説明

静電容量型圧力センサおよびその製造方法

【課題】 簡単な工程で封止性を維持しつつ効率よく製造が可能であり、かつ温度の変動による検出精度の変化を抑えることが可能な高性能な静電容量型圧力センサおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 圧力センサ10は、ガラス基板11と、このガラス基板11の第1面11aに形成される第1シリコン層12と、ガラス基板11の第2面11bに形成される第2シリコン層13とから概略構成されている。ガラス基板11の一部には、第1面11aから第2面11bに向けて貫通するコンタクトホール14が形成されている。ガラス基板11の第1面11aには、ガラス基板11のほぼ中心付近に広がる固定電極15が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された固定電極と、固定電極に対面する可撓性電極との間の静電容量の変動によって圧力変動を検出する静電容量型圧力センサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、絶縁性の膜基板上に固定電極の引き出し層となるシリコン層を形成し、固定電極と可撓性電極となるダイヤフラムとの間の距離変化により生じる静電容量の変動によって、可撓性電極にかかる圧力変動を検出する容量型圧力センサが記載されている。こうした従来の静電容量型圧力センサでは、空間内の固定電極からシリコン層を延長して空間外に引き出し、外部電極に接続している。
【特許文献1】特許第2772111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
こうした特許文献1に示す従来の容量型圧力センサは、ガラス基板とシリコン基板とからなり、その製造時には、ガラス基板に対してサンドブラスト等で貫通穴を形成した後、このガラス基板とシリコン基板とを接合して封止し、不要部分を除去する。そして、ガラス基板の貫通穴の側壁にメタル膜を形成した後、この封止構造部分から引き出し電極を形成していた。
【0004】
しかしながら、こうした従来の容量型圧力センサの製造方法では、封止状態を維持したまま一定の厚みのシリコン層を残すための工程が複雑であり、製造効率の向上にあたって障害となっていた。また、シリコンダイヤフラムを形成したシリコン基板と、固定電極を形成したガラス基板との間で、熱膨張率に差があり、圧力の検出特性が温度変化に大きく依存するという課題もあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡単な工程で封止性を維持しつつ効率よく製造が可能であり、かつ温度の変動による検出精度の変化を抑えることが可能な高性能な静電容量型圧力センサおよびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明によれば、第1面とこの第1面の背面である第2面との間を貫通するコンタクトホールが一部に形成された絶縁層と、前記絶縁層の第1面上に形成され、少なくとも一部にダイヤフラム部を有する第1シリコン層と、前記第1面の背面である第2面上に配置された第2シリコン層と、前記第2シリコン層から引き出されて前記コンタクトホールを介し、少なくとも前記ダイヤフラム部に対面して前記絶縁層の第1面に広がる固定電極とを備えたことを特徴とする静電容量型圧力センサが提供される。
【0007】
前記第2シリコン層は相互に絶縁された2領域に分割され、また、前記コンタクトホールは前記第2シリコン層の分割された2領域のそれぞれに形成され、前記第2シリコン層の分割された一方の領域が一方のコンタクトホールを介して前記固定電極と導通されるとともに、前記第2シリコン層の分割された他方の領域が他方のコンタクトホールを介して前記第1シリコン層と導通されていることが好ましい。また、前記絶縁層はガラスで形成され、前記絶縁層と前記第1シリコン層、および前記絶縁層と前記第2シリコン層とは、それぞれ陽極接合されていればよい。
【0008】
本発明によれば、第1シリコン層をエッチングしてダイヤフラム部の一方の面を形成する工程と、絶縁層の第1面から背面側の第2面に貫通するコンタクトホールを形成する工程と、前記絶縁層の第2面に第2シリコン層を陽極接合する工程と、前記コンタクトホールから延び前記絶縁層の第1面に広がる固定電極を形成する工程と、前記絶縁層の第1面に第1シリコン層を陽極接合する工程と、第1シリコン層をエッチングしてダイヤフラム部の他方の面を形成する工程とを備えたことを特徴とする静電容量型圧力センサの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の静電容量型圧力センサによれば、厚みを減じて形成したダイヤフラム部を有する第1シリコン層を、固定電極に導通されるコンタクトホールを備えた絶縁層に接合して形成されるので、製造工程が簡単であり、製造効率の向上させることができる。また、圧力の検出特性の温度変化による変動の影響を抑えられ、安定した検出特性を維持することが可能になる。
【0010】
さらに、本発明の圧力センサは、熱膨張率の同じシリコンで絶縁層の両側をはさみ込むことにより、温度変化による反りが抑制されて温度安定性に優れた静電容量型圧力センサを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を交えて説明する。図1は、本発明の静電容量型圧力センサの一例を示す断面図である。圧力センサ(静電容量型圧力センサ)10は、ガラス基板11(絶縁層)と、このガラス基板11の第1面11aに形成される第1シリコン層12と、ガラス基板11の第2面11bに形成される第2シリコン層13とから概略構成されている。
【0012】
ガラス基板11の一部には、第1面11aから第2面11bに向けて貫通するコンタクトホール14が形成されている。一方、またガラス基板11の第1面11aには、ガラス基板11のほぼ中心付近に広がる固定電極15が形成される。また、この固定電極15の一端には、コンタクトホール14内を通じて第2面11b側に延びる延長電極16が一体に形成されている。こうした固定電極15や延長電極16は、例えばメタル膜から構成されれば良い。
【0013】
ガラス基板11の第1面11aに形成される第1シリコン層12の一部には、この第1シリコン層12の厚みを10μm程度まで減じた可撓性電極を成すダイヤフラム部17が形成されている。こうしたダイヤフラム部17は、ガラス基板11に広がる固定電極15との間で一定の間隔を空けて形成されており、ダイヤフラム部17と固定電極15との間には、一定の静電容量を持つ空間18が区画される。この空間18内は、例えば、真空や不活性ガスが充填された環境にされればよい。
【0014】
また、第1シリコン層12の上面の一部には、ダイヤフラム部17と導通する第1引出電極19が積層形成されている。こうした第1引出電極19は、例えばメタル膜から構成されれば良い。
【0015】
ガラス基板11の第2面11bに接合される第2シリコン層13は、上面の一部でコンタクトホール14内を通じてガラス基板11の第2面11b側に延びる延長電極16に接続される。そして、第2シリコン層13の下面には、固定電極15と導通する第2引出電極21が積層形成されている。こうした第2引出電極21は、例えば、メタル膜から構成されれば良い。
【0016】
以上のような構成の圧力センサ(静電容量型圧力センサ)10は、固定電極15と、これに対面するダイヤフラム部17と、これらの間に広がる気密に封止された空間18によって、一定の静電容量を持つコンデンサが形成される。そして、ダイヤフラム部17に圧力が加わると、薄膜であるダイヤフラム部17は湾曲し、固定電極15とダイヤフラム部17との距離が変化する。
【0017】
ダイヤフラム部17に加わる圧力によってダイヤフラム部17と固定電極15の距離が変化すると、固定電極15とダイヤフラム部17との間の静電容量が変化する。この変化量をダイヤフラム部17と導通される第1引出電極19と、固定電極15と導通される第2引出電極21に接続された検出回路(図示せず)で検出することによって、圧力センサ10にかかる圧力変化を検出することができる。
【0018】
こうした圧力センサ10は、厚みを減じて形成したダイヤフラム部17を有する第1シリコン層12を、固定電極15に導通されるコンタクトホール14を備えたガラス基板11に接合して形成されるので、製造工程が簡単であり、製造効率の向上させることができる。また、圧力の検出特性の温度変化による変動の影響を抑えられ、安定した検出特性を維持することが可能になる。
【0019】
さらに、圧力センサ10は、熱膨張率の同じシリコンでガラス基板11(絶縁層)の両側をはさみ込むことにより、温度変化による反りが抑制されて温度安定性に優れた静電容量型圧力センサを実現できる。
【0020】
次に、上述したような本発明の圧力センサ(静電容量型圧力センサ)の製造方法を説明する。まず、図2aに示すように、第1シリコン層12の下面にリソグラフィーおよびエッチングにより第1凹部31を形成する。この第1凹部31は、圧力センサ10のダイヤフラム部17と固定電極15との間の予め設計された間隔に応じた深さまで第1シリコン層12の厚みを減じるように形成されれば良い。
【0021】
次に、図2bに示すように、第1シリコン層12に形成した第1凹部31の一端側だけ更にリソグラフィーおよびエッチングを行い第1凹部31よりも深い第2凹部32を形成する。こうした第1凹部31よりも深い第2凹部32は、後工程で第2凹部32の底面の反対面側に第1引出電極19を形成することで、寄生容量を低減させる役割りを果たす。この後、図2cに示すように、第1シリコン層12の上面側には、後工程でエッチングによってダイヤフラム部17を形成するためのエッチングマスク33を、例えば熱酸化膜によって形成する。
【0022】
一方、図3aに示すように、ガラス基板11の一端側に、例えばサンドブラストなどによってガラス基板11の第1面11aから第2面11bまで貫通するコンタクトホール14を形成する。次に、図3bに示すように、このコンタクトホール14を形成した内を通じてガラス基板11の第2面11bに、第2シリコン層13を例えば陽極接合によって接合する。この第2シリコン層13の下面側には、予め熱酸化膜34を形成しておく。
【0023】
次に、ガラス基板11の第1面11aおよびコンタクトホール14内にメタル膜を積層した後、リソグラフィーおよびエッチングによって、図3cに示すように、固定電極15および固定電極15に連なりコンタクトホール14からガラス基板11の第2面11bに達する延長電極16を形成する。なお延長電極16の厚みを固定電極15よりも厚く形成することによって、断線を抑制できる構成にすることが好ましい。
【0024】
そして、図4aに示すように、第2シリコン層13が接合されたガラス基板11の第1面11a側に、第1凹部31および第2凹部32が形成された第1シリコン層12を、例えば陽極接合によって接合する。
【0025】
この後、図4bに示すように、第1シリコン層12の上面側に形成されたエッチングマスク33をマスクとして、第1シリコン層12を上面からエッチングして厚みを減じ、ダイヤフラム部17を形成する。そして、第1シリコン層12の上面側に形成されたエッチングマスク33と、第2シリコン層13の下面側に形成された熱酸化膜34とを除去する。
【0026】
更に、図1に示すように、第1シリコン層12の上面に第1引出電極19を、また第2シリコン層13の下面に第2引出電極21をそれぞれ形成すれば、本発明の圧力センサ(静電容量型圧力センサ)10が形成される。
【0027】
図5は、本発明の圧力センサ(静電容量型圧力センサ)の別な実施形態を示す断面図である。図5に示す圧力センサ41では、ガラス基板42に2つのコンタクトホール43,44を形成するとともに、それぞれのコンタクトホール43,44にメタル膜による延長電極45,46が形成される。
【0028】
また、ガラス基板42の第2面42bに接合される第2シリコン層51は、第1と第2の分割部51a,51bに電気的に分割され、第1分割部51aには第1引出電極52が、第2分割部51bには第2引出電極53がそれぞれ形成される。
【0029】
コンタクトホール43に形成される延長電極45は、一端がガラス基板42の固定電極47に接続され、他端が第2シリコン層51の第1分割部51aに接続される。また、コンタクトホール44に形成される延長電極46は、一端がダイヤフラム部48が形成された第1シリコン層49に接続され、他端が第2シリコン層51の第2分割部51bに接続される。
【0030】
このような構成にすることによって、固定電極47に連なる第1引出電極52と、ダイヤフラム部48に連なる第2引出電極53とを同一面側に配置することが可能になり、圧力センサ41をプリント基板に実装する場合に、容易に配線の接続を可能にできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、本発明の静電容量型圧力センサの一例を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明の静電容量型圧力センサの製造方法を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の静電容量型圧力センサの製造方法を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の静電容量型圧力センサの製造方法を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の静電容量型圧力センサの他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 圧力センサ(静電容量型圧力センサ)
11 ガラス基板(絶縁層)
11a 第1面
11b 第2面
12 第1シリコン層
13 第2シリコン層
14 コンタクトホール
15 固定電極
17 ダイヤフラム部
18 空間
51a 第1分割部
51b 第2分割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面とこの第1面の背面である第2面との間を貫通するコンタクトホールが一部に形成された絶縁層と、前記絶縁層の第1面上に形成され、少なくとも一部にダイヤフラム部を有する第1シリコン層と、前記第1面の背面である第2面上に配置された第2シリコン層と、前記第2シリコン層から引き出されて前記コンタクトホールを介し、少なくとも前記ダイヤフラム部に対面して前記絶縁層の第1面に広がる固定電極とを備えたことを特徴とする静電容量型圧力センサ。
【請求項2】
前記第2シリコン層は相互に絶縁された2領域に分割され、また、前記コンタクトホールは前記第2シリコン層の分割された2領域のそれぞれに形成され、前記第2シリコン層の分割された一方の領域が一方のコンタクトホールを介して前記固定電極と導通されるとともに、前記第2シリコン層の分割された他方の領域が他方のコンタクトホールを介して前記第1シリコン層と導通されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型圧力センサ。
【請求項3】
前記絶縁層はガラスで形成され、前記絶縁層と前記第1シリコン層、および前記絶縁層と前記第2シリコン層とは、それぞれ陽極接合されていることを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量型圧力センサ。
【請求項4】
第1シリコン層をエッチングしてダイヤフラム部の一方の面を形成する工程と、絶縁層の第1面から背面側の第2面に貫通するコンタクトホールを形成する工程と、前記絶縁層の第2面に第2シリコン層を陽極接合する工程と、前記コンタクトホールから延び前記絶縁層の第1面に広がる固定電極を形成する工程と、前記絶縁層の第1面に第1シリコン層を陽極接合する工程と、第1シリコン層をエッチングしてダイヤフラム部の他方の面を形成する工程とを備えたことを特徴とする静電容量型圧力センサの製造方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−145242(P2006−145242A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−332035(P2004−332035)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】