説明

電磁弁

【課題】複数の爪部を曲折させるにあたって固定鉄心に生ずる変形等の不都合を抑制し得る電磁弁を提供する。
【解決手段】胴部30の軸方向一端部に設けられた複数の第1爪部31を内方へ曲折することで第1固定鉄心23と一緒にヨーク21をバルブボディ11に結合させてなる電磁弁において、第1爪部31における根元部と先端部との間に、胴部30の周方向両側から凹部33,33を切欠形成すると共に、これら両凹部33,33間に構成される狭幅部31aを、第1固定鉄心23に対して軸方向から当接するバルブボディ11のフランジ部13の外側端縁13aと同じ軸方向位置か、又は当該フランジ部13の外側端縁13aよりも胴部30側の軸方向位置に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば内燃機関のバルブタイミング制御装置に適用され、流体圧の制御に供する電磁弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電磁弁としては、例えば以下の特許文献1に記載されたようなものが提案されている。
【0003】
この電磁弁は、所定の金属材からなる筒状のケース内に収容されるコイルの内周側に可動鉄心が進退自在に配置され、かつ、前記ケースの各軸方向端部に固定鉄心が配置されることによって構成されるソレノイドを備え、かかるソレノイドは、前記ケースの各端部に設けられた複数の爪部を内方へと変形(曲折)させることで、当該ケースと前記各固定鉄心とを結合するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−71359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の電磁弁では、前記複数の爪部の内側面が固定鉄心の外端縁に当接することで、当該各爪部が内方へと曲折するようになっている。このため、これら各爪部の肉厚や長さ、これに基づいて設定される入力荷重等によっては、当該各爪部が固定鉄心の外端縁に対し強く当接(圧接)することとなり、この結果、固定鉄心に変形等の不都合が生じてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであって、複数の爪部を曲折させるにあたって固定鉄心に生ずる変形等の不都合を抑制し得る電磁弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、胴部の軸方向一端部に設けられた複数の爪部を内方へと曲折することによって固定鉄心と一緒にケースをバルブボディに結合させてなる電磁弁において、前記各爪部における根元部と先端部の間に、胴部の周方向両側から凹部を切欠形成すると共に、該両凹部間の最も狭い部位を、固定鉄心に対して軸方向から当接するバルブボディの外側端縁と同じ軸方向位置か、又はバルブボディの外側端縁よりも胴部側の軸方向位置に設けたことを特徴としている。
【0008】
また、前記凹部は、前記各爪部の両側のほか、当該各爪部の内側面に設けることとしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各爪部の先端側に入力が生ずると、当該各爪部では前記両凹部の近傍に応力集中が発生することとなり、これによって、当該各爪部の先端側を、前記両凹部間に構成される狭幅部(脆弱部)を曲折点として内方へと容易に傾倒させることが可能となる。この結果、前記入力が固定鉄心に与える変形等の悪影響を抑制することができる。
【0010】
また、前記凹部を各爪部の内側面に設けた場合であっても、前記各爪部先端側への入力に基づいて当該凹部に応力集中が発生し、これによって、当該凹部に基づき構成される薄肉部(脆弱部)を曲折点として各爪部の先端側を容易に傾倒することが可能となる。その結果、前記各爪部の両側に凹部を設けた場合と同様、前記入力が固定鉄心に与える変形等の悪影響の抑制に供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る電磁弁が適用されるバルブタイミング制御装置の油圧供給回路図である。
【図2】図1に示す電磁弁の分解斜視図である。
【図3】図2に示す電磁弁の組立完了状態を表した図であって、図1に示す電磁弁の斜視図である。
【図4】図3に示す電磁弁をA方向から見た矢視図である。
【図5】図3に示す電磁弁をB方向から見た矢視図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る図3に示す電磁弁の要部拡大図である。
【図7】同実施形態に係る電磁弁の組立工程を示す図であり、(a)はケースのかしめ前を、(b)はケースのかしめ後を、それぞれ現した電磁弁の要部拡大断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態の変形例に係る電磁弁の要部拡大図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る電磁弁の要部拡大図である。
【図10】図9のC−C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電磁弁の各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、下記の各実施形態では、この電磁弁を、従来と同様、内燃機関(エンジン)の油圧式バルブタイミング制御装置に適用したものを示している。
【0013】
まず、本発明に係る電磁弁が適用される油圧式バルブタイミング制御装置について説明すれば、このバルブタイミング制御装置は、図1に示すように、図示外のエンジンのクランクシャフトからタイミングチェーンを介して回転駆動されるタイミングスプロケット1と、該タイミングスプロケット1に対し相対回動可能に設けられたカムシャフト2と、該カムシャフト2とタイミングスプロケット1との間に介装され、油圧によって当該両者1,2の相対位相を変更する位相変更機構3と、該位相変更機構3の油圧を給排に供する油圧給排手段4と、該油圧給排手段4の作動を制御する電子コントロールユニット5と、を備えている。
【0014】
前記位相変換機構3は、タイミングスプロケット1の内周側に一体に設けられた円筒状のハウジング6と、カムシャフト2の一端部に軸方向から固定され、ハウジング6内に回転自在に収容されたベーンロータ7と、から主として構成されている。すなわち、ハウジング6の内周側に突設された、ベーンロータ7の環状基部7bの外周面に摺接する例えば4つのシュー6aと、ベーンロータ7の外周側に突設された、前記各シュー6aに対応する4つのベーン7aと、によって隔成される遅角側油室Pr及び進角側油室Paに油圧を給排することで、ハウジング5に対するベーンロータ7の相対位相が変化し、これによって、タイミングスプロケット1(前記クランクシャフト)に対するカムシャフト2の相対位相が変更されるようになっている。なお、前記各ベーン7aの1つには、最遅角側におけるベーンロータ7の自由な回転を拘束するロック機構3aが設けられていて、エンジンの始動時やアイドル運転時等の安定化が図られている。
【0015】
前記油圧給排手段4は、オイルパン8内に貯留された作動油を圧送する油圧供給源であるポンプ9と、該ポンプ9によって圧送された作動油を電子コントロールユニット5からの制御信号に応じて遅角室Pr又は進角室Paの一方に供給すると共に他方の作動油をオイルパン8へと導く流路切替弁である電磁弁SVと、該電磁弁SV及びオイルパン8と遅角室Pr及び進角室Paとを連通する油通路Lと、から主として構成されている。
【0016】
前記油通路Lは、電磁弁SVの後述する遅角ポートP1と位相変更機構3の遅角室Prとを連通し、該遅角室Prに対して作動油を給排する遅角通路L1と、電磁弁SVの後述する進角ポートP2と位相変更機構3の進角室Paとを連通し、該進角室Paに対して作動油を給排する進角通路L2と、オイルパン8とポンプ9の吸入口とを連通する吸入通路L0と、ポンプ9の吐出口と電磁弁SVの後述する導入ポートP3とを連通し、ポンプ9によって吐出された作動油を位相変更機構3側へと導く導入通路L3と、電磁弁SVの後述する排出ポートP4とオイルパン8とを連通し、排出ポートP4から排出された作動油をオイルパン8へと還流するドレン通路L4と、から構成され、電磁弁SVによって遅角通路L1及び進角通路L2と導入通路L3及びドレン通路L4とが選択的に切り替えられるようになっている。
【0017】
前記電磁弁SVは、いわゆるスライドスプール形の4ポート比例電磁式切換弁であって、図1〜図6に示すように、バルブボディ11内に軸方向移動可能に収容されたスプール12の軸方向位置に応じてバルブボディ11に設けられた後述する各ポートP1〜P4の連通状態を切り替えるスプールバルブ10と、該スプールバルブ10に結合され、電子コントロールユニット5からの制御電流に基づき発生する電磁力をもって可動鉄心25を介してスプール12を駆動する電磁ソレノイド20と、から主として構成され、後述するヨーク21の外周に設けられたブラケット21cを介してエンジンに取付固定される。
【0018】
前記スプールバルブ10は、そのほぼ全体が図示外のシリンダヘッドに嵌挿され、前記各通路L1〜L4に接続される後記の各ポートP1〜P4を有するバルブボディ22と、該バルブボディ22内に摺動自在に収容配置され、その軸方向位置によって前記各ポートP1〜P4の連通状態を切り替えるスプール23と、を備えている。
【0019】
前記バルブボディ11は、例えばアルミニウム等の非磁性金属材料によってほぼ円筒状に形成されていて、その一端部(図1中の左側の端部)に拡径形成されたフランジ部13を介して、電磁ソレノイド20の後述するヨーク21の一端部(図1中の右側の端部)に設けられた複数の第1爪部31をもって当該電磁ソレノイド20の一端部に結合されている。より具体的には、第1固定鉄心23に当接するバルブボディ11の一端部に、前記各第1爪部31の先端部(後述する第2拡幅部31c)を受容する環状の係止溝14が周方向に沿って切欠形成されると共に、該係止溝14が形成されることによって前記フランジ部13が構成されていて、このフランジ部13の外側端縁13aに前記各第1爪部31の先端部がそれぞれ係止することによって、バルブボディ11が第1固定鉄心23と共にヨーク21にカシメ固定されている。
【0020】
そして、かかるバルブボディ11の内周側には、スプール12を摺動自在に収容するスプール収容室15が軸線方向に沿って設けられると共に、その周壁には、遅角通路L1と接続する遅角ポートP1、進角通路L2と接続する進角ポートP2及び導入通路L3と接続する導入ポートP3が、それぞれ周方向に沿って一定の軸方向幅をもって貫通形成されると共に、その他端壁には、排出通路L4と接続する排出ポートP4が軸線方向に沿って貫通形成されている。なお、前記各ポートP1〜P3には、それぞれ異物の侵入を抑制するフィルタF1〜F3が設けられている。
【0021】
前記スプール12は、その軸方向位置に応じて進角、遅角ポートP1,P2と導入、排出ポートP3,P4との連通状態を選択的に切り替える2つの大径状の第1、第2ランド部12a,12bをもって、スプール収容室15内にて摺動自在に収容されている。なお、この際、スプール12とバルブボディ11の他端壁との間にはコイルスプリング16が弾装されていて、該コイルスプリング16をもって、常に第1固定鉄心23側に付勢された状態となっている。この結果、スプール12は、電磁ソレノイド20が非通電の状態ではスプール収容室15の図1中の左側端に位置し、電磁ソレノイド20に給電されることにより、コイルスプリング16の付勢力に抗してスプール収容室15の図1中の右側へと軸方向移動することとなる。
【0022】
より詳しくは、前記電磁ソレノイド20が非通電状態のときには、スプール12が図1中の左側端に位置することで、前記両ランド部12a,12b間の縮径部外周に隔成される環状通路17を介し遅角ポートP1と導入ポートP3が連通し、スプール12の内部に穿設された油通路18を介し進角ポートP2と排出ポートP4が連通する。一方、電磁ソレノイド20に給電されスプール12が図1中の右側端へと移動することにより、前記環状通路17を介し進角ポートP2と導入ポートP3が連通し、前記油通路18を介し遅角ポートP1と排出ポートP2が連通することとなる。
【0023】
前記電磁ソレノイド20は、磁性体によってほぼ円筒状に形成された本発明のケースに相当するヨーク21と、該ヨーク21の内周側に収容され、ボビン22aの外周にコイル22bを巻回してなるコイルユニット22と、その一端部に有する各フランジ部23b,24bを介してヨーク21の軸方向各端部に固定されると共に、その他端側の各筒状部23a,24aがコイルユニット22の内周側に収容されて互いに対峙するように配置された磁性体からなる第1固定鉄心23及び第2固定鉄心24と、第2固定鉄心24の内周側に摺動自在に収容配置された磁性体からなる可動鉄心25と、第1固定鉄心23の内周側に収容され、その一端面がスプール12の他端面に当接すると共に、その他端面が前記可動鉄心25の一端面に当接するように設けられた非磁性体からなるロッド26と、を備えている。
【0024】
前記ヨーク21は、板状の磁性金属材を丸めてその対向する周方向両端部を互いに接合することにより、コイルユニット22の外周を囲繞するような円筒状に構成されている。具体的には、周方向一端部に突設された嵌合凸部21aを、他端部に切欠形成された嵌合凹部21bに嵌合することにより、軸方向両端が開放された胴部30が構成されている。このように、ヨーク21を、板材を丸めて周方向両端部を接合することによって構成することで、当該ヨーク21の良好な生産性を確保することができる。さらに、このヨーク12の軸方向各端には、それぞれ周方向に所定の間隔を隔てて配置される複数(本実施形態では4つ)の第1爪部31及び第2爪部32が突設されていて、第1爪部31についてはバルブボディ11のフランジ部13の外側端縁13aに、第2爪部32については第2固定鉄心24のフランジ部24bの外側端縁に、それぞれ係止するようにカシメ固定されている。
【0025】
前記第1、第2爪部31,32は、それぞれ胴部30の軸方向各端において当該胴部30の軸方向に沿うように凸状に延設され、かつ、周方向ほぼ0°及び180°の各位置近傍に偏倚して対をなすかたちで配置されている。また、第1爪部31は、その長手方向のほぼ中間位置、具体的には電磁弁SVの組立時においてバルブボディ11のフランジ部13の外側端縁13aと重合する軸方向位置の両側に厚さ幅方向へ沿って断面が円弧(半円)状となるように切欠形成された一対の凹部33,33が設けられることによって構成される狭幅部31aと、該狭幅部31aを挟んで長手方向両側に設けられた、根元部(胴部30)側の第1拡幅部31b及び先端側の第2拡幅部31cと、から構成されている。一方、第2爪部32には、第1爪部31のように前記凹部33,33が設けられておらず、ほぼ一定幅をもって構成されている。
【0026】
前記狭幅部31aは、その最も狭い部分の幅寸法W1が前記各拡幅部31b,31cの幅寸法W2のおよそ2/3程度となるように設定され、第1爪部31において当該狭幅部31aの剛性が最も低くなるように構成されている。これにより、ヨーク21をバルブボディ11に固定するにあたって第1爪部31をカシメ加工する際には、当該狭幅部31aを曲折点として第2拡幅部31cが内側に曲折されることとなる。
【0027】
また、前記第2拡幅部31cには、その先端両側部に、先端側へと向かって幅寸法W2を漸次縮小するような一対の面取り部34,34が設けられると共に、その先端外側部にも、先端側へと向かって厚さ幅を漸次縮小するような面取り部35が、その幅方向の全体に亘って設けられている。
【0028】
前記第1、第2固定鉄心23,24は、例えば鉄等の磁性金属材料によってほぼ円筒状に形成されたもので、相互に対峙するかたちで配置され、それぞれコイルユニット22の内周側に収容される筒状部23a,24aと、該筒状部23a,24aの外端部にそれぞれ段差拡径状に設けられたフランジ部23b,24bと、を有している。そして、第1固定鉄心23は、ヨーク21の第1爪部31をカシメ加工することでフランジ部23bを介してボビン22aとバルブボディ11とによって挟持状態に固定されると共に、ヨーク21の周壁に磁気結合されている。一方、第2固定鉄心24も、ヨーク21の第2爪部32をカシメ加工することでフランジ部24bを介してボビン22aと一緒に共締め状態に固定されると共に、ヨーク21の周壁に磁気結合されている。
【0029】
具体的には、第1、第2固定鉄心23,24のフランジ部23b,24bが胴部30とほぼ同じ外径に設定されていて、当該各フランジ部23b,24bには、それぞれ第1、第2爪部31,32に対応するように、その周方向ほぼ0°及び180°の位置近傍に偏倚して対をなすかたちで4つの円弧状をなす切欠溝27,28が設けられている。そして、これら各切欠溝27,28は、その周方向幅W3が前記各爪部31,32の幅寸法(第1爪部31については第1拡幅部31bの幅寸法)W2よりも僅かに大きくなるように設定されると共に、その深さ幅Dが前記各爪部31,32の厚さ幅Tとほぼ同じに設定されることによって当該各切欠溝27,28がバルブボディ11のフランジ部13とほぼ同じ外径となるように構成されていて、当該各切欠溝27,28にそれぞれ前記各爪部31,32が嵌合可能となっている。
【0030】
前記コイルユニット22は、樹脂材料によりほぼ円筒状に形成されたボビン22aの外周にコイル22bが巻回されてなるもので、ヨーク21の他端部に固定された樹脂製のコネクタ22c及びこれに接続される図示外のハーネスを介して電子コントロールユニット5に接続されている。そして、この電子コントロールユニット5から給電されることで、ヨーク21、第1、第2固定鉄心23,24及び可動鉄心25により磁路が形成され、第1固定鉄心23と可動鉄心25の間に磁気吸引力が発生することとなる。
【0031】
ここで、前記電子コントロールユニット5は、機関の回転数を検出するクランク角センサや吸入空気量を検出するエアフローメータ等の各種センサ類からの信号に基づいて機関運転状態を検出し、該機関運転状態に応じて電磁弁SVのコイル22に制御電流を給電し又はこれを遮断することで、前述したような各ポートP1〜P4の切り替え(油通路Lの切り替え)が行われる。
【0032】
前記可動鉄心25は、例えば鉄等の磁性金属材料によって第2固定鉄心24の内径よりも僅かに小さい外径を有するほぼ円筒状に形成されたものであって、第2固定鉄心24の筒状部24a内周に非磁性体からなるキャップ29を介してほぼ同軸上に配置され、第1固定鉄心23の先端部に穿設された凹部23cとの間においていわゆるエアギャップ(メインギャップ)が形成されるようになっている。また、この可動鉄心25の内周部には、所定の内径に設定されたいわゆる呼吸孔25aが当該可動鉄心25の軸線方向に沿って貫通形成されていて、前記呼吸孔25aを通じてメインギャップに充満した作動油を第2固定鉄心24側へ逃がすことで、当該作動油中における当該可動鉄心25の軸方向移動が確保されている。すなわち、可動鉄心25は、第2固定鉄心24の内周側において、その周壁にガイドされるようにして当該第2固定鉄心24に対して相対移動可能となっており、コイル22の通電時には、第1固定鉄心23に形成される磁束によって当該第1固定鉄心23側へと吸引されることで、その一端(図1中の右方向端)が第1固定鉄心23の凹部23c内側面に当接するまでの範囲内で軸方向移動するようになっている。
【0033】
前記ロッド26は、例えばステンレスやアルミニウム等の非磁性材料により可動鉄心25側へと開口する有底円筒状に形成されたものであり、前記コイルスプリング16の付勢力に基づくスプール12からの押圧力をもって可動鉄心25と一体となって移動するようになっている。また、このロッド26の外周には、径方向内側へと窪む軸方向溝26aが周方向にほぼ等間隔に設けられていると共に、当該各軸方向溝26aの第2固定鉄心24側の端部には、ロッド26の内外周を連通する連通孔26bが径方向に沿って貫通形成されていて、スプールバルブ10側から前記各軸方向溝26aへと流入した作動油を前記各連通孔26bを通じてロッド26の内周側へと逃がし、さらにこのロッド26の内周部を通じて可動鉄心25の呼吸孔25aへと逃がすことで、作動油中におけるロッド26の軸方向移動が確保されている。
【0034】
以下、前記電磁弁SVの組立工程、特にヨーク21のカシメ工程について、図7に基づいて詳述する。
【0035】
まず、前記ヨーク21内に、コイルユニット22を収容した後、筒状部23aの内周にロッド26が収容された第1固定鉄心23を、第1爪部31を対応する切欠溝27に嵌合させるようにして、当該ヨーク21の内端側開口部から嵌挿する。
【0036】
続いて、図7(a)に示すように、前記ヨーク21の内端側開口部にバルブボディ11の一端部を嵌挿し、そのフランジ部13の外端面を、第1固定鉄心23のフランジ部23bの外端面に当接させ、第1爪部31の先端部が径方向においてバルブボディ11の係止溝14と重合するように当該第1爪部31の先端部(第2拡幅部23c)を前記係止溝14に臨ませる。
【0037】
その後、図7(b)に示すように、前述したカシメ加工に供するポンチ40をもって、第1爪部31の先端部(第2拡幅部31c)を軸方向から押圧し、面取り部35を介して当該押圧力を内方(径方向内側)へ作用させる。すると、第1爪部31では、かかる押圧力に基づき両凹部33,33の近傍に応力集中が発生することとなり、これによって、当該両凹部33,33の近傍であって第1爪部31において最も剛性の低い狭幅部31aが曲折点となって、従来のように第1固定鉄心23に対して過大な負荷を作用させることなく、当該狭幅部31aより先端側の第2拡幅部31cをバルブボディ11の係止溝14へと係入するように内方へ傾倒させることができる。これにより、第2拡幅部31cの内側面全体が前記係止溝14の内面、すなわち前記フランジ部13の内側面へと圧接することとなり、バルブボディ11に対しヨーク21を強固に締結させることが可能となる。
【0038】
同様に、前記第2固定鉄心24側についても、筒状部24a内周に可動鉄心25が収容された第2固定鉄心24を、第2爪部32を対応する切欠溝28に嵌合させるようにして、当該ヨーク21の外端側開口部から嵌挿した後、第1爪部31側と同様に、ポンチ40をもって第2爪部32の先端部(第2拡幅部31c)を軸方向から押圧して、当該第2拡幅部31cを内方へと傾倒させることによって、この第2拡幅部31cの内側面のほぼ全体を第2固定鉄心24のフランジ部24bの外側面(切欠溝28の内周縁部)へと圧接させることが可能となり、この結果、第2固定鉄心24に対してもヨーク21を強固に締結させることができる(図4、図5参照)。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る電磁弁SVによれば、前記第1爪部31において、被係止部となるバルブボディ11のフランジ部13と重合する位置に前記両凹部33,33を設けたことにより、当該第1爪部31の先端側からの入力に伴って前記両凹部33,33の近傍に応力集中が発生することとなり、これによって、従来のように第1固定鉄心23に対し過大な負荷を作用させることなく、第1爪部31の先端側(第2拡幅部31c)を、前記両凹部33,33間に構成される最も剛性の低い狭幅部31aを曲折点として内方(径方向内側)へと容易に傾倒させることができる。
【0040】
換言すれば、前述のような応力集中が発生することによって、狭幅部31aと比べて剛性の高い第1拡幅部31bにて前記狭幅部31aにおける曲折変形(前記狭幅部31aよりも先端側の傾倒変形)を支持させることが可能となり、これによって、前記ポンチ40による第1爪部31先端側からの入力に基づき第1固定鉄心23のフランジ部23bに直接又は間接的に作用する荷重を低減させることができ、この結果、当該ポンチ40からの入力が第1固定鉄心23のフランジ部23bへと与える変形等の悪影響を抑制することができる。
【0041】
しかも、この際、前記両凹部33,33を、バルブボディ11のフランジ部13の外側端縁13aと径方向において重合する位置に設けたことによって、前述した第1爪部31の曲折にあたって、フランジ部13の外側端縁13a、すなわちフランジ部13の外側端の角部を支点とすることが可能となるため、当該第1爪部31の曲折を一層容易に行うことができる。その結果、前記第1固定鉄心23に及ぼす変形等の悪影響の効果的な抑制に供される。
【0042】
さらに、前記電磁弁SVでは、前記バルブボディ11のフランジ部13と、第1固定鉄心23のフランジ部23bにおける切欠溝27の溝底面と、が連続する平滑面を形成するように(ほぼ面一となるように)構成したことから(図7参照)、第1爪部31が第1固定鉄心23のフランジ部23aに直接作用させる荷重を最小限に抑えることが可能となり、これによって、当該第1固定鉄心23に及ぼす変形等の悪影響をより効果的に抑制することができる。
【0043】
また、前記両凹部33,33については、半径がほぼ一定の円弧(半円)状となるように構成したことによって、プレス成型に係る当該凹部33,33の加工性を向上させることができる。
【0044】
さらに、前記第1爪部31の根元部から両凹部33,33までの第1拡幅部31bにつき、その延出方向において幅寸法W2がほぼ同一となるように構成したことから、前記第1拡幅部31bの剛性を最大限に確保することが可能となり、これによって、当該第1拡幅部31bにおける前記第1爪部31の曲折変形の効果的な支持に寄与することができる。
【0045】
加えて、前記第2拡幅部31cについては先細りとなるように構成したことから、第1爪部31の良好な加工性の確保にも供される。
【0046】
図8は本発明に係る電磁弁の第1実施形態の変形例を示したものであって、前記第1実施形態に係る凹部33,33の形状を変更したものである。なお、かかる構成以外の基本的構成については前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成及び作用については、当該第1実施形態と同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
【0047】
すなわち、本実施形態に係る電磁弁SVでは、ヨーク21の第1爪部31に設けられた両凹部36,36が、非円形となる曲線状、より具体的には図示のような幅寸法と深さ寸法とが異なるU字形状となるように形成されていて、狭幅部31aの幅寸法W1が前記両拡幅部31b,31cの幅寸法W2のおよそ1/2となるように構成されている。
【0048】
かかる構成によれば、ほぼ半円状に形成された前記第1実施形態に係る凹部33,33に比べて、前記狭幅部31aの幅寸法W1がより小さくなって当該狭幅部31aの剛性のさらなる低減化が図れると共に、当該凹部36,36における前記応力集中を一層高めることが可能となる。これにより、前記狭幅部31aを曲折点として第1爪部31の先端側(第2拡幅部31c)を一層容易に傾倒させることが可能となって、前記ポンチ40による入力が第1固定鉄心23へと与える変形等の悪影響をさらに抑制することができる。
【0049】
図9及び図10は本発明に係る電磁弁の第2実施形態を示したものであって、前記第1実施形態に係る凹部33の配置を変更したものである。なお、かかる構成以外の基本的構成については前記第1実施形態と同様であるため、当該第1実施形態と同一の構成及び作用については、当該第1実施形態と同一の符号を付すことによってその説明を省略する。
【0050】
すなわち、本実施形態に係る電磁弁SVでは、ヨーク21の第1爪部31において、前記両凹部33,33を廃止し、代わりに、当該両凹部33,33が形成された長手方向位置(バルブボディ11のフランジ部13の外側端縁13aと径方向において重合する軸方向位置)における第1爪部31の内側面に、その幅方向に沿うように当該第1爪部31の幅方向全体に亘って、前記両凹部33,33と同様のほぼ半円状の断面形状を有する凹部37が切欠形成されている。
【0051】
そして、このような構成から、第1爪部31では、前記凹部37が設けられてなる薄肉部31dの剛性が最も低くなるように構成されている。これにより、ヨーク21をバルブボディ11に固定するにあたって、第1爪部31をカシメ加工する際には、当該薄肉部31dを曲折点として第2拡幅部31cが内方(径方向内側)へ傾倒することとなる(図10中の破線参照)。
【0052】
このように、本実施形態に係る電磁弁SVによれば、当該電磁弁SVの組立時においてヨーク21をバルブボディ11へとカシメ加工する際、前記ポンチ40をもって第1爪部31の先端部を押圧することで、前記凹部37にて応力集中が発生することとなり、これによって、当該凹部37により最も剛性が低くなる薄肉部31dを曲折点として、第1爪部31の当該凹部37より先端側(第2拡幅部31c)を内方へと容易に傾倒させることができる。
【0053】
したがって、本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様、前記ポンチ40による入力が第1固定鉄心23のフランジ部23bへと与える変形等の悪影響を抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、前記凹部37が第1爪部31の幅方向全体に亘って設けられていることから、前記薄肉部31dの剛性を効果的に低下させることができ、第2拡幅部31cを一層容易に変形させることが可能となる。これにより、前記第1爪部31の変形が第1固定鉄心23に及ぼす悪影響のさらなる低減化に供される。
【0055】
さらに、前記凹部37は、その横断面がほぼ円弧状となるように構成されていることから、当該凹部37における過度な応力集中を抑制することが可能となり、これによって、第1爪部31の破損等の不具合も回避することができる。
【0056】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば前記各凹部33,36,37は、必ずしも前記バルブボディ11のフランジ部13の外側端縁13aとほぼ同じ軸方向位置に形成されている必要はなく、径方向において当該フランジ部13と重合する軸方向位置であれば、任意の軸方向位置に設定可能である。
【0057】
そして、前記各実施形態に係るヨーク21のカシメによる固定構造は、前記電磁弁SV以外のものにも広く適用することができる。
【0058】
前記実施の形態から把握される特許請求の範囲における各請求項に記載した発明以外の技術的思想について、以下に説明する。
【0059】
(a)請求項1に記載の電磁弁において、
前記凹部を構成する円弧の半径は一定となっていることを特徴とする電磁弁。
【0060】
かかる構成とすることで、当該凹部の加工性の向上が図れる。
【0061】
(b)請求項1に記載の電磁弁において、
前記各爪部は、前記根元部から前記凹部にかけてほぼ同一の周方向幅に設定されていることを特徴とする電磁弁。
【0062】
かかる構成とすることで、各爪部の根元部側の剛性を最大限に確保することが可能となるため、各爪部の曲折変形にあたって、当該各爪部の曲折変形を、その根元部側において効果的に支持させることができる。
【0063】
(c)前記(b)に記載の電磁弁において、
前記各爪部の先端部は、先細り状に形成されていることを特徴とする電磁弁。
【0064】
かかる構成とすることで、当該各爪部の良好な加工性の確保に供される。
【0065】
(d)前記(c)に記載の電磁弁において、
前記各爪部の先端部は、先細りテーパ状に形成されていることを特徴とする電磁弁。
【0066】
かかる構成とすることで、当該各爪部の良好な加工性の確保に供される。
【0067】
(e)請求項1に記載の電磁弁において、
前記ケースは、板部材を筒状に丸めて周方向両端部を接合することによって構成されていることを特徴とする電磁弁。
【0068】
かかる構成とすることで、当該ケースの良好な生産性を確保することが可能となる。
【0069】
(f)請求項1に記載の電磁弁において、
前記ケースは、磁性体によって構成されていることを特徴とする電磁弁。
【0070】
(g)請求項3に記載の電磁弁において、
前記凹溝は、前記各爪部の幅方向全体に亘って設けられていることを特徴とする電磁弁。
【0071】
かかる構成とすることで、前記各爪部を一層容易に変形させることが可能となり、これによって、当該各爪部の変形が固定鉄心に与える影響をさらに低減することができる。
【0072】
(h)請求項3に記載の電磁弁において、
前記凹溝は、前記各爪部の内側に設けられていることを特徴とする電磁弁。
【0073】
かかる構成とすることで、前記各爪部を内方へ容易に変形させることが可能となり、これによって、当該各爪部の変形が固定鉄心に与える影響をさらに低減することができる。
【0074】
(i)請求項3に記載の電磁弁において、
前記凹溝は、その横断面がほぼ円弧状となるように構成されていることを特徴とする電磁弁。
【0075】
かかる構成とすることで、当該凹溝における過度な応力集中を抑制することが可能となり、これによって、前記各爪部の破損等の不具合の回避に供される。
【0076】
(j)第1部材に設けられた複数の爪部を第2部材側へと変形させることによって前記第1部材に前記第2部材を固定する複数の爪部を用いた固定構造であって、
前記各爪部の根元部と先端部の間に、当該各爪部の幅方向両側から円弧状の凹部が切欠形成されると共に、
前記凹部間の最も狭い部位が、前記第2部材の外側端縁と同じ軸方向位置か又は前記第2部材の外側端縁よりも前記各爪部の根元側の軸方向位置に設けられていることを特徴とする複数の爪部を用いた固定構造。
【符号の説明】
【0077】
SV…電磁弁
11…バルブボディ
12…スプール
21…ヨーク
22b…コイル
23,24…第1、第2固定鉄心(固定鉄心)
25…可動鉄心
30…胴部
31…第1爪部(複数の爪部)
33…凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状に巻回されたコイルと、
前記コイルの外周側を包囲するように設けられて、軸方向の少なくとも一端側に開放された胴部と、該胴部の開放端に一体に形成された複数の爪部と、によって構成された磁性体からなるケースと、
前記コイルの内周側に軸方向へ移動自在に配置された可動鉄心と、
前記胴部の開放端に配設された固定鉄心と、
前記爪部を内方へと変形させることで前記固定鉄心と一緒に前記胴部の開放端に固定される中空状のバルブボディと、
前記可動鉄心の軸方向移動に伴い前記バルブボディ内を軸方向へと移動するスプールと、を備え、
前記各爪部における根元部と先端部の間に、前記胴部の周方向両側から円弧状の凹部が切欠形成されると共に、
前記凹部間の最も狭い部位が、前記固定鉄心に対し軸方向から当接する前記バルブボディの外側端縁と同じ軸方向位置か又は前記バルブボディの外側端縁よりも前記胴部側の軸方向位置に設けられていることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
環状に巻回されたコイルと、
前記コイルの外周側を包囲するように設けられて、軸方向の少なくとも一端側に開放された胴部と、該胴部の開放端に一体に形成された複数の爪部と、によって構成された磁性体からなるケースと、
前記コイルの内周側に軸方向へ移動自在に配置された可動鉄心と、
前記胴部の開放端に配設された固定鉄心と、
前記爪部を内方へと変形させることで前記固定鉄心と一緒に前記胴部の開放端に固定される中空状のバルブボディと、
前記可動鉄心の軸方向移動に伴い前記バルブボディ内を軸方向へと移動するスプールと、を備え、
前記各爪部における根元部と先端部の間に、前記胴部の周方向両側から曲線状に切り欠かれた凹部が形成されると共に、
前記凹部間の最も狭い部位が、前記固定鉄心に対し軸方向から当接する前記バルブボディの外側端縁と同じ軸方向位置か又は前記バルブボディの外側端縁よりも前記胴部側の軸方向位置に設けられていることを特徴とする電磁弁。
【請求項3】
環状に巻回されたコイルと、
前記コイルの外周側を包囲するように設けられて、軸方向の少なくとも一端側に開放された胴部と、該胴部の開放端に一体に形成された複数の爪部と、によって構成された磁性体からなるケースと、
前記コイルの内周側に軸方向へ移動自在に配置された可動鉄心と、
前記胴部の開放端に配設された固定鉄心と、
前記爪部を内方へと変形させることで前記固定鉄心と一緒に前記胴部の開放端に固定される中空状のバルブボディと、
前記可動鉄心の軸方向移動に伴い前記バルブボディ内を軸方向へと移動するスプールと、を備え、
前記各爪部における根元部と先端部の間に、該各爪部の幅方向に延びる凹溝が切欠形成されると共に、
前記凹溝が、前記固定鉄心に対し軸方向から当接する前記バルブボディの外側端縁と同じ軸方向位置か又は前記バルブボディの外側端縁よりも前記胴部側の軸方向位置に設けられていることを特徴とする電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−87873(P2013−87873A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229321(P2011−229321)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】