説明

電子部品実装用フィルムキャリアテープ及びフレキシブル基板

【課題】 静電気の発生・帯電を防止して半導体チップ実装ラインの信頼性を向上できる電子部品実装用フィルムキャリアテープ及びフレキシブル基板を提供する。
【解決手段】 連続する絶縁層12の少なくとも表面に設けられた導体層11をパターニングしてなる配線パターン21と、当該配線パターン21の両側に設けられた複数のスプロケットホール22とを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープ20において、前記絶縁層12の表面には長さ方向に連続して導通層(25)が設けられる一方、前記絶縁層12の裏面の少なくとも幅方向両側の端部若しくは端部近傍に長手方向に亘って帯電防止剤からなる帯電防止層31が設けられ、前記導通層(25)又は当該導通層に電気的に接続されている導体層と、前記帯電防止層31とが幅方向端面又は前記スプロケットホール22の内周端面を介して電気的に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICあるいはLSI等の電子部品を実装するために用いる電子部品実装用フィルムキャリアテープ及びフレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業の発達に伴い、IC(集積回路)、LSI(大規模集積回路)等の電子部品を実装するプリント配線板の需要が急激に増加しているが、電子機器の小型化、軽量化、高機能化が要望され、これら電子部品の実装方法として、最近ではTABテープ、T−BGAテープ、ASICテープ等の電子部品実装用フィルムキャリアテープを用いた実装方式が採用されている。特に、パーソナルコンピュータ、携帯電話等のように、高精細化、薄型化、液晶画面の額縁面積の狭小化が要望されている液晶表示素子(LCD)を使用する電子産業において、その重要性が高まっている。
【0003】
ここで、このような電子部品実装用フィルムキャリアテープは、ポリイミドからなる絶縁層に、例えば、搬送用のスプロケットホールやデバイスホール等を形成した後に、スプロケットホールを用いて搬送しながら、絶縁層の一方面に設けられた導体層をパターニングすることにより配線パターンを形成し、その後、必要に応じて配線パターン上に絶縁保護層を形成することにより製造される。
【0004】
また、このような電子部品実装用フィルムキャリアテープは、電子機器の小型化等に伴い、それ自体の薄型化が望まれており、近年、比較的膜厚の薄い絶縁層を用いたCOF(チップ・オン・フィルム)テープが提案されている。
【0005】
このような電子部品実装用フィルムキャリアテープは、電子部品、例えば、半導体チップ(IC)実装工程の前後にもリールからの巻き出し、巻き取りが行われるが、この際に静電気の発生・帯電が生じ、ひいてはICの静電気破壊を引き起こすという問題があった。
【0006】
ここで、電子部品用フィルムキャリアテープとは異なるフレキシブル基板(FPC)については、金属層を設けたプラスチックフィルム基板の裏面側に帯電防止層を設けるという提案がなされている(特許文献1参照)が、帯電防止層の表面に保護層を設けるという構成からして、巻き出し、巻き取り時の帯電防止の目的ではない。また、このように帯電防止層を単に裏面に設けた構成では、特に、薄い電子部品実装用フィルムキャリアテープでは静電気の発生・帯電を完全に防止することはできない。
【0007】
【特許文献1】特開平5−259591号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、静電気の発生・帯電を防止して半導体チップ実装ラインの信頼性を向上できる電子部品実装用フィルムキャリアテープ及びフレキシブル基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、連続する絶縁層の少なくとも表面に設けられた導体層をパターニングしてなる配線パターンと、当該配線パターンの両側に設けられた複数のスプロケットホールとを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、前記絶縁層の表面には長さ方向に連続して導通層が設けられる一方、前記絶縁層の裏面の少なくとも幅方向両側の端部若しくは端部近傍に長手方向に亘って帯電防止剤からなる帯電防止層が設けられ、前記導通層又は当該導通層に電気的に接続されている導体層と、前記帯電防止層とが幅方向端面又は前記スプロケットホールの内周端面を介して電気的に連結されていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0010】
かかる第1の態様では、裏面に設けた帯電防止層と表面に設けた導通層とが電気的に連結されているので、フィルムの巻き出し、巻き取り工程においての静電気の発生・帯電が確実に防止される。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記導通層は、前記導体層をパターニングすることにより前記スプロケットホールの周縁部に長手方向に亘って連続して設けられた導電パターンであることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0012】
かかる第2の態様では、導通層は配線パターンのパターニングと同一工程で形成でき、且つスプロケットホールを介しての搬送工程での補強層としても作用する。
【0013】
本発明の第3の態様は、第1の態様において、前記導通層は、前記導体層をパターニングすることにより幅方向端部に長手方向に亘って間欠的に設けられた導電パターンであることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0014】
かかる第3の態様では、導通層はフィルムの幅方向端部に設けられた帯状層であり、配線パターンのパターニングの際に同時に形成することができる。
【0015】
本発明の第4の態様は、第1の態様において、前記導通層は、前記導体層をパターニングすることにより前記スプロケットホールと前記配線パターンとの間に長手方向に亘って連続して設けられた導電パターンであることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0016】
かかる第4の態様では、導通層は、配線パターンとスプロケットホールとの間に長手方向に亘って設けられた帯状層であり、配線パターンのパターニングの際に同時に形成することができる。
【0017】
本発明の第5の態様は、第1の態様において、前記導通層は、幅方向端部及び前記スプロケットホールの周縁部の少なくとも一方に長手方向に亘って連続して設けられた帯電防止剤からなる導通用帯電防止層であることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0018】
かかる第5の態様では、導通層は、帯電防止剤からなる導通用帯電防止層であり、長手方向に亘って比較的容易に形成できる。
【0019】
本発明の第6の態様は、第3〜5の何れかの態様において、前記スプロケットホールの周囲には、長手方向に連続して又は一定間隔で不連続に前記導体層をパターニングして設けられた補強層を具備し、当該補強層と前記導通層とが長手方向の所定位置で導通されていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0020】
かかる第6の態様では、スプロケット周りの補強層が導通層と導通されており、補強層を介して発生した静電気が除電され、帯電が防止される。
【0021】
本発明の第7の態様は、第1〜6の何れかの態様において、前記配線パターンのそれぞれと前記導通層とが電気的に連結されていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープにある。
【0022】
かかる第7の態様では、各配線パターンのそれぞれが導通層と導通されているので、配線パターンを介して発生した静電気が除電され、帯電が防止される。
【0023】
本発明の第8の態様は、連続する絶縁層の表面に設けられた導体層をパターニングしてなる配線パターンを有するフレキシブル基板において、前記絶縁層の表面には長さ方向に連続して導通層が設けられる一方、前記絶縁層の裏面の少なくとも幅方向両側の端部及び端部近傍に長手方向に亘って帯電防止剤からなる帯電防止層が設けられ、前記導通層又は当該導通層に電気的に接続されている導体層と、前記帯電防止層とが幅方向端面を介して電気的に連結されていることを特徴とするフレキシブル基板にある。
【0024】
かかる第8の態様では、裏面に設けた帯電防止層と表面に設けた導通層とが電気的に連結されているので、フィルムの巻き出し、搬送、巻き取り工程においての静電気の発生・帯電が確実に防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの一例であるCOFフィルムキャリアテープを実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施形態ではCOFフィルムキャリアテープを例にとって説明するが、TABテープ、FPCについても同様に実施できることはいうまでもない。
【0026】
図1には、一実施形態に係るCOFフィルムキャリアテープ20を示す。
【0027】
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態のCOFフィルムキャリアテープ20は、銅層からなる導体層11とポリイミドフィルムからなる絶縁層12とからなるCOF用積層フィルムを用いて製造されたものであり、導体層11をパターニングした配線パターン21と、配線パターン21の幅方向両側に設けられたスプロケットホール22とを有する。また、配線パターン21上には、ソルダーレジスト材料塗布溶液をスクリーン印刷法にて塗布して形成した、あるいはフィルムを添付した絶縁保護層23を有し、絶縁保護層23の内側には、半導体チップを実装する部分に配線パターン21の一部であるインナーリード21aが露出しており、一方、このインナーリード21aとは反対側の絶縁保護層23の外側には、配線パターン21の一部であり、外部接続用端子部となるアウターリード21bが延設されている。
【0028】
配線パターン21は、絶縁層12の表面に長手方向に亘って複数個が並設されており、これら複数個の配線パターン21はスプロケットホール22の内側に設けられためっき用導電バー24を介して互いに連結されている。なお、配線パターンは、絶縁層の両面に形成されていてもよい(2−metal COFフィルムキャリアテープ)。
【0029】
ここで、めっき用導電バー24は、めっきを無電解めっき法(例えば、Snめっき)で実施する場合には使用しないので、無くてもよいが、勿論、この場合にも存在しても問題はない。また、無電解めっきする場合には、図2に示すように、配線パターン21との結線を切断した独立したパターン24Aとしてもよい。なお、めっき用導電バー24あるいはパターン24Aは、後述するように帯電防止剤の配線パターン21側への流れ込みを防止するダムの役目を果たし、また、アース線としての効果もある。
【0030】
また、スプロケットホール22の周縁部には導体層11からなる補強層25が長手方向に連続して設けられており、本実施形態では、これが導通層として作用する。また、絶縁層12の裏面側には、帯電防止層31が設けられており、この帯電防止層31と連続して導通層である補強層25に連結する連結層32がスプロケットホール22の内面に設けられている。
【0031】
ここで、導体層11としては、銅の他、アルミニウム、金、銀などを使用することもできるが、銅層が一般的である。また、銅層としては、蒸着やメッキで形成した銅層、電解銅箔、圧延銅箔など何れも使用することができる。導体層11の厚さは、一般的には、1〜70μmであり、好ましくは、5〜35μmである。
【0032】
一方、絶縁層12としては、ポリイミドの他、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルサルホン、液晶ポリマーなどを用いることができるが、ピロメリット酸2無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの重合によって得られる全芳香族ポリイミド(例えば、商品名:カプトンEN;東レ・デュポン社製)や、ビフェニルテトラカルボン酸−2無水物とパラフェニレンジアミン(PPD)との重合物(例えば、商品名:ユーピレックスS;宇部興産社製)を用いるのが好ましい。なお、絶縁層12の厚さは、一般的には、12.5〜125μmであり、好ましくは、12.5〜75μm、さらに好ましくは12.5〜50μmである。
【0033】
ここで、COF用積層フィルムは、例えば、銅箔からなる導体層11上に、ポリイミド前駆体やワニスを含むポリイミド前駆体樹脂組成物を塗布して塗布層を形成し、溶剤を乾燥させて巻き取り、次いで、酸素をパージしたキュア炉内で熱処理し、イミド化して絶縁層12とすることにより形成されるが、勿論、これに限定されるものではない。例えば、上述したポリイミドフィルムなどの絶縁フィルムにニッケル合金などの密着強化層をスパッタした後、銅メッキを施した積層フィルムの他、キャスティングタイプ、銅箔に熱可塑性樹脂・熱硬化性樹脂などを介し絶縁フィルムを熱圧着した熱圧着タイプの積層フィルムを挙げることができ、本発明では、何れを用いてもよい。
【0034】
本発明の帯電防止層31及び連結層32は、帯電防止剤から形成される。
【0035】
ここで、帯電防止剤としては、公知の帯電防止剤を使用することができ、例えば、公知の各種界面活性剤などの有機系帯電防止剤を挙げることができる。かかる有機系帯電防止剤は、そのまま又はこれを紫外線硬化樹脂又はその他の樹脂からなるバインダーと共に塗布法等により設けて帯電防止層31及び連結層32とすることができる。
【0036】
また、帯電防止層は、離型剤としても作用するシリコーン系化合物を帯電防止剤として用いて形成してもよい。すなわち、シロキサン結合(Si−O−Si結合)を有する化合物を形成することができる。シリコーン系化合物からなる層は、比較的容易に形成でき、半導体装置実装面に転写したとしても、半導体チップ実装後のモールド樹脂の接着性に悪影響を起こし難いからである。
【0037】
ここで、シリコーン系化合物、すなわち、シロキサン結合を有する化合物からなる層を形成する帯電防止剤としては、具体的には、ジシロキサン、トリシロキサンなどのシロキサン化合物から選択される少なくとも一種を含有するものを挙げることができる。また、好ましい帯電防止剤としては、塗布後反応によりシリコーン系化合物に変化する化合物、すなわち、モノシラン、ジシラン、トリシランなどのシラン化合物、又はシリカゾル系化合物等を含む帯電防止剤を用いるのが好ましい。さらに、特に好ましい帯電防止剤としては、シラン化合物の一種であるアルコキシシラン化合物や、シロキサン結合の前駆体であるSi−NH−Si構造を有する、ヘキサメチルジシラザン、ペルヒドロポリシラザンなどのシラザン化合物を含有する帯電防止剤を挙げることができる。これらは、塗布することにより、又は塗布後空気中の水分等と反応することにより、シロキサン結合を有する化合物となるが、例えば、シラザン化合物については、Si−NH−Si構造が残存している状態であってもよい。
【0038】
このような各種シリコーン系帯電防止剤は、一般的には溶剤として有機溶剤を含有しているが、水溶液タイプのもの又はエマルジョンタイプのものを用いてもよい。
【0039】
具体例としては、ジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン系オイル、メチルトリ(メチルエチルケトオキシム)シラン、トルエン、リグロインを成分とするシリコーン系レジンSR2411(商品名:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)、シラザン、合成イソパラフィン、酢酸エチルを成分とするシリコーン系レジンSEPA−COAT(商品名:信越化学工業社製)などを挙げることができる。また、シラン化合物を含有するコルコートSP−2014S(商品名:コルコート株式会社製)などを挙げることができる。さらに、シリカゾルを含有するものとしては、コルコートP(商品名:コルコート株式会社製)などを挙げることができる。なお、シリカゾルに含まれるシリカの粒子径は、例えば、0.005〜0.008μm[50〜80Å(オングストローム)]である。
【0040】
また、このようなシリコーン系帯電防止剤を用いた場合には、半導体実装部に設けられた領域では、半導体チップの実装時に加熱ツールと密着しないという離型性を有する離型層としても作用するが、このような加熱により熱融着しないという効果の点では、シラザン化合物を含有する離型剤でシリコーン系化合物からなる帯電防止層31及び連結層32を設けるのが特に好ましい。このようなシラザン化合物を含有する帯電防止剤の一例としては、シラザン、合成イソパラフィン、酢酸エチルを成分とするシリコーン系レジンSEPA−COAT(商品名:信越化学工業社製)を挙げることができる。
【0041】
ここで、帯電防止層31は、帯電防止作用のみを考慮すれば、幅方向中央部を除いた幅方向両側領域のみに設けてもよく、また、幅方向両側領域には離型性を有さない有機系帯電防止剤を用い、実装領域の裏面である中央領域には離型性を有するシリコーン系帯電防止剤を用いてもよい。
【0042】
かかる帯電防止層31及び連結層32の形成方法は特に限定されず、帯電防止剤又はその溶液をスプレー、ディッピング、又はローラー塗布などにより塗布してもよいし、基材フィルムに形成された帯電防止層を転写するようにしてもよい。ここで、例えば、フィルムキャリアテープの幅方向端部に帯電防止層31及び連結層32をローラー塗布により形成する場合、塗布用のローラーを水平に対して0.1〜90度の角度だけ傾けて取り付けて塗布を行うようにしてもよい。また、何れの場合にも、絶縁層と帯電防止層との間の剥離を防止するために、加熱処理等により両者の間の接合力を高めるようにしてもよい。
【0043】
なお、連結層32は、帯電防止層31を設ける工程と同一工程で設けてもよいが、連結層32のみを別途設けるようにしてもよい。
【0044】
また、帯電防止層31及び連結層32は、半導体実装時までに設けられていればよいので、導体層を設けた後設けるほか、導体層を設けていない絶縁層に予め設けてあってもよいし、導体層を設ける際に同時に設けるようにしてもよい。勿論、導体層をパターニングする前に必ずしも設ける必要はなく、導体層をパターニングした後設けるようにしてもよい。
【0045】
例えば、導体層を設けた後設けるほか、導体層を設けていない絶縁層に予め設ける場合などは、転写法を用いるのが好ましい。また、導体層をパターニングした後設ける場合には、塗布法を用いるのが好ましいが、勿論これに限定されず、導体層のパターニング前の初期の段階で塗布法により設けてもよいし、導体層のパターニング後に転写法により設けるようにしてもよい。
【0046】
本発明の一製造方法では、帯電防止層31及び連結層32は、フォトリソグラフィー後、半導体実装時までに設けられていればよい。これは、フォトレジスト層の剥離液等により帯電防止層31等が溶解する虞があるためであり、導体層をエッチング後、配線パターン用レジストマスクを除去後設けるようにするのが好ましい。すなわち、レジストマスクを除去後、スズメッキを施した後の工程、または、レジストマスクを除去後、絶縁保護層を設け、リード電極にメッキを施した後の工程等に設けるのが好ましい。また、このような帯電防止層31等は、帯電防止剤の溶液を塗布し、自然乾燥により形成するようにしてもよいが、接合強度を高めるために加熱処理を行うのが好ましい。ここで、加熱条件としては、例えば、加熱温度を50〜200℃、好ましくは、100〜200℃とし、加熱時間を1分〜120分、好ましくは、30分〜120分とするのがよい。
【0047】
また、本発明の他の製造方法では、帯電防止層31は、基材である転写用フィルムに形成された離型層を絶縁層の導体層とは反対側、すなわち、半導体チップ(IC)を実装する側とは反対側の面上に転写するようにする。ここで、転写条件としては、例えば、加熱温度を15〜200℃とし、ローラー又はプレスによる荷重を5〜50kg/cmとし、処理時間を0.1秒〜2時間とするのがよい。さらに、絶縁層12と帯電防止層31との間の剥離を防止するために、転写後、加熱処理等により両者の間の接合力を高めるようにしてもよい。このときの加熱条件としては、例えば、加熱温度を50〜200℃、好ましくは、100〜200℃とし、加熱時間を1分〜120分、好ましくは、30分〜120分とするのがよい。
【0048】
かかる転写法では帯電防止層31は、半導体実装時までに設けられていればよいので、導体層を設けていない絶縁層に予め設けてもよいし、導体層を設ける際に同時に設けるようにしてもよい。勿論、導体層をパターニングする前に必ずしも設ける必要はなく、導体層をパターニングした後設けるようにしてもよい。
【0049】
例えば、導体層を設けていない絶縁層に予め設ける場合などは、転写法を行うのに好適である。また、製造工程の初期段階で転写法により帯電防止層31を設ける場合、帯電防止層が形成された基材フィルムを剥がさないで補強フィルムとして使用し、最終工程で基材フィルムを剥がすようにしてもよい。
【0050】
なお、特に転写法を用いた場合には、連結層32は別途設ける必要があるが、この場合、帯電防止剤の表面側への流出を防止するために、スプロケットホール22を表面側から封止部材等を押し当てて塞いだ状態で、刷毛塗り、スプレー法などにより設けるようにしてもよい。また、スプロケットと類似の形状の塗布部材を使用して塗布するようにしてもよい。さらに、帯電防止剤が配線パターン21までの流出を防止するためにダム構造を設けてもよく、本実施形態では、上述したようにめっき用導電バー24がその役目を果たしている。勿論、めっき用導電バー24と補強層25との間にさらにダム層を別途設けてもよい。
【0051】
本実施形態では、シリカゾルを含有する帯電防止剤を用いて帯電防止層31及び連結層32を塗布法により形成した。なお、帯電防止層31の厚さは、例えば、0.001〜1μmである。
【0052】
このような本発明のCOFフィルムキャリアテープは、例えば、リールから巻き出し、巻き取りされながら搬送されて半導体チップや受動部品等の電子部品の実装工程に用いられるが、この際、静電気の発生・帯電が防止され、電子部品の静電気破壊などの事故が事前に防止されるという効果を奏する。
【0053】
また、本発明のCOFフィルムキャリアテープは、半導体チップ等を実装して用いられるが、この際の実装方法は特に限定されない。例えば、チップステージ上に載置された半導体チップ上にCOF用フレキシブルプリント配線板を位置決め配置し、加熱ツールをCOF用フレキシブルプリント配線板に押しあてて半導体チップを実装する方法を採用することができる。この際に、加熱ツールは、最低でも200℃以上、場合によっては350℃以上に加熱されるが、加熱ツールが接触する絶縁層上に離型性のある帯電防止層が形成されている場合には、両者の間に熱融着が生じる虞がないという効果も奏する。
【0054】
このような本発明のCOFフィルムキャリアテープは、例えば、搬送されながら半導体チップの実装やプリント基板などへの電子部品の実装工程に用いられ、COF実装されるが、この際、絶縁層12及び帯電防止層31の光透過性が50%以上あるので、帯電防止層31側から配線パターン21(例えば、インナーリード)をCCD等で画像認識することができ、さらに、実装する半導体チップやプリント基板の配線パターンを認識することができ、画像処理により相互の位置合わせを良好に行うことができ、高精度に電子部品を実装することができる。
【0055】
次に、上述したCOFフィルムキャリアテープの一製造方法を図3を参照しながら説明する。
【0056】
図3(a)に示すように、COF用積層フィルム10を用意し、図3(b)に示すように、パンチング等によって、導体層11及び絶縁層12を貫通してスプロケットホール22を形成する。このスプロケットホール22は、絶縁層12の表面上から形成してもよく、また、絶縁層12の裏面から形成してもよい。次に、図3(c)に示すように、一般的なフォトリソグラフィー法を用いて、導体層11上の配線パターン21が形成される領域に亘って、例えば、ネガ型フォトレジスト材料塗布溶液を塗布してフォトレジスト材料塗布層41を形成する。勿論、ポジ型フォトレジスト材料を用いてもよい。さらに、スプロケットホール22内に位置決めピンを挿入して絶縁層12の位置決めを行った後、フォトマスク42を介して露光・現像することで、フォトレジスト材料塗布層41をパターニングして、図3(d)に示すような配線パターン用レジストパターン43を形成する。次に、配線パターン用レジストパターン43をマスクパターンとして導体層11をエッチング液で溶解して除去し、さらに配線パターン用レジストパターン43をアルカリ溶液等にて溶解除去することにより、図3(e)に示すように配線パターン21を形成する。
【0057】
続いて、必要に応じて配線パターン21全体にスズメッキなどのメッキ処理を行った後、図3(f)に示すように、塗布法により帯電防止層31及び連結層32を絶縁層12の裏面及びスプロケットホール22の内面に形成する。この帯電防止層31及び連結層32は、塗布して乾燥するだけでもよいが、絶縁層との接合性を高め、また、IC実装時に加熱ツールと熱融着しないという離型効果を向上させるためには、加熱処理を行うのが好ましい。ここで、加熱条件としては、例えば、加熱温度を50〜200℃、好ましくは、100〜200℃とし、加熱時間を1分〜120分、好ましくは、30分〜120分とするのがよい。この加熱処理はソルダーレジストのキュアと同時に行ってもよい。次に、図3(g)に示すように、例えば、スクリーン印刷法を用いて、絶縁保護層23を形成する。そして、絶縁保護層23で覆われていないインナーリード及びアウターリードに必要に応じて金属メッキ層を施す。金属メッキ層は特に限定されず、用途に応じて適宜設ければよく、スズメッキ、スズ合金メッキ、ニッケルメッキ、金メッキ、金合金メッキ、Sn−Bi合金その他のPbフリー半田めっきなどを施す。なお、めっき法としては、Sn等の金属めっき層を絶縁保護層23形成前後にそれぞれ設ける2段めっき法、絶縁保護層23形成前に設ける先めっき法、そして、SnやAu、Ni等の金属めっき層を絶縁保護層23形成後に設ける後めっき法などがある。
【0058】
以上説明した実施形態では、帯電防止層31及び連結層32の形成を配線パターン用レジストパターン43をアルカリ溶液等にて溶解除去した後、絶縁保護層23を設ける前に行ったが、絶縁保護層23を設けた後の製造工程最後、例えば、2段めっき法の2段目の金属めっき層形成後に帯電防止層31及び連結層32を形成するようにしてもよい。このように帯電防止層31及び連結層32を形成すると、帯電防止層31及び連結層32がエッチング液やフォトレジストの剥離液等に曝されないので、帯電防止効果、離型効果が高いという利点がある。
【0059】
このように、本発明の帯電防止層は、配線パターン21を形成するフォトリソグラフィー工程後そして半導体チップ等とのボンディング前までに形成するのが好ましい。これはフォトレジスト層の剥離工程で帯電防止層が溶解する可能性があるからである。したがって、フォトレジスト工程終了直後、又はメッキ処理後、さらには、絶縁保護層23形成後等に帯電防止層を設けるのが好ましい。勿論、フォトリソグラフィー工程より前に行ってもよい。
【0060】
本実施形態のCOF用フィルムキャリアテープは、スプロケットホール22の周縁部は、半導体チップ実装時の位置決め搬送においてスプロケットホール22を補強するための補強層25を具備し、これが導通層として作用している。これにより、フィルムキャリアテープの搬送時のフィルム破れ等が防止され、また、スプロケットとの擦れによる静電気の発生・帯電を防止することができる。
【0061】
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態を説明したが、勿論、電子部品実装用フィルムキャリアテープは上述したものに限定されるものではない。
【0062】
例えば、導通層は、図4に示すように、絶縁層12の幅方向端部まで設けた補強層25Aとしてもよく、この場合、幅方向両側の端面に連結層33を設けてもよい。なお、連結層32及び33は、何れか一方設ければよい。
【0063】
また、導通層は、絶縁層12の幅方向端部のみに設けてスプロケットホール22の周縁部には存在しないようにしてもよい。
【0064】
さらに、上述した実施形態では導通層として作用した補強層は、長手方向に連続している必要はなく、例えば、図5に示すように、3〜8個のスプロケットホール22毎に設けられたスリット26により絶縁層12の長手方向に不連続となった導電パターンである補強層25Bとしてもよい。勿論、この場合には補強層は導通層としては作用しないので、別途導通層を設ける必要がある。ここで、補強層25Bは、絶縁層12の長手方向に3〜8個のスプロケットホール22群に対応して連続的に設けられ、且つこれらスプロケットホール22群毎にスリット26を介して間欠的に設けられている。例えば、本実施形態では、補強層25Bは、4個のスプロケットホール22毎に設けられている。このような補強層25Bの長手方向の長さは、スプロケットホール22の3〜8個分に相当する10〜40mmであり、好ましくは、3〜6個分に相当する10〜30mmであり、例えば、本実施形態では、4個のスプロケットホール22に相当する19mmとした。なお、スプロケットホール22のピッチについては、EIAJ(日本電子機械工業会)規格によって4.75±0.05mmと標準値が規定されている。
【0065】
このように、本実施形態では、補強層25Bを4個のスプロケットホール22毎に設けられたスリット26により絶縁層12の長手方向に不連続とするようにしたので、補強層25Bと絶縁層12との間に発生する応力が適度に開放され、最終製品である電子部品実装用フィルムキャリアテープ20の幅方向両側において長手方向に亘って発生する波状の変形を防止できる。また、テープ全体の剛性が大きくなりすぎることがないため、搬送経路が湾曲している場合であっても、テープ自体が自在に搬送経路に追従することができ、好適に搬送することができるという効果もある。勿論、スプロケットホール22毎に独立して設けてもよい。
【0066】
なお、この実施形態では、補強層25Bは長手方向に連続していないので、導通層としては不十分であるが、補強層25Bは、導電層からなる連結パターン27を介してめっき用導電バー24と接続されている。これにより、めっき用導電バー24は、連結パターン27、連結層32を介して帯電防止層31と連結されており、導通層として作用する。
【0067】
勿論、上述した実施形態のように、長手方向に連続して導通層として作用する補強層25、25Aをめっき用導電バー24と連結して、配線パターン21の除電を有効に行うようにしてもよい。
【0068】
また、長手方向に不連続な補強層25Bなどを設けた場合には、図6に示すように、帯電防止層34を絶縁層12の表面側に補強層25Bと接触するように設け、これを導通層として作用させてもよい。勿論、帯電防止層34は補強層25B上まで設けてもよい。
【0069】
この場合にも、裏面側の帯電防止層31は、表面側の帯電防止層34と連結層33を介して接続され、さらに補強層25Bに連結されているので、巻き出し、巻き取りの際の静電気の発生・帯電が同様に防止される。なお、帯電防止層34を導通層として作用させる態様はこれに限定されるものではない。
【0070】
さらに、上述した実施形態では、配線パターン21やスプロケットホール22等からなるキャリアパターンを1列設けた電子部品実装用フィルムキャリアテープ20を例示して説明したが、これに限定されず、例えば、キャリアパターンを複数列並設した多条の電子部品実装用フィルムキャリアテープであってもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、COFフィルムキャリアテープである電子部品実装用フィルムキャリアテープを例示したが、その他の電子部品実装用フィルムキャリアテープ、例えば、TAB、CSP、BGA、μ−BGA、FC、QFPタイプ等であってもよく、その構成等も限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
図4に示す構造のCOFフィルムキャリアテープにおいて、絶縁層12としてピロメリット酸2無水物と4,4’−ジアミノジフェニルエーテルの重合によって得られる全芳香族ポリイミド(商品名:カプトンEN;東レ・デュポン社製)を用い、このCOFフィルムキャリアテープより幅広のローラーを用いて帯電防止剤としてシリカゾルを含有する、コルコートP(商品名:コルコート株式会社製)を塗布して帯電防止層31及び連結層32、33を形成した。なお、連結層32,33の存在は、波長分散型蛍光X線分析装置によるSi強度測定により確認された。
【0073】
(実施例2)
COFフィルムキャリアテープよりも若干幅狭のローラーを用いて、図5に示すように帯電防止層31及び連結層32を設けた以外は、実施例1と同様にした。
【0074】
(比較例1)
帯電防止層31のみを設けて、連結層32、33を設けない以外は、実施例と同様にした。
【0075】
(比較例2)
帯電防止層31及び連結層32、33を設けない以外は、実施例と同様にした。
【0076】
(試験例)
実施例1,2、及び比較例1,2のCOFフィルムキャリアテープをそれぞれ巻き出し且つ巻き取りして搬送しながらICチップを実装し、帯電量(kV/inch)及び静電気破壊ICチップの数をそれぞれ測定した。この結果を表1に示す。なお、帯電量はSIMCO社製Hand E Stat.により測定した。
【0077】
この結果より、帯電防止層を導通層として作用する補強層25Aと連結した実施例1,2では、連結しない比較例1,2と比較して帯電量が著しく小さく、静電気破壊されたICチップの数も著しく少なかった。
【0078】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施形態1に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープを示す概略構成図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの概略構成を示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープの製造方法を説明する断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープを示す概略構成図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープを示す概略構成図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係る電子部品実装用フィルムキャリアテープを示す概略構成図であって、(a)は平面図であり、(b)は断面図である。
【符号の説明】
【0080】
11 導体層
12 絶縁層
20 電子部品実装用フィルムキャリアテープ(COFフィルムキャリアテープ)
21 配線パターン
22 スプロケットホール
23 絶縁保護層
25,25A,25B 補強層
31,34 帯電防止層
32,33 連結層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する絶縁層の少なくとも表面に設けられた導体層をパターニングしてなる配線パターンと、当該配線パターンの両側に設けられた複数のスプロケットホールとを有する電子部品実装用フィルムキャリアテープにおいて、
前記絶縁層の表面には長さ方向に連続して導通層が設けられる一方、前記絶縁層の裏面の少なくとも幅方向両側の端部若しくは端部近傍に長手方向に亘って帯電防止剤からなる帯電防止層が設けられ、前記導通層又は当該導通層に電気的に接続されている導体層と、前記帯電防止層とが幅方向端面又は前記スプロケットホールの内周端面を介して電気的に連結されていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項2】
請求項1において、前記導通層は、前記導体層をパターニングすることにより前記スプロケットホールの周縁部に長手方向に亘って連続して設けられた導電パターンであることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項3】
請求項1において、前記導通層は、前記導体層をパターニングすることにより幅方向端部に長手方向に亘って間欠的に設けられた導電パターンであることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項4】
請求項1において、前記導通層は、前記導体層をパターニングすることにより前記スプロケットホールと前記配線パターンとの間に長手方向に亘って連続して設けられた導電パターンであることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項5】
請求項1において、前記導通層は、幅方向端部及び前記スプロケットホールの周縁部の少なくとも一方に長手方向に亘って連続して設けられた帯電防止剤からなる導通用帯電防止層であることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項6】
請求項3〜5の何れかにおいて、前記スプロケットホールの周囲には、長手方向に連続して又は一定間隔で不連続に前記導体層をパターニングして設けられた補強層を具備し、当該補強層と前記導通層とが長手方向の所定位置で導通されていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかにおいて、前記配線パターンのそれぞれと前記導通層とが電気的に連結されていることを特徴とする電子部品実装用フィルムキャリアテープ。
【請求項8】
連続する絶縁層の表面に設けられた導体層をパターニングしてなる配線パターンを有するフレキシブル基板において、
前記絶縁層の表面には長さ方向に連続して導通層が設けられる一方、前記絶縁層の裏面の少なくとも幅方向両側の端部及び端部近傍に長手方向に亘って帯電防止剤からなる帯電防止層が設けられ、前記導通層又は当該導通層に電気的に接続されている導体層と、前記帯電防止層とが幅方向端面を介して電気的に連結されていることを特徴とするフレキシブル基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−128639(P2006−128639A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269691(P2005−269691)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】