説明

電源検出回路

【課題】電源ノイズに起因する誤信号の出力を確実に抑制しつつ回路面積を削減する。
【解決手段】比較回路50は電源出力回路10の出力電圧Aを基準電圧回路20による基準電圧Bと比較し、電源電圧が所定電圧以下の場合は電源未検出信号を出力し、電源電圧が所定電圧よりも高いときは電源検出信号を出力する。基準電圧判別回路60は基準電圧が安定状態にあるか否かを判別し、安定状態にあるときには安定信号を出力し、安定状態にないときには不安定信号を出力する。出力固定回路70は不安定信号を入力したときには比較回路の出力信号を電源未検出時の出力である電源未検出信号に固定化し、安定信号を入力したときには固定化を停止する。ノイズ除去回路80は遅延回路90を内蔵し、その遅延作用により出力固定回路の出力信号に重畳しているノイズを除去する。そして、遅延回路90は、基準電圧回路の内部所定部位の電流値を参照して遅延信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種装置・機器に搭載され、装置・機器の動作を安定化させたり誤動作を防止したりするために電源電圧を検出する電源検出回路にかかわり、特には電源電圧の立ち上がり以降のノイズに起因する誤信号の出力を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電源検出回路は例えば半導体集積回路に搭載され、電源電圧の立ち上げ時や電源電圧が低位レベルになった場合に、電源電圧は未検出であるとして未検出信号であるリセット信号を出力させることに利用される。半導体集積回路の内部回路はリセット信号を受けて動作を停止し、半導体集積回路が誤動作することを防ぐ。
【0003】
図5は従来の技術における電源検出回路の構成を示すブロック回路図である。この電源検出回路は、電源電圧を分割して出力電圧Aを生成する電源出力回路10と、基準電圧Bを出力する基準電圧回路20cと、電源出力回路10の出力電圧Aを基準電圧Bと比較する比較回路50と、基準電圧Bが安定状態か不安定状態かを判別する基準電圧判別回路60と、基準電圧判別回路60から不安定信号を入力した場合に比較回路50の出力信号Cを固定して出力する出力固定回路70と、出力固定回路70の出力信号Dに重畳しているノイズを除去するノイズ除去回路80aと、ノイズ除去回路80aによりノイズ除去された出力信号Eが出力される出力端子100とを備えている。
【0004】
電源出力回路10は、第1の電源に接続される電源端子11と第2の電源としてのグランドに接続されるグランド端子12との間の電圧である電源電圧を抵抗素子13,14により線形分割して、電源電圧に比例して変化する出力電圧Aの信号を出力する。基準電圧回路20cは、安定状態においては電源電圧にかかわらず常に一定の基準電圧Bを出力する。この基準電圧Bは、電源電圧が所定電圧であるときの電源出力回路10の出力電圧Aに等しくなるように設定されている。そして、比較回路50は、一般には、出力電圧Aが基準電圧B以下であるときには、電源電圧は所定電圧以下であるとしてリセット信号となるロー信号(電源未検出信号)を出力する一方、出力電圧Aが基準電圧Bより高いときには、電源電圧は所定電圧より高いとしてリセット解除信号となるハイ信号(電源検出信号)を出力する。なお、ハイ・ローの論理は逆でもよい。
【0005】
基準電圧回路20cは、一般に、電源電圧の立ち上がりと同時に基準電圧Bの信号を出力するように構成される。しかし、安定した一定の基準電圧Bの信号の出力には、基準電圧回路20cの回路構成で定められる一定の時間が必要である。そのため、電源電圧の急峻な立ち上がり時には、電源出力回路10の出力電圧Aが常に基準電圧Bを上回ることがある。この場合、比較回路50の出力信号Cは電源供給開始時点から常にリセット解除信号(ハイ信号)を出力し、リセット信号が出力されなくなる。
【0006】
この不都合を基準電圧判別回路60と出力固定回路70とが解消する(特許文献1参照)。基準電圧判別回路60は、基準電圧Bが安定状態にあるか否かを判別し、安定状態にあると判別したときには出力固定回路70に安定信号を出力し、安定状態にないと判別したときには不安定信号を出力する。出力固定回路70は、不安定信号を入力したときは比較回路50の出力信号Cをロー信号(電源未検出信号)に固定して出力する。また、安定信号を入力したときは前記固定を解除して比較回路50の出力信号Cをそのまま出力する。このように、電源電圧の立ち上がり時に基準電圧Bが不安定状態にあるときには出力信号Dがロー信号(電源未検出信号)に固定化されるため、電源電圧の立ち上がりが急峻であっても、リセット信号の出力が確実になるようにしている。
【0007】
電源電圧の立ち上がり以降で所定電圧よりも十分に高い電源電圧が供給されている場合でも、電源電圧に発生するノイズにより基準電圧Bが低下し、基準電圧Bが不安定としてリセット信号の誤信号が出力される場合がある。これに対応するのがノイズ除去回路80aである。
【0008】
以下、図6および図7を用いて前記誤信号の出力される理由について説明する。また、図9を用いてノイズ除去回路80aの機能を説明する。
【0009】
図6は基準電圧回路20cと基準電圧判別回路60の具体的な回路構成を示す。基準電圧回路20cは、抵抗24,25,26とダイオード27,28とからなる比較電圧生成部23と、比較電圧生成部23が出力する比較電圧を差動増幅して出力する差動増幅回路30と、差動増幅回路30からの信号を受けて反転増幅信号を出力する反転増幅回路40と、比較電圧生成部23に電流を供給するPMOSトランジスタ22から構成されている。PMOSトランジスタ22は、ゲート端子に反転増幅回路40の出力端子が接続され、ソース端子が電源端子21に接続され、ドレイン端子より比較電圧生成部23に電流を供給する。基準電圧判別回路60は、電流源61とダイオード62とからダイオード62の閾値電圧を形成し、比較回路63により基準電圧回路20cの基準電圧Bをダイオード62の閾値電圧と比較することによって基準電圧Bの安定状態を判別する。
【0010】
図7は電源ノイズによる誤信号発生時の各部の動作を示すタイミングチャートである。電源電圧が所定電圧Voよりも高いレベルにおいて急峻に低下した場合(時刻t1付近)、基準電圧回路20cの内部ノードGの電圧値は、電源端子21とノードGの間に存在する寄生容量41とグランド端子と内部ノードGの間に存在する寄生容量42との比率に応じて過渡的に低下する。差動増幅回路30および反転増幅回路40は、PMOSトランジスタ22へのフィードバックにより内部ノードGが安定状態の電圧値となるように制御する。しかし、低消費電流の強い要望のために差動増幅回路30のバイアス電流が低減されるため、応答が間に合わず内部ノードGの電圧値の低下が顕著となる。反転増幅回路40はノードGの電圧値の低下を増幅し、PMOSトランジスタ22に流れる電流値を減少する信号を出力する。PMOSトランジスタ22の電流値の減少により比較電圧生成部23に流れる電流値が減少し、基準電圧Bが基準電圧判別回路60のダイオード62の閾値電圧Vd以下に低下する。この基準電圧Bの低下により、基準電圧判別回路60から基準電圧Bについての不安定信号が出力され、出力固定回路70の出力信号Dとしてロー信号(電源未検出信号)が出力される(時刻t1〜t2)。このロー信号(電源未検出信号)は、電源電圧が所定電圧Voより十分高い場合(t1以降)でも出力され、電源検出回路の動作としては誤信号となる。ノイズ除去回路80aは、この誤信号が出力されることを防止するもので、出力信号Eとしてはロー信号は出力されない(t1〜t2以降)。その後、差動増幅回路30により基準電圧回路20cの内部ノードGは安定状態の電圧値に充電され、基準電圧Bが安定状態となる電圧値まで復帰し、出力固定回路70からの誤信号の出力が停止される(t2)。
【0011】
図8は電源電圧が低位レベルになった場合の各部の動作を示すタイミングチャートである。電源電圧の低下に伴う基準電圧回路20cの内部ノードGの変動に対し差動増幅回路30の応答が間に合う場合、基準電圧Bは安定したままとなる。この状態で、電源電圧が所望電圧Voを下回ったときに(t3)、出力固定回路70の出力信号Dとしてロー信号(電源未検出信号)が出力される。ロー信号の出力時間がノイズ除去回路80aの遅延時間を超えると、電源検出回路の出力である出力信号Eがローとなり、リセット信号が出力される(t4)。
【0012】
図9は従来のノイズ除去回路80aの構成例を示す回路図である。ノイズ除去回路80aは、出力固定回路70の出力信号Dが入力される入力端子101と、出力信号Dを入力して遅延した複数の遅延信号Q1〜Qnを出力する遅延回路102と、遅延回路102が出力する複数の遅延信号Q1〜Qnを入力して論理和信号Eを出力する論理回路106と、論理和信号Eが出力される出力端子107より構成される。遅延回路102は、一定の周波数の発振信号を出力する発振回路103と、発振回路103が出力する発振信号を分周して出力する分周回路104と、分周回路104の出力信号をクロック信号として入力する複数個のDフリップフロップ回路105とで構成されている。複数個のDフリップフロップ回路105は直列接続され、初段のDフリップフロップ回路に出力固定回路70の出力信号Dが入力される。論理回路106は、複数個のDフリップフロップ回路105が出力する各遅延信号Q1〜Qnを入力して論理和信号Eを出力することで、出力固定回路70の出力信号Dに重畳しているノイズであるロー信号を除去する。
【特許文献1】特開2002−228690号公報(第9頁、第12−14図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
図7に示すように、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅は、基準電圧回路20cの内部ノードが電源ノイズにより不安定状態の電圧値となってから安定状態の電圧値に充放電されるまでの時間に相当する(t2−t1)。基準電圧回路20cのように常時動作する回路は消費電流が問題視されるため、各ノードのインピーダンス(時定数)はできるだけ大きくなるように設計される。このため、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅は長くなる。また、前記従来の電源検出回路は、ノイズ除去回路80cが基準電圧回路20cの特性とは無関係に構成されたもので、電源電圧、温度およびノイズ除去回路80cを構成するデバイスの出来栄えにより、除去できる誤信号のパルス幅が変動する。場合によっては、電源ノイズによる誤信号を出力する誤検出となる可能性がある。
【0014】
ノイズ除去回路80aとしては、電源ノイズに起因する誤信号を確実に除去するために、誤信号のパルス幅にマージンを加えて遅延時間を設定する必要がある。このため、遅延回路102としては、例えばマイクロ秒オーダーの遅延時間が必要となり、発振回路103、分周回路104および複数個のDフリップフロップ回路105を用いた構成で、その回路規模は比較的大きなものとなっている。しかし、これではノイズ除去回路80aの回路規模が大きくなり、したがって、電源検出回路の回路面積が大きくなるという問題がある。
【0015】
本発明は、このような事情に鑑みて創作したものであり、電源ノイズに起因する誤信号の出力を確実に抑制しつつ回路面積を削減できる電源検出回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明による電源検出回路は、
電源電圧から生成した出力電圧を出力する電源出力回路と、
前記電源電圧が所定電圧であるときの前記電源出力回路の出力電圧に等しい基準電圧を出力する基準電圧回路と、
前記電源出力回路の出力電圧を前記基準電圧回路による基準電圧と比較し、電源電圧が所定電圧以下の場合は電源未検出信号を出力し、前記電源電圧が前記所定電圧よりも高いときは電源検出信号を出力する比較回路と、
前記基準電圧が安定状態にあるか否かを判別し、安定状態にあるときには安定信号を出力し、安定状態にないときには不安定信号を出力する基準電圧判別回路と、
前記不安定信号を入力したときには前記比較回路の出力信号を電源未検出時の出力である電源未検出信号に固定化し、前記安定信号を入力したときには前記固定化を停止する出力固定回路と、
遅延回路を内蔵し、この遅延回路の遅延作用により前記出力固定回路の出力信号に重畳しているノイズを除去するノイズ除去回路とを備えた電源検出回路であって、
前記ノイズ除去回路内の前記遅延回路は、前記基準電圧回路の内部所定部位の電流値を参照して遅延信号を生成するように構成されているものである。
【0017】
この構成における特徴は、ノイズ除去回路内の遅延回路が、基準電圧回路の内部所定部位の電流値を参照して遅延信号を発生させるように構成されていることである。ノイズ除去回路の機能は、出力固定回路の出力信号に対する遅延作用によって、電源ノイズに起因する誤信号の出力を抑制することである。ノイズを除去するには、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅以上の遅延を行えばよい。このノイズ除去回路の遅延回路として、従来技術の場合には、基準電圧回路の内部所定部位の電流値を参照するといった構成はなく、発振回路、分周回路および複数個のDフリップフロップ回路を用いた構成で、その回路規模は比較的大きなものであった。これに対して、本発明の場合には、基準電圧回路の内部所定部位の電流値を参照して遅延信号を発生させる遅延回路を採用しているので、電源ノイズに起因する誤信号の出力を抑制するノイズ除去回路を回路規模の小さなもので構成することが可能となる。このことは、常時動作することから低消費電流の要望が強く、バイアス電流が大きく低減され応答性が低いために内部所定部位の電圧値の低下が顕著となるような基準電圧回路を用いる場合でも該当する。また、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅は基準電圧回路の電流値に応じて変化するものであるが、その電流値を参照し電流値に応じた遅延時間の遅延作用を行うため、誤信号のパルス幅に対する遅延時間のマージンが不要となる。つまり、ノイズ除去回路としては回路規模の小さなものの採用が可能となる。以上の相乗により、電源検出回路の回路面積を削減することが可能となる。
【0018】
(2)上記構成の電源検出回路において、前記ノイズ除去回路内の前記遅延回路は、前記基準電圧回路の内部所定部位の電流値として、抵抗とダイオードで構成された比較電圧生成部に流れる電流値を参照するという態様がある。これは、ノイズ除去回路内の遅延回路の参照先が基準電圧回路内の比較電圧生成部であり、その比較電圧生成部が抵抗とダイオードで構成されているという点に特徴がある。この構成により、電源ノイズに起因する誤信号の出力を確実に抑制しながら、電源検出回路の回路面積削減効果を確実化することが可能となる。
【0019】
(3)上記(1)の構成の電源検出回路において、前記ノイズ除去回路内の前記遅延回路は、前記基準電圧回路の内部所定部位の電流値として、差動増幅回路に流れる電流値を参照するという態様がある。これは、ノイズ除去回路内の遅延回路の参照先が基準電圧回路内の差動増幅回路であるという点に特徴がある。差動増幅回路は、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅を決めるものである。この構成により、ノイズ除去回路において、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅に対する遅延時間のマージンが不要となる。つまり、ノイズ除去回路として回路規模の小さなものの採用が可能となる。したがって、電源ノイズに起因する誤信号の出力を確実に抑制しながら、電源検出回路の回路面積削減効果を確実化することが可能となる。
【0020】
(4)上記(1)〜(3)の構成の電源検出回路において、前記ノイズ除去回路は、前記基準電圧回路の内部所定部位に電流を供給するMOSトランジスタのソース端子にソース端子が接続され、前記基準電圧回路の内部所定部位に電流を供給するMOSトランジスタのゲート端子にゲート端子が接続されてカレントミラーを構成するMOSトランジスタと、前記カレントミラーを構成するMOSトランジスタから電流が供給される1個または複数個のインバータ回路により構成される遅延回路と、前記出力固定回路の出力信号を一方の入力端子に入力し、前記出力固定回路の出力信号を前記遅延回路により遅延した信号を他方の入力端子に入力して、電源検出時の出力信号を前記遅延回路による遅延時間だけ維持して出力する論理回路とを備えるという態様がある。この構成においては、ノイズ除去回路の主要な構成要素である遅延回路が1個または複数個のインバータ回路と、このインバータ回路に電流を供給するMOSトランジスタとで構成されている。したがって、遅延回路の構成ひいてはノイズ除去回路の構成は簡単なものとなり、電源検出回路の回路面積削減効果を確実化することが可能となる。そして、この遅延回路のMOSトランジスタと基準電圧回路のMOSトランジスタとでカレントミラーが構成されているので、基準電圧回路の内部所定部位の電流値の捕捉が高精度に行われることになる。結果、所要の遅延時間の調整も正確なものとなり、電源ノイズに起因する誤信号の出力の抑制が確実なものとなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ノイズ除去回路内の遅延回路として、基準電圧回路の内部所定部位の電流値を参照して遅延信号を発生させる遅延回路を採用しているので、電源ノイズに起因する誤信号の出力を抑制するノイズ除去回路を回路規模の小さなもので構成することができる。また、消費電流が抑制された基準電圧回路を用いる場合でも、電源電圧の変動の捕捉精度が高いものとなり、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅に対する遅延時間のマージンが不要となるため、ノイズ除去回路の回路規模を小さくすることができる。すなわち、電源検出回路の回路面積を削減しながら、電源ノイズに起因する誤信号の出力を確実に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明にかかわる電源検出回路の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
《実施の形態1》
図1は本発明の実施の形態1における電源検出回路の全体構成を示すブロック回路図である。図1において、図5と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。本実施の形態においては、ノイズ除去回路80が基準電圧回路20に関連付けられている。基準電圧回路20は参照信号Fを出力し、ノイズ除去回路80は参照信号Fを用いて基準電圧回路20の内部所定部位の電流値を参照して遅延信号を発生させることにより、出力固定回路70の出力信号Dに重畳しているノイズを除去するように構成されている。
【0024】
図2は、基準電圧回路20aおよびノイズ除去回路80の構成例を示すブロック回路図である。図2において、図6と同じ構成要素については同じ符号を用い、説明を省略する。基準電圧回路については、図1で示したものの一例ということで符号20aを割り当てている。図2に示すように、基準電圧回路20aにおける反転増幅回路40の出力信号が参照信号Fとしてノイズ除去回路80に供給されている。基準電圧回路20において、比較電圧生成部23に流れる電流はPMOSトランジスタ22により供給される。PMOSトランジスタ22が供給する電流値は反転増幅回路40の出力信号によって制御されることになるが、この反転増幅回路40の出力信号をノイズ除去回路80が参照する参照信号Fとして基準電圧回路20aより出力するように構成している。
【0025】
電源ノイズにより基準電圧回路20aの内部ノードGの電圧が低下し、反転増幅回路40の出力電圧であるPMOSトランジスタ22のゲート端子の電圧が上昇した場合、比較電圧生成部23に流れる電流値が減少する。その減少した電流値を参照する参照信号Fをノイズ除去回路80に出力する。結果として、出力固定回路70の出力信号Dに重畳しているノイズを確実に除去することができる。この場合に、基準電圧回路20aについては、従来の構成に素子を追加するものではないため、基準電圧回路20aにおいて回路規模が大きくなる欠点は存在しない。
【0026】
図3はノイズ除去回路80の構成例を示す回路図である。ノイズ除去回路80は、出力固定回路70の出力信号Dが入力される入力端子81と、基準電圧回路20aの内部所定部位に流れる電流を参照する参照信号Fが入力される入力端子82と、出力固定回路70の出力信号Dを遅延した遅延信号Qを出力する遅延回路90と、出力信号Dとその遅延信号Qとの論理和信号Eを出力する論理回路83と、論理和信号Eが出力される出力端子84とを備えている。遅延回路90は、基準電圧回路20aからの参照信号Fに応じた遅延時間で出力固定回路70の出力信号Dを遅延する。遅延回路90は、PMOSトランジスタ91と、PMOSトランジスタ92とNMOSトランジスタ93より構成されたインバータ回路より構成されている。PMOSトランジスタ91は、そのソースが電源端子21に接続され、ゲート端子に基準電圧回路20aからの参照信号Fが入力される。PMOSトランジスタ91は、基準電圧回路20aにおけるPMOSトランジスタ22とカレントミラーを構成し、基準電圧回路20aの内部所定部位に流れる電流と符号が同じで、それに比例する電流値をインバータ回路へ供給する。PMOSトランジスタ92とNMOSトランジスタ93より構成されたインバータ回路は、PMOSトランジスタ91のドレインより電流が供給される。このインバータ回路は偶数個が直列接続されている。初段のインバータ回路に出力固定回路70の出力信号Dが入力される。論理回路83は、偶数個のインバータ回路を通して遅延された遅延信号Qと出力固定回路70の出力信号Dの論理和信号Eを出力することで、出力固定回路70の出力信号Dに重畳しているノイズを除去する。
【0027】
電源ノイズが発生し、比較電圧生成部23に流れる電流が減少して例えば0.1マイクロアンペア以下になるとする。遅延回路90は、このレベルの電流値を参照する場合に、数段のインバータ回路で1マイクロ秒以上の遅延時間が実現できる。したがって、従来のノイズ除去回路のように、発振回路、分周回路および複数個のDフリップフロップ回路を用いた構成に比べ、回路規模が小さくなり、回路面積を削減できる。
【0028】
本実施の形態において、電源検出回路は、電源電圧が所定電圧以下の場合は、電源未検出信号としてロー信号を出力するとしたが、これとは逆論理で、電源未検出信号としてハイ信号を出力するように構成してもよい。このとき、比較回路50は、電源出力回路10の出力電圧Aが基準電圧B以下の場合にハイ信号を出力し、基準電圧Bより高い場合にロー信号を出力するものとする。また、出力固定回路70は、基準電圧判別回路60から不安定信号を入力したときは、比較回路50の出力信号を電源未検出信号であるハイ信号に固定して出力するものとする。電源ノイズにより出力固定回路70が出力する誤信号はハイ信号となるため、ノイズ除去回路80に用いる論理回路83としてはハイ信号を除去できる論理積信号を出力するように構成する。
【0029】
なお、遅延回路90においてカレントミラーを構成するPMOSトランジスタ91より電流が供給されるインバータ回路は、1個を含む奇数個としてもよい。この場合、論理回路は、電源検出時の出力信号を遅延回路90による遅延時間だけ維持して出力するように、例えば遅延信号Qを反転するインバータ回路を前段に含む論理回路としても同様の動作となる。
【0030】
また、遅延回路90において複数個のインバータ回路を用いる場合、インバータを構成するPMOSトランジスタ92のソース端子を互いに接続し、カレントミラーを構成する1つのPMOSトランジスタ91を複数個のインバータで共有してもよい。この場合、少ない素子数で、より長い遅延時間を効率的に発生させることができる。
【0031】
《実施の形態2》
図4は本発明の実施の形態2における基準電圧回路20bおよびノイズ除去回路80の構成例を示すブロック回路図である。図4において、差動増幅回路30aは、ソース端子が電源端子21に接続された2個のPMOSトランジスタ31,32と、抵抗素子33と、ソース端子がPMOSトランジスタ32のドレイン端子に接続された2個のPMOSトランジスタ34,35と、PMOSトランジスタ34,35の各ドレイン端子にドレイン端子が接続されるNMOSトランジスタ36,37よりなるカレントミラー回路により構成されている。
【0032】
PMOSトランジスタ31および抵抗素子33は協働してバイアス電流を発生してPMOSトランジスタ32のゲート端子に供給し、PMOSトランジスタ32がバイアス電流を供給出力する。2個のPMOSトランジスタ34,35の各ゲートは差動増幅回路30aの入力端子となり、比較電圧生成部23より入力される差動信号を増幅する。
【0033】
基準電圧回路20bの内部ノードGが電源ノイズにより不安定状態の電圧値になってから安定状態の電圧値に復帰する時間は、差動増幅回路30aのバイアス電流値に依存する。バイアス電流値が大きければ基準電圧回路20bの内部ノードGが充電されて安定状態の電圧値に復帰するのが急速となる。その結果、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅は短くなり、ノイズ除去回路80に必要とされる遅延時間は小さくなる。一方、差動増幅回路30bのバイアス電流値が小さければ、基準電圧回路20bの内部ノードGの充電は緩慢になり、ノイズ除去回路80に必要とされる遅延時間は大きくなる。
【0034】
本実施の形態によれば、ノイズ除去回路80においてバイアス電流を参照して遅延時間を発生させるため、電源ノイズに起因するノイズのパルス幅が小さい場合は、大きな電流値を参照して発生する遅延時間(ノイズ除去できる時間)は短くなる。逆に、電源ノイズに起因するノイズのパルス幅が大きい場合は、小さい電流値を参照して発生する遅延時間は長くなる。そのため、電源ノイズに起因する誤信号のパルス幅に対する遅延時間のマージンが不要となり、回路規模の小さなノイズ除去回路80で電源ノイズに起因する誤信号の出力を確実に抑制でき、電源検出回路の回路面積を削減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明にかかる電源検出回路は、電源ノイズに起因する誤信号の出力を確実に抑制しつつ回路面積を削減できるため、電源電圧の立ち上げ時または電源電圧が低位レベルになった場合にリセット信号を発生するリセット回路等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態1における電源検出回路の全体構成を示すブロック回路図
【図2】本発明の実施の形態1における基準電圧回路およびノイズ除去回路の構成例を示すブロック回路図
【図3】本発明の実施の形態1におけるノイズ除去回路の構成例を示す回路図
【図4】本発明の実施の形態2における基準電圧回路およびノイズ除去回路の構成例を示すブロック回路図
【図5】従来の技術における電源検出回路の全体構成を示すブロック回路図
【図6】従来の技術における基準電圧回路および基準電圧判別回路の構成例を示す回路図
【図7】従来の技術における電源ノイズによる誤信号発生時の各部の動作を示すタイミングチャート
【図8】従来の技術における電源電圧が低位レベルになった場合の各部の動作を示すタイミングチャート
【図9】従来の技術におけるノイズ除去回路の構成例を示す回路図
【符号の説明】
【0037】
10 電源出力回路
20,20a,20b 基準電圧回路
23 比較電圧生成部
30,30a 差動増幅回路
40 反転増幅回路
50 比較回路
60 基準電圧判別回路
70 出力固定回路
80 ノイズ除去回路
90 遅延回路
B 基準電圧
F 参照信号
Q 遅延信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧から生成した出力電圧を出力する電源出力回路と、
前記電源電圧が所定電圧であるときの前記電源出力回路の出力電圧に等しい基準電圧を出力する基準電圧回路と、
前記電源出力回路の出力電圧を前記基準電圧回路による基準電圧と比較し、電源電圧が所定電圧以下の場合は電源未検出信号を出力し、前記電源電圧が前記所定電圧よりも高いときは電源検出信号を出力する比較回路と、
前記基準電圧が安定状態にあるか否かを判別し、安定状態にあるときには安定信号を出力し、安定状態にないときには不安定信号を出力する基準電圧判別回路と、
前記不安定信号を入力したときには前記比較回路の出力信号を電源未検出時の出力である電源未検出信号に固定化し、前記安定信号を入力したときには前記固定化を停止する出力固定回路と、
遅延回路を内蔵し、この遅延回路の遅延作用により前記出力固定回路の出力信号に重畳しているノイズを除去するノイズ除去回路とを備えた電源検出回路であって、
前記ノイズ除去回路内の前記遅延回路は、前記基準電圧回路の内部所定部位の電流値を参照して遅延信号を生成するように構成されている電源検出回路。
【請求項2】
前記ノイズ除去回路内の前記遅延回路は、前記基準電圧回路の内部所定部位の電流値として、抵抗とダイオードで構成された比較電圧生成部に流れる電流値を参照する請求項1に記載の電源検出回路。
【請求項3】
前記ノイズ除去回路内の前記遅延回路は、前記基準電圧回路の内部所定部位の電流値として、差動増幅回路に流れる電流値を参照する請求項1に記載の電源検出回路。
【請求項4】
前記ノイズ除去回路は、
前記基準電圧回路の内部所定部位に電流を供給するMOSトランジスタのソース端子にソース端子が接続され、前記基準電圧回路の内部所定部位に電流を供給するMOSトランジスタのゲート端子にゲート端子が接続されてカレントミラーを構成するMOSトランジスタと、
前記カレントミラーを構成するMOSトランジスタから電流が供給される1個または複数個のインバータ回路により構成される遅延回路と、
前記出力固定回路の出力信号を一方の入力端子に入力し、前記出力固定回路の出力信号を前記遅延回路により遅延した信号を他方の入力端子に入力して、電源検出時の出力信号を前記遅延回路による遅延時間だけ維持して出力する論理回路とを備える請求項1から請求項3までのいずれかに記載の電源検出回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−93562(P2010−93562A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261760(P2008−261760)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】