説明

電子機器

【課題】人に生物的な擬似感覚を与える新たなペット型玩具あるいはペット型ロボットの提供。
【解決手段】燃料電池21と、燃料電池21の出力に関する情報を電気信号に変換して出力するコントローラ10と、コントローラ10から出力される電気信号に基づいて、外部から認知可能な物理的変化を提示するスピーカ18、アクチュエータ3AA1〜5A2等を備える電子機器を提供する。この電子機器では、生物個体の活動に近似した燃料電池の出力特性に応じて動作や音声出力等を制御し、ユーザに提示させることで、ユーザに生物的な擬似感覚を与えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池を備えた電子機器に関する。より詳しくは、燃料電池の出力に関する情報に基づいて、外部から認知可能な物理的変化を提示する機能を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たまご型の筐体に画像表示部と入力部を備え、画像表示部に仮想ペットを表示するペット型玩具が知られている。このペット型玩具は、使用者が、ディスプレイに表示された仮想ペットが示す視覚的変化を視認して、ボタンを操作し所定の入力を行うことによって、仮想ペットを世話して育てていく感覚を楽しむことができるものである。また、近年では、ロボット技術の進展に伴って、より複雑な形態や構造を備え、複雑な制御を可能としたペット型のロボットが登場してきている。
【0003】
これらのペット型玩具やペット型ロボットでは、本物のペットに一層近いものが求められており、人に生物的な擬似感覚を与えるペット型玩具やペット型ロボットの研究が進められている。
【0004】
特許文献1には、ペット型ロボットに、行動選択確率に基づいて行動を選択させ、行動に対する報酬をボルツマン分布に適用して新たな行動選択確率を決定させる技術が開示されている。この技術によれば、ペット型ロボットに、ユーザを飽きさせないよう行動させることができる。
【0005】
また、特許文献2には、生物を模倣したロボット装置において、快感の強さを示す値を算出し、算出された値に基づいて行動や表情の変化を制御する技術が開示されている。この技術によれば、ロボット装置に、緊張や退屈が解消されることで生物が得る達成感や解放感といった類の快感などを擬似的に再現させることができる。
【0006】
一方、本発明に関連する技術として、近年、アノード又はカソードの少なくとも一方の電極上に触媒として酸化還元酵素を固定したバイオ燃料電池(以下、単に「燃料電池」という)が開発されてきている。燃料電池では、グルコースやエタノールのような通常の工業触媒では反応が困難な燃料から効率良く電子を取り出すことで高い出力を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−340759号公報
【特許文献2】特開2006−272483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、人に生物的な擬似感覚を与える新たなペット型玩具あるいはペット型ロボットを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のため、本発明は、燃料電池と、該燃料電池の出力に関する情報を電気信号に変換して出力する制御手段と、該制御手段から出力される電気信号に基づいて、外部から認知可能な物理的変化を提示する表現手段と、を備える電子機器を提供する。
この電子機器では、生物個体の活動に近似した燃料電池の出力特性に応じて動作や音声出力、光学出力といった物理的変化を制御し、ユーザに提示させることで、ユーザに生物的な擬似感覚を与えることができる。
この電子機器は、さらに、前記燃料電池の温度を検知して電気信号に変換し出力する温度センサ、及び/又は燃料電池の空気極側の湿度を検知して電気信号に変換し出力する湿度センサを備え、前記表現手段が、前記温度センサ及び/又は湿度センサから出力される電気信号に基づいて、前記物理的変化を提示するように構成してもよい。
この電子機器は、生物を模した外形を有することが好適であり、この場合において、燃料供給口は、前記生物の口として構成されることが好適となる。
本発明は、また、燃料電池を内蔵する電子機器に、該燃料電池の出力に関する情報に基づいて、外部から認知可能な物理的変化を提示させる電子機器の制御方法をも提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、人に生物的な擬似感覚を与える新たなペット型玩具あるいはペット型ロボットが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電子機器の好適な実施形態(ペット型ロボット1)を説明する斜視図である。
【図2】ペット型ロボット1の内部構成を説明するブロック図である。
【図3】コントローラ10の機能的構成例を説明するブロック図である。
【図4】燃料電池21の出力変化(A)及び温度変化(B)の一例を説明する図である。
【図5】ペット型ロボット1の動作の一例(喜びを表す姿勢)を説明する斜視図である。
【図6】ペット型ロボット1の動作の一例(強い喜びを表す姿勢)を説明する斜視図である。
【図7】ペット型ロボット1の動作の一例(戸惑いを表す姿勢)を説明する斜視図である。
【図8】燃料電池21の出力変化(A)及び温度変化(B)の他の一例を説明する図である。
【図9】ペット型ロボット1の動作の一例(苦しみを表す姿勢)を説明する斜視図である。
【図10】ペット型ロボット1の動作の一例(死を表す姿勢)を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、ペット型玩具やペット型ロボットに生物的な擬似感覚を付与するため、燃料電池の出力特性に着目した。燃料電池の出力は、電極上に固定された酸化還元酵素の反応速度に依存し、酵素の活性に応じて変化する。酵素の活性は、生物の生命活動の根源とも言えるものであり、その挙動は、生物個体の活動に近似している。すなわち、酵素は、自身が機能するに適した環境(温度、湿度等)下では活性が上昇し、逆に環境が悪化すると活性が低下する。例えば、酵素は、通常の生物個体の体温である37度付近の温度環境下で最大活性を示す。逆に、温度を10度程度に下げてしまうと、酵素活性は極端に下がる。また、高温環境下では、酵素は変性し失活してしまう。酵素の不可逆的な変性・失活は、生物個体では死に相応する。さらに、酵素は、経時的に劣化し、徐々に活性が低下していくが、好適な環境下に保つことで、この経時劣化の進行を抑え、活性を長く維持することができる。これらは、生物個体での老化やアンチエイジングに対応するであろう。
【0013】
このように、酵素の活性は、生物個体の活動に極めて近似するため、電極上に固定された酸化還元酵素の酵素活性に依存した燃料電池の出力特性もまた生物個体の活動に極めて近似したものとみなし得る。改めて説明すれば、燃料電池の出力は、酵素が機能するに適した環境下では上昇し、逆に環境が悪化すると低下する。また、高温環境下では、酵素の失活により出力が著しく低下してしまう。さらに、燃料電池の出力は、酵素の経時的劣化とともに徐々に低下し、好適な環境下に保たれることで長く維持され得る。
【0014】
従って、電子機器に燃料電池を内蔵し、その動作等を燃料電池の出力に関する情報に基づいて制御することで、極めて生物的な振る舞いを示すペット型玩具あるいはペット型ロボットとなり得る。
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序で行う。

1.電子機器の外形及び内部構成
(1)外形
(2)内部構成
(3)燃料電池
2.コントローラ10の機能的構成及び行動決定の具体例
(1)コントローラ10の機能的構成
(2)コントローラ10による行動決定の具体例

【0016】
1.電子機器の外形及び内部構成
(1)外形
図1は、本発明に係る電子機器を示す斜視図である。図では、子犬を模した外形を有する電子機器(以下、「ペット型ロボット1」と称する)を示した。
【0017】
ペット型ロボット1は、4本足の子犬形状であり、胴体部ユニット2の前後左右に、それぞれ脚部ユニット3A、3B、3C、3Dが連結されている。また、胴体部ユニット2の前端部と後端部に、それぞれ頭部ユニット4と尻尾部ユニット5が連結されている。
【0018】
本発明に係る電子機器は、生物の外形を模したペット型ロボットを好適な実施形態とする。本発明に係る電子機器は、犬の他、猫や、ウサギやハムスター等のげっ歯類、オウムや九官鳥などの鳥類などの一般的に飼育されているペットの外形を模したものとできる。さらに、本発明に係る電子機器は、サルやクマ、アザラシ、ペンギンなどの従来のペット型玩具等で採用されている動物の外形を模したロボットや、2足歩行が可能な人間型ロボットとすることもできる。
【0019】
(2)内部構成
図2は、ペット型ロボット1の内部構成を示すブロック図である。
【0020】
胴体部ユニット2には、ペット型ロボット1の全体を制御する制御手段10(以下、「コントローラ10」と称する)、ペット型ロボット1の各部に電力を供給するバッテリ11が格納されている。コントローラ10には、CPU(Central Processing Unit)10A、CPU10Aが各部を制御するためのプログラムが記憶されているメモリ10Bが設けられている。
【0021】
CPU10Aには、インタネットに代表されるネットワークを介してデータを通信する通信部、プログラムなどの各種データを格納する半導体メモリなどよりなる記憶部、リムーバブルメモリなどの記録媒体に対してデータを読み書きするドライブなどが必要に応じて接続される(図示省略)。ペット型ロボット1の動作を実行させる制御プログラムは、リムーバブルメモリに格納された状態でペット型ロボット1に供給され、ドライブによって読み出されて、記憶部に内蔵されるハードディスクドライブにインストールされる。記憶部にインストールされたロボット制御プログラムは、CPU10Aの指令によって、記憶部からメモリにロードされて実行される。
【0022】
また、胴体部ユニット2には、燃料電池21と、燃料電池21内部の温度を検知する温度センサ22と、燃料電池21の空気極側の湿度を検知する湿度センサ23と、からなる燃料電池部24が格納されている。燃料電池21の出力は、コントローラ10に入力される。温度センサ22により検知された燃料電池21内部の温度は、電気信号に変換されてコントローラ10に入力される。また、湿度センサ23により検知された燃料電池21の空気極側の湿度も、電気信号に変換されてコントローラ10に入力される。なお、燃料電池21からの出力は、一部をバッテリ11への給電のために用いることも可能である。
【0023】
頭部ユニット4には、外部からの刺激を感知するセンサとして、音を感知する「耳のような聴覚器官」に相当するマイクロフォン15、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)、及びイメージセンサなどから構成され、外部の画像信号を取得する「目のような視覚器官」に相当するビデオカメラ16、及びユーザが接触することによる圧力等を感知する「肌等のような触覚器官」に相当するタッチセンサ17が、それぞれ所定の位置に設けられている。
【0024】
頭部ユニット4に設置されるマイクロフォン15は、ユーザの発話を含む周囲の音声(音)を集音し、得られた音声信号をコントローラ10に出力する。ビデオカメラ16は、周囲の状況を撮像し、得られた画像信号をコントローラ10に出力する。タッチセンサ17は、例えば、頭部ユニット4の上部に設けられており、ユーザからの「撫でる」や「叩く」といった物理的な働きかけにより受けた圧力を検出し、その検出結果を圧力検出信号としてコントローラ10に出力する。
【0025】
また、頭部ユニット4には、所定の音階を出力するペット型ロボット1の「口のような発声器官」に相当する第一の表現手段18(以下、「スピーカ18」と称する)が、それぞれ所定の位置に設置されている。スピーカ18は、コントローラ10から出力される電気信号に基づいて、物理的変化としての音声を出力し、ユーザに提示する。
【0026】
ここでは、第一の表現手段18としてスピーカ18を配し、コントローラ10から出力される電気信号に基づいてユーザに音声を提示する場合を説明するが、第一の表現手段18は、例えば、LED(Light Emitting Diode)などであってもよい。この場合、LEDが、コントローラ10から出力される電気信号に基づいて、物理的変化としての光を出力し、ユーザに提示するように構成される。
【0027】
脚部ユニット3A〜3Dのそれぞれの関節部分、脚部ユニット3A〜3Dのそれぞれと胴体部ユニット2の連結部分、頭部ユニット4と胴体部ユニット2の連結部分、並びに尻尾部ユニット5と胴体部ユニット2の連結部分などには、第二の表現手段(以下、「アクチュエータ」と称する)が設置されている。アクチュエータは、コントローラ10から出力される電気信号に基づいて、物理的変化として各部を動作させ、ユーザに提示する。
【0028】
脚部ユニット3Aには、アクチュエータ3AA1〜3AAKが設けられ、脚部ユニット3Bには、アクチュエータ3BA1〜3BAKが設けられている。また、脚部ユニット3Cには、アクチュエータ3CA1〜3CAKが設けられ、脚部ユニット3Dには、アクチュエータ3DA1〜DAKが設けられている。さらに、頭部ユニット4には、アクチュエータ4A1〜4ALが設けられており、尻尾部ユニット5には、アクチュエータ5A1及び5A2がそれぞれ設けられている。
【0029】
以下、脚部ユニット3A〜3Dに設けられているアクチュエータ3AA1〜3DAK、頭部ユニット4に設けられているアクチュエータ4A1〜4AL、及び尻尾部ユニットに設けられているアクチュエータ5A1及び5A2のそれぞれを個々に区別する必要がない場合、適宜、まとめてアクチュエータ3AA1〜5A2と称する。
【0030】
さらに、脚部ユニット3A〜3Dには、アクチュエータの他にスイッチ3AB〜3DBが、ペット型ロボット1の足の裏に相当する場所に設置されている。そして、ペット型ロボット1が歩行したとき、スイッチ3AB〜3DBが押下され、それを表す信号がコントローラ10に入力されるようになされている。
【0031】
コントローラ10は、マイクロフォン15、ビデオカメラ16、タッチセンサ17から与えられる音声信号、画像信号、圧力検出信号等に基づいて、周囲の状況や、ユーザからの指令、ユーザからの働きかけなどの有無を判断し、その判断結果に基づいて、ペット型ロボット1が次に実行する動作を決定する。そして、コントローラ10は、その決定に基づいて、必要なアクチュエータを駆動させ、これにより、頭部ユニット4を上下左右に振らせたり、尻尾部ユニット5を動かせたり、脚部ユニット3A〜3Dのそれぞれを駆動して、ペット型ロボット1を歩行させるなどの動作を実行させる。また、コントローラ10は、スピーカ18(あるいはLED18)に電気信号を出力し、音声(あるいは光)をユーザに提示する。
【0032】
さらに、コントローラ10は、燃料電池21からの出力、温度センサ22及び湿度センサ23からの電気信号にも基づいて、ペット型ロボット1が次に実行する動作を決定する。そして、コントローラ10は、その決定に基づいて、上記と同様に、必要なアクチュエータを駆動させてペット型ロボット1を動作させたり、スピーカ18(あるいはLED18)に電気信号を出力し、音声(あるいは光)をユーザに提示する。
【0033】
(3)燃料電池
燃料電池21としては、グルコースやエタノール等を燃料とし、電極上に触媒として酸化還元酵素を固定した従来公知の燃料電池を搭載できる。
【0034】
燃料には、糖、アルコール、アルデヒド、脂質又はタンパク質等の化合物であって、酸化還元酵素の基質となり得る物質が用いられる。燃料として、例えば、グルコース、フルクトース、ソルボース等の糖類;メタノール、エタノール、プロパノール、グリセリン、ポリビニルアルコール等のアルコール類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等のアルデヒド等が挙げられる。この他にも、脂肪類やタンパク質、これらの糖代謝の中間生成物である有機酸などが挙げられる。燃料には、これらの化合物を1つ又は2つ以上を組み合わせて用いることができる。燃料には、ペット型ロボットに適用するにあたって、取り扱い及び入手が容易で、安全性が高く、環境負荷が小さいこと等の観点から、特にグルコースやアルコールが好適に用いられる。
【0035】
燃料極(アノード)には、上記の化合物の酸化反応を触媒し、電子を取り出すための酵素が固定される。燃料極に固定される酵素は、例えば、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコネート5デヒドロゲナーゼ、グルコネート2デヒドロゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドレダクターゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、ラクテートデヒドロゲナーゼ、ヒドロキシパルベートレダクターゼ、グリセレートデヒドロゲナーゼ、フォルメートデヒドロゲナーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、ガラクトースデヒドロゲナーゼ等とできる。
【0036】
また、燃料極には、上記の酸化酵素に加え、酸化型補酵素及び補酵素酸化酵素を固定してもよい。酸化型補酵素としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamideadenine dinucleotide、以下「NAD+」と表記する)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamideadenine dinucleotide phosphate、以下「NADP+」と表記する)フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、以下「FAD+」と表記する。)、ピロロキノリンキノン(pyrrollo-quinoline quinone、以下「PQQ2+」と表記する)などが挙げられる。補酵素酸化酵素としては、例えば、ジアフォラーゼが挙げられる。
【0037】
さらに、燃料極には、上記の酸化酵素及び酸化型補酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定してもよい。電子伝達メディエーターとしては、キノン骨格を有する化合物、フェロセン骨格を有する化合物等が使用される。具体例を挙げると、ナフトキノン骨格を有する化合物としては、例えば、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)、2,3−ジアミノ−1,4−ナフトキノン、4−アミノ−1,2−ナフトキノン、2−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、2−メチル−3−ヒドロキシ−1,4−ナフトキノン、ビタミンK(2-methyl-3-phyty1,4-naphthoquinone)、ビタミンK(2-farnesyl-3-methyl-1,4-naphtoquinone)、ビタミンK(2-methy 1,4-naphthoquinone)、などを用いることができる。また、キノン骨格を有する化合物としては、例えば、anthraquinone-1-sulfonate、anthraquinone-2-sulfonateなどのようなアントラキノン骨格を有する化合物やその誘導体を用いることもできる。またフェロセン骨格を有する化合物としては、例えば、ビニルフェロセン、ジメチルアミノメチルフェロセン、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、ジメチルフェロセン、フェロセンモノカルボン酸などを用いることができる。さらに、その他の化合物としては、例えば、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、オスミウム(Os)、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの金属錯体、ベンジルビオローゲンなどのビオローゲン化合物、ニコチンアミド構造を有する化合物、リボフラビン構造を有する化合物、ヌクレオチド−リン酸構造を有する化合物などを用いることができる。より具体的な一例を挙げると、例えば、cis-[Ru(NH3)4Cl2]1+/0、trans-[Ru(NH3)4Cl2]1+/0、[Co(dien)2]3+/2+、[Mn(CN)6]3-4-、[Mn(CN)6]4-/5-、[Mo2O3S(edta)]2-/3-、[Mo2O2S2(edta)]2-/3-、[Mo2O4(edta)]2-/3-、[Cr(edta)(H2O)]1-/2-、 [Cr(CN)6]3-/4-、methylene blue、pycocyanine、indigo-tetrasulfonate、luciferin、gallocyanine、pyocyanine、methyl apri blue、resorufin、indigo-trisulfonate、6,8,9-trimethyl-isoalloxazine、chloraphine、indigo disulfonate、nile blue、indigocarmine、9-phenyl-isoalloxazine、thioglycolic acid、2-amino-N-methyl phenazinemethosulfate、azure A、indigo-monosulfonate、anthraquinone-1,5-disulfonate、alloxazine、brilliant alizarin blue、crystal violet、patent blue、9-methyl-isoalloxazine、cibachron blue、phenol red、anthraquinone-2,6-disulfonate、neutral blue、bromphenol blue、anthraquinone-2,7-disulfonate、quinoline yellow、riboflavin、Flavin mononucleotide(FMN)、flavin adenine dinucleotide(FAD)、phenosafranin、lipoamide、safranine T、lipoic acid、indulin scarlet、4-aminoacridine、acridine、nicotinamideadenine dinucleotide(NAD)、nicotinamide adenine dinucleotide phosphate(NADP)、neutral red、cysteine、benzyl viologen(2+/1+)、3-aminoacridine、1-aminoacridine、methyl viologen(2+/1+)、2-aminoacridine、2,8-diaminoacridine、5-aminoacridineなどを用いることができる。なお、化学式中、dienはdiethylenetriamineを、edtaはethylenediaminetetraacetate tetraanioneをそれぞれ示す。
【0038】
空気極(カソード)には、外部から供給される酸素の還元反応を触媒する酵素が固定される。空気極に固定される酵素は、酸素を反応基質とするオキシダーゼ活性を有する酵素であれば特に限定されず、例えば、ラッカーゼやビリルビンオキシダーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ等とできる。
【0039】
また、空気極には、上記の酵素に加え、電子伝達メディエーターを固定してもよい。空気極に固定し得る電子伝達メディエーターは、燃料極に用いる電子伝達メディエーターに比べて酸化還元電位が高ければよく、必要に応じて自由に選択することができる。具体例を挙げると、ABTS(2,2'-azinobis(3-ethylbenzoline-6-sulfonate))、K3[Fe(CN)6]、RuO40/1-、[Os(trpy)3]3+/2+、[Rh(CN)6]3-/4-、[Os(trpy)(dpy)(py)]3+/2+、IrCl62-/3-、[Ru(CN)6]3-/4-、OsCl62-/3-、[Os(py)2(dpy)2]3+/2+、[Os(dpy)3]3+/2+、CuIII/II(H2A3)0/1-、[Os(dpy)(py)4]3+/2+、IrBr62-/3-、[Os(trpy)(py)3]3+/2+、[Mo(CN)8]3-/4-、[Fe(dpy)]3+/2+、[Mo(CN)8]3-/4-、CuIII/II(H2G3a)0/1-、[Os(4,4'-Me2-dpy)3]3+/2+、[Os(CN)6]3-/4-、RuO41-/2-、[Co(ox)3]3-/4-、[Os(trpy)(dpy)Cl]2+/1+、I3-/I-、[W(CN)8]3-/4-、[Os(2-Me-Im)2(dpy)2]3+/2+、ferrocene carboxylic acid、[Os(Im)2(dpy)2]3+/2+、[Os(4-Me-Im)2(dpy)2]3+/2+、OsBr62-/3-、[Fe(CN)6]3-/4-、ferrocene ethanol、[Os(Im)2(4,4'-Me2-dpy)2]3+/2+、[Co(edta)]1-/2-、[Co(pdta)]1-/2-、[Co(cydta)]1-/2-、[Co(phen)3]3+/2+、[OsCl(1-Me-Im)(dpy)2]3+/2+、[OsCl(Im)(dpy)2]3+/2+、[Co(5-Me-phen)3]3+/2+、[Co(trdta)]1-/2-、[Ru(NH3)5(py)]3+/2+、[Co(dpy)3]2+/3+、[Ru(NH3)5(4-thmpy)]3+/2+、Fe3+/2+, malonate、Fe3+/2+, salycylate、[Ru(NH3)5(4-Me-py)]3+/2+、[Co(trpy)2]3+/2+、[Co(4-Me-phen)3]3+/2+、[Co(5-NH2-phen)3]3+/2+、[Co(4,7-(bhm)2phen)3+/2+、[Co(5,6-Me4-phen)3]3+/2+、trans(N)-[Co(gly)3]0/1-、[OsCl(1-Me-Im)(4,4'-Me2-dpy)2]3+/2+、[OsCl(Im)(4,4'-Me2-dpy)2]3+/2+、[Fe(edta)]1-/2-、[Co(4,7-Me2-phen)3]3+/2+、[Co(4,7-Me2-phen)3]3+/2+、[Co(3,4,7,8-Me4-phen)3]3+/2+、[Co(NH3)6]3+/2+、[Ru(NH3)6]3+/2+、[Fe(ox)3]3-/4-、promazine (n=1) [ammonium form]、chloramine-T、TMPDA (N,N,N’,N’-tetramethylphenylenediamine)、porphyrexide、syringaldazine、o-tolidine、bacteriochlorophyll a、dopamine、2,5-dihydroxy-1,4-benzoquinone、p-amino-dimethylaniline、o-quinone/1,2-hydroxybenzene (catechol)、p-aminophenoltetrahydroxy-p-benzoquinone、2,5-dichloro-p-benzoquinone、1,4-benzoquinone、diaminodurene、2,5-dihydroxyphenylacetic acid、2,6,2’-trichloroindophenol、indophenol、o-toluidine blue、DCPIP (2,6-dichlorophenolindophenol)、2,6-dibromo-indophenol、phenol blue、3-amino-thiazine、1,2-napthoquinone-4-sulfonate、2,6-dimethyl-p-benzoquinone、2,6-dibromo-2’-methoxy-indophenol、2,3-dimethoxy-5-methyl-1,4-benzoquinone、2,5-dimethyl-p-benzoquinone、1,4-dihydoxy-naphthoic acid、2,6-dimethyl-indophenol、5-isopropyl-2-methyl-p-benzoquinone、1,2-naphthoquinone、1-naphthol-2-su
lfonate indophenol、toluylene blue、TTQ (tryptophan tryptophylquinone) model (3-methyl-4-(3’-methylindol-2’-yl)indol-6,7-dione)、ubiquinone (coenzyme Q)、PMS (N-methylphenazinium methosulfate)、TPQ (topa quinone or 6-hydroxydopa quinone)、PQQ (pyrroloquinolinequinone)、thionine、thionine-tetrasulfonate、ascorbic acid、PES (phenazineethosulphate)、cresyl blue、1,4-naphthoquinone、toluidine blue、thiazine blue、gallocyanine、thioindigo disulfonate、methylene blue、vitamin K3 (2-methyl-1,4-naphthoquinone)、などを用いることができる。なお、化学式中、dpyは、2,2’-dipyridineを、phenは1,10-phenanthrolineを、Trisは、tris(hydroxymethyl)aminomethaneを、trpyは2,2’:6’,2’’-terpyridineを、Imは、imidazoleを、pyはpyridineを、thmpyは4-(tris(hydroxymethyl)methyl)pyridineを、bhmはbis(bis(hydroxymethyl)methylを、G3aはtriglycineamideを、A3はtrialanineを、oxはoxalate dianioneを、edtaはethylenediaminetetraacetate tetraanioneを、glyはglycinate anionを、pdtaはpropylenediaminetetraacetate tetraanioneを、trdtaはtrimethylenediaminetetraacetate tetraanioneを、cydtaは、1,2-cyclohexanediaminetetraacetate tetraanioneをそれぞれ示す。
【0040】
燃料極及び空気極の材料は、外部と電気的に接続可能な素材であれば特に限定されず、例えば、Pt、Ag、Au、Ru、Rh、Os、Nb、Mo、In、Ir、Zn、Mn、Fe、Co、Ti、V、Cr、Pd、Re、Ta、W、Zr、Ge、Hfなどの金属、アルメル、真ちゅう、ジュラルミン、青銅、ニッケリン、白金ロジウム、ハイパーコ、パーマロイ、パーメンダー、洋銀、リン青銅などの合金類、ポリアセチレン類などの導電性高分子、グラファイト、カーボンブラックなどの炭素材、HfB2、NbB、CrB2、B4Cなどのホウ化物、TiN、ZrNなどの窒化物、VSi2、NbSi2、MoSi2、TaSi2などのケイ化物、及びこれらの合材等を用いることができる。
【0041】
燃料極及び空気極には、電極と同様の材料で形成され、燃料極で放出された電子を、外部回路を介して空気極に送り込むための燃料極集電体及び空気極集電体が接続される。
【0042】
燃料極及び空気極は、プロトン伝導体を介して配設される。プロトン伝導体に用いる材料は、電子伝導性がなく、且つ、Hの輸送が可能な電解質であれば特に限定されない。例えば、緩衝物質を含む電解質を用いることができる。緩衝物質としては、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)やリン酸二水素カリウム(KH2PO4)などが生成するリン酸二水素イオン(HPO−)、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(略称トリス)、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)、カコジル酸、炭酸(H2CO3)、クエン酸水素イオン、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)、N−(2−アセトアミド)−2−アミノエタンスルホン酸(ACES)、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸(HEPES)、N−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−3−プロパンスルホン酸(HEPPS)、N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(略称トリシン)、グリシルグリシン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン(略称ビシン)、イミダゾール、トリアゾール、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、イミダゾール誘導体(ヒスチジン、1−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、イミダゾール−2−カルボン酸エチル、イミダゾール−2−カルボキシアルデヒド、イミダゾール−4−カルボン酸、イミダゾール−4,5−ジカルボン酸、イミダゾール−1−イル−酢酸、2−アセチルベンズイミダゾール、1−アセチルイミダゾール、N−アセチルイミダゾール、2−アミノベンズイミダゾール、N−(3−アミノプロピル) イミダゾール、5−アミノ−2−(トリフルオロメチル) ベンズイミダゾール、4−アザベンズイミダゾール、4−アザ−2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾール、1−ベンジルイミダゾール、1−ブチルイミダゾール)などのイミダゾール環を含む化合物などを挙げることができる。また、固体電解質であるナフィオン類等も用いることができる。
【0043】
2.コントローラ10の機能的構成及び行動決定の具体例
(1)コントローラ10の機能的構成
図3は、コントローラ10の機能的構成例を示すブロック図である。図に示す各機能は、CPU10Aがメモリ10Bに記憶されている制御プログラムを実行することによって実現される。
【0044】
コントローラ10は、入力処理部31と情報処理部32とから構成される。入力処理部31は、外部からの刺激を検知するセンサ(マイクロフォン15〜タッチセンサ18、及びスイッチ3AB〜3DB)及び温度センサ21、湿度センサ22からの各種信号と燃料電池21からの出力を受ける。また、情報処理部32は、入力処理部31により検出された情報等に基づいて、ペット型ロボット1を作動させる。
【0045】
入力処理部31を構成する角度検出部41は、アクチュエータ3AA1〜5A2のそれぞれに設けられるモータが駆動されたとき、アクチュエータ3AA1〜5A2のそれぞれから通知される情報に基づいて、その角度を検出する。角度検出部41により検出された角度情報は、情報処理部32の行動管理部71及び音データ生成部74に出力される。
【0046】
音量検出部42は、マイクロフォン15から供給される信号に基づいて、その音量を検出し、検出した音量情報を行動管理部71及び音データ生成部74に出力する。
【0047】
音声認識部43は、マイクロフォン15から供給される音声信号について音声認識を行う。音声認識部43は、その音声認識結果としての、例えば、「お話しよう」、「歩け」、「伏せ」、「ボールを追いかけろ」等の指令その他を、音声認識情報として行動管理部71及び音データ生成部74に出力する。
【0048】
画像認識部44は、ビデオカメラ16から供給される画像信号を用いて、画像認識を行う。画像認識部44は、その処理の結果、例えば、「赤い丸いもの」、「地面に対して垂直な、かつ、所定の高さ以上の平面」、「広い開放的な場所」、「家族がいる」、「家族の中の子供の友人がいる」等を検出したときには、「ボールがある」、「壁がある」、「畑である」、「家である」、「学校である」等の画像認識結果を、画像認識情報として行動管理部71及び音データ生成部74に出力する。
【0049】
圧力検出部45は、タッチセンサ17から与えられる圧力検出信号を処理する。例えば、圧力検出部45は、その処理の結果、所定の閾値以上で、かつ、短時間の圧力を検出したときには、「叩かれた(しかられた)」と認識し、所定の閾値未満で、かつ、長時間の圧力を検出したときには、「なでられた(ほめられた)」と認識して、その認識結果を、状態認識情報として行動管理部71及び音データ生成部74に出力する。
【0050】
出力検出部46は、燃料電池21からの出力を処理し、出力に関する情報を電気信号に変換し、行動管理部71及び音データ生成部74に出力する。例えば、燃料電池21からの出力が低下したときには、「苦しい」、「体調が悪い」、「戸惑い」などと認識して、その認識結果を電気信号に変換する。また、燃料電池21からの出力が上昇したときには、「気持ちがよい」、「体調が良い」、「うれしい」などと認識して、その認識結果を電気信号に変換する。
【0051】
温度検出部47及び湿度検出部48は、それぞれ温度センサ22及び湿度センサ23から出力される電気信号を処理し、行動管理部71及び音データ生成部74に出力する。例えば、温度検出部47及び湿度検出部48は、所定の閾値以上で温度及び湿度を検出したときには「蒸し暑い」などと認識して、その認識結果を電気信号に変換する。また、所定の閾値以上で温度を検出したときには「暑い」、「熱がある(風邪をひいた)」などと認識し、閾値以下で温度を検出したときには「寒い」、「寒気がする(風邪をひいた)」などと認識する。さらに、所定の閾値以下で湿度を検出したときには「のどが渇いた」などと認識する。
【0052】
スイッチ入力検出部49は、ペット型ロボット1の足の裏に相当する部分に設けられているスイッチ3AB〜3DBから供給される信号に基づき、例えば、ペット型ロボット1が歩行している状態において、その歩行タイミングや、ユーザにより足の裏が触れられたことを行動管理部71に通知する。
【0053】
行動管理部71は、角度検出部41からの角度情報、音量検出部42からの音量情報、音声認識部43からの音声認識情報、画像認識部44からの画像認識情報及び圧力検出部45からの状態認識情報に基づいて、次の行動を決定する。そして、決定した行動の実行を指示するコマンドを姿勢遷移管理部72に出力する。姿勢遷移管理部72は、行動管理部71から指示された行動に基づいて、姿勢の遷移を決定し、制御部73に出力する。制御部73は、姿勢遷移管理部72からの出力に基づき、アクチュエータ3AA1〜5A2を制御して、行動管理部71が決定した動作を行う。
【0054】
また、音データ生成部74は、角度検出部41、音量検出部42、音声認識部43、画像認識部44及び圧力検出部45からの各種情報に基づいて音データを生成する。そして、行動管理部71は、ペット型ロボット1に発話をさせるとき、あるいは所定の動作に対応する音をスピーカ18から出力させるとき、音の出力を指示するコマンドを音声合成部75に出力する。音声合成部75は、音データ生成部74から出力された音データに基づいて、スピーカ18に音を出力させる。
【0055】
これにより、ペット型ロボット1は、周囲の状況や、ユーザからの指令、ユーザからの働きかけなどの有無を判断し、その判断結果に基づいて、頭部ユニット4を上下左右に振らせたり、尻尾部ユニット5を動かせたり、脚部ユニット3A〜3Dのそれぞれを駆動して歩行したりなどの動作や、鳴き声や会話などの音声をユーザに提示する。行動管理部71による行動の決定のための情報処理については、上述の特許文献1に詳しく記載されている。
【0056】
さらに、行動管理部71は、出力検出部46からの燃料電池21の出力に関する情報、温度検出部47からの燃料電池21の温度情報及び湿度検出部48からの湿度情報にも基づいて、次の行動を決定する。また、音データ生成部74も、出力検出部46、温度検出部47、湿度検出部48からの各種情報に基づいて音データを生成する。
【0057】
上述の通り、燃料電池の出力特性は、生物個体の活動に極めて近似したものである。そのため、燃料電池の出力に関する情報に基づいて、ペット型ロボット1に頭部ユニット4を上下左右に振らせたり、尻尾部ユニット5を動かせたり、脚部ユニット3A〜3Dのそれぞれを駆動して歩行したりなどの動作や、鳴き声や会話などの音声をユーザに提示させるようにすることで、ペット型ロボット1に極めて生物的な振る舞いさせることが可能となる。
【0058】
行動管理部71においては、角度検出部41、音量検出部42、音声認識部43、画像認識部44及び圧力検出部45からの各種情報と、出力検出部46からの燃料電池の出力に関する情報とを統合して行動の決定を行ってもよい。これにより、周囲の状況や、ユーザからの指令、ユーザからの働きかけなどの有無に対するペット型ロボット1の動作や音声の行動の提示態様(アウトプット)を、より生物的なものとできる。
【0059】
燃料電池の出力(アウトプット)は、複合的な外部環境(インプット)の変化に対して、どのように変化するかを正確に予測できないという特性がある。一般に、燃料電池の出力特性は、酵素が機能するに適した環境下では上昇し、逆に環境が悪化すると低下する。また、高温環境下では、酵素の失活により出力が著しく低下する。さらに、燃料電池の出力は、酵素の経時的劣化とともに徐々に低下し、好適な環境下に保たれることで長く維持され得る。これらに加えて、燃料電池の特性として、例えば、その燃料電池に用いられる酵素に最適と思われる燃料を与えても、発電効率が上がらず、期待した出力が得られないということがある。この要因としては、例えば、燃料溶液にかびが生えていて酵素電極表面をいためてしまったとか、以前に雑に扱ったため物理的な衝撃によって電極表面から酵素が剥がれ落ちてしまったなど種々の要因が考えられる。これは、例えば、実際のペットにおいしいと思うものを与えても、あまり食べずに逆に機嫌が悪くなってしまうような事態によく似ている。この場合も、ペットが機嫌を損ねた要因は、例えば、その前に食べ過ぎていたのかもしれないし、病気で食欲がないのかもしれないし、正確に知ることはできない。
【0060】
このように、燃料電池の外部環境(インプット)に対する出力(アウトプット)は、非常に生物的であり、ファジーな特性を示す。従って、行動管理部71においては、角度検出部41、音量検出部42、音声認識部43、画像認識部44及び圧力検出部45からの各種情報に基づく行動決定に、出力検出部46からの燃料電池の出力に関する情報に基づく行動決定を反映させることで、ペット型ロボット1にさらに生物的な振る舞いをさせることができる。
【0061】
以上に説明した一連の処理は、ハードウエアにより実行させることもできるが、ソフトウエアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウエアにより実行させる場合には、そのソフトウエアを構成するプログラムが、専用のハードウエアに組み込まれているロボット装置、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のロボット装置などに、ネットワークや記録媒体からインストールされる。
【0062】
この記録媒体は、装置本体とは別に、ユーザにプログラムを提供するために配布される、プログラムが記録されているリムーバブルメモリなどよりなるパッケージメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される、プログラムが記録されているメモリ10B(図2参照)に含まれるハードディスクなどで構成される。
【0063】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理をも含むものである。
【0064】
(2)コントローラ10による行動決定の具体例
以下、図4〜図10を参照して、出力検出部46からの燃料電池21の出力に関する情報、温度検出部47からの燃料電池21の温度情報及び湿度検出部48からの湿度情報に基づく、コントローラ10による行動決定の具体例を説明する。
【0065】
図4(A)に、燃料電池21の出力変化の一例を示す。横軸は時間、縦軸は出力値を表す。図に示す例では、燃料電池21の出力は、期間Aでは一定値Aを示し、期間BではAからA(最大出力)に次第に上昇し、期間Cでは一定値Aを示している。続く、期間DではAからAに低下し、期間Eでは再度一定値Aを示している。
【0066】
このような出力変化は、例えば、燃料電池21の温度変化に起因して生じる場合がある。酵素の活性は、最適温度である37度付近の温度環境下で最大値を示す。従って、所定温度から37度付近まで次第に温度を上げてやると、酵素活性の上昇と燃料溶液の粘性低下による電極表面への物質供給能力の向上とに起因して、燃料電池の出力は上昇していく。逆に、37度付近から次第に温度を下げてやると、酵素活性が低下し、燃料溶液の粘性も高まるため、燃料電池の出力は低下していく。
【0067】
図4(B)に、(A)に示した出力変化をもたらし得る燃料電池21の温度変化の一例を示す。横軸は時間、縦軸は温度を表す。図に示す例では、燃料電池21の温度は、期間Aでは一定値Tを示し、期間BではTからT(最適温度)に次第に上昇し、期間Cでは一定値Tを示している。続く、期間DではTからTに低下し、期間Eでは再度一定値Tを示している。
【0068】
期間Aでは、ペット型ロボット1は、図1に示したような動作(通常動作)を示しているものとする。期間Aでは、出力検出部46から、出力情報として出力値Aが、行動管理部71及び音データ生成部74に送信される。
【0069】
期間Bにおいて、燃料電池21の出力がAからA(最大出力)に次第に上昇すると、コントローラ10は、行動管理部71に送信される出力情報に基づいて必要なアクチュエータを駆動させ、ペット型ロボット1を図5に示すような姿勢に制御する。
【0070】
図5では、ペット型ロボット1は、尻尾部ユニット5を立て、舌6を出して、活発な動作をユーザに提示している。このような動作は、犬が喜びを表す場合に現実によく見られるものである。コントローラ10は、頭部ユニット4に設けられたアクチュエータ4A1〜4ALや尻尾部ユニット5に設けられたアクチュエータ5A1及び5A2を駆動して、舌6を出す動作や尻尾部ユニット5を立てる動作を制御する。
【0071】
この際、上記のような動作に加えて、コントローラ10は、コマンドを音声合成部75に出力し、音データ生成部74から出力された音データに基づいて、スピーカ18に音を出力させる。これにより、コントローラ10は、例えば、喜びを表す鳴き声や会話などの音声をユーザに提示させるように制御する。このような鳴き声や会話などは、図4に示した期間A〜Eにおいて、その期間の動作に合せて適宜提示され得るものである。
【0072】
期間Cでは、出力検出部46から、出力情報として出力値A(最大出力)が、行動管理部71及び音データ生成部74に送信される。このとき、コントローラ10は、行動管理部71に送信される出力情報に基づいて必要なアクチュエータを駆動させ、ペット型ロボット1を図6に示すような姿勢に制御する。
【0073】
図6では、ペット型ロボット1は、尻尾部ユニット5を振り動かし、脚部ユニット3C、3Dを伸ばして2足で起立し、さらに活発な動作をユーザに提示している。このような動作は犬が強い喜びを表す場合に現実によく見られるものであり、この動作によりユーザはペット型ロボット1の「気持ちがよい」とか「体調が良い」、「うれしい」などという感情を認知できる。コントローラ10は、頭部ユニット4に設けられたアクチュエータ4A1〜4ALや尻尾部ユニット5に設けられたアクチュエータ5A1及び5A2を駆動して、尻尾部ユニット5を振り動かす動作や2足で起立する動作を制御する。
【0074】
期間Dにおいて、燃料電池21の出力がA(最大出力)からAに次第に低下すると、コントローラ10は、行動管理部71に送信される出力情報に基づいて必要なアクチュエータを駆動させ、ペット型ロボット1を図7に示すような姿勢に制御する。
【0075】
図7では、ペット型ロボット1は、尻尾部ユニット5を下げ、脚部ユニット3C、3Dを屈曲させて、不活発な動作をユーザに提示している。このような動作は、ペット型ロボット1の「体調が悪い」とか「戸惑い」などという感情としてユーザに認知される。期間Eでは、燃料電池21の出力がAに戻ることで、ペット型ロボット1も図1に示した通常姿勢に戻る。
【0076】
図8(A)に、燃料電池21の出力変化の他の一例を示す。図に示す例では、燃料電池21の出力は、期間Aでは一定値Aを示し、期間BではAからA(最大出力)に次第に上昇し、期間C・DではAから0にまで低下し、期間Eでは0を維持している。
【0077】
このような出力変化は、例えば、図8(B)に示すような燃料電池21の温度変化によってもたらされ得る。酵素は、高温環境下では、変性し失活してしまう。従って、最適温度である37度付近を超えて温度を上げてやると、燃料電池の出力は低下していく。図に示す例では、燃料電池21の温度は、期間Aでは一定値Tを示し、期間BではTからT(最適温度)に上昇している。さらに、期間CではTを超えてT(高温)まで上昇し、その後期間D・Eでは一定値Tを維持している。
【0078】
期間A・Bでは、出力検出部46から出力情報として出力値A、あるいはA〜Aの出力値が、行動管理部71及び音データ生成部74に送信される。このとき、ペット型ロボット1は、それぞれ図1・5に示したような通常姿勢又は喜びを表す姿勢をとる。そして、燃料電池21の出力がA(最大出力)からAに次第に低下する期間Cでは、コントローラ10は、行動管理部71に送信される出力情報に基づいて必要なアクチュエータを駆動させ、ペット型ロボット1を図7に示したような戸惑いを表す姿勢に制御する。
【0079】
また、コントローラ10は、コマンドを音声合成部75に出力し、音データ生成部74から出力された音データに基づいて、スピーカ18に音を出力させ、戸惑いを表す鳴き声や会話などの音声をユーザに提示させるように制御する。特に期間Cにおいては、温度検出部47から出力情報としてT〜Tの高い温度値が行動管理部71及び音データ生成部74に送信されており、「暑い」とか「熱がある(風邪をひいた)」ことを表す鳴き声や会話などをユーザに提示させることができる。このような鳴き声や会話などは、図8に示した期間A〜Eにおいても、その期間の動作に合せて適宜提示され得るものである。
【0080】
期間Dにおいて、燃料電池21の出力がAから0にさらに低下すると、コントローラ10は、行動管理部71に送信される出力情報に基づいて必要なアクチュエータを駆動させ、ペット型ロボット1を図9に示すような姿勢に制御する。
【0081】
図9では、ペット型ロボット1は、尻尾部ユニット5を下げ、脚部ユニット3A、3B、3C、3Dを屈曲させて、口を開け目を半分閉じて、さらに不活発な動作をユーザに提示している。このような動作は、ペット型ロボット1の「苦しい」などという感情としてユーザに認知される。コントローラ10は、頭部ユニット4に設けられたアクチュエータ4A1〜4ALや尻尾部ユニット5に設けられたアクチュエータ5A1及び5A2を駆動して、口を開け目を半分閉じる動作や尻尾部ユニット5を下げる動作を制御する。
【0082】
期間Eでは、燃料電池21の出力が0になることで、ペット型ロボット1は、図10に示すような全く動きのない姿勢をとる。胴体ユニット2を横臥させ、脚部ユニット3A、3B、3C、3Dを伸ばして、目を閉じたこの動作は、ペット型ロボット1が死亡したものとユーザに認知される。
【0083】
ここでは、燃料電池21の出力が図4(A)及び図8(A)のように変化した場合に、この出力変化に基づいて制御されるペット型ロボット1の動作を説明し、このような出力変化をもたらし得る燃料電池21内部の温度変化を図4(B)及び図8(B)に例示した。加えて、燃料電池21の出力変化は、例えば、燃料電池21の空気極側の湿度変化に起因して生じる場合もある。
【0084】
燃料電子21の空気極側の湿度が高すぎる場合、酵素が少しずつ劣化して、酵素活性が低下し、燃料電池の出力も低下していく。この場合、湿度を回復させても出力は回復しない。また、逆に、湿度が低すぎると、空気極の乾燥速度が上がるため、気−液−固の三相界面の量が減少し、出力が下がってくる。この場合には、湿度を回復させると出力は回復する。
【0085】
このような燃料電池21の湿度変化は、燃料電池21の出力変化とともに、コントローラ10による行動決定に供される。例えば、出力検出部46から出力情報が出力値AからAに次第に低下するときに(図8期間C参照)、湿度検出部48が所定の閾値以下で湿度を検出した場合には、コントローラ10は、
行動管理部71及び音データ生成部74に送信される出力情報に基づいて、ペット型ロボット1を図7に示したような戸惑いを表す姿勢に制御するとともに、「のどが渇いた」ことを表す鳴き声や会話などをユーザに提示する。
【0086】
さらに、燃料電池21の出力変化は、例えば、燃料電池21の燃料溶液の残量や性質に起因して生じる場合もある。
【0087】
燃料電子21の燃料溶液残量が低下した場合、燃料電池の出力も当然に低下する。この場合、燃料溶液を補給してやることで出力は回復する。燃料溶液が劣化したり、燃料溶液として不適当な液体を供給してしまった場合にも出力は低下するが、燃料溶液を交換してやることで出力は回復する。逆に、酸化還元酵素の基質が豊富に含まれた燃料溶液を供給した場合には、燃料電池の出力は上昇するが、基質が過剰に含まれた燃料溶液を供給してしまった場合には、酵素阻害反応によって出力は低下してしまう。このような燃料電池の出力特性も、インプットに対するアウトプットが極めて生物的である。
【0088】
このような燃料電池21の燃料溶液の残量低下等は、温度検出部47及び湿度検出部48からの出力情報に変化がないにもかかわらず、燃料電池21の出力が低下した場合に、コントローラ10が行動管理部71及び音データ生成部74に送信される出力情報に基づいて、「お腹が減った」とか「お腹が痛い」ことを表す鳴き声や会話などを提示することによってユーザに把握される。
【0089】
そして、ユーザは、これを受けて、燃料電池21の燃料供給口から燃料溶液を補給してやったり、燃料溶液を交換してやったりすることで、ペット型ロボット1にえさを与える感覚を楽しむことができる。また、この際、燃料電池21の燃料供給口をペット型ロボット1の口として構成することで、給餌するユーザに一層生物的な擬似感覚を与えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明に係る電子機器は、内蔵した燃料電池の出力に関する情報に基づいて、その動作等を制御されることで、極めて生物的な振る舞いを示す。従って、本発明に係る電子機器、従来製品に変わる新しいペット型玩具あるいはペット型ロボットとして利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 ペット型ロボット
2 胴体部ユニット
3A、3B、3C、3D 脚部ユニット
4 頭部ユニット
5 尻尾部ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池と、
該燃料電池の出力に関する情報を電気信号に変換して出力する制御手段と、
該制御手段から出力される電気信号に基づいて、外部から認知可能な物理的変化を提示する表現手段と、を備える電子機器。
【請求項2】
さらに、前記燃料電池の温度を検知して電気信号に変換し出力する温度センサ、及び/又は燃料電池の空気極側の湿度を検知して電気信号に変換し出力する湿度センサを備え、
前記表現手段が、前記温度センサ及び/又は湿度センサから出力される電気信号に基づいて、前記物理的変化を提示する請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記物理的変化は、動作、音声出力又は光学出力から選択される一以上の変化である請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
生物を模した外形を有する請求項3記載の電子機器。
【請求項5】
燃料供給口を、前記生物の口として構成した請求項4記載の電子機器。
【請求項6】
燃料電池を内蔵する電子機器に、該燃料電池の出力に関する情報に基づいて、外部から認知可能な物理的変化を提示させる電子機器の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−121136(P2011−121136A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280727(P2009−280727)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】