説明

非同期ベルト駆動カムシャフト位相シフト装置

内燃機関Eと共に使用される非同期カムシャフト位相整合装置(non−synchronous camshaft phasing device)46。内燃機関Eは、エンジン制御ユニットECUと、カムシャフト42と、クランクシャフト12とを有する。非同期位相整合装置46は、カムシャフト42とクランクシャフト12との間の位相ずれ角度を制御するためにクランクシャフト12とカムシャフト42との間に位置される。位相整合装置46は、非同期ベルト40を介してクランクシャフト12に結合される入力シャフト36を有する。位相整合装置46はまた、カムシャフト44に結合される出力シャフト42と、入力シャフト36及び出力シャフト42の周りに同軸に配置されそれらに結合されるプラネタリ歯車列48と、キャリア56によってプラネタリ歯車列48に結合されるモータ50とを有する。制御装置がエンジン制御装置ユニットECUに動作可能に連結され、ここでは、この制御装置は、エンジン制御ユニットECUによって発生されるエンジン作動信号を受けるように、並びに、入力シャフト36及び出力シャフト42に結合される位置センサ51からの信号を受けるように構成される。制御装置は、それらの信号に応答して、キャリア56を介してプラネタリ歯車列48を制御してカムシャフト42とクランクシャフト12との間の位相ずれ角度を調整するようにモータ50に指示を出すために、トルク・コマンド信号を発生させてそれをモータ50に送る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2007年10月9日に出願された米国仮特許出願第60/978,568号に関し、その優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
カムシャフト位相シフティング装置は、内燃機関内で、燃費を向上させるため及び排気ガス品質を改善するためにバルブ・タイミングを変更するのに使用される。現行のカムシャフト・シフタを用いて、最大限のコンフォートを得るために並びに/又は最大トルク及び最高性能を得るためにバルブの作動のタイミングを調整することが可能である。現在使用されているカムシャフト位相シフティング装置は、タイミング歯付きベルト又はチェーン駆動装置を介してクランクシャフトにより駆動される。能動的/同期的係合駆動システム(positive/synchronous engagement drive system)(すなわち、歯付きベルト駆動装置(toothed belt drive)及びチェーン駆動装置)が使用されるのは、主として、クランクシャフトとカムシャフトとの間のタイミングの要求基準が厳しいことが理由である。しかし、能動的係合駆動システムにかかるコストは、非同期ベルト(non−synchronous belt)として知られている平ベルト又はVベルトによる駆動システムなどの、非能動的係合駆動システムにかかるコストより高い。
【0003】
車体の空間設計及びコスト削減のために単純な非能動的/非同期ベルト駆動装置によって駆動されるのに適しており、更には、所望のバルブ・タイミングを得てそれを維持するように調整可能であり、一方、単純化及び高精度化のために電子的に制御されるカムシャフト位相整合装置を有することが所望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/978,568号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
簡単に述べると、本開示は内燃機関用のカムシャフト位相装置に関し、詳細には、非同期のベルト駆動式カムシャフト位相装置に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ベルト駆動式カムシャフト位相装置は、非同期ベルトと、入力シャフト及び出力シャフトに動作可能に連結されるエピサイクリック歯車列とを有する。入力シャフトは非同期ベルトを介してクランクシャフトに連結され、出力シャフトはカムシャフトに連結される。カムシャフト位相装置はセンサ及び制御装置を更に有しており、これらを介して、入力シャフト及び出力シャフトの位置並びにカムシャフト及びクランクシャフトの位置が検出及び追跡される。万一クランクシャフトとカムシャフトとの間での所望の位置関係が非同期になったことが許容範囲を超えるエラー信号によって測定された場合には、歯車列を介して出力シャフトに修正又は補償が行われる。本開示のカムシャフト位相装置は、非同期ベルト駆動システムの作動により生じるカムシャフトとクランクシャフトとの間の相対的な角度位置の不整合をリアルタイムで補償するのを実現するのに十分なスルーレートを有する。
【0007】
前述の特徴及び本開示に記載される利点、並びに本発明の好適な実施例が、添付図面と併せて以下の説明を読むことによってより明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】内燃機関の内部構成要素、それらに付随するプーリ、及び、非同期ベルトを概略的に示す、非同期のベルト駆動式駆動システムの概略図である。
【図2】本開示に従って構築され本開示を具体化する、カムシャフト位相シフト装置の概略図である。
【図3】入力シャフト、出力シャフト、及び位相シフト装置の断面図である。
【図4】本開示に従って構築され本開示を具体化する、位相シフト装置の分解図である。
【図5】図4の位相シフト装置の構成要素の別の分解図である。
【図6】本開示に従って構築され本開示を具体化する、位相シフト装置の断面図である。
【図7】入力シャフトに対する出力シャフトの所望の角度位置を制御するカムシャフト位相シフト装置のトルク・ベースの制御構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
これらの図面の複数の図を通して一致する参照符合は対応する部品を示している。これらの図面は本開示に記載される概念を図示しているものであり、縮尺に従って描かれているわけではないことを理解されたい。
【0010】
以下の詳細な記述は、限定的にではなく例として本発明を説明するものである。この記述は、当業者が本開示を作って使用することを可能にするものであり、本開示を実施する最良の形態と現在考えられるものを含む、本開示の複数の実施例、適用例、変形例、代替例、及び用途を説明するものである。
【0011】
図面を参照すると、内燃機関E用の駆動システムが10として概略的に示されている(図1)。この駆動システムは、クランクシャフト12及びクランクシャフト・プーリ14と、エアコンディショニング・コンプレッサ16及びコンプレッサ・プーリ18と、パワーステアリング・ポンプ20及びポンプ・プーリ22と、ウォータ・ポンプ24及びポンプ・プーリ26と、オルタネータ28及びオルタネータ・プーリ30と、テンショナ32及びテンション・プーリ34と、入力シャフト36及び付随するプーリ38と、非同期ベルト40とを有する。非同期ベルト40は、付随するプーリ14、18、22、26、30、34及び38に動作可能に連結され、クランクシャフト12がそのプーリ14を介して非同期ベルト40を駆動させる。
【0012】
図2〜6を参照すると、入力シャフト36は、入力シャフト36の端部のところで入力プーリ38に結合されている。出力シャフト42は、出力シャフト42の端部のところでクランクシャフト44に結合されている。更に、全体として46で示される、本開示の電気機械式位相シフト装置が、内燃機関Eのカムシャフト44の端部のところに位置されて示されている。位相シフト装置46は、全体として48で示されるエピサイクリック歯車列と;全体として50で示されるモータと;センサ51、並びに、入力シャフト36及び出力シャフト42更にはエンジン制御ユニットECUに動作可能に連結される付随するターゲット・ホイール47、49とを有する。
【0013】
エピサイクリック歯車列48は、入力シャフト36及び出力シャフト42の周りに同軸に配置される。エピサイクリック歯車列48は、入力太陽歯車52の形態の第1のブランチと、出力太陽歯車54の形態の第2のブランチと、キャリア56の形態の制御ブランチとを有する。歯車列48はまた、第1の遊星歯車58及び第2の遊星歯車60を有する。当技術分野で知られているように、第1の遊星歯車58は第1の遊星歯車のセットを有していてよく、第2の遊星歯車60は第2の遊星歯車のセットを有していてよい。最も有利には、第1の遊星歯車のセットと第2の遊星歯車60のセットとがキャリア56内で等間隔に配置される。
【0014】
入力太陽歯車52は第1の遊星歯車58のセットに噛合され、出力太陽歯車54は第2の遊星歯車60のセットに噛合される。第1の遊星歯車セット内の各遊星歯車58は第2の遊星歯車セット内の対応する遊星歯車60に結合されてそれらと共に一体に回転する。遊星歯車58、60は合わせて一対のプラネタリ歯車を形成し、共通の軸を中心に同じ角速度で回転する。この一対のプラネタリ歯車は、軸受64を介してプラネット・シャフト62のセットによって支持される(図2)。キャリア56は軸受68を介してハウジング66内で支持される。
【0015】
一実施例(図4〜6)では、遊星歯車58、60は実質的に同じ形状であり、単一の歯車70として統合される。単一の歯車70は、それぞれが遊星歯車58、60と相互に関連し合う第1のギアエンド72及び第2のギアエンド74を有する。図6は、180度離れて位置された単一の歯車70のセットの断面図を示している。
【0016】
入力シャフト36はその一方の端部が入力プーリ38に連結され、他方の端部が入力太陽歯車52に連結される。入力シャフト36は軸受64を介してハウジング66内で支持される。出力シャフト42はその一方の端部が出力太陽歯車54に連結され、他方の端部がカムシャフト44に連結される。出力シャフト42は軸受64を介してハウジング66内で支持される。当技術分野で知られているように、第1の太陽歯車52及び第2の太陽歯車54は、それぞれ入力シャフト36及び出力シャフト42から、一体に形成されていてよい。示されるように、モータ50は回転子76及び固定子78を有する。回転子76はキャリア56に外嵌されて強固な機械的連結を成し、その結果、キャリア56が回転子76と一体に回転するようになる。示されるように、固定子78はハウジング66に取り付けられる。
【0017】
支持剛性を向上させるために、入力シャフト36及び出力シャフト42が、軸受80を介して一方がもう一方の上に誘導される形で、入力太陽歯車52及び出力太陽歯車54を越えて延在してよい(図2)。2つのシャフト36、42の間の位相ずれが望ましい場合、入力シャフト36が出力シャフト42に対して回転され得る。最も有利には、2つのシャフト36、42の間で過度の角度のずれが生じるのを防止するために、全体として82で示される角度位置制限装置(図1、図4〜6)が、両方の回転方向において機械的ストッパを形成するのに使用される。
【0018】
制限装置82は、入力太陽歯車52を出力歯車54に回転可能に結合させる。図4〜6を参照すると、制限装置82は、一実施例では、入力太陽歯車52の面86上に位置するスロット84と、出力太陽歯車54の別の面90から突出する延長部88とを有しており、延長部88はスロット84に摺動可能に係合される。一実施例では、延長部88は、出力太陽歯車54から突出するピンを有する。シャフト36、42の回転中、スロット84が延長部56の行程内の移動を制限する形で、延長部56が対向するスロット84内で摺動しながら往復運動し、シャフト36、42の間で過度の角度のずれが生じるのを防止する。
【0019】
作動中、クランクシャフト12が、クランクシャフト・プーリ14及び入力プーリ38を経由するサーペンタイン・ベルト40を介して入力シャフト36を駆動させる。次いで、入力シャフト36が歯車列48を介して出力シャフト48を駆動させる。センサ51が、ターゲット・ホイール47、49を介して入力シャフト36及び出力シャフト42の角速度及び位置を監視する。このとき、センサ51はシャフトの情報をエンジン制御ユニットECUに送る。
【0020】
一実施例では、クランクシャフト・プーリ14のピッチ線速度に対してのピッチ線速度の損失率として定義される有効クリープ率は以下で「γ」として示される。クランクシャフト・プーリ14のピッチ円直径に対する入力シャフト・プーリ38のピッチ円直径の比は以下で「Ψ」として示される。入力シャフト36の角速度に対するクランクシャフト12の角速度の比「φ」は以下のように特徴づけられる。
【数1】

【0021】
公称の有効クリープ率がγ=γである場合、クランクシャフト12及び入力シャフト36のプーリ・サイズは、最適には、式(1)に従って得られる角速度比φが実質的に2に接近するように選択される。すなわち、クランクシャフト12に対する入力シャフト36のプーリ直径比は以下のように設定される。
Ψ=2(1−γ) (2)
【0022】
クランクシャフト12とカムシャフト44との間で同期を確保するために、キャリア56の角速度は、以下の関係が厳密に維持されるように、入力シャフト36又は出力シャフト42の角速度に従って設定される。
【数2】


ここで、
ωはキャリア56の角速度;
ωS1は入力シャフト36の角度速度;
ωS2は出力シャフト42の角速度であり;

【数3】


のように定義される、差動歯車列48の基準の歯車比であり、
ここで、
S1、NS2は、それぞれ、第1の太陽歯車52及び第2の太陽歯車54の歯数;
P1、NP2は、それぞれ、第1の遊星歯車58及び第2の遊星歯車60の歯数である(図6の実施例の場合、NP1、NP2は、それぞれ、第1の遊星歯車の端部72及び第2の遊星歯車の端部74の歯数である);
φは、入力シャフト36に対するクランクシャフト12の角速度比であり、以下の式を介してクリープ率に関係付けられる。
【数4】

【0023】
式(5)を式(3)に代入して、γに関する(ω/ωS1)の導関数をとると、
【数5】


が得られる。
【0024】
公称値γにおけるクリープ率に対する速度比(ω/ωS1)の感度定数は
【数6】


である。i=0.96、γ=1%の場合、
【数7】


となる。
【0025】
γの変化の大部分は低振動成分によって占められることから、ベルト40のクリープによって生じる出力シャフト42のいかなる速度の変化もキャリア56を制御することによって補償することができる。複数の制御構造により、クランクシャフト12の位置に対する出力シャフト42の装置の所望の角度位置を得ることが可能である。例えば、キャリア56の速度は、式(3)によって示される速度関係を維持するために、閉じられた速度制御ループのための制御変数として使用され得る。制御装置がエンジン制御ユニットECU及びモータ50に動作可能に連結される。この制御装置は、エンジン制御ユニットECUによって発生されるエンジン作動信号を受けるように、並びに、入力シャフト36及び出力シャフト42に結合される位置センサ51からの信号を受けるように構成され、更には、それらに応答して、キャリア56を介してプラネタリ歯車列48を制御してカムシャフト12とクランクシャフト44との間の位相ずれ角度を調整するようにモータ50に指示を出すために、コマンド信号を発生させてそれをモータ50に送る。
【0026】
図4は、出力シャフト42の所望の角度位置を得るための別の制御構造を示している。具体的には、図4は、クランクシャフト12の位置に対する出力シャフト42の所望の角度位置を得るために本開示のカムシャフト位相整合装置46と共に使用されるのに適した、全体として92で示されるトルク・ベースの制御構造を示している。主制御変数は、クランクシャフト12の位置に対するカムシャフト44の角度位置として定義されるカムシャフトの角度である。制御トルク・ベースの制御構造92は、エンジンE及びエンジン制御ユニット96(ECU)に動作可能に連結される制御装置94を有する。
【0027】
制御装置94は、制御装置94がエンジン制御ユニット96から受け取る情報に基づき、電圧信号などのトルク・コマンド信号98を発生させる。受け取られる情報には、限定しないが、カムシャフト位相ずれ設定点(基準点)と、角度位置センサ信号から測定された実際のカムシャフトの位相ずれ角度と、カムシャフトのトルク荷重と、カムシャフトの角度位置とが含まれる。
【0028】
作動中、実際のカムシャフトの位相ずれ角度が基準値と比較され、差動信号(エラー信号)が発生される。次いで、この作動信号又はエラー信号が制御装置94の比例積分微分(proportional−integral−derivative(PID))補償装置100に送られ、フィードバック・トルク信号102が発生される。このフィードバック・トルク信号102は、この後、カムシャフト位相角度を調整するための制御を行うようにモータ50に指示を出すためのトルク・コマンド信号98を発生させるのに使用されてよく、それにより、PID補償装置100又はリード/ラグ補償装置の入力部へのエラー信号が許容レベルまで低減される。こうすることで、所望のカム位相の変位が達成される。トルク・ベースの制御構造92の場合、補償装置100は、比例微分(proportional−and−derivative(PD))補償装置、リード/ラグ補償装置、又はリード補償装置を有していてよい。
【0029】
エンジンEの作動中、この制御システムは、バルブ・リフトの際にカム位相角度に応じてカムシャフトのトルクが変化することで外乱を受ける場合がある。基準入力に対するこのシステムの応答を改善して外乱に対するロバストネスを向上させるために、あらゆる既知の外乱を補償できるようなフィードフォワード・スキームを使用することが望ましい。したがって、制御装置94は、予想されるトルク外乱をプログラム操作にかけて計算するためのフィードフォワード・ブランチ又はフィードフォワード・ブロック104を更に有していてよい。予想されるトルク外乱より得られるフィードフォワード・トルク信号106がPID補償装置100(又はリード/ラグ補償装置)の出力信号にフィードフォワードされてその出力信号に組み合わされ、それによりトルク・コマンド信号が生成される。
【0030】
フィードフォワード・トルクとも称される予想されるトルク外乱は2つの成分、Trq_static及びTrq_frictionから決定される。Trq_staticは、3つのブランチを有する歯車駆動装置(three−branch gear drive)の、摩擦のない静的平衡条件から計算される。Trq_frictionは、その時点のカムシャフト・トルク荷重が摩擦トルクに打ち勝つために必要となる成分である。Trq_frictionの正負の符号は、キャリア56と入力シャフト36(又は出力シャフト42)との間の相対速度によって決定される。開示したこのカムシャフト位相整合装置Aの構成の場合、フィードフォワード・トルクは、
ffwd=Trq_static+Trq_friction=(1−i)・Tcam+sgn(v)・f(Tcam) (8)
のように計算され、ここで、Tcamは、カムシャフトの位相角度の関数であるカムシャフト・トルク荷重である。
【0031】
カム位相角度は解析的方程式によって又は参照テーブルとして表され得る。関数sgn(v)は、キャリア56と入力シャフト36との間の相対速度vの正負の符号を表す。関数f(Tcam)は摩擦トルク(Trq_friction)の大きさを表す。Tffwdは、作動中に、エンジン・トルク及びエンジン回転速度の関数としてダイナモメータ試験で決定され得る。その場合、較正された試験データが、リアルタイムでアクセスできるように車上の記憶装置(図示せず)内に記憶され得る。
【0032】
通常の動作中では(位相の変位が行われていない)、制御構造92は、式(3)によって示される速度関係が維持されるようにモータ速度ωを自動で制御する。カム位相の変位が行われている場合、制御装置94は、この変位の終了時に所望のカム位相角度が得られるように、モータ速度ωを調整して短時間でカム位相角度を変更する。
【0033】
本発明の範囲から逸脱することなく上述の構成に対して種々の変更がなされ得ることから、上述の説明に含まれる又は添付図面に示されるすべての事柄は例示的なものであり、限定的な意味で解釈されるべきではないことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン制御ユニットと、クランクシャフト及びカムシャフトと、前記クランクシャフトと前記カムシャフトとの間の位相ずれ角度を制御するために前記クランクシャフトと前記カムシャフトとを結合させる位相シフト装置と有する内燃機関内の位相シフト装置であって、
前記クランクシャフトに動作可能に連結される非同期ベルトと、
端部に結合される第1の太陽歯車を有する、前記非同期ベルトに動作可能に連結される入力シャフトと、
端部に結合される第2の太陽歯車を有する、前記カムシャフトに結合される出力シャフトと、
前記第1の太陽歯車及び前記第2の太陽歯車の周りに同軸に配置され、キャリアと、前記第1の太陽歯車及び前記第2の太陽歯車にそれぞれが係合され且つ前記キャリアの第1の軸受及び第2の軸受を介して共通の軸を中心に回転するように一体化される第1のギアエンド及び第2のギアエンドを有する遊星歯車とを有する、プラネタリ歯車列と、
前記キャリアに動作可能に連結されるモータと、
前記エンジン制御ユニット及び前記モータに動作可能に連結され、前記エンジン制御ユニットによって発生されるエンジン作動信号を受けるように、並びに、前記入力シャフト及び前記出力シャフトに結合される位置センサからの信号を受けるように構成され、更には、それらに応答して、前記キャリアを介して前記プラネタリ歯車列を制御して前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間の位相ずれ角度を調整するように前記モータに指示を出すために、コマンド信号を発生させてそれを前記モータに送るように構成される、制御装置と
を有する位相シフト装置。
【請求項2】
前記第1の太陽歯車の反対側の前記入力シャフトの端部のところで前記入力シャフトに連結される入力シャフト・プーリと、前記クランクシャフトに連結されるクランクシャフト・プーリとを更に有し、前記非同期ベルトが前記クランクシャフト・プーリ及び前記入力シャフト・プーリに動作可能に連結される、請求項1に記載の位相装置。
【請求項3】
前記非同期ベルトのクリープ率が「γ」で示され、前記入力シャフト・プーリのピッチ円直径に対する前記クランクシャフト・プーリのピッチ円直径の比が「Ψ」で示され、前記入力シャフトの角速度に対する前記クランクシャフトの角速度の比が、以下の式
【数1】


によって特徴づけられる「φ」で示される、請求項2に記載の位相装置。
【請求項4】
「i」で示される前記プラネタリ歯車列の歯車比が、以下の式
【数2】


(ここで、
S1、NS2は、それぞれ、前記第1及び第2の太陽歯車の歯数;
P1、NP2は、それぞれ、前記第1及び第2のギアエンドの歯数)
によって特徴づけられる、請求項3に記載の位相装置。
【請求項5】
前記制御装置が、前記プラネタリ歯車列を制御するように前記モータに指示を出し、それにより、前記キャリアの角速度ωが、以下の式
【数3】


に従って前記入力シャフトωS1の角速度との関係を維持するように制御される、請求項4に記載の位相装置。
【請求項6】
前記制御装置が、前記プラネタリ歯車列を制御するように前記モータに指示を出し、それにより、前記キャリアの角速度ωが、以下の式
【数4】


に従って前記出力シャフトの角速度ωS2との関係を維持するように制御される、請求項4に記載の位相装置。
【請求項7】
前記プラネタリ歯車が第1の遊星歯車及び第2の遊星歯車を有し、前記第1の遊星歯車が前記第1の太陽歯車に噛合され、前記第2の遊星歯車が前記第2の太陽歯車に噛合される、請求項3に記載の位相装置。
【請求項8】
「i」で示される前記プラネタリ歯車列の歯車比が、以下の式
【数5】


(ここで、
S1、NS2は、それぞれ、第1の太陽歯車及び第2の太陽歯車の歯数;
P1、NP2は、それぞれ、第1の遊星歯車及び第2の遊星歯車の歯数)
によって特徴づけられる、請求項7に記載の位相装置。
【請求項9】
前記制御装置が、前記プラネタリ歯車列を制御するように前記モータに指示を出し、それにより、前記キャリアの角速度ωが、以下の式
【数6】


に従って前記入力シャフトの角速度ωS1との関係を維持するように制御される、請求項8に記載の位相装置。
【請求項10】
前記入力シャフトに対する前記クランクシャフトの角速度比が「φ」で示され、以下の式
【数7】


(ここで、
γは、前記クランクシャフト・プーリのピッチ線速度に対してのピッチ線速度の損失率として定義される有効クリープ率;
γは非同期ベルトの所定の公称クリープ率)
によってクリープ率に関連付けられる、請求項2に記載の位相装置。
【請求項11】
前記制御装置が、内燃機関に加えられる予想されるトルク外乱をプログラム操作にかけるように構成されるフィードフォワード・ブロックを有する、請求項1に記載の位相整合装置。
【請求項12】
前記フィードフォワード・ブランチの出力Tffwdが、以下の式
ffwd=Trq_static+Trq_friction=(1−i)・Tcam+sgn(v)・f(Tcam
(ここで、
rq_staticは、3つのブランチを有する歯車駆動装置の、摩擦のない静的平衡条件から計算される;
rq_frictionは、その時点のカムシャフト・トルク荷重が摩擦トルクに打ち勝つために必要となる成分である;
camはカムシャフト・トルク荷重である;
f(Tcam)はTrq_frictionの大きさである)
によって決定される、請求項11に記載の位相装置。
【請求項13】
内燃機関内で、カムシャフトとクランクシャフトとの間の位相ずれ角度を制御する方法であって、
非同期ベルトを、前記クランクシャフトと、端部に結合される第1の太陽歯車の端部を有する入力シャフトとに連結させるステップと、
プラネタリ歯車列を、前記入力シャフトの周り、及び、端部に結合される第2の太陽歯車を有する、前記カムシャフトに結合される出力シャフトの周りに配置するステップと、
前記プラネタリ歯車列の第1の遊星歯車を前記第1の太陽歯車に噛合させ、前記プラネタリ歯車列の第2の遊星歯車を前記第2の太陽歯車に噛合させ、前記第1の遊星歯車及び第2の遊星歯車が前記プラネタリ歯車列のキャリアを介して共通の軸を中心に回転するように一体化される、ステップと、
モータを前記キャリアに動作可能に連結させるステップと、
前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間の前記位相ずれ角度を調整するように前記キャリアを介して前記プラネタリ歯車列を制御するように前記モータに指示を出すステップと
を含む方法。
【請求項14】
前記モータを制御するステップが、以下の式
【数8】


[ここで、
非同期ベルトのクリープ率は「γ」で示され;前記入力シャフト・プーリのピッチ円直径に対する前記クランクシャフト・プーリのピッチ円直径の比は「Ψ」で示され;前記入力シャフトの角速度に対する前記クランクシャフトの角速度の比は、以下の式
【数9】


によって特徴づけられる「φ」で示され、
更に、ここで、
「i」で示される前記プラネタリ歯車列の歯車比は、以下の式
【数10】


(ここで、
S1、NS2は、それぞれ、前記第1の太陽歯車及び第2の太陽歯車の歯数;
P1、NP2は、それぞれ、前記第1の遊星歯車及び第2の遊星歯車の端部の歯数)
によって特徴づけられる]
に従って前記キャリアの角速度ωが制御されてそれにより前記入力シャフトの角速度ωS1との関係が維持されるように、前記プラネタリ歯車列を制御するように前記モータに指示を出すステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モータを制御するステップが、以下の式
【数11】


[ここで、
非同期ベルトのクリープ率は「γ」で示され;前記入力シャフト・プーリのピッチ円直径に対する前記クランクシャフト・プーリのピッチ円直径の比は「Ψ」で示され;前記入力シャフトの角速度に対する前記クランクシャフトの角速度の比は、以下の式
【数12】


によって特徴づけられる「φ」で示され、
更に、ここで、
「i」で示される前記プラネタリ歯車列の歯車比は、以下の式
【数13】


(ここで
S1、NS2は、それぞれ、前記第1の太陽歯車及び第2の太陽歯車の歯数;
P1、NP2は、それぞれ、前記第1の遊星歯車及び第2の遊星歯車の端部の歯数)
によって特徴づけられる]
に従って前記キャリアの角速度ωが制御されてそれにより前記出力シャフトの角速度ωS2のとの関係が維持されるように、前記プラネタリ歯車列を制御するように前記モータに指示を出すステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
内燃機関内で、内燃機関のカムシャフトとクランクシャフトとの間の位相ずれ角度を制御する方法であって、
非同期ベルトを、前記クランクシャフトと、端部に結合される第1の太陽歯車の端部を有する入力シャフトとに連結させるステップと、
プラネタリ歯車列を、前記入力シャフトの周り、及び、端部に結合される第2の太陽歯車を有する、前記カムシャフトに結合される出力シャフトの周りに配置するステップと、
前記プラネタリ歯車列の第1の遊星歯車を前記第1の太陽歯車に噛合させ、前記プラネタリ歯車列の第2の遊星歯車を前記第2の太陽歯車に噛合させ、前記第1の遊星歯車及び第2の遊星歯車が前記プラネタリ歯車列のキャリアを介して共通の軸を中心に回転するように一体化される、ステップと、
モータを前記キャリアに動作可能に連結させるステップと、
前記カムシャフトの角度位置信号を受け取るステップと、
前記カムシャフト位相信号をエンジン制御ユニットによって発せられる基準信号と比較するステップと、
前記カムシャフトと前記クランクシャフトとの間の前記位相ずれ角度を調整するように前記モータに指示を出すトルク・コマンド信号を前記比較されたカムシャフト信号に基づいて発生させるステップとを含む方法。
【請求項17】
前記トルク・コマンド信号が「Tffwd」で示され、以下の式
ffwd=Trq_static+Trq_friction=(1−i)・Tcam+sgn(v)・f(Tcam
(ここで、
rq_staticは、3つのブランチを有する歯車駆動装置の、摩擦のない静的平衡条件から計算される;
rq_frictionは、その時点のカムシャフト・トルク荷重が摩擦トルクに打ち勝つために必要となる成分である;
camはカムシャフト・トルク荷重である;
f(Tcam)はTrq_frictionの大きさである)
によって決定される、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−540844(P2010−540844A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529016(P2010−529016)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079274
【国際公開番号】WO2009/049001
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(510099028)コーヨー ベアリングス ユーエスエイ、エルエルシー (10)
【Fターム(参考)】