説明

電子装置の製造方法

【課題】コンタクトプリント法により電子装置を形成するためには、パターンの位置を検出して、パターンと印刷位置とを整合させることが必要である。しかし撥液膜に自己組織化単分子膜(SAMs)を用いている場合、段差は分子1つ分であり、光学的に認識することは困難である。そのため、位置合わせは著しく困難であり、セルフアライン機構が存在する場合でも構成要素前駆体による充填が不十分となる領域が残るという課題がある。
【解決手段】撥液膜に囲まれたアライメントマーク領域24中に銀分散液をインクジェット法を用いて滴下する。アライメントマーク領域24内は親液性が高い状態であるため銀分散液は広がる。アライメントマーク領域外では撥液性自己組織化単分子22により弾かれ、表面張力によりアライメントマーク領域内に引き込まれることでアライメントマーク構造物31を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタや有機配線、圧電素子等の電子装置を製造する手法として以下に示す技術が知られている。この技術はまず、基板の主面側に撥液膜形成材を用いて電子装置の周囲を囲うよう、撥液膜を用いたパターンを形成する。続けて当該パターン内に凸版印刷法の1つであるコンタクトプリント法を用いて、電子装置の構成要素として用いられている物質を液状化した構成要素前駆体を用いて撥液膜を避けるようにパターン上に形成し、その後に固化させて電子装置の構成要素を形成する技術である。
【0003】
この技術を用いることで、コンタクトプリント法に代表される、印刷法で不可避的に発生する印刷ずれをセルフアラインで修正させることができる。具体的には、印刷法で例えば1μm程度の位置ずれが発生した場合、構成要素前駆体の一部はパターン周囲を囲う撥液性が高い領域を乗り越える形で形成される。撥液性が高い領域では構成要素前駆体が弾かれる。更に表面張力が働くため撥液性が低いパターン内部に吸われるように引き戻される。そのためパターンを乗り越える領域での構成要素前駆体の残り量は抑制される。
【0004】
一方、印刷ずれで生じたパターン内での未充填領域の親液性は周囲と比べて高いため、パターン内部にある構成要素前駆体が滲むよう拡散する。そのため未充填領域にも構成要素前駆体が形成される。これらの機構により、印刷ずれはセルフアラインで修正される。特許文献1には、この技術を圧電体パターンの形成に用いた例が記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−72473号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、コンタクトプリント法により電子装置を形成するためには、パターンの位置を検出して、パターンと印刷位置とを整合させることが必要である。特に撥液膜に自己組織化単分子膜(SAMs)を用いている場合、撥液膜に生じる段差は分子1つ分であり、光学的に認識することはほぼ不可能である。そのため、パターンと印刷位置とを整合させるための位置合わせを行うことは著しく困難である。印刷ずれが大きい場合、上記した機構によるセルフアライン機構が存在する場合でも撥液性が高い領域に構成要素前駆体は取り残され、またパターン内での未充填領域に生じる滲みによる拡散機構が存在する場合でも構成要素前駆体による充填が不十分となる領域が残るという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は従来のこのような課題を解決し、自己組織化単分子膜を用いた場合でもパターンの位置検出を可能とする電子装置の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本出願において、「上」とは基板の主面から離れていく方向を指すものと定義する。
上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は(1)基板の主面側に、電子装置を構成する物質のうち、前記主面側に最も近い位置にある機能膜構成物質の液状前駆体を含む第2の液体及び光学的特性が周囲と異なるアライメント構造物を得るためのアライメントマーク構造物前駆体を含む第1の液体に対して、アライメントマーク領域及び前記液状前駆体が位置すべき領域を少なくとも含むよう、前記主面側の親液状態に比して高い親液性を有する親液膜を形成する工程と、(2)前記主面側の親液状態に比して前記第1の液体及び前記第2の液体に対する親液性が低い撥液膜を前記アライメントマーク領域及び前記液状前駆体が位置すべき領域を囲うよう形成する工程と、(3)前記アライメントマーク領域に前記第1の液体を塗布した後、前記第1の液体にエネルギーを印加し、前記アライメントマーク構造物を形成する工程と、(4)前記アライメントマーク構造物を用いてアライメントを行い、前記第2の液体のパターンを形成する工程、を含み、前記アライメントマーク領域は、前記第2の液体を塗布する場合に生じるアライメント誤差により生じる前記第2の液体の付着位置のずれを包含するパターンを有し、前記(1)と前記(2)の工程をこの順序で実行、前記(2)と前記(1)の工程をこの順序で実行、前記(2)の工程のみを実行、又は前記(1)のみを実行、するこれら4通りのうち何れか1通りの工程を実行した後、前記(3)及び前記(4)の工程をこの順序で実行することを特徴とする。
ここで、「機能膜」という場合、トランジスタのチャネル領域として機能する半導体膜や、ゲート電極や配線として機能する金属膜を含むものとして定義する。
【0009】
この製造方法によれば、アライメントマーク領域はアライメントマーク構造物前駆体を含む液体の付着位置のずれを包含するよう設定されている。このため基板周囲の形状を元にアライメントマーク領域内部の親液膜内、又はアライメントマーク構造物前駆体をアライメントマーク領域内部の親液膜内に引き込み可能な位置に液体を塗布することでセルフアラインでアライメントマーク構造物を形成することができる。従って、液体の付着位置に依存しないアライメントマーク構造物を形成する方法を提供することができ、アライメントマーク構造物をセルフアラインで形成しない場合と比べ高い位置精度を確保することができる。
【0010】
また、本発明にかかる電子装置の製造方法は、基板の主面側に、アライメントマーク構造物前駆体を含む第1の液体及び機能膜前駆体を含む第2の液体に対し前記基板の主面側の親液状態に比して高い親液性を有する親液膜と、前記第1の液体及び前記第2の液体に対し前記基板の主面側の親液状態に比して低い親液性を有する撥液膜とが重なる第1の領域と、前記親液膜と前記撥液膜とが重ならずに前記親液膜のみが配置される第2の領域と、を形成する工程と、前記第2の領域で前記アライメントマークとなるべき第1の部分に前記第1の液体を塗布し、前記アライメントマーク構造物を形成する工程と、前記アライメントマーク構造物を用いてアライメントを行い、前記第2の領域で前記機能膜を形成すべき第2の部分に前記第2の液体を塗布し、前記機能膜を形成する工程と、を含むものであってもよい。
【0011】
また、上記の電子装置の製造方法において、前記第2の領域の第2の部分に前記第2の液体を塗布する工程が、前記基板の主面側に凹凸を有する原盤を接触させ、前記原盤の凹部に配置される前記第2の液体を前記第2の領域の第2の部分に転写するものであることが好ましい。これによれば、原盤を押し当てる際のアライメントの精度を向上させることができる。
【0012】
また、光学的特性が周囲と異なる部材をアライメントマーク構造物として用いることで光学的な位置認識用のパターンとして機能するアライメントマーク構造物が形成される。光学的特性に差異があるため、光を照射した場合にアライメントマーク構造物の位置は容易に検出できる。
【0013】
従って、このアライメントマーク構造物を用いてアライメントを行うことで高精度な位置合わせを容易に行うことができる。
【0014】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記第1の液体の塗布はディスペンス法又はインクジェット法による堆積工程を用いて行われることを特徴とする。
【0015】
この製造方法によれば、ディスペンス法又はインクジェット法により液状のアライメントマーク構造物前駆体が親液膜に堆積される。ディスペンス法及びインクジェット法は吐出量の精密な制御が可能であるため、一定量のアライメントマーク構造物前駆体を供給することが可能である。そのためアライメントマーク構造物前駆体の供給量の変動に起因するアライメントマーク構造物形状の変化を抑えることができ、より精密なアライメントを行うことが可能となる。
【0016】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記第1の液体の塗布はディスペンス法又はインクジェット法による堆積工程を用いて行われ、前記堆積工程と同時又は前記堆積工程後に振動エネルギー又は熱エネルギーの何れか1つ又は両方を加えて前記撥液膜上に逸脱した前記アライメントマーク構造物前駆体を前記親液膜に引き戻し且つ前記親液膜での前記アライメントマーク構造物前駆体の膜厚むらの絶対量を抑制することを特徴とする。
【0017】
この製造方法によれば、エネルギーの極小値を有する状態に対応する、液状のアライメントマーク構造物前駆体が撥液膜に取り残された状態にある場合に、エネルギーを印加することでエネルギーの極小値状態を脱出しエネルギー的な最小値となる親液膜への移動を促進することができ、より精密なセルフアライン性を有するアライメントマーク構造物を形成することができる。更に親液膜内でのアライメントマーク構造物前駆体の分布むらの絶対量を抑制することで乱反射が抑制されアライメント精度を向上させることができる。
【0018】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記親液膜及び前記撥液膜は光学的に透明であり、前記アライメントマーク構造物前駆体にはAg、Au、Cuの少なくとも1つを含む金属微粒子を溶媒に含ませて流動性を与えた物質を用い、前記アライメントマーク構造物は前記アライメントマーク構造物前駆体に由来する金属を含み、且つ前記基板の前記主面側に単数又は複数の前記アライメントマーク構造物を有することを特徴とする。
【0019】
この製造方法によれば、光反射率が高いAg、Au、Cuをアライメントマーク構造物として用いるのでアライメントマーク構造物が形成された領域とそれ以外の領域との光反射率は大きく異なる。従ってアライメントマーク構造物に光反射率が低い材料を用いた場合と比べアライメントマーク構造物を容易に認識することが可能となる。また、単数のアライメントマーク構造物を用いる場合には位置合わせに要する面積を低減することができ、同一面積の基板を用いた場合に一枚の基板から得られる、電子装置が形成されたチップの数を増やすことができる。また、複数のアライメントマーク構造物を用いる場合には、基板の変形に対しても修正可能な精密な位置合わせを行うことができる。
【0020】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記親液膜又は前記撥液膜のうち少なくとも一方は自己組織化単分子膜からなることを特徴とする。
【0021】
この製造方法によれば、撥液膜に自己組織化単分子膜を用いる場合、撥液膜の形成により生じる段差は分子一層分の厚さとなり段差を極めて小さくすることができる。そのため、段差に起因する歪みを排除した平坦性に優れた電子装置を形成することができる。
【0022】
また、親液膜に自己組織化単分子膜を用いた場合では段差に起因する歪みを排除することに加え、親液膜に自己組織化に伴い発生する高い配向性を与えることができる。この親液膜に重ねて成膜を行うことで、膜の配向性を向上させることができ、膜の配向性に敏感な電子装置の特性を制御することができる。
【0023】
そして、両方とも自己組織化単分子膜を用いた場合、撥液膜からはじき出された液体が親液膜に流入し、親液膜内部には滲むように液体が再分布し親液膜内部を全て充填し、且つ撥液膜上には液体が残らなくなるので、より高いセルフアライン性を有する製造方法を提供することができる。
【0024】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記自己組織化単分子膜の構成要素として撥液性を有するフッ化アルキルシランと、親液性を有するアミノアルキルシランの少なくとも一方を含むことを特徴とする。
【0025】
この製造方法によれば、撥液性に優れた特性を有する材料としてフッ化アルキルシラン、親液性に優れた特性を有するアミノアルキルシランを用いることでセルフアライン性がより高い自己組織化単分子膜の製造方法を提供することができる。
【0026】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記電子装置はボトムゲート型の有機薄膜トランジスタ(TFT)であり前記アライメントマーク構造物を用いてゲート電極領域との位置合わせを行い、続けてコンタクトプリント法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法の何れか1つの接触式の印刷法を用いて前記有機薄膜トランジスタのゲート電極前駆体を形成することを特徴とする。
【0027】
この製造方法によれば、アライメントマーク構造物を用いて位置合わせを行い、合わせずれ量を抑えた状態で基板の主面側にゲート電極前駆体を形成する。ここで、有機薄膜トランジスタのゲート電極領域の位置から外れ、撥液膜に囲まれた領域周辺に形成されたゲート電極前駆体は弾かれる。更に表面張力が働くため撥液性が低いパターン内部に吸われるようにゲート電極前駆体はゲート電極領域に引き戻される。従って、セルフアラインでアライメントさせた状態でゲート電極を形成することが可能となる。そのため位置ずれによる不良発生を抑えた電子装置としてのボトムゲート型の有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。なお、合わせずれ量は、撥液膜上に孤立したゲート電極前駆体が発生せぬよう位置合わせが行われていることが望ましく、アライメントマーク構造物とのアライメントを行うことで合わせずれ量を好ましい範囲に抑えることが可能となる。
【0028】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記電子装置はトップゲート型の有機薄膜トランジスタであり、前記アライメントマーク構造物を用いて前記有機薄膜トランジスタのチャネル領域の位置合わせを行い、続けて前記撥液膜に囲われるよう形成される前記チャネル領域にコンタクトプリント法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法の何れか1つの接触式の印刷法を用いて前記有機薄膜トランジスタのチャネル構造物前駆体を形成することを特徴とする。
【0029】
この製造方法によれば、アライメントマーク構造物を用いて位置合わせを行い、合わせずれ量を抑えた状態で基板の主面側にチャネル構造物前駆体を形成する。ここで、有機薄膜トランジスタのチャネル領域の位置から外れ、撥液膜に囲まれた領域周辺に形成されたチャネル構造物前駆体は弾かれる。更に表面張力が働くため撥液性が低いパターン内部に吸われるようにチャネル構造物前駆体はチャネル領域に引き戻される。従って、セルフアラインでアライメントさせた状態でチャネル構造物を形成することが可能となる。そのため位置ずれによる不良発生を抑えた電子装置としての有機薄膜トランジスタの製造方法を提供することができる。なお、合わせずれ量は、撥液膜上に孤立したチャネル構造物前駆体が発生せぬよう位置合わせが行われていることが望ましく、アライメントマーク構造物とのアライメントを行うことで合わせずれ量を好ましい範囲に抑えることが可能となる。
【0030】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記チャネル構造物は前記親液膜の一部の上に形成され、前記親液膜は自己組織化単分子膜からなり、前記チャネル構造物に前記自己組織化単分子膜により配向性が与えられていることを特徴とする。
【0031】
この製造方法によれば、チャネル構造物の配向度に対し電気特性が強く依存する有機薄膜トランジスタの性能を向上させることができる。親液性を有する自己組織化単分子膜上により獲得された配向性は有機トランジスタのチャネル構造物部分に伝達される。そのため有機薄膜トランジスタのチャネル部分の電気特性を向上させることができる。
【0032】
自己組織化単分子膜(SAMs:Self-Assembled Monolayers)は、固体表面へ分子を固定する方法であって高配向・高密度な分子膜が形成可能な方法である自己組織化(SA:Self-Assembly)法によって作製される膜である。自己組織化法は、オングストロームオーダで分子の配向性を操作できる。
【0033】
このため、自己組織化単分子膜に重ねてその特性が配向性の影響を受ける薄膜を高い配向性を持った状態で成膜することが可能となり、配向性にその特性を依存する電子装置の特性を向上させることができる。従って、チャネル領域の配向度に対し電気特性が強く依存する有機トランジスタの性能を向上させることができる。自己組織化単分子膜を用いて得ることができる高い配向性を有する構造は有機トランジスタのチャネル部分に伝達される。そのため有機トランジスタのチャネル部分の電気特性を向上させることができる。
【0034】
また、上記した課題を解決するために、本発明の電子装置の製造方法は、前記電子装置は強誘電体を用いた圧電素子であり、前記アライメントマーク構造物を用いて電極領域の位置合わせを行い、続けて凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法の何れか1つの接触式の印刷法を用いて前記強誘電体の電極前駆体を形成することを特徴とする。
【0035】
この製造方法によれば、アライメントマーク構造体を用いて位置合わせを行い、合わせずれ量を抑えた状態で基板の主面側に電極前駆体を形成する。ここで、圧電素子の電極領域の位置から外れ、撥液膜に囲まれた領域周辺に形成された電極前駆体は弾かれる。更に表面張力が働くため撥液性が低いパターン内部に吸われるように電極前駆体は電極領域に引き戻される。従って、セルフアラインでアライメントさせた状態で電極を形成することが可能となる。そのため位置ずれによる不良発生を抑えた電子装置としての圧電素子の製造方法を提供することができる。
【0036】
また、本発明にかかる電子装置の製造方法は、基板の主面側に、アライメントマーク構造物前駆体を含む第1の液滴及び機能膜前駆体を含む第2の液滴に対し前記基板の主面側の親液状態に比して高い親液性を有する親液領域を形成する工程と、前記親液領域の第1の部分に前記第1の液滴を塗布し、前記アライメントマーク構造物を形成する工程と、前記アライメントマーク構造物を用いてアライメントを行い、前記基板の主面側に凹凸を有する原盤を接触させ、前記原盤の凹部に配置される前記第2の液滴を前記第2の領域の第2の部分に転写し、前記機能膜を形成する工程と、を含むことを特徴とするものであってもよい。
【0037】
また、上記の電子装置の製造方法において、前記親液領域が、前記基板の主面上に形成された、前記第1の液体及び前記第2の液体に対し前記基板の主面側の親液状態に比して高い親液性を有する自己組織化単分子膜に囲まれた領域であることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
(第1の実施形態)
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。図1〜図8はボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図である。
まず、工程1として図1に示すように、ポリカーボネートを用いて形成している基板11にバッファ膜としてパリレン樹脂膜12を形成する。ここでは基板11としてポリカーボネートを用いているが、これはプラスチックである場合には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレード、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレート、ポリシクロオレフィン、ポリイミド等の材質を用いても良い。また、基板11の材質はプラスチックに限定されるものではなく、例えばシリコン、ガラス、ステンレス、セラミック等の材料を用いても良い。また、基板11の種類と求める特性によってはバッファ膜となるパリレン樹脂膜12の形成は省略可能である。
【0039】
次に、工程2として図2に示すように、コンタクトプリント法を用いてゲート電極領域23とアライメントマーク領域24の周辺が撥液性自己組織化単分子膜22で囲われるようパターンを形成する。撥液性自己組織化単分子膜22を形成するための前駆体としては、例えばフッ化アルキルシランを用いることができる。また、撥液性自己組織化単分子膜22の形成後、ゲート電極領域23及び/又はアライメントマーク領域24の内側に親液性を有する親液性自己組織化単分子膜25を形成しても良い。親液性自己組織化単分子膜25を形成するための前駆体としては、例えばアミノアルキルシランを用いることができる。ここで、撥液性自己組織化単分子膜22を形成する工程と親液性自己組織化単分子膜25の形成順序を逆にしても良い。また、親液性自己組織化単分子膜25のみを形成しても良い。
【0040】
ここで、撥液性自己組織化単分子膜22を形成する際に好適に用いられるコンタクトプリント法について簡単に説明する。凸版印刷法の1つであるコンタクトプリント法はナノ構造形成法のひとつであり、スタンプ21(原盤)を押し付けるようにしてパターンを転写する。スタンプ21は、既知の光リソグラフィーや電子線リソグラフィーによって作製した微細な形状パターン(マスター)をゴム状プラスチックスに写し取り作製する。コンタクトプリント法は、このスタンプの印刷面側に液状の物質を塗布し基板に密着(コンタクト)させ、基板と密着するスタンプの凸部分のパターンを転写することでマスターと同じパターンを基板上に作製する方法である。マスター基板の製造方法としては、フォトリソグラフ法を用いてマスター基板を加工して形成する方法や、フォトリソグラフ法中で用いられる露光工程で光に代えて更に微細加工が可能な電子ビーム露光を用いて形成する手段を用いることができる。このスタンプ21を用いて撥液性自己組織化単分子膜22を形成することでμmオーダーの微細パターンを安価で簡便に形成することができる。また、コンタクトプリント法を用いることでディスペンス法やインクジェット法に比べ高い膜厚精度を持って微細パターンを形成することができる。
【0041】
コンタクトプリント法に用いられるスタンプ21には撥液性自己組織化単分子膜22を形成するための撥液性自己組織化単分子膜22の前駆体が形成されている。撥液性自己組織化単分子膜22の前駆体としては、例えばフッ化アルキルシラン等を用いることができる。そしてスタンプ21の凸部に形成された撥液性自己組織化単分子膜22をパリレン樹脂膜12上に転写して撥液性自己組織化単分子膜22を形成する。転写はスタンプ21の凸部とパリレン樹脂膜12を接触させることで行われる。スタンプ21がこの転写工程で受ける損傷は小さいため、再度使用することが可能であり、TATやコストの低減が可能となる。
【0042】
次に、工程3として図3に示すようにアライメントマーク領域24に銀の微粒子をエタノール中に分散させて形成されるアライメントマーク構造物前駆体32を充填する。具体的には液状物を局所的に滴下するディスペンス法やインクジェット法(インクに代えて液状の銀を吐出する)を用いて、アライメントマーク領域24内をアライメントマーク構造物前駆体32で充填する。
【0043】
ディスペンス法やインクジェット法は多量の液状物を供給する場合に適した方法であり、アライメントマーク領域24を埋めるように液状物を供給することで表面張力でその広がりが抑制される状態、即ちアライメントマーク領域24の領域を覆うようアライメントマーク構造物31が形成される。ディスペンス法やインクジェット法による液体の供給は高い制御性を持って行われるため、アライメントマーク構造物31は高い形状再現性を持って形成することができる。ここで、アライメントマーク領域24は例えば一辺が100μm程度と大きな寸法で形成されている。従って、ポリカーボネートを用いて形成された基板11との相対的位置関係等の情報を元にして液状の銀をアライメントマーク領域24内部に充填することができる。
【0044】
充填後、エタノールを揮発除去することでアライメントマーク領域24はアライメントマーク構造物31としての銀で充填される。銀は反射率が極めて高いため、銀で充填することで形成されるアライメントマーク構造物31と周辺とのコントラスト差が大きくなり、容易にアライメント可能なアライメントマーク構造物31が形成される。ここで、アライメントマーク領域24を充填するアライメントマーク構造物前駆体32として銀の微粒子をエタノール中に分散させた液状の銀に代えて、金や銅の微粒子をエタノール中に分散させて形成される液状体、又はこれらの混合物を用いても良い。また、ここでは分散媒体としてエタノールを用いたが、これは例えばプロパノールやブタノール等のアルコールや、エーテル、ケトン等の溶媒を用いても良く、光の反射率を低下させる残渣物を揮発除去後に残さない溶媒を用いることが好適である。また、アライメントマーク領域24は基板11に複数形成することが好ましく、複数の位置に形成されるアライメントマーク構造物31を参照して位置合わせを行うことでより高精度に位置合わせを行うことができる。
【0045】
次に、工程4として図4に示すように周辺よりも高い反射率を有するアライメントマーク構造物31の位置に合わせてアライメントを行い、ゲート電極領域23上にゲート電極前駆体41を充填する。ゲート電極領域23を囲うよう撥液性自己組織化単分子膜22が形成されているため、おおよその位置決めができればセルフアラインでゲート電極前駆体41を充填することができる。
【0046】
アライメントマーク構造物31を複数設けた場合、位置決め精度が高くなるため、より確実にゲート電極前駆体41を充填することができ好適である。ここで、ゲート電極前駆体41の構成材料としては金、銀、銅に代表される金属を微粒子化して溶媒中に分散させたものや、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)等の導電性高分子を溶媒に溶かし流動性を与えたものを用いることができる。導電性高分子を用いてゲート電極前駆体41を形成するには、例えばポリアニリンを用いる場合にはブタノール等の有機溶媒を用いて溶解したものをゲート電極前駆体41として用いることができる。本実施形態では銀の微粒子をエタノール中に分散させている液状体を用いている。
【0047】
液状のゲート電極前駆体41は、例えば撥液性自己組織化単分子膜22の形成方法と同じコンタクトプリント法を用いて形成される。コンタクトプリント法は前述したように微細なパターンの形成に対して好適な技術である。ここでは、ゲート電極前駆体41は撥液性自己組織化単分子膜22により囲われているため、撥液性自己組織化単分子膜22に乗り上げたゲート電極前駆体41は表面張力によりゲート電極領域23に引き戻されるため、セルフアラインでゲート電極前駆体41を形成することができる。
【0048】
ゲート電極領域23をゲート電極前駆体41で充填した後、溶媒を揮発除去して固化させることでゲート電極42は形成される。この処理で体積は図3に示すよう収縮する。ここで、ゲート電極前駆体41の形成方法としてコンタクトプリント法を用いる方法を例示しているが、これはコンタクトプリント法に代えて凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法に代表される接触式印刷法を用いることができる。接触型印刷法は精密なパターンを取り扱えるため、微細なパターンを形成するために好適な方法である。
【0049】
更に、撥液性自己組織化単分子膜22でゲート電極42は囲まれているため、撥液性自己組織化単分子膜22の幅を狭くし、且つコンタクトプリント法に用いるスタンプ21の幅を狭くすることで更なる微細構造に対応可能なゲート電極42を形成することができる。
【0050】
又、ゲート電極42はパリレン樹脂膜12上に形成される。パリレン樹脂膜12はゲート電極42の周囲を囲んでいる撥液性自己組織化単分子膜22と比べ親液性が高いため、良好な密着性が確保でき、膜剥れ等の不良発生を抑えることができる。
【0051】
次に、工程5として図5に示すようにゲート絶縁膜51を形成する。ゲート絶縁膜51はコンタクトプリント法に代表される接触式印刷法を用いてゲート絶縁膜前駆体を成膜し、固化することで形成される。ゲート絶縁膜51を構成する物質としては、パリレン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルフェノール、エポキシ樹脂、エポキシ・シリコーンハイブリッド等の有機膜や、酸化シリコン等の無機膜を用いることができる。一例としてゲート絶縁膜51にパリレン樹脂を用いる場合には、ゲート絶縁膜前駆体としてブタノール中にパリレン樹脂を溶解した液体を用いることができる。ゲート絶縁膜51の厚みは典型的には200nm程度の膜厚を持つよう形成される。
【0052】
次に、工程6として図6に示すようにソース・ドレイン電極61を形成する。ソース・ドレイン電極61はコンタクトプリント法に代表される接触式印刷法を用いてソース・ドレイン電極前駆体62を成膜し、固化することで形成される。構成材料としてはゲート電極の構成材料と同じく金、銀、銅に代表される金属を微粉末化して溶媒中に分散させたものや、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)等の導電性高分子に流動性を与えたものを用いることができる。本実施形態ではソース・ドレイン電極61に銀を用い、ソース・ドレイン電極前駆体62として本実施形態では銀の微粒子をエタノール中に分散させている液状体を用いている。
【0053】
次に、工程7として図7に示すように、半導体膜71を形成する。半導体膜71はコンタクトプリント法を用いて形成されている。半導体膜71の構成材料としては、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ペンタセン等を用いることができる。一例として半導体膜71にポリチオフェンを用いる場合には、コンタクトプリント法で扱い得る液状物質としてポリチオフェンをブタノール中に溶解した液体を半導体膜前駆体72として用いることができる。半導体膜前駆体72は、半導体膜71の厚さが100nm程度の膜厚となるよう、コンタクトプリント法を用いて形成される。コンタクトプリント法を用いた後溶媒を揮発除去して固化させることで有機薄膜トランジスタ73が形成される。
【0054】
次に、工程8として図8に示すようにITO電極81や保護層82を形成することで液晶駆動素子83が形成される。ITO電極81の厚さは例えば150nm程度、保護層82にはパリレン樹脂を用い、1μm程度の膜厚となるよう形成されている。パリレン樹脂は水蒸気やガスの透過性が極めて低いため、有機薄膜トランジスタ73やITO電極81を効果的に保護することができる。なお、半導体膜71にシリコンや化合物半導体を用いることで本実施形態は無機薄膜トランジスタの製造工程として容易に転用することができる。
【0055】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について図面を用いて説明する。図9〜図12はトップゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図である。ここで、説明の冗長化を避けるため、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略する。更に、第1の実施形態からの引用部分についての効果は、特に指定なき場合には第1の実施形態の効果を引き継いでいる。
【0056】
まず、第1の実施形態に係る工程1、2、3の終了後、図9に示すように、アライメントマーク構造物31の位置に合わせてアライメントを行い、コンタクトプリント法等を用いて半導体膜パターン91の内側を例えばアミノアルキルシラン等、親液性と自己組織化特性とを備えた物質を用い親液性自己組織化単分子膜92で覆う。親液性自己組織化単分子膜92を囲う位置は、撥液性自己組織化単分子膜22により覆われている。半導体膜パターン91の内部は親液性自己組織化単分子膜92で覆われ、外部は撥液性自己組織化単分子膜22により覆われている。なお、親液性自己組織化単分子膜92を形成する手順と撥液性自己組織化単分子膜22を形成する手順は交換可能である。また、親液性自己組織化単分子膜92又は撥液性自己組織化単分子膜22の何れか一方のみを形成する手順を用いても良い。
【0057】
この工程により半導体膜パターン91内の配向性を揃えることができる。特に有機半導体を用いて半導体膜101(図10参照)を構成する場合、配向性を揃えることで図11に示される有機薄膜トランジスタ114(図11参照)の電気的特性を向上させることができる。
【0058】
次に、図10に示すように配向性が揃えられた半導体膜パターン91内に半導体膜101を形成する。半導体膜101はその前駆体となる液状物を用いて、コンタクトプリント法や凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法に代表される接触式印刷法により半導体膜前駆体102を形成し、硬化することで形成される。半導体膜101の構成材料としては、ポリチオフェン、ポリフルオレン、ペンタセン等を用いることができる。一例として半導体膜101にポリチオフェンを用いる場合には、コンタクトプリント法で扱い得る液状物質としてポリチオフェンをブタノール中に溶解した液体を半導体膜前駆体102として用いることができる。半導体膜前駆体102は、半導体膜101の厚さが100nm程度の膜厚となるよう、コンタクトプリント法を用いて形成される。
【0059】
次に、図11に示すように第1の実施形態に係る工程4を行い、ソース・ドレイン電極112をコンタクトプリント法で形成し、続けて第1の実施形態に係る工程5を行い、ゲート絶縁膜111を形成する。続けてゲート電極113を形成することにより、例えば有機薄膜トランジスタ114を形成する。
【0060】
ここで、ゲート電極113の前駆体の構成材料としては金、銀、銅に代表される金属を微粒子化して溶媒中に分散させたものや、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルフォン酸(PEDOT/PSS)等の導電性高分子を溶媒に溶かし流動性を与えたものを用いることができる。導電性高分子を用いてゲート電極前駆体を形成するには、例えばポリアニリンを用いる場合にはブタノール等の有機溶媒を用いて溶解したものを用いることができる。本実施形態では銀の微粒子をエタノール中に分散させている液状体を用いている。
【0061】
次に、第1の実施形態に係る工程8を行う。図12に示すように、ITO電極121や保護層122を形成することで液晶駆動素子123が形成される。ITO電極121の厚さは例えば150nm程度、保護層122にはパリレン樹脂を用い、1μm程度の膜厚となるよう形成されている。パリレン樹脂は水蒸気やガスの透過性が極めて低いため、有機薄膜トランジスタ114やITO電極121を効果的に保護することができる。
【0062】
この製造方法を用いる場合、図10に示すように半導体膜101は下地形状が平坦な部分に形成される。トランジスタ特性は半導体膜101の特性に支配されるため、下地形状が平坦な場所に形成される本実施形態に用いられているトップゲート型の構造は半導体膜101の特性を向上させるために好適である。加えて、半導体膜101を親液性自己組織化単分子膜92を形成することで配向性を揃えられた領域に形成されている。そのため、半導体膜101の配向性は揃えられ、より特性の優れた有機薄膜トランジスタ114を形成することができる。
【0063】
又、親液性自己組織化単分子膜92を形成して配向性を揃える方法に代えて、ポリカーボネートを用いて形成される基板11又はパリレン樹脂膜12をラビングする工程等により配向性を揃えるよう処理しても良い。
【0064】
なお、この場合でも半導体膜101にシリコンや化合物半導体を用いることで本実施形態は無機薄膜トランジスタの製造工程として容易に転用することができる。
【0065】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について図面を用いて説明する。図13〜図17は強誘電体膜を形成する工程を示す模式断面図である。ここで、説明の冗長化を避けるため、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略する。更に、第1の実施形態からの引用部分についての効果は、特に指定なき場合には第1の実施形態の効果を引き継いでいる。
【0066】
まず、第1の実施形態に係る工程1終了後、図13に示すように、コンタクトプリント法を用いて強誘電体膜電極パターン131とアライメントマーク領域24の周辺が撥液性自己組織化単分子膜132で囲われるようパターンを形成する。撥液性自己組織化単分子膜132を形成するための条件は第1の実施形態に係る工程2と同等の条件が用いられる。続けて、強誘電体膜電極パターン131とアライメントマーク領域24を形成する領域に親液性自己組織化単分子膜133を形成する。親液性自己組織化単分子膜133は、例えばアミノアルキルシランを用いて形成することができる。ここで、撥液性自己組織化単分子膜132を形成する工程と、親液性自己組織化単分子膜133を形成する工程の順序は交代可能である。また、撥液性自己組織化単分子膜132を形成する工程と、親液性自己組織化単分子膜133を形成する工程の何れかを省略することも可能である。
【0067】
次に、図14に示すように第1の実施形態に係る工程3と同様の工程によりアライメントマーク領域24をアライメントマーク構造物前駆体32としての液状銀で充填し、乾燥固化させてアライメントマーク構造物31を形成する。
【0068】
次に第1の実施形態に係る工程4と同様の工程を行い、図15に示すように銀で充填されることで形成されるアライメントマーク構造物31を用いてアライメントを行い、強誘電体膜駆動用の電極151を形成する。電極151は白金の微粒子をエタノール中に分散させた溶液を用い、コンタクトプリント法で電極151を形成した後、エタノールを揮発除去することで形成する。
【0069】
次に、図16に示すように、圧電体膜161を形成する。圧電体膜161の具体的組成としては、特に限定されるものではないが、ジルコニウム酸チタン酸鉛(Pb(Zr、Ti)O3:PZT)、チタン酸鉛ランタン((Pb,La)TiO3)、ジルコニウム酸鉛ランタン((Pb,La)ZrO3:PLZT)、マグネシウムニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)TiO3:PMN−PT)、マグネシウムニオブ酸ジルコン酸チタン酸鉛(Pb(Mg、Nb)(Zr、Ti)O3:PMN−PZT)、亜鉛ニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Zn、Nb)TiO3:PZN−PT)、スカンジウムニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Sc、Nb)TiO3:PSN−PT)、ニッケルニオブ酸チタン酸鉛(Pb(Ni、Nb)TiO3:PNN−PT)、(Ba1-xSrx)TiO3(0≦x≦0.3)、Bi4Ti312、SrBi2Ta29、LiNbO3、LiTaO3、KNbO3のうちいずれかであることが好ましい。例えば、マグネシウムニオブ酸ジルコニウム酸チタン酸鉛であれば、Pb(Mg1/3Nb2/30.1Zr0.504Ti0.3963という組成が好適である。圧電体膜161は、例えば酢酸系の溶媒に分散させて電極151上にコンタクトプリント法により成膜することができる。
【0070】
次に、図17に示すように圧電体膜161上に電極171を形成する。電極171は白金の微粒子をエタノール中に分散させた溶液を用い、エタノールを揮発除去することで形成する。
【0071】
ここで、電極171を形成する場合に、圧電体膜161よりも平面視で内側に収まるよう電極171を形成しても良い。この場合、電極151と電極171とを高い確実性を持って電気的に絶縁することが可能となる。この工程により電子装置としての圧電素子172が形成される。なお、この工程後、バリレン樹脂等を用いて保護層を形成しても良い。パリレン樹脂は水蒸気やガスの透過性が極めて低いため、圧電素子172を効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図2】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図3】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図4】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図5】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図6】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図7】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図8】ボトムゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図9】トップゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図10】トップゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図11】トップゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図12】トップゲート型の有機薄膜トランジスタを形成する工程を示す模式断面図。
【図13】強誘電体膜を形成する工程を示す模式断面図。
【図14】強誘電体膜を形成する工程を示す模式断面図。
【図15】強誘電体膜を形成する工程を示す模式断面図。
【図16】強誘電体膜を形成する工程を示す模式断面図。
【図17】強誘電体膜を形成する工程を示す模式断面図。
【符号の説明】
【0073】
11…基板、12…パリレン樹脂膜、21…スタンプ、22…撥液性自己組織化単分子膜、23…ゲート電極領域、24…アライメントマーク領域、25…親液性自己組織化単分子膜、31…アライメントマーク構造物、32…アライメントマーク構造物前駆体、41…ゲート電極前駆体、42…ゲート電極、51…ゲート絶縁膜、52…ゲート絶縁膜前駆体、61…ソース・ドレイン電極、62…ソース・ドレイン電極前駆体、71…半導体膜、72…半導体膜前駆体、73…有機薄膜トランジスタ、81…ITO電極、82…保護層、83…液晶駆動素子、91…半導体膜パターン、92…親液性自己組織化単分子膜、101…半導体膜、102…半導体膜前駆体、111…ゲート絶縁膜、112…ソース・ドレイン電極、113…ゲート電極、114…有機薄膜トランジスタ、115…ゲート電極前駆体、121…ITO電極、122…保護層、123…液晶駆動素子、131…強誘電体膜電極パターン、132…撥液性自己組織化単分子膜、133…親液性自己組織化単分子膜、151…電極、161…圧電体膜、171…電極、172…圧電素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)基板の主面側に、電子装置を構成する物質のうち、前記主面側に最も近い位置にある機能膜構成物質の液状前駆体を含む第2の液体及び光学的特性が周囲と異なるアライメント構造物を得るためのアライメントマーク構造物前駆体を含む第1の液体に対して、アライメントマーク領域及び前記液状前駆体が位置すべき領域を少なくとも含むよう、前記主面側の親液状態に比して高い親液性を有する親液膜を形成する工程と、
(2)前記主面側の親液状態に比して前記第1の液体及び前記第2の液体に対する親液性が低い撥液膜を前記アライメントマーク領域及び前記液状前駆体が位置すべき領域を囲うよう形成する工程と、
(3)前記アライメントマーク領域に前記第1の液体を塗布した後、前記第1の液体にエネルギーを印加し、前記アライメントマーク構造物を形成する工程と、
(4)前記アライメントマーク構造物を用いてアライメントを行い、前記第2の液体のパターンを形成する工程、を含み、
前記アライメントマーク領域は、前記第2の液体を塗布する場合に生じるアライメント誤差により生じる前記第2の液体の付着位置のずれを包含するパターンを有し、前記(1)と前記(2)の工程をこの順序で実行、前記(2)と前記(1)の工程をこの順序で実行、前記(2)の工程のみを実行、又は前記(1)のみを実行、するこれら4通りのうち何れか1通りの工程を実行した後、前記(3)及び前記(4)の工程をこの順序で実行することを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項2】
基板の主面側に、アライメントマーク構造物前駆体を含む第1の液体及び機能膜前駆体を含む第2の液体に対し前記基板の主面側の親液状態に比して高い親液性を有する親液膜と、前記第1の液体及び前記第2の液体に対し前記基板の主面側の親液状態に比して低い親液性を有する撥液膜とが重なる第1の領域と、前記親液膜と前記撥液膜とが重ならずに前記親液膜のみが配置される第2の領域と、を形成する工程と、
前記第2の領域で前記アライメントマークとなるべき第1の部分に前記第1の液体を塗布し、前記アライメントマーク構造物を形成する工程と、
前記アライメントマーク構造物を用いてアライメントを行い、前記第2の領域で前記機能膜を形成すべき第2の部分に前記第2の液体を塗布し、前記機能膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2の領域の第2の部分に前記第2の液体を塗布する工程が、前記基板の主面側に凹凸を有する原盤を接触させ、前記原盤の凹部に配置される前記第2の液体を前記第2の領域の第2の部分に転写するものであることを特徴とする請求項2に記載の電子装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の液体の塗布はディスペンス法又はインクジェット法による堆積工程を用いて行われることを特徴とする請求項1または2かに記載の電子装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1の液体の塗布はディスペンス法又はインクジェット法による堆積工程を用いて行われ、前記堆積工程と同時又は前記堆積工程後に振動エネルギー又は熱エネルギーの何れか1つ又は両方を加えて前記撥液膜上に逸脱した前記アライメントマーク構造物前駆体を前記親液膜に引き戻し且つ前記親液膜での前記アライメントマーク構造物前駆体の膜厚むらの絶対量を抑制することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項6】
前記親液膜及び前記撥液膜は光学的に透明であり、前記アライメントマーク構造物前駆体にはAg、Au、Cuの少なくとも1つを含む金属微粒子を溶媒に含ませて流動性を与えた物質を用い、前記アライメントマーク構造物は前記アライメントマーク構造物前駆体に由来する金属を含み、且つ前記基板の前記主面側に単数又は複数の前記アライメントマーク構造物を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項7】
前記親液膜又は前記撥液膜のうち少なくとも一方は自己組織化単分子膜からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項8】
前記自己組織化単分子膜の構成要素として撥液性を有するフッ化アルキルシランと、親液性を有するアミノアルキルシランの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項7に記載の電子装置の製造方法。
【請求項9】
前記電子装置はボトムゲート型の有機薄膜トランジスタであり、前記アライメントマーク構造物を用いてゲート電極領域との位置合わせを行い、続けてコンタクトプリント法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法の何れか1つの接触式の印刷法を用いて前記有機薄膜トランジスタのゲート電極前駆体を形成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項10】
前記電子装置はトップゲート型の有機薄膜トランジスタであり、前記アライメントマーク構造物を用いて前記有機薄膜トランジスタのチャネル領域の位置合わせを行い、続けて前記撥液膜に囲われるよう形成される前記チャネル領域にコンタクトプリント法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法の何れか1つの接触式の印刷法を用いて前記有機薄膜トランジスタのチャネル構造物前駆体を形成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項11】
前記チャネル構造物は前記親液膜の一部の上に形成され、前記親液膜は自己組織化単分子膜からなり、前記チャネル構造物に前記自己組織化単分子膜により配向性が与えられていることを特徴とする請求項10に記載の電子装置の製造方法。
【請求項12】
前記電子装置は強誘電体を用いた圧電素子であり、前記アライメントマーク構造物を用いて電極領域の位置合わせを行い、続けて凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法、平板印刷法の何れか1つの接触式の印刷法を用いて前記強誘電体の電極前駆体を形成することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の電子装置の製造方法。
【請求項13】
基板の主面側に、アライメントマーク構造物前駆体を含む第1の液滴及び機能膜前駆体を含む第2の液滴に対し前記基板の主面側の親液状態に比して高い親液性を有する親液領域を形成する工程と、
前記親液領域の第1の部分に前記第1の液滴を塗布し、前記アライメントマーク構造物を形成する工程と、
前記アライメントマーク構造物を用いてアライメントを行い、前記基板の主面側に凹凸を有する原盤を接触させ、前記原盤の凹部に配置される前記第2の液滴を前記第2の領域の第2の部分に転写し、前記機能膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする電子装置の製造方法。
【請求項14】
前記親液領域が、前記基板の主面上に形成された、前記第1の液体及び前記第2の液体に対し前記基板の主面側の親液状態に比して高い親液性を有する自己組織化単分子膜に囲まれた領域であることを特徴とする請求項13に記載の電子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−53582(P2008−53582A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230179(P2006−230179)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】