1及び第2の配置工程の後、前記部品が埋没するように、前記チューブ状部材内に第1のモールド樹脂材料を充填する第3の充填工程と、
前記第3の充填工程の後、前記第1のモールド樹脂材料を硬化させて、前記チューブ状部材内の前記部品を、第1のモールド樹脂によって封止する第3の封止工程と、
前記第3の封止工程の後、前記チューブ状部材で囲まれた領域の外側の前記回路基板が埋没するように、前記ケース内に第2のモールド樹脂材料を充填する第4の充填工程と、
前記第4の充填工程の後、前記第2のモールド樹脂材料を硬化させて、前記ケース内で、前記チューブ状部材で囲まれた領域の外側の前記回路基板を第2のモールド樹脂によって封止する第4の封止工程と、を含み、
前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第2のモールド樹脂の厚さは、前記回路基板の上面に垂直な方向の前記第1のモールド樹脂の厚さより薄い
ことを特徴とする電子機器の製造方法。
【請求項11】
前記第3の充填工程及び第3の封止工程において、前記第1のモールド樹脂材料は、前記チューブ状部材内に滞留可能な粘性を有している
ことを特徴とする請求項10に記載の電子機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−142431(P2012−142431A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293989(P2010−293989)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002037)新電元工業株式会社 (776)
【Fターム(参考)】