非対称電力駆動を用いた電力増幅装置
【課題】非対称電力駆動を用いて高効率を維持しながら最適の線形性を達成するドハーティ増幅器を提供する。
【解決手段】非対称電力駆動器500,伝送ライン502,互いに並列に連結されているキャリア増幅器504及びピーク増幅器506、オフセットライン508,第1λ/4伝送ライン510,及び第2λ/4伝送ライン512から構成される。
【解決手段】非対称電力駆動器500,伝送ライン502,互いに並列に連結されているキャリア増幅器504及びピーク増幅器506、オフセットライン508,第1λ/4伝送ライン510,及び第2λ/4伝送ライン512から構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率及び高線形性の電力増幅装置に関し、更に超高周波ドハーティ増幅器(microwave Doherty amplifier)を用いる、非対称電力駆動の電力増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、本発明が属する技術分野で広く知られているように、ドハーティ増幅器は、クォータウェーブトランスフォーマ(λ/4ライン)を用いてキャリア増幅器とピーク増幅器を並列に連結した構造を有する。ドハーティ増幅器は電力レベルが増加することによって、負荷に供給される電流の量が増加し、ピーク増幅器によりキャリア増幅器の負荷インピーダンスを調節して効率を上げる対称電力結合方式により駆動される。
【0003】
超高周波ドハーティ増幅器は、高出力低周波真空管または中間周波数真空管を用いた放送装置の振幅変調送信器として用いられていた。その後、真空管ではなく物性デバイスを用いて超高周波ドハーティ増幅器を具現するための様々な提案があり、実質的な具現のための多くの研究がなされていた。
【0004】
非対称電力駆動方式を用いるドハーティ増幅器は、高効率と高線形性を実現した。特に、移動通信基地局及び移動通信端末器で用いられるドハーティ増幅器は、大体同じサイズの物性デバイス、同じ入/出力整合回路及び入力電力駆動により具現される。この時、キャリア増幅器はクラスABに、ピーク増幅器はクラスCにそれぞれバイアスされるが、ピーク増幅器のバイアスはキャリア増幅器のバイアスよりも低いため、電力レベルに応じてピーク増幅器の電流レベルが常にキャリア増幅器の電流レベルよりも低いという問題点を有する。
【0005】
図1は、それぞれのバイアスレベル、すなわち誘導角(conduction angle)による電流成分の大きさを示す。図1に示すように、より低くバイアスされているピーク増幅器は、基本電流成分においてキャリア増幅器よりも低いことが分かる。バイアスポイントがクラスABであるキャリア増幅器は、誘導角がπないし2πであるため、最大入力電力に対して電流の基本成分は0.5〜0.536の大きさを有し、クラスCに動作するピーク増幅器は、誘導角が0〜πであるため、基本電流成分は0〜0.5の大きさを有するようになる。したがって、ピーク増幅器の基本電流成分が、キャリア増幅器に及ばないため、負荷変調現象(load modulation)(それぞれの電流源が動作する時、電流源前端の負荷インピーダンスが電流源で発生した電流の大きさによって変化する現象)が起こるだけでなく、ドハーティ動作においても大きい問題点がある。
【0006】
また、後述する図9Aでのように、ピーク増幅器の低いバイアスレベルに起因してピーク増幅器の基本電流成分は、駆動電圧レベルが一定値以上である場合のみ検出されることが分かる。
したがって、キャリア増幅器が最大の入力電力で駆動した時、ピーク増幅器の基本電流成分がキャリア増幅器より低いだけでなく、ピーク増幅器で要求される最大の入力電力で駆動されないため、更に低い基本電流の大きさを生成するようになる。結果的に、ドハーティ増幅器は最大の出力電力を生成できないという問題点を有することになる。
【0007】
このような問題点を解決するために、包絡線トラッキングデバイスまたは入力電力トラッキングデバイスによりドハーティ増幅器の長所である高効率特性を維持しながら、最大出力の側面で従来のドハーティ増幅器よりも大幅に改善された研究結果が発表されている。また、超高周波帯域でドハーティ増幅器を実質的に具現するための多くの研究が行われており、その1つが図2に示されている。
【0008】
図2に示すドハーティ増幅器は、キャリア増幅器204及びピーク増幅器206と、キャリア増幅器204及びピーク増幅器206に互いに同一の電力が入力されるようにする電力分配器200と、キャリア増幅器204及びピーク増幅器206との間の位相を同期化するための伝送ライン202と、ピーク増幅器206が動作しない間にインピーダンスの出力を大きくして適切な負荷変調現象が起こるようにするオフセットライン208と、ドハーティ動作のためのクォータウェーブ伝送ライン210及び212とから構成される。
【0009】
図2に示すようなドハーティ増幅器は、キャリア及びピーク増幅器が同一の値を出力するようにしながら、それぞれの増幅器の入/出力整合回路を同一に構成して最大の出力電力を生成する方式に具現される。また、このドハーティ増幅器はキャリア増幅器及びピーク増幅器内のトランジスタの出力端に出力整合回路を設置し、その後ろにオフセットライン208が配置されるようにすることで実数部だけでなく、虚数部の整合も可能にし、増幅器の出力を最大限に得ながらドハーティ動作を可能にしたものである[参照、Y. Yang et al、 「Optimum Design for Linearity and Efficiency of Microwave Doherty Amplifier Using a New Load Matching Technique」、Microwave Journal、 Vol44、 No.12、 pp.20-36、 Dec.2002]。
【0010】
また、図3では、ドハーティ増幅器を改善しながらも効率及び線形性を最適化できるN-ウェイドハーティ増幅器について開示している。[Y. Yang et al、 「A Fully Matched N-way Doherty Amplifier with Optimized Linearity」、 IEEE Trans. Microwave Theory and Tech.、Vol.51、 No.3、 pp. 986-993、 March2003]。
【0011】
図3に示すN-ウェイドハーティ増幅器は、図2に示した増幅器とは異なり、1つのキャリア増幅器と複数のピーク増幅器304を構成してドハーティ動作を行うように具現され、1つのキャリア増幅器と複数のピーク増幅器に何れも同一の入力を加えるためにN-ウェイスプリッタ300を用いた。
【0012】
図4は、通常のドハーティ増幅器よりも更に低いパワーレベルから次第に高い出力効率を達成する方式のN-ステージドハーティ増幅器を示す。[参照、 N. Srirattana et al、 「Analysis and design of a high efficiency multistage Doherty power amplifier for WCDMA」、EuMC Digest 2003、 Vol.3、 pp.1337-1340、 Oct.2003]。図4のドハーティ増幅器は、1つのキャリア増幅器402及び複数のピーク増幅器404に同一の入力を加えてドハーティ動作を行うようN-ウェイ電力分配器400を備える。
【0013】
その動作について簡単に説明すると、まずキャリア増幅器402がオンされ、その後、第1ピーク増幅器PA1がターンオンされてドハーティ動作を行ってからキャリア増幅器402と第1ピーク増幅器PA1とが1つになってキャリア増幅器としての役割を果たし、次段の第2ピーク増幅器PA2がピーク増幅器の役割を果たしてドハーティ動作を行う。このような動作は、最終段の最後のピーク増幅器PAN-1まで行われる。このように次第に順次的なドハーティ動作を誘導することによって、更に低いパワーレベルから最大の効率を得ることができ、その中間のパワーレベルでも数回の最大効率を達成し、広いパワー領域で高効率を得ることができる。
【0014】
一方、物性デバイスを用いてドハーティ増幅器を具現した場合でも、低いバイアスにより最大出力ができないという問題を解決するために、包絡線トラックキングデバイスを用いたドハーティ増幅器が提案されていた。[参照、 Y. Yang et al、 「A Microwave Doherty Amplifier Employing Envelope Tracking Technique for High Efficiency and Linearity、」 IEEE Microwave and Wireless Components Letters、 Vol.13、 No. 9、 Sep.2003。]、 [参照、 J. Cha et al、 「An Adaptive Bias Controlled Power Amplifier with a Load-Modulated Combining Scheme for High Efficiency and Linearity、「 IEEE MTT-S Int. Microwave Sympo. Vol.1、 pp.81-84、 June2003」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、提案されたドハーティ増幅器でも、更に向上した線形性及び最大出力を達成するためにピーク及びキャリア増幅器の電流レベルを調節するための付加的な装置が必要となる。
したがって、本発明の目的は、非対称電力駆動を用いて高効率を維持しながら最適の線形性を達成するドハーティ増幅器を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前述したドハーティ増幅器を用いる電力増幅装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明の一実施形態によれば、ドハーティ増幅器は、並列に連結されているキャリア増幅器及びピーク増幅器と、前記キャリア増幅器及びピーク増幅器を、非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、電力増幅装置は、1つのキャリア増幅器と残りの(N-1)個のピーク増幅器とからなるN個の増幅器が並列に連結されているドハーティ増幅器と、前記N個の増幅器を非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段と、前記ドハーティ増幅器の出力端に連結され、前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節して前記ドハーティ増幅器の負荷変調を誘導するドハーティネットワークとを含むことを特徴とする。
【0019】
また本発明の他の実施形態によれば、電力増幅装置は、互いに並列に連結され、それぞれ入力整合回路と出力整合回路を有する1つのキャリア増幅器及び1つまたはそれ以上のピーク増幅器と、前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器を非対称電力駆動または対称電力駆動を用いて駆動させる手段を含み、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の入力及び出力整合回路は、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の負荷インピーダンスを適切な電力整合のために減らす方式であり、互いに異なるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来技術の超高周波ドハーティ増幅器において、不適切な負荷変調が発生し、最大出力を生成できないという問題を解決でき、これによって高効率化が図れるとともに線形性の側面で最適の線形性を達成できるという効果を奏する。本発明の電力増幅器を、従来の移動通信網またはCDMA基地局/端末器に応用すれば、高効率化と高線形化を同時に達成でき、価格競争力と信頼性向上につながることが期待される。特に、本発明は非対称電力駆動のために非対称電力駆動器を用いたり、カップラなどを用いたりすることによって、単純、かつ安価に具現可能であるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の最適な実施形態について詳細に説明する。
図5は、本発明の一実施形態による非対称電力駆動を用いたN-ウェイ(ここで、N=2)電力増幅装置のブロック図である。図5の電力増幅装置は、非対称電力駆動器500、伝送ライン502、互いに並列に連結されているキャリア増幅器504及びピーク増幅器506、オフセットライン508、第1クォータウェーブ伝送ライン510、及び第2クォータウェーブ伝送ライン512を含む。
【0022】
キャリア増幅器504とピーク増幅器506は、何れもドハーティ増幅器を構成し、それぞれ同一の入力/出力整合回路を有している。
非対称電力駆動器500は、キャリア増幅器504とピーク増幅器506の非対称電力を駆動するためのものであって、キャリア増幅器504及びピーク増幅器506にそれぞれ異なる電力容量、好ましくはキャリア増幅器504よりもピーク増幅器506に更に多くの電力容量が供給されるようにする。この時、電力容量は「gm」として表示されることができ、その単位はI/Vである。また、電力容量はデバイスサイズを意味することもある。
【0023】
このような非対称電力駆動器500を用いて、従来技術のようにキャリア増幅器504とピーク増幅器506に互いに同一の電力を提供せず、キャリア増幅器504とピーク増幅器506に互いに異なる電力を提供することができる。このような非対称電力駆動器500の内部構成については、後述する図12により詳細に説明する。
【0024】
伝送ライン502は、キャリア増幅器504とピーク増幅器506との位相を同期化させる機能を行う。より詳細には、伝送ライン502はキャリア増幅器504とピーク増幅器506とが互いに同一の特性インピーダンス、例えば50Ωで同一の出力を発生するようにそれぞれの増幅器の入/出力整合回路を同一に構成して1つの電力増幅器で最大出力を生成するようにする。
【0025】
或いは、本発明の電力増幅装置は、キャリア増幅器504とピーク増幅器506の入/出力整合回路を、互いに異なるように構成してドハーティ増幅器の効率及び線形性が最大となり、ドハーティ増幅器が最大出力を生成できるように具現することもできる。そのために、キャリア増幅器とピーク増幅器の負荷インピーダンスを適切に下げなければ、向上した線形性と適切な電力整合をなし遂げることはできない。特に、ピーク増幅器のバイアスポイントがキャリア増幅器よりも低いため、図10Bに示すように、ピーク増幅器の負荷インピーダンスはキャリア増幅器の負荷インピーダンスよりも更に低くならなければ、向上した線形性と適切な電力整合をなし遂げることはできない。
【0026】
オフセットライン508は、ピーク増幅器506が動作しない時にインピーダンスの出力を大きくして適切な負荷変調現象が起こるようにする。
第1クォータウェーブ伝送ライン510は、インピーダンスインバータとして作用し、ドハーティ動作を具現する。例えば、第1クォータウェーブ伝送ライン510は、2RO(ROは、負荷インピーダンスを意味する)のように出力を逆に変化させる。第2クォータウェーブ伝送ライン512は、負荷インピーダンスを50Ωから25Ωに変化させる。通常、特性インピーダンス50Ωに対して1個のキャリア増幅器と(N-1)個のピーク増幅器が並列に連結されてドハーティ増幅器を構成するため、ドハーティ増幅器の負荷インピーダンスは50Ωという特性インピーダンスに対してRO/Nに構成しなければならない。例えば、図5では、N=2の2-ウェイ増幅装置であるため、負荷インピーダンスを50Ωから25Ωに変化させる第2クォータウェーブ伝送ライン512を構成しなければならず、この場合の第2クォータウェーブ伝送ライン512の特性インピーダンスは、
【0027】
【数1】
前述したように、図5に示す電力増幅装置は、非対称電力駆動器500により非対称電力駆動を具現しており、入/出力整合されたキャリア増幅器504とピーク増幅器506が並列に連結されている構造を有する。これら2つの増幅器504、506は、第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン510、512から構成されるクォータウェーブトランスフォーマ(λ/4ライン)とオフセットライン508からなるドハーティネットワークを通して出力端が構成される。
【0028】
図6は、本発明の他の実施形態によるN-ウェイ(ここで、Nは2と同じか大きい整数)電力増幅装置であって、N-ウェイ非対称電力駆動器600、伝送ライン602、ドハーティ増幅器604、オフセットライン606、第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン608、610を含む。ドハーティ増幅器604は、1つのキャリア増幅器CAと(N-1)個のピーク増幅器PA1〜PAN-1を含むN個の増幅器から構成され、それぞれの増幅器は内部的に入力及び出力整合回路を含む。
【0029】
N-ウェイ非対称電力駆動器600は、キャリア増幅器CAと(N-1)個のピーク増幅器PA1〜PAN-1に非対称電力駆動が行われるようにする。すなわち、N-ウェイ非対称電力駆動器600は、キャリア増幅器に比べてN-1個のピーク増幅器に一定値以上、より高い電力が供給されるようにする。これと関連して、N-ウェイ非対称電力駆動器600は、N-1個のピーク増幅器を非対称電力駆動または対称電力駆動で動作させることもできる。すなわち、それぞれのピーク増幅器ごとに同一の電力を供給することもでき、互いに異なる電力を供給するように構成することもできる。これとは異なり、N-ウェイ非対称電力駆動器600によりそれぞれのピーク増幅器の入力整合回路が、互いに異なる入力電力比を有するようにすることもできる。
【0030】
また、本発明は非対称電力駆動のために、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器及びN-1個のピーク増幅器で何れも同一に構成することもでき、入力整合部及び出力整合部を、キャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成しつつ、N-1個のピーク増幅器で何れも同一の構成を有するようにすることもできる。更に、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成し、またN-1個のピーク増幅器でも互いに異なる構成を有するようにすることもできる。
【0031】
図7は、本発明の他の実施形態によるN-ステージ(ここで、Nは2と同じかそれより大きい整数)電力増幅装置であって、N-ステージ非対称電力駆動器700、伝送ライン702、ドハーティ増幅器704、オフセットライン706、第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン708及び710を含む。ドハーティ増幅器604は、図6と同様、1つのキャリア増幅器CAと(N-1)個のピーク増幅器PA1〜PAN-1を含むN個の増幅器から構成され、それぞれの増幅器は内部的に入/出力整合回路を含む。
【0032】
図7の実施形態は、第1クォーターウェーブ伝送ライン708がカスケード方式で連結されていることを除けば、図6に示す実施形態と実質的に同様である。図7の電力増幅装置は、図4に示す電力増幅装置と同様、次第にドハーティ動作を行う。すなわち、キャリア増幅器CAがまずオンされ、第1ピーク増幅器PA1がオンされてドハーティ動作を行ってから、そのキャリア増幅器CAと第1ピーク増幅器PA1とが1つになってキャリア増幅器としての役割を果たし、第2ピーク増幅器PA2がピーク増幅器の役割をしてドハーティ動作を行う方式で次第に順次的なドハーティ動作を誘導するように設計される。このような構成のメリットは、より低いパワーレベルから最大効率が得られるようにし、中間領域でも最大効率を数回達成し、広い領域で高効率を得ることができるという点である。
【0033】
N-ステージ非対称電力駆動器700は、キャリア増幅器とピーク増幅器に対して非対称電力駆動を行う。すなわち、N-ステージ非対称電力駆動器700は、キャリア増幅器CAに供給される電力に比べてN-1個のピーク増幅器PA1〜PAN-1に一定値以上、より高い電力が供給されるようにする。
【0034】
これとは異なり、N-ステージ非対称電力駆動器700によりそれぞれのピーク増幅器の入/出力整合回路が互いに異なる入力比を有する非対称電力を供給することもできる。また、非対称電力駆動のために、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器及びN-1個のピーク増幅器で何れも同一に構成することもでき、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成し、N-1個のピーク増幅器では何れも同一の構成を有するようにすることもできる。更に、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成しつつ、N-1個のピーク増幅器でも互いに異なる構成を有するようにすることもできる。
【0035】
一方、図1で説明したように、入出力が整合されたキャリア増幅器とピーク増幅器とは、それぞれのバイアスポイントがクラスABとクラスCにバイアスされているため、基本電流成分は互いに異なるようになる。この時、クラスCにバイアスされるピーク増幅器は、キャリア増幅器よりも利得が小さいため、キャリア増幅器が最大の基本電流レベルに到達する場合、ピーク増幅器は基本電流レベルに及ばなくなる。このような比率はσに表され、以下の式1のようになる。
【0036】
【数2】
図8は、本発明による非対称電力駆動を用いる電力増幅装置の概念を説明する図である。
図8に示すように、キャリア増幅器とピーク増幅器とは、それぞれ電流源ICとIPに表わされ、キャリア増幅器の負荷インピーダンスはZC、ピーク増幅器の負荷インピーダンスはZP、ドハーティ増幅器の負荷インピーダンスはZLである。
【0037】
まず、低電力領域(0<Vin<K・Vin、max)ではピーク増幅器がオフ状態になり、電流源であるIPの動作はなく、オープン状態となる。したがって、キャリア増幅器はクォータウェーブ伝送ライン(=λ/4ライン)とZLに応じて動作するようになる。
【0038】
また、高電力領域(K・Vin、max<Vin<Vin、max)ではキャリア増幅器とピーク増幅器が何れも動作するようになり、これら増幅器の負荷インピーダンスは2つの電流源の関数により決定される。これを数式で表現すれば、以下の式2のようになる。
【0039】
【数3】
図9Aは、従来のドハーティ増幅器と本発明の電力増幅装置の基本電流成分を入力電圧レベルに応じて比較したグラフである。それぞれの電力駆動を通して得たキャリア増幅器とピーク増幅器の電流成分は、以下の式3のように表すことができる(この時、対称電力駆動された増幅器は、「even」と表現し、非対称電力駆動された増幅器は、「uneven」と表現した) 。
【0040】
【数4】
K・Vin、maxは、クラスCの低いバイアスのピーク増幅器がオンされ始める入力電圧レベルを表したものである。
図9Aに示すように、入力電力が増加することにより、各電流源の基本電流成分が増加するようになる。この時、入力電力をキャリア増幅器とピーク増幅器に同一に印加する場合、バイアス差によりキャリア増幅器の基本電流成分が最大となるが、ピーク電流成分は最大電流成分に及ばなくなる。したがって、「even」モード(すなわち、対称電力駆動方式)の場合のように基本電流成分において差が生じる。
【0041】
このような短所を解決するために本発明では、「uneven」方式(すなわち、非対称電力駆動方式)を採用して最大入力電力によるキャリアとピーク増幅器の基本電流成分が同一になるようにする。
図9Bは、図9Aの基本電流成分に応じて負荷インピーダンスと入力電圧レベルとの間の相関関係を示すグラフである。
【0042】
図9Bに示すように、キャリア増幅器のみ動作する低い電力範囲では、非対称電力駆動の負荷インピーダンスと対称電力駆動の負荷インピーダンスとが、100Ωで互いに同一であることが確認できる。すなわち、低い電力範囲ではキャリア増幅器のみ負荷インピーダンスが50Ωの2倍である100Ωで動作するため、電力増幅装置の最大電力の1/4地点で最大効率を達成できるように電力増幅装置が広く用いられており、これは負荷インピーダンスを通じても分かる。しかし、高い電力範囲ではピーク増幅器が動作し始めると共に、負荷インピーダンスは小さくなり始める。
【0043】
従来の対称電力駆動の増幅装置は、負荷変調現象が十分に起こらないことによって、最大出力を達成する時点でキャリアとピーク増幅器は50Ωよりも大きいインピーダンスを有するようになる。すなわち、図9Bに示すように、高い電力範囲に入りながら無限のピークインピーダンスから50Ωに負荷インピーダンスが変化する場合のみドハーティ増幅器が最大出力を達成できるが、対称モードの場合、そのような動作ができないことが分かる。それに対して、本発明による非対称電力駆動の増幅装置は、最大出力を達成する時点でキャリア増幅器とピーク増幅器が50Ωを有するとともに高い電力領域の全般に亘って対称電力駆動よりも低いインピーダンスで負荷変調現象が生じる。したがって、本発明に係る非対称電力増幅装置は、高効率を維持しながら高線形成を有するようになるとともに所望する最大出力を出すことによって、物性デバイスの活用能力が高まるようになる。
【0044】
図10Aは、図9Bの負荷インピーダンス変化を負荷ラインの観点から示したグラフである。
図10Aの左側のグラフは、低い電力でピーク増幅器がターンオンされ始める時点で対称と非対称電力駆動時の負荷ラインを示すもので、図9Bに示したように、ほぼ同一の負荷ラインが形成されることが分かる。すなわち、「even」と「uneven」の場合、低い電力範囲では負荷インピーダンスが2倍となるため、図10Aの左側のグラフのような負荷ラインを有する。
【0045】
図10Aの右側のグラフは、最大電力を出す時点で対称と非対称電力駆動時の負荷ラインを示すもので、図9Bに示したように対称電力駆動の場合はインピーダンスが大きいため、最大電力を出せないとともに線形性の側面で非対称電力駆動の場合よりも更に低い負荷ラインが形成されることが分かる。すなわち、不適切な負荷変調現象により相対的に大きいインピーダンスを有する従来のドハーティ増幅器、すなわち「even」モードドハーティ増幅器では大きいインピーダンスを有する負荷ラインを有することによって最大出力を出せないことを意味するのに対して、本発明による「uneven」モードドハーティ増幅器では最大出力が可能であることを意味する。
【0046】
図10Bは、本発明による電力増幅装置の最大出力を出すために、図9Bの負荷インピーダンスを変化させる様子を表した負荷ラインを示すグラフである。
対称電力駆動のドハーティ増幅器の不適切な負荷変調現象による大きいインピーダンスに対して最大電力を出しつつ一層優れた線形性を得るためには、非対称電力駆動のような負荷ラインを有するように整合回路を変化させなければならない。図10Bに示すように、大きいインピーダンスを減少させることによって負荷ラインの勾配を大きくし、最適なロードが達成できる。したがって、対称電力駆動の増幅装置をより一層線形的にもっていくとともに最大電力を出すことができる。
【0047】
図11Aは、IM3(Inter-modulation3)レベルと平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフであって、2トーンシミュレーションを用いて、本発明による非対称電力駆動を有する電力増幅装置が最適の線形性を達成する原因を分析した。
【0048】
更に説明すると、IM3とは、2つ以上の周波数が非線形システムまたは回路を通過する際に入力になかった信号が混変調されて出力されることを意味し、IMDはそのような混変調(IM)成分による歪みそのものを意味する。特に、IM3成分、すなわち2トンである2つの周波数f1とf2の例を挙げると、出力には様々な合成成分が混じっている信号が出力されるが、2*f1、3*f2のような完全倍数性ハーモニックはフィルタにより除去できる。しかし、問題となるのは、3次項、すなわち2*f1-f2と2*f2-f1であるが、これはf1とf2信号に非常に近づいているため、フィルタによっても除去できず、大体線形性の指標を表すようになる。
【0049】
また、2トーンシミュレーションとは、主に計測器とテスティング、ハーモニックバランスなどにおいて2つの周波数成分を用いて分析するか、測定する場合をいう。このような場合には、主にIMDとIP3を測定する場合に中心周波数を基準にして「two-tone spacing」の一種であるオフセット周波数を有する2種類のトーンを導入して2つの信号間のIMD、すなわち増幅器の線形性がどの程度であるかを分析するために用いられる。
【0050】
図11Aに示すように、IM3の観点から「uneven」になるほど1:x の x、すなわちピーク電力の比率が大きくなるほどIM3のレベル分布は、キャリア増幅器とピーク増幅器が互いに同じ領域で広くなり、出力電力が減って順次位相が互いに反対になる場合は、IM3レベル分布が狭くなるという効果がある。
【0051】
すなわち、本発明で提案している最適の線形性を有する電力増幅装置は、キャリア増幅器とピーク増幅器のIM3レベルをオフセットさせる方法により高線形性を達成する。この時、それぞれの増幅器のIM3レベルが基本的にクラスAB電力増幅器よりも低いだけでなく、レベルが更に低くなるほどIM3がオフセットされて線形性が大きく改善される。したがって、キャリア増幅器とピーク増幅器は、最適の線形性を有するように設計されなければならない。特に、低い電力レベルでピーク増幅器はオフされており、キャリア増幅器のみ動作するため、キャリア増幅器が線形的に動作するように設計されることが好ましい。図11Aと図11Bに示すMV(Matching Variations)は、このような概念を適用してキャリア増幅器とピーク増幅器が更に線形的に動作するように設計し、非対称電力駆動である場合と比較した。
【0052】
図11Bは、IM3位相と平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフであって、図11Aと同様、2トーンシミュレーションを用いて、本発明の電力増幅装置が最適の線形性をなし遂げる原因を分析した。
図示のように、出力電力が大きくなるほど、キャリア及びピーク増幅器間の位相差が180°となり、それぞれの増幅器のIM3レベルが同一にならなければ、互いに相殺される効果が発生しない。「uneven」を用いる増幅器の場合、180°の位相差が発生する領域が、より広く分布することが分かる。すなわち、高いパワーレベルではキャリア及びピーク増幅器が互いに円滑に相殺できるようにキャリア及びピーク増幅器のIM3レベルが互いに同一であり、位相差が180°となるように設計されることが好ましい。要するに、図11Bで、非対称電力駆動が大きくなるほど、キャリア増幅器のIM3位相は、平均出力が低い地点からマイナス方向に大きくなり、逆にピーク増幅器のIM3位相は、プラス方向に大きくなり、180°となる領域が大きくなる。また、最適のインピーダンスを有するように整合回路を変化させた場合は、位相にそれほど大きい変化はないが、図11Aに示すように、IM3のレベルは小さくなることが分かる。更に、非対称電力駆動が大きくなるほど、平均出力が高い領域でIM3レベルが小さくなることが確認できた。したがって、IM3レベルが低くて同じであり、互いの位相が反対になる場合、キャリア及びピーク増幅器が円滑な負荷変調現象を起こすように線形的に設計されて、最適の線形性を達成できることが確認された。
【0053】
図12は、図5に示す非対称電力駆動器500の一例を示す。たとえ、特定して記述してはいないが、図12に例示する非対称電力駆動器は、本発明の電力増幅装置のすべての実施形態に同様に適用される。
非対称電力駆動器500は、対称電力駆動に用いる3dBハイブリッドカップラ1202及び減衰器1204を含む。3dBハイブリッドカップラ1202は、入力電力をキャリア増幅器504及びピーク増幅器506に供給する機能を行う。減衰器1204は3dBハイブリッドカップラ1202とキャリア増幅器504との間に接続されてキャリア増幅器504への電力の強度を減衰させる。したがって、ピーク増幅器506に提供される電力をキャリア増幅器504に比べて、相対的に高めることができる。
【0054】
これとは異なり、3dBハイブリッドカップラ1202は、ウィルキンソン電力分配器(Wilkinson power divider)に代替されることもでき、また前述した減衰器1204の代りにピーク増幅器の入力整合部側に増幅器を連結して、ピーク増幅器に提供される電力を相対的に高めることもできる。
【0055】
本実施形態では減衰器または増幅器が、キャリア増幅器の入力整合部またはピーク増幅器の入力整合部に連結されると説明したが、必ずしもこれに限られるのではなく、相対的な電力駆動の差を置くために、減衰器または増幅器の連結を多様に変更することができる。
【0056】
また、本発明による非対称電力駆動は、任意のカップリング比を有するカップラ、例えば米国の「Anaren」inc.から購入可能な1A1305-5のような5dBカップラを用いて、キャリア増幅器よりもピーク増幅器に4dBだけ高い電力を供給して駆動させる方法を用いることもできる。
【0057】
図13A及び図13Bは、本発明によるキャリア増幅器及びピーク増幅器の例を示す。
図13Aに示すように、キャリア及びピーク増幅器は、それぞれ入力及び出力整合回路とこれらの間に配置されているMOS(Metal Oxide Semiconductor)FET(Field Effect Transistor)系の素子を含む。MOS FET素子は、キャリア及びピーク増幅器内の入力整合回路とともにゲートバイアスを印加させるためのゲート端子Gと、キャリア及びピーク増幅器内の出力整合回路とともにドレインバイアスを印加させるためのドレイン端子Dと、アースに接地されるソース端子Sとからなる。
【0058】
図13Bに示すように、キャリア及びピーク増幅器は、それぞれ入力及び出力整合回路とこれらの間に配置されているBJT(Base Junction Transistor)系の素子を含む。BJT素子は、キャリア及びピーク増幅器内の入力整合回路とともにベースバイアスを印加させるためのベース端子Bと、キャリア及びピーク増幅器内の出力整合回路とともにコレクタバイアスを印加させるためのコレクタ端子Cと、アースに接地されるエミッタ端子Eとからなる。
【0059】
図14は、バイアスコントローラを有する図5の電力増幅装置の例示的なブロック図を示す。
図14に示すように、本発明による非対称電力駆動を用いた電力増幅装置は、カップラ1400、電力検出器1402、バイアスコントローラ1406、非対称電力駆動器500、伝送ライン502、キャリア増幅器504、ピーク増幅器506、オフセットライン508、及び第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン510及び512を含む。
【0060】
キャリア増幅器504は、図13Aに示したMOS FET1410と、このMOS FET1410により連結されている入力整合回路1412及び出力整合回路1414を含む。より詳細に、MOS FET1410のゲート端子Gとドレイン端子Dは、それぞれ入力整合回路1412と出力整合回路1414に連結される。
【0061】
同様に、ピーク増幅器506はMOS FET1420と、このMOS FET1420により連結されている入力整合回路1422及び出力整合回路1424を含み、MOS FET1420のゲート端子Gとドレイン端子Dはそれぞれ入力整合回路1422と出力整合回路1424に連結される。
【0062】
キャリア増幅器504及びピーク増幅器508には、バイアスコントローラ1406が連結されており、バイアスコントローラ1406によりキャリア増幅器504及びピーク増幅器508のバイアスが調節されて、電力増幅装置の線形性及び効率を最適化させる。より詳細に、バイアスコントローラ1406は、MOS FET1410及び1420のゲート端子Gにゲートバイアス電源を印加し、ドレイン端子Dにドレインバイアス電源をそれぞれ選択的に印加してゲートバイアスとドレインバイアスを調節する。
【0063】
その他の構成は前述した図5の構成と同様であり、重複を避けるために、詳細な具体的な説明は省略する。
図14の実施形態は、図13AのMOS系の素子だけでなく、図13BのBJT系の素子への適用も可能で、それに対する連結関係及び動作は、本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば、容易に分かることであるため、具体的な説明は省略する。
【0064】
以下、前述した非対称電力駆動器を有する電力増幅装置の効率及び優れた線形性について、図15A及び図15Bを参照して説明する。
図15Aは、図12の構成に対して、Motorola Inc.から購入可能なMRF281素子で測定した線形性であるACLR(Adjacent Channel Leakage Ratio)を平均出力電力の観点から実験した結果グラフを示す。ACLRとは、CDMAのようなスペクトルのある信号に対して、周波数ドメイン上から任意のオフセットだけ離れた近接チャネルと自己チャネルとのスペクトル上において、マーカー・ツー・マーカー(marker-to- marker)により比較したことをいう。すなわち、ACLRは、他チャネルから自己チャネルのマーカーを差し引いた値を意味する。この際に発生した隣接チャネルのスペクトルは、増幅器の非線形特性により生成されるものであって、ACLRもまた増幅器の線形性を表す指標として用いられる。
【0065】
図15Aに示すように、非対称比が増加するほど線形特性が向上することが分かる。これは、最大出力が増加するだけでなく、効率面でもその性能が改善されることを意味する。
図15Bは、平均出力電力の観点からドレイン効率を実験した結果を示すグラフである。図示のように、非対称電力駆動であるほど高効率特性を確認できる。
【0066】
以上のような実験の結果に基づいて、非対称電力駆動を有する電力増幅装置は高効率特性を維持しながら、高線形性を達成できることが分かる。
図16A及び図16Bは、それぞれ非対称電力駆動を適用した場合の結果とともに対称電力駆動時に整合回路を最適化させることによって、整合変動(MV)効率と線形性がどれほど改善されるかを確認する実験グラフである。
【0067】
まず、図16Aは平均出力電力の観点からACLR特性を示す。対称電力駆動を適用しながら整合回路を最適に変化させた時、クラスAB増幅器と比較してACLRがかなり大きく改善されたほか、また、整合回路と非対称電力駆動を適用した場合、高い電力レベルで更に線形性が改善されることが確認できる。
【0068】
図16Bは、平均出力の観点からドレインの効率特性を示す。整合回路と非対称電力駆動を適用した場合、効率特性が更に向上することが確認できる。
結果的に、従来技術の対称電力駆動を適用した場合には、キャリア増幅器とピーク増幅器のロードが非常に大きくなることによって、最適の性能を具現できないのに対して、本発明による非対称電力駆動を適用した場合には、最適の線形性を有するとともに高効率特性を発揮できる。
【0069】
以上の内容は本発明の好適な実施の形態を例示したものに過ぎないもので、本発明は、請求範囲に開示された本発明の範疇内で多様に変更及び修正可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来技術によるドハーティ増幅器のキャリア増幅器とピーク増幅器との基本電流成分を比較したグラフである。
【図2】従来技術によるドハーティ増幅器のブロック図である。
【図3】対称電力駆動を用いる従来技術によるN-ウェイドハーティ電力増幅装置のブロック図である。
【図4】対称電力駆動を用いる従来技術によるN-ステージドハーティ電力増幅装置のブロック図である。
【図5】本発明の好適な実施形態によって例示的に構成された非対称電力駆動を用いるN-ウェイ(N=2)電力増幅装置のブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態による非対称電力駆動を用いるN-ウェイ(Nは2と同じか大きい整数)電力増幅装置のブロック図である。
【図7】本発明のもう1つの実施形態によるN-ステージ(Nは2と同じか大きい整数)非対称電力駆動を用いる電力増幅装置のブロック図である。
【図8】本発明によるドハーティ増幅器の動作原理を説明する図である。
【図9A】図3に示す従来技術の電力増幅装置と図6に示す本発明の電力増幅装置との基本電流成分を入力電圧レベルに応じて比較したグラフである。
【図9B】図6に示す電力増幅装置で発生した負荷変調現象を説明するための入力電圧レベルに対する負荷インピーダンス分布を示すグラフである。
【図10A】図9Bの負荷インピーダンスを負荷ライン観点から示すグラフである。
【図10B】本発明による電力増幅装置で最大出力を出すために整合回路を変化させて、図9Bの負荷インピーダンスを変化させる負荷ラインを示すグラフである。
【図11A】IM3レベルと平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフである。
【図11B】IM3位相と平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフである。
【図12】図5及び図6に示す非対称電力駆動器の詳細なブロック図である。
【図13A】本発明による電力増幅装置に適用されるMOS素子を示す図である。
【図13B】本発明による電力増幅装置に適用されるBJT素子を示す図である。
【図14】本発明によってバイアスコントローラを有する電力増幅装置のブロック図である。
【図15A】本発明による電力増幅装置のACLRと平均出力電力との間の相関グラフである。
【図15B】本発明による電力増幅装置のドレイン効率と平均出力電力との間の相関グラフである。
【図16A】最適に整合回路を構成した場合のACLRと平均出力電力との間の相関グラフである。
【図16B】最適に整合回路を構成した場合のドレイン効率と平均出力電力との間の相関グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高効率及び高線形性の電力増幅装置に関し、更に超高周波ドハーティ増幅器(microwave Doherty amplifier)を用いる、非対称電力駆動の電力増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、本発明が属する技術分野で広く知られているように、ドハーティ増幅器は、クォータウェーブトランスフォーマ(λ/4ライン)を用いてキャリア増幅器とピーク増幅器を並列に連結した構造を有する。ドハーティ増幅器は電力レベルが増加することによって、負荷に供給される電流の量が増加し、ピーク増幅器によりキャリア増幅器の負荷インピーダンスを調節して効率を上げる対称電力結合方式により駆動される。
【0003】
超高周波ドハーティ増幅器は、高出力低周波真空管または中間周波数真空管を用いた放送装置の振幅変調送信器として用いられていた。その後、真空管ではなく物性デバイスを用いて超高周波ドハーティ増幅器を具現するための様々な提案があり、実質的な具現のための多くの研究がなされていた。
【0004】
非対称電力駆動方式を用いるドハーティ増幅器は、高効率と高線形性を実現した。特に、移動通信基地局及び移動通信端末器で用いられるドハーティ増幅器は、大体同じサイズの物性デバイス、同じ入/出力整合回路及び入力電力駆動により具現される。この時、キャリア増幅器はクラスABに、ピーク増幅器はクラスCにそれぞれバイアスされるが、ピーク増幅器のバイアスはキャリア増幅器のバイアスよりも低いため、電力レベルに応じてピーク増幅器の電流レベルが常にキャリア増幅器の電流レベルよりも低いという問題点を有する。
【0005】
図1は、それぞれのバイアスレベル、すなわち誘導角(conduction angle)による電流成分の大きさを示す。図1に示すように、より低くバイアスされているピーク増幅器は、基本電流成分においてキャリア増幅器よりも低いことが分かる。バイアスポイントがクラスABであるキャリア増幅器は、誘導角がπないし2πであるため、最大入力電力に対して電流の基本成分は0.5〜0.536の大きさを有し、クラスCに動作するピーク増幅器は、誘導角が0〜πであるため、基本電流成分は0〜0.5の大きさを有するようになる。したがって、ピーク増幅器の基本電流成分が、キャリア増幅器に及ばないため、負荷変調現象(load modulation)(それぞれの電流源が動作する時、電流源前端の負荷インピーダンスが電流源で発生した電流の大きさによって変化する現象)が起こるだけでなく、ドハーティ動作においても大きい問題点がある。
【0006】
また、後述する図9Aでのように、ピーク増幅器の低いバイアスレベルに起因してピーク増幅器の基本電流成分は、駆動電圧レベルが一定値以上である場合のみ検出されることが分かる。
したがって、キャリア増幅器が最大の入力電力で駆動した時、ピーク増幅器の基本電流成分がキャリア増幅器より低いだけでなく、ピーク増幅器で要求される最大の入力電力で駆動されないため、更に低い基本電流の大きさを生成するようになる。結果的に、ドハーティ増幅器は最大の出力電力を生成できないという問題点を有することになる。
【0007】
このような問題点を解決するために、包絡線トラッキングデバイスまたは入力電力トラッキングデバイスによりドハーティ増幅器の長所である高効率特性を維持しながら、最大出力の側面で従来のドハーティ増幅器よりも大幅に改善された研究結果が発表されている。また、超高周波帯域でドハーティ増幅器を実質的に具現するための多くの研究が行われており、その1つが図2に示されている。
【0008】
図2に示すドハーティ増幅器は、キャリア増幅器204及びピーク増幅器206と、キャリア増幅器204及びピーク増幅器206に互いに同一の電力が入力されるようにする電力分配器200と、キャリア増幅器204及びピーク増幅器206との間の位相を同期化するための伝送ライン202と、ピーク増幅器206が動作しない間にインピーダンスの出力を大きくして適切な負荷変調現象が起こるようにするオフセットライン208と、ドハーティ動作のためのクォータウェーブ伝送ライン210及び212とから構成される。
【0009】
図2に示すようなドハーティ増幅器は、キャリア及びピーク増幅器が同一の値を出力するようにしながら、それぞれの増幅器の入/出力整合回路を同一に構成して最大の出力電力を生成する方式に具現される。また、このドハーティ増幅器はキャリア増幅器及びピーク増幅器内のトランジスタの出力端に出力整合回路を設置し、その後ろにオフセットライン208が配置されるようにすることで実数部だけでなく、虚数部の整合も可能にし、増幅器の出力を最大限に得ながらドハーティ動作を可能にしたものである[参照、Y. Yang et al、 「Optimum Design for Linearity and Efficiency of Microwave Doherty Amplifier Using a New Load Matching Technique」、Microwave Journal、 Vol44、 No.12、 pp.20-36、 Dec.2002]。
【0010】
また、図3では、ドハーティ増幅器を改善しながらも効率及び線形性を最適化できるN-ウェイドハーティ増幅器について開示している。[Y. Yang et al、 「A Fully Matched N-way Doherty Amplifier with Optimized Linearity」、 IEEE Trans. Microwave Theory and Tech.、Vol.51、 No.3、 pp. 986-993、 March2003]。
【0011】
図3に示すN-ウェイドハーティ増幅器は、図2に示した増幅器とは異なり、1つのキャリア増幅器と複数のピーク増幅器304を構成してドハーティ動作を行うように具現され、1つのキャリア増幅器と複数のピーク増幅器に何れも同一の入力を加えるためにN-ウェイスプリッタ300を用いた。
【0012】
図4は、通常のドハーティ増幅器よりも更に低いパワーレベルから次第に高い出力効率を達成する方式のN-ステージドハーティ増幅器を示す。[参照、 N. Srirattana et al、 「Analysis and design of a high efficiency multistage Doherty power amplifier for WCDMA」、EuMC Digest 2003、 Vol.3、 pp.1337-1340、 Oct.2003]。図4のドハーティ増幅器は、1つのキャリア増幅器402及び複数のピーク増幅器404に同一の入力を加えてドハーティ動作を行うようN-ウェイ電力分配器400を備える。
【0013】
その動作について簡単に説明すると、まずキャリア増幅器402がオンされ、その後、第1ピーク増幅器PA1がターンオンされてドハーティ動作を行ってからキャリア増幅器402と第1ピーク増幅器PA1とが1つになってキャリア増幅器としての役割を果たし、次段の第2ピーク増幅器PA2がピーク増幅器の役割を果たしてドハーティ動作を行う。このような動作は、最終段の最後のピーク増幅器PAN-1まで行われる。このように次第に順次的なドハーティ動作を誘導することによって、更に低いパワーレベルから最大の効率を得ることができ、その中間のパワーレベルでも数回の最大効率を達成し、広いパワー領域で高効率を得ることができる。
【0014】
一方、物性デバイスを用いてドハーティ増幅器を具現した場合でも、低いバイアスにより最大出力ができないという問題を解決するために、包絡線トラックキングデバイスを用いたドハーティ増幅器が提案されていた。[参照、 Y. Yang et al、 「A Microwave Doherty Amplifier Employing Envelope Tracking Technique for High Efficiency and Linearity、」 IEEE Microwave and Wireless Components Letters、 Vol.13、 No. 9、 Sep.2003。]、 [参照、 J. Cha et al、 「An Adaptive Bias Controlled Power Amplifier with a Load-Modulated Combining Scheme for High Efficiency and Linearity、「 IEEE MTT-S Int. Microwave Sympo. Vol.1、 pp.81-84、 June2003」。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、提案されたドハーティ増幅器でも、更に向上した線形性及び最大出力を達成するためにピーク及びキャリア増幅器の電流レベルを調節するための付加的な装置が必要となる。
したがって、本発明の目的は、非対称電力駆動を用いて高効率を維持しながら最適の線形性を達成するドハーティ増幅器を提供することにある。
【0016】
本発明の他の目的は、前述したドハーティ増幅器を用いる電力増幅装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明の一実施形態によれば、ドハーティ増幅器は、並列に連結されているキャリア増幅器及びピーク増幅器と、前記キャリア増幅器及びピーク増幅器を、非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段とを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の他の実施形態によれば、電力増幅装置は、1つのキャリア増幅器と残りの(N-1)個のピーク増幅器とからなるN個の増幅器が並列に連結されているドハーティ増幅器と、前記N個の増幅器を非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段と、前記ドハーティ増幅器の出力端に連結され、前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節して前記ドハーティ増幅器の負荷変調を誘導するドハーティネットワークとを含むことを特徴とする。
【0019】
また本発明の他の実施形態によれば、電力増幅装置は、互いに並列に連結され、それぞれ入力整合回路と出力整合回路を有する1つのキャリア増幅器及び1つまたはそれ以上のピーク増幅器と、前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器を非対称電力駆動または対称電力駆動を用いて駆動させる手段を含み、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の入力及び出力整合回路は、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の負荷インピーダンスを適切な電力整合のために減らす方式であり、互いに異なるように構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来技術の超高周波ドハーティ増幅器において、不適切な負荷変調が発生し、最大出力を生成できないという問題を解決でき、これによって高効率化が図れるとともに線形性の側面で最適の線形性を達成できるという効果を奏する。本発明の電力増幅器を、従来の移動通信網またはCDMA基地局/端末器に応用すれば、高効率化と高線形化を同時に達成でき、価格競争力と信頼性向上につながることが期待される。特に、本発明は非対称電力駆動のために非対称電力駆動器を用いたり、カップラなどを用いたりすることによって、単純、かつ安価に具現可能であるという長所を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照して本発明の最適な実施形態について詳細に説明する。
図5は、本発明の一実施形態による非対称電力駆動を用いたN-ウェイ(ここで、N=2)電力増幅装置のブロック図である。図5の電力増幅装置は、非対称電力駆動器500、伝送ライン502、互いに並列に連結されているキャリア増幅器504及びピーク増幅器506、オフセットライン508、第1クォータウェーブ伝送ライン510、及び第2クォータウェーブ伝送ライン512を含む。
【0022】
キャリア増幅器504とピーク増幅器506は、何れもドハーティ増幅器を構成し、それぞれ同一の入力/出力整合回路を有している。
非対称電力駆動器500は、キャリア増幅器504とピーク増幅器506の非対称電力を駆動するためのものであって、キャリア増幅器504及びピーク増幅器506にそれぞれ異なる電力容量、好ましくはキャリア増幅器504よりもピーク増幅器506に更に多くの電力容量が供給されるようにする。この時、電力容量は「gm」として表示されることができ、その単位はI/Vである。また、電力容量はデバイスサイズを意味することもある。
【0023】
このような非対称電力駆動器500を用いて、従来技術のようにキャリア増幅器504とピーク増幅器506に互いに同一の電力を提供せず、キャリア増幅器504とピーク増幅器506に互いに異なる電力を提供することができる。このような非対称電力駆動器500の内部構成については、後述する図12により詳細に説明する。
【0024】
伝送ライン502は、キャリア増幅器504とピーク増幅器506との位相を同期化させる機能を行う。より詳細には、伝送ライン502はキャリア増幅器504とピーク増幅器506とが互いに同一の特性インピーダンス、例えば50Ωで同一の出力を発生するようにそれぞれの増幅器の入/出力整合回路を同一に構成して1つの電力増幅器で最大出力を生成するようにする。
【0025】
或いは、本発明の電力増幅装置は、キャリア増幅器504とピーク増幅器506の入/出力整合回路を、互いに異なるように構成してドハーティ増幅器の効率及び線形性が最大となり、ドハーティ増幅器が最大出力を生成できるように具現することもできる。そのために、キャリア増幅器とピーク増幅器の負荷インピーダンスを適切に下げなければ、向上した線形性と適切な電力整合をなし遂げることはできない。特に、ピーク増幅器のバイアスポイントがキャリア増幅器よりも低いため、図10Bに示すように、ピーク増幅器の負荷インピーダンスはキャリア増幅器の負荷インピーダンスよりも更に低くならなければ、向上した線形性と適切な電力整合をなし遂げることはできない。
【0026】
オフセットライン508は、ピーク増幅器506が動作しない時にインピーダンスの出力を大きくして適切な負荷変調現象が起こるようにする。
第1クォータウェーブ伝送ライン510は、インピーダンスインバータとして作用し、ドハーティ動作を具現する。例えば、第1クォータウェーブ伝送ライン510は、2RO(ROは、負荷インピーダンスを意味する)のように出力を逆に変化させる。第2クォータウェーブ伝送ライン512は、負荷インピーダンスを50Ωから25Ωに変化させる。通常、特性インピーダンス50Ωに対して1個のキャリア増幅器と(N-1)個のピーク増幅器が並列に連結されてドハーティ増幅器を構成するため、ドハーティ増幅器の負荷インピーダンスは50Ωという特性インピーダンスに対してRO/Nに構成しなければならない。例えば、図5では、N=2の2-ウェイ増幅装置であるため、負荷インピーダンスを50Ωから25Ωに変化させる第2クォータウェーブ伝送ライン512を構成しなければならず、この場合の第2クォータウェーブ伝送ライン512の特性インピーダンスは、
【0027】
【数1】
前述したように、図5に示す電力増幅装置は、非対称電力駆動器500により非対称電力駆動を具現しており、入/出力整合されたキャリア増幅器504とピーク増幅器506が並列に連結されている構造を有する。これら2つの増幅器504、506は、第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン510、512から構成されるクォータウェーブトランスフォーマ(λ/4ライン)とオフセットライン508からなるドハーティネットワークを通して出力端が構成される。
【0028】
図6は、本発明の他の実施形態によるN-ウェイ(ここで、Nは2と同じか大きい整数)電力増幅装置であって、N-ウェイ非対称電力駆動器600、伝送ライン602、ドハーティ増幅器604、オフセットライン606、第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン608、610を含む。ドハーティ増幅器604は、1つのキャリア増幅器CAと(N-1)個のピーク増幅器PA1〜PAN-1を含むN個の増幅器から構成され、それぞれの増幅器は内部的に入力及び出力整合回路を含む。
【0029】
N-ウェイ非対称電力駆動器600は、キャリア増幅器CAと(N-1)個のピーク増幅器PA1〜PAN-1に非対称電力駆動が行われるようにする。すなわち、N-ウェイ非対称電力駆動器600は、キャリア増幅器に比べてN-1個のピーク増幅器に一定値以上、より高い電力が供給されるようにする。これと関連して、N-ウェイ非対称電力駆動器600は、N-1個のピーク増幅器を非対称電力駆動または対称電力駆動で動作させることもできる。すなわち、それぞれのピーク増幅器ごとに同一の電力を供給することもでき、互いに異なる電力を供給するように構成することもできる。これとは異なり、N-ウェイ非対称電力駆動器600によりそれぞれのピーク増幅器の入力整合回路が、互いに異なる入力電力比を有するようにすることもできる。
【0030】
また、本発明は非対称電力駆動のために、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器及びN-1個のピーク増幅器で何れも同一に構成することもでき、入力整合部及び出力整合部を、キャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成しつつ、N-1個のピーク増幅器で何れも同一の構成を有するようにすることもできる。更に、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成し、またN-1個のピーク増幅器でも互いに異なる構成を有するようにすることもできる。
【0031】
図7は、本発明の他の実施形態によるN-ステージ(ここで、Nは2と同じかそれより大きい整数)電力増幅装置であって、N-ステージ非対称電力駆動器700、伝送ライン702、ドハーティ増幅器704、オフセットライン706、第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン708及び710を含む。ドハーティ増幅器604は、図6と同様、1つのキャリア増幅器CAと(N-1)個のピーク増幅器PA1〜PAN-1を含むN個の増幅器から構成され、それぞれの増幅器は内部的に入/出力整合回路を含む。
【0032】
図7の実施形態は、第1クォーターウェーブ伝送ライン708がカスケード方式で連結されていることを除けば、図6に示す実施形態と実質的に同様である。図7の電力増幅装置は、図4に示す電力増幅装置と同様、次第にドハーティ動作を行う。すなわち、キャリア増幅器CAがまずオンされ、第1ピーク増幅器PA1がオンされてドハーティ動作を行ってから、そのキャリア増幅器CAと第1ピーク増幅器PA1とが1つになってキャリア増幅器としての役割を果たし、第2ピーク増幅器PA2がピーク増幅器の役割をしてドハーティ動作を行う方式で次第に順次的なドハーティ動作を誘導するように設計される。このような構成のメリットは、より低いパワーレベルから最大効率が得られるようにし、中間領域でも最大効率を数回達成し、広い領域で高効率を得ることができるという点である。
【0033】
N-ステージ非対称電力駆動器700は、キャリア増幅器とピーク増幅器に対して非対称電力駆動を行う。すなわち、N-ステージ非対称電力駆動器700は、キャリア増幅器CAに供給される電力に比べてN-1個のピーク増幅器PA1〜PAN-1に一定値以上、より高い電力が供給されるようにする。
【0034】
これとは異なり、N-ステージ非対称電力駆動器700によりそれぞれのピーク増幅器の入/出力整合回路が互いに異なる入力比を有する非対称電力を供給することもできる。また、非対称電力駆動のために、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器及びN-1個のピーク増幅器で何れも同一に構成することもでき、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成し、N-1個のピーク増幅器では何れも同一の構成を有するようにすることもできる。更に、入力整合部及び出力整合部をキャリア増幅器とN-1個のピーク増幅器で互いに異なるように構成しつつ、N-1個のピーク増幅器でも互いに異なる構成を有するようにすることもできる。
【0035】
一方、図1で説明したように、入出力が整合されたキャリア増幅器とピーク増幅器とは、それぞれのバイアスポイントがクラスABとクラスCにバイアスされているため、基本電流成分は互いに異なるようになる。この時、クラスCにバイアスされるピーク増幅器は、キャリア増幅器よりも利得が小さいため、キャリア増幅器が最大の基本電流レベルに到達する場合、ピーク増幅器は基本電流レベルに及ばなくなる。このような比率はσに表され、以下の式1のようになる。
【0036】
【数2】
図8は、本発明による非対称電力駆動を用いる電力増幅装置の概念を説明する図である。
図8に示すように、キャリア増幅器とピーク増幅器とは、それぞれ電流源ICとIPに表わされ、キャリア増幅器の負荷インピーダンスはZC、ピーク増幅器の負荷インピーダンスはZP、ドハーティ増幅器の負荷インピーダンスはZLである。
【0037】
まず、低電力領域(0<Vin<K・Vin、max)ではピーク増幅器がオフ状態になり、電流源であるIPの動作はなく、オープン状態となる。したがって、キャリア増幅器はクォータウェーブ伝送ライン(=λ/4ライン)とZLに応じて動作するようになる。
【0038】
また、高電力領域(K・Vin、max<Vin<Vin、max)ではキャリア増幅器とピーク増幅器が何れも動作するようになり、これら増幅器の負荷インピーダンスは2つの電流源の関数により決定される。これを数式で表現すれば、以下の式2のようになる。
【0039】
【数3】
図9Aは、従来のドハーティ増幅器と本発明の電力増幅装置の基本電流成分を入力電圧レベルに応じて比較したグラフである。それぞれの電力駆動を通して得たキャリア増幅器とピーク増幅器の電流成分は、以下の式3のように表すことができる(この時、対称電力駆動された増幅器は、「even」と表現し、非対称電力駆動された増幅器は、「uneven」と表現した) 。
【0040】
【数4】
K・Vin、maxは、クラスCの低いバイアスのピーク増幅器がオンされ始める入力電圧レベルを表したものである。
図9Aに示すように、入力電力が増加することにより、各電流源の基本電流成分が増加するようになる。この時、入力電力をキャリア増幅器とピーク増幅器に同一に印加する場合、バイアス差によりキャリア増幅器の基本電流成分が最大となるが、ピーク電流成分は最大電流成分に及ばなくなる。したがって、「even」モード(すなわち、対称電力駆動方式)の場合のように基本電流成分において差が生じる。
【0041】
このような短所を解決するために本発明では、「uneven」方式(すなわち、非対称電力駆動方式)を採用して最大入力電力によるキャリアとピーク増幅器の基本電流成分が同一になるようにする。
図9Bは、図9Aの基本電流成分に応じて負荷インピーダンスと入力電圧レベルとの間の相関関係を示すグラフである。
【0042】
図9Bに示すように、キャリア増幅器のみ動作する低い電力範囲では、非対称電力駆動の負荷インピーダンスと対称電力駆動の負荷インピーダンスとが、100Ωで互いに同一であることが確認できる。すなわち、低い電力範囲ではキャリア増幅器のみ負荷インピーダンスが50Ωの2倍である100Ωで動作するため、電力増幅装置の最大電力の1/4地点で最大効率を達成できるように電力増幅装置が広く用いられており、これは負荷インピーダンスを通じても分かる。しかし、高い電力範囲ではピーク増幅器が動作し始めると共に、負荷インピーダンスは小さくなり始める。
【0043】
従来の対称電力駆動の増幅装置は、負荷変調現象が十分に起こらないことによって、最大出力を達成する時点でキャリアとピーク増幅器は50Ωよりも大きいインピーダンスを有するようになる。すなわち、図9Bに示すように、高い電力範囲に入りながら無限のピークインピーダンスから50Ωに負荷インピーダンスが変化する場合のみドハーティ増幅器が最大出力を達成できるが、対称モードの場合、そのような動作ができないことが分かる。それに対して、本発明による非対称電力駆動の増幅装置は、最大出力を達成する時点でキャリア増幅器とピーク増幅器が50Ωを有するとともに高い電力領域の全般に亘って対称電力駆動よりも低いインピーダンスで負荷変調現象が生じる。したがって、本発明に係る非対称電力増幅装置は、高効率を維持しながら高線形成を有するようになるとともに所望する最大出力を出すことによって、物性デバイスの活用能力が高まるようになる。
【0044】
図10Aは、図9Bの負荷インピーダンス変化を負荷ラインの観点から示したグラフである。
図10Aの左側のグラフは、低い電力でピーク増幅器がターンオンされ始める時点で対称と非対称電力駆動時の負荷ラインを示すもので、図9Bに示したように、ほぼ同一の負荷ラインが形成されることが分かる。すなわち、「even」と「uneven」の場合、低い電力範囲では負荷インピーダンスが2倍となるため、図10Aの左側のグラフのような負荷ラインを有する。
【0045】
図10Aの右側のグラフは、最大電力を出す時点で対称と非対称電力駆動時の負荷ラインを示すもので、図9Bに示したように対称電力駆動の場合はインピーダンスが大きいため、最大電力を出せないとともに線形性の側面で非対称電力駆動の場合よりも更に低い負荷ラインが形成されることが分かる。すなわち、不適切な負荷変調現象により相対的に大きいインピーダンスを有する従来のドハーティ増幅器、すなわち「even」モードドハーティ増幅器では大きいインピーダンスを有する負荷ラインを有することによって最大出力を出せないことを意味するのに対して、本発明による「uneven」モードドハーティ増幅器では最大出力が可能であることを意味する。
【0046】
図10Bは、本発明による電力増幅装置の最大出力を出すために、図9Bの負荷インピーダンスを変化させる様子を表した負荷ラインを示すグラフである。
対称電力駆動のドハーティ増幅器の不適切な負荷変調現象による大きいインピーダンスに対して最大電力を出しつつ一層優れた線形性を得るためには、非対称電力駆動のような負荷ラインを有するように整合回路を変化させなければならない。図10Bに示すように、大きいインピーダンスを減少させることによって負荷ラインの勾配を大きくし、最適なロードが達成できる。したがって、対称電力駆動の増幅装置をより一層線形的にもっていくとともに最大電力を出すことができる。
【0047】
図11Aは、IM3(Inter-modulation3)レベルと平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフであって、2トーンシミュレーションを用いて、本発明による非対称電力駆動を有する電力増幅装置が最適の線形性を達成する原因を分析した。
【0048】
更に説明すると、IM3とは、2つ以上の周波数が非線形システムまたは回路を通過する際に入力になかった信号が混変調されて出力されることを意味し、IMDはそのような混変調(IM)成分による歪みそのものを意味する。特に、IM3成分、すなわち2トンである2つの周波数f1とf2の例を挙げると、出力には様々な合成成分が混じっている信号が出力されるが、2*f1、3*f2のような完全倍数性ハーモニックはフィルタにより除去できる。しかし、問題となるのは、3次項、すなわち2*f1-f2と2*f2-f1であるが、これはf1とf2信号に非常に近づいているため、フィルタによっても除去できず、大体線形性の指標を表すようになる。
【0049】
また、2トーンシミュレーションとは、主に計測器とテスティング、ハーモニックバランスなどにおいて2つの周波数成分を用いて分析するか、測定する場合をいう。このような場合には、主にIMDとIP3を測定する場合に中心周波数を基準にして「two-tone spacing」の一種であるオフセット周波数を有する2種類のトーンを導入して2つの信号間のIMD、すなわち増幅器の線形性がどの程度であるかを分析するために用いられる。
【0050】
図11Aに示すように、IM3の観点から「uneven」になるほど1:x の x、すなわちピーク電力の比率が大きくなるほどIM3のレベル分布は、キャリア増幅器とピーク増幅器が互いに同じ領域で広くなり、出力電力が減って順次位相が互いに反対になる場合は、IM3レベル分布が狭くなるという効果がある。
【0051】
すなわち、本発明で提案している最適の線形性を有する電力増幅装置は、キャリア増幅器とピーク増幅器のIM3レベルをオフセットさせる方法により高線形性を達成する。この時、それぞれの増幅器のIM3レベルが基本的にクラスAB電力増幅器よりも低いだけでなく、レベルが更に低くなるほどIM3がオフセットされて線形性が大きく改善される。したがって、キャリア増幅器とピーク増幅器は、最適の線形性を有するように設計されなければならない。特に、低い電力レベルでピーク増幅器はオフされており、キャリア増幅器のみ動作するため、キャリア増幅器が線形的に動作するように設計されることが好ましい。図11Aと図11Bに示すMV(Matching Variations)は、このような概念を適用してキャリア増幅器とピーク増幅器が更に線形的に動作するように設計し、非対称電力駆動である場合と比較した。
【0052】
図11Bは、IM3位相と平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフであって、図11Aと同様、2トーンシミュレーションを用いて、本発明の電力増幅装置が最適の線形性をなし遂げる原因を分析した。
図示のように、出力電力が大きくなるほど、キャリア及びピーク増幅器間の位相差が180°となり、それぞれの増幅器のIM3レベルが同一にならなければ、互いに相殺される効果が発生しない。「uneven」を用いる増幅器の場合、180°の位相差が発生する領域が、より広く分布することが分かる。すなわち、高いパワーレベルではキャリア及びピーク増幅器が互いに円滑に相殺できるようにキャリア及びピーク増幅器のIM3レベルが互いに同一であり、位相差が180°となるように設計されることが好ましい。要するに、図11Bで、非対称電力駆動が大きくなるほど、キャリア増幅器のIM3位相は、平均出力が低い地点からマイナス方向に大きくなり、逆にピーク増幅器のIM3位相は、プラス方向に大きくなり、180°となる領域が大きくなる。また、最適のインピーダンスを有するように整合回路を変化させた場合は、位相にそれほど大きい変化はないが、図11Aに示すように、IM3のレベルは小さくなることが分かる。更に、非対称電力駆動が大きくなるほど、平均出力が高い領域でIM3レベルが小さくなることが確認できた。したがって、IM3レベルが低くて同じであり、互いの位相が反対になる場合、キャリア及びピーク増幅器が円滑な負荷変調現象を起こすように線形的に設計されて、最適の線形性を達成できることが確認された。
【0053】
図12は、図5に示す非対称電力駆動器500の一例を示す。たとえ、特定して記述してはいないが、図12に例示する非対称電力駆動器は、本発明の電力増幅装置のすべての実施形態に同様に適用される。
非対称電力駆動器500は、対称電力駆動に用いる3dBハイブリッドカップラ1202及び減衰器1204を含む。3dBハイブリッドカップラ1202は、入力電力をキャリア増幅器504及びピーク増幅器506に供給する機能を行う。減衰器1204は3dBハイブリッドカップラ1202とキャリア増幅器504との間に接続されてキャリア増幅器504への電力の強度を減衰させる。したがって、ピーク増幅器506に提供される電力をキャリア増幅器504に比べて、相対的に高めることができる。
【0054】
これとは異なり、3dBハイブリッドカップラ1202は、ウィルキンソン電力分配器(Wilkinson power divider)に代替されることもでき、また前述した減衰器1204の代りにピーク増幅器の入力整合部側に増幅器を連結して、ピーク増幅器に提供される電力を相対的に高めることもできる。
【0055】
本実施形態では減衰器または増幅器が、キャリア増幅器の入力整合部またはピーク増幅器の入力整合部に連結されると説明したが、必ずしもこれに限られるのではなく、相対的な電力駆動の差を置くために、減衰器または増幅器の連結を多様に変更することができる。
【0056】
また、本発明による非対称電力駆動は、任意のカップリング比を有するカップラ、例えば米国の「Anaren」inc.から購入可能な1A1305-5のような5dBカップラを用いて、キャリア増幅器よりもピーク増幅器に4dBだけ高い電力を供給して駆動させる方法を用いることもできる。
【0057】
図13A及び図13Bは、本発明によるキャリア増幅器及びピーク増幅器の例を示す。
図13Aに示すように、キャリア及びピーク増幅器は、それぞれ入力及び出力整合回路とこれらの間に配置されているMOS(Metal Oxide Semiconductor)FET(Field Effect Transistor)系の素子を含む。MOS FET素子は、キャリア及びピーク増幅器内の入力整合回路とともにゲートバイアスを印加させるためのゲート端子Gと、キャリア及びピーク増幅器内の出力整合回路とともにドレインバイアスを印加させるためのドレイン端子Dと、アースに接地されるソース端子Sとからなる。
【0058】
図13Bに示すように、キャリア及びピーク増幅器は、それぞれ入力及び出力整合回路とこれらの間に配置されているBJT(Base Junction Transistor)系の素子を含む。BJT素子は、キャリア及びピーク増幅器内の入力整合回路とともにベースバイアスを印加させるためのベース端子Bと、キャリア及びピーク増幅器内の出力整合回路とともにコレクタバイアスを印加させるためのコレクタ端子Cと、アースに接地されるエミッタ端子Eとからなる。
【0059】
図14は、バイアスコントローラを有する図5の電力増幅装置の例示的なブロック図を示す。
図14に示すように、本発明による非対称電力駆動を用いた電力増幅装置は、カップラ1400、電力検出器1402、バイアスコントローラ1406、非対称電力駆動器500、伝送ライン502、キャリア増幅器504、ピーク増幅器506、オフセットライン508、及び第1及び第2クォータウェーブ伝送ライン510及び512を含む。
【0060】
キャリア増幅器504は、図13Aに示したMOS FET1410と、このMOS FET1410により連結されている入力整合回路1412及び出力整合回路1414を含む。より詳細に、MOS FET1410のゲート端子Gとドレイン端子Dは、それぞれ入力整合回路1412と出力整合回路1414に連結される。
【0061】
同様に、ピーク増幅器506はMOS FET1420と、このMOS FET1420により連結されている入力整合回路1422及び出力整合回路1424を含み、MOS FET1420のゲート端子Gとドレイン端子Dはそれぞれ入力整合回路1422と出力整合回路1424に連結される。
【0062】
キャリア増幅器504及びピーク増幅器508には、バイアスコントローラ1406が連結されており、バイアスコントローラ1406によりキャリア増幅器504及びピーク増幅器508のバイアスが調節されて、電力増幅装置の線形性及び効率を最適化させる。より詳細に、バイアスコントローラ1406は、MOS FET1410及び1420のゲート端子Gにゲートバイアス電源を印加し、ドレイン端子Dにドレインバイアス電源をそれぞれ選択的に印加してゲートバイアスとドレインバイアスを調節する。
【0063】
その他の構成は前述した図5の構成と同様であり、重複を避けるために、詳細な具体的な説明は省略する。
図14の実施形態は、図13AのMOS系の素子だけでなく、図13BのBJT系の素子への適用も可能で、それに対する連結関係及び動作は、本発明の技術分野において通常の知識を有する者であれば、容易に分かることであるため、具体的な説明は省略する。
【0064】
以下、前述した非対称電力駆動器を有する電力増幅装置の効率及び優れた線形性について、図15A及び図15Bを参照して説明する。
図15Aは、図12の構成に対して、Motorola Inc.から購入可能なMRF281素子で測定した線形性であるACLR(Adjacent Channel Leakage Ratio)を平均出力電力の観点から実験した結果グラフを示す。ACLRとは、CDMAのようなスペクトルのある信号に対して、周波数ドメイン上から任意のオフセットだけ離れた近接チャネルと自己チャネルとのスペクトル上において、マーカー・ツー・マーカー(marker-to- marker)により比較したことをいう。すなわち、ACLRは、他チャネルから自己チャネルのマーカーを差し引いた値を意味する。この際に発生した隣接チャネルのスペクトルは、増幅器の非線形特性により生成されるものであって、ACLRもまた増幅器の線形性を表す指標として用いられる。
【0065】
図15Aに示すように、非対称比が増加するほど線形特性が向上することが分かる。これは、最大出力が増加するだけでなく、効率面でもその性能が改善されることを意味する。
図15Bは、平均出力電力の観点からドレイン効率を実験した結果を示すグラフである。図示のように、非対称電力駆動であるほど高効率特性を確認できる。
【0066】
以上のような実験の結果に基づいて、非対称電力駆動を有する電力増幅装置は高効率特性を維持しながら、高線形性を達成できることが分かる。
図16A及び図16Bは、それぞれ非対称電力駆動を適用した場合の結果とともに対称電力駆動時に整合回路を最適化させることによって、整合変動(MV)効率と線形性がどれほど改善されるかを確認する実験グラフである。
【0067】
まず、図16Aは平均出力電力の観点からACLR特性を示す。対称電力駆動を適用しながら整合回路を最適に変化させた時、クラスAB増幅器と比較してACLRがかなり大きく改善されたほか、また、整合回路と非対称電力駆動を適用した場合、高い電力レベルで更に線形性が改善されることが確認できる。
【0068】
図16Bは、平均出力の観点からドレインの効率特性を示す。整合回路と非対称電力駆動を適用した場合、効率特性が更に向上することが確認できる。
結果的に、従来技術の対称電力駆動を適用した場合には、キャリア増幅器とピーク増幅器のロードが非常に大きくなることによって、最適の性能を具現できないのに対して、本発明による非対称電力駆動を適用した場合には、最適の線形性を有するとともに高効率特性を発揮できる。
【0069】
以上の内容は本発明の好適な実施の形態を例示したものに過ぎないもので、本発明は、請求範囲に開示された本発明の範疇内で多様に変更及び修正可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】従来技術によるドハーティ増幅器のキャリア増幅器とピーク増幅器との基本電流成分を比較したグラフである。
【図2】従来技術によるドハーティ増幅器のブロック図である。
【図3】対称電力駆動を用いる従来技術によるN-ウェイドハーティ電力増幅装置のブロック図である。
【図4】対称電力駆動を用いる従来技術によるN-ステージドハーティ電力増幅装置のブロック図である。
【図5】本発明の好適な実施形態によって例示的に構成された非対称電力駆動を用いるN-ウェイ(N=2)電力増幅装置のブロック図である。
【図6】本発明の他の実施形態による非対称電力駆動を用いるN-ウェイ(Nは2と同じか大きい整数)電力増幅装置のブロック図である。
【図7】本発明のもう1つの実施形態によるN-ステージ(Nは2と同じか大きい整数)非対称電力駆動を用いる電力増幅装置のブロック図である。
【図8】本発明によるドハーティ増幅器の動作原理を説明する図である。
【図9A】図3に示す従来技術の電力増幅装置と図6に示す本発明の電力増幅装置との基本電流成分を入力電圧レベルに応じて比較したグラフである。
【図9B】図6に示す電力増幅装置で発生した負荷変調現象を説明するための入力電圧レベルに対する負荷インピーダンス分布を示すグラフである。
【図10A】図9Bの負荷インピーダンスを負荷ライン観点から示すグラフである。
【図10B】本発明による電力増幅装置で最大出力を出すために整合回路を変化させて、図9Bの負荷インピーダンスを変化させる負荷ラインを示すグラフである。
【図11A】IM3レベルと平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフである。
【図11B】IM3位相と平均出力との間の2トーンシミュレーショングラフである。
【図12】図5及び図6に示す非対称電力駆動器の詳細なブロック図である。
【図13A】本発明による電力増幅装置に適用されるMOS素子を示す図である。
【図13B】本発明による電力増幅装置に適用されるBJT素子を示す図である。
【図14】本発明によってバイアスコントローラを有する電力増幅装置のブロック図である。
【図15A】本発明による電力増幅装置のACLRと平均出力電力との間の相関グラフである。
【図15B】本発明による電力増幅装置のドレイン効率と平均出力電力との間の相関グラフである。
【図16A】最適に整合回路を構成した場合のACLRと平均出力電力との間の相関グラフである。
【図16B】最適に整合回路を構成した場合のドレイン効率と平均出力電力との間の相関グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドハーティ増幅器であって、
並列に連結されているキャリア増幅器及びピーク増幅器と、
前記キャリア増幅器及びピーク増幅器を、非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段と
を含むことを特徴とするドハーティ増幅器。
【請求項2】
前記非対称電力駆動手段は、前記ピーク増幅器に供給される電力を前記キャリア増幅器に供給される電力よりも高くすることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項3】
前記非対称電力駆動手段は、前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器に同一の電力を供給し、前記キャリア増幅器のデバイスサイズは、前記ピーク増幅器のデバイスサイズと互いに異なることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項4】
前記非対称電力駆動手段は、任意のカップリング比を有するカップラを含むことを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項5】
前記非対称電力駆動手段は、
入力電力を前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器とに分配する電力分配器と、
前記電力分配器と前記キャリア増幅器との間に配置され、前記キャリア増幅器への電力の強度を減衰させる減衰器と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項6】
前記非対称電力駆動手段は、
入力電力を前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器とに分配する電力分配器と、
前記電力分配器と前記ピーク増幅器との間に配置され、前記ピーク増幅器への電力の強度を増幅させる増幅器と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項7】
電力増幅装置であって、
1つのキャリア増幅器と残りの(N-1)個のピーク増幅器とからなるN個の増幅器が並列に連結されているドハーティ増幅器と、
前記N個の増幅器を非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段と、
前記ドハーティ増幅器の出力端に連結され、前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節して前記ドハーティ増幅器の負荷変調を誘導するドハーティネットワークと
を含むことを特徴とする電力増幅装置。
【請求項8】
前記非対称電力駆動手段は、前記(N-1)個のピーク増幅器に供給される電力を前記キャリア増幅器に供給される電力よりも高くすることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項9】
前記(N-1)個のピーク増幅器に供給される電力の強度は、何れも同一であることを特徴とする請求項8に記載の電力増幅装置。
【請求項10】
前記(N-1)個のピーク増幅器に供給される電力の強度が、互いに異なることを特徴とする請求項8に記載の電力増幅装置。
【請求項11】
前記非対称電力駆動手段は、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器に同一の電力を供給し、前記キャリア増幅器のデバイスサイズは、前記(N-1)個のピーク増幅器のデバイスサイズと互いに異なることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項12】
前記非対称電力駆動手段は、
入力電力をN個に分配する電力分配器と、
前記電力分配器と前記キャリア増幅器との間に配置され、前記キャリア増幅器への電力の強度を減衰させる減衰器と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項13】
前記非対称電力駆動手段は、
任意のカップリング比を有し、入力電力を前記キャリア増幅器及び前記(N-1)個のピーク増幅器に分配するカップラと、
前記カップラと前記(N-1)個のピーク増幅器との間に配置され、前記(N-1)個のピーク増幅器への電力の強度を増幅させる増幅器と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項14】
前記ドハーティネットワークは、
前記キャリア増幅器と前記(N-1)個のピーク増幅器にそれぞれ連結され、前記(N-1)個のピーク増幅器が動作しない間に前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節するN個のオフセットラインと、
前記キャリア増幅器に連結されているオフセットラインに連結され、前記キャリア増幅器の出力インピーダンスを1/4波長の長さに変化させる第1クォータウェーブ伝送ラインと、
前記(N-1)個のピーク増幅器に連結されているオフセットラインからのインピーダンスを1/4波長の長さに変換させて前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを決定する第2クォータウェーブ伝送ラインと
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項15】
前記ドハーティネットワークは、
前記キャリア増幅器と前記(N-1)個のピーク増幅器にそれぞれ連結され、前記(N-1)個のピーク増幅器が動作しない間に前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節するN個のオフセットラインと、
それぞれ対応するオフセットラインの出力端にカスケード方式で接続され、それぞれの前記N個のオフセットラインを介して提供された前記キャリア増幅器の出力インピーダンスを変化させるN個の第1クォータウェーブ伝送ラインと、
前記第1クォータウェーブ伝送ラインの出力端に連結され、前記(N-1)個のピーク増幅器に連結されている前記(N-1)個のオフセットラインからのインピーダンスを1/4波長の長さに変換させて前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを決定する第2クォータウェーブ伝送ラインと
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項16】
前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器はそれぞれ、
入力整合回路と、
出力整合回路と、
前記入力及び出力整合回路との間に連結されているMOS FETから構成されることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項17】
前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器はそれぞれ、
入力整合回路と、
出力整合回路と、
前記入力及び出力整合回路との間に連結されているBJT素子から構成されることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項18】
前記電力増幅装置は、前記MOS FETにゲートバイアス及びドレインバイアスを印加するバイアスコントローラを更に含むことを特徴とする請求項16に記載の電力増幅装置。
【請求項19】
前記電力増幅装置は、前記BJTにゲートバイアス及びドレインバイアスを印加するバイアスコントローラを更に含むことを特徴とする請求項16に記載の電力増幅装置。
【請求項20】
電力増幅装置であって、
互いに並列に連結され、それぞれ入力整合回路と出力整合回路を有する1つのキャリア増幅器及び1つまたはそれ以上のピーク増幅器と、
前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器を非対称電力駆動または対称電力駆動を用いて駆動させる手段を含み、
前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の入力及び出力整合回路は、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の負荷インピーダンスを適切な電力整合のために減らす方式で互いに異なるように構成されることを特徴とする電力増幅装置。
【請求項21】
前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の負荷インピーダンスは、前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器の入力インピーダンスよりも低いことを特徴とする請求項20に記載の電力増幅装置。
【請求項1】
ドハーティ増幅器であって、
並列に連結されているキャリア増幅器及びピーク増幅器と、
前記キャリア増幅器及びピーク増幅器を、非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段と
を含むことを特徴とするドハーティ増幅器。
【請求項2】
前記非対称電力駆動手段は、前記ピーク増幅器に供給される電力を前記キャリア増幅器に供給される電力よりも高くすることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項3】
前記非対称電力駆動手段は、前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器に同一の電力を供給し、前記キャリア増幅器のデバイスサイズは、前記ピーク増幅器のデバイスサイズと互いに異なることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項4】
前記非対称電力駆動手段は、任意のカップリング比を有するカップラを含むことを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項5】
前記非対称電力駆動手段は、
入力電力を前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器とに分配する電力分配器と、
前記電力分配器と前記キャリア増幅器との間に配置され、前記キャリア増幅器への電力の強度を減衰させる減衰器と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項6】
前記非対称電力駆動手段は、
入力電力を前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器とに分配する電力分配器と、
前記電力分配器と前記ピーク増幅器との間に配置され、前記ピーク増幅器への電力の強度を増幅させる増幅器と
を備えることを特徴とする請求項1に記載のドハーティ増幅器。
【請求項7】
電力増幅装置であって、
1つのキャリア増幅器と残りの(N-1)個のピーク増幅器とからなるN個の増幅器が並列に連結されているドハーティ増幅器と、
前記N個の増幅器を非対称電力駆動を用いて駆動する非対称電力駆動手段と、
前記ドハーティ増幅器の出力端に連結され、前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節して前記ドハーティ増幅器の負荷変調を誘導するドハーティネットワークと
を含むことを特徴とする電力増幅装置。
【請求項8】
前記非対称電力駆動手段は、前記(N-1)個のピーク増幅器に供給される電力を前記キャリア増幅器に供給される電力よりも高くすることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項9】
前記(N-1)個のピーク増幅器に供給される電力の強度は、何れも同一であることを特徴とする請求項8に記載の電力増幅装置。
【請求項10】
前記(N-1)個のピーク増幅器に供給される電力の強度が、互いに異なることを特徴とする請求項8に記載の電力増幅装置。
【請求項11】
前記非対称電力駆動手段は、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器に同一の電力を供給し、前記キャリア増幅器のデバイスサイズは、前記(N-1)個のピーク増幅器のデバイスサイズと互いに異なることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項12】
前記非対称電力駆動手段は、
入力電力をN個に分配する電力分配器と、
前記電力分配器と前記キャリア増幅器との間に配置され、前記キャリア増幅器への電力の強度を減衰させる減衰器と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項13】
前記非対称電力駆動手段は、
任意のカップリング比を有し、入力電力を前記キャリア増幅器及び前記(N-1)個のピーク増幅器に分配するカップラと、
前記カップラと前記(N-1)個のピーク増幅器との間に配置され、前記(N-1)個のピーク増幅器への電力の強度を増幅させる増幅器と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項14】
前記ドハーティネットワークは、
前記キャリア増幅器と前記(N-1)個のピーク増幅器にそれぞれ連結され、前記(N-1)個のピーク増幅器が動作しない間に前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節するN個のオフセットラインと、
前記キャリア増幅器に連結されているオフセットラインに連結され、前記キャリア増幅器の出力インピーダンスを1/4波長の長さに変化させる第1クォータウェーブ伝送ラインと、
前記(N-1)個のピーク増幅器に連結されているオフセットラインからのインピーダンスを1/4波長の長さに変換させて前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを決定する第2クォータウェーブ伝送ラインと
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項15】
前記ドハーティネットワークは、
前記キャリア増幅器と前記(N-1)個のピーク増幅器にそれぞれ連結され、前記(N-1)個のピーク増幅器が動作しない間に前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを調節するN個のオフセットラインと、
それぞれ対応するオフセットラインの出力端にカスケード方式で接続され、それぞれの前記N個のオフセットラインを介して提供された前記キャリア増幅器の出力インピーダンスを変化させるN個の第1クォータウェーブ伝送ラインと、
前記第1クォータウェーブ伝送ラインの出力端に連結され、前記(N-1)個のピーク増幅器に連結されている前記(N-1)個のオフセットラインからのインピーダンスを1/4波長の長さに変換させて前記電力増幅装置の負荷インピーダンスを決定する第2クォータウェーブ伝送ラインと
を備えることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項16】
前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器はそれぞれ、
入力整合回路と、
出力整合回路と、
前記入力及び出力整合回路との間に連結されているMOS FETから構成されることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項17】
前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器はそれぞれ、
入力整合回路と、
出力整合回路と、
前記入力及び出力整合回路との間に連結されているBJT素子から構成されることを特徴とする請求項7に記載の電力増幅装置。
【請求項18】
前記電力増幅装置は、前記MOS FETにゲートバイアス及びドレインバイアスを印加するバイアスコントローラを更に含むことを特徴とする請求項16に記載の電力増幅装置。
【請求項19】
前記電力増幅装置は、前記BJTにゲートバイアス及びドレインバイアスを印加するバイアスコントローラを更に含むことを特徴とする請求項16に記載の電力増幅装置。
【請求項20】
電力増幅装置であって、
互いに並列に連結され、それぞれ入力整合回路と出力整合回路を有する1つのキャリア増幅器及び1つまたはそれ以上のピーク増幅器と、
前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器を非対称電力駆動または対称電力駆動を用いて駆動させる手段を含み、
前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の入力及び出力整合回路は、前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の負荷インピーダンスを適切な電力整合のために減らす方式で互いに異なるように構成されることを特徴とする電力増幅装置。
【請求項21】
前記キャリア増幅器と前記ピーク増幅器の負荷インピーダンスは、前記キャリア増幅器及び前記ピーク増幅器の入力インピーダンスよりも低いことを特徴とする請求項20に記載の電力増幅装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【公開番号】特開2006−191590(P2006−191590A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374124(P2005−374124)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(598057475)學校法人浦項工科大學校 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(598057475)學校法人浦項工科大學校 (5)
【Fターム(参考)】
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