説明

電子部品、及び電子部品製造方法

【課題】電子部品と回路基板とのハンダ付け実装品質を向上させるなどする。
【解決手段】ベース3は、貫通電極7、17が形成されたガラスによって構成されており、ベース3の底面には、水晶振動子6の電極と導通する外部電極8が形成されている。外部電極8は、ハンダ付けの際にハンダと接合する接合用電極膜31と、その上に形成された酸化防止膜51から構成されている。酸化防止膜51は、Au層とCr層を交互に重ねて構成されており、Au層の最上面は接合用電極膜31に接合している。酸化防止膜51を構成するAu層の厚さの合計値は、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されており、接合用電極膜31の酸化を効果的に防止するのに十分な厚さを確保すると共に、Auが多すぎることによりハンダの脆弱化を防いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、及び電子部品製造方法に関し、例えば、回路基板とのハンダ付け実装品質を向上させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水晶振動子や半導体など、電子素子には、パッケージに封入されて提供されるものがある。
これらパッケージには外部電極が形成されており、電子素子は、当該外部電極をハンダ付けすることによりパッケージごと回路基板に電気的、及び物理的に接続される。
【0003】
図6は、従来の外部電極8を説明するための図である。
外部電極8は、例えば、Cr、Ni、Auによる3層構造を有している。
Cr層はパッケージのベース3を構成するガラスとの密着性がよいため、ベース3の底面に形成されている。
そして、Cr層の表面には、ハンダの主成分であるSnとの金属間化合物を形成するNi層が形成されており、更にその表面には、Niの酸化を防止するAu層が形成されている。
【0004】
このように構成された外部電極8を回路基板にハンダ付けすると、Au層はハンダ中に拡散すると共に、Au層が形成されていた側のNiがハンダのSnと金属間化合物層を構成し、Snとの金属間化合物を形成しなかったNi層とCr層が当該金属間化合物層とハンダを介して回路基板に接合する。
このように基材がガラスの場合にCrを用いる技術は、下の特許文献1、2に提案されている。
【0005】
特許文献1では、基材がガラスなどの場合に、密着層としてCr層を形成している。
特許文献2では、ガラスの上に外部電極をCrとAu、あるいは、CrとNi合金−Auの薄膜2層で形成する技術が提案されている。
また、基材がガラスでない場合には、Niを下地として酸化防止のためのAuを表層に覆ったものや、Cuを下地として、その上にSnを形成するものなどが知られている。
【0006】
ところで、ハンダ接合で加熱される際に、ハンダ中(または電極皮膜中)のSnとCuやNiが金属間化合物層を形成するが、金属間化合物層は、母材に比べ脆いので、外力が加わった時にクラックが入りやすいという問題があった。
また、高温化では、金属間化合物層が成長し、NiやCuの層が完全に反応してしまうと、強度低下が発生するため、ある程度の厚さが必要になるという問題もあった。
そこで、特許文献2の技術を用いて、Ni層を含まない構造を、CrとAuの薄膜による2層構造により構成した場合、Au層の厚さによっては強度が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−528591公報
【特許文献2】特開2006−197278公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電子部品と回路基板とのハンダ付け実装品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、電子素子と、内部に形成された中空部に前記電子素子を収納する収納容器と、前記電子素子と電気的に接続し、前記収納容器の内部から外部にかけて形成された容器電極と、前記容器電極と電気的に接続し、前記収納容器の底面に形成された、ハンダと接合する接合用金属膜と、前記接合用金属膜の表面に形成された酸化防止膜と、を具備した電子部品であって、前記酸化防止膜は、合計の厚さが300nm以上で1000nm以下となる単数又は複数の金層を用いて構成されており、前記金層の最上面が前記接合用金属膜と接合していることを特徴とする電子部品を提供する。
請求項2に記載の発明では、前記金層の厚さの合計が、300nm以上で450nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品を提供する。
請求項3に記載の発明では、前記酸化防止膜は、複数の金層と、当該金層の間に形成された所定の金属層から構成されていることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の電子部品を提供する。
請求項4に記載の発明では、前記所定の金属層は、ハンダに溶解しない金属によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電子部品を提供する。
請求項5に記載の発明では、前記酸化防止膜は、単層からなる前記金層によって構成されていることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の電子部品を提供する。
請求項6に記載の発明では、前記収納容器はガラスを用いて形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのうちの何れか1の請求項に記載の電子部品を提供する。
請求項7に記載の発明では、前記電子部品は、水晶振動子であることを特徴とする請求項1から請求項6までのうちの何れか1の請求項に記載の電子部品を提供する。
請求項8に記載の発明では、ベースに、電子素子と、当該電子素子と電気的に接続する配線用の容器電極と、を設置する電子素子設置工程と、前記電子素子と前記容器電極を設置したベースに、リッドを接合することにより、前記電子素子を前記ベースと前記リッドからなる収納容器に封入する封入工程と、前記収納容器の底面にハンダと接合する接合用金属膜を形成する接合用金属膜形成工程と、前記形成した接合用金属膜の表面に、合計の厚さが300nm以上で1000nm以下となる単数又は複数の金層を用いて構成され、前記金層の最上面が前記接合用金属膜と接合している酸化防止膜を形成する酸化防止膜形成工程と、を用いて構成された電子部品製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、酸化防止膜における金層の厚さの合計を限定することにより、電子部品と回路基板とのハンダ付け実装品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】電子部品の断面図などを示した図である。
【図2】酸化防止膜の各種変形例を説明するための図である。
【図3】回路基板に接合した場合の電子部品の断面図などを示した図である。
【図4】実験結果を説明するための表などを表した図である。
【図5】実験結果を説明するための表などを表した図である。
【図6】従来例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1)実施形態の概要
電子部品1(図1(a))は、ベース3とリッド2によって形成された空洞部13に水晶振動子6を配置して構成されている。
ベース3は、貫通電極7、17が形成されたガラスによって構成されており、ベース3の底面には、貫通電極7、17を介して水晶振動子6の電極と導通する外部電極8が形成されている。
【0013】
外部電極8は、ハンダ付けの際にハンダと接合するCr層による接合用電極膜31と、その表面(下面、即ち接合用電極膜31と対向する側)に形成された酸化防止膜51から構成されている。
酸化防止膜51は、Au層とCr層を交互に重ねて構成されており、Au層の最上面は接合用電極膜31に接合している。
【0014】
酸化防止膜51を構成するAu層の厚さの合計値は、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されており、接合用電極膜31の酸化を効果的に防止するのに十分な厚さを確保すると共に、Auが多すぎることによりハンダの脆弱化を防いでいる。
【0015】
酸化防止膜51によると接合用電極膜31の酸化が効果的に防止できるため、外部電極8を大気中でハンダ付けして十分な接合強度を確保することができる。
そして、Crで構成された接合用電極膜31の上に直接Au層を形成するため、ハンダとの金属間化合物を生成するNiなどの金属層を用いる必要がない。
なお、図1(c)の例では、酸化防止膜51をAu層とCr層による多層構造としたが、単一のAu層によって構成することもできる。
【0016】
(2)実施形態の詳細
図1(a)は、本実施の形態に係る電子部品1を示しており、回路基板に接合した場合に、当該回路基板の表面に平行な方向に電子部品1を見た場合の断面図である。
ただし、図を分かりやすくするため、図1(b)では、図1(a)よりも貫通電極7、17の直径を大きく描いている。
以下では、実装時に電子部品1の回路基板に面する側を底面側、これに対向する側を上面側とする。
【0017】
電子部品1は、ベース3、リッド2、支持部5、水晶振動子6、内部電極4、16、貫通電極7、17、外部電極8、18などを用いて構成されている。
水晶振動子6は、例えば、音叉型水晶振動子により構成された電子素子であって、音叉型の基部が支持部5によって保持されている。
図示しないが、水晶振動子6の音叉腕部には電極が設置してあり、この電極に所定のパルスを供給することにより、水晶振動子6を所定の周波数で発振させることができる。
【0018】
支持部5は、水晶振動子6の音叉腕が空洞部13内で振動できるように、水晶振動子6をベース3に対して所定の姿勢に片持ちで保持している。
なお、本実施の形態では、電子素子の一例として水晶振動子6を用いるが、半導体など、他の電子素子でもよい。
【0019】
ベース3は、例えばガラスで構成された板状の部材であり、上面に支持部5が保持する水晶振動子6が取り付けられている。
ベース3の素材としては、例えば、安価で陽極接合可能などの利点を有するソーダガラスが用いられており、厚さは例えば、0.05〜2[mm]、好ましくは0.1〜0.5[mm]程度である。
また、ソーダガラスの他に、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラス、結晶化ガラス(場合によっては強化処理したもの)などを用いることができる。
【0020】
ベース3の上面部には、水晶振動子6の電極に電気的に接続する内部電極4、16が形成されている。
また、ベース3には、上面部から底面部に貫通するスルーホールが形成されており、スルーホール内に貫通電極7、17が形成されている。
内部電極4と貫通電極7、及び内部電極16と貫通電極17は、それぞれ電気的に接続している。
【0021】
リッド(蓋)2は、ガラスや金属などで形成されており、ベース3に面する面の中央部がえぐられて水晶振動子6を収納するための凹部が形成されている。金属リッドの場合は、線膨張係数がガラスに近いものが望ましい。
リッド2の凹部のへこみ量は、例えば、0.05〜1.5[mm]程度であり、エッチング、サンドブラスト、ホットプレス、レーザなどにより加工することができる。
【0022】
リッド2の開口部は、陽極接合や接合材を用いてベース3に接合されており、ベース3の上面とリッド2の凹部により水晶振動子6を収納する空洞部13が形成されている。
また、ベース3とリッド2の接合方法には、陽極接合の他に、直接接合、金属接合、低融点ガラス、ろう材、溶接、高融点ハンダによるものなどがある。
更に、ベース3とリッド2の間に中間材料を用いる場合もある。
【0023】
空洞部13は、リッド2とベース3によって密閉されて外気から遮断されており、例えば、真空が保たれたり、あるいは所定のガスを封入するなど、気密封止されている。
なお、電子部品1では、リッド2に凹部を設けて空洞部13を形成したが、ベース3に凹部を設けると共に平板状のリッド2を接合して空洞部13を形成してもよいし、あるいは、リッド2とベース3の両方に凹部を設けて形成してもよい。
【0024】
このように、電子部品1では、ベース3とリッド2によりガラスケースによるパッケージが電子素子を収納している。
パッケージをガラスで構成すると、材料費が安価である上、電子部品1の下面の側の外部から水晶振動子6をレーザによってトリミング・接合・ゲッタリングすることができる。
ここで、ゲッタリングとは、真空封止を行う場合に、空間内に配置したAlパターンなどにレーザを照射して加熱することにより、Alと周囲の空気(酸素)を反応させて消費させることにより真空度を向上させる技術である。
【0025】
外部電極8は、ハンダなどで回路基板上の電極ランドに電気的、及び機械的に接合するための金属膜で構成された接合部であり、ベース3の底面上に形成され、貫通電極7と導通している。
外部電極18も外部電極8と同様に構成され、貫通電極17と導通している。
【0026】
なお、電子部品1では、貫通電極7、17により水晶振動子6の電極が外部電極8、18と電気的に接続するが、例えば、内部電極4、16がリッド2とベース3の接合部を介して電子部品1の外部に引き出され、更に、引き出された内部電極4、16をベース3の側面から底面に至るまで延設し、ベース3の底面にて内部電極4、16が外部電極8、18と電気的に接続するように構成することもできる。
この場合、ベース3に貫通電極7、17を形成する必要はない。
【0027】
図1(c)は、外部電極8の構成を詳細に示した図である。
外部電極8は、ベース3の表面に形成された接合用電極膜31と、接合用電極膜31を酸化から保護する酸化防止膜51から構成されている。
接合用電極膜31は、ガラスと密着性のよい金属類、例えば、Crで構成されている。この他に、接合用電極膜31の材質としては、Ti、W、Taなども可能である。
酸化防止膜51は、3つのAu層と2つのCr層を交互に重ね合わせて形成されており、Au層の最上層は接合用電極膜31に接合している。
【0028】
酸化防止膜51の各Au層の厚さは、その合計値が、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
図の例では、各Au層の厚さは均等となっているが、これは均等である必要はなく、Au層の厚さの合計値が当該値の範囲となればよい。
【0029】
Crは、ハンダ(Snが主成分)との金属間化合物を形成せず、ハンダ中に溶解しないという性質を有しており、Cr層は、このような性質を有するTi層、W層、Ta層によって代替可能である。
一方、Auは、ハンダ付けをする際に、AuSn2や、AuSn4などの金属間化合物(合金)を生成してハンダ中に拡散しやすいという性質がある。
【0030】
外部電極8を構成するこれらの各層は、例えば、スパッタリングを用いたスパッタ法でベース3の底面にこれら金属元素の膜を作成することにより形成することができる。
即ち、ベース3の底面にCrによる接合用電極膜31を形成し、次いで、Auの膜とCrの膜を交互に形成する。
または、メッキ法によってこれら各層を形成することも可能である。
【0031】
以上のような構成を有する電子部品1は、次のようにして製造することができる。
ベース3にスルーホールを形成し、当該スルーホール内に貫通電極7、17を形成する。
そして、ベース3に水晶振動子6を設置して貫通電極7、17と接続し、その後、リッド2をベース3に陽極接合などにより接合して、パッケージを形成する。
次に、ベース3の底面にメッキなどで外部電極8、18をスパッタ法で形成し、電子部品1が完成する。
【0032】
なお、ベース3に外部電極8、18を形成してからベース3にリッド2を接合するなど、工程順序を変更することも可能である。
また、ベース3を多数個取りできるベースウエハに貫通電極7、17と水晶振動子6を設置し、これにリッド2を多数個取りできるリッドウエハを接合して、電子部品1が多数形成されたウエハを形成し、外部電極8、18の形成後、これを切断して電子部品1を多数個取りするように構成することもできる。
【0033】
図2の各図は、酸化防止膜51の各種変形例を説明するための図である。
図2(a)は、酸化防止膜51の2つのAu層の間に1つのCr層を形成した例であり、Cr層の下側のAu層の厚さを上側のAu層の厚さより厚くした例である。
これらAu層の厚さの合計は、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
【0034】
図2(b)も酸化防止膜51の2つのAu層の間に1つのCr層を形成した例であり、Cr層の下側のAu層の厚さを上側のAu層の厚さより薄くした例である。
これらAu層の厚さの合計は、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
図2(a)、(b)の例では、2つのAu層の厚さが異なるが、これら2つのAu層の厚さが同じになるように形成してもよい。
【0035】
図3(c)は、酸化防止膜51を単一のAu層によって構成した例であり、当該Au層の厚さは、300[nm]以上で1000[nm]以下、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるように設定されている。
【0036】
図3(a)は、電子部品1をハンダによって回路基板36に接合したところの断面図を示した図である。
図に示したように、外部電極8は、ハンダ33を介して回路基板36上の基板配線32と電気的、及び物理的に接合し、外部電極18は、ハンダ34を介して回路基板36上の基板配線35と電気的、及び物理的に接合し、これによって、電子部品1は、回路基板36に電気的、及び物理的に接合する。
【0037】
図3(b)は、外部電極8のハンダ33との接合面の詳細を示した図である。
接合用電極膜31のCrは、ハンダとの金属間化合物を形成しないため、ベース3に接合した状態でハンダ33と接合している。
一方、酸化防止膜51は、ハンダ33に拡散しており、そのため図示していない。
酸化防止膜51がCr層を含む場合、Cr層は、ハンダとの金属間化合物を形成しないため、Au層が拡散すると、外部電極8から離脱し、ハンダ33の何れかの場所に存在する。
【0038】
図4(a)は、外部電極8の剪断強度に関する実験結果を表にしてまとめたものである。
この実験に係る酸化防止膜51は、図2(c)に示したように、単層のAu層によって構成されている。
項目「電極膜構成」は、Cr(接合用電極膜31)とAu(酸化防止膜51)の膜厚を[Å]で表したものであり、例えば、「Cr600−Au750」は、接合用電極膜31のCr層の厚さが600[Å](60[nm])であり、酸化防止膜51のAu層の厚さが750[Å](75[nm])の場合を表している。
また、剪断試験方法は、JIS Z 3198−7に準拠し、剪断速度は、5[mm/m]とした。
【0039】
項目「Au層の厚さ」は、酸化防止膜51を構成するAu層の厚さを[nm]で表したものである。
項目「強度(指数)」は、Au層の厚さが150[nm]の場合の剪断強度を1として、他の剪断強度の比を表した指数である。
そして、図4(b)は、この指数をグラフ化したものである。
【0040】
この表・グラフから明らかなように、Au層の厚さが75〜150[nm]の範囲では、剪断強度が1程度であるのに対し、300〜900[nm]では、2〜3程度の実用可能な値となっている。
Au層の厚さが1000[nm]の場合の実験値は無いが、データの連続性から900[nm]と同程度と考えられる。
なお、一般に、金が多くなると、ハンダ付け箇所が脆くなることが知られており、Au層が1000[nm]以上になると、この脆弱性が表れてくると考えられる。
そのため、金層の厚さが300[nm]以上1000[nm]以下であることが実用に適した厚さとなる。
また、実験結果によると450[nm]にピークが現れているため、300[nm]以上で450[nm]以下がより好ましい値となっている。
【0041】
図5(a)は、外部電極8の剪断強度に関する更なる実験結果を表にしてまとめたものであり、図5(b)は、これをグラフにしたものである。
この実験では、酸化防止膜51の金層の厚さを150[nm]とし、単層(1層)、2層、3層とし、単層の場合の剪断強度を1として測定結果を指数化した。
Au層が2層、3層の場合、これらのAu層の間にはCr層が形成されている。
【0042】
この実験結果によると、Au層の厚さの合計が300[nm]以上となる場合、即ち、Au層が2層、3層の場合、剪断強度がそれぞれ1.9、及び2.1と、2程度となって実用水準となっている。
【0043】
図5(c)は、基板の曲げ耐性を表す実験結果を表として示したものである。
曲げ試験方法は、JEITA ET−7409/104に準拠し、1.6[mm]厚のガラスエポキシ回路基板を用い、押し込み量1、2、3[mm]で外観上のクラックの有無を判断することにより行った。
項目「電極仕様」は、電極の仕様であり、接合用電極膜31のCr層の厚さを0.06[μm](600[Å])とし、酸化防止膜51のAu層の厚さを0.15[μm](1500[Å])として当該Au層を3層に構成した場合(Au層を3層にした場合の外部電極8)、Cr層の厚さを0.06[μm]、Cu層の厚さを10.5[μm]、Sn層の厚さを10[μm]として電極を構成した場合(第1の比較電極)、及びCr層の厚さを0.06[μm]、Cu層の厚さを0.5[μm]、Ni層の厚さを2[μm]、Sn層の厚さを10[μm]として電極を構成した場合(第2の比較電極)を示している。
【0044】
これらの電極を電子部品1に形成して回路基板36に接合し、当該回路基板を押し込み機構により押し込んだところ、押し込み量が1[mm]の場合、外部電極8の場合は20回中クラックが生じた回数は0回であり、第1の比較電極の場合は、5回中1回、第2の比較電極の場合は、5回中0回であった。
押し込み量が2[mm]の場合、それぞれ、20回中0回、5回中4回、5回中2回であり、押し込み量が3[mm]の場合、それぞれ、20回中0回、5回中4回、5回中4回であった。
当該外部電極8では、Au層の厚さの合計値が450[nm]となるが、この場合、優れた耐曲げ性が実現されている。
【0045】
以上のように、酸化防止膜51を構成するAu層の厚さを300[nm]以上1000[nm]以下の場合、外部電極8の剪断強度などが向上するが、これは、Au層が厚くなることにより、接合用電極膜31のCrの酸化防止能力が向上するためと考えられる。
また、酸化防止膜51のAu層を多層化した場合、これらのAu層に挟まれていたCr層がハンダ中に微細になって混入ないし包含されることにより強度などがより向上するものと考えられる。
【0046】
なお、Au層が薄膜の場合、Cr層を大気中でハンダ付けするのは困難な場合があるが、Au層の厚さを300[nm]以上とすると、Cr層の酸化防止機能が向上するので、大気中でのハンダ付け(リフロー)が可能となり、ハンダ付けのための特殊な雰囲気を用意する必要が無く、ハンダ付けコストを低減することができる。
【0047】
以上に説明した本実施の形態により、電子素子(例えば、水晶振動子6、半導体なども可能)と、内部に形成された中空部(空洞部13)に電子素子を収納する収納容器(リッド2とベース3から成るパッケージ)と、電子素子と電気的に接続し、前記収納容器の内部から外部にかけて形成された容器電極(内部電極4、16、及び貫通電極7、17など)と、容器電極と電気的に接続し、収納容器の底面に形成されたハンダと接合する接合用金属膜(接合用電極膜31)と、接合用金属膜の表面に形成された酸化防止膜(酸化防止膜51)と、を備えた電子部品を提供でき、酸化防止膜は、合計の厚さが300[nm]以上で1000[nm]以下となる単数又は複数の金層(Au層)を用いて構成されており、酸化防止膜51の最上層はAu層で構成されているため、金層の最上面が前記接合用金属膜と接合している。
【0048】
酸化防止膜51のAu層の厚さの合計は、好ましくは、300[nm]以上で450[nm]以下となるようにすることができる。
酸化防止膜51でAu層が複数存在する場合、その間はCr層など、例えば、ハンダに溶解しない金属層で構成することができるため、酸化防止膜は、複数の金層と、当該金層の間に形成された所定の金属層から構成することができ、当該所定の金属層は、ハンダに溶解しない金属によって構成することができる。
また、Au層は、単層にすることもでき、この場合、酸化防止膜は、単層からなる金層によって構成されている。
更に、ベース3は、ガラスにより構成可能であり、この場合、電子部品の収納容器はガラスを用いて形成されている
【0049】
また、電子部品1は、回路基板36に接合されて、容量やコイルなどの他の電子素子と共に発振回路を構成し、当該発振によりコンピュータが動作タイミングを取得したり、時計が時間を計測したりするのに用いられるため、電子部品を用いて発振する発振手段(発振回路)と、発振手段の発振により動作タイミングを取得して動作する動作手段(CPU(Central Processing Unit)など)を備えた各種の電子装置を提供することができる。
【0050】
この場合、電子素子(水晶振動子6など)と、内部に形成された中空部に電子素子を収納する収納容器(リッド2とベース3から成るパッケージ)と、電子素子と電気的に接続し、収納容器の内部から外部にかけて形成された容器電極(貫通電極7、17など)と、容器電極と電気的に接続し、前記収納容器の底面に形成され、ハンダと接合した接合用電極膜31と、ハンダを介して当該接続用金属膜と接合され、他の電子素子が設けられた回路基板(回路基板36)と、を備えた電子装置が構成されている。
【0051】
また、ベース(ベース3)に、電子素子(水晶振動子6など)と、当該電子素子と電気的に接続する配線用の容器電極(貫通電極7、17など)と、を設置する電子素子設置工程と、当該電子素子と容器電極を設置したベースに、リッド(リッド2)を接合することにより、電子素子をベースとリッドからなる収納容器に封入する封入工程と、収納容器の底面にスパッタ法などでハンダと接合する接合用金属膜(接合用電極膜31)を形成する接合用金属膜形成工程と、形成した接合用金属膜の表面に、合計の厚さが300[nm]以上で1000[nm]以下となる単数又は複数の金層(Au)を用いて構成され、当該金層の最上面が接合用金属膜と接合している酸化防止膜(酸化防止膜51)を形成する酸化防止膜形成工程と、を用いて構成された電子部品製造方法を提供することができる。
【0052】
以上に説明した本実施の形態により次のような効果を得ることができる。
(1)接合用電極膜31の上にAu層の厚みの合計値が所定の範囲となるように構成することにより接合用電極膜31が酸化されにくくなると共に、Auが多すぎることによるハンダの脆弱化を抑制することができ、電子部品1の実装強度が高まる。
(2)Au層の酸化防止機能が高いため、電子部品1を大気中でハンダ付けすることができる。
(3)Au層は、ハンダ中に均一に拡散し、外部電極8の接合界面はCrとSnになるが、CrとSnは、リフローや高温試験の温度範囲(〜260℃)では合金の形成・成長が殆どなく、また、耐熱性・耐衝撃性に優れる。
(4)Crとハンダによる合金の成長がないため、Cr層を厚く形成する必要がなく、膜応力を小さく抑えられるので、耐基板曲げ性などが優れる。
(5)内部電極4、16などにCr−Auが使用されている場合、外部電極8、18の形成に際して装置を兼用化することができる。更に、各層の膜厚を内部と外部で同一にすれば、装置の条件変更も不要になり、設備投資を抑え、生産性を高めることができる。
(6)セラミックなどに比べ、脆く強度が低いが、コストが安く透明なガラスパッケージを採用することが可能である。
(7)外部電極8の形成領域に段差部が存在する場合、Cr層とAu層を積層することによって断線のリスクを低減することができる。
(8)外部電極8をスパッタ法で形成することができるため、ドライ雰囲気で金属層が成膜可能であり、これによって、貫通電極7の溶出などを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 電子部品
2 リッド
3 ベース
4 内部電極
5 支持部
6 水晶振動子
7 貫通電極
8 外部電極
13 空洞部
16 内部電極
17 貫通電極
18 外部電極
31 接合用電極膜
32 基板配線
33 ハンダ
34 ハンダ
35 基板配線
36 回路基板
51 酸化防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子と、
内部に形成された中空部に前記電子素子を収納する収納容器と、
前記電子素子と電気的に接続し、前記収納容器の内部から外部にかけて形成された容器電極と、
前記容器電極と電気的に接続し、前記収納容器の底面に形成された、ハンダと接合する接合用金属膜と、
前記接合用金属膜の表面に形成された酸化防止膜と、
を具備した電子部品であって、
前記酸化防止膜は、合計の厚さが300nm以上で1000nm以下となる単数又は複数の金層を用いて構成されており、前記金層の最上面が前記接合用金属膜と接合していることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記金層の厚さの合計が、300nm以上で450nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記酸化防止膜は、複数の金層と、当該金層の間に形成された所定の金属層から構成されていることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記所定の金属層は、ハンダに溶解しない金属によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記酸化防止膜は、単層からなる前記金層によって構成されていることを特徴とする請求項1、又は請求項2に記載の電子部品。
【請求項6】
前記収納容器はガラスを用いて形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのうちの何れか1の請求項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記電子部品は、水晶振動子であることを特徴とする請求項1から請求項6までのうちの何れか1の請求項に記載の電子部品。
【請求項8】
ベースに、電子素子と、当該電子素子と電気的に接続する配線用の容器電極と、を設置する電子素子設置工程と、
前記電子素子と前記容器電極を設置したベースに、リッドを接合することにより、前記電子素子を前記ベースと前記リッドからなる収納容器に封入する封入工程と、
前記収納容器の底面にハンダと接合する接合用金属膜を形成する接合用金属膜形成工程と、
前記形成した接合用金属膜の表面に、合計の厚さが300nm以上で1000nm以下となる単数又は複数の金層を用いて構成され、前記金層の最上面が前記接合用金属膜と接合している酸化防止膜を形成する酸化防止膜形成工程と、
を用いて構成された電子部品製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−267739(P2010−267739A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116887(P2009−116887)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】