説明

電子部品実装基板

【課題】 電子部品の絶縁基板への固定強度が高い電子部品実装基板を提供することを目的とする。
【解決手段】 電極31Aの側端面31A1と導電パターン11Aの接続部11A1の先端部との間に間隔L2をあけ、電極31Bの側端面31B1と導電パターン11Bの接続部11B1の先端部との間に間隔L3をあけて、電子部品30を、導電性接着剤層20A,20Bを介して、導電パターン11A,11Bに接続する。
このようにすると、電子部品30に引き剥がし力が作用したときに、引き剥がし力が導電パターン11A,11Bには直接に伝わらず、導電パターン11A,11Bが剥がされにくくなる。また、電子部品30は導電性接着剤層20A,20Bによって絶縁基板10の表面に強固に固定されるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁基板上に形成された導電パターンに電子部品が接続されている電子部品実装基板に係り、特に、絶縁基板に対する電子部品の固定強度を向上できる電子部品実装基板に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、基板へのチップ型電子部品の取り付け方法が開示されている。
図3Aは、従来の、基板へのチップ型電子部品の取り付け方法を示す平面図、図3Bは、図3Aの3−3線での切断断面図である。
【0003】
フレキシブル基板100では、可撓性を有する合成樹脂フイルム(例えばポリエチレンテレフタレートフイルム)101上に、銀ペースト等をスクリーン印刷することによって回路パターン102,102が形成されており、回路パターン102,102の端部には端子パターン103,103が形成されている。
【0004】
端子パターン103,103上には、端子パターン103,103を覆うように、異方性のホットメルトタイプの導電性接着剤104がスクリーン印刷されている。導電性接着剤104は、ポリエステル系熱可塑性樹脂(熱可塑性の樹脂であれば他の樹脂でもよい)の中に金属粉(例えば銅粉,銀粉)と溶剤が混入されている。
【0005】
チップ型発光素子200には、その両側面(図示X1側の側面および図示X2側の側面)から下面(図示Z2側の面)にかけて、その表面に直接露出するように電極端子201,201が設けられている。
【0006】
そして、チップ型発光素子200の電極端子201,201がそれぞれ、端子パターン103,103の真上の導電性接着剤104上に載置され、チップ型発光素子200がフレキシブル基板100上に載置される。
【特許文献1】特開平8−330712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、前記特許文献1に記載の発明では、電極端子201,201が載置され、接着される導電性接着剤104の下で、電極端子201,201に対応する位置に回路パターン102,102が介在している。そして、回路パターン102,102には、導電率を高めるために、ペースト中に銀が多く含まれており、回路パターン102,102の機械的強度は弱い。このため、外部衝撃などによってチップ型発光素子200に引き剥がし力(図示Z1方向に作用する力)が作用したときに、この引き剥がし力が回路パターン102,102に直接伝わり、回路パターン102,102が合成樹脂フイルム101から剥がされてしまう。すなわち、チップ型発光素子200の固定強度が低く、外部衝撃などによってチップ型発光素子200が合成樹脂フイルム101から剥離してしまうといった問題がある。
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、電子部品の絶縁基板への固定強度が高い電子部品実装基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、絶縁基板の表面に、導電性金属粉およびバインダー樹脂を有する導電パターンが形成され、前記絶縁基板上に実装される電子部品が前記導電パターンと導通している電子部品実装基板において、
前記絶縁基板の表面には、導電性フィラーとバインダー樹脂とを有し導電性フィラーの密度が前記導電パターンよりも低い導電性接着剤層が設けられ、この導電性接着剤層は、前記絶縁基板の表面に前記導電パターンを介在させることなく形成され且つ前記導電パターンと導通されており、
前記電子部品が前記導電性接着剤層の上に設置されて、前記電子部品と前記絶縁基板とが前記導電性接着剤層を介して固定されていることを特徴とする。
【0010】
上記発明では、電子部品が導電性フィラーの混入密度の低い導電性接着剤層を介して絶縁基板の表面に接着され、導電性接着剤層と絶縁基板との間に、導電性金属粉を有する導電パターンが介在していないため、絶縁基板に対する電子部品の固定強度を向上できる。また、導電性接着剤層の比抵抗は導電パターンよりも高いが、導電性接着剤層の通電経路がきわめて短いため、電子部品を含む電子回路の直流抵抗が増大することを抑制できる。
【0011】
例えば、本発明は、前記絶縁基板上には、対を成す導電パターンが対向して設けられているとともに、前記対を成す導電パターンの端部間に、対をなす導電性接着剤層が間隔を空けて形成されており、前記電子部品の両端部のそれぞれが前記導電性接着剤層の上に設置されているものとして構成できる。
【0012】
上記構造では、両導電性接着剤層の間に、前記絶縁基板上から突出する絶縁性の突起が設けられていることが好ましい。
【0013】
導電性接着剤層は導電性フィラーの混入密度が低いため、溶融状態において、絶縁基板の表面と電子部品の底面との隙間内を毛細管作用で進行していく可能性があるが、前記突起を設けることにより、電子部品の両端部を固定する導電性接着剤層どうしが接触して短絡が生じるのを防止できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子部品実装基板では、電子部品と絶縁基板とが導電パターンを介在させることなく、導電性接着剤を介して固定されているため、電子部品に剥離力が作用した場合においても、この剥離力が接着力の強い導電性接着剤で受け止められ、前記剥離力が導電パターンに直接に作用しにくくなる。そのため、絶縁基板の表面から導電パターンが剥離することを抑制できる。
【0015】
この結果、電子部品の固定強度を高くでき、外部衝撃などによって電子部品が絶縁基板表面から剥離する可能性を低くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の電子部品実装基板を示す部分平面図、図2は図1の2−2線での切断断面図である。なお、図1では導電パターンの形状等を明確にするために、導電パターンを覆うレジスト層の図示を省略している。
【0017】
符号10は、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂やポリイミド樹脂等で形成された可撓性を有する絶縁基板である。図1に示すように、絶縁基板10の表面(図示Z1側の面)には、1対の導電パターン11A,11Bが、図示X1−X2方向に所定間隔L0をあけて互いに対向して形成されている。なお、図1では、1対の導電パターン11A,11Bのみを示しているが、実際には、絶縁基板10上には複数対の導電パターンが形成されている。
【0018】
導電パターン11Aは、接続部11A1と配線部11A2が一体となって構成されており、導電パターン11Bは、接続部11B1と配線部11B2が一体となって構成されている。接続部11A1,11B1は、配線部11A2,11B2よりも幅寸法(図示Y1−Y2方向の寸法)が大きく形成されており、所定の面積を有する、いわゆるランド部として機能している。
【0019】
導電パターン11A,11Bは、絶縁基板10上に、Agなどの導電性金属粉を含有する導電材により形成されている。前記導電材は、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂からなるバインダー樹脂に前記導電性金属粉と有機溶剤が含まれた導電性ペーストまたは導電性インクをスクリーン印刷することで、絶縁基板10に所定のパターンで印刷形成される。スクリーン印刷した後に焼成することで前記有機溶剤を除去し、その結果、主として導電性金属粉とバインダー樹脂とで構成される導電塗膜が、導電パターン11A,11Bとして、絶縁基板10の表面に固着されて形成される。
【0020】
図2に示すように、導電パターン11A,11Bの配線部11A2,11B2上にはレジスト層12,12が形成されており、配線部11A2,11B2がレジスト層12によって完全に覆われている。レジスト層12は、配線部11A2,11B2に塗布した後に所定の加熱工程を経て硬化させられる。
【0021】
絶縁基板10上には、導電パターン11Aと11Bとの間で、チップ抵抗などの電子部品30が載置させられる位置に対応する位置、たとえば、図2に示すように、導電パターン11Aの接続部11A1の先端からの距離および導電パターン11Bの接続部11B1の先端からの距離がL0/2の位置(導電パターン11Aと導電パターン11Bとの間の中点位置)に、絶縁材料から形成される絶縁突起13が設けられている。
【0022】
電子部品30は、図示X1側の側端面30aに電極31Aが設けられ、図示X2側の端面30bには電極31Bが設けられているものであり、抵抗器、コンデンサ、コイルなどとして使用されるチップ部品である。あるいは、電子部品30は、3個以上の電極を有するICなどの電子部品や複合電子部品であってもよい。
【0023】
次に、電子部品30を導電パターン11A,11Bに接続する方法について説明する。
まず、図2に示すように、導電性接着剤層20Aを、絶縁基板10上のうち導電パターン11Aの接続部11A1と絶縁突起13との間、および接続部11A1の先端部分に塗布し、導電性接着剤層20Bを、絶縁基板10上のうち導電パターン11Bの接続部11B1と絶縁突起13との間、および接続部11B1の先端部分に塗布する。すなわち、絶縁基板10上のうち電子部品30が載せられる領域では、その領域の少なくとも一部において、絶縁基板10と電子部品30との間に、導電性接着剤層のみが存在し、導電性接着剤層と絶縁基板10との間に導電パターン11A,11Bは存在していない。
【0024】
導電性接着剤層20A,20Bは、Agやカーボンなどの導電性フィラーが、エポキシ系やフェノール系などの熱硬化性のバインダー樹脂に混入されたものである。導電性接着剤層20A,20Bは有機溶剤を含んだペースト状で、絶縁基板10の表面に塗布され、電子部品30が設置された後に加熱することでバインダー樹脂が硬化する。
【0025】
硬化した導電性接着剤層20A,20Bにおける導電性フィラーの混入密度は、導電パターン11A,11Bにおける導電性金属粉の混入密度よりも低く、硬化した導電性接着剤層20A,20Bは、硬化した導電パターン11A,11Bよりも機械的強度が高く、絶縁基板10に対する剥離強度は、導電性接着剤層20A,20Bの方が導電パターン11A,11Bよりも高い。ただし、比抵抗および面抵抗は、導電性接着剤層20A,20Bの方が導電パターン11A,11Bよりも高い。
【0026】
電子部品30は、その下面(図示Z2側の面)30cの、たとえば、ほぼ中央部分が絶縁突起13に対向するように、電子部品30を絶縁突起13上に載せられ、このとき、電極31A,31Bの下面が、導電性接着剤層20A,20Bに接せられる。また、導電パターン11Aと11Bとの間の間隔L0は、電子部品30の図示X1―X2方向の寸法L1に比べて大きいことが好ましい。すなわち、電極31Aの側端面31A1と導電パターン11Aの接続部11A1の先端部との間には間隔L2があいており、電極31Bの側端面31B1と導電パターン11Bの接続部11B1の先端部との間には間隔L3があいている。ただし、前述のように、絶縁基板10上のうち電子部品30が載せられる領域において、この領域の一部に導電性接着剤層20A,20Bのみが介在していれば、前記領域の一部に導電パターン11A,11Bが少し入り込んでいてもよい。
【0027】
電子部品30を絶縁突起13上に載せた後に、図2の矢印で示すように、電子部品30を下方に押し込み且つ導電性接着剤層20A,20Bを加熱すると、導電性接着剤層20A,20Bのバインダー樹脂が硬化し、電子部品30の下面30cの位置が図2の点線の位置となり、電極31A,31Bの下面および電子部品30の下面30cと絶縁基板10とが導電性接着剤層20A,20Bを介して固定される。
【0028】
このとき、図2の矢印で示すように、導電性接着剤層20Aは図示X2方向に変形し、導電性接着剤層20Bは図示X1方向に変形し、図2の点線のようになるが、絶縁基板10上に絶縁突起13が設けられているため、絶縁突起13によって、導電性接着剤層20Aと20Bとが一体になることが防止される。その結果、導電パターン11Aと11Bが短絡してしまうことを防止できる。
【0029】
なお、本発明では、絶縁突起13ではなく、絶縁基板10上に、シリコンなどからなる撥水剤を塗布してもよい。この場合には、導電性接着剤層20Aが図示X2方向に変形し、導電性接着剤層20Bが図示X1方向に変形した場合においても、導電性接着剤層20A,20Bが前記撥水剤によってはじかれ、導電性接着剤層20Aと20Bとが一体になることが防止される。
【0030】
また、本発明では、電極31Aの側端面31A1と導電パターン11Aの接続部11A1の先端部との間には間隔L2があいており、電極31Bの側端面31B1と導電パターン11Bの接続部11B1の先端部との間には間隔L3があいている。このため、導電性接着剤層20A,20Bを多量に塗布しておくと、電子部品30を下方に押し込んだときに、導電性接着剤層20Aが、図2に矢印で示すように上方(図示Z1方向)へ盛り上がり、図2の点線で示すように、電極31Aの側端面31A1を図示X1方向から覆い、導電性接着剤層20Bも、図2に矢印で示すように上方へ盛り上がり、図2の点線で示すように、電極31Bの側端面31B1を図示X2方向から覆う。このため、電子部品30が、導電性接着剤層20A,20Bによって下方および側方から固定される。その結果、電子部品30を、導電性接着剤層20A,20Bによって確実に固定することができ、外部から衝撃などが加えられた場合においても、電子部品30が外れてしまうことを防止することができる。
【0031】
本発明では、図2に示すように、電子部品30の下面30cと絶縁基板10との間には導電性接着剤層20A,20Bのみが介在している。そして、電極31Aの側端面31A1と導電パターン11Aの接続部11A1の先端部との間には間隔L2があいており、電極31Bの側端面31B1と導電パターン11Bの接続部11B1の先端部との間には間隔L3があいている。
【0032】
このため、たとえば電子部品30に引き剥がし力が作用したときに、引き剥がし力が導電パターン11A,11Bには直接に伝わらず、導電パターン11A,11Bが剥がされにくくなる。また、電子部品30は導電性接着剤層20A,20Bによって絶縁基板10の表面に強固に固定されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の電子部品実装基板を示す部分平面図、
【図2】図1の2−2線での切断断面図、
【図3】図3Aは、従来の、基板へのチップ型電子部品の取り付け方法を示す平面図、図3Bは、図3Aの3−3線での切断断面図
【符号の説明】
【0034】
10 絶縁基板
11A,11B 導電パターン
11A1,11B1 接続部
11A2,11B2 配線部
13 絶縁突起
20A,20B 導電性接着剤層
30 電子部品
31A,31B 電極
L2,L3 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の表面に、導電性金属粉およびバインダー樹脂を有する導電パターンが形成され、前記絶縁基板上に実装される電子部品が前記導電パターンと導通している電子部品実装基板において、
前記絶縁基板の表面には、導電性フィラーとバインダー樹脂とを有し、導電性フィラーの密度が前記導電パターンよりも低い導電性接着剤層が設けられ、この導電性接着剤層は、前記絶縁基板の表面に前記導電パターンを介在させることなく形成され且つ前記導電パターンと導通されており、
前記電子部品が前記導電性接着剤層の上に設置されて、前記電子部品と前記絶縁基板とが前記導電性接着剤層を介して固定されていることを特徴とする電子部品実装基板。
【請求項2】
前記絶縁基板上には、対を成す導電パターンが対向して設けられているとともに、前記対を成す導電パターンの端部間に、対をなす導電性接着剤層が間隔を空けて形成されており、前記電子部品の両端部のそれぞれが前記導電性接着剤層の上に設置されている請求項1記載の電子部品実装基板。
【請求項3】
両導電性接着剤層の間に、前記絶縁基板上から突出する絶縁性の突起が設けられている請求項2記載の電子部品実装基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−216735(P2006−216735A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−27241(P2005−27241)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】