電子線装置を用いたデバイス製造方法
【課題】電子線装置のスループット向上、精度向上等の改善を目的とする。
【解決手段】本発明に係る電子線装置においては、電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの後方に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにした。
【解決手段】本発明に係る電子線装置においては、電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの後方に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子ビーム(又は電子線)を用いて試料の表面に形成されたパターンの欠陥の検査等をする装置に関し、特に、半導体製造工程におけるウエハの欠陥を検出する場合のように、電子ビームを試料に照射してその表面の性状に応じて変化する二次電子を捕捉して画像データを形成し、その画像データに基づいて試料の表面に形成されたパターン等を高いスループットで検査または評価する装置、並びにそのような装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する装置の従来技術については、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた装置が既に市販されている。この装置は細く絞った電子線を非常に間隔の小さいラスタ幅でラスタ走査を行い、走査に伴って試料から放出される二次電子を二次電子検出器で検出してSEM画像を形成し、そのSEM画像を基本画像と比較して欠陥を抽出するものである。
【0003】
しかし、SEMを応用した欠陥検査装置では、ビーム寸法が小さく、当然画素寸法が小さく、ラスタ幅も小さいため、欠陥検査に多くの時間を必要としていた。また、高スループットにするため、試料に照射するビーム幅を大きくすると、照射されている領域内で帯電のバラツキが生じ、良好なSEM像が得られない問題があった。
【0004】
これに対して、近年では、高スループットを得るために、複数の電子ビーム(マルチビーム)を同時に試料面に照射するようにしたマルチビーム検査装置の開発が行われているが、適正な精度をもって高スループットを得るには、多くの改善が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、マルチビーム検査装置の種々の改善を行うことを基本的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの後方に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにした。
【0007】
また、本発明では、電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの間に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにした。
【0008】
また、本発明では、前記電子銃は空間電荷制限条件で動作するようにした。
【0009】
また、本発明では、前記電子銃に隣接するコンデンサレンズの励起状態を変化させることでクロスオーバの位置を変更することにより、前記電子銃から放出された電子線のうち強度が大きい部分の放射方向の位置を前記開口板の小孔の領域に合わせるようにした。
【0010】
更に本発明では、プロセス途中のウエハ等の試料を、上記の如き電子線装置を用いて検査するようにしたデバイス製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る電子線検査装置の実施例としての半導体検査装置を説明する。
半導体検査装置の全体構造概要
図1及び図2において、本実施例の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
【0012】
本実施例の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、主ハウジングに取り付けられた電子光学装置(すなわち電子線を用いて検査を行う装置)70と、を備え、それらは図1及び図2に示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図8に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図10に図示)と、ステージ装置上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。
【0013】
上記半導体検査装置の各部は、いずれも図示されていない真空ポンプ、真空バルブ、真空ケージ、真空配管等から構成され、後述する電子光学系、検出器部、ワーキングチャンバ内を所定のシーケンスに従い真空排気する。各部においては必要な真空度を達成するように真空バルブが制御される。常時、真空度のモニターを行い、異常時にはインターロック機能により隔離バルブ(図示せず)によるチャンバと排気系間の遮断等の緊急制御を行い、各部において必要な真空度を確保する。真空ポンプとしては、主排気にターボ分子ポンプ、粗引き用としてルーツ式ドライブポンプを使用することができる。ステージ上のウエハ(電子線照射部)の周囲の圧力は10−3〜10−6Pa、好ましくは、10−4〜10−6Paとされる。
カセットホルダ
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF,FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施例では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施例では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2で鎖線図示の状態に装填され、その後、図2で実線図示の状態に自動的に回転されミニエンバイロメント装置内の(後述の)第1の搬送ユニット61によるウエハの出し入れを可能とする位置とされ、昇降テーブル11により図1で鎖線で示す状態に降下される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハを第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームは上下移動できるようになっている。第1の搬送ユニット61とカセットcとの関係は、図12に示してある。
【0014】
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、エッチング成膜工程(銅メッキを含む)、CMP(化学機械研磨)平坦化処理、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。
ミニエンバイロンメント装置
図1ないし図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて試料としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナー25とを備えている。
【0015】
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有していてい、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施例では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施例では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225(図1)が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225を閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3〜0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
【0016】
排出装置24は、前記搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
【0017】
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナー25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラットや、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナーは請求項に記載された発明の試料の座標を決める機構の一部を構成し、試料の粗位置決めを担当する。このプリアライナー自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
【0018】
なお、図示しないが、プリアライナーの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナーから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
ワーキングチャンバ
図1及び図2において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施例では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施例において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
【0019】
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。この制御装置は、制御系は主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。
【0020】
メインコントローラにはマン−マシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作はここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時のときの必要な全てのコマンドの入力等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウエハ等の試料搬送、位置合わせの制御、他の制御コントローラやステージコントローラへのコマンドの伝達や情報の受け取り等もメインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、試料観察位置のZ方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系へフィードバックし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージからの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
【0021】
制御コントローラは主に電子線光学系の制御(電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンヒルター用等の高精度電源の制御等)を担う。具体的には照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるようにすること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
【0022】
ステージコントローラは主にステージの移動に関する制御を行い精密なX方向およびY方向のμmオーダーの移動(±0.5μm程度の誤差)を可能にしている。また、本ステージでは誤差精度±0.3秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も行われる。
ローダハウジング
図1、図2及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
【0023】
第1のローディングチャンバ41内には、複数(この実施例では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図5の示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームによりウエハを把持するようになっている。
【0024】
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10−5〜10−6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、後述するマルチビーム型電子装置原理と共に、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
【0025】
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
【0026】
なお、電子線を使用する本発明の検査装置において、後述する電子光学系の電子源として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要であるが、電子光学系が配置されているワーキングチャンバにウエハを搬入する前段階で上記のような雰囲気制御を行うことにより、より確実に実行できる。
ステージ装置
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し制御する。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。
【0027】
電子ビームに対するウエハの回転位置や、X、Y位置を、予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランプピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
ローダーの全体構造
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
【0028】
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施例では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
【0029】
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハW(図12)を1枚、把持装置616により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2に示すような状態)、アームがプリアライナー25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハをプリアライナー25に載せる。プリアライナーから前記と逆にしてウエハを受け取った後はアームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
【0030】
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
【0031】
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウエハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
ローダーによる搬送(カセット→ワーキングチャンバ)
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送を順を追って説明する。
【0032】
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施例において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
【0033】
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバーが開き、さらにまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
【0034】
一方第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施例では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動で行っても或いはその両者で行ってもよい。
【0035】
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナー25の上に載せ、そのプリアライナーによってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナー25からウエハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
【0036】
上記第1の搬送ユニットによるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上部に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施例では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
【0037】
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
【0038】
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53は図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
【0039】
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウエハラックとステージ装置との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウエハラックとの間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
ワーキングチャンバの変形例
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例がで示されている。図6(A)に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施例の底壁に比較して薄い構造になっている。図6(B)に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図6[B]に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
【0040】
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
電子光学装置の構造
電子光学装置70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、図7及び図8に概略図示するような、一次電子光学系(以下単に一次光学系)72と、二次電子光学系(以下単に二次光学系)74とを備える電子光学系と、検出系76とが設けられている。一次光学系72は、電子線を試料であるウエハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子線を集束する静電レンズすなわちコンデンサレンズ722と、コンデンサレンズ722の下方に配置されかつ複数の開口が形成されていて一次電子線を複数の一次電子ビームすなわちマルチビームに形成するマルチ開口板723と、一次電子ビームを縮小する静電レンズである縮小レンズ724と、ウイーンフィルタすなわちE×B分離器725と、対物レンズ726と、を備え、それらは、図7に示されるように電子銃721を最上部にして順に、しかも電子銃から放出される一次電子線の光軸が試料Sの表面に鉛直になるように配置されている。
【0041】
電子銃は熱電子線源を用いている。電子放出(エミッタ)材はLaB6である。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。複数の電子線を得るには、2通りの方法、すなわち、1つは一本のエミッタ(突起がひとつ)から一本の電子線を引き出し、他の一つは一本のエミッタに複数の突起を形成してそこから複数の電子線を引き出す方法、があるが、本発明に係る実施例では、主に後者の方法を採用している。他の方式の電子線源、例えば、熱電界放出型の電子線も使用可能である。尚、熱電子線源は電子放出材を加熱することにより電子を放出する方式であり、熱電界放出電子線源とは、電子放出材に高電界をかけることにより電子を放出させ、更に電子線放出部を加熱することにより、電子放出を安定させた方式である。
【0042】
ウィーンフィルタは、図14に示すように、静電偏向器と電磁偏向器とにより構成されている。静電偏向器は、真空容器中に設けられた一対の電極(静電偏向電極)725−1を備え、x軸方向に電界を生成する。これら静電偏向電極725−1は、絶縁スペーサ725−2を介して真空容器の真空壁725−3に取り付けられており、これらの電極間距離Dは、静電偏向電極725−1のy軸方向の長さ2Lよりも小さく設定されている。このような設定により、z軸(光軸)の周りの形成される電界強度が一様な範囲を比較的大きくすることができるが、理想的にはD<Lであれば、電界強度が一様な範囲をより大きくすることができる。
【0043】
すなわち、電極の端縁からD/2の範囲は、電界強度が一様ではないため、電界強度がほぼ一様な領域は、一様ではない端部領域を除いた中心部の2L−Dの領域となる。このため、電界強度が一様な領域が存在するためには、2L>Dとする必要があり、さらに、L>Dと設定することにより、電界強度が一様な領域がより大きくなる。
【0044】
電磁偏向器は、真空壁725−3の外側に設けられ、y軸方向に磁界を生成する。該電磁偏向器は、電磁コイル725−4及び電磁コイル725−5を備え、これらコイルはそれぞれ、x軸方向及びy軸方向に磁界を生成する。コイル725−5だけでもy軸方向の磁界を生成できるが、コイル4を設け電界と磁界との直交度を向上させている。すなわち、コイル725−4によって生成された−x軸方向の磁界成分によって、コイル725−5によって生成された+x軸方向を打ち消すことによって、電界と磁界との直交度を良好にすることができる。
【0045】
図15は、本発明のウィーンフィルタの他の実施例を示している。この実施例では、静電偏向電極725−1が6極設けられている点で、図14に実施例と相違している。これら静電偏向電極1には、それぞれの電極の中央と光軸(z軸)とを結んだ線と電界の方向(x軸方向)との角度をθi(i=0,1,2,3,4,5)としたときに、cosθiに比例する電圧k・cosθi(kは定数)が供給される。ただし、θiは、任意の角度である。
【0046】
図15に示した実施例においても、第1の実施例と同様に、x及びy軸方向の磁界を生成するコイル及び5を設け、直行度の修正を行う。
【0047】
この実施例によれば、図14の実施例に比べて、電界強度が一様な領域をさらに大きくすることができる。
【0048】
図14及び図15に示したウィーンフィルタにおいては、磁界を生成するためのコイルをサドル型に形成しているが、トロイダル型のコイルを用いてもよい。
【0049】
縮小レンズ724及び対物レンズ726の像面湾曲収差の影響をなくすため、マルチ開口板723に形成される複数(この実施例では9個)の開口723aは、図8に示されるように光軸を中心とした円周上に形成され、しかもその開口のX軸上への投影像のX方向の間隔Lxが同じになるように配置されている。
【0050】
二次光学系74は、E×B型偏向器725により一次光学系から分離された二次電子を通す2段の静電レンズである拡大レンズ741及び742と、マルチ開口検出板743を備えている。マルチ開口検出板743に形成される開口743aは、一次光学系のマルチ開口板723に形成されている開口723aと一対一で対応するようになっている。
【0051】
検出系76は、二次光学系74のマルチ開口検出板743の各開口743aに対応してそれに近接して配置された複数(この実施例では9個)検出器761と、各検出器761にA/D変換器762を介して電気的に接続された画像処理部763とを備えている。
電子光学装置の動作
次に、上記構成の電子光学装置70の動作に付いて説明する。
【0052】
電子銃721から放出された一次電子線は、一次光学系72のコンデンサレンズ722によって集束されて点P1においてクロスオーバを形成する。一方、コンデンサレンズ722によって集束された一次電子線は、マルチ開口板の複数の開口723aで成形されて複数の一次電子ビームが形成され、縮小レンズ724によって縮小されて位置P2に投影される。位置P2で合焦した後、更に対物レンズ726によってウエハWの表面上に合焦される。一方、一次電子ビームは縮小レンズ724と対物レンズ726との間に配置された偏向器727によってウエハWの表面上を走査するように偏向される。一次電子線によるウエハW表面の走査態様としては、例えば、図16に示す。すなわち、この例では、等間隔にされた4本の電子線101−104を、図で見て、左から右へ走査し、それぞれの走査の右端に来ると、ウエハを支持しているステージが、図で見て、下から上へ所定ステップ距離だけ上方へ動き、電子線はそれぞれの走査の左端に戻り、再び右方への走査を行い、これを繰り返すことにより、ウエハの所要領域の走査を行う。
【0053】
合焦された複数(この実施例では9本)の一次電子ビームによって試料Sは複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点からは二次電子が放出される。この二次電子は、対物レンズ726の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器725で偏向されて二次光学系74に投入される。二次電子による像は偏向器725に関して位置P2より近い位置P3において焦点を結ぶ。これは、一次電子ビームがウエハ面上で500eVのエネルギを有しているのに対して、二次電子が数evのエネルギしか有していないためである。
【0054】
位置P3で合焦された二次電子の像は2段の拡大レンズ741、742でマルチ開口検出板743の対応する開口743aに合焦され、その開口を通過し、各開口743aに対応して配置された検出器761で検出する。検出器761は、検出した電子線を、その強度を表す電気信号に変換する。このようにして変換された電気信号は、各検出器761から出力されてそれぞれA/D変換器762にデジタル信号に変換された後、画像処理部763に入力される。画像処理部763は入力されたデジタル信号を画像データに変換する。画像処理部763には、一次電子線を偏向させるための走査信号が供給されるようになっているので、画像処理部はウエハの面を表す画像を形成することになる。この画像を設定器(図示せず)に予め設定された標準パターンと、比較器(図示せず)において比較することによってウエハWの被検出(評価)パターンの良否を検出する。
【0055】
更に、レジストレーションによりウエハWの被測定パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンする事によって線幅評価信号を取り出し、これを適宜校正することによって、ウエハの表面に形成されたパターンの線幅を測定することができる。
【0056】
ここで上記画像には、2次電子だけではなく、散乱電子や反射電子による画像を取得できるが、ここでは2次電子画像を取得を選択した場合について述べる。
【0057】
なお、一次光学系のマルチ開口板723の開口を通過した一次電子ビームをウエハWの表面に合焦させ、ウエハから放出される二次電子を検出器761に結像させる際に、一次光学系で生じるコマ収差、軸上色収差及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。
【0058】
また、複数の一次電子ビーム間の間隔と、二次光学系との関係については、一次電子ビーム間の間隔を二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
【0059】
なお、電子光学装置が作動すると、ウエハ物質等が蒸発して、偏向器等の様々な電子光学エレメントに絶縁物質が堆積し悪影響を及ぼすので、堆積した絶縁体は周期的に除去しなければならない。絶縁物質の除去は絶縁物質の堆積する領域近傍の電極を利用して真空中で水素や酸素あるいはフッ素のプラズマを励起し、絶縁物質のみ酸化除去する。
電子光学装置のプレチャージユニット
プレチャージユニット81は、図1に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では試料である基板すなわちウエハに電子線を走査して照射することによりウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウエハ表面の情報とするが、ウエハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によってウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウエハ表面の帯電量にむらがあると二次電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。そこで、本実施例では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウエハの所定の箇所に検査電子を照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウエハ表面のチャージアップは予めウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。
【0060】
また、このプレチャージユニットでは一次電子線をぼかして照射してもよい。
【0061】
プレチャージは、検査試料であるウエハの電気的欠陥を検査することにも利用することができる。すなわち、本来電気的に絶縁されている部分が何らかの原因で通電状態にあると、プレチャージを行った場合、適正に絶縁されている部分との比較において、帯電状態が異なるので、一次電子ビームを照射して、それに基づき発生する二次電子を検知することにより、当該ウエハの電気的欠陥の有無を検査することができるのである。
電子光学装置の電位印加装置
図9において、電位印加機構83は、ウエハから放出される二次電子発生率が、ウエハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウエハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより二次電子の発生を制御するものである。また、この電位印加機構は、照射電子が当初有しているエネルギーを減少し、ウエハに100〜500eV程度の照射電子エネルギーとするための用途も果たす。
【0062】
電位印加機構83は、図9に示されるように、ステージ装置50の載置面541と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下調査及び決定システム)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学装置70の検出系76の画像形成部763に電気的に接続されたモニター833と、モニター833を監視するオペレータ834と、オペレータ834が制御するCPU835とを備えている。CPU835は、前記電圧印加装置831並びに偏向器727に信号を供給するようになっている。
【0063】
上記電位印加機構は、試料であるウエハが帯電し難い電位を探し、その電位を印加するように設計されている。
電子光学装置の電子ビームキャリブレーション機構
図10において、電子ビームキャリブレーション機構85は、前記回転テーブル上でウエハの載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用のそれぞれ複数のファラデーカップ851及び852を備えている。ファラデーカップ851は細いビーム用(約φ2μm)で、ファラデーカップ852は太いビーム用(約φ30μm)である。細いビーム用のファラデーカップ851では回転テーブルをステップ送りすることで、ビームプロフィルを測定し。太いビーム用のファラデーカップ852ではビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウエハWの上表面と同じレベル(高さ)になるように配置されている。このようにして電子銃から放出される一次電子線を常時監視する。これは、電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、使用しているうちにその放出量が変化するためである。
電子光学装置のアラインメント制御装置
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学装置70に対して位置決めさせる装置であって、ウエハを光学顕微鏡871を用いた広視野観察による概略合わせ(電子光学系によるよりも精度が低い測定)、電子光学装置70の電子光学系を用いた高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。このように光学系を用いて低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うために、電子線を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハライメントを行う時に、電子線によるアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。
【0064】
光学顕微鏡871は、ハウジングに設けられ(ハウジング内で移動可能に設けられていてもよい)ており、光学顕微鏡を動作させるための光源も図示しないがハウジング内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は電子光学装置70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。その構成を概略図示すれば、図11に示されるようになる。ウエハ上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ53をX方向に動かすことによってウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871で広視野でウエハを視認してそのウエハ上の観察すべき位置をCCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置をおおよそ決定する。この場合光学顕微鏡の倍率を低倍率から高倍率に変化させていってもよい。
【0065】
次に、ステージ装置50を電子光学装置70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させて光学顕微鏡で予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学装置の視野位置に移動させる。この場合、電子光学装置の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離(この実施例ではX軸線に沿った方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向及びY軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているのでその値δxだけ移動させれば被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学装置の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり、モニタ765に表示させる。
【0066】
このようにして電子光学系による高倍率でウエハの観察点をモニタに表示させた後、公知の方法によりステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれすなわち電子光学系の光軸O3−O3に対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学装置に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そしてその検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいてステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
検査シーケンス(要約)
電子光学装置によるウエハ(資料)検査は、図13に示すごとく要約することができる。すなわち、はじめに光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。次にウエハの種類(どの工程後か、ウエハのサイズは20cmか30cmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定を行なった後、画像取得を行ないながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行なう。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリーへ記憶を行なう。欠陥にはパーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行うことも出来る。電気的欠陥の検出は電位コントラスト異状を検出することで達成される。例えば導通不良の場所は電子線照射(500eV程度)により、通常正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別ができる。この場合の電子照射装置とは、通常検査用の電子線照射装置以外に別途、電位差によるコントラストを際立たせるために設けた、低電位のエネルギーの電子線発生装置をいう。試料領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位エネルギーの電子線を発生・照射している。検査用の電子線を照射すること自体、正に帯電させることが出来る写像投影方式の場合は、使用によっては、別途低電位の電子線発生装置を設ける必要はない。また、ウエハ等の試料に基準電位に対して、正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出が出来る。線幅測定装置及び合わせ精度装置にも利用できる。
上記実施例に係る検査装置における効果
上記実施例に係る検査装置においては、特に、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)複数の電子線すなわちマルチビームを用いた検査装置の各構成機器を機能的に組み合わせることができたため、高いスループットで試料を処理することができる。
(ロ)エンバイロメント空間内に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら試料の検査を行うことができる。
(ハ)プレチャージユニットを設けているので、絶縁物でできたウエハも帯電による影響を受けがたい。
ワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良1)
ウエハ、すなわち、本発明に係る装置における試料である試料を支持するステージに対して非常に高精度な位置決めが要求される場合には、ステージを(高圧ガスによる支持を行う)静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用されている。この場合、静圧軸受けから排出される高圧ガスが直接真空チャンバに入らないように、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けに隣接して形成することによって、真空チャンバの真空度を維持している。
【0067】
かかる従来技術によるステージの一例が図17(A)及び図17(B)に示されている。同図の構造において、真空チャンバCを構成するハウジング14′−2に、電子ビームを発生し試料に照射する電子線検査装置の鏡筒1−2の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2が取り付けられている。鏡筒内部は真空配管18−2によって真空排気されており、チャンバCは真空配管19′−2によって真空排気されている。そして、電子ビームは鏡筒1−2の先端部2−2から、その下に置かれたウエハ等の試料Wに対して照射される。
【0068】
試料Wは試料台tに公知の方法により取り外し可能に保持されており、試料台tはXYステージ(以下単にステージ)3′−2のY方向可動部4′−2の上面に取り付けられている。上記Y方向可動部4′−2には、ステージ3−2のX方向可動部5′−2のガイド面5a′−2と向かい合う面(図17(A)において左右両面及び下面)に静圧軸受け9′−2が複数取り付けられており、この静圧軸受け9′−2の作用によりガイド面との間に微小隙間を維持しながらY方向(図17(B)で左右方向)に移動できる。さらに静圧軸受けの周りには、静圧軸受けに供給される高圧ガスが真空チャンバCの内部にリークしないように差動排気機構が設けられている。この様子を図18に示す。静圧軸受け9−2の周囲に二重に溝g1−2とg2−2が構成されており、これらの溝は図示されていない真空配管と真空ポンプにより常時真空排気されている。このような構造により、Y方向可動部4′−2は真空中を非接触状態で支持されY方向に自在に移動することができるようになっている。これらの二重の溝g1−2とg2−2は可動部4′−2の静圧軸受け9′−2が設けられている面にその静圧軸受けを囲むようにして形成されている。
【0069】
このY方向可動部4′−2を搭載しているX方向可動部5′−2は、図17(A)及び図17(B)からも明らかなように、上方に開口している凹形の形状を有していて、そのX方向可動部5′−2にもまったく同様の静圧軸受け及び溝が設けられていて、ステージ台6′−2に対して非接触で支持されており、X方向に自在に移動することができる。
【0070】
これらのY方向可動部4′−2とX方向可動部5′−2の移動を組み合わせることによって、試料Wを鏡筒の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2に関して水平方向任意の位置に移動させ、試料の所望の位置に電子ビームを照射することができる。
【0071】
上記の静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、差動排気機構を設けたため、大気中で使用される静圧軸受け式ステージに比べて構造が複雑で大型になり、ステージとしての信頼性が低く、高コストになるという問題があった。
【0072】
そこで、本発明では、XYステージの差動排気機構をなくして構造が簡単で、しかも、ワーキングチャンバ内の真空度を維持することができるようにした電子線検査装置を提供する。
改良ステージを備える電子線検査装置
以下において、ステージの改良を行った本発明に係る電子線検査装置の実施例を説明する。なお、図17(A),図17(B)の従来例及び実施例において共通する構成部材を示す参照番号は同じになっている。なお、この明細書中で「真空」とは当該技術分野において呼ばれる真空であって、必ずしも絶対真空を指すものではない。
【0073】
図19には改良されたステージを備える電子線検査装置の第1の実施例が示されている。
【0074】
電子ビームを試料に向かって照射する鏡筒1−2の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2が真空チャンバCを画成するハウジング14−2に取り付けられている。鏡筒1−2の直下には、XYステージ3−2のX方向(図19において左右方向)の可動テーブル上に載置されている試料Wが配置されるようになっている。この試料Wは高精度なXYステージ3−2によって、その試料面上の任意の位置に対して正確に電子ビームを照射させることができる。
【0075】
XYステージ3−2の台座6−2はハウジング14−2の底壁に固定され、Y方向(図19において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル5−2が台座6−2の上に載っている。Yテーブル5−2の両側面(図19において左右側面)には、台座6−2に載置された一対のY方向ガイド7a−2及び7b−2のYテーブルに面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はY方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け11a−2、9a−2、11b−2、9b−2、がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル5−2はY方向ガイド7a−2、7b−2に対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、台座6−2とYテーブル5−2との間には、公知の構造のリニアモータ12−2が配置されており、Y方向の駆動をそのリニアモータで行うようになっている。Yテーブルには、高圧ガス供給用のフレキシブル配管22−2によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて上記静圧軸受け9a−2ないし11a−2及び9b−2ないし11b−2に対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブルを案内面に対してX方向とZ方向(図19において上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
【0076】
Yテーブル上にはXテーブル4−2がX方向(図19において左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル5−2上にはYテーブル用のY方向ガイド7a−2、7b−2と同じ構造の一対のX方向ガイド8a−2、8b−2(8a−2のみ図示)がXテーブル4−2を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブルに面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル4−2の突部の上、下面及び側面には前記静圧軸受け11a−2、9a−2、10a−2、11b−2、9b−2、10b−2と同様の静圧軸受け(図示せず)が同様の配置で設けられている。Yテーブル5−2とXテーブル4−2との間には、公知の構造のリニアモータ13−2が配置されており、XテーブルのX方向の駆動をそのリニアモータで行うようにしている。そして、Xテーブル4−2にはフレキシブル配管21−2によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給するようになっている。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル4−2がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空チャンバCは公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管19−2、20a−2、20b−2によって排気されている。配管20a−2、20b−2の入口側(真空チャンバ内側)は台座6−2を貫通してその上面において、XYステージ3−2から高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、真空チャンバ内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
【0077】
鏡筒1−2の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2の周囲には、差動排気機構25−2が設けられ、真空チャンバC内の圧力が高くても電子ビーム照射空間30−2の圧力が十分低くなるようにしてある。すなわち、電子ビーム照射部2−2周囲に取り付けられた差動排気機構25−2の環状部材26−2は、その下面(試料W側の面)と試料との間で微少隙間(数ミクロンから数百ミクロン)40−2が形成されるように、ハウジング14−2に対して位置決めされており、その下面には環状溝27−2が形成されている。環状溝27−2は排気管28−2により図示しない真空ポンプ等に接続されている。したがって、微少隙間40−2は環状溝27−2及び排気口28−2を介して排気され、真空チャンバCから環状部材26−2によって囲まれた空間30−2内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、電子ビーム照射空間30−2内の圧力を低く保つことができ、電子ビームを問題なく照射することができる。
【0078】
この環状溝は、チャンバ内の圧力、電子ビーム照射空間30−2内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
【0079】
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバを画成するハウジングの内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、試料表面に付着して電子ビーム照射空間の真空度を悪化させてしまう。
【0080】
なお、以上の説明において、試料Wは通常Xテーブル上に直接載置されるのでなく、試料を取り外し可能に保持したりXYステージ3−2に対して微少な位置変更を行うなどの機能を持たせた試料台の上に載置されているが、試料台の有無及びその構造は本願発明の要旨には関係ないので、説明を簡素化するために省略されている。
【0081】
以上に説明した電子線検査装置では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで電子線検査装置用のXYステージに対して実現できる。
【0082】
なお、以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータならば何でも適用できる。
【0083】
次に差動排気機構の環状部材26−2及びそれに形成される環状溝の大きさの数値例を図20に示す。なお、この例では環状溝は27a−2及び27b−2の二重構造を有しており、それらは半径方向に隔てられている。
【0084】
静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構の環状部材26−2及び環状溝等の寸法を、図20に示されるようにすれば、電子ビーム照射空間30−2内の圧力を10−4Pa(10−6Torr)にすることができる。
【0085】
図21において、第2の実施例が示されている。ハウジング14−2によって画成された真空チャンバCには、真空配管74−2、75−2を介してドライ真空ポンプ53−2が接続されている。また、差動排気機構25−2の環状溝27−2は排気口28−2に接続された真空配管70−2を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ51−2が接続されている。更に、鏡筒1−2の内部は、排気口18−2に接続された真空配管71−2を介して、ターボ分子ポンプ52−2が接続されている。これらのターボ分子ポンプ51−2、52−2は、真空配管72−2、73−2によってドライ真空ポンプ53−2に接続されている。(本図では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用したが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合も考えられる。)
XYステージ3−2の静圧軸受けには、フレキシブル配管21−2、22−2を通して高純度の不活性ガス(N2ガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は真空チャンバ内に拡散し、排気口19−2、20a−2、20b−2を通してドライ真空ポンプ53−2によって排気される。また、差動排気機構や電子ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は環状溝27−2或いは鏡筒1−2の先端部から吸引され、排気口28−2及び18−2を通ってターボ分子ポンプ51−2及び52−2によって排気され、ターボ分子ポンプから排出された後ドライ真空ポンプ53−2によって排気される。
【0086】
このように、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスはドライ真空ポンプに集められて排出される。
【0087】
一方、ドライ真空ポンプ53−2の排気口は、配管76−2を介して圧縮機54−2に接続され、圧縮機54−2の排気口は配管77−2、78−2、79−2及びレギュレータ61−2、62−2を介してフレキシブル配管21−2、22−2に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ53−2から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機54−2によって再び加圧されレギュレータ61−2、62−2で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
【0088】
なお、静圧軸受けに供給されるガスは上述したようにできるだけ高純度にし、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管77−2の途中にコールドトラップやフィルタ等(60−2)を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。
【0089】
こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
【0090】
なお、循環配管系には高純度不活性ガス供給系63−2が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管70−2〜75−2及び加圧側配管76−2〜80−2を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。
【0091】
また、ドライ真空ポンプ53−2に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ53−2と圧縮機54−2を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。
【0092】
更に、鏡筒の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合は、この部分には循環配管系を構築することはできないことになる。また、ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することももちろん可能である。
改良されたステージを備える電子線検査装置における効果
上記の如きステージを備える本発明に係る電子線検査装置においては、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)大気中で一般に用いられる静圧軸受け式のステージと同様の構造を持ったステージ(差動排気機構を持たない静圧軸受け支持のステージ)を使用して、ステージ上の試料に対して電子ビームによる処理を安定に行うことができる。
(ロ)電子ビーム照射領域の真空度に対する影響を最小限に抑えることが可能になり、電子ビームによる試料への処理を安定化させることができる。
(ハ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を安価に提供することができる。
(ニ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を安価に提供することができる。
(ホ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
ワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良2)
上記ワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良1)において述べた従来技術に係る静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、ステージが移動する際に、静圧軸受けに対向するガイド面は、静圧軸受け部の高圧ガス雰囲気とチャンバ内の真空環境の間を往復運動する。この時ガイド面では、高圧ガス雰囲気に曝されている間にガスが吸着し、真空環境に露出されると吸着していたガスが放出されるという状態が繰り返される。このためステージが移動する度に、チャンバ内の真空度が悪化するという現象が起こり、上述した電子ビームによる露光や検査や加工等の処理が安定に行えず、このために、試料が汚染されてしまうという問題もあった。
【0093】
本発明では、このような従来装置における問題をも解消することを目的に、以下に説明するごとき改良したステージを備えた電子線検査装置を提供する。
改良されたステージを備えた電子線検査装置
(第1の実施例)
図22(A),図22(B)は、その第1の実施例が示されている。
【0094】
ステージ3−3のY方向可動部5−3の上面には+Y方向と−Y方向(図22(B)で左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板14−3が取り付けられ、X方向可動部6−3の上面との間に常にコンダクタンスが小さい絞り部50−3が構成されるようになっている。また、X方向可動部6−3の上面にも同様の仕切り板12−3が±X方向(図22(A)で左右方向)に張り出すように構成されており、ステージ台7−3の上面との間に常に絞り部51−3が形成されるようになっている。ステージ台7−3は、ハウジング8−3内において底壁の上に公知の方法で固定されている。
【0095】
このため、試料台4−3がどの位置に移動しても常に絞り部50−3と51−3が形成されるので、可動部5−3及び6−3の移動時にガイド面6a−3や7a−3からガスが放出されても、絞り部50−3と51−3によって放出ガスの空間Cへの移動が妨げられるため、電子ビームが照射される試料近傍の空間24−3の圧力上昇を非常に小さく押さえることができる。
【0096】
ステージの可動部3−3の側面及び下面並びに可動部6−3の下面には、静圧軸受け9−3の周囲に、図2に示されるような差動排気用の溝が形成されていてこの溝によって真空排気されるため、絞り部50−3、51−3が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ内部の空間13−3や15−3の圧力は、チャンバC内の圧力よりも高い状態になっている。したがって、空間13−3や15−3を、差動排気溝17−3や18−3で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設ければ空間13−3や15−3の圧力を下げることができ、試料近傍24−3の圧力上昇を更に小さくすることができる。このための真空排気通路11−1・3と11−2・3とが設けられている。排気通路はステージ台7−3及びハウジング8−3を貫通してハウジング8−3の外部に通じている。また、排気通路11−2はX方向可動部6−3に形成されX方向可動部6−3の下面に開口している。
【0097】
また、仕切り板12−3及び14−3を設置すると、チャンバCと仕切り板が干渉しないようにチャンバを大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによってこの点を改善することが可能である。この実施例としては、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状にして、その移動方向の端部を、仕切り板14−3の場合はX方向可動部6−3に、仕切り板12−3の場合はハウジング8−3の内壁にそれぞれ固定する構成とすることが考えられる。
(第2の実施例)
図23には、第2の実施例が示されている。
【0098】
この実施例では、鏡筒の先端部すなわち電子ビーム照射部2−3の周囲に、試料Sの上面との間に絞り部ができるように円筒状の仕切り16−3が構成されている。このような構成では、XYステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇しても、仕切りの内部24−3は仕切り16−3で仕切られており真空配管10−3で排気されているので、チャンバC内と仕切りの内部24−3との間に圧力差が生じ、仕切り内部の空間24−3の圧力上昇を低く抑えられる。仕切り16−3と試料面との隙間は、チャンバC内と照射部2−3周辺の圧力をどの程度に維持するかによって変わるが、凡そ数十μmないし数mm程度が適当である。なお、仕切り16−3内と真空配管とは公知の方法により連通されている。
【0099】
また、電子ビーム照射装置では、試料Sに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料を試料の近傍に設置すると放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り16−3の材質をセラミックス等の絶縁物で構成すれば、試料Sと仕切り16−3との間で放電を起こすことがなくなる。
【0100】
なお、試料S(ウエハ)の周囲に配置したリング部材4−1・3は試料台4−3に固定された板状の調整部品であり、ウエハのような試料の端部に電子ビームを照射する場合であっても、仕切り16−3の先端部全周に亘って微小隙間52−3が形成されるように、ウエハと同一の高さに設定されている。これによって、試料Sのどの位置に電子ビームが照射しても、仕切り16−3の先端部には常に一定の微小隙間52−3が形成され、鏡筒先端部周囲の空間24−3の圧力を安定に保つことができる。
(第3の実施例)
図24には、前述のワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良1)において説明したものと実質的に同じ内容を有する第3の実施例が示されている。
【0101】
鏡筒1−3の電子ビーム照射部2−3の周囲に差動排気構造を内蔵した仕切り19−3が設けられている。仕切り19−3は円筒状の形状をしており、その内部に円周溝20−3が形成され、その円周溝からは上方に排気通路21−3が延びている。その排気通路は内部空間22−3を経由して真空配管23−3に繋がれている。仕切り19−3の下端は試料Sの上面との間に数十μmないし数mm程度の微小隙間を形成している。
【0102】
このような構成では、ステージの移動に伴ってステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇し先端部すなわち電子ビーム照射部2−3にガスが流入しようとしても、仕切り19−3が試料Sとの隙間を絞ってコンダクタンスを非常に小さくしているためガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝20−3から真空配管23−3へ排気されるため、電子ビーム照射部2−3の周囲の空間24−3へ流入するガスはほとんどなくなり、電子ビーム照射部2−3の圧力を所望の高真空のまま維持することができる。
【0103】
仕切り19−3に設けられる作動排気構造は、図19ないし図21に示したものとすることができる。
(第4の実施例)
図25は、第4の実施例を示している。
【0104】
チャンバCと電子ビーム照射部2−3の周囲には仕切り26−3が設けられ、電子ビーム照射部2−3をチャンバCから隔てている。この仕切り26−3は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材29−3を介して冷凍機30−3に連結されており、−100℃ないし−200℃程度に冷却されている。部材27−3は冷却されている仕切り26−3と鏡筒の間の熱伝導を阻害するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料から成っている。また、部材28−3はセラミックス等の非絶縁体から成り、仕切り26−3の下端に形成され試料Sと仕切り26−3が放電することを防ぐ役割を持っている。
【0105】
このような構成により、チャンバC内から電子ビーム照射部に流入しようとするガス分子は、仕切り26−3で流入を阻害される上、流入しても仕切り26−3の表面に凍結捕集されてしまうため、電子ビーム照射部24−3の圧力を低く保つことができる。
【0106】
なお、冷凍機としては、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様様な冷凍機が使用できる。
(第5の実施例)
図26は、第5の実施例を示している。
【0107】
ステージ3−3の両可動部には、図22に示したのと同様に仕切り板12−3、14−3が設けられており、試料台4−3が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによってステージ内の空間13−3とチャンバC内とが絞り50−3、51−3を介して仕切られる。更に、電子ビーム照射部2−3の周りには図23に示したのと同様の仕切り16−3が形成されており、チャンバC内と電子ビーム照射部2−3のある空間24−3が絞り52−3を介して仕切られている。このため、ステージ移動時、ステージに吸着しているガスが空間13−3に放出されてこの部分の圧力を上昇させても、チャンバCの圧力上昇は低く抑えられ、空間24−3の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、電子ビーム照射空間24−3の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り16−3に示したように差動排気機構を内蔵した仕切り19−3(図24)としたり、図25に示したように冷凍機で冷却された仕切り26−3とすることによって、空間24−3を更に低い圧力で安定に維持することができるようになる。
改良されたステージ(2)を備える電子線検査装置の効果
上記のごとき電子線検査装置においては、次のような効果を得ることができる。
(イ)ステージ装置が真空内で高精度な位置決め性能を発揮することができ、更に、電子ビーム照射位置の圧力が上昇しにくい。すなわち、試料に対する電子ビームによる処理を高精度に行うことができる。
(ロ)静圧軸受け支持部から放出されたガスが仕切りを通過して電子ビーム照射領域側に通過することがほとんどできない。これによって電子ビーム照射位置の真空度を更に安定させることができる。
(ハ)電子ビーム照射領域側に放出ガスが通過することが困難になり、電子ビーム照射領域の真空度を安定に保ち易くなる。
(ニ)真空チャンバ内が、電子ビーム照射室、静圧軸受け室及びその中間室の3室に小さいコンダクタンスを介して分割された形になる。そして、それぞれの室の圧力を、低い順に電子ビーム照射室、中間室、静圧軸受け室となるように真空排気系を構成する。中間室への圧力変動は仕切りによって更に低く抑えられ、電子ビーム照射室への圧力変動は、もう一段の仕切りによって更に低減され、圧力変動を実質的に問題ないレベルまで低減することが可能となる。
(ホ)ステージが移動した時の圧力上昇を低く抑えることが可能になる。
(ヘ)ステージが移動した時の圧力上昇を更に低く抑えることが可能である。
(ト)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を実現することができるので、検査性能が高く、試料を汚染する恐れのない検査装置を提供することができる。
(チ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を実現することができるので、露光精度が高く、試料を汚染する恐れのない露光装置を提供することができる。
(リ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
スループットの向上(複数光学系(鏡筒)を有する電子光学装置)
上記実施例に係る検査装置の電子光学装置では、単一の電子源から放出する電子線を複数の開口を備える開口板を通してマルチビームすなわち複数のビームを形成し、これによりウエハの検査を行う鏡筒を備える単一の電子光学系により、スループットの向上を図っているが、本発明では複数の鏡筒(光学系)を備え、これら複数の光学系により同時に複数の範囲(従って、広い範囲)の検査を可能とすることにより、スループットを更に向上させるようにした電子光学装置を提供する。
(複数光学系(鏡筒)電子光学装置の第1の実施例)
第1の実施例では、図28に示すように、4個の電子光学系(鏡筒)1a−4、1b−4、1c−4、1d−4(個々の最大外径60a−4、60b−4、60c−4、60d−4)が、ウエハWの検査面を走査するため、ステージ48−4(即ちウエハ)の移動方向21−4に垂直な方向にウエハW上で一列に配置される。
【0108】
電子光学系1a−4、1b−4、1c−4、1d−4のそれぞれは、基本的には、図7に示した同様の構造を有するものであり、電子銃1−4、コンデンサレンズ2−4、マルチ開口板3−4、開口絞り4−4、コンデンサレンズ5−4、E×B分離器7−4、静電偏向器6−4,8−4、対物レンズ10−4、拡大レンズ12−4、13−4、検出器開口板14−4、検出器15−4、偏向器20−4、ステージ48−4、コントローラ50−4、ディスプレイ52−4を有する。
【0109】
図27(a)には、図28の光学系のうちの1つの光学系1a−4の1次電子線照射装置(1次光学系)及び2次電子線検出装置の上面から見た位置関係が模式的に示されている。ここで、輪郭60a−4は1次電子線照射系の最大外径を示し、この最大外径60a−4の直径方向に沿って等間隔に一列に並んでいるのが、マルチ開口板3−4の開口17−4を通過した1次電子線のマルチ開口領域16−4である。18−4は上記した2次電子検出器の光軸であり、マルチ開口領域16−4の電子線の照射によりウエハから発生した2次電子のマルチビームは、E×B分離器7−4で偏向された後、光軸18−4に沿って進行し拡大されてから各々のビームが検出器15−4のマルチ検出素子で検出されるように1次電子線照射系及び2次電子線検出系の相対位置関係が定められている。図より明らかに、マルチ開口領域16−4即ちマルチ開口17−4の各々は、各々のマルチ検出素子に対応しており、マルチビームが途中でクロストークすることはないことがわかる。
【0110】
本実施例の電子光学装置を構成する他の光学系1b−4、1c−4…も、上記と同様の1次電子線照射装置、E×B分離器及び2次電子検出装置を各々有する。コントローラ50−4及びステージ48−4は共有とすることができる。但し、コントローラ50−4の一部の機能である2次電子画像の信号処理回路等は、コントローラに内臓する代わりに必要に応じて各光学系毎に設けてもよい。これら複数の光学系1a−4、1b−4、....は1枚のウエハWの上方で並列に配置され1枚のウエハW上の夫々異なる領域に1次電子を照射し、各領域から発生した2次電子を各々検出する。
【0111】
各光学系は互いに干渉しないように、各光学系の2次光学系の光軸18−4がこの列方向に垂直な方向即ちステージ移動方向21−4に沿って互い違いに逆向きに配置されている。この場合、マルチ開口領域16−4の並び及び検出器15−4のマルチ検出素子の並びも、ステージ移動方向21−4に直角方向となる。
【0112】
8”(約20cm)ウエハの場合1次電子線照射装置の最大外径を40mmφとすれば、図28の並びの場合、8”ウエハ上で5本の光学系を配置することが可能となるが、周辺部はウエハの外部に出ることが多いので、実際には、4光学系程度となる。最大外径を30mmφにできれば、6本程度配置することができる。
【0113】
次に、この電子光学装置の作用を説明する。
【0114】
光学系1a−4〜1d−4の電子銃1から各々放出された単一の1次電子線は、コンデンサレンズ2−4で収束され、開口絞り4−4でクロスオーバー像を形成する。この途中で1次電子線は、マルチ開口板3−4に照射される。マルチ開口17−4を通過した数のビームが形成されるので、本実施例では各光学系毎に7本のマルチビームを形成する。これらのマルチビームは、コンデンサレンズ5−4によってE×B分離器7−4の主面11−4に結像され、更に対物レンズ9−4によってウエハW上に縮小結像される。このとき、ウエハ上には、各光学系毎に7つの照射スポット(図28参照)が形成され、各照射スポットから2次電子が放出される。静電偏向器6−4及び8−4は、マルチビームをステージ移動方向21−4に垂直な方向に沿って、隣接するビーム間隔より僅かに広い領域を偏向させる。この偏向によって、ウエハ上の照射スポットはビームの並び方向を切れ目なく走査できる。この間、ステージ48−4は移動方向21−4に沿って、所定幅で逐次、同期的に連続移動制御されるので、ウエハの検査面全体を走査可能となる。例えば4本の光学系でビームの並び方向の検査可能な幅を2mmとすると、20回程度のステージ連続移動で、4光学系の場合、160mm角の評価ができる。
【0115】
ウエハの各照射スポットから発生した2次電子のマルチビームは略垂直上方に進行し、加速されてE×B分離器7−4に至り、そこに存在する場E×Bによって光軸55−4に対して所定角度をなす方向に偏向され、2次光学系の光軸18−4に沿って進行する。これらの2次電子のマルチビームは、拡大レンズ12−4及び13−4によって互の間隔が拡大され、検出器開口板14−4を通過してマルチ検出素子15−4の各々で検出される。このとき、偏向器6−4、8−4による1次電子線の偏向で生じる2次電子線の位置変位は、補正偏向器19−4によって相殺される。即ち、1次電子線の走査の如何に係らず、2次電子のマルチビームの各々は、常に検出器開口板14−4の対応する開口を通過し、その背面にある対応する検出素子で検出される。
【0116】
マルチ検出素子15−4は、2次電子線強度を示す信号をコントローラ50−4に出力する。コントローラ50−4は、各光学系1a−4〜1d−4の検出素子15−4からの出力信号を1次電子線の偏向制御及びステージ48−4の移動制御と同期して逐次受信し、最終的に半導体ウエハWの検査面全体に亘る2次電子線の強度分布画像を得る。
【0117】
コントローラ50−4は、メモリに予め蓄えられていた欠陥の存在しないウエハの2次電子線画像と、実際に検出された2次電子線画像とを比較照合して、欠陥部分を自動的に検出する。また、同じダイを多数有するウエハの場合、検出されたダイ同士の検出画像を比較することによっても欠陥部分を検出できる。このとき、検出画像をディスプレイ52−4に表示すると共に欠陥部分と判定された部分をマーク表示してもよい。これによって、オペレータは、ウエハWが実際に欠陥を持つか否かを最終的に確認、評価することができる。
【0118】
このような欠陥検査方法の具体例を図30乃至図32に示す。まず、図30には、1番目に検出されたダイの画像31−4及び2番目に検出された他のダイの画像32−4が示されている。3番目に検出された別のダイの画像が1番目の画像31−4と同じか又は類似と判断されれば、2番目のダイ画像32−4の33−4の部分が欠陥を有すると判定され、欠陥部分を検出できる。
【0119】
図31には、ウエハ上に形成されたパターンの線幅を測定する例が示されている。ウエハ上の実際のパターン34−4を35−4の方向に走査したときの実際の2次電子の強度信号が36−4であり、この信号が予め較正して定められたスレッシホールドレベル37−4を連続的に超える部分の幅38−4をパターン34−4の線幅として測定することができる。このように測定された線幅が所定の範囲内にない場合、当該パターンが欠陥を有すると判定することができる。
【0120】
図32には、ウエハ上に形成されたパターンの電位コントラストを測定する例が示されている。図27(b)に示す構成において、対物レンズ9−4とウエハWとの間に軸対称の電極39−4を設け、例えばウエハ電位0Vに対して−10Vの電位を与えておく。このときの−2Vの等電位面は40−4で示されるような形状とする。ここで、ウエハに形成されたパターン41−4及び42−4は、夫々−4Vと0Vの電位であるとする。この場合、パターン41−4から放出された2次電子は等電位面40−4で2eVの運動エネルギーに相当する上向きの速度を持っているので、このポテンシャル障壁40−4を越え、軌道43−4に示すように電極39−4から脱出し、検出器15−4で検出される。一方、パターン42−4から放出された2次電子は−2Vの電位障壁を越えられず、軌道44−4に示すようにウエハ面に追い戻されるので、検出されない。従って、パターン41−4の検出画像は明るく、パターン42−4の検出画像は暗くなる。かくして、電位コントラストが得られる。検出画像の明るさと電位とを予め較正しておけば、検出画像からパターンの電位を測定することができる。そして、この電位分布からパターンの欠陥部分を評価することができる。
【0121】
図27(b)において、ブランキング偏向器20−4を設け、この偏向器20−4によって1次電子線を開口絞り4−4の開口外側部分に所定周期で偏向させ、当該ビームを短時間のみ通して他の時間は遮断することを繰り返すことによって、短いパルス幅のビーム束を作ることが可能となる。このような短パルス幅ビームを用いて上記したようなウエハ上の電位測定等を行えば、高時間分解能でデバイス動作を解析可能となる。即ち、本電子光学装置をマルチビームのいわゆるEBテスターとして使用することが可能となる。
【0122】
第1の実施例では、ステージ48−4の戻り動作が少ないので、ステージ移動に要する無駄時間を減少させることができる。
(第2の実施例)
第2の実施例に係る電子光学装置は、複数の光学系がウエハW上で2行m列(m>1)に配置された構成に関する。
【0123】
図29には、6個の光学系が2行3列に配列された構成例の上面図が示されている。なお、電子光学装置及び各光学系の具体的な構成要素については第1の実施例とほぼ同様であるので、同一の符号を附して詳細な説明を省略する。
【0124】
図29では、6個の光学系の1次電子線照射装置の最大外径は、夫々60a−4〜60f−4によって示されている。複数の光学系は、各々が互いに干渉しないように各2次光学系の光軸18−4(2次電子線の経路)が行の並び方向に沿ってウエハ外側に向かうように配置される。列の数mは、好ましくは3、4列程度であるが、これ以外の2列、或いは4列以上であってもよい。
【0125】
また、マルチ開口領域16−4及びマルチ検出器15−4は1つの光学系で3行3列の配列とし、収差が少ない範囲内に可能な限り多くのマルチビーム及び検出素子が入るようにしている。ステージ48−4は、逐次ステップ移動を繰り返し動作させることで、水平面内を移動される。検査方法については第1実施例と同様である。
【0126】
第2の実施例では、光学系(鏡筒)数を多くし、更に1つの光学系に、より多くのマルチビーム及び検出素子を設けたので、半導体ウエハ検査工程のスループットを更に向上させることができる。
(複数光学系(鏡筒)電子光学装置の効果)
以上詳細に説明したように本発明に係る複数光学系電子光学装置によれば、1次電子の照射及び2次電子の検出を単独で行うことができる光学系を複数設け、試料上の異なる領域を評価できるようにしたので、高分解能を維持しつつスループットを大幅に向上させることができる、という優れた効果が得られる。
マルチビーム検査装置における電子光学系の軸合わせ
上述したマルチビーム検査装置においては、その電子光学系の軸合わせが重要である。本発明では、以下のような、軸合わせの装置を備える電子ビーム検査装置を提供する。(一次光学系の軸合わせ)
図33は、本発明における軸合わせを説明するための電子光学系を示しており、その構成及び作用については、前述のマルチビーム検査装置と実質的に同じであり、それらについての説明の重複は避ける。
【0127】
この電子光学系は、前述のものと同様に、電子銃1−5、コンデンサレンズ2−5、縮小レンズ6−5、静電偏向器5−5、12−5、軸対称電極11−5及び対物レンズ9−5を含む一次光学系と、拡大レンズ14−5、15−5を含む二次光学系とを有しており、まず、一次電子光学系における軸合わせについて説明する。ここで、軸合わせとは、マルチビームの軸線と光学系の光軸とを整合させることをいう。
【0128】
一次光学系におけるレンズ、すなわち、コンデンサ・レンズ2−5、縮小レンズ6−5、対物レンズ9−5に対する軸合わせは、基本的には、それらのレンズの励起電圧を小さく変化させたとき、少なくとも2つのビーム位置の試料面上での動き量が同じ大きさになるように調整することにより行う。この場合の2つのビームとは、マルチビームの中心から等距離にあるビーム(たとえば、図に示した点を中心とする円周上のビーム)とする。
【0129】
また、対物レンズ9−5の軸合わせは次のようにして行うことができる。まず、図34に示すように、試料10−5の面上の、複数の一次電子ビームが結像する各位置(黒丸で示す)に、XラインとYラインとの組合わせからなる(各ビームの基準照射位置を示す)マーカー21−5、22−5、・・・・、2n−5を設け、各マーカーへの一次電子ビームの合焦条件を測定する。この測定は、複数の一次電子ビームをx方向に走査したときの信号のコントラストとy方向に走査したときの信号のコントラストとを少なくとも3つの対物レンズ励起電圧について行い、その測定結果を、励起電圧に対するx方向及びy方向のコントラストの変化としてグラフ化する。求めたグラフから、例えば、x方向のコントラストが最大になる励起電圧をVox、y方向のコントラストが最大になる励起電圧をVoyとすると、合焦条件は(Vox+Voy)/2となる。少なくとも2つの電子ビーム、例えば、前述のように、光軸を中心とする円の直径方向に対向する2つの電子ビームについての合焦条件の差が最小になるように、対物レンズ9の軸合わせ条件を求める。即ち合焦条件の差が最小であるという事は2つのビームか対物レンズの軸からの距離の差が最小の位置を通る事を意味している。
【0130】
以上のように、マルチビーム電子光学系での軸合わせを行うことにより、複数の一次電子ビームを用いることにより、欠陥検査やCD検査等の各種検査を、精度を落とすことなく、スループットを高めることができる、
(二次光学系の軸合わせ)
次に、二次光学系における軸合わせについて説明する。
【0131】
図35は、上記と同様のマルチビーム電子光学系を示している。図示の通り、この電子光学系の二次電子光学系は、第1の拡大レンズ、9−6、第2の拡大レンズ10−6、マルチ開口板11−6,検出器12−6、第1の偏向器19−6、第2の偏向器20−6、クロスオーバ絞り21−6を有している。
【0132】
この二次光学系の軸合わせに関し、ここでは、第2の拡大レンズ10−6と検出用マルチ開口板11−6との間のクロスオーバに絞り21−6を設けた場合について述べる。
【0133】
図35において、走査信号発生回路22−6からの信号は、偏向信号発生回路23−6から出た偏向信号に重畳され、第1の偏向器19−6および第2の偏向器20−6からなる二段偏向器へと与えられる。これらの二段偏向器19−6,20−6は、光軸に直交して設けられ、第2の拡大レンズ10−6への軸合わせを行うモードと、絞り21−6への軸合わせを行うモードとがある。これらのモードにおいては、走査信号発生回路22−6と偏向信号発生回路23−6とで、両偏向器19−6,20−6に与える信号の強度比がモード毎にあらかじめ決められた値に設定されており、それによって偏向器19−6,20−6が制御される。例えば、第2の拡大レンズ10−6の軸合わせ時には、偏向器19−6の出力が1に、偏向器20−6の出力が−1.5にされ、絞り2−61の軸合わせ時には、第2の拡大レンズ10−6の主面が偏向中心になるよう信号の強度比が決められる。
【0134】
画像処理部14−6は、偏向器19−6,20−6による絞り21−6上での電子線の走査に同期して画像を形成する。走査信号を、偏向器19−6,20−6と、画像処理部14−6の画像形成回路とに与え、マルチ検出器12−6の一つからの信号を画像データとして画像処理部14−6に与えると、画像処理部14−6の画像形成回路の走査信号に対応したアドレスのうち、絞り21−6を通った電子線に対応したアドレスにのみ検出器12−6からの強い信号が入力されるので、光軸が合っている場合、図36(a)のような絞り画像24−6が形成される。
【0135】
光軸が合っていない場合は、図36(b)のように、x,yの走査信号がゼロの場所と離れたアドレスに、信号強度が強い絞り画像25−6が形成される。そこで、偏向信号発生回路23−6の出力を変化させて偏向器19−6,20−6に供給する。すると偏向器19−6,20−6は、二次電子線B2を偏向させ、図36(a)に示すように、走査信号x,yともゼロとなるアドレスと絞りの像とを一致させることができる。このとき、軸合わせが終了したことになる。また、この状態を、絞り中心を通過したと呼ぶ。偏向信号発生回路23−6は、偏向信号発生装置と、該偏向信号発生装置の出力を変化させて偏向装置へと供給する装置とを兼ねている。
【0136】
上記の方法は、軸合わせに人を関与させず、自動的に行わせることができる。
【0137】
この電子光学系では、上記の如き軸合わせにより以下の如き効果を奏することができる。
【0138】
絞りに関する軸合わせを自動的に行うことができる。
【0139】
走査用の偏向器と軸合わせ用の偏向器とを兼用できるので、偏向器の数が半分で済む。
【0140】
マルチビームに対する軸合わせも可能となった。
【0141】
二次光学系の絞りを、E×B分離器とマルチ検出器との間に設けることにより、一次光学系の絞りとは無関係に二次光学系の絞りを決められる。
(ウィーンフィルタすなわちE×B分離器への軸合わせ)
以上で説明した検査装置における電子光学装置において用いられているE×B分離器は、試料の表面に垂直な平面内において電界と磁界とを直交させた構造となっていて、電界、磁界、電子のエネルギー及びその速度の関係が一定の条件を満たしたときには電子を直進させそれ以外のときには偏向させる作用を有するが、E×B分離器の構造上電界及び磁界が一様に分布している領域と、それらの分布が一様でない領域とが存在する。マルチビームを用いた電子線検査装置を使用して精度の良い欠陥検査を行うためには、それぞれの電子ビームについてのE×B分離器への軸合わせ、即ち、E×B分離器の電界及び磁界が一様な領域を求め、その領域にそれぞれの電子ビームを進行させるように調整を行う必要がある。
【0142】
しかしながら、E×B分離器をマルチビームによる電子線検査装置に使用する場合には、E×B分離器の電界及び磁界が一様な領域とE×B分離器を通るマルチビームの領域とが同程度にまで広い領域に亘り広がっている。従って、各電子ビームのE×B分離器への軸合わせの調整が不十分である場合には、マルチビームの内の幾つかの電子ビームは当該電界及び磁界が一様な領域から逸れてビームの特性に悪影響を及ぼし、視野の端部での歪みや像のぼけが増大する。
【0143】
本発明は、マルチビームによる電子線検査装置にE×B分離器を使用することにより生じる像の歪みやぼけを解消するため、E×B分離器へのマルチビームの軸合わせを行う方法をも提供する。
【0144】
以下図面を参照して、E×B分離器へのマルチビームの軸合わせを説明する。
【0145】
図37に示される電子線検査装置1の光学系は、上述した検査装置のものと実質的に同様の構成を有しており、第一次光学系10−7と、第二次光学系30−7と、検出装置40−7と、検査されるべき試料をX方向及びY方向に移動するX−Yステージ80−7とを備えている。第一次光学系10−7は、電子線を試料すなわちウエハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃11−7と、電子銃から放出された電子線を偏向する静電レンズ12−7と、直線状に並べられた複数の小孔(本実施形態では13a−7ないし13h−7の8個)が形成された第一のマルチ開口板13−7と、静電偏向器14−7と、第一のマルチ開口板13−7を通過したマルチビームを偏向する静電縮小レンズ15−7と、マルチビームを走査する静電偏向器16−7と、E×B分離器17−7と、静電対物レンズ18−7と、電子ビームを軸合わせするための軸合わせ装置19−7とを備え、それらは、図37に示すように電子銃11−7を最上部にして順に、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料Wに垂直になるように配置されている。なお、電子銃11−7の内部にはカソードを直線状に並べられた多数の突起形状にした突起部(本実施形態では、例えば、図37に示すように11a−7ないし11h−7の8個)が形成されている。
【0146】
第二次光学系30−7は、第一次光学系10−7のE×B分離器17−7の近くで光軸Aに対して傾斜している光軸Bに沿って配置された2つの静電拡大レンズ31−7及び32−7と、第一のマルチ開口板13−7の小孔の数及び配列に合わせて形成された複数の小孔(本実施形態では33a−7ないし33h−7の8個)が形成された第二のマルチ開口板33−7と、を備えている。
【0147】
検出装置40−7は第二のマルチ開口板33−7の各開口毎に検出器41−7を備えている。また、各検出器41−7は増幅器42−7を介して画像処理部43−7と接続され、画像処理部43−7は更に静電偏向器16−7に与えた信号と同じ信号が与えられている。
【0148】
上記各構成要素は公知のものであってもよく、それらの構造の詳細説明は省略
する。
【0149】
次に上記構成の電子線検査装置1−7の動作について説明する。
【0150】
単一の電子銃11−7の多数の突起部(11a−7ないし11h−7)からは8方向に電子線が放出される。放出された電子線Cは静電レンズ12−7で集束されてクロスオーバーC1を形成する。静電レンズ12−7で集束された電子線Cは第一のマルチ開口板13−7を照射して、第一のマルチ開口板13−7に直線状に並べて(例えばX方向に)形成された複数の小孔(13a−7ないし13h−7)を通過して8本のマルチビームにされる。これらマルチビームのそれぞれの電子ビームは、静電縮小レンズ15−7により縮小されて点50−7で示された位置に投影され、点50−7で合焦した後、静電対物レンズ18−7により試料Wに合焦される。第一のマルチ開口板13−7から出たマルチビームは静電縮小レンズ15−7と静電対物レンズ18−7の間に配置された静電偏向器16−7により、同時に試料Wの表面を走査するように偏向される。
【0151】
合焦されたマルチビームにより試料Wの8個の点が照射され、これらの照射された点から放出された二次電子は、静電対物レンズ18−7の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器17−7で偏向され、二次光学系に投入される。二次電子の像は点50−7よりも静電対物レンズに近い点51−7に結像する。これは一次のマルチビームの各々が500eVのエネルギーを有するのに対して、二次電子は数eVのエネルギーしか有していないためである。結像した二次電子は光軸Bに沿って移動されて静電拡大レンズ31−7及び32−7に入射する。これらの静電拡大レンズを通過した二次電子は第二のマルチ開口板33−7の複数の小孔(33a−7ないし33h−7)の位置に結像する。この小孔を通過した電子は対応する検出器41−7により検出される。この場合、第一のマルチ開口板13−7の小孔13a−7を通った電子ビームにより試料Wで放出された二次電子は第二のマルチ開口板33−7の小孔33a−7を通して、第一のマルチ開口板の小孔13b−7を通った電子ビームにより試料Wで放出された二次電子は第二のマルチ開口板33−7の小孔33b−7を通して、第一のマルチ開口板の小孔13c−7を通った電子ビームにより試料Wで放出された二次電子は第二のマルチ開口板32−7の小孔33c−7を通して、と言ったように、電子ビームにより試料面で放出された二次電子は第一のマルチ開口板13−7の各小孔に対応する第二のマルチ開口板33−7の各小孔を通ってそれぞれの検出器41−7に入射する。
【0152】
それぞれの検出器41−7は、検出した二次電子をその強度を表す電気信号へ変換する。各検出器から出力された電気信号は増幅器42−7によってそれぞれ増幅された後、画像処理部43−7によって受信され、画像データへ変換される。画像処理部43−7には一次の電子ビームを偏向させるための走査信号が更に供給されるので、画像処理部43−7は試料Wの表面を表す画像を表示する。この画像を標準パターンと比較することにより試料Wの欠陥を検出することができる。
【0153】
ここで、第一のマルチ開口板13−7の小孔を通過した各電子ビームを試料面に合焦させ、試料Wから放出された二次電子を検出器41−7で検出する際に、第一次光学系で生じる歪み、像面湾曲及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするように特に配慮する必要がある。
【0154】
静電偏向器16−7及びE×B分離器17−7の磁界に走査信号を印加することにより、試料Wが二次元的に走査されて、走査型電子顕微鏡信号が画像処理部43−7に表示される。試料Wの表面にはマーカ(37の+字形の記号)20−7が設けられており、このマーカ20−7の大きさは5ミクロンである一方、8本の電子ビームは相互に100ミクロン程度離れた位置に結像される。従って、マーカ20−7の像は1本の電子ビームのみで走査して画像処理部43−7に表示することができる。
【0155】
次に、複数の電子ビームの軸合わせ方法について説明する。電子ビームのE×B分離器17−7への軸合わせは軸合わせ装置19−7を用いて行われる。まず、8本の電子ビームの内で、第一のマルチ開口板13−7の一番右端の小孔13h−7により形成された電子ビームのみで試料上のマーカ20−7を走査するように、X−Yステージ80−7の位置を決定した後、静電偏向器16−7とE×B分離器17−7の磁界に走査信号を与えることによりマーカ20−7を二次元的に走査して検出器41−7で検出し、画像処理部43−7にマーカ20−7の像を表示させる。この状態で、E×B分離器17−7に印加する電圧を基準値と基準値+10ボルトで周期的に変動させる。この場合、画像処理部43−7には、図37に示されているように、相互に位置移動量44−7だけ離れた2つのマーカの像が表示される。この位置移動量44−7は、小孔13h−7を通った電子ビームがE×B分離器17−7の電圧変動により偏向された偏向量に対応する。この位置移動量44−7の値は記憶しておく。
【0156】
次に、第一のマルチ開口板13−7の一番左端の小孔13a−7により形成された電子ビームのみで試料上のマーカ20−7を走査するように、X−Yステージ80−7の位置を決定し、マーカ20−7を走査して検出器41−7で検出し、画像処理部43−7にマーカ20−7の像を表示させる。この小孔13a−7により形成された電子ビームは、第一次光学系10−7の光軸Aに対して上記小孔13h−7により形成された電子ビームとは反対側で等距離に位置しており、従って、これら2本の電子ビームは相互に最も遠い距離に位置していることとなる。この状態で、E×B分離器17−7に印可する電圧を基準値と基準値+10ボルトで周期的に変動させる。この場合も同様に、画像処理部43−7には相互に位置移動量44′−7だけ離れた2つのマーカの像が表示される。この位置移動量44′−7は、小孔13a−7を通った電子ビームがE×B分離器17−7の電圧変動により偏向された偏向量に対応する。この位置移動量44′−7の値も記憶しておく。
【0157】
更に、軸合わせ装置19−7の電圧を別の種々の値に設定し、以下、小孔13h−7を通った電子ビームと小孔13a−7を通った電子ビームについて上記と同様の操作を行い、それぞれについて位置移動量44−7および44′−7を求める。
【0158】
その後、2つの位置移動量44−7と44′−7の差が最も小さくなるような軸合わせ装置19−7の電圧値を求め、軸合わせ装置19−7をその電圧値に固定することにより、E×B分離器に入射する電子ビームの軸合わせが完了する。それにより、E×B分離器の電界及び磁界が一様な領域内に複数の電子ビームを配置することができる。
【0159】
複数の電子ビームの軸合わせの別の方法として、直線状に並んだ電子ビームに替えて、第一のマルチ開口板13−7及び第二のマルチ開口板33−7に、第一の光学系の光軸Aの周囲で当該光軸から等距離の位置に複数個(本実施形態では4個)の小孔をそれぞれ設けることにより、4本のマルチビームを形成しても良い。4本のマルチビームは全て光軸Aから等距離の位置にあるため、E×B分離器17−7の電圧を変化させたときに、これら4本のマルチビームの位置移動量が同じになるように軸合わせする必要がある。従って、8本のビームの内4本の電子ビームそれぞれについて、軸合わせ操作が必要である。
【0160】
また、4本の電子ビームが入射する位置に4個のマーカを設け、それらのマーカの像を画像処理部43−7の4個のモニターで表示して、それぞれの位置移動量44−7、44′−7を同時に測定してもよい。
【0161】
更に、画像処理部43−7を使わずに、コンピュータ制御により自動的にマーカ20−7の位置移動量を測定し、自動的に軸合わせするようにしてもよい。この場合は、マーカ20−7は+字マークよりも、X方向とY方向のライン&スペースのマーカの方が適している。
【0162】
以上の如き電子線検査装置においては、次の如き効果を奏することができる。
(1)マルチビームの各々の電子ビームをE×B分離器の電界及び磁界が一様に分布する領域内に安定的に配置し、全電子ビームを細く絞ることができる。
(2)個々の電子ビームが直線状に並んだ状態のマルチビームの場合は、第一次光学系の光軸に対して対称的に位置している2本の電子ビームのみの軸合わせ調整で足りる。
(3)E×B分離器の電界及び磁界が一様に分布する領域をマルチビームを通す余裕があるか否かを調査することができる。
(4)レンズ磁場の対称位置を探し、その方向に電子ビームを進行させる場合のウォーブラー操作と類似の操作で、E×B分離に入射する電子ビームの軸合わせを行うことができる。
マルチビームとマルチ開口板の開口との整合
マルチビームを発生させる電子銃は、高輝度を得るために指向性の強いビームを発生させる必要があるが、この指向性の強いビームをマルチ開口板に入射させて強いマルチビームを得るには、電子銃からのビーム強度の大きい領域とマルチ開口板の開口位置とを正確に一致させる必要がある。
【0163】
また、試料面のパターンの評価を効率よくおこなうためには、試料面に入射されるマルチビームの試料面における並び方向と試料面上のパターンの方向、すなわち座標軸とを正確に一致させる必要がある。 本発明は、このような視点から、ビーム発生源からマルチ開口板に入射されるビームの強い領域とマルチ開口板の開口位置とを一致させ、また、そこから得られるマルチビームの試料面上における並び方向と試料面のパターン方向とを正確に一致させることができるようにしている。
【0164】
その実施例を以下に説明する。
【0165】
図38において1−8は電子銃であり、カソード3−8と、ウェーネルト電極つまり集束電極5−8と、アノード7−8とを備えている。カソード3−8は、円錐台形のLaB6の単結晶に複数の小突起、つまり電子線放出端が円周上に並んだ形状に形成されている。ウェーネルト電極5−8は、該電極に負の深いバイアス電圧を与えると、電子銃が作るクロスオーバー9−8はカソード側に移動し、カソードの円周上の電子線放出端から放出された電子線の軌道は図の点線位置11−8から実線位置13−8の方へ移動する。逆に、ウェーネルト電極5−8に負の浅いバイアス電圧を与えると実線から点線の方へ移動する。
【0166】
アノード7−8は、通常接地されており、該アノードから出たビームはコンデンサレンズ15−8で収束され、17−8にクロスオーバーを作る。クロスオーバー17−8の電子銃側にはマルチ開口板19−8が設けられており、該マルチ開口板に照射されたビームは該マルチ開口板の開口で小さいマルチビームに整形される。
【0167】
電子銃1−8よりマルチ開口板19−8にビームを照射する際、軸合わせコイル21−8によって、マルチ開口板の中心O1と該マルチ開口板に入射される全ビームの中心02とを軸合わせする。すなわち、図39に示すように、マルチ開口板の中心O1と該マルチ開口板に入射される全ビームの中心O2とがずれていると、マルチ開口板19−8の小さな開口a1−a7と、該マルチ開口板に照射されるビームのビーム強度の大きい領域b1−b7とが一致せず、マルチ開口板19−8から出たビーム間に強度の差が出る。したがって、軸合わせコイル21−8によりマルチ開口板19−8に入射するビームの中心O2とマルチ開口板の中心O1とが一致するように全てのビームを平行移動させ、マルチ開口板の各開口a1−a7から出たビーム強度が一様になるように調整する。
【0168】
上記軸合わせコイル21−8で軸合わせ調整したマルチビームとマルチ開口板の開口との関係が図40に示してある。この図から明らかなように、マルチ開口板19−8に入射する全ビームの中心O2とマルチ開口板の中心O1とが一致しているだけではマルチ開口板に入射するビームのビーム強度の大きい領域b1−b7とマルチ開口板19−8の開口位置a1−a7とは必ずしも一致しておらず、調整が不十分であることがわかる。すなわち、マルチ開口板の開口a1−a7は、ビーム強度の大きい領域b1−b7との間に放射方向(半径方向)の位置ずれ41−4と方位角方向(周方向)のずれ43−4とがあり、マルチ開口板に入射するビームのビーム強度の余り強くない領域c1−c7内にある場合がある。そこで、本発明では、ビーム強度の大きい領域b1−b7とマルチ開口板の開口位置a1−a7とを一致させるべく、両者間の放射方向(半径方向)位置と方位角方向(周方向)とを合わせるべく調整可能とした。
【0169】
放射方向の位置合わせは、ウェーネルト電極5−8に与えるバイアス電圧を調整することによってなし得る。すなわち、ビーム強度の強い領域b1−b7を放射方向(半径方向)外側に移動させるには、ウェーネルト電極5−8に与える負の電圧を深くすればよい。逆に、ビーム強度の強い領域を放射方向内側に移動させるには、ウェーネルト電極に与える負の電圧を浅くすればよい。なお、図示例は、電子銃1−8がクロスオーバー9−8を作る場合の例であるが、電子銃がクロスオーバーを作らず発散する一方のビームを作る場合は、ウェーネルト電極5−8に与える負の電圧を浅くするとビーム強度の強い領域は放射方向外側へ移動し、逆に負の電圧を深くすると、放射方向内側へ移動する。このようにして、マルチ開口板19−8に入射するビーム強度が大きい領域b1−b7とマルチ開口板の開口a1−a7との放射方向位置が一致するように調整する。
【0170】
次に、方位角方向の合わせは、電子銃1−8とマルチ開口板19−8との間に設けた回転レンズ35−8により、マルチ開口板19−8に入射するマルチビームを光軸周りに回転させてもよく、あるいはマルチ開口板19−8に回転機構37−8を設け、マルチ開口板19−8を光軸周りに回転させてもよい。このようにして、ビーム強度の強い領域b1−b7とマルチ開口板の開口a1−a7との方位角方向を一致させることができる。
【0171】
また、マルチ開口板19−8と試料29−8との間に回転レンズ39−8を設け、マルチ開口板19−8から出たマルチビームを光軸まわりに回転調整することにより、試料面上におけるマルチビームの並び方向を試料面の座標軸(例えば、x座標)に正確に合わせることによって試料面の走査を効率よくおこなうことができる。
【0172】
なお、縮小レンズ23−8より下にはマルチビームを試料面上で走査するための偏向器が設けられていて、この偏向方向は座標軸に別途合わされている。回転レンズ39−8をこれらの偏向器より下に設けると偏向方向もずれるので、回転レンズは縮小レンズ23−8より上が良い。
【0173】
なお、図示の例では、電子銃1−8とマルチ開口板19−8との間に設けた回転レンズ35−8と、マルチ開口板19−8と試料29−8との間に設けた回転レンズ39−8と、さらに、マルチ開口板を光軸まわりに回転できる回転機構37−8とを使用しているが、マルチ開口板19−8に入射するビームのビーム強度の大きい領域b1−b7や、マルチ開口板の開口a1−a7位置、あるいは試料面上のマルチビームの並び状況等によっては、これら回転レンズ35−8,39−8と回転機構37−8とを適宜組み合わせて使用すればよい。 以上から、下記のような作用効果が得られる。
【0174】
(1) 電子銃が作る強いビームの放射方向の位置とマルチ開口板の開口の放射方向位置とを合わせることがで、これによって強力なビームを得ることができる。
【0175】
(2) 電子銃が作る強いビーム領域の光軸まわりの方位角方向を、マルチ開口板の開口の方位角方向とを合わせることができ、これによって強力なビームを得ることができる。
【0176】
(3) 試料面でのマルチビームの並び方向を試料面の座標軸に正確に合わせることができ、これによって精度高い評価をおこなうことができる。
二次電子線画像と基準画像とのずれ
これまで述べた検査装置では、一次電子線を試料表面の被検査領域に照射して取得した二次電子線の画像と、予め用意された基準画像との間に位置ずれが発生し、欠陥検出の精度を低下させるという可能性がある。この位置ずれは、一次電子線の走査領域がウエハに対してずれ、検査パターンの一部が二次電子線の検出画像内から欠落するとき、特に大きな問題となり、単にマッチング領域を検出画像内で最適化する技術だけでは対処できない。これは、特に、高精細パターンの検査では致命的欠点となり得る。
【0177】
本発明では、このような点に鑑み、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止するようにしている。
【0178】
以下、その実施例を説明する。
【0179】
図42には、本発明に係る欠陥検査装置の概略構成が示されている。
【0180】
すなわち、この欠陥検査装置では、一次電子線を放出する電子銃2−10、放出された一次電子線を集束、成形させる静電レンズ8−10、マルチ開口12−10、成形された一次電子線を半導体ウエハWに略垂直に当たるようにビームを直進させるE×B偏向器24−10、一次電子線をウエハW上に結像させる対物レンズ18−10、真空に排気可能な図示しない試料室内に設けられ、ウエハWを載置した状態で水平面内を移動可能なステージ60−10、一次電子線の照射によりウエハWから放出された二次電子線を二次電子検出器36−10に導く静電レンズ28−10、30−10、導かれた二次電子を検出する検出器36−10、及び、装置全体を制御すると共に、検出器36−10により検出された二次電子信号に基づいて検出画像を形成する画像形成回路40−6、その画像に基づいてウエハWの欠陥を検出する処理を実行する制御部42−10を含んで構成される。
【0181】
検出器36−10は、静電レンズ28−10、30−10によって集められた二次電子を電気信号に変換する。例えば、図47にその詳細を示すように、検出器36−10は、マルチビームの数に等しい検出器を有し、検出器数の二次電子信号を並列に画像形成回路40−10に出力する。40−10で形成された二次源画像は制御部42−10に送られる。
【0182】
制御部42−10は、図42に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体52−10と、本体52−10の処理結果を表示するCRT48−10と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部50−10と、を備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部16−9を構成してもよい。
【0183】
制御部本体52−10は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器36−10から受信した電気信号から形成したウエハWの二次電子画像のデジタル画像データを記憶するための二次電子画像記憶領域54−6が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しないウエハの基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部56−10が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域54−6から二次電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってウエハWの欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム58−6が格納されている。この欠陥検出プログラム58−6は、詳細を更に後述するように、基準画像記憶部56−10から読み出した基準画像と、実際に検出された二次電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を有する。このとき、CRT48−10の表示部に二次電子画像46−10を表示するようにしてもよい。
【0184】
次に、上記欠陥検査装置の作用を図44乃至図46のフローチャートを例にして説明する。
【0185】
先ず、図44のメインルーチンの流れに示すように、試料となるウエハWをステージ60−10の上にセットする(ステップ300−9)。これは、図示しないローダーに多数格納されたウエハWを一枚毎に自動的にステージ60−10にセットする形態であってもよい。
【0186】
次に、ウエハW表面のXY平面上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する(ステップ304−9)。これら画像取得すべき複数の被検査領域とは、図48に示すように、例えばウエハ検査表面34−9上に、参照番号32a−9、32b−9、...32k−9、...で示す矩形領域のことであり、これらは、ウエハの検査パターン30−9の回りで、部分的に重なり合いながら位置がずらされていることがわかる。例えば、図42に示されたように、16個の被検査領域の画像32−9(被検査画像)が取得される。ここで、図42に示す画像は、矩形の桝目が1画素(或いは、画素より大きいブロック単位でもよい)に相当し、このうち黒塗りの桝目がウエハW上のパターンの画像部分に相当する。このステップ304−9の詳細は図45のフローチャートで後述する。
【0187】
次に、ステップ34−9で取得した複数の被検査領域の画像データを記憶部54−6に記憶された基準画像データと、各々比較照合し(図3のステップ308−9)、上記複数の被検査領域により網羅されるウエハ検査面に欠陥が有るか否かが判定される。この工程では、いわゆる画像データ同士のマッチング処理を実行するが、その詳細については図46のフローチャートで後述する。
【0188】
ステップ308−9の比較結果より、上記複数の被検査領域により網羅されるウエハ検査面に欠陥が有ると判定された場合(ステップ312−9肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップ318−9)。警告の方法として、例えば、CRT48−10の表示部に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像46−10を表示してもよい。このような欠陥ウエハを直ちに試料室3−9から取り出し、欠陥の無いウエハとは別の保管場所に格納してもよい(ステップ319−9)。
【0189】
ステップ308−9の比較処理の結果、ウエハWに欠陥が無いと判定された場合(ステップ312−9否定判定)、現在試料となっているウエハWについて、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップ314−9)。検査すべき領域が残っている場合(ステップ314−9肯定判定)、ステージ60−10を駆動し、これから検査すべき他の領域が一次電子線の照射領域内に入るようにウエハWを移動させる(ステップ316−9)。その後、ステップ302−9に戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
【0190】
検査すべき領域が残っていない場合(ステップ314−9否定判定)、或いは、欠陥ウエハの抜き取り工程(ステップ319−9)の後、現在試料となっているウエハWが、最終のウエハであるか否か、即ち図示しないローダーに未検査のウエハが残っていないか否かが判定される(ステップ320−9)。最終のウエハでない場合(ステップ320−9否定判定)、検査済みウエハを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のウエハをステージ60−10にセットする(ステップ322−9)。その後、ステップ302−9に戻って当該ウエハに関して同様の処理を繰り返す。最終のウエハであった場合(ステップ320−9肯定判定)、検査済みウエハを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
【0191】
次に、ステップ304−9の処理の流れを図45のフローチャートに従って説明する。
【0192】
図45では、先ず、画像番号iを初期値1にセットする(ステップ330−9)。この画像番号は、複数の被検査領域画像の各々に順次付与された識別番号である。次に、セットされた画像番号iの被検査領域について画像位置(Xi,Yi)を決定する(ステップ332−9)。この画像位置は、被検査領域を画定させるための該領域内の特定位置、例えば該領域内の中心位置として定義される。現時点では、i=1であるから画像位置(X1,Y1)となり、これは例えば図7に示された被検査領域32a−9の中心位置に該当する。全ての被検査画像領域の画像位置は予め定められており、例えば制御部16−9のハードディスク上に記憶され、ステップ332−9で読み出される。
【0193】
次に、図42の対物レンズ18−10を通過する一次電子線がステップ332−9で決定された画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域に照射されるように、偏向制御器42−10が偏向電極22−10と24−10に電位を加える(図45のステップ334−9)。
【0194】
次に、電子銃2−10から一次電子線を放出し、静電レンズ4−6、14−10、E×B偏向器24−10、対物レンズ18−10及び偏向電極22−10と24−10を通して、セットされたウエハW表面上に照射する(ステップ336−9)。このとき、一次電子線は、偏向電極22−10と14−10の作り出す電場によって偏向され、ウエハ検査表面34−9上の画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域全体に亘って走査される。画像番号i=1の場合、被検査領域は32a−9となる。
【0195】
一次電子線が走査された被検査領域からは二次電子が放出される。そこで、発生した二次電子線を静電レンズ28−10と30−10により検出器36−10に結像させる。検出器36−10は、集収された二次電子線を検出し、検出素子毎の電気信号を出力し、画像形成回路40−6でデジタル画像データに変換出力する(ステップ338−9)。そして、検出した画像番号iのデジタル画像データを二次電子画像記憶領域54−6に転送する(ステップ340−9)。
【0196】
次に、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ342−9)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAX、を越えているか否かを判定する(ステップ344−9)。このiMAXは、取得すべき被検査画像の数であり、図42の上述した例では、「16」である。
【0197】
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ344−9否定判定)、再びステップ332−9に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像位置(Xi+1,Yi+1)を再び決定する。この画像位置は、前のルーチンで決定した画像位置(Xi,Yi)からX方向及び/又はY方向に所定距離(ΔXi,ΔYi)だけ移動させた位置である。図7の例では、被検査領域は、(X1,Y1)からY方向にのみ移動した位置(X2,Y2)となり、破線で示した矩形領域32b−9となる。なお、(ΔXi,ΔYi)(i=1,2,...iMAX)の値は、ウエハ検査面34−9のパターン30−9が検出器36−10の視野から実際に経験的にどれだけずれるかというデータと、被検査領域の数及び面積から適宜定めておくことができる。
【0198】
そして、ステップ332−9乃至342−9の処理をiMAX個の被検査領域について順次繰り返し実行する。これらの被検査領域は、図7に示すように、k回移動した画像位置(Xk,Yk)では被検査画像領域32k−9となるように、ウエハの検査面34−9上で、部分的に重なり合いながら位置がずらされていく。このようにして、図42に例示した16個の被検査画像データが画像記憶領域8−9に取得される。取得した複数の被検査領域の画像32−9(被検査画像)は、図42に例示されたように、ウエハ検査面34−9上のパターン30−9の画像30a−9を部分的若しくは完全に取り込んでいることがわかる。
【0199】
インクリメントした画像番号iがiMAXを越えた場合(ステップ344−9肯定判定)、このサブルーチンをリターンして図44のメインルーチンの比較工程(ステップ308−9)に移行する。
【0200】
なお、ステップ340−9でメモリ転送された画像データは、検出器36−10により検出された各画素毎の二次電子の強度値(いわゆるベタデータ)からなるが、後段の比較工程(図44のステップ308−9)で基準画像とマッチング演算を行うため、様々な演算処理を施した状態で記憶領域58−6に格納しておくことができる。このような演算処理には、例えば、画像データのサイズ及び/又は濃度を基準画像データのサイズ及び/又は濃度に一致させるための正規化処理や、所定画素数以下の孤立した画素群をノイズとして除去する処理などがある。更には、単純なべたデータではなく、高精細パターンの検出精度を低下させない範囲で検出パターンの特徴を抽出した特徴マトリクスにデータ圧縮変換しておいてもよい。このような特徴マトリクスとして、例えば、M×N画素からなる2次元の被検査領域を、m×n(m<M,n<N)ブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の二次電子強度値の総和(若しくはこの総和値を被検査領域全体の総画素数で割った正規化値)を、各マトリックス成分としてなる、m×n特徴マトリックスなどがある。この場合、基準画像データもこれと同じ表現で記憶しておく。本発明の実施例でいう画像データとは、単なるべたデータは勿論のこと、このように任意のアルゴリズムで特徴抽出された画像データを包含する。
【0201】
次に、ステップ308−9の処理の流れを図46のフローチャートに従って説明する。
【0202】
先ず、制御部42−10のCPUは、基準画像記憶部54−6(図42)から基準画像データをRAM等のワーキングメモリ上に読み出す(ステップ350−9)。この基準画像は、図42では参照番号46−10で表される。そして、画像番号iを1にリセットし(ステップ352−9)、記憶領域8−9から画像番号iの被検査画像データをワーキングメモリ上に読み出す(ステップ354−9)。
【0203】
次に、読み出した基準画像データと、画像iのデータとをマッチングして、両者間の距離値Diを算出する(ステップ356−9)。この距離値Diは、基準画像と、被検査画像iとの間の類似度を表し、距離値が大きいほど基準画像と被検査画像との差異が大きいことを表している。この距離値Diとして類似度を表す量であれば任意のものを採用することができる。例えば、画像データがM×N画素からなる場合、各画素の二次電子強度(又は特徴量)をM×N次元空間の各位置ベクトル成分とみなし、このM×N次元空間上における基準画像ベクトル及び画像iベクトル間のユークリッド距離又は相関係数を演算してもよい。勿論、ユークリッド距離以外の距離、例えばいわゆる市街地距離等を演算することもできる。更には、画素数が大きい場合、演算量が膨大になるので、上記したようにm×n特徴ベクトルで表した画像データ同士の距離値を演算してもよい。
【0204】
次に、算出した距離値Diが所定の閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップ358−9)。この閾値Thは、基準画像と被検査画像との間の十分な一致を判定する際の基準として実験的に求められる。
【0205】
距離値Diが所定の閾値Thより小さい場合(ステップ358−9肯定判定)、当該ウエハWの当該検査面34−9には「欠陥無し」と判定し(ステップ360−9)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像のうち1つでも基準画像と略一致したものがあれば、「欠陥無し」と判定する。このように全ての被検査画像とのマッチングを行う必要が無いので、高速判定が可能となる。図42の例の場合、3行3列目の被検査画像が、基準画像に対して位置ずれが無く略一致していることがわかる。
【0206】
距離値Diが所定の閾値Th以上の場合(ステップ358−9否定判定)、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ362−9)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ364−9)。
【0207】
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ364−9否定判定)、再びステップ354−9に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像データを読み出し、同様の処理を繰り返す。
【0208】
画像番号iが一定値iMAXを越えた場合(ステップ364−9肯定判定)、当該ウエハWの当該検査面34−9には「欠陥有り」と判定し(ステップ366−9)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像の全てが基準画像と略一致していなければ、「欠陥有り」と判定する。
【0209】
上記実施例では、画像データ同士のマッチングを行う際に、画素間のマッチング及び特徴ベクトル間のマッチングのいずれかとしたが、両者を組み合わせることもできる。例えば、最初、演算量の少ない特徴ベクトルで高速マッチングを行い、その結果、類似度の高い被検査画像については、より詳細な画素データでマッチングを行うという2段階の処理によって、高速化と精度とを両立させることができる。
【0210】
また、本発明では、被検査画像の位置ずれを一次電子線の照射領域の位置ずらしのみで対応したが、マッチング処理の前若しくはその間で画像データ上で最適マッチング領域を検索する処理(例えば相関係数の高い領域同士を検出してマッチングさせる)と本発明とを組み合わせることもできる。これによれば、被検査画像の大きな位置ずれを本発明による一次電子線の照射領域の位置ずらしで対応すると共に、比較的小さな位置ずれを後段のデジタル画像処理で吸収することがまた、図44のフローチャートの流れも、これに限定されない。例えば、ステップ312−9で欠陥有りと判定された試料について、他の領域の欠陥検査は行わないことにしたが、全領域を網羅して欠陥を検出するように処理の流れを変更してもよい。また、一次電子線の照射領域を拡大し1回の照射で試料のほぼ全検査領域をカバーできれば、ステップ314−9及びステップ316−9を省略することができる。
【0211】
以上のようにすることにより、試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得し、これらの被検査領域の画像と基準画像とを比較することによって、試料の欠陥を検査するようにしたので、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止できる、という優れた効果が得られる。
照射ポイントの設計ポイントからのずれの修正
上述した図42の検査装置においては、また、次のような点の改良も行われるようにしている。すなわち、ステージ上に向けて照射される前記複数の1次電子ビームの位置、姿勢(回転状態)、又は1次電子ビーム間距離に関して、設計値との間にずれが生じている場合に、適切な検査ができなくなるので、そのような設計値との間にずれが生じている場合に、当該ずれを較正ないしは修正できるようにするということである。
【0212】
説明の都合上、重複するが、図42に示す装置の概略を先ず説明する。電子銃2−10から放出された電子線は、コンデンサ・レンズ4−10によって集束されて点6−10においてクロスオーバを形成する。
【0213】
コンデンサ・レンズ4−10の下方には、複数の開口を有する第1のマルチ開口板8−10が配置され、これによって光軸10−10を有する複数の1次電子ビーム12−10が形成される。
【0214】
第1のマルチ開口板8−10によって形成された複数の1次電子ビーム12−10のそれぞれは、縮小レンズ14−10によって縮小されて点16−10に投影される。点16−10で合焦した後、対物レンズ18−10によって試料20−10に合焦される。第1のマルチ開口板8−10から出た複数の1次電子ビーム12−10は、縮小レンズ14−10と対物レンズ18−10との間に配置された走査装置としての偏向器22−10により、同時に試料20−10の面上を走査するよう偏向される。なお、複数の1次電子ビーム12−10の走査は、偏向器22−10だけで行ってもよいが、偏向器22−10と後述するE×B分離器とを用いて行っても良い。
【0215】
縮小レンズ14−10及び対物レンズ18−10の像面湾曲収差の影響を無くすため、図49に示すように、マルチ開口板8−10には、9つの小開口8a−10ないし8i−10が円周方向に沿って配置されており、そのX方向への投影したものは等間隔となる構造となっている。マルチ開口板8−10の小開口8a−10ないし8i−10を通過した1次電子ビーム12−10は、小開口8a−10ないし8i−10の配置構造にしたがって、円周方向に沿った9つのビーム12a−10ないし12i−10となる(図50参照)。本実施態様においては、小開口を円周方向に沿って配置したがこのように円周方向に配置する必要はかならずしもなく、直線方向に沿って配置してもよい。また、小開口の数を9つとしたが、少なくとも2つあればよい。
【0216】
合焦された複数の1次電子ビーム12−10によって、試料20−10上では複数の点が照射される。照射されたこれらの複数の点から放出される2次電子ビームは、対物レンズ18−10の電界に引かれて細く集束され、分離装置としてのE×B分離器24−10で偏向され、これによって、1次電子ビームを試料20−10に照射するための1次光学系から離れて、2次光学系に投入される。
【0217】
なお、図42において、17−10は軸合せ偏向器を示しており、19−10は軸対称電極を示している。また、複数の1次電子ビーム12−10を回転させることができる回転レンズ23−10が、電子ビーム形成装置の一部を構成するマルチ開口板8−10と分離装置としてのE×B分離器24−10との間に設けられている。より具体的に説明すれば、回転レンズ23−10は、本実施態様においては点6−10の近傍に設けられている。回転レンズ23−10は、当該回転レンズ23−10のコイルに流す励磁電流の強さに応じて複数の1次電子ビーム12−10を光軸の回りに回転させることができる。
【0218】
2次光学系は拡大レンズ28−10、30−10を有しており、これらの拡大レンズ28−10、30−10を通過した2次電子ビームは、第2マルチ開口板34−10の複数の開口34a−10ないし34i−10に結像する。そして、マルチ開口を通って複数の検出器36a−10ないし36i−10で検出される。第2のマルチ開口板34−10は検出器36a−10ないし36i−10の前に配置されている。開口34a−10ないし34i−10は、第2のマルチ開口板34−10の円周方向に沿って形成されており、第1のマルチ開口板8−10に形成された複数の開口8a−10ないし8i−10と一対一に対応している。この関係を示すために、図49では、第2マルチ開口板34−10の開口34a−10ないし34i−10が点線で示されている。検出器36a−10ないし36i−10は、第2マルチ開口板34−10の開口34a−10ないし34i−10に対向して配置されており、したがって、第2マルチ開口板34−10の開口34a−10ないし34i−10と同様に円周方向に沿って設けられている(図42では、図示の便宜上、検出器36a−10ないし36i−10は概略的に示されている)。
【0219】
各検出器36a−10ないし36i−10は、検出した2次電子ビームを、その強度を表す電気信号へ変換する。こうした各検出器から出力された電気信号は増幅器38−10によってそれぞれ増幅された後、画像処理部40−10によって受信され、画像データへ変換される。画像処理部40−10には、偏向器22−10に与えられた1次電子ビームを偏向させるための走査信号と同じ信号が制御装置42−10により供給される。画像処理部40−10は、走査信号の位置データと2次電子信号の濃淡信号とから前記画像データを合成して、試料20−10の被走査面を表す画像を構成ないしは表示することができる。
【0220】
画像処理部40−10は、制御装置42−10とデータ通信可能に接続される。制御装置42−10は、図42に示されたように、一例として汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体44−10と、この処理結果や2次電子画像46−10等を表示するCRT48−10と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部50−10と、を備えている。勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御装置42−10を構成してもよい。
【0221】
制御部本体44−10は、図示しないCPU、RAM、ROM、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成されている。制御部本体44−10には、記憶装置52−10が接続されている。記憶装置52−10は、例えば、ハードディスクから構成することができる。記憶装置52−10上には、画像処理部40−10から受信した試料20−10の2次電子画像データを記憶するための2次電子画像記憶領域54−10、予め欠陥の存在しない試料の基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部56−10が割り当てられている。更に、記憶装置52−10上には、電子線装置全体を制御する制御プログラム、試料の評価プログラム、試料に向けて照射される複数の1次電子ビームの位置、姿勢(回転状態)、又は電子ビーム間距離に関して、設計値との間にずれが生じている場合に、当該ずれを較正ないしは修正するための制御プログラム58−6が格納されている。この1次電子ビームのずれを較正する制御方法に関しては詳細を後述するが、当該較正は試料の評価を行う前に実行され、これによって、1次電子ビームの初期設定がなされる。
【0222】
2次電子画像記憶領域54−10に記憶された試料20−10の被走査面を表す画像データは、基準画像記憶部56−10に記憶された予め欠陥の存在しない試料の基準画像データと比較され、これにより、試料20−10の欠陥を検出するようになっている。また、後述する較正(すなわち、レジストレーション)により試料20−10の被評価パターンを1次光学系の光軸10−10の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜に較正することにより、試料20−10上のパターンの線幅を測定することもできる。
【0223】
ステージ60−10のX方向端部にはレーザミラーすなわちレーザ反射鏡62−10が設けられており、移動鏡を構成する。対物レンズには固定鏡が配置されている。レーザ発振器64−10からのレーザービームを固定鏡で反射させたビームと移動鏡と固定鏡で反射させたビームとを干渉させることにより、固定鏡と移動鏡の距離を常時測定し、測定信号を制御装置42−10に送信することによって、ステージ60−10のX方向の位置を測定することができるようになっている。また、ステージ60−10のY方向端部にも図示しないレーザ移動鏡と対物レンズにY方向測定用の固定鏡が設けられており、同様に、ステージ60−10の外側に位置決めして設けられたレーザ発振器(図示せず)からのレーザービームを2つの反射鏡で反射させた時の干渉により、ステージ60−10のY方向の位置を測定することができるようになっている。
【0224】
ステージ60−10の一端側には、マーカ台66−10が設けられており、マーカ台66−10の表面は、XY座標面(図50参照)を構成している。図50に示されているように、マーカ台66−10には、ビーム位置測定用のマーカ66a−10、66e−10が設けられている。マーカ66a−10、66e−10はX軸方向に沿ってほぼ平行に設けられており、X軸との平行度はあらかじめ測定され装置定数として制御装置42−10の記憶装置52−10に記憶されている。なお、図50では、マーカ66a−10、66e−10間の中心が点Oとして表されている。
【0225】
上述したステージ駆動装置を用いてステージ60−10をX及びY方向に移動し、1次電子ビーム12−10がマーカ台66−10の表面を照射することができる位置までステージ60−10を移動することができる。このとき、1次電子ビーム12−10によりマーカ台66−10の表面上に周方向に沿った複数の照射ポイント12a−10ないし12i−10が形成される(すなわち、マーカ台66−10の表面上には、図50に示されるように、1次電子ビーム12a−10ないし12i−10が形成される)。マーカ66a−10、66e−10間の距離は、マーカ検出時の走査幅より小さくなるように形成されている。これにより、1つの1次電子ビームが2つのマーカを同一走査で照射する事がない。また、一次ビームと検出器はきちんと対応が取れているので、他の1次電子ビームがマーカを走査した時に発生する信号と間違える事はない。
【0226】
次に1次電子ビームの較正方法について図51ないし図53(c)に基づいて説明する。
【0227】
まず、ステージ駆動装置を用いてステージ60−10を駆動してマーカ台66−10を光軸の下に移動し、光軸10−10とマーカ66a−10,66e−10間の中心点Oとの位置合わせ行う(図51のステップ68−10)。この位置合わせは所定の誤差の範囲に収まるようにすればよい。例えば、1次電子ビームをX及びY方向に所定範囲だけ走査し、照射ポイント12a−10及び12e−10を形成するX軸上にある1次電子ビーム12a−10、12e−10により、マーカ66a−10、66e−10が検出されるのを確認することによって行うことができる。このようにして、光軸10−10とマーカ台66−10との間の位置合わせが行われたときに、例えば、図52(a)に示されているように、1次電子ビーム12a−10、12e−10はマーカ66a−10、66e−10の近傍に照射される。これによって、1次電子ビーム12a−10、12e−10の所定範囲のX及びY方向の走査により、1次電子ビーム12a−10、12e−10はマーカ66a−10−1、66e−10を横切ることが可能となる。図52(a)に示されている例では、マーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10の照射ポイントまでの距離は、X方向及びY方向の両方向において、マーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10の照射ポイントまでの距離よりも長くなっている。すなわち、これらの例においては、マーカ66a−10、66e−10から1次電子ビーム12a−10、12e−10の照射ポイントまでの距離が、予測値に対する複数の1次電子ビームのずれ(すなわち、マルチビームのずれ)を表している。
【0228】
また、上記のように、光軸10−10とマーカ台66−10との間の位置合わせが行われたとき、レーザ反射鏡62−10及びレーザ測長器64−10を用いてステージ60−10の位置を算出し、この位置情報をマーカ位置の装置定数として記憶装置52−10に記憶させる。通常、上記のような光軸10−10とマーカ台66−10との間の位置合わせは、電子線装置の初期設定として一度行うだけでよい。また、上記のような位置合わせに基づいて測定されたマーカ位置の装置定数は、後述する較正処理に基づいて更新される。
【0229】
次に、1次電子ビーム相互の位置の測定を行う。なお、本実施態様においては、マーカ台にマーカを2つ設け、2つのマーカ66a−10、66e−10の付近に照射ポイントを形成する2つの電子ビーム12a−10、12e−10を前記マーカを横切るように走査することによって、1次電子ビーム相互の位置の測定を行っている。このような本実施態様の内容を明瞭にするために、図52ないし図53(c)においては他の電子ビームb−d、f−iが省略されている。
【0230】
まず、記憶装置に記憶させられた制御プログラム58−10の指示にしたがって、制御装置42−10が偏向器22−10を制御して、図52(a)に示されているように電子ビーム12a−10、12e−10をマーカ66a−10、66e−10に向けてX方向に走査する(図51のステップ70−10)。このとき、1次電子ビーム12e−10が先にマーカ66e−10を横切り、次いで、1次電子ビーム12a−10がマーカ66a−10を横切るので、図53(a)に示されているように、1次電子ビーム12e−10と関係する検出器36e−10からまず信号90−10が出力され、次に、1次電子ビーム12a−10と関係する検出器36a−10から信号92−10が出力される。図53(a)の横軸は時間を表しており、縦軸は信号強度を表している。1次電子ビームのX方向の走査速度(μm/μsec)はあらかじめわかっているので、2つの信号90−10、92−10が出力される時間から、X方向におけるマーカ66a−10と1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)との間の距離と、X方向におけるマーカ66e−10と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間の距離を算出することができる。もちろん、2つの信号90−10、92−10の間の時間から、1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間の距離を算出することもできる。
【0231】
次に、2つの信号90−10、92−10の間の時間差を算出し、この時間差が設計値の許容誤差の範囲内にあるか否か判断する(図51のステップ72−10:当該ステップ72−10が測定装置を構成している)。許容誤差の範囲内にない場合、制御装置42−10の指示により、図42に示した中間レンズ14−10と対物レンズ18−10をズーム動作、即ち物点位置8−10と像点位置20−10を変えないで縮小率を変化させる(図51のステップ74−10:当該ステップ74−10が2段レンズ制御装置を構成している)。これによって、マーカ66a−10に対する1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)のX方向の位置と、マーカ66e−10に対する1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)のX方向の位置とを変えることができる。このようにして、ステップ70−10、72−10及び74−10を繰り返し、信号90−10の波形と信号92−10の波形がほぼ同じ時間に現れる様に調節される。これによって、マーカ台66−10上での、X方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離と、X方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離とをほぼ等しくできる(図52(b)参照)。そして、2つの信号90−10、92−10の間の時間差が許容誤差の範囲内にあると判断された場合、このときの中間レンズ14−10と対物レンズ18−10の励起電圧が記憶装置52−10に記憶される(ステップ73−10)。
【0232】
次に、記憶装置52−10に記憶させられた制御プログラム58−10の指示にしたがって、制御装置42−10が偏向器22−10を制御して、図52(b)に示されているように電子ビーム12a−10、12e−10をマーカ66a−10、66e−10に向けてY方向に走査する(図51のステップ76−10)。このとき、1次電子ビーム12e−10が先にマーカ66e−10を横切り、次いで、1次電子ビーム12a−10がマーカ66a−10を横切るので、図53(b)に示されているように、1次電子ビーム12e−10に対応する検出器36e−10からまず信号94−10が出力され、次に、1次電子ビーム12a−10に対応する検出器36a−10から信号96−10が出力される。図53(b)の横軸は時間を表しており、縦軸は信号強度を表している。1次電子ビームのY方向の走査速度(μm/μsec)もあらかじめわかっているので、2つの信号90−10、92−10が出力される時間から、Y方向におけるマーカ66a−10と1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)との間の距離と、Y方向におけるマーカ66e−10と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間の距離を算出することができる。
【0233】
次に、2つの信号94−10、96−10の間の時間差を算出し、この時間差が設計値の許容誤差の範囲内にあるか否か判断する(図51のステップ78−10)。許容誤差の範囲内になく、図53(b)の様に信号94−10が先に出現する場合、図52(b)の矢印で示されているように、1次電子ビームは、中心点Oを中心として反時計方向に回転している。このようなずれ場合、制御装置42−10が図42に示した回転レンズ23−10に供給される励磁電流の強さを調整して(図51のステップ80−10)、1次電子ビームを時計方向に回転させ、ステップ76−10、78−10及び80−10を繰り返して、信号94−10と信号96−10が許容値以内に同時に出現するようにする。これによって、マーカ台66−10上での、Y線方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離と、Y線方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離とをほぼ等しくできる。換言すれば、マーカ66a−10とマーカ66e−10との間に引かれるラインと、1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間に引かれるラインとが、ほぼ平行となる(すなわち、回転誤差が生じない状態となる)。そして、2つの信号94−10、96−10の間の時間差が許容誤差の範囲内にあると判断された場合、このときの回転レンズ23−10の電流量が記憶装置52−10に記憶される(ステップ79−10)。
【0234】
以上のようにステップ68−10から80−10までの較正処理を行うことによって、図52(c)に示されているように、マーカ台66−10上での、X方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離xaと、X方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離xeとがほぼ等しくなると共に、マーカ台66−10上での、Y線方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離yaと、Y線方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離yeとがほぼ等しくなる。
【0235】
最後に光軸の位置とマーク位置の位置合わせ量を以下に示すように算出あるいは測定する。
【0236】
上述した較正処理から、X方向へ走査した時に、信号90−10と信号92−10はほぼ同時に出力されると共に、Y方向へ走査した時に、信号94−10と信号96−10もほぼ同時に出力されるようになる。したがって、このことは、図53(c)に示されるように、信号90−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧と信号92−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧とが等しく、また、信号94−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧と信号96−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧も等しいということを意味している。一方、前述したように、信号90−10と信号92−10がほぼ同時に出力されるときのレンズ14−10と18−10の励起電圧と信号94−10と信号96−10がほぼ同時に出力されるときの回転レンズ23−10の励起電流が記憶されている(図51のステップ73−10、79−10)。また、偏向器22−10の偏向感度(μm/mV)が記憶装置52−10に記憶されている。よって、この既知の偏向感度(μm/mV)から、X方向へ走査した時の前記偏向電圧に基づいて、1次電子ビームとマーカの位置がX方向に何μmずれているか(すなわち、xa及びxeの距離)を算出し、また、Y方向に走査した時の前記偏向電圧に基づいてビームとマーカの位置がY方向に何μmずれているか(すなわち、ya及びyeの距離)を算出する(図51のステップ84−10)。これらのずれ値を、レーザ干渉計により測定され且つ記憶装置に記憶されているステージ位置データに加算することによって、新しいマーカ位置の装置定数を更新する(図51のステップ86−10)。
【0237】
図52(a)(b)及び図53(a)(b)に示した測定ではステージが振動していても測定誤差を与えない。図52(c)及び図53(c)に示した測定でも、測定を行った時刻でのレーザ測長器の読みに偏向感度から算出した寸法を加算するのであるからステージの振動は誤差にならない。このことから図52(c)及び図53(c)に示した測定はステージの走行中に測定を行ってもよい。
【0238】
上記実施態様によれば、最小線幅0.1μm以下のパターンを有する半導体ウエハを、高スループット且つ高信頼性で評価を行うことが可能になる。また、複数の1次電子ビーム(マルチビーム)のビーム間隔、回転、ビームとマーカ間の位置を、ステージの振動の影響を受けることなく測定ができる。さらに、1次電子ビームをマーカ台のXY座標に正確に合わせられるので、画像形成時に複雑な演算を行わなくてよい。
【0239】
上記較正方法は、記憶装置に記憶されたプログラムにしたがって制御装置を制御することによって行われるが手動により画像情報を目視しながら行ってもよい。
【0240】
なお、本実施態様においては、1次電子ビームの数を9つとして、そのうち2つのビームを利用して較正処理する方法を説明したが、較正処理するためには1次電子ビームの数は少なくとも2つあればよい。
【0241】
以上のように本願発明によれば、位置測定用マーカに対する照射ポイントの位置ずれを測定し、位置ずれを測定した場合に当該位置ずれに基づいて、複数の1次電子ビームの照射ポイントを較正するようにしたので、ステージ上に向けて照射される複数の電子ビームの位置、姿勢(回転状態)、又は電子ビーム間距離に関して、設計値との間にずれが生じている場合でも、高分解能、高スループットで試料の欠陥を検出することができる。
収差の補正(クロスオーバ位置の調整)
前述の如き電子線検査装置においては、対物レンズの近傍に形成されるクロスオーバ位置を調整するのに、従来は、アパーチャを配置し、該アパーチャを光軸方向に移動させながらビーム径を測定し、測定されたビーム径が最小になる位置をクロスオーバ位置として行っている。
【0242】
しかしながら、この調整方法は、アパーチャが、それに隣接するレンズの特性に影響を与え、その特性が大幅に異なってしまい、設計通りのレンズ特性を得ることができなくなってしまうという問題がある。
【0243】
一方、複数の電子線の全てあるいはその一部は、光軸から離れた位置を通るため、クロスオーバ位置は、像歪み、倍率色収差、回転色収差、像面湾曲収差、視野非点等の収差に影響を与え、特に、倍率色収差、回転色収差への影響は大きい。
【0244】
本発明は、上述のような点に鑑み、レンズ特性に影響を及ぼさないように、対物レンズの近傍に形成されるクロスオーバ位置の調整を行うことができ、それにより収差の補正を行うことができるようにすることも目的としている。
【0245】
以下、本発明におけるクロスオーバ位置の調整につき説明する。
【0246】
図54は、この調整の説明のための電子光学系の概略図であり、実質的には、これまで説明してきた電子光学系と同じものである。
【0247】
この電子光学系において、第1のマルチ開口板3−11によって形成される複数の一次電子線20−11のそれぞれは、縮小レンズ5−11によって縮小されて点15−11に投影される。点15−11で合焦した後、対物レンズ7−11によって試料Wに合焦される。また、複数の一次電子線20−11は、縮小レンズ5−11によって集束されて点24−11においてクロスオーバを形成する。このクロスオーバ位置24−11は、対物レンズ7−11の近傍にあり、より具体的には、後述するE×B分離器6−11と対物レンズ7−11との間に位置する。このZ方向の位置を調整することにより倍率と回転の色収差、歪み、ランディング角、コマ収差のうち一つをほとんど0にできる。
【0248】
図54において、符号17−11は軸合わせ偏向器を示しており、符号18−11は軸対称電極を示している。また、複数の一次電子線20−11を回転させることができる回転レンズ22−11が、電子線形成装置の一部を構成するマルチ開口板3−11と分離装置としてのE×B分離器6−11との間に設けられている。より具体的に説明すると、回転レンズ22−11は、点4−11の近傍に設けられている。回転レンズ22−11は、回転レンズ22−11のコイルに流す励磁電流の強さに応じて複数の一次電子線20−11を光軸の回りに回転させることができる。
【0249】
試料Wは、ステージ60−11に載置されている。ステージ60−11は、図示しないステージ駆動装置によりX方向(図54において左右方向)、Y方向(図54の面に対して直交する方向)、及びZ軸線方向(図54において上下方向)に移動できるようになっている。
【0250】
参照番号31−11は、レーザ発振器を示しており、レーザ発振器31−11は、レーザ光を発振する。発振されたレーザ光は、ハーフミラー61−11により2ビームに分割される。ハーフミラー61−11を透過した一方のビームは、ステージ60−11のX方向端部に設けられた移動鏡40−11に到達し、他方のビームは、全反射ミラー62−11で反射されて、対物レンズ7−11に設けられた固定鏡39−11に到達し、各々反射される。移動鏡40−11で反射されたビームは、ハーフミラー61−11を透過してレシーバー63−11に導かれ、固定鏡39−11で反射されたビームは、全反射ミラー62−11及びハーフミラー61−11で再び反射されてレシーバー63−11に導かれる。レシーバ63−11には、移動鏡40−11及び固定鏡39−11からの反射ビームの干渉光が検出される。検出信号は、CPU32−11に送信され、CPU32−11によって、移動鏡40−11及び固定鏡39−11間のX方向及びY方向の距離、すなわち、ステージ60−11のXY座標位置が検出される。また、ステージ60−11上には、図示しないマーカが設けられており、上記ステージ駆動装置によりステージ60−11をX方向及びY方向に移動させ、一次電子線20−11がマーカの表面を走査することができる位置までステージ60−11を移動することができる。
【0251】
従って、一次電子線20−11がマーカ上を走査することによって、ビーム位置を検出することができる。CPU32−11は、電子銃1−11のカソード30−11のカソード電源25−11と接続されており、CPU32−11の制御によって、カソード30−11に印可する電圧を、数10〜数100Vで周期的に変化させて、この変化させたときのビーム位置をCPU32−11によって検出することにより、ビームの移動を測定することができる。すなわち、カソード30−11に印可する電圧を、数10〜数100Vで周期的に変化させて、試料W上における複数の一次電子線20−11の放射方向又は光軸を中心とする回転方向への移動を測定することができる。この電圧を変えることはビームエネルギーを変化させることに対応する。放射方向又は回転方向への移動が最小になることは、倍率の色収差又は回転の色収差が最小になることを意味する。
【0252】
そして、この一次電子線20−11の移動が最小になるように、CPU32−11によって上記調整を行うことにより、対物レンズ7−11の近傍において複数の一次電子線20−11が形成するクロスオーバ位置24−11の光軸方向の調整を行うことができる。この結果、倍率の色収差又は回転の色収差を最小にするクロスオーバ24−11のZ方向位置が測定されたことになる。この調整は、対物レンズ7−11の軸合わせを行った後に行うことが好ましい。対物レンズ7−11の軸合わせは、偏向器21−11に軸合わせ電源電圧を重畳させて行うことができる。
【0253】
前述したように、従来においては、アパーチャを用いてクロスオーバ位置の調整を行っていたため、電子光学レンズ特性に影響を与え、その特性が大幅に異なってしまうとい問題があったが、上記実施の形態によれば、カソード30−11に印可する電圧を変化させて、試料W上における複数の一次電子線20−11の上記移動が最小になるように調整することにより、対物レンズ7−11の近傍において複数の一次電子線20−11が形成するクロスオーバ位置24−11の光軸方向の調整を行っているため、レンズ特性に影響を及ぼさないように上記調整を行うことができる。
【0254】
また、上述のようにして、対物レンズ7−11の近傍において複数の一次電子線20−11が形成するクロスオーバ位置24−11の光軸方向の調整を行うことにより、像歪み、倍率色収差、回転色収差、コマ収差、視野非点等の収差のうちのいずれか一つを補正することができると共に、ランディング角を補正することができる。また、前述の如く、図8等に示すような開口板を用いた場合には、像歪み及び像面湾曲収差は問題なく、視野非点やランディング角も影響はないので、倍率色収差及び回転色収差を補正すればよい。また、この場合において、対物レンズ7−11として静電レンズを用いた場合には、回転色収差は関係ないため、倍率色収差のみを補正すればよい。また、倍率色収差を補正することにより、一次電子線(マルチビーム)の数を多くすることができ、ウエハやマスクなどの試料の評価を高スループットで行うことができる。
ノイズの低減
本発明に係る電子線検査装置においては、高い信頼性で検査を行うにはピクセル当たりの二次電子検出量を4000個/ピクセル程度とすることが必要である。従って、電子ビームの強度を大きくする必要がある。
【0255】
電子銃は、それが温度制限領域で動作している場合は電子線のショット雑音が大きいが、空間電荷制限領域で動作している場合は電子線のショット雑音が前者の場合の約13%程度に小さくなることが知られている。従って、信号のS/N比を効率よく大きくするためには、電子銃を空間電荷制限領域で動作させることが好ましい。その結果、同じS/N比を得るのに(0.13)2≒0.017位のピクセル当りの二次電子検出数でよい事になる。
【0256】
しかしながら、電子銃を温度制限領域で動作させる場合には、ウェーネルト電圧あるいは制御アノード電圧を変えることにより、輝度やエミッション電流を変えることなく電子線のクロスオーバー位置を任意の位置に変更するように制御できる。従って、電子銃からの電子線の強度が大きい放射方向を、開口板の複数の孔の領域に容易に合わせることが可能である。 一方、電子銃を空間電荷制限領域で動作させる場合には、ウェーネルト電圧あるいは制御アノード電圧を変えると、輝度やエミッション電流が大きく変動するため、クロスオーバーの垂直方向位置を制御することが困難になる。従って、電子銃からの電子線の強度が大きい放射方向を、開口板の小孔の領域に合わせることが困難となるという問題がある。
【0257】
本発明では、電子銃を空間電荷制限領域で動作させ、電子線のショット雑音を小さくすることのできる電子線検査装置を提供する。
【0258】
以下、そのような電子線検査装置の実施例につき説明する。
【0259】
図55において、電子線検査装置1−12が模式的に示されており、この電子線検査装置1−12は、前述の電子線検査装置とほぼ同一の構成を有しており、第一次光学系10−12と、第二次光学系30−12と、検出装置40−12と、制御装置50−12とを備えている。第一次光学系10−12は、電子銃11−12と、電子線を集束するコンデンサレンズ12−12、13−12と、開口板14−12と、軸合わせ用の静電偏向器15−12,16−12と、ブランキング用のナイフエッジ17−12と、開口板14−12を通過した電子ビームを縮小する縮小レンズ18−12と、静電偏向器19−12と、E×B分離器20−12と、対物レンズ21−12とを備え、それらは電子銃11−12を最上部にして、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料の表面Sに垂直になるように配置されている。また、電子銃の後方に軸合わせ用の静電偏向器23−12が及びコンデンサレンズ12−12と13−12との間に軸合わせ用の静電偏向器24−12、25−12が、それぞれ配置されている。電子銃11−12のカソード111−12は、複数の小突起が電子線の数だけ光軸Aに対して同心状に配置された構造である。また、電子銃11−12もウェーネルト電極112−12及びアノード113−12を備えており、ウェーネルト電極112−12のバイアスをある程度深くすることにより、電子銃を空間電荷制限領域内で制御することができる。
【0260】
第二次光学系30−12は、E×B分離器20−12の近くで光軸Aに対して傾斜している光軸Bに沿って配置された2つの静電拡大レンズ31−12、32−12と、二次元的に配列された複数の小孔が形成された開口板33−12とを備えている。
【0261】
検出装置40−12は、検出器41−12と、増幅器42−12と、画像処理部43−12とを備えている。制御装置50−12は、偏向器制御部51−12と、画像処理部43−12及び偏向器制御部51−12を制御するコンピュータ52−12とを備えている。
【0262】
この電子線検査装置における動作は、これまでの述べた装置と同じである。電子銃11−12のウェーネルト電極112−12のバイアスをある程度深くすることにより、電子銃11−12を空間電荷制限領域内で制御することができる。
【0263】
図56には、他の電子線検査装置1’−12が示されている。図56において、図55に示された装置と同じ構成要素には同じ符号を付し、対応はするが異なる構成を有するものについては同じ符号の上に「’」の記号を付して表す。
【0264】
この実施例による電子線検査装置1’−12も第一の実施例と同様に、第一次光学系10’−12と、第二次光学系30−12と、検出装置40−12と、制御装置50−12とを備えている。
【0265】
第一次光学系10’−12は、電子銃11’−12と、電子線を集束するコンデンサレンズ12−12、13−12と、複数の小孔141−12が形成された開口板14’−12と、軸合わせ用の静電偏向器15−12,16−12と、ブランキング用のナイフエッジ17−12と、開口板14’−12を通過した電子ビームを縮小する縮小レンズ18−12と、静電偏向器19−12と、E×B分離器20−12と、対物レンズ21−12とを備え、それらは電子銃11−12を最上部にして、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料の表面Sに垂直になるように配置されている。また、第一の実施例と同様に、第一次光学系10−12には、電子銃の後方に軸合わせ用の静電偏向器23−12が及びコンデンサレンズ12−12と13−12との間に軸合わせ用の静電偏向器24−12、25−12が、それぞれ配置されている。
【0266】
電子銃11’−12のカソード111’−12は、複数の小突起が電子線の数だけ光軸Aに対して同心状に配置された構造である。また、電子銃11’−12もウェーネルト電極112−12及びアノード113−12を備えており、ウェーネルト電極112−12のバイアスをある程度深くすることにより、電子銃を空間電荷制限領域内で制御することができる。
【0267】
本実施例においては、開口板14’−12は、コンデンサレンズ12−12の後方であって、コンデンサレンズ12−12により形成されたクロスオーバーC1の後方に配置されており、開口板14’−12の後方にコンデンサレンズ13−12が配置されている。
【0268】
第二次光学系30−12、検出装置40−12及び制御装置50−12の構成及びそれらの配置は第一の実施例の場合と全く同様である。
【0269】
上記構成において、電子銃11’−12から放出された複数の電子線Cは、アノード112−12の近傍にクロスオーバーC1を形成し、クロスオーバーC1からあまり大きくない拡がり角度で発散する。発散した電子線は焦点距離の短いコンデンサレンズ12−12で集束され、コンデンサレンズ12−12の近傍にクロスオーバーC2を形成する。開口板14’−12はクロスオーバーC2から十分離れた位置に配置されている。クロスオーバーC2から発散した電子線Cは、開口板14’−12を照射し、開口板14’−12に形成された複数の小孔141−12を通過してマルチビームにされる。これらマルチビームはコンデンサレンズ13−12で集束されてクロスオーバーC3に結像する。この位置にはブランキング用のナイフエッジ17−12が配置されている。複数の小孔141−12を通過した電子ビームは縮小レンズ18−12により縮小されてC4に投影される。C4で合焦した後、電子ビームは試料Sに向かって進み、対物レンズ21−12により試料Sに結像する。開口板14’−12により形成されたマルチビームは、コンピュータ及び偏向器制御部からの指令により走査用の静電偏向器19−12を介して、同時に試料Sの面上を走査するように制御される。
【0270】
それ以後の動作は図55の装置の場合と同様である。
【0271】
上記第一の実施例及び第二の実施例の双方において、コンデンサレンズ12−12の励起を変えて、クロスオーバーC2の垂直方向位置を図56の点C5に示すような電子銃側の位置に移動させれば、電子銃11−12,11’−12からの電子線のうち強度が強い部分の放射方向位置を、開口板14−12,14’−12の位置において外側(矢印D)へ拡げるように方向付けすることができる。逆に、クロスオーバーC2の垂直方向位置をコンデンサレンズ13−12側の位置に移動させれば、電子銃11−12,11’−12からの電子線のうち強度が強い部分の放射方向位置を、開口板14−12,14’−12の位置において内側へ狭めるように方向付けすることができる。このように電子線の強度が強い部分の放射方向位置を、開口板14−12,14’−12の小孔の領域に合わせるように調整できる。これらの調整は電子銃11’−12の条件を変更することなく、コンデンサレンズ12−12の励起のみを変えることにより容易に行われる。従って、電子銃を空間電荷制限領域で任意の条件で動作させることができ、電子線が発生させるショット雑音を、温度制限領域で動作させた場合と比較して1.8%程度に大幅に小さくすることができる。
【0272】
上記の通り、図55及び図56に示した電子線検査装置においては、(1)電子銃を空間電荷制限領域で動作することができるので、電子線のショット雑音を大幅に小さくすることができ、それにより、二次電子の雑音も小さくすることができる。
異常ドース
上述のマルチビーム検査装置では、スループット向上のために単にステージの移動速度を速くすると、試料に照射される電子ビームの総電流量(以下「ドーズ」と呼ぶ)が低下し、試料画像が劣化するため、ステージの移動速度を速くした分だけ、電子銃から出射される電子ビームの電流量を増加させる必要がある。
【0273】
従って、従来のマルチビーム検査装置における高速検査は、ステージを連続的に高速移動させながら、かつ大電流ビームを試料面上に連続照射させることにより行われている。
【0274】
しかしながら、上記のような態様で高速検査を行っても、検査途中で何らかの原因でステージが止まったり移動速度が遅くなったりすることはあり得る。
【0275】
このようなステージの停止や低速化の事態が高速検査中に発生すると、大電流ビームが試料面の同一箇所又はその近傍に当たり続け、ドーズが急激に増大する。試料にとって許容できるドーズには限界があり、このドーズの許容範囲を越えるまで電子ビームの照射が続くと、試料にコンタミネーションやチャージアップが生じたり、最悪の場合には試料が破壊される場合もある。
【0276】
本発明では、このような点に鑑み、試料と電子ビームとを相対移動させながら、試料に対して電子ビームを照射するに当たり、上記相対移動の停止や低速化によるドーズの急激な増大を防止し、試料を保護できるマルチビーム検査装置を提供する。
【0277】
以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0278】
図57は、マルチビーム検査装置にドーズ制御機能を組み込んだ場合を例示的に示している。
【0279】
このマルチビーム検査装置1−13は、実質的には前述の電子線検査装置と同じ構成とされているが、ステージを停止させた状態で試料画像を取得する動作モード(以下「観察モード」と呼ぶ)と、ステージを移動させながら高速で試料画像を取得する動作モード(以下「検査モード」と呼ぶ)とを切り替え可能に構成されている。このマルチビーム検査装置1−13は、上記検査モードにおける動作が何らかの原因で異常状態となったときに、ステージ上の試料を保護する機構(以下「試料保護機構」と呼ぶ)が設けられていることを特徴とする。
【0280】
このマルチビーム検査装置1−13は、前述のマルチビーム検査装置と同様に一次光学系10−13と、二次光学系30−13と、検出装置40−13と、チャンバー(図示されていない)とを備えている。
【0281】
一次光学系10−13は、最上部に電子銃11−13が配置されている。電子銃11−13は、陰極から放出された熱電子を加速すると共に集束し、電子線として出射するものである。この電子銃11−13の陰極には複数の電子線を取り出すことができるランタンヘキサボライト(LaB6)が11a−13で示されているように加工されている。
【0282】
また、電子銃11−13には電子銃11−13の加速電圧Vacを制御すると共に、電子銃11−13の電源をオン・オフ制御する電子銃制御ユニット20−13が接続されている。さらに、電子銃11−13の位置調整などを行うガンアライメント機構(図示されていない)やガンアライナ(図示されていない)も設けられている。
【0283】
また、電子銃11−13から出射される電子線の光軸A上には、2段構成の静電レンズ12−13,15−13と、マルチ開口板13−13と、一次偏向器16−13とが配置されている。マルチ開口板13−13には、直線状に並べられた複数の小孔が形成されており、電子銃11−13から出射された電子線を複数の電子ビーム(以下「一次ビーム」と呼ぶ)に形成する。
【0284】
第一次光学系10−13の各静電レンズ12−13,15−13は、回転軸対照の3極又は2極の静電レンズ(又は電磁レンズ)である。各静電レンズ12−13,15−13のレンズ電圧を最適化することによって、出射電子を損失することなく一次ビームの寸法を任意の寸法に整形することができる。各静電レンズのレンズ電圧は、第一次光学系10−13に接続された第一次光学系制御ユニット21−13によって制御される。
【0285】
また、一次偏向器16−13は静電偏向器または電磁偏向器で構成される。例えば、一次偏向器16−13が8つの電極からなる静電偏向器の場合、X軸に沿って対向する電極への印加電圧を変化させることで、一次ビームの軌道をX方向に偏向することができる。また、Y軸に沿って対向する電極への印加電圧を変化させることで、一次ビームの軌道をY方向に偏向することができる。
【0286】
一次偏向器16−13の各電極への印加電圧は、一次偏向器16−13に接続された一次偏向器制御ユニット22−13によって制御される。
【0287】
なお、電子銃制御ユニット20−13,第一次光学系制御ユニット21−13、及び一次偏向器制御ユニット22−13は、ホストコンピュータ23−13に接続されている。
【0288】
試料Lを載置すると共にXY方向に移動可能なステージ80−13が設置されている。このステージ80−13には、後述する所定のリターディング電圧Vrが印加されている。
【0289】
また、ステージ80−13にはステージ制御ユニット24−13が接続されている。このステージ制御ユニット24−13は、ステージ80−13をXY方向に駆動すると共に、レーザ干渉計(図示されていない)を用いてステージ80−13のXY位置を読み取り(データレートは例えば10Hz)、XY位置信号をホストコンピュータ23−13に出力する。また、ステージ制御ユニット24−13は読み取ったXY位置に基づいてステージ80−13の移動速度を検出し、速度信号をホストコンピュータ23−13に出力する。
【0290】
第二次光学系30−13の内部には、第二次光学系30−13の光軸Bに沿って静電対物レンズ31−13、E×B分離器32−13、第2の静電レンズ33−13、及び第3の静電レンズ34−13が配置されている。
【0291】
静電対物レンズ31−13は、例えば3枚の電極で構成されていて、静電対物レンズ31−13の下(即ち、試料L側)から1番目の電極と2番目の電極(いずれも図示されていない)とに所定の電圧が印加され、3番目の電極(図示されていない)はゼロ電位に設定される。このような静電対物レンズの構成は当業者には公知のものである。
【0292】
E×B分離器32−13は、電磁プリズムとして作用する偏向器であり、ウィーン条件(E=vB、ここで、vは荷電粒子の速度、Eは電界、Bは磁界を表し、E⊥Bである)を満たす荷電粒子(例えば一次ビーム)のみを直進させ、それ以外の荷電粒子(例えば二次電子)の軌道を曲げることができる。
【0293】
第2の静電レンズ33−13及び第3の静電レンズ34−13は全てユニポテンシャルレンズまたはアインツエルレンズと呼ばれる回転軸対称型のレンズであり、それぞれ3枚の電極で構成されている。各静電レンズは通常、外側の2つの電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧を変えることでレンズ作用が制御される。
【0294】
上記の静電対物レンズ31−13、第2の静電レンズ33−13,第3の静電レンズ34−13の各レンズ電圧、及びE×B分離器32−13に印加する電磁界は、第二次光学系30−13に接続された第二次光学系制御ユニット25−13によって制御される。
【0295】
検出装置40−13はマルチ開口板41−13及び検出器42−13を備えている。マルチ開口板41−13は第3の静電レンズ34−13の像面に配置され、隣接する一次ビームからの二次電子が混入しないように制限する。また、マルチ開口板41−13には、マルチ開口板133の小孔の数及び配列に合わせた状態で直線状に並べられた、複数の小孔が形成されている。
【0296】
検出器42−13は、電子を光に変換する蛍光体と、光を電気信号に変換するPMT(ホトマルチプライヤチューブ)とを備えている。マルチ開口板41−13と検出器42−13の間には、高電界が印加されているので、マルチ開口板41−13の小孔の近傍には凸レンズ作用があり、小孔に近づいた二次電子は全てこれらの小孔を通過する。各検出器42−13は画像処理ユニット43−13に接続されている。
【0297】
なお、第二次光学系制御ユニット25−13及び画像処理ユニット43−13は、ホストコンピュータ23−13に接続されている。また、ホストコンピュータ23−13にはCRT26−13が接続されている。
【0298】
次に上記構成のマルチビーム検査装置1−13における一次ビーム及び二次電子の軌道等について順に説明する。
[一次ビーム]
一次ビームは、電子銃11−13の加速電圧Vacに応じた電流量で出射される。以下、電子銃11−13から出射される一次ビームの電流量を「電子銃電流量Ia」と呼ぶ。電子銃11−13からの一次ビームは第一次光学系10−13のレンズ作用を受けながら通過して一次偏向器16−13に達する。一次偏向器16−13の電極に電圧が印加されないとき、一次偏向器16−13の偏向作用は一次ビームに及ばないので、一次ビームは一次偏向器16−13を通過し、E×B分離器32−13の中心部に入射する。次に、一次ビームは静電対物レンズ31−13を介してマルチビーム状態で試料Lに照射される。
【0299】
ところで、試料Lに照射される一次ビームの電流量(以下「照射電流量Ib」と呼ぶ)は、上記電子銃電流量Iaに比べてはるかに少なくなっている。しかし、照射電流量Ibと電子銃電流量Iaとの対応関係は既知であり、また、電子銃電流量Iaと電子銃11−13の加速電圧Vacとの対応関係も既知であるため、照射電流量Ibと加速電圧Vacとの関係も既知となる。
【0300】
従って,電子銃制御ユニット20−13では、電子銃11−13の加速電圧Vacを制御することにより、一次ビームの照射電流量Ibを所望の値に設定することができる。照射電流量Ibの設定値に関する情報は、電子銃制御ユニット20−13からホストコンピュータ23−13に対して出力される。
【0301】
因みに、照射電流量Ibは、表1に示されるように、後述する観察モード時と検査モード時とで異なる値に設定される。
【0302】
【表1】
【0303】
一方、試料Lにおける一次ビームの照射領域の形状は、第一次光学系10−13のレンズ電圧を制御することにより、任意の寸法に調整される。試料Lに対して照射電流量Ibにより各一次ビーム間で均一に照射することができる。
【0304】
ここで、ステージ80−13を停止させている場合(例えば、観察モード)のドーズDoは、各一次ビームの合計面積S、一次ビームの照射時間Tとすると、次式(1)で表される。つまりドーズDoは、照射電流量Ibと照射時間Tとに比例して増大する。
【0305】
Do ∝ Ib×T/S・・・・・・・(1)
また、ステージ80−13を移動させている場合(例えば検査モード)のドーズDvは、ステージ80−13の移動速度(V≠0)を用いると、次式(2)で表される。つまり、ドーズDvは、照射電流量Ibに比例し、ステージの移動速度Vに逆比例して増大する。
【0306】
Dv ∝ Ib/V/S・・・・・・・(2)
しかし、試料Lにとって許容できるドーズには限界があり、このドーズの許容範囲を越えるまで一次ビームが照射されると、試料Lにコンタミネーションやチャージアップが生じたり、最悪の場合には試料Lが破壊することもある。このため、試料Lのドーズの許容範囲に関するデータが、試料Lの種類ごとに予め定められ、ホストコンピュータ23−13の記憶部に格納されている。このドーズの許容範囲に関するデータは、後述する試料保護機構で利用される。
【0307】
なお、一次ビームの照射領域のXY位置は、一次偏向器16−13の印加電圧を制御して一次ビームの軌道を偏向させることにより、試料L上を移動させることができる。
[二次ビーム]
試料Lに一次ビームが照射されると、その照射領域内の試料Lから二次電子、反射電子、又は後方散乱電子のうち、少なくとも1種からなる電子ビーム(以下「二次ビーム」と呼ぶ)が発生する。この二次ビームは、照射領域の二次元画像情報を有する。なお、上記のように一次ビームが試料面に対して垂直に照射されるので、二次電子は影のない鮮明な像を有することになる。
【0308】
ここで、試料Lを載置するステージ80−13にはリターディング電圧Vrが印加されているため、試料Lと静電対物レンズ31−13の電極との間には、二次ビームに対して加速電界が形成される。従って、試料Lから発生した二次ビームは静電対物レンズ31−13に向けて加速される。
【0309】
そして、二次ビームは静電対物レンズ31−13によって集束作用を受け、E×B分離器32−13の偏向作用を受けて偏向され、第2の静電レンズ33−13を介してマルチ開口板41−13の各小孔に結像する。この場合、一次ビームにより試料面で放出された二次ビームはマルチ開口板13−13の各小孔に対応するマルチ開口板4−13の各小孔に結像する。
【0310】
試料Lから発生した二次ビームの結像を、静電対物レンズ31−13と第2の静電レンズ33−13とで協同して行うことにより、レンズ収差の発生を抑制することができる。
【0311】
マルチ開口板41−13の小孔に結像したマルチビームの二次元像は、検出器42−13の蛍光板で光に変換されたのち、PMTで電気信号に変換される。
【0312】
ここで、本実施例と請求項との対応関係を示しておく。請求項に記載の「移動装置」はステージ80−13,ステージ制御ユニット24−13に対応し、「測定装置」は電子銃制御ユニット20−13,ステージ制御ユニット24−13,ホストコンピュータ23−13に対応し、「判断装置」はホストコンピュータ23−13に対応し、「制御装置」は一次偏向器16−13,一次偏向器制御ユニット22−13,ホストコンピュータ23−13に対応に対応する。
【0313】
次に、上記のように構成されたマルチビーム検査装置1−13の動作について説明する。マルチビーム検査装置1−13の動作には、ステージ80−13を停止された状態で試料Lの画像を取得する観察モードと、ステージ80−13を移動させながら高速に試料Lの画像を取得する検査モードとがある。いずれのモードにおいても、マルチビーム検査装置1では試料Lにおけるサイズが各マルチビームで0.1ミクロンとなるように調整されている。
【0314】
まず、観察モードについて説明する。
【0315】
観察モードにおいて、ステージ制御ユニット24−13は、ステージ80−13をXY方向に駆動し、試料Lの中の観察したい領域(例えば欠陥個所を含む領域)を一次ビームの照射領域内に位置決めする。位置決め後、ステージ80−13は停止される。
【0316】
また、電子銃制御ユニット20−13は、電子銃11−13の加速電圧Vacを制御し、一次ビームの照射電流量Ibを62.5nA(表1参照)に設定する。
【0317】
さらに、画像処理ユニット43−13からの信号は、ホストコンピュータ23−13からの観察用タイミング信号に基づいて、順次転送される。
【0318】
この観察モードによれば、試料Lの中の観察したい領域(例えば欠陥箇所を含む領域)の画像を常時CRT26−13に表示させることができる。
【0319】
また、この観察モードによれば、所定のテストパターンを撮像することで、第一次光学系10−13や第二次光学系30−13のフォーカス調整、収差調整、検出器42−13における輝度調整等の装置調整を行うこともできる。
【0320】
次に、検査モードにおける試料画像の取得動作について説明する。
【0321】
検査モードにおいて、電子銃制御ユニット20−13は電子銃11−13の加速電圧Vacを制御し、一次ビームの照射電流量Ibを62.5nA(表1参照)に設定する。
【0322】
また、画像処理ユニット43−13は、ホストコンピュタ23−13からの観察用タイミング信号に基づいて駆動パルスを供給する。その結果一次偏向器16−13走査信号と検出器42−13の強度信号からSEM画像が形成される。
【0323】
この検査モードによれば、ステージ80−13を高速移動させながら試料画像の撮像動作を実行するので、試料Lの比較的広い領域又は全体から連続的にかつ短時間で試料画像を取り込むことができる。
【0324】
なお、検査モードでの試料画像の取得が完了すると、ホストコンピュータ23−13は、画像情報に対してテンプレートマッチング等を実行することで、試料Lの欠陥箇所を特定することができる。
【0325】
このような検査モードでは、検査速度を速くするため、ステージ80−13の移動速度を速くすると共に、一次偏向器16−13への走査信号も速く設定しており、移動速度及び転送レートを速くした分だけ、一次ビームの照射電流量Ibも強く設定している。すなわち、上記検査モードは、ステージ80−13を連続的に高速移動させながら、かつ大電流ビームを試料に連続照射させることにより、高速検査を行うものである。
【0326】
従って、上記高速検査中に、何らかの原因でステージが停止したり、移動速度が遅くなったりすると、大電流ビームが試料の同一箇所又はその近傍に当たり続け、ドーズが急激に増大する(前述の数式(1)及び(2)参照)。
【0327】
しかし、試料Lにとって許容できるドーズには限界があり、このドーズの許容範囲を超えるまで一次ビームが照射されると、試料Lにコンタミネーションやチャージアップが生じたり、最悪の場合には、試料Lが破壊する可能性もある。
【0328】
そこで、本実施例のマルチビーム検査装置には、以下で説明するような、試料Lを保護するための試料保護機構が組み込まれている。
【0329】
図58(a),図58(b)には、上記試料保護機構の一つの実施例におけるフローチャートが示されている。図58(a),図58(b)において、ホストコンピュータ23−13は、外部から入力される検査モードの指令を受け取ると(S10)、試料の試料Lに関するドーズの許容範囲データを記憶部から取得する(S11)。
【0330】
次いでホストコンピュータ23−13は、ステージ制御ユニット24−13から入力されるステージ80−13の移動速度Vに関する信号を取得し、この移動速度Vと一次ビームの照射電流量Ibと照射領域の面積Sとに基づいて(式(2)参照)、試料Lへの実際のドーズDvを算出する(S12)。
【0331】
そして、ホストコンピュータ23−13は、S11で取得したドーズの許容データと、S12で算出した実際のドーズDvとを比較し(S13)、実際のドーズDvの方が小さければ、S12に戻って処理を繰り返す。従って、実際のドーズDvが許容データよりも小さい限り、上述の検査モードにおける試料画像の取得動作が連続して行われる。
【0332】
一方、ホストコンピュータ23−13は、S12で算出した実際のドーズDvが許容範囲データよりも大きくなると、現在行われている検査モードが異常であると判断し、一次偏向器制御ユニット22−13に対して異常通知を出力する(S14)。
【0333】
一次偏向器制御ユニット22−13は、ホストコンピュータ23−13からの異常通知を受け取ると(S21)、一次偏向器16−13に対してブランキング電圧を印加し、一次ビームの軌道を大きく偏向させる(S22)、即ち、ブランキングする。その結果、試料Lに大電流の一次ビームが照射されない状態となる。従って、試料Lにコンタミネーションやチャージアップが生じたり、試料が破壊するといった最悪の事態を回避できる。
【0334】
なお、上記の実施例では、ホストコンピュータ23−13からの異常通知を一次偏向器制御ユニット22−13に出力し、一次偏向器16−13により一次ビームをブランキングする例を説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0335】
例えば、ホストコンピュータ23−13からの異常通知を電子銃制御ユニット20−13に出力し、電子銃11の電源をオフにすることによって電子銃11−13の電子放出を停止させても良い。
【0336】
また、一次ビームの軌道上に、一次偏向器16−13以外の偏向器が配置されている場合には、これら他の偏向器を用いて上記と同様のブランキング制御を行っても良い。
【0337】
更に、上記の試料保護機構の実施例では、ホストコンピュータ23−13からの異常通知によって一次ビームを完全に遮断し、一次ビームが試料Lに照射されない状態とする例を示したが、一次ビームの照射を制御し、一次ビームの電流密度(=照射電流量Ib/(照射領域の面積S))を下げることでも、ドーズの急激な増大を防止できる。
【0338】
具体的には、一次偏向器16−13を用いて一次ビームの軌道を高速かつ広範囲で偏向させ、試料上での照射領域が同じ箇所に留まらないようにする方法がある。
【0339】
また、第一次光学系10−13を用いて一次ビームの断面を拡大することにより、照射領域の面積Sを広げる方法でも、一次ビームの電流密度を下げ、ドーズの急激な増大を防止できる。
【0340】
更に、電子銃11−13の加速電圧Vacを制御して一次ビームの出射電流量Iaを下げる方法でも、同様に、ドーズの増大を防止できる。
【0341】
また、上述の実施例では、ステージ制御ユニット24−13によって検出されたステージ80−13の移動速度に基づいて、実際のドーズDvを算出する例を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。
【0342】
例えば、試料Lのドーズが増大すると試料から発生する二次ビームの量も増大するので、二次ビームの発生量を検出すると共に、二次ビームの発生量と試料Lのドーズとの対応関係を利用することによって、実際のドーズDvを検知することができる。
【0343】
ちなみに、二次ビームの発生量の測定は、検出器42−13の出力を時々モニターする事によって測定することもできる。
【0344】
更に、試料Lのドーズが増大すると試料画像が明るくなりコントラスト比が低下するため、試料画像のコントラスト比を検出すると共に、このコントラスト比と試料Lのドーズとの対応関係を利用することによって、実際のドーズDvを検知することもできる。
【0345】
ちなみに、試料画像のコントラスト比の検出は、画像処理ユニット43−13内のメモリに格納された各受光画素の濃度値の平均値と、予め定められた濃度値のしきい値との比較により可能となる。
【0346】
また、上述の実施例では、ホストコンピュータ23−13の記憶部に、試料Lのドーズの許容範囲データを格納しておき、この許容範囲データと実際のドーズDvとを比較することにより検査モードが異常か否かを判断する例を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。
【0347】
例えば、試料のドーズの許容範囲データに基づいて、予め、ステージ80−13の移動速度の許容範囲データを算出しておき、この移動速度の許容範囲データをホストコンピュータ23−13の記憶部に格納してもよい。この場合、ステージ80−13の移動速度の許容範囲データと、実際のステージ80−13の移動速度とを比較することで、検査モードの異常を判断することができる。
【0348】
同様に、試料Lのドーズの許容データに基づいて、予め、二次ビームの発生量の許容範囲データを算出しておき、この二次ビームの発生量の許容範囲データをホストコンピュータ23−13の記憶部に格納してもよい。この場合、二次ビームの発生量の許容範囲データと、実際の二次ビームの発生量とを比較することで、検査モードの異常を判断することができる。
【0349】
更に、試料Lのドーズの許容範囲に基づいて、予め、画像情報のコントラスト比の許容範囲データを算出しておき、このコントラスト比の許容範囲データをホストコンピュータ23−13の記憶部に格納してもよい。この場合、画像情報のコントラスト比の許容範囲データと、実際の画像情報のコントラスト比とを比較することで、検査モードの異常を判断することができる。
【0350】
また、上述の実施例では、検査モードにおける試料画像の取得中に一次ビームを偏向させない(照射領域を移動させない)例を説明したが、一次ビームを偏向させながら(照射領域を移動させながら)試料画像を取得する場合にも、本発明は適用可能である。
【0351】
以上のように、本発明は、単一ビームのSEMを含め、一次ビームと試料とを相対移動させながら試料画像を取得する構成のものであれば、いずれにも適用できる。
【0352】
以上から分かるように、上記の電子線検査装置によれば、試料と電子ビームとを相対移動させながら、試料に対して電子ビームを照射するに当たり、上記相対移動の停止や低速化によるドーズの急激な増大を防止し、試料を保護することができるので、大電流ビームを用いた高速処理(特に高速検査)に対する信頼性を向上させることができる。
偏向器、ウィーンフィルタ等の制御素子
前述のごとく電子線検査装置においては、その電子光学系を形成するエレメントとして、静電偏向器、静電レンズ、ウィーンフィルタなどがある。
【0353】
図61は、従来の静電偏向器100−14の平面図であり、図62の(a)、(b)はそれぞれ、図61のA−A断面及びB−B断面を示している。静電偏向器100−14は8極の金属電極101−14が各々、絶縁外筒102−14の内側に固定用ねじ103−14、104−14で取り付けられたものである(図61、図62(a))。また、各金属電極101−14への電圧印加用配線105−14は配線用ねじ106−14(図62(b))を用いて金属電極101−14に直接固定される。
【0354】
この静電偏向器100−14において、各金属電極101−14の内側面101a−14に囲まれた空間107−14には、各金属電極101−14への印加電圧に応じた静電界が形成される。したがって、空間107−14を中心軸Zに沿って通過する荷電粒子線は、空間107−14に形成された静電界に応じて偏向される。
【0355】
ここで、隣り合う金属電極101−14間の隙間部分108−14は一直線の形状ではなく、2度折れ曲がった後に絶縁外筒102−14に到達する形状になっている。これは、空間107−14を通過する荷電粒子線から絶縁外筒102−14の露出部分109−14が直視できないようにするためである。この構造により、絶縁外筒102−14の帯電が防止され、空間107−14内の静電界を各金属電極101−14への印加電圧に応じて精密に制御することができる。
【0356】
しかしながら、上記の静電偏向器101−14は構造が複雑で部品点数が多く、低コスト化や小型化が難しいという課題があった。また、静電偏向器100−14を構成する8極の金属電極101−14は、金属製の円筒を絶縁外筒102−14の内側にねじ止めした後に分割したものであるため、その分角精度を高めることが困難であった。更に、金属電極101−14の内側面101a−14に囲まれた空間107−14の真円度を高めることも困難であった。
【0357】
そこで、近年、上記の金属電極101−14の代わりに、メッキなどの表面処理によって絶縁体上に形成された膜状の電極(メッキ電極)を用いることが提案された。メッキ電極を用いた静電偏向器では、電極ねじ止め固定が不要であり、部品点数の削減及び小型化が図られる。
【0358】
しかし、メッキ電極を用いた静電偏向器において、上記した従来の静電偏向器100−14と同様、電圧印加用配線をメッキ電極にねじ止めで直接固定しようとすると、メッキ電極の表面に穴が開いてしまう可能性がある。メッキ電極に穴が開いていると、荷電粒子線が通過する空間内の静電界分布に歪みが生じてしまい、荷電粒子線に対する偏向制御を高精度に行うことができなくなる。
【0359】
このため、静電偏向器のなかには、メッキ電極が形成された絶縁体の支持部をメッキ電極と共に絶縁外筒の端部から突出させ、この突出部分に電界印加用配線を接続させることにより、メッキ電極の表面に穴が開かないようにしているものがある。しかし、この配線構造は複雑であり、また、突出部分に接続した電圧印加用配線の被覆(絶縁体)が、隣り合うメッキ電極間の隙間から見えてしまう可能性もあった。
【0360】
なお、その他の荷電粒子線制御素子(静電レンズなど)においても、上述した静電偏向器と同様、メッキ電極を用いて構成することが望まれている。この場合でも、メッキ電極に対する電界印加用配線をどのように接続させるかの工夫が望まれる。
【0361】
この発明は上記の点に鑑み、メッキなどの表面処理によって絶縁体上に形成された電極の表面を高精度に保ちつつ、この電極に対して簡素な構成で電圧印加用配線を接続可能とする荷電粒子線制御素子すなわち電子レンズや偏向器を提供する。
【0362】
図59は、偏向器やウィーンフィルタとして使用される、本発明に係る荷電粒子線制御素子の一つの実施の形態を概略的に示す上面図であり、図60は、荷電粒子線制御素子の縦断面図である。図59及び図60において、荷電粒子線制御素子は絶縁物製の基体部1−14を有する。基体部1−14は軸Aを中心とする筒状であり、外側面2−14、端面3−14、3’−14及び内側面4−14を形成する貫通穴5−14で定義される構造を有する。使用時に、軸Aは光軸と一致され、貫通穴5−14は軸Aと同軸である。筒状の基体部1−14には、電極を分離する溝6−14が軸Aに平行な方向に且つ放射状に形成される。図に示すように、それぞれの溝6−14は同一の折れ曲がった形状であり、各溝6−14の終端に円形の貫通穴7−14が形成される。更に、図60に示すように、荷電粒子線制御素子1−14の上下に、即ち、対向する端面3−14、3’−14の近くに、貫通穴5−14と同径の貫通穴を有するシールド用の導体円板21−14がそれぞれ設置される。
【0363】
こうした構造において、内側面4−14と対向する端面3−14、3’−14は、絶縁のための非コーティング面10−14を除き、金属コーティングが施される。具体的には、内側面4−14には、斜線で示すように、溝6−14によって互いに切り離された複数の電極8−14が形成され、各端面3−14、3’−14にも、電極8−14と電気的に接続された複数の導体部9−14が形成される。更に、内側面4−14に形成された電極8−14から貫通穴7−14に到る溝6−14の内面にも、斜線で示すように、金属がコーティングされる。但し、貫通穴7−14の内面と、貫通穴7−14から外側面2−14に到る端面10−14は金属コーティングされない。こうして、それぞれの溝6−14と非コーティング面10−14とによって電気的に分離され、かつ、相互に電気的に接続された電極8−14及び導体部9−14からなる複数の導電部分が形成される。図59に示す実施の形態においては、溝6−14は8個形成され、したがって、相互に電気的に接続された電極8−14及び導体部9−14も8個形成される。
【0364】
なお、必要であれば、外側面2−14の一部分にも、導体部9−14と電気的に接続された導体部を形成するようにしてもよい。
【0365】
それぞれの電極8−14に対する配線11−14としては細線が用いられ、該細線は外側面2−14に、又は端面3−14、3’−14のうち一方にボンディングされる。配線11−14を外側面2−14から取り出す場合には荷電粒子線制御素子1−14の外径が大きくなり、また、配線11−14を端面3−14から取り出すときには、荷電粒子線制御素子の光軸Aに沿う方向のスペースが余分に必要になる。図59及び図60は、配線11−14を一方の端面3−14から取り出す例を示している。
【0366】
軸A及び対向する貫通穴7を含む面におけるシールド円板21−14と基体部1−14の端面3−14との間の距離をDとし、軸Aに近い側の電極8−14の面と軸Aに近い側の貫通穴7−14の面との間の半径方向の距離をLとするとき、L/D<4.0とすることが望ましい。これにより、基体部1−14の貫通穴7−14の内面が帯電したとき、その帯電により生じる電位が軸Aの近くを通過する荷電粒子線に対して与える影響を1/1000以下に抑えることが可能になる。
【0367】
図59に示す荷電粒子線制御素子は、前述の如き電子線検査装置における静電偏向器やE×B分離器又はウィーン・フィルタとして使用される。
【0368】
以上の説明から分かるように、本発明に係る荷電粒子制御素子は、メッキなどの表面処理によって絶縁体上に形成された電極の表面を高精度に保ちつつ、該電極に対して簡素な構成で電圧印加用配線を接続することができ、荷電粒子線制御素子及び荷電粒子線装置の小型化、低コスト化、並びに荷電粒子線制御素子の軌道制御の高精度化を実現することができる。
半導体デバイスの製造方法
以上から明らかな通り、本発明に係る検査装置は、高スループットを可能とするので、ウエハ等の試料を、そのプロセス(処理)途中で、同プロセスに支障を与えることなく、適宜検査することを可能とする。そのような検査をプロセス途中において行うようにした半導体デバイスの製造方法を、図63及び図64を参照して説明する。
【0369】
図63は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。この実施例の工程は以下の主工程を含んでいる。
(1)ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)
(3)ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程
(4)ウエハ上に形成されたチップを一個づつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程
(5)できたチップを検査するチップ検査工程
なお、上記のそれぞれの主工程は更に幾つかのサブ工程からなっている。
【0370】
これらの主工程の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼすのが(3)のウエハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリーやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は以下の各工程を含んでいる。
(1)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(2)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程
(3)薄膜層やウエハ基板を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
(4)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(5)イオン・不純物注入拡散工程
(6)レジスト剥離工程
(7)加工されたウエハを検査する工程
なお、ウエハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
【0371】
図64は、図63のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。リソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
(1)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程
(2)レジストを露光する工程
(3)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程
(4)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程
上記の半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、及びリソグラフィー工程については、周知のものでありこれ以上の説明を要しないであろう。
【0372】
上記(7)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査が可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。
【0373】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲において種々の変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0374】
【図1】図1は、本発明に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図であって、図2の線A−Aに沿って見た図である。
【図2】図2は、図1に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図1の線B−Bに沿って見た図である。
【図3】図3は、図1のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、線C−Cに沿って見た図である。
【図4】図4は、図1のローダハウジングを示す図であって、図2の線D−Dに沿って見た図である。
【図5A】図5(A)は、ウエハラックの拡大側面図である。
【図5B】図5(B)は、(A)の線E−Eに沿って見た断面図である。
【図6A】図6(A)は、主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
【図6B】図6(B)は、主ハウジングの支持方法の他の変形例を示す図である。
【図7】図7は、図1の検査装置の電子光学装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】図8は、図7の電子光学装置の一次光学系に使用されているマルチ開口板の開口の位置関係を示す図である。
【図9】図9は、電位印加機構を示す図である。
【図10A】図10(A)は、電子ビームキャリブレーション機構の側面図である。
【図10B】図10(B)は、同機構の平面図である。
【図11】図11は、ウエハのアライメント制御装置の概略説明図である。
【図12】図12は、カセットホルダとミニエンバイロンメント装置の拡大断面側面図である。
【図13】図13は、電子光学装置による検査工程を示す図である。
【図14】図14は、ウィーンフィルタの断面平面図である。
【図15】図15は、ウィーンフィルタの断面側面図である。
【図16】図16は、一次電子ビームを試料であるウエハに照射する態様を示す図である。
【図17A】図17(A)は、従来の電子線検査装置の真空チャンバ及びXYステージの正面図である。
【図17B】図17(B)は、同側面図である。
【図18】図18は、上記XYステージに使用されている差動排気装置の説明図である。
【図19】図19は、本発明の電子線検査装置の一実施例の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図20】図20は、図19に示された装置に設けられた作動排気機構の一例を示す図である。
【図21】図21は、図19に示された装置のガスの循環配管系を示す図である。
【図22】図22(A)は、本発明の電子ビーム装置の一実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す正面図、図22(B)は同側面図である。
【図23】図23は、本発明の電子ビーム装置の他の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図24】図24は、本発明の電子ビーム装置の別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図25】図25は、本発明の電子ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図26】図26は、本発明の電子ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図27】図27(a)は、本発明に係る複数鏡筒の電子光学装置の1つの鏡筒の光学系の概略上面図、図27(b)は、同側面図である。
【図28】図28は、本発明に係る複数鏡筒の電子光学装置における複数光学系の第1の配列形態を示す図である。
【図29】図29は、本発明に係る複数鏡筒の電子光学装置における複数光学系の第2の配列形態を示す図である。
【図30】図30は、パターン欠陥検出方法を説明するための図である。
【図31】図31は、線幅測定方法を説明するための図である。
【図32】図32は、電位コントラスト測定方法を説明するための図である。
【図33】図33は、電子光学系における軸合わせを説明するための図である。
【図34】図34は、軸合わせのために用いられる、図33の試料の上に設けられるマーカーを示す図である。
【図35】図35は、二次光学系の軸合わせを説明するための電子光学系の図である。
【図36a】図36(a)は、光軸合わせが終了した状態での絞り画像とアドレスとの位置関係を示す図である。
【図36b】図36(b)は、光軸合わせ途中での絞り画像とアドレスとの位置関係を示す図である。
【図37】図37は、本発明に従ってウィーンフィルタ(E×B分離器)への軸合わせを行う、電子線装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図38】図38は、本発明の電子線装置の要部の一例を概略的に示す図である。
【図39】図39は、図38の装置における電子ビームとマルチ開口板の開口との調整前の対応関係を示す図である。
【図40】図40は、図38の装置における電子ビームとマルチ開口板の開口との軸合わせ後の対応関係を示す図である。
【図41】図41は、図38の装置における電子ビームとマルチ開口板の開口との本発明による調整後の対応関係を示す図である。
【図42】図42は、基準画像と被検査画像との位置ずれを防止するための装置を備えた本発明に係る欠陥検査装置の概略構成図であり且つ本発明に従って照射ポイントと設計ポイントとのずれの較正を行う電子線検査装置の概略構成図である。
【図43】図43は、図42の欠陥検査装置で取得される複数の被検査画像及び基準画像の例を示す図である。
【図44】図44は、図42の欠陥検査装置におけるウエハ検査のメインルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図45】図45は、図44における複数の被検査画像データ取得工程(ステップ304−9)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
【図46】図46は、図44における比較工程(ステップ308−9)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
【図47】図47は、図42の欠陥検査装置の検出器の具体的構成例を示す図である。
【図48】図48は、半導体ウエハの表面上で部分的に重なり合いながら互いから位置がずらされた複数の被検査領域を概念的に示す図である。
【図49】図49は、第1のマルチ開口板の概略正面図である。
【図50】図50は、マーカ台の概略平面図である。
【図51】図51は、複数の電子ビームの照射位置を較正するための方法を示すフローチャートである。
【図52a】図52(a)は、複数の1次電子ビームのマーカ台での照射位置をX軸に沿って較正する方法を示す概略図である。
【図52b】図52(b)は、複数の1次電子ビームのマーカ台での照射位置をY軸に沿って較正する方法を示す概略図である。
【図52c】図52(c)は、光軸の位置とマーク位置との位置合わせを説明するための概略図である。
【図53a】図53(a)は、複数の1次電子ビームをマーカ台でX軸に沿っ走査したときに出力される信号波形を示す図である。
【図53b】図53(b)は、複数の1次電子ビームをマーカ台でY軸に沿っ走査したときに出力される信号波形を示す図である。
【図53c】図53(c)は、1次電子ビームの照射位置が較正されたときの偏向電圧と信号強度との関係を示す図である。
【図54】図54は、クロスオーバ位置調節の説明のための電子光学系の概略図である。
【図55】図55は、本発明によりショット雑音を抑制する方法を説明するための、電子線検査装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図56】図56は、ショット雑音を抑制する方法を説明するための、他の電子線検査装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図57】図57は、マルチビーム検査装置にドーズ制御機能を組み込んだ電子線検査装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図58】図58(a),図58(b)は、一つの実施例に係る試料保護機構における作動フローチャートである。
【図59】図59は、この発明に係る荷電粒子線制御素子の一つの実施の形態の構成を概略的に示す図である。
【図60】図60は、図59の荷電粒子線制御素子の断面図である。
【図61】図61は、従来の静電偏向器の上面図である。
【図62】図62(a)は図61のA−A線に沿う断面図であり、図62(b)は図61のB−B線に沿う断面図である。
【図63】図63は、本発明に係る検査装置を用いてプロセス途中のウエハを検査するようにしたデバイス製造工程を示すフローチャートである。
【図64】図64は、リソグラフィー工程を示すフローチャートである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電子ビーム(又は電子線)を用いて試料の表面に形成されたパターンの欠陥の検査等をする装置に関し、特に、半導体製造工程におけるウエハの欠陥を検出する場合のように、電子ビームを試料に照射してその表面の性状に応じて変化する二次電子を捕捉して画像データを形成し、その画像データに基づいて試料の表面に形成されたパターン等を高いスループットで検査または評価する装置、並びにそのような装置を用いて歩留まり良くデバイスを製造するデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連する装置の従来技術については、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた装置が既に市販されている。この装置は細く絞った電子線を非常に間隔の小さいラスタ幅でラスタ走査を行い、走査に伴って試料から放出される二次電子を二次電子検出器で検出してSEM画像を形成し、そのSEM画像を基本画像と比較して欠陥を抽出するものである。
【0003】
しかし、SEMを応用した欠陥検査装置では、ビーム寸法が小さく、当然画素寸法が小さく、ラスタ幅も小さいため、欠陥検査に多くの時間を必要としていた。また、高スループットにするため、試料に照射するビーム幅を大きくすると、照射されている領域内で帯電のバラツキが生じ、良好なSEM像が得られない問題があった。
【0004】
これに対して、近年では、高スループットを得るために、複数の電子ビーム(マルチビーム)を同時に試料面に照射するようにしたマルチビーム検査装置の開発が行われているが、適正な精度をもって高スループットを得るには、多くの改善が望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明では、マルチビーム検査装置の種々の改善を行うことを基本的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの後方に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにした。
【0007】
また、本発明では、電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの間に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにした。
【0008】
また、本発明では、前記電子銃は空間電荷制限条件で動作するようにした。
【0009】
また、本発明では、前記電子銃に隣接するコンデンサレンズの励起状態を変化させることでクロスオーバの位置を変更することにより、前記電子銃から放出された電子線のうち強度が大きい部分の放射方向の位置を前記開口板の小孔の領域に合わせるようにした。
【0010】
更に本発明では、プロセス途中のウエハ等の試料を、上記の如き電子線装置を用いて検査するようにしたデバイス製造方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る電子線検査装置の実施例としての半導体検査装置を説明する。
半導体検査装置の全体構造概要
図1及び図2において、本実施例の半導体検査装置1の主要構成要素が立面及び平面で示されている。
【0012】
本実施例の半導体検査装置1は、複数枚のウエハを収納したカセットを保持するカセットホルダ10と、ミニエンバイロメント装置20と、ワーキングチャンバを画成する主ハウジング30と、ミニエンバイロメント装置20と主ハウジング30との間に配置されていて、二つのローディングチャンバを画成するローダハウジング40と、ウエハをカセットホルダ10から主ハウジング30内に配置されたステージ装置50上に装填するローダー60と、主ハウジングに取り付けられた電子光学装置(すなわち電子線を用いて検査を行う装置)70と、を備え、それらは図1及び図2に示されるような位置関係で配置されている。半導体検査装置1は、更に、真空の主ハウジング30内に配置されたプレチャージユニット81と、ウエハに電位を印加する電位印加機構83(図8に図示)と、電子ビームキャリブレーション機構85(図10に図示)と、ステージ装置上でのウエハの位置決めを行うためのアライメント制御装置87を構成する光学顕微鏡871とを備えている。
【0013】
上記半導体検査装置の各部は、いずれも図示されていない真空ポンプ、真空バルブ、真空ケージ、真空配管等から構成され、後述する電子光学系、検出器部、ワーキングチャンバ内を所定のシーケンスに従い真空排気する。各部においては必要な真空度を達成するように真空バルブが制御される。常時、真空度のモニターを行い、異常時にはインターロック機能により隔離バルブ(図示せず)によるチャンバと排気系間の遮断等の緊急制御を行い、各部において必要な真空度を確保する。真空ポンプとしては、主排気にターボ分子ポンプ、粗引き用としてルーツ式ドライブポンプを使用することができる。ステージ上のウエハ(電子線照射部)の周囲の圧力は10−3〜10−6Pa、好ましくは、10−4〜10−6Paとされる。
カセットホルダ
カセットホルダ10は、複数枚(例えば25枚)のウエハが上下方向に平行に並べられた状態で収納されたカセットc(例えば、アシスト社製のSMIF,FOUPのようなクローズドカセット)を複数個(この実施例では2個)保持するようになっている。このカセットホルダとしては、カセットをロボット等により搬送してきて自動的にカセットホルダ10に装填する場合にはそれに適した構造のものを、また人手により装填する場合にはそれに適したオープンカセット構造のものをそれぞれ任意に選択して設置できるようになっている。カセットホルダ10は、この実施例では、自動的にカセットcが装填される形式であり、例えば昇降テーブル11と、その昇降テール11を上下移動させる昇降機構12とを備え、カセットcは昇降テーブル上に図2で鎖線図示の状態に装填され、その後、図2で実線図示の状態に自動的に回転されミニエンバイロメント装置内の(後述の)第1の搬送ユニット61によるウエハの出し入れを可能とする位置とされ、昇降テーブル11により図1で鎖線で示す状態に降下される。カセットc内に収容されるウエハは多数枚上下方向に隔ててかつ平行に並べて配置されているため、任意の位置のウエハを第1の搬送ユニットで保持できるように、第1の搬送ユニットのアームは上下移動できるようになっている。第1の搬送ユニット61とカセットcとの関係は、図12に示してある。
【0014】
なお、カセットc内に収納される基板すなわちウエハは、検査を受けるウエハであり、そのような検査は、半導体製造工程中でウエハを処理するプロセスの後、若しくはプロセスの途中で行われる。具体的には、エッチング成膜工程(銅メッキを含む)、CMP(化学機械研磨)平坦化処理、イオン注入等を受けた基板すなわちウエハ、表面に配線パターンが形成されたウエハ、又は配線パターンが未だに形成されていないウエハが、カセット内に収納される。
ミニエンバイロンメント装置
図1ないし図3において、ミニエンバイロメント装置20は、雰囲気制御されるようになっているミニエンバイロメント空間21を画成するハウジング22と、ミニエンバイロメント空間21内で清浄空気のような気体を循環して雰囲気制御するための気体循環装置23と、ミニエンバイロメント空間21内に供給された空気の一部を回収して排出する排出装置24と、ミニエンバイロメント空間21内に配設されていて試料としての基板すなわちウエハを粗位置決めするプリアライナー25とを備えている。
【0015】
ハウジング22は、頂壁221、底壁222及び四周を囲む周壁223を有していてい、ミニエンバイロメント空間21を外部から遮断する構造になっている。ミニエンバイロメント空間を雰囲気制御するために、気体循環装置23は、図3に示されるように、ミニエンバイロメント空間21内において、頂壁221に取り付けられていて、気体(この実施例では空気)を清浄にして一つ又はそれ以上の気体吹き出し口(図示せず)を通して清浄空気を真下に向かって層流状に流す気体供給ユニット231と、ミニエンバイロメント空間内において底壁222の上に配置されていて、底に向かって流れ下った空気を回収する回収ダクト232と、回収ダクト232と気体供給ユニット231とを接続して回収された空気を気体供給ユニット231に戻す導管233とを備えている。この実施例では、気体供給ユニット231は供給する空気の約20%をハウジング22の外部から取り入れて清浄にするようになっているが、この外部から取り入れられる気体の割合は任意に選択可能である。気体供給ユニット231は、清浄空気をつくりだすための公知の構造のHEPA若しくはULPAフィルタを備えている。清浄空気の層流状の下方向の流れすなわちダウンフローは、主に、ミニエンバイロメント空間21内に配置された後述する第1の搬送ユニットによる搬送面を通して流れるように供給され、搬送ユニットにより発生する虞のある塵埃がウエハに付着するのを防止するようになっている。したがって、ダウンフローの噴出口は必ずしも図示のように頂壁に近い位置である必要はなく、搬送ユニットによる搬送面より上側にあればよい。また、ミニエンバイロメント空間全面に亘って流す必要もない。なお、場合によっては、清浄空気としてイオン風を使用することによって清浄度を確保することができる。また、ミニエンバイロメント空間内には清浄度を観察するためのセンサを設け、清浄度が悪化したときに装置をシャットダウンすることもできる。ハウジング22の周壁223のうちカセットホルダ10に隣接する部分には出入り口225(図1)が形成されている。出入り口225近傍には公知の構造のシャッタ装置を設けて出入り口225を閉じるようにしてもよい。ウエハ近傍でつくる層流のダウンフローは、例えば0.3〜0.4m/secの流速でよい。気体供給ユニットはミニエンバイロメント空間内でなくその外側に設けてもよい。
【0016】
排出装置24は、前記搬送ユニットのウエハ搬送面より下側の位置で搬送ユニットの下部に配置された吸入ダクト241と、ハウジング22の外側に配置されたブロワー242と、吸入ダクト241とブロワー242とを接続する導管243と、を備えている。この排出装置24は、搬送ユニットの周囲を流れ下り搬送ユニットにより発生する可能性のある塵埃を含んだ気体を、吸入ダクト241により吸引し、導管243、244及びブロワー242を介してハウジング22の外側に排出する。この場合、ハウジング22の近くに引かれた排気管(図示せず)内に排出してもよい。
【0017】
ミニエンバイロメント空間21内に配置されたプリアライナー25は、ウエハに形成されたオリエンテーションフラットや、ウエハの外周縁に形成された一つ又はそれ以上のV型の切欠きすなわちノッチを光学的に或いは機械的に検出してウエハの軸線O−Oの周りの回転方向の位置を約±1度の精度で予め位置決めしておくようになっている。プリアライナーは請求項に記載された発明の試料の座標を決める機構の一部を構成し、試料の粗位置決めを担当する。このプリアライナー自体は公知の構造のものでよいので、その構造、動作の説明は省略する。
【0018】
なお、図示しないが、プリアライナーの下部にも排出装置用の回収ダクトを設けて、プリアライナーから排出された塵埃を含んだ空気を外部に排出するようにしてもよい。
ワーキングチャンバ
図1及び図2において、ワーキングチャンバ31を画成する主ハウジング30は、ハウジング本体32を備え、そのハウジング本体32は、台フレーム36上に配置された振動遮断装置すなわち防振装置37の上に載せられたハウジング支持装置33によって支持されている。ハウジング支持装置33は矩形に組まれたフレーム構造体331を備えている。ハウジング本体32はフレーム構造体331上に配設固定されていて、フレーム構造体上に載せられた底壁321と、頂壁322と、底壁321及び頂壁322に接続されて四周を囲む周壁323とを備えていてワーキングチャンバ31を外部から隔離している。底壁321は、この実施例では、上に載置されるステージ装置等の機器による加重で歪みの発生しないように比較的肉厚の厚い鋼板で構成されているが、その他の構造にしてもよい。この実施例において、ハウジング本体及びハウジング支持装置33は、剛構造に組み立てられていて、台フレーム36が設置されている床からの振動がこの剛構造に伝達されるのを防振装置37で阻止するようになっている。ハウジング本体32の周壁323のうち後述するローダハウジングに隣接する周壁にはウエハ出し入れ用の出入り口325が形成されている。
【0019】
なお、防振装置は、空気バネ、磁気軸受け等を有するアクティブ式のものでも、或いはこれらを有するパッシブ式のもよい。いずれも公知の構造のものでよいので、それ自体の構造及び機能の説明は省略する。ワーキングチャンバ31は公知の構造の真空装置(図示せず)により真空雰囲気に保たれるようになっている。台フレーム36の下には装置全体の動作を制御する制御装置2が配置されている。この制御装置は、制御系は主にメインコントローラ、制御コントローラ、ステージコントローラから構成されている。
【0020】
メインコントローラにはマン−マシンインターフェースが備えられており、オペレータの操作はここを通して行われる(種々の指示/命令、レシピなどの入力、検査スタートの指示、自動と手動検査モードの切り替え、手動検査モード時のときの必要な全てのコマンドの入力等)。その他、工場のホストコンピュータとのコミュニケーション、真空排気系の制御、ウエハ等の試料搬送、位置合わせの制御、他の制御コントローラやステージコントローラへのコマンドの伝達や情報の受け取り等もメインコントローラで行われる。また、光学顕微鏡からの画像信号の取得、ステージの変動信号を電子光学系にフィードバックさせて像の悪化を補正するステージ振動補正機能、試料観察位置のZ方向(二次光学系の軸方向)の変位を検出して、電子光学系へフィードバックし、自動的に焦点を補正する自動焦点補正機能を備えている。電子光学系へのフィードバック信号等の授受、及びステージからの信号の授受は、それぞれ制御コントローラ及びステージコントローラを介して行われる。
【0021】
制御コントローラは主に電子線光学系の制御(電子銃、レンズ、アライナー、ウィーンヒルター用等の高精度電源の制御等)を担う。具体的には照射領域に、倍率が変わったときにも常に一定の電子電流が照射されるようにすること、各倍率に対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の、各オペレーションモードに対応した各レンズ系やアライナーへの自動電圧設定等の制御(連動制御)が行われる。
【0022】
ステージコントローラは主にステージの移動に関する制御を行い精密なX方向およびY方向のμmオーダーの移動(±0.5μm程度の誤差)を可能にしている。また、本ステージでは誤差精度±0.3秒程度以内で、回転方向の制御(θ制御)も行われる。
ローダハウジング
図1、図2及び図4において、ローダハウジング40は、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを画成するハウジング本体43を備えている。ハウジング本体43は底壁431と、頂壁432と、四周を囲む周壁433と、第1のローディングチャンバ41と第2のローディングチャンバ42とを仕切る仕切壁434とを有していて、両ローディングチャンバを外部から隔離できるようになっている。仕切壁434には両ローディングチャンバ間でウエハのやり取りを行うための開口すなわち出入り口435が形成されている。また、周壁433のミニエンバイロメント装置及び主ハウジングに隣接した部分には出入り口436及び437が形成されている。このローダハウジング40のハウジング本体43は、ハウジング支持装置33のフレーム構造体331上に載置されてそれによって支持されている。したがって、このローダハウジング40にも床の振動が伝達されないようになっている。ローダハウジング40の出入り口436とミニエンバイロメント装置のハウジング22の出入り口226とは整合されていて、そこにはミニエンバイロメント空間21と第1のローディングチャンバ41との連通を選択的に阻止するシャッタ装置27が設けられている。シャッタ装置27は、出入り口226及び436の周囲を囲んで側壁433と密に接触して固定されたシール材271、シール材271と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉272と、その扉を動かす駆動装置273とを有している。また、ローダハウジング40の出入り口437とハウジング本体32の出入り口325とは整合されていて、そこには第2のローディングチャンバ42とワーキンググチャンバ31との連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置45が設けられている。シャッタ装置45は、出入り口437及び325の周囲を囲んで側壁433及び323と密に接触してそれらに固定されたシール材451、シール材451と協働して出入り口を介しての空気の流通を阻止する扉452と、その扉を動かす駆動装置453とを有している。更に、仕切壁434に形成された開口には、扉461によりそれを閉じて第1及び第2のローディングチャンバ間の連通を選択的に密封阻止するシャッタ装置46が設けられている。これらのシャッタ装置27、45及び46は、閉じ状態にあるとき各チャンバを気密シールできるようになっている。これらのシャッタ装置は公知のものでよいので、その構造及び動作の詳細な説明は省略する。なお、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22の支持方法とローダハウジングの支持方法が異なり、ミニエンバイロメント装置を介して床からの振動がローダハウジング40、主ハウジング30に伝達されるのを防止するために、ハウジング22とローダハウジング40との間には出入り口の周囲を気密に囲むように防振用のクッション材を配置しておけば良い。
【0023】
第1のローディングチャンバ41内には、複数(この実施例では2枚)のウエハを上下に隔てて水平の状態で支持するウエハラック47が配設されている。ウエハラック47は、図5の示されるように、矩形の基板471の四隅に互いに隔てて直立状態で固定された支柱472を備え、各支柱472にはそれぞれ2段の支持部473及び474が形成され、その支持部の上にウエハWの周縁を載せて保持するようになっている。そして後述する第1及び第2の搬送ユニットのアームによりウエハを把持するようになっている。
【0024】
ローディングチャンバ41及び42は、図示しない真空ポンプを含む公知の構造の真空排気装置(図示せず)によって高真空状態(真空度としては10−5〜10−6Pa)に雰囲気制御され得るようになっている。この場合、第1のローディングチャンバ41を低真空チャンバとして低真空雰囲気に保ち、第2のローディングチャンバ42を高真空チャンバとして高真空雰囲気に保ち、ウエハの汚染防止を効果的に行うこともできる。このような構造を採用することによってローディングチャンバ内に収容されていて次に欠陥検査されるウエハをワーキングチャンバ内に遅滞なく搬送することができる。このようなローディングチャンバを採用することによって、後述するマルチビーム型電子装置原理と共に、欠陥検査のスループットを向上させ、更に保管状態が高真空状態であることを要求される電子源周辺の真空度を可能な限り高真空度状態にすることができる。
【0025】
第1及び第2のローディングチャンバ41及び42は、それぞれ真空排気配管と不活性ガス(例えば乾燥純窒素)用のベント配管(それぞれ図示せず)が接続されている。これによって、各ローディングチャンバ内の大気圧状態は不活性ガスベント(不活性ガスを注入して不活性ガス以外の酸素ガス等が表面に付着するのを防止する)によって達成される。このような不活性ガスベントを行う装置自体は公知の構造のものでよいので、その詳細な説明は省略する。
【0026】
なお、電子線を使用する本発明の検査装置において、後述する電子光学系の電子源として使用される代表的な六硼化ランタン(LaB6)等は一度熱電子を放出する程度まで高温状態に加熱された場合には、酸素等に可能な限り接触させないことがその寿命を縮めないために肝要であるが、電子光学系が配置されているワーキングチャンバにウエハを搬入する前段階で上記のような雰囲気制御を行うことにより、より確実に実行できる。
ステージ装置
ステージ装置50は、主ハウジング30の底壁321上に配置された固定テーブル51と、固定テーブル上でY方向(図1において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル52と、Yテーブル上でX方向(図1において左右方向)に移動するXテーブル53と、Xテーブル上で回転可能な回転テーブル54と、回転テーブル54上に配置されたホルダ55とを備えている。そのホルダ55のウエハ載置面551上にウエハを解放可能に保持する。ホルダは、ウエハを機械的に或いは静電チャック方式で解放可能に把持できる公知の構造のものでよい。ステージ装置50は、サーボモータ、エンコーダ及び各種のセンサ(図示せず)を用いて、上記のような複数のテーブルを動作させることにより、載置面551上でホルダに保持されたウエハを電子光学装置から照射される電子ビームに対してX方向、Y方向及びZ方向(図1において上下方向)に、更にウエハの支持面に鉛直な軸線の回り方向(θ方向)に高い精度で位置決めできるようになっている。なお、Z方向の位置決めは、例えばホルダ上の載置面の位置をZ方向に微調整可能にしておけばよい。この場合、載置面の基準位置を微細径レーザによる位置測定装置(干渉計の原理を使用したレーザ干渉測距装置)によって検知し、その位置を図示しないフィードバック回路によって制御したり、それと共に或いはそれに代えてウエハのノッチ或いはオリフラの位置を測定してウエハの電子ビームに対する平面位置、回転位置を検知し制御する。ワーキングチャンバ内での塵埃の発生を極力防止するために、ステージ装置用のサーボモータ521、531及びエンコーダ522、532は、主ハウジング30の外側に配置されている。
【0027】
電子ビームに対するウエハの回転位置や、X、Y位置を、予め後述する信号検出系或いは画像処理系に入力することで得られる信号の基準化を図ることもできる。更に、このホルダに設けられたウエハチャック機構は、ウエハをチャックするための電圧を静電チャックの電極に与えられるようになっていて、ウエハの外周部の3点(好ましくは周方向に等隔に隔てられた)を押さえて位置決めするようになっている。ウエハチャック機構は、二つの固定位置決めピンと、一つの押圧式クランプピンとを備えている。クランプピンは、自動チャック及び自動リリースを実現できるようになっており、かつ電圧印加の導通箇所を構成している。
ローダーの全体構造
ローダー60は、ミニエンバイロメント装置20のハウジング22内に配置されたロボット式の第1の搬送ユニット61と、第2のローディングチャンバ42内に配置されたロボット式の第2の搬送ユニット63とを備えている。
【0028】
第1の搬送ユニット61は、駆動部611に関して軸線O1−O1の回りで回転可能になっている多節のアーム612を有している。多節のアームとしては任意の構造のものを使用できるが、この実施例では、互いに回動可能に取り付けられた三つの部分を有している。第1の搬送ユニット61のアーム612の一つの部分すなわち最も駆動部611側の第1の部分は、駆動部611内に設けられた公知の構造の駆動機構(図示せず)により回転可能な軸613に取り付けられている。アーム612は、軸613により軸線O1−O1の回りで回動できると共に、部分間の相対回転により全体として軸線O1−O1に関して半径方向に伸縮可能になっている。アーム612の軸613から最も離れた第3の部分の先端には、公知の構造の機械式チャック又は静電チャック等のウエハを把持する把持装置616が設けられている。駆動部611は、公知の構造の昇降機構615により上下方向に移動可能になっている。
【0029】
この第1の搬送ユニット61は、アーム612がカセットホルダに保持された二つのカセットcの内いずれか一方の方向M1又はM2に向かってアームが伸び、カセットc内に収容されたウエハW(図12)を1枚、把持装置616により把持して取り出す。その後アームが縮み(図2に示すような状態)、アームがプリアライナー25の方向M3に向かって伸長できる位置まで回転してその位置で停止する。するとアームが再び伸びてアームに保持されたウエハをプリアライナー25に載せる。プリアライナーから前記と逆にしてウエハを受け取った後はアームは更に回転し第2のローディングチャンバ41に向かって伸長できる位置(向きM4)で停止し、第2のローディングチャンバ41内のウエハ受け47にウエハを受け渡す。なお、機械的にウエハを把持する場合にはウエハの周縁部(周縁から約5mmの範囲)を把持する。これはウエハには周縁部を除いて全面にデバイス(回路配線)が形成されており、この部分を把持するとデバイスの破壊、欠陥の発生を生じさせるからである。
【0030】
第2の搬送ユニット63も第1の搬送ユニットと構造が基本的に同じであり、ウエハの搬送をウエハラック47とステージ装置の載置面上との間で行う点でのみ相違するだけであるから、詳細な説明は省略する。
【0031】
上記ローダー60では、第1及び第2の搬送ユニット61及び63は、カセットホルダに保持されたカセットからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50上への及びその逆のウエハの搬送をほぼ水平状態に保ったままで行い、搬送ユニットのアームが上下動するのは、単に、ウエハのカセットからの取り出し及びそれへの挿入、ウエハのウエハラックへの載置及びそこからの取り出し及びウエハのステージ装置への載置及びそこからの取り出しのときるだけである。したがって、大型のウエハ、例えば直径30cmのウエハの移動もスムースに行うことができる。
ローダーによる搬送(カセット→ワーキングチャンバ)
次にカセットホルダに支持されたカセットcからワーキングチャンバ31内に配置されたステージ装置50までへのウエハの搬送を順を追って説明する。
【0032】
カセットホルダ10は、前述のように人手によりカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが、また自動的にカセットをセットする場合にはそれに適した構造のものが使用される。この実施例において、カセットcがカセットホルダ10の昇降テーブル11の上にセットされると、昇降テーブル11は昇降機構12によって降下されカセットcが出入り口225に整合される。
【0033】
カセットが出入り口225に整合されると、カセットに設けられたカバーが開き、さらにまたカセットcとミニエンバイロメントの出入り口225との間には筒状の覆いが配置されてカセット内及びミニエンバイロメント空間内を外部から遮断する。なお、ミニエンバイロメント装置20側に出入り口225を開閉するシャッタ装置が設けられている場合にはそのシャッタ装置が動作して出入り口225を開く。
【0034】
一方第1の搬送ユニット61のアーム612は方向M1又はM2のいずれかに向いた状態(この説明ではM1の方向)で停止しており、出入り口225が開くとアームが伸びて先端でカセット内に収容されているウエハのうち1枚を受け取る。なお、アームと、カセットから取り出されるべきウエハとの上下方向の位置調整は、この実施例では第1の搬送ユニット61の駆動部611及びアーム612の上下移動で行うが、カセットホルダの昇降テーブルの上下動で行っても或いはその両者で行ってもよい。
【0035】
アーム612によるウエハの受け取りが完了すると、アームは縮み、シャッタ装置を動作して出入り口を閉じ(シャッタ装置がある場合)、次にアーム612は軸線O1−O1の回りで回動して方向M3に向けて伸長できる状態になる。すると、アームは伸びて先端に載せられ或いはチャックで把持されたウエハをプリアライナー25の上に載せ、そのプリアライナーによってウエハの回転方向の向き(ウエハ平面に垂直な中心軸線の回りの向き)を所定の範囲内に位置決めする。位置決めが完了すると搬送ユニット61はアームの先端にプリアライナー25からウエハを受け取ったのちアームを縮ませ、方向M4に向けてアームを伸長できる姿勢になる。するとシャッタ装置27の扉272が動いて出入り口226及び436を開き、アーム612が伸びてウエハを第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47の上段側又は下段側に載せる。なお、前記のようにシャッタ装置27が開いてウエハラック47にウエハが受け渡される前に、仕切壁434に形成された開口435はシャッタ装置46の扉461により気密状態で閉じられている。
【0036】
上記第1の搬送ユニットによるウエハの搬送過程において、ミニエンバイロメント装置のハウジングの上部に設けられた気体供給ユニット231からは清浄空気が層流状に流れ(ダウンフローとして)、搬送途中で塵埃がウエハの上面に付着するのを防止する。搬送ユニット周辺の空気の一部(この実施例では供給ユニットから供給される空気の約20%で主に汚れた空気)は排出装置24の吸入ダクト241から吸引されてハウジング外に排出される。残りの空気はハウジングの底部に設けられた回収ダクト232を介して回収され再び気体供給ユニット231に戻される。
【0037】
ローダハウジング40の第1のローディングチャンバ41内のウエハラック47内に第1の搬送ユニット61によりウエハが載せられると、シャッタ装置27が閉じて、ローディングチャンバ41内を密閉する。すると、第1のローディングチャンバ41内には不活性ガスが充填されて空気が追い出された後、その不活性ガスも排出されてそのローディングチャンバ41内は真空雰囲気にされる。この第1のローディングチャンバの真空雰囲気は低真空度でよい。ローディングチャンバ41内の真空度がある程度得られると、シャッタ装置46が動作して扉461で密閉していた出入り口434を開き、第2の搬送ユニット63のアーム632が伸びて先端の把持装置でウエハ受け47から1枚のウエハを受け取る(先端の上に載せて或いは先端に取り付けられたチャックで把持して)。ウエハの受け取りが完了するとアームが縮み、シャッタ装置46が再び動作して扉461で出入り口435を閉じる。なお、シャッタ装置46が開く前にアーム632は予めウエハラック47の方向N1に向けて伸長できる姿勢になる。また、前記のようにシャッタ装置46が開く前にシャッタ装置45の扉452で出入り口437、325を閉じていて、第2のローディングチャンバ42内とワーキングチャンバ31内との連通を気密状態で阻止しており、第2のローディングチャンバ42内は真空排気される。
【0038】
シャッタ装置46が出入り口435を閉じると、第2のローディングチャンバ内は再度真空排気され、第1のローディングチャンバ内よりも高真空度で真空にされる。その間に、第2の搬送ユニット61のアームはワーキングチャンバ31内のステージ装置50の方向に向いて伸長できる位置に回転される。一方ワーキングチャンバ31内のステージ装置では、Yテーブル52が、Xテーブル53の中心線X0−X0が第2の搬送ユニット63の回動軸線O2−O2を通るX軸線X1−X1とほぼ一致する位置まで、図2で上方に移動し、また、Xテーブル53は図2で最も左側の位置に接近する位置まで移動し、この状態で待機している。第2のローディングチャンバがワーキングチャンバの真空状態と略同じになると、シャッタ装置45の扉452が動いて出入り口437、325を開き、アームが伸びてウエハを保持したアームの先端がワーキングチャンバ31内のステージ装置に接近する。そしてステージ装置50の載置面551上にウエハを載置する。ウエハの載置が完了するとアームが縮み、シャッタ装置45が出入り口437、325を閉じる。
【0039】
以上は、カセットc内のウエハをステージ装置上に搬送するまでの動作に付いて説明したが、ステージ装置に載せられて処理が完了したウエハをステージ装置からカセットc内に戻すには前述と逆の動作を行って戻す。また、ウエハラック47に複数のウエハを載置しておくため、第2の搬送ユニットでウエハラックとステージ装置との間でウエハの搬送を行う間に、第1の搬送ユニットでカセットとウエハラックとの間でウエハの搬送を行うことができ、検査処理を効率良く行うことができる。
ワーキングチャンバの変形例
図6において、主ハウジングの支持方法の変形例がで示されている。図6(A)に示された変形例では、ハウジング支持装置33aを厚肉で矩形の鋼板331aで構成し、その鋼板の上にハウジング本体32aが載せられている。したがって、ハウジング本体32aの底壁321aは、前記実施例の底壁に比較して薄い構造になっている。図6(B)に示された変形例では、ハウジング支持装置33bのフレーム構造体336bによりハウジング本体32b及びローダハウジング40bを吊り下げて状態で支持するようになっている。フレーム構造体336bに固定された複数の縦フレーム337bの下端は、ハウジング本体32bの底壁321bの四隅に固定され、その底壁により周壁及び頂壁を支持するようになっている。そして防振装置37bは、フレーム構造体336bと台フレーム36bとの間に配置されている。また、ローダハウジング40もフレーム構造体336に固定された吊り下げ部材49bによって吊り下げられている。ハウジング本体32bのこの図6[B]に示された変形例では、吊り下げ式に支えるので主ハウジング及びその中に設けられた各種機器全体の低重心化が可能である。上記変形例を含めた主ハウジング及びローダハウジングの支持方法では主ハウジング及びローダハウジングに床からの振動が伝わらないようになっている。
【0040】
図示しない別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがハウジング支持装置によって下から支えられ、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。また、図示しない更に別の変形例では、主ハウジングのハウジング本体のみがフレーム構造体に吊り下げ式で支持され、ローダハウジングは隣接するミニエンバイロメント装置と同じ方法で床上に配置され得る。
電子光学装置の構造
電子光学装置70は、ハウジング本体32に固定された鏡筒71を備え、その中には、図7及び図8に概略図示するような、一次電子光学系(以下単に一次光学系)72と、二次電子光学系(以下単に二次光学系)74とを備える電子光学系と、検出系76とが設けられている。一次光学系72は、電子線を試料であるウエハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃721と、電子銃721から放出された一次電子線を集束する静電レンズすなわちコンデンサレンズ722と、コンデンサレンズ722の下方に配置されかつ複数の開口が形成されていて一次電子線を複数の一次電子ビームすなわちマルチビームに形成するマルチ開口板723と、一次電子ビームを縮小する静電レンズである縮小レンズ724と、ウイーンフィルタすなわちE×B分離器725と、対物レンズ726と、を備え、それらは、図7に示されるように電子銃721を最上部にして順に、しかも電子銃から放出される一次電子線の光軸が試料Sの表面に鉛直になるように配置されている。
【0041】
電子銃は熱電子線源を用いている。電子放出(エミッタ)材はLaB6である。高融点(高温での蒸気圧が低い)で仕事関数の小さい材料であれば、他の材料を使用することが可能である。複数の電子線を得るには、2通りの方法、すなわち、1つは一本のエミッタ(突起がひとつ)から一本の電子線を引き出し、他の一つは一本のエミッタに複数の突起を形成してそこから複数の電子線を引き出す方法、があるが、本発明に係る実施例では、主に後者の方法を採用している。他の方式の電子線源、例えば、熱電界放出型の電子線も使用可能である。尚、熱電子線源は電子放出材を加熱することにより電子を放出する方式であり、熱電界放出電子線源とは、電子放出材に高電界をかけることにより電子を放出させ、更に電子線放出部を加熱することにより、電子放出を安定させた方式である。
【0042】
ウィーンフィルタは、図14に示すように、静電偏向器と電磁偏向器とにより構成されている。静電偏向器は、真空容器中に設けられた一対の電極(静電偏向電極)725−1を備え、x軸方向に電界を生成する。これら静電偏向電極725−1は、絶縁スペーサ725−2を介して真空容器の真空壁725−3に取り付けられており、これらの電極間距離Dは、静電偏向電極725−1のy軸方向の長さ2Lよりも小さく設定されている。このような設定により、z軸(光軸)の周りの形成される電界強度が一様な範囲を比較的大きくすることができるが、理想的にはD<Lであれば、電界強度が一様な範囲をより大きくすることができる。
【0043】
すなわち、電極の端縁からD/2の範囲は、電界強度が一様ではないため、電界強度がほぼ一様な領域は、一様ではない端部領域を除いた中心部の2L−Dの領域となる。このため、電界強度が一様な領域が存在するためには、2L>Dとする必要があり、さらに、L>Dと設定することにより、電界強度が一様な領域がより大きくなる。
【0044】
電磁偏向器は、真空壁725−3の外側に設けられ、y軸方向に磁界を生成する。該電磁偏向器は、電磁コイル725−4及び電磁コイル725−5を備え、これらコイルはそれぞれ、x軸方向及びy軸方向に磁界を生成する。コイル725−5だけでもy軸方向の磁界を生成できるが、コイル4を設け電界と磁界との直交度を向上させている。すなわち、コイル725−4によって生成された−x軸方向の磁界成分によって、コイル725−5によって生成された+x軸方向を打ち消すことによって、電界と磁界との直交度を良好にすることができる。
【0045】
図15は、本発明のウィーンフィルタの他の実施例を示している。この実施例では、静電偏向電極725−1が6極設けられている点で、図14に実施例と相違している。これら静電偏向電極1には、それぞれの電極の中央と光軸(z軸)とを結んだ線と電界の方向(x軸方向)との角度をθi(i=0,1,2,3,4,5)としたときに、cosθiに比例する電圧k・cosθi(kは定数)が供給される。ただし、θiは、任意の角度である。
【0046】
図15に示した実施例においても、第1の実施例と同様に、x及びy軸方向の磁界を生成するコイル及び5を設け、直行度の修正を行う。
【0047】
この実施例によれば、図14の実施例に比べて、電界強度が一様な領域をさらに大きくすることができる。
【0048】
図14及び図15に示したウィーンフィルタにおいては、磁界を生成するためのコイルをサドル型に形成しているが、トロイダル型のコイルを用いてもよい。
【0049】
縮小レンズ724及び対物レンズ726の像面湾曲収差の影響をなくすため、マルチ開口板723に形成される複数(この実施例では9個)の開口723aは、図8に示されるように光軸を中心とした円周上に形成され、しかもその開口のX軸上への投影像のX方向の間隔Lxが同じになるように配置されている。
【0050】
二次光学系74は、E×B型偏向器725により一次光学系から分離された二次電子を通す2段の静電レンズである拡大レンズ741及び742と、マルチ開口検出板743を備えている。マルチ開口検出板743に形成される開口743aは、一次光学系のマルチ開口板723に形成されている開口723aと一対一で対応するようになっている。
【0051】
検出系76は、二次光学系74のマルチ開口検出板743の各開口743aに対応してそれに近接して配置された複数(この実施例では9個)検出器761と、各検出器761にA/D変換器762を介して電気的に接続された画像処理部763とを備えている。
電子光学装置の動作
次に、上記構成の電子光学装置70の動作に付いて説明する。
【0052】
電子銃721から放出された一次電子線は、一次光学系72のコンデンサレンズ722によって集束されて点P1においてクロスオーバを形成する。一方、コンデンサレンズ722によって集束された一次電子線は、マルチ開口板の複数の開口723aで成形されて複数の一次電子ビームが形成され、縮小レンズ724によって縮小されて位置P2に投影される。位置P2で合焦した後、更に対物レンズ726によってウエハWの表面上に合焦される。一方、一次電子ビームは縮小レンズ724と対物レンズ726との間に配置された偏向器727によってウエハWの表面上を走査するように偏向される。一次電子線によるウエハW表面の走査態様としては、例えば、図16に示す。すなわち、この例では、等間隔にされた4本の電子線101−104を、図で見て、左から右へ走査し、それぞれの走査の右端に来ると、ウエハを支持しているステージが、図で見て、下から上へ所定ステップ距離だけ上方へ動き、電子線はそれぞれの走査の左端に戻り、再び右方への走査を行い、これを繰り返すことにより、ウエハの所要領域の走査を行う。
【0053】
合焦された複数(この実施例では9本)の一次電子ビームによって試料Sは複数の点が照射され、照射されたこれらの複数の点からは二次電子が放出される。この二次電子は、対物レンズ726の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器725で偏向されて二次光学系74に投入される。二次電子による像は偏向器725に関して位置P2より近い位置P3において焦点を結ぶ。これは、一次電子ビームがウエハ面上で500eVのエネルギを有しているのに対して、二次電子が数evのエネルギしか有していないためである。
【0054】
位置P3で合焦された二次電子の像は2段の拡大レンズ741、742でマルチ開口検出板743の対応する開口743aに合焦され、その開口を通過し、各開口743aに対応して配置された検出器761で検出する。検出器761は、検出した電子線を、その強度を表す電気信号に変換する。このようにして変換された電気信号は、各検出器761から出力されてそれぞれA/D変換器762にデジタル信号に変換された後、画像処理部763に入力される。画像処理部763は入力されたデジタル信号を画像データに変換する。画像処理部763には、一次電子線を偏向させるための走査信号が供給されるようになっているので、画像処理部はウエハの面を表す画像を形成することになる。この画像を設定器(図示せず)に予め設定された標準パターンと、比較器(図示せず)において比較することによってウエハWの被検出(評価)パターンの良否を検出する。
【0055】
更に、レジストレーションによりウエハWの被測定パターンを一次光学系の光軸の近くへ移動させ、ラインスキャンする事によって線幅評価信号を取り出し、これを適宜校正することによって、ウエハの表面に形成されたパターンの線幅を測定することができる。
【0056】
ここで上記画像には、2次電子だけではなく、散乱電子や反射電子による画像を取得できるが、ここでは2次電子画像を取得を選択した場合について述べる。
【0057】
なお、一次光学系のマルチ開口板723の開口を通過した一次電子ビームをウエハWの表面に合焦させ、ウエハから放出される二次電子を検出器761に結像させる際に、一次光学系で生じるコマ収差、軸上色収差及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするよう特に配慮する必要がある。
【0058】
また、複数の一次電子ビーム間の間隔と、二次光学系との関係については、一次電子ビーム間の間隔を二次光学系の収差よりも大きい距離だけ離せば複数のビーム間のクロストークを無くすことができる。
【0059】
なお、電子光学装置が作動すると、ウエハ物質等が蒸発して、偏向器等の様々な電子光学エレメントに絶縁物質が堆積し悪影響を及ぼすので、堆積した絶縁体は周期的に除去しなければならない。絶縁物質の除去は絶縁物質の堆積する領域近傍の電極を利用して真空中で水素や酸素あるいはフッ素のプラズマを励起し、絶縁物質のみ酸化除去する。
電子光学装置のプレチャージユニット
プレチャージユニット81は、図1に示されるように、ワーキングチャンバ31内で電子光学装置70の鏡筒71に隣接して配設されている。本検査装置では試料である基板すなわちウエハに電子線を走査して照射することによりウエハ表面に形成されたデバイスパターン等を検査する形式の装置であるから、電子線の照射により生じる二次電子等の情報をウエハ表面の情報とするが、ウエハ材料、照射電子のエネルギ等の条件によってウエハ表面が帯電(チャージアップ)することがある。更に、ウエハ表面でも強く帯電する箇所、弱い帯電箇所が生じる可能性がある。ウエハ表面の帯電量にむらがあると二次電子情報もむらを生じ、正確な情報を得ることができない。そこで、本実施例では、このむらを防止するために、荷電粒子照射部811を有するプレチャージユニット81が設けられている。検査するウエハの所定の箇所に検査電子を照射する前に、帯電むらをなくすためにこのプレチャージユニットの荷電粒子照射部811から荷電粒子を照射して帯電のむらを無くす。このウエハ表面のチャージアップは予めウエハ面の画像を形成し、その画像を評価することで検出し、その検出に基づいてプレチャージユニット81を動作させる。
【0060】
また、このプレチャージユニットでは一次電子線をぼかして照射してもよい。
【0061】
プレチャージは、検査試料であるウエハの電気的欠陥を検査することにも利用することができる。すなわち、本来電気的に絶縁されている部分が何らかの原因で通電状態にあると、プレチャージを行った場合、適正に絶縁されている部分との比較において、帯電状態が異なるので、一次電子ビームを照射して、それに基づき発生する二次電子を検知することにより、当該ウエハの電気的欠陥の有無を検査することができるのである。
電子光学装置の電位印加装置
図9において、電位印加機構83は、ウエハから放出される二次電子発生率が、ウエハの電位に依存すると言う事実に基づいて、ウエハを載置するステージの設置台に±数Vの電位を印加することにより二次電子の発生を制御するものである。また、この電位印加機構は、照射電子が当初有しているエネルギーを減少し、ウエハに100〜500eV程度の照射電子エネルギーとするための用途も果たす。
【0062】
電位印加機構83は、図9に示されるように、ステージ装置50の載置面541と電気的に接続された電圧印加装置831と、チャージアップ調査及び電圧決定システム(以下調査及び決定システム)832とを備えている。調査及び決定システム832は、電子光学装置70の検出系76の画像形成部763に電気的に接続されたモニター833と、モニター833を監視するオペレータ834と、オペレータ834が制御するCPU835とを備えている。CPU835は、前記電圧印加装置831並びに偏向器727に信号を供給するようになっている。
【0063】
上記電位印加機構は、試料であるウエハが帯電し難い電位を探し、その電位を印加するように設計されている。
電子光学装置の電子ビームキャリブレーション機構
図10において、電子ビームキャリブレーション機構85は、前記回転テーブル上でウエハの載置面541の側部の複数箇所に設置された、ビーム電流測定用のそれぞれ複数のファラデーカップ851及び852を備えている。ファラデーカップ851は細いビーム用(約φ2μm)で、ファラデーカップ852は太いビーム用(約φ30μm)である。細いビーム用のファラデーカップ851では回転テーブルをステップ送りすることで、ビームプロフィルを測定し。太いビーム用のファラデーカップ852ではビームの総電流量を計測する。ファラデーカップ851及び852は、上表面が載置面541上に載せられたウエハWの上表面と同じレベル(高さ)になるように配置されている。このようにして電子銃から放出される一次電子線を常時監視する。これは、電子銃が常時一定の電子線を放出できるわけでなく、使用しているうちにその放出量が変化するためである。
電子光学装置のアラインメント制御装置
アライメント制御装置87は、ステージ装置50を用いてウエハWを電子光学装置70に対して位置決めさせる装置であって、ウエハを光学顕微鏡871を用いた広視野観察による概略合わせ(電子光学系によるよりも精度が低い測定)、電子光学装置70の電子光学系を用いた高倍率合わせ、焦点調整、検査領域設定、パターンアライメント等の制御を行うようになっている。このように光学系を用いて低倍率でウエハを検査するのは、ウエハのパターンの検査を自動的に行うために、電子線を用いた狭視野でウエハのパターンを観察してウエハライメントを行う時に、電子線によるアライメントマークを容易に検出する必要があるからである。
【0064】
光学顕微鏡871は、ハウジングに設けられ(ハウジング内で移動可能に設けられていてもよい)ており、光学顕微鏡を動作させるための光源も図示しないがハウジング内に設けられている。また高倍率の観察を行う電子光学系は電子光学装置70の電子光学系(一次光学系72及び二次光学系74)を共用するものである。その構成を概略図示すれば、図11に示されるようになる。ウエハ上の被観察点を低倍率で観察するには、ステージ装置50のXステージ53をX方向に動かすことによってウエハの被観察点を光学顕微鏡の視野内に移動させる。光学顕微鏡871で広視野でウエハを視認してそのウエハ上の観察すべき位置をCCD872を介してモニタ873に表示させ、観察位置をおおよそ決定する。この場合光学顕微鏡の倍率を低倍率から高倍率に変化させていってもよい。
【0065】
次に、ステージ装置50を電子光学装置70の光軸と光学顕微鏡871の光軸との間隔δxに相当する距離だけ移動させて光学顕微鏡で予め決めたウエハ上の被観察点を電子光学装置の視野位置に移動させる。この場合、電子光学装置の軸線O3−O3と光学顕微鏡871の光軸O4−O4との間の距離(この実施例ではX軸線に沿った方向にのみ両者は位置ずれしているものとするが、Y軸方向及びY軸方向に位置ずれしていてもよい)δxは予めわかっているのでその値δxだけ移動させれば被観察点を視認位置に移動させることができる。電子光学装置の視認位置への被観察点の移動が完了した後、電子光学系により高倍率で被観察点をSEM撮像して画像を記憶したり、モニタ765に表示させる。
【0066】
このようにして電子光学系による高倍率でウエハの観察点をモニタに表示させた後、公知の方法によりステージ装置50の回転テーブル54の回転中心に関するウエハの回転方向の位置ずれすなわち電子光学系の光軸O3−O3に対するウエハの回転方向のずれδθを検出し、また電子光学装置に関する所定のパターのX軸及びY軸方向の位置ずれを検出する。そしてその検出値並びに別途得られたウエハに設けられた検査マークのデータ或いはウエハのパターンの形状等に関するデータに基づいてステージ装置50の動作を制御してウエハのアライメントを行う。
検査シーケンス(要約)
電子光学装置によるウエハ(資料)検査は、図13に示すごとく要約することができる。すなわち、はじめに光学顕微鏡により、必要に応じて各ダイの位置確認や、各場所の高さ検出が行われ記憶される。次にウエハの種類(どの工程後か、ウエハのサイズは20cmか30cmか等)に応じたレシピの情報を装置に入力し、以下検査場所の指定、電子光学系の設定、検査条件の設定を行なった後、画像取得を行ないながら通常はリアルタイムで欠陥検査を行なう。セル同士の比較、ダイ比較等が、アルゴリズムを備えた高速の情報処理システムにより検査が行なわれ、必要に応じてCRT等に結果を出力や、メモリーへ記憶を行なう。欠陥にはパーティクル欠陥、形状異常(パターン欠陥)、及び電気的欠陥等が有り、これらを区別したり欠陥の大きさや、キラー欠陥(チップの使用が不可能になる重大な欠陥等)の分類を自動的にリアルタイムで行うことも出来る。電気的欠陥の検出は電位コントラスト異状を検出することで達成される。例えば導通不良の場所は電子線照射(500eV程度)により、通常正に帯電し、コントラストが低下するので正常な場所と区別ができる。この場合の電子照射装置とは、通常検査用の電子線照射装置以外に別途、電位差によるコントラストを際立たせるために設けた、低電位のエネルギーの電子線発生装置をいう。試料領域に検査用の電子線を照射する前に、この低電位エネルギーの電子線を発生・照射している。検査用の電子線を照射すること自体、正に帯電させることが出来る写像投影方式の場合は、使用によっては、別途低電位の電子線発生装置を設ける必要はない。また、ウエハ等の試料に基準電位に対して、正又は負の電位をかけること等による(素子の順方向又は逆方向により流れ易さが異なるために生じる)コントラストの違いから欠陥検出が出来る。線幅測定装置及び合わせ精度装置にも利用できる。
上記実施例に係る検査装置における効果
上記実施例に係る検査装置においては、特に、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)複数の電子線すなわちマルチビームを用いた検査装置の各構成機器を機能的に組み合わせることができたため、高いスループットで試料を処理することができる。
(ロ)エンバイロメント空間内に清浄度を観察するセンサを設けることによりその空間内の塵埃を監視しながら試料の検査を行うことができる。
(ハ)プレチャージユニットを設けているので、絶縁物でできたウエハも帯電による影響を受けがたい。
ワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良1)
ウエハ、すなわち、本発明に係る装置における試料である試料を支持するステージに対して非常に高精度な位置決めが要求される場合には、ステージを(高圧ガスによる支持を行う)静圧軸受けによって非接触支持する構造が採用されている。この場合、静圧軸受けから排出される高圧ガスが直接真空チャンバに入らないように、高圧ガスを排気する差動排気機構を静圧軸受けに隣接して形成することによって、真空チャンバの真空度を維持している。
【0067】
かかる従来技術によるステージの一例が図17(A)及び図17(B)に示されている。同図の構造において、真空チャンバCを構成するハウジング14′−2に、電子ビームを発生し試料に照射する電子線検査装置の鏡筒1−2の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2が取り付けられている。鏡筒内部は真空配管18−2によって真空排気されており、チャンバCは真空配管19′−2によって真空排気されている。そして、電子ビームは鏡筒1−2の先端部2−2から、その下に置かれたウエハ等の試料Wに対して照射される。
【0068】
試料Wは試料台tに公知の方法により取り外し可能に保持されており、試料台tはXYステージ(以下単にステージ)3′−2のY方向可動部4′−2の上面に取り付けられている。上記Y方向可動部4′−2には、ステージ3−2のX方向可動部5′−2のガイド面5a′−2と向かい合う面(図17(A)において左右両面及び下面)に静圧軸受け9′−2が複数取り付けられており、この静圧軸受け9′−2の作用によりガイド面との間に微小隙間を維持しながらY方向(図17(B)で左右方向)に移動できる。さらに静圧軸受けの周りには、静圧軸受けに供給される高圧ガスが真空チャンバCの内部にリークしないように差動排気機構が設けられている。この様子を図18に示す。静圧軸受け9−2の周囲に二重に溝g1−2とg2−2が構成されており、これらの溝は図示されていない真空配管と真空ポンプにより常時真空排気されている。このような構造により、Y方向可動部4′−2は真空中を非接触状態で支持されY方向に自在に移動することができるようになっている。これらの二重の溝g1−2とg2−2は可動部4′−2の静圧軸受け9′−2が設けられている面にその静圧軸受けを囲むようにして形成されている。
【0069】
このY方向可動部4′−2を搭載しているX方向可動部5′−2は、図17(A)及び図17(B)からも明らかなように、上方に開口している凹形の形状を有していて、そのX方向可動部5′−2にもまったく同様の静圧軸受け及び溝が設けられていて、ステージ台6′−2に対して非接触で支持されており、X方向に自在に移動することができる。
【0070】
これらのY方向可動部4′−2とX方向可動部5′−2の移動を組み合わせることによって、試料Wを鏡筒の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2に関して水平方向任意の位置に移動させ、試料の所望の位置に電子ビームを照射することができる。
【0071】
上記の静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、差動排気機構を設けたため、大気中で使用される静圧軸受け式ステージに比べて構造が複雑で大型になり、ステージとしての信頼性が低く、高コストになるという問題があった。
【0072】
そこで、本発明では、XYステージの差動排気機構をなくして構造が簡単で、しかも、ワーキングチャンバ内の真空度を維持することができるようにした電子線検査装置を提供する。
改良ステージを備える電子線検査装置
以下において、ステージの改良を行った本発明に係る電子線検査装置の実施例を説明する。なお、図17(A),図17(B)の従来例及び実施例において共通する構成部材を示す参照番号は同じになっている。なお、この明細書中で「真空」とは当該技術分野において呼ばれる真空であって、必ずしも絶対真空を指すものではない。
【0073】
図19には改良されたステージを備える電子線検査装置の第1の実施例が示されている。
【0074】
電子ビームを試料に向かって照射する鏡筒1−2の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2が真空チャンバCを画成するハウジング14−2に取り付けられている。鏡筒1−2の直下には、XYステージ3−2のX方向(図19において左右方向)の可動テーブル上に載置されている試料Wが配置されるようになっている。この試料Wは高精度なXYステージ3−2によって、その試料面上の任意の位置に対して正確に電子ビームを照射させることができる。
【0075】
XYステージ3−2の台座6−2はハウジング14−2の底壁に固定され、Y方向(図19において紙面に垂直の方向)に移動するYテーブル5−2が台座6−2の上に載っている。Yテーブル5−2の両側面(図19において左右側面)には、台座6−2に載置された一対のY方向ガイド7a−2及び7b−2のYテーブルに面した側に形成された凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はY方向ガイドのほぼ全長に亘ってY方向に伸びている。凹溝内に突出する突部の上、下面及び側面には公知の構造の静圧軸受け11a−2、9a−2、11b−2、9b−2、がそれぞれ設けられ、これらの静圧軸受けを介して高圧ガスを吹き出すことにより、Yテーブル5−2はY方向ガイド7a−2、7b−2に対して非接触で支持され、Y方向に円滑に往復運動できるようになっている。また、台座6−2とYテーブル5−2との間には、公知の構造のリニアモータ12−2が配置されており、Y方向の駆動をそのリニアモータで行うようになっている。Yテーブルには、高圧ガス供給用のフレキシブル配管22−2によって高圧ガスが供給され、Yテーブル内に形成されたガス通路(図示せず)を通じて上記静圧軸受け9a−2ないし11a−2及び9b−2ないし11b−2に対して高圧ガスが供給される。静圧軸受けに供給された高圧ガスは、Y方向ガイドの対向する案内面との間に形成された数ミクロンから数十ミクロンの隙間に噴出してYテーブルを案内面に対してX方向とZ方向(図19において上下方向)に正確に位置決めする役割を果たす。
【0076】
Yテーブル上にはXテーブル4−2がX方向(図19において左右方向)に移動可能に載置されている。Yテーブル5−2上にはYテーブル用のY方向ガイド7a−2、7b−2と同じ構造の一対のX方向ガイド8a−2、8b−2(8a−2のみ図示)がXテーブル4−2を間に挟んで設けられている。X方向ガイドのXテーブルに面した側にも凹溝が形成され、Xテーブルの側部(X方向ガイドに面した側部)には凹溝内に突出する突部が形成されている。その凹溝はX方向ガイドのほぼ全長に亘って伸びている。凹溝内に突出するX方向テーブル4−2の突部の上、下面及び側面には前記静圧軸受け11a−2、9a−2、10a−2、11b−2、9b−2、10b−2と同様の静圧軸受け(図示せず)が同様の配置で設けられている。Yテーブル5−2とXテーブル4−2との間には、公知の構造のリニアモータ13−2が配置されており、XテーブルのX方向の駆動をそのリニアモータで行うようにしている。そして、Xテーブル4−2にはフレキシブル配管21−2によって高圧ガスが供給され、静圧軸受けに高圧ガスを供給するようになっている。この高圧ガスが静圧軸受けからX方向ガイドの案内面に対して噴出されることによって、Xテーブル4−2がY方向ガイドに対して高精度に非接触で支持されている。真空チャンバCは公知の構造の真空ポンプ等に接続された真空配管19−2、20a−2、20b−2によって排気されている。配管20a−2、20b−2の入口側(真空チャンバ内側)は台座6−2を貫通してその上面において、XYステージ3−2から高圧ガスが排出される位置の近くで開口しており、真空チャンバ内の圧力が静圧軸受けから噴出される高圧ガスにより上昇するのを極力防止している。
【0077】
鏡筒1−2の先端部すなわち電子ビーム照射部2−2の周囲には、差動排気機構25−2が設けられ、真空チャンバC内の圧力が高くても電子ビーム照射空間30−2の圧力が十分低くなるようにしてある。すなわち、電子ビーム照射部2−2周囲に取り付けられた差動排気機構25−2の環状部材26−2は、その下面(試料W側の面)と試料との間で微少隙間(数ミクロンから数百ミクロン)40−2が形成されるように、ハウジング14−2に対して位置決めされており、その下面には環状溝27−2が形成されている。環状溝27−2は排気管28−2により図示しない真空ポンプ等に接続されている。したがって、微少隙間40−2は環状溝27−2及び排気口28−2を介して排気され、真空チャンバCから環状部材26−2によって囲まれた空間30−2内にガス分子が侵入しようとしても、排気されてしまう。これにより、電子ビーム照射空間30−2内の圧力を低く保つことができ、電子ビームを問題なく照射することができる。
【0078】
この環状溝は、チャンバ内の圧力、電子ビーム照射空間30−2内の圧力によっては、二重構造或いは三重構造にしてもよい。
【0079】
静圧軸受けに供給する高圧ガスは、一般にドライ窒素が使用される。しかしながら、可能ならば、更に高純度の不活性ガスにすることが好ましい。水分や油分等の不純物がガス中に含まれると、これらの不純物分子が真空チャンバを画成するハウジングの内面やステージ構成部品の表面に付着して真空度を悪化させたり、試料表面に付着して電子ビーム照射空間の真空度を悪化させてしまう。
【0080】
なお、以上の説明において、試料Wは通常Xテーブル上に直接載置されるのでなく、試料を取り外し可能に保持したりXYステージ3−2に対して微少な位置変更を行うなどの機能を持たせた試料台の上に載置されているが、試料台の有無及びその構造は本願発明の要旨には関係ないので、説明を簡素化するために省略されている。
【0081】
以上に説明した電子線検査装置では、大気中で用いられる静圧軸受けのステージ機構をほぼそのまま使用できるので、露光装置等で用いられる大気用の高精度ステージと同等の高精度のXYステージを、ほぼ同等のコスト及び大きさで電子線検査装置用のXYステージに対して実現できる。
【0082】
なお、以上説明した静圧ガイドの構造や配置及びアクチュエータ(リニアモータ)はあくまでも一実施例であり、大気中で使用可能な静圧ガイドやアクチュエータならば何でも適用できる。
【0083】
次に差動排気機構の環状部材26−2及びそれに形成される環状溝の大きさの数値例を図20に示す。なお、この例では環状溝は27a−2及び27b−2の二重構造を有しており、それらは半径方向に隔てられている。
【0084】
静圧軸受けに供給される高圧ガスの流量は、通常おおよそ20L/min(大気圧換算)程度である。真空チャンバCを、内径50mmで長さ2mの真空配管を介して20000L/minの排気速度を有するドライポンプで排気すると仮定すると、真空チャンバ内の圧力は、約160Pa(約1.2Torr)となる。この時、差動排気機構の環状部材26−2及び環状溝等の寸法を、図20に示されるようにすれば、電子ビーム照射空間30−2内の圧力を10−4Pa(10−6Torr)にすることができる。
【0085】
図21において、第2の実施例が示されている。ハウジング14−2によって画成された真空チャンバCには、真空配管74−2、75−2を介してドライ真空ポンプ53−2が接続されている。また、差動排気機構25−2の環状溝27−2は排気口28−2に接続された真空配管70−2を介して超高真空ポンプであるターボ分子ポンプ51−2が接続されている。更に、鏡筒1−2の内部は、排気口18−2に接続された真空配管71−2を介して、ターボ分子ポンプ52−2が接続されている。これらのターボ分子ポンプ51−2、52−2は、真空配管72−2、73−2によってドライ真空ポンプ53−2に接続されている。(本図では、ターボ分子ポンプの粗引きポンプと真空チャンバの真空排気用ポンプを1台のドライ真空ポンプで兼用したが、XYステージの静圧軸受けに供給する高圧ガスの流量、真空チャンバの容積や内表面積、真空配管の内径や長さに応じて、それらを別系統のドライ真空ポンプで排気する場合も考えられる。)
XYステージ3−2の静圧軸受けには、フレキシブル配管21−2、22−2を通して高純度の不活性ガス(N2ガス、Arガス等)が供給される。静圧軸受けから噴出したこれらのガス分子は真空チャンバ内に拡散し、排気口19−2、20a−2、20b−2を通してドライ真空ポンプ53−2によって排気される。また、差動排気機構や電子ビーム照射空間に侵入したこれらのガス分子は環状溝27−2或いは鏡筒1−2の先端部から吸引され、排気口28−2及び18−2を通ってターボ分子ポンプ51−2及び52−2によって排気され、ターボ分子ポンプから排出された後ドライ真空ポンプ53−2によって排気される。
【0086】
このように、静圧軸受けに供給された高純度不活性ガスはドライ真空ポンプに集められて排出される。
【0087】
一方、ドライ真空ポンプ53−2の排気口は、配管76−2を介して圧縮機54−2に接続され、圧縮機54−2の排気口は配管77−2、78−2、79−2及びレギュレータ61−2、62−2を介してフレキシブル配管21−2、22−2に接続されている。このため、ドライ真空ポンプ53−2から排出された高純度不活性ガスは、圧縮機54−2によって再び加圧されレギュレータ61−2、62−2で適正な圧力に調整された後、再びXYテーブルの静圧軸受けに供給される。
【0088】
なお、静圧軸受けに供給されるガスは上述したようにできるだけ高純度にし、水分や油分が極力含まれないようにする必要があるため、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ及び圧縮機は、ガス流路に水分や油分が混入しないような構造であることが求められる。また、圧縮機の排出側配管77−2の途中にコールドトラップやフィルタ等(60−2)を設け、循環するガス中に混入した水分や油分等の不純物質をトラップして静圧軸受けに供給されないようにすることも有効である。
【0089】
こうすることによって、高純度不活性ガスを循環させて再利用できるので、高純度不活性ガスを節約でき、また、本装置が設置された部屋に不活性ガスをたれ流さないので、不活性ガスによる窒息等の事故が発生する恐れもなくすことができる。
【0090】
なお、循環配管系には高純度不活性ガス供給系63−2が接続されており、ガスの循環を始める際に、真空チャンバCや真空配管70−2〜75−2及び加圧側配管76−2〜80−2を含む全ての循環系に高純度不活性ガスを満たす役割と、何らかの原因で循環するガスの流量が減少した際に不足分を供給する役割とを担っている。
【0091】
また、ドライ真空ポンプ53−2に大気圧以上まで圧縮する機能を持たせることによって、ドライ真空ポンプ53−2と圧縮機54−2を1台のポンプで兼ねさせることも可能である。
【0092】
更に、鏡筒の排気に用いる超高真空ポンプには、ターボ分子ポンプの代わりにイオンポンプやゲッタポンプ等のポンプを使用することも可能である。ただし、これらの溜込み式ポンプを用いた場合は、この部分には循環配管系を構築することはできないことになる。また、ドライ真空ポンプの代わりに、ダイヤフラム式ドライポンプ等、他方式のドライポンプを使用することももちろん可能である。
改良されたステージを備える電子線検査装置における効果
上記の如きステージを備える本発明に係る電子線検査装置においては、次のような効果を奏することが可能である。
(イ)大気中で一般に用いられる静圧軸受け式のステージと同様の構造を持ったステージ(差動排気機構を持たない静圧軸受け支持のステージ)を使用して、ステージ上の試料に対して電子ビームによる処理を安定に行うことができる。
(ロ)電子ビーム照射領域の真空度に対する影響を最小限に抑えることが可能になり、電子ビームによる試料への処理を安定化させることができる。
(ハ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を安価に提供することができる。
(ニ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を安価に提供することができる。
(ホ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
ワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良2)
上記ワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良1)において述べた従来技術に係る静圧軸受けと差動排気機構を組み合わせたステージでは、ステージが移動する際に、静圧軸受けに対向するガイド面は、静圧軸受け部の高圧ガス雰囲気とチャンバ内の真空環境の間を往復運動する。この時ガイド面では、高圧ガス雰囲気に曝されている間にガスが吸着し、真空環境に露出されると吸着していたガスが放出されるという状態が繰り返される。このためステージが移動する度に、チャンバ内の真空度が悪化するという現象が起こり、上述した電子ビームによる露光や検査や加工等の処理が安定に行えず、このために、試料が汚染されてしまうという問題もあった。
【0093】
本発明では、このような従来装置における問題をも解消することを目的に、以下に説明するごとき改良したステージを備えた電子線検査装置を提供する。
改良されたステージを備えた電子線検査装置
(第1の実施例)
図22(A),図22(B)は、その第1の実施例が示されている。
【0094】
ステージ3−3のY方向可動部5−3の上面には+Y方向と−Y方向(図22(B)で左右方向)に大きくほぼ水平に張り出した仕切り板14−3が取り付けられ、X方向可動部6−3の上面との間に常にコンダクタンスが小さい絞り部50−3が構成されるようになっている。また、X方向可動部6−3の上面にも同様の仕切り板12−3が±X方向(図22(A)で左右方向)に張り出すように構成されており、ステージ台7−3の上面との間に常に絞り部51−3が形成されるようになっている。ステージ台7−3は、ハウジング8−3内において底壁の上に公知の方法で固定されている。
【0095】
このため、試料台4−3がどの位置に移動しても常に絞り部50−3と51−3が形成されるので、可動部5−3及び6−3の移動時にガイド面6a−3や7a−3からガスが放出されても、絞り部50−3と51−3によって放出ガスの空間Cへの移動が妨げられるため、電子ビームが照射される試料近傍の空間24−3の圧力上昇を非常に小さく押さえることができる。
【0096】
ステージの可動部3−3の側面及び下面並びに可動部6−3の下面には、静圧軸受け9−3の周囲に、図2に示されるような差動排気用の溝が形成されていてこの溝によって真空排気されるため、絞り部50−3、51−3が形成されている場合は、ガイド面からの放出ガスはこれらの差動排気部によって主に排気されることになる。このため、ステージ内部の空間13−3や15−3の圧力は、チャンバC内の圧力よりも高い状態になっている。したがって、空間13−3や15−3を、差動排気溝17−3や18−3で排気するだけでなく、真空排気する箇所を別に設ければ空間13−3や15−3の圧力を下げることができ、試料近傍24−3の圧力上昇を更に小さくすることができる。このための真空排気通路11−1・3と11−2・3とが設けられている。排気通路はステージ台7−3及びハウジング8−3を貫通してハウジング8−3の外部に通じている。また、排気通路11−2はX方向可動部6−3に形成されX方向可動部6−3の下面に開口している。
【0097】
また、仕切り板12−3及び14−3を設置すると、チャンバCと仕切り板が干渉しないようにチャンバを大きくする必要が生じるが、仕切り板を伸縮可能な材料や構造にすることによってこの点を改善することが可能である。この実施例としては、仕切り板をゴムで構成したり蛇腹状にして、その移動方向の端部を、仕切り板14−3の場合はX方向可動部6−3に、仕切り板12−3の場合はハウジング8−3の内壁にそれぞれ固定する構成とすることが考えられる。
(第2の実施例)
図23には、第2の実施例が示されている。
【0098】
この実施例では、鏡筒の先端部すなわち電子ビーム照射部2−3の周囲に、試料Sの上面との間に絞り部ができるように円筒状の仕切り16−3が構成されている。このような構成では、XYステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇しても、仕切りの内部24−3は仕切り16−3で仕切られており真空配管10−3で排気されているので、チャンバC内と仕切りの内部24−3との間に圧力差が生じ、仕切り内部の空間24−3の圧力上昇を低く抑えられる。仕切り16−3と試料面との隙間は、チャンバC内と照射部2−3周辺の圧力をどの程度に維持するかによって変わるが、凡そ数十μmないし数mm程度が適当である。なお、仕切り16−3内と真空配管とは公知の方法により連通されている。
【0099】
また、電子ビーム照射装置では、試料Sに数kV程度の高電圧を印加することがあり、導電性の材料を試料の近傍に設置すると放電を起こす恐れがある。この場合には、仕切り16−3の材質をセラミックス等の絶縁物で構成すれば、試料Sと仕切り16−3との間で放電を起こすことがなくなる。
【0100】
なお、試料S(ウエハ)の周囲に配置したリング部材4−1・3は試料台4−3に固定された板状の調整部品であり、ウエハのような試料の端部に電子ビームを照射する場合であっても、仕切り16−3の先端部全周に亘って微小隙間52−3が形成されるように、ウエハと同一の高さに設定されている。これによって、試料Sのどの位置に電子ビームが照射しても、仕切り16−3の先端部には常に一定の微小隙間52−3が形成され、鏡筒先端部周囲の空間24−3の圧力を安定に保つことができる。
(第3の実施例)
図24には、前述のワーキングチャンバ内の真空度の維持(ステージの改良1)において説明したものと実質的に同じ内容を有する第3の実施例が示されている。
【0101】
鏡筒1−3の電子ビーム照射部2−3の周囲に差動排気構造を内蔵した仕切り19−3が設けられている。仕切り19−3は円筒状の形状をしており、その内部に円周溝20−3が形成され、その円周溝からは上方に排気通路21−3が延びている。その排気通路は内部空間22−3を経由して真空配管23−3に繋がれている。仕切り19−3の下端は試料Sの上面との間に数十μmないし数mm程度の微小隙間を形成している。
【0102】
このような構成では、ステージの移動に伴ってステージからガスが放出されてチャンバC内の圧力が上昇し先端部すなわち電子ビーム照射部2−3にガスが流入しようとしても、仕切り19−3が試料Sとの隙間を絞ってコンダクタンスを非常に小さくしているためガスは流入を邪魔され流入量は減少する。更に、流入したガスは、円周溝20−3から真空配管23−3へ排気されるため、電子ビーム照射部2−3の周囲の空間24−3へ流入するガスはほとんどなくなり、電子ビーム照射部2−3の圧力を所望の高真空のまま維持することができる。
【0103】
仕切り19−3に設けられる作動排気構造は、図19ないし図21に示したものとすることができる。
(第4の実施例)
図25は、第4の実施例を示している。
【0104】
チャンバCと電子ビーム照射部2−3の周囲には仕切り26−3が設けられ、電子ビーム照射部2−3をチャンバCから隔てている。この仕切り26−3は、銅やアルミニュウム等の熱伝導性の良い材料からなる支持部材29−3を介して冷凍機30−3に連結されており、−100℃ないし−200℃程度に冷却されている。部材27−3は冷却されている仕切り26−3と鏡筒の間の熱伝導を阻害するためのものであり、セラミックスや樹脂材等の熱伝導性の悪い材料から成っている。また、部材28−3はセラミックス等の非絶縁体から成り、仕切り26−3の下端に形成され試料Sと仕切り26−3が放電することを防ぐ役割を持っている。
【0105】
このような構成により、チャンバC内から電子ビーム照射部に流入しようとするガス分子は、仕切り26−3で流入を阻害される上、流入しても仕切り26−3の表面に凍結捕集されてしまうため、電子ビーム照射部24−3の圧力を低く保つことができる。
【0106】
なお、冷凍機としては、液体窒素による冷却や、He冷凍機、パルスチューブ式冷凍機等の様様な冷凍機が使用できる。
(第5の実施例)
図26は、第5の実施例を示している。
【0107】
ステージ3−3の両可動部には、図22に示したのと同様に仕切り板12−3、14−3が設けられており、試料台4−3が任意の位置に移動しても、これらの仕切りによってステージ内の空間13−3とチャンバC内とが絞り50−3、51−3を介して仕切られる。更に、電子ビーム照射部2−3の周りには図23に示したのと同様の仕切り16−3が形成されており、チャンバC内と電子ビーム照射部2−3のある空間24−3が絞り52−3を介して仕切られている。このため、ステージ移動時、ステージに吸着しているガスが空間13−3に放出されてこの部分の圧力を上昇させても、チャンバCの圧力上昇は低く抑えられ、空間24−3の圧力上昇は更に低く抑えられる。これにより、電子ビーム照射空間24−3の圧力を低い状態に保つことができる。また、仕切り16−3に示したように差動排気機構を内蔵した仕切り19−3(図24)としたり、図25に示したように冷凍機で冷却された仕切り26−3とすることによって、空間24−3を更に低い圧力で安定に維持することができるようになる。
改良されたステージ(2)を備える電子線検査装置の効果
上記のごとき電子線検査装置においては、次のような効果を得ることができる。
(イ)ステージ装置が真空内で高精度な位置決め性能を発揮することができ、更に、電子ビーム照射位置の圧力が上昇しにくい。すなわち、試料に対する電子ビームによる処理を高精度に行うことができる。
(ロ)静圧軸受け支持部から放出されたガスが仕切りを通過して電子ビーム照射領域側に通過することがほとんどできない。これによって電子ビーム照射位置の真空度を更に安定させることができる。
(ハ)電子ビーム照射領域側に放出ガスが通過することが困難になり、電子ビーム照射領域の真空度を安定に保ち易くなる。
(ニ)真空チャンバ内が、電子ビーム照射室、静圧軸受け室及びその中間室の3室に小さいコンダクタンスを介して分割された形になる。そして、それぞれの室の圧力を、低い順に電子ビーム照射室、中間室、静圧軸受け室となるように真空排気系を構成する。中間室への圧力変動は仕切りによって更に低く抑えられ、電子ビーム照射室への圧力変動は、もう一段の仕切りによって更に低減され、圧力変動を実質的に問題ないレベルまで低減することが可能となる。
(ホ)ステージが移動した時の圧力上昇を低く抑えることが可能になる。
(ヘ)ステージが移動した時の圧力上昇を更に低く抑えることが可能である。
(ト)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビームの照射領域の真空度が安定した検査装置を実現することができるので、検査性能が高く、試料を汚染する恐れのない検査装置を提供することができる。
(チ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した露光装置を実現することができるので、露光精度が高く、試料を汚染する恐れのない露光装置を提供することができる。
(リ)ステージの位置決め性能が高精度で、かつ電子ビーム照射領域の真空度が安定した装置によって半導体を製造することにより、微細な半導体回路を形成できる。
スループットの向上(複数光学系(鏡筒)を有する電子光学装置)
上記実施例に係る検査装置の電子光学装置では、単一の電子源から放出する電子線を複数の開口を備える開口板を通してマルチビームすなわち複数のビームを形成し、これによりウエハの検査を行う鏡筒を備える単一の電子光学系により、スループットの向上を図っているが、本発明では複数の鏡筒(光学系)を備え、これら複数の光学系により同時に複数の範囲(従って、広い範囲)の検査を可能とすることにより、スループットを更に向上させるようにした電子光学装置を提供する。
(複数光学系(鏡筒)電子光学装置の第1の実施例)
第1の実施例では、図28に示すように、4個の電子光学系(鏡筒)1a−4、1b−4、1c−4、1d−4(個々の最大外径60a−4、60b−4、60c−4、60d−4)が、ウエハWの検査面を走査するため、ステージ48−4(即ちウエハ)の移動方向21−4に垂直な方向にウエハW上で一列に配置される。
【0108】
電子光学系1a−4、1b−4、1c−4、1d−4のそれぞれは、基本的には、図7に示した同様の構造を有するものであり、電子銃1−4、コンデンサレンズ2−4、マルチ開口板3−4、開口絞り4−4、コンデンサレンズ5−4、E×B分離器7−4、静電偏向器6−4,8−4、対物レンズ10−4、拡大レンズ12−4、13−4、検出器開口板14−4、検出器15−4、偏向器20−4、ステージ48−4、コントローラ50−4、ディスプレイ52−4を有する。
【0109】
図27(a)には、図28の光学系のうちの1つの光学系1a−4の1次電子線照射装置(1次光学系)及び2次電子線検出装置の上面から見た位置関係が模式的に示されている。ここで、輪郭60a−4は1次電子線照射系の最大外径を示し、この最大外径60a−4の直径方向に沿って等間隔に一列に並んでいるのが、マルチ開口板3−4の開口17−4を通過した1次電子線のマルチ開口領域16−4である。18−4は上記した2次電子検出器の光軸であり、マルチ開口領域16−4の電子線の照射によりウエハから発生した2次電子のマルチビームは、E×B分離器7−4で偏向された後、光軸18−4に沿って進行し拡大されてから各々のビームが検出器15−4のマルチ検出素子で検出されるように1次電子線照射系及び2次電子線検出系の相対位置関係が定められている。図より明らかに、マルチ開口領域16−4即ちマルチ開口17−4の各々は、各々のマルチ検出素子に対応しており、マルチビームが途中でクロストークすることはないことがわかる。
【0110】
本実施例の電子光学装置を構成する他の光学系1b−4、1c−4…も、上記と同様の1次電子線照射装置、E×B分離器及び2次電子検出装置を各々有する。コントローラ50−4及びステージ48−4は共有とすることができる。但し、コントローラ50−4の一部の機能である2次電子画像の信号処理回路等は、コントローラに内臓する代わりに必要に応じて各光学系毎に設けてもよい。これら複数の光学系1a−4、1b−4、....は1枚のウエハWの上方で並列に配置され1枚のウエハW上の夫々異なる領域に1次電子を照射し、各領域から発生した2次電子を各々検出する。
【0111】
各光学系は互いに干渉しないように、各光学系の2次光学系の光軸18−4がこの列方向に垂直な方向即ちステージ移動方向21−4に沿って互い違いに逆向きに配置されている。この場合、マルチ開口領域16−4の並び及び検出器15−4のマルチ検出素子の並びも、ステージ移動方向21−4に直角方向となる。
【0112】
8”(約20cm)ウエハの場合1次電子線照射装置の最大外径を40mmφとすれば、図28の並びの場合、8”ウエハ上で5本の光学系を配置することが可能となるが、周辺部はウエハの外部に出ることが多いので、実際には、4光学系程度となる。最大外径を30mmφにできれば、6本程度配置することができる。
【0113】
次に、この電子光学装置の作用を説明する。
【0114】
光学系1a−4〜1d−4の電子銃1から各々放出された単一の1次電子線は、コンデンサレンズ2−4で収束され、開口絞り4−4でクロスオーバー像を形成する。この途中で1次電子線は、マルチ開口板3−4に照射される。マルチ開口17−4を通過した数のビームが形成されるので、本実施例では各光学系毎に7本のマルチビームを形成する。これらのマルチビームは、コンデンサレンズ5−4によってE×B分離器7−4の主面11−4に結像され、更に対物レンズ9−4によってウエハW上に縮小結像される。このとき、ウエハ上には、各光学系毎に7つの照射スポット(図28参照)が形成され、各照射スポットから2次電子が放出される。静電偏向器6−4及び8−4は、マルチビームをステージ移動方向21−4に垂直な方向に沿って、隣接するビーム間隔より僅かに広い領域を偏向させる。この偏向によって、ウエハ上の照射スポットはビームの並び方向を切れ目なく走査できる。この間、ステージ48−4は移動方向21−4に沿って、所定幅で逐次、同期的に連続移動制御されるので、ウエハの検査面全体を走査可能となる。例えば4本の光学系でビームの並び方向の検査可能な幅を2mmとすると、20回程度のステージ連続移動で、4光学系の場合、160mm角の評価ができる。
【0115】
ウエハの各照射スポットから発生した2次電子のマルチビームは略垂直上方に進行し、加速されてE×B分離器7−4に至り、そこに存在する場E×Bによって光軸55−4に対して所定角度をなす方向に偏向され、2次光学系の光軸18−4に沿って進行する。これらの2次電子のマルチビームは、拡大レンズ12−4及び13−4によって互の間隔が拡大され、検出器開口板14−4を通過してマルチ検出素子15−4の各々で検出される。このとき、偏向器6−4、8−4による1次電子線の偏向で生じる2次電子線の位置変位は、補正偏向器19−4によって相殺される。即ち、1次電子線の走査の如何に係らず、2次電子のマルチビームの各々は、常に検出器開口板14−4の対応する開口を通過し、その背面にある対応する検出素子で検出される。
【0116】
マルチ検出素子15−4は、2次電子線強度を示す信号をコントローラ50−4に出力する。コントローラ50−4は、各光学系1a−4〜1d−4の検出素子15−4からの出力信号を1次電子線の偏向制御及びステージ48−4の移動制御と同期して逐次受信し、最終的に半導体ウエハWの検査面全体に亘る2次電子線の強度分布画像を得る。
【0117】
コントローラ50−4は、メモリに予め蓄えられていた欠陥の存在しないウエハの2次電子線画像と、実際に検出された2次電子線画像とを比較照合して、欠陥部分を自動的に検出する。また、同じダイを多数有するウエハの場合、検出されたダイ同士の検出画像を比較することによっても欠陥部分を検出できる。このとき、検出画像をディスプレイ52−4に表示すると共に欠陥部分と判定された部分をマーク表示してもよい。これによって、オペレータは、ウエハWが実際に欠陥を持つか否かを最終的に確認、評価することができる。
【0118】
このような欠陥検査方法の具体例を図30乃至図32に示す。まず、図30には、1番目に検出されたダイの画像31−4及び2番目に検出された他のダイの画像32−4が示されている。3番目に検出された別のダイの画像が1番目の画像31−4と同じか又は類似と判断されれば、2番目のダイ画像32−4の33−4の部分が欠陥を有すると判定され、欠陥部分を検出できる。
【0119】
図31には、ウエハ上に形成されたパターンの線幅を測定する例が示されている。ウエハ上の実際のパターン34−4を35−4の方向に走査したときの実際の2次電子の強度信号が36−4であり、この信号が予め較正して定められたスレッシホールドレベル37−4を連続的に超える部分の幅38−4をパターン34−4の線幅として測定することができる。このように測定された線幅が所定の範囲内にない場合、当該パターンが欠陥を有すると判定することができる。
【0120】
図32には、ウエハ上に形成されたパターンの電位コントラストを測定する例が示されている。図27(b)に示す構成において、対物レンズ9−4とウエハWとの間に軸対称の電極39−4を設け、例えばウエハ電位0Vに対して−10Vの電位を与えておく。このときの−2Vの等電位面は40−4で示されるような形状とする。ここで、ウエハに形成されたパターン41−4及び42−4は、夫々−4Vと0Vの電位であるとする。この場合、パターン41−4から放出された2次電子は等電位面40−4で2eVの運動エネルギーに相当する上向きの速度を持っているので、このポテンシャル障壁40−4を越え、軌道43−4に示すように電極39−4から脱出し、検出器15−4で検出される。一方、パターン42−4から放出された2次電子は−2Vの電位障壁を越えられず、軌道44−4に示すようにウエハ面に追い戻されるので、検出されない。従って、パターン41−4の検出画像は明るく、パターン42−4の検出画像は暗くなる。かくして、電位コントラストが得られる。検出画像の明るさと電位とを予め較正しておけば、検出画像からパターンの電位を測定することができる。そして、この電位分布からパターンの欠陥部分を評価することができる。
【0121】
図27(b)において、ブランキング偏向器20−4を設け、この偏向器20−4によって1次電子線を開口絞り4−4の開口外側部分に所定周期で偏向させ、当該ビームを短時間のみ通して他の時間は遮断することを繰り返すことによって、短いパルス幅のビーム束を作ることが可能となる。このような短パルス幅ビームを用いて上記したようなウエハ上の電位測定等を行えば、高時間分解能でデバイス動作を解析可能となる。即ち、本電子光学装置をマルチビームのいわゆるEBテスターとして使用することが可能となる。
【0122】
第1の実施例では、ステージ48−4の戻り動作が少ないので、ステージ移動に要する無駄時間を減少させることができる。
(第2の実施例)
第2の実施例に係る電子光学装置は、複数の光学系がウエハW上で2行m列(m>1)に配置された構成に関する。
【0123】
図29には、6個の光学系が2行3列に配列された構成例の上面図が示されている。なお、電子光学装置及び各光学系の具体的な構成要素については第1の実施例とほぼ同様であるので、同一の符号を附して詳細な説明を省略する。
【0124】
図29では、6個の光学系の1次電子線照射装置の最大外径は、夫々60a−4〜60f−4によって示されている。複数の光学系は、各々が互いに干渉しないように各2次光学系の光軸18−4(2次電子線の経路)が行の並び方向に沿ってウエハ外側に向かうように配置される。列の数mは、好ましくは3、4列程度であるが、これ以外の2列、或いは4列以上であってもよい。
【0125】
また、マルチ開口領域16−4及びマルチ検出器15−4は1つの光学系で3行3列の配列とし、収差が少ない範囲内に可能な限り多くのマルチビーム及び検出素子が入るようにしている。ステージ48−4は、逐次ステップ移動を繰り返し動作させることで、水平面内を移動される。検査方法については第1実施例と同様である。
【0126】
第2の実施例では、光学系(鏡筒)数を多くし、更に1つの光学系に、より多くのマルチビーム及び検出素子を設けたので、半導体ウエハ検査工程のスループットを更に向上させることができる。
(複数光学系(鏡筒)電子光学装置の効果)
以上詳細に説明したように本発明に係る複数光学系電子光学装置によれば、1次電子の照射及び2次電子の検出を単独で行うことができる光学系を複数設け、試料上の異なる領域を評価できるようにしたので、高分解能を維持しつつスループットを大幅に向上させることができる、という優れた効果が得られる。
マルチビーム検査装置における電子光学系の軸合わせ
上述したマルチビーム検査装置においては、その電子光学系の軸合わせが重要である。本発明では、以下のような、軸合わせの装置を備える電子ビーム検査装置を提供する。(一次光学系の軸合わせ)
図33は、本発明における軸合わせを説明するための電子光学系を示しており、その構成及び作用については、前述のマルチビーム検査装置と実質的に同じであり、それらについての説明の重複は避ける。
【0127】
この電子光学系は、前述のものと同様に、電子銃1−5、コンデンサレンズ2−5、縮小レンズ6−5、静電偏向器5−5、12−5、軸対称電極11−5及び対物レンズ9−5を含む一次光学系と、拡大レンズ14−5、15−5を含む二次光学系とを有しており、まず、一次電子光学系における軸合わせについて説明する。ここで、軸合わせとは、マルチビームの軸線と光学系の光軸とを整合させることをいう。
【0128】
一次光学系におけるレンズ、すなわち、コンデンサ・レンズ2−5、縮小レンズ6−5、対物レンズ9−5に対する軸合わせは、基本的には、それらのレンズの励起電圧を小さく変化させたとき、少なくとも2つのビーム位置の試料面上での動き量が同じ大きさになるように調整することにより行う。この場合の2つのビームとは、マルチビームの中心から等距離にあるビーム(たとえば、図に示した点を中心とする円周上のビーム)とする。
【0129】
また、対物レンズ9−5の軸合わせは次のようにして行うことができる。まず、図34に示すように、試料10−5の面上の、複数の一次電子ビームが結像する各位置(黒丸で示す)に、XラインとYラインとの組合わせからなる(各ビームの基準照射位置を示す)マーカー21−5、22−5、・・・・、2n−5を設け、各マーカーへの一次電子ビームの合焦条件を測定する。この測定は、複数の一次電子ビームをx方向に走査したときの信号のコントラストとy方向に走査したときの信号のコントラストとを少なくとも3つの対物レンズ励起電圧について行い、その測定結果を、励起電圧に対するx方向及びy方向のコントラストの変化としてグラフ化する。求めたグラフから、例えば、x方向のコントラストが最大になる励起電圧をVox、y方向のコントラストが最大になる励起電圧をVoyとすると、合焦条件は(Vox+Voy)/2となる。少なくとも2つの電子ビーム、例えば、前述のように、光軸を中心とする円の直径方向に対向する2つの電子ビームについての合焦条件の差が最小になるように、対物レンズ9の軸合わせ条件を求める。即ち合焦条件の差が最小であるという事は2つのビームか対物レンズの軸からの距離の差が最小の位置を通る事を意味している。
【0130】
以上のように、マルチビーム電子光学系での軸合わせを行うことにより、複数の一次電子ビームを用いることにより、欠陥検査やCD検査等の各種検査を、精度を落とすことなく、スループットを高めることができる、
(二次光学系の軸合わせ)
次に、二次光学系における軸合わせについて説明する。
【0131】
図35は、上記と同様のマルチビーム電子光学系を示している。図示の通り、この電子光学系の二次電子光学系は、第1の拡大レンズ、9−6、第2の拡大レンズ10−6、マルチ開口板11−6,検出器12−6、第1の偏向器19−6、第2の偏向器20−6、クロスオーバ絞り21−6を有している。
【0132】
この二次光学系の軸合わせに関し、ここでは、第2の拡大レンズ10−6と検出用マルチ開口板11−6との間のクロスオーバに絞り21−6を設けた場合について述べる。
【0133】
図35において、走査信号発生回路22−6からの信号は、偏向信号発生回路23−6から出た偏向信号に重畳され、第1の偏向器19−6および第2の偏向器20−6からなる二段偏向器へと与えられる。これらの二段偏向器19−6,20−6は、光軸に直交して設けられ、第2の拡大レンズ10−6への軸合わせを行うモードと、絞り21−6への軸合わせを行うモードとがある。これらのモードにおいては、走査信号発生回路22−6と偏向信号発生回路23−6とで、両偏向器19−6,20−6に与える信号の強度比がモード毎にあらかじめ決められた値に設定されており、それによって偏向器19−6,20−6が制御される。例えば、第2の拡大レンズ10−6の軸合わせ時には、偏向器19−6の出力が1に、偏向器20−6の出力が−1.5にされ、絞り2−61の軸合わせ時には、第2の拡大レンズ10−6の主面が偏向中心になるよう信号の強度比が決められる。
【0134】
画像処理部14−6は、偏向器19−6,20−6による絞り21−6上での電子線の走査に同期して画像を形成する。走査信号を、偏向器19−6,20−6と、画像処理部14−6の画像形成回路とに与え、マルチ検出器12−6の一つからの信号を画像データとして画像処理部14−6に与えると、画像処理部14−6の画像形成回路の走査信号に対応したアドレスのうち、絞り21−6を通った電子線に対応したアドレスにのみ検出器12−6からの強い信号が入力されるので、光軸が合っている場合、図36(a)のような絞り画像24−6が形成される。
【0135】
光軸が合っていない場合は、図36(b)のように、x,yの走査信号がゼロの場所と離れたアドレスに、信号強度が強い絞り画像25−6が形成される。そこで、偏向信号発生回路23−6の出力を変化させて偏向器19−6,20−6に供給する。すると偏向器19−6,20−6は、二次電子線B2を偏向させ、図36(a)に示すように、走査信号x,yともゼロとなるアドレスと絞りの像とを一致させることができる。このとき、軸合わせが終了したことになる。また、この状態を、絞り中心を通過したと呼ぶ。偏向信号発生回路23−6は、偏向信号発生装置と、該偏向信号発生装置の出力を変化させて偏向装置へと供給する装置とを兼ねている。
【0136】
上記の方法は、軸合わせに人を関与させず、自動的に行わせることができる。
【0137】
この電子光学系では、上記の如き軸合わせにより以下の如き効果を奏することができる。
【0138】
絞りに関する軸合わせを自動的に行うことができる。
【0139】
走査用の偏向器と軸合わせ用の偏向器とを兼用できるので、偏向器の数が半分で済む。
【0140】
マルチビームに対する軸合わせも可能となった。
【0141】
二次光学系の絞りを、E×B分離器とマルチ検出器との間に設けることにより、一次光学系の絞りとは無関係に二次光学系の絞りを決められる。
(ウィーンフィルタすなわちE×B分離器への軸合わせ)
以上で説明した検査装置における電子光学装置において用いられているE×B分離器は、試料の表面に垂直な平面内において電界と磁界とを直交させた構造となっていて、電界、磁界、電子のエネルギー及びその速度の関係が一定の条件を満たしたときには電子を直進させそれ以外のときには偏向させる作用を有するが、E×B分離器の構造上電界及び磁界が一様に分布している領域と、それらの分布が一様でない領域とが存在する。マルチビームを用いた電子線検査装置を使用して精度の良い欠陥検査を行うためには、それぞれの電子ビームについてのE×B分離器への軸合わせ、即ち、E×B分離器の電界及び磁界が一様な領域を求め、その領域にそれぞれの電子ビームを進行させるように調整を行う必要がある。
【0142】
しかしながら、E×B分離器をマルチビームによる電子線検査装置に使用する場合には、E×B分離器の電界及び磁界が一様な領域とE×B分離器を通るマルチビームの領域とが同程度にまで広い領域に亘り広がっている。従って、各電子ビームのE×B分離器への軸合わせの調整が不十分である場合には、マルチビームの内の幾つかの電子ビームは当該電界及び磁界が一様な領域から逸れてビームの特性に悪影響を及ぼし、視野の端部での歪みや像のぼけが増大する。
【0143】
本発明は、マルチビームによる電子線検査装置にE×B分離器を使用することにより生じる像の歪みやぼけを解消するため、E×B分離器へのマルチビームの軸合わせを行う方法をも提供する。
【0144】
以下図面を参照して、E×B分離器へのマルチビームの軸合わせを説明する。
【0145】
図37に示される電子線検査装置1の光学系は、上述した検査装置のものと実質的に同様の構成を有しており、第一次光学系10−7と、第二次光学系30−7と、検出装置40−7と、検査されるべき試料をX方向及びY方向に移動するX−Yステージ80−7とを備えている。第一次光学系10−7は、電子線を試料すなわちウエハWの表面に照射する光学系で、電子線を放出する電子銃11−7と、電子銃から放出された電子線を偏向する静電レンズ12−7と、直線状に並べられた複数の小孔(本実施形態では13a−7ないし13h−7の8個)が形成された第一のマルチ開口板13−7と、静電偏向器14−7と、第一のマルチ開口板13−7を通過したマルチビームを偏向する静電縮小レンズ15−7と、マルチビームを走査する静電偏向器16−7と、E×B分離器17−7と、静電対物レンズ18−7と、電子ビームを軸合わせするための軸合わせ装置19−7とを備え、それらは、図37に示すように電子銃11−7を最上部にして順に、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料Wに垂直になるように配置されている。なお、電子銃11−7の内部にはカソードを直線状に並べられた多数の突起形状にした突起部(本実施形態では、例えば、図37に示すように11a−7ないし11h−7の8個)が形成されている。
【0146】
第二次光学系30−7は、第一次光学系10−7のE×B分離器17−7の近くで光軸Aに対して傾斜している光軸Bに沿って配置された2つの静電拡大レンズ31−7及び32−7と、第一のマルチ開口板13−7の小孔の数及び配列に合わせて形成された複数の小孔(本実施形態では33a−7ないし33h−7の8個)が形成された第二のマルチ開口板33−7と、を備えている。
【0147】
検出装置40−7は第二のマルチ開口板33−7の各開口毎に検出器41−7を備えている。また、各検出器41−7は増幅器42−7を介して画像処理部43−7と接続され、画像処理部43−7は更に静電偏向器16−7に与えた信号と同じ信号が与えられている。
【0148】
上記各構成要素は公知のものであってもよく、それらの構造の詳細説明は省略
する。
【0149】
次に上記構成の電子線検査装置1−7の動作について説明する。
【0150】
単一の電子銃11−7の多数の突起部(11a−7ないし11h−7)からは8方向に電子線が放出される。放出された電子線Cは静電レンズ12−7で集束されてクロスオーバーC1を形成する。静電レンズ12−7で集束された電子線Cは第一のマルチ開口板13−7を照射して、第一のマルチ開口板13−7に直線状に並べて(例えばX方向に)形成された複数の小孔(13a−7ないし13h−7)を通過して8本のマルチビームにされる。これらマルチビームのそれぞれの電子ビームは、静電縮小レンズ15−7により縮小されて点50−7で示された位置に投影され、点50−7で合焦した後、静電対物レンズ18−7により試料Wに合焦される。第一のマルチ開口板13−7から出たマルチビームは静電縮小レンズ15−7と静電対物レンズ18−7の間に配置された静電偏向器16−7により、同時に試料Wの表面を走査するように偏向される。
【0151】
合焦されたマルチビームにより試料Wの8個の点が照射され、これらの照射された点から放出された二次電子は、静電対物レンズ18−7の電界に引かれて細く集束され、E×B分離器17−7で偏向され、二次光学系に投入される。二次電子の像は点50−7よりも静電対物レンズに近い点51−7に結像する。これは一次のマルチビームの各々が500eVのエネルギーを有するのに対して、二次電子は数eVのエネルギーしか有していないためである。結像した二次電子は光軸Bに沿って移動されて静電拡大レンズ31−7及び32−7に入射する。これらの静電拡大レンズを通過した二次電子は第二のマルチ開口板33−7の複数の小孔(33a−7ないし33h−7)の位置に結像する。この小孔を通過した電子は対応する検出器41−7により検出される。この場合、第一のマルチ開口板13−7の小孔13a−7を通った電子ビームにより試料Wで放出された二次電子は第二のマルチ開口板33−7の小孔33a−7を通して、第一のマルチ開口板の小孔13b−7を通った電子ビームにより試料Wで放出された二次電子は第二のマルチ開口板33−7の小孔33b−7を通して、第一のマルチ開口板の小孔13c−7を通った電子ビームにより試料Wで放出された二次電子は第二のマルチ開口板32−7の小孔33c−7を通して、と言ったように、電子ビームにより試料面で放出された二次電子は第一のマルチ開口板13−7の各小孔に対応する第二のマルチ開口板33−7の各小孔を通ってそれぞれの検出器41−7に入射する。
【0152】
それぞれの検出器41−7は、検出した二次電子をその強度を表す電気信号へ変換する。各検出器から出力された電気信号は増幅器42−7によってそれぞれ増幅された後、画像処理部43−7によって受信され、画像データへ変換される。画像処理部43−7には一次の電子ビームを偏向させるための走査信号が更に供給されるので、画像処理部43−7は試料Wの表面を表す画像を表示する。この画像を標準パターンと比較することにより試料Wの欠陥を検出することができる。
【0153】
ここで、第一のマルチ開口板13−7の小孔を通過した各電子ビームを試料面に合焦させ、試料Wから放出された二次電子を検出器41−7で検出する際に、第一次光学系で生じる歪み、像面湾曲及び視野非点という3つの収差による影響を最小にするように特に配慮する必要がある。
【0154】
静電偏向器16−7及びE×B分離器17−7の磁界に走査信号を印加することにより、試料Wが二次元的に走査されて、走査型電子顕微鏡信号が画像処理部43−7に表示される。試料Wの表面にはマーカ(37の+字形の記号)20−7が設けられており、このマーカ20−7の大きさは5ミクロンである一方、8本の電子ビームは相互に100ミクロン程度離れた位置に結像される。従って、マーカ20−7の像は1本の電子ビームのみで走査して画像処理部43−7に表示することができる。
【0155】
次に、複数の電子ビームの軸合わせ方法について説明する。電子ビームのE×B分離器17−7への軸合わせは軸合わせ装置19−7を用いて行われる。まず、8本の電子ビームの内で、第一のマルチ開口板13−7の一番右端の小孔13h−7により形成された電子ビームのみで試料上のマーカ20−7を走査するように、X−Yステージ80−7の位置を決定した後、静電偏向器16−7とE×B分離器17−7の磁界に走査信号を与えることによりマーカ20−7を二次元的に走査して検出器41−7で検出し、画像処理部43−7にマーカ20−7の像を表示させる。この状態で、E×B分離器17−7に印加する電圧を基準値と基準値+10ボルトで周期的に変動させる。この場合、画像処理部43−7には、図37に示されているように、相互に位置移動量44−7だけ離れた2つのマーカの像が表示される。この位置移動量44−7は、小孔13h−7を通った電子ビームがE×B分離器17−7の電圧変動により偏向された偏向量に対応する。この位置移動量44−7の値は記憶しておく。
【0156】
次に、第一のマルチ開口板13−7の一番左端の小孔13a−7により形成された電子ビームのみで試料上のマーカ20−7を走査するように、X−Yステージ80−7の位置を決定し、マーカ20−7を走査して検出器41−7で検出し、画像処理部43−7にマーカ20−7の像を表示させる。この小孔13a−7により形成された電子ビームは、第一次光学系10−7の光軸Aに対して上記小孔13h−7により形成された電子ビームとは反対側で等距離に位置しており、従って、これら2本の電子ビームは相互に最も遠い距離に位置していることとなる。この状態で、E×B分離器17−7に印可する電圧を基準値と基準値+10ボルトで周期的に変動させる。この場合も同様に、画像処理部43−7には相互に位置移動量44′−7だけ離れた2つのマーカの像が表示される。この位置移動量44′−7は、小孔13a−7を通った電子ビームがE×B分離器17−7の電圧変動により偏向された偏向量に対応する。この位置移動量44′−7の値も記憶しておく。
【0157】
更に、軸合わせ装置19−7の電圧を別の種々の値に設定し、以下、小孔13h−7を通った電子ビームと小孔13a−7を通った電子ビームについて上記と同様の操作を行い、それぞれについて位置移動量44−7および44′−7を求める。
【0158】
その後、2つの位置移動量44−7と44′−7の差が最も小さくなるような軸合わせ装置19−7の電圧値を求め、軸合わせ装置19−7をその電圧値に固定することにより、E×B分離器に入射する電子ビームの軸合わせが完了する。それにより、E×B分離器の電界及び磁界が一様な領域内に複数の電子ビームを配置することができる。
【0159】
複数の電子ビームの軸合わせの別の方法として、直線状に並んだ電子ビームに替えて、第一のマルチ開口板13−7及び第二のマルチ開口板33−7に、第一の光学系の光軸Aの周囲で当該光軸から等距離の位置に複数個(本実施形態では4個)の小孔をそれぞれ設けることにより、4本のマルチビームを形成しても良い。4本のマルチビームは全て光軸Aから等距離の位置にあるため、E×B分離器17−7の電圧を変化させたときに、これら4本のマルチビームの位置移動量が同じになるように軸合わせする必要がある。従って、8本のビームの内4本の電子ビームそれぞれについて、軸合わせ操作が必要である。
【0160】
また、4本の電子ビームが入射する位置に4個のマーカを設け、それらのマーカの像を画像処理部43−7の4個のモニターで表示して、それぞれの位置移動量44−7、44′−7を同時に測定してもよい。
【0161】
更に、画像処理部43−7を使わずに、コンピュータ制御により自動的にマーカ20−7の位置移動量を測定し、自動的に軸合わせするようにしてもよい。この場合は、マーカ20−7は+字マークよりも、X方向とY方向のライン&スペースのマーカの方が適している。
【0162】
以上の如き電子線検査装置においては、次の如き効果を奏することができる。
(1)マルチビームの各々の電子ビームをE×B分離器の電界及び磁界が一様に分布する領域内に安定的に配置し、全電子ビームを細く絞ることができる。
(2)個々の電子ビームが直線状に並んだ状態のマルチビームの場合は、第一次光学系の光軸に対して対称的に位置している2本の電子ビームのみの軸合わせ調整で足りる。
(3)E×B分離器の電界及び磁界が一様に分布する領域をマルチビームを通す余裕があるか否かを調査することができる。
(4)レンズ磁場の対称位置を探し、その方向に電子ビームを進行させる場合のウォーブラー操作と類似の操作で、E×B分離に入射する電子ビームの軸合わせを行うことができる。
マルチビームとマルチ開口板の開口との整合
マルチビームを発生させる電子銃は、高輝度を得るために指向性の強いビームを発生させる必要があるが、この指向性の強いビームをマルチ開口板に入射させて強いマルチビームを得るには、電子銃からのビーム強度の大きい領域とマルチ開口板の開口位置とを正確に一致させる必要がある。
【0163】
また、試料面のパターンの評価を効率よくおこなうためには、試料面に入射されるマルチビームの試料面における並び方向と試料面上のパターンの方向、すなわち座標軸とを正確に一致させる必要がある。 本発明は、このような視点から、ビーム発生源からマルチ開口板に入射されるビームの強い領域とマルチ開口板の開口位置とを一致させ、また、そこから得られるマルチビームの試料面上における並び方向と試料面のパターン方向とを正確に一致させることができるようにしている。
【0164】
その実施例を以下に説明する。
【0165】
図38において1−8は電子銃であり、カソード3−8と、ウェーネルト電極つまり集束電極5−8と、アノード7−8とを備えている。カソード3−8は、円錐台形のLaB6の単結晶に複数の小突起、つまり電子線放出端が円周上に並んだ形状に形成されている。ウェーネルト電極5−8は、該電極に負の深いバイアス電圧を与えると、電子銃が作るクロスオーバー9−8はカソード側に移動し、カソードの円周上の電子線放出端から放出された電子線の軌道は図の点線位置11−8から実線位置13−8の方へ移動する。逆に、ウェーネルト電極5−8に負の浅いバイアス電圧を与えると実線から点線の方へ移動する。
【0166】
アノード7−8は、通常接地されており、該アノードから出たビームはコンデンサレンズ15−8で収束され、17−8にクロスオーバーを作る。クロスオーバー17−8の電子銃側にはマルチ開口板19−8が設けられており、該マルチ開口板に照射されたビームは該マルチ開口板の開口で小さいマルチビームに整形される。
【0167】
電子銃1−8よりマルチ開口板19−8にビームを照射する際、軸合わせコイル21−8によって、マルチ開口板の中心O1と該マルチ開口板に入射される全ビームの中心02とを軸合わせする。すなわち、図39に示すように、マルチ開口板の中心O1と該マルチ開口板に入射される全ビームの中心O2とがずれていると、マルチ開口板19−8の小さな開口a1−a7と、該マルチ開口板に照射されるビームのビーム強度の大きい領域b1−b7とが一致せず、マルチ開口板19−8から出たビーム間に強度の差が出る。したがって、軸合わせコイル21−8によりマルチ開口板19−8に入射するビームの中心O2とマルチ開口板の中心O1とが一致するように全てのビームを平行移動させ、マルチ開口板の各開口a1−a7から出たビーム強度が一様になるように調整する。
【0168】
上記軸合わせコイル21−8で軸合わせ調整したマルチビームとマルチ開口板の開口との関係が図40に示してある。この図から明らかなように、マルチ開口板19−8に入射する全ビームの中心O2とマルチ開口板の中心O1とが一致しているだけではマルチ開口板に入射するビームのビーム強度の大きい領域b1−b7とマルチ開口板19−8の開口位置a1−a7とは必ずしも一致しておらず、調整が不十分であることがわかる。すなわち、マルチ開口板の開口a1−a7は、ビーム強度の大きい領域b1−b7との間に放射方向(半径方向)の位置ずれ41−4と方位角方向(周方向)のずれ43−4とがあり、マルチ開口板に入射するビームのビーム強度の余り強くない領域c1−c7内にある場合がある。そこで、本発明では、ビーム強度の大きい領域b1−b7とマルチ開口板の開口位置a1−a7とを一致させるべく、両者間の放射方向(半径方向)位置と方位角方向(周方向)とを合わせるべく調整可能とした。
【0169】
放射方向の位置合わせは、ウェーネルト電極5−8に与えるバイアス電圧を調整することによってなし得る。すなわち、ビーム強度の強い領域b1−b7を放射方向(半径方向)外側に移動させるには、ウェーネルト電極5−8に与える負の電圧を深くすればよい。逆に、ビーム強度の強い領域を放射方向内側に移動させるには、ウェーネルト電極に与える負の電圧を浅くすればよい。なお、図示例は、電子銃1−8がクロスオーバー9−8を作る場合の例であるが、電子銃がクロスオーバーを作らず発散する一方のビームを作る場合は、ウェーネルト電極5−8に与える負の電圧を浅くするとビーム強度の強い領域は放射方向外側へ移動し、逆に負の電圧を深くすると、放射方向内側へ移動する。このようにして、マルチ開口板19−8に入射するビーム強度が大きい領域b1−b7とマルチ開口板の開口a1−a7との放射方向位置が一致するように調整する。
【0170】
次に、方位角方向の合わせは、電子銃1−8とマルチ開口板19−8との間に設けた回転レンズ35−8により、マルチ開口板19−8に入射するマルチビームを光軸周りに回転させてもよく、あるいはマルチ開口板19−8に回転機構37−8を設け、マルチ開口板19−8を光軸周りに回転させてもよい。このようにして、ビーム強度の強い領域b1−b7とマルチ開口板の開口a1−a7との方位角方向を一致させることができる。
【0171】
また、マルチ開口板19−8と試料29−8との間に回転レンズ39−8を設け、マルチ開口板19−8から出たマルチビームを光軸まわりに回転調整することにより、試料面上におけるマルチビームの並び方向を試料面の座標軸(例えば、x座標)に正確に合わせることによって試料面の走査を効率よくおこなうことができる。
【0172】
なお、縮小レンズ23−8より下にはマルチビームを試料面上で走査するための偏向器が設けられていて、この偏向方向は座標軸に別途合わされている。回転レンズ39−8をこれらの偏向器より下に設けると偏向方向もずれるので、回転レンズは縮小レンズ23−8より上が良い。
【0173】
なお、図示の例では、電子銃1−8とマルチ開口板19−8との間に設けた回転レンズ35−8と、マルチ開口板19−8と試料29−8との間に設けた回転レンズ39−8と、さらに、マルチ開口板を光軸まわりに回転できる回転機構37−8とを使用しているが、マルチ開口板19−8に入射するビームのビーム強度の大きい領域b1−b7や、マルチ開口板の開口a1−a7位置、あるいは試料面上のマルチビームの並び状況等によっては、これら回転レンズ35−8,39−8と回転機構37−8とを適宜組み合わせて使用すればよい。 以上から、下記のような作用効果が得られる。
【0174】
(1) 電子銃が作る強いビームの放射方向の位置とマルチ開口板の開口の放射方向位置とを合わせることがで、これによって強力なビームを得ることができる。
【0175】
(2) 電子銃が作る強いビーム領域の光軸まわりの方位角方向を、マルチ開口板の開口の方位角方向とを合わせることができ、これによって強力なビームを得ることができる。
【0176】
(3) 試料面でのマルチビームの並び方向を試料面の座標軸に正確に合わせることができ、これによって精度高い評価をおこなうことができる。
二次電子線画像と基準画像とのずれ
これまで述べた検査装置では、一次電子線を試料表面の被検査領域に照射して取得した二次電子線の画像と、予め用意された基準画像との間に位置ずれが発生し、欠陥検出の精度を低下させるという可能性がある。この位置ずれは、一次電子線の走査領域がウエハに対してずれ、検査パターンの一部が二次電子線の検出画像内から欠落するとき、特に大きな問題となり、単にマッチング領域を検出画像内で最適化する技術だけでは対処できない。これは、特に、高精細パターンの検査では致命的欠点となり得る。
【0177】
本発明では、このような点に鑑み、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止するようにしている。
【0178】
以下、その実施例を説明する。
【0179】
図42には、本発明に係る欠陥検査装置の概略構成が示されている。
【0180】
すなわち、この欠陥検査装置では、一次電子線を放出する電子銃2−10、放出された一次電子線を集束、成形させる静電レンズ8−10、マルチ開口12−10、成形された一次電子線を半導体ウエハWに略垂直に当たるようにビームを直進させるE×B偏向器24−10、一次電子線をウエハW上に結像させる対物レンズ18−10、真空に排気可能な図示しない試料室内に設けられ、ウエハWを載置した状態で水平面内を移動可能なステージ60−10、一次電子線の照射によりウエハWから放出された二次電子線を二次電子検出器36−10に導く静電レンズ28−10、30−10、導かれた二次電子を検出する検出器36−10、及び、装置全体を制御すると共に、検出器36−10により検出された二次電子信号に基づいて検出画像を形成する画像形成回路40−6、その画像に基づいてウエハWの欠陥を検出する処理を実行する制御部42−10を含んで構成される。
【0181】
検出器36−10は、静電レンズ28−10、30−10によって集められた二次電子を電気信号に変換する。例えば、図47にその詳細を示すように、検出器36−10は、マルチビームの数に等しい検出器を有し、検出器数の二次電子信号を並列に画像形成回路40−10に出力する。40−10で形成された二次源画像は制御部42−10に送られる。
【0182】
制御部42−10は、図42に例示されたように、汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体52−10と、本体52−10の処理結果を表示するCRT48−10と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部50−10と、を備える、勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御部16−9を構成してもよい。
【0183】
制御部本体52−10は、図示しないCPU、RAM、ROM、ハードディスク、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成される。RAM若しくはハードディスクなどのメモリ上には、検出器36−10から受信した電気信号から形成したウエハWの二次電子画像のデジタル画像データを記憶するための二次電子画像記憶領域54−6が割り当てられている。また、ハードディスク上には、予め欠陥の存在しないウエハの基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部56−10が存在する。更に、ハードディスク上には、欠陥検査装置全体を制御する制御プログラムの他、記憶領域54−6から二次電子画像データを読み出し、該画像データに基づき所定のアルゴリズムに従ってウエハWの欠陥を自動的に検出する欠陥検出プログラム58−6が格納されている。この欠陥検出プログラム58−6は、詳細を更に後述するように、基準画像記憶部56−10から読み出した基準画像と、実際に検出された二次電子線画像とをマッチングして、欠陥部分を自動的に検出し、欠陥有りと判定した場合、オペレータに警告表示する機能を有する。このとき、CRT48−10の表示部に二次電子画像46−10を表示するようにしてもよい。
【0184】
次に、上記欠陥検査装置の作用を図44乃至図46のフローチャートを例にして説明する。
【0185】
先ず、図44のメインルーチンの流れに示すように、試料となるウエハWをステージ60−10の上にセットする(ステップ300−9)。これは、図示しないローダーに多数格納されたウエハWを一枚毎に自動的にステージ60−10にセットする形態であってもよい。
【0186】
次に、ウエハW表面のXY平面上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得する(ステップ304−9)。これら画像取得すべき複数の被検査領域とは、図48に示すように、例えばウエハ検査表面34−9上に、参照番号32a−9、32b−9、...32k−9、...で示す矩形領域のことであり、これらは、ウエハの検査パターン30−9の回りで、部分的に重なり合いながら位置がずらされていることがわかる。例えば、図42に示されたように、16個の被検査領域の画像32−9(被検査画像)が取得される。ここで、図42に示す画像は、矩形の桝目が1画素(或いは、画素より大きいブロック単位でもよい)に相当し、このうち黒塗りの桝目がウエハW上のパターンの画像部分に相当する。このステップ304−9の詳細は図45のフローチャートで後述する。
【0187】
次に、ステップ34−9で取得した複数の被検査領域の画像データを記憶部54−6に記憶された基準画像データと、各々比較照合し(図3のステップ308−9)、上記複数の被検査領域により網羅されるウエハ検査面に欠陥が有るか否かが判定される。この工程では、いわゆる画像データ同士のマッチング処理を実行するが、その詳細については図46のフローチャートで後述する。
【0188】
ステップ308−9の比較結果より、上記複数の被検査領域により網羅されるウエハ検査面に欠陥が有ると判定された場合(ステップ312−9肯定判定)、オペレータに欠陥の存在を警告する(ステップ318−9)。警告の方法として、例えば、CRT48−10の表示部に欠陥の存在を知らせるメッセージを表示したり、これと同時に欠陥の存在するパターンの拡大画像46−10を表示してもよい。このような欠陥ウエハを直ちに試料室3−9から取り出し、欠陥の無いウエハとは別の保管場所に格納してもよい(ステップ319−9)。
【0189】
ステップ308−9の比較処理の結果、ウエハWに欠陥が無いと判定された場合(ステップ312−9否定判定)、現在試料となっているウエハWについて、検査すべき領域が未だ残っているか否かが判定される(ステップ314−9)。検査すべき領域が残っている場合(ステップ314−9肯定判定)、ステージ60−10を駆動し、これから検査すべき他の領域が一次電子線の照射領域内に入るようにウエハWを移動させる(ステップ316−9)。その後、ステップ302−9に戻って当該他の検査領域に関して同様の処理を繰り返す。
【0190】
検査すべき領域が残っていない場合(ステップ314−9否定判定)、或いは、欠陥ウエハの抜き取り工程(ステップ319−9)の後、現在試料となっているウエハWが、最終のウエハであるか否か、即ち図示しないローダーに未検査のウエハが残っていないか否かが判定される(ステップ320−9)。最終のウエハでない場合(ステップ320−9否定判定)、検査済みウエハを所定の格納箇所に保管し、その代わりに新しい未検査のウエハをステージ60−10にセットする(ステップ322−9)。その後、ステップ302−9に戻って当該ウエハに関して同様の処理を繰り返す。最終のウエハであった場合(ステップ320−9肯定判定)、検査済みウエハを所定の格納箇所に保管し、全工程を終了する。
【0191】
次に、ステップ304−9の処理の流れを図45のフローチャートに従って説明する。
【0192】
図45では、先ず、画像番号iを初期値1にセットする(ステップ330−9)。この画像番号は、複数の被検査領域画像の各々に順次付与された識別番号である。次に、セットされた画像番号iの被検査領域について画像位置(Xi,Yi)を決定する(ステップ332−9)。この画像位置は、被検査領域を画定させるための該領域内の特定位置、例えば該領域内の中心位置として定義される。現時点では、i=1であるから画像位置(X1,Y1)となり、これは例えば図7に示された被検査領域32a−9の中心位置に該当する。全ての被検査画像領域の画像位置は予め定められており、例えば制御部16−9のハードディスク上に記憶され、ステップ332−9で読み出される。
【0193】
次に、図42の対物レンズ18−10を通過する一次電子線がステップ332−9で決定された画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域に照射されるように、偏向制御器42−10が偏向電極22−10と24−10に電位を加える(図45のステップ334−9)。
【0194】
次に、電子銃2−10から一次電子線を放出し、静電レンズ4−6、14−10、E×B偏向器24−10、対物レンズ18−10及び偏向電極22−10と24−10を通して、セットされたウエハW表面上に照射する(ステップ336−9)。このとき、一次電子線は、偏向電極22−10と14−10の作り出す電場によって偏向され、ウエハ検査表面34−9上の画像位置(Xi,Yi)の被検査画像領域全体に亘って走査される。画像番号i=1の場合、被検査領域は32a−9となる。
【0195】
一次電子線が走査された被検査領域からは二次電子が放出される。そこで、発生した二次電子線を静電レンズ28−10と30−10により検出器36−10に結像させる。検出器36−10は、集収された二次電子線を検出し、検出素子毎の電気信号を出力し、画像形成回路40−6でデジタル画像データに変換出力する(ステップ338−9)。そして、検出した画像番号iのデジタル画像データを二次電子画像記憶領域54−6に転送する(ステップ340−9)。
【0196】
次に、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ342−9)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAX、を越えているか否かを判定する(ステップ344−9)。このiMAXは、取得すべき被検査画像の数であり、図42の上述した例では、「16」である。
【0197】
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ344−9否定判定)、再びステップ332−9に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像位置(Xi+1,Yi+1)を再び決定する。この画像位置は、前のルーチンで決定した画像位置(Xi,Yi)からX方向及び/又はY方向に所定距離(ΔXi,ΔYi)だけ移動させた位置である。図7の例では、被検査領域は、(X1,Y1)からY方向にのみ移動した位置(X2,Y2)となり、破線で示した矩形領域32b−9となる。なお、(ΔXi,ΔYi)(i=1,2,...iMAX)の値は、ウエハ検査面34−9のパターン30−9が検出器36−10の視野から実際に経験的にどれだけずれるかというデータと、被検査領域の数及び面積から適宜定めておくことができる。
【0198】
そして、ステップ332−9乃至342−9の処理をiMAX個の被検査領域について順次繰り返し実行する。これらの被検査領域は、図7に示すように、k回移動した画像位置(Xk,Yk)では被検査画像領域32k−9となるように、ウエハの検査面34−9上で、部分的に重なり合いながら位置がずらされていく。このようにして、図42に例示した16個の被検査画像データが画像記憶領域8−9に取得される。取得した複数の被検査領域の画像32−9(被検査画像)は、図42に例示されたように、ウエハ検査面34−9上のパターン30−9の画像30a−9を部分的若しくは完全に取り込んでいることがわかる。
【0199】
インクリメントした画像番号iがiMAXを越えた場合(ステップ344−9肯定判定)、このサブルーチンをリターンして図44のメインルーチンの比較工程(ステップ308−9)に移行する。
【0200】
なお、ステップ340−9でメモリ転送された画像データは、検出器36−10により検出された各画素毎の二次電子の強度値(いわゆるベタデータ)からなるが、後段の比較工程(図44のステップ308−9)で基準画像とマッチング演算を行うため、様々な演算処理を施した状態で記憶領域58−6に格納しておくことができる。このような演算処理には、例えば、画像データのサイズ及び/又は濃度を基準画像データのサイズ及び/又は濃度に一致させるための正規化処理や、所定画素数以下の孤立した画素群をノイズとして除去する処理などがある。更には、単純なべたデータではなく、高精細パターンの検出精度を低下させない範囲で検出パターンの特徴を抽出した特徴マトリクスにデータ圧縮変換しておいてもよい。このような特徴マトリクスとして、例えば、M×N画素からなる2次元の被検査領域を、m×n(m<M,n<N)ブロックに分割し、各ブロックに含まれる画素の二次電子強度値の総和(若しくはこの総和値を被検査領域全体の総画素数で割った正規化値)を、各マトリックス成分としてなる、m×n特徴マトリックスなどがある。この場合、基準画像データもこれと同じ表現で記憶しておく。本発明の実施例でいう画像データとは、単なるべたデータは勿論のこと、このように任意のアルゴリズムで特徴抽出された画像データを包含する。
【0201】
次に、ステップ308−9の処理の流れを図46のフローチャートに従って説明する。
【0202】
先ず、制御部42−10のCPUは、基準画像記憶部54−6(図42)から基準画像データをRAM等のワーキングメモリ上に読み出す(ステップ350−9)。この基準画像は、図42では参照番号46−10で表される。そして、画像番号iを1にリセットし(ステップ352−9)、記憶領域8−9から画像番号iの被検査画像データをワーキングメモリ上に読み出す(ステップ354−9)。
【0203】
次に、読み出した基準画像データと、画像iのデータとをマッチングして、両者間の距離値Diを算出する(ステップ356−9)。この距離値Diは、基準画像と、被検査画像iとの間の類似度を表し、距離値が大きいほど基準画像と被検査画像との差異が大きいことを表している。この距離値Diとして類似度を表す量であれば任意のものを採用することができる。例えば、画像データがM×N画素からなる場合、各画素の二次電子強度(又は特徴量)をM×N次元空間の各位置ベクトル成分とみなし、このM×N次元空間上における基準画像ベクトル及び画像iベクトル間のユークリッド距離又は相関係数を演算してもよい。勿論、ユークリッド距離以外の距離、例えばいわゆる市街地距離等を演算することもできる。更には、画素数が大きい場合、演算量が膨大になるので、上記したようにm×n特徴ベクトルで表した画像データ同士の距離値を演算してもよい。
【0204】
次に、算出した距離値Diが所定の閾値Thより小さいか否かを判定する(ステップ358−9)。この閾値Thは、基準画像と被検査画像との間の十分な一致を判定する際の基準として実験的に求められる。
【0205】
距離値Diが所定の閾値Thより小さい場合(ステップ358−9肯定判定)、当該ウエハWの当該検査面34−9には「欠陥無し」と判定し(ステップ360−9)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像のうち1つでも基準画像と略一致したものがあれば、「欠陥無し」と判定する。このように全ての被検査画像とのマッチングを行う必要が無いので、高速判定が可能となる。図42の例の場合、3行3列目の被検査画像が、基準画像に対して位置ずれが無く略一致していることがわかる。
【0206】
距離値Diが所定の閾値Th以上の場合(ステップ358−9否定判定)、画像番号iを1だけインクリメントし(ステップ362−9)、インクリメントした画像番号(i+1)が一定値iMAXを越えているか否かを判定する(ステップ364−9)。
【0207】
画像番号iが一定値iMAXを越えていない場合(ステップ364−9否定判定)、再びステップ354−9に戻り、インクリメントした画像番号(i+1)について画像データを読み出し、同様の処理を繰り返す。
【0208】
画像番号iが一定値iMAXを越えた場合(ステップ364−9肯定判定)、当該ウエハWの当該検査面34−9には「欠陥有り」と判定し(ステップ366−9)、本サブルーチンをリターンする。即ち、被検査画像の全てが基準画像と略一致していなければ、「欠陥有り」と判定する。
【0209】
上記実施例では、画像データ同士のマッチングを行う際に、画素間のマッチング及び特徴ベクトル間のマッチングのいずれかとしたが、両者を組み合わせることもできる。例えば、最初、演算量の少ない特徴ベクトルで高速マッチングを行い、その結果、類似度の高い被検査画像については、より詳細な画素データでマッチングを行うという2段階の処理によって、高速化と精度とを両立させることができる。
【0210】
また、本発明では、被検査画像の位置ずれを一次電子線の照射領域の位置ずらしのみで対応したが、マッチング処理の前若しくはその間で画像データ上で最適マッチング領域を検索する処理(例えば相関係数の高い領域同士を検出してマッチングさせる)と本発明とを組み合わせることもできる。これによれば、被検査画像の大きな位置ずれを本発明による一次電子線の照射領域の位置ずらしで対応すると共に、比較的小さな位置ずれを後段のデジタル画像処理で吸収することがまた、図44のフローチャートの流れも、これに限定されない。例えば、ステップ312−9で欠陥有りと判定された試料について、他の領域の欠陥検査は行わないことにしたが、全領域を網羅して欠陥を検出するように処理の流れを変更してもよい。また、一次電子線の照射領域を拡大し1回の照射で試料のほぼ全検査領域をカバーできれば、ステップ314−9及びステップ316−9を省略することができる。
【0211】
以上のようにすることにより、試料上で部分的に重なり合いながら互いから変位された複数の被検査領域の画像を各々取得し、これらの被検査領域の画像と基準画像とを比較することによって、試料の欠陥を検査するようにしたので、被検査画像と基準画像との位置ずれによる欠陥検査精度の低下を防止できる、という優れた効果が得られる。
照射ポイントの設計ポイントからのずれの修正
上述した図42の検査装置においては、また、次のような点の改良も行われるようにしている。すなわち、ステージ上に向けて照射される前記複数の1次電子ビームの位置、姿勢(回転状態)、又は1次電子ビーム間距離に関して、設計値との間にずれが生じている場合に、適切な検査ができなくなるので、そのような設計値との間にずれが生じている場合に、当該ずれを較正ないしは修正できるようにするということである。
【0212】
説明の都合上、重複するが、図42に示す装置の概略を先ず説明する。電子銃2−10から放出された電子線は、コンデンサ・レンズ4−10によって集束されて点6−10においてクロスオーバを形成する。
【0213】
コンデンサ・レンズ4−10の下方には、複数の開口を有する第1のマルチ開口板8−10が配置され、これによって光軸10−10を有する複数の1次電子ビーム12−10が形成される。
【0214】
第1のマルチ開口板8−10によって形成された複数の1次電子ビーム12−10のそれぞれは、縮小レンズ14−10によって縮小されて点16−10に投影される。点16−10で合焦した後、対物レンズ18−10によって試料20−10に合焦される。第1のマルチ開口板8−10から出た複数の1次電子ビーム12−10は、縮小レンズ14−10と対物レンズ18−10との間に配置された走査装置としての偏向器22−10により、同時に試料20−10の面上を走査するよう偏向される。なお、複数の1次電子ビーム12−10の走査は、偏向器22−10だけで行ってもよいが、偏向器22−10と後述するE×B分離器とを用いて行っても良い。
【0215】
縮小レンズ14−10及び対物レンズ18−10の像面湾曲収差の影響を無くすため、図49に示すように、マルチ開口板8−10には、9つの小開口8a−10ないし8i−10が円周方向に沿って配置されており、そのX方向への投影したものは等間隔となる構造となっている。マルチ開口板8−10の小開口8a−10ないし8i−10を通過した1次電子ビーム12−10は、小開口8a−10ないし8i−10の配置構造にしたがって、円周方向に沿った9つのビーム12a−10ないし12i−10となる(図50参照)。本実施態様においては、小開口を円周方向に沿って配置したがこのように円周方向に配置する必要はかならずしもなく、直線方向に沿って配置してもよい。また、小開口の数を9つとしたが、少なくとも2つあればよい。
【0216】
合焦された複数の1次電子ビーム12−10によって、試料20−10上では複数の点が照射される。照射されたこれらの複数の点から放出される2次電子ビームは、対物レンズ18−10の電界に引かれて細く集束され、分離装置としてのE×B分離器24−10で偏向され、これによって、1次電子ビームを試料20−10に照射するための1次光学系から離れて、2次光学系に投入される。
【0217】
なお、図42において、17−10は軸合せ偏向器を示しており、19−10は軸対称電極を示している。また、複数の1次電子ビーム12−10を回転させることができる回転レンズ23−10が、電子ビーム形成装置の一部を構成するマルチ開口板8−10と分離装置としてのE×B分離器24−10との間に設けられている。より具体的に説明すれば、回転レンズ23−10は、本実施態様においては点6−10の近傍に設けられている。回転レンズ23−10は、当該回転レンズ23−10のコイルに流す励磁電流の強さに応じて複数の1次電子ビーム12−10を光軸の回りに回転させることができる。
【0218】
2次光学系は拡大レンズ28−10、30−10を有しており、これらの拡大レンズ28−10、30−10を通過した2次電子ビームは、第2マルチ開口板34−10の複数の開口34a−10ないし34i−10に結像する。そして、マルチ開口を通って複数の検出器36a−10ないし36i−10で検出される。第2のマルチ開口板34−10は検出器36a−10ないし36i−10の前に配置されている。開口34a−10ないし34i−10は、第2のマルチ開口板34−10の円周方向に沿って形成されており、第1のマルチ開口板8−10に形成された複数の開口8a−10ないし8i−10と一対一に対応している。この関係を示すために、図49では、第2マルチ開口板34−10の開口34a−10ないし34i−10が点線で示されている。検出器36a−10ないし36i−10は、第2マルチ開口板34−10の開口34a−10ないし34i−10に対向して配置されており、したがって、第2マルチ開口板34−10の開口34a−10ないし34i−10と同様に円周方向に沿って設けられている(図42では、図示の便宜上、検出器36a−10ないし36i−10は概略的に示されている)。
【0219】
各検出器36a−10ないし36i−10は、検出した2次電子ビームを、その強度を表す電気信号へ変換する。こうした各検出器から出力された電気信号は増幅器38−10によってそれぞれ増幅された後、画像処理部40−10によって受信され、画像データへ変換される。画像処理部40−10には、偏向器22−10に与えられた1次電子ビームを偏向させるための走査信号と同じ信号が制御装置42−10により供給される。画像処理部40−10は、走査信号の位置データと2次電子信号の濃淡信号とから前記画像データを合成して、試料20−10の被走査面を表す画像を構成ないしは表示することができる。
【0220】
画像処理部40−10は、制御装置42−10とデータ通信可能に接続される。制御装置42−10は、図42に示されたように、一例として汎用的なパーソナルコンピュータ等から構成することができる。このコンピュータは、所定のプログラムに従って各種制御、演算処理を実行する制御部本体44−10と、この処理結果や2次電子画像46−10等を表示するCRT48−10と、オペレータが命令を入力するためのキーボードやマウス等の入力部50−10と、を備えている。勿論、欠陥検査装置専用のハードウェア、或いは、ワークステーションなどから制御装置42−10を構成してもよい。
【0221】
制御部本体44−10は、図示しないCPU、RAM、ROM、ビデオ基板等の各種制御基板等から構成されている。制御部本体44−10には、記憶装置52−10が接続されている。記憶装置52−10は、例えば、ハードディスクから構成することができる。記憶装置52−10上には、画像処理部40−10から受信した試料20−10の2次電子画像データを記憶するための2次電子画像記憶領域54−10、予め欠陥の存在しない試料の基準画像データを記憶しておく基準画像記憶部56−10が割り当てられている。更に、記憶装置52−10上には、電子線装置全体を制御する制御プログラム、試料の評価プログラム、試料に向けて照射される複数の1次電子ビームの位置、姿勢(回転状態)、又は電子ビーム間距離に関して、設計値との間にずれが生じている場合に、当該ずれを較正ないしは修正するための制御プログラム58−6が格納されている。この1次電子ビームのずれを較正する制御方法に関しては詳細を後述するが、当該較正は試料の評価を行う前に実行され、これによって、1次電子ビームの初期設定がなされる。
【0222】
2次電子画像記憶領域54−10に記憶された試料20−10の被走査面を表す画像データは、基準画像記憶部56−10に記憶された予め欠陥の存在しない試料の基準画像データと比較され、これにより、試料20−10の欠陥を検出するようになっている。また、後述する較正(すなわち、レジストレーション)により試料20−10の被評価パターンを1次光学系の光軸10−10の近くへ移動させ、ラインスキャンすることによって線幅評価信号を取り出し、これを適宜に較正することにより、試料20−10上のパターンの線幅を測定することもできる。
【0223】
ステージ60−10のX方向端部にはレーザミラーすなわちレーザ反射鏡62−10が設けられており、移動鏡を構成する。対物レンズには固定鏡が配置されている。レーザ発振器64−10からのレーザービームを固定鏡で反射させたビームと移動鏡と固定鏡で反射させたビームとを干渉させることにより、固定鏡と移動鏡の距離を常時測定し、測定信号を制御装置42−10に送信することによって、ステージ60−10のX方向の位置を測定することができるようになっている。また、ステージ60−10のY方向端部にも図示しないレーザ移動鏡と対物レンズにY方向測定用の固定鏡が設けられており、同様に、ステージ60−10の外側に位置決めして設けられたレーザ発振器(図示せず)からのレーザービームを2つの反射鏡で反射させた時の干渉により、ステージ60−10のY方向の位置を測定することができるようになっている。
【0224】
ステージ60−10の一端側には、マーカ台66−10が設けられており、マーカ台66−10の表面は、XY座標面(図50参照)を構成している。図50に示されているように、マーカ台66−10には、ビーム位置測定用のマーカ66a−10、66e−10が設けられている。マーカ66a−10、66e−10はX軸方向に沿ってほぼ平行に設けられており、X軸との平行度はあらかじめ測定され装置定数として制御装置42−10の記憶装置52−10に記憶されている。なお、図50では、マーカ66a−10、66e−10間の中心が点Oとして表されている。
【0225】
上述したステージ駆動装置を用いてステージ60−10をX及びY方向に移動し、1次電子ビーム12−10がマーカ台66−10の表面を照射することができる位置までステージ60−10を移動することができる。このとき、1次電子ビーム12−10によりマーカ台66−10の表面上に周方向に沿った複数の照射ポイント12a−10ないし12i−10が形成される(すなわち、マーカ台66−10の表面上には、図50に示されるように、1次電子ビーム12a−10ないし12i−10が形成される)。マーカ66a−10、66e−10間の距離は、マーカ検出時の走査幅より小さくなるように形成されている。これにより、1つの1次電子ビームが2つのマーカを同一走査で照射する事がない。また、一次ビームと検出器はきちんと対応が取れているので、他の1次電子ビームがマーカを走査した時に発生する信号と間違える事はない。
【0226】
次に1次電子ビームの較正方法について図51ないし図53(c)に基づいて説明する。
【0227】
まず、ステージ駆動装置を用いてステージ60−10を駆動してマーカ台66−10を光軸の下に移動し、光軸10−10とマーカ66a−10,66e−10間の中心点Oとの位置合わせ行う(図51のステップ68−10)。この位置合わせは所定の誤差の範囲に収まるようにすればよい。例えば、1次電子ビームをX及びY方向に所定範囲だけ走査し、照射ポイント12a−10及び12e−10を形成するX軸上にある1次電子ビーム12a−10、12e−10により、マーカ66a−10、66e−10が検出されるのを確認することによって行うことができる。このようにして、光軸10−10とマーカ台66−10との間の位置合わせが行われたときに、例えば、図52(a)に示されているように、1次電子ビーム12a−10、12e−10はマーカ66a−10、66e−10の近傍に照射される。これによって、1次電子ビーム12a−10、12e−10の所定範囲のX及びY方向の走査により、1次電子ビーム12a−10、12e−10はマーカ66a−10−1、66e−10を横切ることが可能となる。図52(a)に示されている例では、マーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10の照射ポイントまでの距離は、X方向及びY方向の両方向において、マーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10の照射ポイントまでの距離よりも長くなっている。すなわち、これらの例においては、マーカ66a−10、66e−10から1次電子ビーム12a−10、12e−10の照射ポイントまでの距離が、予測値に対する複数の1次電子ビームのずれ(すなわち、マルチビームのずれ)を表している。
【0228】
また、上記のように、光軸10−10とマーカ台66−10との間の位置合わせが行われたとき、レーザ反射鏡62−10及びレーザ測長器64−10を用いてステージ60−10の位置を算出し、この位置情報をマーカ位置の装置定数として記憶装置52−10に記憶させる。通常、上記のような光軸10−10とマーカ台66−10との間の位置合わせは、電子線装置の初期設定として一度行うだけでよい。また、上記のような位置合わせに基づいて測定されたマーカ位置の装置定数は、後述する較正処理に基づいて更新される。
【0229】
次に、1次電子ビーム相互の位置の測定を行う。なお、本実施態様においては、マーカ台にマーカを2つ設け、2つのマーカ66a−10、66e−10の付近に照射ポイントを形成する2つの電子ビーム12a−10、12e−10を前記マーカを横切るように走査することによって、1次電子ビーム相互の位置の測定を行っている。このような本実施態様の内容を明瞭にするために、図52ないし図53(c)においては他の電子ビームb−d、f−iが省略されている。
【0230】
まず、記憶装置に記憶させられた制御プログラム58−10の指示にしたがって、制御装置42−10が偏向器22−10を制御して、図52(a)に示されているように電子ビーム12a−10、12e−10をマーカ66a−10、66e−10に向けてX方向に走査する(図51のステップ70−10)。このとき、1次電子ビーム12e−10が先にマーカ66e−10を横切り、次いで、1次電子ビーム12a−10がマーカ66a−10を横切るので、図53(a)に示されているように、1次電子ビーム12e−10と関係する検出器36e−10からまず信号90−10が出力され、次に、1次電子ビーム12a−10と関係する検出器36a−10から信号92−10が出力される。図53(a)の横軸は時間を表しており、縦軸は信号強度を表している。1次電子ビームのX方向の走査速度(μm/μsec)はあらかじめわかっているので、2つの信号90−10、92−10が出力される時間から、X方向におけるマーカ66a−10と1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)との間の距離と、X方向におけるマーカ66e−10と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間の距離を算出することができる。もちろん、2つの信号90−10、92−10の間の時間から、1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間の距離を算出することもできる。
【0231】
次に、2つの信号90−10、92−10の間の時間差を算出し、この時間差が設計値の許容誤差の範囲内にあるか否か判断する(図51のステップ72−10:当該ステップ72−10が測定装置を構成している)。許容誤差の範囲内にない場合、制御装置42−10の指示により、図42に示した中間レンズ14−10と対物レンズ18−10をズーム動作、即ち物点位置8−10と像点位置20−10を変えないで縮小率を変化させる(図51のステップ74−10:当該ステップ74−10が2段レンズ制御装置を構成している)。これによって、マーカ66a−10に対する1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)のX方向の位置と、マーカ66e−10に対する1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)のX方向の位置とを変えることができる。このようにして、ステップ70−10、72−10及び74−10を繰り返し、信号90−10の波形と信号92−10の波形がほぼ同じ時間に現れる様に調節される。これによって、マーカ台66−10上での、X方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離と、X方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離とをほぼ等しくできる(図52(b)参照)。そして、2つの信号90−10、92−10の間の時間差が許容誤差の範囲内にあると判断された場合、このときの中間レンズ14−10と対物レンズ18−10の励起電圧が記憶装置52−10に記憶される(ステップ73−10)。
【0232】
次に、記憶装置52−10に記憶させられた制御プログラム58−10の指示にしたがって、制御装置42−10が偏向器22−10を制御して、図52(b)に示されているように電子ビーム12a−10、12e−10をマーカ66a−10、66e−10に向けてY方向に走査する(図51のステップ76−10)。このとき、1次電子ビーム12e−10が先にマーカ66e−10を横切り、次いで、1次電子ビーム12a−10がマーカ66a−10を横切るので、図53(b)に示されているように、1次電子ビーム12e−10に対応する検出器36e−10からまず信号94−10が出力され、次に、1次電子ビーム12a−10に対応する検出器36a−10から信号96−10が出力される。図53(b)の横軸は時間を表しており、縦軸は信号強度を表している。1次電子ビームのY方向の走査速度(μm/μsec)もあらかじめわかっているので、2つの信号90−10、92−10が出力される時間から、Y方向におけるマーカ66a−10と1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)との間の距離と、Y方向におけるマーカ66e−10と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間の距離を算出することができる。
【0233】
次に、2つの信号94−10、96−10の間の時間差を算出し、この時間差が設計値の許容誤差の範囲内にあるか否か判断する(図51のステップ78−10)。許容誤差の範囲内になく、図53(b)の様に信号94−10が先に出現する場合、図52(b)の矢印で示されているように、1次電子ビームは、中心点Oを中心として反時計方向に回転している。このようなずれ場合、制御装置42−10が図42に示した回転レンズ23−10に供給される励磁電流の強さを調整して(図51のステップ80−10)、1次電子ビームを時計方向に回転させ、ステップ76−10、78−10及び80−10を繰り返して、信号94−10と信号96−10が許容値以内に同時に出現するようにする。これによって、マーカ台66−10上での、Y線方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離と、Y線方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離とをほぼ等しくできる。換言すれば、マーカ66a−10とマーカ66e−10との間に引かれるラインと、1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)と1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)との間に引かれるラインとが、ほぼ平行となる(すなわち、回転誤差が生じない状態となる)。そして、2つの信号94−10、96−10の間の時間差が許容誤差の範囲内にあると判断された場合、このときの回転レンズ23−10の電流量が記憶装置52−10に記憶される(ステップ79−10)。
【0234】
以上のようにステップ68−10から80−10までの較正処理を行うことによって、図52(c)に示されているように、マーカ台66−10上での、X方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離xaと、X方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離xeとがほぼ等しくなると共に、マーカ台66−10上での、Y線方向におけるマーカ66a−10から1次電子ビーム12a−10(すなわち、照射ポイント12a−10)までの距離yaと、Y線方向におけるマーカ66e−10から1次電子ビーム12e−10(すなわち、照射ポイント12e−10)までの距離yeとがほぼ等しくなる。
【0235】
最後に光軸の位置とマーク位置の位置合わせ量を以下に示すように算出あるいは測定する。
【0236】
上述した較正処理から、X方向へ走査した時に、信号90−10と信号92−10はほぼ同時に出力されると共に、Y方向へ走査した時に、信号94−10と信号96−10もほぼ同時に出力されるようになる。したがって、このことは、図53(c)に示されるように、信号90−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧と信号92−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧とが等しく、また、信号94−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧と信号96−10が出力されるときの偏向器22−10の偏向電圧も等しいということを意味している。一方、前述したように、信号90−10と信号92−10がほぼ同時に出力されるときのレンズ14−10と18−10の励起電圧と信号94−10と信号96−10がほぼ同時に出力されるときの回転レンズ23−10の励起電流が記憶されている(図51のステップ73−10、79−10)。また、偏向器22−10の偏向感度(μm/mV)が記憶装置52−10に記憶されている。よって、この既知の偏向感度(μm/mV)から、X方向へ走査した時の前記偏向電圧に基づいて、1次電子ビームとマーカの位置がX方向に何μmずれているか(すなわち、xa及びxeの距離)を算出し、また、Y方向に走査した時の前記偏向電圧に基づいてビームとマーカの位置がY方向に何μmずれているか(すなわち、ya及びyeの距離)を算出する(図51のステップ84−10)。これらのずれ値を、レーザ干渉計により測定され且つ記憶装置に記憶されているステージ位置データに加算することによって、新しいマーカ位置の装置定数を更新する(図51のステップ86−10)。
【0237】
図52(a)(b)及び図53(a)(b)に示した測定ではステージが振動していても測定誤差を与えない。図52(c)及び図53(c)に示した測定でも、測定を行った時刻でのレーザ測長器の読みに偏向感度から算出した寸法を加算するのであるからステージの振動は誤差にならない。このことから図52(c)及び図53(c)に示した測定はステージの走行中に測定を行ってもよい。
【0238】
上記実施態様によれば、最小線幅0.1μm以下のパターンを有する半導体ウエハを、高スループット且つ高信頼性で評価を行うことが可能になる。また、複数の1次電子ビーム(マルチビーム)のビーム間隔、回転、ビームとマーカ間の位置を、ステージの振動の影響を受けることなく測定ができる。さらに、1次電子ビームをマーカ台のXY座標に正確に合わせられるので、画像形成時に複雑な演算を行わなくてよい。
【0239】
上記較正方法は、記憶装置に記憶されたプログラムにしたがって制御装置を制御することによって行われるが手動により画像情報を目視しながら行ってもよい。
【0240】
なお、本実施態様においては、1次電子ビームの数を9つとして、そのうち2つのビームを利用して較正処理する方法を説明したが、較正処理するためには1次電子ビームの数は少なくとも2つあればよい。
【0241】
以上のように本願発明によれば、位置測定用マーカに対する照射ポイントの位置ずれを測定し、位置ずれを測定した場合に当該位置ずれに基づいて、複数の1次電子ビームの照射ポイントを較正するようにしたので、ステージ上に向けて照射される複数の電子ビームの位置、姿勢(回転状態)、又は電子ビーム間距離に関して、設計値との間にずれが生じている場合でも、高分解能、高スループットで試料の欠陥を検出することができる。
収差の補正(クロスオーバ位置の調整)
前述の如き電子線検査装置においては、対物レンズの近傍に形成されるクロスオーバ位置を調整するのに、従来は、アパーチャを配置し、該アパーチャを光軸方向に移動させながらビーム径を測定し、測定されたビーム径が最小になる位置をクロスオーバ位置として行っている。
【0242】
しかしながら、この調整方法は、アパーチャが、それに隣接するレンズの特性に影響を与え、その特性が大幅に異なってしまい、設計通りのレンズ特性を得ることができなくなってしまうという問題がある。
【0243】
一方、複数の電子線の全てあるいはその一部は、光軸から離れた位置を通るため、クロスオーバ位置は、像歪み、倍率色収差、回転色収差、像面湾曲収差、視野非点等の収差に影響を与え、特に、倍率色収差、回転色収差への影響は大きい。
【0244】
本発明は、上述のような点に鑑み、レンズ特性に影響を及ぼさないように、対物レンズの近傍に形成されるクロスオーバ位置の調整を行うことができ、それにより収差の補正を行うことができるようにすることも目的としている。
【0245】
以下、本発明におけるクロスオーバ位置の調整につき説明する。
【0246】
図54は、この調整の説明のための電子光学系の概略図であり、実質的には、これまで説明してきた電子光学系と同じものである。
【0247】
この電子光学系において、第1のマルチ開口板3−11によって形成される複数の一次電子線20−11のそれぞれは、縮小レンズ5−11によって縮小されて点15−11に投影される。点15−11で合焦した後、対物レンズ7−11によって試料Wに合焦される。また、複数の一次電子線20−11は、縮小レンズ5−11によって集束されて点24−11においてクロスオーバを形成する。このクロスオーバ位置24−11は、対物レンズ7−11の近傍にあり、より具体的には、後述するE×B分離器6−11と対物レンズ7−11との間に位置する。このZ方向の位置を調整することにより倍率と回転の色収差、歪み、ランディング角、コマ収差のうち一つをほとんど0にできる。
【0248】
図54において、符号17−11は軸合わせ偏向器を示しており、符号18−11は軸対称電極を示している。また、複数の一次電子線20−11を回転させることができる回転レンズ22−11が、電子線形成装置の一部を構成するマルチ開口板3−11と分離装置としてのE×B分離器6−11との間に設けられている。より具体的に説明すると、回転レンズ22−11は、点4−11の近傍に設けられている。回転レンズ22−11は、回転レンズ22−11のコイルに流す励磁電流の強さに応じて複数の一次電子線20−11を光軸の回りに回転させることができる。
【0249】
試料Wは、ステージ60−11に載置されている。ステージ60−11は、図示しないステージ駆動装置によりX方向(図54において左右方向)、Y方向(図54の面に対して直交する方向)、及びZ軸線方向(図54において上下方向)に移動できるようになっている。
【0250】
参照番号31−11は、レーザ発振器を示しており、レーザ発振器31−11は、レーザ光を発振する。発振されたレーザ光は、ハーフミラー61−11により2ビームに分割される。ハーフミラー61−11を透過した一方のビームは、ステージ60−11のX方向端部に設けられた移動鏡40−11に到達し、他方のビームは、全反射ミラー62−11で反射されて、対物レンズ7−11に設けられた固定鏡39−11に到達し、各々反射される。移動鏡40−11で反射されたビームは、ハーフミラー61−11を透過してレシーバー63−11に導かれ、固定鏡39−11で反射されたビームは、全反射ミラー62−11及びハーフミラー61−11で再び反射されてレシーバー63−11に導かれる。レシーバ63−11には、移動鏡40−11及び固定鏡39−11からの反射ビームの干渉光が検出される。検出信号は、CPU32−11に送信され、CPU32−11によって、移動鏡40−11及び固定鏡39−11間のX方向及びY方向の距離、すなわち、ステージ60−11のXY座標位置が検出される。また、ステージ60−11上には、図示しないマーカが設けられており、上記ステージ駆動装置によりステージ60−11をX方向及びY方向に移動させ、一次電子線20−11がマーカの表面を走査することができる位置までステージ60−11を移動することができる。
【0251】
従って、一次電子線20−11がマーカ上を走査することによって、ビーム位置を検出することができる。CPU32−11は、電子銃1−11のカソード30−11のカソード電源25−11と接続されており、CPU32−11の制御によって、カソード30−11に印可する電圧を、数10〜数100Vで周期的に変化させて、この変化させたときのビーム位置をCPU32−11によって検出することにより、ビームの移動を測定することができる。すなわち、カソード30−11に印可する電圧を、数10〜数100Vで周期的に変化させて、試料W上における複数の一次電子線20−11の放射方向又は光軸を中心とする回転方向への移動を測定することができる。この電圧を変えることはビームエネルギーを変化させることに対応する。放射方向又は回転方向への移動が最小になることは、倍率の色収差又は回転の色収差が最小になることを意味する。
【0252】
そして、この一次電子線20−11の移動が最小になるように、CPU32−11によって上記調整を行うことにより、対物レンズ7−11の近傍において複数の一次電子線20−11が形成するクロスオーバ位置24−11の光軸方向の調整を行うことができる。この結果、倍率の色収差又は回転の色収差を最小にするクロスオーバ24−11のZ方向位置が測定されたことになる。この調整は、対物レンズ7−11の軸合わせを行った後に行うことが好ましい。対物レンズ7−11の軸合わせは、偏向器21−11に軸合わせ電源電圧を重畳させて行うことができる。
【0253】
前述したように、従来においては、アパーチャを用いてクロスオーバ位置の調整を行っていたため、電子光学レンズ特性に影響を与え、その特性が大幅に異なってしまうとい問題があったが、上記実施の形態によれば、カソード30−11に印可する電圧を変化させて、試料W上における複数の一次電子線20−11の上記移動が最小になるように調整することにより、対物レンズ7−11の近傍において複数の一次電子線20−11が形成するクロスオーバ位置24−11の光軸方向の調整を行っているため、レンズ特性に影響を及ぼさないように上記調整を行うことができる。
【0254】
また、上述のようにして、対物レンズ7−11の近傍において複数の一次電子線20−11が形成するクロスオーバ位置24−11の光軸方向の調整を行うことにより、像歪み、倍率色収差、回転色収差、コマ収差、視野非点等の収差のうちのいずれか一つを補正することができると共に、ランディング角を補正することができる。また、前述の如く、図8等に示すような開口板を用いた場合には、像歪み及び像面湾曲収差は問題なく、視野非点やランディング角も影響はないので、倍率色収差及び回転色収差を補正すればよい。また、この場合において、対物レンズ7−11として静電レンズを用いた場合には、回転色収差は関係ないため、倍率色収差のみを補正すればよい。また、倍率色収差を補正することにより、一次電子線(マルチビーム)の数を多くすることができ、ウエハやマスクなどの試料の評価を高スループットで行うことができる。
ノイズの低減
本発明に係る電子線検査装置においては、高い信頼性で検査を行うにはピクセル当たりの二次電子検出量を4000個/ピクセル程度とすることが必要である。従って、電子ビームの強度を大きくする必要がある。
【0255】
電子銃は、それが温度制限領域で動作している場合は電子線のショット雑音が大きいが、空間電荷制限領域で動作している場合は電子線のショット雑音が前者の場合の約13%程度に小さくなることが知られている。従って、信号のS/N比を効率よく大きくするためには、電子銃を空間電荷制限領域で動作させることが好ましい。その結果、同じS/N比を得るのに(0.13)2≒0.017位のピクセル当りの二次電子検出数でよい事になる。
【0256】
しかしながら、電子銃を温度制限領域で動作させる場合には、ウェーネルト電圧あるいは制御アノード電圧を変えることにより、輝度やエミッション電流を変えることなく電子線のクロスオーバー位置を任意の位置に変更するように制御できる。従って、電子銃からの電子線の強度が大きい放射方向を、開口板の複数の孔の領域に容易に合わせることが可能である。 一方、電子銃を空間電荷制限領域で動作させる場合には、ウェーネルト電圧あるいは制御アノード電圧を変えると、輝度やエミッション電流が大きく変動するため、クロスオーバーの垂直方向位置を制御することが困難になる。従って、電子銃からの電子線の強度が大きい放射方向を、開口板の小孔の領域に合わせることが困難となるという問題がある。
【0257】
本発明では、電子銃を空間電荷制限領域で動作させ、電子線のショット雑音を小さくすることのできる電子線検査装置を提供する。
【0258】
以下、そのような電子線検査装置の実施例につき説明する。
【0259】
図55において、電子線検査装置1−12が模式的に示されており、この電子線検査装置1−12は、前述の電子線検査装置とほぼ同一の構成を有しており、第一次光学系10−12と、第二次光学系30−12と、検出装置40−12と、制御装置50−12とを備えている。第一次光学系10−12は、電子銃11−12と、電子線を集束するコンデンサレンズ12−12、13−12と、開口板14−12と、軸合わせ用の静電偏向器15−12,16−12と、ブランキング用のナイフエッジ17−12と、開口板14−12を通過した電子ビームを縮小する縮小レンズ18−12と、静電偏向器19−12と、E×B分離器20−12と、対物レンズ21−12とを備え、それらは電子銃11−12を最上部にして、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料の表面Sに垂直になるように配置されている。また、電子銃の後方に軸合わせ用の静電偏向器23−12が及びコンデンサレンズ12−12と13−12との間に軸合わせ用の静電偏向器24−12、25−12が、それぞれ配置されている。電子銃11−12のカソード111−12は、複数の小突起が電子線の数だけ光軸Aに対して同心状に配置された構造である。また、電子銃11−12もウェーネルト電極112−12及びアノード113−12を備えており、ウェーネルト電極112−12のバイアスをある程度深くすることにより、電子銃を空間電荷制限領域内で制御することができる。
【0260】
第二次光学系30−12は、E×B分離器20−12の近くで光軸Aに対して傾斜している光軸Bに沿って配置された2つの静電拡大レンズ31−12、32−12と、二次元的に配列された複数の小孔が形成された開口板33−12とを備えている。
【0261】
検出装置40−12は、検出器41−12と、増幅器42−12と、画像処理部43−12とを備えている。制御装置50−12は、偏向器制御部51−12と、画像処理部43−12及び偏向器制御部51−12を制御するコンピュータ52−12とを備えている。
【0262】
この電子線検査装置における動作は、これまでの述べた装置と同じである。電子銃11−12のウェーネルト電極112−12のバイアスをある程度深くすることにより、電子銃11−12を空間電荷制限領域内で制御することができる。
【0263】
図56には、他の電子線検査装置1’−12が示されている。図56において、図55に示された装置と同じ構成要素には同じ符号を付し、対応はするが異なる構成を有するものについては同じ符号の上に「’」の記号を付して表す。
【0264】
この実施例による電子線検査装置1’−12も第一の実施例と同様に、第一次光学系10’−12と、第二次光学系30−12と、検出装置40−12と、制御装置50−12とを備えている。
【0265】
第一次光学系10’−12は、電子銃11’−12と、電子線を集束するコンデンサレンズ12−12、13−12と、複数の小孔141−12が形成された開口板14’−12と、軸合わせ用の静電偏向器15−12,16−12と、ブランキング用のナイフエッジ17−12と、開口板14’−12を通過した電子ビームを縮小する縮小レンズ18−12と、静電偏向器19−12と、E×B分離器20−12と、対物レンズ21−12とを備え、それらは電子銃11−12を最上部にして、かつ電子銃から放出される電子線の光軸Aが試料の表面Sに垂直になるように配置されている。また、第一の実施例と同様に、第一次光学系10−12には、電子銃の後方に軸合わせ用の静電偏向器23−12が及びコンデンサレンズ12−12と13−12との間に軸合わせ用の静電偏向器24−12、25−12が、それぞれ配置されている。
【0266】
電子銃11’−12のカソード111’−12は、複数の小突起が電子線の数だけ光軸Aに対して同心状に配置された構造である。また、電子銃11’−12もウェーネルト電極112−12及びアノード113−12を備えており、ウェーネルト電極112−12のバイアスをある程度深くすることにより、電子銃を空間電荷制限領域内で制御することができる。
【0267】
本実施例においては、開口板14’−12は、コンデンサレンズ12−12の後方であって、コンデンサレンズ12−12により形成されたクロスオーバーC1の後方に配置されており、開口板14’−12の後方にコンデンサレンズ13−12が配置されている。
【0268】
第二次光学系30−12、検出装置40−12及び制御装置50−12の構成及びそれらの配置は第一の実施例の場合と全く同様である。
【0269】
上記構成において、電子銃11’−12から放出された複数の電子線Cは、アノード112−12の近傍にクロスオーバーC1を形成し、クロスオーバーC1からあまり大きくない拡がり角度で発散する。発散した電子線は焦点距離の短いコンデンサレンズ12−12で集束され、コンデンサレンズ12−12の近傍にクロスオーバーC2を形成する。開口板14’−12はクロスオーバーC2から十分離れた位置に配置されている。クロスオーバーC2から発散した電子線Cは、開口板14’−12を照射し、開口板14’−12に形成された複数の小孔141−12を通過してマルチビームにされる。これらマルチビームはコンデンサレンズ13−12で集束されてクロスオーバーC3に結像する。この位置にはブランキング用のナイフエッジ17−12が配置されている。複数の小孔141−12を通過した電子ビームは縮小レンズ18−12により縮小されてC4に投影される。C4で合焦した後、電子ビームは試料Sに向かって進み、対物レンズ21−12により試料Sに結像する。開口板14’−12により形成されたマルチビームは、コンピュータ及び偏向器制御部からの指令により走査用の静電偏向器19−12を介して、同時に試料Sの面上を走査するように制御される。
【0270】
それ以後の動作は図55の装置の場合と同様である。
【0271】
上記第一の実施例及び第二の実施例の双方において、コンデンサレンズ12−12の励起を変えて、クロスオーバーC2の垂直方向位置を図56の点C5に示すような電子銃側の位置に移動させれば、電子銃11−12,11’−12からの電子線のうち強度が強い部分の放射方向位置を、開口板14−12,14’−12の位置において外側(矢印D)へ拡げるように方向付けすることができる。逆に、クロスオーバーC2の垂直方向位置をコンデンサレンズ13−12側の位置に移動させれば、電子銃11−12,11’−12からの電子線のうち強度が強い部分の放射方向位置を、開口板14−12,14’−12の位置において内側へ狭めるように方向付けすることができる。このように電子線の強度が強い部分の放射方向位置を、開口板14−12,14’−12の小孔の領域に合わせるように調整できる。これらの調整は電子銃11’−12の条件を変更することなく、コンデンサレンズ12−12の励起のみを変えることにより容易に行われる。従って、電子銃を空間電荷制限領域で任意の条件で動作させることができ、電子線が発生させるショット雑音を、温度制限領域で動作させた場合と比較して1.8%程度に大幅に小さくすることができる。
【0272】
上記の通り、図55及び図56に示した電子線検査装置においては、(1)電子銃を空間電荷制限領域で動作することができるので、電子線のショット雑音を大幅に小さくすることができ、それにより、二次電子の雑音も小さくすることができる。
異常ドース
上述のマルチビーム検査装置では、スループット向上のために単にステージの移動速度を速くすると、試料に照射される電子ビームの総電流量(以下「ドーズ」と呼ぶ)が低下し、試料画像が劣化するため、ステージの移動速度を速くした分だけ、電子銃から出射される電子ビームの電流量を増加させる必要がある。
【0273】
従って、従来のマルチビーム検査装置における高速検査は、ステージを連続的に高速移動させながら、かつ大電流ビームを試料面上に連続照射させることにより行われている。
【0274】
しかしながら、上記のような態様で高速検査を行っても、検査途中で何らかの原因でステージが止まったり移動速度が遅くなったりすることはあり得る。
【0275】
このようなステージの停止や低速化の事態が高速検査中に発生すると、大電流ビームが試料面の同一箇所又はその近傍に当たり続け、ドーズが急激に増大する。試料にとって許容できるドーズには限界があり、このドーズの許容範囲を越えるまで電子ビームの照射が続くと、試料にコンタミネーションやチャージアップが生じたり、最悪の場合には試料が破壊される場合もある。
【0276】
本発明では、このような点に鑑み、試料と電子ビームとを相対移動させながら、試料に対して電子ビームを照射するに当たり、上記相対移動の停止や低速化によるドーズの急激な増大を防止し、試料を保護できるマルチビーム検査装置を提供する。
【0277】
以下図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0278】
図57は、マルチビーム検査装置にドーズ制御機能を組み込んだ場合を例示的に示している。
【0279】
このマルチビーム検査装置1−13は、実質的には前述の電子線検査装置と同じ構成とされているが、ステージを停止させた状態で試料画像を取得する動作モード(以下「観察モード」と呼ぶ)と、ステージを移動させながら高速で試料画像を取得する動作モード(以下「検査モード」と呼ぶ)とを切り替え可能に構成されている。このマルチビーム検査装置1−13は、上記検査モードにおける動作が何らかの原因で異常状態となったときに、ステージ上の試料を保護する機構(以下「試料保護機構」と呼ぶ)が設けられていることを特徴とする。
【0280】
このマルチビーム検査装置1−13は、前述のマルチビーム検査装置と同様に一次光学系10−13と、二次光学系30−13と、検出装置40−13と、チャンバー(図示されていない)とを備えている。
【0281】
一次光学系10−13は、最上部に電子銃11−13が配置されている。電子銃11−13は、陰極から放出された熱電子を加速すると共に集束し、電子線として出射するものである。この電子銃11−13の陰極には複数の電子線を取り出すことができるランタンヘキサボライト(LaB6)が11a−13で示されているように加工されている。
【0282】
また、電子銃11−13には電子銃11−13の加速電圧Vacを制御すると共に、電子銃11−13の電源をオン・オフ制御する電子銃制御ユニット20−13が接続されている。さらに、電子銃11−13の位置調整などを行うガンアライメント機構(図示されていない)やガンアライナ(図示されていない)も設けられている。
【0283】
また、電子銃11−13から出射される電子線の光軸A上には、2段構成の静電レンズ12−13,15−13と、マルチ開口板13−13と、一次偏向器16−13とが配置されている。マルチ開口板13−13には、直線状に並べられた複数の小孔が形成されており、電子銃11−13から出射された電子線を複数の電子ビーム(以下「一次ビーム」と呼ぶ)に形成する。
【0284】
第一次光学系10−13の各静電レンズ12−13,15−13は、回転軸対照の3極又は2極の静電レンズ(又は電磁レンズ)である。各静電レンズ12−13,15−13のレンズ電圧を最適化することによって、出射電子を損失することなく一次ビームの寸法を任意の寸法に整形することができる。各静電レンズのレンズ電圧は、第一次光学系10−13に接続された第一次光学系制御ユニット21−13によって制御される。
【0285】
また、一次偏向器16−13は静電偏向器または電磁偏向器で構成される。例えば、一次偏向器16−13が8つの電極からなる静電偏向器の場合、X軸に沿って対向する電極への印加電圧を変化させることで、一次ビームの軌道をX方向に偏向することができる。また、Y軸に沿って対向する電極への印加電圧を変化させることで、一次ビームの軌道をY方向に偏向することができる。
【0286】
一次偏向器16−13の各電極への印加電圧は、一次偏向器16−13に接続された一次偏向器制御ユニット22−13によって制御される。
【0287】
なお、電子銃制御ユニット20−13,第一次光学系制御ユニット21−13、及び一次偏向器制御ユニット22−13は、ホストコンピュータ23−13に接続されている。
【0288】
試料Lを載置すると共にXY方向に移動可能なステージ80−13が設置されている。このステージ80−13には、後述する所定のリターディング電圧Vrが印加されている。
【0289】
また、ステージ80−13にはステージ制御ユニット24−13が接続されている。このステージ制御ユニット24−13は、ステージ80−13をXY方向に駆動すると共に、レーザ干渉計(図示されていない)を用いてステージ80−13のXY位置を読み取り(データレートは例えば10Hz)、XY位置信号をホストコンピュータ23−13に出力する。また、ステージ制御ユニット24−13は読み取ったXY位置に基づいてステージ80−13の移動速度を検出し、速度信号をホストコンピュータ23−13に出力する。
【0290】
第二次光学系30−13の内部には、第二次光学系30−13の光軸Bに沿って静電対物レンズ31−13、E×B分離器32−13、第2の静電レンズ33−13、及び第3の静電レンズ34−13が配置されている。
【0291】
静電対物レンズ31−13は、例えば3枚の電極で構成されていて、静電対物レンズ31−13の下(即ち、試料L側)から1番目の電極と2番目の電極(いずれも図示されていない)とに所定の電圧が印加され、3番目の電極(図示されていない)はゼロ電位に設定される。このような静電対物レンズの構成は当業者には公知のものである。
【0292】
E×B分離器32−13は、電磁プリズムとして作用する偏向器であり、ウィーン条件(E=vB、ここで、vは荷電粒子の速度、Eは電界、Bは磁界を表し、E⊥Bである)を満たす荷電粒子(例えば一次ビーム)のみを直進させ、それ以外の荷電粒子(例えば二次電子)の軌道を曲げることができる。
【0293】
第2の静電レンズ33−13及び第3の静電レンズ34−13は全てユニポテンシャルレンズまたはアインツエルレンズと呼ばれる回転軸対称型のレンズであり、それぞれ3枚の電極で構成されている。各静電レンズは通常、外側の2つの電極をゼロ電位とし、中央の電極に印加する電圧を変えることでレンズ作用が制御される。
【0294】
上記の静電対物レンズ31−13、第2の静電レンズ33−13,第3の静電レンズ34−13の各レンズ電圧、及びE×B分離器32−13に印加する電磁界は、第二次光学系30−13に接続された第二次光学系制御ユニット25−13によって制御される。
【0295】
検出装置40−13はマルチ開口板41−13及び検出器42−13を備えている。マルチ開口板41−13は第3の静電レンズ34−13の像面に配置され、隣接する一次ビームからの二次電子が混入しないように制限する。また、マルチ開口板41−13には、マルチ開口板133の小孔の数及び配列に合わせた状態で直線状に並べられた、複数の小孔が形成されている。
【0296】
検出器42−13は、電子を光に変換する蛍光体と、光を電気信号に変換するPMT(ホトマルチプライヤチューブ)とを備えている。マルチ開口板41−13と検出器42−13の間には、高電界が印加されているので、マルチ開口板41−13の小孔の近傍には凸レンズ作用があり、小孔に近づいた二次電子は全てこれらの小孔を通過する。各検出器42−13は画像処理ユニット43−13に接続されている。
【0297】
なお、第二次光学系制御ユニット25−13及び画像処理ユニット43−13は、ホストコンピュータ23−13に接続されている。また、ホストコンピュータ23−13にはCRT26−13が接続されている。
【0298】
次に上記構成のマルチビーム検査装置1−13における一次ビーム及び二次電子の軌道等について順に説明する。
[一次ビーム]
一次ビームは、電子銃11−13の加速電圧Vacに応じた電流量で出射される。以下、電子銃11−13から出射される一次ビームの電流量を「電子銃電流量Ia」と呼ぶ。電子銃11−13からの一次ビームは第一次光学系10−13のレンズ作用を受けながら通過して一次偏向器16−13に達する。一次偏向器16−13の電極に電圧が印加されないとき、一次偏向器16−13の偏向作用は一次ビームに及ばないので、一次ビームは一次偏向器16−13を通過し、E×B分離器32−13の中心部に入射する。次に、一次ビームは静電対物レンズ31−13を介してマルチビーム状態で試料Lに照射される。
【0299】
ところで、試料Lに照射される一次ビームの電流量(以下「照射電流量Ib」と呼ぶ)は、上記電子銃電流量Iaに比べてはるかに少なくなっている。しかし、照射電流量Ibと電子銃電流量Iaとの対応関係は既知であり、また、電子銃電流量Iaと電子銃11−13の加速電圧Vacとの対応関係も既知であるため、照射電流量Ibと加速電圧Vacとの関係も既知となる。
【0300】
従って,電子銃制御ユニット20−13では、電子銃11−13の加速電圧Vacを制御することにより、一次ビームの照射電流量Ibを所望の値に設定することができる。照射電流量Ibの設定値に関する情報は、電子銃制御ユニット20−13からホストコンピュータ23−13に対して出力される。
【0301】
因みに、照射電流量Ibは、表1に示されるように、後述する観察モード時と検査モード時とで異なる値に設定される。
【0302】
【表1】
【0303】
一方、試料Lにおける一次ビームの照射領域の形状は、第一次光学系10−13のレンズ電圧を制御することにより、任意の寸法に調整される。試料Lに対して照射電流量Ibにより各一次ビーム間で均一に照射することができる。
【0304】
ここで、ステージ80−13を停止させている場合(例えば、観察モード)のドーズDoは、各一次ビームの合計面積S、一次ビームの照射時間Tとすると、次式(1)で表される。つまりドーズDoは、照射電流量Ibと照射時間Tとに比例して増大する。
【0305】
Do ∝ Ib×T/S・・・・・・・(1)
また、ステージ80−13を移動させている場合(例えば検査モード)のドーズDvは、ステージ80−13の移動速度(V≠0)を用いると、次式(2)で表される。つまり、ドーズDvは、照射電流量Ibに比例し、ステージの移動速度Vに逆比例して増大する。
【0306】
Dv ∝ Ib/V/S・・・・・・・(2)
しかし、試料Lにとって許容できるドーズには限界があり、このドーズの許容範囲を越えるまで一次ビームが照射されると、試料Lにコンタミネーションやチャージアップが生じたり、最悪の場合には試料Lが破壊することもある。このため、試料Lのドーズの許容範囲に関するデータが、試料Lの種類ごとに予め定められ、ホストコンピュータ23−13の記憶部に格納されている。このドーズの許容範囲に関するデータは、後述する試料保護機構で利用される。
【0307】
なお、一次ビームの照射領域のXY位置は、一次偏向器16−13の印加電圧を制御して一次ビームの軌道を偏向させることにより、試料L上を移動させることができる。
[二次ビーム]
試料Lに一次ビームが照射されると、その照射領域内の試料Lから二次電子、反射電子、又は後方散乱電子のうち、少なくとも1種からなる電子ビーム(以下「二次ビーム」と呼ぶ)が発生する。この二次ビームは、照射領域の二次元画像情報を有する。なお、上記のように一次ビームが試料面に対して垂直に照射されるので、二次電子は影のない鮮明な像を有することになる。
【0308】
ここで、試料Lを載置するステージ80−13にはリターディング電圧Vrが印加されているため、試料Lと静電対物レンズ31−13の電極との間には、二次ビームに対して加速電界が形成される。従って、試料Lから発生した二次ビームは静電対物レンズ31−13に向けて加速される。
【0309】
そして、二次ビームは静電対物レンズ31−13によって集束作用を受け、E×B分離器32−13の偏向作用を受けて偏向され、第2の静電レンズ33−13を介してマルチ開口板41−13の各小孔に結像する。この場合、一次ビームにより試料面で放出された二次ビームはマルチ開口板13−13の各小孔に対応するマルチ開口板4−13の各小孔に結像する。
【0310】
試料Lから発生した二次ビームの結像を、静電対物レンズ31−13と第2の静電レンズ33−13とで協同して行うことにより、レンズ収差の発生を抑制することができる。
【0311】
マルチ開口板41−13の小孔に結像したマルチビームの二次元像は、検出器42−13の蛍光板で光に変換されたのち、PMTで電気信号に変換される。
【0312】
ここで、本実施例と請求項との対応関係を示しておく。請求項に記載の「移動装置」はステージ80−13,ステージ制御ユニット24−13に対応し、「測定装置」は電子銃制御ユニット20−13,ステージ制御ユニット24−13,ホストコンピュータ23−13に対応し、「判断装置」はホストコンピュータ23−13に対応し、「制御装置」は一次偏向器16−13,一次偏向器制御ユニット22−13,ホストコンピュータ23−13に対応に対応する。
【0313】
次に、上記のように構成されたマルチビーム検査装置1−13の動作について説明する。マルチビーム検査装置1−13の動作には、ステージ80−13を停止された状態で試料Lの画像を取得する観察モードと、ステージ80−13を移動させながら高速に試料Lの画像を取得する検査モードとがある。いずれのモードにおいても、マルチビーム検査装置1では試料Lにおけるサイズが各マルチビームで0.1ミクロンとなるように調整されている。
【0314】
まず、観察モードについて説明する。
【0315】
観察モードにおいて、ステージ制御ユニット24−13は、ステージ80−13をXY方向に駆動し、試料Lの中の観察したい領域(例えば欠陥個所を含む領域)を一次ビームの照射領域内に位置決めする。位置決め後、ステージ80−13は停止される。
【0316】
また、電子銃制御ユニット20−13は、電子銃11−13の加速電圧Vacを制御し、一次ビームの照射電流量Ibを62.5nA(表1参照)に設定する。
【0317】
さらに、画像処理ユニット43−13からの信号は、ホストコンピュータ23−13からの観察用タイミング信号に基づいて、順次転送される。
【0318】
この観察モードによれば、試料Lの中の観察したい領域(例えば欠陥箇所を含む領域)の画像を常時CRT26−13に表示させることができる。
【0319】
また、この観察モードによれば、所定のテストパターンを撮像することで、第一次光学系10−13や第二次光学系30−13のフォーカス調整、収差調整、検出器42−13における輝度調整等の装置調整を行うこともできる。
【0320】
次に、検査モードにおける試料画像の取得動作について説明する。
【0321】
検査モードにおいて、電子銃制御ユニット20−13は電子銃11−13の加速電圧Vacを制御し、一次ビームの照射電流量Ibを62.5nA(表1参照)に設定する。
【0322】
また、画像処理ユニット43−13は、ホストコンピュタ23−13からの観察用タイミング信号に基づいて駆動パルスを供給する。その結果一次偏向器16−13走査信号と検出器42−13の強度信号からSEM画像が形成される。
【0323】
この検査モードによれば、ステージ80−13を高速移動させながら試料画像の撮像動作を実行するので、試料Lの比較的広い領域又は全体から連続的にかつ短時間で試料画像を取り込むことができる。
【0324】
なお、検査モードでの試料画像の取得が完了すると、ホストコンピュータ23−13は、画像情報に対してテンプレートマッチング等を実行することで、試料Lの欠陥箇所を特定することができる。
【0325】
このような検査モードでは、検査速度を速くするため、ステージ80−13の移動速度を速くすると共に、一次偏向器16−13への走査信号も速く設定しており、移動速度及び転送レートを速くした分だけ、一次ビームの照射電流量Ibも強く設定している。すなわち、上記検査モードは、ステージ80−13を連続的に高速移動させながら、かつ大電流ビームを試料に連続照射させることにより、高速検査を行うものである。
【0326】
従って、上記高速検査中に、何らかの原因でステージが停止したり、移動速度が遅くなったりすると、大電流ビームが試料の同一箇所又はその近傍に当たり続け、ドーズが急激に増大する(前述の数式(1)及び(2)参照)。
【0327】
しかし、試料Lにとって許容できるドーズには限界があり、このドーズの許容範囲を超えるまで一次ビームが照射されると、試料Lにコンタミネーションやチャージアップが生じたり、最悪の場合には、試料Lが破壊する可能性もある。
【0328】
そこで、本実施例のマルチビーム検査装置には、以下で説明するような、試料Lを保護するための試料保護機構が組み込まれている。
【0329】
図58(a),図58(b)には、上記試料保護機構の一つの実施例におけるフローチャートが示されている。図58(a),図58(b)において、ホストコンピュータ23−13は、外部から入力される検査モードの指令を受け取ると(S10)、試料の試料Lに関するドーズの許容範囲データを記憶部から取得する(S11)。
【0330】
次いでホストコンピュータ23−13は、ステージ制御ユニット24−13から入力されるステージ80−13の移動速度Vに関する信号を取得し、この移動速度Vと一次ビームの照射電流量Ibと照射領域の面積Sとに基づいて(式(2)参照)、試料Lへの実際のドーズDvを算出する(S12)。
【0331】
そして、ホストコンピュータ23−13は、S11で取得したドーズの許容データと、S12で算出した実際のドーズDvとを比較し(S13)、実際のドーズDvの方が小さければ、S12に戻って処理を繰り返す。従って、実際のドーズDvが許容データよりも小さい限り、上述の検査モードにおける試料画像の取得動作が連続して行われる。
【0332】
一方、ホストコンピュータ23−13は、S12で算出した実際のドーズDvが許容範囲データよりも大きくなると、現在行われている検査モードが異常であると判断し、一次偏向器制御ユニット22−13に対して異常通知を出力する(S14)。
【0333】
一次偏向器制御ユニット22−13は、ホストコンピュータ23−13からの異常通知を受け取ると(S21)、一次偏向器16−13に対してブランキング電圧を印加し、一次ビームの軌道を大きく偏向させる(S22)、即ち、ブランキングする。その結果、試料Lに大電流の一次ビームが照射されない状態となる。従って、試料Lにコンタミネーションやチャージアップが生じたり、試料が破壊するといった最悪の事態を回避できる。
【0334】
なお、上記の実施例では、ホストコンピュータ23−13からの異常通知を一次偏向器制御ユニット22−13に出力し、一次偏向器16−13により一次ビームをブランキングする例を説明したが、本発明はこの構成に限定されるものではない。
【0335】
例えば、ホストコンピュータ23−13からの異常通知を電子銃制御ユニット20−13に出力し、電子銃11の電源をオフにすることによって電子銃11−13の電子放出を停止させても良い。
【0336】
また、一次ビームの軌道上に、一次偏向器16−13以外の偏向器が配置されている場合には、これら他の偏向器を用いて上記と同様のブランキング制御を行っても良い。
【0337】
更に、上記の試料保護機構の実施例では、ホストコンピュータ23−13からの異常通知によって一次ビームを完全に遮断し、一次ビームが試料Lに照射されない状態とする例を示したが、一次ビームの照射を制御し、一次ビームの電流密度(=照射電流量Ib/(照射領域の面積S))を下げることでも、ドーズの急激な増大を防止できる。
【0338】
具体的には、一次偏向器16−13を用いて一次ビームの軌道を高速かつ広範囲で偏向させ、試料上での照射領域が同じ箇所に留まらないようにする方法がある。
【0339】
また、第一次光学系10−13を用いて一次ビームの断面を拡大することにより、照射領域の面積Sを広げる方法でも、一次ビームの電流密度を下げ、ドーズの急激な増大を防止できる。
【0340】
更に、電子銃11−13の加速電圧Vacを制御して一次ビームの出射電流量Iaを下げる方法でも、同様に、ドーズの増大を防止できる。
【0341】
また、上述の実施例では、ステージ制御ユニット24−13によって検出されたステージ80−13の移動速度に基づいて、実際のドーズDvを算出する例を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。
【0342】
例えば、試料Lのドーズが増大すると試料から発生する二次ビームの量も増大するので、二次ビームの発生量を検出すると共に、二次ビームの発生量と試料Lのドーズとの対応関係を利用することによって、実際のドーズDvを検知することができる。
【0343】
ちなみに、二次ビームの発生量の測定は、検出器42−13の出力を時々モニターする事によって測定することもできる。
【0344】
更に、試料Lのドーズが増大すると試料画像が明るくなりコントラスト比が低下するため、試料画像のコントラスト比を検出すると共に、このコントラスト比と試料Lのドーズとの対応関係を利用することによって、実際のドーズDvを検知することもできる。
【0345】
ちなみに、試料画像のコントラスト比の検出は、画像処理ユニット43−13内のメモリに格納された各受光画素の濃度値の平均値と、予め定められた濃度値のしきい値との比較により可能となる。
【0346】
また、上述の実施例では、ホストコンピュータ23−13の記憶部に、試料Lのドーズの許容範囲データを格納しておき、この許容範囲データと実際のドーズDvとを比較することにより検査モードが異常か否かを判断する例を説明したが、本発明はこの構成に限定されない。
【0347】
例えば、試料のドーズの許容範囲データに基づいて、予め、ステージ80−13の移動速度の許容範囲データを算出しておき、この移動速度の許容範囲データをホストコンピュータ23−13の記憶部に格納してもよい。この場合、ステージ80−13の移動速度の許容範囲データと、実際のステージ80−13の移動速度とを比較することで、検査モードの異常を判断することができる。
【0348】
同様に、試料Lのドーズの許容データに基づいて、予め、二次ビームの発生量の許容範囲データを算出しておき、この二次ビームの発生量の許容範囲データをホストコンピュータ23−13の記憶部に格納してもよい。この場合、二次ビームの発生量の許容範囲データと、実際の二次ビームの発生量とを比較することで、検査モードの異常を判断することができる。
【0349】
更に、試料Lのドーズの許容範囲に基づいて、予め、画像情報のコントラスト比の許容範囲データを算出しておき、このコントラスト比の許容範囲データをホストコンピュータ23−13の記憶部に格納してもよい。この場合、画像情報のコントラスト比の許容範囲データと、実際の画像情報のコントラスト比とを比較することで、検査モードの異常を判断することができる。
【0350】
また、上述の実施例では、検査モードにおける試料画像の取得中に一次ビームを偏向させない(照射領域を移動させない)例を説明したが、一次ビームを偏向させながら(照射領域を移動させながら)試料画像を取得する場合にも、本発明は適用可能である。
【0351】
以上のように、本発明は、単一ビームのSEMを含め、一次ビームと試料とを相対移動させながら試料画像を取得する構成のものであれば、いずれにも適用できる。
【0352】
以上から分かるように、上記の電子線検査装置によれば、試料と電子ビームとを相対移動させながら、試料に対して電子ビームを照射するに当たり、上記相対移動の停止や低速化によるドーズの急激な増大を防止し、試料を保護することができるので、大電流ビームを用いた高速処理(特に高速検査)に対する信頼性を向上させることができる。
偏向器、ウィーンフィルタ等の制御素子
前述のごとく電子線検査装置においては、その電子光学系を形成するエレメントとして、静電偏向器、静電レンズ、ウィーンフィルタなどがある。
【0353】
図61は、従来の静電偏向器100−14の平面図であり、図62の(a)、(b)はそれぞれ、図61のA−A断面及びB−B断面を示している。静電偏向器100−14は8極の金属電極101−14が各々、絶縁外筒102−14の内側に固定用ねじ103−14、104−14で取り付けられたものである(図61、図62(a))。また、各金属電極101−14への電圧印加用配線105−14は配線用ねじ106−14(図62(b))を用いて金属電極101−14に直接固定される。
【0354】
この静電偏向器100−14において、各金属電極101−14の内側面101a−14に囲まれた空間107−14には、各金属電極101−14への印加電圧に応じた静電界が形成される。したがって、空間107−14を中心軸Zに沿って通過する荷電粒子線は、空間107−14に形成された静電界に応じて偏向される。
【0355】
ここで、隣り合う金属電極101−14間の隙間部分108−14は一直線の形状ではなく、2度折れ曲がった後に絶縁外筒102−14に到達する形状になっている。これは、空間107−14を通過する荷電粒子線から絶縁外筒102−14の露出部分109−14が直視できないようにするためである。この構造により、絶縁外筒102−14の帯電が防止され、空間107−14内の静電界を各金属電極101−14への印加電圧に応じて精密に制御することができる。
【0356】
しかしながら、上記の静電偏向器101−14は構造が複雑で部品点数が多く、低コスト化や小型化が難しいという課題があった。また、静電偏向器100−14を構成する8極の金属電極101−14は、金属製の円筒を絶縁外筒102−14の内側にねじ止めした後に分割したものであるため、その分角精度を高めることが困難であった。更に、金属電極101−14の内側面101a−14に囲まれた空間107−14の真円度を高めることも困難であった。
【0357】
そこで、近年、上記の金属電極101−14の代わりに、メッキなどの表面処理によって絶縁体上に形成された膜状の電極(メッキ電極)を用いることが提案された。メッキ電極を用いた静電偏向器では、電極ねじ止め固定が不要であり、部品点数の削減及び小型化が図られる。
【0358】
しかし、メッキ電極を用いた静電偏向器において、上記した従来の静電偏向器100−14と同様、電圧印加用配線をメッキ電極にねじ止めで直接固定しようとすると、メッキ電極の表面に穴が開いてしまう可能性がある。メッキ電極に穴が開いていると、荷電粒子線が通過する空間内の静電界分布に歪みが生じてしまい、荷電粒子線に対する偏向制御を高精度に行うことができなくなる。
【0359】
このため、静電偏向器のなかには、メッキ電極が形成された絶縁体の支持部をメッキ電極と共に絶縁外筒の端部から突出させ、この突出部分に電界印加用配線を接続させることにより、メッキ電極の表面に穴が開かないようにしているものがある。しかし、この配線構造は複雑であり、また、突出部分に接続した電圧印加用配線の被覆(絶縁体)が、隣り合うメッキ電極間の隙間から見えてしまう可能性もあった。
【0360】
なお、その他の荷電粒子線制御素子(静電レンズなど)においても、上述した静電偏向器と同様、メッキ電極を用いて構成することが望まれている。この場合でも、メッキ電極に対する電界印加用配線をどのように接続させるかの工夫が望まれる。
【0361】
この発明は上記の点に鑑み、メッキなどの表面処理によって絶縁体上に形成された電極の表面を高精度に保ちつつ、この電極に対して簡素な構成で電圧印加用配線を接続可能とする荷電粒子線制御素子すなわち電子レンズや偏向器を提供する。
【0362】
図59は、偏向器やウィーンフィルタとして使用される、本発明に係る荷電粒子線制御素子の一つの実施の形態を概略的に示す上面図であり、図60は、荷電粒子線制御素子の縦断面図である。図59及び図60において、荷電粒子線制御素子は絶縁物製の基体部1−14を有する。基体部1−14は軸Aを中心とする筒状であり、外側面2−14、端面3−14、3’−14及び内側面4−14を形成する貫通穴5−14で定義される構造を有する。使用時に、軸Aは光軸と一致され、貫通穴5−14は軸Aと同軸である。筒状の基体部1−14には、電極を分離する溝6−14が軸Aに平行な方向に且つ放射状に形成される。図に示すように、それぞれの溝6−14は同一の折れ曲がった形状であり、各溝6−14の終端に円形の貫通穴7−14が形成される。更に、図60に示すように、荷電粒子線制御素子1−14の上下に、即ち、対向する端面3−14、3’−14の近くに、貫通穴5−14と同径の貫通穴を有するシールド用の導体円板21−14がそれぞれ設置される。
【0363】
こうした構造において、内側面4−14と対向する端面3−14、3’−14は、絶縁のための非コーティング面10−14を除き、金属コーティングが施される。具体的には、内側面4−14には、斜線で示すように、溝6−14によって互いに切り離された複数の電極8−14が形成され、各端面3−14、3’−14にも、電極8−14と電気的に接続された複数の導体部9−14が形成される。更に、内側面4−14に形成された電極8−14から貫通穴7−14に到る溝6−14の内面にも、斜線で示すように、金属がコーティングされる。但し、貫通穴7−14の内面と、貫通穴7−14から外側面2−14に到る端面10−14は金属コーティングされない。こうして、それぞれの溝6−14と非コーティング面10−14とによって電気的に分離され、かつ、相互に電気的に接続された電極8−14及び導体部9−14からなる複数の導電部分が形成される。図59に示す実施の形態においては、溝6−14は8個形成され、したがって、相互に電気的に接続された電極8−14及び導体部9−14も8個形成される。
【0364】
なお、必要であれば、外側面2−14の一部分にも、導体部9−14と電気的に接続された導体部を形成するようにしてもよい。
【0365】
それぞれの電極8−14に対する配線11−14としては細線が用いられ、該細線は外側面2−14に、又は端面3−14、3’−14のうち一方にボンディングされる。配線11−14を外側面2−14から取り出す場合には荷電粒子線制御素子1−14の外径が大きくなり、また、配線11−14を端面3−14から取り出すときには、荷電粒子線制御素子の光軸Aに沿う方向のスペースが余分に必要になる。図59及び図60は、配線11−14を一方の端面3−14から取り出す例を示している。
【0366】
軸A及び対向する貫通穴7を含む面におけるシールド円板21−14と基体部1−14の端面3−14との間の距離をDとし、軸Aに近い側の電極8−14の面と軸Aに近い側の貫通穴7−14の面との間の半径方向の距離をLとするとき、L/D<4.0とすることが望ましい。これにより、基体部1−14の貫通穴7−14の内面が帯電したとき、その帯電により生じる電位が軸Aの近くを通過する荷電粒子線に対して与える影響を1/1000以下に抑えることが可能になる。
【0367】
図59に示す荷電粒子線制御素子は、前述の如き電子線検査装置における静電偏向器やE×B分離器又はウィーン・フィルタとして使用される。
【0368】
以上の説明から分かるように、本発明に係る荷電粒子制御素子は、メッキなどの表面処理によって絶縁体上に形成された電極の表面を高精度に保ちつつ、該電極に対して簡素な構成で電圧印加用配線を接続することができ、荷電粒子線制御素子及び荷電粒子線装置の小型化、低コスト化、並びに荷電粒子線制御素子の軌道制御の高精度化を実現することができる。
半導体デバイスの製造方法
以上から明らかな通り、本発明に係る検査装置は、高スループットを可能とするので、ウエハ等の試料を、そのプロセス(処理)途中で、同プロセスに支障を与えることなく、適宜検査することを可能とする。そのような検査をプロセス途中において行うようにした半導体デバイスの製造方法を、図63及び図64を参照して説明する。
【0369】
図63は、本発明による半導体デバイスの製造方法の一実施例を示すフローチャートである。この実施例の工程は以下の主工程を含んでいる。
(1)ウエハを製造するウエハ製造工程(又はウエハを準備するウエハ準備工程)
(2)露光に使用するマスクを製造するマスクを製造するマスク製造工程(又はマスクを準備するマスク準備工程)
(3)ウエハに必要な加工処理を行うウエハプロセッシング工程
(4)ウエハ上に形成されたチップを一個づつ切り出し、動作可能にならしめるチップ組立工程
(5)できたチップを検査するチップ検査工程
なお、上記のそれぞれの主工程は更に幾つかのサブ工程からなっている。
【0370】
これらの主工程の中で、半導体デバイスの性能に決定的な影響を及ぼすのが(3)のウエハプロセッシング工程である。この工程では、設計された回路パターンをウエハ上に順次積層し、メモリーやMPUとして動作するチップを多数形成する。このウエハプロセッシング工程は以下の各工程を含んでいる。
(1)絶縁層となる誘電体薄膜や配線部、或いは電極部を形成する金属薄膜等を形成する薄膜形成工程(CVDやスパッタリング等を用いる)
(2)この薄膜層やウエハ基板を酸化する酸化工程
(3)薄膜層やウエハ基板を選択的に加工するためにマスク(レチクル)を用いてレジストパターンを形成するリソグラフィー工程
(4)レジストパターンに従って薄膜層や基板を加工するエッチング工程(例えばドライエッチング技術を用いる)
(5)イオン・不純物注入拡散工程
(6)レジスト剥離工程
(7)加工されたウエハを検査する工程
なお、ウエハプロセッシング工程は必要な層数だけ繰り返し行い、設計通り動作する半導体デバイスを製造する。
【0371】
図64は、図63のウエハプロセッシング工程の中核をなすリソグラフィー工程を示すフローチャートである。リソグラフィー工程は以下の各工程を含む。
(1)前段の工程で回路パターンが形成されたウエハ上にレジストをコートするレジスト塗布工程
(2)レジストを露光する工程
(3)露光されたレジストを現像してレジストのパターンを得る現像工程
(4)現像されたレジストパターンを安定化するためのアニール工程
上記の半導体デバイス製造工程、ウエハプロセッシング工程、及びリソグラフィー工程については、周知のものでありこれ以上の説明を要しないであろう。
【0372】
上記(7)の検査工程に本発明に係る欠陥検査方法、欠陥検査装置を用いると、微細なパターンを有する半導体デバイスでも、スループット良く検査できるので、全数検査が可能となり、製品の歩留まりの向上、欠陥製品の出荷防止が可能となる。
【0373】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲において種々の変更を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0374】
【図1】図1は、本発明に係る検査装置の主要構成要素を示す立面図であって、図2の線A−Aに沿って見た図である。
【図2】図2は、図1に示す検査装置の主要構成要素の平面図であって、図1の線B−Bに沿って見た図である。
【図3】図3は、図1のミニエンバイロメント装置を示す断面図であって、線C−Cに沿って見た図である。
【図4】図4は、図1のローダハウジングを示す図であって、図2の線D−Dに沿って見た図である。
【図5A】図5(A)は、ウエハラックの拡大側面図である。
【図5B】図5(B)は、(A)の線E−Eに沿って見た断面図である。
【図6A】図6(A)は、主ハウジングの支持方法の変形例を示す図である。
【図6B】図6(B)は、主ハウジングの支持方法の他の変形例を示す図である。
【図7】図7は、図1の検査装置の電子光学装置の概略構成を示す模式図である。
【図8】図8は、図7の電子光学装置の一次光学系に使用されているマルチ開口板の開口の位置関係を示す図である。
【図9】図9は、電位印加機構を示す図である。
【図10A】図10(A)は、電子ビームキャリブレーション機構の側面図である。
【図10B】図10(B)は、同機構の平面図である。
【図11】図11は、ウエハのアライメント制御装置の概略説明図である。
【図12】図12は、カセットホルダとミニエンバイロンメント装置の拡大断面側面図である。
【図13】図13は、電子光学装置による検査工程を示す図である。
【図14】図14は、ウィーンフィルタの断面平面図である。
【図15】図15は、ウィーンフィルタの断面側面図である。
【図16】図16は、一次電子ビームを試料であるウエハに照射する態様を示す図である。
【図17A】図17(A)は、従来の電子線検査装置の真空チャンバ及びXYステージの正面図である。
【図17B】図17(B)は、同側面図である。
【図18】図18は、上記XYステージに使用されている差動排気装置の説明図である。
【図19】図19は、本発明の電子線検査装置の一実施例の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図20】図20は、図19に示された装置に設けられた作動排気機構の一例を示す図である。
【図21】図21は、図19に示された装置のガスの循環配管系を示す図である。
【図22】図22(A)は、本発明の電子ビーム装置の一実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す正面図、図22(B)は同側面図である。
【図23】図23は、本発明の電子ビーム装置の他の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図24】図24は、本発明の電子ビーム装置の別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図25】図25は、本発明の電子ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図26】図26は、本発明の電子ビーム装置の更に別の実施形態の真空チャンバ及びXYステージを示す図である。
【図27】図27(a)は、本発明に係る複数鏡筒の電子光学装置の1つの鏡筒の光学系の概略上面図、図27(b)は、同側面図である。
【図28】図28は、本発明に係る複数鏡筒の電子光学装置における複数光学系の第1の配列形態を示す図である。
【図29】図29は、本発明に係る複数鏡筒の電子光学装置における複数光学系の第2の配列形態を示す図である。
【図30】図30は、パターン欠陥検出方法を説明するための図である。
【図31】図31は、線幅測定方法を説明するための図である。
【図32】図32は、電位コントラスト測定方法を説明するための図である。
【図33】図33は、電子光学系における軸合わせを説明するための図である。
【図34】図34は、軸合わせのために用いられる、図33の試料の上に設けられるマーカーを示す図である。
【図35】図35は、二次光学系の軸合わせを説明するための電子光学系の図である。
【図36a】図36(a)は、光軸合わせが終了した状態での絞り画像とアドレスとの位置関係を示す図である。
【図36b】図36(b)は、光軸合わせ途中での絞り画像とアドレスとの位置関係を示す図である。
【図37】図37は、本発明に従ってウィーンフィルタ(E×B分離器)への軸合わせを行う、電子線装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図38】図38は、本発明の電子線装置の要部の一例を概略的に示す図である。
【図39】図39は、図38の装置における電子ビームとマルチ開口板の開口との調整前の対応関係を示す図である。
【図40】図40は、図38の装置における電子ビームとマルチ開口板の開口との軸合わせ後の対応関係を示す図である。
【図41】図41は、図38の装置における電子ビームとマルチ開口板の開口との本発明による調整後の対応関係を示す図である。
【図42】図42は、基準画像と被検査画像との位置ずれを防止するための装置を備えた本発明に係る欠陥検査装置の概略構成図であり且つ本発明に従って照射ポイントと設計ポイントとのずれの較正を行う電子線検査装置の概略構成図である。
【図43】図43は、図42の欠陥検査装置で取得される複数の被検査画像及び基準画像の例を示す図である。
【図44】図44は、図42の欠陥検査装置におけるウエハ検査のメインルーチンの流れを示すフローチャートである。
【図45】図45は、図44における複数の被検査画像データ取得工程(ステップ304−9)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
【図46】図46は、図44における比較工程(ステップ308−9)のサブルーチンの詳細な流れを示すフローチャートである。
【図47】図47は、図42の欠陥検査装置の検出器の具体的構成例を示す図である。
【図48】図48は、半導体ウエハの表面上で部分的に重なり合いながら互いから位置がずらされた複数の被検査領域を概念的に示す図である。
【図49】図49は、第1のマルチ開口板の概略正面図である。
【図50】図50は、マーカ台の概略平面図である。
【図51】図51は、複数の電子ビームの照射位置を較正するための方法を示すフローチャートである。
【図52a】図52(a)は、複数の1次電子ビームのマーカ台での照射位置をX軸に沿って較正する方法を示す概略図である。
【図52b】図52(b)は、複数の1次電子ビームのマーカ台での照射位置をY軸に沿って較正する方法を示す概略図である。
【図52c】図52(c)は、光軸の位置とマーク位置との位置合わせを説明するための概略図である。
【図53a】図53(a)は、複数の1次電子ビームをマーカ台でX軸に沿っ走査したときに出力される信号波形を示す図である。
【図53b】図53(b)は、複数の1次電子ビームをマーカ台でY軸に沿っ走査したときに出力される信号波形を示す図である。
【図53c】図53(c)は、1次電子ビームの照射位置が較正されたときの偏向電圧と信号強度との関係を示す図である。
【図54】図54は、クロスオーバ位置調節の説明のための電子光学系の概略図である。
【図55】図55は、本発明によりショット雑音を抑制する方法を説明するための、電子線検査装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図56】図56は、ショット雑音を抑制する方法を説明するための、他の電子線検査装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図57】図57は、マルチビーム検査装置にドーズ制御機能を組み込んだ電子線検査装置の光学系を模式的に示した説明図である。
【図58】図58(a),図58(b)は、一つの実施例に係る試料保護機構における作動フローチャートである。
【図59】図59は、この発明に係る荷電粒子線制御素子の一つの実施の形態の構成を概略的に示す図である。
【図60】図60は、図59の荷電粒子線制御素子の断面図である。
【図61】図61は、従来の静電偏向器の上面図である。
【図62】図62(a)は図61のA−A線に沿う断面図であり、図62(b)は図61のB−B線に沿う断面図である。
【図63】図63は、本発明に係る検査装置を用いてプロセス途中のウエハを検査するようにしたデバイス製造工程を示すフローチャートである。
【図64】図64は、リソグラフィー工程を示すフローチャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、
前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、
前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの後方に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項2】
電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、
前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの間に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子線装置において、前記電子銃は空間電荷制限条件で動作するようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子線装置において、前記電子銃に隣接するコンデンサレンズの励起状態を変化させることでクロスオーバの位置を変更することにより、前記電子銃から放出された電子線のうち強度が大きい部分の放射方向の位置を前記開口板の小孔の領域に合わせるようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の電子線装置を用いてプロセス途中のウエハーの評価を行うことを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項1】
電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、
前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、
前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの後方に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項2】
電子線を放出する単一の電子銃と、コンデンサレンズと、複数の孔を設けた開口板と、E×B分離器と、対物レンズを有し、前記電子銃からの電子線を検査されるべき試料面上に照射する第一次光学系と、前記試料から放出され、前記対物レンズで加速され、かつ前記E×B分離器で前記第一次光学系から分離された二次電子を、二次電子検出装置に入射させる第二次光学系とを備え、
前記コンデンサレンズを2段として前記電子銃に隣接して配置し、前記2段のコンデンサレンズの間に前記開口板を配置し、電子線を前記開口板に照射して複数の電子ビームを形成するようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子線装置において、前記電子銃は空間電荷制限条件で動作するようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の電子線装置において、前記電子銃に隣接するコンデンサレンズの励起状態を変化させることでクロスオーバの位置を変更することにより、前記電子銃から放出された電子線のうち強度が大きい部分の放射方向の位置を前記開口板の小孔の領域に合わせるようにしたことを特徴とする電子線装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の電子線装置を用いてプロセス途中のウエハーの評価を行うことを特徴とするデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36a】
【図36b】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52a】
【図52b】
【図52c】
【図53a】
【図53b】
【図53c】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36a】
【図36b】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52a】
【図52b】
【図52c】
【図53a】
【図53b】
【図53c】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【公開番号】特開2006−339169(P2006−339169A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231802(P2006−231802)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【分割の表示】特願2002−540181(P2002−540181)の分割
【原出願日】平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【分割の表示】特願2002−540181(P2002−540181)の分割
【原出願日】平成13年11月2日(2001.11.2)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】
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