説明

電子部品の実装方法及びその製造装置

【課題】従来の電子部品等の接合方法には、半田溶融温度以上に加熱するリフロー工程が用いられており、耐熱性が低い部品の接合に適用することができない。
【解決手段】本発明は、半田バンプ7がMEMS基板5の電極6表面に予め形成され、半田バンプ7表面及び回路基板9に配置した電極6,10表面に付着した酸化膜8a,8bをArガス雰囲気中のプラズマ14によるドライエッチングにより除去し、次いで半田融点以下の融解温度を有するフッ素系不活性液体18によって接合面を被覆し、接合面を互いに位置あわせし、接合面を接触させた後、荷重をかけつつ不活性液体18以上且つ半田融点以下の温度で加熱して固相拡散接合させる電子部品の実装方法及びその実装装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小電気機械システム(MEMS:Micro Electro Mecanical System)等の耐熱性の低い電子部品を製造する実装方法及びその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に半導体素子や回路基板といった電子部品を電気的に接合する方法として、半田を用いた半田付け方法が広く用いられている。一般的な半田付け方法は、電子部品の両接合面側に予め半田部(半田ボールや半田バンプ等)を形成し、当接した状態で仮固定し、加熱して一旦半田を融解させて接合部分を一体化させた後、凝固させている。
【0003】
このような半田を用いて電子部品等を互いに接合する従来方法として、特許文献1が開示されている。特許文献1に開示されている接合方法を図21、図22及び図23を参照して説明する。
【0004】
図21(a)は、電子部品上に形成された半田バンプの側面図、図21(b)は、半田バンプをプラズマ処理装置によって処理する際の断面図である。図22(a)、(b)及び(c)は、電子部品の半田付け方法の工程図である。図23(a)、(b)及び(c)は、電子部品と基板に対する半田付け方法の工程図である。
【0005】
図21(a)に示すように電子部品101の接合面のいずれかに半田バンプ102が予め形成される。大気に露呈した状態で経時すると、形成された半田バンプ102の表面及び接合される基板電極表面には、接合阻害物となる酸化膜(自然酸化膜)及び有機物102aが形成される。次に図21(b)に示すようにこれらの電子部品は、プラズマ処理装置内に装着し、ガス供給部から吐出されたプロセスガス(例えば、不活性ガス)によるガス雰囲気内で発生したプラズマ103を用いて上記酸化膜及び有機物102aを除去する。
次に、図22(a)に示すように電子部品101の非接合面側半田バンプ102が下面となるように反転され移載ヘッド104により保持される。図22(b),(c)に示すように保持された電子部品101の半田バンプ102には、半田付け工程で電子部品の最高加熱温度より高い沸点を有する高粘性揮発性有機溶剤を含む仮固定剤105が塗布される。
【0006】
次に図23(a)に示すように移載ヘッド104は、基板107上の電極106と半田バンプ102とが対向するように配置される。図23(b)に示すように、仮固定剤105によって半田バンプ102と基板107は仮固定される。最後に加熱したリフロー炉内部で半田バンプ102を溶融し、図23(c)に示すように半田バンプ102は、電子部品101と電極106を半田付けする。仮固定剤105は、リフロー炉によって加熱される際に徐々に気化し、完全に蒸発して接合部には残存しない。
【0007】
この先行例における接合方法は、高粘性揮発性有機溶剤を含む仮固定剤105を用いており、一般的なフラックスを用いずに半田付けが行われている。これにより半田付け後に有害なフラックス残渣が接合部周囲に残留せず、フラックス残渣を洗浄する工程が不要である。
【特許文献1】特開2000−049450公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した特許文献1に開示されている電子部品等の接合方法は、半田を溶融・固化して電子部品101と基板107を接合するために接合面に対して半田溶融温度以上に加熱するリフロー工程が必要不可欠である。そのため加熱するリフロー工程を用いた際に、例えばMEMS基板といった耐熱性が弱い有機材料で形成された薄膜可動部等の機械的脆弱部を有する例えば基板といった部品は、前述した接合方法を適用することはできない。
【0009】
そこで本発明は、有機物等の接合阻害物を除去した後、接合部を仮被覆部材で被覆することで接合までに接合接触面を接合阻害物の付着を防止し、且つ接合面を清浄に保ち、耐熱性が弱い例えばMEMS等の部品でも半田温度溶融温度以下で効率よく接合できる実装方法及びその製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
被接合物の金属接合部同士を接合する実装方法において、金属接合部表面の接合阻害物を除去する工程と、非酸素雰囲気中で半田の融解温度以下の融解温度を有する仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する工程と、前記金属接合部同士を位置合せする工程と、前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する工程と、からなる電子部品の実装方法。
また、被接合物の金属接合部同士を接合する電子部品の実装装置において、金属接合部表面の接合阻害物を除去手段と、非酸素雰囲気中で半田の融解温度以下の融解温度を有する仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する手段と、前記金属接合部同士を位置合せする手段と、前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する手段と、を具備することを特徴とする電子部品の実装装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、有機物等の接合阻害物を除去した後、接合部を仮被覆部材で被覆することで接合完了までに接合接触面を接合阻害物の発生や付着を防止し、且つ接合面を清浄に保ち、耐熱性が弱い例えばMEMS等の部品でも半田温度溶融温度以下で効率よく接合できる実装方法及びその製造装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1乃至図8を参照して第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における一連の製造工程のフローチャートを示す。図2は、図1に示したステップS1における製造工程を実施するための構成例を示す。図3及び図4は、図1に示したステップS2における製造工程を実施するための構成例を示す。図5は、図1に示したステップS3における製造工程を実施するための構成例を示す。図6は、図1に示したステップS3における製造工程を実施するための構成例を示す。図7は、図1に示したステップS4における製造工程を実施するための構成例を示す。図8は、図1に示したステップS5における製造工程を実施するための構成例を示す。
【0014】
なお、本発明における仮被覆部材とは、自然酸化膜等の接合阻害物を除去した接合部表面を被覆して、接合完了までの間、接合阻害物の発生や付着を防止させるための部材である。
【0015】
図1に示すように本実施形態において、半田バンプがMEMS基板の電極上に予め形成する工程(ステップS1)と、MEMS基板上の半田バンプ表面及び回路基板に配置した電極表面に発生又は付着している接合阻害物となる酸化膜と図示しない有機物をArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去する工程(ステップS2)と、窒素ガスによる不活性雰囲気において、接合阻害物を除去したMEMS基板上の半田バンプ及び回路基板に配置した電極の表面上に、半田の融解温度以下の融解温度有するフッ素系不活性液体が塗布される接合面を被覆する工程(ステップS3)と、フッ素系不活性液体で表面を被覆されたMEMS基板の半田バンプと、回路基板の電極表面を対向する位置に位置合せする工程(ステップS4)と、半田バンプと電極を接触させた後に、接触部に荷重をかけつつフッ素系不活性液体の沸点以上且つ半田の融解温度以下の温度で加熱して、半田バンプと電極を固相拡散接合する工程(ステップS5)と、から構成される。
【0016】
次に、図2乃至図8を参照して本実施形態における各工程を詳細に説明する。尚、図2以降に示された例えばS1という表記は、図1に示されたS1の工程と対応している。
【0017】
図2に示すように可動部1は、線膨張係数が大きく異なるアルミニウム(Al)の反射薄膜2、ポリイミド膜3、クロム(Cr)の導電薄膜4の3層構造であるために、150℃以上の高温ではデバイス機能が劣化してしまう。従って、低温での実装が必要不可欠なデバイスである。
【0018】
図2に示したステップS1の工程において、MEMS基板5に配置された電極6上に半田バンプ7が予め形成されている。半田バンプ7が大気に触れた際には、図4に示した回路基板9に対して接合阻害物となる酸化膜8aが半田バンプ7の表面に発生する。さらに半田バンプ7の形成の過程で表面には、図示しない接合阻害物となる有機物が付着している場合もある。また、同様に回路基板9に配置された電極10の表面にも、MEMS基板5に対して接合阻害物となる酸化膜8bが発生する。
【0019】
図3に示すステップS2の工程においてMEMS基板5は、図3(a)に示すように真空チャンバー11内に配置された下部電極12bに載置される。真空チャンバー11内を真空状態にした後にアルゴン(Ar)ガスが導入される。次に、高周波電源13が駆動して上部電極12a、下部電極12bに高周波電圧を印加させることで、Arガス雰囲気中にプラズマ14を発生させる。このArガス雰囲気中のプラズマ14は、MEMS基板5に載置されている電極6上の半田バンプ7表面に付着した接合阻害物となる酸化膜8aや図示しない有機物に衝突する。衝突することにより図3(b)に示すように半田バンプ7表面から接合阻害物となる酸化膜8aや図示しない有機物を除去する。次に、真空チャンバー11内のArガスを排気系33により排気した後、窒素ガスを導入して、通常の大気圧まで戻した後に、仮被覆工程に移行する。
【0020】
図4に示すステップS2の工程において図4(a)は、図3(a)に示した工程と同様に回路基板9を真空チャンバー11内の下部電極12bに載置させる。真空ポンプを含む排気系33により真空チャンバー11内を排気して所定圧力の真空状態にした後にArガスを導入する。次に、高周波電源13を駆動して上下部電極12a,12bに高周波電圧を印加してArガス雰囲気中にプラズマ14を発生させる。図4(b)に示すように発生したプラズマ14は、電極表面に付着している接合阻害物となる酸化膜8bを除去する。
【0021】
次に図5に示すステップS3の仮被覆工程において、酸化膜8aや図示しない有機物を表面から除去した半田バンプ7を形成する電極6を載置するMEMS基板5は、低酸素濃度雰囲気に管理された窒素パージBox16内の基台17上に固定される。次に、フッ素系不活性液体18を充填したシリンジ19は、半田バンプ7と対向配置する位置に移動する。移動したシリンジ19は、半田バンプ7全表面を含む電極6全表面上にフッ素系不活性液体18aを塗布して仮被覆する。同様に、残り全ての電極6及び半田バンプ7は、フッ素系不活性液体18aによって仮被覆し、接合装置に搬出される。
【0022】
図6に示すステップS3の工程においても、図5に示したステップS3の工程と同様に、酸化膜8bや図示しない有機物を表面から除去した電極10を配置している回路基板9は、低酸素濃度雰囲気に管理された窒素パージBox16内の基台20に固定される。回路基板9に配置された電極10表面は、フッ素系不活性液体18bによって塗布され仮被覆される。全電極表面を被覆した回路基板9は、接合装置に搬出する。フッ素系不活性液体18によって仮被覆された電極10表面は、接合阻害物となる酸化膜や有機物の再付着が防止できる。
【0023】
図7に示すステップS4の工程において、接合装置に搬入された回路基板9は、基台20に固定される。一方、接合装置に搬入されたMEMS基板5は接合面(半田バンプ7が形成されている面)が回路基板9の接合面(電極10が形成されている面)と対向するように接合ハンド21に装着されて保持される。接合前には、MEMS基板5及び回路基板9の仮被覆部であるフッ素系不活性液体18a,18bは、互いに接触しないようにする。次に、MEMS基板5に配置された電極6上の半田バンプ7と回路基板9に配置された電極10は、所定位置で対向するように、接合ハンド21及び基台20のどちらか一方、又は両方を水平方向に移動させて位置合わせを行う。
【0024】
図8(a)に示すステップS5の工程において、接合ハンド21が下降して、半田バンプ7表面を覆うフッ素系不活性液体18aは、電極10を覆うフッ素系不活性液体18bと当接する。
この当接した後にさらに荷重を加えつつ、フッ素系不活性液体18の沸点(100℃)以上の温度で接触部分を加熱するとフッ素系不活性液体18a,bは気化する。図8(b)に示すように荷重により半田バンプ7の先端は、潰れて半田バンプ7の表面と回路基板9に配置された電極10表面が密着し固相拡散接合する。
【0025】
このように本実施形態によれば、接合部材として半田バンプのみを用いるために、例えば電子部品と回路基板とを接合する際の製造工程が短い。半田バンプ7は、フッ素系不活性液体18によって仮被覆されることで接合阻害物となる酸化膜8aや有機物の再付着が防止できる。さらに半田バンプ7を覆う仮被覆部材は、フッ素系不活性液体のために接合時における加熱による引火の危険性がない。さらに仮被覆部材の供給手段がシリンジによるフッ素系不活性液体による塗布のため、部品や基板ごとの治工具が不要であり大気中での接合が可能であるため、接合装置のコストを押えることができる。
【0026】
本実施形態では、接合阻害物となる酸化膜8a及び酸化膜8bの除去はMEMS基板5と回路基板9とを別々に除去をしたが、同時に実施しても構わない。 本実施形態では、半田バンプ7としては、融点183℃のSn/Pbの共晶半田、フッ素系不活性液体18としては、3M社のフロリナートFC77(沸点97℃)[商標登録]、電極20の材質としては、Cuに半田メッキ(Sn/Pb共晶)とするが、必ずしもその必要はなく、条件が合えば他の材料でも構わない。
【0027】
本実施形態は、基板の大部分に可動部1を有するMEMS基板5と、可動部1に対応する駆動電極15を有する回路基板9をフリップチップ実装した静電駆動型デバイスを例に適用した例である。
【0028】
次に図9乃至図20を参照して本発明に係る第2の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の構成部位について、前述した第1の実施形態と同等の部位には同じ参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
図9は、本発明の第2の実施形態における製造工程のフローチャートを示す。図10及び図11は、図9に示したステップS11における製造工程を実施するための構成例を示す。図12、図13及び図14は、図9に示したステップS12における製造工程を実施するための構成例を示す。図15及び図16は、図9に示したステップS13における製造工程を実施するための構成例を示す。図17及び図18は、図9に示したステップS14における製造工程を実施するための構成例を示す。図19は、図9に示したステップS15における製造工程を実施するための構成例を示す。図20は、図9に示したステップS16における製造工程を実施するための構成例を示す。
【0029】
本実施形態も前述した第1の実施形態と同様に、基板の大部分に可動部1を有するMEMS基板2と可動部に対応する駆動電極15を有する回路基板9をフリップチップ実装した静電駆動型デバイスに適用した例を用いて説明する。
【0030】
図9に示すように本実施形態において、AuバンプはMEMS基板の電極上と回路基板の電極上の両方に対して予め形成される工程(ステップS11)と、MEMS基板上のAuバンプ表面に付着している接合阻害物となる有機物と回路基板に配置したAuバンプ表面に付着している接合阻害物となる有機物と半田箔表面に発生している接合阻害物となる酸化膜と、図示しない有機物がArガス雰囲気中のプラズマによるドライエッチングによって除去される工程(ステップS12)と、窒素ガスによる不活性雰囲気において、接合阻害物を除去したMEMS基板上のAuバンプの表面及び回路基板に配置したAuバンプ表面上に、半田融解温度以下の融解温度を有する無水アルコールがスプレー塗布され、仮被覆する工程(ステップS13)と、窒素ガスによる不活性雰囲気中で回路基板に配置されたAuバンプの被覆表面上に、半田箔を載置した後に、無水アルコールがスプレー塗布され、半田箔表面を仮被覆する工程(ステップS14)と、無水アルコールで表面を被覆されたMEMS基板上のAuバンプと、回路基板上に配置されたAuバンプ及び半田箔を対向する位置に位置合せする工程(ステップS15)と、MEMS基板上のAuバンプと半田箔及び、半田箔と回路基板上の両Auバンプを接触させた後に、接触部に荷重をかけて両Auバンプを半田箔に食い込ませつつ、接合装置を減圧雰囲気下にして無水アルコールを接合面から除去して固相拡散接合する工程(ステップS16)と、から構成される。
【0031】
次に図10乃至図20を参照して本実施形態における各工程を詳細に説明する。各図に示された例えばS11という表記は、図9に示されたS11の工程と対応している。
【0032】
図10に示すステップS11の工程においてAuバンプ22aは、MEMS基板5に配置された電極6上に予め形成されている。また、形成されたAuバンプ22aの表面には、Auバンプ22aが空気に触れた際に、図示しない半田箔24との接合阻害物となる有機物23aが付着する。
【0033】
また図11に示すステップS11の工程においてAuバンプ22bは、回路基板9に配置されている電極10上に予め形成されている。また、形成されたAuバンプ22bの表面には、Auバンプ22aが大気に触れた際に、半田箔24との接合阻害物となる有機物23bが付着する。
【0034】
図12に示すステップS12の工程においてMEMS基板5は、図12(a)に示すように真空チャンバー11内の下部電極12bに載置される。MEMS基板5を載置し、真空チャンバー11内を真空状態にした後にArガスが、導入される。次に、高周波電源13を駆動して上下の2つの電極12a,12bに高周波電圧を印加することでArガス雰囲気中にプラズマ14を発生させる。このArガス雰囲気中のプラズマ14は、MEMS基板5に載置されている電極6上のAuバンプ22a表面に付着している接合阻害物となる有機物23aをAuバンプ22aに衝突する。衝突することにより図12(b)に示すようにAuバンプ22a表面から接合阻害物となる有機物23aを除去する。次に、真空チャンバー11内のArガスを排気系33により排気した後、真空チャンバー11内に窒素ガスを導入し、通常の大気圧まで戻した後に、仮被覆工程に搬送する。
【0035】
図13に示すステップS12の工程において、図13(a)に示すように回路基板9は、図12(a)に示すように真空チャンバー11内に配置された下部電極12bに載置される。MEMS基板9を載置し、排気系33により真空チャンバー11内を真空状態にした後にArガスが、導入される。次に、高周波電源13を駆動して上下の2つの電極12に高周波電圧を印加することでArガス雰囲気中にプラズマ14が発生する。発生したArガス雰囲気中のプラズマ14は、Auバンプ22b表面に付着した接合阻害物となる有機物23bと衝突する。図13(b)に示すように衝突することにより有機物23bを除去し仮被覆工程に搬送する。
【0036】
図14に示すステップS12の工程において、図14(a)に示すように酸化膜23c及び図示しない有機物が付着している半田箔24は、図12(a)に示した状態と同様に配置された下部電極12bに載置される。半田箔24を載置し、排気系33により真空チャンバー11内を真空状態にした後にArガスが、導入される。次に、高周波電源13を駆動して上下の2つの電極12に高周波電圧を印加することでArガス雰囲気中のプラズマ14が発生する。発生したArガス雰囲気中のプラズマ14は、半田箔24表面に付着している接合阻害物となる有機物23cと衝突する。これにより図14(b)に示すように有機物23cを除去し、仮被覆工程に搬送する。
【0037】
図15に示すステップS13の工程において、有機物23aを表面から除去したAuバンプ22aを形成しているMEMS基板5は、低酸素濃度雰囲気に管理された窒素パージBox16内の基台17に固定される。次に、電極6及びAuバンプ22aのみが露出するように開口部を設けた撥水性のマスク25が、MEMS基板5上に配置される。次にスプレーノズル26からマスク開口部に向けて吐出される無水アルコール27は、Auバンプ22a表面を仮被覆する。全バンプ表面を仮被覆後にマスク25はMEMS基板5から分離され、MEMS基板5は、接合装置によって搬出される。
【0038】
図16に示すステップS13の工程において、図15に示した状態と同様に、有機物23bを除去したAuバンプ22bを形成している回路基板9は、低酸素濃度雰囲気に管理された窒素パージBox16内の基台17に固定される。次に、電極10及びAuバンプ22bの部分のみが露出するように開口部を設けた撥水性のマスク25が、回路基板9に配置される。スプレーノズル26からマスク開口部に向けて吐出される無水アルコール27は、Auバンプ22b表面を仮被覆する。全バンプ表面を仮被覆後にマスク25は、回路基板9から分離され、回路基板9は、接合装置によって搬出される。
【0039】
図17に示すステップS14の工程において、供給ハンド28は、仮被覆された回路基板9に配置されたAuバンプ22b上に、半田箔24を載置する。半田箔24は、無水アルコール27の表面張力により、Auバンプ22b上に保持される。
【0040】
図18に示すステップS14の工程において、電極10、Auバンプ22b及び半田箔24の部分のみが露出するように開口部を設けた撥水性のマスク29が、回路基板9上に配置される。スプレーノズル26からマスク29の開口部に向けて吐出される無水アルコール27は、半田箔24表面を仮被覆する。全バンプ表面を仮被覆後にマスク29は、回路基板9から分離される。全電極表面を被覆した後に回路基板9は、接合装置に搬出する。これにより被覆により有機物といった接合阻害物の再付着が防止できる。
【0041】
図19に示すステップS15の工程において、真空チャンバー32内の接合装置に搬入された回路基板9は、基台30によって固定される。一方、接合装置に搬入されたMEMS基板5は反転され、接合ハンド31によって保持される。この時にMEMS基板5及び回路基板9の仮被覆部は、互いに接触しないようにする。次に、MEMS基板5上のAuバンプ22aと回路基板9上に配置されたAuバンプ22b及び半田箔24が対向に配置するように、接合ハンド31及び基台30のどちらか一方、又は両方が水平方向に移動する。
【0042】
図20に示すステップS16の工程において、図20(a)に示すように真空チャンバー32内で接合ハンド31が下降して、MEMS基板5上のAuバンプ22aと半田箔24及び、半田箔24と回路基板9上のAuバンプ22bが接触する。
接触した際に荷重を加えることでAuバンプ22a及びAuバンプ22bは、半田箔24内に食い込む。同時に接合装置を減圧雰囲気下にすることで無水アルコール27が接合面から除去される。この時、図20(b)に示すようにAuバンプ22a,22bの表面と半田箔24が密着し固相拡散接合する。
【0043】
このように本実施形態によれば仮被覆にすることで接合阻害物の再付着が防止できる。また減圧雰囲気下で接合するため、加熱を用いなくても接合阻害物や仮被覆部材の除去ができる、また、安価な有機溶剤である無水アルコールを用いているために材料コストを押えることができ、半田箔表面の塑性変形によって回路と電子部品の接合面積が大きくなるため接合部強度が高くなる。更にスプレー吐出方法によって一度に複数の仮被覆が可能となり、1回あたりの被覆時間が短時間である。
【0044】
また、本実施形態では、MEMS基板5、回路基板9、半田箔24の接合阻害物の除去を別々に実施したが、可能であれば一緒に実施しても構わない。
【0045】
更に、半田箔24としては、融点183℃のSn/Pbの共晶半田、電極6及び電極20の材質としては、CuにNi/Auメッキとするが、必ずしもそうである必要はなく、条件が合えば他の材料でも構わない。また、仮被覆部材として無水アルコール28を用いているが、揮発性のある他の有機溶剤でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る電子部品の実装方法及びその製造装置の第1の実施形態における一連の製造工程のフローチャートを示す。
【図2】図2は、図1に示したステップS1における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図3】図3は、図1に示したステップS2における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図4】図4は、図1に示したステップS2における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図5】図5は、図1に示したステップS3における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図6】図6は、図1に示したステップS3における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図7】図7は、図1に示したステップS4における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図8】図8は、図1に示したステップS5における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図9】図9は、本発明の第2の実施形態における製造工程のフローチャートを示す。
【図10】図10は、図9に示したステップS11における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図11】図11は、図9に示したステップS11における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図12】図12は、図9に示したステップS12における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図13】図13は、図9に示したステップS12における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図14】図14は、図9に示したステップS12における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図15】図15は、図9に示したステップS13における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図16】図16は、図9に示したステップS13における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図17】図17は、図9に示したステップS14における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図18】図18は、図9に示したステップS14における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図19】図19は、図9に示したステップS15における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図20】図20は、図9に示したステップS16における製造工程を実施するための構成例を示す。
【図21】図21(a)は、従来の電子部品の側面図、図21(b)は、従来のプラズマ処理装置の断面図である。
【図22】図22(a)、(b)及び(c)は、従来の電子部品の半田付け方法の工程説明図である。
【図23】図23(a)、(b)及び(c)は、従来の電子部品と基板に対する半田付け方法の工程説明図である。
【符号の説明】
【0047】
1:可動部、2:反射薄膜、3:ポリイミド薄膜、4:導電薄膜、5:MEMS基板、6,10,12:電極、7:半田バンプ、8a,8b:酸化膜、9:回路基板、11,32:真空チャンバー、12a:上部電極、12b:下部電極、13:高周波電源、14:Arガス雰囲気中のプラズマ、15:駆動電極、16:窒素パージBox、17,20,30:基台、18,18a,18b:フッ素系不活性液体、19:シリンジ、21,31:接合ハンド、22a,22b:Auバンプ、23a,23b,23c:有機物、24:半田箔、25,29:マスク、26:スプレーノズル、27:無水アルコール、28:供給ハンド、33:排気系。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合物の金属接合部同士を接合する実装方法において、
金属接合部表面の接合阻害物を除去する工程と、
非酸素雰囲気中で半田の融解温度以下の融解温度を有する仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する工程と、
前記金属接合部同士を位置合せする工程と、
前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する工程と、
からなる電子部品の実装方法。
【請求項2】
被接合物の金属接合部同士を接合する電子部品の実装装置において、
金属接合部表面の接合阻害物を除去する除去手段と、
非酸素雰囲気中で半田の融解温度以下の融解温度を有する仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する手段と、
前記金属接合部同士を位置合せする手段と、
前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する手段と、
を具備することを特徴とする電子部品の実装装置。
【請求項3】
前記金属接合部表面の接合阻害物を除去する工程が、プラズマによるドライエッチングにより接合阻害物を除去することを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装方法。
【請求項4】
前記金属接合部同士を位置合せした後に前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する工程が、仮被覆部材の一部を破壊し、それを起点として順次破壊することにより仮被覆部材を除去することを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装方法。
【請求項5】
前記仮被覆部材が液体であることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装方法。
【請求項6】
前記仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する工程が、金属接合部表面上に前記仮被覆部材を塗布する方法からなることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装方法。
【請求項7】
前記仮被覆部材を用いて前記金属接合部表面を被覆する工程が、金属接合部表面以外をマスクした後に仮被覆部材をスプレーする方法からなることを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装方法。
【請求項8】
前記金属接合部同士を位置合せした後に前記仮被覆部材を除去し固相拡散接合する工程が、前記金属接合部表面に荷重を加えつつ、加熱により前記仮被覆部材を除去することを特徴とする請求項1記載の電子部品の実装方法。
【請求項9】
前記仮被覆部材を除去する方法が、減圧雰囲気中環境下にして仮被覆部材を揮発・除去することにより仮被覆部材を除去することを特徴とする請求項8記載の電子部品の実装方法。
【請求項10】
電子部品に予め形成される半田表面及び前記半田が接合する非接合部表面に生成される接合阻害物を除去する除去工程と、
非酸素雰囲気中で前記接合部表面に半田融点以下の融解温度を有する被覆液体を塗布し前記半田表面を覆う被覆工程と、
前記接合部のどちらか一方または両方を移動させる搬送工程と、
加熱することで前記仮被覆部材を除去し2つの前記接合部のどちらか一方に荷重をかけつつ、被覆剤融点以上半田融点以下で加熱することにより固相拡散接合する接合工程と、
からなる電子部品の実装方法。
【請求項11】
電子部品に予め形成される半田表面及び前記半田が接合する非接合部表面に生成される接合阻害物を除去する除去部と、
非酸素雰囲気中で前記接合部表面に半田融点以下の融解温度を有する被覆液体を塗布し前記半田表面を覆う被覆部と、
前記接合部のどちらか一方または両方を移動させる搬送部と、
加熱することで前記仮被覆部材を除去し2つの前記接合部のどちらか一方に荷重をかけつつ、被覆剤融点以上半田融点以下で加熱することにより固相拡散接合する接合部と、
からなる電子部品の実装装置。
【請求項12】
前記除外工程は、プラズマ処理によるドライエッチングを利用して前記半田表面及び前記半田表面が接合する非接合部材に生成される接合阻害物を除去する工程であることを特徴とする請求項10に記載の電子部品の実装方法
【請求項13】
前記被覆液体は、無水アルコールであることを特徴とする請求項10及び請求項11に記載の電子部品の実装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−222381(P2006−222381A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36475(P2005−36475)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】