電極が埋設されたウエーハの加工方法
【課題】電極を被覆している二酸化珪素膜をエッチングすることなく、また電極をエッチングすることなくシリコン基板の裏面から電極を露出させることができる加工方法を提供する。
【解決手段】ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、シリコン基板21の裏面を電極214を露出させることなく研削する工程と、シリコン基板の裏面をエッチング液によってエッチングしシリコン基板の裏面に電極を露出させる工程とを含み、エッチング工程は、シリコンに対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン基板をエッチングして二酸化珪素215膜が被覆された電極をシリコン基板の裏面に不完全に露出させる工程と、シリコンをエッチングするとともに二酸化珪素に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン基板をエッチングして二酸化珪素膜で被覆された電極をシリコン基板の裏面から突出させる工程とを含んでいる。
【解決手段】ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、シリコン基板21の裏面を電極214を露出させることなく研削する工程と、シリコン基板の裏面をエッチング液によってエッチングしシリコン基板の裏面に電極を露出させる工程とを含み、エッチング工程は、シリコンに対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン基板をエッチングして二酸化珪素215膜が被覆された電極をシリコン基板の裏面に不完全に露出させる工程と、シリコンをエッチングするとともに二酸化珪素に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン基板をエッチングして二酸化珪素膜で被覆された電極をシリコン基板の裏面から突出させる工程とを含んでいる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板の表面に形成された複数のデバイスにそれぞれ設けられたボンディングパッドに接続する電極が埋設されたウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状であるシリコン(Si)基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の半導体デバイスを形成する。このようにシリコン(Si)基板の表面に複数の半導体デバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切断することにより半導体デバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
装置の小型化、高機能化を図るため、複数のデバイスを積層し、積層されたデバイスに設けられたボンディングパッドを接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造はシリコン(Si)基板におけるボンディングパッドが設けられた箇所に孔(ビアホール)を形成し、この孔(ビアホール)にボンディングパッドと接続する銅やアルミニウム等の電極を二酸化珪素(SiO2)からなる絶縁材によって被覆して埋め込む構成である。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
上述したようにシリコン(Si)基板に埋設された銅(Cu)電極をシリコン(Si)基板の裏面に露出させるためには、シリコン(Si)基板の裏面を研削して裏面に銅(Cu)電極を露出させ、その後、シリコン(Si)に対してはエッチングレートが高く銅(Cu)に対してはエッチングレートが低い水酸化カリウム(KOH)をエッチング液としてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングすることにより、シリコン(Si)基板の裏面から銅(Cu)電極を5〜10μm突出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−163323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、水酸化カリウム(KOH)は二酸化珪素(SiO2)に対してもエッチングレートが高いため、銅(Cu)電極を被覆している絶縁材としての二酸化珪素(SiO2)膜をエッチングして、シリコン(Si)基板と銅(Cu)電極との絶縁性を低下させるという問題がある。
一方、二酸化珪素(SiO2)に対してもエッチングレートが低いテトラ メチル アンモニウム ハイドロオキサイト(TMAH)をエッチング液として使用すると、銅(Cu)に対してエッチングレートが高いため、銅(Cu)電極をエッチングしてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、電極を被覆している絶縁材としての二酸化珪素(SiO2)膜をエッチングして絶縁性を低下させることなく、また電極をエッチングすることなくシリコン(Si)基板の裏面から電極を露出させることができる電極が埋設されたウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、シリコン(Si)基板の表面に形成された複数のデバイスにそれぞれ設けられたボンディングパッドと接続し二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極がシリコン(Si)基板に埋設されているウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材が貼着されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面を電極を露出させることなく研削する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面をエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させるエッチング工程と、を含み、
該エッチング工程は、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面に不完全に露出させる第1のエッチング工程と、該第1のエッチング工程を実施した後にシリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜で被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面から突出させる第2のエッチング工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする電極が埋設されたウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
上記電極は銅(Cu)によって形成されており、上記第1のエッチング工程はエッチング液としてフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を用いて実施し、上記第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する。
また、上記電極は銅(Cu)によって形成されており、上記第1のエッチング工程はエッチング液として水酸化カリウム(KOH) を用いて実施し、上記第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する。
上記裏面研削工程を実施した後、エッチング工程を実施する前にシリコン(Si)基板の裏面を研磨し、シリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させることなく裏面研削工程によってシリコン(Si)基板の裏面に形成された研削痕を除去する研磨工程を実施することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法においては、ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、保護部材が貼着されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面を電極を露出させることなく研削する裏面研削工程と、ウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面をエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させるエッチング工程とを含み、エッチング工程は、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面に不完全に露出させる第1のエッチング工程と、第1のエッチング工程を実施した後にシリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜で被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面から突出させる第2のエッチング工程とを含んでいるので、第2のエッチング工程において電極を被覆している二酸化珪素(SiO2)膜のエッチング速度が遅いため、電極はエッチングされることなくシリコン(Si)基板の裏面から突出せしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法によって加工されるウエーハの斜視図。
【図2】図1に示すウエーハの要部を拡大して示す断面図。
【図3】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における保護部材貼着工程の説明図。
【図4】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における裏面研削工程の説明図。
【図5】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における研磨工程の説明図。
【図6】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法におけるエッチング工程を実施するためのエッチング装置の斜視図。
【図7】図6に示すエッチング装置のスピンナーテーブルを被加工物搬入・搬出位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図8】図6に示すエッチング装置のスピンナーテーブルを作業位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図9】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における第1のエッチング工程の説明図。
【図10】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における第2のエッチング工程の説明図。
【図11】フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸、水酸化カリウム(KOH)およびテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)のシリコン(Si)と二酸化珪素(SiO2)と銅(Cu)に対するエッチングレートについて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法によって加工されるウエーハの斜視図が示されている。図1に示すウエーハ2は、厚みが例えば600μmのシリコン(Si)基板21の表面21aに格子状に形成されたストリート211によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス212がそれぞれ形成されている。このように形成されたデバイス212の表面には、複数のボンディングパッド213が設けられている。このように形成されたウエーハ2は、図2に示すようにシリコン(Si)基板21に上記ボンディングパッド213に接続する銅(Cu)電極214が埋設されている。なお、シリコン(Si)基板21に埋設される銅(Cu)電極214は、長さが例えば50μmに形成されており、絶縁膜としての二酸化珪素(SiO2)膜215が150nm程度の厚みで被覆されている。
【0014】
以下、上述したウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面に銅(Cu)電極214を突出して露出させる加工方法について説明する。
先ず、上記ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の表面21aに形成されたデバイス212を保護するために、図3に示すようにウエーハ2の表面に保護テープ等の保護部材3を貼着する保護部材貼着工程を実施する。
【0015】
上述した保護部材貼着工程を実施したならば、ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面を銅(Cu)電極214を露出させることなく研削する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、図示の実施形態においては図4の(a)に示す研削装置4を用いて実施する。図4の(a)に示す研削装置4は、被加工物を保持するチャックテーブル41と、該チャックテーブル41に保持された被加工物を研削する研削手段42を具備している。チャックテーブル41は、上面に被加工物を吸引保持し図4の(a)において矢印41aで示す方向に回転せしめられる。研削手段42は、スピンドルハウジング421と、該スピンドルハウジング421に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル422と、該回転スピンドル422の下端に装着されたマウンター423と、該マウンター423の下面に取り付けられた研削ホイール424とを具備している。この研削ホイール424は、円環状の基台425と、該基台425の下面に環状に装着された研削砥石426とからなっており、基台425がマウンター423の下面に締結ボルト427によって取り付けられている。
【0016】
上述した研削装置4を用いて上記裏面研削工程を実施するには、図4の(a)に示すようにチャックテーブル41の上面(保持面)に上記保護部材貼着工程が実施されたウエーハ2の表面に貼着した保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル41上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、チャックテーブル41上に吸引保持されたウエーハ2は、シリコン(Si)基板21の裏面21bが上側となる。このようにチャックテーブル41上にウエーハ2を吸引保持したならば、チャックテーブル41を図4の(a)において矢印41aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段42の研削ホイール424を図4の(a)において矢印424aで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめ、図4の(b)に示すように研削砥石426の研削面(下面)を被加工面であるシリコン(Si)基板21の裏面21bに接触させて、研削ホイール424を図4の(a)および(b)において矢印424bで示すように所定の研削送り速度(例えば、3μm/秒)で下方(チャックテーブル41の保持面に対し垂直な方向)に例えば535μm研削送りする。このとき、研削ホイール424の研削砥石426による研削加工部には、研削水が供給される。この裏面研削工程においてはウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば535μm研削される。従って、図4の(c)に示すようにウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の厚みは65μmとなるが、長さが50μmの銅(Cu)電極214はシリコン(Si)基板21の裏面21bに露出しない。
【0017】
上述した裏面研削工程を実施したならば、裏面研削工程においてシリコン(Si)基板21の裏面21bに形成された研削痕を除去し、シリコン(Si)基板21の裏面21bを平坦にする研磨工程を実施する。この研磨工程は、図5の(a)に示す研磨装置5を用いて実施する。なお、図5の(a)に示す研磨装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を研磨する研磨手段52を具備している。チャックテーブル51は、上面に被加工物を吸引保持し図5の(a)において矢印51aで示す方向に回転せしめられる。研磨手段52は、スピンドルハウジング521と、該スピンドルハウジング521に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル522と、該回転スピンドル522の下端に装着されたマウンター523と、該マウンター523の下面に取り付けられた研磨工具524とを具備している。この研削工具524は、円板状の基台525と、該基台525の下面に環状に装着された研磨パッド526とからなっており、基台525がマウンター523の下面に締結ボルト527によって取り付けられている。
【0018】
上述した研磨装置5を用いて上記研磨工程を実施するには、図5の(a)に示すようにチャックテーブル51の上面(保持面)に上記裏面研削工程が実施されたウエーハ2の表面に貼着した保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル51上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、チャックテーブル51上に吸引保持されたウエーハ2は、シリコン(Si)基板21の裏面21bが上側となる。このようにチャックテーブル51上にウエーハ2を吸引保持したならば、チャックテーブル51を図5の(a)において矢印51aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研磨手段52の研磨工具524を図5の(a)において矢印524aで示す方向に例えば3000rpmで回転せしめ、図5の(b)に示すように研磨パッド526の研磨面(下面)を被加工面であるシリコン(Si)基板21の裏面21bに接触させて、研磨工具524を図7の(a)および(b)において矢印524bで示すように例えば10ニュートンの研磨圧力で押圧する。このとき、研磨パッド526の研磨面とシリコン(Si)基板21の裏面21bとの間には研磨液が供給される。この研磨工程においてはウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば6μm研磨される。従って、図5の(c)に示すようにウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の厚みは59μmとなるが、長さが50μmの銅(Cu)電極214はシリコン(Si)基板21の裏面21bに露出しない。
【0019】
次に、ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21aをエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板21の裏面21bに銅(Cu)電極214を露出させるエッチング工程を実施する。このエッチング工程は、図6に示すエッチング工程装置を用いて実施する。図6に示すエッチング装置6は、スピンナーテーブル機構61と、該スピンナーテーブル機構61を包囲して配設されたエッチング液受け手段62を具備している。スピンナーテーブル機構61は、スピンナーテーブル611と、該スピンナーテーブル611を回転駆動する回転駆動手段としての電動モータ612と、該電動モータ612を上下方向に移動可能に支持する支持手段613を具備している。スピンナーテーブル611は多孔性材料から形成された吸着チャック611aを具備しており、この吸着チャック611aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナーテーブル611は、吸着チャック611aに被加工物であるウエーハを載置し図示しない吸引手段により負圧を作用せしめることにより吸着チャック611a上にウエーハを保持する。電動モータ612は、その駆動軸612aの上端に上記スピンナーテーブル611を連結する。上記支持手段613は、複数本(図示の実施形態においては3本)の支持脚613aと、該支持脚613aとそれぞれ連結し電動モータ612に取り付けられた複数本(図示の実施形態においては3本)のエアシリンダ613bとからなっている。このように構成された支持手段613は、エアシリンダ613bを作動することにより、電動モータ612およびスピンナーテーブル611を図6および図7に示す上方位置である被加工物搬入・搬出位置と、図8に示す下方位置である作業位置に位置付ける。
【0020】
上記エッチング液受け手段62は、エッチング液受け容器621と、該エッチング液受け容器621を支持する3本(図6には2本が示されている)の支持脚622と、上記電動モータ612の駆動軸612aに装着されたカバー部材623とを具備している。エッチング液受け容器621は、図7および図8に示すように円筒状の外側壁621aと底壁621bと内側壁621cとからなっている。底壁621bの中央部には上記電動モータ612の駆動軸612aが挿通する穴621dが設けられおり、この穴621dの周縁から上方に突出する内側壁621cが形成されている。また、図6に示すように底壁621bには排液口621eが設けられており、この排液口621eにドレンホース624が接続されている。上記カバー部材623は、円盤状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部623aを備えておる。このように構成されたカバー部材623は、電動モータ612およびスピンナーテーブル611が図8に示す作業位置に位置付けられると、カバー部623aが上記エッチング液受け容器621を構成する内側壁621cの外側に隙間をもって重合するように位置付けられる。
【0021】
図示の実施形態におけるエッチング装置6は、上記スピンナーテーブル611に保持された被加工物に第1のエッチング液を供給する第1のエッチング液供給機構64を具備している。第1のエッチング液供給機構64は、スピンナーテーブル611に保持された被加工物に向けて第1のエッチング液を供給する第1のエッチング液供給ノズル641と、該第1のエッチング液供給ノズル641を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ642を備えており、第1のエッチング液供給ノズル641が第1のエッチング液供給手段640(図7および図8参照)に接続されている。第1のエッチング液供給ノズル641は、水平に延びるノズル部641aと、該ノズル部641aから下方に延びる支持部641bとからなっており、支持部641bが上記エッチング液受け容器621を構成する底壁621bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され第1のエッチング液供給手段640(図7および図8参照)に接続されている。なお、第1のエッチング液供給ノズル641の支持部641bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部641bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。なお、上記第1のエッチング液供給手段640は、図示の実施形態においてはフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸または水酸化カリウム(KOH)を供給する。
【0022】
図示の実施形態におけるエッチング装置6は、上記スピンナーテーブル611に保持された被加工物に第2のエッチング液を供給する第2のエッチング液供給機構65を具備している。第2のエッチング液供給機構65は、スピンナーテーブル611に保持された被加工物に向けて第2のエッチング液を供給する第2のエッチング液供給ノズル651と、該第2のエッチング液供給ノズル651を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ652を備えており、第2のエッチング液供給ノズル651が第2のエッチング液供給手段650(図7および図8参照)に接続されている。第2のエッチング液供給ノズル651は、水平に延びるノズル部651aと、該ノズル部651aから下方に延びる支持部651bとからなっており、支持部651bが上記エッチング液受け容器621を構成する底壁621bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され第2のエッチング液供給手段650(図7および図8参照)に接続されている。なお、第2のエッチング液供給ノズル651の支持部651bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部651bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。なお、上記第2のエッチング液供給手段650は、図示の実施形態においてはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を供給する。
【0023】
図示の実施形態におけるエッチング装置6は、上記スピンナーテーブル611に保持された被加工物に水を供給するための洗浄水供給機構66を具備している。洗浄水供給機構66は、スピンナーテーブル611に保持された被加工物に向けて洗浄水を供給する洗浄水供給ノズル661と、該洗浄水供給ノズル661を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ662を備えており、該洗浄水供給ノズル661が洗浄水供給手段660(図7および図8参照)に接続されている。洗浄水供給ノズル661は、水平に延び先端部が下方に屈曲されたノズル部661aと、該ノズル部661aの基端から下方に延びる支持部661bとからなっており、支持部661bが上記エッチング液受け容器621を構成する底壁621bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され洗浄水供給手段660(図7および図8参照)に接続されている。なお、洗浄水供給ノズル661の支持部661bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部661bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0024】
上述したエッチング装置6を用いて上記エッチング工程を実施するに際し、エッチング装置6の第1のエッチング液供給手段640によって供給されるフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸または水酸化カリウム(KOH)および第2のエッチング液供給手段650によって供給されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)のシリコン(Si)と二酸化珪素(SiO2)と銅(Cu)に対するエッチングレートについて、図11を参照して説明する。図11から判るように、フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸および水酸化カリウム(KOH)はシリコン(Si)に対するエッチングレートが高い。また、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)はシリコン(Si)に対するエッチングレートはフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸または水酸化カリウム(KOH)程高くはないがシリコン(Si)をエッチングすることができるとともに、二酸化珪素(SiO2)に対するエッチングレートが非常に低いことが判る。
【0025】
以下、上述したエッチング装置6を用いて実施するエッチング工程について説明する。エッチング工程を実施するには、上述した研磨工程が実施されたウエーハ2(表面に保護部材3が貼着されている)の保護部材3側をエッチング装置6を構成するスピンナーテーブル611の吸着チャック611a上に載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック611a上にウエーハ2を保護部材3を介して吸引保持する。従って、吸着チャック611a上に保護部材3を介して吸引保持されたウエーハ2は、シリコン(Si)基板21の裏面21bが上側となる。このとき、スピンナーテーブル611は図7に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けられており、第1のエッチング液供給ノズル641と第2のエッチング液供給ノズル651および洗浄水供給ノズル661は図7および図8に示すようにスピンナーテーブル611の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0026】
エッチング装置6を構成するスピンナーテーブル611の吸着チャック611a上にウエーハ2を保護部材3を介して吸引保持したならば、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板21の裏面21bをエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜215が被覆された銅(Cu)電極214をシリコン(Si)基板21の裏面21bに不完全に露出させる第1のエッチング工程を実施する。この第1のエッチング工程を実施するには、図9の(a)に示すように吸着チャック611a上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持したスピンナーテーブル611を作業位置に位置付けるとともに、第1のエッチング液供給ノズル641のノズル部641aをスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の中央部上方に位置付ける。次に、電動モータ612を作動してスピンナーテーブル611を矢印Aで示す方向に例えば100rpmの回転速度で回転するとともに、第1のエッチング液供給手段640を作動してフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を第1のエッチング液供給ノズル641に1分間に1リットルの割合(1リットル/分)で供給する。このようにして第1のエッチング液供給ノズル641に供給されたフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸は、ノズル部641aからスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給される。このようにしてシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給されフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸は、遠心力によって外周に向けて移動しつつシリコン(Si)基板21の裏面21bをエッチングする。このようにして第1のエッチング工程を3分間実施することにより、図9の(b)に示すようにシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば9μmエッチングされ、ウエーハ2の厚みは例えば50μmとなり、二酸化珪素(SiO2)膜215が被覆された銅(Cu)電極214がシリコン(Si)基板21の裏面21bに僅かに露出する。なお、上述した実施形態においてはエッチング液としてフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を用いた例を示したが、第1のエッチング工程においてはシリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液として水酸化カリウム(KOH)を用いてもよい。
【0027】
上述したように第1のエッチング工程を実施したならば、シリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜215で被覆された銅(Cu)電極214をシリコン(Si)基板21の裏面21bから突出させる第2のエッチング工程を実施する。この第2のエッチング工程を実施するには、図10の(a)に示すように第1のエッチング液供給ノズル641を待機位置に位置付け、第2のエッチング液供給ノズル651をスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の中央部上方に位置付ける。次に、電動モータ612を作動してスピンナーテーブル611を矢印Aで示す方向に例えば100rpmの回転速度で回転するとともに、第2のエッチング液供給手段650を作動してテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を第2のエッチング液供給ノズル651に1分間に1リットルの割合(1リットル/分)で供給する。このようにして第2のエッチング液供給ノズル651に供給されたテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)は、ノズル部651aからスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給される。このようにしてシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給されたテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)は、遠心力によって外周に向けて移動しつつシリコン(Si)基板21の裏面21bをエッチングする。このようにして第1のエッチング工程を5分間実施することにより、図10の(b)に示すようにシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば5μmエッチングされ、二酸化珪素(SiO2)膜215が被覆された銅(Cu)電極214がシリコン(Si)基板21の裏面21bから5μm突出せしめられる。このように第2のエッチング工程において用いるエッチング液としてのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)は、シリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低くエッチング時間も短いので、銅(Cu)電極214に被覆された二酸化珪素(SiO2)膜のエッチング速度が遅いため、銅(Cu)電極214はエッチングされることなく維持される。
【0028】
上述したように第2のエッチング工程を実施したならば、エッチング加工されたウエーハ2を洗浄する洗浄工程を実施する。この洗浄工程を実施するには、第2のエッチング液供給ノズル651を待機位置に位置付け、洗浄水供給機構66を構成する洗浄水供給ノズル661のノズル部661aをスピンナーテーブル611上に保持されたウエーハ2の中心部上方に位置付ける。そして、スピンナーテーブル611を例えば800rpmの回転速度で回転しつつ洗浄水供給手段660を作動して、洗浄水供給ノズル661のノズル部661aから洗浄水を噴出する。なお、ノズル部661aを所謂2流体ノズルで構成し0.2MPa程度の圧力の洗浄水を供給するとともに、0.3〜0.5MPa程度の圧力のエアーを供給するようにすれば、洗浄水がエアーの圧力で噴出してウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bを効果的に洗浄することができる。このとき、電動モータ662を作動して洗浄水供給ノズル661のノズル部661aから噴出された洗浄水がスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2の中心に当たる位置から外周部に当たる位置までの所要角度範囲で揺動せしめる。この結果、ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bを確実に洗浄することができる。
【0029】
上述したようにエッチング加工されたウエーハ2を洗浄したならば、スピンナーテーブル611の回転を停止するとともに、洗浄水供給ノズル661を待機位置に位置付ける。そして、スピンナーテーブル611を図7に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル611に保持されているウエーハ2の吸引保持を解除する。次に、スピンナーテーブル611上の加工後のウエーハ2は、適宜の搬送手段によって、次工程に搬送される。
【符号の説明】
【0030】
2:ウエーハ
21:シリコン(Si)基板
212:デバイス
213:ボンディングパッド
214:銅(Cu)電極
215:二酸化珪素(SiO2)膜
3:保護部材
4:研削装置
41:研削装置のチャックテーブル
42:研削手段
424:研削ホイール
5:研磨装置
51:研磨装置のチャックテーブル
52:研磨手段
524:研磨工具
6:エッチング装置
61:スピンナーテーブル機構
611:スピンナーテーブル
62:エッチング液受け手段
64:第1のエッチング液供給機構
641:第1のエッチング液供給ノズル
65:第2のエッチング液供給機構
651:第2のエッチング液供給ノズル
66:洗浄水供給機構
661:洗浄水供給ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板の表面に形成された複数のデバイスにそれぞれ設けられたボンディングパッドに接続する電極が埋設されたウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状であるシリコン(Si)基板の表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等の半導体デバイスを形成する。このようにシリコン(Si)基板の表面に複数の半導体デバイスが形成されたウエーハをストリートに沿って切断することにより半導体デバイスが形成された領域を分割して個々の半導体デバイスを製造している。
【0003】
装置の小型化、高機能化を図るため、複数のデバイスを積層し、積層されたデバイスに設けられたボンディングパッドを接続するモジュール構造が実用化されている。このモジュール構造はシリコン(Si)基板におけるボンディングパッドが設けられた箇所に孔(ビアホール)を形成し、この孔(ビアホール)にボンディングパッドと接続する銅やアルミニウム等の電極を二酸化珪素(SiO2)からなる絶縁材によって被覆して埋め込む構成である。(例えば、特許文献1参照。)
【0004】
上述したようにシリコン(Si)基板に埋設された銅(Cu)電極をシリコン(Si)基板の裏面に露出させるためには、シリコン(Si)基板の裏面を研削して裏面に銅(Cu)電極を露出させ、その後、シリコン(Si)に対してはエッチングレートが高く銅(Cu)に対してはエッチングレートが低い水酸化カリウム(KOH)をエッチング液としてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングすることにより、シリコン(Si)基板の裏面から銅(Cu)電極を5〜10μm突出させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−163323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
而して、水酸化カリウム(KOH)は二酸化珪素(SiO2)に対してもエッチングレートが高いため、銅(Cu)電極を被覆している絶縁材としての二酸化珪素(SiO2)膜をエッチングして、シリコン(Si)基板と銅(Cu)電極との絶縁性を低下させるという問題がある。
一方、二酸化珪素(SiO2)に対してもエッチングレートが低いテトラ メチル アンモニウム ハイドロオキサイト(TMAH)をエッチング液として使用すると、銅(Cu)に対してエッチングレートが高いため、銅(Cu)電極をエッチングしてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、電極を被覆している絶縁材としての二酸化珪素(SiO2)膜をエッチングして絶縁性を低下させることなく、また電極をエッチングすることなくシリコン(Si)基板の裏面から電極を露出させることができる電極が埋設されたウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、シリコン(Si)基板の表面に形成された複数のデバイスにそれぞれ設けられたボンディングパッドと接続し二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極がシリコン(Si)基板に埋設されているウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材が貼着されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面を電極を露出させることなく研削する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面をエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させるエッチング工程と、を含み、
該エッチング工程は、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面に不完全に露出させる第1のエッチング工程と、該第1のエッチング工程を実施した後にシリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜で被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面から突出させる第2のエッチング工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする電極が埋設されたウエーハの加工方法が提供される。
【0009】
上記電極は銅(Cu)によって形成されており、上記第1のエッチング工程はエッチング液としてフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を用いて実施し、上記第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する。
また、上記電極は銅(Cu)によって形成されており、上記第1のエッチング工程はエッチング液として水酸化カリウム(KOH) を用いて実施し、上記第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する。
上記裏面研削工程を実施した後、エッチング工程を実施する前にシリコン(Si)基板の裏面を研磨し、シリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させることなく裏面研削工程によってシリコン(Si)基板の裏面に形成された研削痕を除去する研磨工程を実施することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法においては、ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、保護部材が貼着されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面を電極を露出させることなく研削する裏面研削工程と、ウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面をエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させるエッチング工程とを含み、エッチング工程は、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面に不完全に露出させる第1のエッチング工程と、第1のエッチング工程を実施した後にシリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜で被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面から突出させる第2のエッチング工程とを含んでいるので、第2のエッチング工程において電極を被覆している二酸化珪素(SiO2)膜のエッチング速度が遅いため、電極はエッチングされることなくシリコン(Si)基板の裏面から突出せしめられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法によって加工されるウエーハの斜視図。
【図2】図1に示すウエーハの要部を拡大して示す断面図。
【図3】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における保護部材貼着工程の説明図。
【図4】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における裏面研削工程の説明図。
【図5】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における研磨工程の説明図。
【図6】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法におけるエッチング工程を実施するためのエッチング装置の斜視図。
【図7】図6に示すエッチング装置のスピンナーテーブルを被加工物搬入・搬出位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図8】図6に示すエッチング装置のスピンナーテーブルを作業位置に位置付けた状態を示す説明図。
【図9】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における第1のエッチング工程の説明図。
【図10】本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法における第2のエッチング工程の説明図。
【図11】フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸、水酸化カリウム(KOH)およびテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)のシリコン(Si)と二酸化珪素(SiO2)と銅(Cu)に対するエッチングレートについて示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明による電極が埋設されたウエーハの加工方法によって加工されるウエーハの斜視図が示されている。図1に示すウエーハ2は、厚みが例えば600μmのシリコン(Si)基板21の表面21aに格子状に形成されたストリート211によって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイス212がそれぞれ形成されている。このように形成されたデバイス212の表面には、複数のボンディングパッド213が設けられている。このように形成されたウエーハ2は、図2に示すようにシリコン(Si)基板21に上記ボンディングパッド213に接続する銅(Cu)電極214が埋設されている。なお、シリコン(Si)基板21に埋設される銅(Cu)電極214は、長さが例えば50μmに形成されており、絶縁膜としての二酸化珪素(SiO2)膜215が150nm程度の厚みで被覆されている。
【0014】
以下、上述したウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面に銅(Cu)電極214を突出して露出させる加工方法について説明する。
先ず、上記ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の表面21aに形成されたデバイス212を保護するために、図3に示すようにウエーハ2の表面に保護テープ等の保護部材3を貼着する保護部材貼着工程を実施する。
【0015】
上述した保護部材貼着工程を実施したならば、ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面を銅(Cu)電極214を露出させることなく研削する裏面研削工程を実施する。この裏面研削工程は、図示の実施形態においては図4の(a)に示す研削装置4を用いて実施する。図4の(a)に示す研削装置4は、被加工物を保持するチャックテーブル41と、該チャックテーブル41に保持された被加工物を研削する研削手段42を具備している。チャックテーブル41は、上面に被加工物を吸引保持し図4の(a)において矢印41aで示す方向に回転せしめられる。研削手段42は、スピンドルハウジング421と、該スピンドルハウジング421に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル422と、該回転スピンドル422の下端に装着されたマウンター423と、該マウンター423の下面に取り付けられた研削ホイール424とを具備している。この研削ホイール424は、円環状の基台425と、該基台425の下面に環状に装着された研削砥石426とからなっており、基台425がマウンター423の下面に締結ボルト427によって取り付けられている。
【0016】
上述した研削装置4を用いて上記裏面研削工程を実施するには、図4の(a)に示すようにチャックテーブル41の上面(保持面)に上記保護部材貼着工程が実施されたウエーハ2の表面に貼着した保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル41上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、チャックテーブル41上に吸引保持されたウエーハ2は、シリコン(Si)基板21の裏面21bが上側となる。このようにチャックテーブル41上にウエーハ2を吸引保持したならば、チャックテーブル41を図4の(a)において矢印41aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研削手段42の研削ホイール424を図4の(a)において矢印424aで示す方向に例えば6000rpmで回転せしめ、図4の(b)に示すように研削砥石426の研削面(下面)を被加工面であるシリコン(Si)基板21の裏面21bに接触させて、研削ホイール424を図4の(a)および(b)において矢印424bで示すように所定の研削送り速度(例えば、3μm/秒)で下方(チャックテーブル41の保持面に対し垂直な方向)に例えば535μm研削送りする。このとき、研削ホイール424の研削砥石426による研削加工部には、研削水が供給される。この裏面研削工程においてはウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば535μm研削される。従って、図4の(c)に示すようにウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の厚みは65μmとなるが、長さが50μmの銅(Cu)電極214はシリコン(Si)基板21の裏面21bに露出しない。
【0017】
上述した裏面研削工程を実施したならば、裏面研削工程においてシリコン(Si)基板21の裏面21bに形成された研削痕を除去し、シリコン(Si)基板21の裏面21bを平坦にする研磨工程を実施する。この研磨工程は、図5の(a)に示す研磨装置5を用いて実施する。なお、図5の(a)に示す研磨装置5は、被加工物を保持するチャックテーブル51と、該チャックテーブル51に保持された被加工物を研磨する研磨手段52を具備している。チャックテーブル51は、上面に被加工物を吸引保持し図5の(a)において矢印51aで示す方向に回転せしめられる。研磨手段52は、スピンドルハウジング521と、該スピンドルハウジング521に回転自在に支持され図示しない回転駆動機構によって回転せしめられる回転スピンドル522と、該回転スピンドル522の下端に装着されたマウンター523と、該マウンター523の下面に取り付けられた研磨工具524とを具備している。この研削工具524は、円板状の基台525と、該基台525の下面に環状に装着された研磨パッド526とからなっており、基台525がマウンター523の下面に締結ボルト527によって取り付けられている。
【0018】
上述した研磨装置5を用いて上記研磨工程を実施するには、図5の(a)に示すようにチャックテーブル51の上面(保持面)に上記裏面研削工程が実施されたウエーハ2の表面に貼着した保護部材3側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル51上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持する。従って、チャックテーブル51上に吸引保持されたウエーハ2は、シリコン(Si)基板21の裏面21bが上側となる。このようにチャックテーブル51上にウエーハ2を吸引保持したならば、チャックテーブル51を図5の(a)において矢印51aで示す方向に例えば300rpmで回転しつつ、研磨手段52の研磨工具524を図5の(a)において矢印524aで示す方向に例えば3000rpmで回転せしめ、図5の(b)に示すように研磨パッド526の研磨面(下面)を被加工面であるシリコン(Si)基板21の裏面21bに接触させて、研磨工具524を図7の(a)および(b)において矢印524bで示すように例えば10ニュートンの研磨圧力で押圧する。このとき、研磨パッド526の研磨面とシリコン(Si)基板21の裏面21bとの間には研磨液が供給される。この研磨工程においてはウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば6μm研磨される。従って、図5の(c)に示すようにウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の厚みは59μmとなるが、長さが50μmの銅(Cu)電極214はシリコン(Si)基板21の裏面21bに露出しない。
【0019】
次に、ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21aをエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板21の裏面21bに銅(Cu)電極214を露出させるエッチング工程を実施する。このエッチング工程は、図6に示すエッチング工程装置を用いて実施する。図6に示すエッチング装置6は、スピンナーテーブル機構61と、該スピンナーテーブル機構61を包囲して配設されたエッチング液受け手段62を具備している。スピンナーテーブル機構61は、スピンナーテーブル611と、該スピンナーテーブル611を回転駆動する回転駆動手段としての電動モータ612と、該電動モータ612を上下方向に移動可能に支持する支持手段613を具備している。スピンナーテーブル611は多孔性材料から形成された吸着チャック611aを具備しており、この吸着チャック611aが図示しない吸引手段に連通されている。従って、スピンナーテーブル611は、吸着チャック611aに被加工物であるウエーハを載置し図示しない吸引手段により負圧を作用せしめることにより吸着チャック611a上にウエーハを保持する。電動モータ612は、その駆動軸612aの上端に上記スピンナーテーブル611を連結する。上記支持手段613は、複数本(図示の実施形態においては3本)の支持脚613aと、該支持脚613aとそれぞれ連結し電動モータ612に取り付けられた複数本(図示の実施形態においては3本)のエアシリンダ613bとからなっている。このように構成された支持手段613は、エアシリンダ613bを作動することにより、電動モータ612およびスピンナーテーブル611を図6および図7に示す上方位置である被加工物搬入・搬出位置と、図8に示す下方位置である作業位置に位置付ける。
【0020】
上記エッチング液受け手段62は、エッチング液受け容器621と、該エッチング液受け容器621を支持する3本(図6には2本が示されている)の支持脚622と、上記電動モータ612の駆動軸612aに装着されたカバー部材623とを具備している。エッチング液受け容器621は、図7および図8に示すように円筒状の外側壁621aと底壁621bと内側壁621cとからなっている。底壁621bの中央部には上記電動モータ612の駆動軸612aが挿通する穴621dが設けられおり、この穴621dの周縁から上方に突出する内側壁621cが形成されている。また、図6に示すように底壁621bには排液口621eが設けられており、この排液口621eにドレンホース624が接続されている。上記カバー部材623は、円盤状に形成されており、その外周縁から下方に突出するカバー部623aを備えておる。このように構成されたカバー部材623は、電動モータ612およびスピンナーテーブル611が図8に示す作業位置に位置付けられると、カバー部623aが上記エッチング液受け容器621を構成する内側壁621cの外側に隙間をもって重合するように位置付けられる。
【0021】
図示の実施形態におけるエッチング装置6は、上記スピンナーテーブル611に保持された被加工物に第1のエッチング液を供給する第1のエッチング液供給機構64を具備している。第1のエッチング液供給機構64は、スピンナーテーブル611に保持された被加工物に向けて第1のエッチング液を供給する第1のエッチング液供給ノズル641と、該第1のエッチング液供給ノズル641を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ642を備えており、第1のエッチング液供給ノズル641が第1のエッチング液供給手段640(図7および図8参照)に接続されている。第1のエッチング液供給ノズル641は、水平に延びるノズル部641aと、該ノズル部641aから下方に延びる支持部641bとからなっており、支持部641bが上記エッチング液受け容器621を構成する底壁621bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され第1のエッチング液供給手段640(図7および図8参照)に接続されている。なお、第1のエッチング液供給ノズル641の支持部641bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部641bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。なお、上記第1のエッチング液供給手段640は、図示の実施形態においてはフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸または水酸化カリウム(KOH)を供給する。
【0022】
図示の実施形態におけるエッチング装置6は、上記スピンナーテーブル611に保持された被加工物に第2のエッチング液を供給する第2のエッチング液供給機構65を具備している。第2のエッチング液供給機構65は、スピンナーテーブル611に保持された被加工物に向けて第2のエッチング液を供給する第2のエッチング液供給ノズル651と、該第2のエッチング液供給ノズル651を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ652を備えており、第2のエッチング液供給ノズル651が第2のエッチング液供給手段650(図7および図8参照)に接続されている。第2のエッチング液供給ノズル651は、水平に延びるノズル部651aと、該ノズル部651aから下方に延びる支持部651bとからなっており、支持部651bが上記エッチング液受け容器621を構成する底壁621bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され第2のエッチング液供給手段650(図7および図8参照)に接続されている。なお、第2のエッチング液供給ノズル651の支持部651bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部651bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。なお、上記第2のエッチング液供給手段650は、図示の実施形態においてはテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を供給する。
【0023】
図示の実施形態におけるエッチング装置6は、上記スピンナーテーブル611に保持された被加工物に水を供給するための洗浄水供給機構66を具備している。洗浄水供給機構66は、スピンナーテーブル611に保持された被加工物に向けて洗浄水を供給する洗浄水供給ノズル661と、該洗浄水供給ノズル661を揺動せしめる正転・逆転可能な電動モータ662を備えており、該洗浄水供給ノズル661が洗浄水供給手段660(図7および図8参照)に接続されている。洗浄水供給ノズル661は、水平に延び先端部が下方に屈曲されたノズル部661aと、該ノズル部661aの基端から下方に延びる支持部661bとからなっており、支持部661bが上記エッチング液受け容器621を構成する底壁621bに設けられた図示しない挿通穴を挿通して配設され洗浄水供給手段660(図7および図8参照)に接続されている。なお、洗浄水供給ノズル661の支持部661bが挿通する図示しない挿通穴の周縁には、支持部661bとの間をシールするシール部材(図示せず)が装着されている。
【0024】
上述したエッチング装置6を用いて上記エッチング工程を実施するに際し、エッチング装置6の第1のエッチング液供給手段640によって供給されるフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸または水酸化カリウム(KOH)および第2のエッチング液供給手段650によって供給されるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)のシリコン(Si)と二酸化珪素(SiO2)と銅(Cu)に対するエッチングレートについて、図11を参照して説明する。図11から判るように、フッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸および水酸化カリウム(KOH)はシリコン(Si)に対するエッチングレートが高い。また、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)はシリコン(Si)に対するエッチングレートはフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸または水酸化カリウム(KOH)程高くはないがシリコン(Si)をエッチングすることができるとともに、二酸化珪素(SiO2)に対するエッチングレートが非常に低いことが判る。
【0025】
以下、上述したエッチング装置6を用いて実施するエッチング工程について説明する。エッチング工程を実施するには、上述した研磨工程が実施されたウエーハ2(表面に保護部材3が貼着されている)の保護部材3側をエッチング装置6を構成するスピンナーテーブル611の吸着チャック611a上に載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することにより吸着チャック611a上にウエーハ2を保護部材3を介して吸引保持する。従って、吸着チャック611a上に保護部材3を介して吸引保持されたウエーハ2は、シリコン(Si)基板21の裏面21bが上側となる。このとき、スピンナーテーブル611は図7に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けられており、第1のエッチング液供給ノズル641と第2のエッチング液供給ノズル651および洗浄水供給ノズル661は図7および図8に示すようにスピンナーテーブル611の上方から離隔した待機位置に位置付けられている。
【0026】
エッチング装置6を構成するスピンナーテーブル611の吸着チャック611a上にウエーハ2を保護部材3を介して吸引保持したならば、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板21の裏面21bをエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜215が被覆された銅(Cu)電極214をシリコン(Si)基板21の裏面21bに不完全に露出させる第1のエッチング工程を実施する。この第1のエッチング工程を実施するには、図9の(a)に示すように吸着チャック611a上に保護部材3を介してウエーハ2を吸引保持したスピンナーテーブル611を作業位置に位置付けるとともに、第1のエッチング液供給ノズル641のノズル部641aをスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の中央部上方に位置付ける。次に、電動モータ612を作動してスピンナーテーブル611を矢印Aで示す方向に例えば100rpmの回転速度で回転するとともに、第1のエッチング液供給手段640を作動してフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を第1のエッチング液供給ノズル641に1分間に1リットルの割合(1リットル/分)で供給する。このようにして第1のエッチング液供給ノズル641に供給されたフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸は、ノズル部641aからスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給される。このようにしてシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給されフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸は、遠心力によって外周に向けて移動しつつシリコン(Si)基板21の裏面21bをエッチングする。このようにして第1のエッチング工程を3分間実施することにより、図9の(b)に示すようにシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば9μmエッチングされ、ウエーハ2の厚みは例えば50μmとなり、二酸化珪素(SiO2)膜215が被覆された銅(Cu)電極214がシリコン(Si)基板21の裏面21bに僅かに露出する。なお、上述した実施形態においてはエッチング液としてフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を用いた例を示したが、第1のエッチング工程においてはシリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液として水酸化カリウム(KOH)を用いてもよい。
【0027】
上述したように第1のエッチング工程を実施したならば、シリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜215で被覆された銅(Cu)電極214をシリコン(Si)基板21の裏面21bから突出させる第2のエッチング工程を実施する。この第2のエッチング工程を実施するには、図10の(a)に示すように第1のエッチング液供給ノズル641を待機位置に位置付け、第2のエッチング液供給ノズル651をスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の中央部上方に位置付ける。次に、電動モータ612を作動してスピンナーテーブル611を矢印Aで示す方向に例えば100rpmの回転速度で回転するとともに、第2のエッチング液供給手段650を作動してテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を第2のエッチング液供給ノズル651に1分間に1リットルの割合(1リットル/分)で供給する。このようにして第2のエッチング液供給ノズル651に供給されたテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)は、ノズル部651aからスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給される。このようにしてシリコン(Si)基板21の裏面21bの中央部に供給されたテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)は、遠心力によって外周に向けて移動しつつシリコン(Si)基板21の裏面21bをエッチングする。このようにして第1のエッチング工程を5分間実施することにより、図10の(b)に示すようにシリコン(Si)基板21の裏面21bが例えば5μmエッチングされ、二酸化珪素(SiO2)膜215が被覆された銅(Cu)電極214がシリコン(Si)基板21の裏面21bから5μm突出せしめられる。このように第2のエッチング工程において用いるエッチング液としてのテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)は、シリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低くエッチング時間も短いので、銅(Cu)電極214に被覆された二酸化珪素(SiO2)膜のエッチング速度が遅いため、銅(Cu)電極214はエッチングされることなく維持される。
【0028】
上述したように第2のエッチング工程を実施したならば、エッチング加工されたウエーハ2を洗浄する洗浄工程を実施する。この洗浄工程を実施するには、第2のエッチング液供給ノズル651を待機位置に位置付け、洗浄水供給機構66を構成する洗浄水供給ノズル661のノズル部661aをスピンナーテーブル611上に保持されたウエーハ2の中心部上方に位置付ける。そして、スピンナーテーブル611を例えば800rpmの回転速度で回転しつつ洗浄水供給手段660を作動して、洗浄水供給ノズル661のノズル部661aから洗浄水を噴出する。なお、ノズル部661aを所謂2流体ノズルで構成し0.2MPa程度の圧力の洗浄水を供給するとともに、0.3〜0.5MPa程度の圧力のエアーを供給するようにすれば、洗浄水がエアーの圧力で噴出してウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bを効果的に洗浄することができる。このとき、電動モータ662を作動して洗浄水供給ノズル661のノズル部661aから噴出された洗浄水がスピンナーテーブル611に保持されたウエーハ2の中心に当たる位置から外周部に当たる位置までの所要角度範囲で揺動せしめる。この結果、ウエーハ2を構成するシリコン(Si)基板21の裏面21bを確実に洗浄することができる。
【0029】
上述したようにエッチング加工されたウエーハ2を洗浄したならば、スピンナーテーブル611の回転を停止するとともに、洗浄水供給ノズル661を待機位置に位置付ける。そして、スピンナーテーブル611を図7に示す被加工物搬入・搬出位置に位置付けるとともに、スピンナーテーブル611に保持されているウエーハ2の吸引保持を解除する。次に、スピンナーテーブル611上の加工後のウエーハ2は、適宜の搬送手段によって、次工程に搬送される。
【符号の説明】
【0030】
2:ウエーハ
21:シリコン(Si)基板
212:デバイス
213:ボンディングパッド
214:銅(Cu)電極
215:二酸化珪素(SiO2)膜
3:保護部材
4:研削装置
41:研削装置のチャックテーブル
42:研削手段
424:研削ホイール
5:研磨装置
51:研磨装置のチャックテーブル
52:研磨手段
524:研磨工具
6:エッチング装置
61:スピンナーテーブル機構
611:スピンナーテーブル
62:エッチング液受け手段
64:第1のエッチング液供給機構
641:第1のエッチング液供給ノズル
65:第2のエッチング液供給機構
651:第2のエッチング液供給ノズル
66:洗浄水供給機構
661:洗浄水供給ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン(Si)基板の表面に形成された複数のデバイスにそれぞれ設けられたボンディングパッドと接続し二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極がシリコン(Si)基板に埋設されているウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材が貼着されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面を電極を露出させることなく研削する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面をエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させるエッチング工程と、を含み、
該エッチング工程は、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面に不完全に露出させる第1のエッチング工程と、該第1のエッチング工程を実施した後にシリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜で被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面から突出させる第2のエッチング工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【請求項2】
該電極は銅(Cu)によって形成されており、該第1のエッチング工程はエッチング液としてフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を用いて実施し、該第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する、請求項1記載の電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【請求項3】
該電極は銅(Cu)によって形成されており、該第1のエッチング工程はエッチング液として水酸化カリウム(KOH)を用いて実施し、該第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する、請求項1記載の電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【請求項4】
該裏面研削工程を実施した後、該エッチング工程を実施する前にシリコン(Si)基板の裏面を研磨し、シリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させることなく該裏面研削工程によってシリコン(Si)基板の裏面に形成された研削痕を除去する研磨工程を実施する、請求項1から3のいずれかに記載の電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【請求項1】
シリコン(Si)基板の表面に形成された複数のデバイスにそれぞれ設けられたボンディングパッドと接続し二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極がシリコン(Si)基板に埋設されているウエーハの加工方法であって、
ウエーハの表面に保護部材を貼着する保護部材貼着工程と、
該保護部材が貼着されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面を電極を露出させることなく研削する裏面研削工程と、
該裏面研削工程が実施されたウエーハを構成するシリコン(Si)基板の裏面をエッチング液によってエッチングすることによりシリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させるエッチング工程と、を含み、
該エッチング工程は、シリコン(Si)に対してエッチングレートが高いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜が被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面に不完全に露出させる第1のエッチング工程と、該第1のエッチング工程を実施した後にシリコン(Si)をエッチングするとともに二酸化珪素(SiO2)に対してエッチングレートが低いエッチング液を用いてシリコン(Si)基板の裏面をエッチングして二酸化珪素(SiO2)膜で被覆された電極をシリコン(Si)基板の裏面から突出させる第2のエッチング工程と、を含んでいる、
ことを特徴とする電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【請求項2】
該電極は銅(Cu)によって形成されており、該第1のエッチング工程はエッチング液としてフッ化水素酸(HF)と硝酸(HNO3)との混合酸を用いて実施し、該第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する、請求項1記載の電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【請求項3】
該電極は銅(Cu)によって形成されており、該第1のエッチング工程はエッチング液として水酸化カリウム(KOH)を用いて実施し、該第2のエッチング工程はエッチング液としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)を用いて実施する、請求項1記載の電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【請求項4】
該裏面研削工程を実施した後、該エッチング工程を実施する前にシリコン(Si)基板の裏面を研磨し、シリコン(Si)基板の裏面に電極を露出させることなく該裏面研削工程によってシリコン(Si)基板の裏面に形成された研削痕を除去する研磨工程を実施する、請求項1から3のいずれかに記載の電極が埋設されたウエーハの加工方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−209480(P2012−209480A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75083(P2011−75083)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】
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