説明

露光装置

【課題】大型の被露光材を露光するために、複雑且つ高コストの露光機構を要することなく、露光に使用するマスクのコストを抑えることである。
【解決手段】本発明に係る露光装置は、光源からの照射光を遮断する遮光領域と照射光を透過させる透光領域とを金属板に形成した複数のメタルマスクと、光源と搬送された被露光材との間に、複数のメタルマスクを保持するマスク保持部とを備える。マスク保持部は、同一平面上に並置された複数のメタルマスクを、隣り合うメタルマスクの各端部が互いに接触するように、連結して保持するものであり、複数のメタルマスクは、並置且つ連結されることによって全体として1個のメタルマスクを構成すると共に、マスク保持部に対して、それぞれ個別に着脱できるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関するものであって、特に、所定のマスクパターンを有するマスクを用いて被露光材の表面を露光する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被露光材を搬送しながら、所定のマスクパターンを有するマスクを介して被露光材の表面を露光する露光装置が知られている。このような露光装置は、例えば、液晶表示装置用のカラーフィルタの製造や、光配向膜の配向処理等に用いられる。液晶表示装置の製造に関しては、生産性の向上とコストダウンのために、被露光材の大型化が進んでいる。例えば、カラーフィルタの製造や光配向膜の配向処理において被露光材として使用されるガラス基板では、約2400mm×2800mm程度のサイズを有する第9世代、約2900mm×3100mm程度のサイズを有する第10世代、さらに大型化する第11世代、第12世代等、急速な大型化が進んでいる。
【0003】
露光対象が大型化すると、大型の被露光材に所定のパターンを露光するためには、従来よりも広い面積に亘って、露光光を遮光又は透光できるマスクが必要になる。しかしながら、被露光材の大型化に合わせてマスクを大型化すると、マスクの製造の困難度が高くなり、それに伴ってコストも高騰してしまう。例えば、マスクのコストを抑えるために、安価なメタルマスクを用いようとした場合であっても、被露光材の幅が1mを超えると、対応できる寸法の安価なメタルマスクはない。
【0004】
マスクの大型化を避ける方法として、複数のマスクを用いて被露光材を露光する方法が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、第1のマスクを保持して走査方向へ移動する第1マスクステージと、第2のマスクを保持して第1マスクステージに対して移動可能に構成された第2のマスクステージを有する露光装置が記載されている。この露光装置において第1のマスクと第2のマスクは互いに分離して、それぞれ、別個のマスクステージに保持されている。前述のように、第2のマスクステージは第1マスクステージに対して移動可能であり、制御装置によって、第1マスクステージと第2のマスクステージの相対配置が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−258391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された露光装置では、複数のマスクごとに、それぞれ別個のマスクステージを設ける必要があり、これらのマスクステージをそれぞれ別個に移動させる機構も必要である。したがって、マスクを用いた露光方法が複雑になると共に、露光装置の製造コストも高くなってしまう。
【0007】
そこで本発明の目的は、大型の被露光材を露光するために、複雑且つ高コストの露光機構を要することなく、露光に使用するマスクのコストを抑えることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、露光装置に係るものである。上記目的を達成するために、本発明に係る露光装置は、被露光材の表面を照射する光源と、被露光材を搬送する搬送部と、光源からの照射光を遮断する遮光領域と照射光を透過させる透光領域とを金属板に形成した複数のメタルマスクと、光源と搬送された被露光材との間に、複数のメタルマスクを保持するマスク保持部とを備える。マスク保持部は、同一平面上に並置された複数のメタルマスクを、隣り合うメタルマスクの各端部が互いに接触するように、連結して保持するものであり、複数のメタルマスクは、並置且つ連結されることによって全体として1個のメタルマスクを構成すると共に、マスク保持部に対して、それぞれ個別に着脱できるものである。
【0009】
「被露光材」とは、露光される対象物をいう。「被露光材」は、露光される表面を有する基板及び基材を含み、「被露光材」の一例として、フォトレジスト膜を積層したガラス基板や感光性フィルム等がある。
「メタルマスク」とは、金属製のマスクをいう。
「並置」とは、並べて置くことをいう。複数のメタルマスクを被露光材の搬送方向に対して垂直方向に並置してもよく、被露光材の搬送方向に対して平行方向に並置してもよい。
【0010】
一例として、マスク保持部は、並置且つ連結された複数のメタルマスクを鉛直に保持するものであり、搬送部は、被露光材の表面が複数のメタルマスクと対向するように、被露光材を鉛直方向に搬送するものである。この場合、一例として、複数のメタルマスクは、透光領域を構成する複数のスリットを備え、該スリットは鉛直方向に延びるものである。
【0011】
「鉛直」とは水平面に対して垂直の方向をいう。特許請求の範囲の記載及び明細書の記載において、「鉛直」は「略鉛直」を含む。
「スリット」とは細長い開口部をいう。
【0012】
マスク保持部は、複数のメタルマスクを吸着保持するための吸着部を備えてもよく、吸着部は、複数のメタルマスクの着脱時において、複数のメタルマスクの内の一部のメタルマスクのみを吸着保持するように、制御可能なものであってもよい。
【0013】
一例として、複数のメタルマスクに形成された遮光領域と透光領域は、マスクパターンを形成するものであり、少なくとも1つのメタルマスクのマスクパターンが、他のメタルマスクのマスクパターンと異なるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る露光装置において、マスク保持部は、同一平面上に並置された複数のメタルマスクを、隣り合うメタルマスクの各端部が互いに接触するように、連結して保持するものであり、複数のメタルマスクは、並置且つ連結されることによって全体として1個のメタルマスクを構成すると共に、マスク保持部に対して、それぞれ個別に着脱できるものである。したがって、本発明に係る露光装置では、小型の複数のメタルマスクを連結することによって大型のメタルマスクを形成することができ、連結させる小型のメタルマスクの数を増加させれば、より大型のメタルマスクを形成することができる。よって、本発明に係る露光装置によれば、大型のメタルマスクを単体の基板によって形成するよりも、安価に製造できる小型のメタルマスクを複数個並置且つ連結して用いることによって、メタルマスクに要するコストを抑えることができる。
【0015】
この小型の複数のメタルマスクの連結は、マスク保持部が複数のメタルマスクを連結して保持することによって実現される。したがって、マスク保持部に保持させる小型のメタルマスクを複数個用意しておけばよく、複雑な連結工程は不要である。また、マスク保持部は、複数のメタルマスクを別個に保持して、複数のメタルマスクをそれぞれ別個に移動させるものではない。よって、本発明に係る露光装置において、複雑且つ高コストの露光機構は不要である。
【0016】
以上に述べたように、本発明に係る露光装置によれば、大型の被露光材を露光するために、複雑且つ高コストの露光機構を要することなく、露光に使用するメタルマスクのコストを抑えることができる。
【0017】
本発明に係る露光装置が、並置且つ連結された複数のメタルマスクを鉛直に保持するマスク保持部と、被露光材の表面が複数のメタルマスクと対向するように、被露光材を鉛直方向に搬送する搬送部を備える場合には、露光装置の水平方向における省スペース化を図ることができる。加えて、メタルマスクが薄く形成された場合であっても、メタルマスクが鉛直に保持されることによって、メタルマスクによる撓みをより抑制することができる。
【0018】
鉛直に保持された複数のメタルマスクが透光領域を構成する複数のスリットを備え、該スリットが鉛直方向に延びるものである場合には、複数のスリットに起因して生じる可能性のあるメタルマスクによる撓みを抑止することができる。
【0019】
複数のメタルマスクを吸着保持するための吸着部を備えるようにマスク保持部を構成し、吸着部が、複数のメタルマスクの着脱時において、複数のメタルマスクの内の一部のメタルマスクのみを吸着保持するように、制御可能なものである場合には、一部のメタルマスクをマスク保持部に吸着保持した状態で、他のメタルマスクの着脱が可能である。一部のメタルマスクについては、交換せずに、他のメタルマスクのみを交換したい場合、吸着保持された状態の上記一部のメタルマスクの位置がずれないことから、他のメタルマスクの交換作業をスムーズに行うことができる。
【0020】
複数のメタルマスクにおいて、少なくとも1つのメタルマスクのマスクパターンが、他のメタルマスクのマスクパターンと異なるものである場合、複数のパターンを被露光材に露光することができる。また、並置且つ連結された複数のメタルマスクにおいて、あるパターンを有するメタルマスクを他のパターンを有するメタルマスクと交換することによって、全体として、様々なパターンを有するメタルマスクを構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態に係る露光装置の側面図である。
【図2】(a)図1に示すメタルマスクと基板表面の平面図である。(b)(a)図に示したマスクパターンの拡大図である。
【図3】図1に示すマスクヘッドと吸着機構の構成を示す構成図である。
【図4】第2の実施形態に係る露光装置の側面図である。
【図5】図4に示すメタルマスク及びマスクヘッドを光源部側からみた側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施形態]
以下、本発明の実施の形態を添付の図により説明する。図1に第1の実施形態に係る露光装置の側面図を示す。露光装置1は、大型の被露光材を搬送しながら、所定のマスクパターンを有するメタルマスクを介して被露光材を露光するものである。露光装置1は、水平に配置された被露光材である大型のガラス基板2を上方から照射する光源部3と、ガラス基板2を所望の位置に搬送する搬送部6とを備えている。
【0023】
光源部3は、例えば、超高圧水銀ランプやキセノンフラッシュランプ等からなる光源を有し、露光波長域は一例として、280nm〜400nmである。光源部3は、図示しないフォトインテグレータとコンデンサレンズを搭載している。フォトインテグレータは、光源部3から照射された露光光の横断面内の輝度分布を均一化させる。このフォトインテグレータは、フライアイレンズやロッドレンズ又はライトパイプ等であってもよい。輝度分布が均一化された露光光はコンデンサレンズに入射して均一な輝度分布を有する平行光となる。この平行光の光軸は基板表面2aに対して垂直方向に設定されている。
【0024】
搬送部6は、被露光材の裏面を傷つけないように、被露光材を空気浮上搬送するように構成されている。搬送部6には、気体を噴出する多数の噴出口と気体を吸引する多数の吸引口を有する複数の単位ステージが並設されている。ガラス基板2はその裏面が上記噴出口及び吸引口と対向するように、単位ステージ上に載せられる。搬送部6は、気体の噴出と吸引のバランスによって、ガラス基板2を単位ユニットから所定量だけ浮かせた状態で、搬送ローラ等を用いて搬送する。搬送部6によって、搬送方向Aに平行なX軸方向xと、図1において紙面に垂直な方向でありX軸に対して垂直に交わるY軸方向(図2におけるY軸方向y)にガラス基板2を移動することができる。
【0025】
さらに、露光装置1は、メタルマスク7と該メタルマスク7を保持するマスクヘッド(マスク保持部)8を備えている。メタルマスク7は光源部3からの露光光を遮光する遮光領域と光源部3からの露光光を透過する透光領域とからなる所定のマスクパターンを有する。ガラス基板2の表面2aはフォトレジスト層によって覆われている。メタルマスク7を透過した露光光がガラス基板2の表面2aに照射されることによって、ガラス基板2の表面2aは所定のパターンに露光される。
【0026】
マスクヘッド8は、ガラス基板2と光源部3との間に、基板表面2aから所定の距離を有するように配置されている。メタルマスク7は、光源部3から照射された平行光の光軸に対して垂直な水平面内に位置するように、マスクヘッド8によって保持される。マスクヘッド8は、サーボモータ、リニアモータ等を有するマスクヘッド駆動部(不図示)によって、搬送方向Aに平行なX軸方向xと、図1において紙面に垂直な方向でありX軸に対して垂直に交わるY軸方向y(図2参照)に移動可能である。
【0027】
また、露光装置1は、該装置の各構成要素を制御する制御部10を備えている。制御部10は、光源部3において光源の点灯及び消灯を制御する光源制御部11と、搬送方向Aに平行なX軸方向xとX軸方向xに対して垂直に交わるY軸方向yへのマスクヘッド8の移動を制御するマスクヘッド制御部12と、マスクヘッド8にメタルマスク7を吸着するためのエア吸引を制御するエア吸引制御部13と、搬送方向Aに平行なX軸方向xとX軸方向xに対して垂直に交わるY軸方向yへのガラス基板2の移動を制御する搬送制御部14を備えている。
【0028】
メタルマスク7の平面図と基板表面2aの平面図を並べて図2(a)に示す。メタルマスク7は、マスクパターン15を有するメタルマスク7aとマスクパターン16を有するメタルマスク7bとに分割されている。メタルマスク7aとメタルマスク7bは金属板によって形成されていて、メタルマスク7aとメタルマスク7bの厚みは同一である。
【0029】
メタルマスク7aとメタルマスク7bは、搬送方向Aに対して垂直に交わるY軸方向yに沿って並置されている。メタルマスク7aとメタルマスク7bは、それぞれ、マスクパターン15とマスクパターン16を形成した矩形の主表面を有する板状部材である。メタルマスク7a及びメタルマスク7bの矩形の主表面は、それぞれ、X軸方向xに延びる短辺とY軸方向yに延びる長辺とを有する。メタルマスク7a及びメタルマスク7bのX軸方向xに延びる短辺の長さは同一である。
【0030】
並置されたメタルマスク7a及びメタルマスク7bは、隣接する端部が接触して、連結部17を構成する。隣接する端部の長さ、すなわち、メタルマスク7a及びメタルマスク7bの短辺の長さは同一であるため、連結部17で連結されたメタルマスク7aとメタルマスク7bの主表面は、連結して1個の矩形を構成する。メタルマスク7a及びメタルマスク7bを並置且つ連結することによって構成されたメタルマスク7の幅は、ガラス基板2の幅wと同一になるように形成されている。ここで、メタルマスク7の幅とは、Y軸方向yに延びるメタルマスク7の長辺の長さであり、メタルマスク7aの長辺の長さにメタルマスク7bの長辺の長さを加えた長さである。
【0031】
メタルマスク7aのマスクパターン15とメタルマスク7bのマスクパターン16の拡大図を図2(b)に示す。マスクパターン15は、露光光を遮断する遮光領域15aと露光光を透過させる透光領域15bとを有している。透光領域15bは、金属板に形成したスリットである。露光光はスリットを介して金属板を透過する。マスクパターン15において、スリットを形成しなかった部分は、金属板が露光光を遮光するので遮光領域15aとなる。マスクパターン15は、直線状に延びる遮光領域15aと透光領域15bをY軸方向yに沿って交互に配置したマスクパターンである。
【0032】
マスクパターン16も、マスクパターン15と同様に、露光光を遮断する遮光領域16aと露光光を透過させる透光領域16bとを有し、X軸方向xに直線状に延びる遮光領域16aと透光領域16bをY軸方向yに沿って交互に配置したマスクパターンである。マスクパターン16における遮光領域16aの幅は、マスクパターン15における遮光領域15aよりも狭く、透光領域16bの幅は、透光領域15bの幅よりも広い。
【0033】
なお、簡潔にするため図2(a)には明示していないが、メタルマスク7a,7bの主表面において、マスクパターン15及びマスクパターン16が形成されていない端部は、透光口が形成されていないため、遮光領域である。したがって、メタルマスク7を介して基板表面2aに照射される露光光は、透光領域15b,16bを通って照射される露光光のみである。
【0034】
ガラス基板2を搬送方向Aに搬送しながら、メタルマスク7を介して露光すると、基板表面2aには、メタルマスク7aのマスクパターン15によって露光されたパターン18とメタルマスク7bのマスクパターン16によって露光されたパターン19が形成されることになる。
【0035】
メタルマスク7a,7bは、マスクヘッド8に対して個別に着脱可能である。図1のガラス基板2側からみたマスクヘッド8の平面図を図3に示す。マスクヘッド8は、メタルマスク7a及びメタルマスク7bの端部を保持する端部保持部20,21を有している。端部保持部20は、搬送方向Aと垂直に交わるY軸方向yに沿って延びるメタルマスク7a及びメタルマスク7bの各一方の端部を共に保持し、端部保持部21は、Y軸方向yに沿って延びるメタルマスク7a及びメタルマスク7bの各他方の端部を共に保持している。
【0036】
端部保持部20,21は、光源部3側へ突出する突出部20a,21a(図1参照)と、メタルマスク7a及びメタルマスク7bの端部を吸着するマスク吸着部20b,21bを備えている。マスク吸着部20b,21bは、それぞれ複数の吸引口23a,23bを有している。吸引口23aは、メタルマスク7aの端部と接する位置に形成された複数の吸引口であり、吸引口23bは、メタルマスク7bの端部と接する位置に形成された複数の吸引口である。第1の実施形態では、吸引口23a,23bはマスク吸着部20b,21bにおけるマスクヘッド8の下面側、すなわち、ガラス基板2と対向する側の面に形成されている。
【0037】
なお、図3において、マスクヘッド8に対するメタルマスク7a及びメタルマスク7bの位置関係を明確にするために、メタルマスク7a及びメタルマスク7bを仮想的に2点鎖線によって図示している。実際には、メタルマスク7a及びメタルマスク7bをマスクヘッド8に吸着させると、図3の位置関係において、複数の吸引口23a,23bは、メタルマスク7a及びメタルマスク7bの端部に隠れることになる。
【0038】
複数の吸引口23aは、第1の吸引機構に接続し、複数の吸引口23bは第2の吸引機構に接続している。第1の吸引機構は、エアレギュレータ25と吸引ポンプ26を有している。第2の吸引機構は、エアレギュレータ27と吸引ポンプ28を有している。吸引ポンプ26は、エア吸引制御部13によって駆動されると、複数の吸引口23aから、エアレギュレータ25を介して空気を吸引する。同様に、吸引ポンプ28は、エア吸引制御部13によって駆動されると、複数の吸引口23bから、エアレギュレータ27を介して空気を吸引する。
【0039】
マスクヘッド8は、複数の吸引口23a,23bから空気を吸引することによって、複数の吸引口23a,23bを覆うように並置されたメタルマスク7a及びメタルマスク7bの端部を吸着保持している。エア吸引制御部13は、吸引用ポンプ26,28を共に駆動させるように作動可能であると共に、吸引用ポンプ26,28の一方のみを駆動させるように作動可能である。
【0040】
次に露光装置1の動作について説明する。露光処理前に、マスクヘッド8に複数のメタルマスク7a,7bが並置される。この際、メタルマスク7a,7bの隣合う端部は接触して連結部17を構成する。並置且つ連結されたメタルマスク7a,7bは全体として1個のメタルマスク7として機能する。エア吸引制御部13は、吸引ポンプ26,28を駆動して、複数の吸引口23a,23bから空気を吸引し、メタルマスク7a,7bを吸着保持する。
【0041】
メタルマスク7a,7bがマスクヘッド8に保持されると、被露光材であるガラス基板2は、搬送部6によって、空気搬送される。ガラス基板2のX軸方向x及びY軸方向yにおける位置は、搬送制御部14によって制御される。メタルマスク7を保持したマスクヘッド8のX軸方向x及びY軸方向yにおける位置は、マスクヘッド制御部12によって制御される。
【0042】
ガラス基板2とメタルマスク7との位置合わせが完了すると、ガラス基板2は、搬送方向Aに搬送されながら、スキャン露光される。光源制御部11によって光源部3が作動し、露光光がメタルマスク7を介して、フォトレジスト膜を塗布した基板表面2aに所定時間照射される。スキャン露光されたガラス表面2aには、メタルマスク7a,7bのマスクパターン15,16に対応するパターン18,19が形成される。露光処理されたガラス基板2aは、例えば、液晶表示装置用のカラーフィルタの製造に使用される。
【0043】
第1の実施形態に係る露光装置1では、小型の複数のメタルマスク7a,7bを連結することによって大型のメタルマスク7を形成することができ、連結させる小型のメタルマスクの数を増加させれば、より大型のメタルマスクを形成することができる。よって、露光装置1によれば、大型のメタルマスクを単体の基板によって形成するよりも、安価に製造できる小型のメタルマスクを複数個並置且つ連結して用いることによって、メタルマスクに要するコストを抑えることができる。
【0044】
また、この小型の複数のメタルマスク7a,7bの連結は、マスクヘッド8が複数のメタルマスク7a,7bを連結して保持することによって実現される。したがって、マスクヘッド8に保持させる小型の複数のメタルマスク7a,7bを用意しておけばよく、メタルマスク7a,7bの連結のために、複雑な連結工程は不要である。また、マスクヘッド8は、複数のメタルマスク7a,7bを別個に保持して、複数のメタルマスク7a,7bをそれぞれ別個に移動させるものではない。よって、露光装置1において、複雑且つ高コストの露光機構は不要である。
【0045】
以上のように、露光装置1によれば、大型の被露光材を露光するために、複雑且つ高コストの露光機構を要することなく、露光に使用するメタルマスクのコストを抑えることができる。
【0046】
露光処理が終了した後、他の被露光材を他の露光パターンで露光する場合には、メタルマスク7a,7bの両方又は一方を交換することができる。メタルマスク7aのみを他のメタルマスクに交換する場合、エア吸引制御部13は、吸引ポンプ28の駆動を維持して、メタルマスク7bをマスクヘッド8に吸着保持した状態で、吸引ポンプ26の駆動を停止し、メタルマスク7aの吸着を解除する。これにより、メタルマスク7bをマスクヘッド8に吸着保持した状態で、メタルマスク7aのみを交換することができる。したがって、吸着保持された状態のメタルマスク7bの位置がずれないことから、メタルマスク7aの交換作業をスムーズに行うことができる。また、このように、メタルマスク7を構成する複数のメタルマスク7a,7bを交換することによって、様々なパターンを有するメタルマスク7を簡易に形成することができる。
【0047】
[第2の実施形態]
図4に第2の実施形態に係る露光装置の側面図を示す。露光装置30は、第1の実施形態に係る露光装置1と同様に、大型の被露光材を搬送しながら、所定のマスクパターンを有するメタルマスクを介して被露光材を露光するものである。露光装置1と異なる点は、露光装置30が、感光性樹脂フィルム等のシート状基材32を鉛直方向に搬送しながら露光する点である。
【0048】
搬送ローラ36a,36b,36cは、搬送部を構成し、シート状基材32を搬送するものである。シート状基材32の端部は省略して図示している。図示しない格納ロールから引き出されたシート状基材32は、搬送ローラ36aに送られ、搬送ローラ36a,36bによって、鉛直方向vと平行な搬送方向Bに沿って搬送される。シート状基材32は、搬送方向Bに沿って搬送される間に露光される。露光されたシート状基材32は、搬送ローラ36b,36cを介して図示しない巻取ロールに巻き取られる。
【0049】
搬送制御部14は、第1の実施形態と同様に、被露光材の搬送を制御するものである。搬送制御部14は、搬送ローラ36a,36b,36cの位置及び回転等を制御して、鉛直方向vにおけるシート状基材32の位置と、図4において紙面に垂直な方向であり鉛直方向vに対して垂直に交わるY軸方向(図5におけるY軸方向y)におけるシート状基材32の位置を調整する。
【0050】
光源部3及びメタルマスク7は、第1の実施形態と同様の構成を有し、マスクヘッド38は、後述するように複数の吸引口23a,23bが形成される位置が異なる点を除いて、第1の実施形態におけるマスクヘッド8と同様の構成を有している。しかしながら第2の実施形態においては、光源部3,メタルマスク7及びマスクヘッド38の配置が第1の実施形態とは異なっている。第2の実施形態において、マスクヘッド38は、搬送方向Bに搬送されるシート状基材32の表面32aとメタルマスク7を対向させるために、メタルマスク7を鉛直に保持するように設置されている。光源部3は、照射光の光軸が鉛直に保持されたメタルマスク7の表面に対して垂直になるように設置されている。
【0051】
第1の実施形態と同様に、光源制御部11は光源部3を制御し,マスクヘッド制御部12はマスクヘッド38の移動を制御し,エア吸引制御部13は、マスクヘッド38の吸引口23a,23bを介してメタルマスク7a,7bの吸着保持を制御する。なお、第2の実施形態において、マスクヘッド38はメタルマスク7を鉛直に保持するように設置されているため、マスクヘッド制御部12は、鉛直方向vとY軸方向y(図5参照)におけるマスクヘッド38の位置を制御する。
【0052】
メタルマスク7及びマスクヘッド38を光源部3側からみた側面図を図5(a)に示す。第1の実施形態とは異なり、メタルマスク7a,7bは、光源部3側からマスクヘッド38に取り付けられる。端部保持部20は、Y軸方向yに沿って延びるメタルマスク7a,7bの上端を保持し、端部保持部21は、Y軸方向yに沿って延びるメタルマスク7a,7bの下端を保持している。第2の実施形態において、端部保持部21の突出部21aは下端載置部を構成し、メタルマスク7a,7bの下端は、Y軸方向yに沿って延びる突出部21aの上に載せ置かれている。
【0053】
図5(b)に、マスクヘッド38を光源部3側からみた側面図を示す。図5(b)において、マスクヘッド38に対するメタルマスク7a及びメタルマスク7bの位置関係を明確にするために、メタルマスク7a及びメタルマスク7bを仮想的に2点鎖線によって図示している。実際には、メタルマスク7a及びメタルマスク7bをマスクヘッド38に吸着させると、図5(b)の位置関係において、マスク吸着部20b,21b及び複数の吸引口23a,23bは、メタルマスク7a及びメタルマスク7bの端部に隠れることになる。第2の実施形態では、吸引口23a,23bはマスク吸着部20b,21bにおいて、光源部3と対向する側の面に形成されている。
【0054】
第2の実施形態に係る露光装置30によれば、メタルマスク7を鉛直方向に縦型配置することによって、第1の実施形態において前述した利点に加えて、水平方向における省スペース化を図ることができる。さらに、メタルマスク7が薄く形成された場合であっても、メタルマスク7が鉛直に保持されることによって、メタルマスク7の自重による撓みをより抑制することができる。また、透光領域15b,16bを形成する複数のスリットが鉛直方向に延びるように、メタルマスク7が保持されているため、複数のスリットに起因して生じる可能性のあるメタルマスクの自重による撓みを抑止することができる。
【0055】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。一例として、複数のメタルマスクのマスクヘッドへの取り付けは、吸着に限定されない。マスクヘッドが複数のメタルマスクの端部を挟み込むことによってメタルマスクを保持するように構成してもよい。また、第1及び第2の実施形態において、メタルマスク7の吸着は、エア吸引によるものであるが、これに限定されない。例えば、マスクヘッド8,38の複数の吸引口23a,23bに代えて、マスクヘッド8,38の端部保持部20,21に複数の電磁石を設置してもよい。この場合、磁力によって、メタルマスク7a,7bをマスクヘッド8,38に吸着保持することができる。また、一部の電磁石のみを駆動することによって、吸着力を個別に制御することができる。
【0056】
第1及び第2の実施形態においては、メタルマスク7を2枚のメタルマスク7a,7bによって構成しているが、これに限定されない。さらに多くの枚数のメタルマスクを並置且つ連結して1個のメタルマスク7を構成してもよい。この場合、マスクヘッド8,38は、メタルマスク7を構成する複数のメタルマスクをすべて連結保持することによって、1個のメタルマスクとして構成されたメタルマスク7を保持する。
【0057】
第1及び第2の実施形態においては、メタルマスク7a,7bに対応して、複数の吸引口を吸引口23a,23bのグループに分けたが、これに限定されない。並置するメタルマスクの数に応じて、複数の吸引口をさらに細かいグループに分けてもよい。この場合、複数の吸引口の各グループにそれぞれ対応するレギュレータ及び吸引ポンプを設けて各グループの吸引口からの吸着力を別個に制御するように構成してもよいし、他の吸引機構によって各グループの吸着力を別個に制御してもよい。また、複数の吸引口において、各吸引口からの吸着力をそれぞれ別個に制御できるように構成してもよい。
【0058】
第1及び第2の実施形態においては、複数のメタルマスク7a,7bを被露光材2,32の搬送方向A,Bに対して垂直方向に並置しているが、これに限定されない。複数のメタルマスク7a,7bを被露光材2,32の搬送方向A,Bに対して平行方向に並置してもよい。この場合、マスクヘッド8,38は、マスクヘッド8,38の端部保持部20,21が、搬送方向A,Bに平行に延びるメタルマスク7の端部を保持するように構成される。
【0059】
第1の実施形態において、マスクヘッド8のメタルマスク7に対する吸着力が低下した場合に備えて、メタルマスク落下防止機構を設けてもよい。例えば、このメタルマスク落下防止機構は、メタルマスク7の下側において、メタルマスク7を介してマスクヘッド8の端部保持部20,21と対向するように配置した板状部材である。このメタルマスク落下防止機構は、メタルマスク7の吸着中にのみ作動するように構成可能であり、メタルマスク7がマスクヘッド8に吸着されていないときには、上記板状部材は、落下防止機構収納部に収納されているように構成してもよい。
【0060】
第2の実施形態において、第1の実施形態におけるマスクヘッド8を第2の実施形態におけるマスクヘッド38の代わりに用いてもよい。すなわち、第1の実施形態におけるマスクヘッド8を鉛直方向に設置し、メタルマスク7a,7bをシート状基材32側からマスクヘッド8に吸着させるように構成してもよい。
【0061】
第1及び第2の実施形態における露光装置1,30は、様々な露光方法に適用することができる。露光方法に応じて、マスクヘッド8,38の被露光材2,32に対する露光中の位置は、固定されていてもよいし、搬送される被露光材2,32の搬送方向に、被露光材2,32の搬送と同期して所定の距離を移動するように構成されていてもよい。第1及び第2の実施形態における露光装置1,30は、光配向処理や3Dフィルムの露光にも適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,30 露光装置
2 ガラス基板
2a ガラス基板表面
3 光源部
6 搬送部
7,7a,7b メタルマスク
8,38 マスクヘッド(マスク保持部)
15,16 マスクパターン
15a,16a 遮光領域
15b,16b 透光領域
17 連結部
20,21 端部保持部
23a,23b 吸引口
36a,36b,36c 搬送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被露光材の表面を照射する光源と、
前記被露光材を搬送する搬送部と、
前記光源からの照射光を遮断する遮光領域と前記照射光を透過させる透光領域とを金属板に形成した複数のメタルマスクと、
前記光源と搬送された前記被露光材との間に、前記複数のメタルマスクを保持するマスク保持部と
を備え、
前記マスク保持部は、同一平面上に並置された前記複数のメタルマスクを、隣り合うメタルマスクの各端部が互いに接触するように、連結して保持するものであり、
前記複数のメタルマスクは、並置且つ連結されることによって全体として1個のメタルマスクを構成すると共に、前記マスク保持部に対して、それぞれ個別に着脱できるものであることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記マスク保持部は、並置且つ連結された前記複数のメタルマスクを鉛直に保持するものであり、
前記搬送部は、前記被露光材の表面が前記複数のメタルマスクと対向するように、前記被露光材を鉛直方向に搬送するものであることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記複数のメタルマスクは、前記透光領域を構成する複数のスリットを備え、該スリットは鉛直方向に延びるものであることを特徴とする請求項2記載の露光装置。
【請求項4】
前記マスク保持部は、前記複数のメタルマスクを吸着保持するための吸着部を備え、
前記吸着部は、前記複数のメタルマスクの着脱時において、前記複数のメタルマスクの内の一部のマスクのみを吸着保持するように、制御可能なものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の露光装置。
【請求項5】
前記複数のメタルマスクに形成された前記遮光領域と前記透光領域は、マスクパターンを形成するものであり、少なくとも1つのメタルマスクのマスクパターンが、他のメタルマスクのマスクパターンと異なるものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−97155(P2013−97155A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239385(P2011−239385)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】