説明

電子部品及びその製造方法

【課題】積層体の上面及び側面に跨って形成される外部電極の形成不良を抑制できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】積層体16は、絶縁体層30a〜30eが積層されることにより構成されている。絶縁体層30b〜30eは、部分積層体13を構成している。絶縁体層30aは、部分積層体13の側面及び上面を覆っている。外部電極20は、積層体16の上面及び側面に跨って設けられている。部分積層体13は、絶縁体層30b〜30eの側面及び上面により構成され、かつ、踏み板がz軸方向の正方向側を向く階段状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品及びその製造方法に関し、より特定的には、積層体に外部電極が設けられている電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子部品としては、例えば、特許文献1に記載の電子部品が知られている。図9は、特許文献1に記載の電子部品500の部分拡大図である。該電子部品500では、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)基板502上に、フォトリソグラフィ工程により樹脂の絶縁体層501が積層されてなる積層体504が設けられている。そして、積層体504の側面及び上面に跨るように外部電極506が設けられている。
【0003】
ところで、特許文献1に記載の電子部品では、絶縁体層501はフォトリソグラフィ工程により作製されるため、比較的に滑らかな主面を有している。そのため、絶縁体層501同士の密着力が比較的に弱く、積層体504の側面において、絶縁体層501間の剥離が発生し易い。
【0004】
そこで、特許文献1に記載の電子部品において、以下に説明する工夫が施されることが知られている。図10は、絶縁体層501間の剥離を抑制する構成を有する電子部品600の部分拡大図である。
【0005】
図10に示す電子部品600では、積層方向の最も上側に位置している絶縁体層501(以下、絶縁体層501aと称す)により、その他の絶縁体層501(以下、絶縁体層501bと称す)の側面を覆っている。これにより、絶縁体層501bの接合面が、絶縁体層501aにより覆い隠されるようになる。その結果、絶縁体層501b間の剥離が抑制される。
【0006】
しかしながら、電子部品600は、図10に示すように、外部電極506の形成不良が発生しやすいという問題を有している。より詳細には、電子部品600では、絶縁体層501a,501bはフォトリソグラフィ工程により形成される。フォトリソグラフィ工程では、感光性樹脂を露光して硬化させた後に、未硬化の感光性樹脂を現像液で除去する。例えば、絶縁体層501aを形成する際には、積層体504及びLTCC基板502の上面が覆われるように、感光性樹脂を塗布する。そして、感光性樹脂をマスクを介して露光する。この際、絶縁体層501aが絶縁体層501bの側面を覆うように、絶縁体層501bから僅かにはみ出した領域まで、絶縁体層501aを露光する。
【0007】
ところが、絶縁体層501aの側面は、絶縁体層501bの積層方向の厚みと同じだけの高さを有している。そのため、絶縁体層501aの側面の下部が十分に露光されないおそれがある。したがって、絶縁体層501aの側面の下部は、絶縁体層501aの側面の上部に比べて現像液によって除去されやすい。すなわち、絶縁体層501aの側面の上部における厚みが、絶縁体層501aの側面の下部における厚みよりも厚くなってしまう。その結果、絶縁体層501aの側面は、絶縁体層501aの上面に対して鋭角をなすようになる。絶縁体層501aの側面と絶縁体層501aの上面とが鋭角をなすと、絶縁体層501aの側面と絶縁体層501aの上面との角における外部電極506の被覆性が悪くなってしまう。その結果、図10に示すように絶縁体層501aの側面と絶縁体層501aの上面との角に、十分な厚みを有する外部電極506が形成されにくい。すなわち、外部電極506の形成不良が発生するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−267079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、積層体の上面及び側面に跨って形成される外部電極の形成不良を抑制できる電子部品及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係る電子部品は、積層されることにより部分積層体を構成している複数の第1の絶縁体層と、該部分積層体の側面及び上面を覆っている第2の絶縁体層とにより構成されている積層体と、前記積層体の上面及び側面に跨って設けられている外部電極と、を備えており、前記部分積層体の側面は、前記複数の第1の絶縁体層の側面及び上面により構成され、かつ、踏み板が積層方向の上側を向く階段状をなしていること、を特徴とする。
【0011】
前記電子部品の製造方法は、複数の第1の絶縁体層を積層して部分積層体を形成する第1の工程と、前記部分積層体の側面及び上面を覆う第2の絶縁体層を、フォトリソグラフィ工程により形成する第2の工程と、前記第2の絶縁体層の上面及び側面に跨る外部電極を形成する第3の工程と、を備えており、前記第1の工程では、前記部分積層体の側面が、前記複数の第1の絶縁体層の側面及び主面により構成され、かつ、踏み板が積層方向の上側を向く階段状をなすように、該複数の第1の絶縁体層を積層すること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、積層体の上面及び側面に跨って形成される外部電極の形成不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品の外観斜視図である。
【図2】一実施形態に係る電子部品の積層体の分解斜視図である。
【図3】電子部品の等価回路図である。
【図4】電子部品の断面構造図である。
【図5】電子部品の製造時における工程断面図である。
【図6】電子部品の製造時における工程断面図である。
【図7】電子部品の製造時における工程断面図である。
【図8】カット工程での電子部品をz軸方向から平面視した図である。
【図9】特許文献1に記載の電子部品の部分拡大図である。
【図10】絶縁体層間の剥離を抑制する構成を有する電子部品の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の一実施形態に係る電子部品及びその製造方法について図面を参照しながら説明する。
【0015】
(電子部品の構成について)
図1は、一実施形態に係る電子部品10の外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る電子部品10の積層体12の分解斜視図である。図3は、電子部品10の等価回路図である。図4は、電子部品10の断面構造図である。以下、電子部品10の積層方向をz軸方向と定義する。そして、z軸方向から平面視したときに、電子部品10の長辺に沿った方向をx軸方向と定義し、電子部品10の短辺に沿った方向をy軸方向と定義する。
【0016】
電子部品10は、図1及び図2に示すように、積層体12、外部電極18a,18b,20,22、引き出し導体42a,46a,48,52a〜52f、コイルL1,L2及びコンデンサCを備えている。積層体12は、直方体形状をなし、図1に示すように、積層体14と積層体16とが積層されて構成され、直方体状をなしている。積層体16は、積層体14上に設けられている。外部電極18aは、積層体12のx軸方向の負方向側に位置する側面に設けられている。外部電極18bは、積層体12のx軸方向の正方向側に位置する側面に設けられており、外部電極18aと同じ形状を有している。これにより、外部電極18a,18bは、積層体12の互いに対向する側面に設けられている。外部電極20は、積層体12のy軸方向の負方向側に位置する側面に設けられている。外部電極22は、積層体12のy軸方向の正方向側に位置する側面に設けられており、外部電極20と同じ形状を有している。これにより、外部電極20,22は、積層体12の互いに対向する側面に設けられている。
【0017】
積層体16は、コイルL1,L2及び引き出し導体42a,46a,48を内蔵している。以下に、積層体16について、図2を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
積層体16は、絶縁体層30a〜30eがz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に積層されることにより構成されている。また、絶縁体層30c〜30eは、部分積層体13を構成している。絶縁体層30a〜30eは、例えば、ポリイミド樹脂等の透明な絶縁性材料からなる矩形状の層である。該絶縁体層30a〜30eは、z軸方向から平面視した場合に、積層体14よりも小さく形成されている。これにより、積層体14は、絶縁体層30a〜30eの四辺からはみ出した状態となっている。
【0019】
コイルL1は、コイル導体40a〜40d及びビアホール導体b1〜b3により構成されている。コイル導体40a〜40dはそれぞれ、絶縁体層30b〜30eの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。コイル導体40a〜40dはそれぞれ、線状導体が折り曲げられることによって、渦巻き形状をなしている。具体的には、コイル導体40a,40cは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。コイル導体40b,40dは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。
【0020】
ビアホール導体b1〜b3はそれぞれ、絶縁体層30b〜30dをz軸方向に貫通しており、z軸方向に互いに隣り合うコイル導体40a〜40dを接続している。具体的には、ビアホール導体b1は、コイル導体40a,40bを接続している。ビアホール導体b2は、コイル導体40b,40cを接続している。ビアホール導体b3は、コイル導体40c,40dを接続している。これにより、コイル導体40a〜40d及びビアホール導体b1〜b3は、コイルL1を構成している。
【0021】
引き出し導体42aは、絶縁体層30bの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。そして、引き出し導体42aは、コイル導体40aに接続されていると共に、絶縁体層30bのx軸方向の負方向側に位置する短辺に引き出されている。これにより、コイル導体40aは、外部電極18aに電気的に接続されている。すなわち、コイルL1の一端は、引き出し導体42aを介して、外部電極18aに電気的に接続されている。
【0022】
コイルL2は、コイル導体44a〜44d及びビアホール導体b4〜b6により構成されており、コイルL1とx軸方向に並んでいる。コイル導体44a〜44dはそれぞれ、絶縁体層30b〜30eの主面上において、コイル導体40a〜40dのx軸方向の正方向側に並ぶように、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。コイル導体44a〜44dはそれぞれ、線状導体が折り曲げられることによって、渦巻き形状をなしている。具体的には、コイル導体44a,44cは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、反時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。コイル導体44b,44dは、z軸方向の正方向側から平面視したときに、時計回りに旋廻しながら中心に向かっていく渦巻き形状をなしている。
【0023】
ビアホール導体b4〜b6はそれぞれ、絶縁体層30b〜30dをz軸方向に貫通しており、z軸方向に互いに隣り合うコイル導体44a〜44dを接続している。具体的には、ビアホール導体b4は、コイル導体44a,44bを接続している。ビアホール導体b5は、コイル導体44b,44cを接続している。ビアホール導体b6は、コイル導体44c,44dを接続している。これにより、コイル導体44a〜44d及びビアホール導体b4〜b6は、コイルL2を構成している。
【0024】
引き出し導体46aは、絶縁体層30bの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。そして、引き出し導体46aは、コイル導体44aに接続されていると共に、絶縁体層30bのx軸方向の正方向側に位置する短辺に引き出されている。これにより、コイル導体44aは、外部電極18bに電気的に接続されている。すなわち、コイルL2の一端は、引き出し導体46aを介して、外部電極18bに電気的に接続されている。
【0025】
引き出し導体48は、絶縁体層30eの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。そして、引き出し導体48は、コイル導体40d,44dに接続されていると共に、絶縁体層30eのy軸方向の正方向側の長辺に引き出されている。これにより、コイル導体40d,44dは、外部電極22に電気的に接続されている。すなわち、コイルL1,L2の他端は、引き出し導体48を介して、外部電極22に電気的に接続されている。
【0026】
積層体14は、LTCC(Low Temperature Co−fired Ceramics)基板であり、直方体状をなしている。積層体14は、z軸方向から平面視したときに、積層体16よりも大きくなるように形成されている。また、積層体14は、コンデンサC及び引き出し導体52a〜52fを内蔵している。積層体14は、積層体16よりもz軸方向の負方向側に設けられている。よって、コンデンサCは、コイルL1,L2よりも積層方向の負方向側に設けられている。
【0027】
積層体14は、絶縁体層32a〜32lが積層されることにより構成されている。絶縁体層32a〜32lは、例えば、誘電体材料からなる矩形状の層である。なお、絶縁体層32a〜32lは、12枚記載されているが、12枚以上であってもよい。そのため、図2では、絶縁体層32fと絶縁体層32gとの間を点線で繋いで、絶縁体層32fと絶縁体層32gとの間に更なる絶縁体層32が設けられていてもよいことを示している。
【0028】
コンデンサCは、コンデンサ導体50a〜50fにより構成されている。コンデンサ導体50a〜50fはそれぞれ、絶縁体層32d〜32iの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。コンデンサ導体50a〜50fはそれぞれ、矩形状を有している。
【0029】
引き出し導体52a〜52fはそれぞれ、絶縁体層32d〜32iの主面上に、例えば、Ag又はPdを主成分とした導電性材料により形成されている。引き出し導体52a,52c,52eはそれぞれ、コンデンサ導体50a,50c,50eに接続されていると共に、絶縁体層32d,32f,32hのy軸方向の負方向側の長辺に引き出されている。これにより、コンデンサ導体50a,50c,50eは、外部電極20に電気的に接続されている。引き出し導体52b,52d,52fはそれぞれ、コンデンサ導体50b,50d,50fに接続されていると共に、絶縁体層32e,32g,32iのy軸方向の正方向側の長辺に引き出されている。これにより、コンデンサ導体50b,50d,50fは、外部電極22に電気的に接続されている。
【0030】
コンデンサ導体50a〜50f及び引き出し導体52a〜52fが以上の構成を有することにより、コンデンサ導体50a〜50fは、コンデンサCを構成している。より詳細には、コンデンサ導体50a〜50fは、絶縁体層32a〜32lがz軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層されることにより、z軸方向に対向するもの同士でコンデンサCを構成している。そして、引き出し導体52a,52c,52eが、外部電極20に接続され、引き出し導体52b,52d,52fが、外部電極22に接続されている。
【0031】
ここで、コンデンサ導体50b,50d,50fは、外部電極22に電気的に接続されており、コイルL1,L2の他端も、外部電極22に電気的に接続されている。その結果、コンデンサC及びコイルL1,L2は、図3に示すように、T型LCノイズフィルタを構成している。
【0032】
ところで、電子部品10は、以下に説明するように,外部電極18a,18b,20,22の形成不良を抑制するための構造を有している。図4は、電子部品10の積層体14,16及び外部電極20の断面構造図である。
【0033】
図4に示すように、絶縁体層30b〜30eは、z軸方向の正方向側から負方向側へとこの順に並ぶように積層され、部分積層体13を構成している。部分積層体13の側面は、絶縁体層30b〜30eの側面及び上面により構成され、かつ、踏み板がz軸方向の正方向側を向く階段状をなしている。より詳細には、図4では、絶縁体層30b〜30eのy軸方向の負方向側の側面は、z軸方向の正方向側から負方向側へといくにしたがって、y軸方向の負方向側に突出している。これにより、絶縁体層30c,30eの上面の一部が露出している。よって、絶縁体層30b〜30eの側面は、絶縁体層30eの下面(すなわち、積層体14の上面)に対して鋭角の勾配を有する階段状をなしている。その結果、絶縁体層30b〜30eの側面は、絶縁体層30bの上面に対して鈍角をなしている。
【0034】
絶縁体層30aは、図4に示すように、絶縁体層30b〜30eの内の最上層に位置する絶縁体層30b上に積層され、かつ、部分積層体13の側面及び上面を覆っている。そして、部分積層体13の側面を覆っている絶縁体層30aの側面は、z軸方向の正方向側を向く斜面をなしている。
【0035】
外部電極20は、図4に示すように、積層体16の上面及び側面に跨って設けられている。外部電極20は、絶縁体層30aの上面及び側面に倣った形状を有している。すなわち、絶縁体層30aの側面を覆っている外部電極20の側面は、z軸方向の正方向側を向く斜面をなしている。
【0036】
なお、本実施形態では、外部電極20を例にとって説明したが、外部電極18a,18b,22も外部電極20と同じ構造を有している。ただし、外部電極18a,18b,22は、積層体16に内蔵されているコイルL1,L2に直接に接続されているのに対して、外部電極20は、積層体16に内蔵されているコイルL1,L2に直接に接続されていない。
【0037】
(製造方法について)
以下に、電子部品10の製造方法について図面を参照しながら説明する。図5ないし図7は、電子部品10の製造時における工程断面図である。図8は、カット工程での電子部品10をz軸方向から平面視した図である。図5ないし図7では、1個分の電子部品10の製造工程が示されているが、実際には、複数の電子部品10がマトリクス状に配置された状態で一括して製造されている。
【0038】
まず、図2に示す積層体14を作製する。より詳細には、所定の材料を原材料としてボールミルに投入し、湿式調合を行う。得られた混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末を仮焼する。得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥してから解砕して、セラミック粉末を得る。
【0039】
このセラミック粉末に対して結合剤と可塑剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで混合を行い、その後、減圧により脱泡を行う。得られたセラミックスラリーをドクターブレード法により、シート状に形成して乾燥させ、絶縁体層32a〜32lとなるべきセラミックグリーンシートを得る。
【0040】
次に、絶縁体層32d〜32iとなるべきセラミックグリーンシート上に、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金などを主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法やフォトリソグラフィ法などの方法で塗布することにより、コンデンサ導体50a〜50f及び引き出し導体52a〜52fを形成する。
【0041】
次に、各セラミックグリーンシートを積層する。具体的には、上から順に絶縁体層32a〜32lを重ねて静水圧プレスなどにより圧着を行う。この後、焼成を施して、積層体14のマザー積層体を得る。
【0042】
次に、図5(a)に示すように、ポリイミド樹脂からなる絶縁体層30eを、積層体14上にフォトリソグラフィにより形成する。次に、図5(b)に示すように、絶縁体層30e上に、Ag又はPdを主成分とした導電性材料からなる導電層40dA,44dAをスパッタリングや蒸着等のドライめっき法により形成する。
【0043】
次に、導電層40dA,44dA上に感光性レジストを塗布、乾燥した後、この感光性レジストにマスクフィルムを当てて所望の部分を露光する。次に、感光性レジストを現像し、図5(c)に示すように、導電層40dA,44dAの不要な部分が露出した形状を有するレジストパターン70aを形成する。
【0044】
次に、露出した部分の導電層40dA,44dAをエッチングにて除去した後、レジストパターン70aを除去することにより、図6(a)に示すように、コイル導体40d,44d及び引き出し導体48(図6(a)には不図示)を形成する。
【0045】
次に、図6(b)に示すように、ポリイミド樹脂からなる絶縁体層30dを、絶縁体層30e、コイル導体40d,44d及び引き出し導体48上にフォトリソグラフィにより形成する。この際、絶縁体層30eの側面が絶縁体層30dの側面からはみ出すように、絶縁体層30dを形成する。これにより、絶縁体層30dと絶縁体層30eとの間に段差を形成する。更に、絶縁体層30dのビアホール導体b3,b6が形成されるべき位置に、ビアホールh1を形成する。
【0046】
次に、図6(c)に示すように、絶縁体層30d上に、導電層40cA,44cAをドライめっき法により形成する。この際、ビアホールh1に導電性材料を充填し、ビアホール導体b3,b6を形成する。この後、この導電層40cA,44cAには、図5(c)〜図6(b)を用いて説明した処理を施す。これにより、コイル導体40c,44c及び絶縁体層30cを、絶縁体層30d上に形成する。更に、図5(c)〜図6(b)を用いて説明した処理を繰り返して、コイル導体40a,40b,44a,44b、引き出し導体42a,46a及び絶縁体層30bを形成する。この際、絶縁体層30cの外縁が絶縁体層30bの外縁からはみ出すように、絶縁体層30bを形成する。これにより、絶縁体層30cと絶縁体層30bとの間に段差を形成する。以上のように、絶縁体層30b〜30eの形成時には、踏み板がz軸方向の正方向側を向く階段状をなす側面を有するように積層されるように、絶縁体層30b〜30eを形成する。以上の工程により部分積層体13を作製する。
【0047】
次に、図7(a)に示すように、部分積層体13の側面及び上面を覆うようにポリイミド樹脂からなる樹脂層30aAを形成する。そして、所定のマスクを介して露光処理を施すことにより、樹脂層30aAを硬化させる。この後、硬化した樹脂層30aAに現像処理を施す。以上の露光処理及び現像処理により、図7(b)に示すように、部分積層体13の側面及び上面を覆う絶縁体層30aをフォトリソグラフィ工程により形成する。
【0048】
この後、積層体12のマザー積層体がダイサーによりカットされて、個々の積層体12に切り離される。この際、図8の点線部分に示すように、絶縁体層30a〜30eが形成されていない部分をダイサーが通過するように、マザー積層体をカットする。更に、カットした積層体12に対してバレルを施す。これにより、積層体12の角の面取りが行われる。
【0049】
最後に、外部電極18a,18b,20,22を形成する。具体的には、NiCr、NiCu及び樹脂からなる導電性ペーストを塗布し、硬化させて電極を形成する。次に、該電極上にNiめっき及びSnめっきを施して、外部電極18a,18b,20,22を形成する。以上の工程を経て、電子部品10が完成する。
【0050】
(効果)
本実施形態に係る電子部品10によれば、外部電極18a,18b,20,22の形成不良を抑制できる。より詳細には、部分積層体13の側面は、踏み板がz軸方向の正方向側を向く階段状をなしている。これにより、部分積層体13の側面は、部分積層体13の上面に対して鈍角をなしている。そして、絶縁体層30aは、図4に示すように、部分積層体13の側面及び上面を覆っている。そのため、部分積層体13の側面を覆っている絶縁体層30aの側面は、z軸方向の正方向側を向く斜面をなしている。これにより、絶縁体層30aの上面と側面とは鈍角をなすようになる。
【0051】
ここで、外部電極20は、図4に示すように、積層体16(絶縁体層30a)の上面及び側面に跨って設けられている。絶縁体層30aの上面と側面とは鈍角をなしている。よって、絶縁体層30aの上面と側面との角を覆うように外部電極20が形成されやすくなる。その結果、電子部品10において、外部電極20の形成不良が抑制される。
【0052】
なお、電子部品10は、外部電極20の形成不良を抑制するのに特に適している。より詳細には、外部電極18a,18b,22は、積層体16に内蔵されているコイルL1,L2に直接に接続されている。そのため、外部電極18a,18b,22は、表面にめっきが施される場合に、他の外部電極18a,18b,22及びコイルL1,L2を介して、外部電極18a,18b,22に対して給電される。よって、外部電極18a,18b,22には、形成不良が比較的に発生しにくい。
【0053】
一方、外部電極20は、積層体16に内蔵されているコイルL1,L2に直接に接続されていない。そのため、外部電極20の表面にメッキを施す場合には、外部電極18a,18b,22及びコイルL1,L2を介して外部電極20に対して給電されない。よって、外部電極20には、外部電極18a,18b,22に比べて形成不良が発生しやすい。よって、電子部品10は、外部電極20の形成不良を抑制するのに特に適している。
【0054】
(その他の実施形態)
以上のように構成された電子部品10は前記実施形態に示したものに限らない。よって、電子部品10はその要旨の範囲内において変更可能である。
【0055】
電子部品10では、図4に示すように、絶縁体層30c,30dは2層で1つの段を構成している。しかしながら、絶縁体層30b〜30eはそれぞれ、1つの段を構成していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明は、電子部品及びその製造方法に有用であり、特に、積層体の上面及び側面に跨って形成される外部電極の形成不良を抑制できる点において優れている。
【符号の説明】
【0057】
L1,L2 コイル
b1〜b6 ビアホール導体
10 電子部品
12,14,16 積層体
13 部分積層体
18a,18b,20,22 外部電極
30a〜30e,32a〜32l 絶縁体層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層されることにより部分積層体を構成している複数の第1の絶縁体層と、該部分積層体の側面及び上面を覆っている第2の絶縁体層とにより構成されている積層体と、
前記積層体の上面及び側面に跨って設けられている外部電極と、
を備えており、
前記部分積層体の側面は、前記複数の第1の絶縁体層の側面及び上面により構成され、かつ、踏み板が積層方向の上側を向く階段状をなしていること、
を特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記部分積層体の側面を覆っている前記第2の絶縁体層の側面は、積層方向の上側を向く斜面をなしていること、
を特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記電子部品は、
前記積層体に内蔵されている回路素子を、
更に備えており、
前記外部電極は、前記回路素子と直接に接続されていないこと、
を特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子部品。
【請求項4】
前記外部電極には、めっき処理が施されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1の絶縁体層及び前記第2の絶縁体層は、フォトリソグラフィ工程により形成されていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の電子部品。
【請求項6】
前記電子部品は、
基板を、
更に備えており、
前記積層体は、前記基板上に設けられていること、
を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の電子部品。
【請求項7】
複数の第1の絶縁体層を積層して部分積層体を形成する第1の工程と、
前記部分積層体の側面及び上面を覆う第2の絶縁体層を、フォトリソグラフィ工程により形成する第2の工程と、
前記第2の絶縁体層の上面及び側面に跨る外部電極を形成する第3の工程と、
を備えており、
前記第1の工程では、前記部分積層体の側面が、前記複数の第1の絶縁体層の側面及び主面により構成され、かつ、踏み板が積層方向の上側を向く階段状をなすように、該複数の第1の絶縁体層を積層すること、
を特徴とする電子部品の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−238839(P2011−238839A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110196(P2010−110196)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】