説明

電気自動車のモータユニット取付方法

【課題】仮固定及び仮固定解除等の工程を不要として、作業性を向上させることが出来る電気自動車のモータユニット取付方法を提供する。
【解決手段】メイン組立ラインMLの傍方に設けられたサブ組立ラインSLでは、支持治具20が用いられて、モータルーム2内に取付られる前に、部品搭載フレーム部材10に、インバータ13及びDC/DCコンバータ14等が固定される。
そして、この部品搭載フレーム部材10と、モータ7,ギヤユニット8等のモータユニットを取付けたサスペンションメンバ9とが保持されて、サブアッセンブリされて、支持治具20の上昇により、同時にモータルーム2内に挿入される。
部品搭載フレーム部材10及びサスペンションメンバ9は、個別に取り付けられて、支持治具が抜出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取付作業性が良好な電気自動車のモータユニット取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、インバータ等のコントロールユニットを支持する部品搭載フレーム部材を、モータルームの下方開口部から上方に向けて持ち上げて、車幅方向左右に一対設けられたサイドメンバ部材間に位置させると共に、この部品搭載フレーム部材の左,右各端部を、サイドメンバ等の車体側剛性部材に固定して取り付けるモータユニット取付方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなものでは、前記部品搭載フレーム部材の下面に、モータ及びギヤユニットを有するモータユニットが仮固定されて、前記部品搭載フレーム部材と共に、一緒に持ち上げて、下面側開口部から挿入される。
そして、前記部品搭載フレーム部材を、前記サイドメンバ部材に固定した後、前記モータユニットを、防振マウント部材を介して下方から支持するセンタメンバ部材と共に、車体側のクロスメンバ部材の下面側に取り付けられる。
【0004】
最後に、部品搭載フレーム部材へのモータユニットの仮固定を解除し、このモータユニットの荷重を車体側剛性部材であるクロスメンバ部材に、適正に支持させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−310252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の電気自動車のモータユニット取付方法では、部品搭載フレーム部材を持ち上げる前に、前記部品搭載フレーム部材の下面に、前記モータユニットを仮固定しなければならず、また、部品搭載フレーム部材を持ち上げた後に、モータユニットを車体に取り付けて、その後、前記部品搭載フレーム部材への前記モータユニットの仮固定を解除しなければならなかった。
【0007】
このため、仮固定及び仮固定解除の工程が必要となり、取付工数が増大するといった問題点がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、仮固定及び仮固定解除の工程を不要として、作業性を向上させることが出来る電気自動車のモータユニット取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、モータと強電部品とを車体に組み付ける電気自動車のモータユニット取付方法では、モータをサスペンション部材に取り付ける工程と、モータとサスペンション部材とを、支持治具上に保持する工程と、前記モータより高い位置で強電部品を前記支持治具から突設した複数の治具ピンにより保持する工程とを有している。
【0010】
そして、前記モータ、サスペンション部材、強電部品を支持治具に保持した状態で、車体側に挿入する工程と、前記強電部品を車体側部材に取り付ける工程と、前記サスペンション部材を車体側部材に支持させる工程と、前記支持治具を車体から抜出する工程と、を備える電気自動車のモータユニット取付方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、前記モータよりも高い位置で、前記支持治具から突設した複数の冶具ピンにより、前記強電部品を保持した状態で車体に挿入するので、車載状態の位置関係を有して、車体側に取り付けられる。
その後、支持治具を車体から退避するようにしたので、従来の様な仮固定及び仮固定解除の工程が不要となり、取付工数を減少させることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態の電気自動車のモータユニット取付方法で、全体の構成を説明し、支持治具に、モータユニットを取り付けたサスペンションメンバと、強電部品を取り付けた部品搭載フレーム部材とをセットするサブアッセンブリの様子を示す分解斜視図である。
【図2】実施の形態の電気自動車のモータユニット取付方法で、支持治具にサブアッセンブリされた搭載部品を、車体前部のモータルーム内に、挿入する様子を示す分解斜視図である。
【図3】実施の形態の電気自動車のモータユニット取付方法で、取付後、支持治具を待避させた様子を示す分解斜視図である。
【図4】実施の形態の電気自動車のモータユニット取付方法で、モータユニットを車体に取り付けた様子を示し、車体前部のモータルームを下方から見た図3中矢視H方向の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態の電気自動車のモータユニット取付方法を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1乃至図4は、この発明の実施の形態の電気自動車のモータユニット取付方法を示すものである。
【0015】
まず、全体の構成から説明すると、この実施の形態の電気自動車としての車両1では、図2に示すような車体1aの前部に形成されたモータルーム2内に、車幅方向両側に、車体側部材としての左,右サイドメンバ部材3,3が設けられている。
【0016】
この左,右サイドメンバ部材3,3は、車両前後方向に長手方向を有して延設されていて、車幅方向断面形状を略ロ字状としている。
そして、これらの左,右サイドメンバ部材3,3には、対となるメンバブラケット部材4,4…が、前後二組、各々設けられている。
【0017】
このうち、車幅方向左側のメンバブラケット部材4は、図2に示すように、車幅方向右側のメンバブラケット部材4と、略対称位置となるように対向配置されていて、同様に構成されるので、この車幅方向左側のメンバブラケット部材4を用いて構成を説明し、車幅方向右側のメンバブラケット部材4については、説明を省略する。
このメンバブラケット部材4は、前記左サイドメンバ部材3の各内側面部3a及び上面部3bの二面に跨って、略直交配置されることにより、断面略L字状を呈する固着面部4aを有している。
また、この固着面部4aからは、一体となるように、取付面部4bが、車幅方向内側に向けて突設されている。
【0018】
この取付面部4bの下方からは、このモータルーム2内に、取り付けられる部品搭載フレーム部材10の前側クロスメンバ部材11の車幅方向左側の端部11a及び後側クロスメンバ部材12の車幅方向左側の端部12aが各々当接されて、各々固定部材6によって、固定されるように構成されている。
【0019】
また、このサイドメンバ部材3の下側面部3cには、サスペンション部材としてのサスペンションメンバ9が、インシュレータ部材27…を介して、支持される。
このサスペンションメンバ9の上側には、複数のモータマウントインシュレータ部材9a…に弾性支持されて、モータユニットMUとしてのモータ7及びギヤユニット8が、設けられていて、このサスペンションメンバ9が、車体1aに取り付けられる際に、モータルーム2内に位置するように取付けられる。
【0020】
これらのモータ7及びギヤユニット8の上方位置には、前記モータ7への給電を行う強電部品としてのインバータ13及びDC/DCコンバータ14が、前記部品搭載フレーム部材10に各々取り付けられて、この部品搭載フレーム部材10が、車体1aの前記左,右サイドメンバ部材3,3に取り付けられる際に、モータルーム2内に組み付けられて、位置するように構成されている。
【0021】
そして、これらのインバータ13及びDC/DCコンバータ14と、前記モータ7との間には、可撓性の給電ハーネス5及び冷却水の給排水管が接続されていて、前記モータ7の回転駆動に必要とされる電力及び回生起電力が、給配電されると共に、冷却水が、循環可能となるように構成されている。
【0022】
次に、この実施の形態の電気自動車のモータユニット取付方法に用いる支持治具20の構成について説明する。
【0023】
この実施の形態の支持治具20は、図1に示す様に、上面視概略方形形状を呈する梯子形フレーム部材21が、横フレーム材21a,21a及び縦フレーム材21b…を組み合わて、主に構成されている。
【0024】
この梯子形フレーム部材21の四隅近傍には、前記サスペンションメンバ9の前側クロスフレーム9b及び後側クロスフレーム9cの各端部の近傍を下方から支持する支持脚柱部材22,22…が上方に向けて突設されている。
【0025】
また、この梯子形フレーム部材21の前記縦フレーム材21b,21b間に掛け渡された水平桟部材23…には、治具ピン24,24…が上方に向けて、一体となるように突設されている。
【0026】
このうち、前記支持脚柱部材22,22…の各上端部には、前記前側クロスフレーム9b及び後側クロスフレーム9cの左,右端部近傍に下方から係合して、保持する凹状受部材22a,22a…が、各々一体に設けられている。
【0027】
また、前記治具ピン24…の各上端部には、環状の各係合段差部24a…が、周囲に設けられて、この係合段差部24aから、更に上方に向けて丸棒状の挿通ピン部24b…が、各々一体となるように、突設されている。
【0028】
これらの各挿通ピン部24bは、前記部品搭載フレーム部材10の前側クロスメンバ部材11の両端部11a,11a近傍及び後側クロスメンバ部材12の端部12a近傍に開口形成されたピン孔11b,11b,12b及び前記DC/DCコンバータ14の下面部14aに形成されたピン孔14b(以下、ピン孔11b,…14bと記す。)に、挿抜可能な径方向寸法を有している。
【0029】
そして、前記支持脚柱部材22,22…の凹状受部材22a…が、前記前側クロスフレーム9b及び後側クロスフレーム9cの左,右各端部に下方から当接して係合支持する位置では、前記ピン孔11b,…14bに各々挿通ピン部24b…が挿入されると共に、各ピン孔11b,…14bの周縁部に、前記係合段差部24a…が、当設して、前記インバータ13及びDC/DCコンバータ14を固定して支持する部品搭載フレーム部材10を、下方から保持するように係止する構成としている。
【0030】
更に、この実施の形態では、図2に示すように、前記モータ7及びギヤユニット8が、モータマウントインシュレータ部材9a…を介して、前記サスペンションメンバ9に取り付けられて、この支持治具20の上に載置された状態では、各挿通ピン部24b…が、前記各ピン孔11b,…14bに当接される。
そして、前記モータルーム2内に取り付けられた状態と略同様に、前記モータ7及びギヤユニット8に対して、車両上下方向で高い位置となるように、前記部品搭載フレーム部材10が、前記支持治具20から突設された治具ピン24,24…により下方から保持される構成としている。
【0031】
更に、この実施の形態では、図4に示すように、前記サスペンションメンバ9に、平面視略台形を呈する様に開口形成された中央開口部9dの内側で、しかも、前記サスペンションメンバ9と、前記モータ7,ギヤユニット8及びサスペンションメンバ9との間の空間から上方に向けて、前記各治具ピン24…が、突設されるように構成されている。
【0032】
また、前記部品搭載フレーム部材10を支持する治具ピン24…のうち、一本の治具ピン24が、図4に示すように、DC/DCコンバータ14の下面部14aに形成されたピン孔14bに挿通係合できるように、前記後側クロスメンバ部材12の車両前後方向位置よりも後方に設けられている。
【0033】
そして、前記サスペンションメンバ9を支持する凹状受部材22a…の中心位置Cが、これらの各治具ピン24…が係合されるピン孔11b,…14bで囲まれた領域の内側に位置するように構成されている。
【0034】
更に、前記部品搭載フレーム部材10に取り付けられた前記インバータ13及びDC/DCコンバータ14の重心位置G近傍に、各ピン孔11b,…14bの中心Sが設定されるように、各治具ピン24…の突設位置が、設定されている。
【0035】
次に、この実施の形態のモータユニット取付方法の作用効果について説明する。
【0036】
この実施の形態では、前記モータ7及びギヤユニット8を有して、サスペンションメンバ9に取り付けられたモータユニットMUを、車両1の車体1aに設けられたモータルーム2の下方から、挿入して取り付ける工程が行われるメイン組立ラインMLの傍方に、図1に示すようなサブ組立ラインSLが設けられている。
【0037】
このサブ組立ラインSLでは、前記強電部品としてのインバータ13及びDC/DCコンバータ14が、モータルーム2内に、取付られる前に、前記部品搭載フレーム部材10に、これらのインバータ13及びDC/DCコンバータ14が、取り付けられて固定されるように構成されている。
また、これらのインバータ13及びDC/DCコンバータ14が、固定された部品搭載フレーム部材10と、前記モータ7,ギヤユニット8からなるモータユニットMUを取り付けたサスペンションメンバ9とが、前記支持治具20上で組み合わせられて、同時に前記モータルーム2内に挿入可能となるように、サブアッセンブリが行われる。
【0038】
すなわち、図1に示すように、前記サブ組立ラインSLには、前記支持治具20が配置される。
この支持治具20は、上下方向へ油圧駆動装置によって移動可能に構成されて、前記部品搭載フレーム部材10と、サスペンションメンバ9とを同時に、持ち上げる事により、このサブ組立ラインSLに隣接するメイン組立ラインML上に位置する車両1のモータルーム2内部に、下側開口部から挿入可能とするものである。
【0039】
まず、この支持治具20の上部には、上方から前記サスペンションメンバ9が載置される。
この支持治具20の梯子形フレーム部材21の四隅近傍から突設された支持脚柱部材22,22…の各上端部には、上向きに開放された凹状受部材22a,22a…が、設けられている。
【0040】
そして、前記サスペンションメンバ9の前側クロスフレーム9b及び後側クロスフレーム9cの各両端部近傍が、下方から当接されたこれらの凹状受部材22a,22aに係合されて、車両前後及び車幅方向へ移動不能に保持される。
【0041】
この状態では、前記四隅近傍に設けられた支持脚柱部材22,22…によって、サスペンションメンバ9が安定して保持されているので、このサスペンションメンバ9に、モータマウントインシュレータ部材9a…を介して、前記モータ7,ギヤユニット8からなるモータユニットMUを、容易に取り付けて支持させることが出来る。
【0042】
この際、図1に示すように、空調用のコンプレッサ25やその他の補機26を、前記モータ7の外側上面部に取り付けても良い。
【0043】
次に、図1に示す部品搭載フレーム部材10を、これらのモータ7,ギヤユニット8の上方から、被せるように取り付ける。
【0044】
前記支持治具20から、上方へ向けて突設されている各治具ピン24…の上端部には、前記サスペンションメンバ9及びモータ7,ギヤユニット8からなるモータユニットMUと干渉しないように、このモータ7の位置よりも、上の位置に前記各係合段差24a…及び、各挿通ピン部24b…が形成されている。
【0045】
このため、これらのサスペンションメンバ9及びモータユニットMUの間隙に挿通された各挿通ピン部24b…が、図4に示すように前記部品搭載フレーム部材10の下面側に、開口形成された各ピン孔11b,…14bに対して、各々容易に挿通される。
【0046】
この丸棒状の挿通ピン部24b…の挿通により、前記治具ピン24…の各上端部周囲に設けられた環状の各係合段差部24a…が、各ピン孔11b,…14bの開口周縁部に下方から当接して、各々係止されて、この部品搭載フレーム部材10が、下方から保持される。
【0047】
前記支持脚柱部材22…の凹状受部材22a…によって、前記サスペンションメンバ9に取り付けられたモータユニットMUが、保持されている車両上下方向位置は、規制されている。
このため、この部品搭載フレーム部材10が、前記複数の治具ピン24…によって一定の高さ位置に保持されると、実際にモータルーム2内での車載状態と同様に、モータユニットMUに対して、高い位置関係を有して、前記部品搭載フレーム部材10が保持される。
【0048】
このように、この部品搭載フレーム部材10に固定されたインバータ13及びDC/DCコンバータ14や、他の補機26と、前記サスペンションメンバ9に取り付けられたモータユニットMUとの位置関係は、この支持治具20上で、実際に車両1のモータルーム2内に搭載された状態と略同じ相対位置関係を有することが出来る。
【0049】
従って、図2に示すメイン組立ラインMLに持ち込んで、前記モータルーム2内に挿入させる前に、傍方に設けられたサブ組立ラインSL上で、しかも、作業者が作業しやすい姿勢で、この部品搭載フレーム部材10の上側や、或いは、左,右側面側若しくは前,後側面側から、前記インバータ13,DC/DCコンバータ14又は、他の補機26を取り付けて固定することにより、狭いモータルーム2内で、取付作業を行う場合に比して、良好な作業性を得られる。
【0050】
また、この支持治具20に組み付けられた前記インバータ13,DC/DCコンバータ14及び他の補機26の間及び、これらとモータ7との間の配置関係及び距離は、実際に車両1のモータルーム2内に搭載された状態と略同じ相対位置及び相対距離を有している。
【0051】
このため、モータルーム2内に、挿入される前に、前記部品搭載フレーム部材10に取付られたインバータ13及びDC/DCコンバータ14或いは、他の補機26等から、延出される可撓性の給電ハーネス5及び冷却冷媒の給排水管を、この部品搭載フレーム部材10の上で、前記モータ7に対して、予め接続することが出来る。
従って、このサブアセンブリ状態で行える工程数を増大させて、更に、モータルーム2内に挿入された後の接続作業量を減少させることができる。
【0052】
しかも、サブ組立ラインSLで、接続作業が行えるので、接続後、通電、通水の動作確認のテスト作業も、メイン組立ラインMLに搬送する前に行うことが出来る。
このように、車載前に、テスト作業で不具合を見いだして、確認することにより、車載後の不具合箇所の取り外し及び再組立等の対処工程の発生率を減少させて、製造効率を向上させることが出来る。
【0053】
次に、前記支持治具20に、前記モータ7,ギヤユニット8からなるモータユニットMUを支持するサスペンションメンバ9と、前記強電部材としてのインバータ13及びDC/DCコンバータ14を取り付けた部品搭載フレーム部材10とを保持した状態で、前記サブ組立ラインSL上から、前記メイン組立ラインML上に、これらのサブアッセンブリ状態のパワートレインユニットが搬送される。
そして、図2中白抜き矢印に示すように、この支持治具20が、メイン組立ラインML上に存在する車両1の前記モータルーム2の下側開口部の下方に到達すると、これらのモータユニットMUのモータ7,ギヤユニット8は、前記部品搭載フレーム部材10のインバータ13及びDC/DCコンバータ14と共に、下方から上方へ向けて、持ち上げられて、下側開口部からモータルーム2内に挿入される。
【0054】
この際、前記複数の治具ピン24…の突設位置の設定が、前記サスペンションメンバ9を支持する凹状受部材22a…の中心位置Cを、これらの各治具ピン24…が係合されるピン孔11b…,14bで囲まれた領域の内側に位置するように構成されている。
また、前記DC/DCコンバータ14の下面部14aに形成されたピン孔14b位置が、図4に示すように、前記後側クロスメンバ部材12の車両前後方向位置よりも車両後方にオフセットされて構成されることにより、前記部品搭載フレーム部材10に取り付けられた前記インバータ13及びDC/DCコンバータ14の重心位置G近傍に、この各ピン孔11b…,14bの中心Sが、近接するように設定されている。
【0055】
このため、例えば、前記部品搭載フレーム部材10が、前記治具ピン24…の上昇に伴って、先行して上昇しても、DC/DCコンバータ14の下面部14aに形成されたピン孔14b位置が、図4に示すように、前記後側クロスメンバ部材12の車両前後方向位置よりも車両後方にオフセットされている為、各ピン孔11b,…14bの中心Sが、重心位置G近傍に位置して、車両前後,左右方向へ転ぶ虞が少なく、上昇動作中、安定して、下方から支持される。
しかも、この実施の形態では、更に、図4に示すように、前記各治具ピン24…が、前記サスペンションメンバ9に、平面視略台形を呈する様に開口形成された中央開口部9dの内側で、しかも、前記サスペンションメンバ9と、前記モータ7,ギヤユニット8及びサスペンションメンバ9との間の空間から上方に向けて突設されている。
【0056】
このため、前記サスペンションメンバ9と、前記モータ7,ギヤユニット8及びサスペンションメンバ9に、前記各治具ピン24…が干渉する虞がない。
【0057】
前記支持治具20の上昇に伴い、前記部品搭載フレーム部材10は、前記モータ7,ギヤユニット8を有するモータユニットMUを支持するサスペンションメンバ9と共に、上昇する。
そして、前記左,右サイドメンバ部材3,3から、対となるように二組、内側に突設されたメンバブラケット部材4,4…の各取付面部4b,4b…に、下方から、前,後側クロスメンバ部材11,12の両端部11a,11a及び12a,12aが、各々当接されて、モータルーム2内の取付位置に来るように、前記インバータ13及びDC/DCコンバータ14等の位置決め調整が行われる。
【0058】
次に、前記固定部材6…が用いられて、各取付面部4b,4b…の上面側から、前記部品搭載フレーム部材10の各両端部11a,12a…が、各々締結固定されることにより、前記インバータ13及びDC/DCコンバータ14等が、この部品搭載フレーム部材10を介して、車体側部材としての前記左,右サイドメンバ部材3,3に支持された状態となり、モータルーム2内の適正位置に固定される。
【0059】
更に、前記支持治具20によって、共に持ち上げられた前記サスペンションメンバ9の四隅近傍に設けられた防振マウント部材としての4個の各インシュレータ部材27…が、車両下方から前記モータルーム2の車幅方向左,右両側に設けられた左,右サイドメンバ部材3,3の下側面部3c,3cに、各々取り付けられて、このサスペンションメンバ9が、前記左,右サイドメンバ部材3,3に、これらのインシュレータ部材27…を介して弾性支持される。
【0060】
この実施の形態では、図4に示すように、前記サスペンションメンバ9を支持する凹状受部材22a…の中心位置Cが、前記各治具ピン24…が係合されるピン孔11b,…14bで囲まれた領域の内側で、しかも、重心位置Gの近傍に、位置するように構成されている。
【0061】
このため、前記支持治具20には、前記中心位置Cを中心として、略均等に、前記パワートレインユニットの荷重が加わり、更に、前記サスペンションメンバ9が上昇動作中であっても安定して、下方から保持される。
【0062】
そして、この実施の形態では、重心位置Gが、前記各ピン孔11b,…14bの中心Sと、凹状受部材22a…の中心位置Cとの間に位置しているので、更に、前記サスペンションメンバ9又は、前記部品搭載フレーム部材10の何れか一方を、先に取り付ける作業工程中であって、他方が下方から安定して、この支持治具20によって保持される。
【0063】
このため、前記モータルーム2の上,下両開口部から、取付作業を個別に行えて、作業者の人数の増大を抑制出来る。
【0064】
また、このサスペンションメンバ9の取付により、前記モータ7,ギヤユニット8等は、車両1の車体1aに対して、前記3個のモータマウントインシュレータ部材9a及び、4個のインシュレータ部材27…が介在されて弾性支持されることにより、二重の防振構造が構成されて支持されることとなり、良好な防振性能を発揮出来る。
【0065】
取付後、図3中白抜き矢印で示す様に、前記支持治具20を下降させて待避させると、各治具ピン24…の挿通ピン部24b…が、前記ピン孔11b,…14bから抜出されて、部品搭載フレーム部材10の保持状態が解除される。
このため、揺動させたくない防振状態で、前記インバータ13及びDC/DCコンバータ14等が、モータルーム2内に、固定される。
【0066】
また、前記支持脚柱部材22…の凹状受部材22a…が、前記サスペンションメンバ9から離間して、前記支持治具20による支持が解除されることにより、前記モータ7及びギヤユニット8等のモータユニットMUは、モータルーム2内に位置して弾性支持される。
【0067】
この際、前記治具ピン24…又は、前記凹状受け部材22a…の何れかが先に、前記部品搭載フレーム部材10又は、サスペンションメンバ9から離反しても、前記部品搭載フレーム部材10に取り付けられたインバータ13及びDC/DCコンバータ14の重心位置G近傍に、各ピン孔11b,…14bの中心Sが設定されているので、バランスが崩れる虞が無い。
更に、前記支持治具20を下降させることにより、前記支持脚柱部材22…及び治具ピン24…は、完全にモータルーム2から、抜出される。
このため、車体1aは、メイン組立ラインMLの上を、次工程へ向けて進行可能となる。
上述してきたように、前記支持治具20を用いることにより、前記部品搭載フレーム部材10に固定されるインバータ13及びDC/DCコンバータ14等と、モータユニットMUとして、弾性支持されるモータ7,ギヤユニット8等を、従来のように仮固定する必要がなくなり、車両下方向から同時にモータルーム2内に挿入させて、適正位置に配置して支持させることが出来る。
【0068】
このため、前記部品搭載フレーム部材10を、前記固定部材6…を用いて固定すると共に、前記モータ7,ギヤユニット8等を、二重の防振構造として、モータルーム2内に、弾性支持させて、モータ7等の駆動に伴って発生する振動や、サスペンションメンバ9を介して伝達される走行振動が、この部品搭載フレーム部材10に固定されるインバータ13及びDC/DCコンバータ14等の強電部品に伝わらないように防振構造とするといった個別に車体1aに取り付ける支持構造を必要とする電気自動車等の車両1に用いて好適である。
しかも、モータルーム2内の電装部品若しくは、前記モータユニットMU等を同時に、一方向から挿入して取り付けることが出来、この点においても、作業性が、良好である。
【0069】
取付後、前記支持治具20の待避により、前記治具ピン24…が、前記ピン孔11b,…14bから抜出されると共に、前記モータ7等が取り付けられているサスペンションメンバ9の凹状受部材22a…による係合支持が解除されて、車体側に弾性支持され、懸架装置等が作動可能な状態となる。
【0070】
このため、従来のように、取付後に行われていた仮固定を解除する工程を行わなくても良い。
【0071】
従って、本実施の形態のモータユニット取付方法では、仮固定及び仮固定解除の工程が不要となり、仮固定に必要とされる部品点数及び工数を減少させることが出来る。
【0072】
以上、図面を用いて、本発明の実施の形態のモータユニット取付方法を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0073】
即ち、前記実施の形態では、固定部材6…を用いて、各取付面部4b,4b…に、各両端部11a,12a…を各々締結固定して、前記部品搭載フレーム部材10を固定した後、次に、前記サスペンションメンバ9が、取り付けられるように工程を示しているが、特にこれに限らず、例えば、前記サスペンションメンバ9を先に取り付けてから、前記部品搭載フレーム部材10を固定する等、順序が異なっても、前記支持治具20を用いることにより、前記部品搭載フレーム部材10と、モータユニットMUが取り付けられたサスペンションメンバ9とを、同方向から同時にモータルーム2内に挿入させるものであれば、取付方向、取付順序及び組み合わせが、どのような順序となっても良い。
【0074】
また、このサスペンションメンバ9の取付により、前記モータ7,ギヤユニット8等は、車体に対して、前記3個のモータマウントインシュレータ部材9a…及び、4個のインシュレータ部材27…によって、二重の防振構造となり、良好な防振性能を発揮出来る状態で弾性支持されているが、特にこれに限らず、一重の防振構造或いは、三重以上の複数の防振構造等、インシュレータ部材の数量、形状、及び配設位置が特に限定されるものではない。
【0075】
更に、前記部品搭載フレーム部材10は、固定部材6…を用いて、各取付面部4b,4b…に、各両端部11a,11a及び12a,12aを各々締結固定されているが、固定部分の対向面方向が、車幅方向からであっても良く、また、位置決め用のロケートピンを用いても良く、固定箇所及び固定部材の形状、数量及び材質が特に限定されるものではない。
そして、前記支持治具20を上下方向に駆動する装置は、油圧で駆動されるものであっても、機械的に駆動されるものであっても良いことは、当然である。
更に、この実施の形態では、前記左,右サイドメンバ部材3,3の下側面部3c,3cに、サスペンション部材としてのサスペンションメンバ9が、インシュレータ部材27,27…を介して、弾性支持されるが、特にこれに限らず、サスペンション装置を構成する他の部品等のサスペンション部材であっても、前記モータ7を支持するものであれば、サスペンション部材の数量、形状、及び配設位置が特に限定されるものではない。
また、前記支持治具20に、サスペンションメンバ9を保持してから、前記モータ7,ギヤユニット8等のモータユニットMUを含むドライブアクスルを取り付けるように構成されているが、特にこれに限らず、例えば、先に、サスペンションメンバ9に、モータマウントインシュレータ部材9a…を介して、前記モータ7,ギヤユニット8等のモータユニットMUを含むドライブアクスルを取り付けてから、前記支持治具20に、サスペンションメンバ9を保持させても良く、前記強電部品を車体側部材に支持させて、前記モータが支持されたサスペンション部材を車体側部材に支持させ、支持治具20を車体1aから、抜出するものであれば、どのような順序で、取付工程が行われてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 車両(電気自動車)
1a 車体
2 モータルーム
3,3 左,右サイドメンバ部材(車体側部材)
5 給電ハーネス(接続に用いる部品)
7 モータ(モータユニットの一部)
8 ギヤユニット(モータユニットの一部)
9 サスペンションメンバ(サスペンション部材)
10 部品搭載フレーム部材
11b,12b,14b ピン孔
13 インバータ(強電部品の一つ)
14 DC/DCコンバータ(強電部品の一つ)
20 治具
24 治具ピン
G 重心位置
S 治具ピンの中心位置
MU モータユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと強電部品とを車体に組み付ける電気自動車のモータユニット取付方法において、
モータをサスペンション部材に取り付ける工程と、
モータとサスペンション部材とを、支持治具上に保持する工程と、
前記モータより高い位置で強電部品を前記支持治具から突設した複数の治具ピンにより保持する工程と、
前記モータ、サスペンション部材、強電部品を支持治具に保持した状態で、車体側に挿入する工程と、
前記強電部品を車体側部材に取り付ける工程と、
前記サスペンション部材を車体側部材に支持させる工程と、
前記支持治具を車体から抜出する工程と、
を備えることを特徴とする電気自動車のモータユニット取付方法。
【請求項2】
前記支持治具により、車体側に前記強電部品と前記モータとを挿入する前に、該強電部品と該モータとの接続作業を、前記支持治具上で行うことを特徴とする請求項1記載の電気自動車のモータユニット取付方法。
【請求項3】
前記複数の治具ピンの中心位置が、前記強電部品の重心位置の近傍に存在するように設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電気自動車のモータユニット取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20626(P2011−20626A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168968(P2009−168968)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】