説明

電子部品相互の接続構造及び接続方法

【課題】電極同士の接触部分における電気抵抗値の制御が容易で安定した電気特性を備えつつ電子部品同士を確実に接続する。
【解決手段】電子部品相互の接続構造は、例えばRPCB10及びFPC20相互の接続に適用される。RPCB10は、基板11上に形成された電極12を備え、電極12は、凸部12aを備える。FPC20は、基板21上に形成された電極22を備え、電極22は、凹部22aを備える。凹部22aを含めた電極22上には、凹部22aの形状に沿ってワイヤ23がボンディングされ、RPCB10の電極12形成側の面上には接着材13が形成される。電極12,22を凸部及び凹部12a,22aが嵌合するように位置合わせしてRPCB10及びFPC20を熱圧着により接続する。電極12,22はワイヤ23を介して金属結合されるので、電気抵抗値のばらつきが少ない接続を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の電子部品を相互に電気的に接続する接続構造及び接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献1や特許文献2に開示されたように、ACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電フィルム)やACP(Anisotropic Conductive Paste:異方性導電ペースト)を用いて基板或いは電子機器等の電子部品を相互に電気的に接続することが行われている。図4は、ACFを用いた従来の接続構造を示す断面図である。
【0003】
従来の接続構造においては、図4(a)に示すように、例えばそれぞれ電極(接続端子)101,102が形成された基板103,104を、それらの間に熱硬化性樹脂フィルム105中に導電粒子106が混在するACF107を介在させた状態で、電極101,102同士が対向するように配置する。そして、図4(b)に示すように、基板103,104同士を重ね合わせて熱圧着する。
【0004】
この時、ACF107中の電極101,102間にある導電粒子106はこれらの間に挟み込まれて物理的に接触し、基板103,104の電気的な導通が確保される。一方、ACF107中の他の導電粒子106は互いに接触しないため、基板103,104においてそれぞれ隣接する電極101,102間の絶縁性は確保された状態で接続が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−16502号公報
【特許文献2】特開2002−217239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に開示された従来の接続構造では、ACFの導電粒子との物理的な接触によって電極同士が電気的に導通されて基板が接続される。このため、例えば図4(b)に示すように、電極101,102間に挟み込まれる導電粒子106の量などにより電気抵抗値が変化してしまうので、特に接続時のインピーダンスのコントロールなどを厳しく要求されるような場合においては、接続部分の電気抵抗値の制御が難しくなるという問題がある。
【0007】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、電極同士の接触部分における電気抵抗値の制御が容易で安定した電気特性を備えつつ電子部品同士を確実に接続することができる電子部品相互の接続構造及び接続方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る電子部品相互の接続構造は、電子部品同士がそれぞれの電極を介して接続された電子部品相互の接続構造であって、一方の電子部品の電極が凹部及び前記凹部に嵌合する他方の電子部品の電極が凸部からなり、前記凹部及び凸部とワイヤとがボンディングされ、前記電子部品間に絶縁性樹脂からなる接着材が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る電子部品相互の接続構造によれば、一方が凹部及び他方がこの凹部に嵌合する凸部からなる電極にワイヤがボンディングされ、ワイヤを介して電極同士が金属結合されるので、電極同士の接触部分における電気抵抗値の制御が容易で安定した電気特性を備えた接続を行うことができる。
また、本発明に係る電子部品相互の接続構造によれば、上記電子部品間に形成された接着材を介して互いに接続されるので、電子部品同士を確実に接続することができる。
【0010】
本発明に係る電子部品相互の接続構造において、前記ワイヤは、金(Au)からなることが好ましい。
【0011】
また、前記接着材は、熱硬化性樹脂からなることが好ましい。
【0012】
更に、前記電子部品の少なくとも一方は、フレキシブルプリント基板であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る電子部品相互の接続方法は、第1の電子部品に凹状の第1の電極を形成する工程と、第2の電子部品に前記第1の電極と嵌合可能な凸状の第2の電極を形成する工程と、前記第1及び第2の電極の一方にワイヤを設置する工程と、前記第1及び第2の電極の他方に絶縁性の接着材を形成する工程と、前記第1及び第2の電極を嵌合すると共に、前記第1及び第2の電極に前記ワイヤをボンディングする工程とを備えたことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る電子部品相互の接続方法によれば、第1の電子部品に形成された凹状の第1の電極及び第2の電子部品に形成された凸状の第2の電極の一方にワイヤを設置し、他方に接着材を形成して、第1及び第2の電極を嵌合すると共に、前記ワイヤをボンディングする。このため、ワイヤを介して第1及び第2の電極同士が金属結合されると共に、接着材を介して互いに接続されるので、接触部分の電気抵抗値の制御が容易で安定した電気特性を備えつつ電子部品同士を確実に接続することができる。
【0015】
本発明に係る電子部品相互の接続方法において、前記第1の電極に前記ワイヤを設置し、前記第2の電極に前記接着材を形成するようにしても良い。
【0016】
また、前記第1及び第2の電子部品の少なくとも一方は、フレキシブルプリント基板であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電極同士の接触部分における電気抵抗値の制御が容易で安定した電気特性を備えつつ電子部品同士を確実に接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子部品相互の接続構造を示す断面図である。
【図2】同接続構造が適用される電子部品の一部を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電子部品相互の接続方法による工程を示すフローチャートである。
【図4】従来の接続構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、添付の図面を参照して、この発明に係る電子部品相互の接続構造及び接続方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る電子部品相互の接続構造は、図1(a)に示すように、例えばリジッド基板(Rigid Printed Circuit Board:RPCB)10と、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits:FPC)20との相互の接続に適用される。
【0021】
RPCB10は、例えば厚さ400μmのガラスエポキシ基材からなる基板11と、この基板11の片面上に形成された銅(Cu)からなる電極12とを備える。電極12は、例えば厚さ35μmのCuからなる回路上に厚さ10μmのCuメッキを施して形成された、直径80μmで高さ10μmの円柱状の凸部12aを備えた構造からなる。
【0022】
また、RPCB10は、基板11の電極12形成側の面上に形成されたエポキシ系のソルダーレジスト(図示せず)と、その上に均一に塗布されたエポキシ系の熱硬化性樹脂からなる接着材13とを有する。なお、電極12上のソルダーレジストは開口され、この開口部内にて露出する電極12の表面には金(Au)メッキが施されている。
【0023】
一方、FPC20は、例えば厚さ25μmのポリイミド基材からなる基板21と、この基板21の片面上に形成されたCuからなる電極22とを備える。電極22は、例えば厚さ18μmのCuからなる回路上に厚さ10μmのCuメッキを施して形成された、孔径100μmで深さ10μmの円形の凹部22aを備えた構造からなる。
【0024】
また、FPC20は、基板21の電極22形成側の面上に積層されたポリイミド系のフィルムからなるカバーレイ(図示せず)を有する。なお、電極22上のカバーレイは開口され、この開口部内にて露出する電極22の表面にはAuメッキが施された上で、更にAuからなるワイヤ23がボンディングによって凹部22aの形状に沿うように形成されている。なお、各電極12,22は、例えばピッチが400μm、L/S(ライン/スペース)が200/200μmとなるように形成されている。
【0025】
ワイヤ23は、図2(a)に示すように、電極22の凹部22aの中心を通って図中矢印X方向に沿うように凹部22aの形状に沿って1つだけボンディングされても良いが、図2(b)に示すように、図中矢印X方向及びY方向にそれぞれ沿うように2つボンディングされても良く、更にこれよりも多くボンディングされても良い。
【0026】
また、ワイヤ23は、例えば図2(c)に示すように、電極22の凹部22aが図中矢印Y方向に沿って直線状に延びる溝状に形成された場合は、図中矢印X方向に沿うように凹部22aの形状に沿って、且つ図中矢印Y方向に複数並設されるように複数ボンディングされても良い。なお、この場合は、図示は省略するが、RPCB10の電極12の凸部12aも凹部22aに嵌合可能な図中矢印Y方向に沿って延びる突条に形成されると良い。
【0027】
このように構成されたRPCB10とFPC20とを、電極12,22の凸部12a及び凹部22aを位置合わせした後に、例えば図1(a)中白抜き矢印で示すようにFPC20をRPCB10上に移動させて重ね合わせた上で嵌合させて、両者を熱圧着(或いは超音波接合)することにより、図1(b)に示すように、RPCB10及びFPC20が電気的且つ機械的に接続される。
【0028】
この時、電極11及び12(特に、凸部12a及び凹部22a)とワイヤ23とがボンディングされ、電極11,12は、ワイヤ23により一定の面積で金属結合されるので、電極11,12間の接続時における電気抵抗値のばらつきは極力抑えられ、良好な電気特性を得ることが可能となる。また、熱圧着時に電極11,12間に存する接着材13は、ワイヤ23によってほぼ切断に近い状態で押し分けられる(押し退けられる)ので、電気的な接続を阻害することはない。
【0029】
従って、本実施形態に係る電子部品相互の接続構造を用いれば、RPCB10及びFPC20の電極12,22同士の接触部分(特に、凸部12a及び凹部22a)における電気抵抗値の制御が容易となる。このため、安定した電気特性を備えつつ電子部品同士を確実に接続することができる。
【0030】
なお、上述した接続構造においては、電子部品としてRPCB10及びFPC20を例に挙げて説明したが、このような基板同士の接続の他に、リジッドフレキシブル基板を用いたり、基板と半導体装置などとの接続や、半導体装置同士の接続などにも本発明に係る接続構造は良好に適用することができる。
【0031】
また、電極12,22の凸部12a及び凹部22aの形状として、円柱状の凸部と円形の凹部、突条の凸部と溝状の凹部の組み合わせを例に挙げて説明したが、その他にも角柱状の凸部と矩形の凹部との組み合わせや、多角形からなる凹凸部等を採用するようにしても良い。上述した接続構造においては、これらの凹凸部を嵌合させて接続を行うため、電子部品同士が接続時に横ずれ(平行ずれや位置ずれ)などを起こすことなく、位置合わせ及び接続を確実に行うことができる。
【0032】
更に、上述した接続構造においては、電極12,22(凸部12a及び凹部22aを含む)の表面にAuメッキを施し、Auからなるワイヤ23を電極22にボンディングしたものを例に挙げて説明したが、アルミニウム(Al)やその他の導電材(例えば、銀(Ag)パラジウム(Pd)など)を用いてメッキを施したりワイヤ23を作製しても良い。また、RPCB10やFPC20の各構成部の数値等も、設計により任意に設定することができる。
【0033】
なお、ワイヤ23は、凹部22a内に設けられた部分以外の電極22の表面に配置された部分(根本の部分)が、そのボンディング対応箇所が表面から凹むように電極22の表面形状を加工した上でボンディングすることにより、高さ方向に(表面上に)出っ張らないように配置されていても良い。このようにすれば、凸部12a及び凹部22a以外の電極12,22同士の接続性を更に良好にすることができる。
【0034】
その他、ワイヤ23を凸部12aの形状に沿って電極12に形成したり、RPCB10の電極12に凹部22aを形成すると共にFPC20の電極22に凸部12aを形成したりして、接続を行うようにしても良い。また、電極12,22にそれぞれ交互に凸部及び凹部12a,22aを形成するようにしても良い。
【0035】
ここで、本発明の一実施形態に係る電子部品相互の接続方法による接続工程について説明する。図3に示すように、まず、FPC20の電極22に凹部22aをサブトラクティブ法やセミアディティブ法などのエッチングにより形成する(ステップS100)。また、RPCB10の電極12に凸部12aを同様にエッチングにより形成する(ステップS102)。
【0036】
次に、形成した凹部22aを含む電極22にワイヤ23をボンディング等により設置し(ステップS104)、RPCB10の電極12形成側の面上に接着材13を塗布する(ステップS106)。その後、RPCB10とFPC20とを電極12,22の凸部及び凹部12a,22aが正確に嵌合するように位置合わせを行い(ステップS108)、ヒーターツール等を用いて例えば350℃の温度で加熱しながら加圧すると共に超音波を当てて熱圧着及びボンディングして(ステップS110)、両者を接続する。
【0037】
このような接続工程により、RPCB10及びFPC20が電気的且つ機械的に確実に接続される。なお、熱圧着及びボンディング工程(ステップS110)を経た後に、両者をオーブン装置等を用いて150℃雰囲気中に所定時間(例えば、一時間)放置することにより、接着材13を確実に熱硬化させると良い。
【符号の説明】
【0038】
10 リジッド基板(RPCB)
11 基板
12 電極
12a 凸部
13 接着材
20 フレキシブルプリント基板(FPC)
21 基板
22 電極
22a 凹部
23 ワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品同士がそれぞれの電極を介して接続された電子部品相互の接続構造であって、
一方の電子部品の電極が凹部及び前記凹部に嵌合する他方の電子部品の電極が凸部からなり、
前記凹部及び凸部とワイヤとがボンディングされ、
前記電子部品間に絶縁性樹脂からなる接着材が形成されている
ことを特徴とする電子部品相互の接続構造。
【請求項2】
前記ワイヤは、金(Au)からなる
ことを特徴とする請求項1記載の電子部品相互の接続構造。
【請求項3】
前記接着材は、熱硬化性樹脂からなる
ことを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品相互の接続構造。
【請求項4】
前記電子部品の少なくとも一方は、フレキシブルプリント基板である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の電子部品相互の接続構造。
【請求項5】
第1の電子部品に凹状の第1の電極を形成する工程と、
第2の電子部品に前記第1の電極と嵌合可能な凸状の第2の電極を形成する工程と、
前記第1及び第2の電極の一方にワイヤを設置する工程と、
前記第1及び第2の電極の他方に絶縁性の接着材を形成する工程と、
前記第1及び第2の電極を嵌合すると共に、前記第1及び第2の電極に前記ワイヤをボンディングする工程とを備えた
ことを特徴とする電子部品相互の接続方法。
【請求項6】
前記第1の電極に前記ワイヤを設置し、前記第2の電極に前記接着材を形成する
ことを特徴とする請求項5記載の電子部品相互の接続方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の電子部品の少なくとも一方は、フレキシブルプリント基板である
ことを特徴とする請求項5又は6記載の電子部品相互の接続方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−151103(P2011−151103A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9714(P2010−9714)
【出願日】平成22年1月20日(2010.1.20)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】