説明

電子部品実装基板の樹脂封止方法および樹脂封止基板を有する電子機器並びに照明機器

【課題】製造時の工数がかからず、電子基板およびこれに搭載される各種の電子素子、発光ダイオード等の周囲を該電子基板を含めて直接熱可塑性樹脂で成形、封止するようにした電子部品実装基板の樹脂封止方法および樹脂封止基板を有する電子機器並びに照明機器の提供。
【解決手段】ファインセラミック基板5に電子部品を実装した後、射出成形用金型1内に設置し、このファインセラミック基板5を包囲するように熱可塑性樹脂材で射出成形する。また、電子部品が実装されたファインセラミック基板と、電子部品を囲包するようにファインセラミック基板の外側に射出成形された熱可塑性樹脂部とを有する電子機器、および発光ダイオード素子61,62が実装されたファインセラミック基板1および発光ダイオード素子を囲包するようにファインセラミック基板の外側に射出成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装基板の樹脂封止方法および樹脂封止基板を有する電子機器並びに照明機器に関する。
【背景技術】
【0002】
低電力、長寿命という特長をもつ発光ダイオード(LED)を光源とした照明機器が近年広く用いられてきている。この発光ダイオードは白熱灯や蛍光灯のように中空の球体や管体の内部で発光させるだけでなく、透光性樹脂等で充填された中実球体内に封止した場合でも発光することができ、防水、防爆、防塵照明装置として利用されている(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−304001号公報
【特許文献2】特開2005−294334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発光ダイオードを透光性樹脂材内に埋め込んで照明装置とする場合、一般には樹脂材の射出成形で前記発光ダイオードを埋め込むという方法がとられる。しかし、この種の照明装置における発光ダイオードは通常配線基板上に実装されるので、外周を樹脂成形する際に熱の影響を受け、特に耐熱温度の比較的低い配線基板に実装された発光ダイオードの周囲を直接熱可塑性樹脂で高温射出成形することは実際上困難である。このため、樹脂封止の際、発光ダイオードおよびその実装基板を樹脂成形時の熱から守べく、予め成形温度の低い熱硬化性樹脂で発光ダイオードの周囲を遮蔽した上で熱可塑性樹脂を射出成形するという方法がとられており、それだけ工数の増加となっていた。
【0005】
また、例えばDCコンバータ等のような所謂電気・電子部品から、携帯電話機あるいはラップトップ形パソコンのような主に電子基板で構成されている製品は、成形時の熱のために直接その外周を樹脂成形することができず、射出成形機あるいは圧縮成形機によって別途樹脂製筐体を製作し、この筐体内に電子基板等を組み込むという方法をとらざるを得なかった。
【0006】
本発明は、このような工数のかかる方法を排し、電子基板およびこれに搭載される各種の電子素子、発光ダイオード素子等の周囲を該電子基板を含めて直接熱可塑性樹脂で成形、封止できるようにした電子部品実装基板の樹脂封止方法および樹脂封止基板を有する電子機器並びに照明機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子部品実装基板の樹脂封止方法は、ファインセラミック基板に電子部品を実装した後、射出成形用金型内に設置し、前記ファインセラミック基板を包囲するように熱可塑性樹脂材で射出成形することを特徴とする。
【0008】
また、本発明による樹脂封止基板を有する電子機器は、電子部品が実装されたファインセラミック基板と、前記電子部品を囲包するように前記ファインセラミック基板の外側に射出成形された熱可塑性樹脂部とを有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明による照明機器は、発光ダイオード素子(LED)が実装されたファインセラミック基板および前記発光ダイオード素子を囲包するように前記ファインセラミック基板の外側に射出成形された透光性樹脂材を有する発光部と、電子部品が実装されたファインセラミック基板および前記電子部品を囲包するように前記ファインセラミック基板の外側に射出成形された熱可塑性樹脂材を有する電源部とを有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子部品実装基板の樹脂封止方法、電子機器、照明機器において、ファインセラミック基板は、遠赤外線への熱エネルギー変換特性を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品あるいは発光ダイオードを実装する基板を、耐熱性や熱伝導性、放熱性に優れ、かつ発生した熱エネルギーを遠赤外線に変換して放出するファインセラミック基板とすることにより、熱可塑性樹脂の射出成形時の熱の影響を軽減でき、その結果、前記射出成形に先立って基板上の電子部品や発光ダイオードを低成形温度の樹脂材で遮蔽しておく必要がなく、耐熱温度の低い電子部品でも射出成形による熱可塑性樹脂で一体に包囲することが可能となる。また、照明作動時に発光ダイオードにより発生する熱や電子機器動作時の電子部品の発生熱をファインセラミック基板の遠赤外線への熱エネルギー変換性質により放出することができ、耐熱性、耐久性に富むLED照明機器、電子機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例によるLED照明機器のLED電源部の樹脂射出成形状態を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施例によるLED照明機器のLED発光部の樹脂射出成形状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を、LEDによる照明機器に適用した実施例について、図面を参照して説明する。
この実施例による照明機器は先端部がアクリル樹脂等の球状の透光性熱可塑性樹脂で包囲された発光部20と、この発光部20に続いて熱可塑性樹脂で包囲されたLED電源部22とを有しており、LED電源部22が図示しない照明機器給電部に給電ケーブル21を介して接続されるように構成されている。LED電源部22は、図1に示されるように、ファインセラミック基板8上に抵抗やコンデンサ、コイル等の電子部品91〜95が搭載され、これらが接続線41,42を介して給電ケーブル21に接続されている。また、ファインセラミック基板8の下面から引き出された接続線23は後述する接続ケーブル43を介して下方の発光部20(図2)に接続される。
【0014】
LED電源部22のファインセラミック基板8および前述の電子部品91〜95、接続線23,42,42および給電ケーブル21の一部は射出成形用金型7の空洞部(金型キャビティ)2内に配置され、金型7が閉塞された状態でこの空洞部2に連通する樹脂射出口71から熱可塑性樹脂が射出され、これによってファインセラミック基板8および電子部品91〜95、これに接続する給電ケーブル21の一部が金型7の空洞部2に合致した形状(筐体状)で熱可塑性樹脂により包囲される。
【0015】
LED発光部20は、図2に示されるように、ファインセラミック基板5の下面または両面に発光素子(発光ダイオード)61,62が実装(接着)され、この発光ダイオード61,62から引き出された接続線41,42が接続ケーブル43を介して前述したLED電源部22に接続されている。発光部20のファインセラミック基板5および発光ダイオード61,62、その接続線41,42、接続ケーブル43は射出成形用金型1の空洞部3内に配置されるが、この発光部20における成形用金型1は該発光部20に対応する空洞部3に続いてその上部に熱可塑性樹脂で包囲されたLED電源部22(図1)および給電ケーブル21の一部が収容される空洞部2が形成されている。LED電源部22と発光部20のファインセラミック基板8,5が接続ケーブル43を介して接続された状態で、前記電源部22、および発光部20の発光ダイオード61,62を含むファインセラミック基板8,5がこの成形用金型1の空洞部2,3に収容され、該金型1が閉じられた後、発光部20に対応する空洞部3に連通する樹脂射出口11から透光性の熱可塑性樹脂が射出され、これによって発光部20のファインセラミック基板5および発光ダイオード61,62、接続線41,42、接続ケーブル43がこの金型1の空洞部3に合致した形状で透光性熱可塑性樹脂により包囲される。この実施例では発光部20の金型空洞部3は球体状に形成されている。成形完了後、金型1を開いて内部の樹脂成形品を取り出すことで、先端の球体状の発光部20と筐体状の電源部22を有するLED照明機器が得られる。
【0016】
通常の基板上に発光ダイオードを実装した状態で透光性熱可塑性状態を射出成形すると、成形時の熱で発光ダイオードが損傷するおそれがあるが、本発明ではファインセラミック基板5に発光ダイオード61,62を実装するので、ファインセラミックの熱交換特性、即ち遠赤外線へ熱エネルギーを変換する性質により、成形時の高温が遠赤外線として放散されるので、発光ダイオード61,62の熱損傷が防止される。例えば白熱灯形態のLED照明機器を製作する場合、ファインセラミック基板上に耐熱温度約90℃の発光ダイオードチップを実装し、射出成形温度約240℃で透光性アクリル樹脂を射出、成形しても、基板上の発光ダイオードは破損することなくアクリル樹脂内に封入され、これによって防水性の備えた照明機器とすることができるとともに、防塵性、防爆性が確保される。また、この照明機器の発光中における発光ダイオードからの発生熱もファインセラミックのもつ高熱伝導性、放熱性等の熱交換特性により、内部の発光ダイオードが損傷を受けることがなく、さらにファインセラミックの熱環境における強靱性により、耐衝撃性、耐圧性に優れた照明機器が得られる。なお、射出成形する透光性樹脂としては、上述のアクリル樹脂に限らず、他の透光性の樹脂、例えば耐衝撃性に富んだエラストマー樹脂としてもよい。
【0017】
また、これらの透光性樹脂に適当な光拡散材、例えばミー散乱をもたらす光拡散材を必要に応じて混入することにより、光の散乱性、指向性に富んだ照明機器が得られる。例えば、光拡散微粒子として高分散シリカの粉粒体を混合してもよい。この高分散シリカは、一般には乾式シリカ、フュームドシリカと称されるものであり、四塩化珪素の燃焼加水分解により製造される。より具体的には、燃焼法によって得られた二酸化珪素は空気中で真球状の粒子状態(粒子径10〜30nm)となるが、この二酸化珪素の粒子が複数個、数珠状に凝集、融着し、嵩高の凝集体(粒径100〜400nm)を形成して高分散シリカとなる。なお、発光ダイオード61,62によって球体状の発光部20の全方向を光らせる粒子は、上述の高分散シリカに限られず粒子の大きさと照射光の波長とが同程度か同程度以上の、照射光をミー散乱させる粒子であればよい。このような高分散シリカを基質物に加えることにより、種々の効果がもたらされる。照射光の観点からいえば、高分散シリカを混合添加した合成樹脂材は、高分散シリカに発光素子から直進する照射光が衝突してミー散乱し、乳白色を呈しながら透光性がよく、また光の指向性、散乱性が向上し、照光部全体に柔らかい照明が生成されて、従来のこの種の照明器具のように局部的に眩しく光るということがなくなる。また、高分散シリカの粒度を調整することにより、例えば粒子径を大とすることで、基板の前方への光の指向性が増し、使用目的や使用箇所に応じて適切な指向性、散乱性を確保できる。
【0018】
また、ファインセラミックとしては、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化アルミニウムなど多種のものがあるが、照明機器の用途、目的等に応じて適切な原料、粒度、焼成度等選定することができる。例えば、高温における強靱性、耐熱性、耐蝕性が高く、軽量な窒化ケイ素(Si3 N4 )、あるいは高熱伝導率で放熱性に優れた窒化アルミニウム(AlN)、そのほか熱膨張係数が小さく耐熱性に優れたジルコン(ZrO2 ・SiO2 )等、目的に応じて自由に選定することができる。特に、遠赤外線への熱エネルギー変換特性を有するファインセラミックが好適であり射出成形時の熱や電子部品から発せられる熱を放熱するようになっている。
【0019】
上述の実施例は発光ダイオードを用いた照明機器に適用した例であるが、本発明はこのような照明装置だけでなく、基板上に電子部品を実装した電気・電子機器にも適用できる。例えば、DCコンバータとして構成する場合、ファインセラミック基板上に銅製のフィルムを貼り付けた電子部品を実装し、その後これを、射出成形機にセットした筐体状ケースを形成する金型に収容し、熱可塑性樹脂例えばPBT樹脂を射出温度約220℃で射出成形する。これによって直ちにDCコンバータに必要な電子部品がPBC樹脂ケースに実装される。この場合もファインセラミックの前述した熱変換特性により、耐熱温度の低い電子部品が樹脂成形時に熱損傷を受けることがなく、また、完全な防水性、防塵性が確保され、防爆性にも富んだ強靱な電子機器が得られる。
【0020】
また、本発明の電子部品実装基板の封止方法によれば、例えば、通信用等の電子部品を実装した携帯端末成形品やラップトップ形パソコン、また、RFIDチップ等のICチップを実装した樹脂成形玩具など、様々な電子部品を備えた樹脂成形電子機器を射出成形により成形することができる。このように本発明の電子部品実装基板の封止方法によれば、防水性、耐衝撃性、耐圧性等に優れた電子部品を内蔵した様々な電子機器を少ない工程で製造することができる。
【符号の説明】
【0021】
1,7 射出成形用金型
2,3 金型空洞部
5,8 ファインセラミック基板
11,71 樹脂射出口
20 発光部
21 給電ケーブル
22 LED電源部
23,41,42 接続線
43 接続ケーブル
61,62 発光ダイオード
91,92,93,94,95 電子部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファインセラミック基板に電子部品を実装した後、射出成形用金型内に設置し、前記ファインセラミック基板を包囲するように熱可塑性樹脂材で射出成形することを特徴とする電子部品実装基板の樹脂封止方法。
【請求項2】
電子部品が実装されたファインセラミック基板と、前記電子部品を囲包するように前記ファインセラミック基板の外側に射出成形された熱可塑性樹脂部とを有することを特徴とする樹脂封止基板を有する電子機器。
【請求項3】
発光ダイオード素子(LED)が実装されたファインセラミック基板および前記発光ダイオード素子を囲包するように前記ファインセラミック基板の外側に射出成形された透光性樹脂材を有する発光部と、
電子部品が実装されたファインセラミック基板および前記電子部品を囲包するように前記ファインセラミック基板の外側に射出成形された熱可塑性樹脂材を有する電源部と、
を有することを特徴とする照明機器。
【請求項4】
前記ファインセラミック基板は、遠赤外線への熱エネルギー変換特性を有することを特徴とする請求項1記載の電子部品実装基板の樹脂封止方法。
【請求項5】
前記ファインセラミック基板は、遠赤外線への熱エネルギー変換特性を有することを特徴とする請求項2記載の樹脂基板を有する電子機器。
【請求項6】
前記ファインセラミック基板は、遠赤外線への熱エネルギー変換特性を有することを特徴とする請求項3記載の照明機器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−235073(P2012−235073A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104609(P2011−104609)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(592049623)株式会社スズデン (5)
【出願人】(510149699)株式会社スズデン販売 (4)
【Fターム(参考)】