説明

電気自動車のバッテリ支持構造

【課題】車室のフロアの剛性確保と、該フロアの下方に配設したバッテリの支持剛性向上とを両立させると共に、バッテリと車両用補機とを接続する接続部材の設置スペースを確保することができる電気自動車のバッテリ支持構造を提供することを目的とする。
【解決手段】車室3のフロアパネル5の車幅方向中央部に、フロア面51から下方に突出して車両前後方向に延びる断面中空の突出部52を設け、バッテリ20を支持する支持部として、バッテリ20の嵌合凸部21と嵌合可能なバッテリ嵌合孔52aを設けると共に、突出部52の中空部には、バッテリ20と、モータ2、インバータ34、及び充電器35とを接続するケーブル32を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室のフロアの下方にバッテリを配設した電気自動車のバッテリ支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車の車両用補機であるバッテリを、車室のフロアの下方に配設したものが知られている(下記特許文献1参照)。下記特許文献1では、トレイ部材とカバー部材とからなるバッテリケースにバッテリが収納されており、このバッテリケースが車体側のサイドメンバやクロスメンバに締結されることにより、バッテリは、フロアの下方で車体に支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−143446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車室のフロアでは、車幅方向中央部の剛性を車両前後方向に亘って高めることにより、フロア全体の剛性を確保することが行われている。
【0005】
上記特許文献1の場合、上述したようにサイドメンバやクロスメンバにバッテリケースを締結することによって、バッテリの支持剛性向上を図っている。しかしながら、バッテリケース、サイドメンバ、及びクロスメンバからなるバッテリ支持構造は、フロアの車幅方向中央部と車両前後方向に亘って連結されるようにはなっておらず、それ故、バッテリ支持構造がフロアの車幅方向中央部の剛性に十分寄与することができないという問題がある。従って、上記特許文献1では、フロアの剛性を確保するための構成が別途必要であった。
【0006】
また、従来より、車室のフロアの下方にバッテリを配設した場合、バッテリと車両用補機とを接続する接続部材の設置スペースをいかにして確保するかが課題となっている。しかしながら、上記特許文献1では、接続部材の設置に関する構成について何ら開示されていない。
【0007】
この発明は、車室のフロアの剛性確保と、該フロアの下方に配設したバッテリの支持剛性向上とを両立させると共に、バッテリと車両用補機とを接続する接続部材の設置スペースを確保することができる電気自動車のバッテリ支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の電気自動車のバッテリ支持構造は、車室のフロアの車幅方向中央部に、フロア面から下方に突出して車両前後方向に延びる断面中空の突出部を設け、該突出部に、バッテリを支持する支持部を設けると共に、上記突出部の中空部には、上記バッテリと車両用補機とを接続する接続部材を設けたものである。
【0009】
この構成によれば、フロアの車幅方向中央部に、フロア面から下方に突出して車両前後方向に延びる突出部を設けたことにより、フロアの車幅方向中央部における剛性を車両前後方向に亘って向上させることができ、フロア全体の剛性を確保することができる。さらに、この突出部に、バッテリを支持するための支持部を設けたことで、突出部を利用してバッテリの支持剛性を向上させることもできる。つまり、フロアの剛性確保と、バッテリの支持剛性向上とを両立させることができる。
【0010】
そして、バッテリと車両用補機とを接続する接続部材を突出部の中空部に設けたことで、突出部の中空部を、バッテリと車両用補機とを接続するためのスペースとして利用することができる。従って、この場合、フロアの剛性を確保しつつ、バッテリと車両用補機とを接続する接続部材の設置スペースを確保することができる。
【0011】
この発明の一実施態様においては、上記接続部材が、上記バッテリと上記車両用補機とを電気的に接続するケーブルであり、上記突出部を介して上記バッテリと上記ケーブルとを接続したものである。
【0012】
この構成によれば、フロアの剛性を確保しつつ、ケーブルの設置スペースを確保することができる。また、バッテリとケーブルとの接続状態を突出部により安定化させることができ、バッテリとケーブルとの接続にあたり、突出部を有効利用することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記突出部に、上記支持部として、上記バッテリとの嵌合によりこれを支持するバッテリ嵌合孔を設ける一方、上記バッテリには、上記ケーブルと接続するためのコネクタを設け、該コネクタは、上記バッテリ嵌合孔を通って上記中空部内で上記ケーブルと接続されるものである。
【0014】
この構成によれば、バッテリとケーブルとの接続箇所が車外に露出することを防止でき、該接続箇所を確実に保護することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記突出部の中空部を車室内側から覆う蓋部材を設け、該蓋部材を上記フロアに対し着脱可能としたものである。
【0016】
この構成によれば、バッテリの交換を容易に行うことができる他、中空部内のメンテナンス性向上を図ることができる。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記車両用補機、上記接続部材を、それぞれバッテリ冷却用の空調装置、該空調装置からの冷却風を上記バッテリに送風するダクトとしたものである。
【0018】
この構成によれば、空調装置からの冷却風を利用してバッテリを冷却することができる。また、フロアの剛性を確保しつつ、ダクトの設置スペースを確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、車室のフロアの剛性確保と、該フロアの下方に配設したバッテリの支持剛性向上とを両立させると共に、バッテリと車両用補機とを接続する接続部材の設置スペースを確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係るバッテリ支持構造を備えた電気自動車を示す斜視図。
【図2】バッテリ支持構造を備えた電気自動車を示す平面図。
【図3】図2のA−A線矢視断面図。
【図4】図2のB−B線矢視断面図。
【図5】図2のC−C線矢視断面図。
【図6】下部支持メンバの取付け構造を示す断面図。
【図7】フロアカバーの取付け構造を示す分解斜視図。
【図8】車両前突時の荷重伝達経路を説明するための平面図。
【図9】車両前突時の荷重伝達経路を説明するための側断面図。
【図10】本発明の他の実施形態に係るバッテリ支持構造を示す断面図。
【図11】本発明のさらに他の実施形態に係るバッテリ支持構造を示す側断面図。
【図12】図11のD−D線矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係るバッテリ支持構造を備えた電気自動車を示す斜視図であり、図2は、同平面図である。また、図3〜図5は、それぞれ図2のA−A線矢視断面図、B−B線矢視断面図、C−C線矢視断面図であり、図6は、下部支持メンバの取付け構造を示す断面図、図7は、フロアカバーの取付け構造を示す分解斜視図である。なお、図中において矢印(F)は車体前方、矢印(R)は車体後方を示す。
【0022】
本実施形態に係る電気自動車1は、図1〜図3、図7に示すように、車両後部に後輪Wrを回転駆動させる車両用補機としてのモータ2、2を備えており、このモータ2を駆動源として車両を走行させることができるようになっている。
【0023】
また、電気自動車1では、その車室3の前部にダッシュパネル4を備えている。このダッシュパネル4は、車室3のフロア面51を形成するフロアパネル5の前端部から立ち上がるように配設され、車室3の前壁部を構成している。
【0024】
そして、車室3より車両前方には、車両前後方向に延びるフロントサイドフレーム6が配設されている。フロントサイドフレーム6は、車両前後方向に延びる左右一対のサイドフレーム部61、61と、該サイドフレーム部61、61の後方に位置してこれらの後端部同士を連結する連結部62とを有しており、平面視で略Y字状をなしている。
【0025】
また、本実施形態では、フロアパネル5の車幅方向中央部に、フロア面51から下方に突出して車両前後方向に延びる断面中空の突出部52が設けられており、図4に示すように、フロントサイドフレーム6の連結部62の後端部は、ダッシュパネル4を介して突出部52の前端部と連結されている。
【0026】
さらに、フロントサイドフレーム6の下方には、前輪Wfのサスペンション装置を構成するロアアーム7を支持するためのサブフレーム8が配設されている。サブフレーム8は、その前端部がフロントサイドフレーム6の下部に連結部材9を介して連結されると共に、その後端部がボルト、ナット等の締結部材10(図2、図3参照)により、突出部52の前端部に連結されている。
【0027】
また、フロア面51の下面部では、フロントサイドフレーム6と突出部52との連結部に、該連結部から車幅方向外側に向かって延びる左右一対のトルクボックス部材11、11が配設されており、フロアパネル5とトルクボックス部材11とによって車幅方向に延びる閉断面12、12が形成されている。ここで、トルクボックス部材11は、その前面部が図1、図2、図4に示すように、前輪Wfを覆うホイールハウス13(図4参照)の形状に合わせて円弧状をなしており、車幅方向外側に向かうにつれて閉断面12の断面積が徐々に小さくなるように形成されている。
【0028】
また、フロア面51の下面部では、トルクボックス部材11、11の車両後方に、突出部52の側面部から車幅方向外側に向かって延びる左右一対のクロスメンバ14、14が配設されており、フロアパネル5とクロスメンバ14とによって車幅方向に延びる閉断面15が形成されている。
【0029】
一方、フロア面51の上面部では、図1〜図3、図5〜図7に示すように、車幅方向に延びるクロスメンバ16、16が配設され、フロアパネル5とクロスメンバ16とにより、車幅方向に沿って連続する同一断面形状の閉断面17(図3参照)が形成されている。ここで、連続する閉断面とは、閉断面12、15等のように突出部52によって途中で途切れることなく、車体の略全幅に亘って連続して延びていることを意味する。
【0030】
また、クロスメンバ14、14の車両後方には、リヤフレーム18が配設されている。リヤフレーム18は、車幅方向に延びるクロスメンバ部18aと、クロスメンバ部18aの一部から車両後方に分岐して延びる左右一対のリヤサイドフレーム部18bとを有し、このリヤフレーム18とフロアパネル5とによって閉断面19が形成されている。
【0031】
また、フロアパネル5の下方において、上述したトルクボックス部材11とクロスメンバ14との間、及びクロスメンバ14とクロスメンバ部18aとの間には、上述したモータ2の電源となる車両用補機としてのバッテリ20を収納するバッテリ収納部30が設けられており、本実施形態では、このバッテリ収納部30が左右両側にそれぞれ2箇所ずつ合計4箇所設けられている。そして、バッテリ収納部30の車幅方向外側端部には、該バッテリ収納部30と車外とを連通させる連通部31が形成され、この連通部31により、車両側方からバッテリ20を着脱することが可能となっている。
【0032】
さらに、突出部52の側面には、バッテリ収納部30の位置に対応して、バッテリ嵌合孔52aが形成されている。
【0033】
一方、バッテリ20は、その側面の一部に、図1、図2、図5に示すような嵌合凸部21を有しており、この嵌合凸部21が、上述した突出部52のバッテリ嵌合孔52aと嵌合可能とされている。そして、嵌合凸部21には、接続端子としてのコネクタ22が取付けられている。
【0034】
本実施形態では、バッテリ20の嵌合凸部21をバッテリ嵌合孔52aに嵌合させることで、バッテリ嵌合孔52aはバッテリ20の側面部を支持する支持部として機能するようになっており、上記嵌合によってバッテリ20を車体で支持することができるようになっている。
【0035】
また、突出部52の中空部には、バッテリ20のコネクタ21と接続可能なケーブル32を配設しており、ジャンクションボックス33を介して後述するインバータ34や充電器35に接続されている。
【0036】
ここで、クロスメンバ部18aやリヤサイドフレーム部18bにより囲まれた空間内には、インバータ34や充電器35の他、モータ2、2が配設されている。このうち、モータ2、2は、車幅方向に延びる支持メンバ36により、リヤサイドフレーム部18bに支持されると共に、モータ2の駆動力を伝達するドライブシャフト37を介して後輪Wrに連結されている。
【0037】
また、インバータ34は、各モータ2、2に接続されており、乗員のアクセルペダル(図示せず)の操作に応じてモータ2の回転数やトルクを制御するようになっている。なお、充電器35は、車外の電源(例えば、家庭用電源)と接続可能な接続部材であり、車外の電源から供給される電力でバッテリ20を充電することが可能になっている。
【0038】
また、バッテリ収納部30に収納されたバッテリ20の前後に位置するトルクボックス部材11、クロスメンバ14、クロスメンバ部18aには、それぞれ連通部31の近傍に前後ガイド支持メンバ38が設けられ、さらに、前後ガイド支持メンバ38の車幅方向内側には、車幅方向に延びる下部支持メンバ39が配設されている。
【0039】
これら前後ガイド支持メンバ38及び下部支持メンバ39は、いずれも、図1〜図6に示すように、バッテリ20の角部の形状に合わせて側面視で略L字状をなしており、これによって、バッテリ20の車両前後方向及び上下の位置を規制するようになっている。
【0040】
また、前後ガイド支持メンバ38は、トルクボックス部材11、クロスメンバ14、クロスメンバ部18aの車幅方向外側端部に固着されている。一方、下部支持メンバ39は、図5、図6に示すように、左右一対のバッテリ20、20に共通して設けられ、突出部52から車両前後方向外側に延びている。そして、その車幅方向中央部がボルト、ナット等の締結部材40により突出部52の底面部に締結されている。バッテリ20は、前後ガイド支持メンバ38により車両前後方向端部が支持されると共に、下部支持メンバ39により下方からも支持されている。
【0041】
また、図1では便宜上図示を省略したが、フロアパネル5の車幅方向端部上方には、図2〜図5に示すように、車両前後方向に延びるサイドシル41が設けられている。サイドシル41は、図5に示すように、サイドシルインナ41aとサイドシルアウタ41bとによって閉断面形状をなしており、車室3の側部に形成した乗降用開口部42の下縁部を形成している。
【0042】
また、図1では便宜上図示を省略したが、乗員用開口部42には、図5に示すように、これを開閉するためのサイドドア43が設けられており、上述した連通部31は、乗員用開口部42(サイドドア43)よりも下方に設けられている。
【0043】
そして、バッテリ嵌合孔52aとの嵌合によって支持された状態にあるバッテリ20の車幅方向外側、すなわちバッテリ収納部30の車幅方向外側には、サイドパネル44が設けられている。サイドパネル44は、サイドシル41に対して着脱可能であり、サイドパネル44をサイドシル41に取付けることで、図5に示すように連通部31がサイドパネル44に覆われるようなっている。また、サイドパネル44の車幅方向内側には、衝撃吸収部材45が設けられている。
【0044】
また、図1〜図6では便宜上図示を省略したが、フロアパネル5の車幅方向中央部には、突出部52の中空部を車室3の内側から覆うフロアカバー46が設けられており、このフロアカバー46とフロア面51とによって略連続したフロア面が形成されるようになっている。そして、フロアカバー46は、ボルト、ナット等の締結部材47により、フロアパネル5に対し着脱可能とされている。
【0045】
本実施形態の場合、バッテリ20を車体に取付ける際には、先ずサイドパネル44をサイドシル41から取外して、連通部31を開放すると共に、フロアカバー46をフロアパネル5から取外して、突出部52の中空部を開放する。
【0046】
次に、連通部31からバッテリ20を挿入する。この時、バッテリ20を、連通部31の近傍に設けた前後ガイド支持メンバ38に沿って車幅方向内側に押し込む。これにより、前後ガイド支持メンバ38は、バッテリ20を連通部31からバッテリ収納部30に向かって案内するガイド部として機能し、この前後ガイド支持メンバ38の案内により、バッテリ20をバッテリ収納部30の所定の位置に載置することができるようになっている。このため、バッテリ収納部30に収納されたバッテリ20は、前後ガイド支持メンバ38及び下部支持メンバ39によって適切に支持されると共に、嵌合凸部21がバッテリ嵌合孔52aに適切に嵌合する。
【0047】
そして、嵌合凸部21をバッテリ嵌合孔52aに嵌合させた後は、車幅方向内側のコネクタ22を、突出部52の中空部内に配設したケーブル32に接続する。これにより、バッテリ20は、突出部52(バッテリ嵌合孔52a)を介してケーブル32に接続された状態となり、ケーブル32及びジャンクションボックス33を介してインバータ34、モータ2、及び充電器35と電気的に接続される。
【0048】
本実施形態では、フロアパネル5の車幅方向中央部に、フロア面51から下方に突出して車両前後方向に延びる突出部52を設けたことにより、フロアパネル5の車幅方向中央部における剛性を車両前後方向に亘って向上させることができ、フロアパネル5全体の剛性を確保することができる。
【0049】
さらに、この突出部52に、バッテリ20を支持するためのバッテリ嵌合孔52a、下部支持メンバ39を設けたことで、突出部52を利用してバッテリ20の支持剛性を向上させることもできる。つまり、フロアパネル5の剛性確保と、バッテリ20の支持剛性向上とを両立させることができる。
【0050】
また、バッテリ20の前後で車幅方向に延びるトルクボックス部材11、クロスメンバ14、及びクロスメンバ部18aに、バッテリ20の車両前後方向端部を支持する前後ガイド支持メンバ38を設けたことで、トルクボックス部材11、クロスメンバ14、クロスメンバ部18aを利用してバッテリ20の車両前後方向の位置を規制することができる。このため、バッテリ20を安定的に支持することができる。
【0051】
さらに、この場合、車両の前突等によって車両前方から荷重が入力された時には、トルクボックス部材11、クロスメンバ14、クロスメンバ部18a及びバッテリ20を介して上記荷重を車両後方に伝達することが可能になる。つまり、バッテリ20を荷重伝達部材として機能させることができ、上記荷重を車幅方向かつ車両後方により効率良く分散させることができる。
【0052】
また、連通部31からバッテリ収納部20に向かってバッテリ20を案内する前後ガイド支持メンバ38を設けることで、車両側方からのバッテリ20の着脱性を向上させることができる。
【0053】
また、突出部52から車幅方向外側に延びて、バッテリ20を下方から支持する下部支持メンバ39を設けたことで、バッテリ20の上下方向の位置を規制することができる。このため、バッテリ20を安定的に支持することができる。
【0054】
また、本実施形態の場合、突出部52をフロア面51よりも下方に設けた結果、フロア面51より上方には、車幅方向に沿って連続した閉断面を形成するクロスメンバ16を設けることが可能になっている。このように、車幅方向に沿って連続した閉断面を形成するクロスメンバ16を設けることで、例えば、車両の側突等によって車両側方から入力される荷重に対して高い剛性を発揮することができる。
【0055】
次に、図8、図9を参照しながら、車両の前突等によって車両前方から荷重が入力された場合について考える。この場合、上記荷重は、主に図中太矢印で示すようにフロントサイドフレーム6に入力され、これ沿って車両後方に伝達されると同時に、その一部は、連結部材9を介して下方のサブフレーム8にも入力される。そして、フロントサイドフレーム6、サブフレーム8に分岐して入力された上記荷重は、突出部52の前端部で合流し、該突出部52によって車両後方へと伝達、分散される。
【0056】
また、フロントサイドフレーム6と突出部52との連結部では、図中太矢印で示すように、上記荷重の一部がトルクボックス部材11により形成された閉断面12に沿って車幅方向外側に分岐し、サイドシル41、サイドドア43、サイドパネル44(図5等参照)といった車両側部の各部材によって車両後方に伝達、分散される。
【0057】
このように、本実施形態では、フロントサイドフレーム6の後端部と突出部52の前端部とを連結することで、フロントサイドフレーム6に入力された前突荷重を突出部52を介して車両後方に確実に伝達、分散させることができる。従って、この場合、フロアパネル5の剛性を確保しつつ、前突荷重を確実に分散させることができる。
【0058】
さらに、車幅方向に向かって延びる閉断面12を上記連結部に設けることで、閉断面12を介して上記荷重を車幅方向にも分散させることができる。これにより、前突荷重を効率良く車両後方に伝達、分散させることができる。また、フロア面51よりも上方に位置するサイドシル41やサイドドア43にも上記荷重を伝達させるようにすることで、上記荷重の伝達経路をフロア面51の上下に形成でき、その結果、上記荷重を上下に分散させることができる。
【0059】
また、サブフレーム8の前端部をフロントサイドフレーム6の下部に連結すると共に、サブフレーム8の後端部を突出部52の前端部に連結することで、フロントサイドフレーム6に入力された上記荷重をサブフレーム8にも分散することができ、フロントサイドフレーム6にかかる負荷を軽減しつつ、上記荷重を確実に車両後方に伝達させることができる。
【0060】
また、フロアパネル5の下方にバッテリ収納部30を設けると共に、該バッテリ収納部30においてバッテリ20を車両側方から着脱するための車外との連通部31を乗降用開口部42よりも下方に設けたことで、サイドドア43を閉じた状態で車両側方からバッテリ20を交換することができる。
【0061】
また、バッテリ収納部30の車幅方向外側にサイドパネル44を設けると共に、該サイドパネル44の車幅方向内側に衝撃吸収部材45を設けたことで、例えば、車両の側突時等に車両側方から入力される荷重を衝撃吸収部材45によって吸収することができ、バッテリ20を上記荷重から確実に保護することができる。
【0062】
また、フロアパネル5の車幅方向端部上方にサイドシル41を設けたことで、バッテリ収納部30や衝撃吸収部材45を設置するための車幅方向長さを長く確保することができる。このため、バッテリ20の容量や衝撃吸収量を十分に確保することができる。
【0063】
また、バッテリ20と車両用補機(ここでは、インバータ34、モータ2、充電器35)とを電気的に接続するケーブル32を突出部52の中空部に設けたことで、突出部52の中空部を、バッテリ20と車両用補機とを接続するためのスペースとして利用することができる。従って、この場合、フロアパネル5の剛性を確保しつつ、バッテリ20と車両用補機とを接続する接続部材(ここでは、ケーブル32)の設置スペースを確保することができる。
【0064】
また、突出部52(バッテリ嵌合孔52a)を介してバッテリ20とケーブル32とを接続することで、バッテリ20とケーブル32との接続状態を突出部52により安定化させることができ、バッテリ20とケーブル32との接続にあたり、突出部52を有効利用することができる。
【0065】
また、図1、図2、図5等に示すように、バッテリ20のコネクタ22は、バッテリ嵌合孔52aを通って上記中空部内でケーブル32と接続されている。これにより、バッテリ20とケーブル32との接続箇所が車外に露出することを防止でき、該接続箇所を確実に保護することができる。
【0066】
また、突出部52の中空部を車室3の内側から覆うフロアカバー46を設けると共に、これをフロアパネル5に対して着脱可能としたことで、バッテリ20の交換を容易に行うことができる他、上記中空部内のメンテナンス性向上を図ることができる。例えば、本実施形態の場合、コネクタ22とケーブル32とが上記中空部内で接続されるようになっているため、フロアカバー46をフロアパネル5から取外すことで、コネクタ22とケーブル32との接続を容易に行うことができる。
【0067】
図10は、本発明に係るバッテリ支持構造の他の実施形態を示す。図10に示す実施形態では、突出部52の左右の両側面部を車幅方向に貫通するトランスバースメンバ70を設けている。なお、図10において、図1〜図9に示す先の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0068】
本実施形態では、トランスバースメンバ70が突出部52の両側面部によって支持されており、その車幅方向両端部には、バッテリ接続部としての雌型コネクタ71が設けられている。そして、トランスバースメンバ70には、さらに接続端子72が取付けられ、これが突出部52の中空部内に設けられている。そして、接続端子72は、突出部52の中空部内に配設されたケーブル32と接続されている。
【0069】
一方、バッテリ20は、図10に示すように、その側面部に雄型コネクタ122が取付けられている。本実施形態では、バッテリ20の雄型コネクタ122をトランスバースメンバ70の雌型コネクタ71に嵌合させることで、バッテリ20とケーブル32とを接続することができるようになっている。そして、雌型コネクタ71を含むトランスバースメンバ70がバッテリ20の側面部を支持する支持部として機能するようになっており、上記嵌合によってバッテリ20を車体で支持することができるようになっている。
【0070】
本実施形態では、突出部52の左右の両側面部を車幅方向に貫通するトランスバースメンバ70を設けたことで、フロアパネル5の剛性を向上させることができる。そして、トランスバースメンバ70の両端部によってバッテリ20を支持させるように構成したことで、バッテリ20の支持剛性を確保することもできる。
【0071】
また、突出部52の側面部にトランスバースメンバ70の両端部を配置し、かつ該両端部にバッテリ接続部(雌型コネクタ71)を設けたことで、突出部52を介してバッテリ20とケーブル32とを接続することができ、バッテリ20とケーブル32との接続状態を突出部52及びトランスバースメンバ70により安定化させることができる。このため、バッテリ20とケーブル32との接続にあたり、突出部52及びトランスバースメンバ70を有効利用することができる。さらに、この場合、バッテリ20の着脱を車両側方から容易に行うことができる。
【0072】
なお、コネクタ71、122の雄型、雌型の関係は図10に示すものに必ずしも限定されるものではなく、逆であってもよい。
【0073】
図11、図12は、本発明に係るバッテリ支持構造のさらに他の実施形態を示す。図11、図12に示す実施形態では、突出部52の中空部に、空調ユニット80からの冷却風をバッテリ20に送風するダクト90を配設している。なお、図11、図12において、図1〜図9に示す先の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。また、便宜上、図11では、クロスメンバ16の図示を省略している。
【0074】
本実施形態では、図11に示すように、車両用補機としての空調ユニット80が車室3の前端部に配設されている。空調ユニット80は、車外または車室3から導入した空気から冷却風や温風等の空調風を生成するように構成されている。
【0075】
そして、空調ユニット80には、これにより生成した空調風を車室3内に送風するための図示しないダクトが接続される他、空調風としての冷却風をバッテリ収納部30に送風するダクト90が接続されている。
【0076】
ダクト90は、突出部52に沿って車両前後方向に延びるメインダクト91と、メインダクト91から車幅方向外側に向かって分岐する複数の分岐部92、92、…とを有している。
【0077】
分岐部92は、バッテリ収納部30と対応する位置に形成されており、その車幅方向外側端部は、突出部52の側面部に形成した送風孔52bを介してバッテリ収納部30に接続されている。これにより、バッテリ20と空調ユニット80とが、突出部52の中空部に配設されたダクト90により接続されている。
【0078】
このように、本実施形態では、バッテリ20と車両用補機(ここでは、空調ユニット80)とを接続するダクト90を突出部52の中空部に設けたことで、空調ユニット80からの冷却風を利用してバッテリ20を冷却することができる。また、フロアパネル5の剛性を確保しつつ、バッテリ20と車両用補機とを接続する接続部材(ここでは、ダクト90)の設置スペースを確保することができる。
【0079】
ところで、本実施形態では、図11、図12に示すように、バッテリ嵌合孔52aの代わりに送風孔52bが形成され、バッテリ20が主に下部支持メンバ39により支持されているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、バッテリ嵌合孔52a、送風孔52bの両者を形成し、上述した最初の実施形態と同様、バッテリ20をバッテリ嵌合孔52aで支持するようにしてもよい。
【0080】
なお、上述した実施形態では、フロア面51と突出部52とを一体成形しているが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、車両前後方向に延びる突出部を別部材で構成し、フロア面の下面に連結するようにしてもよい。
【0081】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、支持部は、バッテリ嵌合孔52a、下部支持メンバ39、トランスバースメンバ70に対応し、
以下同様に、
車両用補機は、モータ2、インバータ34、充電器35、空調ユニット80に対応し、
接続部材は、ケーブル32、ダクト90に対応し、
蓋部材は、フロアカバー46に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1…電気自動車
2…モータ
5…フロアパネル
20…バッテリ
22…コネクタ
32…ケーブル
34…インバータ
35…充電器
39…下部支持メンバ
46…フロアカバー
52…突出部
52a…バッテリ嵌合孔
70…トランスバースメンバ
80…空調ユニット
90…ダクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室のフロアの車幅方向中央部に、フロア面から下方に突出して車両前後方向に延びる断面中空の突出部を設け、
該突出部に、バッテリを支持する支持部を設けると共に、
上記突出部の中空部には、上記バッテリと車両用補機とを接続する接続部材を設けた
電気自動車のバッテリ支持構造。
【請求項2】
上記接続部材は、上記バッテリと上記車両用補機とを電気的に接続するケーブルであり、
上記突出部を介して上記バッテリと上記ケーブルとを接続した
請求項1記載の電気自動車のバッテリ支持構造。
【請求項3】
上記突出部には、上記支持部として、上記バッテリとの嵌合によりこれを支持するバッテリ嵌合孔を設ける一方、
上記バッテリには、上記ケーブルと接続するためのコネクタを設け、
該コネクタは、上記バッテリ嵌合孔を通って上記中空部内で上記ケーブルと接続される
請求項2記載の電気自動車のバッテリ支持構造。
【請求項4】
上記突出部の中空部を車室内側から覆う蓋部材を設け、
該蓋部材を上記フロアに対し着脱可能とした
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気自動車のバッテリ支持構造。
【請求項5】
上記車両用補機、上記接続部材は、それぞれバッテリ冷却用の空調装置、該空調装置からの冷却風を上記バッテリに送風するダクトである
請求項1記載の電気自動車のバッテリ支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−14275(P2013−14275A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149716(P2011−149716)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】