説明

電気自動車の充電制御方法、充電監視制御センタ、車載カーナビ装置、および電力系統安定化システム

【課題】電力系統における電力の需給バランスを取るために、必要な時間に必要な数だけの電気自動車を充電スタンドに誘導して、各充電スタンドにおける各電気自動車への充電電力を的確に制御する。
【解決手段】電力系統監視制御システムによって計画された各配電区域内の充電スタンド群が消費すべき総充電電力を、必要な数だけの電気自動車に分配して消費させるために、充電監視制御センタが、走行中の電気自動車に対して充電スタンドで充電を行う電気自動車の募集を行い、応募があった電気自動車のなかから選定した必要な数だけの電気自動車に前記総充電電力を分配することによって各電気自動車への充電量を決定し、さらに、それら各電気自動車を各充電スタンドに個別に誘導して、各充電スタンドにおける各電気自動車への充電電力を個別に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車への充電量を制御することによって電力系統の電力品質を安定化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネ・省コストに対するニーズの高まりは大きくなってきている。2007年11月には経済産業相の諮問機関である総合資源エネルギー調査会省エネ部会政策小委員会において、京都議定書の温室効果ガス削減目標達成へ向けて検討している省エネルギー法改正(省エネ法改正)に対する報告書案が了承され、同年12月12日には部会でも了承となり最終的な報告書が纏められた。
【0003】
その報告書では、国際エネルギー価格の高騰等の変動の中、エネルギー資源の大部分を海外に依存している我が国にとって、省エネルギーは、国民生活や経済活動の基盤として、最重要課題の一つであり、今後エネルギー需給逼迫状況と高水準のエネルギー価格が長期化すれば、現在は一部にとどまっている影響も、今後は、経済社会全般に徐々に広がっていくことが懸念されていることから、エネルギーの有効利用は中長期的な視野の下、今から対策を講じていく必要がある、としている。
【0004】
こうしたことから、企業における業務部門ばかりでなく、家庭部門における省エネ施策の検討が更に進むことが予想される。また、デマンドサイドマネジメント(DSM:Demand Side Management)、デマンドレスポンスプログラム(DRP:Demand Response Program)の導入により、ピーク時間帯の鋭い負荷を抑制して電力供給の信頼度を高めるとともに、設備利用率を向上させることが可能となるため、より経済的な電力供給の実現を図るべく、今後更なる技術革新が進むことが予想される。
【0005】
オール電化住宅の普及、電気自動車の大量導入など、エネルギーの電化が今後ますます加速されるものと考えられ、こうした電力需給構造の変化が既存の配電設備へどのような影響を及ぼすのかが議論され始めている。具体的には、オール電化住宅の普及と電気自動車の大量導入にともなって電力を供給するシステムに様々な負担が発生すること、電気自動車への充電のための不確定な負荷の増大によって配電系統の電力品質が低下することなどが懸念されている。
【0006】
これに関連する従来技術として、特許文献1には、事前に入力される電気自動車の走行スケジュールに基づいて、家庭または事業所で行う車載バッテリへの充電のコストを最小にするための技術が開示されている。また、非特許文献1には、配電区域内で充電可能な状態にある電気自動車に対して、一斉にLFC(Load Frequency Control:負荷周波数制御)信号を送信することにより、充電の負荷を制御して電力系統を安定化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−298537号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】高木雅昭他,「LFC信号を用いたプラグインハイブリッド車の充電制御による系統貢献度の評価」,第28回エネルギー・資源学会研究発表会資料20−3,2009年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1で開示された技術は、家庭や事業所が所有するハイブリッド型電気自動車の利用計画から充電量と充電スケジュールとを決定するものであり、充電の実行に伴って発生する電力系統における電圧低下などの電力品質の問題は考慮されていない。また、バッテリ切れの際はエンジン走行することが想定されており、充電スタンドでの充電は対象外となっている。他方、非特許文献1に開示された技術は、太陽光発電や風力発電のように発電量の変動が大きい電力供給源を利用する場合に、その変動分を充電設備に接続中の電気自動車の車載バッテリで吸収することによって電力の需給バランスを取ろうとするものであるが、接続中の電気自動車の数が多くなければ吸収可能な電力変動の範囲が小さくなって十分な効果を得ることができない。
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする第一の課題は、電力系統における電力の需給バランスを取るために、必要な時間に必要な数だけの電気自動車を充電スタンドに誘導して、各充電スタンドにおける各電気自動車への充電電力を的確に制御することである。
また、本発明が解決しようとする第二の課題は、電気自動車がバッテリ切れとなって走行不能とならないように、所望の条件で充電サービスを提供してくれる充電スタンドに電気自動車を適切に誘導することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の第一の課題を解決するために、本発明は、電力系統における電力の需給バランスを取るべく電力系統監視制御システムによって計画された各配電区域内の充電スタンド群が消費すべき総充電電力を、走行中の電気自動車のなかから集めた必要な数だけの電気自動車に分配して消費させるために、充電監視制御センタが、走行中の電気自動車に対して配下の配電区域内の充電スタンドで充電を行う電気自動車を募集して、応募があった電気自動車のなかから選定した必要な数だけの電気自動車に前記総充電電力を分配することによって各電気自動車への充電量を決定し、さらに、それら各電気自動車を充電を行うべき各充電スタンドに個別に誘導して、各充電スタンドにおける各電気自動車への充電電力を個別に制御することを特徴とする。
【0012】
そのために、各電気自動車の走行および充電の履歴などに基づいて各電気自動車のユーザ特性を推定するとともに、ユーザに提示可能なインセンティブの範囲を決定するデータセンタと、電気自動車と交信して充電スタンドで充電を行う電気自動車を募集し、応募があった電気自動車の現在位置およびバッテリ残量と、データセンタから取得したユーザ特性とに基づいて、各電気自動車のユーザに提示するインセンティブを個別に決定しつつ充電対象とする電気自動車を必要な数だけ選定し、選定した各電気自動車を該当の充電スタンドに誘導して、それらの電気自動車への充電電力を個別に制御する充電監視制御センタとを備える。
【0013】
このとき、充電監視制御センタがデータセンタから取得する各電気自動車のユーザ特性は、各電気自動車の過去における位置情報とSOC(State of Charge:充電率)、SOH(State of Health:バッテリ劣化度)、充電募集への協力頻度、価格適合性、電力変換効率をはじめとした履歴データを基に生成されるプロファイルデータであり、充電監視制御センタは、誘導先の充電スタンドを含む電力系統の負荷や周波数などに関する制約条件を用いて、各電気自動車に提示する個別のインセンティブと充電量とを最適に決定する。
【0014】
また、前記の第二の課題を解決するために、本発明は、各電気自動車に搭載されるコントローラが、電気自動車がバッテリ切れとなって走行不能とならないように、各電気自動車のバッテリ残量および車載のカーナビ装置によって算出された目的地までの走行距離に基づいて充電が必要であると判定した場合は、充電監視制御センタに充電を行うべき充電スタンドの位置を問い合わせ、充電監視制御センタは、電力系統の負荷や周波数などに関する制約条件を満たしかつ所望の条件で充電サービスを提供可能な充電スタンドを適宜探索して、当該充電スタンドの情報を各電気自動車に提供し、そのなかから選択された充電スタンドに当該電気自動車を誘導して、当該電気自動車への充電電力を個別に制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電力系統における電力の需給バランスを取るために、必要な時間に必要な数だけの電気自動車を充電スタンドに誘導して、各充電スタンドにおける各電気自動車への充電電力を的確に制御することができる。また、電気自動車がバッテリ切れとなって走行不能とならないように、所望の条件で充電サービスを提供してくれる充電スタンドに電気自動車を適切に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第一実施形態に係る電力系統安定化システムの全体構成図である。
【図2】再生可能エネルギーの出力変動を緩和する動作についての説明図である。
【図3】第一実施形態のデータセンタの機器構成例を示すブロック図である。
【図4】充電監視制御センタの機器構成例を示すブロック図である。
【図5】充電スタンドと電気自動車との接続についての説明図である。
【図6】電力系統安定化システムの各部における通信手順の例を示したシーケンスチャートである。
【図7】第一実施形態の系統制御指令装置の動作例を示すフローチャートである。
【図8】潮流計算で用いるデータの構成例である。
【図9】プロファイルデータベースについての説明図である。
【図10】インセンティブの決定方法についての説明図である。
【図11】ランク付けの方法についての説明図である。
【図12】充電量の分配手順を示すフローチャートである。
【図13】擬似的なコスト関数についての説明図である。
【図14】充電募集通知を受信したときの画面表示例である。
【図15】希望充電場所を選択するときの画面表示例である。
【図16】地上デジタル放送による充電募集通知を受信するための画面表示例である。
【図17】充電スタンド候補を色分けして表示した画面表示例である。
【図18】第二実施形態のデータセンタの機器構成例を示すブロック図である。
【図19】第二実施形態の系統制御指令装置の動作例を示すフローチャートである。
【図20】充電モードプロファイルデータのデータ構造およびデータ例である。
【図21】第三実施形態に係る電力系統安定化システムの全体構成図である。
【図22】認証センタの機器構成例を示すブロック図である。
【図23】課金センタの機器構成例を示すブロック図である。
【図24】EV認証装置とEV課金装置とを充電監視制御センタの内部に装備したときに機器構成例を示すブロック図である。
【図25】EVの認証と充電料金の課金決済処理を行うときの電力系統安定化システムの各部における通信手順の例を示したシーケンスチャートである。
【図26】充電予定情報および充電スタンド選択基準を入力するための画面表示例である。
【図27】充電予定情報および候補となる充電スタンドの位置情報のデータ構造およびデータ例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。なお、電気自動車(以下、電気自動車の英語標記に基づいて適宜「EV(Electric Vehicle)」と略記する。)とは、外部から供給される電力を充電可能な走行用の車載バッテリ(以下、「バッテリ」という。)と走行用モータとを搭載しているすべての自動車のことを指すものとし、いわるゆプラグインハイブリット自動車をも含むものとする。
【0018】
[第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る電力系統安定化システムの全体構成図である。図1に示した電力系統安定化システム10は、火力発電所、原子力発電所をはじめとした大規模電源設備123、太陽光発電設備121、風力発電設備122から供給される電力を、配電変電所125および送電線126を介して充電スタンド107と需要家108とに配電する電力系統124の電力品質を安定化させるためのシステムである。ここで、充電スタンド107には、従来のガソリンスタンドのような専用設備以外に、商業施設の駐車場や時間貸しの有料駐車場などに設置される簡易型の設備を含むものとし、需要家108には、各種商工業施設などの大口需要家と一般家庭とを含むものとする。
【0019】
また、電力系統安定化システム10は、電力系統124の全体を対象として監視制御を行う電力系統監視制御システム101と、電力系統124内の電気の流れを含む各機器の動作履歴、ユーザ契約情報をはじめとする電力系統124に関連する各種データを管理するデータセンタ102と、所定の配電区域毎に設置され、配下の配電区域内を走行中のEV106を充電スタンド107に誘導してバッテリへの充電を促す機能を有する充電監視制御センタ103とを備える。これらのシステムおよびセンタの機器と、EV106との交信を行う無線基地局105および充電スタンド107とは、通信ネットワーク104を介して相互に通信可能に接続される。
【0020】
電力系統監視制御システム101は、公知の技術を利用することにより、電力系統124を構成している各種設備の状態や各所に設置されるセンサなどの情報を監視し、電力を安定して供給するように各種設備を制御する。その制御機能の一部として、電力系統監視制御システム101は、各配電区域内のすべての充電スタンド107でEV106に充電する電力の合計値である総充電電力を計画し、各充電監視制御センタ103は、電力系統監視制御システム101によって計画された総充電電力を配下の配電区域の充電スタンド107およびEV106に適切に分配して充電を実行させる。
【0021】
ここで、図2を参照して、電力系統安定化システム10がEV106への充電によって再生可能エネルギーの出力変動の影響を緩和する動作の概略を説明する。このときの電力系統124は、図1に示すように、太陽光発電設備121、風力発電設備122、および火力発電所、原子力発電所などの大規模電源設備123から供給される電力を、不図示の需要家機器群と充電スタンド107で充電を行うEV106とが消費する構成となる。なお、充電監視制御センタ103は、それぞれの配電変電所125毎に一つずつ設置されるものとする。
【0022】
図2(a)に示した符号201のグラフは太陽光発電設備121の出力変動の一例であり、図2(b)に示した符号202のグラフは風力発電設備122の出力変動の一例である。このとき、この両者から同時に電力の供給を受ける配電変電所125の二次側母線の潮流(電圧/周波数)の変動は、例えば、図2(c)に示した符号203のグラフのような傾向を示し、符号204および符号205の部分のように、破線で示した所定の上限値206と下限値207とで規定される許容範囲を逸脱することになる。
【0023】
このような潮流の変動は、太陽光発電設備121と風力発電設備122との出力変動を、天候予測に基づいて推測することにより、一定の誤差の範囲内で予測が可能である。そこで、図2(c)の符号203のグラフのように、符号204,205の部分で許容範囲からの逸脱が予想される場合は、充電スタンド107でのEV106への充電により図2(d)の符号208の斜線部分に相当する電力を消費させることで、符号209のグラフのように、電力の需給バランスを取って許容範囲からの逸脱を未然に防止することができる。なお、ここではEV106への充電による対策に的を絞るために、下限値を下回る例やその対策については説明を省略している。
【0024】
以上の例で説明したように、電力系統監視制御システム101は、電力系統124における電力の需要と供給とのバランスを取って電力品質を安定化するための手段の一つとして、各配電区域内のすべての充電スタンド107でEV106への充電のために給電する電力の合計値の時間推移である総充電電力を計画する。
【0025】
続いて、データセンタ102と充電監視制御センタ103について詳しく説明する。なお、データセンタ102および充電監視制御センタ103は、電力会社もしくは電力関連のサービスを提供する第三者(サービスプロバイダ)による運営を想定する。
【0026】
図3は、データセンタ102の機器構成例を示すブロック図である。図3に示すように、データセンタ102は、EVユーザ情報解析装置301、電力契約データベース302、履歴データベース303、プロファイルデータベース304、および外部の通信ネットワーク104との接続を認証してデータの仲介を行うゲートウエイ(以下、「GW」(Gateway)と略記する。)305を備えて構成される。
【0027】
電力契約データベース302には、電力会社またはサービスプロバイダとEV106のユーザ(以下、「EVユーザ」という。)との間で締結された充電サービスに関する電力契約のデータが保持される。これには、各EVユーザの時間帯別の希望充電単価の情報が含まれる。
【0028】
通信ネットワーク104を介して収集された各EV106の走行データ、バッテリ残量、充電量などの履歴データは、履歴データベース303に記録される。EVユーザ情報解析装置301は、電力契約データベース302から取得した希望充電単価と、履歴データベース303に記録された履歴データとを、定期的に解析することによって各EVユーザ毎のプロファイルデータを生成し、生成したプロファイルデータをプロファイルデータベース304に格納する。
【0029】
各EV106の履歴データは、道路の各所に設置される無線基地局105を介して無線通信によってリアルタイムに収集してもよいし、EV106の記憶部に蓄積しておき、充電スタンド107もしくは自宅等での充電中に有線通信によってまとめて収集するようにしてもよい。
【0030】
図4は、充電監視制御センタ103の機器構成例を示すブロック図である。図4に示すように、充電監視制御センタ103は、EV誘導計算装置401、系統制御指令装置402、および外部の通信ネットワーク104との接続を認証してデータの仲介を行うGW403を備えて構成される。
【0031】
EV誘導計算装置401は、電力系統監視制御システム101から指定される時間帯毎の総充電電力を満たすべく、データセンタ102から必要な情報を取得するとともに、各EV106と交信することによって、付与するインセンティブを調整しながら充電を行うEV106を募集して、応募のなかから充電対象とするEV106を必要な数だけ選定し、各EV106の充電場所の決定と充電量の配分とを行って、各EVを対象の充電スタンド107まで誘導する。
【0032】
系統制御指令装置402は、配下の配電区域の潮流計算を実施することにより、EV106を含む電力制御の対象機器と制御内容とを決定し、それらの機器に対する個別の制御を含んで配下の配電区域の系統制御を行う。
【0033】
図5は、充電スタンド107とEV106との接続についての説明図である。なお、図5に示した充電スタンド107は、配電変電所125から柱上変圧器511、電力線512、分電盤513を介して給電される電力を、一般家庭などに設置される簡易型充電設備の数倍の充電電流で給電することでEV106が備えるバッテリ501を短時間で充電することができる急速充電モードを備える。
【0034】
EV106は、バッテリ501、バッテリ501を制御するコントローラ502、充電監視制御センタ103から通信ネットワーク104を介して受信したコマンドを解釈し、あるいはデータセンタ102、充電監視制御センタ103に送信する情報の符号化を行うコマンド解釈手段503、および通信ネットワーク104を介して通信を行うためのネットワークI/F(Interface)504を有して成る。
【0035】
ネットワークI/F504は、無線方式と有線方式とのいずれか一方であっても、その両者を用いるものであっても構わない。なお、有線方式の場合は、充電用ケーブルを充電用プラグに装着することによって通信路が確立されるものであることが好ましい。ネットワークI/F504を介してEV106から送信されるデータは、通信ネットワーク104を介してデータセンタ102や充電監視制御センタ103に伝達される。また、充電監視制御センタ103から送信される制御指令(コマンド)は、これと逆の経路をたどってEV106のコマンド解釈手段503に伝達され、コントローラ502によりコマンドに応じた制御が行われる。
【0036】
図6は、充電監視制御センタ103に対して、時間帯毎の総充電電力が指定されたときの、電力系統安定化システム10の各部における通信手順の例を示したシーケンスチャートである。以下、図6のシーケンスチャートに沿って、各部の動作の詳細を説明する。
【0037】
電力系統監視制御システム101は、総需要予測システム、変電所需要予測システム、発電機供給力予測システムをはじめとした不図示の計算機システムによって、例えば1〜24時間先までの時間帯毎の電力の過不足を予測し、予測の結果に基づいて各発電設備の運転計画を作成するとともに、各配電区域の時間帯毎の総消費電力を計画する。その結果、それぞれの充電監視制御センタ103に対して、当該センタの配下の配電区域内のすべての充電スタンド107におけるEV106への時間帯毎の総充電電力が充電単価とともに提示される(601)。この充電単価は充電スタンド107での通常の充電単価よりも低く設定され、両者の差分が充電募集に応募して充電を行うEVユーザに付与するインセンティブの原資となる。
【0038】
総充電電力と充電単価との提示を受けた充電監視制御センタ103は、データセンタ102から配下の配電区域内もしくは隣接する配電区域内を走行中で充電サービスを契約しているすべてのEVユーザのプロファイルデータを取得し(602,603)、提示された充電単価以上での充電を希望しているEVユーザを抽出して、抽出したEVユーザに対応する各EV106に充電募集通知を送信する(604)。これにより、EVユーザに対して充電募集に応募するか否かの問合せが車載カーナビ装置の画面や音声などで行われる。なお、ここでは、希望充電単価を用いて充電募集通知の送信先を限定するものとしたが、契約対象のすべてのEV106に送信するようにしてもよく、その場合はEV106側で希望充電単価以下での充電募集だけを選択してEVユーザに通知するとよい。
【0039】
続いて、EVユーザがカーナビ装置の画面やボタンなどから充電募集に応募する旨の入力操作を行うと、当該EV106から現在の位置情報とバッテリ残量を表すSOC(充電率)とを含む応募データが充電監視制御センタ103に送信される(605)。図示は省略するが、これらの応募データは、充電監視制御センタ103からデータセンタ102にも送信され、履歴データベース303に各EVユーザの応募実績として追加登録される。
【0040】
次に、充電監視制御センタ103は、充電募集通知を送信してから所定の時間内(例えば、5分以内)に受信したすべての応募データを集計することによって分配可能な総充電電力の最大値を算出し、その値とともに電力系統監視制御システム101に実行可否を回答する(606)。
【0041】
次に、電力系統監視制御システム101は、各配電区域の充電監視制御センタ103から受信した実行可否の回答に基づいて各配電区域への総充電電力の再配分を行い、各充電監視制御センタ103に再配分結果の総充電電力を指示する(607)。
【0042】
次に、充電監視制御センタ103は、先に取得した各EVユーザのプロファイルデータに基づいて応募があったEVユーザのランク付けを行い、このランキングの順序にしたがって総充電電力の分配案を作成して、それぞれのEV106に充電場所の候補と付与するインセンティブ額とを含む詳細募集要項を個別に通知して(608)、EV106から希望充電場所の選択結果を取得する(609)。この希望充電場所の選択は、1つであっても複数であってもよく、通知されたすべての場所を選択してもよい。
【0043】
次に、充電監視制御センタ103は、取得した希望充電場所のなかから所定の基準によって1つを選択して充電量を決定し、同様の処理を、指示された総充電電力の分配が終わるまで繰り返すことによって、充電対象とするEV106を必要な数だけ選定して充電場所と充電量とを決定する。このとき、充電監視制御センタ103は、配下の配電区域の潮流計算を実施することによって、各EV106への充電を行う充電スタンド107と充電量との決定を行う。その結果、選定から漏れたEV106にはその旨を知らせる非選定通知を送信し(610)、選定されたEV106には、決定した充電スタンド107への移動指示を送信する(611)。
【0044】
特定の充電スタンド107への移動を指示されたEV106のカーナビ装置は、当該充電スタンド107までの走行経路を運転者に提示するなどして当該EV106を当該充電スタンド107に誘導し、EV106に充電用ケーブルが接続されて充電の準備が完了すると、EV106から充電スタンド107を介して充電監視制御センタ103に充電開始要求が送信される(612,613)。
【0045】
充電監視制御センタ103は、最新の情報に基づいて再度潮流計算を実施することにより、当該EV106への充電量と充電パターンとを決定し、充電スタンド107に充電の実行を指示する(614)。
【0046】
充電の実行を指示された充電スタンド107は、EV106のコントローラ502と連携して、指示された充電パターンによってバッテリ501に電力を給電し(615)、指示された充電量の充電が完了したら、充電監視制御センタ103に実際に充電した電力量を含んだ充電完了通知を送信する(616)。
【0047】
次に、充電監視制御センタ103は、データセンタ102に対して、実際に充電した電力量、インセンティブ額、充電場所、充電時間などを含んだ充電実績通知を送信し(617)、これを受信したデータセンタ102は、履歴データベース303にその内容を充電実績データとして追加記録するとともに、実際に充電した電力量に見合った充電金額およびインセンティブ額を不図示の課金データベースに記録し、充電監視制御センタ103に受信確認を送信する(618)。そののち、充電監視制御センタ103は、EVユーザに付与したインセンティブ額を含んだインセンティブ通知を、EV106に送信する(619)。
【0048】
続いて、充電監視制御センタ103に備えられる系統制御指令装置402が、各EV106の充電場所と充電量とを決定するために行う配電区域の潮流計算について説明する。図7は、系統制御指令装置402が実施する潮流計算の処理の流れを示したフローチャートである。
【0049】
系統制御指令装置402は、まず処理701にて、配下の配電区域の電力系統上に設置されている電流および電圧センサの情報、ならびに系統接続を決定する開閉器の状態をはじめとした系統データを収集し、それらの情報と、電力系統監視制御システム101と同様な技術による配電区域内の需要予測ならびに供給力予測とに基づいて、数十分から数時間先までの系統状態を予測する。その予測結果をもとに、系統制御指令装置402は、処理702にて、候補となる充電スタンド107でEV106への充電を行うものとしたときの潮流計算を実施する。
【0050】
潮流計算で用いる電力系統データの構成例を図8に示す。設備データ801は、対象となる配電区域の電力系統を、各配電区間を形成している送電線(ブランチと呼ばれる)毎に区切ってその特性を定義するものであり、送電線のブランチ名称、あるいはブランチの始点と終点とを構成している機器のノード名称からなる設備名(例えば、#1−#2は#1が始点のノード名称、#2が終点のノード名称を表す。)、抵抗分の値、誘導分の値、容量分の値、ならびに変圧器の場合はタップ比から構成されている。また、負荷母線データ802は、負荷母線であるノードの特性を定義するものであり、機器のノード名称、発電機の有無を示すフラグ、電圧指定値、電圧初期値、有効電力発電量(PG)、無効電力発電量(QG)、有効電力負荷(PL)、無効電力負荷(QL)、ノードに接続るコンデンサやリアクトルのインピーダンス値(SCSHR)から構成されている。
【0051】
次に、系統制御指令装置402は、処理703にて、潮流計算にて得られた各負荷母線の電圧や周波数が許容範囲から逸脱する異常値が発生していないかどうかを判定する。異常値が発生していない場合には(処理703でNo)、処理708に分岐して、候補とした充電スタンド107とEV106との組み合わせに対する充電パターンおよび充電量を決定し、処理を終了する。他方、異常値が発生している場合には(処理703でYes)、処理704に分岐して、潮流感度をもとに異常値発生付近の電力分布をあらかじめ決められた既定のステップ分だけ変更することにより異常値が発生しない状態を仮決定する。この潮流感度に基づく制御については下記の文献に詳しい。
諏訪 三千男, 岩本 伸一: “無効電力と調相機器に重点を置いた電源別色分け手法”, 電学論B, Vol. 124, No. 4, pp.537-545 (2004) .
【0052】
系統制御指令装置402は、次の処理705にて、前記仮決定した電力系統の状態を実現できる制御機器の対策可能な組み合わせ候補があるかどうかを判定し、対策可能な組み合わせ候補があれば(処理705でYes)、処理706に分岐して、その対策結果を電力系統データに反映させたのち、処理702に戻って再度潮流計算を実施する。ここで決定した制御機器の対策は、系統制御指令装置402から別途各制御機器に制御指令を送信することによって実行される。他方、対策可能な組み合わせ候補がなければ(処理705でNo)、処理707に分岐して、電力系統監視制御システム101に対して上位側での制御を要求する通知を送信したのち、処理を終了する。
【0053】
以上は、系統制御指令装置402が、各EV106の充電場所と充電量とを事前に決定するために行う配電区域の潮流計算についての処理であるが、実際に各EV106が指定された充電スタンド107に到着して充電を開始する直前に行う潮流計算の処理もほぼ同様である。
【0054】
次に、充電募集および充電対象のEV106の選定に用いられるEVユーザのプロファイルデータの作成方法と、それを用いたEVユーザのランキング方法について説明する。
図9(a)に示すように、EVユーザ情報解析装置301は、電力契約データベース302および履歴データベース303に登録されたデータを定期的に解析して各EVユーザ毎のプロファイルデータを生成し、生成したプロファイルデータをプロファイルデータベース304に登録する。
【0055】
例えば、走行データとして収集した位置情報を、図9(b)の符号811のグラフに模式的に示すように時間帯に分けてプロットすると、各EVユーザが一日のどの時点でどこに車を駐車しているか、あるいはどの付近を走行しているかといった傾向がわかる。具体的には、存在確率が高い地域カテゴリーを抽出して時間帯ごとにクラスタリングを行う。その結果を各EVユーザの日々の行動パターンを予測するためのプロファイルデータとする。
【0056】
また、図9(b)の符号812のグラフは、あるEV106の一日のSOC(充電率)の変化を履歴データから抽出して平均化した結果の例を示したものである。このようなSOCの一日の変動サイクルを、各EV106への時間帯別の充電可能量を推測するためのプロファイルデータとする。
【0057】
また、図9(c)の符号813のグラフは、現在の位置がわかっているあるEV106が、10分後、20分後、30分後にどの位置にいる確率が高いかを、台風の進路予測図のイメージで表した例である。過去の走行データなどを解析してこのような進路予測を行うためのデータをプロファイルデータとすることにより、充電募集してから実際に充電を開始できるようになるまでの概算時間を推定することが可能となる。
【0058】
このほかにも、各EVの充電効率、電池劣化度、気温等の気象条件をはじめ、さまざまなパラメータを充電募集およびEVユーザのランク付けのためのプロファイルデータとして利用することが可能である。
【0059】
図10は、走行中のEVユーザが近隣の充電スタンド107まで移動して充電を行うときの価格インセンティブの決定方法についての説明図である。EVユーザ側から考えると、移動距離あるいは移動時間が大きいほど手間と費用がかかるので、符号821のグラフのように充電スタンド107までの距離もしくは到達時間が大きいほど高いインセンティブを要求したい。他方、充電監視制御センタ側としては、充電スタンド107にEVユーザが到達するまでの時間が短いほど制御品質を高められるので、符号822のグラフのように移動距離あるいは移動時間が小さいユーザには高いインセンティブを与えてもよいと考える。
【0060】
したがって、過去の充電募集への応募の実績から、図10の符号821のグラフのような各EVユーザの特性を推定するプロファイルデータを生成しておき、斜線を施した範囲内でインセンティブを付与することで、EVユーザの満足度を高めることができる。
【0061】
次に、図11を参照して、EV誘導計算装置401(図4参照)が各EVユーザをランキングする方法について説明する。ここでは、EV誘導計算装置401は、近接度、充電可能量、価格適合性、および協力頻度の4つの尺度を用いてEVユーザのランキングを行う例を説明するが、他の尺度を用いてもよい。
【0062】
近接度とは、走行中の各電気自動車106から最寄りの充電スタンド107までの物理的距離または時間的距離を正規化したものであり、既存のナビゲーション技術で求められる渋滞予測情報に基づく最短経路について算出するのが好ましい。充電可能量は、バッテリ容量、バッテリ劣化度、バッテリ残量などから求められる、例えば80%充電するための充電量を正規化したものである。価格適合性とは、EVユーザの希望充電単価とデータセンタ102によって指定された充電単価との差分あるいはEVユーザに付与されるインセンティブを正規化したものである。また、協力頻度とは、充電監視制御センタ103からの充電募集回数に対する応募回数の比率を正規化したものである。
【0063】
以上に述べた4つの尺度を用いてEVユーザをランキングする方法としては、図11の例に示すように、4つの尺度の値をレーダチャート化して、チャート831〜833の面積が大きい順番にランクを上位にする、という方法、あるいはそれぞれの尺度の値に天候、気象状況に応じた重みを付けて総和した合計値が大きい順番にランクを上位にする、という方法などを適用することができる。ここでの重み付けは、例えば、晴天の日は出かけていることが多いので、近接度が大きくても協力頻度が小さくなる、冬季はバッテリ残量が少なくても充電可能量は小さくなる、というような特性を反映させるためのものである。
【0064】
図12は、EVユーザのランキングに基づいて、応募があった各EV106の充電量を決定する処理の流れを示したフローチャートである。図12において、電力系統監視制御システム101から指示された総充電電力をSmaxとし、充電募集への応募があったEVユーザを表す変数をn、分配済みの充電量の合計を表す変数をSとする。
【0065】
EV誘導計算装置401(図4参照)は、まず処理901にて、データセンタ102から取得した充電募集の対象となるすべてのEVユーザのプロファイルデータのなかから、応募があったEVユーザのプロファイルデータを抽出する。次に、処理902にて、各EVユーザのランキングに用いる指標値を算出し、処理903にて、応募があったEVユーザを指標値が大きい順にソートしたランキングリストを作成する。
【0066】
次に、EV誘導計算装置401は、処理904にて、ランキング順位を示す変数nと割り当て済みの充電量を示す変数Sとを初期化したのち、処理905から処理907を、変数Sの値が総充電電力Smaxを超えるまで繰り返すことによって、ランキングリストの上位から順に各EVユーザに充電量を割り当て、割り当てが完了したら処理908にて割り当て済みのリストを確定して処理を終了する。
【0067】
このとき、処理905にてランキング順位nのEVユーザに割り当てる充電量である充電量(n)の値の算出方法について、図13を用いて説明する。EV106への総充電電力の分配は、発電機の経済負荷配分の考え方をもとに実施する。これは、発電機の出力とコストとの関係を2次関数近似して、総発電コストが最小になるように各発電機の出力を求めるものである。ここで、総充電電力を総発電量に対応させると、各EV106へ割り当てる充電量とコストとの関係を同様な2次関数によって近似する必要がある。この2次関数は、充電量をxとすると、
F(x) = ai2 + bix +ci (i:EVに割り振られた番号)
と表わされる。この係数の意味を考えると、aiは二次曲線の傾き(効率の良さ)、biはx軸方向の移動量(出力の上下限値)、ciはy切片(コストの最低値)に相当するので、前記したランク付けの尺度とのアナロジーを考え、例えば、
i:価格適合性
i:充電可能量
i:近接度
と定義する。
【0068】
各EVユーザのプロファイルデータおよび応募時に各EV106から取得した位置、SOCから算出される上記3つの尺度の値を用いることにより、図13のグラフ841〜843に示すような各EV106のコストと充電量との関係を表す関係式を作成して、発電機の経済負荷配分と同様に、各EV106の充電量を決定する。
【0069】
続いて、充電監視制御センタ103から送信される充電募集通知を受信したときのEV106の動作について説明する。この充電募集通知を走行中のEV106に伝達する手段には、無線の双方向通信を用いてもよいし、移動受信に強い地上デジタル放送を利用してもよい。
【0070】
充電監視制御センタ103から送信される充電募集通知には、充電募集の対象となる充電スタンド107の情報が含まれており、この充電募集通知を受信したEV106のコントローラ502は、不図示のカーナビ装置にその情報を引き渡して、図14に例示するように、自車の位置を示す自車アイコン951から目的地の位置を示す目的地アイコン952までの誘導経路を示すナビゲーション画面(経路誘導地図画面)上に、応募〆切までの残り時間を含む充電募集のメッセージ961と、充電募集の対象となる充電スタンド107の位置を示す充電スタンドアイコン953〜956と、操作メニュー962とを表示させる。
【0071】
操作メニュー962のうち、一覧表示ボタンは応募を受け付けている充電募集を一覧表示させるためのボタン、前へボタンは1つ前の充電募集の情報を表示させるためのボタン、次へボタンは1つ後の充電募集の情報を表示させるためのボタン、詳細表示ボタンはこの充電募集の詳細情報を表示させるためのボタン、応募ボタンはこの充電募集に応募するためのボタンである。
【0072】
必要に応じて充電募集の詳細情報を表示させて充電単価などの充電条件を確認するなどしたのち、ユーザ(運転者)が応募ボタンを選択入力すると、カーナビ装置からその旨がコントローラ502に通知され、コントローラ502は、自車の現在の位置とバッテリ501のSOCとを含む応募データを充電監視制御センタ103に送信する。
【0073】
そののち、充電監視制御センタ103によって充電量が決定されると、充電量と各充電スタンド毎に付与されるインセンティブ額とを含む詳細募集要項通知が送信されてくるので、これを受信したEV106のコントローラ502は、カーナビ装置にその情報を引き渡して、図15に例示するように、充電スタンドの選択を促すメッセージ963と、自車の位置から目的地に至る経路の近傍で最も近い充電スタンド107の位置を示す充電スタンドアイコン955およびその場所を経由する新たな誘導経路と、当該充電スタンド107についての詳細募集要項の内容964と、操作メニュー965とをナビゲーション画面上に表示させる。
【0074】
詳細募集要項の内容964には、充電スタンド名、到着予定時刻、予定充電時間、インセンティブ額などを表示する。なお、このとき作成する新たな誘導経路は、EVユーザの好みにより、距離優先と時間優先とのいずれを選択してもよい。また、選択した充電スタンドに到着して実際に充電を行った際には、不図示の充電装置の液晶画面などによってQRコード化されたクーポンを配布するなどして、EVユーザのインセンティブをさらに高くすることも可能である。
【0075】
操作メニュー965のうち、一覧表示ボタンは選択の対象となるすべての充電スタンドの情報を一覧表示させるためのボタン、前へボタンは1つ前の充電スタンドの情報を表示させるためのボタン、次へボタンは1つ後の充電スタンドの情報を表示させるためのボタン、キャンセルボタンはこの充電募集への応募をキャンセルするためのボタン、決定ボタンはこの充電スタンドを選択するよう決定するためのボタンである。
【0076】
必要に応じていくつかの充電スタンドの情報を表示させて詳細募集要項の内容を比較するなどしたのち、ユーザ(運転者)が決定ボタンを選択入力すると、カーナビ装置からその旨がコントローラ502に通知され、コントローラ502は、選択された充電スタンドの識別情報を希望充電場所として充電監視制御センタ103に送信する。
【0077】
そののち、充電監視制御センタ103によって充電を行うべき充電スタンド107の指定が確定すると、EV106に当該充電スタンドへの移動指示が送信されるので、これを受信したEV106のコントローラ502は、カーナビ装置にその旨を伝達して、当該充電スタンド107への経路誘導を開始させる。なお、この経路誘導の際には、図15に例示したものと同じように、ナビゲーション画面上に、当該充電スタンドを経由する新たな誘導経路と、当該充電スタンドについての詳細募集要項の内容964とを表示させることが好ましい。
【0078】
充電募集通知の伝達手段として地上デジタル放送を用いる場合には、図16に例示するように、カーナビ装置の画面上に、充電募集通知のデータ放送の受信動作を定義するstartup.bmlを起動するための充電募集受信アイコン966を配置しておき、それが選択入力されたときに、図14に示した充電募集通知の画面に遷移するようにする。時々刻々発行される充電募集通知の情報をナビゲーション画面に反映させる方法として、例えば日本国内のISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式を用いるデジタル放送方式の場合は、ARIB(Association of Radio Industries and Businesses)標準規格STD−B24に記述してあるイベントメッセージとして充電監視制御センタ103での更新情報をデータ化し、それをデジタル放送の放送データとして多重化して放送し、それを受信した端末側で情報の更新に従ってナビゲーション画面に反映させる方法を用いることができる。
【0079】
また、充電募集通知の画面上で、目的地までのルートの近傍に複数の充電スタンドの候補が存在する場合は、図17に例示するように、充電監視制御センタ103が、対象のEV106に最も充電してほしい充電スタンドの位置を示す充電スタンドアイコン957の色や形を、他のアイコン958−1〜958−5とは異なるように表示させることで、よりEVユーザにわかりやすく表示することも可能である。あるいは、充電監視制御センタ103が、充電してほしい順番にいくつかのグループに分けて、アイコン958−1〜958−5の色や形を変えて表示させるようにしてもよい。この色や形を変える指標としては、例えば、前記のランキングに用いた近接度や価格適合性を用いることができる。
【0080】
以上説明したように、第一実施形態では、充電監視制御センタ103が設置される各配電区域毎に、電力系統監視制御システム101によって指示された総充電電力を配下の充電スタンド107および各EV106に適切に分配して充電を行わせるので、電力系統全体の電力品質を安定化できると同時に、各EVユーザはインセンティブを享受することができる。このため、電力会社は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーを活用しつつ制御用の発電設備や蓄電設備の規模を従来よりも小さくすることができ、電力系統全体において、電力供給事業者、需要家、インセンティブを受けるEVユーザがともにメリットを享受できることとなる。
【0081】
[第二実施形態]
第二実施形態では、充電監視制御センタが設置される地産地消単位の配電区域毎に、オール電化機器をはじめとした需要家の負荷と、EVへの充電電力とを制御する例について説明する。これは、前記した第一実施形態における図7に示した処理を、図19に示した処理に置き換えることによって、太陽光発電設備をはじめとした再生可能エネルギーを利用しつつ需要家の負荷をも制御して、地産地消単位の配電区域における電力品質の安定化を図るものである。
【0082】
図18は、第二実施形態におけるデータセンタ102Aの機器構成例を示すブロック図である。図18に示すように、データセンタ102Aは、図3に示した第一実施形態のデータセンタ102に、需要家データベース306が追加された構成となっている。この需要家データベース306には、各種需要家機器の使用条件(例えばエアコンの場合は外気温とエアコン運転の相関データ)、需要家における電力消費曲線(オール電化住宅における一日の電気温水器の運転データ、エアコンの利用傾向、電灯の利用傾向など)、需要家機器制御モデル(太陽光発電、風力発電、EV用バッテリの制御モデルなど)を少なくとも含む各需要家のデータが記録されている。
【0083】
以下、系統制御指令装置402(図4)が実行する地産地消型の電力制御処理の動作を、図19のフローチャートに沿って説明する。系統制御指令装置402は、まず処理1901にて、図7の処理701と同様に、対象とする配電区域の系統データの収集と系統状態の予測とを行う。次に、処理1902にて、数時間先までの需要家全体の負荷カーブを推定する。これは、各需要家における過去の電気温水器の利用時間帯とその各時刻の消費電力、エアコンの利用時間とそのときの外気温および消費電力、太陽光発電機器や風力発電機器が連系している需要家については天候や風力、風向とそのときの発電量、EVユーザである需要家については充電時間帯とその各時刻の消費電力などの履歴データをもとに、回帰分析、あるいはニューラルネットワークに代表される予測方法を用いて負荷量を予測することにより行う。
【0084】
系統制御指令装置402は、この予測結果をもとに、処理1903にて、EV106への総充電電力の制御による負荷のピークシフトが必要かどうかを判定する。これは、前記した需要家全体の負荷カーブと、再生可能エネルギー発電を含めて供給される電力の供給カーブとの過不足を算出することによって行う。通常は、需要家内に設置されるHEMS(Home Energy Management System)の制御のみで電力の需給調整を行うが、その需給調整のみでは電力の過不足を補いきれない場合に、EV106への追加の充電を行うことにより、負荷をピークシフトして地産地消型の配電区域の範囲内で需給調整を行う。
【0085】
ここで、HEMSとは、需要家内に設置されている各電力消費機器の動作履歴、すなわち時間と消費電力量の履歴データから、外的要因(例えば曜日、天候、時刻、気温、湿度に代表される項目)と消費電力との関係をモデル化して作成した需要家データベース306中のモデルデータに基づいて、将来時点で予測される外的要因をもとに、該当する需要家内の各電力消費機器(例えば、給湯機、エアコン、テレビ、IHクッキングヒータなど)の動作状態を予測する機能を持つシステムである。
【0086】
さらに、HEMSに、図20に示すようなEV106の充電特性を示す充電モードプロファイルデータ2000を持たせることにより、需要家内での各電力消費機器の動作とEV106の充電動作とを協調して制御することも可能である。充電モードプロファイルデータ2000は、少なくとも、EV106の固有ID、充電パターンの種類を示す充電モードID、定格充電量、SOCを0%から90%にするのに要するフル充電時間を含んで構成される。充電モードIDは、例えば急速充電モードと通常充電モードとにおける時間の推移と充電電力との関係を表す充電モデルのパターンを区別するための識別子である。
【0087】
EVユーザである需要家については、過去の充電履歴データとこの充電モードプロファイルデータ2000を需要家データベース306に記録しておくことによって、EV106への充電のための消費電力を含めた負荷を予測する。なお、以降の処理においては、HEMSによって算出される機器の制御動作を制約条件として扱うものとしてもよい。
【0088】
処理1903にて、EV106への総充電電力の制御による負荷のピークシフトが必要と判定した場合は(処理1903でYes)、処理1904に分岐して、必要なピークシフト量を算出し、続く処理1905にて、DSMに協力可能なEV106を把握し、処理1906にて、それら対象となるEV106のSOCを取得してEV全体で消費可能な最大充電電力を算出する。この算出においては、充電対象の各バッテリの劣化を防ぐために、SOCの上下限を制約条件として充電量と充電時間とを決定する。また、DSMに協力可能なEV106の把握は、EVユーザとの契約によって協力条件を設定しておき、当該条件を満たすEV106を探索することによって行う。これにより、例えば自宅や駐車場などでの充電中の状態であれば個別の許可を不要とすることなども可能である。
【0089】
次に、処理1907にて、求めた最大充電電力が必要なピークシフト量よりも大きく制御可能な範囲にあるかどうかを判定し、制御可能な範囲にあれば(処理1907でYes)、処理1909に分岐して、図12および図13を用いて説明したのと同様な負荷配分の方法によって必要なピークシフト量を対象となるEV106の充電量に分配する配分計算を行う。
【0090】
続いて、処理1910にて、配分計算結果を反映させた潮流計算を実施し、電圧や周波数が許容範囲を逸脱する異常値が発生していなかった場合には(処理1911でNo)、処理1913に分岐して、前記配分計算結果を制御対象リストに設定し、以後この制御対象リストに従って各EV106への充電の制御を行って処理を終了する。
【0091】
他方、異常値が発生していた場合には(処理1911でYes)、処理1912に分岐して、当該異常値を発生させないための制約条件を付加して対象EVへの配分計算を再度行ったのち、処理1910に処理を戻して、その結果をもとに再度潮流計算を実施する。
【0092】
また、処理1907にて、最大充電電力が必要なピークシフト量に満たないと判定された場合は(処理1907でNo)、処理1908に分岐して、上位系、つまり、電力系統監視制御システム101に対して、上位系での制御を依頼して処理を終了する。
【0093】
以上説明したように、第二実施形態では、充電監視制御センタが設置される地産地消単位の配電区域毎に、需要家のオール電化住宅等における電力消費機器を考慮した負荷カーブ推定の結果に基づいて、EVへの充電時刻と充電パターンとを制御することで、電力系統のピーク負荷を抑制することができる。このため、電力会社はより効率のよい設備の運用が可能となり、電力供給事業者、需要家、インセンティブを受けるEVユーザがともにメリットを享受できることとなる。
【0094】
[第三実施形態]
第三実施形態では、充電監視制御センタが充電スタンドで充電を行うEVを認証し、充電料金を課金センタによって自動的に課金決済処理する例について説明する。図21は、本発明の第三実施形態に係る電力系統安定化システムの全体構成図である。図21に示すように、電力系統安定化システム10Aは、図1に示した第一実施形態に係る電力系統安定化システム10に、認証センタ109と課金センタ110とが追加された構成となっている。
【0095】
認証センタ109は、充電監視制御センタ103が通信ネットワーク104を介して通信を行うEV106を認証する機能を有する。この認証センタ109は、電力会社または電力関連のサービスを提供するプロバイダ、もしくは、認証サービスを提供するプロバイダによって運営される。
【0096】
課金センタ110は、充電監視制御センタ103からの充電募集に応募して充電スタンド107で充電を行ったEV106の充電料金を、契約者であるEVユーザに自動的に課金する機能を有する。この課金センタは、電力会社または電力関連のサービスを提供するプロバイダ、もしくは、課金サービスを提供するプロバイダによって運営される。
【0097】
前記のように、充電監視制御センタ103からの充電募集に応募してある充電スタンドへの移動を指示されたEV106が、当該充電スタンド107に到着して充電監視制御センタ103に充電の開始を要求するとき、当該EV106から所定の認証データが送信される。充電監視制御センタ103は、この認証データを認証センタ109に転送して当該EV106の認証を要請し、認証センタ109によって正しく認証された場合にのみ、当該EV106への充電を実行させる。さらに、充電料金を自動的にEV106の充電サービスの契約者であるEVユーザに自動課金する場合には、充電監視制御センタ103は、当該EV106への充電が終了した時点で、その充電料金を課金センタ110に通知して当該EVユーザへの自動課金を要請する。
【0098】
認証センタ109がEV106を認証するために用いる認証データとしては、EV106が充電監視制御センタ103との通信に用いる通信カードに付与されている通信カードID(Identification:識別情報)またはIP(Internet Protocol)通信を行う場合はそのMac(Media Access Control)アドレス、EV106に付与されている車両ID、およびコントローラ502に付与されている車載機IDのいずれか、あるいはこれらを任意に組み合わせて用いるものとする。この場合、単一の認証データのみによる認証よりも複数の認証データを用いる認証の方が、よりセキュアな認証を行うことができる。
【0099】
図22は、認証センタ109の機器構成例を示すブロック図である。図22に示すように、認証センタ109は、暗号解読装置221、通信カードID照合部222、車両ID照合部223、車載機ID照合部224、照合結果出力装置225、および外部の通信ネットワーク104との接続を認証してデータの仲介を行うGW226を備えて構成される。
【0100】
EV106が充電監視制御センタ103に充電の開始を要求するときに送信される所定の認証データは暗号化されており、充電監視制御センタ103から転送されるこの暗号化された認証データは、通信ネットワーク104およびGWF226を介して暗号解読装置221に入力される。ここでの暗号化にはDES、その他の一般的な暗号化アルゴリズムを用いることができる。暗号解読装置221は、入力された認証データの暗号化を解除し、暗号化が解除されたそれぞれの認証データを、該当する各照合部222〜224に入力する。
【0101】
通信カードID照合部222は、入力された通信カードIDまたはMacアドレスを照合する。車両ID照合部223は、入力された車両ID(いわゆるVIN(Vehicle Identification Number)コード)を照合する。また、車載機ID照合部224は、入力された車載機IDを照合する。
【0102】
これら各照合部から出力される照合結果は照合結果出力装置225に入力され、照合結果出力装置225は、それぞれの照合結果を総合して認証可否を判定し、GW226および通信ネットワーク104を介して依頼元の充電監視制御センタ103に認証可否の判定結果を暗号化して送信する。この認証結果は、充電監視制御センタ103からEV106にも伝達され、正しく認証されなかった場合は以降の処理は中止される。
【0103】
図23は、課金センタ110の機器構成例を示すブロック図である。図23に示すように、課金センタ110は、履歴記録装置231、ユーザデータベース232、課金処理装置233、および外部の通信ネットワーク104との接続を認証してデータの仲介を行うGW234を備えて構成される。
【0104】
充電監視制御センタ103から送信される課金のためのデータは、通信ネットワーク104およびGW234を介して履歴記録装置231に入力される。このデータのなかには、少なくとも前記の車両ID、車載機ID、通信カードIDまたはMacアドレスが含まれており、履歴記録装置231はユーザデータベース232に登録されているこれらのID情報を照合することによってユーザの同定を行い、入力されたデータを履歴として記憶部に追加登録するとともに、課金処理装置233にデータを引き渡して課金処理の実行を要請する。
【0105】
課金処理装置233は、ユーザデータベース232に予め登録されている各ユーザ毎の決済方法にしたがって課金処理を実行する。決済方法としては、クレジットカード決済、月額利用料金の自動引き落としや口座振込みをはじめとした各種の決済方法に対応することができる。また、課金処理に加えて、エコポイントをはじめとした電子クーポンなどの追加のインセンティブをユーザに提供することも可能である。このような追加のインセンティブは、通信ネットワーク104を介して接続される不図示のサービスセンタによって提供される。
【0106】
なお、認証センタ109と課金センタ110とを設置するのではなく、図24に示すように、それらと同等の機能を備えるEV認証装置404とEV課金装置405とを充電監視制御センタ103Aの内部に装備するようにしてもよい。
【0107】
図25は、充電監視制御センタ103が充電スタンドで充電を行うEV106を認証し、充電料金を課金センタ110によって自動的に課金決済処理するときの、電力系統安定化システム10Aの各部における通信手順の例を示したシーケンスチャートである。以下、図25のシーケンスチャートに沿って、各部の動作の詳細を説明する。
【0108】
まず始めに、充電監視制御センタ103によって指定された充電スタンドにおいて、EV106に充電用ケーブルが接続されて充電の準備が完了すると、EV106から充電監視制御センタ103に充電開始要求が送信される(2501)。充電監視制御センタ103は、この充電開始要求のなかに含まれている所定の認証データを認証センタ109に転送してEV106の認証を依頼する(2502)。
【0109】
EV106の認証を依頼された認証センタ109は、認証を行うために必要なID情報を送信するようデータセンタ102に依頼し(2503)、データセンタ102は依頼されたID情報を充電監視制御センタ103に送信する(2504)。ここで送信されるID情報は、前記の通信カードIDまたはMacアドレス、車両ID、車載機IDのいずれか、あるいはそれらの任意の組合せである。
【0110】
必要なID情報を受信した認証センタ109は、充電監視制御センタ103から受信した認証データとの照合を行うことによってEV106の認証可否を判定し、この認証結果を充電監視制御センタ103に送信する(2505)。ここでは、EV106は正しく認証されたものとして説明を続ける。
【0111】
認証結果を受信した充電監視制御センタ103は、認証結果をEV106に送信するとともに(2506)、認証されたID情報を保持しておく。以後、課金センタ110に課金のためのデータを送信するときには、このID情報が用いられる。
【0112】
次に、充電監視制御センタ103は、課金センタ110に前記のID情報を送信して当該EV106のユーザへの課金処理の可否を問い合わせる(2507)。この問い合わせを受けた課金センタ110は、ユーザデータベース232に登録されている当該ユーザの決済方法を参照して、必要であれば課金処理に必要な当該ユーザの契約内容等の情報をデータセンタ102から取得したのち(2508,2509)、課金処理が可能であればその旨を充電監視制御センタ103に回答する(2510)。
【0113】
課金処理が可能である旨の回答を受け取った充電監視制御センタ103は、EV106に(より正確には、充電スタンドの制御装置に)充電の実行を指示し(2511)、EV106はその指示を受け付けた旨を回答する(2512)。
【0114】
次に、充電監視制御センタ103は、電力系統の安定運用に資するためにEV106への充電が開始されたことをに通知し(2513)、電力系統監視制御システム101は、充電監視制御センタ103に充電状態のモニタリングを依頼する(2514)。
【0115】
EV106への充電中においては、充電監視制御センタ103からEV106に対して所定の周期でモニタリング信号を送信し(2515)、EV106から充電量を報告する(2516)ことによって充電状態のモニタリングが行われる。
【0116】
そののち、EV106への充電が完了すると、EV106から充電監視制御センタ103に充電完了通知が送信され(2517)、充電監視制御センタ103は、当該通知を受信したことをEV106に回答する(2518)。
【0117】
次に、充電監視制御センタ103は、電力系統監視制御システム101もEV106への充電が完了したことを通知し(2519)、電力系統監視制御システム101は、当該通知を受信したことを充電監視制御センタ103に回答する(2520)。
【0118】
次に、充電監視制御センタ103は、EV106に実際に充電した充電量に応じた充電料金と事前に決定したインセンティブ額とを含む当該EV106の契約ユーザへの課金データを生成して、この生成した課金データを課金センタ110に送信する(2521)。この課金データを受信したを課金センタ110は、当該契約ユーザへの課金処理を実行したのち、課金処理が完了した旨を充電監視制御センタ103に通知する(2522)。
【0119】
次に、データセンタ102でEV106の充電実績に関する履歴データを記録するために、充電監視制御センタ103から課金データを含む充電実績のデータをデータセンタ102に送信し(2523)、データセンタ102は受信したデータを履歴データとして記録したのち、記録が完了した旨を充電監視制御センタ103に通知する(2524)。
【0120】
最後に、充電監視制御センタ103は、今回の充電に要した充電料金とインセンティブ額とをEV106に通知して(2525)一連の処理を完了する。
【0121】
以上説明したように、第三実施形態では、充電監視制御センタの指示によって実行された充電スタンドでの充電に対する充電料金の課金やインセンティブの付与を、安全かつ効率的に行うことができることとなる。
【0122】
[第四実施形態]
第四実施形態では、EV106がバッテリ切れとなって走行不能とならないように、充電監視制御センタ103が、電力系統の負荷や周波数などに関する制約条件を満たしかつ所望の条件で充電サービスを提供可能な充電スタンドを適宜探索し、当該充電スタンドの情報を各EV106に提供する例について説明する。
【0123】
図26(a)は、EV106が搭載するカーナビ装置に表示されるナビゲーション画面の表示例である。ボタンやタッチパネルなどを操作して所望の目的地を検索したのちに経路誘導の開始を指示すると、カーナビ装置は、自車の現在位置から当該目的地までの誘導経路の探索を行い、ナビゲーション画面上に自車アイコン951から目的地アイコン952に至るまでの誘導経路970をナビ地図上へ重畳させて表示させる。カーナビ装置は、EV106が移動するにしたがってGPS(Global Positioning System)による緯度経度情報を用いて自車アイコン951をナビ地図上で移動させるとともに、誘導経路上の所定の場所で図26(b)のように所定の誘導案内情報980を画面に表示させたり、所定の音声ガイダンスを出力したりして、EV106を目的地まで誘導する。
【0124】
ナビゲーション画面の下部には、希望充電終了時刻設定ボタン991、充電スタンド選択基準ボタン992、充電スタンドPOI(Point of Interest)更新ボタン993が配置される。希望充電終了時刻設定ボタン991は、EVユーザがその時刻より前に充電が終了することを希望する時間を設定するためのボタンであり、不図示の時刻入力画面を用いて時刻の設定を行うことができる。充電スタンド選択基準ボタン992は、充電スタンドの候補を選択するための選択基準を設定するためのボタンであり、不図示のプルダウンリストを用いて、例えば、誘導経路近傍、急速充電スタンド優先、目的地到達時間が最短となる充電スタンドを優先などのなかから所望の選択基準を選択して設定することができる。充電スタンドPOI更新ボタン993は、EV106の移動や時間の経過にともなって設定済みの充電スタンドPOIが更新されたときの表示方法を設定するためのボタンであり、不図示のプルダウンリストを用いて、例えば、充電スタンドPOI更新のみ、POI更新にともなって誘導経路も更新をする、などのなかから所望の表示方法を選択して設定することができる。
【0125】
EV106に備えられるコントローラ502は、カーナビ装置と連携して、新たな目的地が設定された時点でその目的地に至るまでの間にバッテリ501の充電が必要か否かを判定し、充電が必要な場合はバッテリ501の現在のSOCと目的地に至るまでの誘導経路の情報とを含む充電予定情報を充電監視制御センタ103に送信して、充電を行うべき充電スタンドの候補の情報を取得して、その情報を例えば図17のようにナビゲーション画面に表示させてEVユーザに提示する。
【0126】
図27(a)は、EV106から充電監視制御センタ103に送信される充電予定情報3000のデータ構造およびデータ例であり、図27(b)は、充電監視制御センタ103からEV106に送信される候補となる充電スタンドの位置情報4000のデータ構造およびデータ例である。
【0127】
図27(a)に示すように、充電予定情報3000は、EV106を一意に識別するための車両ID、その所有者を識別するための所有者ID、カーナビ装置によって算出された目的地までの誘導経路情報を示す緯度経度データ群、EVユーザが希望する充電モードである充電希望モード、目的地に到達するのに必要な充電量、EVユーザによって設定された希望する充電終了時刻などのデータを含んで構成される。また、候補となる充電スタンドの位置情報4000は、EV106を一意に識別するための車両ID、候補となる充電スタンド107を識別するための充電スタンドID、充電スタンド名称、充電スタンドの緯度経度などのデータを含んで構成される。
【0128】
また、目的地が設定されていない場合は、コントローラ502は、所定の周期でバッテリ501のSOCを監視し、その値が充電の要否を判定するための所定の基準値以下となったときに、現在のSOCと自車の現在位置と走行方向との情報を充電監視制御センタ103に送信して、自車の近傍の充電スタンドの情報を取得して、その情報をナビゲーション画面に表示させるなどしてEVユーザに充電が必要な旨を通知する。
【0129】
このとき、充電監視制御センタ103は、電力契約データベース302から、該当するEVユーザの希望充電単価を取得して前記と同様な方法によって各充電スタンドのランキングを行い、ランクの高い順に当該充電スタンド周辺の潮流計算を実施して電力系統の電力品質の低下を招くことなしに所望の充電サービスを提供可能な充電スタンドの候補を所定の数だけ選定する。
【0130】
以上説明したように、第四実施形態では、EV106に備えるコントローラ502が、バッテリ残量と設定された目的地の情報とに基づいて、充電が必要となる場合には自動的に充電監視制御センタ103から充電を行うべき充電スタンドの候補の情報を取得してEVユーザに提供するので、EV106がバッテリ切れのために走行不能となる事態の発生を未然に防止することが可能となる。
【0131】
以上にて本発明を実施するための形態の説明を終えるが、本発明は、これに限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
10,10A 電力系統安定化システム
101 電力系統監視制御システム
102,102A データセンタ
103,103A 充電監視制御センタ
104 通信ネットワーク
105 無線基地局
106 電気自動車(EV)
107 充電スタンド
108 需要家
109 認証センタ
110 課金センタ
121 太陽光発電設備
122 風力発電設備
123 大規模電源設備
124 電力系統
125 配電変電所
126 送電線
221 暗号解読装置
222 通信カードID照合部
223 車両ID照合部
224 車載機ID照合部
225 照合結果出力装置
226 ゲートウェイ(GW)
231 履歴記録装置
232 ユーザデータベース
233 課金処理装置
234 ゲートウェイ(GW)
301 EVユーザ情報解析装置
302 電力契約データベース
303 履歴データベース
304 プロファイルデータベース
305 ゲートウェイ(GW)
306 需要家データベース
401 EV誘導計算装置
402 系統制御指令装置
403 ゲートウェイ(GW)
404 EV認証装置
405 EV課金装置
501 走行用バッテリ(バッテリ)
502 コントローラ
503 コマンド解釈手段
504 ネットワークI/F
511 柱上変圧器
512 電力線
513 分電盤
801 設備データ
802 負荷母線データ
2000 充電モードプロファイルデータ
3000 充電予定情報
4000 候補となる充電スタンドの位置情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の車載バッテリを塔載した電気自動車との交信を行う充電監視制御センタにおいて実行される電気自動車の充電制御方法であって、
電力系統監視制御システムより、現在時刻から所定時間経過後までの所定幅の時間帯毎に、配下の配電区域内の充電スタンド群に分配すべき総充電電力の指定を受け取る第1の工程と、
電力サービス契約データベースから取得した各ユーザの希望充電時間帯および希望充電単価に基づいて、前記希望充電単価が提供可能な充電単価以上である電気自動車群をリストアップする第2の工程と、
リストアップした前記電気自動車群を構成する各電気自動車と交信を行うことによって、充電スタンドでの充電を行う電気自動車を募集して、応募があった電気自動車の各々からその現在位置とバッテリ残量とを取得する第3の工程と、
応募があった前記電気自動車を、少なくとも前記希望充電単価と前記現在位置と前記バッテリ残量とを用いた評価指標によって前記各電気自動車と前記各充電スタンドとの対に対応する充電の優先順位をランク付けし、この優先順位が高い順に前記各充電スタンドへの到着予想時刻にしたがって前記総充電電力を前記各電気自動車とその誘導先の充電スタンドとの対に分配してそれぞれの充電パターンと充電量とを決定し、前記各電気自動車に前記誘導先の充電スタンドへの移動を指示する第4の工程と
を含むことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記各電気自動車が前記指示した充電スタンドに到着したのちに、前記充電スタンドから前記電気自動車に前記決定した充電パターンによって前記決定した充電量の充電を行わせる第5の工程
をさらに含むことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項3】
請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記第3の工程で取得した応募があった電気自動車のすべてに充電を行ってもなお前記総充電電力に満たない場合は、前記電力系統監視制御システムに消費可能な総充電電力を通知する
ことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項4】
請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記第3の工程における前記充電スタンドでの充電を行う電気自動車を募集する通信手段は、無線基地局を介した相互無線通信手段または地上デジタル放送手段である
ことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項5】
請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記第3の工程における前記充電スタンドでの充電を行う電気自動車を募集する通知を受信した電気自動車が備えるコントローラは、車載カーナビ装置の経路誘導画面上に、募集対象の充電スタンドの位置を示すアイコンを表示させる
ことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記募集対象の充電スタンドの位置を示すアイコンの色または形状は、前記充電監視制御センタからの指示によって制御される
ことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項7】
請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記第4の工程にて前記総充電電力を前記各電気自動車と前記各充電スタンドとの対に分配するときは、前記評価指標によって前記各充電スタンド毎にインセンティブ額を算出して前記電気自動車の運転者に提示して充電希望場所の選択結果を取得し、この取得した充電希望場所のなかから、当該電気自動車の充電場所となる前記誘導先の充電スタンドを決定する
ことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項8】
請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記第4の工程にて前記総充電電力を前記各電気自動車とその誘導先の充電スタンドとの対に分配するときは、前記前記充電監視制御センタの配下の配電区域の電力系統の潮流計算を実行して、当該電力系統の電力品質を維持するための所定の基準を満たすように、個別の充電電力を決定する
ことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項9】
請求項1に記載の電気自動車の充電制御方法において、
前記充電監視制御センタは、所定の条件が満たされたときに走行中の前記電気自動車から送信される当該電気自動車の現在位置とバッテリ残量と車載カーナビ装置に設定されている目的地の位置情報とを取得し、前記電力サービス契約データベースから取得した各ユーザの希望充電時間帯および希望充電単価に基づいて、バッテリ切れが生じないように当該電気自動車に配下の配電区域内から選定した特定の充電スタンドへの移動を指示する
ことを特徴とする電気自動車の充電制御方法。
【請求項10】
走行用の車載バッテリを塔載した電気自動車との交信を行って配下の配電区域内の充電スタンドにおける前記電気自動車への充電を制御する充電監視制御センタであって、
電力系統監視制御システムより、現在時刻から所定時間経過後までの所定幅の時間帯毎に、配下の配電区域内の充電スタンド群に分配すべき総充電電力の指定を受け取り、
電力サービス契約データベースから取得した各ユーザの希望充電時間帯および希望充電単価に基づいて、前記希望充電単価が提供可能な充電単価以上である電気自動車群をリストアップし、
リストアップした前記電気自動車群を構成する各電気自動車と交信を行うことによって、充電スタンドでの充電を行う電気自動車を募集して、応募があった電気自動車の各々からその現在位置とバッテリ残量とを取得し、
応募があった前記電気自動車を、少なくとも前記希望充電単価と前記現在位置と前記バッテリ残量とを用いた評価指標によって前記各電気自動車と前記各充電スタンドとの対に対応する充電の優先順位をランク付けし、この優先順位が高い順に前記各充電スタンドへの到着予想時刻にしたがって前記総充電電力を前記各電気自動車とその誘導先の充電スタンドとの対に分配してそれぞれの充電パターンと充電量とを決定し、前記各電気自動車に前記誘導先の充電スタンドへの移動を指示する誘導計算装置
を備えることを特徴とする充電監視制御センタ。
【請求項11】
請求項10に記載の充電監視制御センタにおいて、
前記各電気自動車が前記指示した充電スタンドに到着したのちに、前記充電スタンドから前記電気自動車に前記決定した充電パターンによって前記決定した充電量の充電を行わせることで前記充電スタンドに電力を配電する電力系統の消費電力を制御する系統制御指令装置
をさらに備えることを特徴とする充電監視制御センタ。
【請求項12】
請求項11に記載の充電監視制御センタにおいて、
前記系統制御指令装置は、デマンドサイドマネジメント対応の需要家機器の制御を含めて配下の配電区域の電力系統の消費電力を制御する
ことを特徴とする充電監視制御センタ。
【請求項13】
請求項11または請求項12に記載の充電監視制御センタにおいて、
前記系統制御指令装置は、前記配下の配電区域の電力系統に電力を供給する太陽光発電設備および風力発電設備の予想発電量を取得して、当該電力系統の電力品質を維持するための所定の基準を満たすように、前記電力系統の消費電力のピークシフト制御を行う
ことを特徴とする充電監視制御センタ。
【請求項14】
請求項10に記載の充電監視制御センタにおいて、
前記誘導計算装置は、所定の条件が満たされたときに走行中の前記電気自動車から送信される当該電気自動車の現在位置とバッテリ残量と車載カーナビ装置に設定されている目的地の位置情報とを取得し、前記電力サービス契約データベースから取得した各ユーザの希望充電時間帯および希望充電単価に基づいて、バッテリ切れが生じないように当該電気自動車に配下の配電区域内から選定した特定の充電スタンドへの移動を指示する
ことを特徴とする充電監視制御センタ。
【請求項15】
請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の充電監視制御センタと交信する車載コントローラと接続される車載カーナビ装置であって、
前記車載コントローラが前記充電スタンドでの充電を行う電気自動車を募集する通知を受信したときに、その募集内容を運転者に提示し、運転者からの応募の操作を受け付けてそれを前記車載コントローラに伝達する手段と、
前記車載コントローラからの指示にしたがって設定済みの目的地までの誘導経路情報を前記車載コントローラに伝達する手段と、
前記車載コントローラからの指示にしたがって経路誘導画面上に募集対象の充電スタンドの位置を示すアイコンを表示するとともに、そのなかから選択された特定の充電スタンドを目的地または中継地に設定して経路誘導を行う手段と
を備えることを特徴とする車載カーナビ装置。
【請求項16】
大規模電源設備または、大規模電源設備と太陽光発電設備および風力発電設備の少なくとも1つとから供給される電力を、走行用の車載バッテリを塔載した電気自動車に給電する充電スタンドと他の需要家と給電する電力系統の電力品質を維持する電力系統安定化システムであって、
請求項10から請求項14のいずれか一項に記載の充電監視制御センタが、それぞれ配下の配電区域の電力系統の消費電力を制御する
ことを特徴とする電力系統安定化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−48286(P2012−48286A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187011(P2010−187011)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】