説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において、比較的簡易な構成で、各画素の残存電圧を低減する。
【解決手段】電気光学装置は、基板(10)と、基板上の表示領域(10a)で互いに交差する走査線(3a)及びデータ線(6a)と、走査線及びデータ線の交差に対応して設けられた画素電極(9a)と、画素電極及び画素電極に絶縁膜(75)を介して対向配置される導電膜(9b)からなる蓄積容量(70)と、画素電極及び導電膜の少なくとも一方を延在し、画素電極及び導電膜を互いに電気的に接続する抵抗部(200)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクター等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置として、例えば複数の画素が配列された画素領域において、画素単位で電位を供給することにより画像を表示可能とするものがある。このような装置では、電源をオフした際に、各画素には直前まで供給されていた電位が保持された状態となる。各画素に保持された電位(以下、適宜「残存電圧」と称する)は、放電されるのに比較的長い時間(例えば、数秒程度)を要してしまうため、表示不良や電気光学物質の劣化の原因となってしまうおそれがある。このため、例えば特許文献1では、装置の電源をオフする際に、各画素の電位をリセットするような信号を供給することで残存電圧を低減しようとする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−29721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した技術では、画像の表示とは関係ない部分で他の信号を供給する動作が求められるため、装置の動作シーケンスが複雑化してしまうと共に、それを実現するために回路構成も複雑化してしまう。即ち、上述した技術には、仮に残存電圧を低減できたとしても、その分、装置の構成や動作が複雑化してしまうおそれがあるという技術的問題点がある。
【0005】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、比較的簡易な構成で、各画素の残存電圧を低減可能な電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板と、前記基板上の表示領域で互いに交差する走査線及びデータ線と、前記走査線及び前記データ線の交差に対応して設けられた画素電極と、前記画素電極及び該画素電極に絶縁膜を介して対向配置される導電膜からなる蓄積容量と、前記画素電極及び前記導電膜の少なくとも一方を延在し、前記画素電極及び前記導電膜を互いに電気的に接続する抵抗部とを備える。
【0007】
本発明の電気光学装置によれば、その動作時には、データ線から画素電極への画像信号の供給が制御される、所謂アクティブマトリクス方式による画像表示が可能となる。具体的には、各画素は、トランジスタのゲート電極に走査線より走査信号が供給されることで選択状態となり、トランジスタの半導体層の一方のソースドレイン領域がデータ線と互いに電気的に接続され且つ他方のソースドレイン領域が画素電極と互いに電気的に接続されることにより、画素電極にデータ線から画像信号が供給される。
【0008】
本発明では、画素電極は、データ線及び走査線の交差に対応して、基板上の表示領域(即ち、画像に寄与する領域)にマトリクス状に複数設けられている。画素電極は、例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料からなる。そして、この画素電極に絶縁膜を介して対向配置されるように、導電膜が設けられている。導電膜は、典型的には、画素電極と同様にITO等の透明導電材料からなる。
【0009】
ここで特に、画素電極及び導電膜は、互いに電気的に接続されることで、部分的に蓄積容量を形成している。即ち、画素電極及び導電膜間の絶縁膜が容量絶縁膜として機能することで、供給された電位を保持可能な構成とされている。絶縁膜は、蓄積容量の容量値を大きくするためにも、誘電率が高い材料を用いて薄く形成されていることが望ましい。尚、画素電極及び導電膜は、例えば絶縁膜を貫通するように設けられるコンタクトホール等を介して、互いに電気的に接続される。画素電極及び導電膜が蓄積容量を構成することにより、画素電極に供給された電位のリークを低減することができるため、表示品質を高めることが可能となる。
【0010】
更に、画素電極及び導電膜は、少なくとも一方が延在するように設けられ、画像信号の供給が停止された際に、蓄積容量に並列に付加された抵抗部として機能する。即ち、画素電極及び導電膜は、部材本来の機能を発揮しない部分にまで延びるように冗長的に設けられ、抵抗部を形成している。このため、装置の電源がオフとされた場合に、蓄積容量に保持された電位を効率的に放電することができる。
【0011】
仮に、このような放電を行えないとすると、電源オフ時に蓄積容量に保持された残存電圧は、例えば表示すべきでない画像を表示させてしまうことにより、使用者に違和感を与えてしまう原因となってしまう。また、比較的長い時間保持されることにより、電気光学物質の劣化を早めてしまう原因となってしまう。
【0012】
しかるに本発明では特に、上述したように、装置の電源がオフとされた場合に、画素電極及び導電膜が抵抗部として機能することで、蓄積容量に保持された電位を効率的に放電することができる。よって、高品質な画像表示及び信頼性の向上を実現することができる。尚、このような効果は、画素電極及び導電膜の抵抗値によらず相応に得ることができる。即ち、画素電極及び導電膜は、抵抗値が極めて高い材料を含んで構成されなくともよい。但し、蓄積容量の保持電圧等に基づいて画素電極及び導電膜の材料や形状を決定するようにすれば、より顕著に効果を発揮させることができる。
【0013】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、比較的簡易な構成で、各画素の残存電圧を低減することが可能である。
【0014】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記画素電極及び前記導電膜における前記蓄積容量を形成しない部分が、少なくとも部分的に前記抵抗部を形成している。
【0015】
この態様によれば、画素電極及び導電膜における蓄積容量を形成しない部分が、意図的に蓄積容量より高い抵抗値を有するように形成されている。具体的には、例えば蓄積容量を形成する部分が容量値を高めるために比較的広い面積を有するように設けられているのに対し、抵抗部を形成する部分は抵抗値を高めるために幅が狭くなるように設けられている。このように構成することで、装置の電源がオフとされた場合に、各画素の残存電圧をより効率的に放電することができる。従って、より確実に高品質な画像表示及び信頼性の向上を実現することができる。
【0016】
上述した画素電極及び導電膜が抵抗部を形成する態様では、前記画素電極及び前記導電膜は、前記表示領域における光を透過可能な複数の開口領域を相互に隔てる非開口領域で前記抵抗部を形成するように構成してもよい。
【0017】
ここで、本発明に係る「開口領域」とは、実質的に表示光を出射させる画素内の領域であり、透過率の変更に応じて液晶等の電気光学物質を抜けてきた出射光の階調を変化させることが可能となる領域である。言い換えれば、「開口領域」とは、画素に集光される光が、光を透過させない或いは光透過率が透明電極に比べて相対的に小さい配線、遮光膜、及び各種素子等の遮光体で遮られることがない領域を意味する。他方、本発明に係る「非開口領域」とは、表示に寄与する光が透過しない領域を意味し、例えば画素内に非透明な配線或いは電極、若しくは各種素子等の遮光体が配設されている領域を意味する。
【0018】
この場合、画素電極及び導電膜によって形成される抵抗部が、非開口領域に位置することになる。このため、抵抗部が表示画像に影響を与えてしまうことを防止することができる。具体的には、画像信号として画素電極に供給される電位が、抵抗部が存在することによって変動してしまうことを防止することができる。従って、本態様では、より高品質な画像を表示することが可能である。
【0019】
上述した非開口領域で抵抗部が形成される態様では、前記画素電極は、前記基板上で平面的に見て、前記開口領域を覆うように設けられた電極部分と、前記基板上で平面的に見て、前記非開口領域において前記電極部分から延びるように設けられた抵抗付加部分とを有するように構成してもよい。
【0020】
この場合、電極部分が開口領域を覆うように設けられるため、電極部分で蓄積容量を形成するようにすれば、比較的高い容量値の蓄積容量とすることができる。また、抵抗付加部分は非開口領域に設けられるため、抵抗部が表示画像に影響を与えてしまうことを防止することができる。抵抗付加部分は、例えば電極部分から延びるような細長い配線のような形状とされる。これにより、限られたスペースで高い抵抗値の抵抗部を形成することができる。従って、各画素の残存電圧を効率的に放電することが可能である。
【0021】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記画素電極及び前記導電膜は、前記非開口領域に設けられたコンタクトホールを介して、互いに電気的に接続されている。
【0022】
この態様によれば、画素電極及び導電膜はコンタクトホールによって互いに電気的に接続されている。このため、画素電極及び導電膜の構造を比較的簡単なものとすることができる。また、コンタクトホールが非開口領域に設けられているため、抵抗部を非開口領域に形成することが容易となる。従って、抵抗部が表示画像に影響を与えてしまうことを防止することができる。
【0023】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を備える。
【0024】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能であると共に信頼性の高い、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパーなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0025】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】実施形態に係る電気光学装置における各画素の電気的構成を示す等価回路図である。
【図4】実施形態に係る電気光学装置における各画素の構成を示す平面図である。
【図5】実施形態に係る電気光学装置の積層構造を示す断面図である。
【図6】実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図(その1)である。
【図7】実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図(その2)である。
【図8】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクターの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0028】
<電気光学装置>
本実施形態に係る電気光学装置について、図1から図7を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0029】
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0030】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。
【0031】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により、相互に接着されている。
【0032】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0033】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0034】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0035】
TFTアレイ基板10上における対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域には、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0036】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0037】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0038】
また、画素電極9aの下層側(即ち、TFTアレイ基板10側)には、絶縁膜を介して導電膜が形成されている。この導電膜の構成については、TFTアレイ基板10上に形成される積層構造と共に後に詳述する。
【0039】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上には、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクター用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0040】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルターが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0041】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、上述したデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る電気光学装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域を構成する各画素の電気的構成を示す等価回路図である。
【0043】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及びTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。
【0044】
TFT30のゲートには、走査線3aが電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置は、所定のタイミングで、走査線3aにパルス的に走査信号を順次供給するように構成されている。
【0045】
画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号が所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して液晶層50(図2参照)に書き込まれた所定レベルの画像信号は、対向基板20に形成された対向電極21との間で一定期間保持される。
【0046】
液晶層50を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。例えば、ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0047】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。
【0048】
また本実施形態に係る電気光学装置では特に、蓄積容量70と並列に抵抗部200が設けられている。抵抗部200は、例えば装置の電源がオフとされた際に、蓄積容量70に保持された電位を放電する。蓄積容量70及び抵抗部200のより具体的な構成については、後に詳述する。
【0049】
次に、本実施形態に係る電気光学装置における画素部の具体的な構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、本実施形態に係る電気光学装置における各画素の構成を示す平面図である。また図5は、本実施形態に係る電気光学装置の積層構造を示す断面図である。尚、図4及び図5では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。図4及び図5では、説明の便宜上、TFTアレイ基板10上に積層される各部材の図示を適宜省略している。
【0050】
図4において、画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられている。また、画素電極9aの縦横の境界にそれぞれ沿ってデータ線6a及び走査線3aが設けられている。即ち、走査線3aは、X方向に沿って延びるように設けられており、データ線6aは、走査線3aと交差するように、Y方向に沿って延びるように設けられている。尚、ここでは図示を省略しているが、走査線3a及びデータ線6aが互いに交差する個所の各々には画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0051】
走査線3a及びデータ線6aは、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、画素電極9aに対応する各画素の開口領域(即ち、各画素において、表示に実際に寄与する光が透過又は反射される領域)を囲む非開口領域内に配置されている。即ち、走査線3a及びデータ線6aは、表示の妨げとならないように、各画素の開口領域ではなく、非開口領域内に配置されている。
【0052】
画素電極9aの下層には、画像表示領域の全面を覆う(但し、コンタクトホール等が設けられている箇所等を除く)ように導電膜9bが設けられている。導電膜9bは、画素電極9aと共に蓄積容量70を形成すると共に、抵抗部200(図3参照)を形成している。
【0053】
図4及び図5において、TFT30は、半導体層1aと、ゲート電極3bとを含んで構成されている。
【0054】
半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、Y方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域1a’、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c並びにデータ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eからなる。即ち、TFT30はLDD構造を有している。
【0055】
データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、チャネル領域1a’を基準として、Y方向に沿ってほぼミラー対称に形成されている。データ線側LDD領域1bは、チャネル領域1a’及びデータ線側ソースドレイン領域1d間に形成されている。画素電極側LDD領域1cは、チャネル領域1a’及び画素電極側ソースドレイン領域1e間に形成されている。
【0056】
データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、例えばイオンインプランテーション法等の不純物打ち込みによって半導体層1aに不純物を打ち込んでなる不純物領域である。データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cは夫々、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eよりも不純物の少ない低濃度な不純物領域として形成されている。このような不純物領域によれば、TFT30の非動作時において、ソース領域及びドレイン領域間に流れるオフ電流を低減し、且つTFT30の動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。
【0057】
尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
【0058】
ゲート電極3bは、例えば導電性ポリシリコンから形成されており、図示しないコンタクトホール等を介して走査線3aと電気的に接続されている。ゲート電極3b及び半導体層1a間は、ゲート絶縁膜2によって絶縁されている。
【0059】
図4及び図5において、TFTアレイ基板10上のTFT30よりも下地絶縁膜12を介して下層側には、走査線3aが格子状に設けられている。走査線3aは、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等の遮光性材料からなる。これにより走査線3aは、TFTアレイ基板10における裏面反射や、複板式のプロジェクター等で他の液晶装置から発せられ合成光学系を突き抜けてくる光などから、TFT30のチャネル領域1a’及びその周辺を遮光する下側遮光膜として機能する。
【0060】
下地絶縁膜12は、走査線3aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。
【0061】
図5において、TFTアレイ基板10上のTFT30よりも第1層間絶縁膜41を介して上層側には、データ線6a及び第1中継層91が設けられている。
【0062】
データ線6aは、半導体層1aのデータ線側ソースドレイン領域1dに、第1層間絶縁膜41及びゲート絶縁膜2を貫通するコンタクトホール81を介して電気的に接続されている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN層等との多層膜からなる。データ線6aは更に、TFT30を遮光する機能も有している。
【0063】
第1中継層91は、第1層間絶縁膜41上においてデータ線6aと同層に形成されており、コンタクトホール82を介して、半導体層1aの画素電極線側ソースドレイン領域1eに電気的に接続されている。データ線6a及び第1中継層91は、例えば金属膜等の導電材料で構成される薄膜を第1層間絶縁膜41上に薄膜形成法を用いて形成しておき、当該薄膜を部分的に除去、即ちパターニングすることによって相互に離間させた状態で形成される。これにより、データ線6a及び第1中継層91を同一工程で形成できるため、装置の製造プロセスを簡便にできる。
【0064】
図5において、TFTアレイ基板10上のデータ線6a及び第1中継層91よりも第2層間絶縁膜42を介して上層側には、第2中継層92が設けられている。第2中継層92は、コンタクトホール83を介して、第1中継層91と電気的に接続されている。また第2中継層92は、例えばアルミニウム等の遮光性を有する金属を含んで構成されており、TFT30を上層側から遮光する機能を有している。
【0065】
TFTアレイ基板10上の第2中継層92よりも第3層間絶縁膜43を介して上層側には、導電膜9b及び第3中継層93が設けられている。
【0066】
導電膜9bは、例えば画素電極9aと同様にITO等の透明導電材料によって構成される。但し、入射した光を反射して画像を表示する反射型の電気光学装置の場合には、非透明な材料によって構成されていても構わない。
【0067】
第3中継層93は、コンタクトホール84を介して、第2中継層92と電気的に接続されている。導電膜9b及び第3中継層93は、例えば金属膜等の導電材料で構成される薄膜を第3層間絶縁膜43上に薄膜形成法を用いて形成しておき、当該薄膜を部分的に除去、即ちパターニングすることによって相互に離間させた状態で形成される。
【0068】
導電膜9b及び第3中継層93よりも容量絶縁膜75を介して上層側には、導電膜画素電極9aが設けられている。画素電極9aは、コンタクトホール85を介して第3中継層と電気的に接続されると共に、コンタクトホール86を介して導電膜9bと電気的に接続されている。画素電極9aの上側表面には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜が設けられている。
【0069】
ここで本実施形態では特に、画素電極9a及び導電膜9bが容量絶縁膜75を介して対向配置されることにより、蓄積容量70が形成されている。即ち、画素電極9aは上部容量電極として機能し、導電膜9bは下部容量電極として機能する。
【0070】
ゲート絶縁膜75は、例えばHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン(SiO2)膜、或いは窒化シリコン(SiN)膜等から構成された単層構造、或いは多層構造を有している。
【0071】
蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカーの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0072】
本実施形態に係る電気光学装置では更に、画素電極9a及び導電膜9bは、装置の電源オフ時に、上述した蓄積容量70に保持された電位を放電する抵抗部200を形成している。具体的には、図5に示すように、画素電極9a及び導電膜9bが迂回するように接続されると共に、図4に示すように、画素電極9aの一部が非開口領域において延在し細長い形状の抵抗部とされることで、比較的高い抵抗値を有するものとして形成されている。
【0073】
仮に、このような抵抗部200が設けられていないとすると、電源オフ時に蓄積容量70に保持された残存電圧は、例えば表示すべきでない画像を表示させてしまうことにより、使用者に違和感を与えてしまう原因となってしまう。また、比較的長い時間保持されることにより、液晶層50の劣化を早めてしまう原因となってしまう。
【0074】
これに対し本実施形態では特に、装置の電源がオフとされた場合に、画素電極9a及び導電膜9bが抵抗として機能することで、蓄積容量70に保持された電位を効率的に放電することができる。よって、高品質な画像表示及び信頼性の向上を実現することができる。
【0075】
以上に説明した画素部の構成は、図4に示すように、各画素部に共通である。即ち、画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されている。
【0076】
次に、本実施形態に係る電気光学装置の変形例について、図6及び図7を参照して説明する。ここに図6及び図7は夫々、実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す断面図である。
【0077】
図6において、本実施形態に係る抵抗部200は、半導体層1aによって構成されていてもよい。具体的には、半導体層1aにおける画素電極側ソースドレイン領域1eが伸長されることにより、抵抗部200を形成してもよい。
【0078】
この場合、半導体層1aにおける伸長された側の一端は、コンタクトホール87を介して、データ線6a及び第1中継層91と同層に設けられた第4中継層94と電気的に接続される。第4中継層94は、コンタクトホール88を介して、第2中継層92と同層に設けられた第5中継層95と電気的に接続される。第5中継層95は、コンタクトホール89を介して導電膜9bと電気的に接続される。
【0079】
上述した構成によれば、半導体層1aによって構成された抵抗部200により、蓄積容量70に保持された電位を効率的に放電することができる。よって、高品質な画像表示及び信頼性の向上を実現することができる。
【0080】
図7において、抵抗部200が半導体層1aによって構成されている場合には、蓄積容量70が画素電極9a以外の部分において構成されていてもよい。具体的には、TFT30より上層側に設けられた下部容量電極71、及び下部容量電極71と容量絶縁膜75を介して対向配置された上部容量電極72によって、蓄積容量70が形成されていてもよい。
【0081】
下部容量電極71は、コンタクトホール182を介して、半導体層1aにおける画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されると共に、コンタクトホール183を介して、第1中継層91と電気的に接続されている。
【0082】
上部容量電極72は、コンタクトホール187を介して、第4中継層94と電気的に接続されている。第4中継層94は、コンタクトホール186を介して、半導体層1aにおける画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されている。
【0083】
上述した構成においても、図7で説明した場合と同様に、半導体層1aによって構成された抵抗部200により、蓄積容量70に保持された電位を効率的に放電することができる。よって、高品質な画像表示及び信頼性の向上を実現することができる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態に係る電気光学装置によれば、比較的簡易な構成で、各画素の残存電圧を低減することが可能である。
【0085】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図8は、プロジェクターの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクターについて説明する。
【0086】
図8に示されるように、プロジェクター1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0087】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0088】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0089】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。
【0090】
尚、図8を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニタ直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0091】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0092】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0093】
1a…半導体層、1a´…チャネル領域、1b…データ線側LDD領域、1c…画素電極側LDD領域、1d…データ線側ソースドレイン領域、1e…画素電極側ソースドレイン領域、3a…走査線、3b…ゲート電極、6a…データ線、9a…画素電極、9b…導電膜、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、70…蓄積容量、75…容量絶縁膜、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、200…抵抗部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上の表示領域で互いに交差する走査線及びデータ線と、
前記走査線及び前記データ線の交差に対応して設けられた画素電極と、
前記画素電極及び該画素電極に絶縁膜を介して対向配置される導電膜からなる蓄積容量と、
前記画素電極及び前記導電膜の少なくとも一方を延在し、前記画素電極及び前記導電膜を互いに電気的に接続する抵抗部と
を備えることを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記画素電極及び前記導電膜における前記蓄積容量を形成しない部分が、少なくとも部分的に前記抵抗部を形成していることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記画素電極及び前記導電膜は、前記表示領域における光を透過可能な複数の開口領域を相互に隔てる非開口領域で前記抵抗部を形成していることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記画素電極は、
前記基板上で平面的に見て、前記開口領域を覆うように設けられた電極部分と、
前記基板上で平面的に見て、前記非開口領域において前記電極部分から延びるように設けられた抵抗付加部分と
を有することを特徴とする請求項3に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記画素電極及び前記導電膜は、前記非開口領域に設けられたコンタクトホールを介して、互いに電気的に接続されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−256510(P2010−256510A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104797(P2009−104797)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】