説明

静電チャックの製法及び静電チャック

【課題】誘電層の厚みのバラツキを小さく抑える。
【解決手段】静電チャックの製法として、(a)成形型にセラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを投入し、その成形型内でゲル化剤を化学反応させてスラリーをゲル化させたあと離型することにより、第1及び第2のセラミック成形体11、12を得る工程と、(b)第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、(c)第1及び第2のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面に静電電極用ペースト14を印刷して静電電極とする工程と、(d)静電電極を挟み込むようにして第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成する工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャックの製法及び静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電チャックの製法としては、2層構造の静電チャックの製法や3層構造の静電チャックの製法が知られている。
【0003】
前者としては、アルミナ焼結体を形成する工程と、そのアルミナ焼結体上に静電電極用の電極ペーストを印刷する工程と、その電極ペースト上にアルミナ粉体を充填し金型成形する工程と、金型成形する工程で一体化された成形体を焼成する工程とを含む製法が知られている(特許文献1参照)。この特許文献1では、アルミナ焼結体の代わりにアルミナ仮焼体を用いることも開示されている。
【0004】
一方、後者としては、アルミナ焼結体の上面に静電電極用の電極ペーストを印刷すると共に下面にヒーター電極用の電極ペーストを印刷する工程と、その印刷後のアルミナ焼結体を仮焼する工程と、静電電極の上にアルミナ粉体を配置すると共にヒーター電極の下にもアルミナ粉体を配置し、その状態でこれらを加圧成形して加圧焼成を施す工程とを含む製法が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−343733号公報
【特許文献2】特開2008−47885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2の製法では、静電電極の上にアルミナ粉体を配置して加圧成形したあと焼成する工程を含むため、アルミナ粉体の成形体内での密度のバラツキや焼結体と成形体との同時焼成に起因して、積層焼成体中の静電電極の反りが大きくなる。こうした反りが大きくなると、その後表面加工した際、ウェハー載置面と静電電極との距離(つまり誘電層の厚み)のバラツキが大きくなり、ひいてはウェハーをチャックする際の吸着力が面内でばらつくという問題が生じる。特に、近年、誘電層の厚みが薄くなる傾向にあるため、こうした問題が顕著になりつつある。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の静電チャックの製法は、
(a)成形型にセラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記セラミックスラリーをゲル化させたあと離型することにより、第1及び第2のセラミック成形体を得る工程と、
(b)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(c)前記第1のセラミック仮焼体が静電チャックの誘電層になるものとした上で、前記第1及び第2のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面に静電電極用ペーストを印刷して静電電極とする工程と、
(d)前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製する工程と、
を含むものである。
【0009】
本発明の第2の静電チャックの製法は、
(a)成形型にセラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記セラミックスラリーをゲル化させたあと離型することにより、第1及び第2のセラミック成形体を得る工程と、
(b)前記第1のセラミック成形体が静電チャックの誘電層になるものとした上で、前記第1及び第2のセラミック成形体のいずれか一方の表面に静電電極用ペーストを印刷して静電電極とする工程と、
(c)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(d)前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製する工程と、
を含むものである。
【0010】
従来の静電チャックの製法では、静電チャックの静電電極に反りが発生しやすく、誘電層の厚みのバラツキが大きかった。その理由としては、セラミック成形体とセラミック焼結体とを積層してホットプレス焼成するためセラミック成形体では焼成が1回、セラミック焼結体では焼成が2回となることや、セラミック粉体をバインダーを用いて造粒した粒径の大きな造粒粉をプレス成形したセラミック成形体を用いているため、密度が一様になりにくいことなどがある。これに対して、本発明の第1又は第2の静電チャックの製法によれば、セラミック仮焼体同士を積層してホットプレス焼成しているため焼成回数はどちらも同じであることや、セラミック造粒粉に比べて粒径が小さいセラミック粉体を分散・混合したスラリーをゲル化したセラミック成形体を用いているため密度が一様になりやすいことなどから、静電電極に反りが発生しにくく、静電電極の反りに起因する誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。
【0011】
ところで、第1及び第2のセラミック成形体につき、セラミック粉末をそのままプレス成形して作製することも考えられるが、その場合には、セラミック粉末同士の密着力が不足するためハンドリングできない。また、第1及び第2のセラミック成形体につき、セラミック粉末をバインダーを用いて造粒した造粒粉をプレス成形することも考えられるが、その場合には、粒径が当初のセラミック粉末に比べて大きくなる(例えば造粒前の粒径が0.4〜0.6μmであるのに対し、造粒後の粒径は70〜130μm)ため、表面に比較的大きな凹凸が現れ、仮焼後の電極ペーストを均一の厚さに印刷することができず、静電電極の厚さの不均一に起因する誘電層の厚みのバラツキが大きくなる。これに対して、本発明の第1の静電チャックの製法では、第1及び第2セラミック成形体につき、セラミック粉末を細かい粒径のまま用いてゲル化して作製するため、仮焼後も表面は滑らかであり、電極ペーストを均一の厚さに印刷することができる。このため、静電電極の厚さの不均一に起因する誘電層の厚みのバラツキも小さく抑えることができる。また、本発明の第2の静電チャックの製法では、第1及び第2セラミック成形体につき、セラミック粉末を細かい粒径のまま用いてゲル化して作製するため、その成形体表面は滑らかであり、電極ペーストを均一の厚さに印刷することができる。このため、静電電極の厚さの不均一に起因する誘電層の厚みのバラツキも小さく抑えることができる。
【0012】
以上のように、本発明の第1及び第2の静電チャックの製法によれば、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。この誘電層の厚みのバラツキの要因としては、静電電極の反りと静電電極の厚みの不均一さとがあるが、本発明の第1及び第2の静電チャックの製法では、いずれの要因も抑制することができるため、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。
【0013】
なお、本発明の第1及び第2の静電チャックの製法において、工程(a)はいわゆるゲルキャスト法(例えば特開2001−335371号公報)を応用したものであるが、この方法は本来、複雑な形状の成形体を作製するためのものであるから、ゲルキャスト法によって得られた成形体に圧力を加えることは通常考えにくい。これに対して、本発明の第1及び第2の静電チャックの製法は、こうしたゲルキャスト法を応用してセラミック成形体を作製しているものの、そのセラミック成形体を仮焼後、加圧しながら焼成することにより、静電電極の反りを小さくでき、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることに成功したものであるから、単にゲルキャスト法を応用したものとは一線を画した技術といえる。
【0014】
本発明の第1の静電チャックの製法において、前記工程(a)では、前記第1及び第2のセラミック成形体と同様にして第3のセラミック成形体も作製し、前記工程(b)では、前記第1及び第2のセラミック仮焼体と同様にして第3のセラミック仮焼体も作製し、前記工程(c)では、前記第2及び第3のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面にヒーター電極用ペーストを印刷してヒーター電極とし、前記工程(d)では、前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせると共に前記ヒーター電極を挟み込むようにして前記第2及び第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製するようにしてもよい。こうすれば、静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックにおいて、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。
【0015】
本発明の第2の静電チャックの製法において、前記工程(a)では、前記第1及び第2のセラミック成形体と同様にして第3のセラミック成形体も作製し、前記工程(b)では、前記第2及び第3のセラミック成形体のいずれか一方の表面にヒーター電極用ペーストを印刷してヒーター電極とし、前記工程(c)では、前記第1及び第2のセラミック成形体と同様にして前記第3のセラミック成形体も乾燥、脱脂、仮焼して第3のセラミック仮焼体を作製し、前記工程(d)では、前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせると共に前記ヒーター電極を挟み込むようにして前記第2及び第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製するようにしてもよい。こうしても、静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックにおいて、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。
【0016】
本発明の第1及び第2の静電チャックの製法において、前記工程(a)では、前記セラミック粉体として、アルミナに焼結助剤としてMgF2を加えたものを用い、前記工程(d)では、ホットプレス焼成温度を1120〜1300℃の範囲に設定してもよい。焼結助剤を加えない場合、アルミナを焼結させるためにはホットプレス焼成温度を1600〜2000℃程度の高温にすることが必要だが、ここでは、焼結助剤を加えているため、ホットプレス焼成温度が1120〜1300℃という低温でもアルミナが焼結する。その結果、ホットプレス焼成後のアルミナは、平均粒径が小さくなり(例えば0.7〜1.2μm)、粒径分布が小径側に偏ったもの(例えば平均粒径における累積頻度が60%以上)になる。それにより、パーティクルの発生が格段に抑制され、絶縁破壊耐圧が高く且つそのバラツキも少なくなる。また、寸法精度も高くなる。なお、MgF2のほかに添加剤としてMgOを加えてもよい。
【0017】
本発明の第1又は第2の静電チャックの製法において、前記工程(a)で使用するセラミック粉体は、平均粒径が0.4〜0.6μmであることが好ましい。こうすれば、セラミック成形体やセラミック仮焼体は表面が非常に滑らかなものになるため、その表面に電極ペーストを印刷する際に電極ペーストの厚さを一層精度よく一様にすることができる。その結果、静電電極の厚さの不均一に起因する誘電層の厚みのバラツキをより小さく抑えることができる。
【0018】
本発明の静電チャックは、誘電層の厚みの最大値と最小値との差が60μm以下のものである。この静電チャックによれば、ウェハー載置面と静電電極との距離(つまり誘電層の厚み)のバラツキが小さくなるため、ウェハーをチャックする際の吸着力が面内でほぼ均一になる。こうした静電チャックは、上述した第1又は第2の静電チャックの製法によって得ることができる。また、こうした静電チャックは、誘電層の厚みが250〜500μmとしてもよい。更に、こうした静電チャックでは、誘電層を構成するセラミック粒子は、平均粒径が0.7〜1.2μmであり、全粒子の個数に対する平均粒径以下の粒子の個数の割合が60%以上であってもよい。こうすれば、パーティクルの発生が格段に抑制され、絶縁破壊耐圧が高く且つそのバラツキも少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】2層構造の静電チャックを作製する際の電極用ペーストの印刷の仕方を示す説明図である。
【図2】3層構造の静電チャックを作製する際の電極用ペーストの印刷の仕方を示す説明図である。
【図3】静電電極の反りが誘電層の厚みのバラツキに影響を及ぼすことを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1及び第2の静電チャックの製法の具体的な形態について、以下に詳説する。
【0021】
1.セラミック成形体の作製
セラミック成形体の作製は、本発明の第1及び第2の静電チャックの製法における工程(a)に相当する。
【0022】
セラミック粉体の材料としては、酸化物系セラミックでもよいし、非酸化物系セラミックでもよい。例えば、アルミナ、イットリア、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、サマリア、マグネシア、フッ化マグネシウム、酸化イッテルビウム等が挙げられる。これらの材料は、1種類単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。セラミック粉体の平均粒径は、均一なセラミックスラリーを調整・作製可能であれば、特に限定されないが、0.4〜0.6μmが好ましく、0.45〜0.55μmがより好ましい。セラミック粉体として、アルミナに焼結助剤としてMgF2を加えたものを用いてもよい。
【0023】
溶媒としては、分散剤及びゲル化剤を溶解するものであれば、特に限定されないが、例えば、炭化水素系溶媒(トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等)、エーテル系溶媒(エチレングリコールモノエチルエーテル、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等)、アルコール系溶媒(イソプロパノール、1−ブタノール、エタノール、2−エチルヘキサノール、テルピネオール、エチレングリコール、グリセリン等)、ケトン系溶媒(アセトン、メチルエチルケトン等)、エステル系溶媒(酢酸ブチル、グルタル酸ジメチル、トリアセチン等)、多塩基酸系溶媒(グルタル酸等)が挙げられる。特に、多塩基酸エステル(例えば、グルタル酸ジメチル等)、多価アルコールの酸エステル(例えば、トリアセチン等)等の、2以上のエステル結合を有する溶媒を使用することが好ましい。
【0024】
分散剤としては、セラミック粉体を溶媒中に均一に分散するものであれば、特に限定されない。例えば、ポリカルボン酸系共重合体、ポリカルボン酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、リン酸エステル塩系共重合体、スルホン酸塩系共重合体、3級アミンを有するポリウレタンポリエステル系共重合体等が挙げられる。特に、ポリカルボン酸系共重合体、ポリカルボン酸塩等を使用することが好ましい。この分散剤を添加することで、成形前のスラリーを、低粘度とし、且つ高い流動性を有するものとすることができる。
【0025】
ゲル化剤としては、例えば、イソシアネート類、ポリオール類及び触媒を含むものとしてもよい。このうち、イソシアネート類としては、イソシアネート基を官能基として有する物質であれば特に限定されないが、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)又はこれらの変性体等が挙げられる。なお、分子内おいて、イソシアネート基以外の反応性官能基が含有されていてもよく、更には、ポリイソシアネートのように、反応官能基が多数含有されていてもよい。ポリオール類としては、イソシアネート基と反応し得る水酸基を2以上有する物質であれば特に限定されないが、例えば、エチレングリコール(EG)、ポリエチレングリコール(PEG)、プロピレングリコール(PG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)、ポリヘキサメチレングリコール(PHMG)、ポリビニルアルコール(PVA)等が挙げられる。触媒としては、イソシアネート類とポリオール類とのウレタン反応を促進させる物質であれば特に限定されないが、例えば、トリエチレンジアミン、ヘキサンジアミン、6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール等が挙げられる。
【0026】
工程(a)では、まず、セラミック粉体に溶媒及び分散剤を所定の割合で添加し、所定時間に亘ってこれらを混合することによりスラリー前駆体を調製し、その後、このスラリー前駆体に、ゲル化剤を添加して混合・真空脱泡してセラミックスラリーとするのが好ましい。スラリー前駆体やスラリーを調製するときの混合方法は、特に限定されるものではなく、例えばボールミル、自公転式撹拌、振動式撹拌、プロペラ式撹拌等を使用可能である。なお、スラリー前駆体にゲル化剤を添加したセラミックスラリーは、時間経過に伴いゲル化剤の化学反応(ウレタン反応)が進行し始めるため、速やかに成形型内に流し込むのが好ましい。成形型に流し込まれたセラミックスラリーは、スラリーに含まれるゲル化剤が化学反応することによりゲル化する。ゲル化剤の化学反応とは、イソシアネート類とポリオール類とがウレタン反応を起こしてウレタン樹脂(ポリウレタン)になる反応である。ゲル化剤の反応によりセラミックスラリーがゲル化し、ウレタン樹脂は有機バインダーとして機能する。
【0027】
2.セラミック仮焼体の作製
セラミック仮焼体の作製は、本発明の第1の静電チャックの製法における工程(b)に相当し、本発明の第2の静電チャックの製法における工程(c)に相当する。セラミック仮焼体を作製するには、セラミック成形体を乾燥したあと脱脂してから仮焼する。
【0028】
セラミック成形体の乾燥は、セラミック成形体に含まれる溶媒を蒸発させるために行う。乾燥温度や乾燥時間は、使用する溶媒に応じて適宜設定すればよい。但し、乾燥温度は、乾燥中のセラミック成形体にクラックが入らないように注意して設定する。また、雰囲気は大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気のいずれであってもよい。
【0029】
乾燥後のセラミック成形体の脱脂は、分散剤や触媒やバインダーなどの有機物を分解・除去するために行う。脱脂温度は、含まれる有機物の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば400〜600℃に設定してもよい。また、雰囲気は大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気のいずれであってもよい。
【0030】
脱脂後のセラミック成形体の仮焼は、強度を高くしハンドリングしやすくするために行う。仮焼温度は、特に限定するものではないが、例えば750〜900℃に設定してもよい。また、雰囲気は大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気のいずれであってもよい。
【0031】
3.電極の形成
電極の形成は、本発明の第1の静電チャックの製法における工程(c)に相当し、本発明の第2の静電チャックの製法における工程(b)に相当する。
【0032】
静電電極用ペーストやヒーター電極用ペーストは、特に限定するものではないが、例えば、導電材料とセラミック粉末とバインダーと溶媒とを含むものとしてもよい。導電材料としては、例えば、タングステン、タングステンカーバイト、白金、銀、パラジウム、ニッケル、モリブデン等が挙げられる。セラミック粉末としては、例えば、セラミック仮焼体と同種のセラミック材料からなる粉末が挙げられる。バインダーとしては、例えば、エチルセルロースやポリメタクリル酸メチルやポリビニルブチラールなどが挙げられる。溶媒としては、例えば、テルピネオールなどが挙げられる。印刷方法は、例えば、スクリーン印刷法などが挙げられる。なお、静電電極用ペーストとヒーター電極用ペーストは、同じ組成のものを使用してもよいが、異なる組成のものを使用してもよい。
【0033】
4.ホットプレス焼成
ホットプレス焼成は、本発明の第1及び第2の静電チャックの製法における工程(d)に相当する。
【0034】
ホットプレス焼成では、少なくとも最高温度(焼成温度)において、プレス圧力を30〜300kgf/cm2とすることが好ましく、50〜250kgf/cm2とすることがより好ましい。また、最高温度は、セラミック粉末の種類、粒径などにより適宜設定すればよいが、1000〜2000℃の範囲に設定することが好ましい。雰囲気は、大気雰囲気、不活性雰囲気、真空雰囲気の中から、セラミック粉末の種類に応じて適宜選択すればよい。
【0035】
5.本発明の第1の静電チャックの製法
(1)静電電極内蔵の静電チャック
工程(a)で第1及び第2のセラミック成形体を作製し、それらを工程(b)で第1及び第2のセラミック仮焼体とし、工程(c)で第1及び第2のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面に静電電極を形成する。この場合、電極用ペーストの印刷の仕方は図1(a),(b)の2通りある。図1(a)は第1及び第2のセラミック仮焼体11,12のうち第1のセラミック仮焼体11に静電電極用ペースト14を印刷した例、図1(b)は第2のセラミック仮焼体12に静電電極用ペースト14を印刷した例である。そして、工程(d)で、静電電極を挟み込むようにして第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせ、その状態でホットプレス焼成する。ホットプレス焼成後、誘電層の厚みが設計値となるように表面を研削加工する。その後、例えば側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い、静電チャックを得る。以上の製法によれば、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。その結果、ウェハーをチャックする際の吸着力の面内バラツキが生じにくくなる。なお、この静電チャックは誘電層と下層の2層構造であり、通常、下層は誘電層よりも厚く形成される。
【0036】
(2)静電電極及びヒーター電極内蔵の静電チャック
工程(a)で第1〜第3のセラミック成形体を作製し、それらを工程(b)で第1〜第3のセラミック仮焼体とし、工程(c)で第1及び第2のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面に静電電極、第2及び第3のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面にヒーター電極を形成する。この場合、電極用ペーストの印刷の仕方は、図2(a)〜(d)の4通りある。図2(a)は、第1〜第3のセラミック仮焼体21〜23のうち第1のセラミック仮焼体21の下面に静電電極用ペースト24を印刷し、第3のセラミック仮焼体23の上面にヒーター電極用ペースト25を印刷した例を示す。図2(b)は第2のセラミック仮焼体22の上下両面に静電電極用ペースト24とヒーター電極用ペースト25をそれぞれ印刷した例を示す。図2(c)は第2のセラミック仮焼体22の上面に静電電極用ペースト24を印刷し、第3のセラミック仮焼体23の上面にヒーター電極用ペースト25を印刷した例を示す。図2(d)は第1のセラミック仮焼体21の下面に静電電極用ペースト24を印刷し、第2のセラミック仮焼体22の下面にヒーター電極用ペースト25を印刷した例である。そして、工程(d)で、静電電極を挟み込むようにして第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせ、ヒーター電極を挟み込むようにして第2及び第3のセラミック仮焼体を重ね合わせ、その状態でホットプレス焼成する。ホットプレス焼成後、誘電層の厚みが設計値となるように表面を研削加工する。その後、例えば側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い、静電チャックを得る。以上の製法によれば、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。その結果、ウェハーをチャックする際の吸着力の面内バラツキが生じにくくなる。なお、この静電チャックは誘電層と中間層と下層の3層構造であり、通常、中間層が最も厚く、次に下層が厚く、誘電層は最も薄く形成される。
【0037】
6.本発明の第2の静電チャックの製法
(1)静電電極内蔵の静電チャック
工程(a)で第1及び第2のセラミック成形体を作製し、工程(b)で第1及び第2のセラミック成形体のいずれか一方の表面に静電電極を形成し、それらを工程(c)で第1及び第2のセラミック仮焼体とする。この場合、電極用ペーストの印刷の仕方は図1(a),(b)と同様、2通りある。その後、工程(d)で、静電電極を挟み込むようにして第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせ、その状態でホットプレス焼成する。ホットプレス焼成後、誘電層の厚みが設計値となるように表面を研削加工する。その後、例えば側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い、静電チャックを得る。以上の製法によれば、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。その結果、ウェハーをチャックする際の吸着力の面内バラツキが生じにくくなる。
【0038】
(2)静電電極及びヒーター電極内蔵の静電チャック
工程(a)で第1〜第3のセラミック成形体を作製し、工程(b)で第1及び第2のセラミック成形体のいずれか一方の面に静電電極、第2及び第3のセラミック成形体のいずれか一方の面にヒーター電極を形成し、それらを工程(c)で第1〜第3のセラミック仮焼体とする。この場合、電極用ペーストの印刷の仕方は図2(a)〜(d)と同様、4通りある。その後、工程(d)で、静電電極を挟み込むようにして第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせ、ヒーター電極を挟み込むようにして第2及び第3のセラミック仮焼体を重ね合わせ、その状態でホットプレス焼成する。ホットプレス焼成後、誘電層の厚みが設計値となるように表面を研削加工する。その後、例えば側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い、静電チャックを得る。以上の製法によれば、誘電層の厚みのバラツキを小さく抑えることができる。その結果、ウェハーをチャックする際の吸着力の面内バラツキが生じにくくなる。
【0039】
本発明の第2の静電チャックの製法では、セラミック成形体に電極を形成したあとそのセラミック成形体を仮焼するため、仮焼時に電極が酸化および炭化されるおそれがある。これに対して、本発明の第1の静電チャックの製法では、セラミック成形体を仮焼したあとそのセラミック仮焼体に電極を形成するため、そのようなおそれがない。この点で、第1の静電チャックの製法の方が、第2の静電チャックの製法に比べて目的の電極特性を得ることができ、また、電極特性のばらつきの小さいものが得られる。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を具現化した実施例について説明する。実施例1,2は、セラミック材料としてアルミナを使用した例であり、実施例1は図2(a)、実施例2は図2(b)のようにして静電チャックを作製した。実施例3,4は、セラミックス材料として窒化アルミニウムを使用した例であり、実施例3は図2(a)、実施例4は図2(b)のようにして静電チャックを製造した。また、比較例1,2は、セラミック材料としてアルミナを使用した例であり、比較例1は図2(a)と類似の方法、比較例2は図2(b)と類似の方法により静電チャックを製造した。
【0042】
[実施例1]
1.セラミック成形体の作製
アルミナ粉末(平均粒径0.50μm,純度99.7%)100重量部、マグネシア0.04重量部、分散剤としてポリカルボン酸系共重合体3重量部、溶媒として多塩基酸エステル20重量部を秤量し、これらをボールミル(トロンメル)で14時間混合し、スラリー前駆体とした。このスラリー前駆体に対して、ゲル化剤、すなわちイソシアネート類として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 3.3重量部、ポリオール類としてエチレングリコール0.3重量部、触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール0.1重量部を加え、自公転式撹拌機で12分間混合し、セラミックスラリーを得た。得られたセラミックスラリーを、直径350mm、高さ4.0mmの円盤状の内部空間を有する第1成形型と、直径350mm、高さ6.0mmの円盤状の内部空間を有する第2成形型と、直径350mm、高さ4.0mmの円盤状の内部空間を有する第3成形型に、それぞれ流し込んだ。その後、22℃で2時間放置することにより、各成形型内でゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させたあと離型した。これにより、第1〜第3成形型からそれぞれ第1〜第3のセラミック成形体を得た。
【0043】
2.セラミック仮焼体の作製
第1〜第3のセラミック成形体を100℃で10時間乾燥した後、最高温度500℃で1時間脱脂し、更に最高温度820℃、大気雰囲気で1時間仮焼することにより、第1〜第3のセラミック仮焼体を得た。
【0044】
3.電極の形成
WC粉末とアルミナ粉末をアルミナ含有量が20重量%となるようにしバインダーとしてポリビニルブチラールと溶媒としてテルピネオールを加えて混合することにより電極用ペーストを作製した。この電極用ペーストは、静電電極用、ヒーター電極用の両方に用いることとした。第1のセラミック仮焼体が静電チャックの誘電層になるものとし、この第1のセラミック仮焼体の片面に先ほどの電極用ペーストをスクリーン印刷し、静電電極を形成した。一方、第3のセラミック仮焼体の片面にも電極用ペーストをスクリーン印刷し、ヒーター電極を形成した。第2のセラミック仮焼体には印刷しなかった。
【0045】
4.ホットプレス焼成
静電電極を挟み込むようにして第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせると共に、ヒーター電極を挟み込むようにして第2及び第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた(図2(a)参照)。そして、その状態でホットプレス焼成することにより焼結体を作製し、その後、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。ホットプレス焼成は、窒素雰囲気下、プレス圧100kgf/cm2、最高温度1600℃で2時間保持することにより行った。その後、セラミック焼結体表面をダイヤモンド砥石にて平面研削加工を行い、静電電極から表面までの厚みを350μmとし、ヒーター電極からもう一方の表面までの厚みを750μmとした。その後、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。得られた静電チャックは、炭素含有量が0.1重量%以下、相対密度が98%以上であり、誘電層の厚みのバラツキつまり誘電層の厚みの最大値と最小値との差は60μmであった。なお、誘電層の厚みのバラツキは、静電電極の反りが大きいほど大きくなり、また、静電電極の厚みのバラツキが大きいほど大きくなる。図3は、静電電極の反りが誘電層の厚みのバラツキに影響を及ぼすことを示す説明図である。この図から、誘電層のバラツキ(=Lmax−Lmin)は、静電電極の反りが大きいほど大きくなることがわかる。また、図3には示していないが、静電電極の厚みが不均一であれば、誘電層の厚みも不均一になるため、誘電層の厚みのバラツキに影響が及ぶ。
【0046】
[実施例2]
実施例1の3.において、第1及び第3のセラミック仮焼体にはスクリーン印刷せず、第2のセラミック仮焼体の片面に電極用ペーストをスクリーン印刷して静電電極を形成すると共に、もう一方の片面に電極用ペーストをスクリーン印刷してヒーター電極を形成した。そして、実施例1の4.において、図2(b)のように、第1〜第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することにより焼結体を作製し、その後、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。ホットプレス焼成は実施例1と同じ条件で行った。得られた静電チャックは、炭素含有量が0.1重量%以下、相対密度が98%以上であり、誘電層の厚みのバラツキは55μmであった。
【0047】
[実施例3]
1.セラミック成形体の作製
窒化アルミニウム(平均粒径0.5μm,純度99.7%)100重量部、酸化ユウロピウム3重量部、アルミナ8.7重量部、酸化チタン0.4重量部、分散剤としてポリカルボン酸系共重合体3重量部、溶媒として多塩基酸エステル25重量部を秤量し、これらをボールミル(トロンメル)で14時間混合し、スラリー前駆体とした。このスラリー前駆体に対して、ゲル化剤、すなわちイソシアネート類として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート7.7重量部、ポリオール類としてエチレングリコール1.4重量部、触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール0.3重量部を加え、プロペラ式撹拌機で10分間混合し、セラミックスラリーを得た。得られたセラミックスラリーを、直径350mm、高さ4.0mmの円盤状の内部空間を有する第1成形型と、直径350mm、高さ6.0mmの円盤状の内部空間を有する第2成形型と、直径350mm、高さ4.0mmの円盤状の内部空間を有する第3成形型に、それぞれ流し込んだ。その後、22℃で2時間放置することにより、各成形型内でゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させたあと離型した。これにより、第1〜第3成形型からそれぞれ第1〜第3のセラミック成形体を得た。
【0048】
2.セラミック仮焼体の作製
第1〜第3のセラミック成形体を100℃で10時間乾燥した後、真空中で最高温度500℃で3時間脱脂し、更に最高温度820℃、窒素雰囲気で1時間仮焼することにより、第1〜第3のセラミック仮焼体を得た。
【0049】
3.電極の形成
実施例1の3.と同様にして、第1のセラミック仮焼体の表面に静電電極、第3のセラミック仮焼体の表面にヒーター電極を形成した。
【0050】
4.ホットプレス焼成
実施例1の4.と同様にして、図2(a)のように第1〜第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を得た。但し、ホットプレス焼成は、窒素雰囲気下、プレス圧200kgf/cm2、最高温度1920℃で2時間保持することにより行った。その後、セラミック焼結体表面をダイヤモンド砥石にて平面研削加工を行い、静電電極から表面までの厚みを350μmとし、ヒーター電極からもう一方の表面までの厚みを750μmとした。その後、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。得られた静電チャックは、炭素含有量が0.1重量%以下、相対密度が98%以上であり、誘電層の厚みのバラツキは60μmであった。
【0051】
[実施例4]
実施例3の3.において、第1及び第3のセラミック仮焼体にはスクリーン印刷せず、第2のセラミック仮焼体の片面に電極用ペーストをスクリーン印刷して静電電極を形成すると共に、もう一方の片面に電極用ペーストをスクリーン印刷してヒーター電極を形成した。そして、実施例3の4.において、図2(b)のように、第1〜第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製し、その後表面加工、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。ホットプレス焼成は実施例3と同じ条件で行った。得られた静電チャックは、炭素含有量が0.1重量%以下、相対密度が98%以上であり、誘電層の厚みのバラツキは52μmであった。
【0052】
[比較例1]
アルミナ焼結体の下面に静電電極用ペーストを印刷すると共に、別のアルミナ焼結体の上面にヒーター電極用ペーストを印刷し、静電電極用ペーストの印刷面とヒーター電極用ペーストの印刷面とでアルミナ造粒粉を挟み込んだ状態でこれらを加圧してプレス成形体とした後、ホットプレス焼成を施すことにより、静電チャックを作製した。これは図2(a)と類似の手法である。
【0053】
具体的には、特開2009−302571号公報の段落0057〜0059にしたがって、静電電極用ペーストが印刷されたアルミナ焼結体を作製した。このアルミナ焼結体は最終的に静電チャックの誘電層になる。また、これに準じて、ヒーター電極用ペーストが印刷されたアルミナ焼結体を作製した。更に、同公報の段落0055にしたがってアルミナ造粒粉を作製した。そして、金型内に静電電極用ペーストが印刷されたアルミナ焼結体を印刷面が上になるように入れ、その上にアルミナ造粒粉を投入し、その上にヒーター電極用ペーストが印刷されたアルミナ焼結体を印刷面が下になるように入れた。その状態で、圧力200kgf/cm2にて加圧して成形体を得た。続いて、この成形体をホットプレス焼成し、その後表面加工、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い、静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。ホットプレス焼成の条件は実施例1と同じとした。得られた静電チャックは、炭素含有量0.1重量%以下、相対密度98%以上であったが、誘電層の厚みのバラツキは100μmであった。
【0054】
[比較例2]
中間層となるアルミナ焼結体の上面に静電電極用ペースト、下面にヒーター電極用ペーストを印刷し、静電電極用ペーストの印刷面の上にアルミナ造粒粉を配置すると共にヒーター電極用ペーストの印刷面の下にもアルミナ造粒粉を配置し、その状態でこれらを加圧して成形体とした後、ホットプレス焼成し、その後表面加工、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い、静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを作製した。これは図2(b)と類似の手法である。
【0055】
具体的には、特開2009−302571号公報の段落0057にしたがって、アルミナ焼結体を作製した。このアルミナ焼結体は最終的に静電チャックの中間層になる。また、同公報の段落0059に準じて、アルミナ焼結体の上面に静電電極用ペースト、下面にヒーター電極用ペーストを印刷した。更に、同公報の段落0055にしたがってアルミナ造粒粉を作製した。そして、金型内にアルミナ造粒粉を投入し、その上にアルミナ焼結体を静電電極用ペーストの印刷面が下になるように入れ、ヒーター電極用ペーストの印刷面の上にアルミナ造粒粉を投入した。その状態で、圧力200kgf/cm2にて加圧して成形体を得た。続いて、この成形体をホットプレス焼成することにより、静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。ホットプレス焼成の条件は実施例1と同じとした。得られた静電チャックは、炭素含有量0.1重量%以下、相対密度98%以上であったが、誘電層の厚みのバラツキは120μmであった。
【0056】
以上の実施例1〜4及び比較例1,2の誘電層のバラツキを表1にまとめた。表1から明らかなように、実施例1〜4では誘電層のバラツキを比較例1,2に比べて大幅に小さくすることができた。なお、実施例1〜4は、図2(a),(b)の製法を適用した例であるが、図2(c),(d)の製法についても同様の効果が得られる。また、実施例1〜4は、静電電極とヒーター電極とを内蔵する3層構造の静電チャックを例示したが、静電電極を内蔵する2層構造の静電チャックについて、図1(a),(b)の製法で作製すれば、実施例1〜4と同様の効果が得られる。
【0057】
【表1】

【0058】
[実施例5]
1.セラミック成形体の作製
アルミナ粉末(平均粒径0.5μm,純度99.99%)100重量部、マグネシア0.2重量部、フッ化マグネシウム0.3重量部、分散剤としてポリカルボン酸系共重合体3重量部、溶媒として多塩基酸エステル20重量部を秤量し、これらをボールミル(トロンメル)で14時間混合し、スラリー前駆体とした。このスラリー前駆体に対して、ゲル化剤、すなわちイソシアネート類として4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート 3.3重量部、ポリオール類としてエチレングリコール0.3重量部、触媒として6−ジメチルアミノ−1−ヘキサノール0.1重量部を加え、自公転式撹拌機で12分間混合し、セラミックスラリーを得た。得られたスラリーを、実施例1の1.で用いた第1〜第3成形型にそれぞれ流し込んだ。その後、22℃で2時間放置することにより、各成形型内でゲル化剤を化学反応させてセラミックスラリーをゲル化させたあと離型した。これにより、第1〜第3成形型からそれぞれ第1〜第3のセラミック成形体を得た。
【0059】
2.セラミック仮焼体の作製
実施例1の2.と同様にして、第1〜第3のセラミック仮焼体を得た。
【0060】
3.電極の形成
実施例1の3.と同様にして、第1のセラミック仮焼体の片面と第3のセラミック仮焼体の片面に電極用ペーストをスクリーン印刷した。但し、電極用ペーストは、Mo粉末とアルミナ粉末をアルミナ含有量が10重量%となるようにし、バインダーとしてポリビニルブチラールと溶媒としてテルピネオールを加えて混合することにより作製した。
【0061】
4.ホットプレス焼成
実施例1の4.と同様にして、図2(a)のように第1〜第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を得た。但し、ホットプレス焼成は、真空雰囲気下、プレス圧250kgf/cm2、最高温度1170℃で2時間保持することにより行った。最高温度を実施例1(1600℃)より低くすることができたのは、スラリー前駆体に焼結助剤としてフッ化マグネシウムを添加したことによる。その後、セラミック焼結体表面をダイヤモンド砥石にて平面研削加工を行い、静電電極から表面までの厚みを350μmとし、ヒーター電極からもう一方の表面までの厚みを750μmとした。その後、側面加工、穴あけ加工を施し、端子の取り付けを行い静電電極及びヒーター電極を内蔵した静電チャックを得た。得られた静電チャックは、炭素含有量が0.1重量%以下、相対密度が98%以上であり、誘電層の厚みのバラツキは20μmであった。
【0062】
[比較例3]
アルミナ焼結体の下面に静電電極用ペーストを印刷すると共に、別のアルミナ焼結体の上面にヒーター電極用ペーストを印刷し、静電電極用ペーストの印刷面とヒーター電極用ペーストの印刷面とでアルミナ造粒粉を挟み込んだ状態でこれらを加圧して成形体とした後、ホットプレス焼成を施すことにより、静電チャックを作製した。これは図2(a)と類似の手法である。また、比較例1と比べて、アルミナ焼結体の作製方法、アルミナ造粒粉の作製方法、電極用ペーストの調製方法、最終的なホットプレス焼成工程が異なる。以下、これらについて説明する。
【0063】
アルミナ焼結体は、次のようにして作製した。純度99.99%のアルミナ粉末に、焼結助剤であるMgF2と添加剤であるMgOを、それぞれ含有量が0.2重量%及び0.3重量%となるように添加して原料粉とした。この原料粉にバインダであるポリビニルアルコール(PVA)、水及び分散剤を添加し、トロンメルで16時間混合してスラリーとした。このスラリーをスプレードライヤを用いて噴霧乾燥し、その後、500℃で5時間保持してバインダを除去し、平均粒径が約80μmの造粒顆粒を作製した。このアルミナ顆粒を金型に充填し、200kg/cm2の圧力でプレス成形を行い、成形体を得た。続いて、この成形体をカーボン製のサヤにセットし、ホットプレス焼成法を用いて焼成した。焼成は、プレス圧100kg/cm2で、かつ窒素加圧雰囲気(150kPa)で行い、300℃/hで昇温し、1200℃で2時間保持し、アルミナ焼結体を得た。このアルミナ焼結体を研削加工し、直径300mm、厚さ6mmの円盤を作製し、誘電体層に相当する第1のアルミナ焼結体とした。同様にして、ヒータ電極の下側の層に相当する第2のアルミナ焼結体を作製した。
【0064】
アルミナ造粒粉は、上述したアルミナ焼結体を作製する際の造粒顆粒と同様にして作製した。
【0065】
電極用ペーストは、モリブデン粉末とアルミナ粉末をアルミナ含有量が20重量%となるようにし、バインダーとしてポリビニルブチラールと溶媒としてテルピネオールを加えて混合することにより調製した。そして、第1のアルミナ焼結体の片面と第2のアルミナ焼結体の片面にそれぞれ電極用ペーストをスクリーン印刷した。
【0066】
最終的なホットプレス焼成工程は、印刷面が上を向いた第2のアルミナ焼結体と印刷面が下を向いた第1のアルミナ焼結体とでアルミナ造粒粉を挟み込んだ成形体(作製方法は比較例1と同じ)を、真空雰囲気下、プレス圧250kgf/cm2、最高温度1170℃で2時間保持することにより行った。得られた静電チャックは、炭素含有量0.1重量%以下、相対密度98%以上、誘電層の厚みのバラツキが30μmであった。
【0067】
[特性の比較]
実施例5と比較例1,3との特性を比較した。その結果を表2に示す。各特性の測定方法は以下のとおり。
・粒径分布の測定
SEMにて観察した粒子40個以上について長軸と短軸の平均を粒径とし、粒径分布、平均粒径(Ave.)、標準偏差(σ)を求めた。
・全粒子の個数に対する平均粒径以下の粒子の個数の割合の算出
粒径分布の測定結果に基づいて、横軸を粒径、縦軸を累積頻度のグラフを作成し、そのグラフから、測定範囲における、全粒子の個数に対する平均粒径以下の粒子の個数の割合を求めた。
・絶縁破壊強度の測定
JIS C2110の油中で行う場合に従い測定を行った。
・パーティクルの測定
静電チャックにウェハを載せ、ウェハにレーザーを照射し、散乱孔の方向をデータ処理し、発生したパーティクルの数を検出した。
・粒界組成解析
粒界部分を電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)とX線回折(XRD)により測定した。
【0068】
【表2】

【0069】
表2に示すように、実施例5や比較例3では、焼結助剤としてMgF2を使用して低温で焼成しているため、このような焼結助剤を用いず高温で焼成した比較例1に比べて、平均粒径が小さくなった。その結果、パーティクル数が小さくなり、絶縁破壊耐圧が高く且つそのバラツキも少なくなった。また、実施例5では、本発明のゲルキャスト法を採用しているため、ゲルキャスト法を採用していない比較例3に比べて、誘電層の厚みのバラツキが小さくなり、パーティクル数が一層小さくなり、絶縁破壊耐圧が一層高くなった。その原因は、平均粒径がより小さくなったことや粒径分布が小径側に偏っていたこと(全粒子の個数に対する平均粒径以下の粒子の個数の割合が60%以上だったこと)にあると考えられる。
【符号の説明】
【0070】
11 第1のセラミック仮焼体、12 第2のセラミック仮焼体、14 静電電極用ペースト、21 第1のセラミック仮焼体、22 第2のセラミック仮焼体、23 第3のセラミック仮焼体、24 静電電極用ペースト、25 ヒーター電極用ペースト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成形型にセラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記セラミックスラリーをゲル化させたあと離型することにより、第1及び第2のセラミック成形体を得る工程と、
(b)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(c)前記第1のセラミック仮焼体が静電チャックの誘電層になるものとした上で、前記第1及び第2のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面に静電電極用ペーストを印刷して静電電極とする工程と、
(d)前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製する工程と、
を含む静電チャックの製法。
【請求項2】
前記工程(a)では、前記第1及び第2のセラミック成形体と同様にして第3のセラミック成形体も作製し、
前記工程(b)では、前記第1及び第2のセラミック仮焼体と同様にして第3のセラミック仮焼体も作製し、
前記工程(c)では、前記第2及び第3のセラミック仮焼体のいずれか一方の表面にヒーター電極用ペーストを印刷してヒーター電極とし、
前記工程(d)では、前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせると共に前記ヒーター電極を挟み込むようにして前記第2及び第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製する、
請求項1に記載の静電チャックの製法。
【請求項3】
(a)成形型にセラミック粉体、溶媒、分散剤及びゲル化剤を含むセラミックスラリーを投入し、前記成形型内で前記ゲル化剤を化学反応させて前記セラミックスラリーをゲル化させたあと離型することにより、第1及び第2のセラミック成形体を得る工程と、
(b)前記第1のセラミック成形体が静電チャックの誘電層になるものとした上で、前記第1及び第2のセラミック成形体のいずれか一方の表面に静電電極用ペーストを印刷して静電電極とする工程と、
(c)前記第1及び第2のセラミック成形体を乾燥したあと脱脂し、更に仮焼することにより、第1及び第2のセラミック仮焼体を得る工程と、
(d)前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製する工程と、
を含む静電チャックの製法。
【請求項4】
前記工程(a)では、前記第1及び第2のセラミック成形体と同様にして第3のセラミック成形体も作製し、
前記工程(b)では、前記第2及び第3のセラミック成形体のいずれか一方の表面にヒーター電極用ペーストを印刷してヒーター電極とし、
前記工程(c)では、前記第1及び第2のセラミック成形体と同様にして前記第3のセラミック成形体も乾燥、脱脂、仮焼して第3のセラミック仮焼体を作製し、
前記工程(d)では、前記静電電極を挟み込むようにして前記第1及び第2のセラミック仮焼体を重ね合わせると共に前記ヒーター電極を挟み込むようにして前記第2及び第3のセラミック仮焼体を重ね合わせた状態でホットプレス焼成することによりセラミック焼結体を作製する、
請求項3に記載の静電チャックの製法。
【請求項5】
前記工程(a)では、前記セラミック粉体として、アルミナに焼結助剤として少なくともMgF2を加えたものを用い、
前記工程(d)では、ホットプレス焼成温度を1120〜1300℃の範囲に設定する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電チャックの製法。
【請求項6】
前記工程(a)で使用するセラミック粉体は、平均粒径が0.4〜0.6μmである、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の静電チャックの製法。
【請求項7】
誘電層の厚みの最大値と最小値との差が60μm以下である、静電チャック。
【請求項8】
前記誘電層を構成するセラミック粒子は、平均粒径が0.7〜1.2μmであり、全粒子の個数に対する平均粒径以下の粒子の個数の割合が60%以上である、請求項7に記載の静電チャック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−216816(P2012−216816A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−72260(P2012−72260)
【出願日】平成24年3月27日(2012.3.27)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】