説明

電源シーケンス回路

【課題】出力段にFETを備えたオープンドレインのシーケンサICのプルアップ抵抗の抵抗値を大きくしても、電源ユニットを確実に動作させることができる電源シーケンス回路を提供する。
【解決手段】起動信号ENがハイレベルになったとき、タイミング発生回路12が順次遅延パルスtp1、tp2、tp3を発生し、シーケンス制御回路13がFET14、15、16を順次オフにする。これにより、DC/DCコンバータ2、3が順次駆動される。次に、FET16がオフし、アンド回路5の出力端子がハイレベルとなった場合、DC/DCコンバータ4が駆動されるとともに、デジトラ6、出力FET7がオンし、電源電圧の+12Vがそのまま出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の複数の構成ユニットへの電源投入及び電源遮断の順序を規定する電源シーケンス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機能、ファクシミリ機能、プリント機能、スキャナ機能等を有するデジタル複合機等の電子機器では、電源は複数の電源ユニットに分割され、各電源ユニットから各構成ユニットに電力が供給される。それぞれの構成ユニットに電源を供給するシーケンス、及び、それぞれの構成ユニットの電源を遮断するシーケンスは予め定められている。
【0003】
例えば、CPUを正常に動作させるには、ある一定電圧レベル以上の電圧値が必要とされるが、電源スイッチを投入した直後の立ち上がり途中においては、電源電圧が当該必要レベルに達しない。このため、CPUの動作が不安定となって、CPUから異常信号が出力され、この異常信号に基づいて周辺装置が誤動作する可能性がある。したがって、CPUのロジック電源が安定するまでの間、周辺装置への電源供給を停止し、ロジック電源が一定電圧レベルに達した段階で周辺装置への電源供給を開始する必要がある。
【0004】
また、電源スイッチをOFFする場合には、上記とは逆に、周辺装置への電源供給が停止された後に、CPUへの電源供給が停止されるように制御する必要がある。
このように複数の構成ユニットへの電源投入及び電源遮断の順序を規定するシーケンス制御を実現するために、シーケンサICが用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
一方、シーケンス制御を実現するシーケンサICとして、出力段の電界効果トランジスタ(以下、FETという)がオープンドレインで用いられ、出力端子にプルアップ抵抗が接続されているものがある。すなわち、オープンドレインの出力端子は周辺回路の状況やノイズなどによって電圧が変動しやすいので、プルアップ抵抗により出力電圧を安定させるとともに、外部端子の出力レベルをシーケンサICの電源電圧より高い電圧レベルにする。
【0006】
図3は出力段にFETを備えたシーケンサICを使用した従来の電源シーケンス回路を示す図であり、図に示すように、シーケンサIC21の出力段のFET22のドレインが抵抗Rを介して電源Vccに接続されている。また、抵抗Rのドレイン側がDC/DCコンバータ23のイネーブル端子EN、及び、デジタルトランジスタ(以下、デジトラという)24のベースに接続されている。このデジトラ24は、図に示すように、ベースに電圧をかけるだけでデジタル的にオン、オフできる抵抗内蔵トランジスタである。
【0007】
そして、シーケンサIC21の出力段のFET22がオフとなった場合、DC/DCコンバータ23のイネーブル端子ENがハイレベルとなるので、DC/DCコンバータ23が駆動される。これと同時に、デジトラ24のベースがハイレベルとなり、デジトラ24がオンするので、このデジトラ24に連動してスイッチング素子(FET)25がオンし、ユニットに電源が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭64−90614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、出力ピンがオープンドレインとなっているシーケンサICでは、出力ピンをIC外部でプルアップしてDC/DCコンバータのイネーブルピン等に接続することにより、電源電圧を順次オンしていく。しかしながら、プルアップ抵抗の抵抗値が小さい場合、DC/DCコンバータあるいはデジトラに十分な電流が流れ、確実に作動させることができるが、プルアップ抵抗に比較的大きな電流が流れ続け、消費エネルギーが大きくなってしまう。
【0010】
一方、プルアップ抵抗の抵抗値を大きくすれば、消費エネルギーを少なくすることができるが、プルアップ抵抗の抵抗値が大きすぎる場合、電源ユニットを動作させることができない、という問題が生じる。すなわち、電源ユニットへの印加電圧はプルアップ抵抗とデジトラの内蔵抵抗で分圧されるため、電源ユニットへの印加電圧が低下する。このため、プルアップ抵抗の抵抗値が大きすぎる場合、DC/DCコンバータあるいはデジトラに流れる電流が減少し、これらを動作させることができなくなる。
【0011】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、出力段にFETを備えたオープンドレインのシーケンサICのプルアップ抵抗の抵抗値を大きくしても、電源ユニットを確実に動作させることができる電源シーケンス回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するため、本発明の電源シーケンス回路は、オープンドレインのシーケンサICと、前記シーケンサICの出力端子をプルアップする抵抗と、前記出力端子に接続される電源ユニットとを備えた電源シーケンス回路において、前記抵抗の両端の電圧がそれぞれ入力されるアンド素子を備え、当該アンド素子の出力が前記電源ユニットに入力されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の電源シーケンス回路は、上記の電源シーケンス回路において、前記電源ユニットが、デジタルトランジスタと、前記デジタルトランジスタに連動する、電界効果トランジスタ等のスイッチング素子とからなることを特徴とする。
また、本発明のさらに他の電源シーケンス回路は、上記のいずれかの電源シーケンス回路において、前記電源ユニットとしてDC/DCコンバータを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電源シーケンス回路によれば、プルアップ抵抗の両端の電圧が入力されるアンド素子の出力がデジトラに入力されるので、電源ユニットに印加される電圧がプルアップ抵抗とデジトラの内蔵抵抗によって分圧されることを防止できる。したがって、出力段にFETを備えたオープンドレインのシーケンサICのプルアップ抵抗の抵抗値を大きくすることができるので、プルアップ抵抗の消費電力を少なくできるとともに、電源ユニットを確実に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の電源シーケンス回路の構成を示す図である。
【図2】図1の電源シーケンス回路の動作波形図である。
【図3】従来の電源シーケンス回路の構成を示す図である。
【実施例】
【0016】
本発明の電源シーケンス回路について、図1の構成図により説明する。
この電源シーケンス回路は、シーケンサIC1とDC/DCコンバータ2、3、4、アンド回路5、デジトラ6及びFET7により構成されている。
【0017】
シーケンサIC1は、比較器11、タイミング発生回路12、シーケンス制御回路13及び出力段FET14、15、16により構成されている。比較器11は起動信号ENがハイレベルになったとき、タイミング発生回路12にハイレベルの信号を入力する。タイミング発生回路12は入力信号がハイレベルになってから所定の遅延時間td1、td2、td3後に、順次遅延パルスtp1、tp2、tp3を発生する。また、このタイミング信号発生器12は、入力信号がローレベルになってから所定の遅延時間td4、td5、td6後に、順次遅延パルスtp4、tp5、tp6を発生する。シーケンス制御回路13は、遅延パルスtp1〜tp6に応答して、FET14、15、16に駆動信号を出力する。
【0018】
FET14、15、16はドレインが外部出力端子に接続され、ソースがグランドに接続され、ゲートがシーケンス制御回路13から信号を受ける入力端子に接続されている。そして、FET14、15、16のドレインには、シーケンサIC1の電源電圧より高い電圧レベルに接続された外付けのプルアップ抵抗R1、R2、R3が接続されている。FET14、15、16のゲートにハイレベルが入力された場合、FET14、15、16はオフし、外部端子は外付けプルアップ抵抗R1、R2、R3を介して、シーケンサIC1の電源電圧より高い電圧レベルになる。また、FET14、15、16のゲートにローレベルが入力された場合は、FET14、15、16はオンし、外部端子はグランドレベルになる。
【0019】
そして、プルアップ抵抗R1、R2とFET14、15の接続点の電圧がDC/DCコンバータ2、3のイネーブル端子ENに入力される。一方、プルアップ抵抗R3の両端の電圧はアンド回路5に入力され、このアンド回路5の出力がDC/DCコンバータ4のイネーブル端子EN及びデジトラ6に入力される。
【0020】
DC/DCコンバータ2、3、4は入力端子INに入力される電圧+12Vを電圧変換して降圧し、それぞれ+3.3V、+2.5V、+1.2Vの電圧を出力する。また、出力FET7はデジトラ6がオンすることによりオンし、電源電圧の+12Vをそのまま出力する。
【0021】
次に、図1の電源シーケンス回路の作用について、図2の動作波形図を用いて説明する。
図2(a)に示すように、起動信号ENがハイレベルになったとき、比較器11はタイミング発生回路12にハイレベルの信号を入力する。これにより、タイミング発生回路12は入力信号がハイレベルになってから遅延時間td1、td2、td3後に順次遅延パルスtp1、tp2、tp3を発生し、シーケンス制御回路13に入力する。
【0022】
タイミング発生回路12から遅延パルスtp1が入力された場合、シーケンス制御回路13はFET14にハイレベルを出力するので、FET14がオフとなる。これにより、図2(b)に示すように、FET14の出力端子FLAG1がハイレベルとなり、DC/DCコンバータ2が駆動されるので、入力端子INに入力される電圧+12Vが電圧変換されて降圧され、+3.3Vの電圧が出力される。
【0023】
同様に、タイミング発生回路12から遅延パルスtp2が入力された場合、シーケンス制御回路13はFET15にハイレベルを出力するので、FET15がオフとなる。これにより、図2(c)に示すように、FET15の出力端子FLAG2がハイレベルとなり、DC/DCコンバータ3が駆動されるので、入力端子INに入力される電圧+12Vが電圧変換されて降圧され、+2.5Vの電圧が出力される。
【0024】
一方、FET16の出力端子FLAG3がローレベルのとき、アンド回路5の一方の入力端子はローレベル、他方の端子はハイレベルであるので、アンド回路5の出力はローレベルであり、デジトラ6はオンしていない。そして、タイミング発生回路12から遅延パルスtp3が入力された場合、シーケンス制御回路13はFET16にハイレベルを出力するので、FET16がオフとなる。これにより、図2(d)に示すように、FET16の出力端子FLAG3がハイレベルとなり、アンド回路5の二つの入力端子がハイレベルとなるので、アンド回路5の出力端子がハイレベルとなる。
【0025】
アンド回路5の出力端子がハイレベルとなった場合、DC/DCコンバータ4が駆動されるので、上記と同様に、入力端子INに入力される電圧+12Vが電圧変換されて降圧され、+1.2Vの電圧が出力される。また、アンド回路5の出力端子がハイレベルとなった場合、同時にデジトラ6がオンするので、出力FET7がオンし、電源電圧の+12Vがそのまま出力される。
【0026】
そして、起動信号ENがローレベルになった場合、比較器11はタイミング発生回路12にローレベルの信号を入力する。これにより、タイミング発生回路12は入力信号がローレベルになってから遅延時間td4、td5、td6後に順次遅延パルスtp4、tp5、tp6を発生し、シーケンス制御回路13に入力する。
【0027】
タイミング発生回路12から遅延パルスtp4が入力された場合、シーケンス制御回路13はFET16にローレベルを出力するので、FET16がオンする。これにより、図2(d)に示すように、FET16の出力端子FLAG3がローレベルとなり、アンド回路5の一方の入力端子がローレベルとなるので、アンド回路5の出力端子がローレベルとなる。アンド回路5の出力端子がローレベルとなった場合、DC/DCコンバータ4が駆動を停止するとともに、デジトラ6がオフするので、出力FET7もオフする。
【0028】
また、タイミング発生回路12から遅延パルスtp5が入力された場合、シーケンス制御回路13はFET15にローレベルを出力するので、FET15がオンする。これにより、図2(c)に示すように、FET15の出力端子FLAG2がローレベルとなり、DC/DCコンバータ3が駆動を停止する。
【0029】
同様に、タイミング発生回路12から遅延パルスtp6が入力された場合、シーケンス制御回路13はFET14にローレベルを出力するので、FET14がオンする。これにより、図2(b)に示すように、FET14の出力端子FLAG1がローレベルとなり、DC/DCコンバータ2が駆動を停止する。
【0030】
以上のように、プルアップ抵抗R3の両端の電圧が入力されるアンド素子5の出力をデジトラ6に入力したので、DC/DCコンバータ4及びデジトラ6に印加される電圧がプルアップ抵抗とデジトラの内蔵抵抗によって分圧されることを防止できる。このため、プルアップ抵抗の抵抗値を大きくすることができ、プルアップ抵抗の消費電力を少なくできるとともに、デジトラあるいはDC/DCコンバータを確実に動作させることができる。
【0031】
なお、上記の実施例では、電源ユニットとして、デジトラ、DC/DCコンバータを使用した例について説明したが、その他の電源ユニットを備えた電源シーケンス回路にも本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1 シーケンサIC
2、3、4 DC/DCコンバータ
5 アンド回路
6 デジトラ
7 FET
11 比較器
12 タイミング信号発生器
13 シーケンス制御回路
14、15、16 出力段FET

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オープンドレインのシーケンサICと、前記シーケンサICの出力端子をプルアップする抵抗と、前記出力端子に接続される電源ユニットとを備えた電源シーケンス回路において、
前記抵抗の両端の電圧がそれぞれ入力されるアンド素子を備え、当該アンド素子の出力が前記電源ユニットに入力されることを特徴とする電源シーケンス回路。
【請求項2】
請求項1に記載された電源シーケンス回路において、
前記電源ユニットが、デジタルトランジスタと、前記デジタルトランジスタに連動するスイッチング素子とからなることを特徴とする電源シーケンス回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された電源シーケンス回路において、
前記電源ユニットとしてDC/DCコンバータを備えていることを特徴とする電源シーケンス回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−206382(P2010−206382A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−48080(P2009−48080)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】