露光装置及びデバイス製造方法
【課題】 遮光位置のずれを低減する技術の提供。
【解決手段】 原版を光で照明する照明系、前記原版のパターンの像を基板に投影する投影系を有する光学系を備える露光装置で、前記光学系の光路上の前記投影系の物体面と共役な面かその近傍に配置され、前記像が前記基板上に投影される領域の外縁の一部を円弧状に規定する円弧状部を有する遮光板と、前記光学系の光路に沿った回転軸まわりに前記遮光板を回転駆動する回転駆動部と、前記回転軸と交わる方向に前記遮光板をシフトするシフト駆動部と、前記回転駆動部により前記遮光板を回転駆動させ、前記光学系により前記像を前記基板に投影する際の基準となる基準軸と前記回転軸との相対位置の情報を取得する取得部と、前記基板の周辺部に対して前記像を投影する場合、取得した前記相対位置に関する情報に基づき、前記遮光板が所定の位置になるように前記回転駆動部と前記シフト駆動部を制御する制御部を有する。
【解決手段】 原版を光で照明する照明系、前記原版のパターンの像を基板に投影する投影系を有する光学系を備える露光装置で、前記光学系の光路上の前記投影系の物体面と共役な面かその近傍に配置され、前記像が前記基板上に投影される領域の外縁の一部を円弧状に規定する円弧状部を有する遮光板と、前記光学系の光路に沿った回転軸まわりに前記遮光板を回転駆動する回転駆動部と、前記回転軸と交わる方向に前記遮光板をシフトするシフト駆動部と、前記回転駆動部により前記遮光板を回転駆動させ、前記光学系により前記像を前記基板に投影する際の基準となる基準軸と前記回転軸との相対位置の情報を取得する取得部と、前記基板の周辺部に対して前記像を投影する場合、取得した前記相対位置に関する情報に基づき、前記遮光板が所定の位置になるように前記回転駆動部と前記シフト駆動部を制御する制御部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの実装として、フリップチップによる実装が採用されるケースが増えてきている。フリップチップによる実装に対応した半導体デバイスの製造工程には、はんだボールをデバイス上に形成する工程が含まれる。はんだボールを形成する方法の1つとして、メッキによる形成方法が知られている。メッキによる形成方法では、ウエハ(基板)上に形成された導電性膜とメッキ装置の電極とを接触(導通)させるために、導電性膜の上に形成されているレジストにおける電極を接触させる部分を剥離する必要がある。レジストがネガレジストである場合には、ウエハの周辺部に露光光が照射されないようにすればよい(即ち、ウエハの周辺部を遮光すればよい)ため、例えば、露光中に、ウエハ上に遮光板を配置する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、モールドと接触させたウエハ上のレジストに紫外線を照射して、レジストにモールドのパターンを転写するインプリント装置が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2には、ウエハの周辺部のショット領域に対応した照射領域を規定するために、ウエハ上の第1象限から第4象限に相当する領域の輪郭にそれぞれ対応する円弧を有する4つの遮光板を、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ駆動する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6680774号明細書
【特許文献2】特開2005−286062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにウエハ上に遮光板を配置すると、ウエハを交換するたびに遮光板を退避させる必要があるため、スペースやスループットの面で制約となる。そこで、ウエハ上に遮光板を配置するのではなく、特許文献2のように、ウエハと光学的に共役な面に遮光板を配置し、かかる遮光板によってウエハの外周領域を遮光する技術が考えられる。このような技術では、外周ショット領域ごとに、ウエハ上の外周ショット領域の位置に基づいて、ウエハの外周から外周領域の境界までの距離が一定になる(即ち、ウエハの外周から所定の幅だけ内側の外周領域が遮光される)ように遮光板を位置決めしている。
【0006】
しかしながら、ウエハの外形を基準として遮光する場合に、遮光板を駆動するための遮光板駆動部の駆動基準位置と、実際のウエハの中心位置(露光の基準となる位置)との距離は必ずしも一致しているわけではない。遮光板の駆動基準位置とウエハの中心位置との距離がずれている場合、ウエハ上の外周ショット領域の位置に基づいて遮光板を位置決めすると、上記のずれ量だけずれて遮光板が位置決めされることになる。その結果、ウエハの外周から外周領域の境界までの距離が外周ショット領域ごとにばらつき、遮光板で遮光される外周領域の幅を一定にすることができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、遮光板の駆動部の実際の駆動の基準位置と、露光の基準となる位置(例えば、光軸位置)とのずれの影響による遮光領域の所望の位置からのずれを低減ことを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光装置は、パターンが形成された原版を光源からの光で照明し、前記パターンの像を外縁に円弧状部分を含む基板に投影する光学系を備える露光装置であって、前記光学系の光路において前記原版のパターンが形成される面が配される面と共役な面或いはそれらの面の近傍に配置され、前記パターンの像の前記基板上に投影される領域の外縁の少なくとも一部を円弧状に規定するための円弧状部分を有する遮光板と、前記光学系の光路に沿った回転軸まわりに前記遮光板を回転駆動する回転駆動部と、前記回転軸と交わる方向に前記遮光板をシフト駆動するシフト駆動部と、前記回転駆動部により前記遮光板を回転駆動させ、前記光学系の光軸と前記回転軸との相対位置に関する情報を取得する取得部と、前記基板の外縁付近の周辺部に対して前記パターンの像を投影する場合には、前記取得部により取得した前記相対位置に関する情報に基づいて、前記遮光板が所定の位置になるように前記回転駆動部と前記シフト駆動部を制御する制御部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、遮光板駆動部の中心位置と、光軸位置とがずれていても、基板の外周から所定の幅だけ内側の外周領域に入射する光を高精度に遮光する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す図である。
【図2】照明光学系の構成を詳細に示す図である。
【図3】基板の上の転写領域を説明するための図である。
【図4】遮光板の構成の一例を示す図である。
【図5】遮光板の位置決めを説明するための図である。
【図6】露光装置による露光処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】遮光板の回転駆動部の回転軸と基準軸との位置がずれている場合の遮光板の位置決めを説明するための図である。
【図8】実施例2の遮光板を説明するための図である。
【図9】遮光板の構成を説明するための図である。
【図10】遮光板のレチクルに対する位置調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】遮光板の位置調整に使用するレチクルを説明するための図である。
【図12】駆動部の回転中心の算出方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】駆動部の回転中心の算出方法を説明するための図である。
【図14】回転駆動部の回転軸の位置の算出時に露光結果としてウエハ上に転写されたショット形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施例1]
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一側面としての照明光学系と投影光学系で構成されている光学系を有する露光装置100の構成を示す図である。露光装置100は、原版としてのレチクル(マスク)のパターンを投影光学系によって基板(基板上のショット領域)に投影し、レチクルのパターンを基板に転写するリソグラフィ装置である。
【0014】
露光装置100は、図1に示すように、光源11からの光でレチクル2を照明する照明光学系1と、基板(ウエハ、ガラス基板など)9に転写すべきパターン(回路パターン)を有するレチクル2を保持して移動するレチクルステージ3を備えている。また、更に露光装置100は、アライメント検出部4を有する。アライメント検出部4は、レチクルステージ3に保持されたレチクル2の位置、及び、投影光学系5を介して基板9のアライメントマークの位置を検出する。本実施形態では、アライメント検出部4は、レチクルステージ3に保持されたレチクル2の位置を検出する機能と、基板9のアライメントマークの位置を検出する機能とを兼ね備えている。但し、レチクルステージ3に保持されたレチクル2の位置を検出するレチクルアライメント検出部と、基板9のアライメントマークの位置を検出する基板アライメント検出部とを別々に配置してもよい。
【0015】
また、露光装置100は、レチクル2のパターンを基板9に投影する投影光学系5と、基板9を保持して移動する(少なくともXY平面内でX軸方向及びY軸方向に移動する)基板ステージ6と、基板ステージ6の位置を計測するレーザ干渉計7とを有する。露光装置100は、基板9を吸着(保持)するチャック8と、チャック8の下部に配置されて基板9をZ軸方向(垂直方向)に移動させる(即ち、露光時のピントを調整するための)Z軸移動機構(不図示)とを有する。更に、露光装置100は、基板ステージ6に保持された基板9のZ軸方向の位置(ピント位置)を計測するオートフォーカス部10と、CPUやメモリを含んで露光装置100の全体(基板9を露光する動作)を制御する制御部21も有している。そして、基板ステージ6上に露光光量を検出するための光検出センサ50、装置外部から、投影光学系の中心位置と遮光板駆動部の回転中心位置ずれ情報を含む、装置制御に必要なパラメータを入力可能な入力インターフェース51を有する。
【0016】
図2は、照明光学系1の構成を詳細に示す図である。図2に示すように、照明光学系1は、本実施形態では、光源11を含む。但し、照明光学系1は、必ずしも光源11を含む必要はなく、照明光学系1と光源11とをそれぞれ別に構成してもよい。
【0017】
光源11は、本実施形態では、超高圧水銀ランプを使用するが、エキシマレーザー(KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーなど)を使用してもよい。集光ミラー12は、一般的には、楕円ミラーを使用する。但し、集光ミラー12は、楕円ミラーに限定するものではなく、集光点の集光度を高めるように最適化されたファセットミラーを使用してもよい。シャッタ13は、制御部21の制御下において、開閉時間を調整することでレジスト(感光剤)が塗布された基板9への露光量を調整する。
【0018】
変倍リレー光学系14は、ズーム機構を有し、ハエの目レンズ15における光束径を変更する。露光装置100においては、基板9に転写するパターンに応じて投影光学系5の結像性能を最適化するために、(照明光学系1の(開口数)NA)/(投影光学系5のNA)で表されるコヒーレンスファクター(σ値)を変更する必要がある。本実施形態では、照明光学系1のNAを決めているハエの目レンズ15における光束径を変更することで、σ値を変更することができる。
【0019】
ハエの目レンズ15は、入射面に入射した光束を波面分割し、射出面に2次光源を生成する。ハエの目レンズ15は、シリンドリカルレンズアレイに置換することが可能である。コンデンサー光学系16は、ハエの目レンズ15で波面分割された光を被照明面において重畳的に重ね合わせ、被照明面上に均一な照度分布を形成する。
【0020】
マスキングブレード17は、コンデンサー光学系16の被照明面に配置される。マスキングブレード17は、開口を可変とする絞りで構成され、制御部21の制御下において、露光装置100がステップアンドリピート方式で繰り返して転写する1つのショット領域の形状(ショット形状)を決定する。換言すれば、マスキングブレード17は、基板上のショット領域の外縁を規定する直線状の辺より外側の領域に入射する光を遮光する。
【0021】
リレー光学系18は、マスキングブレード17の位置に形成された照度分布を遮光板19に投影する。また、リレー光学系20は、遮光板19の位置に形成された照度分布をレチクル2に投影する。
【0022】
遮光板19は、露光装置100がステップアンドリピート方式で繰り返して基板9を露光する際に、基板9の露光位置に応じてパターンが転写される領域の形状を変化させることが可能である。遮光板19は、照明光学系1における投影光学系5の物体面と共役な面或いはその近傍に配置され、基板9の外周より内側の円形境界線に重なる円弧(円弧状部分)を縁に含み、基板9の上のパターンが転写される領域を規定する。遮光板19は、照明光学系1及び投影光学系5で構成される光学系の光路上で、投影光学系5の物体面と共役な位置或いはその近傍に配置されていれば所望の遮光部としての機能を果たせる。また投影光学系5の物体面と共役な位置は、レチクル2が配置されることで決まるそのパターン面と共役な位置と言い変えることも可能である。
【0023】
遮光板19は、駆動部22を介して、基板9の上の外周ショット領域内において駆動される。例えば、駆動部22は、制御部21の制御下において、照明光学系1の光軸に平行な軸回りに遮光板19を回転駆動させたり、照明光学系1の光軸に垂直な平面内で遮光板19を直線駆動させたりする。なお、本実施形態では、配置上の都合から、マスキングブレード17と遮光板19とを、リレー光学系18を介して、照明光学系1における互いに異なる光学的に共役な位置に配置している。しかし、配置上の問題がなければ、マスキングブレード17を遮光板19に隣接して配置しても良い。マスキングブレード17を遮光板19に隣接して配置する際に、それらが同じ位置に入らない場合には、遮光板19を基板9と光学的に共役な位置に配置し、マスキングブレード17をデフォーカスさせた位置に配置するのが望ましい。また、配置上のデフォーカス量が許容できない場合には、マスキングブレード17でショット領域における第1方向に沿った外縁を規定する直線状の辺より外側の領域に対して光が入射しないように光を遮断する。そして、ショット領域における第1方向と直交する第2方向に沿った外縁を規定する直線状の辺より外側の領域に対して光が入射しないように、レチクル2上にCrパターンで光を遮断する遮光部を設ける。さらには、ショット領域の形状はレチクル2上のCrパターンで決定し、マスキングブレード17はレチクル2上のCrパターンの剥がれなどの欠陥による転写を防止するために、ショット領域の形状より大きな領域で遮光しても良い。マスキングブレード17と遮光板19の照射系内における配置位置の順番は不問で、どちらが光源11側にあっても構わない。
【0024】
遮光板19について詳細に説明する。図3(a)は、基板9の上の転写領域を説明するための図であって、紙面上方向から見た基板9を示している。基板9には、通常、シリコン製の基板が使用されるが、ガラス製の基板、サファイヤ製の基板、化合物からなる基板も使用される。露光装置100が1回の露光でパターンを転写できる領域は、投影光学系5の結像領域で決まるが、一般的には、基板9の大きさより小さい。従って、露光装置100では、ステップアンドリピート方式と呼ばれる基板9をステップさせながらパターンの転写(基板9の露光)を繰り返す露光方式が用いられる。図3(a)に斜線で示す領域は1回の露光でパターンが転写されるショット領域を示しており、基板9をステップさせながら複数のショット領域を繰り返し露光することで、基板9の全体に同一のパターン「C」を転写することができる。
【0025】
上述したように、はんだボールを形成する工程において、基板9の上の導電性膜とメッキ装置の電極とを接触(導通)させるためには、レジストが剥離された領域が基板9の上に存在しなければならない。かかる領域は、図3(a)に示すように、基板9の周辺部、具体的は、基板9の外周から所定の幅(本実施形態では、d)だけ内側の外周領域92に相当する。基板9の外周領域92は、基板9に塗布されたレジストがネガレジストである場合には、露光中に遮光されている必要がある。換言すれば、基板9の外周ショット領域91にパターンを転写する際には、外周ショット領域91を図3(b)に示すような転写領域、すなわちショットの外縁の一部を円弧状に規定して露光する必要がある。
【0026】
図4は、外周ショット領域91を図3(b)に示すような転写領域に規定するための遮光板19の構成の一例を示す図であって、照明光学系1の光軸方向から見た遮光板19を示している。遮光板19は、露光光を遮光する遮光部分191と、露光光を通過させる開口部分192とで構成される。遮光部分191は、基板9の外周(外縁)の円弧形状と略同一な円弧形状の円弧縁部191aと、基板9の外周領域92の遮光には直接寄与しない直線形状の直線縁部191bとを含む枠体である。理想的には、遮光板19の円弧状部分である円弧縁部191aは、上述のように基板9の外周(外縁)の円弧形状の部分の円形状の半径(曲率半径)よりもdだけ小さい円形状と略同一な円弧形状であることが望ましい。
【0027】
また、開口部分192は、露光するショット領域を照明するために必要な光束よりも太い光束が通過可能である十分な大きさを有している。基板9の中心付近のショットを露光する(パターンの像を投影)場合には、遮光板19は退避させ、ショットの露光に寄与する光束よりも太い光束が開口部分192を通る位置に移動させる。その際、光束は、遮光板19ではなく他の遮光部材であるマスキングブレード17でその断面が矩形に規定される。但し、遮光板19は、図4に示す構成に限定されるものではなく、円形形状の縁部を含む遮光部分で構成されてもよいし、一部だけが円弧形状の縁部を含む遮光部分で構成されてもよい。
【0028】
これは、駆動部22が遮光板19を照明光学系1の光軸を中心とした回転方向(矢印AR1)に回転駆動させたり、円弧縁部191aの頂点を結ぶ直線に平行な方向(矢印AR2)に直線駆動させたりすることが可能だからである。また、駆動部22は遮光板19を、回転軸を中心として回転方向(矢印AR1)に回転駆動する回転駆動部と円弧縁部191aの頂点を結ぶ直線に平行な方向(矢印AR2)にシフト駆動(並進駆動)するシフト駆動部の2つの機構を持つ。さらに円弧縁部191aの頂点を結ぶ直線に垂直な方向(矢印AR3)にシフト駆動するもう一つ他のシフト駆動部の機構を持ってもよい。
【0029】
図5は、制御部21の制御下における駆動部22による遮光板19の位置決めを説明するための図であって、基板9の外周ショット領域91と遮光板19との位置関係を示している。図5に示すように、外周ショット領域91を露光する際には、基板9の外周(外縁)から幅dだけ内側の外周付近(外縁付近)にある外周領域92に入射する露光光を遮光する位置に遮光板19を位置決めする。詳細には、照明光学系1の光軸を中心としてθだけ遮光板19を回転駆動し、且つ、外周ショット領域91の中心(x1,y1)から基板9の中心方向にLだけシフト(直線駆動)した位置に遮光板19の中心(x,y)が位置するように、遮光板19を位置決めする。ここでの外周ショット領域91の中心とは、外周ショット領域91を中心部と同じように一部を円弧に遮光しない状態でのショット領域としての中心のことである。基本的には照明光学系1と投影光学系5からなる光学系の光軸は、ショット領域91の露光時には、このショット領域91の中心を通り、レチクルのパターン部分の中心を通るように配置される。
【0030】
なお、Lは、遮光板19の直線駆動量であって、図5に示す数値を用いて、以下の式1で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
d:外周領域92の幅
θ:遮光板19の回転駆動量(即ち、基板9の中心と外周ショット領域91の中心とを結ぶ直線と基板9の水平線とのなす角度)
L:遮光板19の直線駆動量
L1:遮光板19の中心から遮光板19の円弧縁部191aまでの距離
L2:基板9の中心から外周ショット領域91の中心までの距離
L3:基板9の中心から基板9の外周までの距離(即ち、基板9の半径)
L4:基板9の中心から遮光板19の中心までの距離
【0033】
図6を参照して、露光装置100による露光処理について説明する。かかる露光処理は、制御部21が露光装置100の各部を統括的に制御することで行われる。ここでは、1枚の基板9に対する露光処理を例に説明する。
【0034】
S602では、基板9の露光処理に関する露光処理情報(即ち、基板9を露光する際に必要となる情報)を取得する。露光処理情報は、露光条件などの他に、遮光板19の位置決め(制御)に必要な情報を含む。露光処理情報は、例えば、露光処理の対象となる基板9にレイヤ(下地)が形成されているかどうか(即ち、第1シーケンスであるか第2シーケンスであるか)を表すシーケンス情報、基板9の上の複数のショット領域の配列を表すレイアウト情報などを含む。また、露光処理情報は、基板9を基板ステージ6に配置する際に生じる基板9の中心と基板ステージ6の中心とのずれ量を表す基板配置オフセットや外周ショット領域91を露光する際の遮光板19の制御モードを表す遮光板制御モード情報などを含んでもよい。
【0035】
S604では、基板搬送ロボットを介して露光処理の対象となる基板9を露光装置100に搬入し、かかる基板9を基板ステージ6に配置する。この際、露光処理情報に含まれる基板配置オフセットを考慮して、基板9の中心と基板ステージ6の中心とが一致するように、基板ステージ6に基板9を保持させる。
【0036】
S606では、S602で取得した露光処理条件に含まれるシーケンス情報に基づいて、露光処理の対象となる基板9にレイヤが形成されているかどうかを判定する。基板9にレイヤが形成されている場合には、S612に移行する。また、基板9にレイヤが形成されていない場合には、S608に移行する。
【0037】
S608では、基板9に形成されたレイヤのアライメントマークをアライメント検出部4で検出(粗検)する(即ち、プリアライメントを行う)。S610では、S608における検出結果に基づいて、基板9に形成されたレイヤのアライメントマークをアライメント検出部4で精密に検出(精検)する。後述するように、S608及びS610における検出結果から、基板ステージ6の中心位置に相当する基板9の中心位置(基板中心位置)と基板9に形成されたレイヤにおける複数のショット領域の配列の中心位置(レイヤ中心位置)とのずれ量を求めることができる。
【0038】
S612では、遮光板19を駆動部22で駆動して遮光板19を位置決めする。具体的には、露光処理の対象となる基板9にレイヤが形成されていない場合には、S602で取得した露光処理条件に含まれるレイアウト情報に基づいて、図5を用いて説明したように、遮光板19を位置決めする。また、露光処理の対象となる基板9にレイヤが形成されている場合には、S602で取得した露光処理条件に含まれるレイアウト情報とS608やS610での検出結果から求まる基板中心位置とレイヤ中心位置とのずれ量とに基づいて、遮光板19を位置決めする。但し、上述したように、遮光板19は、基板9の外周ショット領域91を露光する際に、外周領域92に入射する露光光を遮光するために用いられる。従って、対象ショット領域(これからパターンを転写するショット領域)が外周ショット領域91でない場合には、照明光学系1の光路から遮光板19を退避させればよく、遮光板19を厳密に位置決めする必要はない。
【0039】
外周ショット(周辺ショットともいう)領域91でない場合、つまり基板中心部のショットを露光する場合には、枠体である遮光板19の開口192を通過した光束をマスキングブレード17で遮光する。マスキングブレード17により形成された開口部分を通過した光束が基板9に到達して基板を露光することになる。遮光板19は、光束がマスキングブレード17で遮光され、矩形領域として基板9上に投影される位置になるように位置決めされればよい。また、遮光板19の位置決めは、基板9の上の対象ショット領域を露光位置に位置させるために必要となる基板ステージ6の移動と並行して実施することが可能である。
【0040】
S614では、基板9の上の対象ショット領域を露光して、かかる対象ショット領域にレチクル2のパターンを転写する。S616では、基板ステージ6に保持された基板9の上の全てのショット領域を露光したか(即ち、全てのショット領域にパターンを転写したか)どうかを判定する。基板9の上の全てのショット領域を露光していない場合には、次のショット領域を対象ショット領域としてS612に移行する。また、基板9の上の全てのショット領域を露光した場合には、S614に移行する。S618では、基板搬送ロボットを介して全てのショット領域が露光された基板9を回収し、かかる基板9を露光装置100から搬出する。
【0041】
図7は、図4に示したAR3の駆動機能を持たないシステムにおいて、一つの平面(基板9面、或いはそれと平行な面)上において遮光板の回転中心である回転軸の位置が光軸の位置から(Δx、Δy)だけずれている場合について説明する。制御部21の制御下における駆動部22による遮光板19の位置決めを説明するための説明図である。光軸は、光学系によりレチクル2のパターンの像を基板9に投影する際の基準となる軸(基準軸)である。ここで、光軸とは光学系の光軸と捉えても良い。さらには、より厳密に露光装置において、光源の調整や各種位置合わせ用のマークを用いたキャリブレーションを行い、基板9上のショット領域の中心とそのショット領域に投影されるレチクル2のパターン領域の中心を通る軸と捉えても良い。
【0042】
遮光板19の回転中心である回転軸が光軸から(Δx、Δy)だけずれている場合、遮光板19は191aの位置に配置され外周ショット領域91を遮光すべきである。しかし、そのずれ量のため、点線で示した遮光板の回転中心である回転軸のずれ量が(Δx,Δy)の場合には、遮光板19の位置が点線で示した191bの位置にずれて配置される。そこで、正しく191aの位置に遮光板19を配置するために、図5で説明したθ、Lを計算する手順において、仮想の外周ショット領域91‘を計算する。
x2=x1−Δx
y2=y1−Δy
【0043】
この仮想外周ショット中心(x2,y2)に対して、図5で説明した方法でθ‘、Lを算出する。
θ‘:遮光板19の回転駆動量(即ち、基板9の中心と外周ショット領域91‘の中心とを結ぶ直線と基板9の水平線とのなす角度)
L:仮想の外周ショット領域91‘における遮光板19の直線駆動量
【0044】
このθ‘、Lで遮光板19を駆動した場合の仮想遮光板位置は点線で示した位置となる。ここで、実際に遮光される位置は、遮光板の回転中心ずれ量が(Δx、Δy)となるので、(Δx、Δy)だけずれた191aの位置に遮光板が配置されることになる。Δx、Δyは、実施例2で説明する方法により算出された値を入力インターフェース51から入力する方法、実施例3で算出する方法のいずれであっても良い。入力インターフェース51は、装置に設けられたユーザーインターフェースであっても、ネットワーク経由で受信する方法のいずれであっても良い。
【0045】
遮光板の回転中心ずれ量(Δx、Δy)は、光軸と遮光板19の回転軸との相対位置を表す情報であり、ずれの方向とずれの量である。前記相対位置を表す情報は、ステージ座標系の座標、基板座標系の座標として、所定の基準からの座標情報として取得しても良い。この相対位置を表す情報は、実施例2の算出する手段、実施例3の算出手段、入力インターフェースにより入力され露光装置100の不図示のメモリ(記憶手段)に記憶するといった取得部により取得されるものである。
【0046】
図4に示したAR3の駆動機能を持つシステムにおいては、Δx、Δyの遮光板の回転中心ずれ量を、回転角θの補正を行わず、AR2とAR3の駆動量により補正することも可能である。
【0047】
[実施例2]
遮光板19は、図8のように、開口を有し、開口の縁に互いに反対側の位置に配置された第1円弧と第2円弧とを含み、第1円弧及び第2円弧は、開口の内側から外側に向かう方向に凸状をなしている。図8の例では、駆動部22の例として直線駆動部95が回転駆動部96上に搭載されることで、遮光板19を光軸として動径方向と回転方向に駆動することが可能である。なお、遮光板19を光軸として動径方向と回転方向に駆動できるようになっていれば他の形態であっても構わない。図8にAで示した点線で囲まれた領域は、遮光板19上でのショット領域を遮光した様子示しており、遮光板19で遮光された形状がウエハ上に転写される。
【0048】
遮光板19はさらに開口部あるいは遮光部を有する。開口部あるいは遮光部は、駆動部96の回転駆動量を識別する回転駆動量識別部として機能する。なお、開口部あるいは遮光部を使用した回転駆動量の算出方法に関しては本実施例の中で明らかにされる。図9に遮光板19の開口部、遮光部の一例を示す。図9(a)の例では、遮光板19には開口部の一例として、直線部を縁に含むスリット形状の開口部61が構成されている。図9(b)のように、直線部を縁に含むスリット形状の開口部62a、62bが上下に分割されていてもよい。
【0049】
さらに図9(c)の例のように直線部を含むスリット形状ではなく、例えば丸穴形状の開口部63a、63bであってもよい。さらに言えば、開口部は開口部の形状の重心回りに点対称であれば他の形状であっても構わない。図9(d)の例では、遮光板19には遮光部の一例として、直線部を縁に含むスリット形状の遮光部71が構成されている。図9(e)のように、直線部を縁に含むスリット形状の遮光部72a、72bが上下に分割されていてもよい。図9(f)は円弧の縁に対する遮光部の長手方向が異なる場合であり、遮光部73a、73bを同じく分割して設けてもよい。なお、図9において遮光板19は第1円弧と第2円弧が別の遮光板に構成されている場合の形状であるが、もちろん図4で示したように一体の遮光板に構成されていてもよい。また、一体の遮光板の場合、開口部、遮光部は円弧と同様に対向する位置に配置すればよい。
【0050】
基板9の周辺部に幅dで示した非露光領域を形成するためには、以下の2つ条件を満たす必要がある。
条件1.レチクル2と遮光板19の位置合わせが行われている(位置関係が判明している)こと。
条件2.レチクル2と基板9の位置合わせが行われている(位置関係が判明している)こと。
【0051】
ここでは、上記の条件2は満たしているものとして上記の条件1を実現する調整方法に関して詳細を述べる。なお、レチクル2の基準点は図1のアライメント検出部4による検出結果に基づき光軸に対して位置合わせされているものとする。下記の調整フローにおける露光処理、ステージの駆動、遮光板の駆動といった一連の処理は制御部21により行われる。
【0052】
まず、図10のフローチャート1001に示すレチクル2の基準点(以下ではレチクル2の中心2cとする)と回転駆動部96の回転中心96cの位置合わせを行う。図11は上述の位置合わせに用いるレチクル2を紙面上方から見た図であり、図のようにX軸、Y軸を定義する。レチクル2には、基板上に転写可能なパターンとして、少なくとも2本の目盛り40a、40bを有しているものとする。目盛40はレチクル2の中心からのY座標が既知である。目盛40の値はレチクル2上のX座標を表している。遮光板19は図9(a)に示した形状を有するものとする。
【0053】
レチクル2の中心2cと回転駆動部96の回転中心96cの位置合わせに関して、図12のフローチャートの従って詳しく説明する。なおここでは遮光板19の第1円弧を用いるものとする。ステップ2001で、レチクル、ウエハの搬入や露光量やウエハ上のレイアウト、駆動部の駆動条件などの露光条件を設定する。ステップ2002にて駆動条件に基づき遮光板19を回転駆動部96による回転駆動と直線駆動部95による直線駆動を行い、図13(a)に一例として示す第1位置に移動する。図13(a)から明らかなように第1位置ではレチクル2は遮光板19により遮光され、且つ遮光板19の第1円弧と開口部23がレチクル2上位置している。なお、図13では回転駆動部96と直線駆動部95は不図示であるが、遮光板19と回転駆動部96、直線駆動部95の関係は図8に従うものとする。合わせて、基板9を保持している基板ステージ6を駆動し、ショット位置へ駆動する。ステップ2003にて、照射系から所定の露光量を基板9上に照射する。基板9上にはレチクル2のパターンが遮光板19により規定された形状にてショットS1が転写される。ステップ2004にて、駆動部の駆動条件に基づき直線駆動軸方向は固定のまま、回転駆動部96の回転中心96c回りに180度回転駆動することで、遮光板19は第2位置(図13(b))に移動する。合わせて、基板9を保持している基板ステージ6を駆動し、次のショット位置に移動する。ステップ2005にて、同じく照射系から所定の露光量を基板9上に照射され、ショットS2が転写される。ステップ2006にて、基板9を搬出し、現像を行う。現像により基板9にはショットS1とショットS2のレジスト像が形成されている。ステップ2007では、遮光板19の第1位置のショットS1と第2位置のショットS2を基に、レチクル2の中心2cに対する回転駆動部96の回転中心96cを求める。図14(a)に示すショットS1の遮光板19の第1円弧の縁と目盛40a、40bの交点の値41a、41bを読み取り記録する。また、同時にショットS1の遮光板19の直線スリット状の開口部61の直線の縁と目盛40a、40bの交点の値42a、42bを読み取り記録する。図14(b)に示すショットS2においても同様に値(43a、43b、44a、44b)を読み取り記録する。目盛の読み取りは、例えば、汎用の光学顕微鏡を使用することができる。なお、図14においては露光された部分のレジストが現像において剥離した場合、つまりポジレジストの場合の図になっているが、ネガレジストであってもよい。図示の容易さからここではポジレジストの場合で記載している。
【0054】
上述のように目盛40はレチクル2の中心基準の座標値を表している。まず第1位置のショットS1の目盛の値41a、41bと第1円弧の半径から第1円弧が作る第1円の中心座標Oaを計算する。同じく、第2位置のショットS2の目盛の値43a、43bと第1円弧の半径から第1円弧が作る第2円の中心座標Obを計算する。第1円と第2円の中心座標Oa,Obの中点Oが、回転駆動部96の回転中心である。これをもとにレチクル2の中心と回転駆動部96の回転中心を合わせるように位置調整を行う。
【0055】
ところが、第1位置から第2位置に回転駆動部96で回転駆動する際には必ず回転角度に誤差がある。回転駆動部96の回転角度の誤差の要因は、駆動部の構成によりさまざまであるが、例えばモータの角度検出に使用するロータリーエンコーダ、ギアのバックラッシュなどの誤差であり、ゼロにすることは事実上できない。図13(c)は遮光板19が第1位置から180+α度(αは回転誤差)回った位置を第2位置とした時の様子を示す。図13(c)の状態で露光したショットからは第1円弧が作る第2円の中心座標Ocが得られる。第1円と第2円の中心座標Oa、Ocの中点Oeが回転駆動部96の回転中心として求められる。すなわち真の回転中心96cと異なる点を算出してしまう。図13(d)に示すように特に回転中心座標のY座標の算出精度に顕著な影響を与える。そこで同時に記録したスリット形状の開口部61の直線の縁と目盛40の交点の値を使用した補正を行う。第1位置でのスリット形状の開口部61の直線の縁と目盛40の交点の座標42a、42bの2点を通る直線の傾きT1を得る。同じく第2位置でのスリット形状の開口部61の直線の縁と目盛40の交点の座標44a、44bの2点を通る直線の傾きT2を得る。第1位置から第2位置へ正確に180度だけ遮光板19が回転していれば、両者の傾きは等しくT1=T2となる。両者の傾きの差T1−T2=αを計算することで、第1位置から第2位置へ回転した時の実回転角度が180+α度であることがわかる。次に実回転角度を用いた補正方法に関して説明する。第1位置の第1円の中心座標Oaと第2位置の第2円の中心座標OcのX方向の距離をPとする。今、回転角度180度に対回転角度誤差はα度と分かっているため、それをもとに第2位置の第2円の中心座標OcのY座標Ocyを補正する。補正量δyはPsin(α/2)で定義できる。補正後の第2位置の第2円の中心座標Odと第1位置の第1円の中心座標Oaにより回転駆動部96に回転角度誤差が存在しても回転駆動部96の回転中心96cを求める算出精度を向上させることができる。以上の結果を基に回転駆動部96の回転中心96cをレチクル2の中心2cが一致するように調整を行えばよい。なお、遮光板19の第1円弧と開口部、遮光部は同時にウエハ上へ投影することが好ましいが、その限りではない。マスキングブレード17により照明領域を制限することで、個別に基板上へ投影し、前述の回転駆動部96の回転中心とレチクル2の位置を合わせる調整を実施してもよい。また、レチクル2上の目盛40はX軸に沿って配置したが、Y軸に沿って配置されていてもかまわない。その場合は遮光板19の第1位置と第2位置は、実施例の場合からさらに90度回転した位置で行えばよい。さらに言えば、レチクル2上の目盛に応じて、適切な回転位置で行えばよい。
【0056】
続いて、図10のフローチャート1002にて、遮光板19を回転駆動する回転駆動部96の駆動原点を調整する。この調整によりレチクル2のX軸と遮光板19を直線駆動する直線駆動部95の駆動軸を平行にすることができる。図13においては、簡単のため既に平行な状態で図示しているが、実際には部品の形状誤差や組立誤差があり、両者は平行ではない。前述で求めた第1円の中心座標Oaと第2円の中心座標Odを通る直線の傾きがゼロになるように回転駆動部96の駆動原点にオフセットを持たせるのがよい。なお、遮光板19の第2円弧についても同様の調整を行うものとする。
【0057】
続いて、図10のフローチャート1003にて、遮光板19を直線駆動する回転駆動部96の駆動原点を調整する。この調整により直線駆動部95の駆動軸方向とレチクル2のX軸方向の位置が合う。回転駆動部96を固定して、遮光板19の第1円弧とレチクル2上の目盛40が交差する位置に直線駆動部95により遮光板19を駆動する。この状態で基板9に露光する。ウエハを搬出し、現像後、第1円弧と目盛40の交点の値を読み、指定の値になるように直線駆動部95の駆動原点にオフセットを持たせるとよい。以上の調整により、レチクル2と遮光板19の第1円弧の位置合わせは完了である。なお、遮光板19の第2円弧についても同様の調整を行えばよい。
【0058】
実施例2では、遮光板19は図14(a)をもとに説明したが、図14(b)、(d)、(e)、(f)の形状であっても同様に調整可能であることは明らかである。図14(f)の遮光板19の場合は、遮光部33aあるいは33bの直線の縁を使って実回転角度を算出すればよい。この場合レチクル上に目盛40とは別に遮光部33aあるいは33bの直線の縁と交差する目盛をさらに構成する必要がある。また、図4で示した遮光板19の直線の縁191bがウエハ上の円弧の縁と共に投影可能であれば、同じく実回転角度の算出に使用することができる。また、実施例2では、調整に必要な最小限のショット数で説明をしたが、実際には目盛の読み取り誤差による算出精度への影響を低減させるため複数のショットの平均を用いてよく、ショット数を限定しない。また、実施例2では、レチクル2上の2つ目盛の座標と円弧の半径から円の中心座標を算出したが、レチクル上にさらに少なくとも1つの目盛を用意して3つの目盛の座標から円の中心を算出してもよい。また同じく目盛の読み取り誤差による算出精度への影響を低減させるため、複数の目盛の中から3つの目盛を選んだそれぞれの組み合わせから求めた円の中心座標の平均を用いてもよい。
【0059】
実施例2において、開口部あるいは遮光部は、位置調整に使用することが目的であることが理解できよう。基板9の外周から遮光幅dで規定される遮光領域を形成する際には、開口部あるいは遮光部によるウエハ上へのパターン転写は、必要ない。むしろ問題となる。すなわち遮光板19の位置調整時のみ開口部あるいは遮光部のパターン転写を行う。そのため、開口部あるいは遮光部は基板上へのパターンの転写有無を状況に応じて選択できる必要がある。具体的には、開口部を塞ぐ、遮光部は取り外すあるいはウエハ上へパターン転写が起こらない位置へ移動することにより選択ができる。なお、開口部あるいは遮光部のウエハ上へのパターンの転写有無の選択手段は、自動であっても手動であってもその方法は構わない。
【0060】
[実施例3]
実施例2では、図12のフローチャート1001の調整は基板9上に露光したショットから得られる情報をもとに行ったが、基板ステージ6上の光検出センサ50を使用して調整することもできる。光検出部である光検出センサ50は照射系から照射される光を受光して、ウエハ面上の露光光量を検出できるセンサである。光検出センサ50により遮光板19の縁をステージ座標基準で検出することができる。より具体的には、ステージを駆動しながら照度がゼロになる座標を検出すればよい。照度がゼロになる2つの座標と円弧の半径から同じく円の中心座標を求めることができる。同様に図14(a)を例にすれば、開口部のスリットの直線部の傾きも求めることができる。遮光板19が図14(c)の形状の場合は、照度検出センサを使用して、開口部63a、63bの重心位置をそれぞれ検出すればよい。開口部に直線部がなくとも2点の重心位置を結ぶ直線傾きを使うことで前述の角度補正が可能であることが容易に理解できよう。上記の光検出センサ50上への投光処理、ステージの駆動、遮光板の駆動といった一連の処理は制御部21により行われる。光検出センサ50の検出結果は制御部21内の検出演算部で処理され、回転中心のずれ量はデータベースへ登録される。以降遮光板を駆動する駆動部はデータベースに登録された回転中心のずれ量をもとに制御部21により補正駆動される。なお、照度検出センサを使用した場合はレチクルと駆動部の回転中心の関係を直接的に合わせているわけではないことに注意する必要がある。この場合は基板ステージ6上のウエハと照度検出センサの位置関係が分かっている必要があり、間接的にレチクル中心と駆動部の回転中心を合わせていることになる。また、図10のフローチャート1002、1003の調整も同様に光検出センサ50を使用して調整可能であることは理解できるであろう。
【0061】
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 照明光学系
2 レチクル
3 レチクルステージ
5 投影光学系
6 基板ステージ6
11 光源
17 マスキングブレード
19 遮光板
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの実装として、フリップチップによる実装が採用されるケースが増えてきている。フリップチップによる実装に対応した半導体デバイスの製造工程には、はんだボールをデバイス上に形成する工程が含まれる。はんだボールを形成する方法の1つとして、メッキによる形成方法が知られている。メッキによる形成方法では、ウエハ(基板)上に形成された導電性膜とメッキ装置の電極とを接触(導通)させるために、導電性膜の上に形成されているレジストにおける電極を接触させる部分を剥離する必要がある。レジストがネガレジストである場合には、ウエハの周辺部に露光光が照射されないようにすればよい(即ち、ウエハの周辺部を遮光すればよい)ため、例えば、露光中に、ウエハ上に遮光板を配置する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、モールドと接触させたウエハ上のレジストに紫外線を照射して、レジストにモールドのパターンを転写するインプリント装置が提案されている(特許文献2参照)。特許文献2には、ウエハの周辺部のショット領域に対応した照射領域を規定するために、ウエハ上の第1象限から第4象限に相当する領域の輪郭にそれぞれ対応する円弧を有する4つの遮光板を、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ駆動する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6680774号明細書
【特許文献2】特開2005−286062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のようにウエハ上に遮光板を配置すると、ウエハを交換するたびに遮光板を退避させる必要があるため、スペースやスループットの面で制約となる。そこで、ウエハ上に遮光板を配置するのではなく、特許文献2のように、ウエハと光学的に共役な面に遮光板を配置し、かかる遮光板によってウエハの外周領域を遮光する技術が考えられる。このような技術では、外周ショット領域ごとに、ウエハ上の外周ショット領域の位置に基づいて、ウエハの外周から外周領域の境界までの距離が一定になる(即ち、ウエハの外周から所定の幅だけ内側の外周領域が遮光される)ように遮光板を位置決めしている。
【0006】
しかしながら、ウエハの外形を基準として遮光する場合に、遮光板を駆動するための遮光板駆動部の駆動基準位置と、実際のウエハの中心位置(露光の基準となる位置)との距離は必ずしも一致しているわけではない。遮光板の駆動基準位置とウエハの中心位置との距離がずれている場合、ウエハ上の外周ショット領域の位置に基づいて遮光板を位置決めすると、上記のずれ量だけずれて遮光板が位置決めされることになる。その結果、ウエハの外周から外周領域の境界までの距離が外周ショット領域ごとにばらつき、遮光板で遮光される外周領域の幅を一定にすることができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような従来技術の課題に鑑みてなされ、遮光板の駆動部の実際の駆動の基準位置と、露光の基準となる位置(例えば、光軸位置)とのずれの影響による遮光領域の所望の位置からのずれを低減ことを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光装置は、パターンが形成された原版を光源からの光で照明し、前記パターンの像を外縁に円弧状部分を含む基板に投影する光学系を備える露光装置であって、前記光学系の光路において前記原版のパターンが形成される面が配される面と共役な面或いはそれらの面の近傍に配置され、前記パターンの像の前記基板上に投影される領域の外縁の少なくとも一部を円弧状に規定するための円弧状部分を有する遮光板と、前記光学系の光路に沿った回転軸まわりに前記遮光板を回転駆動する回転駆動部と、前記回転軸と交わる方向に前記遮光板をシフト駆動するシフト駆動部と、前記回転駆動部により前記遮光板を回転駆動させ、前記光学系の光軸と前記回転軸との相対位置に関する情報を取得する取得部と、前記基板の外縁付近の周辺部に対して前記パターンの像を投影する場合には、前記取得部により取得した前記相対位置に関する情報に基づいて、前記遮光板が所定の位置になるように前記回転駆動部と前記シフト駆動部を制御する制御部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の更なる目的又はその他の側面は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施形態によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、遮光板駆動部の中心位置と、光軸位置とがずれていても、基板の外周から所定の幅だけ内側の外周領域に入射する光を高精度に遮光する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一側面としての露光装置の構成を示す図である。
【図2】照明光学系の構成を詳細に示す図である。
【図3】基板の上の転写領域を説明するための図である。
【図4】遮光板の構成の一例を示す図である。
【図5】遮光板の位置決めを説明するための図である。
【図6】露光装置による露光処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】遮光板の回転駆動部の回転軸と基準軸との位置がずれている場合の遮光板の位置決めを説明するための図である。
【図8】実施例2の遮光板を説明するための図である。
【図9】遮光板の構成を説明するための図である。
【図10】遮光板のレチクルに対する位置調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図11】遮光板の位置調整に使用するレチクルを説明するための図である。
【図12】駆動部の回転中心の算出方法を説明するためのフローチャートである。
【図13】駆動部の回転中心の算出方法を説明するための図である。
【図14】回転駆動部の回転軸の位置の算出時に露光結果としてウエハ上に転写されたショット形状を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施例1]
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一側面としての照明光学系と投影光学系で構成されている光学系を有する露光装置100の構成を示す図である。露光装置100は、原版としてのレチクル(マスク)のパターンを投影光学系によって基板(基板上のショット領域)に投影し、レチクルのパターンを基板に転写するリソグラフィ装置である。
【0014】
露光装置100は、図1に示すように、光源11からの光でレチクル2を照明する照明光学系1と、基板(ウエハ、ガラス基板など)9に転写すべきパターン(回路パターン)を有するレチクル2を保持して移動するレチクルステージ3を備えている。また、更に露光装置100は、アライメント検出部4を有する。アライメント検出部4は、レチクルステージ3に保持されたレチクル2の位置、及び、投影光学系5を介して基板9のアライメントマークの位置を検出する。本実施形態では、アライメント検出部4は、レチクルステージ3に保持されたレチクル2の位置を検出する機能と、基板9のアライメントマークの位置を検出する機能とを兼ね備えている。但し、レチクルステージ3に保持されたレチクル2の位置を検出するレチクルアライメント検出部と、基板9のアライメントマークの位置を検出する基板アライメント検出部とを別々に配置してもよい。
【0015】
また、露光装置100は、レチクル2のパターンを基板9に投影する投影光学系5と、基板9を保持して移動する(少なくともXY平面内でX軸方向及びY軸方向に移動する)基板ステージ6と、基板ステージ6の位置を計測するレーザ干渉計7とを有する。露光装置100は、基板9を吸着(保持)するチャック8と、チャック8の下部に配置されて基板9をZ軸方向(垂直方向)に移動させる(即ち、露光時のピントを調整するための)Z軸移動機構(不図示)とを有する。更に、露光装置100は、基板ステージ6に保持された基板9のZ軸方向の位置(ピント位置)を計測するオートフォーカス部10と、CPUやメモリを含んで露光装置100の全体(基板9を露光する動作)を制御する制御部21も有している。そして、基板ステージ6上に露光光量を検出するための光検出センサ50、装置外部から、投影光学系の中心位置と遮光板駆動部の回転中心位置ずれ情報を含む、装置制御に必要なパラメータを入力可能な入力インターフェース51を有する。
【0016】
図2は、照明光学系1の構成を詳細に示す図である。図2に示すように、照明光学系1は、本実施形態では、光源11を含む。但し、照明光学系1は、必ずしも光源11を含む必要はなく、照明光学系1と光源11とをそれぞれ別に構成してもよい。
【0017】
光源11は、本実施形態では、超高圧水銀ランプを使用するが、エキシマレーザー(KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーなど)を使用してもよい。集光ミラー12は、一般的には、楕円ミラーを使用する。但し、集光ミラー12は、楕円ミラーに限定するものではなく、集光点の集光度を高めるように最適化されたファセットミラーを使用してもよい。シャッタ13は、制御部21の制御下において、開閉時間を調整することでレジスト(感光剤)が塗布された基板9への露光量を調整する。
【0018】
変倍リレー光学系14は、ズーム機構を有し、ハエの目レンズ15における光束径を変更する。露光装置100においては、基板9に転写するパターンに応じて投影光学系5の結像性能を最適化するために、(照明光学系1の(開口数)NA)/(投影光学系5のNA)で表されるコヒーレンスファクター(σ値)を変更する必要がある。本実施形態では、照明光学系1のNAを決めているハエの目レンズ15における光束径を変更することで、σ値を変更することができる。
【0019】
ハエの目レンズ15は、入射面に入射した光束を波面分割し、射出面に2次光源を生成する。ハエの目レンズ15は、シリンドリカルレンズアレイに置換することが可能である。コンデンサー光学系16は、ハエの目レンズ15で波面分割された光を被照明面において重畳的に重ね合わせ、被照明面上に均一な照度分布を形成する。
【0020】
マスキングブレード17は、コンデンサー光学系16の被照明面に配置される。マスキングブレード17は、開口を可変とする絞りで構成され、制御部21の制御下において、露光装置100がステップアンドリピート方式で繰り返して転写する1つのショット領域の形状(ショット形状)を決定する。換言すれば、マスキングブレード17は、基板上のショット領域の外縁を規定する直線状の辺より外側の領域に入射する光を遮光する。
【0021】
リレー光学系18は、マスキングブレード17の位置に形成された照度分布を遮光板19に投影する。また、リレー光学系20は、遮光板19の位置に形成された照度分布をレチクル2に投影する。
【0022】
遮光板19は、露光装置100がステップアンドリピート方式で繰り返して基板9を露光する際に、基板9の露光位置に応じてパターンが転写される領域の形状を変化させることが可能である。遮光板19は、照明光学系1における投影光学系5の物体面と共役な面或いはその近傍に配置され、基板9の外周より内側の円形境界線に重なる円弧(円弧状部分)を縁に含み、基板9の上のパターンが転写される領域を規定する。遮光板19は、照明光学系1及び投影光学系5で構成される光学系の光路上で、投影光学系5の物体面と共役な位置或いはその近傍に配置されていれば所望の遮光部としての機能を果たせる。また投影光学系5の物体面と共役な位置は、レチクル2が配置されることで決まるそのパターン面と共役な位置と言い変えることも可能である。
【0023】
遮光板19は、駆動部22を介して、基板9の上の外周ショット領域内において駆動される。例えば、駆動部22は、制御部21の制御下において、照明光学系1の光軸に平行な軸回りに遮光板19を回転駆動させたり、照明光学系1の光軸に垂直な平面内で遮光板19を直線駆動させたりする。なお、本実施形態では、配置上の都合から、マスキングブレード17と遮光板19とを、リレー光学系18を介して、照明光学系1における互いに異なる光学的に共役な位置に配置している。しかし、配置上の問題がなければ、マスキングブレード17を遮光板19に隣接して配置しても良い。マスキングブレード17を遮光板19に隣接して配置する際に、それらが同じ位置に入らない場合には、遮光板19を基板9と光学的に共役な位置に配置し、マスキングブレード17をデフォーカスさせた位置に配置するのが望ましい。また、配置上のデフォーカス量が許容できない場合には、マスキングブレード17でショット領域における第1方向に沿った外縁を規定する直線状の辺より外側の領域に対して光が入射しないように光を遮断する。そして、ショット領域における第1方向と直交する第2方向に沿った外縁を規定する直線状の辺より外側の領域に対して光が入射しないように、レチクル2上にCrパターンで光を遮断する遮光部を設ける。さらには、ショット領域の形状はレチクル2上のCrパターンで決定し、マスキングブレード17はレチクル2上のCrパターンの剥がれなどの欠陥による転写を防止するために、ショット領域の形状より大きな領域で遮光しても良い。マスキングブレード17と遮光板19の照射系内における配置位置の順番は不問で、どちらが光源11側にあっても構わない。
【0024】
遮光板19について詳細に説明する。図3(a)は、基板9の上の転写領域を説明するための図であって、紙面上方向から見た基板9を示している。基板9には、通常、シリコン製の基板が使用されるが、ガラス製の基板、サファイヤ製の基板、化合物からなる基板も使用される。露光装置100が1回の露光でパターンを転写できる領域は、投影光学系5の結像領域で決まるが、一般的には、基板9の大きさより小さい。従って、露光装置100では、ステップアンドリピート方式と呼ばれる基板9をステップさせながらパターンの転写(基板9の露光)を繰り返す露光方式が用いられる。図3(a)に斜線で示す領域は1回の露光でパターンが転写されるショット領域を示しており、基板9をステップさせながら複数のショット領域を繰り返し露光することで、基板9の全体に同一のパターン「C」を転写することができる。
【0025】
上述したように、はんだボールを形成する工程において、基板9の上の導電性膜とメッキ装置の電極とを接触(導通)させるためには、レジストが剥離された領域が基板9の上に存在しなければならない。かかる領域は、図3(a)に示すように、基板9の周辺部、具体的は、基板9の外周から所定の幅(本実施形態では、d)だけ内側の外周領域92に相当する。基板9の外周領域92は、基板9に塗布されたレジストがネガレジストである場合には、露光中に遮光されている必要がある。換言すれば、基板9の外周ショット領域91にパターンを転写する際には、外周ショット領域91を図3(b)に示すような転写領域、すなわちショットの外縁の一部を円弧状に規定して露光する必要がある。
【0026】
図4は、外周ショット領域91を図3(b)に示すような転写領域に規定するための遮光板19の構成の一例を示す図であって、照明光学系1の光軸方向から見た遮光板19を示している。遮光板19は、露光光を遮光する遮光部分191と、露光光を通過させる開口部分192とで構成される。遮光部分191は、基板9の外周(外縁)の円弧形状と略同一な円弧形状の円弧縁部191aと、基板9の外周領域92の遮光には直接寄与しない直線形状の直線縁部191bとを含む枠体である。理想的には、遮光板19の円弧状部分である円弧縁部191aは、上述のように基板9の外周(外縁)の円弧形状の部分の円形状の半径(曲率半径)よりもdだけ小さい円形状と略同一な円弧形状であることが望ましい。
【0027】
また、開口部分192は、露光するショット領域を照明するために必要な光束よりも太い光束が通過可能である十分な大きさを有している。基板9の中心付近のショットを露光する(パターンの像を投影)場合には、遮光板19は退避させ、ショットの露光に寄与する光束よりも太い光束が開口部分192を通る位置に移動させる。その際、光束は、遮光板19ではなく他の遮光部材であるマスキングブレード17でその断面が矩形に規定される。但し、遮光板19は、図4に示す構成に限定されるものではなく、円形形状の縁部を含む遮光部分で構成されてもよいし、一部だけが円弧形状の縁部を含む遮光部分で構成されてもよい。
【0028】
これは、駆動部22が遮光板19を照明光学系1の光軸を中心とした回転方向(矢印AR1)に回転駆動させたり、円弧縁部191aの頂点を結ぶ直線に平行な方向(矢印AR2)に直線駆動させたりすることが可能だからである。また、駆動部22は遮光板19を、回転軸を中心として回転方向(矢印AR1)に回転駆動する回転駆動部と円弧縁部191aの頂点を結ぶ直線に平行な方向(矢印AR2)にシフト駆動(並進駆動)するシフト駆動部の2つの機構を持つ。さらに円弧縁部191aの頂点を結ぶ直線に垂直な方向(矢印AR3)にシフト駆動するもう一つ他のシフト駆動部の機構を持ってもよい。
【0029】
図5は、制御部21の制御下における駆動部22による遮光板19の位置決めを説明するための図であって、基板9の外周ショット領域91と遮光板19との位置関係を示している。図5に示すように、外周ショット領域91を露光する際には、基板9の外周(外縁)から幅dだけ内側の外周付近(外縁付近)にある外周領域92に入射する露光光を遮光する位置に遮光板19を位置決めする。詳細には、照明光学系1の光軸を中心としてθだけ遮光板19を回転駆動し、且つ、外周ショット領域91の中心(x1,y1)から基板9の中心方向にLだけシフト(直線駆動)した位置に遮光板19の中心(x,y)が位置するように、遮光板19を位置決めする。ここでの外周ショット領域91の中心とは、外周ショット領域91を中心部と同じように一部を円弧に遮光しない状態でのショット領域としての中心のことである。基本的には照明光学系1と投影光学系5からなる光学系の光軸は、ショット領域91の露光時には、このショット領域91の中心を通り、レチクルのパターン部分の中心を通るように配置される。
【0030】
なお、Lは、遮光板19の直線駆動量であって、図5に示す数値を用いて、以下の式1で表される。
【0031】
【数1】
【0032】
d:外周領域92の幅
θ:遮光板19の回転駆動量(即ち、基板9の中心と外周ショット領域91の中心とを結ぶ直線と基板9の水平線とのなす角度)
L:遮光板19の直線駆動量
L1:遮光板19の中心から遮光板19の円弧縁部191aまでの距離
L2:基板9の中心から外周ショット領域91の中心までの距離
L3:基板9の中心から基板9の外周までの距離(即ち、基板9の半径)
L4:基板9の中心から遮光板19の中心までの距離
【0033】
図6を参照して、露光装置100による露光処理について説明する。かかる露光処理は、制御部21が露光装置100の各部を統括的に制御することで行われる。ここでは、1枚の基板9に対する露光処理を例に説明する。
【0034】
S602では、基板9の露光処理に関する露光処理情報(即ち、基板9を露光する際に必要となる情報)を取得する。露光処理情報は、露光条件などの他に、遮光板19の位置決め(制御)に必要な情報を含む。露光処理情報は、例えば、露光処理の対象となる基板9にレイヤ(下地)が形成されているかどうか(即ち、第1シーケンスであるか第2シーケンスであるか)を表すシーケンス情報、基板9の上の複数のショット領域の配列を表すレイアウト情報などを含む。また、露光処理情報は、基板9を基板ステージ6に配置する際に生じる基板9の中心と基板ステージ6の中心とのずれ量を表す基板配置オフセットや外周ショット領域91を露光する際の遮光板19の制御モードを表す遮光板制御モード情報などを含んでもよい。
【0035】
S604では、基板搬送ロボットを介して露光処理の対象となる基板9を露光装置100に搬入し、かかる基板9を基板ステージ6に配置する。この際、露光処理情報に含まれる基板配置オフセットを考慮して、基板9の中心と基板ステージ6の中心とが一致するように、基板ステージ6に基板9を保持させる。
【0036】
S606では、S602で取得した露光処理条件に含まれるシーケンス情報に基づいて、露光処理の対象となる基板9にレイヤが形成されているかどうかを判定する。基板9にレイヤが形成されている場合には、S612に移行する。また、基板9にレイヤが形成されていない場合には、S608に移行する。
【0037】
S608では、基板9に形成されたレイヤのアライメントマークをアライメント検出部4で検出(粗検)する(即ち、プリアライメントを行う)。S610では、S608における検出結果に基づいて、基板9に形成されたレイヤのアライメントマークをアライメント検出部4で精密に検出(精検)する。後述するように、S608及びS610における検出結果から、基板ステージ6の中心位置に相当する基板9の中心位置(基板中心位置)と基板9に形成されたレイヤにおける複数のショット領域の配列の中心位置(レイヤ中心位置)とのずれ量を求めることができる。
【0038】
S612では、遮光板19を駆動部22で駆動して遮光板19を位置決めする。具体的には、露光処理の対象となる基板9にレイヤが形成されていない場合には、S602で取得した露光処理条件に含まれるレイアウト情報に基づいて、図5を用いて説明したように、遮光板19を位置決めする。また、露光処理の対象となる基板9にレイヤが形成されている場合には、S602で取得した露光処理条件に含まれるレイアウト情報とS608やS610での検出結果から求まる基板中心位置とレイヤ中心位置とのずれ量とに基づいて、遮光板19を位置決めする。但し、上述したように、遮光板19は、基板9の外周ショット領域91を露光する際に、外周領域92に入射する露光光を遮光するために用いられる。従って、対象ショット領域(これからパターンを転写するショット領域)が外周ショット領域91でない場合には、照明光学系1の光路から遮光板19を退避させればよく、遮光板19を厳密に位置決めする必要はない。
【0039】
外周ショット(周辺ショットともいう)領域91でない場合、つまり基板中心部のショットを露光する場合には、枠体である遮光板19の開口192を通過した光束をマスキングブレード17で遮光する。マスキングブレード17により形成された開口部分を通過した光束が基板9に到達して基板を露光することになる。遮光板19は、光束がマスキングブレード17で遮光され、矩形領域として基板9上に投影される位置になるように位置決めされればよい。また、遮光板19の位置決めは、基板9の上の対象ショット領域を露光位置に位置させるために必要となる基板ステージ6の移動と並行して実施することが可能である。
【0040】
S614では、基板9の上の対象ショット領域を露光して、かかる対象ショット領域にレチクル2のパターンを転写する。S616では、基板ステージ6に保持された基板9の上の全てのショット領域を露光したか(即ち、全てのショット領域にパターンを転写したか)どうかを判定する。基板9の上の全てのショット領域を露光していない場合には、次のショット領域を対象ショット領域としてS612に移行する。また、基板9の上の全てのショット領域を露光した場合には、S614に移行する。S618では、基板搬送ロボットを介して全てのショット領域が露光された基板9を回収し、かかる基板9を露光装置100から搬出する。
【0041】
図7は、図4に示したAR3の駆動機能を持たないシステムにおいて、一つの平面(基板9面、或いはそれと平行な面)上において遮光板の回転中心である回転軸の位置が光軸の位置から(Δx、Δy)だけずれている場合について説明する。制御部21の制御下における駆動部22による遮光板19の位置決めを説明するための説明図である。光軸は、光学系によりレチクル2のパターンの像を基板9に投影する際の基準となる軸(基準軸)である。ここで、光軸とは光学系の光軸と捉えても良い。さらには、より厳密に露光装置において、光源の調整や各種位置合わせ用のマークを用いたキャリブレーションを行い、基板9上のショット領域の中心とそのショット領域に投影されるレチクル2のパターン領域の中心を通る軸と捉えても良い。
【0042】
遮光板19の回転中心である回転軸が光軸から(Δx、Δy)だけずれている場合、遮光板19は191aの位置に配置され外周ショット領域91を遮光すべきである。しかし、そのずれ量のため、点線で示した遮光板の回転中心である回転軸のずれ量が(Δx,Δy)の場合には、遮光板19の位置が点線で示した191bの位置にずれて配置される。そこで、正しく191aの位置に遮光板19を配置するために、図5で説明したθ、Lを計算する手順において、仮想の外周ショット領域91‘を計算する。
x2=x1−Δx
y2=y1−Δy
【0043】
この仮想外周ショット中心(x2,y2)に対して、図5で説明した方法でθ‘、Lを算出する。
θ‘:遮光板19の回転駆動量(即ち、基板9の中心と外周ショット領域91‘の中心とを結ぶ直線と基板9の水平線とのなす角度)
L:仮想の外周ショット領域91‘における遮光板19の直線駆動量
【0044】
このθ‘、Lで遮光板19を駆動した場合の仮想遮光板位置は点線で示した位置となる。ここで、実際に遮光される位置は、遮光板の回転中心ずれ量が(Δx、Δy)となるので、(Δx、Δy)だけずれた191aの位置に遮光板が配置されることになる。Δx、Δyは、実施例2で説明する方法により算出された値を入力インターフェース51から入力する方法、実施例3で算出する方法のいずれであっても良い。入力インターフェース51は、装置に設けられたユーザーインターフェースであっても、ネットワーク経由で受信する方法のいずれであっても良い。
【0045】
遮光板の回転中心ずれ量(Δx、Δy)は、光軸と遮光板19の回転軸との相対位置を表す情報であり、ずれの方向とずれの量である。前記相対位置を表す情報は、ステージ座標系の座標、基板座標系の座標として、所定の基準からの座標情報として取得しても良い。この相対位置を表す情報は、実施例2の算出する手段、実施例3の算出手段、入力インターフェースにより入力され露光装置100の不図示のメモリ(記憶手段)に記憶するといった取得部により取得されるものである。
【0046】
図4に示したAR3の駆動機能を持つシステムにおいては、Δx、Δyの遮光板の回転中心ずれ量を、回転角θの補正を行わず、AR2とAR3の駆動量により補正することも可能である。
【0047】
[実施例2]
遮光板19は、図8のように、開口を有し、開口の縁に互いに反対側の位置に配置された第1円弧と第2円弧とを含み、第1円弧及び第2円弧は、開口の内側から外側に向かう方向に凸状をなしている。図8の例では、駆動部22の例として直線駆動部95が回転駆動部96上に搭載されることで、遮光板19を光軸として動径方向と回転方向に駆動することが可能である。なお、遮光板19を光軸として動径方向と回転方向に駆動できるようになっていれば他の形態であっても構わない。図8にAで示した点線で囲まれた領域は、遮光板19上でのショット領域を遮光した様子示しており、遮光板19で遮光された形状がウエハ上に転写される。
【0048】
遮光板19はさらに開口部あるいは遮光部を有する。開口部あるいは遮光部は、駆動部96の回転駆動量を識別する回転駆動量識別部として機能する。なお、開口部あるいは遮光部を使用した回転駆動量の算出方法に関しては本実施例の中で明らかにされる。図9に遮光板19の開口部、遮光部の一例を示す。図9(a)の例では、遮光板19には開口部の一例として、直線部を縁に含むスリット形状の開口部61が構成されている。図9(b)のように、直線部を縁に含むスリット形状の開口部62a、62bが上下に分割されていてもよい。
【0049】
さらに図9(c)の例のように直線部を含むスリット形状ではなく、例えば丸穴形状の開口部63a、63bであってもよい。さらに言えば、開口部は開口部の形状の重心回りに点対称であれば他の形状であっても構わない。図9(d)の例では、遮光板19には遮光部の一例として、直線部を縁に含むスリット形状の遮光部71が構成されている。図9(e)のように、直線部を縁に含むスリット形状の遮光部72a、72bが上下に分割されていてもよい。図9(f)は円弧の縁に対する遮光部の長手方向が異なる場合であり、遮光部73a、73bを同じく分割して設けてもよい。なお、図9において遮光板19は第1円弧と第2円弧が別の遮光板に構成されている場合の形状であるが、もちろん図4で示したように一体の遮光板に構成されていてもよい。また、一体の遮光板の場合、開口部、遮光部は円弧と同様に対向する位置に配置すればよい。
【0050】
基板9の周辺部に幅dで示した非露光領域を形成するためには、以下の2つ条件を満たす必要がある。
条件1.レチクル2と遮光板19の位置合わせが行われている(位置関係が判明している)こと。
条件2.レチクル2と基板9の位置合わせが行われている(位置関係が判明している)こと。
【0051】
ここでは、上記の条件2は満たしているものとして上記の条件1を実現する調整方法に関して詳細を述べる。なお、レチクル2の基準点は図1のアライメント検出部4による検出結果に基づき光軸に対して位置合わせされているものとする。下記の調整フローにおける露光処理、ステージの駆動、遮光板の駆動といった一連の処理は制御部21により行われる。
【0052】
まず、図10のフローチャート1001に示すレチクル2の基準点(以下ではレチクル2の中心2cとする)と回転駆動部96の回転中心96cの位置合わせを行う。図11は上述の位置合わせに用いるレチクル2を紙面上方から見た図であり、図のようにX軸、Y軸を定義する。レチクル2には、基板上に転写可能なパターンとして、少なくとも2本の目盛り40a、40bを有しているものとする。目盛40はレチクル2の中心からのY座標が既知である。目盛40の値はレチクル2上のX座標を表している。遮光板19は図9(a)に示した形状を有するものとする。
【0053】
レチクル2の中心2cと回転駆動部96の回転中心96cの位置合わせに関して、図12のフローチャートの従って詳しく説明する。なおここでは遮光板19の第1円弧を用いるものとする。ステップ2001で、レチクル、ウエハの搬入や露光量やウエハ上のレイアウト、駆動部の駆動条件などの露光条件を設定する。ステップ2002にて駆動条件に基づき遮光板19を回転駆動部96による回転駆動と直線駆動部95による直線駆動を行い、図13(a)に一例として示す第1位置に移動する。図13(a)から明らかなように第1位置ではレチクル2は遮光板19により遮光され、且つ遮光板19の第1円弧と開口部23がレチクル2上位置している。なお、図13では回転駆動部96と直線駆動部95は不図示であるが、遮光板19と回転駆動部96、直線駆動部95の関係は図8に従うものとする。合わせて、基板9を保持している基板ステージ6を駆動し、ショット位置へ駆動する。ステップ2003にて、照射系から所定の露光量を基板9上に照射する。基板9上にはレチクル2のパターンが遮光板19により規定された形状にてショットS1が転写される。ステップ2004にて、駆動部の駆動条件に基づき直線駆動軸方向は固定のまま、回転駆動部96の回転中心96c回りに180度回転駆動することで、遮光板19は第2位置(図13(b))に移動する。合わせて、基板9を保持している基板ステージ6を駆動し、次のショット位置に移動する。ステップ2005にて、同じく照射系から所定の露光量を基板9上に照射され、ショットS2が転写される。ステップ2006にて、基板9を搬出し、現像を行う。現像により基板9にはショットS1とショットS2のレジスト像が形成されている。ステップ2007では、遮光板19の第1位置のショットS1と第2位置のショットS2を基に、レチクル2の中心2cに対する回転駆動部96の回転中心96cを求める。図14(a)に示すショットS1の遮光板19の第1円弧の縁と目盛40a、40bの交点の値41a、41bを読み取り記録する。また、同時にショットS1の遮光板19の直線スリット状の開口部61の直線の縁と目盛40a、40bの交点の値42a、42bを読み取り記録する。図14(b)に示すショットS2においても同様に値(43a、43b、44a、44b)を読み取り記録する。目盛の読み取りは、例えば、汎用の光学顕微鏡を使用することができる。なお、図14においては露光された部分のレジストが現像において剥離した場合、つまりポジレジストの場合の図になっているが、ネガレジストであってもよい。図示の容易さからここではポジレジストの場合で記載している。
【0054】
上述のように目盛40はレチクル2の中心基準の座標値を表している。まず第1位置のショットS1の目盛の値41a、41bと第1円弧の半径から第1円弧が作る第1円の中心座標Oaを計算する。同じく、第2位置のショットS2の目盛の値43a、43bと第1円弧の半径から第1円弧が作る第2円の中心座標Obを計算する。第1円と第2円の中心座標Oa,Obの中点Oが、回転駆動部96の回転中心である。これをもとにレチクル2の中心と回転駆動部96の回転中心を合わせるように位置調整を行う。
【0055】
ところが、第1位置から第2位置に回転駆動部96で回転駆動する際には必ず回転角度に誤差がある。回転駆動部96の回転角度の誤差の要因は、駆動部の構成によりさまざまであるが、例えばモータの角度検出に使用するロータリーエンコーダ、ギアのバックラッシュなどの誤差であり、ゼロにすることは事実上できない。図13(c)は遮光板19が第1位置から180+α度(αは回転誤差)回った位置を第2位置とした時の様子を示す。図13(c)の状態で露光したショットからは第1円弧が作る第2円の中心座標Ocが得られる。第1円と第2円の中心座標Oa、Ocの中点Oeが回転駆動部96の回転中心として求められる。すなわち真の回転中心96cと異なる点を算出してしまう。図13(d)に示すように特に回転中心座標のY座標の算出精度に顕著な影響を与える。そこで同時に記録したスリット形状の開口部61の直線の縁と目盛40の交点の値を使用した補正を行う。第1位置でのスリット形状の開口部61の直線の縁と目盛40の交点の座標42a、42bの2点を通る直線の傾きT1を得る。同じく第2位置でのスリット形状の開口部61の直線の縁と目盛40の交点の座標44a、44bの2点を通る直線の傾きT2を得る。第1位置から第2位置へ正確に180度だけ遮光板19が回転していれば、両者の傾きは等しくT1=T2となる。両者の傾きの差T1−T2=αを計算することで、第1位置から第2位置へ回転した時の実回転角度が180+α度であることがわかる。次に実回転角度を用いた補正方法に関して説明する。第1位置の第1円の中心座標Oaと第2位置の第2円の中心座標OcのX方向の距離をPとする。今、回転角度180度に対回転角度誤差はα度と分かっているため、それをもとに第2位置の第2円の中心座標OcのY座標Ocyを補正する。補正量δyはPsin(α/2)で定義できる。補正後の第2位置の第2円の中心座標Odと第1位置の第1円の中心座標Oaにより回転駆動部96に回転角度誤差が存在しても回転駆動部96の回転中心96cを求める算出精度を向上させることができる。以上の結果を基に回転駆動部96の回転中心96cをレチクル2の中心2cが一致するように調整を行えばよい。なお、遮光板19の第1円弧と開口部、遮光部は同時にウエハ上へ投影することが好ましいが、その限りではない。マスキングブレード17により照明領域を制限することで、個別に基板上へ投影し、前述の回転駆動部96の回転中心とレチクル2の位置を合わせる調整を実施してもよい。また、レチクル2上の目盛40はX軸に沿って配置したが、Y軸に沿って配置されていてもかまわない。その場合は遮光板19の第1位置と第2位置は、実施例の場合からさらに90度回転した位置で行えばよい。さらに言えば、レチクル2上の目盛に応じて、適切な回転位置で行えばよい。
【0056】
続いて、図10のフローチャート1002にて、遮光板19を回転駆動する回転駆動部96の駆動原点を調整する。この調整によりレチクル2のX軸と遮光板19を直線駆動する直線駆動部95の駆動軸を平行にすることができる。図13においては、簡単のため既に平行な状態で図示しているが、実際には部品の形状誤差や組立誤差があり、両者は平行ではない。前述で求めた第1円の中心座標Oaと第2円の中心座標Odを通る直線の傾きがゼロになるように回転駆動部96の駆動原点にオフセットを持たせるのがよい。なお、遮光板19の第2円弧についても同様の調整を行うものとする。
【0057】
続いて、図10のフローチャート1003にて、遮光板19を直線駆動する回転駆動部96の駆動原点を調整する。この調整により直線駆動部95の駆動軸方向とレチクル2のX軸方向の位置が合う。回転駆動部96を固定して、遮光板19の第1円弧とレチクル2上の目盛40が交差する位置に直線駆動部95により遮光板19を駆動する。この状態で基板9に露光する。ウエハを搬出し、現像後、第1円弧と目盛40の交点の値を読み、指定の値になるように直線駆動部95の駆動原点にオフセットを持たせるとよい。以上の調整により、レチクル2と遮光板19の第1円弧の位置合わせは完了である。なお、遮光板19の第2円弧についても同様の調整を行えばよい。
【0058】
実施例2では、遮光板19は図14(a)をもとに説明したが、図14(b)、(d)、(e)、(f)の形状であっても同様に調整可能であることは明らかである。図14(f)の遮光板19の場合は、遮光部33aあるいは33bの直線の縁を使って実回転角度を算出すればよい。この場合レチクル上に目盛40とは別に遮光部33aあるいは33bの直線の縁と交差する目盛をさらに構成する必要がある。また、図4で示した遮光板19の直線の縁191bがウエハ上の円弧の縁と共に投影可能であれば、同じく実回転角度の算出に使用することができる。また、実施例2では、調整に必要な最小限のショット数で説明をしたが、実際には目盛の読み取り誤差による算出精度への影響を低減させるため複数のショットの平均を用いてよく、ショット数を限定しない。また、実施例2では、レチクル2上の2つ目盛の座標と円弧の半径から円の中心座標を算出したが、レチクル上にさらに少なくとも1つの目盛を用意して3つの目盛の座標から円の中心を算出してもよい。また同じく目盛の読み取り誤差による算出精度への影響を低減させるため、複数の目盛の中から3つの目盛を選んだそれぞれの組み合わせから求めた円の中心座標の平均を用いてもよい。
【0059】
実施例2において、開口部あるいは遮光部は、位置調整に使用することが目的であることが理解できよう。基板9の外周から遮光幅dで規定される遮光領域を形成する際には、開口部あるいは遮光部によるウエハ上へのパターン転写は、必要ない。むしろ問題となる。すなわち遮光板19の位置調整時のみ開口部あるいは遮光部のパターン転写を行う。そのため、開口部あるいは遮光部は基板上へのパターンの転写有無を状況に応じて選択できる必要がある。具体的には、開口部を塞ぐ、遮光部は取り外すあるいはウエハ上へパターン転写が起こらない位置へ移動することにより選択ができる。なお、開口部あるいは遮光部のウエハ上へのパターンの転写有無の選択手段は、自動であっても手動であってもその方法は構わない。
【0060】
[実施例3]
実施例2では、図12のフローチャート1001の調整は基板9上に露光したショットから得られる情報をもとに行ったが、基板ステージ6上の光検出センサ50を使用して調整することもできる。光検出部である光検出センサ50は照射系から照射される光を受光して、ウエハ面上の露光光量を検出できるセンサである。光検出センサ50により遮光板19の縁をステージ座標基準で検出することができる。より具体的には、ステージを駆動しながら照度がゼロになる座標を検出すればよい。照度がゼロになる2つの座標と円弧の半径から同じく円の中心座標を求めることができる。同様に図14(a)を例にすれば、開口部のスリットの直線部の傾きも求めることができる。遮光板19が図14(c)の形状の場合は、照度検出センサを使用して、開口部63a、63bの重心位置をそれぞれ検出すればよい。開口部に直線部がなくとも2点の重心位置を結ぶ直線傾きを使うことで前述の角度補正が可能であることが容易に理解できよう。上記の光検出センサ50上への投光処理、ステージの駆動、遮光板の駆動といった一連の処理は制御部21により行われる。光検出センサ50の検出結果は制御部21内の検出演算部で処理され、回転中心のずれ量はデータベースへ登録される。以降遮光板を駆動する駆動部はデータベースに登録された回転中心のずれ量をもとに制御部21により補正駆動される。なお、照度検出センサを使用した場合はレチクルと駆動部の回転中心の関係を直接的に合わせているわけではないことに注意する必要がある。この場合は基板ステージ6上のウエハと照度検出センサの位置関係が分かっている必要があり、間接的にレチクル中心と駆動部の回転中心を合わせていることになる。また、図10のフローチャート1002、1003の調整も同様に光検出センサ50を使用して調整可能であることは理解できるであろう。
【0061】
つぎに、本発明の一実施形態のデバイス(半導体デバイス、液晶表示デバイス等)の製造方法について説明する。半導体デバイスは、ウエハに集積回路を作る前工程と、前工程で作られたウエハ上の集積回路チップを製品として完成させる後工程を経ることにより製造される。前工程は、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたウエハを露光する工程と、ウエハを現像する工程を含む。後工程は、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)と、パッケージング工程(封入)を含む。液晶表示デバイスは、透明電極を形成する工程を経ることにより製造される。透明電極を形成する工程は、透明導電膜が蒸着されたガラス基板に感光剤を塗布する工程と、前述の露光装置を使用して感光剤が塗布されたガラス基板を露光する工程と、ガラス基板を現像する工程を含む。本実施形態のデバイス製造方法によれば、従来よりも高品位のデバイスを製造することができる。
【0062】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形および変更が可能である。
【0063】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 照明光学系
2 レチクル
3 レチクルステージ
5 投影光学系
6 基板ステージ6
11 光源
17 マスキングブレード
19 遮光板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターンが形成された原版を光源からの光で照明する照明光学系と、前記パターンの像を外縁に円弧状部分を含む基板に投影する投影光学系を有する光学系を備える露光装置であって、
前記光学系の光路において前記投影光学系の物体面と共役な面或いはそれらの面の近傍に配置され、前記パターンの像が前記基板に投影される領域の外縁の少なくとも一部を円弧状に規定するための円弧状部分を有する遮光板と、
前記光学系の光路に沿った回転軸まわりに前記遮光板を回転駆動する回転駆動部と、
前記回転軸と交わる方向に前記遮光板をシフト駆動するシフト駆動部と、
前記回転駆動部により前記遮光板を回転駆動させ、前記光学系により前記パターンの像を前記基板に投影する際の基準となる基準軸と前記回転軸との相対位置に関する情報を取得する取得部と、
前記基板の外縁付近の周辺部に対して前記パターンの像を投影する場合には、前記取得部により取得した前記相対位置に関する情報に基づいて、前記遮光板が所定の位置になるように前記回転駆動部と前記シフト駆動部を制御する制御部を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記遮光板の前記円弧状部分の曲率半径は、前記基板の外縁の前記円弧状部分の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記相対位置に関する情報は、前記基準軸に対する前記回転軸の位置ずれの方向と位置ずれの量を表す情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記基準軸と前記回転軸の相対位置に関する情報は、前記制御部により前記回転駆動部を制御して、前記遮光板を回転駆動し、前記遮光板をそれぞれ異なる2つの回転駆動した位置に配置した状態で前記光源からの光を用いることで取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記基板を保持して移動する基板ステージ6を有し、前記基板ステージ6には光検出部が設けられており、
前記取得部は、前記遮光板をそれぞれ異なる2つの回転駆動した位置に配置した状態で前記光源からの光を前記光検出部により受光することで得た情報に基づいて前記前記相対位置に関する情報を取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記領域を規定する前記遮光板とは異なる遮光部材を有し、
前記遮光板は、中心部に開口部を有し、前記開口部の対向する位置に前記円弧状部分が形成された枠体であり、
前記基板の中心付近に対して前記パターンの像を投影する場合には、前記パターンの像の前記基板上に投影される領域に到達する前記光源からの光は前記枠体の前記開口部を通過しており、前記領域を前記遮光部材で規定していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光するステップと、
露光された前記基板を現像するステップと、
を有することを特徴とするデバイスの製造方法。
【請求項1】
パターンが形成された原版を光源からの光で照明する照明光学系と、前記パターンの像を外縁に円弧状部分を含む基板に投影する投影光学系を有する光学系を備える露光装置であって、
前記光学系の光路において前記投影光学系の物体面と共役な面或いはそれらの面の近傍に配置され、前記パターンの像が前記基板に投影される領域の外縁の少なくとも一部を円弧状に規定するための円弧状部分を有する遮光板と、
前記光学系の光路に沿った回転軸まわりに前記遮光板を回転駆動する回転駆動部と、
前記回転軸と交わる方向に前記遮光板をシフト駆動するシフト駆動部と、
前記回転駆動部により前記遮光板を回転駆動させ、前記光学系により前記パターンの像を前記基板に投影する際の基準となる基準軸と前記回転軸との相対位置に関する情報を取得する取得部と、
前記基板の外縁付近の周辺部に対して前記パターンの像を投影する場合には、前記取得部により取得した前記相対位置に関する情報に基づいて、前記遮光板が所定の位置になるように前記回転駆動部と前記シフト駆動部を制御する制御部を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記遮光板の前記円弧状部分の曲率半径は、前記基板の外縁の前記円弧状部分の曲率半径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記相対位置に関する情報は、前記基準軸に対する前記回転軸の位置ずれの方向と位置ずれの量を表す情報であることを特徴とする請求項1または2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記基準軸と前記回転軸の相対位置に関する情報は、前記制御部により前記回転駆動部を制御して、前記遮光板を回転駆動し、前記遮光板をそれぞれ異なる2つの回転駆動した位置に配置した状態で前記光源からの光を用いることで取得することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記基板を保持して移動する基板ステージ6を有し、前記基板ステージ6には光検出部が設けられており、
前記取得部は、前記遮光板をそれぞれ異なる2つの回転駆動した位置に配置した状態で前記光源からの光を前記光検出部により受光することで得た情報に基づいて前記前記相対位置に関する情報を取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記領域を規定する前記遮光板とは異なる遮光部材を有し、
前記遮光板は、中心部に開口部を有し、前記開口部の対向する位置に前記円弧状部分が形成された枠体であり、
前記基板の中心付近に対して前記パターンの像を投影する場合には、前記パターンの像の前記基板上に投影される領域に到達する前記光源からの光は前記枠体の前記開口部を通過しており、前記領域を前記遮光部材で規定していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の露光装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光するステップと、
露光された前記基板を現像するステップと、
を有することを特徴とするデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−69986(P2013−69986A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209100(P2011−209100)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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