説明

電子部品

【課題】中間層部の緻密化を図り、信頼性の高い電子部品を提供すること。
【解決手段】セラミックコンデンサ101は、複数のセラミック誘電体層105及び複数の内部電極層141,142を積層してなる電極積層部107と、電極積層部107の外面を覆うように設けられたカバー層部108と、電極積層部107の積層途中となる位置に設けられた中間層部109と、電極積層部107の積層方向に延びて複数の内部電極層141,142に接続された複数のコンデンサ内ビア導体131,132とを備える。中間層部109は、自身の厚さの1/10以下の粒径を持つ金属粒子154がセラミック粒子に対して1体積%以上30体積%以下の割合で混合された材料により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセラミック絶縁層及び複数の内部電極層を積層してなる電極積層部とその電極積層部の積層途中となる位置に設けられた中間層部とを備えた電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電子部品として、セラミックコンデンサ(例えば、特許文献1参照)が実用化されている。具体的には、特許文献1のセラミックコンデンサは、複数のセラミック絶縁層及び複数の内部電極層を積層してなる電極積層部を備える。この電極積層部において、内部電極層及びセラミック絶縁層の積層方向に貫通形成された貫通孔が複数設けられ、各貫通孔内には、内部電極層に接続されるビア電極が形成されている。このセラミックコンデンサにおいて、電極積層部の積層途中となる中央部には厚肉のセラミック層(中間層部)が設けられている。また、電極積層部における複数の内部電極層において、ビア電極が貫通する領域にクリアランスホールが一層おきに設けられている。このため、電極積層部においてクリアランスホールが設けられているビア電極の周囲では、内部電極層の層数が半分になり、その部分だけ厚さが薄く形成される。電極積層部を構成するセラミック絶縁層は薄いため、そのセラミック絶縁層の延びだけでは、電極積層部における厚みの差を補うことはできない。これに対して、電極積層部の中央に厚肉のセラミック層を設けると、そのセラミック層の延びによって厚みの差を抑制することが可能となる。この場合、電極積層部における複数のセラミック絶縁層の曲げが少なくなり、曲げ部分でのクラックの発生が回避される。
【0003】
また、複数の導体層と複数のセラミック絶縁層とからなる電極積層体において中間層部を設けた積層チップインダクタ(例えば、特許文献2参照)が開示されている。このチップインダクタでは、焼成時において導体層とセラミック絶縁層との収縮率の差によって生じる内部応力が中間層部により吸収される。なお、中間層部は、誘電体、ガラス等の絶縁体、磁性体及びこれらと金属粉末の混合物より選ばれた材料から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4252277号公報
【特許文献2】特開昭59−90915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のセラミックコンデンサにおいて、電極積層部の積層数を多くしてコンデンサ容量を大きくする場合、中間層部はコンデンサ表面から離れた位置に設けられる。このため、焼成時において、中間層部のセラミックグリーンシートに含まれる有機成分が脱脂され難く、未焼成のまま残る場合がある。この場合、中間層部の緻密化が他のセラミック絶縁層(電極積層部の絶縁層)よりも困難となる。その結果、電極積層部において中間層部に近接する内部電極層とセラミック絶縁層とのデラミネーションが誘発され、コンデンサとしての信頼性が低下してしまう。また、有機成分由来の炭素等が中間層部に残留すると、絶縁抵抗の低下や高温加速寿命の低下をもたらしてしまう。
【0006】
また、特許文献2のチップインダクタでは、導体層とセラミック絶縁層との界面に生じる内部応力を緩和するために中間層部が設けられている。つまり、特許文献2のチップインダクタは、中間層部の緻密化を考慮したものではない。このため、チップインダクタにおいて電極積層部の積層数を多くすると、上記特許文献1のセラミックコンデンサと同様に、中間層部の緻密化が困難となるといった問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、中間層部の緻密化を図り、信頼性の高い電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、複数のセラミック絶縁層及び複数の内部電極層を積層してなる電極積層部と、前記電極積層部の積層方向の外面を覆うように設けられたセラミック絶縁層からなるカバー層部と、前記電極積層部の積層途中となる位置に設けられ、前記電極積層部を構成するセラミック絶縁層よりも厚肉のセラミック絶縁層からなる中間層部と、前記電極積層部の積層方向に延びて前記複数の内部電極層に接続された複数のビア電極とを備えた電子部品であって、前記中間層部は、自身の厚さの1/10以下の粒径を持つ金属粒子がセラミック粒子に対して1体積%以上30体積%以下の割合で混合された材料により形成されていることを特徴とする電子部品がある。
【0009】
手段1に記載の発明によると、電極積層部の積層途中となる位置に厚肉のセラミック絶縁層からなる中間層部が設けられており、その中間層部には金属粒子が混合されている。この場合、金属粒子を混合させることで焼成時における中間層部の焼結開始温度が低下するため、中間層部をより緻密なセラミック焼結体とすることができる。また、焼成前の中間層部において、中間層部用のグリーンシートには、有機成分(バインダなどの有機物)が含まれているが、その有機成分に金属粒子が接触する。従って、焼成時には、金属粒子が有機物燃焼用の触媒として作用し、効率よく脱脂されて、有機成分が確実に燃焼する。なお、金属粒子の体積割合が1%未満となると、金属粒子と有機成分との接触が不足して、十分な触媒作用を得られなくなる。これに対して、本発明では1%以上の体積割合で金属粒子が混合されるため、上述した触媒作用を十分に得ることができる。また、金属粒子の体積割合が30%を超えると、中間層部において金属粒子同士が接触し、絶縁抵抗がとれなくなる。さらに、中間層部の緻密化がより低温から開始されてしまうため、電極積層部やカバー層部に対して焼成温度(例えば1100℃〜1400℃)における収縮率に大きな差異が生じる。この場合、電子部品に撓みや反りが発生してしまう。これに対して、本発明では、金属粒子の体積割合を30%以下とすることにより、中間層部において十分な絶縁抵抗を得ることができるとともに、撓みや反りを抑えることができる。また、金属粒子のサイズが必要以上に大きくなると、中間層部の電気絶縁性を確保できなくなる場合があるが、本発明では、中間層部の厚さの1/10以下の粒径を持つ金属粒子を使用することで、中間層部の電気絶縁性を十分に確保することができる。このように、本発明の電子部品では、中間層部における絶縁性を損なうことなくその緻密化が促進される。このため、内部電極層とセラミック絶縁層とのデラミネーションの発生を確実に防止することができる。
【0010】
金属粒子は、ニッケル、コバルト及び白金族から選択される少なくとも1種類の金属または2種類以上の合金の粒子からなることが好ましい。なお、白金族としては白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)の6元素を指す。このような金属粒子は、触媒作用を有するため、中間層部を確実に緻密化することができる。特に、ニッケルは、内部電極層の形成材料として一般的に用いられる材料であり、他の金属と比較して低コストである。このため、金属粒子としてニッケル粒子を用いると、電子部品の製造コストを抑えることができる。また、バナジウム、モリブデン、タングステン、マンガン、銅などの卑金属は、有機化合物の酸化反応触媒として知られているが、セラミックの焼成雰囲気では酸化、溶融等の問題があり使用できない。一方、ニッケルは、耐酸化性に優れ、高融点(1450℃)であるため、酸化、溶融等の問題も生じることはない。
【0011】
中間層部を構成する厚肉のセラミック絶縁層は、電極積層部を構成するセラミック絶縁層の20倍以下の厚みを有することが好ましい。この場合、電子部品における中間層部が占める厚みの割合が著しく大きくなるといった問題が回避される。このため、電子部品のサイズを製品の規格範囲内となるよう抑えることができる。
【0012】
中間層部は、電極積層部の積層方向における中央部位に位置することが好ましい。電子部品において、電極積層部の中央部ほど有機成分が抜け難いが、金属粒子を中間層部に混合させることでその触媒作用により有機成分を確実に燃焼させることができる。
【0013】
電子部品としては、セラミック絶縁層が誘電体層として機能するセラミックコンデンサを挙げることができる。また、セラミックコンデンサとしては、複数のビア電極が全体としてアレイ状に配置されたビアアレイタイプのセラミックコンデンサがより好ましい。このビアアレイタイプのセラミックコンデンサでは、コンデンサのインダクタンスの低減化が図られ、ノイズ吸収や電源変動平滑化のための高速電源供給が可能となる。また、コンデンサ全体の小型化が図りやすい。さらに、小さい割りに高静電容量が達成しやすく、より安定した電源供給が可能となる。
【0014】
電極積層部の外面を覆うカバー層部は、金属粒子を含んで形成されてもよいし、金属粒子を含まずに形成されてもよい。
【0015】
カバー層部には、中間層部に含まれる金属粒子よりも粒径が大きな金属粒子が添加されていてもよい。このようにすると、カバー層部の強度を十分に確保することができる。また、カバー層部は、電極積層部の表層側に設けられるため、金属粒子が少なくてもセラミック絶縁層は緻密化する。このため、カバー層部は、中間層部に含まれる金属粒子の体積割合よりも少なくなるよう金属粒子が添加されていてもよい。
【0016】
また、電極積層部をn分割(nは3以上の自然数)するよう複数の位置に中間層部を設け、中央部側に位置する中間層部ほど他の中間層部よりも金属粒子の体積割合が多くなるよう構成してもよい。このようにすると、各中間層部の緻密化を均一な状態に調整することが可能となる。
【0017】
電子部品を製造する際に使用する中間層部の形成材料としては、比表面積が0.4m/g以上であり、平均粒径が0.05μm以上の金属粉末を添加することが好ましい。このように金属粉末の比表面積を大きくすると、触媒効果を十分に得ることができる。また、金属粉末を小さくしすぎると、セラミック材料中に金属粉末を均一に分散させることが困難となるが、平均粒径が0.05μm以上の金属粉末を用いれば、セラミック材料中に金属粉末を均一に分散させることができる。さらに、セラミック材料中において金属粉末の分散が不十分となり金属粉末が偏って存在すると、その部分の燃焼開始温度が著しく低下する。この場合、その部分の焼結が過剰に進行して周囲の部分との収縮差が拡大してデラミネーションが発生しやすくなる。また、金属粉末同士が結合して凝集することで大きな金属粒子となりやすいため、中間層部の絶縁抵抗が低下することが懸念される。これに対して、平均粒径が0.05μm以上の金属粉末を用いれば、そのようなデラミネーションや絶縁抵抗の低下の問題を回避することができる。
【0018】
セラミック絶縁層としては、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、酸化チタン、ニオブ酸鉛などのうちの1つまたは2つ以上組み合わせた誘電体セラミックの焼結体を使用することが好ましい。誘電体セラミックの焼結体を使用した場合、静電容量の大きなセラミックコンデンサを実現しやすくなる。また、セラミック誘電体層として、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ほう素、炭化珪素、窒化珪素などといった高温焼成セラミックの焼結体を使用してもよいし、ホウケイ酸系ガラスやホウケイ酸鉛系ガラスにアルミナ等の無機セラミックフィラーを添加したガラスセラミックのような低温焼成セラミックの焼結体を使用してもよい。
【0019】
内部電極層、及びビア電極としては、メタライズ導体であることが好ましい。なお、メタライズ導体は、金属粉末を含む導体ペーストを従来周知の手法、例えばメタライズ印刷法で塗布した後に焼成することにより、形成される。同時焼成法によってメタライズ導体及びセラミック絶縁層を形成する場合、メタライズ導体中の金属粉末は、セラミック絶縁層の焼成温度よりも高融点である必要がある。例えば、セラミック絶縁層がいわゆる高温焼成セラミック(例えばチタン酸バリウム等)からなる場合には、メタライズ導体中の金属粉末として、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)等やそれらの合金が選択可能である。セラミック絶縁層がいわゆる低温焼成セラミック(例えばガラスセラミック等)からなる場合には、メタライズ導体中の金属粉末として、銅(Cu)または銀(Ag)等やそれらの合金が選択可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態におけるセラミックコンデンサの概略構成を示す断面図。
【図2】セラミックコンデンサを示す平面図。
【図3】ビア電極及び内部電極層を示す断面図。
【図4】実施例及び比較例のセラミックコンデンサの各評価結果を示す説明図。
【図5】実施例8のセラミックコンデンサの概略構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をセラミックコンデンサに具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2に示されるように、本実施の形態のセラミックコンデンサ101は、いわゆるビアアレイタイプのコンデンサ(電子部品)である。セラミックコンデンサ101を構成するセラミック焼結体104は、1つのコンデンサ主面102(図1では上面)、1つのコンデンサ裏面103(図1では下面)、及び、4つのコンデンサ側面106を有している。そのサイズは、例えば、縦5.0mm×横4.8mm×厚さ0.8mm程度である。
【0023】
セラミック焼結体104は、電極積層部107と、カバー層部108と、中間層部109とを備える。電極積層部107は、複数のセラミック誘電体層105(セラミック絶縁層)と、複数の内部電極層141,142とを交互に積層した構造を有し、セラミック焼結体104の上側と下側との2つの領域に分割して設けられている。電極積層部107に形成されている内部電極層は電源用内部電極層141とグランド用内部電極層142とを有し、セラミック誘電体層105を介してそれら電源用内部電極層141とグランド用内部電極層142とが交互に積層配置されている。なお、各電極積層部107において、内部電極層141,142の層数はそれぞれ100層程度となっている。
【0024】
セラミック誘電体層105は、高誘電率セラミックの一種であるチタン酸バリウムの焼結体からなり、電源用内部電極層141及びグランド用内部電極層142間の誘電体(絶縁体)として機能する。つまり、電源用内部電極層141とグランド用内部電極層142とは、セラミック誘電体層105を介して電気的に絶縁されている。電源用内部電極層141及びグランド用内部電極層142は、いずれもニッケルを主成分として形成されたメタライズ導体である。
【0025】
セラミック焼結体104には、多数のビア130が形成されている。これらのビア130は、セラミック焼結体104をその厚さ方向(積層方向)に貫通するとともに、セラミック焼結体104の全面にわたって格子状(アレイ状)に配置されている。各ビア130内には、セラミック焼結体104のコンデンサ主面102及びコンデンサ裏面103間を連通する複数のコンデンサ内ビア導体131,132(ビア電極)が、ニッケルを主材料として形成されている。なお本実施の形態において、ビア130の直径は約100μmに設定されているため、ビア導体131,132の直径も約100μmに設定されている。
【0026】
各電源用コンデンサ内ビア導体131は、電極積層部107の積層方向に延びて各電源用内部電極層141を貫通しており、それら同士を互いに電気的に接続している。各グランド用コンデンサ内ビア導体132は、電極積層部107の積層方向に延びて各グランド用内部電極層142を貫通しており、それら同士を互いに電気的に接続している。各電源用コンデンサ内ビア導体131及び各グランド用コンデンサ内ビア導体132は、全体としてアレイ状に配置されている。なお、図2では、説明の便宜上、コンデンサ内ビア導体131,132を5列×7列で図示したが、実際にはさらに多くの列が存在している。また、電極積層部107における複数の内部電極層141,142において、各ビア導体131,132が貫通する領域にクリアランスホール133,134が一層おきに設けられている。
【0027】
詳しくは、図1及び図3に示されるように、内部電極層141にはビア導体132が貫通する領域にクリアランスホール133が形成されており、内部電極層141とビア導体132とは電気的に絶縁されている。また同様に、内部電極層142にはビア導体131が貫通する領域にクリアランスホール134が形成されており、内部電極層142とビア導体131とは電気的に絶縁されている。クリアランスホール133,134内における内部電極層141,142とビア導体131,132との間には、セラミック誘電体層105が介在している。
【0028】
図1に示されるように、カバー層部108は、電極積層部107の積層方向の外面を覆うように設けられている。すなわち、上側のカバー層部108は、電極積層部107の上端面を覆うように設けられ、下側のカバー層部108は、電極積層部107の下端面を覆うように設けられている。カバー層部108は、複数のセラミック絶縁層150を積層した構造を有している。各セラミック絶縁層150は、電極積層部107におけるセラミック誘電体層105と同じ材料(具体的には、チタン酸バリウム)を用い、電極積層部107のセラミック誘電体層105よりも厚く形成されている。なお、本実施の形態において、セラミック誘電体層105の厚さは3μm程度であり、セラミック絶縁層150の厚さは20μm程度である。また、カバー層部108は、例えば3層のセラミック絶縁層150からなり、カバー層部108の厚さは60μm程度となっている。
【0029】
セラミック焼結体104のコンデンサ主面102となるカバー層部108の上面上には、複数の主面側電源用表層電極111と複数の主面側グランド用表層電極112とが設けられている。主面側電源用表層電極111は、電源用コンデンサ内ビア導体131におけるコンデンサ主面102側の端面に対して直接接続されており、主面側グランド用表層電極112は、グランド用コンデンサ内ビア導体132におけるコンデンサ主面102側の端面に対して直接接続されている。
【0030】
セラミック焼結体104のコンデンサ裏面103となるカバー層部108の下面上には、複数の裏面側電源用表層電極121と複数の裏面側グランド用表層電極122とが設けられている。裏面側電源用表層電極121は、電源用コンデンサ内ビア導体131におけるコンデンサ裏面103側の端面に対して直接接続されており、裏面側グランド用表層電極122は、グランド用コンデンサ内ビア導体132におけるコンデンサ裏面103側の端面に対して直接接続されている。よって、電源用表層電極111,121は電源用コンデンサ内ビア導体131及び電源用内部電極層141に導通しており、グランド用表層電極112,122はグランド用コンデンサ内ビア導体132及びグランド用内部電極層142に導通している。
【0031】
各表層電極111,112,121,122は、ニッケルを主材料として形成された円形の島状電極であり、表面が図示しない銅めっき層によって全体的に被覆されている。なお本実施の形態では、各表層電極111,112,121,122の直径が約320μmに設定されている。
【0032】
中間層部109は、電極積層部107を分割するようその電極積層部107の積層途中となる位置であって、セラミック焼結体104の中央部位となる位置に設けられている。つまり、本実施の形態のセラミック焼結体104では、上側の電極積層部107と下側の電極積層部107との間に中間層部109が配置されている。中間層部109は、電極積層部107のセラミック誘電体層105よりも厚く形成された厚肉のセラミック絶縁層152を複数積層してなり、電極積層部107のような内部電極層141,142は設けられていない。なお、本実施の形態において、厚肉のセラミック絶縁層152は20μm程度であり、中間層部109は、例えば3層のセラミック絶縁層152からなる。
【0033】
各セラミック絶縁層152は、電極積層部107におけるセラミック誘電体層105と同じ材料であるチタン酸バリウムのセラミック粒子に対して1体積%〜30体積%の割合で金属粒子154(例えば、ニッケルやコバルトなどの金属粒子)が混合された材料を用いて形成されている。本実施の形態の金属粒子154は、中間層部109の厚さ(例えば60μm)の1/10以下の粒径(例えば、6μm以下)を持つ粒子である。
【0034】
本実施の形態のセラミックコンデンサ101は、以下のように作製される。
【0035】
先ず、チタン酸バリウム(BaTiO)の粉末に、酸化マグネシウム(MgO)、シリカ(SiO)、二酸化マンガン(MnO)、酸化イットリウム(Y)などを混合した誘電体粉末(平均粒径が0.5μmの粉末)を準備する。そして、その誘電体粉末に分散剤及び可塑剤を加え、それらをエタノール及びトルエンの混合溶媒中にて湿式混合する。その後、ブチラール系バインダを添加してさらに混合する。そして、得られたスリラーをドクターブレード法によりシート状に成形して、グリーンシートを製造する。なおここでは、電極積層部用のグリーンシートとして、厚さが約5μm(焼成後では約3μm)のシートを成形するとともに、カバー層部用のグリーンシートとして、厚さが約30μm(焼成後では約20μm)のシートを成形する。
【0036】
中間層部用のグリーンシートは、上述した誘電体粉末に対して金属粒子154を添加する以外は、電極積層部用及びカバー層部用のグリーンシートと同様の手法によって作製される。この中間層部用のグリーンシートは、厚さが約30μm(焼成後では約20μm)のシート状に成形される。なお、金属粒子154の添加方法としては、金属単体の金属粉末として添加してもよいし、金属塩の形態で誘電体粉末と予め混合し還元仮焼することで添加してもよい。また、酸化物粉末の形態で添加し、同様に還元仮焼を行って金属粒子を得るようにしてもよい。
【0037】
そして、電極積層部用のグリーンシートに内部電極用ニッケルペーストをスクリーン印刷して乾燥させる。これにより、電源用内部電極層141となる電源用内部電極部と、グランド用内部電極層142となるグランド用内部電極部とが形成される。なおここで、内部電極用ニッケルペーストは、導電性粒子(平均粒径が0.2μmのニッケル粉末)と、共素地材料(平均粒径が0.1μmのチタン酸バリウム粉末)と、有機ビヒクルとを、12%:3%:85%の体積割合で湿式混合することで作製される。有機ビヒクルは、セルロース系樹脂と、有機溶剤(テルピネオール、ブチルカルビトール系溶剤)とからなる。湿式混合は三本ロール式の混合機を用いて行われ、その湿式混合によって、印刷時の粘度が約11Pa・sとなるよう内部電極用ニッケルペーストが調整される。また、各グリーンシートにおいて、電源用内部電極部とグランド用内部電極部とに設けられるクリアランスホールの口径は400μm程度である。
【0038】
電極積層部107に対応する部位では、電源用内部電極部が形成されたグリーンシートとグランド用内部電極部が形成されたグリーンシートとを交互に積層する。なお、上側の電極積層部107及び下側の電極積層部107についてそれぞれ100枚のグリーンシートが積層される。また、カバー層部108に対応する部位では、例えば3枚のカバー層部用のグリーンシートを積層するとともに、中間層部109に対応する部位では、例えば3枚の中間層部用のグリーンシートを積層する。この後、60℃〜80℃の温度条件で約300kgf/cmの押圧力をシート積層方向に付与することにより、各グリーンシートを一体化してグリーンシート積層体を形成する。なお、グリーンシート積層体の厚さは約1mmである。
【0039】
さらに、レーザー加工機を用いてグリーンシート積層体に口径120μmのビア130を500μmのピッチで多数個貫通形成する。その後、図示しないスクリーン印刷装置を用いて、ビア導体用ニッケルペーストを各ビア130内に充填する。なお、ビア導体用ニッケルペーストは、導電性粒子(平均粒径が2.5μmのニッケル粉末)と、共素地材料(平均粒径が0.5μmのチタン酸バリウム粉末)と、有機ビヒクルとを、40%:16%:44%の体積割合で湿式混合することで作製される。このビア導体用ニッケルペーストの粘度は約1000Pa・sである。
【0040】
次に、グリーンシート積層体をスクリーン印刷装置にセットするとともに、グリーンシート積層体の上面上にメッシュマスクを重ね合わせて配置する。メッシュマスクは、表層電極111,112,121,122を形成すべき箇所がメッシュ部(開口部)となっている。このメッシュマスクを配置した状態で、メッシュマスクの上面に表層電極用ペーストを供給した後、スキージの移動によってそのペーストを刷り込むようにする。この結果、メッシュマスクのメッシュ部を介してグリーンシート積層体の上面側に主面側電源用表層電極111及び主面側グランド用表層電極112となる表層電極部がパターン形成される。また同様に、グリーンシート積層体の下面上に表層電極用ペーストをスクリーン印刷し、グリーンシート積層体の下面側にて裏面側電源用表層電極121及び裏面側グランド用表層電極122となる表層電極部をパターン形成する。
【0041】
なお、表層電極用ペーストは、平均粒径が3μmのニッケル粉末と共素地材料(チタン酸バリウム粉末)との無機固形成分を80質量%の割合で含むとともに、有機ビヒクル成分を20質量%の割合で含んでいる。この表層電極用ペーストの粘度は約100Pa・sである。
【0042】
また、スクリーン印刷後において、グリーンシート積層体からメッシュマスクを引き離す。この後、スクリーン印刷装置からグリーンシート積層体を取り外してグリーンシート積層体の乾燥を行い、各表層電極部をある程度固化させる。次に、グリーンシート積層体を、大気中250℃〜300℃の温度で10時間〜20時間脱脂し、さらに水蒸気を含む還元雰囲気下にて1280℃の温度で所定時間焼成を行う。その結果、チタン酸バリウム及びペースト中のニッケルが同時焼結し、セラミック焼結体104となる。
【0043】
次に、得られたセラミック焼結体104が有する各表層電極111,112,121,122に対して無電解銅めっき(厚さ10μm程度)を行う。その結果、各表層電極111,112,121,122の上に銅めっき層が形成される。なおこの状態のものは、セラミックコンデンサ101となるべき製品領域を平面方向に沿って縦横に複数配列した多数個取り用のセラミック焼結体104(パネル状のセラミック焼結体)である。そして、このパネル状のセラミック焼結体104を分割することで、360個のセラミックコンデンサ101が同時に得られる。
【0044】
本発明者らは、上記の製造方法において、中間層部109に添加する金属粉末の粒径や種類を変更してセラミックコンデンサ101(実施例1〜16、比較例1〜8)を作製し、それらコンデンサ101について以下の評価1〜評価3を行った。その評価結果を図4に示している。
【0045】
評価1では、作製した全試料について異常個所(デラミネーション等の空隙)の有無を超音波探傷法にて判定し、異常個所のなかった試料の個数から歩留まりを求めた。なお、超音波探傷法とは、音響レンズにより集束した超音波パルスを試料に入射させてそのパルスの反射エコーを検出し、検出信号を画像処理することで映像を取得する非破壊検査方法である。次に、異常の判定を行った3〜5個の試料について断面を鏡面研磨し、さらにデジタル顕微鏡を用い、超音波探傷法で見つかった異常個所がセラミック誘電体層105と内部電極層141,142との間の剥離(デラミネーション)、またはセラミック誘電体層105中のクラックであることを確認した。
【0046】
評価2では、室温において20Vの電圧を30秒間印加して、評価1で異常の見つかった試料も含めた全ての試料の絶縁抵抗(Insulation Resistance)を測定した。ここで、1×10Ω以上の試料が97%以上の歩留まりの場合を合格(○)として以下の評価3を行い、97%未満の歩留まりの場合には不合格(×)として以下の評価3は行わなかった。
【0047】
評価3では、絶縁抵抗が1×10Ω以上であった100個の試料について、150℃の雰囲気温度で10V/μmの電界を印加して高温加速寿命試験(HALT:Highly Accelerated Life Test)を行った。故障の判定基準は、絶縁抵抗が1×10Ωを下回った時点とし、試料全体の平均故障寿命(MTTF:Mean Time To Failure)を算出した。この平均故障寿命の値が大きいものほど長寿命となる。
【0048】
またここで、焼成前の中間層部109に添加した金属粉末の平均粒径及び比表面積は、以下のようにして求めた。具体的には、走査型電子顕微鏡を用い、金属粉末が300個程度入る視野にてSEM写真を撮影し、そのSEM写真を画像解析することで金属粉末の平均粒径を算出した。金属粉末の比表面積は、従来周知のBET法により求めた。なお、BET法とは、気相吸着法による粉体の表面測定法の一つであり、吸着等温式を用いて、1gの試料が有する総表面積(比表面積)を算出する方法である。
【0049】
焼成後の中間層部109に存在する金属粒子154の体積割合及び平均粒径については、セラミック焼結体104の厚さ方向に切断した断面を鏡面研磨し、その断面画像を走査型電子顕微鏡を用いて撮影することで求める。具体的には、金属粒子154が100個程度入る視野で反射電子像を撮影する。そして、その視野内に占める金属相の面積割合を画像解析により算出し、10視野分の面積割合の平均値を金属粒子154の体積割合として推定している。また、金属粒子154の平均粒径は、金属粒子154が100個程度入る視野で撮影し、断面画像の画像解析によって算出した。
【0050】
図4に示されるように、実施例1〜16では、中間層部109における金属粒子154の体積割合が1.0%〜30%となるように金属粉末の添加量を調整してセラミックコンデンサ101を作製している。また、各実施例1〜16では、金属粒子154の粒径を中間層部109の厚さの1/10以下としている。
【0051】
より詳しくは、実施例1〜8では、金属粉末として平均粒径が0.4μm、比表面積が2.5m/gのニッケル(Ni)粉末を使用している。実施例9では、平均粒径が0.05μm、比表面積が13m/gのニッケル粉末を使用している。実施例10では、平均粒径が2.5μm、比表面積が0.4m/gのニッケル粉末を使用している。実施例11では、平均粒径が0.5μm、比表面積が2.3m/gのコバルト(Co)粉末を使用している。実施例12では、平均粒径が0.4μm、比表面積が2.5m/gのニッケル粉末と平均粒径が0.5μm、比表面積が2.0m/gのコバルト粉末とを1:1の割合で混合した金属粉末を使用している。実施例13では、ニッケルを90重量%、コバルトを10重量%含む合金からなり、平均粒径が0.7μm、比表面積が1.5m/gの金属粉末を使用している。実施例14では、平均粒径が0.5μm、比表面積が15m/gのロジウム(Rh)粉末を使用している。実施例15では、平均粒径が0.5μm、比表面積が1.2m/gのパラジウム(Pd)粉末を使用している。実施例16では、平均粒径が0.5μm、比表面積が2.9m/gの白金(Pt)粉末を使用している。
【0052】
また、実施例8については、電極積層部107を3分割するように2つの中間層部109を設けたセラミックコンデンサ101Aを作製している(図5参照)。このセラミックコンデンサ101Aでは、各中間層部109をそれぞれ20μmの厚さで形成している。また、実施例8以外の実施例1〜7,9〜16のセラミックコンデンサ101については、1つの中間層部109を厚さ方向の略中央部に60μmの厚さで形成している(図1参照)。
【0053】
実施例1〜16のセラミックコンデンサ101,101Aのように、触媒作用を持つ金属粒子154を中間層部109に添加し、その中間層部109における金属粒子154の体積割合を1%〜30%とすることで、セラミック焼成時における中間層部109の緻密化が可能となる。この結果、評価1のように、セラミック誘電体層105と内部電極層141,142との間のデラミネーションやセラミック誘電体層105中のクラックの発生を回避することができ、製品歩留まりを100%にすることができた。また、実施例1〜16のセラミックコンデンサ101,101Aでは、中間層部109に存在する金属粒子154の平均粒径が0.4μ〜2.5μmであり、中間層部109の厚さの1/10以下のサイズとなっている。このため、評価2において十分な絶縁抵抗を得ることができる。さらに、評価3の高温加速寿命においても119時間以上の寿命を確保することができた。
【0054】
一方、比較例1〜3では、実施例1〜8と同様に平均粒径が0.4μm、比表面積が2.5m/gのニッケル粉末を使用しているが、金属粒子154の体積割合が30%以上となるようにセラミックコンデンサ101を作製している。これら比較例1〜3のセラミックコンデンサ101では、中間層部109の緻密化が低温から開始されてしまうため、焼成温度における収縮率に差異が生じ、撓みや反り生じてしまう。この結果、評価1のように、デラミネーションやクラックが発生することで、製品歩留まりが低下する。また、中間層部109における金属粒子154の割合が多くなると、金属粒子154同士が接触する。このため、評価2のように絶縁抵抗がとれなくなる。
【0055】
比較例4では、実施例1〜8と同様に平均粒径が0.4μm、比表面積が2.5m/gのニッケル粉末を使用しているが、金属粒子154の体積割合が0.5%となるようにセラミックコンデンサ101を作製している。この場合、中間層部109における金属粒子154が少なく十分な触媒作用を得ることができない。このため、中間層部109における緻密化が困難となり、デラミネーションやクラックが発生して製品歩留まりが悪化する。さらに、実施例のセラミックコンデンサ101よりも高温加速寿命が短くなり、電子部品としての信頼性が低下する。
【0056】
また、比較例5では、平均粒径が7μm、比表面積が0.2m/gのニッケル粉末を使用し、金属粒子154の体積割合が10%となるようにセラミックコンデンサ101を作製している。このセラミックコンデンサ101では、金属粒子154の平均粒径が中間層部109の厚さの1/10以上となるため、十分な電気絶縁性を確保することができない。さらに、比較例6では、平均粒径が0.5μm、比表面積が2.0m/gの鉄(Fe)粉末を使用してセラミックコンデンサ101を作製している。この場合、セラミック焼成時にて鉄が酸化して膨張するため、作製した全てのセラミックコンデンサ101においてデラミネーションやクラックが発生してしまう。
【0057】
なお、比較例7では、中間層部109に金属粉末を添加しないでセラミックコンデンサ101を作製している。このセラミックコンデンサ101では、中間層部109の緻密化が困難であるため、デラミネーションやクラックが発生し、製品歩留まりが悪化する。また、実施例1〜16と比較すると、高温加速寿命も短くなる。また、比較例8では、中間層部109を形成しないでセラミックコンデンサを作製している。この場合、焼成時において内部電極層141,142とセラミック誘電体層105との収縮率の差によって生じる内部応力を中間層部109で吸収することができない。このため、作製される全てのセラミックコンデンサでデラミネーションやクラックが発生してしまう。
【0058】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0059】
(1)本実施の形態のセラミックコンデンサ101,101Aでは、電極積層部107の積層途中となる位置に厚肉のセラミック絶縁層152からなる中間層部109が設けられている。そして、その中間層部109には、セラミック粒子に対して1体積%以上30体積%以下の割合で金属粒子154が混合されている。このように、セラミック粒子に金属粒子154を含ませることで、中間層部109の焼結開始温度が低下するため、中間層部109をより緻密なセラミック焼結体とすることができる。また、焼成前のグリーンシート積層体において、中間層部109用のグリーンシートには、有機成分(バインダなどの有機物)が含まれているが、1%以上の体積割合で金属粒子154が混合されるため、その有機成分に金属粒子154が確実に接触する。本実施の形態で用いられる金属粒子154は、ニッケル、コバルト及び白金族から選択される少なくとも1種類の金属または2種類以上の合金の粒子からなる。従って、焼成時には、金属粒子154が有機物燃焼用の触媒として作用し、効率よく脱脂されて、有機成分が確実に燃焼する。また、金属粒子154の体積割合を30%以下とすることにより、中間層部109において十分な絶縁抵抗を得ることができるとともに、撓みや反りを抑えることができる。さらに、本実施の形態では、中間層部109の厚さの1/10以下の粒径を持つ金属粒子154を使用することで、中間層部109の電気絶縁性を十分に確保することができる。このように、本実施の形態のセラミックコンデンサ101,101Aでは、中間層部109における絶縁性を損なうことなくその緻密化が促進される。このため、内部電極層141,142とセラミック誘電体層105とのデラミネーションの発生やセラミック誘電体層105中のクラックの発生を確実に防止することができる。
【0060】
(2)本実施の形態のセラミックコンデンサ101,101Aでは、電極積層部107において、コンデンサ内ビア導体131,132が貫通する領域にクリアランスホール133,134が一層おきに設けられている。従って、電極積層部107において、コンデンサ内ビア導体131,132の周囲は内部電極層141,142の層数が半分になり、その部分だけ厚さが薄く形成される。本実施の形態では、電極積層部107の積層途中に厚肉のセラミック絶縁層152からなる中間層部109が設けられているので、その厚肉のセラミック絶縁層152の延びによって厚みの差を抑制することができる。この結果、電極積層部107における複数のセラミック誘電体層105の曲げが少なくなり、曲げ部分でのクラックの発生を回避することができる。また、中間層部109のセラミック絶縁層152が電極積層部107のセラミック誘電体層105の20倍以下(本実施の形態では約7倍)の厚みであるため、セラミックコンデンサ101における中間層部109が占める厚みの割合が著しく大きくなるといった問題が回避される。このため、セラミックコンデンサ101のサイズを製品の規格範囲内となるよう抑えることができる。
【0061】
(3)本実施の形態のセラミックコンデンサ101では、電極積層部107の中央部位に中間層部109が位置している。この場合、焼成前のグリーンシート積層体においてその中央部ほど有機成分が抜け難くなる。しかし、本実施の形態のように中間層部109用グリーンシートに金属粒子154を混合させることで、その触媒作用により有機成分を確実に燃焼させることができる。
【0062】
(4)本実施の形態の場合、中間層部用のグリーンシートの形成材料として、比表面積が0.4m/g以上であり、平均粒径が0.05μm以上の金属粉末を添加している。このように、金属粉末の比表面積を大きくすると、触媒効果を十分に得ることができる。また、金属粉末の平均粒径が0.05μm以上であるので、セラミック材料中に金属粉末を均一に分散させることができる。この結果、焼成時において、金属粉末同士が結合して凝集するといった問題が回避され、絶縁抵抗の低下を防止することができる。また、グリーンシートにおける有機成分の燃焼開始温度が均一になるので、セラミックの緻密化が均一に進行し、デラミネーションの発生が回避される。
【0063】
(5)本実施の形態のセラミックコンデンサ101,101Aでは、電源用コンデンサ内ビア導体131及びグランド用コンデンサ内ビア導体132がそれぞれ交互に隣接して配置されている。また、電源用コンデンサ内ビア導体131及びグランド用コンデンサ内ビア導体132を流れる電流の方向が互いに逆向きになるように設定されている。このようにすると、コンデンサ101におけるインダクタンス成分の低減化が図られ、イズ吸収や電源変動平滑化のための高速電源供給が可能となる。また、コンデンサ全体の小型化が図りやすい。さらに、小さい割りに高静電容量が達成しやすく、より安定した電源供給が可能となる。
【0064】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0065】
・上記実施の形態のセラミックコンデンサ101,101Aでは、電極積層部107を2分割または3分割するように1つまたは2つの中間層部109を設けるものであったが、これに限定されるものではない。電極積層部107を4分割以上にするように3つ以上の中間層部109を設けてもよい。また、3つ以上の中間層部109を設ける場合、中央部側に配置される中間層部109ほどセラミックの緻密化が困難となる。このため、中央部側に位置する中間層部109ほど他の中間層部109よりも金属粒子154の体積割合が多くなるようセラミックコンデンサを構成してもよい。このようにすると、各中間層部109においてセラミックの緻密化を過不足なく行うことができ、電子部品としての信頼性を高めることができる。
【0066】
・上記実施の形態のセラミックコンデンサ101では、カバー層部108を構成するセラミック絶縁層150は、金属粒子154を含まずに形成されていたが、中間層部109と同様に金属粒子154を含有するセラミック絶縁層にてカバー層部108を構成してもよい。この場合、中間層部109と同じサイズの粒径の金属粒子154を含んでカバー層部108を形成してもよいし、中間層部109よりも粒径が大きな金属粒子154を含んでカバー層部108を形成してもよい。ここで、金属粒子154の粒径を大きくすると、カバー層部108の強度を十分に高めることができ、実用上好ましいものとなる。また、カバー層部108は表層部にあるため、中間層部109のような緻密化の問題は生じ難く、セラミック絶縁層150に含まれる有機成分を容易に脱脂できる。このため、カバー層部108のセラミック絶縁層150において、金属粒子154の体積割合が中間層部109のセラミック絶縁層152よりも小さくなるように金属粒子154を添加してもよい。
【0067】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施の形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0068】
(1)手段1において、前記金属粒子は、有機物燃焼用触媒の機能を有することを特徴とする電子部品。
【0069】
(2)手段1において、前記カバー層部は、前記金属粒子を含まないことを特徴とする電子部品。
【0070】
(3)手段1において、前記カバー層部には、前記中間層部に含まれる前記金属粒子よりも粒径が大きな金属粒子が添加されていることを特徴とする電子部品。
【0071】
(4)手段1において、前記カバー層部には、前記中間層部に含まれる前記金属粒子の体積割合よりも少なくなるよう前記金属粒子が添加されていることを特徴とする電子部品。
【0072】
(5)手段1において、前記中間層部は、前記電極積層部をn分割(nは3以上の自然数)するよう複数の位置に設けられ、中央部位に位置する中間層部は、他の中間層部よりも金属粒子の体積割合が多くなっていることを特徴とする電子部品。
【0073】
(6)手段1に記載の電子部品の製造方法であって、前記中間層部の形成材料に、比表面積が0.4m/g以上であり、平均粒径が0.05μm以上の金属粉末を添加するようにしたことを特徴とする電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0074】
101,101A…電子部品としてのセラミックコンデンサ
105…セラミック絶縁層としてのセラミック誘電体層
107…電極積層部
108…カバー層部
109…中間層部
131…ビア電極としての電源用コンデンサ内ビア導体
132…ビア電極としてのグランド用コンデンサ内ビア導体
141…内部電極層としての電源用内部電極層
142…内部電極層としてのグランド用内部電極層
150…カバー層部を構成するセラミック絶縁層
152…中間層部を構成する厚肉のセラミック絶縁層
154…金属粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック絶縁層及び複数の内部電極層を積層してなる電極積層部と、
前記電極積層部の積層方向の外面を覆うように設けられたセラミック絶縁層からなるカバー層部と、
前記電極積層部の積層途中となる位置に設けられ、前記電極積層部を構成するセラミック絶縁層よりも厚肉のセラミック絶縁層からなる中間層部と、
前記電極積層部の積層方向に延びて前記複数の内部電極層に接続された複数のビア電極とを備えた電子部品であって、
前記中間層部は、自身の厚さの1/10以下の粒径を持つ金属粒子がセラミック粒子に対して1体積%以上30体積%以下の割合で混合された材料により形成されている
ことを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記金属粒子は、ニッケル、コバルト及び白金族から選択される少なくとも1種類の金属または2種類以上の合金の粒子からなることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記中間層部を構成する厚肉のセラミック絶縁層は、前記電極積層部を構成するセラミック絶縁層の20倍以下の厚みを有することを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記中間層部は、前記電極積層部の積層方向における中央部位に位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記電子部品は、前記セラミック絶縁層が誘電体層として機能するセラミックコンデンサであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電子部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−4549(P2013−4549A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130821(P2011−130821)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】