説明

電気モータを多重制御するシステム

本システムは、複数の電気モータ(Mj,SLk)のコマンドを結合して、自動車内のアクセサリーを動作させるための電気モータに関する。それぞれの組み合わせは、電源手段(3)と、このモータを制御するためのリレー(Ri)と、このリレー(Ri)を制御する手段(5)とを具備する。スイッチ手段(SM)は、モータへの電源供給をカットオフ(4)するため提供され、制御手段(5)は、スイッチ手段(SM)を、所定の状態に到達した場合にのみ開放或いは閉止するよう設計される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に適する複数の電気モータを多重制御する分野に関し、特に、中央ドアロッキングとして知られる機能で使用され、これにより、ドアのロック及びアンロックが中央制御されるものに関する。しかしながら、多くの他のモータ、例えば、シート、ミラー、空調システムのフラップ、燃料フラップ、サンルーフ、ウインドウ等もまた、対象とされ得る。
【背景技術】
【0002】
“モータの多重制御用システム”との表現は、ここで、問題となっている機能の異なる状態、例えば上記で参照されるドアロック機能の“ロック”、“スーパーロック”、及び“リアスーパーロック”(児童保護)に対応する部分的或いは全体的ロッキング/アンロッキング、に対応する異なる組み合わせで、複数の電気モータのコマンドを結合するよう設計されたシステムを参照するため用いられる。
【0003】
これらのモータは、ユーザにより与えられるコマンドの中央調整を提供するマイクロプロセッサにより順に操作されるリレーにより制御される。
【0004】
特にいわゆる受動エントリー技術における近年の技術的進歩により、かつてのレスポンスタイムが、100ミリ秒以上、或いは数100ミリ秒以上であったのに対して、今や著しく速いレスポンスタイムで、典型的には数ミリ秒或いは数10ミリ秒のレスポンスタイムで、モータを使用することが可能となった。
【0005】
ユーザにより装着されたバッチによりそのハンドルが操作された場合に、ドアをオープンさせる、受動エントリー機能を考慮する場合、わずかな待ち時間であっても、もはや許容できない。
【0006】
これらのモータは、これらを制御するリレーのものに近いレスポンス特性のスピードを有するため、これらの多重制御使用においては、ユーザにより所望されない機能状態を引き起こし得る過渡的組み合わせを回避しなければならない場合、これらのコマンドが、より正確に同期しなければならないという課題がある。すなわち、より実際的には、自動車ドアが、ユーザがその事実に気付くことなくアンロックされ得るというリスクがある。
【0007】
問題となる機能を提供するリレー、センサー及びモータのボックスが、異なる製造業者によるものであり得、異種の特性を有し得るという事実により、こうした不要な過渡的組み合わせの発生の可能性は、増加する。
【0008】
この課題への回答は、すでに、例えば、文献EP0 924 372に記載された技術に提案されている。これらは、モータに適用されるコマンドのそれぞれに遅延を導入する点にあるが、これらは、車輌ユーザの観点から、価値ある進歩を意図的に取り消すものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本出願人企業は、新規なモータにスピード特性の最良の使用可能性をもたらし、他方で、電子ボックス及びセンサーの製造業者の選択における制約や、これによる工業上高コストとなることを回避することを目的としてきた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のため、本発明は、それぞれの組み合わせが所定の機能状態に対応する複数の電気モータのコマンドを結合して、自動車内のアクセサリーを動作させるための複数の電気モータの多重制御用システムに関し、このシステムは、電源手段と、その電源供給をカットオフすることによりこのモータを制御するためのリレーと、及びこのリレーを制御するための手段とを具備し、このシステムは、前記モータへの電源供給をカットオフするためのスイッチ手段を具備し、この制御手段は、所定の状態に到達した場合にのみこのスイッチ手段を開放或いは閉止するよう設計されることを特徴とする。
【0011】
このスイッチ手段は、電源供給を、問題となるモータに同期させる。スイッチ手段を、リレーの安定化の後、駆動することで、過電圧が回避され、リレーの寿命が増加することが、理解される。
【0012】
有利には、このスイッチ手段は、モータ給電返還をカットオフするため接続される。
【0013】
この制御手段は、好適には、ユーザによりコマンドが適用される前に、例えばドアをアンロックするよう準備することによって、予期される使用に従って制御リレーを操作する。
【0014】
ユーザがコマンドを与えた際、このコマンドが予期される使用と一致する場合には、スイッチ手段のみが操作される。制御リレーは、すでに適所にあるため、これらを操作する時間が削減される。
【0015】
また好適には、スイッチ手段は、基準電位、例えばグラウンドにモータ給電返還をカットオフする少なくとも1つの電子スイッチを具備する。
【0016】
また好適には、この電子スイッチは、例えばJFET或いはMOSFET型の電界効果トランジスタ(FET)である。
【0017】
有利には、この電子スイッチは、制御手段への異常操作に関する情報を分配するよう設計された“スマートパワー”トランジスタである。給電返還をカットオフする場合、これは、“smart de pied”として知られる。
【0018】
本発明の他の特徴によれば、制御手段は、電子スイッチとして作用する電界効果トランジスタの内部抵抗に貫流する電流をサンプルし、デジタル化して、十分高頻度に、モータのコイルを貫流する電流の形状を分析することを可能とする設計される。
【0019】
この制御手段は、従って、動的動作を補正するためモータをモニターすることができる。
【0020】
本発明は、以下において、本発明に係る電気モータの多重制御用システムの好適な実施形態に関する記述及び付随の図面を参照してより詳細に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1を参照して、機能を実行する電気モータの多重制御用システム1は、組み合わせにより動作するモータM1からMn、及びSL1からSLmに加え、ユーザからの指令2に基づいて接点C1,C2,C3,C4,Ci,...、及び対応するリレーR1,R2,R3,R4,Ri,...を開放或いは閉止する制御用マイクロプロセッサ5を具備する。
【0022】
図1に示す例において、R1、C1及びR2、C2はすべて、1つのリレーボックス6内にあり、R3、C3、R4、C4、R5、C5は、他のリレーボックス7内にある。2つのボックスのみが図示されているが、当然、この数より多いものであってよい。
【0023】
モータは、2つの接点により制御される。例えば、モータM1は、ボックス6の2つの接点により制御される。しかしながら、あらゆる所与のモータMj(jは1からnまで)或いはモータSLk(kは1からmまで)は、異なる製造業者によるボックスからの2つのリレーRi及びRi+1により制御され得、同様に、モータMn或いはSL1は、図において、2つのボックス6及び7に接続される。
【0024】
すべての接点Ciは、2つの位置81及び82を有し、これらの端子のいずれかは、モータMj或いはSLkの端子83に接続され得る。端子83は、位置81で、機能のモータに共通する電源3に接続され、位置82で、同じモータの給電返還に接続される。ここで、この返還は、基準電位、本実施形態ではシステム1のグランド4である。
【0025】
こうして定義される構造により、モータの2つの端子を接続して、これに正或いは負の電流Iを供給するか、或いは、これらに供給しないか、することが可能となり、この両者の場合において、端子は、同一極性、電源3或いはグランド4に接続される。
【0026】
マイクロプロセッサ5は、実行されるべき機能を考慮して、組み合わせにより、リレーRi、従ってモータMn或いはSL1を制御し、この構造を考慮して、不一致、とりわけショート或いは機能の好ましくない状態を引き起こす不一致を回避し、及び例えばボックスが異なる製造業者によるものであり、モータがより速いという事実に起因する一時的なコマンドの組み合わせに対応する。
【0027】
例えば、車輌の運転者用ドアを閉めるには、モータM1のみが操作され、他方、他のモータMn或いはSLは、除外される。後方ドアをロックするには、2つのモータM3及びM4が動作し得、或いは“リアスーパーロック”モータSL2が単独で操作され得る;しかしながら、機能のこの状態において、モータM2を介して前方搭乗者ドアをロックすることもまた可能である。一般のロッキングは、4つのモータM1からM4を、或いは2つのモータSL1SL2等を作動させる。
【0028】
ここで、接点Ciのすべての端子82は、SMの文字によりまた指示されるJFET或いはMOSFET“スマートパワー”トランジスタ10の端子11に接続され、この端子11はさらに、システム1のグランド4に接続される。トランジスタSMは、マイクロプロセッサ5の出力13により制御され、通常は“スマートパワー”トランジスタにより、リンク14を介して分配されるとおり、これに“動作温度補正”信号を送信する。これらのトランジスタは、2つの状態で動作する:オフ状態及び状態である。このオフ状態により、モータ給電を休止モードにすることが可能となる。
【0029】
トランジスタSMを貫流する電流Iは、端子11で読み込まれ、その出力がアナログ−デジタルコンバータ16に接続されるオペアンプ15によって増幅され、このコンバータ16は、リアルタイムで、リンク17を介したマイクロプロセッサ5への電流Iのデジタル値を供給する。
【0030】
マイクロプロセッサ5は、こうして、自らの選択で、モータMj或いはSLkを制御し、結果として生じる電流Iの値を得て、この値を、モータの正しい動作を規定する基準値Gjと比較する。この基準値は、本技術分野に属する当業者に知られた信号処理方法に従って選択される。
【0031】
本システムの動作を以下説明する。
【0032】
図2を参照して、ユーザが、システム1により実行される機能を、該機能を特定の状態Epにセットするよう設計された特定の指令で要求する場合、この指令は、リンク2によりマイクロプロセッサ5に送信される。状態Epに当該機能をセットするため、マイクロプロセッサは、所望の状態Ep及び先行する状態Ep−1を考慮することにより、モータMj及び/又はSLkのどの組み合わせが、電流Iを供給されるかを決定し、これから、通常の方法として、どのリレーRiを動作させるかを算出する。
【0033】
例えば、図2において、給電されるべきモータは、モータM1及びMnであり、動作するべきリレーは、R1、R2、及びR3である。マイクロプロセッサ5は、これらを動作させ、Ciスイッチを、いずれの組み合わせが要求されるかに依存して、位置81或いは82に接触させる。
【0034】
トランジスタSMが動作しないので、これはオフ状態にあり、接点CiはリレーRiと共にスイッチングする間、電流Iは、モータを貫流せず、不要な状態は起こり得ない。
【0035】
すべての問題となるリレーR1,R2,R3がスイッチするのを許容するのに十分な期間T1が経過した後、マイクロプロセッサ5は、リンク13を介してトランジスタSMを操作し、これをオンして電流を流す。モータM1及びM2は、今や一方の側で電源3に接続され、他方でグランド4に接続され、これにより、電流Iがこれらに流れる。
【0036】
モータM1、M2がその運転の終わりに到達するのに十分な第2の期間T2が経過した後、所望の状態Epに到達し、マイクロプロセッサは、トランジスタSMの動作を停止する。
【0037】
到達された特定の状態Epに依存して、ユーザが所望する次の状態Ep+1が当然に分かり或いは予測可能である、或いは単に最も起こり得る可能性の高い状態であることさえ、可能である。トランジスタSMがオフ状態に戻ることを許容するのに十分な期間T3が経過した後、マイクロプロセッサは、この状態Ep+1を、リレーRiを事前配置することにより予測することができる。この可能な予測により、ユーザからの次の指示がされる間の時間T1が削減される。これは、特に、自動車ドアの一般的アンロック用の“受動エントリー”に適用され得る。自動車を離れ、ドアをロックする際に、ユーザは、上記で提示されたエレメントを、オープン位置に設定する。
【0038】
ショート、或いはモータを貫流する電流Iを異常に増加させる他のあらゆる理由により、1つのモータが機能しない場合、トランジスタSMを貫流する電流は、異常に増加し、“スマートパワー”トランジスタは、異常温度上昇を検出する。これは、マイクロプロセッサ5に、リンク14を介してレポートされ、マイクロプロセッサは、メッセージ或いは警告或いは予備警告信号をユーザに出力する。
【0039】
これが修理工事中に発生した場合、マイクロプロセッサ5に、機能障害のあるモータを順にすべて動作させるよう指示し、トランジスタSMの端子11上の信号形状を検出し、この信号が、増幅器15により増幅されてコンバータ16によりデジタル化され、リンク17により送信され、それぞれのモータからのそれぞれの信号を、テストすべきモータの正しい動作の基準値Gjと比較することによって、修理工は、障害のあるモータを分離することができる。
【0040】
この動作の間、トランジスタSMの内部抵抗(“ドレイン−ソース抵抗”としてのDSR)は、電流I測定用抵抗として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明に係る多重制御システムの機能的回路ダイアグラムである。
【図2】図2は、本発明に係る多重制御システムの制御手段により発行される組み合わせられたコマンドの一例を示すタイミングダイアグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの組み合わせが所定の機能状態に対応する複数の電気モータ(Mj,SLk)のコマンドを結合して、自動車内のアクセサリーを動作させるための複数の電気モータを多重制御するシステム(1)であって、
電源手段(3)と、その電源供給をカットオフすることで制御される前記モータを制御するためのリレー(Ri)と、及び前記リレー(Ri)を制御する手段(5)とを具備するシステムにして、
前記モータへの電源供給をカットオフ(4)するスイッチ手段(SM)を具備し、
前記制御手段(5)は、前記スイッチ手段(SM)を、所定の状態に到達した場合にのみ開放或いは閉止するよう設計される
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記スイッチ手段(SM)は、モータ給電返還をカットオフするため接続される
ことを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記制御手段(5)は、前記コマンドがユーザにより与えられる前に、予測された使用に従って、前記制御リレー(Ri)を操作する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記スイッチ手段(SM)は、前記モータ給電返還をグラウンド(4)にカットオフする少なくとも1つの電子スイッチを具備する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載のシステム。
【請求項5】
前記電子スイッチ(SM)は、動作温度に関する情報を分配するよう設計されたMOSトランジスタである
ことを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記電子スイッチは、前記制御手段(5)への異常動作に関する情報を分配する(14)よう設計された“スマートパワー”トランジスタである
ことを特徴とする請求項4又は5に記載のシステム。
【請求項7】
前記手段(5,15,16)は、前記モータの動的動作をモニターするため提供される
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか記載のシステム。
【請求項8】
前記モータの動的動作をモニターする前記手段(5、15、16)は、前記電子スイッチトランジスタ(SM)の内部抵抗を貫流する電流Iをデジタル化する変換手段(16)を具備する
ことを特徴とする請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記変換手段(16)は、リアルタイムで、前記制御手段(5)に、前記モータ(Mj,SLk)をその動作中貫流する前記電流Iの値を供給するよう設計される
ことを特徴とする請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記制御手段(5)は、前記モータ(Mj,SLk)を貫流する前記電流Iの形状を、正しい動作の基準値と比較するよう設計される
ことを特徴とする請求項7ないし9のいずれか記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−505000(P2007−505000A)
【公表日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525861(P2006−525861)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002284
【国際公開番号】WO2005/026478
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(598147400)ジョンソン コントロールズ テクノロジー カンパニー (224)
【氏名又は名称原語表記】Johnson Controls Technology Company
【Fターム(参考)】