説明

非健常者監視システム

【課題】 制限された地域内において、被監視者の生体状況の異常を可及的速やかに検知し、かつその現在位置を検索して、応急処置を施すことを可能にする実用的な非健常者の監視システムを提供する。
【解決手段】 (A)被監視者の身体に密着して装着された小型で薄厚の生体情報検知手段、(B)(A)により検知された生体情報を継続的に出力信号として発信する無線通信手段、(C)制限された地域内において(B)から発信される出力信号を受信し入力する情報収集手段、(D)あらかじめ蓄積してある被監視者の個人生体情報と(B)で入力された生体情報とを対比して異常状態を判断するコンピュータ演算手段、及び(E)(D)において異常状態を察知したときに警報を発すると同時に被監視者の現在位置を表示し、かつ必要な援助指令を発する監視管理手段から構成された非健常者監視システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住施設、医療施設、介護施設、リハビリ施設、教育施設及びそれらの敷地内などの制限された地域内において、高齢者、身体障害者又は疾病患者のような非健常者に異常が発生し、緊急に救助措置を講じなければならなくなった場合、可及的速やかにその異常を感知し、その現在位置を検索し、救援の手を差し延べるための非健常者監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化が進むとともに、家人の隙をみて徘徊する老人の数も次第に増加する傾向にあり、これを監視するための気苦労も社会的に大きな負担となってきている。また、循環器系統に欠陥のある患者が異常を生じたとき、いちはやくそれを発見し、適切な手当てを施すために、その健康状態を常に監視する態勢を整えることも求められている。
【0003】
このような事情のもとで、高齢者、身体障害者又は疾病患者のような非健常者について異常を緊急通報するシステムとして、例えば被監視者自身がペンダント型の無線式緊急通報器又は室内に設置された有線式緊急通報器のボタンを押すことにより、自宅の電話機から消防署又は市町村が指定した地域の協力員に緊急通報を行い、その通報を受けた者が異常発生者本人に状況を確認して事後の措置を講ずる方法が独居老人を対象とした介護方法の一環として利用されている。
しかしながら、この方法では、異常を知った本人の通報により対応するため、異常を生じた本人が連絡できない状況下では、役に立たないという欠点がある。
【0004】
このような欠点を克服するために、被監視者の手首、足首、指、腕、頭部などの身体の適所にモニタを装着し、被監視者の脈拍、脈波、心電、体温、血圧、血中酸素飽和濃度などの生体データを測定し、測定したデータを処理する中央演算装置と、無線又は光通信を介して受信装置に出力する無線装置を備えたシステム(特許文献1参照)や、気体封入エアーパッド又は弾力性材料で作られたパッドをモニタリング部に使用し、これを手首に装着して脈拍、脈波、血中酸素飽和濃度を測定し、測定した情報を微弱電波又は電磁波で身体腰部に装着した通信部に送り、異常が生じた場合に地域ごとの医療機関に設置されたセンタに無線通信により通報する方法(特許文献2参照)が提案され、後者では、被監視者の居場所をGPS又はPHSで大体検索した後、無線送信装置内に設けたビーコン発信機のビーコン電波をビーコン探査器で探索して特定している。
【0005】
しかしながら、生体情報のセンサに緊急通報ボタン、音声交信手段、測定データを処理する中央演算部や無線発信部を付設した揚合、大型化になるのを免れないし、またバンドやベルトを用いてセンサを身体に装着すると違和感が著しく不快になる上に、日常動作に伴うノイズの発生で測定結果が不正確になる傾向がある。
【0006】
また、緊急情報を遠隔の医療機関に無線方式で送信する場合には、無線通信の電波強度を高める必要があるが、これには所轄官庁の許認可を得なければならず、その利用が制限される。
さらに、GPSやPHSによる位置特定は、主として屋外を対象としているため、屋内での正確な位置特定を行うのは困難であるし、ビーコン発信機の携帯は、健常者にとっても大きな負担となるので、まして非健常者にこれを携帯させることは事実上不可能である。したがって、これまで実用的な非健常者の監視システムはまだ実現していなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平9−75310号公報(特許請求の範囲その他)
【特許文献2】特開平11−104088号公報(特許請求の範囲その他)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、制限された地域内において、被監視者の生体状況の異常を可及的速やかに検知し、かつその現在位置を検索して、応急処置を施すことを可能にする実用的な非健常者の監視システムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、非健常者の生体状況の異常を迅速に検知し、適切な処置を講ずるためのシステムを開発するために鋭意研究を重ねた結果、小型で薄型の生体情報検知手段を身体に密着して装着し、異常発生時にその情報を小型無線送信方式を利用して、所定の情報集中センタに送信し、受信した情報に基づいて異常警報を出力すると同時に、出力した無線波を利用して、正確に異常発生者の位置検索を行うことにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、(A)被監視者の身体に密着して装着された小型で薄厚の生体情報検知手段、(B)(A)により検知された生体情報を継続的に出力信号として発信する無線通信手段、(C)制限された地域内において(B)から発信される出力信号を受信し入力する情報収集手段、(D)あらかじめ蓄積してある被監視者の個人生体情報と(B)で入力された生体情報とを対比して異常状態を判断するコンピュータ演算手段、及び(E)(D)において異常状態を察知したときに警報を発すると同時に被監視者の現在位置を表示し、かつ必要な援助指令を発する監視管理手段から構成されたことを特徴とする非健常者監視システムを提供するものである。
【0011】
そして、本発明の好ましい実施態様においては、上記のシステムにおいて、被監視者が高齢者、身体障害者又は疾病患者であること、制限された地域が、居住施設、医療施設、介護施設、リハビリ施設、教育施設又はそれらの敷地であること、生体情報が、体温、心拍数、血圧、呼吸数、心電位、筋電位、心音、呼吸音、脈拍、脈波、血圧値、血中酸素飽和度及び血液ガス分圧の中の少なくとも1種であること、コンピュータ演算手段が日常生活に基づいて生じるノイズを除去する機能を有すること、制限された地域内に1か所又は2か所以上の中継アンテナを設置すること、及び被監視者と監視管理手段との間に双方向音声交信手段を付設することを挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、限られた地域内で生活する非健常者に突発的な異常が発生したとき、その異常状態を迅速に検知し、適切な処置を講ずることにより、非健常者の生活を常時安全に維持し得るという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に添付図面により、本発明の非健常者監視システムを実施するための最良の形態を説明する。
図1は、本発明システムの1例の全体の構成を示すブロック図であり、被監視者に着装して生体情報を検知し、その情報を出力する情報検知出力部Aと、Aからの情報を入力し、処理する情報入力処理部Bの組み合せにより構成され、情報検知出力部Aと情報入力処理部Bとは中継器4によって連結されている。上記の情報検知出力部Aは生体情報測定器1とA/D変換器2と小型無線送信機3を有しており、一方、情報入力処理部Bは小型無線受信機5、データ変換器6及び警報装置7を有している。
【0014】
生体情報測定器1により得られる種々の情報は、小型無線送信機3より無線信号として送信され、中継器4を経て、情報入力処理部Bの小型無線受信機5にキャッチされ、データ変換器6によりデータ変換処理されて所定の閾値を越えたと判断されると警報装置7が始動し、同時に被監視者の現在位置が確認される。
【0015】
次に、図2は、個々の生体情報測定器1,…により得られた情報を情報入力処理部Bへ送信するための手段の1例として無線通信タイプのデータロガーを用いた場合の情報伝達方法を示したもので、生体情報測定器1により測定されたデータは、特定小電力無線で中継アンテナ4,4を経由し、データ集録装置8に入力され、その情報はコンピュータ9に送られ処理される。
このデータロガーには、記録データの自動収集機能を付するとともに、電話回線接続装置を利用して、遠隔地からのデータを収集機能を付することもできる。
【0016】
本発明システムで用いる生体情報測定器1は、身体に接触する内側部分を医療用シリコーンゴムなどの密着性を有し、身体の各部分に応じて容易に湾曲し、フィットする材料で形成し、また外側部分をポリプロピレン、ポリエステルのような非粘着性材料で形成するのがよい。このような材料を用いることにより、身体と密着可能とし、バンドやベルトのような緊縛固定具を用いることなく、胴体胸部又は胴体背面部に緊密に装着することができるとともに衣服との間の付着やまとわり付きを防ぐことができる。
【0017】
この生体情報測定器は、また着衣と一体的に設けることや、また着衣に取り付けることにより、装着位置の移動を防ぐことができる。さらに、過激な運動時や睡眠時などに離脱するのを防ぐために、身体に装着した位置を覆うようにバンドやベルトで抑えることもできるが、通常は必要ではない。
【0018】
このようにして測定された生体情報は、A/D変換器を用いて測定器に連結した無線発信装置により常時又は一定間隔で離れた場所に設置された無線受信装置に必要に応じ中継器を介して送信する。そして、無線受信装置に連動して付設されたコンピュータにより、生体情報の異常を判定し、異常発生が認められたときに警報装置が作動すると同時に被監視者の現在位置を確認し、必要な救急措置を施すことになる。
【0019】
この場合、無線送信装置からの無線信号を、受信装置と無線又は有線で接続された中継器を介して受信装置に送信することもでき、これによって無線受信装置の受信距離を伸ばし、さらに複数の中継器を利用して、それぞれの中継器の受信範囲からの被監視者の位置検索をすることもできる。
【0020】
また、無線送信装置の送信周波数を個別に変えることにより、同一場所や建屋内で複数の送信装置を使用していても混信することなく、異常発生者の特定を行うことができる。さらに、周波数帯が限定されている場合であっても、生体情報の送信時に、送信装置ごとに異なった認識信号を用いることにより、異常発生者の特定を行うことができる。
【0021】
一方において、この生体情報測定装置を、被監視者が任意に警報を発し得る警報発生スイッチを一体的に組み込むか又は別体として、例えばペンダント式に連絡させることにより、被監視者の独自の判断により、緊急信号を送信することができるし、送信装置と受信装置との間に双方向で音声によって状況の確認を可能にする音声交信手段を備えることによって、異常発生時の被監視者の意識状態の確認や緊急事態への対応を行うことができる。
【0022】
この無線発信装置として、ARIB STD−T67等の特定小型無線の通信方法を使うことにより、使用者自身が利用する無線通信の申請を行うことなしに、簡便に無線通信が利用できる利点がある。
【0023】
さらに、生体情報の測定装置に一定量の生体情報の保存機構を加え、一定量の生体情報を収集した後に一括して無線受信装置に送信する手段を採用すると、同一施設内で多数の利用者が存在するような場合に、無線送信負荷の軽減が可能となるばかりでなく、情報検知出力部のバッテリーの消耗を節減することができる。
【0024】
被監視者が測定結果を自らの身体情報を常時又は定期的に確認したい場合に、測定装置又は無線送信装置に無線又は有線で接続された測定結果の画面表示装置を設けることもできる。
【0025】
施設や医療機関などで利用する場合は、無線送信する生体情報を無線受信装置に接続されたデータロガーとデータベースを利用すると、生体情報の被監視者の生体情報を常時又は定期的に集録し、生体情報の長期管理も可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明システムは、特に制限された地域内において非健常者の生体状況の異常及びその現在位置を検知し、必要な対応を行うのに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明システムの1例の全体の構成を示すブロック図。
【図2】無線通信タイプのデータロガーを用いた場合の情報伝達方法を示す図。
【符号の説明】
【0028】
A 情報検知出力部
B 情報入力処理部
1 生体情報測定器
2 A/D変換器
3 小型無線送信機
4 中継器,中継アンテナ
5 小型無線受信機
6 データ変換器
7 警報装置
8 データ集録装置
9 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)被監視者の身体に密着して装着された小型で薄厚の生体情報検知手段、(B)(A)により検知された生体情報を継続的に出力信号として発信する無線通信手段、(C)制限された地域内において(B)から発信される出力信号を受信し入力する情報収集手段、(D)あらかじめ蓄積してある被監視者の個人生体情報と(B)で入力された生体情報とを対比して異常状態を判断するコンピュータ演算手段、及び(E)(D)において異常状態を察知したときに警報を発すると同時に被監視者の現在位置を表示し、かつ必要な援助指令を発する監視管理手段から構成されたことを特徴とする非健常者監視システム。
【請求項2】
被監視者が高齢者、身体障害者又は疾病患者である請求項1記載の非健常者監視システム。
【請求項3】
制限された地域が、居住施設、医療施設、介護施設、リハビリ施設、教育施設又はそれらの敷地である請求項1又は2記載の非健常者監視システム。
【請求項4】
生体情報が、体温、心拍数、血圧、呼吸数、心電位、筋電位、心音、呼吸音、脈拍、脈波、血圧値、血中酸素飽和度及び血液ガス分圧の中の少なくとも1種である請求項1、2又は3記載の非健常者監視システム。
【請求項5】
コンピュータ演算手段が日常生活に基づいて生じるノイズを除去する機能を有する請求項1ないし4のいずれかに記載の非健常者監視システム。
【請求項6】
制限された地域内に1か所又は2か所以上の中継アンテナを設置した請求項1ないし5のいずれかに記載の非健常者監視システム。
【請求項7】
被監視者と監視管理手段との間に双方向音声交信手段を付設する請求項1ないし6のいずれかに記載の非健常者監視システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−263305(P2006−263305A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88410(P2005−88410)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(505109495)有限会社ライジング (1)
【出願人】(505109509)株式会社オオモリ (1)
【Fターム(参考)】