説明

電気自動車

【課題】居住性を犠牲にすることなく、結露や冷却風搬送時の温度上昇を抑制しながら電源部の冷却を行える電気自動車を提案する。
【解決手段】モータ2の駆動で走行し、搭載されたエアコンユニット15からの冷却風をモータの電源部5に案内して冷却する電気自動車において、エアコンユニットの吹出口15aと電源部側に両端16a,16bそれぞれ連結され、エアコンユニットからの冷却風を電源部5に案内する流路Rを形成するダクト16を助手席4A側の車内形状に沿うように形成して助手席側のフロア6Aに配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの電源部となるバッテリーをエアコンの冷却風で冷却する電気自動車に関し、詳しくは冷却風を電源部へ案内するダクトの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
モータの駆動で走行する電気自動車は、モータの電源部として大量のバッテリーを搭載している。このバッテリーは充放電時に温度が上昇するが、適正温度以上に温度が上昇するとその性能が低下するとともに、バッテリーの劣化が促進する。そのため、特許文献1では、車両に搭載されているエアコンユニットで発生させた冷却風をダクトで電源部に案内して冷却するようにしている。
【0003】
【特許文献1】特許第3050051号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に効率的に冷却風を電源部へ案内するには、エアコンユニットの吹出口と電源部側とを直線的に結ぶようにダクトを配置するのが流動抵抗による損失が少なくなるので望ましいが、これでは車室内空間にダクトが配置されて搭乗スペースが減少して居住性が悪化してしまう。また、ダクトが露呈してしまうと見栄えも良くないばかりか、ダクトの中を冷却風が通過するため、車室内温度と冷却風の温度差によってダクト表面に結露が発生し、ダクトの配置位置によっては乗員に結露水が付着することや、冷却風が電源部に到達するまでに車室内の空気によって暖められてしまうことも想定される。
【0005】
特許文献1には、ダクト部材を用いてエアコンユニットからの冷却風を電源部に案内することは記載されているが、結露や冷却風搬送時の温度上昇、居住性に関する課題を意識したものではない。
本発明は、居住性を犠牲にすることなく、結露や冷却風搬送時の温度上昇を抑制しながら電源部の冷却を行える電気自動車を提案することを、その目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に係る電気自動車は、モータの駆動で走行し、搭載されたエアコンユニットからの冷却風をモータの電源部に案内して冷却する電気自動車であって、一端がエアコンユニットに、他端が電源部側にそれぞれ連結され、エアコンユニットからの冷却風を電源部に案内する流路を形成するダクトを備え、ダクトが助手席側の車内形状に沿うように形成されて、当該助手席側のフロアに配設されていることを特徴としている。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1記載の電気自動車において、ダクトの電源部側との接続部が、ダクト最低部位よりも上方に位置するように形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2記載の電気自動車において、ダクトのフロアに配置される部位には、流路を分割する複数のリブが形成されていることを特徴としている。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかに記載の電気自動車において、ダクトのフロアに配置される部位は、フロアとその上に敷かれるフロアカーペットの間に配置される介装部材によって形成される空間内に配設されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる電気自動車によれば、一端がエアコンユニットに、他端がモータの電源部側にそれぞれ連結され、エアコンユニットからの冷却風を電源部に案内する流路を形成するダクトを、常に乗員がいるわけではない助手席側の車内形状に沿うように形成して当該助手席側のフロアに配設するので、車室内空間に配置しなくても冷却風を電源部に案内することができ、居住性を犠牲にすることなく、電源部の冷却を行うことができる。
【0011】
また、ダクトは、その他端における電源部側との接続部が、ダクト最低部位よりも上方に位置するように形成されているため、ダクト内に水が浸入した場合でも接続部から電源部には流入することがなく、電源部を保護することができる。
【0012】
本発明によれば、ダクトのフロアに配置される部位に、ダクト内の流路を分割する複数のリブを形成したので、ダクトのフロアに配置される部位の強度を高められ、耐久性を向上することができる。
【0013】
本発明によれば、ダクトのフロアに配置される部位を、フロアとその上に敷かれるフロアカーペットの間に配置される介装部材によって形成される空間内に配設するので、ダクトが室内空間に露呈することがなく、見栄えがよくなるとともに、結露水が乗員に付着することもない。また、フロアカーペットとフロアの間に配置される介装部材により形成された空間内にダクトのフロアに配置される部位を配設するので、ダクト内の冷却風が室温によって加熱されるのを抑制しながら、電源部の冷却を行えるとともに、フロアカーペット面を略平らにすることができ助手席を利用するユーザの居住性を損なわない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0015】
図1に示す符号1で示す電気自動車1は、モータ2の駆動で車輪3を回転させて走行するものである。電気自動車の車室内に設けられた座席4(助手席4A)の下部には、モータ2の電源部となるバッテリーユニット5が配設されている。バッテリーユニット5は、複数のセルを1つのモジュールと、これらモジュールを複数備えた電池パックとして構成されている。バッテリーユニット5は、車体を構成するフロアパネル6とフロアパネル6の下方に設けられた遮蔽板7とで構成されたユニット収納部8内に収納されている。バッテリーユニット5には、充電器9とインバータ10が接続されている。この電気自動車1は、車室内空間20の温度や湿度を調整する周知のエアコンユニット15が搭載されている。
【0016】
ユニット収納部8の前側には導入口8aが、後側には排出口8bがそれぞれ形成されている。排出部8bにはユニット収納部8内の空気を吸引するための排出ファン12が設けられていて、このファンが回転することで、ユニット収納部8内の空気が排出されるように構成されている。
【0017】
導入口8aには、一端16aがエアコンユニット15の吹出口15Aに連結されてエアコンユニット15からの符号Sで示す冷却風をユニット収納部8に案内する流路Rを内部に形成するダクト16の他端16bが連結されている。ユニット収納部8のバッテリーユニット5は、このダクト16を介して案内されて導入される冷却風によって冷却されるように構成されている。ダクト16は、助手席4A側の車内形状に沿うように形成されていて、当該助手席側のフロア6Aに配設されている。
【0018】
ダクト16は樹脂製であって、図2,図3に示すように、エアコンユニット15の吹出口15Aが接続される一端16aから他端16bにかけて略90度曲がった形状を成している。一端16aには四角形状の開口部16cが形成されていて、吹出口15Aが開口部16c内に挿入されている。ダクト16は一端16aから中央部16eまでの間に位置するショルダー16dが斜め下方に向かって伸びるように形成されている。このショルダー部16dの形状は、車内形状を形成するセンターコンソール17の外形に沿うように形成されている。ダクト16の一端16aからショルダー部16dまでは、センターコンソール内に収納されることで、助手席4A側から見えないように配置されている。
【0019】
図3に示すように、ショルダー16dの下面16gは、車両のフロア6Aに設けられたフロアトンネル60及びフロアトンネル60に設置された車両機器61に干渉しない高さまで下げて配置されている。
【0020】
ショルダー部16dから他端16bの間に位置する中央部16eは、略水平面とされていて、ダクト16で一番低い最下位部とされている。この最下位部となる中央部16eには、図4に示すように複数のリブ18a,18bが形成されている。このリブ18a,18bは、ダクト16の上面16fと下面16gから中央に向かって形成されていて、ダクト内部の流路Rを分割して複数の流路R1〜R3を形成している。本形態において、リブ18a,18bによりダクト内部が3つの流路とされているが、3つに限定されるものではない。これらリブ18a,18bは流路を形成し冷却風を整流するだけでなく、中央部16eを補強する機能も備えている。この中央部16eは、助手席側のフロア6Aに配設される。
【0021】
フロア6Aの上部にはフロアカーペット24が敷設されるが、フロア6Aとこのフロアカーペット24の間には、中央部16eと略同厚の介装部材となる嵩上げ部材21が中央部16eを囲むように配設されて、フロア6Aとフロアカーペット24の間に空間22を形成している。すなわち、ダクト16の中央部16eは、この空間22内に配設されている。ダクト16の下面16gには断熱部材23が装着されている。中央部16eの流路断面積と開口部16cの開口面積は、略同等とされていて圧力損失が最小限になるように形成されている。
【0022】
ダクト16の他端16bには、図5,図6に示すように、ユニット収納部8の導入口8aに接合して連結される接続部となる開口部16hが形成されている。この開口部16hは、ダクト最低部位となる中央部16eよりも上方に位置するように形成されている。開口部16hには、導入口8aとの接合面をシールするゴム製の防水パッキン19が装着されている。この防水パッキン19は開口部16hを囲むように環状に配置され、その接合部19Aが開口部16hの上部に位置するように装着されている。図中符号25,26は、ユニット収納部8の導入口8aとの連結時に図示しない締結部材によってユニット収納部8を構成するフロア6面に取り付けられる取付部を示す。
【0023】
このような構成によると、エアコンユニット15の吹出口15aとバッテリーユニット5を収納したユニット収納部8の導入口8aとが連結され、エアコンユニット15からの冷却風をユニット収納部8のバッテリーユニット5に案内する流路Rを形成するダクト15を助手席4A側の車内形状に沿うように形成して助手席4A側のフロア6Aに配設するので、車室内空間にダクト16を配置しなくても冷却風をバッテリーユニット5に案内することができ、居住性を犠牲にすることなく、バッテリーユニット5の冷却を行うことができる。また、ダクト16は、その他端16bに形成した開口部16hの位置が、ダクト最低部位となる中央部16eよりも上方に位置するように形成されているため、ダクト16内に水が浸入した場合でも開口部16hからユニット収納部8に流入することがなく、バッテリーユニット5を保護することができる。
【0024】
ダクト16の中央部16eには、ダクト内の流路Rを分割する複数のリブ18a,16bを形成したので、中央部16eのフロア6Aに設置した場合でもその強度を高められるので、助手席に搭乗者が乗車してフロア6Aが踏まれても、つぶれ難くなり、冷却に必要な冷却風量を確保しながらも耐久性を向上することができる。この中央部16eは、嵩上げ部材21によってフロア6Aとフロアカーペット24の間に形成される空間22内に配置されるので、ダクト16が室内空間に露呈することがなく見栄えがよくなるとともに、結露水が乗員に付着することもなくなる。また、フロアカーペット24とフロア6Aの間の空間22にダクト16を配置すると、この空間22が断熱構造となり、ダクト16内の冷却風が室温によって加熱されるのを抑制しながら、バッテリーユニット5の冷却に必要な冷却風温度を確保することができる。
【0025】
ダクト16は、常時乗員がいるわけではない助手席のフロア6Aに配設されているため、車室内空間が狭くなることに対する乗員への影響を最小限にとどめることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態である電気自動車の概略構成図である。
【図2】本発明の主要構成部となるダクトの構造を示す斜視図である。
【図3】図2に示すダクトが車両に設置されたときの図2A−A線近傍の断面図である。
【図4】図2に示すダクトが車両に設置されたときの図2B−B線近傍の断面図である。
【図5】図2に示すダクトが車両に設置されたときの図2C−C線近傍の断面図である。
【図6】図2のD方向から見た図である。
【符号の説明】
【0027】
1 電気自動車
2 モータ
4A 助手席
5 電源部(バッテリーユニット)
6A 助手席側のフロア
15 エアコンユニット
15a エアコンユニットの吹出口
16 ダクト
16a 一端
16b 他端
16h 電源部側との接続部
16g ダクト最低部位(フロアに配置される部位)
18a,18b 複数のリブ
20 車室内空間
21 介装部材(嵩上げ部材)
22 空間
24 フロアカーペット
R 流路
S 冷却風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動で走行し、搭載されたエアコンユニットからの冷却風を前記モータの電源部に案内して冷却する電気自動車において、
一端が前記エアコンユニットに、他端が前記電源部側にそれぞれ連結され、前記エアコンユニットからの冷却風を前記電源部に案内する流路を形成するダクトを備え、
前記ダクトが助手席側の車内形状に沿うように形成されて、当該助手席側のフロアに配設されていることを特徴とする電気自動車。
【請求項2】
前記ダクトは、前記電源部側との接続部が、ダクト最低部位よりも上方に位置するように形成されていることを特徴とする請求項1記載の電気自動車。
【請求項3】
前記ダクトの前記フロアに配置される部位には、前記流路を分割する複数のリブが形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電気自動車。
【請求項4】
前記ダクトの前記フロアに配置される部位は、前記フロアとその上に敷かれるフロアカーペットの間に配置される介装部材によって形成される空間内に配設されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電気自動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−83672(P2009−83672A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256474(P2007−256474)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】