説明

電気光学装置の製造方法

【課題】新たなパラメーターによって半導体層内における不純物分布を制御して電界効果
型トランジスターを形成することのできる電気光学装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】LDD構造の電界効果型トランジスターからなる画素トランジスターを基板
本体10wの一方面10sに形成するにあたって、一方面10s側の半導体層1aに不純
物を導入する不純物導入工程を行う。その後、不純物拡散工程において、一方面10s側
にレーザーアニール装置、ヒートガスアニール装置、ランプアニール装置等の加熱装置9
20を配置し、一方面10s側を他方面10t側より温度を高くした状態で半導体層1a
を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置用素子基板の基板本体の一方面に電界効果型トランジスターを
備えた電気光学装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶装置や有機エレクトロルミネッセンス装置等の電気光学装置では、画素電極を備え
た画素がマトリクス状に配置されており、複数の画素の各々には、電界効果型トランジス
ターからなる画素トランジスターが構成されている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる電界効果型トランジスターを形成する際には、一般に、素子基板の一方面に設け
た半導体層に不純物を導入した後、素子基板を加熱炉に入れて加熱し、不純物を半導体層
の厚さ方向に拡散させる不純物拡散工程(活性化工程)が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−96966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気光学装置では、電界効果型トランジスターのトランジスター特性によって表示品位
が変化することはよく知られており、電界効果型トランジスターの半導体層内における不
純物分布がトランジスター特性に影響を与えることも知られている。例えば、電気光学装
置のうち、液晶装置では、特定の画素で、電界効果型トランジスター(画素トランジスタ
ー)の抵抗が低いと、かかる画素だけが輝度の高い状態となってしまう。また、電界効果
型トランジスターのオフリーク電流が大きいと、フリッカ等の原因となる。
【0006】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、新たなパラメーターによって半導体層内にお
ける不純物分布を制御して電界効果型トランジスターを形成することのできる電気光学装
置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置の製造方法は、電気光学装置用
素子基板の基板本体の一方面および他方面のうち、前記一方面に設けた画素トランジスタ
ー用の半導体層に不純物を導入する不純物導入工程と、前記一方面側を前記他方面より温
度を高くした状態で前記半導体層を加熱して前記不純物を前記半導体層の厚さ方向に拡散
させる不純物拡散工程と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明では、不純物拡散工程において半導体層を加熱する際、基板本体全体を均一に加
熱するのではなく、一方面側を他方面より温度を高くした状態で半導体層を加熱する。こ
のため、半導体層の表面側(半導体層において基板本体が位置する側とは反対側)の温度
と、半導体層の底面側(半導体層において基板本体が位置する側)の温度との差を制御す
れば、半導体層の厚さ方向の不純物分布を制御することができる。すなわち、従来であれ
ば、不純物を導入した後は、半導体層の加熱温度および加熱時間のみで不純物分布を制御
していたが、本発明によれば、さらに、半導体層の表面側の温度と底面側の温度との差と
いう新たなパラメーターによっても不純物分布を制御することができる。それ故、本発明
によれば、半導体層内における不純物分布の最適化を図ることができるので、電界効果型
トランジスターのトランジスター特性のばらつきの圧縮や、トランジスター特性の向上を
図ることができる。
【0009】
本発明は特に、前記不純物導入工程において、前記半導体層のうち、ゲート電極と重な
るチャネル予定領域に隣接する第1領域に前記不純物を導入する第1不純物導入工程と、
前記半導体層のうち、前記チャネル予定領域から離間した第2領域に対して前記不純物を
導入する第2不純物導入工程と、を行い、前記第1不純物導入工程における不純物ドーズ
量が前記第2不純物導入工程における不純物ドーズ量より少ない場合に適用すると効果的
である。すなわち、電界効果型トランジスターをLDD構造とする場合に適用すると効果
的である。LDD構造の電界効果型トランジスターは特に、低濃度領域の性状によってト
ランジスター特性が大きく変動することから、低濃度領域における厚さ方向の不純物濃度
を最適化すれば、トランジスター特性のばらつきの圧縮やトランジスター特性の向上を図
ることができる。
【0010】
本発明において、前記不純物拡散工程では、前記一方面側から加熱する一方、前記他方
面側を冷却することが好ましい。
【0011】
本発明において、前記不純物拡散工程では、例えば、前記一方面側をレーザー光により
加熱する方法を採用する。
【0012】
本発明において、前記不純物拡散工程では、加熱ガスを前記一方面側に接触させる方法
を採用してもよい。
【0013】
本発明において、前記不純物拡散工程では、前記一方面側を赤外線ランプにより加熱す
る方法を採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を適用した液晶装置(電気光学装置)の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】本発明を適用した液晶装置に用いた液晶パネルの説明図である。
【図3】本発明を適用した液晶装置の画素の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る液晶装置の製造工程の要部を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る液晶装置の製造工程の要部を示す説明図である。
【図6】本発明を適用した液晶装置を用いた投射型表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明では、各種の電気
光学装置のうち、液晶装置およびその製造方法に本発明を適用した場合を中心に説明する
。また、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の
大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。また、画素トランジスタ
ーを流れる電流の方向が反転する場合、ソースとドレインとが入れ替わるが、本説明では
、画素電極が接続されている側(画素側ソースドレイン領域)をドレインとし、データ線
が接続されている側(データ線側ソースドレイン領域)をソースとする。また、素子基板
に形成される層を説明する際、上層側あるいは表面側とは素子基板の基板本体が位置する
側とは反対側(対向基板が位置する側)を意味し、下層側とは素子基板の基板本体が位置
する側を意味する。
【0016】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明を適用した液晶装置(電気光学装置)の電気的構成を示すブロック図で
ある。なお、図1は、あくまで電気的な構成を示すブロック図であるため、容量線等が延
在している方向等、レイアウトについては模式的に示してある。
【0017】
図1において、本形態の液晶装置100は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(V
ertical Alignment)モードの液晶パネル100pを有しており、液晶パネル100pは
、その中央領域に複数の画素100aがマトリクス状に配列された画像表示領域10a(
画素領域)を備えている。液晶パネル100pにおいて、後述する素子基板10(図2等
を参照)では、画像表示領域10aの内側で複数本のデータ線6aおよび複数本の走査線
3aが縦横に延びており、それらの交点に対応する位置に画素100aが構成されている
。複数の画素100aの各々には、電界効果型トランジスターからなる画素トランジスタ
ー30、および後述する画素電極9aが形成されている。画素トランジスター30のソー
スにはデータ線6aが電気的に接続され、画素トランジスター30のゲートには走査線3
aが電気的に接続され、画素トランジスター30のドレインには、画素電極9aが電気的
に接続されている。
【0018】
素子基板10において、画像表示領域10aより外周側には走査線駆動回路104やデ
ータ線駆動回路101が設けられている。データ線駆動回路101は各データ線6aに電
気的に接続しており、画像処理回路から供給される画像信号を各データ線6aに順次供給
する。走査線駆動回路104は、各走査線3aに電気的に接続しており、走査信号を各走
査線3aに順次供給する。
【0019】
各画素100aにおいて、画素電極9aは、後述する対向基板20(図2等を参照)に
形成された共通電極と液晶層を介して対向し、液晶容量50aを構成している。また、各
画素100aには、液晶容量50aで保持される画像信号の変動を防ぐために、液晶容量
50aと並列に蓄積容量55が付加されている。本形態では、蓄積容量55を構成するた
めに、複数の画素100aに跨る第1電極層5aが容量電極層として形成されている。本
形態において、第1電極層5aは、共通電位Vcomが印加された共通電位線5cに導通し
ている。
【0020】
(液晶パネル100pの構成)
図2は、本発明を適用した液晶装置100に用いた液晶パネル100pの説明図であり
、図2(a)、(b)は各々、液晶パネル100pを各構成要素と共に対向基板の側から
見た平面図、およびそのH−H′断面図である。
【0021】
図2(a)、(b)に示すように、液晶パネル100pでは、素子基板10と対向基板
20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材10
7は対向基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。シール材107は、光硬化
樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラ
スファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。
【0022】
かかる構成の液晶パネル100pにおいて、素子基板10および対向基板20はいずれ
も四角形であり、液晶パネル100pの略中央には、図1を参照して説明した画像表示領
域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107
も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画像表示領域10aの外周縁との間に
は、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。素子基板10において、画像
表示領域10aの外側では、素子基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および
複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路
104が形成されている。なお、端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が
接続されており、素子基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号
が入力される。
【0023】
詳しくは後述するが、素子基板10の一方面10sおよび他方面10tのうち、一方面
10s側の画像表示領域10aには、図1を参照して説明した画素トランジスター30、
および画素トランジスター30に電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成さ
れており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜16が形成されている。
【0024】
また、素子基板10の一方面10s側において、周辺領域10bには、画素電極9aと
同時形成されたダミー画素電極9b(図2(b)参照)が形成されている。ダミー画素電
極9bについては、ダミーの画素トランジスターと電気的に接続された構成、ダミーの画
素トランジスターが設けられずに配線に直接、電気的に接続された構成、あるいは電位が
印加されていないフロート状態にある構成が採用される。かかるダミー画素電極9bは、
素子基板10において配向膜16が形成される面を研磨により平坦化する際、画像表示領
域10aと周辺領域10bとの高さ位置を圧縮し、配向膜16が形成される面を平坦面に
するのに寄与する。また、ダミー画素電極9bを所定の電位に設定すれば、画像表示領域
10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0025】
対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には共通電極21が形成されて
おり、共通電極21の上層には配向膜26が形成されている。共通電極21は、対向基板
20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素100aに跨って形成されている
。また、対向基板20において素子基板10と対向する一方面側には、共通電極21の下
層側に遮光層108が形成されている。本形態において、遮光層108は、画像表示領域
10aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されており、見切りとして機能する。ここ
で、遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり
、遮光層108とシール材107とは重なっていない。なお、対向基板20において、遮
光層108は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた画素間領域と重なる領域等にブラッ
クマトリクス部として形成されることもある。
【0026】
このように構成した液晶パネル100pにおいて、素子基板10には、シール材107
より外側において対向基板20の角部分と重なる領域に、素子基板10と対向基板20と
の間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。かかる基板間
導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、対向
基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介し
て、素子基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、素子基板1
0の側から共通電位Vcomが印加されている。シール材107は、略同一の幅寸法をもっ
て対向基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角
形である。但し、シール材107は、対向基板20の角部分と重なる領域では基板間導通
用電極109を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円
弧状である。
【0027】
かかる構成の液晶装置100において、画素電極9aおよび共通電極21を透光性導電
膜により形成すると、透過型の液晶装置を構成することができる。これに対して、共通電
極21を透光性導電膜により形成し、画素電極9aを反射性導電膜により形成すると、反
射型の液晶装置を構成することができる。液晶装置100が反射型である場合、対向基板
20の側から入射した光が素子基板10の側の基板で反射して出射される間に変調されて
画像を表示する。液晶装置100が透過型である場合、素子基板10および対向基板20
のうち、一方側の基板から入射した光が他方側の基板を透過して出射される間に変調され
て画像を表示する。
【0028】
液晶装置100は、モバイルコンピューター、携帯電話機等といった電子機器のカラー
表示装置として用いることができ、この場合、対向基板20には、カラーフィルター(図
示せず)や保護膜が形成される。また、液晶装置100では、使用する液晶層50の種類
や、ノーマリホワイトモード/ノーマリブラックモードの別に応じて、位相差フィルムや
偏光板等が液晶パネル100pに対して所定の向きに配置される。さらに、液晶装置10
0は、後述する投射型表示装置(液晶プロジェクター)において、RGB用のライトバル
ブとして用いることができる。この場合、RGB用の各液晶装置100の各々には、RG
B色分解用のダイクロイックミラーを介して分解された各色の光が投射光として各々入射
されることになるので、カラーフィルターは形成されない。
【0029】
本形態において、液晶装置100が、後述する投射型表示装置においてRGB用のライ
トバルブとして用いられる透過型の液晶装置であって、対向基板20から入射した光が素
子基板10を透過して出射される場合を中心に説明する。また、本形態において、液晶装
置100は、液晶層50として、誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を用いたVAモ
ードの液晶パネル100pを備えている場合を中心に説明する。
【0030】
(画素の具体的構成)
図3は、本発明を適用した液晶装置100の画素の説明図であり、図3(a)、(b)
は各々、素子基板10において隣り合う画素の平面図、および図3(a)のF−F′線に
相当する位置で液晶装置100を切断したときの断面図である。なお、図3(a)では、
各領域を以下の線
走査線3a=太い実線
半導体層1a=細くて短い点線
データ線6aおよびドレイン電極6b=一点鎖線
第1電極層5aおよび中継電極5b=細くて長い破線
第2電極層7a=二点鎖線
画素電極9a=太くて短い破線
で表してある。
【0031】
図3(a)に示すように、素子基板10上には、複数の画素100aの各々に矩形状の
画素電極9aが形成されており、隣り合う画素電極9aにより挟まれた縦横の画素間領域
10fと重なる領域に沿ってデータ線6aおよび走査線3aが形成されている。より具体
的には、画素間領域10fのうち、一方方向に延在する第1画素間領域10gと重なる領
域に沿って走査線3aが延在し、前記の一方方向と交差する第2方向に沿って延在する第
2画素間領域10hと重なる領域に沿ってデータ線6aが延在している。データ線6aお
よび走査線3aは各々、直線的に延びており、データ線6aと走査線3aとが交差する領
域に画素トランジスター30が形成されている。素子基板10上には、データ線6aと重
なるように、図1を参照して説明した第1電極層5a(容量電極層)が形成されている。
【0032】
図3(a)、(b)に示すように、素子基板10は、石英基板やガラス基板等の透光性
の基板本体10wの液晶層50側の表面(一方面側)に形成された画素電極9a、画素ス
イッチング用の画素トランジスター30、および配向膜16を主体として構成されており
、対向基板20は、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20w、その液晶層50
側の表面(素子基板10と対向する一方面側)に形成された共通電極21、および配向膜
26を主体として構成されている。
【0033】
素子基板10において、基板本体10wの一方面側には、導電性のポリシリコン膜、金
属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる走査線3aが形成され
ている。本形態において、走査線3aは、タングステンシリサイド(WSi)等の遮光性
導電膜から構成されており、画素トランジスター30に対する遮光膜としても機能してい
る。本形態において、走査線3aは、厚さが200nm程度のタングステンシリサイドか
らなる。なお、基板本体10wと走査線3aとの間には、シリコン酸化膜等の絶縁膜が設
けられることもある。
【0034】
基板本体10wの一方面10s側において、走査線3aの上層側には、シリコン酸化膜
等の絶縁膜12が形成されており、かかる絶縁膜12の表面に、半導体層1aを備えた画
素トランジスター30が形成されている。本形態において、絶縁膜12は、例えば、テト
ラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化
膜と、シランと亜酸化窒素とを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜
との2層構造を有している。
【0035】
画素トランジスター30は、走査線3aとデータ線6aとの交差領域において走査線3
aの延在方向に長辺方向に向けた半導体層1aと、半導体層1aの長さ方向と直交する方
向に延在して半導体層1aの長さ方向の中央部分に重なるゲート電極3cとを備えている
。また、画素トランジスター30は、半導体層1aとゲート電極3cとの間に透光性のゲ
ート絶縁層2を有している。半導体層1aは、ゲート電極3cに対してゲート絶縁層2を
介して対向するチャネル領域1gを備えているとともに、チャネル領域1gの両側にソー
ス領域1bおよびドレイン領域1cを備えている。本形態において、画素トランジスター
30は、LDD構造を有している。従って、ソース領域1bおよびドレイン領域1cは各
々、チャネル領域1gの両側に低濃度領域1b1、1c1を備え、低濃度領域1b1、1c1
に対してチャネル領域1gとは反対側で隣接する領域に高濃度領域1b2、1c2を備えて
いる。
【0036】
半導体層1aは、多結晶シリコン膜等によって構成されている。ゲート絶縁層2は、半
導体層1aを熱酸化したシリコン酸化膜からなる第1ゲート絶縁層2aと、CVD法等に
より形成されたシリコン酸化膜等からなる第2ゲート絶縁層2bとの2層構造からなる。
ゲート電極3cは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜
化合物等の導電膜からなり、半導体層1aの両側において、ゲート絶縁層2および絶縁膜
12を貫通するコンタクトホール12a、12bを介して走査線3aに導通している。本
形態において、ゲート電極3cは、膜厚が100nm程度の導電性のポリシリコン膜と、
膜厚が100nm程度のタングステンシリサイド膜との2層構造を有している。
【0037】
なお、本形態では、液晶装置100を透過した後の光が他の部材で反射した際、かかる
反射光が半導体層1aに入射して画素トランジスター30で光電流に起因する誤動作が発
生することを防止することを目的に、走査線3aを遮光膜により形成してある。但し、走
査線をゲート絶縁層2の上層に形成し、その一部をゲート電極3cとしてもよい。この場
合、図3に示す走査線3aは、遮光のみを目的として形成されることになる。
【0038】
ゲート電極3cの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の層間絶縁膜41が形成
されており、層間絶縁膜41の上層には、データ線6aおよびドレイン電極6bが同一の
導電膜によって形成されている。層間絶縁膜41は、例えば、シランと亜酸化窒素とを用
いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。
【0039】
データ線6aおよびドレイン電極6bは、導電性のポリシリコン膜、金属シリサイド膜
、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、データ線6aおよ
びドレイン電極6bは、膜厚が20nmのチタン(Ti)膜、膜厚が50nmの窒化チタ
ン(TiN)膜、膜厚が350nmのアルミニウム(Al)膜、膜厚が150nmのTi
N膜をこの順に積層してなる4層構造を有している。データ線6aは、層間絶縁膜41お
よびゲート絶縁層2を貫通するコンタクトホール41aを介してソース領域1b(データ
線側ソースドレイン領域)に導通している。ドレイン電極6bは、第1画素間領域10g
と重なる領域において、半導体層1aのドレイン領域1c(画素電極側ソースドレイン領
域)と一部が重なるように形成されており、層間絶縁膜41およびゲート絶縁層2を貫通
するコンタクトホール41bを介してドレイン領域1cに導通している。
【0040】
データ線6aおよびドレイン電極6bの上層側にはシリコン酸化膜等からなる透光性の
層間絶縁膜42が形成されている。層間絶縁膜42は、例えば、テトラエトキシシランと
酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。この
場合の成膜は600℃以下、好ましくは450℃以下の温度条件で行う。
【0041】
層間絶縁膜42の上層側には、第1電極層5aおよび中継電極5bが同一の導電膜によ
って形成されている。第1電極層5aおよび中継電極5bは、導電性のポリシリコン膜、
金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態において、
第1電極層5aおよび中継電極5bは、膜厚が200nm程度のAl膜と、膜厚が100
nm程度のTiN膜との2層構造を有している。第1電極層5aは、データ線6aと同様
、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在している。中継電極5bは、第1画素
間領域10gと重なる領域において、ドレイン電極6bと一部が重なるように形成されて
おり、層間絶縁膜42を貫通するコンタクトホール42aを介してドレイン電極6bに導
通している。
【0042】
第1電極層5aおよび中継電極5bの上層側にはシリコン酸化膜等の層間絶縁膜44が
エッチングストッパー層として形成されており、かかる層間絶縁膜44には、第1電極層
5aと重なる領域に開口部44bが形成されている。本形態において、層間絶縁膜44は
、テトラエトキシシランと酸素ガスとを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコ
ン酸化膜等からなる。この場合の成膜は600℃以下、好ましくは450℃以下の温度条
件で行う。ここで、開口部44bは、図3(a)での図示を省略するが、データ線6aと
走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在す
る部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第2画素間領域10hと
重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成されている。
【0043】
層間絶縁膜44の上層側には透光性の誘電体層40が形成されており、かかる誘電体層
40の上層側には第2電極層7aが形成されている。第2電極層7aは、導電性のポリシ
リコン膜、金属シリサイド膜、金属膜あるいは金属膜化合物等の導電膜からなる。本形態
において、第2電極層7aは、膜厚が100nm程度のTiN膜からなる。誘電体層40
としては、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等のシリコン化合物を用いることができる他
、アルミニウム酸化膜、チタン酸化膜、タンタル酸化膜、ニオブ酸化膜、ハフニウム酸化
膜、ランタン酸化膜、ジルコニウム酸化膜等の高誘電率の誘電体層を用いることができる
。この場合の成膜は600℃以下、好ましくは450℃以下の温度条件で行う。第2電極
層7aは、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点として第1画素間領域10gと
重なる領域に沿って延在する部分と、データ線6aと走査線3aとの交差領域を起点とし
て第2画素間領域10hと重なる領域に沿って延在する部分とを備えたL字形状に形成さ
れている。従って、第2電極層7aのうち、第2画素間領域10hと重なる領域に沿って
延在する部分は、層間絶縁膜44の開口部44bにおいて、誘電体層40を介して第1電
極層5aに重なっている。このようにして、本形態では、第1電極層5a、誘電体層40
、および第2電極層7aは、第1画素間領域10gと重なる領域に蓄積容量55を構成し
ている。
【0044】
また、第2電極層7aにおいて、第1画素間領域10gと重なる領域に沿って延在する
部分は、中継電極5bと部分的に重なっており、誘電体層40および層間絶縁膜44を貫
通するコンタクトホール44aを介して中継電極5bに導通している。
【0045】
第2電極層7aの上層側には透光性の層間絶縁膜45が形成されており、かかる層間絶
縁膜45の上層側には、ITO(Indium Tin Oxide)膜等の透光性導電膜からなる画素電
極9aが形成されている。層間絶縁膜45は、例えば、テトラエトキシシランと酸素ガス
とを用いたプラズマCVD法等により形成したシリコン酸化膜等からなる。この場合の成
膜は600℃以下、好ましくは450℃以下の温度条件で行う。画素電極9aは、データ
線6aと走査線3aとの交差領域の近傍で第2電極層7aと部分的に重なっており、層間
絶縁膜45を貫通するコンタクトホール45aを介して第2電極層7aに導通している。
層間絶縁膜45の表面は平坦面になっており、かかる平坦面上に画素電極9aが形成され
ている。
【0046】
画素電極9aの表面には配向膜16が形成されている。配向膜16は、ポリイミド等の
樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜16
は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23
Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。配向膜16と画素電
極9aとの層間にはシリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の透光性の保護膜が形成され、か
かる保護膜によって、画素電極9aの間に形成された凹部を埋めることもある。かかる構
成によれば、配向膜16を平坦面に形成することができる。
【0047】
対向基板20では、石英基板やガラス基板等の透光性の基板本体20wの液晶層50側
の表面(素子基板10に対向する側の面)に、ITO膜等の透光性導電膜からなる共通電
極21が形成されており、かかる共通電極21を覆うように配向膜26が形成されている
。配向膜26は、配向膜16と同様、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等
の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜26は、SiOX(x<2)、SiO2
TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無
機配向膜(垂直配向膜)である。なお、配向膜26と共通電極21との層間にシリコン酸
化膜やシリコン窒化膜等の保護膜を形成することもある。かかる配向膜16、26は、液
晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を垂直配向させ、液晶パネル1
00pは、ノーマリブラックのVAモードとして動作する。
【0048】
なお、図1および図2を参照して説明したデータ線駆動回路101および走査線駆動回
路104には、nチャネル型の駆動用トランジスターとpチャネル型の駆動用トランジス
ターとを備えた相補型トランジスター回路等が構成されている。ここで、駆動用トランジ
スターは、画素トランジスター30の製造工程の一部を利用して形成されたものである。
このため、素子基板10においてデータ線駆動回路101および走査線駆動回路104が
形成されている領域も、図3(b)に示す断面構成と略同様な断面構成を有している。
【0049】
(液晶装置100の製造方法)
図4は、本発明の実施の形態1に係る液晶装置100の製造工程の要部を示す説明図で
あり、図4(a)、(b)、(c)は、第1不純物導入工程の説明図、第2不純物導入工
程の説明図、および不純物拡散工程の説明図である。なお、以下に説明する工程は、素子
基板10を多数取りできる大型基板の状態で行われるが、以下の説明では、サイズにかか
わらず、素子基板10として説明する。また、以下の説明では、画素トランジスター30
をnチャネル型の電界効果型トランジスターとして形成する場合を例示する。
【0050】
本形態の液晶装置100の製造工程のうち、素子基板10を形成する工程では、図4(
a)に示すように、基板本体10wの一方面側に、走査線3a、絶縁膜12、半導体層1
a、ゲート絶縁層2およびゲート電極3cを形成した後、以下の工程を行う。
【0051】
まず、半導体層1aにイオン注入等の方法で不純物を導入する不純物導入工程を行う。
かかる不純物導入工程として、本形態では、図4(a)に示す第1不純物導入工程におい
て、半導体層1aのうち、ゲート電極3cと重なるチャネル予定領域(図3(b)に示す
チャネル領域1gの形成予定領域)に隣接する第1領域1d1、1e1(図3(b)に示す
ソース領域1bおよびドレイン領域1cの形成予定領域)にリンイオン等のn型の不純物
を少ないドーズ量で導入する。その際の不純物のドーズ量は、例えば1×1013/cm2
である。かかる第1不純物導入工程においては、ゲート電極3cをマスクとして不純物を
導入する。従って、第1領域1d1、1e1は、ゲート電極3cに対して自己整合的に設定
される。なお、不純物が導入されなかった領域がチャネル領域1gとなる。次に、図4(
b)に示す第2不純物導入工程においては、ゲート電極3cを広めに覆うマスク90を形
成し、この状態で、半導体層1aのうち、チャネル予定領域から離間した第2領域1d2
、1e2に対してリンイオン等のn型の不純物を多いドーズ量で導入する。その際の不純
物のドーズ量は、例えば1×1015/cm2である。
【0052】
次に、図4(c)に示すように、層間絶縁膜41を形成した後、不純物拡散工程(活性
化工程)を行う。かかる不純物拡散工程では、半導体層1aを600℃以上の温度に加熱
して不純物を半導体層1aの厚さ方向に拡散させる。その結果、第1不純物導入工程で不
純物が導入された領域(第1領域1d1、1e1)のうち、第2不純物導入工程で不純物が
導入されなかった領域がソース領域1bおよびドレイン領域1cの低濃度領域1b1、1
c1となる。また、第2不純物導入工程で不純物が導入された領域(第2領域1d2、1e
2)がソース領域1bおよびドレイン領域1cの高濃度領域1b2、1c2となる。このよ
うにしてnチャネル型の電界効果型トランジスターからなる画素トランジスター30が形
成される。また、図1等に示すデータ線駆動回路101や走査線駆動回路104には、n
チャネル型の電界効果型トランジスターからなる駆動回路用トランジスターが形成される
。なお、データ線駆動回路101や走査線駆動回路104のpチャネル型の電界効果型ト
ランジスター(駆動回路用トランジスター)も同様な方法により形成することができる。
【0053】
かかる不純物拡散工程において、本形態では、素子基板10の基板本体10wにおいて
、半導体層1aが形成されている一方面10sの側を他方面10tより温度を高くした状
態で半導体層1aを加熱して不純物を半導体層1aの厚さ方向に拡散させる。より具体的
には、基板本体10wの一方面10sを上方に向けて基板本体10wをステージ910上
に配置し、この状態で、加熱装置920により、基板本体10wの一方面10sを加熱す
る。
【0054】
かかる加熱装置920としては、レーザーアニール装置、ヒートガスアニール装置、ラ
ンプアニール装置等を用いることができる。レーザーアニール装置は、基板本体10wの
一方面10sにレーザー光を照射して半導体層1aを表面側から加熱する。ヒートガスア
ニール装置は、基板本体10wの一方面10sに加熱ガスを吹き付けて加熱ガスを一方面
10sに接触させ、半導体層1aを表面側から加熱する。ランプアニール装置は、基板本
体10wの一方面10sに赤外光を照射して半導体層1aを表面側から加熱する。
【0055】
その結果、不純物は、半導体層1aの表面側(半導体層1aにおいて基板本体10wが
位置する側)から底面側(半導体層1aにおいて基板本体10wが位置する側)に向けて
拡散する。その際、本形態では、不純物の拡散を、半導体層1aの加熱温度および加熱時
間に加えて、半導体層1aの表面側の温度と底面側の温度との差という新たなパラメータ
ーによっても制御する。
【0056】
このようにして、画素トランジスター30を形成した後は、図3等を参照して説明した
構成要素を形成する。かかる構成要素の形成には周知の方法を利用できるので、説明を省
略する。
【0057】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の液晶装置100の製造方法によれば、不純物拡散工程に
おいて半導体層1aを加熱する際、基板本体10w全体を均一に加熱するのではなく、一
方面10s側を他方面10t側より温度を高くした状態で半導体層1aを加熱する。この
ため、半導体層1aの表面側の温度と、半導体層1aの底面側の温度との差等を制御すれ
ば、半導体層1aの厚さ方向の不純物分布を制御することができる。すなわち、従来であ
れば、不純物を導入した後は、半導体層1aの加熱温度および加熱時間のみで不純物分布
を制御していたが、本形態によれば、さらに、半導体層1aの表面側の温度と底面側の温
度との差という新たなパラメーターによっても不純物分布を制御することができる。それ
故、本形態によれば、半導体層1a内における不純物分布の最適化を図ることができるの
で、画素トランジスター30のトランジスター特性のばらつきの圧縮や、トランジスター
特性の向上を図ることができる。
【0058】
特に本形態では、画素トランジスター30(電界効果型トランジスター)をLDD構造
とする場合に適用したため、その効果が顕著である。すなわち、LDD構造の電界効果型
トランジスターは特に、低濃度領域1b1、1c1での不純物分布によってトランジスター
特性が大きく変動することから、低濃度領域1b1、1c1における厚さ方向の不純物濃度
を最適化すれば、トランジスター特性のばらつきの圧縮やトランジスター特性の向上を図
ることができる。
【0059】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係る液晶装置100の製造工程の要部を示す説明図で
あり、図5(a)、(b)は、不純物拡散工程、および温度制御動作を示す説明図である
。なお、本形態の基本的な構成は、実施の形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
本形態でも、実施の形態1で説明した不純物導入工程(第1不純物導入工程および第2
不純物導入工程)を行った後、不純物拡散工程(活性化工程)を行う。かかる不純物拡散
工程でも、実施の形態1と同様、素子基板10の基板本体10wにおいて、半導体層1a
が形成されている一方面10sの側を他方面10tより温度を高くした状態で半導体層1
aを加熱して不純物を半導体層1aの厚さ方向に拡散させる。
【0061】
かかる不純物拡散工程を行うにあたって、本形態では、図5(a)に示すように、基板
本体10wの一方面10sを上方に向けて基板本体10wを、空冷あるいは水冷の冷却装
置付きステージ940(冷却プレート)上に配置し、基板本体10wの他方面10t側を
冷却しながら、加熱装置920により、基板本体10wの一方面10sを加熱する。加熱
装置920としては、実施の形態1と同様、レーザーアニール装置、ヒートガスアニール
装置、ランプアニール装置等を用いることができる。冷却装置付きステージ940として
は、空冷あるいは水冷の冷却装置を内蔵したものの他、コンプレッサーを用いて液体が気
化する際の気化熱を利用したものや、ペルチェ素子を用いたもの等を利用してもよい。
【0062】
ここで、加熱装置920による加熱、および冷却装置付きステージ940による冷却は
連続的に行ってもよいが、図5(b)に示すように、加熱装置920での加熱を間欠的に
行い、冷却装置付きステージ940による冷却も間欠的に行ってもよい。
【0063】
本形態では、上記のように構成したので、実施の形態1と同様、不純物を導入した後、
半導体層1aの加熱温度および加熱時間に加えて、半導体層1aの表面側の温度と底面側
の温度との差という新たなパラメーターによっても不純物分布を制御することができる。
それ故、半導体層1a内における不純物分布の最適化を図ることができる等、実施の形態
1と同様な効果を奏する。
【0064】
また、本形態では、冷却装置付きステージ940(冷却プレート)を用いたため、基板
本体10wの他方面10t側を冷却しながら、加熱装置920により、基板本体10wの
一方面10sを加熱することができる。それ故、半導体層1aの表面側の温度と底面側の
温度との間に十分な差を設定することができる。
【0065】
また、図5(b)を参照して説明したように、不純物拡散工程中、加熱装置920およ
び冷却装置付きステージ940をオン・オフさせれば、半導体層1aの表面側の温度と底
面側の温度との差を正確に制御することができる。それ故、半導体層1a内における不純
物分布をさらに最適化することができる等の効果を奏する。
【0066】
なお、基板本体10wの他方面10tを冷却するにあたっては、冷却装置付きステージ
940を用いた構成の他、例えば、基板本体10wを保持する際、他方面10tの側を開
放状態として他方面に冷却空気を吹き付ける等の方法を採用してもよい。
【0067】
[他の実施の形態]
上記実施の形態では、透過型の液晶装置100に本発明を適用した例を説明したが、反
射型の液晶装置100に本発明を適用してもよい。また、上記実施の形態では、液晶装置
100に本発明を適用した例を説明したが、有機エレクトロルミネッセンス装置等、他の
電気光学装置に本発明を適用してもよい。
【0068】
[電子機器への構成例]
上述した実施形態に係る液晶装置100を備えた電子機器について説明する。図6は、
本発明を適用した液晶装置100を用いた投射型表示装置の概略構成図であり、図6(a
)、(b)は各々、透過型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図、および反
射型の液晶装置100を用いた投射型表示装置の説明図である。
【0069】
(投射型表示装置の第1例)
図6(a)に示す投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に
光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表
示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロ
イックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117(液晶装置100)と
、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119と、リレー系120とを備
えている。
【0070】
光源112は、赤色光、緑色光及び青色光を含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成
されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光を透過させると共
に緑色光及び青色光を反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は
、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光及び青色光のうち青色光を透過させる
と共に緑色光を反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、
114は、光源112から出射した光を赤色光と緑色光と青色光とに分離する色分離光学
系を構成する。
【0071】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター12
1及び偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター12
1は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏
光変換素子122は、光源112からの光を例えばs偏光のような特定の振動方向を有す
る偏光にする構成となっている。
【0072】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123
で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100である。液晶ライ
トバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル115c
及び第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色
光は、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光
のままである。
【0073】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換
する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させ
る偏光板である。そして、液晶パネル115cは、p偏光を画像信号に応じた変調によっ
てs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、
第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって
、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光を変調し、変調した赤色光をクロ
スダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0074】
なお、λ/2位相差板115a及び第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性
のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a及び第1偏
光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0075】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイッ
クミラー114で反射した緑色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置100で
ある。そして、液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光
板116b、液晶パネル116c及び第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバル
ブ116に入射する緑色光は、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射す
るs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板で
ある。また、液晶パネル116cは、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中
間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板1
16dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライト
バルブ116は、画像信号に応じて緑色光を変調し、変調した緑色光をクロスダイクロイ
ックプリズム119に向けて射出する構成となっている。
【0076】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミ
ラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光を画像信号に応じて変調する透過
型の液晶装置100である。そして、液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ11
5、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル117
c及び第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青
色光は、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した
後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから
、s偏光となっている。
【0077】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換
する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させ
る偏光板である。そして、液晶パネル117cは、p偏光を画像信号に応じた変調によっ
てs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、
第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって
、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光を変調し、変調した青色光をクロ
スダイクロイックプリズム119に向けて射出する構成となっている。なお、λ/2位相
差板117a及び第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されてい
る。
【0078】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125b
とを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光の光路が長いことによる光
損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイッ
クミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ12
4bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、
ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光をリレ
ーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは
、リレーレンズ124bから出射した青色光を液晶ライトバルブ117に向けて反射する
ように配置されている。
【0079】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119b
をX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光を反射
して緑色光を透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光を反射して緑色光を
透過する膜である。したがって、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバ
ルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光と緑色光と青色光とを合成し、投射光
学系118に向けて射出するように構成されている。
【0080】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入
射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム1
19に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入
射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119に
おいて各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に
、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射トランジスター特性に優れている
。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光及び青色光をs偏
光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光をp偏光としている。投
射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム
119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0081】
(投射型表示装置の第2例)
図6(b)に示す投射型表示装置1000は、光源光を発生する光源部1021と、光
源部1021から出射された光源光を赤、緑、青の3色に分離する色分離導光光学系10
23と、色分離導光光学系1023から出射された各色の光源光によって照明される光変
調部1025とを有している。また、投射型表示装置1000は、光変調部1025から
出射された各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム1027(合成光学系)
と、クロスダイクロイックプリズム1027を経た像光をスクリーン(不図示)に投射す
るための投射光学系である投射光学系1029とを備えている。
【0082】
かかる投射型表示装置1000において、光源部1021は、光源1021aと、一対
のフライアイ光学系1021d、1021eと、偏光変換部材1021gと、重畳レンズ
1021iとを備えている。本形態においては、光源部1021は、放物面からなるリフ
レクタ1021fを備えており、平行光を出射する。フライアイ光学系1021d、10
21eは、システム光軸と直交する面内にマトリックス状に配置された複数の要素レンズ
からなり、これらの要素レンズによって光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光
変換部材1021gは、フライアイ光学系1021eから出射した光源光を、例えば図面
に平行なp偏光成分のみに変換して光路下流側光学系に供給する。重畳レンズ1021i
は、偏光変換部材1021gを経た光源光を全体として適宜収束させることにより、光変
調部1025に設けた複数の液晶装置100を各々均一に重畳照明可能とする。
【0083】
色分離導光光学系1023は、クロスダイクロイックミラー1023aと、ダイクロイ
ックミラー1023bと、反射ミラー1023j、1023kとを備える。色分離導光光
学系1023において、光源部1021からの略白色の光源光は、クロスダイクロイック
ミラー1023aに入射する。クロスダイクロイックミラー1023aを構成する一方の
第1ダイクロイックミラー1031aで反射された赤色(R)の光は、反射ミラー102
3jで反射されダイクロイックミラー1023bを透過して、入射側偏光板1037r、
p偏光を透過させ、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032r、および光学補
償板1039rを介して、p偏光のまま、赤色(R)用の液晶装置100に入射する。
【0084】
また、第1ダイクロイックミラー1031aで反射された緑色(G)の光は、反射ミラ
ー1023jで反射され、その後、ダイクロイックミラー1023bでも反射されて、入
射側偏光板1037g、p偏光を透過させ、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1
032g、および光学補償板1039gを介して、p偏光のまま、緑色(G)用の液晶装
置100に入射する。
【0085】
これに対して、クロスダイクロイックミラー1023aを構成する他方の第2ダイクロ
イックミラー1031bで反射された青色(B)の光は、反射ミラー1023kで反射さ
れて、入射側偏光板1037b、p偏光を透過させ、s偏光を反射するワイヤーグリッド
偏光板1032b、および光学補償板1039bを介して、p偏光のまま、青色(B)用
の液晶装置100に入射する。
【0086】
なお、光学補償板1039r、1039g、1039bは、液晶装置100への入射光
および出射光の偏光状態を調整することで、液晶層の特性を光学的に補償している。
【0087】
このように構成した投射型表示装置1000では、各液晶装置100において、光学補
償板1039r、1039g、1039bを経て入射した3色の光は各々、各液晶装置1
00において変調される。その際、液晶装置100から出射された変調光のうち、s偏光
の成分光は、ワイヤーグリッド偏光板1032r、1032g、1032bで反射し、出
射側偏光板1038r、1038g、1038bを介してクロスダイクロイックプリズム
1027に入射する。クロスダイクロイックプリズム1027には、X字状に交差する第
1誘電体多層膜1027aおよび第2誘電体多層膜1027bが形成されており、一方の
第1誘電体多層膜1027aはR光を反射し、他方の第2誘電体多層膜1027bはB光
を反射する。従って、3色の光は、クロスダイクロイックプリズム1027において合成
され、投射光学系1029に出射される。そして、投射光学系1029は、クロスダイク
ロイックプリズム1027で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(図示
せず。)投射する。
【0088】
(他の投射型表示装置)
なお、投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を
用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶装置に供給するように構成
してもよい。
【0089】
(他の電子機器)
本発明を適用した液晶装置100については、上記の電子機器の他にも、携帯電話機、
情報携帯端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルカメラ、液晶テレビ
、カーナビゲーション装置、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等の電
子機器において直視型表示装置として用いてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1a・・半導体層、1b・・ソース領域、1b1、1c1・・低濃度領域、1b2、1c2・
・高濃度領域、1d1、1e1・・第1領域、1d2、1e2・・第2領域、1c・・ドレイ
ン領域、1g・・チャネル領域、9a・・画素電極、10・・素子基板、30・・画素ト
ランジスター、100・・液晶装置、110、1000・・投射型表示装置、910・・
ステージ、920・・加熱装置、940・・冷却装置付きステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学装置用素子基板の基板本体の一方面および他方面のうち、前記一方面に設けた
画素トランジスター用の半導体層に不純物を導入する不純物導入工程と、
前記一方面側を前記他方面より温度を高くした状態で前記半導体層を加熱して前記不純
物を前記半導体層の厚さ方向に拡散させる不純物拡散工程と、
を有することを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記不純物導入工程では、前記半導体層のうち、ゲート電極と重なるチャネル予定領域
に隣接する第1領域に前記不純物を導入する第1不純物導入工程と、前記半導体層のうち
、前記チャネル予定領域から離間した第2領域に対して前記不純物を導入する第2不純物
導入工程と、を行い、前記第1不純物導入工程における不純物ドーズ量が前記第2不純物
導入工程における不純物ドーズ量より少ないことを特徴とする請求項1に記載の電気光学
装置の製造方法。
【請求項3】
前記不純物拡散工程では、前記一方面側から加熱する一方、前記他方面側を冷却するこ
とを特徴とする請求項1または2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記不純物拡散工程では、前記一方面側をレーザー光により加熱することを特徴とする
請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記不純物拡散工程では、加熱ガスを前記一方面側に接触させることを特徴とする請求
項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記不純物拡散工程では、前記一方面側を赤外線ランプにより加熱することを特徴とす
る請求項1乃至3の何れか一項に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−190888(P2012−190888A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51316(P2011−51316)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】