説明

非侵襲性左心室容積決定

心拍周期中の総左心室(LV)容積を計算するためのプログラムを含む方法及びコンピュータ読取可能媒体。拡張末期(ED)、即ち、心臓が完全に弛緩した瞬間に取得された心臓3D画像内の心内膜輪郭のみを用いてLV容積が推定される。これらの輪郭は手動で特定され、或いは、(半)自動的に導出される。これらの輪郭及び全ての他の画像内のピクセル強度に基づいて、LV容積は輪郭によって取り囲まれた領域(LV血液プール)内の強度変化に基づいて推定される。これらの変化は心室サイズの変化に比例する。それ故、心室容積、及び、他の導出可能心臓機能性パラメータ、並びに、心拍周期中の位相が導出される。3D画像は、磁気共鳴(MR)、コンピュータ断層撮影(CT)、核医学(NM)、又は、超音波(US)装置のような、哺乳類の体の内部部分を撮像するための装置を用いて記録する方法の以前にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、四次元画像解析に関し、より詳細には、心臓画像の記録映画シーケンス解析に関し、さらにより詳細には、記録心臓画像の映画シーケンスからの左心室容積決定に関する。
【背景技術】
【0002】
時間の関数としての心臓の左心室(LV)の血液容積の査定は、心臓のポンプ機能の評価のために重要である。その優れた時空的及び「解剖学的」解像度の故に、磁気共鳴映像法(MRI)は、この容積査定のための黄金基準としてますます受容されている。MRIは、人体内部の高品質画像を生成するために、主として医療の場で用いられる撮像技法である。MRIは、核磁気共鳴(NMR)の原理を基礎とし、容積撮像技法に進展した。定められたスライス厚を有する複数のスライスは、幾つかの容積要素又はボクセルから成る。ボクセルの容積はスライス内の面内解像度として例えば3mmと計算され、貫通面解像度、即ち、3mmで乗算され、その結果、所与の例に関して3mmのボクセル容積が得られる。磁気共鳴画像は幾つかのピクセルと呼ばれる画素から成る。ピクセルの強度は、被撮像物体の対応する容積素子又はボクセルの内容物のNMR信号強度に比例する。
【0003】
心臓の短軸研究は、心臓の特定部位をカバーする複数スライス及び心拍周期内の複数位相から成る。研究は、哺乳類の体の内部部分を撮像するための装置、例えば、磁気共鳴(MR)、コンピュータ断層撮影(CT)、超音波(US)、又は、核医学(NM)装置を用いて記録される。画像のシーケンスがさらなる解析のために入手可能である。
【0004】
LV容積の査定のために、そのような研究では、左右心室が心尖(底部)から基部(弁膜面)までカバーされる。よって、心臓の四次元映像が入手可能である。複数スライス(約10〜15)が心臓の三次元画像から成る。第四次元は時間である。完全な心臓の収縮周期、即ち、拡張末期(心臓は完全に弛緩している、ED)から収縮末期(心臓は完全に収縮している、ES)へ、さらに、EDに戻る1心拍が、心拍周期中の約20位相で取得されるのが典型的である。
【0005】
MR画像からLV容積を測定するために一般的に採られるアプローチは2つのステップから成る。第一に、心内膜輪郭、即ち、内部心筋境界がMR心臓研究の全てのMR画像、通常は短軸スライスにおいて描写される。心筋は心臓の筋壁である。それは心臓から血液を汲み出すために収縮し、次に、心臓が回帰血液で再補充されるときに弛緩する。その外面は心外膜と呼ばれ、その内面は心内膜と呼ばれる。その後、LV容積は、輪郭内領域、及び、スライス距離に関する知識、よって、ボクセル容積に基づいて計算される。
【0006】
LV心内膜輪郭の自動描写のための幾つかの方法が提案された。しかしながら、臨床使用者は著しい数の手作業の輪郭補正を遂行しなければならないので、これまでのところ、それらのいずれも本当の自動描写を遂行し得ない。乳頭筋及び肉柱の存在の下で、心筋における心尖位で、或いは、ES位相を描写するときに、偽の結果が先行技術に従った方法によって生成される。典型的なMRI映画連続体に基づいて一連の描写を遂行するために膨大な臨床医時間、即ち、連続体毎約400描写、或いは、数時間の手作業が必要とされる。例えば、20位相時間×10スライス×2輪郭=400輪郭時間×輪郭毎約10秒=1時間11分。しかしながら、実際には、これは4〜5応力レベルのためになされなければならず、よって、総時間は5時間にもなり得る。この時間的制約は、LV容積決定において手動描写を日常的に組み込むことの妨げである。
【0007】
LV容積を決定する他の方法が米国特許第6,438,403B1号に開示されている。LV室の画像領域内の種ボクセルが特定され、ボクセルが血液又は筋肉組織に対応するか否かを決定するために、隣接ボクセルの強度値が閾値と比較される。血液に対応する各隣接ボクセルのために、その隣接ボクセルが特定され、且つ、閾値と比較され、それによって、予備設定された空間境界に直面し、或いは、新規の隣接ボクセルの数によって、処理が隣接心室に移動したことが示されるまで、このプロセスが反復される。特定された血液ボクセルの数は心室容積を計算するために用いられる。多数のボクセルが隣接ボクセルと比較されなければならない。この方法は複雑であり、演算力に関する要求が厳しい。計算を遂行するために用いられるコンピュータ機器のパワーに依存して、計算結果を得るのに長時間を要するし、或いは、もし速い機器が用いられるならば、計算を遂行することは金銭に関して高額であることを意味する。この方法の他の欠点は、種ボクセルが手動或いは自動のいずれかで特定されなければならないという事実であり、それは双方の場合に誤りを犯し易い。さらに、種付き領域拡大の方法は、それは種の位置する容積だけを検出し得るという一般的な欠点を有する。もし、例えば、乳頭筋の特別なジオメトリの故に、LV容積が2つの非接続サブ容積から成るならば、2つのうちの一方は見逃され、米国特許第6,438,403B1号に従って計算されたLV容積は正しくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の1つの目的は、心拍周期柱のLV容積を非侵襲的に決定する信頼性のある方法である。他の目的は、従来技術の方法に比べ演算の要求がより少ない方法を提供することであり、よって、結果をより迅速に入手し得る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、添付の請求項に従ったコンピュータプログラムを有する方法及びコンピュータ読取可能媒体によって、従来技術の上記欠陥を克服し、且つ、少なくとも上記問題点を解決する。
【0010】
本発明に従った一般的な解決は、拡張末期(ED)、即ち、心臓が完全に弛緩した瞬間に取得される3D画像内の心内膜輪郭のみを用いて、LV容積を推定することである。これらの輪郭を手動で特定し、或いは、(半)自動的に導出し得る。これらの輪郭、及び、全ての他の画像内のピクセル強度に基づいて、LV容積を推定し得る。
【0011】
より具体的には、本発明に従ったLV容積決定方法に基づく画像は映画連続体内の強度変化に基づく。この背後にある理論は以下に基づく。
【0012】
− 画像を取得するために用いられる、例えば、MR(磁気共鳴)、CT(コンピュータ断層撮影)、US(超音波)、NM(核医学)のような撮像方法とは無関係に、血液の信号強度は心拍周期を通じてほぼ一定である。
【0013】
− 血液の強度は心筋の強度と著しく異なる。CT及びMRのために、血液は心筋組織よりも明るく、血液強度は極めて強い、心筋又は肺組織の強度よりも一層大きく、存在し得る如何なる心外膜脂肪と同程度の強度である。US及びNMでは、血液は一般的に暗く、心筋組織はより明るい。よって、用いられる撮像装置/方法とは無関係に、心筋組織と血液との間に強度対比がある。
【0014】
− 心拍周期に亘るヒストグラムの変化は、心室がサイズを変更するときに心室内の血液から来る強力な信号によって支配される。
【0015】
− この変化は心室のサイズの変更に比例し、それ故、この測定は、心室容積、及び、他の導出可能な心臓機能性パラメータ、並びに、心拍周期中の位相を決定する方法を提供する。
【0016】
本発明の特徴によれば、哺乳類の体の内部部分を撮像するための装置を用いて、被記録心臓画像の映画連続体から心拍周期中の総左心室(LV)容積を決定するための方法及びコンピュータ読取可能媒体が開示されている。哺乳類の体の内部部分を撮像するための装置は、磁気共鳴(MR)、コンピュータ断層撮影(CT)、核医学(NM)、又は、超音波(US)装置であるのが好ましい。
【0017】
本発明の1つの特徴によれば、心臓映画連続体から心拍周期中の総左心室(LV)内部容積を決定する方法が提供されている。本発明は、拡張末期(ED)に映像連続体の全てのスライスの内部の左心室の心内膜及び心外膜の輪郭を描写するステップと、引き続き、拡張末期に描写された、これらの心内膜輪郭を、心拍周期の全ての位相に適用するステップと、拡張末期に描写された前記心内膜輪郭内部の強度値に基づいて、総左心室内部容積を計算するステップとを含む。
【0018】
本発明の他の特徴によれば、映画連続体から心拍周期中の総左心室(LV)容積を計算するために、コンピュータによって処理するためのコンピュータプログラムを具現化させたコンピュータ読取可能媒体が提供されている。コンピュータプログラムは、拡張末期(ED)に映画連続体の全てのスライスの内部の左心室の心内膜及び心外膜の輪郭を描写するための第一コードセグメントと、拡張末期に描写された心内膜輪郭を心拍周期の全ての位相に適用するための第二コードセグメントと、拡張末期に描写された心内膜輪郭内部の強度値に基づいて左心室容積を計算するための第三コードセグメントとを含む。
【0019】
本発明は心拍周期中にLV容積の信頼性のある非侵襲的な迅速評価を提供するという従来技術に優る利点を有する。さらに、本発明に従ったLV容積の決定は極めて正確であり且つ再現可能である。
【0020】
本発明のさらなる目的、特徴、及び、利点は、添付の図面を参照することで、本発明の実施態様の以下の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図5に従った本発明の実施態様に、方法10が示されている。方法10によれば、LV容積は、心臓全体をカバーする複数スライス及び心拍周期内の複数位相から成る心臓の短軸MRI映画連続体を評価することによって、心拍周期を通じて計算される。心拍周期のMRI映画連続体はMRI映画連続体に限定されず、且つ、ここに記載されている実施態様のMRI映画連続体は非限定的である。その上、本発明に従った方法は、心臓映画連続体を記録する方法又は装置と無関係に、如何なる心臓映像連続体からもLV容積を決定し得る。短軸スライスの定義は図1に例示されており、そこには、長軸2及び短軸3が示されている。その上さらに、心臓の構成要素の概略図は、左心室6と、右心室7と、心筋4と、心外筋8と、心内筋5とを示している。
【0022】
本方法において、MRI映画連続体内の第一画像は、心拍周期内のED位相に対応すると推定される。この推定は用いられる全ての画像セットに関して正しくない。しかしながら、第一画像は最大でED位相から2画像離れている。ここで、ED位相は、手動で生成される心内膜輪郭によって包含されるスライス内容積が最大である位相として定められる。ED画像が映画シーケンスの他の位置にある場合、それが第一画像になるよう、画像の簡単な再注文をなし得る。
【0023】
この推定に従って、心拍周期内の如何なる後続位相での血液容積も、EDにおける血液容積よりも少ない。心臓の手動観察は、心外膜輪郭、即ち、心筋の外側境界が、心拍周期を通じて比較的固定状態に留まり、且つ、心内膜面がESに接近するときに、心内膜面が左心室血液プールの質量中心に向かって内向きに移動する傾向を示す。図4に示される例示的な画像シーケンスにこれを見ることができる。
【0024】
よって、ED心内膜描写が全ての後続位相に複写されるとき、EDにおいて遂行される心内膜描写は全てのスライスのためにLV血液プールを包含する。心内膜面の比較的固定された性質の故に、心内膜面、或いは、それを超える如何なる臓器も包含することはあり得ない。よって、全ての後続位相に複写された、そのような描写は、LV心筋及びLV血液プールのみから起源する信号を包含する。例えば、M.Breeuwer、M.Quist、L.Spreeuwers、I.Paetsch、N.Al−Saadi、及び、E.Nagelによる「Towards automatic quantitative analysis of cardiac MR perfusion images」Proceedings CARS2001,2001,June2001,Berlin,Germanyに記載されているような、初回通過心筋灌流MR画像連続体のために用いられる動作補償のような(剛的な)位置合わせ技法を用いて、心臓の如何なる動作も自動的に補償し得る。
【0025】
映画連続体内の第一画像(ほぼED)のための心内膜描写21及び心外膜描写20を用いて、心筋23(描写20,21の間)の平均ボクセル強度が計算される。これは、心内膜描写21内のLV血液容積22を備える例示的MR画像200(図2A)及び対応する概略的例示201(図2B)における、図2A及び2Bに示されている。心内膜描写21が複写され、(図4A及び4Bに示されるように)後続位相に貼り付けられ、且つ、包含ボクセルが統合されると、統合は主に血液及び包含される心筋の強度に起因する。換言すれば次の通りである。
【0026】
【数2】

【0027】
ここで、Iは、総信号強度であり、Iは、血液に起因する信号強度であり、IMYOは、輪郭によって包含される如何なる心筋にも起因する信号強度である。図3A,3B及び図4A,4Bに見られるように、心筋はLV血液容積の質量中心に向かって移動する。図3Aは例示的なMR画像300(図3A)であり、対応する概略的例示301が図3Bに示されている。ESでの心内膜描写は図3A及び3B内で指し示されているライン31で描写されている。ESでのLV血液プールは32に示されている。ESでの心外膜描写30は、EDでの心外膜描写20とほぼ同一である。よって、総強度に対する心筋の貢献は、ED(図4A中の画像41)からES(図4A中の画像42)へ増大し、ESからEDに戻って減少する。他の貢献が肺、右心室血液プール、及び、心外膜脂肪から生じ得る。これらが生じるのは、これらが後続位相で心外膜輪郭によってカバーされるために、心臓が十分に動くときだけである。
【0028】
図4A及び4Bは、時間tに亘るED41からES42への映画シーケンスを例示している。図4Aは例示的なMR映画シーケンス400であり、対応する概略的例示401が図4Bに示されている。ライン45はED後の後続位相での心内膜境界を指し示し、血液プール46を包含する。EDからESへの点線21はEDで作成された心内膜描写を指し示している。
【0029】
血液(A)及び心筋(AMYO)の故に、輪郭Aによって包含される総領域は領域の合計と等しい。よって、
【0030】
【数3】

【0031】
これらの領域はステップ51で計算される。
【0032】
心筋(A)及び血液(AMYO)の双方のためのボクセル毎平均強度の計算は、本方法のステップ52で遂行され、ここでは、双方は初期心内膜及び心外膜描写から計算され、信号強度は包含される領域に比例すると推定すれば、それは、
【0033】
【数4】

【0034】
であり、且つ、
【0035】
【数5】

である。
【0036】
信号強度のために血液(方程式5)に起因する方程式1,2,3,4を解くことは、血液Aに起因する積分強度のための推定の向上をもたらす。これは存在し得る如何なる心筋からも起源する信号の補償を含む。
【0037】
【数6】

【0038】
よって、CMR心拍周期の特定位相において血液で補充された総LV容積VLVは次のように計算される。
【0039】
【数7】

【0040】
ここで、nは、LV総容積を含むスライスの総数であり、VED,iは、LVの拡張末期でのLVスライス数iの算出容積であり、IT,iは、心内膜描写内のスライスiの検出強度であり、IT,EDは、EDでの総強度である。これは例示された方法のステップ53で遂行される。
【0041】
LVは時間tの関数であり、上述のように心拍周期を通じて変化する(EDで最大、ESで最小)。算出VLV(t)の2つの実施例が図6及び7において連続線として示されている。従って、もしLV容積がMR映画連続体の被検査心拍周期の全位相のために計算されるならば、それは本方法のステップ54でチェックされる。全位相のための全LV容積が計算されるまで、ステップ53で次位相に増大し、上記のように被複写ED心内膜描写内の強度を計算することによって、スライス本方法はステップ53に枝戻りする。このようにして、全スライスのためのLV容積は各位相のために総LV容積として合計され、最終的に、図6及び7内のグラフに示されるように、全MR映画連続体に亘る総LV容積が結果的に得られる。
【0042】
本方法を検証するために臨床研究が遂行された。短軸心電図誘因定常自由歳差SENSE画像が、冠状動脈疾患の検査のために心臓MRIを受けた10人の患者から得られた。基底、中間、及び、心尖位置にほぼ対応する3つのスライスが8〜9の連続的スライスから選択され、スライス厚8〜10mm、視野350×344〜390×390mm、画像サイズ256×256、心拍周期中の20〜25位相、フリップ角50〜55°、TE1.56〜1.68s、TR3.11〜3.37msで撮像された。画像は、5素子相乗コイル及びベクトル心電図を用いて、主傾斜を備えるPhilips Gyrostan Intera 1.5Tで取得された。
【0043】
各画像セットの各選択スライスのために、心内膜及び心外膜描写の双方が第一画像上に手動で遂行された。これらの描写から、A、SMYO、及び、Sが計算された。各後続画像のために、心内膜描写によって包含される全ボクセルの強度値を合計することによってIが計算された。次に、方程式5に従ってIが計算された。
【0044】
結果を検証するために、手動描写が各画像のために遂行され、その算出輪郭によって包含されたボクセルの数が計算された。各画像のための総心内膜容積を得るために、ボクセル数が単一ボクセルの容積によって乗算された。第一画像のための積分値をその画像のために手動描写によって包含された容積と強制的に一致させる因子を計算することによって、I値が同一軸上に描画されるよう、I値は内心膜容積に標準化された。次に、この因子はそのスライスの全画像の強度合計に適用された。生成値のグラフが図8に見られる。これらの痕跡は手動で導出されたそれらの対応物に極めて良く従っている。強度導出痕跡の滑らかな性質は、手動描写に存在する生来的な誤差に起因するギザギザな手動導出痕跡に比べ、心機能のよりもっともらしい既述を示唆している。
【0045】
図6乃至8内のグラフは、手動描写によって生成された容積と類似の形状及び特徴を示している。
【0046】
この方法、或いは、少なくとも結果に対するさらなる改良は、乳頭筋の描写を組み入れて容積測定に対する後発的な影響を許容し得る。そのような修正は得られるグラフの類似性をさらに向上する働きをすることが想定される。
【0047】
図9は本発明の他の実施態様9についての概略図を示している。MRI映画連続体からの心拍周期中の総左心室(LV)容積を計算するためのコンピュータ91による処理するためのコンピュータプログラムを具現化したコンピュータ読取可能媒体90が設けられている。コンピュータプログラムは、拡張末期(ED)にMR映画連続体の全スライス内の左心室の心内膜及び心外膜輪郭を描写するための第一コードセグメント92と、EDに描写された心内膜輪郭を心拍周期の全位相に適用するための第二コードセグメント93と、EDに描写された心内膜輪郭内部の強度値に基づいて総LV容積を計算するための第三コードセグメント93とを含む。コンピュータは一般的に汎用コンピュータである。
【0048】
MR画像を用いるとき、本発明に従った定常自由歳差(SSFP)MR画像がLV容積決定に最適である。何故ならば、SSFP MR画像内の血液の信号強度は心拍周期を通じてほぼ一定だからである。
【0049】
LV容積の査定とは別に、異なる応力レベルで取得されるLV関数画面の時間記録における第一ステップとしても本方法を用い得る。LV関数は多数の(薬理学的に誘発された)応力レベルで査定されるのが普通である(4〜5レベル)。増大する応力の関数としての心臓の時間挙動は極めて非直線であり、それは結果的に得られる位相が時間軸の直線目盛によって簡単に一致され得ないことを意味する。測定されたLV容積曲線を入力の1つとして用いて、時間目盛を遂行し得る。これらの曲線において、収縮及び弛緩間隔が例えば決定され、これらの間隔を応力レベル間で一致し得る。
【0050】
関数心臓MR(CMR)画像の上記処理を用いて、心拍周期中のどの地点で特定画像が取られるかを決定することが可能である。これらは次を含む。休止/応力データセットにおける均等画像の決定、記録戦略の最善化のためのESの特定、又は、頻脈患者の査定。
【0051】
人がそのような位相情報を導出し得る幾つかの方法があり、人が位相を決定する2つの主要な方法は、同時記録ECG信号、或いは、実際の画像データである。極めて侵襲的な方法ではあるが、代替方法は心室内圧力カテーテルによって取られる測定の解析を通じてである。本発明の実施態様によれば、心拍周期中の位相の決定はMRI映像連続体の解析を通じて遂行される。
【0052】
最も明らかに且つ最も頻繁に用いられる、決定位相の画像導出方法は、映画連続体の手動の観察を通じてである。代替的に、左心室心内膜表面の描写によって包含される容積の分析を遂行し得る。これは商業的に入手可能なMASSパッケージ(Version 4.2,Medis,Leiden, the Netherlands)において拡張末期及び収縮末期を特定するために用いられた。しかしながら、ED及びES位相は特定されるが、全心拍周期の表示が必要とされるところでは、これらの地点間の直線補間が遂行された。
【0053】
一組の心内膜描写は、手動或いは自動で生成されるかに拘わらず、心拍周期中の位相の詳細な解析を遂行するための十分なデータを包含する。現在のところ、上記のように描写するとき、自動描写技法は困難に直面する。
【0054】
心筋を左心室血液プールよりも明るく示す撮像モダリティのために、予備処理ステップは、本発明に従ったLV容積測定方法を適用する以前に、画像を反転する。
【0055】
本発明に従った方法は、汎用コンピュータで実施されるのが一般的である。しかしながら、例えば、DSPチップ、ASICのような特別に設計された集積回路、等による実行のためのコードセグメントのような専用の解決法にも本方法を用い得る。
【0056】
本発明は特別の実施態様を参照して上記に記載された。しかしながら、上記好適実施態様以外の他の実施態様も添付の請求項の範囲内で均等に可能である。例えば、上記以外の、心内膜及び心外膜輪郭の異なる描写方法、映画連続体の異なる記録方法、映像内強度の異なる計算方法、映像の異なるスライス厚、心拍周期を表わす位相/画像の異なる数、ハードウェア又はソフトウェアによる上記方法の遂行、他の画像記録装置、又は、心臓映画連続体を取得する方法、等である。
【0057】
さらに、本明細書で用いられるとき、「含む」という用語は他の素子又はステップを排除せず、冠詞及び定冠詞は複数及び単数のプロセッサを排除せず、他のユニットが請求項に列挙された幾つかのユニット又は回路の機能を充足し得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】用語「短軸」を概略的に例示する斜視図である。
【図2A】EDに描写されたLV心筋の心内膜壁及び心外膜壁を示す心臓MR画像である。
【図2B】図2Aの例示的な概略図である。
【図3A】ESに描写されたLV心筋の心内膜壁及び心外膜壁を示す心臓MR画像である。
【図3B】図3Aの例示的な概略図である。
【図4A】EDからESまでの心拍周期中の8MR画像の心臓MRシーケンスであり、EDに導出されたLV心筋の心内膜及び心外膜壁の描写を備え、後続位相に転写されている。
【図4B】図4Aの例示的な概略図である。
【図5】本発明に従った方法の実施態様を例示するフロー図である。
【図6】全シーケンスの手動描写計算と比較された、2人の患者のための本発明の方法に従った計算された心拍周期中の総LV容積の変化を例示するグラフである。
【図7】全シーケンスの手動描写計算と比較された、2人の患者のために本発明の方法に従った計算された心拍周期中の総LV容積の変化を例示するグラフである。
【図8−1】全シーケンスの手動描写計算と比較された、6人の患者のために本発明の方法に従って計算された心拍周期中の異なるMRスライスにおけるLV容積の変化を例示する一組のグラフである。
【図8−2】全シーケンスの手動描写計算と比較された、6人の患者のために本発明の方法に従って計算された心拍周期中の異なるMRスライスにおけるLV容積の変化を例示する一組のグラフである。
【図8−3】全シーケンスの手動描写計算と比較された、6人の患者のために本発明の方法に従って計算された心拍周期中の異なるMRスライスにおけるLV容積の変化を例示する一組のグラフである。
【図8−4】全シーケンスの手動描写計算と比較された、6人の患者のために本発明の方法に従って計算された心拍周期中の異なるMRスライスにおけるLV容積の変化を例示する一組のグラフである。
【図8−5】全シーケンスの手動描写計算と比較された、6人の患者のために本発明の方法に従って計算された心拍周期中の異なるMRスライスにおけるLV容積の変化を例示する一組のグラフである。
【図9】本発明に従ったコンピュータ読取可能媒体の実施態様を例示する概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張末期に映像連続体の全てのスライスの内部の左心室の心内膜及び心外膜の輪郭を描写するステップと、
前記拡張末期に描写された前記心内膜輪郭を心拍周期の全ての位相に適用するステップと、
前記拡張末期に描写された前記心内膜輪郭内部の強度値に基づいて、総左心室内部容積を計算するステップと、
を有する心臓映画連続体から心拍周期中の総左心室内部容積を決定する方法。
【請求項2】
前記描写された心内膜及び心外膜輪郭に基づいて、前記拡張末期に心筋及び血液ボクセルのための平均強度を計算するステップをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記心拍周期の後続位相中に、前記拡張末期に描写された前記心内膜輪郭内に取り囲まれた前記心筋を補償するために、前記平均強度を用いるステップをさらに有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記総左心室内部容積が、
【数1】

として計算され、ここで、
nは、前記左心室内部容積を含む前記スライスの総数であり、
VED,iは、前記左心室内部容積の前記拡張末期での前記左心室内部容積の前記スライス数iの算出内部容積であり、
IT,iは、前記心内膜描写内の前記スライスiの検出強度であり、
IT,EDは、前記拡張末期での総強度である、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記映画連続体は、少なくとも前記左心室をカバーする複数スライス及び前記心拍周期内の複数位相を有する心臓の短軸研究である、上記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
異なる応力レベルで取得された映画シーケンスから前記左心室内部容積を決定し、よって、増大する応力の関数としての心臓の時間挙動を決定するステップをさらに有する、上記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記映画連続体は、哺乳類の体の内部部分を撮像するための装置に関する前記方法の以前に記録される、上記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記哺乳類の体の内部部分を撮像する装置は、磁気共鳴、コンピュータ断層撮影、核医学、又は、超音波装置である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
MRI研究は定常自由歳差画像を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
心臓の動作を補償するステップをさらに有する、上記請求項のうちいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
映画連続体から心拍周期中の総左心室容積を計算するために、コンピュータによって処理するためのコンピュータプログラムを具現化させたコンピュータ読取可能媒体であって、
前記コンピュータプログラムは、
拡張末期に前記映画連続体の全てのスライスの内部の左心室の心内膜及び心外膜の輪郭を描写するための第一コードセグメントと、
前記拡張末期に描写された前記心内膜輪郭を心拍周期の全ての位相に適用するための第二コードセグメントと、
前記拡張末期に描写された前記心内膜輪郭内部の強度値に基づいて前記左心室容積を計算するための第三コードセグメントとを有する、
コンピュータ読取可能媒体。
【請求項12】
前記第一コードセグメントは前記心内膜輪郭及び前記心外膜輪郭を自動的に描写する、請求項11に記載のコンピュータ読取可能媒体。

【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図8−4】
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【図8−5】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−524092(P2006−524092A)
【公表日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506890(P2006−506890)
【出願日】平成16年4月23日(2004.4.23)
【国際出願番号】PCT/IB2004/050503
【国際公開番号】WO2004/097720
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】