説明

電気光学装置の製造方法

【課題】液晶装置等の電気光学装置を製造する際に、好適に平坦化処理を行う。
【解決手段】電気光学装置の製造方法は、基板(10)に、スイッチング素子(30)及びスイッチング素子に電気的に接続された配線(150)を備えた電気光学装置の製造方法であって、配線を形成する配線形成工程と、配線を覆うように第1の絶縁膜(43)を形成する第1絶縁膜形成工程と、第1の絶縁膜上に、配線と少なくとも部分的に重なるように、ストッパー膜(200)を形成するストッパー膜形成工程と、ストッパー膜を覆うように第2の絶縁膜(44)を形成する第2絶縁膜形成工程と、第2の絶縁膜を研磨することで平坦化する平坦化工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスイッチング素子を備えてなる液晶表示装置等の電気光学装置を製造する方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置として、例えば薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)をスイッチング素子として備えるものが知られている。このような電気光学装置では、複数の導電層及び絶縁層が積層される積層構造を有する基板間に、液晶等の電気光学物質が挟持されている。
【0003】
積層構造を形成する際には、装置の表示品質や信頼性を高めるために、各層を平坦に近づけることが求められる。このため、積層によって生じる段差を少なくするための様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1から3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−73103号公報
【特許文献2】特開2000−31148号公報
【特許文献3】特開2001−332620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような平坦化処理は、各層を物理的或いは化学的に研磨することで行われるため、平坦化後の層の厚さを所望の値とすることができない可能性が高い。即ち、層の厚さを正確に制御しつつ平坦化処理を行うことは、極めて困難である。
【0006】
層の厚さを正確に制御できない場合、例えば平坦化された層に対してコンタクトホール等を設ける際に、極めて高い精度が求められることになるため、製造工程が高度複雑化してしまう。このように、上述した技術には、平坦化処理を行うが故に、製造時の問題が新たに発生してしまうという技術的問題点がある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、好適に平坦化処理を行うことが可能な電気光学装置の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電気光学装置の製造方法は上記課題を解決するために、基板に、スイッチング素子及び前記スイッチング素子に電気的に接続された配線を備えた電気光学装置の製造方法であって、前記配線を形成する配線形成工程と、前記基板を平面的に見て、前記配線を覆うように第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、前記第1の絶縁膜上に、前記配線と少なくとも部分的に重なるように、ストッパー膜を形成するストッパー膜形成工程と、前記基板を平面的に見て、前記ストッパー膜を覆うように第2の絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、前記第2の絶縁膜を研磨することで平坦化する平坦化工程とを備える。
【0009】
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、基板に、例えばTFT等のスイッチング素子及びスイッチング素子に電気的に接続された配線を備えた電気光学装置が製造される。基板は、複数の導電層及び絶縁層が積層されてなる積層構造を有している。電気光学装置は、例えば基板と対向する他の基板との間に、液晶等の電気光学物質が挟持されることによって構成されている。
【0010】
本発明の電気光学装置の製造方法では、先ず基板に配線が形成される。尚、ここでの「配線」は、基板における特定の配線を指すものではなく、基板に設けられる配線であれば、どのような配線であってもよい。配線の具体例としては、例えば装置における表示領域に設けられる走査線やデータ線、或いは周辺領域に設けられる駆動回路等を構成する配線などが挙げられる。配線は、例えばアルミ等の導電性のよい金属の膜によって形成される。
【0011】
配線が形成されると、基板を平面的に見て配線を覆うように、第1の絶縁膜が形成される。第1の絶縁膜は、典型的には基板面の全面に設けられる。第1の絶縁膜上には、配線と少なくとも部分的に重なるように、ストッパー膜が形成される。即ち、配線が設けられる位置に対応するようにストッパー膜が形成される。但し、ストッパー膜は、全ての配線に対して設けられなくともよい。
【0012】
ストッパー膜が形成されると、基板を平面的に見てストッパー膜を覆うように、第2の絶縁膜が形成される。第2の絶縁膜は、第1の絶縁膜と同様に、典型的には基板面の全面に設けられる。第2の絶縁膜は、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)等の技術を用いて研磨することで平坦化される。
【0013】
ここで特に、第2の絶縁膜が平坦化される際には、ストッパー膜が、第2の絶縁膜を研磨し過ぎることを防止するストッパーとして機能することで、より好適に平坦化処理を行うことができる。具体的には、第2の絶縁膜に対して選択比の高い材料で形成されたストッパー膜が、該ストッパー膜より下層に形成されている研磨されるべきでない膜(例えば、第1の絶縁膜や配線等)までもが研磨されてしまうことを防止する。
【0014】
本発明では、ストッパー膜が配線に重なるように形成されているため、配線が存在することで発生してしまう段差を好適に平坦化することができる。即ち、第2の絶縁膜の表面において、配線と重なる部分が盛り上がるように形成されてしまっても、確実に平坦化することが可能である。これにより、平坦化後の第2絶縁膜の膜厚に、ばらつきが生じてしまうことを防止できる。
【0015】
以上説明したように、本発明の電気光学装置の製造方法によれば、好適に平坦化処理を行うことが可能である。
【0016】
本発明の電気光学装置の製造方法の一態様では、前記平坦化工程前において、前記第2の絶縁膜における前記ストッパー膜と重なる部分に凹部を形成する凹部形成工程を更に備える。
【0017】
この態様によれば、平坦化工程前において、第2の絶縁膜におけるストッパー膜と重なる部分には凹部が形成される。この凹部が形成されることにより、ストッパー膜と重なる部分において第2の絶縁膜の表面に生じる段差の影響を相殺することができる。言い換えれば、ストッパー膜が存在することによる、第2の絶縁膜の表面の盛り上がりを小さくすることができる。よって、平坦化後の第2の絶縁膜を、より平坦に近づけることが可能となる。
【0018】
尚、凹部の大きさや深さは、凹部と対応するストッパー膜及びストッパー膜の下層に形成されている配線の大きさや膜厚等に対応させることが好ましい。例えば、ストッパー膜や配線の膜厚が大きい場合には、それに応じて凹部の深さも大きくするのがよい。また、本態様における凹部は、全てのストッパー膜に対して設けられていなくともよい。即ち、対応する凹部が存在しないストッパー膜があっても構わない。
【0019】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記第1絶縁膜形成工程において、前記第1の絶縁膜の表面の高さは、前記平坦化工程後の前記第2の絶縁膜の表面の高さとなるべき値に近くなるように形成される。
【0020】
この態様によれば、第1の絶縁膜の表面の高さが、平坦化工程後の第2の絶縁膜の表面の高さとなるべき値(即ち、平坦化後における所望の膜厚)に近くなるように形成されるため、平坦化工程時に、ストッパー膜まで達するような研磨を行うことで、比較的容易に所望の膜厚を実現できる。
【0021】
具体的には、平坦化後の基板の表面の高さは、第1の絶縁膜の膜厚に、研磨しきれずに残ったストッパー膜の膜厚を足した値となる。よって、研磨しきれずに残るストッパー膜の膜厚が極めて小さくなることを考えれば、第1の絶縁膜の膜厚が、平坦化後の基板表面の高さに限りなく近い値であることが分かる。従って、上述したように、比較的容易に所望の膜厚を実現できる。
【0022】
尚、正確に言うならば、第1絶縁膜の表面の高さは、所望の膜厚から、研磨しきれずに残るストッパー膜の膜厚を引いた値とされることが望ましい。
【0023】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記配線形成工程において、前記配線は、少なくとも部分的に形成密度が異なるように形成されており、前記ストッパー膜形成工程において、前記ストッパー膜は、前記形成密度に応じて形成される。
【0024】
この態様によれば、配線形成工程において形成される配線は、少なくとも部分的に形成密度が異なるように形成される。即ち配線は、同じ太さのものが等ピッチで形成される訳ではなく、疎な部分と密な部分とが混在するように形成される。
【0025】
配線の形成密度が異なると、それに応じて上層に設けられている第1の絶縁膜及び第2の絶縁膜の段差の大きさも変化する。このため、仮に配線の形成密度を考慮せずにストッパー膜を形成した場合、平坦化後にも第2の絶縁膜上に段差が残ってしまうおそれがある。
【0026】
しかるに本態様では、ストッパー膜が配線の形成密度に応じて形成される。よって、配線の形成密度の違いによって生じた大きさの異なる段差を、夫々好適に平坦化することができる。従って、平坦化後の平坦性をより高めることが可能である。
【0027】
本発明の電気光学装置の製造方法の他の態様では、前記平坦化工程後において、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜をパターニングすることで、前記第2絶縁膜よりも上層に形成される導電層と前記配線とを互いに電気的に接続するためのコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程を更に備える。
【0028】
この態様によれば、第2絶縁膜が平坦化された後に、第1絶縁膜及び第2絶縁膜がパターニングされることでコンタクトホールが形成される。このコンタクトホールでは、第2絶縁膜より上層に形成される導電層と、配線形成工程において形成される配線とが互いに電気的に接続される。
【0029】
コンタクトホールを形成する場合には、パターニングする膜(即ち、第1絶縁膜及び第2絶縁膜)の膜厚が所定の厚さとされていることが重要とされる。しかるに本態様では、上述したように、平坦化後の第2絶縁膜の膜厚にばらつきが生じてしまうことを防止できる。従って、好適にコンタクトホールを形成し、確実に配線と上層の導電層とを電気的に接続することが可能である。
【0030】
上述したコンタクトホール形成工程を備える態様では、前記ストッパー膜形成工程において、前記ストッパー膜は、前記コンタクトホールと重なる位置に形成されるようにしてもよい。
【0031】
この場合、コンタクトホールの形成される位置における平坦性を効果的に高めることができるため、より確実に配線と上層の導電層とを電気的に接続することが可能である。
【0032】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】実施形態に係る電気光学装置の相隣接する複数の画素部を示す平面図である。
【図4】図3のA−A’線断面図である。
【図5】第1実施形態に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その1)である。
【図6】第1実施形態に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その2)である。
【図7】比較例に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その1)である。
【図8】比較例に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図(その2)である。
【図9】第2実施形態に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0035】
<電気光学装置>
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によって製造される電気光学装置の構成について、図1から図4を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、電気光学装置の一例として、駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を挙げて説明する。
【0036】
本実施形態に係る電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0037】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、本発明の「基板」の一例であり、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0038】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。
【0039】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0040】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0041】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0042】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0043】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、後に詳述する。尚、この積層構造の上に、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0044】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0045】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0046】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0047】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0048】
上述した電気光学装置によれば、例えば投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、例えば電子ペーパーなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0049】
次に、上述の電気光学装置における画素部の具体的な構成について、図3及び図4を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る電気光学装置の相隣接する複数の画素部を示す平面図である。また図4は、図3のA−A’線断面図である。尚、図3及び図4では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。図3及び図4では、説明の便宜上、画素電極9aより上側に位置する部分の図示を省略している。
【0050】
図3において、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられている。画素電極9aの縦横の境界にそれぞれ沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。即ち、走査線3aは、X方向に沿って延びており、データ線6aは、走査線3aと交差するように、Y方向に沿って延びている。走査線3a及びデータ線6aが互いに交差する個所の各々には画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0051】
走査線3a、データ線6a、蓄積容量70、下側遮光膜11a、中継層93及びTFT30は、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、画素電極9aに対応する各画素の開口領域(即ち、各画素において、表示に実際に寄与する光が透過又は反射される領域)を囲む非開口領域内に配置されている。即ち、これらの走査線3a、データ線6a、蓄積容量70、中継層93、下側遮光膜11a及びTFT30は、表示の妨げとならないように、各画素の開口領域ではなく、非開口領域内に配置されている。
【0052】
図3及び図4において、TFT30は、半導体層1aと、走査線3aの一部として形成されたゲート電極3bとを含んで構成されている。
【0053】
半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、Y方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域1a’、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c、並びにデータ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eからなる。即ち、TFT30はLDD構造を有している。尚、チャネル領域1a’は、本発明の「チャネル部」の一例であり、データ線側ソースドレイン領域1dは、本発明の「ソース部」の一例であり、画素電極側ソースドレイン領域1eは、本発明の「ドレイン部」の一例である。
【0054】
データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、チャネル領域1a’を基準として、Y方向に沿ってほぼミラー対称に形成されている。データ線側LDD領域1bは、チャネル領域1a’及びデータ線側ソースドレイン領域1d間に形成されている。画素電極側LDD領域1cは、チャネル領域1a’及び画素電極側ソースドレイン領域1e間に形成されている。データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、例えばイオンインプランテーション法等の不純物打ち込みによって半導体層1aに不純物を打ち込んでなる不純物領域である。
【0055】
データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cはそれぞれ、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eよりも不純物の少ない低濃度な不純物領域として形成されている。このような不純物領域によれば、TFT30の非動作時において、ソース領域及びドレイン領域間に流れるオフ電流を低減し、且つTFT30の動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
【0056】
図3及び図4において、ゲート電極3bは、走査線3aの一部として形成されており、例えば導電性ポリシリコンから形成されている。走査線3aは、X方向に沿って延びるように形成されている。走査線3aのうちチャネル領域1a’と重なる部分がゲート電極3bとして機能する。ゲート電極3b及び半導体層1a間は、ゲート絶縁膜2aによって絶縁されている。
【0057】
図3及び図4において、TFTアレイ基板10上のTFT30よりも下地絶縁膜12を介して下層側には、下側遮光膜11aが格子状に設けられている。下側遮光膜11aは、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等の遮光性材料からなる。下側遮光膜11aは、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクター等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などである、TFTアレイ基板10側から装置内に入射する戻り光からTFT30のチャネル領域1a’及びその周辺を遮光する。また、下側遮光膜11aが導電性材料を含む場合には、ゲート電極3bと電気的に接続することで、走査線3aとして機能するように構成してもよい。
【0058】
図4において、下地絶縁膜12は、下側遮光膜11aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。
【0059】
TFTアレイ基板10上のTFT30よりも第1層間絶縁膜41を介して上層側には、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、下部容量電極71と上部容量電極300aが誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0060】
上部容量電極300aは、容量線300の一部として形成されている。容量線300は、画素電極9aが配置された画像表示領域10aからその周囲に延設されている。上部容量電極300aは、容量線300を介して定電位源と電気的に接続され、固定電位に維持された固定電位側容量電極である。上部容量電極300aは、例えばAl(アルミニウム)、Ag(銀)等の金属又は合金を含んだ非透明な金属膜から形成されており、TFT30を遮光する上側遮光膜(内蔵遮光膜)としても機能する。尚、上部容量電極300aは、例えば、Ti、Cr、W、Ta、Mo、Pd等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等から構成されていてもよい。この場合には、上部容量電極300aの内臓遮光膜としての機能を高めることができる。
【0061】
下部容量電極71は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9aに電気的に接続された画素電位側容量電極である。より具体的には、下部容量電極71は、コンタクトホール83を介して画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されると共に、コンタクトホール84を介して中継層93に電気的に接続されている。更に、中継層93は、コンタクトホール85を介して画素電極9aに電気的に接続されている。即ち、下部容量電極71は、中継層93と共に画素電極側ソースドレイン領域1e及び画素電極9a間の電気的な接続を中継する。下部容量電極71は、導電性のポリシリコンから形成されている。よって、蓄積容量70は、所謂MIS構造を有している。尚、下部容量電極71は、画素電位側容量電極としての機能の他、上側遮光膜としての上部容量電極300aとTFT30との間に配置される、光吸収層或いは遮光膜としての機能も有する。
【0062】
誘電体膜75は、例えばHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン(SiO2)膜、或いは窒化シリコン(SiN)膜等から構成された単層構造、或いは多層構造を有している。
【0063】
尚、下部容量電極71を、上部容量電極300aと同様に金属膜から形成してもよい。即ち、蓄積容量70を、金属膜−誘電体膜(絶縁膜)−金属膜の3層構造を有する、所謂MIM構造を有するように形成してもよい。この場合には、導電性のポリシリコン等を用いて下部容量電極71を構成する場合に比べて、電気光学装置の駆動時に、当該電気光学装置全体で消費される消費電力を低減でき、且つ各画素部における素子の高速動作が可能になる。
【0064】
図4において、TFTアレイ基板10上の蓄積容量70よりも第2層間絶縁膜42を介して上層側には、データ線6a及び中継層93が設けられている。また、第1層間絶縁膜41及び42間には、部分的に絶縁膜49が介在している。
【0065】
データ線6aは、半導体層1aのデータ線側ソースドレイン領域1dに、第1層間絶縁膜41、絶縁膜49及び第2層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール81を介して電気的に接続されている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN層等との多層膜からなる。データ線6aは、TFT30を遮光する機能も有している。
【0066】
中継層93は、第2層間絶縁膜42上においてデータ線6aと同層に形成されている。データ線6a及び中継層93は、例えば金属膜等の導電材料で構成される薄膜を第2層間絶縁膜42上に薄膜形成法を用いて形成しておき、当該薄膜を部分的に除去、即ちパターニングすることによって相互に離間させた状態で形成される。従って、データ線6a及び中継層93を同一工程で形成できるため、装置の製造プロセスを簡便にできる。
【0067】
ここで本実施形態に係る電気光学装置では特に、データ線6a及び中継層93よりも第3層間絶縁膜43を介して上層側に、ストッパー膜200が設けられている。ストッパー膜200は、例えばチタンナイトライド等の窒素化合物等を含んでなり、中継層93に重なるように設けられている。
【0068】
ストッパー膜200は、上層に設けられる第4層間絶縁膜44等をパターニングする際にストッパーとして機能する。このため、ストッパー膜200は、第4層間絶縁膜44等より選択比の高い材料を含んで構成されることが望ましい。尚、ここでの中継層93は、本発明の「配線」の一例であり、第3層間絶縁膜43は、本発明の「第1の絶縁膜」の一例であり、第4層間絶縁膜44は、本発明の「第2の絶縁膜」の一例である。
【0069】
但し、ストッパー膜200は、必ずしも中継層93に対応して設けられなくともよく、電気光学装置を構成する導電層のいずれかに対応して設けられればよい。具体的には、例えば走査線3aや容量線300、或いはここでは図示しない導電層に対応するように設けられていてもよい。
【0070】
図4において、画素電極9aは、データ線6aよりも第4層間絶縁膜44を介して上層側に形成されている。画素電極9aは、下部容量電極71、コンタクトホール83、84及び85並びに中継層93を介して半導体層1aの画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的に接続されている。コンタクトホール85は、層間絶縁層43及び44を貫通するように形成された孔部の内壁にITO等の画素電極9aを構成する導電材料が成膜されることによって形成されている。画素電極9aの上側表面には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜が設けられている。
【0071】
以上に説明した画素部の構成は、図3に示すように、各画素部に共通である。画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されている。
【0072】
<電気光学装置の製造方法>
次に、上述した電気光学装置の製造方法について、図5から図9を参照して説明する。
【0073】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態に係る電気光学装置の製造方法について、図5から図8を参照して説明する。ここに図5及び図6は夫々、第1実施形態に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図である。また図7及び図8は夫々、比較例に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図である。尚、図5以降では、説明の便宜上、図4等で示した電気光学装置を構成する各層のうち、本実施形態に関係のある層のみを示し、他の層については適宜図示を省略している。
【0074】
図5において、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法では、第2層間絶縁膜42上に、図4等で示したデータ線6a及び中継層93等の導電層(ここでは一括して「配線150」としている。)が設けられる。配線150は、例えば第2層間絶縁膜42上の全面に導電層を形成した後に、エッチング等のパターニングを行うことで形成される。
【0075】
続いて、配線150の上層には、第3層間絶縁膜43が設けられる。そして特に、第3層間絶縁膜43における配線150と重なる部分には、ストッパー膜200が設けられる。即ち、配線150に対応するようにストッパー膜200が設けられる。尚、ストッパー膜200は、配線150に重なる部分全てに設けられなくともよい。言い換えれば、ストッパー膜200とは重ならない配線150が存在していてもよい。ストッパー膜200より上層には、第4層間絶縁膜44が設けられる。
【0076】
図6において、ストッパー膜200は、第4層間絶縁膜44に対して平坦化処理を施す際に、ストッパーとして機能する。具体的には、第4層間絶縁膜44が削られ過ぎることによって、削られるべきでない下層(即ち、ここでの第3層間絶縁膜43)が露出してしまう防止することができる。従って、平坦化処理を好適に行うことができる。
【0077】
図7において、第3層間絶縁膜43及びストッパー膜200を設けずに、第4層間絶縁膜44が、配線150上に設けられる場合を考える。即ち、平坦化処理を施す層が、配線150上に直接設けられる場合を考える。尚、ここでは、図中の右側部分の方が、左側部分に比べて配線150の形成密度が高いものとする。
【0078】
図8において、図7に示した第4層間絶縁膜44に対して平坦化処理を行うと、平坦化処理後の第4層間絶縁膜44の表面には、配線150の形成密度に起因した段差が生じてしまう場合がある。具体的には、配線150の形成密度が高い部分(即ち、図の右側の部分)が、配線150の形成密度が低い部分(即ち、図の左側の部分)より高くなってしまい、高い平坦性を実現できないおそれがある。
【0079】
これに対し本実施形態では、図5及び図6に示したように、ストッパー膜200が設けられているため、平坦化処理を十分に行うことができ、図8に示すような段差が生じてしまうことを防止することができる。
【0080】
更に、図6に示したように、平坦化後の膜厚(言い換えれば、基板表面の高さ)は、第3層間絶縁膜43の膜厚とほぼ同じ値となる。よって、平坦化後の膜厚の制御を極めて容易に行うことができる。従って、例えばコンタクトホール85(図4参照)等を設ける際のパターニングが容易となる。
【0081】
以上説明したように、第1実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、好適に平坦化処理を行うことが可能である。
【0082】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置の製造方法について、図9を参照して説明する。ここに図9は、第2実施形態に係る電気光学装置の製造方法の工程を示す概略断面図である。尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、一部の工程が異なり、その他の工程については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。
【0083】
図9において、第2実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、第4層間絶縁膜44が形成された後に、第4層間絶縁膜44におけるストッパー膜200と対応する部分に、凹部250が形成される。凹部250は、例えば第4層間絶縁膜44に対してエッチング等によるパターニングを行うことで設けられる。
【0084】
図6を見ても分かるように、第4層間絶縁膜44の表面に生ずる段差は、ストッパー膜200が設けられることにより局所的に大きくなるおそれがある、即ち、ストッパー膜200が設けられる部分と設けられない部分とで、表面の高さに違いが生じてしまう場合がある。
【0085】
これに対し本実施形態に係る電気光学装置の製造方法では、図9に示すような凹部250が形成されるため、ストッパー膜200が存在することに起因する段差を相殺することができる。従って、平坦化処理後の第4層間絶縁膜44の表面を、より平坦なものとすることができる。
【0086】
以上説明したように、第2実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、極めて高い平坦性を実現することができる。
【0087】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置の製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0088】
3a…走査線、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、30…TFT、43…第3層間絶縁膜、44…第4層間絶縁膜、50…液晶層、93…中継層、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、150…配線、200…ストッパー膜、250…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に、スイッチング素子及び前記スイッチング素子に電気的に接続された配線を備えた電気光学装置の製造方法であって、
前記配線を形成する配線形成工程と、
前記基板を平面的に見て、前記配線を覆うように第1の絶縁膜を形成する第1絶縁膜形成工程と、
前記第1の絶縁膜上に、前記配線と少なくとも部分的に重なるように、ストッパー膜を形成するストッパー膜形成工程と、
前記基板を平面的に見て、前記ストッパー膜を覆うように第2の絶縁膜を形成する第2絶縁膜形成工程と、
前記第2の絶縁膜を研磨することで平坦化する平坦化工程と
を備えることを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記平坦化工程前において、前記第2の絶縁膜における前記ストッパー膜と重なる部分に凹部を形成する凹部形成工程を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1絶縁膜形成工程において、前記第1の絶縁膜の表面の高さは、前記平坦化工程後の前記第2の絶縁膜の表面の高さとなるべき値に近くなるように形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記配線形成工程において、前記配線は、少なくとも部分的に形成密度が異なるように形成されており、
前記ストッパー膜形成工程において、前記ストッパー膜は、前記形成密度に応じて形成される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記平坦化工程後において、前記第1絶縁膜及び前記第2絶縁膜をパターニングすることで、前記第2絶縁膜よりも上層に形成される導電層と前記配線とを互いに電気的に接続するためのコンタクトホールを形成するコンタクトホール形成工程を更に備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記ストッパー膜形成工程において、前記ストッパー膜は、前記コンタクトホールと重なる位置に形成されることを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−75776(P2011−75776A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226390(P2009−226390)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】