説明

電磁式アクチュエータと該電磁式アクチュエータを用いた能動型制振器および能動型防振用マウント

【課題】 十分な駆動力を効率的に得ることが出来る新規な構造の電磁式アクチュエータを、高い耐久性能を備えつつ、大型化することなく提供すること。
【解決手段】 出力軸方向に直交して延びるアーム部39を備えた内ヨーク部材36に対して、コイル38を巻回せしめて、コイル38への通電によってアーム部39の端面に内側磁極が形成されるようにすると共に、内ヨーク部材36に対して相対変位可能に外挿配置されて出力軸方向に延びる筒状部を備えた外ヨーク部材48に対して永久磁石50,52,54,56を取り付けて、内側磁極に対して出力軸方向で偏倚した外側磁極を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁極間の磁気力によって駆動力を発生させる電磁式アクチュエータと、かかる電磁式アクチュエータを用いた能動型制振器および能動型防振用マウントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車に採用される能動的防振装置等に用いられて駆動力を発生するアクチュエータとしては、永久磁石とコイルを用いて、コイルへの供給電流を制御することによって、生ぜしめられる駆動力としての電磁力や磁力を制御するようにしたものが好適に採用される。このようなアクチュエータとしては、例えば、特許文献1(特開平6−235438)や特許文献2(特開平8−312718)にも記載されているように、永久磁石によって形成された磁界中にコイルを配設して通電することにより、ローレンツ力や電磁力を利用して加振力を得るようにしたボイスコイル型のアクチュエータが提案されている。
【0003】
しかしながら、このようなボイスコイル型のアクチュエータでは、得られる駆動力が小さく、十分な加振力を得ようとすると、消費電力や発熱等の他、高価な永久磁石の使用量増加によるコストの増大や、アクチュエータそのものの大型化等が問題となり易かった。
【0004】
そこで、比較的少ない永久磁石や消費電力量によって、十分な加振力を得るために、特許文献3(特開平6−33987)に記載されているように、電磁石の磁力を利用して駆動力を得るようにしたアクチュエータも提案されている。
【0005】
このような電磁石型のアクチュエータにおいては、ボイスコイル型のアクチュエータと同様に、コイルへの通電を制御することにより発生加振力の周波数や位相等を高精度に制御することが出来ることに加えて、ボイスコイル型のアクチュエータに比して、より大きな駆動力を効率的に得ることが可能となる。
【0006】
ところが、かかる電磁石式のアクチュエータでは、出力ストロークの大きさに応じて発生駆動力が大きく変化してしまうために、出力ストロークが大きい場合に十分に駆動力を得ることが難しいだけでなく、出力ストロークを考慮した発生駆動力の調節が難しいという問題があった。
【0007】
すなわち、相互に対向位置せしめられて対をなす磁極間に生じる引張力/排斥力の強さは、磁極間距離の二乗に反比例して変化することが良く知られている。それ故、特許文献3に示されているような電磁石型のアクチュエータにおいて、出力部材の変位に伴って電磁石と永久磁石の相対距離が変化すると、それら電磁石と永久磁石の間に作用する磁力に基づいて出力部材に及ぼされている駆動力が、出力部材の変位量の二乗に反比例して大きく変化してしまうことが避けられないのであり、目的とする大きさの駆動力を安定して得ることが難しいのである。
【0008】
また、特許文献4(特開2004−56972)には、その図6〜7及び図8において、出力軸方向に対して直交する方向で対向位置する磁極面を固定子と可動子の間に形成した電磁式アクチュエータが提案されている。
【0009】
しかしながら、この特許文献4の図6〜7及び図8に開示された電磁式アクチュエータでは、中央に配設された可動子の周りを囲むようにして外側に配設された大型の固定子に対して、更に複数個のコイルを装着した構造となっていることから、電磁式アクチュエータの全体サイズがかなり大型化してしまうことが避けられない。
【0010】
加えて、中央に配設された可動子も、中空の円筒形状とされていることから、外径サイズが大きくなってしまい、それに伴って、可動子の周りに配設される固定子のサイズ、即ち電磁式アクチュエータの全体サイズもより一層大きくなってしまうという問題があった。
【0011】
さらに、特許文献4の図6〜7や図8に記載されている電磁式アクチュエータでは、固定子と可動子の重量バランスのチューニング自由度が制限されてしまうという問題があった。例えば、電磁式アクチュエータを加振器や防振装置等の駆動手段として採用する場合に、共振作用を効果的に利用して大きな加振力を得るために可動子の重量を大きくする設定が要求される場合があるが、配設スペース等の制約からサイズが制限された電磁式アクチュエータにおいて、固定子の更に内部に位置する可動子は、大型化して重量を大きくすることが極めて難しかった。また一方、電磁式アクチュエータ全体を小型化しようとしても、外側に配設された固定子に対してコイルが装着されており、このコイルを保護するために更に保護カバーを設けなければならないことから、全体サイズの小型化や軽量化が非常に難しいという問題もあったのである。
【0012】
しかも、特許文献4の図6〜7や図8に記載の電磁式アクチュエータでは、固定子の周りを囲む環状の固定子に複数のコイルが装着されていることから、それら複数のコイルへの通電によって発生する磁力を効率的に利用することが難しいという問題もあった。即ち、特許文献4に記載の電磁アクチュエータでは、何れも、環状の固定子において内周面に向かう磁極を形成する必要があることから、固定子の外周面からの磁束の漏れが発生し易く、それ故、磁力を利用した駆動力を可動子に対して十分に効率的に作用せしめることが難しかったのである。
【0013】
【特許文献1】特開平6−235438
【特許文献2】特開平8−312718
【特許文献3】特開平6−33987
【特許文献4】特開2004−56972
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、十分な駆動力を効率的に且つ安定して得ることが出来る新規な構造の電磁式アクチュエータを、高い耐久性能を備えつつ、大型化することなく提供することにある。
【0015】
また、本発明は、かかる電磁式アクチュエータを用いて構成された新規な構造を有する能動型制振器および能動型防振用マウントを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意な組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0017】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第1の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第1の態様は、(a)出力軸方向に直交して軸直角方向に延びるアーム部を有する強磁性材製の内ヨーク部材と、(b)該内ヨーク部材のアーム部に対して巻回されて通電により該アーム部の軸直角方向の突出先端面に内側磁極を形成するコイルと、(c)出力軸方向に延びる筒状部を有しており、前記内ヨーク部材に対して出力軸方向で相対変位可能に外挿配置された強磁性材製の外ヨーク部材と、(d)該外ヨーク部材に組み付けられて、前記アーム部の軸直角方向の突出先端面に対して軸直角方向で離隔して対向位置せしめられる該外ヨーク部材の内周面部位において、該アーム部に形成される前記内側磁極に対して出力軸方向で偏倚した外側磁極を形成して、これら内側磁極と外側磁極の対向面間に作用せしめられる磁力に基づいて該内ヨーク部材と該外ヨーク部材の間に出力軸方向での駆動力を及ぼす永久磁石とを含んで構成したことを、特徴とする。
【0018】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、コイルが巻回される内ヨーク部材が出力軸方向で相対変位可能とされた外ヨーク部材に周りを囲まれるようにして出力軸直交方向の内方に配置されている。これにより、コイルが直接的に外部に露出することが防止されるため、外部の他部材との接触等によるコイルの破損を有利に回避することが可能となる。
【0019】
さらに、外ヨーク部材が内ヨーク部材に対して外挿配置されていることにより、コイルへの通電によって内ヨーク部材に形成される磁束の外部への漏出を効果的に抑えることが出来て、内側磁極の磁気力を有利に確保することが出来るため、大きな駆動力を効率よく発生させることが可能となる。
【0020】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第2の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記内ヨーク部材と前記外ヨーク部材とを出力軸方向で相対変位可能に弾性連結する弾性連結手段を設けたことを、特徴とする。
【0021】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、コイルに通電が為されておらず、内側磁極が形成されていない状態において、弾性連結手段の弾性力によって内ヨーク部材と外ヨーク部材の相対的な位置を初期位置に位置決めして保持する作用を期待できる。また、弾性連結手段によって内ヨーク部材と外ヨーク部材が弾性連結されていることにより、予め内外ヨーク部材を一体的に組みつけておくことが可能となる。それ故、搬送時や保管時において取り扱いが容易となる。
【0022】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第3の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様係る電磁式アクチュエータにおいて、前記内側磁極と前記外側磁極との対向部位を挟んだ出力軸方向の両側に位置してそれぞれ略軸直角方向に広がり前記内ヨーク部材と前記外ヨーク部材を互いに弾性的に連結する複数の弾性連結部材を設けて、これらの弾性連結部材を含んで前記弾性連結手段を構成したことを、特徴とする。
【0023】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、弾性連結手段が略軸直角方向に広がる複数の弾性連結部材を含んで構成されている。それ故、内ヨーク部材と外ヨーク部材の軸方向での相対変位を容易に許容せしめつつ、軸直角方向での高精度な位置決め機能を発揮することが出来て、内側磁極と外側磁極との対向面間距離を高精度に設定、維持して安定した駆動性能を得ることが出来る。また、内側磁極と外側磁極の対向部位を挟んだ出力軸方向の両側に弾性連結部材を配置したことにより、軸直角方向やこじり方向での相対変位を有効に防ぐことが出来て、一層の性能の安定化を図ることが可能となる。
【0024】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第4の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第4の態様は、前記第1乃至第3の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記内ヨーク部材を装着対象部材に対して固定するための固定手段を設けることにより、該内ヨーク部材と前記コイルとを含んで内側固定子を構成すると共に、前記外ヨーク部材と前記永久磁石を含んで該内側固定子に対して軸方向で相対変位可能な外側可動子を構成したことを、特徴とする。
【0025】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、内側固定子がコイルを含んで構成されることにより、破損し易いコイルが駆動せしめられることがなく、他部材との接触等によるコイルの破損を防いで耐久性の向上を図ることが出来る。また、コイルを固定子側に配設したことにより、可動子側に通電する必要がなく、通電用配線の駆動による断線を回避することが可能となる。
【0026】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第5の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第5の態様は、前記第4の態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記内ヨーク部材から出力軸方向に延びる固定軸を設けて、該固定軸を利用して前記固定手段を構成する一方、前記外ヨーク部材を、底壁部を備えた有底筒体形状として、その軸方向一方の開口部を通じて該内ヨーク部材の前記固定軸を外方に突出せしめたことを特徴とする。
【0027】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、外ヨーク部材を有底筒体形状としたことにより、コイルを巻回された内ヨーク部材に形成される磁束の漏れを一層有利に低減することが出来る。また、有底筒体形状とされた外ヨーク部材によって他部材との接触によるコイルの破損が一層有利に防がれ得る。なお、有底筒体形状とされた外ヨーク部材の底壁部を利用して、外ヨーク部材と出力部材(加振部材)とを相互に連結する連結手段を有利に構成することが可能である。
【0028】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第6の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第6の態様は、前記第1乃至第5の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記アーム部が、軸直角方向に直線的に延びる1本のロッド状アーム部によって構成されており、該ロッド状アーム部の軸方向両端面に相反する極性を有する前記内側磁極が形成されるようになっていることを、特徴とする。
【0029】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、内ヨーク部材を直線的に延びる1本のロッド状アーム部によって構成したことにより、内ヨーク部材の形状が簡単なものとなり、製造が容易になる。また、棒状の内ヨーク部材を採用することで、磁束の漏れを一層有利に防ぐことが出来て、駆動性能の向上を図ることが可能となる。
【0030】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第7の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第7の態様は、前記第1乃至第5の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記アーム部が、中央部分から軸直角方向外方に向かって放射状に突出する3本以上の放射状アーム部によって構成されていることを、特徴とする。
【0031】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、3本以上の複数のアーム部を形成することにより、内側磁極と外側磁極の対向面数を増やすことが出来て、より強力な駆動力を得ることが出来る。しかも、アーム部を軸直角方向外方に向かって放射状に突出する放射状アーム部とすることにより、筒状部を有する形状とされた外ヨーク部材の内周側の空間を巧く利用して電磁式アクチュエータのサイズの大型化を回避しつつ、駆動力の強化を図ることが出来る。
【0032】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第8の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第8の態様は、前記第1乃至第7の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記アーム部の突出先端部分が、前記コイルの巻回された部分から突出していると共に、突出方向に対して略直交する方向に向かって傘状に広がった形状を有していることを、特徴とする。
【0033】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、内側磁極の形成されるアーム部の突出先端部分を傘状に広げることにより、内側磁極と外側磁極の面積を大きく取ることが出来て、駆動力の強化を図ることが出来る。
【0034】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第9の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第9の態様は、前記第1乃至第8の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記外ヨーク部材が略円筒形状とされている一方、該外ヨーク部材の内周面に形成された外側磁極と、前記アーム部の突出先端面に形成された前記内側磁極とが、互いに対応して周方向に円弧状に湾曲した湾曲面形状とされていることを、特徴とする。
【0035】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、内側磁極と外側磁極が互いに対応する周方向に湾曲した湾曲面形状とされていることにより、内側磁極と外側磁極の互いに対向する面積を大きく取ることが出来る。それ故、大きな駆動力を容易に得ることが出来る。
【0036】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第10の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第10の態様は、前記第1乃至第9の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記外ヨーク部材の内周面に対して前記永久磁石が固着されており、この永久磁石の磁極面によって前記外側磁極が形成されていることを、特徴とする。
【0037】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、永久磁石の磁気力を最大限に生かして外側磁極を形成することが出来て、効率的に駆動力を得ることが出来る。
【0038】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第11の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第11の態様は、前記第1乃至第10の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、前記外側磁極において、前記内ヨーク部材における前記アーム部の中央線を挟んで出力軸方向両側で互いに反対の極性をもった磁極が形成されていることを、特徴とする。
【0039】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、外側磁極において、内側磁極に対して対向位置する中央線を挟んで出力軸方向両側で互いに反対の極性をもった磁極が形成されていることにより、内側磁極が、外側磁極の一方の極性をもった部分との間に吸引力を生じると共に、他方の極性をもった部分との間に排斥力を生じることとなる。これにより、吸引力と排斥力による駆動力が内ヨーク部材と外ヨーク部材の出力軸方向への相対的な変位が生じても略一定に保たれる。即ち、内側磁極と外側磁極の距離に応じて発生される駆動力の大きさが変化することとなるが、本態様によれば、内ヨーク部材と外ヨーク部材との相対変位に伴って、吸引力が徐々に増大する一方、排斥力は徐々に減少する。それ故、吸引力と排斥力による駆動力の合計は、内ヨーク部材と外ヨーク部材との相対変位に関らず略一定に保たれることとなって、常に安定した駆動力を発揮することが出来る。
【0040】
(電磁式アクチュエータに関する本発明の第12の態様)
電磁式アクチュエータに関する本発明の第12の態様は、前記第11の態様に係る電磁式アクチュエータにおいて、複数の前記アーム部の各突出先端面に形成された互いに反対の極性をもった前記内側磁極に対してそれぞれ対向位置する前記外側磁極において、該内側磁極の極性の相違に応じて、出力軸方向両側に位置する極性が互いに反対とされていることを、特徴とする。
【0041】
このような本態様に従う構造とされた電磁式アクチュエータにおいては、外側磁極において、内側磁極の極性の相違に応じて、出力軸方向両側に位置する極性が互いに反対とされていることによって、コイルに通電することによって複数のアーム部の各突出先端面に形成される内側磁極とかかる内側磁極にそれぞれ対向位置する外側磁極との間において、全ての対向面間で略同一の出力軸方向への駆動力が生み出されることとなる。それ故、出力軸方向への効率的な駆動を実現することが出来る。
【0042】
(能動型制振器に関する本発明の第1の態様)
能動型制振器に関する本発明の第1の態様は、防振対象部材に装着されることにより、該防振対象部材に加振力を及ぼして能動的な制振作用を発揮する能動型制振器であって、電磁式アクチュエータに関する本発明の前記第1乃至第12の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータを用い、前記内ヨーク部材を前記防振対象部材に対して固定的に取り付けるようにしたことを、特徴とする。
【0043】
このような本態様に従う構造とされた能動型制振器においては、大きな加振力を効率的に得ることが出来ると共に、耐久性の向上や小型化をも実現することが可能となる。
【0044】
(能動型制振器に関する本発明の第2の態様)
能動型制振器に関する本発明の第2の態様は、前記第1の態様に係る能動型制振器において、前記内ヨーク部材と前記外ヨーク部材を連結せしめて、それら内ヨーク部材と外ヨーク部材の軸方向の相対変位に際して略剪断変形せしめられる弾性連結ゴムを設けたことを、特徴とする。
【0045】
このような本態様に従う構造とされた能動型制振器においては、内ヨーク部材と外ヨーク部材の軸方向の相対変位によって生じる弾性連結ゴムの弾性力の作用により、加振力をより有利に得ることが可能となる。
【0046】
(能動型防振用マウントに関する本発明の第1の態様)
能動型防振用マウントに関する本発明の第1の態様は、相互に連結されることにより振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成すると共に、該受圧室の壁部の別の一部を加振部材で構成し、該加振部材に加振力を及ぼすアクチュエータを設けて、該アクチュエータで該加振部材を加振駆動することにより該受圧室の圧力を能動的に制御するようにした能動型防振用マウントにおいて、前記アクチュエータとして電磁式アクチュエータに関する本発明の前記第1乃至第12の何れかの態様に係る電磁式アクチュエータを用い、該電磁式アクチュエータにおける前記内ヨーク部材を前記第二の取付部材に対して固定する固定手段を設ける一方、前記外ヨーク部材を前記加振部材に連結する連結手段を設けて、該電磁式アクチュエータにおける出力軸方向の駆動力を該加振部材に対する加振力として作用せしめるようにしたことを、特徴とする。
【0047】
このような本態様に従う構造とされた能動型防振用マウントにおいては、必要とする加振力を効率的に得ることが出来ると共に、耐久性の向上や小型化をも実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0048】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた電磁式アクチュエータにあっては、内ヨーク部材と外ヨーク部材の間に十分な相対変位力を効率的に且つ安定して得ることが出来ると共に、電磁式アクチュエータ自体の耐久性の向上や小型化をも同時に実現することが出来る。
【0049】
また、本発明に従う構造とされた電磁式アクチュエータを用いた能動型制振器及び能動型防振用マウントにあっては、従来の能動型制振器及び能動型防振用マウントに比して、サイズの大型化を必要とすることなく、十分な加振力を高効率で得ることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0051】
まず、図1,図2には、本発明の第一の実施形態として、能動型制振器としての加振器10が示されている。加振器10は、全体として中空の略円柱形状の収容ケース12に対して、電磁式アクチュエータ14等が収容されて構成されている。なお、以下の説明において、上下(鉛直)方向とは図1における上下方向を、左右(水平)方向とは図1における左右方向をそれぞれ示すものとする。
【0052】
収容ケース12は底部金具16,筒状周壁金具18,蓋板金具20によって構成される。かかる底部金具16は、全体として略浅底皿形状を有している。また、底部金具16の周壁の一箇所が切り欠かれて切欠部22が形成されていると共に、周壁の一部には径方向外方に広がる周壁連結フランジ24が形成されている。そして、かかる底部金具16には、支持金具26が内挿状態で取り付けられている。支持金具26は、略浅底の皿形状を有しており、その下面の外周縁部には、下方に突出して略全周に亘って延びる脚部28が形成されており、脚部28より径方向中央側において、支持金具26の底面が底部金具16に対して離隔せしめられている。また、脚部28の底面には全周に亘って溝が形成されており、かかる溝に円環形状の滑止ゴム30が嵌め付けられている。
【0053】
そして、この支持金具26の上に電磁式アクチュエータ14が載置される。この電磁式アクチュエータ14は、内側固定子32と内側固定子32に対して出力軸方向で相対変位可能とされた外側可動子34を有している。
【0054】
より詳細には、内側固定子32は、内ヨーク部材としてのインナヨーク金具36とインナヨーク金具36に固定的に取り付けられるコイル38を含んで構成される。インナヨーク金具36は、鉄などの強磁性材によって形成されて水平方向に延びる棒状のロッド状アーム部39によって構成されている。また、インナヨーク金具36には、コイル38が固定的に取り付けられている。かかるコイル38は、略円筒形状のコイルボビン40に巻回されてコイル部材42を構成しており、コイル部材42がインナヨーク金具36に外挿状態で固定されることにより、コイル38がインナヨーク金具36のロッド状アーム部39に取り付けられる。更に、図2に示されているように、インナヨーク金具36においてコイル38から突出した両端部分は、インナヨーク金具36の中心軸に対して略直交する水平方向に広がっていると共に、両端が略円弧状に湾曲した湾曲面とされて、それぞれ第一磁極部44及び第二磁極部46とされている。そして、コイル38に対して外部から通電されると、コイル38が生じる磁界の作用により、強磁性体によって形成されたインナヨーク金具36の軸方向両端部の第一磁極部44及び第二磁極部46がそれぞれ互いに反対の極性に着磁されて、内側磁極が形成される。
【0055】
一方、外側可動子34は、外ヨーク部材としてのアウタヨーク金具48と第一〜第四の永久磁石50,52,54,56を含んで構成される。アウタヨーク金具48は、全体として略有底円筒形状で、鉄などの強磁性材によって形成されている。かかるアウタヨーク金具48は、インナヨーク金具36に対して軸方向で相対変位可能とされており、インナヨーク金具36の外方を囲むように離隔配置されいる。また、アウタヨーク金具48は、その中心軸がインナヨーク金具36の中心軸と略直交するように配設されている。そして、アウタヨーク金具48の内周面において、インナヨーク金具36の軸方向両端部に対向する位置には、第一〜第四の永久磁石50,52,54,56が固着せしめられている。
【0056】
かかる4つの永久磁石50,52,54,56は、その外周面がアウタヨーク金具48の内周面に沿う形状とされると共に、その内周面が第一,第二磁極部44,46の端面の湾曲形状に沿う形状とされた湾曲板形状であって、アウタヨーク金具48の内周面においてインナヨーク金具36の軸方向両端面に対向する部位にそれぞれ二個ずつ配設されている。即ち、インナヨーク金具36における第一磁極部44とアウタヨーク金具48の径方向で対向する部位には、第一及び第三の永久磁石50,54が配設されている一方、第二磁極部46とアウタヨーク金具48の径方向で対向する部位には、第二,第四の永久磁石52,56が配設されている。また、第一の永久磁石50と第三の永久磁石54及び第二の永久磁石52と第四の永久磁石56は、アウタヨーク金具48の軸方向、即ち上下方向で、それぞれ互いに密着して重ね合わせられて、第一,第二磁極部44,46に対して対向位置する中央線を挟んで出力軸方向両側に配設されている。
【0057】
特に、本実施形態においては、第一の永久磁石50と第四の永久磁石56には、アウタヨーク金具48の径方向内方の面にN極が着磁されている一方、第二の永久磁石52,第三の永久磁石54には、アウタヨーク金具48の径方向内方の面にS極が着磁されている。換言すれば、第一乃至第四の永久磁石50,52,54,56は、それぞれアウタヨーク金具48の径方向に位置する面に着磁されており、上下に重ね合わせて配設された第一の永久磁石50と第三の永久磁石54及び第二の永久磁石52と第四の永久磁石56が、アウタヨーク金具48の径方向内方に、それぞれ互いに相反する磁極を着磁されていると共に、径方向で対向位置する永久磁石、即ち、第一,第二の永久磁石50,52及び第三,第四の永久磁石54,56が、アウタヨーク金具48の径方向内方に、それぞれ互いに相反する磁極を着磁されるように、第一〜第四の永久磁石50,52,54,56が配置されている。
【0058】
そして、アウタヨーク金具48の内周面に永久磁石50,52,54,56が配設されることにより、内側磁極に対して軸方向に偏倚せしめられた外側磁極が形成されている。
【0059】
このように構成された電磁式アクチュエータ14は、そのインナヨーク金具36に対して固定されて、アウタヨーク金具48の軸方向下方へ延び出す固定軸としての内ヨーク固定部材58が、支持金具26に対してボルトによって固設されることにより、支持金具26に対して固定される。また、支持金具26の径方向中央には、その上面に第一板ばね支持金具60がボルトによって固設される。かかる第一板ばね支持金具60は、略円板形状とされた弾性連結部材としての第一板ばね62の径方向中央部に取り付けられて、第一板ばね62が軸直角方向に広がって配設されるように支持している。また、かかる第一板ばね62は、外周縁部において電磁式アクチュエータ14の外側可動子34を構成するアウタヨーク金具48の下端面に固設されており、外側可動子34の駆動時に、外側可動子34が内側固定子32に対して駆動方向に略直角な方向およびこじり方向へ相対変位することを防ぐ一方、第一板ばね62の弾性力を駆動力として補助的に利用できるようにされている。
【0060】
また、支持金具26に対して電磁式アクチュエータ14を配設した状態において、コイル38の下方に位置する支持金具26の一部には、電極挿通孔64が形成されており、かかる電極挿通孔64には、支持金具26の下方から電極66が挿通せしめられる。かかる電極66は、図示しない外部電源から電源コード68を通じて給電されて、電極66に接続されたコイル38を通電せしめる。なお、支持金具26の脚部28の一部に電源コード68を挿通せしめるための横穴70が形成されていると共に、かかる横穴70が、底部金具16の周壁における切欠部22と周方向で位置合わせされており、横穴70と切欠部22を通って電源コード68が外部に延出せしめられている。
【0061】
また、支持金具26には、全体として略筒形状の筒状周壁金具18が電磁式アクチュエータ14と略同一の中心軸上に配設されている。かかる筒状周壁金具18は、第一周壁金具72と第二周壁金具74を含んで構成されており、第一,第二周壁金具72,74にそれぞれ形成された第一,第二ケース連結フランジ76,78がボルトによって締結されて一体的に連結されている。
【0062】
第一周壁金具72は、その下部が支持金具26に外挿状態で取り付けられる略円筒形状の金属製部材である。そして、第一周壁金具72は、電磁式アクチュエータ14における外側可動子34の径方向外方を全周に亘って覆っており、第一周壁金具72の内周面に固設された摺動部材79が外側可動子34の外周面に当接せしめられている。かかる摺動部材79はフッ素樹脂などの摩擦係数の小さな樹脂材によって構成されており、外側可動子34の軸方向への駆動を案内する案内機能を発揮する。また、その下端部に形成された底部金具連結フランジ80が底部金具16の周壁連結フランジ24にボルトにより締結されることによって第一周壁金具72が底部金具16と連結されている。更に、第一周壁金具72の下部には、位置決め段差82が形成されており、位置決め段差82より上方が下方に比して小径とされている。そして、かかる位置決め段差82が支持金具26の側壁上面に当接することによって、支持金具26が第一周壁金具72と底部金具16の間で挟圧支持されて固定されている。更にまた、第一周壁金具72は、電磁式アクチュエータ14の径方向外方を全周に亘って覆っている一方、その上部が、径方向内方に向かって傾斜せしめられていると共に、その上端部が、径方向内方に向かって延出せしめられている。
【0063】
また、第一周壁金具72の外周面上部には、連結フランジ金具84が外挿状態で溶接されて固設されている。かかる連結フランジ金具84は、略円筒形状の部材で、その上部が径方向外方に屈曲せしめられて第一ケース連結フランジ76とされている。かかる第一ケース連結フランジ76が、第二周壁金具74の下端部に形成された第二ケース連結フランジ78とボルトによって締結されて、第一周壁金具72と第二周壁金具74とを連結せしめて、全体として筒状周壁金具18を構成している。
【0064】
第二周壁金具74は、全体として略円筒形状であって、上端部及び下端部がそれぞれ径方向外方に屈曲せしめられて、蓋板連結フランジ86及び第二ケース連結フランジ78が形成されている。
【0065】
ところで、第二周壁金具74の径方向内方には、第二周壁金具74と略同一中心軸上で径方向に離隔して連結手段としての加振ロッド88が配置される。かかる加振ロッド88は、アウタヨーク金具48と一体的に形成されて、アウタヨーク金具48の上底部上面の中央部に形成された位置決め凹所90の中央から上方に向かって突出せしめられる先端部にねじ山を形成されたロッドであって、加振金具92が外挿状態で取り付けられている。
【0066】
加振金具92は、略円筒形状であって、軸方向中央付近に段差部94を有している。かかる段差部94より下方の小径部96にストッパ部材98,上段中央支持金具100,弾性連結部材としての第二板ばね102,下段中央支持金具104がそれぞれ外挿されており、互いに軸方向に密接して固定的に組み付けられている。
【0067】
ストッパ部材98は、略円環板形状の金属板105の下面外周部にストッパゴム106が被着されて形成されている。また、ストッパ部材98の下方には、第一,第二ケース連結フランジ76,78の間にその外周部分が挟装されて固定された略逆皿形状のストッパ当接金具108が配設されている。そして、かかるストッパ当接金具108に対してストッパ部材98のストッパゴム106が当接せしめられることにより、外側可動子34の内側固定子32に対する軸方向での相対変位を弾性的に制限している。
【0068】
また、第二板ばね102は、軸直角方向に広がる略円環板形状の板ばねであって、その外周部がストッパ当接金具108と第一周壁金具72の間で上下の第二板ばね固定金具110を介して挟圧支持されている。
【0069】
また、上段中央支持金具100と下段中央支持金具104は、略円筒形状で上段中央支持金具100がストッパ部材98と第二板ばね102の間に軸方向で挟装されていると共に、下段中央支持金具104が、第二板ばね102とアウタヨーク金具48の間に軸方向で挟装されて、それぞれ固設されている。
【0070】
これらのストッパ部材98,上段中央支持金具100,第二板ばね102,下段中央支持金具104は、加振金具92に外挿された状態において、加振金具92の軸方向中央付近に形成された段差部94と位置決め凹所90の間において軸方向で挟圧されて固定的に支持されることとなる。即ち、ストッパ部材98が段差部94と上段中央支持金具100との間に挟装されると共に、第二板ばね102が上段中央支持金具100と下段中央支持金具104の間に挟装されて、それぞれ固定されている。
【0071】
一方、加振金具92における段差部94より上方の部分は、段差部94より下方の小径部96に比して大径の大径部112とされており、その上面には、ナット配設凹所114が形成されている。かかるナット配設凹所114の中央には、加振ロッド88の先端部でねじ山が形成された部分が突出しており、ナット配設凹所114内において、ナットに締結されることにより加振ロッド88と加振金具92が一体的に連結されている。
【0072】
また、大径部112の外周面には、弾性連結ゴムとしての弾性ゴム板116が被着形成されている。かかる弾性ゴム板116は、略円環板形状であって、その内周面が加振金具92における大径部112の外周面に対して固着されると共に、その外周面が第二周壁金具74の内周面に対して固着されており、加振金具92と筒状周壁金具18が弾性的に連結されている。
【0073】
そして、筒状周壁金具18の上部の開口は、蓋板金具20によって覆われている。蓋板金具20は、略円板形状で、その外周部分が第二周壁金具74の上部に形成された蓋板連結フランジ86と重ね合わせられて、ボルトによって連結されることにより、筒状周壁金具18に固定されている。また、蓋板金具20は、中央部が湾曲せしめられて上方に凸な凸状部118とされており、加振金具92との間に所定のクリアランスが確保されている。なお、加振金具92の上面において、ナット配設凹所114が形成されていない外周縁部には、弾性ゴム板116と一体的に形成された当接ゴム120が被着されており、加振金具92が蓋板金具20に当接せしめられた場合において、衝撃が緩和されるようになっている。
【0074】
このようにして構成された加振器10は、底部金具16が図示しない防振対象部材に対して固定されることにより、電磁式アクチュエータ14によって発生した加振力を防振対象部材に伝達して、目的とする能動的な制振効果を発揮する。
【0075】
ここにおいて、図示しない外部電源から電源コード68,電極66を通じてコイル38に電気が供給されると、通電されたコイル38が生じる磁束の作用によって、強磁性体で形成されたインナヨーク金具36が磁化されて、その軸方向両端、即ち第一磁極部44及び第二磁極部46にそれぞれ相反する磁極が形成される。そして、かかる磁極と第一乃至第四の永久磁石50,52,54,56との間に発生する吸引力/排斥力によって、外側可動子34が内側固定子32に対して相対的に変位せしめられる。
【0076】
具体的には、例えば、外部電源からコイル38に対して交流電流を供給して、先ず、図3に示す方向の電流がコイル38に流れた場合においては、コイル38によって発生する磁束によってインナヨーク金具36が磁化されて、第一磁極部44にN極が形成されると共に、第二磁極部46にS極が形成される。これにより、第一磁極部44と対向位置せしめられた第一及び第三の永久磁石50,54は、第一の永久磁石50が第一磁極部44との間に排斥力を生じると共に、第三の永久磁石54が第一磁極部44との間に吸引力を生じる一方、第二磁極部46と対向位置せしめられた第二及び第四の永久磁石52,56は、第二の永久磁石52が第二磁極部46との間に排斥力を生じると共に、第四の永久磁石56が第二磁極部46との間に吸引力を生じる。
【0077】
したがって、第一乃至第四の永久磁石50,52,54,56が配設されたアウタヨーク金具48(外側可動子34)は、インナヨーク金具36(内側固定子32)との間に生じる吸引力/排斥力によって、出力軸方向下向き、即ち図3における矢印122の方向に相対変位せしめられることとなる。
【0078】
次に、電流の向きが逆になって、図4に示す方向の電流がコイル38に流れた場合においては、コイル38によって生じる磁束によってインナヨーク金具36が磁化されて、第一磁極部44にS極が形成されると共に、第二磁極部46にN極が形成される。これにより、第一磁極部44と対向位置せしめられた第一及び第三の永久磁石50,54は、第一の永久磁石50が第一磁極部との間に吸引力を生じると共に、第三の永久磁石54が第一磁極部44との間に排斥力を生じる一方、第二磁極部46と対向位置せしめられた第二及び第四の永久磁石52,56は、第二の永久磁石52が第一磁極部との間に吸引力を生じると共に、第四の永久磁石56が第一磁極部44との間に排斥力を生じる。
【0079】
したがって、第一乃至第四の永久磁石50,52,54,56が固定されたアウタヨーク金具48(外側可動子34)は、インナヨーク金具36(内側固定子32)との間に生じる吸引力/排斥力によって、出力軸方向上向き、即ち図4における矢印124の方向に相対変位せしめられることとなる。
【0080】
而して、コイル38に交流電流が供給されて、コイル38に流れる電流の向きが交互に入れ替わることにより、上述の如き作動を繰り返すこととなって、外側可動子34が内側固定子32に対して相対的に、所定の振幅で上下方向への往復動を連続的に生じることとなる。
【0081】
このような本実施形態に従う構造とされた加振器10においては、加振手段として採用する電磁式アクチュエータ14においてコイル38を含んで構成される内側内側固定子32に対して外側可動子34を外挿状態で配設した。これにより、他部材との接触等によるコイル38の破損や電力供給用の配線の断線などを防ぐことが出来ると共に、インナヨーク金具36に形成される磁束の外部への漏出を低減乃至は回避することが出来て、電力の消費量を増やす等の特別な手段を講じることなく、十分な加振力を得ることが可能となる。
【0082】
また、軸方向と軸直角方向のばね剛性が著しく異なる金属製の板ばねを採用して、第一板ばね62によって外側可動子34の下部を支持すると共に,第二板ばね102によって外側可動子34の上部を支持している。それ故、軸方向での内側固定子32に対する外側可動子34の相対変位を容易に許容すると共に、軸直角方向では内側固定子32に対する外側可動子34の相対的な位置決め作用を発揮することが出来て、外側可動子34を内側固定子32に対して高精度に位置決めすることが出来る。従って、第一,第二磁極部44,46と第一〜第四の永久磁石50,52,54,56の対向面間距離が常に略一定に維持されて、安定した駆動力を得ることが出来る。更に、第一,第二板ばね62,100の弾性力を補助的な加振力として利用することも出来る。しかも、金属製の板ばねとしたことにより、熱や経時による変化が少なく、かかる位置決め機能を安定して発揮できる。
【0083】
また、インナヨーク金具36を一本の直線的な棒形状の部材で構成したことにより、製造が容易に出来ると共に、このような形状のインナヨーク金具36では、コイル38への通電によって形成されてインナヨーク金具36を磁化する磁束の外部への漏出が一層有利に防止される。
【0084】
また、第一〜第四の永久磁石50,52,54,56の磁極面と、第一磁極部44及び第二磁極部46の磁極面を、周方向に湾曲して互いに対応する曲面としたことにより、永久磁石50,52,54,56の磁極と第一,第二磁極部44,46の磁極の対向面積を大きく取ることが出来て、加振力を有利に得ることが出来る。
【0085】
さらに、インナヨーク金具36において、コイル38から突出せしめられた第一,第二磁極部44,46付近が、インナヨーク金具36の中心軸に対して略直角方向に広がっている。これにより、永久磁石50,52,54,56とインナヨーク金具36の磁極部44,46の対向面積を一層有利に確保できて、高い加振力を得ることが出来る。
【0086】
また、アウタヨーク金具48の内周面において、軸方向上下に密着して隣接するように第一,第三の永久磁石50,54および第二,第四の永久磁石52,56を配設すると共に、上下方向に隣接して配設された永久磁石が、アウタヨーク金具48の径方向で互いに反対の磁極の向きに着磁、配設されるようになっている。それ故、第一磁極部44および第二磁極部46と、上下の一方の永久磁石の間で吸引力が発生すると、他方との間においては排斥力が生じることとなる。従って、距離の二乗に反比例して大きさが変化する磁極間の磁気力を駆動力として利用しつつも、吸引力と排斥力の合計が内側固定子32と外側可動子34の相対的な位置関係に関らず略一定となり、安定した加振力を発揮することが出来る。
【0087】
さらに、アウタヨーク金具48の径方向で互いに対向位置せしめられた第一の永久磁石50と第二の永久磁石52が、径方向内方に互いに異なる極性を備えた磁極が位置するように着磁、配設されていると共に、同じく径方向で互いに対向位置せしめられた第三の永久磁石54と第四の永久磁石56が、径方向内方に互いに異なる極性を備えた磁極が位置するように着磁、配設されている。それ故、コイル38への通電によって互いに反対の極性を備えた磁極が形成される第一磁極部44と第二磁極部46との間に出力軸方向で同一方向の加振力を生じるように吸引力/排斥力が発生して、効率的に加振力を得ることが出来る。
【0088】
次に、図5には、本発明の第二の実施形態として、能動型防振用エンジンマウントとしての自動車用エンジンマウント126が示されている。このエンジンマウント126は、第一の取付部材としての第一の取付金具128と第二の取付部材としての第二の取付金具130が本体ゴム弾性体132によって弾性的に連結された構造とされており、第一の取付金具128が図示しない自動車のパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具130が図示しない自動車のボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持するようになっている。また、そのような装着状態下、第一の取付金具128と第二の取付金具130の間には、パワーユニットの分担荷重と、防振すべき主たる振動が、何れも、エンジンマウント126の略軸方向(図5中、上下方向)に入力されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、図5における上下方向をいうものとする。
【0089】
より詳細には、第一の取付金具128は、本体ゴムインナ金具134とダイヤフラムインナ金具136によって構成されていると共に、第二の取付金具130は、本体ゴムアウタ筒金具138とダイヤフラムアウタ筒金具140によって構成されている。そして、本体ゴム弾性体132に対して本体ゴムインナ金具134と本体ゴムアウタ筒金具138が加硫接着されて第一の一体加硫成形品142とされている一方、ダイヤフラムインナ金具136とダイヤフラムアウタ筒金具140が、可撓性膜としてのダイヤフラム144に対して加硫接着されて第二の一体加硫成形品146とされており、これら第一及び第二の一体加硫成形品142,146が相互に組み合わされている。
【0090】
ここにおいて、第一の一体加硫成形品142を構成する本体ゴムインナ金具134は、逆向きの略円錐台形状を有している。また、本体ゴムインナ金具134の上端面(大径側端面)には、嵌合凹部148が形成されていると共に、該嵌合凹部148の底面に開口するねじ穴150が設けられている。
【0091】
更にまた、本体ゴムアウタ筒金具138は、略大径円筒形状を有する筒壁部152を備えており、この筒壁部152の軸方向下端部には径方向外方に向かって広がるフランジ状部154が一体形成されている一方、筒壁部152の軸方向上端部分は、軸方向上方に行くに従って次第に拡開するテーパ筒状部156とされている。これによって、本体ゴムアウタ筒金具138の外周側には、外周面に開口して周方向に一周弱の長さで延びる周溝158が形成されている。そして、本体ゴムアウタ筒金具138の上方に離隔して、本体ゴムインナ金具134が略同一中心軸上で離隔配置されており、本体ゴムインナ金具134における逆テーパ形状の外周面と本体ゴムアウタ筒金具138におけるテーパ筒状部156の内周面が相互に離隔して対向位置せしめられており、これら本体ゴムインナ金具134と本体ゴムアウタ筒金具138の対向面間が、本体ゴム弾性体132によって弾性的に連結されている。
【0092】
かかる本体ゴム弾性体132は、全体として大径の円錐台形状を有しており、その中央部分には、本体ゴムインナ金具134が同軸的に配されて加硫接着されていると共に、その大径側端部外周面に対して本体ゴムアウタ筒金具138のテーパ筒状部156が重ね合わせられて加硫接着されている。これによって、本体ゴム弾性体132が、上述の如き本体ゴムインナ金具134および本体ゴムアウタ筒金具138を備えた第一の一体加硫成形品142として形成されている。
【0093】
また一方、第二の一体加硫成形品146を構成するダイヤフラムインナ金具136は、厚肉の円板形状を有している。また、ダイヤフラムインナ金具136の下面には、嵌合凸部160が形成されていると共に、該嵌合凸部160の形成部位を貫通して挿通孔162が形成されている。更にダイヤフラムインナ金具136には、上方に突出して取付板部164が一体形成されており、取付板部164の中央部分にはボルト挿通孔166が設けられている。
【0094】
また、ダイヤフラムアウタ筒金具140は、薄肉大径の円筒形状を有しており、その軸方向下側の開口部には、径方向外方に向かって広がる円環板形状のフランジ状部168が一体形成されており、更に、フランジ状部168の外周縁部には、軸方向下方に向かって突出する円環状のかしめ片170が一体形成されている。
【0095】
そして、ダイヤフラムアウタ筒金具140の軸方向上方に離隔して、ダイヤフラムインナ金具136が、略同一中心軸上に配設されており、それらダイヤフラムインナ金具136とダイヤフラムアウタ筒金具140が、ダイヤフラム144によって連結されている。
【0096】
ダイヤフラム144は、薄肉のゴム膜によって形成されており、容易に弾性変形が許容されるように大きな弛みを持った湾曲断面形状をもって周方向に延びる略円環形状を有している。そして、ダイヤフラム144の内周縁部が、ダイヤフラムインナ金具136の外周縁部に対して加硫接着されていると共に、ダイヤフラム144の外周縁部が、ダイヤフラムアウタ筒金具140の軸方向上側の開口部に加硫接着されている。これにより、ダイヤフラム144は、ダイヤフラムインナ金具136およびダイヤフラムアウタ筒金具140を備えた第二の一体加硫成形品146として形成されている。
【0097】
而して、かかる第二の一体加硫成形品146が、前述の第一の一体加硫成形品142に対して上方から重ね合わせられて組み付けられており、ダイヤフラムインナ金具136が本体ゴムインナ金具134に固着されていると共に、ダイヤフラムアウタ筒金具140が本体ゴムアウタ筒金具138に固着されており、更にダイヤフラム144が、本体ゴム弾性体132の外方に離隔して、本体ゴム弾性体132の外周面を全体に亘って覆うようにして配設されている。
【0098】
すなわち、ダイヤフラムインナ金具136が本体ゴムインナ金具134の上面に直接に重ね合わされて、ダイヤフラムインナ金具136の嵌合凸部160が本体ゴムインナ金具134の嵌合凹部148に嵌め込まれることによって、ダイヤフラムインナ金具136と本体ゴムインナ金具134が同一中心軸上に位置合わせされている。また、特に本実施形態では、嵌合凸部160と嵌合凹部148の各外周面に切欠状に形成された係合外周面50と係合内周面36の係合作用によって、ダイヤフラムインナ金具136と本体ゴムインナ金具134が周方向でも相互に位置決めされており、ダイヤフラムインナ金具136の挿通孔162と本体ゴムインナ金具134のねじ穴150が位置合わせされている。
【0099】
そして、図1に示されているように、本体ゴムインナ金具134とダイヤフラムインナ金具136を重ね合わせた状態下で、連結ボルト172が、ダイヤフラムインナ金具136の挿通孔162を通じて本体ゴムインナ金具134のねじ穴150に螺着されている。而して、これら本体ゴムインナ金具134とダイヤフラムインナ金具136が連結ボルト172で連結固定されることにより、第一の取付金具128が構成されている。
【0100】
一方、ダイヤフラムアウタ筒金具140は本体ゴムアウタ筒金具138に対して軸方向上方から外挿されている。また、本体ゴムアウタ筒金具138は、その下端部において、フランジ状部154の外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具140のフランジ状部168に対して軸方向に重ね合わされていると共に、その上端部において、テーパ筒状部156の開口端縁部がダイヤフラムアウタ筒金具140の内周面に対して径方向で重ね合わされている。
【0101】
そして、本体ゴムアウタ筒金具138のフランジ状部154の外周縁部に対して、ダイヤフラムアウタ筒金具140のかしめ片170がかしめ固定されることによって、本体ゴムアウタ筒金具138とダイヤフラムアウタ筒金具140が相互に固定されて組み付けられている。なお、これら本体ゴムアウタ筒金具138の上下両端部におけるダイヤフラムアウタ筒金具140との重ね合わせ部位には、それぞれ、本体ゴム弾性体132またはダイヤフラム144と一体成形されたシールゴムが介在されており、流体密にシールされている。これにより、本体ゴムアウタ筒金具138に形成された周溝158がダイヤフラムアウタ筒金具140で流体密に覆蓋されており、以て、本体ゴムアウタ筒金具138の筒壁部152とダイヤフラムアウタ筒金具140の径方向対向面間を周方向に所定長さで乃至は全周に亘って連続して延びる環状通路174が形成されている。
【0102】
さらに、本体ゴムアウタ筒金具138の下側開口部には、仕切板金具176と蓋部材178が組み付けられている。蓋部材178は、弾性連結ゴムとしての略円環板形状の支持ゴム板180に対して、その中央部分に加振部材としての加振板182が加硫接着されていると共に、その外周部分に環状保持金具184が加硫接着されており、それら加振板182と環状保持金具184が支持ゴム板180で弾性的に連結されている。
【0103】
加振板182は、円板形状を有しており、その外周縁部には上方に向かって突出する環状連結部186が一体形成されている。また、加振板182の中央部分には、下方に向かって延びる連結手段としての駆動軸188が一体形成されている。この駆動軸188は、加振板182の中心軸上を略一定の円形断面で直接的に延びている。なお、加振板182は、環状連結部186や駆動軸188を含んで、金属や合成樹脂等の硬質材で一体成形されている。一方、環状保持金具184は、円筒形状を有する筒状部190の上下開口部に対してそれぞれフランジ状に広がる取付板部192と加振器取付部194が一体形成されている。
【0104】
そして、環状保持金具184の径方向内方に離隔して略同一中心軸上に加振板182が配設されており、これら環状保持金具184と加振板182の径方向対向面間に広がるようにして支持ゴム板180が配設されている。また、かかる支持ゴム板180は、その内外周縁部が加振板182の環状連結部186と環状保持金具184の筒状部190の対向面に対してそれぞれ加硫接着されており、加振板182と環状保持金具184の間が支持ゴム板180で流体密に閉塞されている。要するに、支持ゴム板180は、その成形型のキャビティに対して、予め接着剤塗布等の接着処理を施した加振板182と環状保持金具184をセットせしめた状態下でゴム材料を充填して加硫成形することにより、それら加振板182と環状保持金具184が加硫接着された一体加硫成形品として形成されているのである。
【0105】
一方、仕切板金具176は、薄肉の円板形状を有しており、その外径寸法が、環状保持金具184における取付板部192の径方向外周部分まで至る大きさとされている。また、仕切板金具176の中央部分は、略台地状に上方に突出せしめられており、その中心軸上にオリフィス通孔196が貫設されている。
【0106】
そして、仕切板金具176は、ダイヤフラムアウタ筒金具140の下側開口部において、そこに組み付けられた本体ゴムアウタ筒金具138のフランジ状部154に対して外周部分が重ね合わされて組み付けられている。更に、ダイヤフラムアウタ筒金具140の下側開口部には、仕切板金具176の下方から蓋部材178が組み付けられており、蓋部材178における環状保持金具184の取付板部192が、仕切板金具176に重ね合わされて、それぞれの外周縁部がダイヤフラムアウタ筒金具140のかしめ片170によってかしめ固定されている。
【0107】
これにより、ダイヤフラムアウタ筒金具140の下側開口部が、蓋部材178で流体密に覆蓋されており、以て、本体ゴム弾性体132と蓋部材178の対向面間には、非圧縮性流体が封入された受圧室198が形成されている。この受圧室198は、壁部の一部が本体ゴム弾性体132で構成されており、第一の取付金具128と第二の取付金具130の間への振動入力時に本体ゴム弾性体132の弾性変形に基づいて振動が入力されて圧力変動が惹起されるようになっている。
【0108】
また、受圧室198は、仕切板金具176を挟んで、本体ゴム弾性体132側の振動入力室200と、蓋部材178側の加振室202に二分されていると共に、これら振動入力室200と加振室202がオリフィス通孔196で連通せしめられている。
【0109】
更にまた、本体ゴム弾性体132とダイヤフラム144が、それぞれの内周縁部と外周縁部において第一の取付金具128と第二の取付金具130に固着されることにより、本体ゴム弾性体132とダイヤフラム144の対向面間には、非圧縮性流体が封入された平衡室204が形成されている。即ち、この平衡室204は、壁部の一部が変形容易なダイヤフラム144で構成されており、該ダイヤフラム144の弾性変形に基づいて容易に容積変化が許容されるようになっているのである。なお、受圧室198や平衡室204に封入される非圧縮性流体としては、後述するオリフィス通路210を通じて流動せしめられる流体の共振作用等に基づく防振効果を自動車用のエンジンマウント126に要求される振動周波数域で効率的に得るために、一般に、0.1Pa.s以下の低粘性流体が好適に採用される。
【0110】
さらに、受圧室198と上側に形成された平衡室204には、第二の取付金具130内に形成された環状通路174の各一方の端部が連通孔206,208を通じて接続されており、それによって、受圧室198と平衡室204を相互に連通せしめて両室198,204間での流体流動を許容するオリフィス通路210が所定長さで形成されている。なお、オリフィス通路210は、振動入力時に受圧室198と平衡室204の間に惹起される圧力差に基づいて内部を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果が、例えばアイドリング振動等の特定の周波数域で有効に発揮されるように、その通路断面積や通路長さが適当に設定されてチューニングされている。
【0111】
また一方、蓋部材178を挟んで受圧室198と反対側には、アクチュエータとしての加振器212が配設されている。かかる加振器212は、第一の実施形態としての加振器(10)と同様な構造とされており、第一の実施形態としての加振器(10)と同様な構造とされた部材及び部位についてはそれぞれ、第一の実施形態と同一の符号を図中に付することによりそれらの詳細な説明を省略する。
【0112】
より詳細には、加振器212は図1に示された加振器(10)に比して、蓋板金具20及び加振金具92を備えておらず、本実施形態における駆動軸188が、第一の実施形態におけるアウタヨーク金具48から上方へ延びだして突出形成された加振ロッド88として加振板182と一体的に形成されている。また、前記第一の実施形態における第二周壁金具74として、本実施形態においては、環状保持金具184を利用している。即ち、環状保持金具184の下部開口に形成された加振器取付部194に加振器取付ボルト214の挿通孔を形成し、第一ケース連結フランジ76と重ね合わせられて加振器取付ボルト214によって固定されることにより、加振器212が蓋部材178の軸方向下方に固定的に配設されている。
【0113】
而して、エンジンマウント126は、図示されていないが、第一の取付金具128の取付板部164が、ボルト挿通孔166に挿通される固定ボルトでパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具130が、底部金具16及び筒状周壁金具18を介して固定ボルトで自動車ボデーに取り付けられることにより、振動伝達系を構成するパワーユニットとボデーの間に装着されることとなる。そして、かかる装着状態下、第一の取付金具128と第二の取付金具130の間に振動が入力されると、本体ゴム弾性体132の弾性変形に伴って受圧室198と平衡室204の間に惹起される圧力差に基づいてオリフィス通路210を通じて流体流動が生ぜしめられて、かかる流体の共振作用等の流動作用に基づいて受動的な防振効果が発揮される。また、防振すべき振動に応じた周波数や位相でコイル118への通電を制御して電磁加振器114で加振板182を加振駆動せしめることにより、加振室202からオリフィス通孔196を通じて振動入力室200に圧力変動を及ぼし、振動入力室200の圧力変動を能動制御することにより入力振動に対して能動的な防振効果を得ることが出来るのである。なお、本実施形態のエンジンマウント126における能動的防振作用は、周知のものであり、例えば、特開2004−293602等に開示されていることから、ここでは詳細な説明を省略する。
【0114】
このような本実施形態に従う構造とされたエンジンマウント126においては、必要とされる加振力を効率的に得ることが出来ると共に、耐久性の向上や小型化をも実現することが可能となる。
【0115】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0116】
例えば、前記第一、第二の実施形態において、インナヨーク金具36は直線状に延びる一本の棒材で構成されていたが、インナヨーク金具36は、放射状など複数のアーム部39を備えた各種の形状が採用され得る。具体的には、例えば、平面視で略十字形状とされたインナヨーク金具も採用され得る。また、その断面形状も適宜に変更され得る。
【0117】
また、前記第一,第二の実施形態において、アウタヨーク金具48は、略有底円筒形状とされていたが、各種の筒形状が採用され得る。
【0118】
また、前記第一,第二の実施形態においては、アウタヨーク金具48に対して4つの永久磁石50,52,54,56が取り付けられており、アウタヨーク金具48の軸方向において、第一,第三の永久磁石50,54が上下で互いに密着して隣接配置せしめられていると共に、第二,第四の永久磁石52,56が上下で互いに密着して隣接配置せしめられている。しかしながら、永久磁石50,52,54,56の配設個数や配置などは前記実施形態によって何等限定されるものではない。具体的には、例えば、永久磁石は必ずしも上下に隣接して配設される必要はなく、また、上下に並べて配設される場合においても、必ずしも互いに密着させて配置する必要はない。
【0119】
また、前記第一,第二の実施形態においては、金属製の板ばねである第一,第二の板ばね62,100を採用していたが、かかる板ばねはなくても良い。また、板ばねに代えてコイルスプリングを採用することも可能であるし、金属に代えてゴムを用いて同様の機能を発揮させることも出来る。
【0120】
また、収容ケース12の形状や構成などは、前記実施形態のものに何等限定されない。
【0121】
また、前記第一の実施形態において、本発明に従う構造とされた加振器10を示すと共に、前記第二の実施形態において、本発明に従う構造とされたエンジンマウント126を示したが、本発明は、その他、ボデーマウントやメンバマウント等、或いは自動車以外の各種装置におけるマウントや制振器などの防振装置や、そのような防振装置等に好適に用いられる電磁式アクチュエータに対して、同様に適用可能である。
【0122】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の第一の実施形態としての能動型制振器を示す縦断面図である。
【図2】図1に示された能動型制振器の横断面図である。
【図3】図1に示された能動型制振器における電磁式アクチュエータの作動を説明するための説明図である。
【図4】図1に示された能動型制振器における電磁式アクチュエータの作動を説明するための説明図である。
【図5】本発明の第二の実施形態としての能動型防振用マウントを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0124】
10 加振器
12 収容ケース
14 電磁式アクチュエータ
32 固定子
34 可動子
36 インナヨーク金具
38 コイル
39 アーム部
44 第一磁極部
46 第二磁極部
48 アウタヨーク金具
50 第一の永久磁石
52 第二の永久磁石
54 第三の永久磁石
56 第四の永久磁石
62 第一板ばね
88 加振ロッド
100 第二板ばね
116 弾性ゴム板
126 エンジンマウント
128 第一の取付金具
130 第二の取付金具
132 本体ゴム弾性体
180 支持ゴム板
182 加振板
188 駆動軸
198 受圧室
204 平衡室
210 オリフィス通路
212 加振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力軸方向に直交して軸直角方向に延びるアーム部を有する強磁性材製の内ヨーク部材と、
該内ヨーク部材のアーム部に対して巻回されて通電により該アーム部の出力軸直角方向の突出先端面に内側磁極を形成するコイルと、
出力軸方向に延びる筒状部を有しており、前記内ヨーク部材に対して出力軸方向で相対変位可能に外挿配置された強磁性材製の外ヨーク部材と、
該外ヨーク部材に組み付けられて、前記アーム部の軸直角方向の突出先端面に対して出力軸直角方向で離隔して対向位置せしめられる該外ヨーク部材の内周面部位において、該アーム部に形成される前記内側磁極に対して出力軸方向で偏倚した外側磁極を形成して、これら内側磁極と外側磁極の対向面間に作用せしめられる磁力に基づいて該内ヨーク部材と該外ヨーク部材の間に出力軸方向での駆動力を及ぼす永久磁石と
を含んで構成したことを特徴とする電磁式アクチュエータ。
【請求項2】
前記内ヨーク部材と前記外ヨーク部材とを出力軸方向で相対変位可能に弾性連結する弾性連結手段を設けた請求項1に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項3】
前記内側磁極と前記外側磁極との対向部位を挟んだ出力軸方向の両側に位置してそれぞれ略軸直角方向に広がり前記内ヨーク部材と前記外ヨーク部材を互いに弾性的に連結する複数の弾性連結部材を設けて、これらの弾性連結部材を含んで前記弾性連結手段を構成した請求項2に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項4】
前記内ヨーク部材を装着対象部材に対して固定するための固定手段を設けることにより、該内ヨーク部材と前記コイルとを含んで内側固定子を構成すると共に、前記外ヨーク部材と前記永久磁石を含んで該内側固定子に対して軸方向で相対変位可能な外側可動子を構成した請求項1乃至3の何れかに記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項5】
前記内ヨーク部材から出力軸方向に延びる固定軸を設けて、該固定軸を利用して前記固定手段を構成する一方、
前記外ヨーク部材を、底壁部を備えた有底筒体形状として、その軸方向一方の開口部を通じて該内ヨーク部材の前記固定軸を外方に突出せしめた請求項4に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項6】
前記アーム部が、軸直角方向に直線的に延びる1本のロッド状アーム部によって構成されており、該ロッド状アーム部の軸方向両端面に相反する極性を有する前記内側磁極が形成されるようになっている請求項1乃至5の何れかに記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項7】
前記アーム部が、中央部分から軸直角方向外方に向かって放射状に突出する3本以上の放射状アーム部によって構成されている請求項1乃至5の何れかに記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項8】
前記アーム部の突出先端部分が、前記コイルの巻回された部分から突出していると共に、突出方向に対して略直交する方向に向かって傘状に広がった形状を有している請求項1乃至7の何れかに記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項9】
前記外ヨーク部材が略円筒形状とされている一方、該外ヨーク部材の内周面に形成された外側磁極と、前記アーム部の突出先端面に形成された前記内側磁極とが、互いに対応して周方向に円弧状に湾曲した湾曲面形状とされている請求項1乃至8の何れかに記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項10】
前記外ヨーク部材の内周面に対して前記永久磁石が固着されており、この永久磁石の磁極面によって前記外側磁極が形成されている請求項1乃至9の何れかに記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項11】
前記外側磁極において、
前記内ヨーク部材における前記アーム部の中央線を挟んで出力軸方向両側で互いに反対の極性をもった磁極が形成されている請求項1乃至10の何れかに記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項12】
複数の前記アーム部の各突出先端面に形成された互いに反対の極性をもった前記内側磁極に対してそれぞれ対向位置する前記外側磁極において、該内側磁極の極性の相違に応じて、出力軸方向両側に位置する極性が互いに反対とされている請求項11に記載の電磁式アクチュエータ。
【請求項13】
防振対象部材に装着されることにより、該防振対象部材に加振力を及ぼして能動的な制振作用を発揮する能動型制振器であって、
請求項1乃至12の何れかに記載の電磁式アクチュエータを用い、前記内ヨーク部材を前記防振対象部材に対して固定的に取り付けるようにしたことを特徴とする能動型制振器。
【請求項14】
前記内ヨーク部材と前記外ヨーク部材を連結せしめて、それら内ヨーク部材と外ヨーク部材の軸方向の相対変位に際して略剪断変形せしめられる弾性連結ゴムを設けた請求項13に記載の能動型制振器。
【請求項15】
相互に連結されることにより振動伝達系を構成する一方の部材に取り付けられる第一の取付部材と他方の部材に取り付けられる第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結する一方、該本体ゴム弾性体によって壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された受圧室を形成すると共に、該受圧室の壁部の別の一部を加振部材で構成し、該加振部材に加振力を及ぼすアクチュエータを設けて、該アクチュエータで該加振部材を加振駆動することにより該受圧室の圧力を能動的に制御するようにした能動型防振用マウントにおいて、
前記アクチュエータとして請求項1乃至12の何れかに記載の電磁式アクチュエータを用い、該電磁式アクチュエータにおける前記内ヨーク部材を前記第二の取付部材に対して固定する固定手段を設ける一方、前記外ヨーク部材を前記加振部材に連結する連結手段を設けて、該電磁式アクチュエータにおける出力軸方向の駆動力を該加振部材に対する加振力として作用せしめるようにしたことを特徴とする能動型防振用マウント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−180601(P2006−180601A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−370029(P2004−370029)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【出願人】(504468780)
【出願人】(504469765)有限会社博士国際協同研究所 (1)
【Fターム(参考)】