説明

電気配線構造、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び画像形成装置

【課題】 機械的振動が付加される場合においても、電気接続部の信頼性を確保する。
【解決手段】第1の電極と第2の電極が接続される電気接続部を備え、前記電気接続部は少なくともGa金属を含む合金で構成され、前記合金は30℃未満の融点であることを特徴とする電気配線構造を提供することにより、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気配線構造、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び画像形成装置に係り、特に、機械的振動が付加される場合においても電気接続部の信頼性を確保した電気配線構造、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置は、複数のノズルを有する記録ヘッドを備え、記録ヘッドと記録媒体を相対的に移動させながら、各ノズルからインク滴を吐出させることにより、記録媒体上に所望の画像を形成するものである。記録ヘッドには、各ノズルからインク滴を吐出させるための駆動信号を伝達するための電気配線が多数設けられており、これらの電気配線が接続される電気接続部の信頼性を確保することは重要な技術の1つである。特に、圧電素子の変位を利用して、圧力室内のインクを加圧してノズルからインク滴を吐出させる方式(圧電方式)の場合、電気接続部に機械的振動が付加されることから、電気接続部の信頼性を確保することは非常に重要となる。
【0003】
記録ヘッドに設けられる電気配線構造として、例えば、基板の一方の面に形成される圧電素子の個別電極を、基板の厚さ方向の貫通電極を介して、基板の他方の面に形成されるリード電極に接続する構造がある。貫通電極の形成方法としては、基板の厚さ方向に形成される貫通孔に対し導電性ペーストを充填する方法やめっきを行う方法が一般的に知られている。しかし、導電性ペーストを充填する方法は、導電性ペーストに分散した導電粒子が接続電極(個別電極、リード電極等)に機械的に点接触することで電気的導通を確保する方法であるため、電気接続部における電気抵抗は大きくなり、接触面に異物が存在する場合には導通が確保できない恐れもある。特に、電気接続部に機械的振動が付加される場合には、断線の可能性もある。一方、めっきによる方法は、めっき液に対して使用できる基板が限定され(例えば、強アルカリに対してガラスは使用できない)、また、形成される貫通電極が硬質になるために、機械的振動が付加されると貫通電極にクラックが発生し、断線する可能性がある。このようにいずれの方法においても、機械的振動が付加されるような場合には電気接続部の信頼性に問題がある。
【0004】
ところで、特許文献1、2では、電気接続部の信頼性や作業性を確保するために、低融点金属であるSn(融点:232℃)を用いて電気接続部を合金化している。
【特許文献1】特開平7−240582号公報
【特許文献2】特開2003−234576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2に記載される電気接続部は、電気接続が行われる加圧・加熱時には液体状態であっても、室温近傍での使用温度帯(室温〜150℃)では固体状態にある。このため、電気接続部に機械的振動が付加されるような場合には、その振動によって断線する可能性があり、電気接続部の信頼性に問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、機械的振動が付加される場合においても、電気接続部の信頼性を確保できる電気配線構造、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び画像形成装置を提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1の電極と第2の電極が接続される電気接続部を備え、前記電気接続部は少なくともGa金属を含む合金で構成され、前記合金は30℃未満の融点であることを特徴とする電気配線構造を提供する。
【0008】
本発明によれば、電気接続部は常温(30℃)以上で液体状態となる合金で構成されるので、機械的な点接触によらない状態で電気的導通を確保することができ、電気接続部における電気抵抗を小さく抑えることができる。特に、機械的振動が付加される場合においても、その振動を液体状態の合金で吸収することができ、電気接続部の信頼性を確保することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気配線構造であって、前記第1及び第2の電極の一方の電極はGa金属を含み、他方の電極は前記Ga金属に接触すると合金化を起こす金属を含むことを特徴とする。
【0010】
請求項2の態様によれば、第1及び第2の電極が接続される電気接続部が合金化するので、電気接続部の信頼性を確保することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電気配線構造であって、前記金属は、In、Zn、Sn、及びAlのいずれかであることを特徴とする。
【0012】
Ga金属に接触すると合金化を起こす金属(低融点金属)としては、In、Zn、Sn、及びAlのいずれかの金属であることが好ましく、比較的低温(16〜29℃)で電気接続部を合金化することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電気配線構造であって、前記第1の電極は、基板の厚さ方向に形成される貫通電極であり、前記第2の電極は、貫通電極の一方の端部に接続される接続電極であることを特徴とする。
【0014】
請求項4の態様は、本発明が適用される好適な一実施態様であり、電気接続部の信頼性を確保することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の電気配線構造であって、前記貫通電極は、前記基板の厚さ方向に形成される貫通孔に導電粒子を含む導電性ペーストが充填された構造であることを特徴とする。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の電気配線構造であって、前記導電粒子は、Ga金属から成る単体粒子であることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の電気配線構造であって、前記導電粒子は、表面が前記Ga金属でコートされたコート粒子であることを特徴とする。
【0018】
請求項7の態様によれば、Ga金属の使用量を抑えることができ、コストダウンが可能となる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項5に記載の電気配線構造であって、前記導電粒子は、前記Ga金属及び前記金属から成る合金の単体粒子、又は、表面が前記合金でコートされたコート粒子であることを特徴とする。
【0020】
請求項8の態様によれば、Ga金属とそのGa金属に接触すると合金化を起こす金属(低融点金属)の比率に応じて融点を変化させることができるので、製造時のハンドリングが容易となる。
【0021】
また前記目的を達成するために、請求項9に記載の発明は、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電気配線構造を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッドを提供する。
【0022】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の液体吐出ヘッドであって、前記液体吐出ヘッドは、圧電素子の変位を利用して圧力室内に充填されるインクを加圧し、前記圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出させる方式であることを特徴とする。
【0023】
本発明は、請求項10の態様の如く、圧電方式の液体吐出ヘッドに好適であり、圧電素子による機械的振動が電気接続部に生じる場合においても、電気接続部の信頼性を確保することができる。
【0024】
また前記目的を達成するために、請求項11に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置を提供する。
【0025】
また前記目的を達成するために、請求項12に記載の発明は、請求項9又は請求項10に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【0026】
電気接続の信頼性向上により、高品質な画像形成が可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、電気接続部は常温(30℃)以上で液体状態となる合金で構成されるので、機械的な点接触によらない状態で電気的導通を確保することができ、電気接続部における電気抵抗を小さく抑えることができる。特に、機械的振動が付加される場合においても、その振動を液体状態の合金で吸収することができ、電気接続部の信頼性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0029】
まず、本発明に係る画像形成装置の一実施形態としてのインクジェット記録装置について説明する。図1は、インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。図示するように、インクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の記録ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
【0030】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0031】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0032】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0033】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0034】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
【0035】
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
【0036】
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
【0037】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0038】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0039】
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0040】
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。印字部12を構成する各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0041】
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した記録ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0042】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0043】
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する記録ヘッドを追加する構成も可能である。
【0044】
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0045】
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0046】
本例の印字検出部24は、少なくとも各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0047】
印字検出部24は、各色の記録ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
【0048】
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
【0049】
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0050】
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0051】
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
【0052】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドとしての一実施形態である記録ヘッドについて説明する。尚、インク色ごとに設けられている各記録ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって記録ヘッドを示すものとする。
【0053】
図2は、記録ヘッド50の構造例を示す平面透視図である。図示するように、記録ヘッド50は、インク吐出用のノズル51、圧力室52、及びインク供給口54から成る複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)53を千鳥でマトリクス状(2次元状)に配置させた構造を有し、各ノズル51をヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影した場合に均等なノズルピッチで高密度配列されるように構成されている。これにより、ドットピッチの高密度化が実質的に達成され、高品質な画像形成が可能となる。
【0054】
また、各ノズル51に対応して設けられている圧力室52はその平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51とインク供給口54が設けられている。
【0055】
図3は、記録ヘッド50の一部を示した断面図(図2中3−3線に沿う断面図)である。図示するように、ノズル51は対応する圧力室52に連通している。また、圧力室52の一端には、圧力室52に対してインクを供給するための供給口54が形成されており、圧力室52は供給口54を介して共通流路55に連通している。共通流路55にはインク供給源たるインクタンク(不図示)から供給されるインクが貯留される。共通流路55内のインクは供給口54を通って圧力室52に供給され、圧力室52内にそのインクが充填される。
【0056】
圧力室52の上壁面は振動板56で構成されており、振動板56上の圧力室52に対応する位置(即ち、振動板56を挟んで圧力室52に対向する位置)には、個別電極57を備えた圧電素子58が接合されている。尚、振動板56が圧電素子58に対する共通電極を兼ねている。
【0057】
振動板56の圧電素子58側には、下部基板61、中間基板62、及び上部基板63から成る多層配線基板60が接合されている。中間基板62には、その厚さ方向に貫通電極64が形成されており、貫通電極64の一方の端部(下端)は圧電素子58の個別電極57に接続され、貫通電極64の他方の端部(上端)は上部基板63の中間基板62側に形成されるリード電極66に接続されている。不図示の駆動回路で生成される駆動信号は、リード電極66から貫通電極64を介して圧電素子58の個別電極57に供給される。
【0058】
圧電素子58に駆動信号が供給されると、圧電素子58の変位に伴う振動板56の変形によって、圧力室52の容積が変化し、圧力室52内のインクが加圧され、ノズル51からインク滴が吐出される。尚、圧電素子58には、ピエゾなどの圧電体が好適に用いられる。インク吐出後、駆動信号の供給が解除されると、振動板56は元の状態に復帰し、共通流路55から供給口54を介して圧力室52にインクが供給される。
【0059】
尚、本実施形態においては、インク吐出方式として、圧電素子の変位を用いてインク吐出を行う圧電方式が採用されているが、本発明の実施に際してこれに限定されず、例えば、ヒータ等の発熱素子から生じる熱エネルギーを利用して、圧力室内に気泡を発生させ、このとき生じる圧力でノズルからインク滴を吐出するサーマル方式も採用することができる。
【0060】
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。図4は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0061】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはシリアルインターフェースやパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0062】
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0063】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0064】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42その他各部のヒータ89を駆動するドライバである。
【0065】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して記録ヘッド50のインク滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0066】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図4において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0067】
ヘッドドライバ84は、プリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の記録ヘッド50の圧電素子58(図3参照)を駆動するための駆動信号を生成し、圧電素子58に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバ84には記録ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0068】
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0069】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて記録ヘッド50に対する各種補正を行う。
【0070】
次に、本発明の特徴的部分である電気配線構造について説明する。
【0071】
図5は、本発明に係る電気配線構造の一例を示す断面図である。図示するように、樹脂基板100の厚さ方向の貫通電極102は、同方向に形成される貫通孔100aに導電粒子と樹脂を主成分とする導電性ペースト104が充填されており、一方の端部(下端)に下部接続電極106が接続され、他方の端部(上端)に上部接続電極108が接続されている。樹脂基板100、貫通電極102、下部接続電極106、上部接続電極108は、図3に示した中間基板62、貫通電極64、個別電極57、リード電極66にそれぞれ相当するものである。尚、下部接続電極106、上部接続電極108はそれぞれ樹脂基板100の上下面に直接形成されていてもよいし、樹脂基板100に積層される他の基板に形成されていてもよい。
【0072】
本実施形態においては、導電性ペースト104に含まれる導電粒子としてGa金属から成る単体粒子を用いるとともに、各接続電極106、108の構成金属としてGa金属に接触すると合金化反応を起こし、その合金の融点が30℃未満となる金属、つまり、単体での融点が低い金属(低融点金属)を用いる。このような低融点金属としては、例えば、In、Zn、Sn、Al等がある。
【0073】
図6は、本発明の動作原理を示す説明図であり、図5の貫通電極102と各接続電極106、108が接続される電気接続部110(110A、110B)に相当する部分を模式的に拡大して表したものである。
【0074】
図6(a)に示すように、導電性ペーストに含まれる導電粒子120には、Ag、Au、Ni、Sn、Cu、Pb等の金属から成る単体粒子や、表面がAg等の前記金属でコートされたコート粒子(例えば、Cu金属粒子の表面をAgでコートした粒子)などが一般的に用いられる。この場合、導電粒子120と接続電極122は原理上機械的に点接触しているにすぎず、電気接続部124における電気抵抗が大きくなる。また、接続電極122の導電粒子120側の面に異物が存在するような場合には、導電粒子120が接続電極122に接触する機会を失うことになるので、電気接続部124の電気抵抗は更に大きくなり、また、電気抵抗のばらつきも大きくなる。この結果、電気的導通を確保できないという事態が生じる可能性がある。
【0075】
そこで本発明では、図6(b)に示すように、導電性ペーストに含まれる導電粒子130としてGa金属から成る単体粒子(Ga金属粒子)を用いるとともに、接続電極132として前記低融点金属(In,Zn,Sn,Al等)を用いて、貫通電極102と各接続電極106、108が接続される電気接続部134に少なくともGa金属を含む合金を形成し、合金の融点が30℃未満となるように構成する。
【0076】
従って、電気接続部134は常温(30℃)以上で液体状態となる合金で構成されるので、機械的な点接触によらない状態で電気的導通を確保することができ、電気接続部134における電気抵抗を小さく抑えることができる。特に、機械的振動が付加される場合においても、その振動を液体状態の合金で吸収することができ、電気接続部134の信頼性を確保することができる。
【0077】
また、Ga金属の融点は29℃と他金属に比べて低く、導電性ペースト内で分散している状態においても、一度融点以上に加熱することで、導電粒子130同士が溶融によって結合し、図6(a)の導電粒子120間の点接触による電気的導通よりも、信頼性の高い電気的導通を確保できる。
【0078】
図7は、Ga金属と低融点金属(In,Zn,Sn,Al)から成る合金の融点を示したグラフであり、横軸は低融点金属の比率(モル比率)を表し、縦軸は合金の融点を表している。図7(a)はGaとInから成る合金(Ga−In合金)の融点を示しており、Inの比率が0%の場合の融点(即ち、Gaの融点)は29℃であり、そこから、Inの比率の増加に従ってGa−In合金の融点は徐々に低くなり、Inの比率が約15%の場合に融点は16℃と最も低くなり、その後はInの比率増加に従って融点は徐々に高くなり、Inの比率が100%の場合の融点(即ち、Inの融点)は157℃となる。
【0079】
このようにGa金属と低融点金属から成る合金の融点は、Ga金属と低融点金属の比率に応じて変化することから、図6(b)において、電気接続部134に形成される合金の融点が30℃未満となるように構成すればよい。具体的には、図7(a)のGa−In合金の場合にはInの比率を18%以下、図7(b)のGa−Zn合金の場合にはZnの比率を5%以下、図7(c)のGa−Sn合金の場合にはSnの比率を10%以下、図7(d)のGa−Al合金の場合にはAlの比率を3%以下となるように構成すればよい。つまり、低融点金属であるIn、Zn、Sn、Alの組成比率を仮にx%とした場合、導電粒子と接続電極の金属の全体の組成において、Gaの比率が(100−x)%以上となるように設定する。
【0080】
図8は、電気接続方法の一例を示す工程図である。まず、図8(a)に示すように、下部基板140の一方の面に低融点金属(In、Zn,Sn,Al等)で構成される下部接続電極106をスクリーン印刷等で形成する。他の金属(例えば、Cu、Ag、Au等)から成る下地電極の表面に低融点金属をめっき、蒸着、スパッタリング等で成膜してもよい。また、図8(b)に示すように、上部基板142の一方の面にも、下部基板140と同様な方法で上部接続電極108を形成する。
【0081】
次に、図8(c)に示すように、貫通孔100aが形成されている樹脂基板100を下部基板140の下部接続電極106側に接着層(不図示)を介して積層する。この際、貫通孔100aと下部接続電極106が重なるように位置合わせしながら行う。接着層としては、エポキシ系、ポリイミド系、又はシリコン系の熱硬化性接着フィルム等を用いることができる。また、平板状の樹脂基板100を下部基板140に接着層を介して積層してから、炭酸レーザ、UVレーザ、エキシマレーザ等によるレーザ加工やドリル等による機械加工で樹脂基板100に貫通孔100aを形成してもよい。
【0082】
次に、図8(d)に示すように、貫通孔100aの内部に、導電粒子としてGa金属粒子を含む導電性ペースト104を充填する。この際、Gaが溶融しないようにGaの融点(29℃)未満で導電性ペーストの充填を行う。
【0083】
次に、図8(e)に示すように、樹脂基板100の下部基板140側とは反対側に前記同様の接着層(不図示)を介して上部基板142を積層する。この際、上部基板142の上部接続電極108側を樹脂基板100側にして、上部接続電極108と貫通孔100aが重なるように位置合わせしながら積層する。そして、下部基板140、樹脂基板100、及び上部基板142を加圧・加熱して、積層体全体を一体化する。これにより、樹脂基板100の表裏面に配置される上部接続電極108及び下部接続電極106は、樹脂基板100の厚さ方向の貫通電極102を介して電気的に導通する。この際、上述したように、貫通電極102や各接続電極106、108を構成することで、これらが接続される電気接続部110(110A、110B)には、融点30℃未満の合金が形成される。従って、電気接続部110の合金は常温(30℃)以上で液体状態となり、機械的な点接触ではない状態で電気的導通を確保することができ、電気接続部110における電気抵抗を小さく抑えることができる。特に、機械的振動が電気接続部110に付加される場合においても、その振動による影響は液体状態の合金で吸収されるので、電気接続部110の信頼性を確保することができる。
【0084】
本実施形態においては、導電性ペーストに含まれる導電粒子130として、Ga金属粒子を用いる場合を例示したが、本発明の実施に際してはこれに限定されない。例えば、樹脂粒子や金属粒子の表面がGa金属でコートされたコート粒子を用いてもよい。この場合、Ga金属の使用量を少なくすることができる。
【0085】
また、Ga金属と低融点金属から成る合金の単体粒子、又は表面が該合金でコートされたコート粒子を導電粒子130として用いてもよい。例えば、図7(a)に示す場合において、Inの比率が50%となるGa−In合金を用いる場合には、その合金の融点は約70℃となり、融点29℃のGa金属から成る単体粒子を導電粒子として用いる場合に比べてハンドリングが容易となる。一方、接続電極132にGa金属をA+B:A=90〜85[%]:10〜15[%]となるような膜厚のGaを成膜することによって、上述した場合と同様の効果を得ることができる。
【0086】
また、導電粒子130と接続電極132の構成金属が逆となる態様、即ち、導電粒子130として低融点金属から成る単体粒子、又は他の単体粒子(金属粒子や樹脂粒子等)の表面を低融点金属でコートしたコート粒子を用いるとともに、接続電極132として下地電極の表面(貫通電極102側の面)にGa金属をめっき等で成膜したものを用いるようにしてもよい。
【0087】
以上説明したように、本実施形態によれば、電気接続部110は常温(30℃)以上で液体状態となる合金で構成されるので、機械的な点接触によらない状態で電気的導通を確保することができ、電気接続部110における電気抵抗を小さく抑えることができる。特に、機械的振動が付加される場合においても、その振動を液体状態の合金で吸収することができ、電気接続部110の信頼性を確保することができる。
【0088】
本発明に係る電気配線構造の適用範囲は上述したインクジェット記録装置に限らず、工業用の精密塗布装置、レジスト印刷装置、電子回路基板の配線描画装置、染色加工装置など、液体を吐出(噴射)する各種の液体吐出装置に用いられる液体吐出ヘッドに適用可能である。
【0089】
以上、本発明の電気配線構造、液体吐出ヘッド、液体吐出装置、及び画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図
【図2】記録ヘッドの平面透視図
【図3】図2中3−3線に沿う断面図
【図4】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図5】本発明に係る電気配線構造の一例を示す断面図
【図6】本発明の動作原理を示す説明図
【図7】Ga金属と低融点金属(In,Zn,Sn,Al)から成る合金の融点を示したグラフ
【図8】電気接続方法の一例を示す工程図
【符号の説明】
【0091】
10…インクジェット記録装置、50…記録ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、54…供給口、56…振動板、57…個別電極、58…圧電素子、60…多層配線基板、62…中間基板、64…貫通電極、66…リード電極、100…樹脂基板、102…貫通電極、104…導電性ペースト、106…下部接続電極、108…上部接続電極、110、124、134…電気接続部、120、130…導電粒子、122、132…接続電極、140…下部基板、142…上部基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と第2の電極が接続される電気接続部を備え、
前記電気接続部は少なくともGa金属を含む合金で構成され、
前記合金は30℃未満の融点であることを特徴とする電気配線構造。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極の一方の電極はGa金属を含み、他方の電極は前記Ga金属に接触すると合金化を起こす金属を含むことを特徴とする請求項1に記載の電気配線構造。
【請求項3】
前記金属は、In、Zn、Sn、及びAlのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の電気配線構造。
【請求項4】
前記第1の電極は、基板の厚さ方向に形成される貫通電極であり、
前記第2の電極は、前記貫通電極の端部に接続される接続電極であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電気配線構造。
【請求項5】
前記貫通電極は、前記基板の厚さ方向に形成される貫通孔に導電粒子を含む導電性ペーストが充填された構造であることを特徴とする請求項4に記載の電気配線構造。
【請求項6】
前記導電粒子は、Ga金属から成る単体粒子であることを特徴とする請求項5に記載の電気配線構造。
【請求項7】
前記導電粒子は、表面が前記Ga金属でコートされたコート粒子であることを特徴とする請求項5に記載の電気配線構造。
【請求項8】
前記導電粒子は、前記Ga金属及び前記金属から成る合金の単体粒子、又は、表面が前記合金でコートされたコート粒子であることを特徴とする請求項5に記載の電気配線構造。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の電気配線構造を備えたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記液体吐出ヘッドは、圧電素子の変位を利用して圧力室内に充填されるインクを加圧し、前記圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出させる方式であることを特徴とする請求項9に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
請求項9又は請求項10に記載の液体吐出ヘッドを備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−34719(P2008−34719A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−208377(P2006−208377)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】