非層状分散を生じる組成物
本発明は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、および/または、トコフェロール、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物に関する。前記組成物は、自己分散し、水性流体との接触に際し、コロイド状の非層状粒子を与えることが可能である。また、本発明は、このような組成物、この組成物を含む医薬調合物、および、この組成物から形成可能である非層状粒子から、非層状粒子を形成する方法を提供する。
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、および/または、トコフェロール、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物に関する。前記組成物は、自己分散し、水性流体との接触に際し、コロイド状の非層状粒子を与えることが可能である。また、本発明は、このような組成物、この組成物を含む医薬調合物、および、この組成物から形成可能である非層状粒子から、非層状粒子を形成する方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間または動物の被検者に投与するための調合物を調製する際の使用に適した、両親媒性組成物に関する。特に、本発明は、マイクロメータおよびサブマイクロメータ大の非層状粒子の分散物を生じるために、自己分散が可能である組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
両親媒系調合物は、多くの物質の送達において、特に人間または動物の体への生体内送達において、多大な可能性を有している。両親媒性物質は、塊になって極性および非極性の領域を形成する、極性および非極性の基をいずれも有するため、極性および非極性の化合物をいずれも効果的に溶解することが可能である。加えて、極性および/または非極性の溶媒において、両親媒/構成化剤によって形成される構造物の多くは、他の両親媒性化合物を吸収および安定化することが可能な、かなり大きな極性/非極性の境界領域を有する。
【0003】
両親媒性物質/水、両親媒性物質/油および両親媒性物質/油/水の相図における非層状領域の形成は、公知の現象である。このような相は、分子レベルでは液体であるが、かなり長い範囲のオーダーを示す、立方相P、立方相D、立方相G、六方相等の液晶相と、非層状ではあるが長い範囲のオーダーの液晶相を有さない二層分子層シートの、多重に相互連結された双連続ネットワークを有するL3層とを含む。それらの曲率により、それらの相が標準(非極性領域に向かう平均曲率)または反対(極性領域に向かう平均曲率)であるとされる。脂質系の自然発生的な曲率が小さいところでは、構造物は、単層状または多層状のビヒクルやリポソームなどの典型的な層状であり、自然発生的な曲率が大きいところでは、液晶相またはミセル相が優位を占めている。
【0004】
非層状液晶およびL3相は、熱力学的に安定な系である。つまり、それらは単に、分離および/または改質を行い、層や層状相等にするメタ安定状態であるというだけでなく、混合物の安定的熱力学的形態である。
【0005】
層状系および非層状系は、いずれも食物、化粧品、栄養物、診断用薬剤、製薬などのための担体および/または補形剤としての特性について研究されているが、内部表面積が大きい点と、極性および非極性の微少領域をいずれも有する、調整可能な内部空間を分割する中間相構造を有する点とにおいて、非層状系がかなり有利であると考えられている。これは、特に放出制御調合物における非層状相の、比較的不溶性の化合物を溶解させるための、非常に重要な非層状相の研究に導いた。
【0006】
液晶相の存在を評価するために、小角X線回折(SAX)、低温透過型電子顕微鏡法(cryo−TEM)、または、核磁気共鳴(NMR)分光法の使用により、上述された液晶オーダーを検査することができる。cryo−TEMは、他の両親媒性相構造を検査および特定するためにも用いられる。分散した粒子の径および径分布は、光散乱により、特にレーザ光散乱機器の使用により検査される。
【0007】
上述したように、バルク非層状相は、一般的には熱力学的に安定な系である。加えて、このバルク相は、極性または非極性の溶媒中で分散し、バルク溶媒中に非層状(特に液晶)相の粒子を形成しうる。これにより、腸管外適用など、バルク非混和性相の使用が問題を引き起こすであろう状況におけるバルク非層状相の適用が有利になった。このような分散によって、化合物の放出特性のさらなる調整も行われうる。
【0008】
粒子内への非層状相の分散は、この両親媒性相構造が特定の(特に生体内)適用において価値を有するために、必要不可欠である。
【0009】
一般的に、非層状相の分散には、比較的高いエネルギーの注入や特殊な装置が必要とされる。代表的な方法としては、音波処理、均質化および高圧濾過が含まれる。このような「高エネルギーで生産された」非層状粒子の例は、文献(Kamo et al.、Langmuir、2003、19、9151−95(非特許文献1)および、Gustafsson et al.、Langmuir、1997、13、6964−71)(非特許文献2)に記載されている。
【0010】
これらの高エネルギー分散法には、多数の短所がある。例えば、必要となる時間計測装置および特殊な製法のせいで、一般的に、治療箇所において分散物が発生しない。したがって、このような分散物は、99重量%以下の水が含まれる間に移送され、処理され、そして保管されなければならない。これにより、移送および保管が明らかに困難になり、また、かなり長期間にわたり、負荷レベルや粒子径等の分散物粒子特性が、移送および保管するために安定的でなければならないということになる。さらに、製造時間やコストも相当のものになる。
【0011】
高エネルギー分散技術の使用は、非層状両親媒性粒子の分散物に含まれうる活性剤の範囲も制限する。特に、たんぱく質および/またはペプチド等の剪断感受性および/または温度感受性活性剤は、高エネルギー分散法の使用を可能にするほど十分に強くはない。代わりに、分散物の形成後、活性剤を加えると、時間を消費するだけでなく、負荷レベルが不十分または予測不能になりうる。
【0012】
水等の溶媒内で非層状相の分散された粒子を形成するための高エネルギー法は、米国特許番号5,531,925(特許文献1)に記載されている。このような粒子は、非層状液晶またはL3内部相および層状またはL3表面相を有しており、活性材料も含みうる。
【特許文献1】米国特許5,531,925号明細書
【非特許文献1】Kamoら、Langmuir、2003年、19巻、p.9151−95.
【非特許文献2】Gustafssonら.、Langmuir、1997年、13巻、p.6964−71.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
高エネルギー分散法を用いずに非層状相粒子の分散物を発生させる組成物や方法に対して、相当な必要性があることは明らかである。形成された粒子がコロイド状であれば、相当の利点であろうし、また、生成された粒子の生体内での耐性が十分であれば、相当の利点となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、モノアシル脂質、ジアシルグリセロールおよび/またはトコフェロール、細分化剤、および、任意で活性剤を含む組成物が、高エネルギー技術の使用を必要とせず、水性条件にさらされると、コロイド状の非層状相粒子を生成する、自己分散性組成物を形成するという、驚くべき特性を有することを証明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
したがって、まず第1の側面として、本発明は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物であって、自己分散し、水性流体に触れると(好ましくはコロイド状の)非層状粒子を生じることが可能である前記組成物を提供する。
【0016】
好ましい側面として、本発明は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物であって、自己分散し、水性流体に触れると(好ましくはコロイド状の)非層状粒子を生じることが可能である前記組成物を提供する。
【0017】
本発明の顕著な利点は、非層状粒子の分散物を、高エネルギー細分化法または特殊な装置を必要とせずに生成できることである。これにより、必要な時に、治療箇所等の必要な箇所での分散物の形成が可能となる。
【0018】
他の側面において、本発明は非層状粒子の分散物の生成方法を提供しており、前記方法は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、および、
c)少なくとも1つの細分化剤
を含む組成物を水性流体と接触させ、任意にこのようにして生成した前記混合物に低エネルギー攪拌法を供する方法である。例えば、適切な方法として、手動加振、および/または手動加振および350rpm以下の機械加振が含まれる。
【0019】
好ましい側面において、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールである。
【0020】
本発明の組成物の自己分散によって生成した非層状粒子も、特有の組成物であり、本発明のさらなる側面を成している。
【0021】
さらなる側面として、本発明は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
任意に活性剤、および、任意に水性流体を含むコロイド状の非層状粒子を提供する。
【0022】
好ましい特徴として、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールである。
【0023】
本発明の組成物は、治療箇所等、専用の製造設備の外側でコロイド分散物を調製するのに非常に適している。これは、活性剤が溶液もしくは分散物中において長時間安定していない場合、または、保管するための分散物の粒子径安定度に対して懸念がある場合に有利である。このような「要求に対して準備された」型の分散物は、分散物の調製に求められる必要不可欠の要素を含むキットの形態において、最も容易に供給される。
【0024】
さらなる側面として、本発明は、非層状粒子の分散物を調製するためのキットを提供し、前記キットは、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を有する組成物を含む。
【0025】
好ましい側面として、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールである。
【0026】
適切なキットには、分散物の調製に適した、少なくとも1つの容器(例えば、手動で加振することが出来る、適切な容量の再封止可能な管)、分散物の調製に適切に使用される、少なくとも1つの水性流体(好ましくは、前もって測定してある)(例えば、等浸透圧の注射用食塩水)、および/または分散物の調製に関する指示書等の品目も任意に含まれうる。活性剤は、存在する場合、両親媒性の成分と共に処方されうるか、または、分散物が調製される際、隔てられた区切に含まれるように存在しうる。
【0027】
本発明の組成物は、下記に示すように、活性剤と共に処方されることが望ましいであろう。このような活性剤が、薬物、診断用薬剤、ワクチン、予防薬、または類似の医薬調合物である場合、さらなる側面において、本発明は、本発明の組成物、少なくとも1つの活性剤、および、任意に少なくとも1つの医薬的に許可可能な担体または補形剤を含む医薬調合物を提供する。
【0028】
ここで用いる「自己分散」という用語により、コロイド状分散物を生成するために、有機溶媒(ヒドロトロープ)や、均質化、音波処理または強力な機械加振等の高エネルギー技術を必要としない組成物が示される。水性流体(水や水性緩衝液)中で5重量%溶液を作る工程と、350rpm以下で12時間以下加振する工程とを含む方法により、無溶媒組成物が、平均径が5μm以下、半値幅において分布幅が3μm以下である単一モードの径分布の非層状粒子の分散物を形成することが可能であれば、組成物は「自己分散」していると考えられうる。
【0029】
しかしながら、本発明の組成物は、溶媒/ハイドロトロープを含みうるが、これらの物質の存在は、自己分散にとって必要ではない。したがって、溶媒やハイドロトロープが存在しない場合にも、このような物質が他の理由により(使い易い液体組成物を提供する目的等)組成物内に含まれる場合にも、組成物は全て自己分散することが可能である。
【0030】
「自己分散」という用語は、バルクの固体または液体の脂質混合物または溶液(例えば、溶媒に15重量%以下、好ましくは10重量%以下加えられたもの)からの自己分散を示唆しており、ハイドロトロープまたは高エネルギー技術の使用により、前もって脂質混合物を細分化し、その後、再水化のためにそれぞれの粒子が即座に形成されるよう、乾燥して微細に分割した粉末状にする、というような自己分散は含まない。本発明の組成物は、「自己分散」し、上述したように、コロイド分散物を発生させるために必要な特性を本質的に有する。したがって、例えば、被覆されたミクロン大の粒子から成るバルク組成物は、ここに述べたように、自己分散とその後の乾燥によって粒子が生成されない限り、「自己分散可能」ではない。既知の組成物は、ハイドロトロープおよび/または高エネルギー技術を使用し、その後乾燥されるため、自己分散可能ではない。
【0031】
大半が層状および/またはミセル相粒子を生成する自己分散型組成物を提供することは、技術分野において既知であり、また、上述したように、剪断力、高圧押出または超音波等の形態のかなり高いエネルギーを注入することにより分散されうる、バルク非層状相を提供することも既知である。分散された非層状粒子は、エタノール等の共溶媒/ハイドロトロープを脂質混合物中に含ませ、その後前記混合物を水溶液で希釈することによって得られることが示されている(Spicer et al.、Langmuir、2001、17、5748−56)。しかしながら、この文脈における自己分散は、溶媒の存在や高エネルギー法の使用を要さない。
【0032】
一般的な既知の非層状組成物は、単に分散の工程を速めるためだけでなく、本質的に自己分散不可能であるため、均質化処理、音波処理またはヒドロトロープによって処理されるわけではない。非層状分散物を製造するための既知の技術が、高エネルギーまたはヒドロトロープを使用するとしても、多量の層状(ビヒクル状)粒子(例えば、上記Spicer)を生成し続け、その結果、一般的に幅広い、および/または、不明確な径分布(双峰分布または多峰分布、および/または大量の巨視的粒子、例えば、100μmより大きい粒子等)を生じる。さらに、既知の高エネルギーまたはヒドロトロープによって製造された非層状分散物の保管安定性は、一般的に低い。このような既知の分散物において、平均粒子径および/または径分布幅および/または粒子層の挙動は、安定的に保管されない。これは、分散された非層状逆六方相粒子の場合において、特に言えることである(Kamo et al.、Langmuir、2003、19、9191−95)。
【0033】
比較例11に示すように、既知の組成物は、高エネルギー技術および/またはヒドロトロープを使用しなければ、非層状かつ輪郭のはっきりした粒子のコロイド大の分散物を形成しない。しかしながら、本組成物は、高エネルギー、専門の装置および/または共溶媒/ヒドロトロープを必要とすることなく、非層状相粒子(特に、非層状逆六方相粒子)を入手可能な特長を活かすことができる。前記組成物は、コロイド大の範囲の、再生可能かつ確実な粒子径分布をさらに形成し、それらは保管に際して非常に安定的である。
【0034】
ここで用いられているように、「非層状」という用語は、正または逆の液晶相(立方相または六方相等)、L3相またはそれらの組み合わせを示唆するために用いられ、ビヒクル/リポソーム等の層状構造とは反対である。粒子が非層状相または形状を有すると記載される場合、これは、少なくとも粒子の内部領域がこの形状を有するべきであるということを示唆する。粒子は、一般的に、内部領域と周辺の表面領域という2つの区別された領域を有するであろう。表面領域は、たとえ「非層状」粒子内においても、しばしば層状または結晶状であり、高オーダー結晶または液晶相から事実上無秩序な液体層に至るまで、いかなる相であっても良い。これとは対照的に、ここに記載される「層状」粒子は、非層状ではなく、コア領域に溶媒を有する粒子である。あまり好ましくない他の側面において、ここで使用される非層状が、正および/または逆のミセル相構造を指しても良い。
【0035】
本発明の組成物は、逆非層状相粒子を形成することが好ましく、双連続立方相または逆六方液晶相等の逆液晶相粒子を形成することがさらに好ましい。水性流体中において、自己分散により非層状相構造が形成されるため、この相構造が、バルク溶媒相と平衡状態またはそれに近い状態にある証拠である。これは、一般的に、バルク溶媒層と共存する非層状相との、相図における相多層状領域の存在によって表わされる。これは、下記に述べるように、分散の安定性に明らかに反映される。
【0036】
コロイド分散において安定した逆六方相液晶粒子を提供するために、組成物が選択されることは、本発明の非常に有利な特徴である。逆六方相コロイド粒子は、一般的に、既知の両親媒性の混合物と共に発生することが少なく、このような粒子の安定した分散物は殆ど見られない。下記の実施例は、本発明が、六方相液晶粒子の分散物だけでなく、狭いコロイド状の粒子径分布を有し、長期にわたり安定して保管される分散物を提供することを示している。
【0037】
状態によっては、本発明の組成物は、自己分散し、部分的に非層状の粒子や部分的に層状および/またはミセル状の粒子を形成するが、50%より多くの両親媒性物質が、非層状構造に含まれるよう分散するはずである。好ましくは、70%以上の両親媒性物質が、本発明の組成物の自己分散によって非層状粒子になり、より好ましくは75%以上、最も好ましくは85%以上の両親媒性物質が自己分散し、非層状粒子に含まれる。
【0038】
上述したように、本発明の組成物は、自己分散し、単一モードの径分布を有し、平均粒子径が5μm以下である粒子を提供する。この平均粒子径は、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。粒子径分布の幅も狭くなければならず、半値幅において3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。このような粒子はコロイド状と考えられ、静脈注射等により被験者に直接投与(適切な液体中の分散物として)するのに適している。約8μmより大きい粒子の割合が高い場合、このような分散物を被験者の血管内へ投与することにより、塞栓症などの危険な反応が起こりうる。それらが自然発生的に分散し、8μmより大きい粒子や、場合によっては1μmより大きい粒子も含まない、コロイド状でミクロン大またはミクロン以下の範囲の粒子径を持つ粒子を提供することは、本発明の組成物特有の非常に有利な特性であると考えらる。幅が狭く、予測可能な径分布は、あらゆる投与経路(例えば、口、鼻、口腔等)における、活性物質の移送や放出の制御において、有利である。
【0039】
本発明の組成物に用いられる成分は、a)少なくとも1つのモノアシル脂質、b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、および、c)少なくとも1つの細分化剤を含む。好ましい側面において、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールを含むか、または、少なくとも1つのジアシルグリセロールからなる。
【0040】
本発明の組成物の成分a)として、モノアシル脂質を用いる。このような脂質の好ましい種類として、モノ、または、好ましくはジ、トリ、テトラグリセロール等のモノアシルオリゴグリセロール、および、ペグ化された脂肪酸と同様、ペグ化されたグリセリル脂肪酸エステルが含まれる。これらすべての場合において、一般的に、アシル/脂肪酸鎖の炭素数は12から22であり、不飽和数は0、1、2または3である。好ましいアシル/脂肪酸基としては、例えば、ラウロイル(C12:0)、ミリストイル(C14:0)、パルミトイル(C16:0)、フィタノイル(C16:0)、パルミトレイオイル(C16:1)、ステアロイル(C18:0)、オレオイル(C18:1)、エライドイル(C18:1)、リノレオイル(C18:2)、リノレノイル(C18:3)、アラキドノイル(C20:4)、ベヘノイル(C22:0)基が含まれる。ここで、CX:Yは、X個の炭素原子を有し、不飽和数がYである炭化水素鎖を表わす。特に好ましい具体的なモノアシル脂質としては、ジグリセロールモノオレイン酸エステル(DGMO)、ジグリセロールモノリノール酸エステル(DGML)およびポリエチレングリコール(5)−グリセリル−モノオレイン酸エステル(TMGO−5)が含まれる。
【0041】
成分a)は、一般的にミセルを形成する、もしくは、水と接触する層状相を形成することが好ましい。これは、物質に水を加え、試料を平衡状態にし、その後、小角X線散乱(SAXS)により試料中に存在する相を決定することにより、試験されうる。モノアシル成分が、水と接触する際、層状相を形成することが好ましい。例えば、DGMOは、最大約40重量%の水を取り込む層状相を形成する。
【0042】
本発明の組成物の成分b)として、ジアシルグリセロール、トコフェロールまたはそれらの混合物が用いられる。ジアシルグリセロール成分は、成分b)の一部または全部であることが好ましく、対称または非対称、いずれのジアシル脂質でも良く、それぞれの脂肪酸基は飽和でも不飽和でも良い。ジアシルグリセロールとしては、それぞれ炭素数が12から22であり、不飽和数が0、1、2または3であるアシル基を含むものが好ましい。好ましいアシル基としては、例えば、ラウロイル(C12:0)、ミリストイル(C14:0)、パルミトイル(C16:0)、フィタノイル(C16:0)、パルミトレイオイル(C16:1)、ステアロイル(C18:0)、オレオイル(C18:1)、エライドイル(C18:1)、リノレオイル(C18:2)、リノレノイル(C18:3)、アラキドノイル(C20:4)、ベヘノイル(C22:0)基が含まれる。ここで、CX:Yは、X個の炭素原子を有し、不飽和数がYである炭化水素鎖を表わす。特に好ましいジアシルグリセロールは、グリセロールオレイン酸ジエステル(GDO)である。
【0043】
ここで用いられているように、「トコフェロール」という用語は、ビタミンEとして知られる非イオン性の脂質トコフェロール、および/または適当な塩および/またはそれらの類似体を指すのに用いられる。最も好ましいトコフェロールは、下記構造を有するトコフェロールそのものである。実際には、特に天然原料から精製された場合に、非トコフェロール性の「不純物」が少量の割合で存在することがあるが、これは、組成物の有利な自己分散特性および/または相挙動を変えるには十分でない。一般的に、トコフェロールは、10重量%以下、好ましくは5%重量以下、最も好ましくは2重量%以下の非トコフェロール類似化合物を含む。
【0044】
【化1】
【0045】
一般的に、成分b)は、水に接触すると、逆立方相または逆六方相等の逆液晶相、もしくは、液体L2相を形成する。また、成分b)は、実質的に水を取り込まない(特に、表面活性の)油でもある。繰り返すが、これは、SAXS(上記参照)によって試験、もしくは、当業者による視認によって決定されうる。ジアシルグリセロールおよび/またはトコフェロールが、水と接触する際に、油またはL2相を形成することが好ましい。例えば、GDOは、水と接触する際に、微量の水しか取り込まず、油性の物質として分離する。
【0046】
成分c)は、選択された成分a)およびb)と共に、細分化剤として作用することが可能な両親媒性物質として機能しうる。細分化剤は、上述したように、成分a)およびb)を含む組成物を自己分散させて非層状粒子を形成する、(純粋または混合された)薬剤である。
【0047】
本発明における細分化剤として適切な、異なる分子分類が多数存在する。これらには下記物質が含まれる。
【0048】
1)高分子剤:ポロキサマー(好ましくは、プルロニック(登録商標)F127、(登録商標)F68、プルロニック(登録商標)F108、プルロニック(登録商標)L44)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンn−ブチルメタクリレートブロック共重合体(NOF社製ピュアブライトMB−37−50TおよびピュアブライトMB−37−100T等)、ぺグ化されたソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、特にポリソルベート80)、ぺグ化された界面活性剤(例えば、BASF社製ソルトールHS15)、ぺグ化されたヒマシ油誘導体(例えば、クレモフォールEL、クレモフォールRH40)、ぺグ化された脂肪酸(例えば、PEGオレイン酸エステル)、ぺグ化されたリン脂質(DOPE−PEG(2000)、DOPE−PEG(5000)およびDSPE−PEG(5000)を含む)、ポリグリセリン(PG)−リン脂質(例えば、NOF社製サンブライトDSPE−PG8G等のDSPE−PG、DOPE−PG等)、ぺグ化されたオリゴアルキルソルビトール(PEG−60ソルビトールテトラオレイン酸エステル、例えば、ニッコー化学研究所製GO−460V)、ぺグ化されたグリセリル脂肪酸エステル(例えば、ニッコー化学研究所製TMGO−15)、d−アルファトコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(ビタミンE TPGS(イーストマン))等のぺグ化されたトコフェロール、および、ぺグ化されたアルキルエステル;
2)ポリオール界面活性剤:糖由来アルキルエステル(スクロースラウリン酸エステルやスクロースオレイン酸エステル等)、糖由来アルキルエーテル(例えば、オクチルグルコシド);
3)タンパク質:カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、リゾチームを含む;
4)アニオン性界面活性剤:脂肪酸のカルボン酸エステル(特にオレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム)、アルキル界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等);および、
5)カチオン性界面活性剤:アルキルアンモニウム塩(ドデシルトリメチルアンモニウム臭化物(DTAB)、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)、および、オレイルアンモニウム塩化物を含む)。
【0049】
成分c)の大部分が、過剰の水と接触する際に、正のミセル(L1)相を形成する。しかしながら、成分は、細分化剤として機能するミセルを形成する必要がない。細分化剤の効果的な機能は、実施例に例示しているように、適切な組成物を製造し、簡単な試験を行うことにより、当業者により簡単に試験されるであろう。
【0050】
本発明の他の態様において、成分c)は、モノアシル(特に、非自然的に発生する)脂質でありうる。成分c)が、上記カテゴリー1)に分類される高分子モノアシル脂質である場合が、最も一般的である。この態様において、成分c)は、全体または部分的に、成分a)を構成する1つ以上のモノアシル脂質から成る。この態様の唯一の必要不可欠な特徴は、ここに記載したように、効率的な自己分散および/または安定性を与えるために、十分な細分化効果がなければならないという点である。この細分化効果が、成分a)を構成する1つ以上のモノアシル脂質によって得られる場合、一般的に、成分a)が少なくとも1つの非自然的に発生するモノアシル脂質を有する際に、この細分化効果が得られ、この成分は、細分化剤c)としても作用するであろう。成分a)により、幾つかの不十分な細分化作用が得られる場合、成分c)に作用する付加的な細分化剤の含有量は、それに応じて減少するであろう。
【0051】
一般的に、成分a)、b)およびc)は、下記の比率で存在するであろう(ここで、a、bおよびcは、それぞれ、成分a)、b)およびc)の重量である);a/(a+b)は、0.2(例えば、0.3)から0.9(例えば、0.8)の範囲、c/(a+b+c)は、0.01から0.3の(もしくは、成分a)が細分化剤を含む場合、成分a)の全部または一部に適切に相当する)範囲である。この範囲の組成物は、高エネルギーを注入する必要がなく、比較的穏やかな条件下で自己分散する高い傾向を持つ。最も容易な自己分散および最大の粒子径の調節を行うためには、a/(a+b)が0.25(例えば、0.35)から0.80(例えば、0.75)、さらに好ましくは、0.35(例えば、0.4)から0.75(例えば、0.65)の範囲にあり、c/(a+b+c)が0.03から0.25(例えば、0.2)の範囲になるような、a)、b)およびc)の比率が好ましい(ここで、a、bおよびcは、それぞれ、成分a)、b)およびc)の重量である)。
【0052】
本発明の組成物は、活性剤および/または他の両親媒性成分も含みうる。例えば、活性剤のより高い負荷レベルが得られるよう、荷電した(特に、アニオン性の)脂質/脂肪酸が含まれる(カチオン性ペプチド、例えば、オクレオチドなど)。付加的な成分の具体的な種類としては、荷電した脂質または界面活性剤(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、オレイン酸(OA)、ジオレイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP))、および、高分子表面改質剤である。
【0053】
好ましい高分子表面改質剤としては、ポリエチレンオキサイド共重合体、ポリエチレンオキサイドで誘導体化された脂質、多糖類(キトサンなど)、疎水性に改質された多糖類および両親媒性タンパク質が含まれる。ポロキサマーは、高分子成分として特に適切であり、PEG−グリセロールジオレイン酸エステル、PEG−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(特に、DOPE−PEG2000およびDOPE PEG−5000)、またはPEG−ジオレオイルホスファチジルセリンなど、PEGで置換した脂質である。適切な高分子剤として、PEG−ソルビトールテトラオレイン酸エステル(ニッコー化学研究所製)、コレステロールプルラン(NOF)および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン n−ブチルメタクリレートブロック共重合体(NOF社製ピュアブライトMB−37−50TおよびピュアブライトMB−37−100T)が含まれる。
【0054】
本発明の組成物は固体であり、例えば粉末状の組成物とすることができ、溶媒やヒドロトロープを必要としない、純粋な両親媒性物質および活性剤(任意の補形剤を添加した)の液体の前駆体組成物であってもよい。1つの好ましい態様においては、本組成物は、投与前の分散または無溶媒の形での直接の投与のために、無溶媒の調合物として提供される。これは、有機溶媒の不必要な投与を避けると同時に、投与の簡便性において有利である。
【0055】
他の態様においては、本発明の液体組成物は、溶媒混合物として調製されうる。このような液体前駆体は、成分a、b、c、共溶媒および任意で活性剤を含む。例えば、活性剤を含む液体前駆体は、カプセルに詰められており、また、組成物の自己分散能力によって、GI液と接触する際に非層状粒子が形成される。同様に、液体前駆体は、注射までの間、液体(例えば、等浸透圧性食塩水)中で分散するようアンプル内に準備されてもよい。
【0056】
共溶媒は、一般的に、水に対して少なくともある程度の混和性を有し、組成物を使用する適用において許容性(例えば、生体許容性)を有するべきである。炭素数が1から6であり、好ましくは少なくとも1つの酸素置換基を有する有機溶媒、および、その水溶性ポリマーが好ましい。共溶媒の適切な種類は、アルコール類(ポリオールを含む)、ケトン類、エステル類、エーテル類、および、それらのポリマーである。一般的な共溶媒は、全脂質の約15(重量)%以下、好ましくは約10(重量)%以下添加される、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミド(DMA)、グルコフロール(glukofurol)、トランスキュトル(transcutol)、PEG400およびグリセロールである。
【0057】
さらなる他の態様において、本発明は、本発明の組成物中における高分子剤の使用により調製されうる固体または半個体(たとえば、ゲル、蝋質固体)の組成物を提供する。このような固体または半固体の前駆体は、ここに記載したように、本発明の組成物を含み、さらに少なくとも1つの高分子固化剤を含む。一般的に、このような組成物は、成分a、b、c、高分子剤、任意に共溶媒、および任意に活性剤を含む。固体または半固体の前駆体は、一般的に、熱によって液化可能であり、例えば、カプセルや型等に詰めることが出来る。組成物の自己分散能力により、GI液と接触する際に、非層状粒子が形成される。高分子固化剤は、生体許容性ポリマーであることが好ましく、融点が35℃から100℃であることが好ましく、40℃から95℃であることがさらに好ましく、45℃から90℃であることが最も好ましい。特に好ましい高分子剤は、モル質量が950から35000の範囲であるポリエチレングリコール(PEG)であり、モル質量が1000から10,000の範囲であるPEGが最も好ましい。PEG4000は、非常に好ましい例である。
【0058】
本発明の組成物は、自己分散性を有するため、分散された形で投与される必要はなく、実際に投与前に前もって分散する必要はない。組成物は、分散物としてではなく、固体または濃縮された液体の形態(例えば、粉末、錠剤、粉末、固体(半固体)または液体を詰めたカプセル)のバルク組成物として、簡便に投与され、コロイド状の分散物と共に高い運搬効率を維持し、その後体液内において、生体内分散により生成される。したがって、バルク投与は、作用部位に効率的に運ばれた、ミクロン大およびミクロン大以下の粒子の非常に均一な分布として、細分化および分散される。さらに、この生体内分散によって発生した粒子の非層状構造は、活性剤の放出や効果的な標的に対する制御、および、生体膜を通過する移送を行うことが出来る。一つの態様において、本発明の組成物は、有機溶媒の全含有率(組成物内に存在するいかなる溶媒も含む)が10重量%以下である医薬調合物を50重量%以上と、残りの非溶媒調合剤とを含むよう処方されている。ここで用いる「調合剤」という用語は、大量に用いられると著しい製薬効果を発揮するわけではないが、医薬的に容認可能であり、本発明の組成物を製薬に調合する際に有用な物質を意味する。例えば、このような物質として、補形剤、封入剤、被覆剤、着色料、香料、結合剤、pH調整剤、張度調整剤(tonicity modifier)などが含まれる。
【0059】
本発明の組成物の含有物として適当な活性剤としては、人間および動物用薬物、ワクチン、診断用薬剤、植物性エッセンシャルオイルや抽出物やアロマなどの「代替」活性剤、化粧品用薬剤、栄養素、栄養補助食品等が含まれる。
【0060】
適切な薬剤としては、例えば、β−ラクタムや大環状ペプチド抗生物質などの抗菌剤、ポリエンマクロライド(例えば、アンフォテリシンB)やアゾール抗カビ剤等の抗カビ剤、抗がん剤および/またはヌクレオシド類似体、パクリタクセルおよびそれらの誘導体等の抗ウイルス薬剤、非ステロイド系抗炎症薬等の抗炎症薬、コレステロール低下剤および血圧低下剤を含む心臓血管作用薬、鎮痛剤、セロトニン再取り込み阻害剤を含む抗うつ薬、ワクチンおよび骨調整剤(bone modulator)が含まれる。特に適切な活性剤としては、プロポフォール等の麻酔剤、テストステロンおよびテストステロン誘導体(例えば、テストステロンウンデカン酸)等のホルモンおよびホルモン誘導体、パクリタクセルやドセタキセル等の抗がん剤、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス(sirolimus)等の免疫抑制剤、および、ソマトスタチンやその類似体等のペプチド活性剤(例えば、オクトレオチド(octreotide))が挙げられる。
【0061】
診断用薬剤には、放射性核種標識化合物と、X線、超音波およびMRIコントラスト強調剤を含むコントラスト剤とが含まれる。栄養素としては、ビタミン、コエンザイム、栄養補助食品等が含まれる。本発明において用いる活性剤は、一般的に、ここで記載されているような、成分a)、b)またはc)のいずれかではない。
【0062】
本発明の組成物から非層状粒子の分散物を形成するために、高エネルギー技術を必要としないという点が、本発明の特別な特徴である。結果として、既知の方法によって形成可能な、分散された非層状粒子中における調合に適さない場合にも、温度感受性および/または剪断感受性活性物質が含まれうる。
【0063】
一つの態様において、本発明の組成物および粒子は、このように少なくとも1つの温度感受性および/または剪断活性物質を含む。温度感受性活性物質は、70℃以上の温度に20分間以上、水性の環境にさらされると、その結果、本来の生物活性の10%以上が損なわれると考えられている。ペプチドおよびタンパク質は、温度感受性である活性剤として最も一般的であり、本発明において、特に本態様において使用される、好ましい活性剤を形成する。剪断感受性活性物質は、一般的に、高い剪断条件によって破壊される、大きなおよび/または複数のサブユニットのタンパク質である。
【0064】
したがって、好ましい活性剤としては、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)およびそのフラグメント、アンギオテンシンおよび関連するペプチド、抗体およびそのフラグメント、抗原およびそのフラグメント、心房ナトリウム利尿ペプチド、生体付着性ペプチド、ブラジキニンおよび関連するペプチド、ペプチドTおよび関連するペプチド、カルシトニンおよび関連するペプチド、細胞表面受容体タンパク質フラグメント、化学走化性ペプチド、シクロスポリン、サイトカイン、ダイノルフィンおよび関連するペプチド、エンドルフィンおよびP−リドトロピン(lidotropin)フラグメント、エンケファリンおよび関連するタンパク質、酵素阻害物質、フィブロネクチンフラグメントおよび関連するペプチド、胃腸ペプチド、成長ホルモン放出ペプチド、免疫賦活ペプチド、インスリン、インスリン類似体およびインスリン様成長因子、インターロイキン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)および関連するペプチド、黒色細胞刺激ホルモンおよび関連するペプチド、核局在シグナル関連ペプチド、ニューロテンシンおよび関連するペプチド、神経伝達物質ペプチド、オピオイドペプチド、オキシトシン、バソプレッシンおよび関連するペプチド、副甲状腺ホルモンおよびそのフラグメント、タンパク質キナーゼおよび関連するペプチド、ソマトスタチンおよび関連するペプチド(例えば、オクトレオチド(octreotide))、物質Pおよび関連するペプチド、形質転換成長因子(TGF)および関連するペプチド、腫瘍壊死因子フラグメント、アンギオスタチンを含む抗がん剤ペプチド等の毒素およびトキソイドおよび機能性ペプチド、抗高血圧ペプチド、抗血液凝固性ペプチドおよび殺菌性ペプチド等のペプチドからなる群から選択される人間および動物用薬剤;免疫グロブリン、アンギオゲニン、骨形態形成タンパク質、ケモカイン、コロニー形成活性化因子(CSF)、サイトカイン、成長因子、インターフェロン、インターロイキン、レプチン、白血病阻止因子、基幹細胞因子、形質転換成長因子およびがん細胞壊死因子等のタンパク質からなる群から選択される人間および動物用薬剤;抗ウイルス物質、ステロイド抗炎症薬(SAID)、非ステロイド抗炎症薬(NSAED)、抗生物質、抗カビ剤、抗ウイルス物質、ビタミン、ホルモン、レチノイン酸およびレチノイン酸誘導体(トレチノインを含む)、プロスタグラジン、プロスタサイクリン、抗がん剤、代謝拮抗剤、縮瞳薬、コリン作動物質、アドレナリン拮抗薬、鎮痙薬、抗不安剤、精神安定剤、抗うつ剤、麻酔剤、鎮痛剤、アナボリックステロイド、エストロゲン、プロゲステロン、グリコサミノグリカン、ポリヌクレオチド、免疫抑制剤(例えば、タクロリムスおよびシロリムス(sirolimus))および免疫刺激剤、脂質低下薬および血圧低下薬を含む心臓血管薬、骨改質剤(bone modulators)、ワクチン、ワクチンアジュバント、免疫グロブリンおよび抗血清から選択される人間および動物用薬剤、診断用薬剤、化粧品用薬剤、日焼け止め剤および人工日焼け剤、栄養素、栄養補助食品、除草剤、殺虫剤および防虫剤が含まれる。活性剤のさらなる例は、例えば、特別薬局方のマーチンデールに記載されている。
【0065】
本発明の組成物と接触させるための、ここで言及された水性流体は、水、その他の適切な水溶液、または、例えば医薬的に許容可能な担体溶液を含む混合物でもよい。適切な溶液には、緩衝剤と、例えば0.9%の食塩水等の生理学的なpHに近い、注射用の等浸透圧性溶液とが含まれる。これらの液体は、治療箇所において分散物を調製するのに非常に適しており、本発明のキットに含まれうる。
【0066】
1つの好ましい態様において、液体は、血液や胃腸液(GI)などの体液でありうる。この態様において、液体または固体(半固体)にするために、または粘性を向上させるために、組成物は、脂質/活性剤混合物として、任意に共溶媒または高分子剤と共に投与される。適切な共溶媒は、上述されたとおりである。
【0067】
本発明の好ましい態様において、本発明の粒子(ここで述べられたように、本発明の方法によって形成され、形成可能である粒子を含む)は、4℃および/または室温において、少なくとも10日間保管するためには、相挙動や粒子径分布の両面において安定的であることが、必要不可欠である。これは、既知の非層状粒子の分散物(高エネルギー細分化またはヒドロトロープを要する)に比べて、かなり有利である。何故なら、これらの既知の分散物は、一般的に、短時間(数日間、例えば、上記Kamoを参照)を超える保管を行うには、安定的でないためである。本発明の両親媒性粒子は、4℃および室温の両温度において、少なくとも1ヶ月間または2ヶ月間、好ましくは3ヶ月間以上、さらに好ましくは6ヶ月間以上の保管を行うために安定的であることが好ましい。
【0068】
本発明の粒子および分散物は、4℃で保管されるために安定的である点が、特に有利である。何故なら、これが、多くの生物学上の活性剤や調製物に対して実践され、推奨される一般的な冷蔵状態であるためである。既知の非層状(特に、逆六方相)粒子は、室温に比べて4℃において安定的でないため、冷蔵保管するための調合物を生成するには不適当である。特に、既知のグリセロールモノオレイン酸エステル(GMO)系の非層状分散物は、一般的に4℃において不安定である。
【0069】
保管期間中の平均粒子径の増加が2倍以下である場合、粒子径分布は、保管を行うために、基本的に安定的であると考えられる。好ましくは、保管期間中に平均径の増加が50%以下であるべきであり、20%以下であればさらに好ましい。同様に、保管期間中の半値幅における分布幅の増加は、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。分散が単一モードである場合、保管期間中は単一モードを維持することが好ましい。非常に好ましい態様においては、本発明の組成物の粒子径分布は、平均粒子径や半値幅における粒子径分布幅において、10%以下の範囲で変化し、上述した期間中の保管において単一モードを維持する。
【0070】
静脈内投与または動脈内投与における使用のためのコロイド分散の場合において、粒子径分布が保管を行うために安定的であることは、特に重要である。比較的少量の成分の非コロイド状粒子を含む組成物ですら、血管に直接投与する際、塞栓症を引き起こしたり、少なくとも予測不可能な速度で放出することがある。同様に、他の経路で投与するための組成物においても、活性物質の制御放出は、信頼性のある粒子径分布に依存しうる。医薬品、診断用製品および動物医薬品も、数ヶ月間の保管に対して安定的であることが望ましく、さもなければ、製品のコストや可用性に非常に悪い影響を与える。したがって、本発明は、安全かつ可用性を有する製品を製造するための、非層状粒子の分散物において調合された活性剤の将来性を、大きく向上させる。
【0071】
また、いかなる活性剤の放出速度も効果的に予測できるように、分散物中の粒子の相構造が、保管のための安定性を維持することは、重要なことである。好ましい態様においては、本発明の粒子が、上記期間中に保管される間、非層状を維持している。「非層状を維持」することにより、10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下の非層状粒子が、保管の際、層状またはミセル相構造を適用することが示唆される。保管の際に非層状粒子の比率がさらに増加する場合もありうる。
【0072】
本発明の組成物から形成される、または形成可能な分散物は、驚くほど高い脂質濃度の水性流体中で、分散物として形成および安定的に維持されうる点において、さらに重要である。一般的に、非層状脂質分散物は、非常に低い全両親媒性物質濃度において、形成され、かつ安定的に維持される。一般的な最大濃度は、1重量%〜2重量%であれば、しばしば水中において両親媒性であり、5重量%〜6重量%であれば異常に高濃度である。対照的に、本発明により形成される分散物は、水中において10重量%以下、好ましくは15重量%、さらに好ましくは20重量%以下の全両親媒性化合物の濃度で、水性流体において安定的である。ここで述べたとおり、「安定的」という用語は、粒子径および相挙動の両方の点において安定的であることを意味する。
【0073】
本発明の好ましい態様において、モノアシル脂質a)は、水に接触する際、ミセルまたは好ましくはミセル相を純粋な形で生成する成分を含みうる、もしくは、前記成分から構成されうる。バルクまたは分散された非層状相の形成のために、最も一般的に用いられるモノアシル脂質は、グリセロールモノオレイン酸エステル(GMO)である。モノアシル脂質は、本発明の組成物において使用されうるが、この態様にとって適切でない。何故なら、純粋な化合物が水にさらされると、立方液晶相を形成するためである。
【0074】
本発明の両親媒性粒子は、非層状であり、本発明の組成物の自己分散性により形成される、または形成可能である。しかしながら、このような粒子の形成の後、分散物は、所望の用途に応じた多数の方法により、さらに処理されうる。
【0075】
本発明の一つの態様において、本発明の組成物から形成される、または形成可能である粒子は、濃縮、および/または、乾燥、および/または、適切な高分子剤と共融され、濃縮された分散物、「乾燥した」粉末または固体(半固体、たとえば、ゲルまたは蝋質固体)マトリックスを生じることができる。濃縮、乾燥、および、固体(半固体)を調製するための適切な技術には、限界濾過、溶媒の蒸発、凍結乾燥、スプレードライ、および、両親媒性化合物と高分子剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))や他の適切な薬剤とを共融した後、冷却し、固体(半固体)前駆体を形成する工程が含まれる。
【0076】
「乾燥した」粉末が生成される場合、水性の溶媒が完全にまたは基本的に無い、もしくは、構成された粒子の核の一部として、ある程度の溶媒を含み続けうる。全てのまたは殆どの水性溶媒が取り除かれる場合、結果として生じる粒子は、非層状構造を失いうるが、水性流体と接触すると再度発生する。このような粉末は、本発明の両親媒性粒子を再発生させることが可能であり、したがって、そのさらなる特徴を成す。乾燥は、少なくとも1つの保護剤および/または結果として生じる粉末の再懸濁を促進するための、少なくとも1つの薬剤の存在下において行われることが好ましいであろう。適切な薬剤は、既知であり、糖、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコール等の親水性ポリマーを含む。
【0077】
本発明の組成物から生成した粉末は、「自己分散可能」な両親媒性混合物を含むため、それ自体が本発明の組成物である。使用の際、乾燥処理前や乾燥処理中に、この分散が既に行われているため、超微粉砕された乾燥粉末は自己分散する必要がない。このような粉末において、例えば、トレハロース等の物質のマトリックス内に、粒子が個々に存在する。しかしながら、粒子を形成する両親媒性混合物は、高エネルギー細分化やヒドロトロープを必要とせずに分散することが本質的に可能であるため、本願の組成物となる。これは、高エネルギーおよび/またはヒドロトロープの使用により生成しなければならず、かつ、自己分散不可能な両親媒性組成物を含む、既知の粉末組成物とは対照的である。本発明の組成物から生成される粉末前駆体は、粉末の吸入により鼻から投与するのに非常に適している。また、このような粉末は、必要に応じて、任意に担体や補形剤の粉末と混合されうる。
【0078】
本発明の組成物(例えば、固体および/または半固体、または、共溶媒を有するか、もしくは有さない液体組成物)、分散物、粒子および/または乾燥材料は、患者に送達するために適した、いかなる形態にも調合されうる。これは、(例えば、投与の用意が出来ている滅菌された容器内の)事前に調合された分散物、使用前に希釈される濃縮分散物、懸濁または直接投与(例えば、吸入)するための粉末、粉末、固体(半固体)または液体が詰められたカプセル、錠剤、被覆された錠剤、座薬、ゲル、クリーム、軟膏、および、目薬、スプレー(皮膚、口、鼻用スプレー、例えば、ポンプスプレーやエアロゾルスプレー)、拭い薬、パッチ、ペースト、マウスウォッシュ等のその他の局所用の組成物を含む。このような調合に用いられる、適切な担体や補形剤は、関連技術において既知である。
【0079】
本発明の組成物は、エッセンシャルオイル、香料、アロマ等の非医薬品の担体としても適切である。これらの適切な調合や適用についても既知であり、(単体、または、少なくとも1つの化粧品用活性剤、香料等と共に調合された)スキントリートメント、肌、爪、顔、口用クレンザー等の人体用クリーナー/クレンザー、鎮痛剤や解毒用懸濁剤等の体内または体外の毒素の吸収剤、家庭用および人体用の粉末/液体洗剤、バス/シャワージェル、洗浄用液、スプレー、ゲル、フォーム、バスオイル等の化粧品用および家庭用用途も含む。
【0080】
本発明の組成物の自己分散により形成される、または形成可能な両親媒性粒子に対して行われる、さらに好ましい処理工程は、熱処理工程である。これにおいて、両親媒性粒子の分散物を、約75℃〜200℃、好ましくは90℃〜140℃の範囲の温度で、1分間から4時間、一般的には10分間から1時間加熱し、その後、室温に冷却する。この熱処理工程の効果は幾つかあるが、より大きい割合の粒子を非層状相に変換する工程、および/または、粒子径分布を狭くする工程を含む。また、熱処理は、相挙動および粒子径分布の両観点において、分散物における粒子の保管安定性も向上させる。
【0081】
上述した熱処理工程は、活性剤の負荷を高め、本発明の自己分散粒子とするためにも用いられうる。この態様においては、活性物質は、耐熱性を有さなければならず、粒子が分散する水溶性媒体に溶解する。そして、分散物は、上記のように熱処理され、それにより活性剤が粒子中に取り込まれる。これらの粒子は非常に安定しており、その後、ここに記載した方法を含む、適切な方法によって処理され、適切な調合物になりうる。
【0082】
本発明のいかなる態様においても適切であるが、特に熱処理による負荷に適した活性剤には、ステロイド、溶解性の低い弱塩基性薬剤、フィブリン、スタチン、ジピン(dipin)およびアゾールが含まれる。これらの具体的な好ましい例として、プロゲステロン、テストステロン、シンバスタチン、ロバスタチン、ニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、フルベストラント、フェノフィブレート、オクトレオチド、ウンデカン酸エステル、エストラジオール、コーチゾン、ヒドロコーチゾン、11a−ヒドロキシプロゲステロン、クロフィブラートゲムフィブロジル、ベザフィブレートおよびシプロファイブレートが含まれる。
【0083】
本発明の両親媒性系粒子(本発明の組成物から形成される、または形成可能なものを含む)は、例えば、澱粉または澱粉誘導体、アルキレンオキシド残基を含む共重合体(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等)、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)またはそれらのグラフト疎水性修飾誘導体、アラビアゴム、疎水性修飾ポリアクリル酸またはポリアクリラート等の表面活性剤(特にポリマー)により改質されることが望ましい。表面活性ポリマーは、例えば、粒子を所望の作用箇所に選択的に固定したり、標的としたりするために、粒子の表面上に機能的作用を与えるためにも用いられる。特に、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸またはキトサンなどのポリマーが、粘液接着性粒子を提供するために使用されうる。このような粒子は、このように局在化する傾向があり、その結果、活性剤の放出に対して、空間的調節を強くする。このような表面改質粒子を有する本発明の組成物は、本発明のさらなる態様を成す。
【0084】
本発明によって形成される粒子の、もう1つの驚くべき利点は、血液脳関門等の生物膜および/またはGITの壁を通過する活性剤の移送を増加させる働きをすることである。したがって、本発明は、経口投与可能な活性剤の生体利用効率を高め、および/または、脳内に作用部位を有する活性剤の効果を高める方法も提供している。この方法は、本発明の組成物、分散物および/または粒子中において適切な活性剤を調合する工程と、その後、これらを患者に投与する工程とを含む。本発明は、血液脳関門交差特性の高い組成物を提供し(実施例17参照)、経口生体利用効率を、食塩水中の活性物質の経口生体利用効率の5倍以上、好ましくは10倍以上に増加させた(実施例20参照)。さらに、(市販の)基準製品と比較しても、(特に、溶解性の低い)活性物質の生体利用効率を高くすることが可能である(実施例18参照)。既存の市販の調製物に対する生体利用効率のこのような増加は、明らかに、大きな利点となっている。
【0085】
ここに記載したものを含む活性剤の多くは、経口投与可能である、および/または、本発明の手段によって経口投与されうる。脳内に作用部位を有する活性剤としては、例えば、脳内感染の治療用の抗感染薬(例えば、抗カビ剤および/または抗生物質)、鎮痛剤を含む、神経系に直接作用する薬剤(特に、オピオイド/麻酔性鎮痛剤)、麻酔剤、抗うつ剤等の気分調整剤(mood controlling agent)、および、パーキンソン病(例えば、ドーパミン類似体)、クロイツフェルト−ヤーコプ病、アルツハイマー病、脳がん(例えば、タキソール誘導体等の抗がん剤)等の脳障害の治療薬が含まれる。痛み、うつ、脳障害または脳がん/脳腫瘍等の症状の治療における、本発明の組成物の(適切な活性剤との)使用、および、そのような症状の治療のための薬物を製造する際の、それらの使用が、本発明のさらなる特徴を成す。
【0086】
本発明の組成物は、活性剤、特に、薬や診断用薬剤などの製薬の移送において非常に効果的である。さらなる特徴において、本発明は、少なくとも1つの活性剤を可溶性にし、カプセル化し、保護し、および/または、安定化させる方法をこのように提供し、上記方法は、ここで述べたように、組成物として活性剤を調合する工程を含む。本発明の組成物が存在しない調合物として調製された、同一の活性剤と比較すると、これらの全ての方法により、それぞれのパラメータが向上する。一般的に、この比較調合物は、標準的な活性剤の医薬調合物であろう。
【0087】
本発明の組成物は、患者に生体内で活性剤を移送する際に、非常に効果的でもある。特に、他の調合物と比較すると、作用部位に作用する投与量の割合が確実に高いため、前記組成物が活性剤の効果を高める作用をする。さらなる特徴において、本発明は、製薬的活性剤に関する取り込み、浸透、移送、循環時間、作用持続性、薬効、治療指数、生体利用効率、患者の利便性、および/または患者のコンプライアンスを高める方法を提供し、前記方法は、ここで述べたように、本発明の組成物または調合物として前記活性剤を投与する工程を含む。このような方法は、一般的に、使用する活性剤の投与量を減らすこと、または、特定の投与量の投与頻度を低くしたり、薬効を高めることを可能にする。加えて、同様の投与量または用法・用量が適用された場合においても、本発明の組成物は利点を有し続けるであろう。さらなる特徴において、本発明は、製薬的活性剤に対して、治療の薬動力学的特性、補形剤のレベルの低下、および/または向上された安定的特性をさらに与える方法を提供し、前記方法は、ここで述べたように、調合物としての前記活性剤を調合する工程、および/または、投与する工程を含む。
【0088】
本発明は、下記の非限定的な実施例、および、添付された図面を参照して例示される。
【実施例1】
【0089】
(実施例1)非層状相領域の特定
DGMO/GDO/水の三成分系(DGMO;ジグリセロールモノオレイン酸エステル;RYLO(商標)PG29、およびGDO;グリセロールジオレイン酸エステル;エマルシファイアーTS−PH008;デンマーク、ダニスコ社製)の相挙動を、小角X線回折(SAXS)を使用し、交差させた偏光子の間での観察と組み合わせて決定した。試料は、正確な割合の脂質成分を混合し、小さなガラス容器中に入れ、その後、水(一般的な試料の重量は1gであった)を加えることにより、調製した。容器をすぐに封止し、試料は、繰り返し遠心分離を行うことによって平衡状態にし、その後、SAXS測定までの少なくとも2週間保管した。図1に示す相図に、結果をまとめた。この図は、3つの非層状液晶(1c)相領域、つまり、逆六方相(HII)および2つの両連続立方相Q224およびQ230を示す。さらなる非層状相が、液体逆ミセルL2相として特定された。75%を超えるDGMO含有量(GDOに対する重量パーセント)において、層状相(Lα)が形成される。HII層は、DGMO/DGOの重量比が、約65/35から40/60の間であり、水含有量が5重量%以上の場合に存在する。非層状HII相および非層状立方Q244相が、相図の水の頂点において、希釈水相と共存することは、重要である。この挙動は、一般的に、非層状1c相粒子の分散物を形成するために必要である。
【実施例2】
【0090】
(実施例2)非層状逆相ナノ粒子
2.1 非層状分散物の調製
非層状粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の分散物を、0.60gのDGMOおよび0.40gのGDOを混合して形成した。これらの成分は、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。均質の脂質の溶融物(0.80g)を、39.2gの脱イオン水中に0.08gのプルロニック(登録商標)F127(米国BASF社製)を含む溶液に、滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台(350rpm)上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。
【0091】
レーザ回折(コールターLS230)を用いて、粒子径を測定した。径の分布は、狭く、単一モードであることが判った。図2は、分散物のcryo−TEM写真を示しており、逆液晶相の濃い(暗い)内部構造を有する粒子が、いくらかの層状粒子(ビヒクル)と共に観察できる。
【0092】
2.2 熱処理
実施例2.1において調製された分散物に対し、熱処理の任意のサイクルを行った。
【0093】
実施例2.1において生成した分散物の試料(25mL)を、オートクレーブ(125℃、20分)し、室温に冷却した。粒子径分布は狭く、cryo−TEMによって検査すると、さらに大きな割合の粒子が、非層状特性(内部逆六方相)を示した。図3に、熱処理前後の粒子径分布を示す。
【0094】
成分:
a DGMO
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0095】
【表1】
【0096】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例3】
【0097】
(実施例3)さらなる組成物
実施例2.1の方法によって第2の組成物を調製することにより、他の安定化剤を添加する効果を検討した。DGMO(1.40g)、GDO(1.15g)およびポリソルベート80(P80;スウェーデン、アポテケット社製)(0.46g)を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。均質の脂質溶融物(2.0g)を、38.0gの脱イオン水中に、滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。
【0098】
レーザ回折(コールターLS230)を用いて、粒子径を測定した。図4に示すように、径分布は、狭く、単一モードであることが判った。
【0099】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0100】
【表2】
【0101】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例4】
【0102】
(実施例4)さらなる組成物
95.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.125g)、GDO(2.125g)およびP80(0.75g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。図5に示すように、処理前後に得られた径分布は、いずれも狭く、単一モードあった。熱処理された試料をcryo−TEMを用いて検査した。複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する、均一の径の非層状ナノ粒子の形成が、図6aおよび6bのcryo−TEM写真に、はっきりと示されている。
【0103】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0104】
【表3】
【0105】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する非層状粒子(>90重量%の両親媒性物質)
この特別な組成物も、非層状相分散物の液体前駆体を調製するのに適している。同一の組成物を、同一の割合で用いた。この組成物を、40℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。その後、液体の調合物を、緩やかに加振しながら、水(5重量%の両親媒性物質)中に分散し、その結果、非層状相粒子の乳白色の分散物を得た。液体前駆体調合物を、10重量%の共溶媒(例えば、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、PEG400、グリセロール)で強化し、その後、緩やかに加振しながら、水(5重量%の両親媒性物質)中に分散させ、その結果、非層状lc相粒子の乳白色の分散物を得た。
【実施例5】
【0106】
(実施例5)アニオン性成分(脂肪酸)を含むさらなる組成物
100.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.98g)、GDO(2.0g)、オレイン酸(OA;スウェーデン、アポテケット社製)(0.13g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.553g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。熱処理前後に得られた径分布は、いずれ単一モードあったが、熱処理された試料は、図7に図示したように、狭い分布を示した。また、cryo−TEM写真によって明らかなように、熱処理によって、非層状特性を有する粒子の割合が増加した。図8に、熱処理前後の試料から得られたcryo−TEM写真を示す。cryo−TEM写真において、粒子内に逆六方相構造がはっきりと観察されており、内部構造の高速フーリエ変換(FFT)により、約58Å(±5Å)[5.8nm(±0.5nm)]の六方相空間が示される。
【0107】
成分:
a1 DGMO
a2 OA
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0108】
【表4】
【0109】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例6】
【0110】
(実施例6)アニオン性リン脂質を含むさらなる組成物
4.75gの脱イオン水中の、DGMO(0.150g)、GDO(0.100g)、DOPG(ジオレオイルホスファチジルグリセロール;米国アバンティポーラーリピッズ社製)(0.007g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.0282g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。図9に示すように、加振後に得られた径分布は、狭く、単一モードであった。
【0111】
成分:
a1 DGMO
a2 DOPG
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0112】
【表5】
【0113】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
【実施例7】
【0114】
(実施例7)さらなる組成物
47.5gの脱イオン水中の、DGML(ジグリセロールモノリノール酸エステル;エマルシファイアーTS−PH038;デンマーク、ダニスコ社製)(1.50g)、GDO(1.00g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.277g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。熱処理前後に得られた径分布は、いずれも単一モードであったが、熱処理された試料は、図10に示すように、大きな粒子を含み、狭い分布を示した。また、cryo−TEM写真によって明らかなように、熱処理により、非層状特性を有する粒子の割合が増加した。
【0115】
成分:
a DGML
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0116】
【表6】
【0117】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>95重量%の両親媒性物質)
【実施例8】
【0118】
(実施例8)さらなる組成物
47.5gの脱イオン水中の、DGMO(1.50g)、GDO(1.0g)およびGO−460V(PEG−60ソルビトールテトラオレイン酸エステル;日本、ニッコー化学研究所製)(0.361g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。熱処理前後に得られた径分布は、いずれも単一モードであったが、熱処理された試料は、図11に示すように、狭い分布を示した。
【0119】
成分:
a DGMO
b GDO
c GO−460V
【0120】
【表7】
【0121】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>80重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<20重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>95重量%の両親媒性物質)
この特定の組成物も、逆六方相分散物の液体前駆体を調製するのに十分適している。同一の成分を、同一の割合で、10重量%の共溶媒(例えば、エタノール、N−メチル−1−2−ピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、PEG400、グリセロール)を添加して用いた。その後、液体の調合物を、緩やかに加振しながら、水(5重量%の両親媒性物質)中に分散し、その結果、主に逆六方相粒子からなる乳白色の分散物を得た。
【実施例9】
【0122】
(実施例9)高濃縮かつ安定した非層状分散物の調製
24.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.55g)、GDO(2.55g)およびP80(0.9g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。得られた均質の乳白色の分散物を、0.2μmのフィルターにより濾過した。図12に示すように、濾過前後に得られた径分布は、いずれも狭く、単一モードあった。濃縮された非層状相分散物は、室温において、少なくとも2ヶ月間安定的に保管されることが分かった。
【0123】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0124】
【表8】
【0125】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する非層状粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例10】
【0126】
(実施例10)保管安定性
100.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.98g)、GDO(2.0g)、オレイン酸(OA)(0.13g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.553g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。分散物を、2つのバッチに分け、25℃および4℃において保管した。粒子径分布を、一定の間隔において測定し、4℃および25℃における、少なくとも2ヶ月間の保管の間、元の径分布を維持していたことが分かり、これにより、コロイドおよび保管安定性が良いことが示された。
【0127】
保管の間、非層状粒子と層状粒子との比率が変化しないことが、(cryo−TEMにより)観察された。元の分散物と、4℃および25℃において2ヶ月間保管した後の分散物の粒子径分布を、図13に示す。
【0128】
成分:
a1 DGMO
a2 OA
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0129】
【表9】
【0130】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
38.0gの脱イオン水中の、DGMO(0.934g)、GDO(0.764g)およびP80(0.302g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。粒子径分布を、一定の間隔において測定し、図14に示すように、25℃における、少なくとも6ヶ月間の保管の間、元の径分布を維持していたことが分かった。
【0131】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0132】
【表10】
【0133】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例11】
【0134】
(実施例11)非層状非自己分散系(比較例)
上記実施例(実施例2〜10)は全て、12時間低速度で加振することにより形成した、非層状逆相粒子について示した。cryo−TEMによって明らかであるように、結果として得られた分散物は、平均径がサブミクロンの範囲であり、粒子の大半が非層状である、単一モードで狭い径分布を示す。したがって、分散物は、最低の剪断/エネルギー注入により製造される。
【0135】
実施例2〜10における自己分散系と、脂質を形成する逆相の従来の分散物との相違を強調するために、GMO(Rylo(商標)MG グリセロールモノオレイン酸エステル;デンマーク、ダニスコ社製)(1.50g)、およびプルロニック(登録商標)F127(ジアシルグリセロール成分「b」が不足)の分散物を、実施例2.1の方法(350rpmで12時間加振)によって調製した。GMOとプルロニック(登録商標)F127との比率は、9/1(重量比)であり、全両親媒性物質濃度は、5重量%であった。
【0136】
結果として得られた粗分散物(非層状立方相分散物)は、乳白色をしており、肉眼で見える粒子形状の、不十分に分散した物質を多少含んでいた。バルク分散物の径分布を、図15に示す。径分布は、粒子径が0.1μm〜2.5μmの範囲である、双峰分布である。不十分に分散した物質(肉眼で見える粒子>100μm)は、図15に示すように、径分布には含まれていない。
【実施例12】
【0137】
(実施例12)半固体前駆体の調製
全ての成分を、60℃〜70℃以上において、溶解するまで混合する(澄んだ均質の溶液)。この溶液を、室温またはそれ以下の温度に冷却し、マトリックスを固化させる。半固体前駆体を詰めたゼラチンカプセルを、水中または人工胃腸液中で、20分〜30分以内の間に(米国薬局方にしたがって)完全に分解する。
【0138】
組成物例(重量%):
【0139】
【表11】
【実施例13】
【0140】
(実施例13)表面官能化
DGMO(1.77g)、GDO(1.17g)およびDOPG(0.077g)を含む組成物を、実施例2.1の方法によって調製することにより、粒子表面を官能化した。それらの成分を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。均質の脂質溶融物(2.5g)を、プルロニック(登録商標)F127(0.277g)を含む、22.5gの脱イオン水中に、滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。4重量%のキトサン溶液(0.5重量%の酢酸に溶解したキトサン)0.52gを脂質分散物に添加し、この溶液を1時間平衡状態にすることにより、粒子をキトサン(ノルウェー、プロノバ・バイオポリマー(Pronova Biopolymer)社製)で官能化した。
【0141】
前記非層状キトサン官能化分散物を、さらに処理し、スプレードライヤー(BUCHIミニスプレードライヤー B−290)を用いて、乾燥粉末状前駆体とした。分散物を、トレハロース(スウェーデン、シグマ アルドリッチ社製)の存在下においてスプレー乾燥し、白色の微粒子を得た。
【実施例14】
【0142】
(実施例14)非層状粒子を含むゲルの調製
DGMO(42.5重量%)、GDO(42.5重量%)およびP80(15重量%)の組成物を用いて、実施例2.1の方法によって調製した、1gの20重量%の非層状粒子の分散物に、5mgのヒアルロン酸ナトリウム(スウェーデン、シグマ アルドリッチ社製)を添加することにより、ゲルを含む、自己分散した非層状粒子を調製した。結果として得られた混合物を、低速度で24時間攪拌し、濁った、粘性のあるゲルを形成した。
【実施例15】
【0143】
(実施例15)活性剤の負荷
DGMO(54重量%)、GDO(36重量%)およびプルロニック(登録商標)F127(10重量%)を含む組成物を、実施例2.1の方法により、水中で重量比99倍に分散した。
【0144】
分散物を、複数の試料に分け、下記2つのそれぞれの技術によって、口述する活性剤のそれぞれで負荷した。
i) 活性剤の飽和溶液を、37℃において3日間、回転台の上で緩やかに攪拌することにより、分散物中の粒子と平衡状態にした。
ii) 試料を、過剰な活性剤溶液中に分散させ、125℃において20分間、オートクレーブによって熱処理を行い、37℃において少なくとも1時間、温度平衡状態とした。
【0145】
下記の負荷を行い、取り込まれた活性剤の、両親媒性物質の全重量に対するパーセンテージとして表わした。
【0146】
【表12】
【実施例16】
【0147】
(実施例16)さらなる活性剤の負荷
DGMO(42.5重量%の両親媒性物質)、GDO(42.5重量%の両親媒性物質)およびP80(15重量%の両親媒性物質)を含む組成物を、下記の表に示した割合で、プロポフォール(シグマ アルドリッチ社製)と混合することにより、麻酔活性剤であるプロポフォールを含む非層状粒子分散物を形成した。それらの成分を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。(全調合物の重量に対して)2.5%のグリセロール(スウェーデン、アポテケット社製)を含む水溶液中に、均質の脂質/プロポフォールの溶融物を滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台(350rpm)上に置き、12時間加振することにより、均質の分散物が得られた。分散物を、0.2μmのフィルターで濾過し、実施例2.2の方法により熱処理した。結果として得られた分散物の粒子径分布は、図16に示すように、狭く、平均粒子径が100nm〜150nmの範囲である、単一モードであった。cryo−TEMを用いて、プロポフォール負荷粒子の形態を検査した。図17に示すように、cryo−TEM写真により、複合的に接続された二分子層からなる、非層状粒子の内部構造が、プロポフォール負荷後に保持されている(図6との比較において)ことが分かる。プロポフォール負荷分散物は、室温において、少なくとも1ヶ月間、安定的に保管されることが分かった。
【0148】
最終的な非層状粒子/プロポフォール分散物の組成物に関する表
【0149】
【表13】
【実施例17】
【0150】
(実施例17)非層状粒子に負荷されたプロポフォールの薬力学および薬動力学
プロポフォールを含む非層状粒子の分散物を、この場合のプロポフォール濃度が10mg/mLであり、両親媒性物質の濃度が100mg/mLであることを除き、実施例16と同じ方法により、同一の組成物で調製した。非層状粒子プロポフォール分散物を、ラット(オス、SPFスプレーグドーリーラット(Mol:デンマーク、SPRD HAN、M&B Taconic、Lille Skensved))における麻酔剤の持続期間および薬物反応速度について、基準となるフレゼニウスカビ製の市販のプロポフォール乳化調合物(10mgプロポフォール/mL)と比較した。ラットには、体重1kg当たり10mgのプロポフォールを、1つのボラスの静脈注射として、投与した(いずれの場合においても、麻酔剤の誘導は、注射後に直接行われた)。薬力学的パラメータとして、回復時間(立ち上がろうという試みによって示唆された、復原反応時間)を記録した。結果を下記の表中にまとめ、必要とされる麻酔剤の効果を維持するための、非層状粒子プロポフォール分散物の高い効率が示された。
【0151】
薬力学的パラメータに関する表
【0152】
【表14】
【0153】
投与前(投与1日前)、および、投与5分後、15分後、30分後、1時間後、3時間後、6時間後、24時間後に、それぞれ血液試料(0.3mL)を採取した。当業者にとって既知である、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)法により、ラット血漿中のプロポフォール濃度を決定した。プロポフォールの経時的な血漿濃度は、基準の調合物や非層状粒子プロポフォール調合物と、それぞれ類似していた(図18参照)。また、データが、1−コンパートメント薬力学モデル(モデル FitMacoIVBolus;キネティカ4.3、米国ペンシルバニア州、フィラデルフィア、イナフェーズ社製)に一致した時、0から無限大の血中濃度−時間曲線下面積(AUC∞)として評価された、ボラスの静脈注射後の薬物への露出も類似しており、非層状粒子プロポフォールAUC∞は、基準調合物(P=0.670;t−テスト)の96%であった。末期の排泄半減期も、処理間で類似していた(非層状粒子および基準調合物に対して、それぞれ、t1/2β=3.1±0.78時間(SD)および2.5±0.77時間)。しかしながら、曲線(分布相)の最初の半減期は、非層状調合物に対し、わずかに、しかし顕著に(P=0.028;t−テスト)長かった(非層状粒子および基準調合物に対して、それぞれ、t1/2β=0.22±0.05時間および0.15±0.02時間)。最初の半減期の増加により、薬物担体の循環の増加、および/または、薬物の放出速度の減少が示唆されうる。これは、麻酔剤の誘導が行われた後の平均回復時間の延長についても、説明しうる(上記表を参照)。また、非層状粒子によって容易化された、血液脳関門を通じての、プロポフォールのより効果的な吸収についても、説明している。
【実施例18】
【0154】
(実施例18)さらなる活性剤の負荷
室温において一晩中、穏やかに攪拌し、6.8mgの塩酸ベンジダミンと、1gのDGMO/GDO/ポリソルベート80(42.5/42.5/15重量%)の混合物とを分子的に混合することにより、抗炎症局部麻酔剤である塩酸ベンジダミン(スウェーデン、シグマ アルドリッチ社製)を含む、均質の液状溶液を調製した。この溶液を、2.3gの脱イオン水とボルテックスすることにより、非層状粒子の30重量%の脂質分散物を作成した。
【実施例19】
【0155】
(実施例19)ウンデカン酸テストステロン(TEU)の負荷、および、液体非層状相前駆体において調合されたTEUの経口生体利用効率
DGMO(0.75g)、GDO(0.75g)およびP80(0.26g)を含む、液体非層状相前駆混合物中に、0.24gのTEUを溶解することにより、ホルモンであるウンデカン酸テストステロン(TEU)の均質の液体調合物を調製した。この試料を、3時間、穏やかな攪拌によって混合した。ラットのTEUの生体利用効率に関して、TEUを含む液体非層状粒子前駆体を、基準となる、市販のウンデスターテストキャップ(Undestor Testocaps)(スウェーデン、アポテケット社製)と比較した。ラットには、体重1kg当たり100mgの投与量のTEUを含んだ、液体調合物を投与した。投与前、および、投与1時間後、3時間後、5時間後、7時間後、9時間後、12時間後、24時間後に、それぞれ血液試料(0.3mL)を採取した。市販のアッセイを用いて、血漿中のテストステロン(TES)濃度を定量化した。端的に言うと、アッセイの素因は、試料中の未知の量の抗原(TES)が、マイクロタイターウェル上に被覆された抗体の結合部位について、一定量の添加された酵素標識抗原と拮抗する、拮抗的ELISAである。アッセイは、TEUとの交差反応性を示さなかった。非層状ナノ粒子調合物中における、TEUの投与後のTESの血漿濃度は、市販の基準調合物よりも大幅に高かった(図19)。台形法を用いて、濃度より下の部分の面積と、0〜24時間(AUC0〜24時間)の時間曲線との比率として評価された、非層状ウンデカン酸テストステロンの生体利用効率は、ファクター2.7だけ、基準と比べて大幅に(P<0.05;t−テスト)増加した。同様に、Cmaxも、2.4倍(P<0.05;t−テスト)に増加した。
【実施例20】
【0156】
(実施例20)ペプチドオクレオチド(OCT)の負荷および非層状相分散物中に調合されたOCTの経口生体利用効率
20.1 非層状ナノ粒子中におけるオクレオチドの負荷
DGMO(1.767g)、GDO(1.168g)、DOPG(0.077g)、および、OCT(0.00657g)を混合することにより、ペプチド活性オクレオチド(OCT)(ポリペプチド、スウェーデン)を含む非層状粒子の分散物を形成した。これらの成分を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることにより、分子的に混合した。0.2771gのプルロニック(登録商標)F127および22.5282gの脱イオン水を含む溶液に、均質な脂質/OCT溶融物(2.505g)を滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台(350rpm)上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。その後、分散物を、実施例2.2の方法により熱処理した。0.52gの4重量%のキトサン溶液(0.5%の酢酸に溶解されたキトサン)に、熱処理された分散物を添加し、動物に経口投与するまでの12時間、分散物を平衡状態にした。
【0157】
20.2 動物での研究−一般的な手順
実験の一日目、イソフルラン麻酔の効いたラットの頸静脈中に、シリコンカテーテル(OD、約1mm)を挿入することにより、準備を行った。カテーテルは、皮膚の下に通し、肩甲骨の間から体外に出した。手術の後、ラットには、投与を行うまで、48時間の回復期間を与えた。カテーテルを、回復期間中毎朝、1mMのEDTAを含む、0.9%のNaClですすいだ。
【0158】
約16時間の絶食(水分は摂取可能であった)後の朝に、動物に投与を行い、採血を行った。動物に、投与後は自由に水分を摂取することを許したが、食物は与えなかった。最終の試料採取の後、全ての動物を殺した。
【0159】
20.3 投与
ラットへの投与は、静脈カテーテルを通して静脈内へ、または、先端がプラスチックボール状の強制飼養管によって強制飼養することによって行った。静脈内投与されたラットには、重量1kg当たり0.2mgのOCTを含む、1.0mL/kgの滅菌した食塩水を与え、強制飼養されたラットには、OCTを含む非層状粒子の水中の分散物、または、重量1kg当たり3mgのOCTを含む食塩水(投与体積は、重量1kg当たり10mLと等しい)を与えた。経口投与は、軽いイソフルラン麻酔を掛けた上で行った。
【0160】
20.4 サンプリング
試料1mL当たり500KIEアプロチニン(トラジロール(登録商標))を含む、EDTA処理された試験管における、投与前(投与1日前)、投与10分後、30分後、1時間後、3時間後、6時間後、24時間後に、それぞれ血液試料(0.5mL)を採取した。全ての血液試料を、緩やかに混合し、氷の上に(約10分間)置き、その後、2000gで4℃で10分間遠心分離した。その直後、血漿を新しい試験管に移動し、ドライアイス上に置いた。試料は、分析まで、−80℃で保管した。
【0161】
20.5 分析
全ての血漿試料中のOCT含有量を、拮抗的イムノアッセイにより測定した。端的に言うと、マイクロプレート上に被覆されたOCTペプチドが、血漿試料中に存在するOCTと、溶液中の抗体について拮抗する。溶液中に残った抗体の一部を除去し、固定されたペプチドに結合した画分を定量化する。すると、得られたシグナルは、試料中のOCT濃度に反比例する。
【0162】
血漿OCT濃度データを、台形法により、0から6時間(AUC)の、曲線下面積を算出するために利用した。
【0163】
経口用非層状調合物中における、投与量を修正した、OCTの絶対生体利用効率は、下記のように計算される。
利用効率(F)=(AUCoral×DoseIV)/(AUCIV×Doseoral)×100
20.6 結果
上記の方法にしたがって、静脈内用のOCT溶液をラットに投与し、OCTを含む非層状粒子の分散物および食塩水中のOCTを、経口投与した。血漿OCTの含有量を分析し、OCT血漿濃度を経時的にプロットした。非層状ナノ粒子中における、経口投与したOCTの絶対生体利用効率(F)は、約0.4%で、一方、純粋な食塩水中で送られたOCTは、結果として、約0.04%の生体利用効率を生じた。したがって、非層状分散物は、純粋な食塩水と比較して、OCTの経口生体利用効率に関するファクター10などを高める効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、25℃における、DGMO/GDO/水の三成分混合物の相図を示している。
【図2】図2は、DGMO/GDO/プルロニック(登録商標)F127の自己分散試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図3】図3は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/プルロニック(登録商標)F127の試料の粒子径分布を示している。
【図4】図4は、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図5】図5は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図6a】図6aは、熱処理後における、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図6b】図6bは、熱処理後における、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図7】図7は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/OA/プルロニック(登録商標)F127の試料の粒子径分布を示している。
【図8】図8は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/OA/プルロニック(登録商標)F127試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図9】図9は、自己分散した、DGMO/GDO/DOPG/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図10】図10は、熱処理前後における、自己分散した、DGML/GDO/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図11】図11は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/GO−460V試料の粒子径分布を示している。
【図12】図12は、濾過前後における、濃縮(20重量%)され、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図13】図13は、4℃および25℃における2ヶ月間の保管後における、自己分散した、DGMO/GDO/OA/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図14】図14は、25℃における6ヶ月間の保管後の、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図15】図15は、非自己分散型のGMO/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図16】図16は、様々なプロポフォール負荷を有する、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図17】図17は、20mgのプロポフォール/mLを含む、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料(100mgの両親媒性物質/mL)の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図18】図18は、非層状ナノ粒子分散物中に投与されたプロポフォール、または、フレゼニウスカビ製の市販のプロポフォールの血漿濃度を経時的に示している。
【図19】図19は、基準ウンデスターテストキャップ(Undestor Testocaps)および非層状ナノ粒子テストステロンウンデカン酸エステルの、血漿テストステロン濃度をそれぞれ経時的に示している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、人間または動物の被検者に投与するための調合物を調製する際の使用に適した、両親媒性組成物に関する。特に、本発明は、マイクロメータおよびサブマイクロメータ大の非層状粒子の分散物を生じるために、自己分散が可能である組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
両親媒系調合物は、多くの物質の送達において、特に人間または動物の体への生体内送達において、多大な可能性を有している。両親媒性物質は、塊になって極性および非極性の領域を形成する、極性および非極性の基をいずれも有するため、極性および非極性の化合物をいずれも効果的に溶解することが可能である。加えて、極性および/または非極性の溶媒において、両親媒/構成化剤によって形成される構造物の多くは、他の両親媒性化合物を吸収および安定化することが可能な、かなり大きな極性/非極性の境界領域を有する。
【0003】
両親媒性物質/水、両親媒性物質/油および両親媒性物質/油/水の相図における非層状領域の形成は、公知の現象である。このような相は、分子レベルでは液体であるが、かなり長い範囲のオーダーを示す、立方相P、立方相D、立方相G、六方相等の液晶相と、非層状ではあるが長い範囲のオーダーの液晶相を有さない二層分子層シートの、多重に相互連結された双連続ネットワークを有するL3層とを含む。それらの曲率により、それらの相が標準(非極性領域に向かう平均曲率)または反対(極性領域に向かう平均曲率)であるとされる。脂質系の自然発生的な曲率が小さいところでは、構造物は、単層状または多層状のビヒクルやリポソームなどの典型的な層状であり、自然発生的な曲率が大きいところでは、液晶相またはミセル相が優位を占めている。
【0004】
非層状液晶およびL3相は、熱力学的に安定な系である。つまり、それらは単に、分離および/または改質を行い、層や層状相等にするメタ安定状態であるというだけでなく、混合物の安定的熱力学的形態である。
【0005】
層状系および非層状系は、いずれも食物、化粧品、栄養物、診断用薬剤、製薬などのための担体および/または補形剤としての特性について研究されているが、内部表面積が大きい点と、極性および非極性の微少領域をいずれも有する、調整可能な内部空間を分割する中間相構造を有する点とにおいて、非層状系がかなり有利であると考えられている。これは、特に放出制御調合物における非層状相の、比較的不溶性の化合物を溶解させるための、非常に重要な非層状相の研究に導いた。
【0006】
液晶相の存在を評価するために、小角X線回折(SAX)、低温透過型電子顕微鏡法(cryo−TEM)、または、核磁気共鳴(NMR)分光法の使用により、上述された液晶オーダーを検査することができる。cryo−TEMは、他の両親媒性相構造を検査および特定するためにも用いられる。分散した粒子の径および径分布は、光散乱により、特にレーザ光散乱機器の使用により検査される。
【0007】
上述したように、バルク非層状相は、一般的には熱力学的に安定な系である。加えて、このバルク相は、極性または非極性の溶媒中で分散し、バルク溶媒中に非層状(特に液晶)相の粒子を形成しうる。これにより、腸管外適用など、バルク非混和性相の使用が問題を引き起こすであろう状況におけるバルク非層状相の適用が有利になった。このような分散によって、化合物の放出特性のさらなる調整も行われうる。
【0008】
粒子内への非層状相の分散は、この両親媒性相構造が特定の(特に生体内)適用において価値を有するために、必要不可欠である。
【0009】
一般的に、非層状相の分散には、比較的高いエネルギーの注入や特殊な装置が必要とされる。代表的な方法としては、音波処理、均質化および高圧濾過が含まれる。このような「高エネルギーで生産された」非層状粒子の例は、文献(Kamo et al.、Langmuir、2003、19、9151−95(非特許文献1)および、Gustafsson et al.、Langmuir、1997、13、6964−71)(非特許文献2)に記載されている。
【0010】
これらの高エネルギー分散法には、多数の短所がある。例えば、必要となる時間計測装置および特殊な製法のせいで、一般的に、治療箇所において分散物が発生しない。したがって、このような分散物は、99重量%以下の水が含まれる間に移送され、処理され、そして保管されなければならない。これにより、移送および保管が明らかに困難になり、また、かなり長期間にわたり、負荷レベルや粒子径等の分散物粒子特性が、移送および保管するために安定的でなければならないということになる。さらに、製造時間やコストも相当のものになる。
【0011】
高エネルギー分散技術の使用は、非層状両親媒性粒子の分散物に含まれうる活性剤の範囲も制限する。特に、たんぱく質および/またはペプチド等の剪断感受性および/または温度感受性活性剤は、高エネルギー分散法の使用を可能にするほど十分に強くはない。代わりに、分散物の形成後、活性剤を加えると、時間を消費するだけでなく、負荷レベルが不十分または予測不能になりうる。
【0012】
水等の溶媒内で非層状相の分散された粒子を形成するための高エネルギー法は、米国特許番号5,531,925(特許文献1)に記載されている。このような粒子は、非層状液晶またはL3内部相および層状またはL3表面相を有しており、活性材料も含みうる。
【特許文献1】米国特許5,531,925号明細書
【非特許文献1】Kamoら、Langmuir、2003年、19巻、p.9151−95.
【非特許文献2】Gustafssonら.、Langmuir、1997年、13巻、p.6964−71.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
高エネルギー分散法を用いずに非層状相粒子の分散物を発生させる組成物や方法に対して、相当な必要性があることは明らかである。形成された粒子がコロイド状であれば、相当の利点であろうし、また、生成された粒子の生体内での耐性が十分であれば、相当の利点となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、モノアシル脂質、ジアシルグリセロールおよび/またはトコフェロール、細分化剤、および、任意で活性剤を含む組成物が、高エネルギー技術の使用を必要とせず、水性条件にさらされると、コロイド状の非層状相粒子を生成する、自己分散性組成物を形成するという、驚くべき特性を有することを証明した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
したがって、まず第1の側面として、本発明は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物であって、自己分散し、水性流体に触れると(好ましくはコロイド状の)非層状粒子を生じることが可能である前記組成物を提供する。
【0016】
好ましい側面として、本発明は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物であって、自己分散し、水性流体に触れると(好ましくはコロイド状の)非層状粒子を生じることが可能である前記組成物を提供する。
【0017】
本発明の顕著な利点は、非層状粒子の分散物を、高エネルギー細分化法または特殊な装置を必要とせずに生成できることである。これにより、必要な時に、治療箇所等の必要な箇所での分散物の形成が可能となる。
【0018】
他の側面において、本発明は非層状粒子の分散物の生成方法を提供しており、前記方法は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、および、
c)少なくとも1つの細分化剤
を含む組成物を水性流体と接触させ、任意にこのようにして生成した前記混合物に低エネルギー攪拌法を供する方法である。例えば、適切な方法として、手動加振、および/または手動加振および350rpm以下の機械加振が含まれる。
【0019】
好ましい側面において、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールである。
【0020】
本発明の組成物の自己分散によって生成した非層状粒子も、特有の組成物であり、本発明のさらなる側面を成している。
【0021】
さらなる側面として、本発明は、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
任意に活性剤、および、任意に水性流体を含むコロイド状の非層状粒子を提供する。
【0022】
好ましい特徴として、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールである。
【0023】
本発明の組成物は、治療箇所等、専用の製造設備の外側でコロイド分散物を調製するのに非常に適している。これは、活性剤が溶液もしくは分散物中において長時間安定していない場合、または、保管するための分散物の粒子径安定度に対して懸念がある場合に有利である。このような「要求に対して準備された」型の分散物は、分散物の調製に求められる必要不可欠の要素を含むキットの形態において、最も容易に供給される。
【0024】
さらなる側面として、本発明は、非層状粒子の分散物を調製するためのキットを提供し、前記キットは、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を有する組成物を含む。
【0025】
好ましい側面として、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールである。
【0026】
適切なキットには、分散物の調製に適した、少なくとも1つの容器(例えば、手動で加振することが出来る、適切な容量の再封止可能な管)、分散物の調製に適切に使用される、少なくとも1つの水性流体(好ましくは、前もって測定してある)(例えば、等浸透圧の注射用食塩水)、および/または分散物の調製に関する指示書等の品目も任意に含まれうる。活性剤は、存在する場合、両親媒性の成分と共に処方されうるか、または、分散物が調製される際、隔てられた区切に含まれるように存在しうる。
【0027】
本発明の組成物は、下記に示すように、活性剤と共に処方されることが望ましいであろう。このような活性剤が、薬物、診断用薬剤、ワクチン、予防薬、または類似の医薬調合物である場合、さらなる側面において、本発明は、本発明の組成物、少なくとも1つの活性剤、および、任意に少なくとも1つの医薬的に許可可能な担体または補形剤を含む医薬調合物を提供する。
【0028】
ここで用いる「自己分散」という用語により、コロイド状分散物を生成するために、有機溶媒(ヒドロトロープ)や、均質化、音波処理または強力な機械加振等の高エネルギー技術を必要としない組成物が示される。水性流体(水や水性緩衝液)中で5重量%溶液を作る工程と、350rpm以下で12時間以下加振する工程とを含む方法により、無溶媒組成物が、平均径が5μm以下、半値幅において分布幅が3μm以下である単一モードの径分布の非層状粒子の分散物を形成することが可能であれば、組成物は「自己分散」していると考えられうる。
【0029】
しかしながら、本発明の組成物は、溶媒/ハイドロトロープを含みうるが、これらの物質の存在は、自己分散にとって必要ではない。したがって、溶媒やハイドロトロープが存在しない場合にも、このような物質が他の理由により(使い易い液体組成物を提供する目的等)組成物内に含まれる場合にも、組成物は全て自己分散することが可能である。
【0030】
「自己分散」という用語は、バルクの固体または液体の脂質混合物または溶液(例えば、溶媒に15重量%以下、好ましくは10重量%以下加えられたもの)からの自己分散を示唆しており、ハイドロトロープまたは高エネルギー技術の使用により、前もって脂質混合物を細分化し、その後、再水化のためにそれぞれの粒子が即座に形成されるよう、乾燥して微細に分割した粉末状にする、というような自己分散は含まない。本発明の組成物は、「自己分散」し、上述したように、コロイド分散物を発生させるために必要な特性を本質的に有する。したがって、例えば、被覆されたミクロン大の粒子から成るバルク組成物は、ここに述べたように、自己分散とその後の乾燥によって粒子が生成されない限り、「自己分散可能」ではない。既知の組成物は、ハイドロトロープおよび/または高エネルギー技術を使用し、その後乾燥されるため、自己分散可能ではない。
【0031】
大半が層状および/またはミセル相粒子を生成する自己分散型組成物を提供することは、技術分野において既知であり、また、上述したように、剪断力、高圧押出または超音波等の形態のかなり高いエネルギーを注入することにより分散されうる、バルク非層状相を提供することも既知である。分散された非層状粒子は、エタノール等の共溶媒/ハイドロトロープを脂質混合物中に含ませ、その後前記混合物を水溶液で希釈することによって得られることが示されている(Spicer et al.、Langmuir、2001、17、5748−56)。しかしながら、この文脈における自己分散は、溶媒の存在や高エネルギー法の使用を要さない。
【0032】
一般的な既知の非層状組成物は、単に分散の工程を速めるためだけでなく、本質的に自己分散不可能であるため、均質化処理、音波処理またはヒドロトロープによって処理されるわけではない。非層状分散物を製造するための既知の技術が、高エネルギーまたはヒドロトロープを使用するとしても、多量の層状(ビヒクル状)粒子(例えば、上記Spicer)を生成し続け、その結果、一般的に幅広い、および/または、不明確な径分布(双峰分布または多峰分布、および/または大量の巨視的粒子、例えば、100μmより大きい粒子等)を生じる。さらに、既知の高エネルギーまたはヒドロトロープによって製造された非層状分散物の保管安定性は、一般的に低い。このような既知の分散物において、平均粒子径および/または径分布幅および/または粒子層の挙動は、安定的に保管されない。これは、分散された非層状逆六方相粒子の場合において、特に言えることである(Kamo et al.、Langmuir、2003、19、9191−95)。
【0033】
比較例11に示すように、既知の組成物は、高エネルギー技術および/またはヒドロトロープを使用しなければ、非層状かつ輪郭のはっきりした粒子のコロイド大の分散物を形成しない。しかしながら、本組成物は、高エネルギー、専門の装置および/または共溶媒/ヒドロトロープを必要とすることなく、非層状相粒子(特に、非層状逆六方相粒子)を入手可能な特長を活かすことができる。前記組成物は、コロイド大の範囲の、再生可能かつ確実な粒子径分布をさらに形成し、それらは保管に際して非常に安定的である。
【0034】
ここで用いられているように、「非層状」という用語は、正または逆の液晶相(立方相または六方相等)、L3相またはそれらの組み合わせを示唆するために用いられ、ビヒクル/リポソーム等の層状構造とは反対である。粒子が非層状相または形状を有すると記載される場合、これは、少なくとも粒子の内部領域がこの形状を有するべきであるということを示唆する。粒子は、一般的に、内部領域と周辺の表面領域という2つの区別された領域を有するであろう。表面領域は、たとえ「非層状」粒子内においても、しばしば層状または結晶状であり、高オーダー結晶または液晶相から事実上無秩序な液体層に至るまで、いかなる相であっても良い。これとは対照的に、ここに記載される「層状」粒子は、非層状ではなく、コア領域に溶媒を有する粒子である。あまり好ましくない他の側面において、ここで使用される非層状が、正および/または逆のミセル相構造を指しても良い。
【0035】
本発明の組成物は、逆非層状相粒子を形成することが好ましく、双連続立方相または逆六方液晶相等の逆液晶相粒子を形成することがさらに好ましい。水性流体中において、自己分散により非層状相構造が形成されるため、この相構造が、バルク溶媒相と平衡状態またはそれに近い状態にある証拠である。これは、一般的に、バルク溶媒層と共存する非層状相との、相図における相多層状領域の存在によって表わされる。これは、下記に述べるように、分散の安定性に明らかに反映される。
【0036】
コロイド分散において安定した逆六方相液晶粒子を提供するために、組成物が選択されることは、本発明の非常に有利な特徴である。逆六方相コロイド粒子は、一般的に、既知の両親媒性の混合物と共に発生することが少なく、このような粒子の安定した分散物は殆ど見られない。下記の実施例は、本発明が、六方相液晶粒子の分散物だけでなく、狭いコロイド状の粒子径分布を有し、長期にわたり安定して保管される分散物を提供することを示している。
【0037】
状態によっては、本発明の組成物は、自己分散し、部分的に非層状の粒子や部分的に層状および/またはミセル状の粒子を形成するが、50%より多くの両親媒性物質が、非層状構造に含まれるよう分散するはずである。好ましくは、70%以上の両親媒性物質が、本発明の組成物の自己分散によって非層状粒子になり、より好ましくは75%以上、最も好ましくは85%以上の両親媒性物質が自己分散し、非層状粒子に含まれる。
【0038】
上述したように、本発明の組成物は、自己分散し、単一モードの径分布を有し、平均粒子径が5μm以下である粒子を提供する。この平均粒子径は、2μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましい。粒子径分布の幅も狭くなければならず、半値幅において3μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。このような粒子はコロイド状と考えられ、静脈注射等により被験者に直接投与(適切な液体中の分散物として)するのに適している。約8μmより大きい粒子の割合が高い場合、このような分散物を被験者の血管内へ投与することにより、塞栓症などの危険な反応が起こりうる。それらが自然発生的に分散し、8μmより大きい粒子や、場合によっては1μmより大きい粒子も含まない、コロイド状でミクロン大またはミクロン以下の範囲の粒子径を持つ粒子を提供することは、本発明の組成物特有の非常に有利な特性であると考えらる。幅が狭く、予測可能な径分布は、あらゆる投与経路(例えば、口、鼻、口腔等)における、活性物質の移送や放出の制御において、有利である。
【0039】
本発明の組成物に用いられる成分は、a)少なくとも1つのモノアシル脂質、b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、および、c)少なくとも1つの細分化剤を含む。好ましい側面において、成分b)は、少なくとも1つのジアシルグリセロールを含むか、または、少なくとも1つのジアシルグリセロールからなる。
【0040】
本発明の組成物の成分a)として、モノアシル脂質を用いる。このような脂質の好ましい種類として、モノ、または、好ましくはジ、トリ、テトラグリセロール等のモノアシルオリゴグリセロール、および、ペグ化された脂肪酸と同様、ペグ化されたグリセリル脂肪酸エステルが含まれる。これらすべての場合において、一般的に、アシル/脂肪酸鎖の炭素数は12から22であり、不飽和数は0、1、2または3である。好ましいアシル/脂肪酸基としては、例えば、ラウロイル(C12:0)、ミリストイル(C14:0)、パルミトイル(C16:0)、フィタノイル(C16:0)、パルミトレイオイル(C16:1)、ステアロイル(C18:0)、オレオイル(C18:1)、エライドイル(C18:1)、リノレオイル(C18:2)、リノレノイル(C18:3)、アラキドノイル(C20:4)、ベヘノイル(C22:0)基が含まれる。ここで、CX:Yは、X個の炭素原子を有し、不飽和数がYである炭化水素鎖を表わす。特に好ましい具体的なモノアシル脂質としては、ジグリセロールモノオレイン酸エステル(DGMO)、ジグリセロールモノリノール酸エステル(DGML)およびポリエチレングリコール(5)−グリセリル−モノオレイン酸エステル(TMGO−5)が含まれる。
【0041】
成分a)は、一般的にミセルを形成する、もしくは、水と接触する層状相を形成することが好ましい。これは、物質に水を加え、試料を平衡状態にし、その後、小角X線散乱(SAXS)により試料中に存在する相を決定することにより、試験されうる。モノアシル成分が、水と接触する際、層状相を形成することが好ましい。例えば、DGMOは、最大約40重量%の水を取り込む層状相を形成する。
【0042】
本発明の組成物の成分b)として、ジアシルグリセロール、トコフェロールまたはそれらの混合物が用いられる。ジアシルグリセロール成分は、成分b)の一部または全部であることが好ましく、対称または非対称、いずれのジアシル脂質でも良く、それぞれの脂肪酸基は飽和でも不飽和でも良い。ジアシルグリセロールとしては、それぞれ炭素数が12から22であり、不飽和数が0、1、2または3であるアシル基を含むものが好ましい。好ましいアシル基としては、例えば、ラウロイル(C12:0)、ミリストイル(C14:0)、パルミトイル(C16:0)、フィタノイル(C16:0)、パルミトレイオイル(C16:1)、ステアロイル(C18:0)、オレオイル(C18:1)、エライドイル(C18:1)、リノレオイル(C18:2)、リノレノイル(C18:3)、アラキドノイル(C20:4)、ベヘノイル(C22:0)基が含まれる。ここで、CX:Yは、X個の炭素原子を有し、不飽和数がYである炭化水素鎖を表わす。特に好ましいジアシルグリセロールは、グリセロールオレイン酸ジエステル(GDO)である。
【0043】
ここで用いられているように、「トコフェロール」という用語は、ビタミンEとして知られる非イオン性の脂質トコフェロール、および/または適当な塩および/またはそれらの類似体を指すのに用いられる。最も好ましいトコフェロールは、下記構造を有するトコフェロールそのものである。実際には、特に天然原料から精製された場合に、非トコフェロール性の「不純物」が少量の割合で存在することがあるが、これは、組成物の有利な自己分散特性および/または相挙動を変えるには十分でない。一般的に、トコフェロールは、10重量%以下、好ましくは5%重量以下、最も好ましくは2重量%以下の非トコフェロール類似化合物を含む。
【0044】
【化1】
【0045】
一般的に、成分b)は、水に接触すると、逆立方相または逆六方相等の逆液晶相、もしくは、液体L2相を形成する。また、成分b)は、実質的に水を取り込まない(特に、表面活性の)油でもある。繰り返すが、これは、SAXS(上記参照)によって試験、もしくは、当業者による視認によって決定されうる。ジアシルグリセロールおよび/またはトコフェロールが、水と接触する際に、油またはL2相を形成することが好ましい。例えば、GDOは、水と接触する際に、微量の水しか取り込まず、油性の物質として分離する。
【0046】
成分c)は、選択された成分a)およびb)と共に、細分化剤として作用することが可能な両親媒性物質として機能しうる。細分化剤は、上述したように、成分a)およびb)を含む組成物を自己分散させて非層状粒子を形成する、(純粋または混合された)薬剤である。
【0047】
本発明における細分化剤として適切な、異なる分子分類が多数存在する。これらには下記物質が含まれる。
【0048】
1)高分子剤:ポロキサマー(好ましくは、プルロニック(登録商標)F127、(登録商標)F68、プルロニック(登録商標)F108、プルロニック(登録商標)L44)、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンn−ブチルメタクリレートブロック共重合体(NOF社製ピュアブライトMB−37−50TおよびピュアブライトMB−37−100T等)、ぺグ化されたソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、特にポリソルベート80)、ぺグ化された界面活性剤(例えば、BASF社製ソルトールHS15)、ぺグ化されたヒマシ油誘導体(例えば、クレモフォールEL、クレモフォールRH40)、ぺグ化された脂肪酸(例えば、PEGオレイン酸エステル)、ぺグ化されたリン脂質(DOPE−PEG(2000)、DOPE−PEG(5000)およびDSPE−PEG(5000)を含む)、ポリグリセリン(PG)−リン脂質(例えば、NOF社製サンブライトDSPE−PG8G等のDSPE−PG、DOPE−PG等)、ぺグ化されたオリゴアルキルソルビトール(PEG−60ソルビトールテトラオレイン酸エステル、例えば、ニッコー化学研究所製GO−460V)、ぺグ化されたグリセリル脂肪酸エステル(例えば、ニッコー化学研究所製TMGO−15)、d−アルファトコフェロールポリエチレングリコール1000コハク酸エステル(ビタミンE TPGS(イーストマン))等のぺグ化されたトコフェロール、および、ぺグ化されたアルキルエステル;
2)ポリオール界面活性剤:糖由来アルキルエステル(スクロースラウリン酸エステルやスクロースオレイン酸エステル等)、糖由来アルキルエーテル(例えば、オクチルグルコシド);
3)タンパク質:カゼイン、カゼイン酸ナトリウム、リゾチームを含む;
4)アニオン性界面活性剤:脂肪酸のカルボン酸エステル(特にオレイン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム)、アルキル界面活性剤(ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等);および、
5)カチオン性界面活性剤:アルキルアンモニウム塩(ドデシルトリメチルアンモニウム臭化物(DTAB)、セチルトリメチルアンモニウム臭化物(CTAB)、および、オレイルアンモニウム塩化物を含む)。
【0049】
成分c)の大部分が、過剰の水と接触する際に、正のミセル(L1)相を形成する。しかしながら、成分は、細分化剤として機能するミセルを形成する必要がない。細分化剤の効果的な機能は、実施例に例示しているように、適切な組成物を製造し、簡単な試験を行うことにより、当業者により簡単に試験されるであろう。
【0050】
本発明の他の態様において、成分c)は、モノアシル(特に、非自然的に発生する)脂質でありうる。成分c)が、上記カテゴリー1)に分類される高分子モノアシル脂質である場合が、最も一般的である。この態様において、成分c)は、全体または部分的に、成分a)を構成する1つ以上のモノアシル脂質から成る。この態様の唯一の必要不可欠な特徴は、ここに記載したように、効率的な自己分散および/または安定性を与えるために、十分な細分化効果がなければならないという点である。この細分化効果が、成分a)を構成する1つ以上のモノアシル脂質によって得られる場合、一般的に、成分a)が少なくとも1つの非自然的に発生するモノアシル脂質を有する際に、この細分化効果が得られ、この成分は、細分化剤c)としても作用するであろう。成分a)により、幾つかの不十分な細分化作用が得られる場合、成分c)に作用する付加的な細分化剤の含有量は、それに応じて減少するであろう。
【0051】
一般的に、成分a)、b)およびc)は、下記の比率で存在するであろう(ここで、a、bおよびcは、それぞれ、成分a)、b)およびc)の重量である);a/(a+b)は、0.2(例えば、0.3)から0.9(例えば、0.8)の範囲、c/(a+b+c)は、0.01から0.3の(もしくは、成分a)が細分化剤を含む場合、成分a)の全部または一部に適切に相当する)範囲である。この範囲の組成物は、高エネルギーを注入する必要がなく、比較的穏やかな条件下で自己分散する高い傾向を持つ。最も容易な自己分散および最大の粒子径の調節を行うためには、a/(a+b)が0.25(例えば、0.35)から0.80(例えば、0.75)、さらに好ましくは、0.35(例えば、0.4)から0.75(例えば、0.65)の範囲にあり、c/(a+b+c)が0.03から0.25(例えば、0.2)の範囲になるような、a)、b)およびc)の比率が好ましい(ここで、a、bおよびcは、それぞれ、成分a)、b)およびc)の重量である)。
【0052】
本発明の組成物は、活性剤および/または他の両親媒性成分も含みうる。例えば、活性剤のより高い負荷レベルが得られるよう、荷電した(特に、アニオン性の)脂質/脂肪酸が含まれる(カチオン性ペプチド、例えば、オクレオチドなど)。付加的な成分の具体的な種類としては、荷電した脂質または界面活性剤(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、オレイン酸(OA)、ジオレイルトリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP))、および、高分子表面改質剤である。
【0053】
好ましい高分子表面改質剤としては、ポリエチレンオキサイド共重合体、ポリエチレンオキサイドで誘導体化された脂質、多糖類(キトサンなど)、疎水性に改質された多糖類および両親媒性タンパク質が含まれる。ポロキサマーは、高分子成分として特に適切であり、PEG−グリセロールジオレイン酸エステル、PEG−ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(特に、DOPE−PEG2000およびDOPE PEG−5000)、またはPEG−ジオレオイルホスファチジルセリンなど、PEGで置換した脂質である。適切な高分子剤として、PEG−ソルビトールテトラオレイン酸エステル(ニッコー化学研究所製)、コレステロールプルラン(NOF)および2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン n−ブチルメタクリレートブロック共重合体(NOF社製ピュアブライトMB−37−50TおよびピュアブライトMB−37−100T)が含まれる。
【0054】
本発明の組成物は固体であり、例えば粉末状の組成物とすることができ、溶媒やヒドロトロープを必要としない、純粋な両親媒性物質および活性剤(任意の補形剤を添加した)の液体の前駆体組成物であってもよい。1つの好ましい態様においては、本組成物は、投与前の分散または無溶媒の形での直接の投与のために、無溶媒の調合物として提供される。これは、有機溶媒の不必要な投与を避けると同時に、投与の簡便性において有利である。
【0055】
他の態様においては、本発明の液体組成物は、溶媒混合物として調製されうる。このような液体前駆体は、成分a、b、c、共溶媒および任意で活性剤を含む。例えば、活性剤を含む液体前駆体は、カプセルに詰められており、また、組成物の自己分散能力によって、GI液と接触する際に非層状粒子が形成される。同様に、液体前駆体は、注射までの間、液体(例えば、等浸透圧性食塩水)中で分散するようアンプル内に準備されてもよい。
【0056】
共溶媒は、一般的に、水に対して少なくともある程度の混和性を有し、組成物を使用する適用において許容性(例えば、生体許容性)を有するべきである。炭素数が1から6であり、好ましくは少なくとも1つの酸素置換基を有する有機溶媒、および、その水溶性ポリマーが好ましい。共溶媒の適切な種類は、アルコール類(ポリオールを含む)、ケトン類、エステル類、エーテル類、および、それらのポリマーである。一般的な共溶媒は、全脂質の約15(重量)%以下、好ましくは約10(重量)%以下添加される、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、ジメチルアセトアミド(DMA)、グルコフロール(glukofurol)、トランスキュトル(transcutol)、PEG400およびグリセロールである。
【0057】
さらなる他の態様において、本発明は、本発明の組成物中における高分子剤の使用により調製されうる固体または半個体(たとえば、ゲル、蝋質固体)の組成物を提供する。このような固体または半固体の前駆体は、ここに記載したように、本発明の組成物を含み、さらに少なくとも1つの高分子固化剤を含む。一般的に、このような組成物は、成分a、b、c、高分子剤、任意に共溶媒、および任意に活性剤を含む。固体または半固体の前駆体は、一般的に、熱によって液化可能であり、例えば、カプセルや型等に詰めることが出来る。組成物の自己分散能力により、GI液と接触する際に、非層状粒子が形成される。高分子固化剤は、生体許容性ポリマーであることが好ましく、融点が35℃から100℃であることが好ましく、40℃から95℃であることがさらに好ましく、45℃から90℃であることが最も好ましい。特に好ましい高分子剤は、モル質量が950から35000の範囲であるポリエチレングリコール(PEG)であり、モル質量が1000から10,000の範囲であるPEGが最も好ましい。PEG4000は、非常に好ましい例である。
【0058】
本発明の組成物は、自己分散性を有するため、分散された形で投与される必要はなく、実際に投与前に前もって分散する必要はない。組成物は、分散物としてではなく、固体または濃縮された液体の形態(例えば、粉末、錠剤、粉末、固体(半固体)または液体を詰めたカプセル)のバルク組成物として、簡便に投与され、コロイド状の分散物と共に高い運搬効率を維持し、その後体液内において、生体内分散により生成される。したがって、バルク投与は、作用部位に効率的に運ばれた、ミクロン大およびミクロン大以下の粒子の非常に均一な分布として、細分化および分散される。さらに、この生体内分散によって発生した粒子の非層状構造は、活性剤の放出や効果的な標的に対する制御、および、生体膜を通過する移送を行うことが出来る。一つの態様において、本発明の組成物は、有機溶媒の全含有率(組成物内に存在するいかなる溶媒も含む)が10重量%以下である医薬調合物を50重量%以上と、残りの非溶媒調合剤とを含むよう処方されている。ここで用いる「調合剤」という用語は、大量に用いられると著しい製薬効果を発揮するわけではないが、医薬的に容認可能であり、本発明の組成物を製薬に調合する際に有用な物質を意味する。例えば、このような物質として、補形剤、封入剤、被覆剤、着色料、香料、結合剤、pH調整剤、張度調整剤(tonicity modifier)などが含まれる。
【0059】
本発明の組成物の含有物として適当な活性剤としては、人間および動物用薬物、ワクチン、診断用薬剤、植物性エッセンシャルオイルや抽出物やアロマなどの「代替」活性剤、化粧品用薬剤、栄養素、栄養補助食品等が含まれる。
【0060】
適切な薬剤としては、例えば、β−ラクタムや大環状ペプチド抗生物質などの抗菌剤、ポリエンマクロライド(例えば、アンフォテリシンB)やアゾール抗カビ剤等の抗カビ剤、抗がん剤および/またはヌクレオシド類似体、パクリタクセルおよびそれらの誘導体等の抗ウイルス薬剤、非ステロイド系抗炎症薬等の抗炎症薬、コレステロール低下剤および血圧低下剤を含む心臓血管作用薬、鎮痛剤、セロトニン再取り込み阻害剤を含む抗うつ薬、ワクチンおよび骨調整剤(bone modulator)が含まれる。特に適切な活性剤としては、プロポフォール等の麻酔剤、テストステロンおよびテストステロン誘導体(例えば、テストステロンウンデカン酸)等のホルモンおよびホルモン誘導体、パクリタクセルやドセタキセル等の抗がん剤、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス(sirolimus)等の免疫抑制剤、および、ソマトスタチンやその類似体等のペプチド活性剤(例えば、オクトレオチド(octreotide))が挙げられる。
【0061】
診断用薬剤には、放射性核種標識化合物と、X線、超音波およびMRIコントラスト強調剤を含むコントラスト剤とが含まれる。栄養素としては、ビタミン、コエンザイム、栄養補助食品等が含まれる。本発明において用いる活性剤は、一般的に、ここで記載されているような、成分a)、b)またはc)のいずれかではない。
【0062】
本発明の組成物から非層状粒子の分散物を形成するために、高エネルギー技術を必要としないという点が、本発明の特別な特徴である。結果として、既知の方法によって形成可能な、分散された非層状粒子中における調合に適さない場合にも、温度感受性および/または剪断感受性活性物質が含まれうる。
【0063】
一つの態様において、本発明の組成物および粒子は、このように少なくとも1つの温度感受性および/または剪断活性物質を含む。温度感受性活性物質は、70℃以上の温度に20分間以上、水性の環境にさらされると、その結果、本来の生物活性の10%以上が損なわれると考えられている。ペプチドおよびタンパク質は、温度感受性である活性剤として最も一般的であり、本発明において、特に本態様において使用される、好ましい活性剤を形成する。剪断感受性活性物質は、一般的に、高い剪断条件によって破壊される、大きなおよび/または複数のサブユニットのタンパク質である。
【0064】
したがって、好ましい活性剤としては、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)およびそのフラグメント、アンギオテンシンおよび関連するペプチド、抗体およびそのフラグメント、抗原およびそのフラグメント、心房ナトリウム利尿ペプチド、生体付着性ペプチド、ブラジキニンおよび関連するペプチド、ペプチドTおよび関連するペプチド、カルシトニンおよび関連するペプチド、細胞表面受容体タンパク質フラグメント、化学走化性ペプチド、シクロスポリン、サイトカイン、ダイノルフィンおよび関連するペプチド、エンドルフィンおよびP−リドトロピン(lidotropin)フラグメント、エンケファリンおよび関連するタンパク質、酵素阻害物質、フィブロネクチンフラグメントおよび関連するペプチド、胃腸ペプチド、成長ホルモン放出ペプチド、免疫賦活ペプチド、インスリン、インスリン類似体およびインスリン様成長因子、インターロイキン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)および関連するペプチド、黒色細胞刺激ホルモンおよび関連するペプチド、核局在シグナル関連ペプチド、ニューロテンシンおよび関連するペプチド、神経伝達物質ペプチド、オピオイドペプチド、オキシトシン、バソプレッシンおよび関連するペプチド、副甲状腺ホルモンおよびそのフラグメント、タンパク質キナーゼおよび関連するペプチド、ソマトスタチンおよび関連するペプチド(例えば、オクトレオチド(octreotide))、物質Pおよび関連するペプチド、形質転換成長因子(TGF)および関連するペプチド、腫瘍壊死因子フラグメント、アンギオスタチンを含む抗がん剤ペプチド等の毒素およびトキソイドおよび機能性ペプチド、抗高血圧ペプチド、抗血液凝固性ペプチドおよび殺菌性ペプチド等のペプチドからなる群から選択される人間および動物用薬剤;免疫グロブリン、アンギオゲニン、骨形態形成タンパク質、ケモカイン、コロニー形成活性化因子(CSF)、サイトカイン、成長因子、インターフェロン、インターロイキン、レプチン、白血病阻止因子、基幹細胞因子、形質転換成長因子およびがん細胞壊死因子等のタンパク質からなる群から選択される人間および動物用薬剤;抗ウイルス物質、ステロイド抗炎症薬(SAID)、非ステロイド抗炎症薬(NSAED)、抗生物質、抗カビ剤、抗ウイルス物質、ビタミン、ホルモン、レチノイン酸およびレチノイン酸誘導体(トレチノインを含む)、プロスタグラジン、プロスタサイクリン、抗がん剤、代謝拮抗剤、縮瞳薬、コリン作動物質、アドレナリン拮抗薬、鎮痙薬、抗不安剤、精神安定剤、抗うつ剤、麻酔剤、鎮痛剤、アナボリックステロイド、エストロゲン、プロゲステロン、グリコサミノグリカン、ポリヌクレオチド、免疫抑制剤(例えば、タクロリムスおよびシロリムス(sirolimus))および免疫刺激剤、脂質低下薬および血圧低下薬を含む心臓血管薬、骨改質剤(bone modulators)、ワクチン、ワクチンアジュバント、免疫グロブリンおよび抗血清から選択される人間および動物用薬剤、診断用薬剤、化粧品用薬剤、日焼け止め剤および人工日焼け剤、栄養素、栄養補助食品、除草剤、殺虫剤および防虫剤が含まれる。活性剤のさらなる例は、例えば、特別薬局方のマーチンデールに記載されている。
【0065】
本発明の組成物と接触させるための、ここで言及された水性流体は、水、その他の適切な水溶液、または、例えば医薬的に許容可能な担体溶液を含む混合物でもよい。適切な溶液には、緩衝剤と、例えば0.9%の食塩水等の生理学的なpHに近い、注射用の等浸透圧性溶液とが含まれる。これらの液体は、治療箇所において分散物を調製するのに非常に適しており、本発明のキットに含まれうる。
【0066】
1つの好ましい態様において、液体は、血液や胃腸液(GI)などの体液でありうる。この態様において、液体または固体(半固体)にするために、または粘性を向上させるために、組成物は、脂質/活性剤混合物として、任意に共溶媒または高分子剤と共に投与される。適切な共溶媒は、上述されたとおりである。
【0067】
本発明の好ましい態様において、本発明の粒子(ここで述べられたように、本発明の方法によって形成され、形成可能である粒子を含む)は、4℃および/または室温において、少なくとも10日間保管するためには、相挙動や粒子径分布の両面において安定的であることが、必要不可欠である。これは、既知の非層状粒子の分散物(高エネルギー細分化またはヒドロトロープを要する)に比べて、かなり有利である。何故なら、これらの既知の分散物は、一般的に、短時間(数日間、例えば、上記Kamoを参照)を超える保管を行うには、安定的でないためである。本発明の両親媒性粒子は、4℃および室温の両温度において、少なくとも1ヶ月間または2ヶ月間、好ましくは3ヶ月間以上、さらに好ましくは6ヶ月間以上の保管を行うために安定的であることが好ましい。
【0068】
本発明の粒子および分散物は、4℃で保管されるために安定的である点が、特に有利である。何故なら、これが、多くの生物学上の活性剤や調製物に対して実践され、推奨される一般的な冷蔵状態であるためである。既知の非層状(特に、逆六方相)粒子は、室温に比べて4℃において安定的でないため、冷蔵保管するための調合物を生成するには不適当である。特に、既知のグリセロールモノオレイン酸エステル(GMO)系の非層状分散物は、一般的に4℃において不安定である。
【0069】
保管期間中の平均粒子径の増加が2倍以下である場合、粒子径分布は、保管を行うために、基本的に安定的であると考えられる。好ましくは、保管期間中に平均径の増加が50%以下であるべきであり、20%以下であればさらに好ましい。同様に、保管期間中の半値幅における分布幅の増加は、好ましくは50%以下であり、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。分散が単一モードである場合、保管期間中は単一モードを維持することが好ましい。非常に好ましい態様においては、本発明の組成物の粒子径分布は、平均粒子径や半値幅における粒子径分布幅において、10%以下の範囲で変化し、上述した期間中の保管において単一モードを維持する。
【0070】
静脈内投与または動脈内投与における使用のためのコロイド分散の場合において、粒子径分布が保管を行うために安定的であることは、特に重要である。比較的少量の成分の非コロイド状粒子を含む組成物ですら、血管に直接投与する際、塞栓症を引き起こしたり、少なくとも予測不可能な速度で放出することがある。同様に、他の経路で投与するための組成物においても、活性物質の制御放出は、信頼性のある粒子径分布に依存しうる。医薬品、診断用製品および動物医薬品も、数ヶ月間の保管に対して安定的であることが望ましく、さもなければ、製品のコストや可用性に非常に悪い影響を与える。したがって、本発明は、安全かつ可用性を有する製品を製造するための、非層状粒子の分散物において調合された活性剤の将来性を、大きく向上させる。
【0071】
また、いかなる活性剤の放出速度も効果的に予測できるように、分散物中の粒子の相構造が、保管のための安定性を維持することは、重要なことである。好ましい態様においては、本発明の粒子が、上記期間中に保管される間、非層状を維持している。「非層状を維持」することにより、10%以下、好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下の非層状粒子が、保管の際、層状またはミセル相構造を適用することが示唆される。保管の際に非層状粒子の比率がさらに増加する場合もありうる。
【0072】
本発明の組成物から形成される、または形成可能な分散物は、驚くほど高い脂質濃度の水性流体中で、分散物として形成および安定的に維持されうる点において、さらに重要である。一般的に、非層状脂質分散物は、非常に低い全両親媒性物質濃度において、形成され、かつ安定的に維持される。一般的な最大濃度は、1重量%〜2重量%であれば、しばしば水中において両親媒性であり、5重量%〜6重量%であれば異常に高濃度である。対照的に、本発明により形成される分散物は、水中において10重量%以下、好ましくは15重量%、さらに好ましくは20重量%以下の全両親媒性化合物の濃度で、水性流体において安定的である。ここで述べたとおり、「安定的」という用語は、粒子径および相挙動の両方の点において安定的であることを意味する。
【0073】
本発明の好ましい態様において、モノアシル脂質a)は、水に接触する際、ミセルまたは好ましくはミセル相を純粋な形で生成する成分を含みうる、もしくは、前記成分から構成されうる。バルクまたは分散された非層状相の形成のために、最も一般的に用いられるモノアシル脂質は、グリセロールモノオレイン酸エステル(GMO)である。モノアシル脂質は、本発明の組成物において使用されうるが、この態様にとって適切でない。何故なら、純粋な化合物が水にさらされると、立方液晶相を形成するためである。
【0074】
本発明の両親媒性粒子は、非層状であり、本発明の組成物の自己分散性により形成される、または形成可能である。しかしながら、このような粒子の形成の後、分散物は、所望の用途に応じた多数の方法により、さらに処理されうる。
【0075】
本発明の一つの態様において、本発明の組成物から形成される、または形成可能である粒子は、濃縮、および/または、乾燥、および/または、適切な高分子剤と共融され、濃縮された分散物、「乾燥した」粉末または固体(半固体、たとえば、ゲルまたは蝋質固体)マトリックスを生じることができる。濃縮、乾燥、および、固体(半固体)を調製するための適切な技術には、限界濾過、溶媒の蒸発、凍結乾燥、スプレードライ、および、両親媒性化合物と高分子剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))や他の適切な薬剤とを共融した後、冷却し、固体(半固体)前駆体を形成する工程が含まれる。
【0076】
「乾燥した」粉末が生成される場合、水性の溶媒が完全にまたは基本的に無い、もしくは、構成された粒子の核の一部として、ある程度の溶媒を含み続けうる。全てのまたは殆どの水性溶媒が取り除かれる場合、結果として生じる粒子は、非層状構造を失いうるが、水性流体と接触すると再度発生する。このような粉末は、本発明の両親媒性粒子を再発生させることが可能であり、したがって、そのさらなる特徴を成す。乾燥は、少なくとも1つの保護剤および/または結果として生じる粉末の再懸濁を促進するための、少なくとも1つの薬剤の存在下において行われることが好ましいであろう。適切な薬剤は、既知であり、糖、ポリビニルピロリドンやポリエチレングリコール等の親水性ポリマーを含む。
【0077】
本発明の組成物から生成した粉末は、「自己分散可能」な両親媒性混合物を含むため、それ自体が本発明の組成物である。使用の際、乾燥処理前や乾燥処理中に、この分散が既に行われているため、超微粉砕された乾燥粉末は自己分散する必要がない。このような粉末において、例えば、トレハロース等の物質のマトリックス内に、粒子が個々に存在する。しかしながら、粒子を形成する両親媒性混合物は、高エネルギー細分化やヒドロトロープを必要とせずに分散することが本質的に可能であるため、本願の組成物となる。これは、高エネルギーおよび/またはヒドロトロープの使用により生成しなければならず、かつ、自己分散不可能な両親媒性組成物を含む、既知の粉末組成物とは対照的である。本発明の組成物から生成される粉末前駆体は、粉末の吸入により鼻から投与するのに非常に適している。また、このような粉末は、必要に応じて、任意に担体や補形剤の粉末と混合されうる。
【0078】
本発明の組成物(例えば、固体および/または半固体、または、共溶媒を有するか、もしくは有さない液体組成物)、分散物、粒子および/または乾燥材料は、患者に送達するために適した、いかなる形態にも調合されうる。これは、(例えば、投与の用意が出来ている滅菌された容器内の)事前に調合された分散物、使用前に希釈される濃縮分散物、懸濁または直接投与(例えば、吸入)するための粉末、粉末、固体(半固体)または液体が詰められたカプセル、錠剤、被覆された錠剤、座薬、ゲル、クリーム、軟膏、および、目薬、スプレー(皮膚、口、鼻用スプレー、例えば、ポンプスプレーやエアロゾルスプレー)、拭い薬、パッチ、ペースト、マウスウォッシュ等のその他の局所用の組成物を含む。このような調合に用いられる、適切な担体や補形剤は、関連技術において既知である。
【0079】
本発明の組成物は、エッセンシャルオイル、香料、アロマ等の非医薬品の担体としても適切である。これらの適切な調合や適用についても既知であり、(単体、または、少なくとも1つの化粧品用活性剤、香料等と共に調合された)スキントリートメント、肌、爪、顔、口用クレンザー等の人体用クリーナー/クレンザー、鎮痛剤や解毒用懸濁剤等の体内または体外の毒素の吸収剤、家庭用および人体用の粉末/液体洗剤、バス/シャワージェル、洗浄用液、スプレー、ゲル、フォーム、バスオイル等の化粧品用および家庭用用途も含む。
【0080】
本発明の組成物の自己分散により形成される、または形成可能な両親媒性粒子に対して行われる、さらに好ましい処理工程は、熱処理工程である。これにおいて、両親媒性粒子の分散物を、約75℃〜200℃、好ましくは90℃〜140℃の範囲の温度で、1分間から4時間、一般的には10分間から1時間加熱し、その後、室温に冷却する。この熱処理工程の効果は幾つかあるが、より大きい割合の粒子を非層状相に変換する工程、および/または、粒子径分布を狭くする工程を含む。また、熱処理は、相挙動および粒子径分布の両観点において、分散物における粒子の保管安定性も向上させる。
【0081】
上述した熱処理工程は、活性剤の負荷を高め、本発明の自己分散粒子とするためにも用いられうる。この態様においては、活性物質は、耐熱性を有さなければならず、粒子が分散する水溶性媒体に溶解する。そして、分散物は、上記のように熱処理され、それにより活性剤が粒子中に取り込まれる。これらの粒子は非常に安定しており、その後、ここに記載した方法を含む、適切な方法によって処理され、適切な調合物になりうる。
【0082】
本発明のいかなる態様においても適切であるが、特に熱処理による負荷に適した活性剤には、ステロイド、溶解性の低い弱塩基性薬剤、フィブリン、スタチン、ジピン(dipin)およびアゾールが含まれる。これらの具体的な好ましい例として、プロゲステロン、テストステロン、シンバスタチン、ロバスタチン、ニフェジピン、フェロジピン、ニカルジピン、ニモジピン、イトラコナゾール、フルコナゾール、ミコナゾール、エコナゾール、ボリコナゾール、クロトリマゾール、ケトコナゾール、フルベストラント、フェノフィブレート、オクトレオチド、ウンデカン酸エステル、エストラジオール、コーチゾン、ヒドロコーチゾン、11a−ヒドロキシプロゲステロン、クロフィブラートゲムフィブロジル、ベザフィブレートおよびシプロファイブレートが含まれる。
【0083】
本発明の両親媒性系粒子(本発明の組成物から形成される、または形成可能なものを含む)は、例えば、澱粉または澱粉誘導体、アルキレンオキシド残基を含む共重合体(エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体等)、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)またはそれらのグラフト疎水性修飾誘導体、アラビアゴム、疎水性修飾ポリアクリル酸またはポリアクリラート等の表面活性剤(特にポリマー)により改質されることが望ましい。表面活性ポリマーは、例えば、粒子を所望の作用箇所に選択的に固定したり、標的としたりするために、粒子の表面上に機能的作用を与えるためにも用いられる。特に、ポリアクリル酸、ヒアルロン酸またはキトサンなどのポリマーが、粘液接着性粒子を提供するために使用されうる。このような粒子は、このように局在化する傾向があり、その結果、活性剤の放出に対して、空間的調節を強くする。このような表面改質粒子を有する本発明の組成物は、本発明のさらなる態様を成す。
【0084】
本発明によって形成される粒子の、もう1つの驚くべき利点は、血液脳関門等の生物膜および/またはGITの壁を通過する活性剤の移送を増加させる働きをすることである。したがって、本発明は、経口投与可能な活性剤の生体利用効率を高め、および/または、脳内に作用部位を有する活性剤の効果を高める方法も提供している。この方法は、本発明の組成物、分散物および/または粒子中において適切な活性剤を調合する工程と、その後、これらを患者に投与する工程とを含む。本発明は、血液脳関門交差特性の高い組成物を提供し(実施例17参照)、経口生体利用効率を、食塩水中の活性物質の経口生体利用効率の5倍以上、好ましくは10倍以上に増加させた(実施例20参照)。さらに、(市販の)基準製品と比較しても、(特に、溶解性の低い)活性物質の生体利用効率を高くすることが可能である(実施例18参照)。既存の市販の調製物に対する生体利用効率のこのような増加は、明らかに、大きな利点となっている。
【0085】
ここに記載したものを含む活性剤の多くは、経口投与可能である、および/または、本発明の手段によって経口投与されうる。脳内に作用部位を有する活性剤としては、例えば、脳内感染の治療用の抗感染薬(例えば、抗カビ剤および/または抗生物質)、鎮痛剤を含む、神経系に直接作用する薬剤(特に、オピオイド/麻酔性鎮痛剤)、麻酔剤、抗うつ剤等の気分調整剤(mood controlling agent)、および、パーキンソン病(例えば、ドーパミン類似体)、クロイツフェルト−ヤーコプ病、アルツハイマー病、脳がん(例えば、タキソール誘導体等の抗がん剤)等の脳障害の治療薬が含まれる。痛み、うつ、脳障害または脳がん/脳腫瘍等の症状の治療における、本発明の組成物の(適切な活性剤との)使用、および、そのような症状の治療のための薬物を製造する際の、それらの使用が、本発明のさらなる特徴を成す。
【0086】
本発明の組成物は、活性剤、特に、薬や診断用薬剤などの製薬の移送において非常に効果的である。さらなる特徴において、本発明は、少なくとも1つの活性剤を可溶性にし、カプセル化し、保護し、および/または、安定化させる方法をこのように提供し、上記方法は、ここで述べたように、組成物として活性剤を調合する工程を含む。本発明の組成物が存在しない調合物として調製された、同一の活性剤と比較すると、これらの全ての方法により、それぞれのパラメータが向上する。一般的に、この比較調合物は、標準的な活性剤の医薬調合物であろう。
【0087】
本発明の組成物は、患者に生体内で活性剤を移送する際に、非常に効果的でもある。特に、他の調合物と比較すると、作用部位に作用する投与量の割合が確実に高いため、前記組成物が活性剤の効果を高める作用をする。さらなる特徴において、本発明は、製薬的活性剤に関する取り込み、浸透、移送、循環時間、作用持続性、薬効、治療指数、生体利用効率、患者の利便性、および/または患者のコンプライアンスを高める方法を提供し、前記方法は、ここで述べたように、本発明の組成物または調合物として前記活性剤を投与する工程を含む。このような方法は、一般的に、使用する活性剤の投与量を減らすこと、または、特定の投与量の投与頻度を低くしたり、薬効を高めることを可能にする。加えて、同様の投与量または用法・用量が適用された場合においても、本発明の組成物は利点を有し続けるであろう。さらなる特徴において、本発明は、製薬的活性剤に対して、治療の薬動力学的特性、補形剤のレベルの低下、および/または向上された安定的特性をさらに与える方法を提供し、前記方法は、ここで述べたように、調合物としての前記活性剤を調合する工程、および/または、投与する工程を含む。
【0088】
本発明は、下記の非限定的な実施例、および、添付された図面を参照して例示される。
【実施例1】
【0089】
(実施例1)非層状相領域の特定
DGMO/GDO/水の三成分系(DGMO;ジグリセロールモノオレイン酸エステル;RYLO(商標)PG29、およびGDO;グリセロールジオレイン酸エステル;エマルシファイアーTS−PH008;デンマーク、ダニスコ社製)の相挙動を、小角X線回折(SAXS)を使用し、交差させた偏光子の間での観察と組み合わせて決定した。試料は、正確な割合の脂質成分を混合し、小さなガラス容器中に入れ、その後、水(一般的な試料の重量は1gであった)を加えることにより、調製した。容器をすぐに封止し、試料は、繰り返し遠心分離を行うことによって平衡状態にし、その後、SAXS測定までの少なくとも2週間保管した。図1に示す相図に、結果をまとめた。この図は、3つの非層状液晶(1c)相領域、つまり、逆六方相(HII)および2つの両連続立方相Q224およびQ230を示す。さらなる非層状相が、液体逆ミセルL2相として特定された。75%を超えるDGMO含有量(GDOに対する重量パーセント)において、層状相(Lα)が形成される。HII層は、DGMO/DGOの重量比が、約65/35から40/60の間であり、水含有量が5重量%以上の場合に存在する。非層状HII相および非層状立方Q244相が、相図の水の頂点において、希釈水相と共存することは、重要である。この挙動は、一般的に、非層状1c相粒子の分散物を形成するために必要である。
【実施例2】
【0090】
(実施例2)非層状逆相ナノ粒子
2.1 非層状分散物の調製
非層状粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の分散物を、0.60gのDGMOおよび0.40gのGDOを混合して形成した。これらの成分は、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。均質の脂質の溶融物(0.80g)を、39.2gの脱イオン水中に0.08gのプルロニック(登録商標)F127(米国BASF社製)を含む溶液に、滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台(350rpm)上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。
【0091】
レーザ回折(コールターLS230)を用いて、粒子径を測定した。径の分布は、狭く、単一モードであることが判った。図2は、分散物のcryo−TEM写真を示しており、逆液晶相の濃い(暗い)内部構造を有する粒子が、いくらかの層状粒子(ビヒクル)と共に観察できる。
【0092】
2.2 熱処理
実施例2.1において調製された分散物に対し、熱処理の任意のサイクルを行った。
【0093】
実施例2.1において生成した分散物の試料(25mL)を、オートクレーブ(125℃、20分)し、室温に冷却した。粒子径分布は狭く、cryo−TEMによって検査すると、さらに大きな割合の粒子が、非層状特性(内部逆六方相)を示した。図3に、熱処理前後の粒子径分布を示す。
【0094】
成分:
a DGMO
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0095】
【表1】
【0096】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例3】
【0097】
(実施例3)さらなる組成物
実施例2.1の方法によって第2の組成物を調製することにより、他の安定化剤を添加する効果を検討した。DGMO(1.40g)、GDO(1.15g)およびポリソルベート80(P80;スウェーデン、アポテケット社製)(0.46g)を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。均質の脂質溶融物(2.0g)を、38.0gの脱イオン水中に、滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。
【0098】
レーザ回折(コールターLS230)を用いて、粒子径を測定した。図4に示すように、径分布は、狭く、単一モードであることが判った。
【0099】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0100】
【表2】
【0101】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例4】
【0102】
(実施例4)さらなる組成物
95.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.125g)、GDO(2.125g)およびP80(0.75g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。図5に示すように、処理前後に得られた径分布は、いずれも狭く、単一モードあった。熱処理された試料をcryo−TEMを用いて検査した。複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する、均一の径の非層状ナノ粒子の形成が、図6aおよび6bのcryo−TEM写真に、はっきりと示されている。
【0103】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0104】
【表3】
【0105】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する非層状粒子(>90重量%の両親媒性物質)
この特別な組成物も、非層状相分散物の液体前駆体を調製するのに適している。同一の組成物を、同一の割合で用いた。この組成物を、40℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。その後、液体の調合物を、緩やかに加振しながら、水(5重量%の両親媒性物質)中に分散し、その結果、非層状相粒子の乳白色の分散物を得た。液体前駆体調合物を、10重量%の共溶媒(例えば、エタノール、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、PEG400、グリセロール)で強化し、その後、緩やかに加振しながら、水(5重量%の両親媒性物質)中に分散させ、その結果、非層状lc相粒子の乳白色の分散物を得た。
【実施例5】
【0106】
(実施例5)アニオン性成分(脂肪酸)を含むさらなる組成物
100.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.98g)、GDO(2.0g)、オレイン酸(OA;スウェーデン、アポテケット社製)(0.13g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.553g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。熱処理前後に得られた径分布は、いずれ単一モードあったが、熱処理された試料は、図7に図示したように、狭い分布を示した。また、cryo−TEM写真によって明らかなように、熱処理によって、非層状特性を有する粒子の割合が増加した。図8に、熱処理前後の試料から得られたcryo−TEM写真を示す。cryo−TEM写真において、粒子内に逆六方相構造がはっきりと観察されており、内部構造の高速フーリエ変換(FFT)により、約58Å(±5Å)[5.8nm(±0.5nm)]の六方相空間が示される。
【0107】
成分:
a1 DGMO
a2 OA
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0108】
【表4】
【0109】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例6】
【0110】
(実施例6)アニオン性リン脂質を含むさらなる組成物
4.75gの脱イオン水中の、DGMO(0.150g)、GDO(0.100g)、DOPG(ジオレオイルホスファチジルグリセロール;米国アバンティポーラーリピッズ社製)(0.007g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.0282g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。図9に示すように、加振後に得られた径分布は、狭く、単一モードであった。
【0111】
成分:
a1 DGMO
a2 DOPG
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0112】
【表5】
【0113】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
【実施例7】
【0114】
(実施例7)さらなる組成物
47.5gの脱イオン水中の、DGML(ジグリセロールモノリノール酸エステル;エマルシファイアーTS−PH038;デンマーク、ダニスコ社製)(1.50g)、GDO(1.00g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.277g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。熱処理前後に得られた径分布は、いずれも単一モードであったが、熱処理された試料は、図10に示すように、大きな粒子を含み、狭い分布を示した。また、cryo−TEM写真によって明らかなように、熱処理により、非層状特性を有する粒子の割合が増加した。
【0115】
成分:
a DGML
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0116】
【表6】
【0117】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>95重量%の両親媒性物質)
【実施例8】
【0118】
(実施例8)さらなる組成物
47.5gの脱イオン水中の、DGMO(1.50g)、GDO(1.0g)およびGO−460V(PEG−60ソルビトールテトラオレイン酸エステル;日本、ニッコー化学研究所製)(0.361g)からなる分散物を、実施例2.1および2.2の方法によって調製した。熱処理前後に得られた径分布は、いずれも単一モードであったが、熱処理された試料は、図11に示すように、狭い分布を示した。
【0119】
成分:
a DGMO
b GDO
c GO−460V
【0120】
【表7】
【0121】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>80重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<20重量%の両親媒性物質)の混合物
**逆六方相=逆六方相粒子(>95重量%の両親媒性物質)
この特定の組成物も、逆六方相分散物の液体前駆体を調製するのに十分適している。同一の成分を、同一の割合で、10重量%の共溶媒(例えば、エタノール、N−メチル−1−2−ピロリドン(NMP)、プロピレングリコール、PEG400、グリセロール)を添加して用いた。その後、液体の調合物を、緩やかに加振しながら、水(5重量%の両親媒性物質)中に分散し、その結果、主に逆六方相粒子からなる乳白色の分散物を得た。
【実施例9】
【0122】
(実施例9)高濃縮かつ安定した非層状分散物の調製
24.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.55g)、GDO(2.55g)およびP80(0.9g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。得られた均質の乳白色の分散物を、0.2μmのフィルターにより濾過した。図12に示すように、濾過前後に得られた径分布は、いずれも狭く、単一モードあった。濃縮された非層状相分散物は、室温において、少なくとも2ヶ月間安定的に保管されることが分かった。
【0123】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0124】
【表8】
【0125】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する非層状粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例10】
【0126】
(実施例10)保管安定性
100.0gの脱イオン水中の、DGMO(2.98g)、GDO(2.0g)、オレイン酸(OA)(0.13g)およびプルロニック(登録商標)F127(0.553g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。分散物を、2つのバッチに分け、25℃および4℃において保管した。粒子径分布を、一定の間隔において測定し、4℃および25℃における、少なくとも2ヶ月間の保管の間、元の径分布を維持していたことが分かり、これにより、コロイドおよび保管安定性が良いことが示された。
【0127】
保管の間、非層状粒子と層状粒子との比率が変化しないことが、(cryo−TEMにより)観察された。元の分散物と、4℃および25℃において2ヶ月間保管した後の分散物の粒子径分布を、図13に示す。
【0128】
成分:
a1 DGMO
a2 OA
b GDO
c プルロニック(登録商標)F127
【0129】
【表9】
【0130】
*逆六方相/層状粒子=逆六方相粒子(>70重量%の両親媒性物質)および層状粒子(<30重量%の両親媒性物質)の混合物
38.0gの脱イオン水中の、DGMO(0.934g)、GDO(0.764g)およびP80(0.302g)からなる分散物を、実施例2.1の方法によって調製した。粒子径分布を、一定の間隔において測定し、図14に示すように、25℃における、少なくとも6ヶ月間の保管の間、元の径分布を維持していたことが分かった。
【0131】
成分:
a DGMO
b GDO
c ポリソルベート80
【0132】
【表10】
【0133】
*非層状粒子=複合的に接続された二分子層からなる、無秩序な内部構造を有する粒子(>90重量%の両親媒性物質)
【実施例11】
【0134】
(実施例11)非層状非自己分散系(比較例)
上記実施例(実施例2〜10)は全て、12時間低速度で加振することにより形成した、非層状逆相粒子について示した。cryo−TEMによって明らかであるように、結果として得られた分散物は、平均径がサブミクロンの範囲であり、粒子の大半が非層状である、単一モードで狭い径分布を示す。したがって、分散物は、最低の剪断/エネルギー注入により製造される。
【0135】
実施例2〜10における自己分散系と、脂質を形成する逆相の従来の分散物との相違を強調するために、GMO(Rylo(商標)MG グリセロールモノオレイン酸エステル;デンマーク、ダニスコ社製)(1.50g)、およびプルロニック(登録商標)F127(ジアシルグリセロール成分「b」が不足)の分散物を、実施例2.1の方法(350rpmで12時間加振)によって調製した。GMOとプルロニック(登録商標)F127との比率は、9/1(重量比)であり、全両親媒性物質濃度は、5重量%であった。
【0136】
結果として得られた粗分散物(非層状立方相分散物)は、乳白色をしており、肉眼で見える粒子形状の、不十分に分散した物質を多少含んでいた。バルク分散物の径分布を、図15に示す。径分布は、粒子径が0.1μm〜2.5μmの範囲である、双峰分布である。不十分に分散した物質(肉眼で見える粒子>100μm)は、図15に示すように、径分布には含まれていない。
【実施例12】
【0137】
(実施例12)半固体前駆体の調製
全ての成分を、60℃〜70℃以上において、溶解するまで混合する(澄んだ均質の溶液)。この溶液を、室温またはそれ以下の温度に冷却し、マトリックスを固化させる。半固体前駆体を詰めたゼラチンカプセルを、水中または人工胃腸液中で、20分〜30分以内の間に(米国薬局方にしたがって)完全に分解する。
【0138】
組成物例(重量%):
【0139】
【表11】
【実施例13】
【0140】
(実施例13)表面官能化
DGMO(1.77g)、GDO(1.17g)およびDOPG(0.077g)を含む組成物を、実施例2.1の方法によって調製することにより、粒子表面を官能化した。それらの成分を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。均質の脂質溶融物(2.5g)を、プルロニック(登録商標)F127(0.277g)を含む、22.5gの脱イオン水中に、滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。4重量%のキトサン溶液(0.5重量%の酢酸に溶解したキトサン)0.52gを脂質分散物に添加し、この溶液を1時間平衡状態にすることにより、粒子をキトサン(ノルウェー、プロノバ・バイオポリマー(Pronova Biopolymer)社製)で官能化した。
【0141】
前記非層状キトサン官能化分散物を、さらに処理し、スプレードライヤー(BUCHIミニスプレードライヤー B−290)を用いて、乾燥粉末状前駆体とした。分散物を、トレハロース(スウェーデン、シグマ アルドリッチ社製)の存在下においてスプレー乾燥し、白色の微粒子を得た。
【実施例14】
【0142】
(実施例14)非層状粒子を含むゲルの調製
DGMO(42.5重量%)、GDO(42.5重量%)およびP80(15重量%)の組成物を用いて、実施例2.1の方法によって調製した、1gの20重量%の非層状粒子の分散物に、5mgのヒアルロン酸ナトリウム(スウェーデン、シグマ アルドリッチ社製)を添加することにより、ゲルを含む、自己分散した非層状粒子を調製した。結果として得られた混合物を、低速度で24時間攪拌し、濁った、粘性のあるゲルを形成した。
【実施例15】
【0143】
(実施例15)活性剤の負荷
DGMO(54重量%)、GDO(36重量%)およびプルロニック(登録商標)F127(10重量%)を含む組成物を、実施例2.1の方法により、水中で重量比99倍に分散した。
【0144】
分散物を、複数の試料に分け、下記2つのそれぞれの技術によって、口述する活性剤のそれぞれで負荷した。
i) 活性剤の飽和溶液を、37℃において3日間、回転台の上で緩やかに攪拌することにより、分散物中の粒子と平衡状態にした。
ii) 試料を、過剰な活性剤溶液中に分散させ、125℃において20分間、オートクレーブによって熱処理を行い、37℃において少なくとも1時間、温度平衡状態とした。
【0145】
下記の負荷を行い、取り込まれた活性剤の、両親媒性物質の全重量に対するパーセンテージとして表わした。
【0146】
【表12】
【実施例16】
【0147】
(実施例16)さらなる活性剤の負荷
DGMO(42.5重量%の両親媒性物質)、GDO(42.5重量%の両親媒性物質)およびP80(15重量%の両親媒性物質)を含む組成物を、下記の表に示した割合で、プロポフォール(シグマ アルドリッチ社製)と混合することにより、麻酔活性剤であるプロポフォールを含む非層状粒子分散物を形成した。それらの成分を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることによって、分子的に混合した。(全調合物の重量に対して)2.5%のグリセロール(スウェーデン、アポテケット社製)を含む水溶液中に、均質の脂質/プロポフォールの溶融物を滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台(350rpm)上に置き、12時間加振することにより、均質の分散物が得られた。分散物を、0.2μmのフィルターで濾過し、実施例2.2の方法により熱処理した。結果として得られた分散物の粒子径分布は、図16に示すように、狭く、平均粒子径が100nm〜150nmの範囲である、単一モードであった。cryo−TEMを用いて、プロポフォール負荷粒子の形態を検査した。図17に示すように、cryo−TEM写真により、複合的に接続された二分子層からなる、非層状粒子の内部構造が、プロポフォール負荷後に保持されている(図6との比較において)ことが分かる。プロポフォール負荷分散物は、室温において、少なくとも1ヶ月間、安定的に保管されることが分かった。
【0148】
最終的な非層状粒子/プロポフォール分散物の組成物に関する表
【0149】
【表13】
【実施例17】
【0150】
(実施例17)非層状粒子に負荷されたプロポフォールの薬力学および薬動力学
プロポフォールを含む非層状粒子の分散物を、この場合のプロポフォール濃度が10mg/mLであり、両親媒性物質の濃度が100mg/mLであることを除き、実施例16と同じ方法により、同一の組成物で調製した。非層状粒子プロポフォール分散物を、ラット(オス、SPFスプレーグドーリーラット(Mol:デンマーク、SPRD HAN、M&B Taconic、Lille Skensved))における麻酔剤の持続期間および薬物反応速度について、基準となるフレゼニウスカビ製の市販のプロポフォール乳化調合物(10mgプロポフォール/mL)と比較した。ラットには、体重1kg当たり10mgのプロポフォールを、1つのボラスの静脈注射として、投与した(いずれの場合においても、麻酔剤の誘導は、注射後に直接行われた)。薬力学的パラメータとして、回復時間(立ち上がろうという試みによって示唆された、復原反応時間)を記録した。結果を下記の表中にまとめ、必要とされる麻酔剤の効果を維持するための、非層状粒子プロポフォール分散物の高い効率が示された。
【0151】
薬力学的パラメータに関する表
【0152】
【表14】
【0153】
投与前(投与1日前)、および、投与5分後、15分後、30分後、1時間後、3時間後、6時間後、24時間後に、それぞれ血液試料(0.3mL)を採取した。当業者にとって既知である、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)法により、ラット血漿中のプロポフォール濃度を決定した。プロポフォールの経時的な血漿濃度は、基準の調合物や非層状粒子プロポフォール調合物と、それぞれ類似していた(図18参照)。また、データが、1−コンパートメント薬力学モデル(モデル FitMacoIVBolus;キネティカ4.3、米国ペンシルバニア州、フィラデルフィア、イナフェーズ社製)に一致した時、0から無限大の血中濃度−時間曲線下面積(AUC∞)として評価された、ボラスの静脈注射後の薬物への露出も類似しており、非層状粒子プロポフォールAUC∞は、基準調合物(P=0.670;t−テスト)の96%であった。末期の排泄半減期も、処理間で類似していた(非層状粒子および基準調合物に対して、それぞれ、t1/2β=3.1±0.78時間(SD)および2.5±0.77時間)。しかしながら、曲線(分布相)の最初の半減期は、非層状調合物に対し、わずかに、しかし顕著に(P=0.028;t−テスト)長かった(非層状粒子および基準調合物に対して、それぞれ、t1/2β=0.22±0.05時間および0.15±0.02時間)。最初の半減期の増加により、薬物担体の循環の増加、および/または、薬物の放出速度の減少が示唆されうる。これは、麻酔剤の誘導が行われた後の平均回復時間の延長についても、説明しうる(上記表を参照)。また、非層状粒子によって容易化された、血液脳関門を通じての、プロポフォールのより効果的な吸収についても、説明している。
【実施例18】
【0154】
(実施例18)さらなる活性剤の負荷
室温において一晩中、穏やかに攪拌し、6.8mgの塩酸ベンジダミンと、1gのDGMO/GDO/ポリソルベート80(42.5/42.5/15重量%)の混合物とを分子的に混合することにより、抗炎症局部麻酔剤である塩酸ベンジダミン(スウェーデン、シグマ アルドリッチ社製)を含む、均質の液状溶液を調製した。この溶液を、2.3gの脱イオン水とボルテックスすることにより、非層状粒子の30重量%の脂質分散物を作成した。
【実施例19】
【0155】
(実施例19)ウンデカン酸テストステロン(TEU)の負荷、および、液体非層状相前駆体において調合されたTEUの経口生体利用効率
DGMO(0.75g)、GDO(0.75g)およびP80(0.26g)を含む、液体非層状相前駆混合物中に、0.24gのTEUを溶解することにより、ホルモンであるウンデカン酸テストステロン(TEU)の均質の液体調合物を調製した。この試料を、3時間、穏やかな攪拌によって混合した。ラットのTEUの生体利用効率に関して、TEUを含む液体非層状粒子前駆体を、基準となる、市販のウンデスターテストキャップ(Undestor Testocaps)(スウェーデン、アポテケット社製)と比較した。ラットには、体重1kg当たり100mgの投与量のTEUを含んだ、液体調合物を投与した。投与前、および、投与1時間後、3時間後、5時間後、7時間後、9時間後、12時間後、24時間後に、それぞれ血液試料(0.3mL)を採取した。市販のアッセイを用いて、血漿中のテストステロン(TES)濃度を定量化した。端的に言うと、アッセイの素因は、試料中の未知の量の抗原(TES)が、マイクロタイターウェル上に被覆された抗体の結合部位について、一定量の添加された酵素標識抗原と拮抗する、拮抗的ELISAである。アッセイは、TEUとの交差反応性を示さなかった。非層状ナノ粒子調合物中における、TEUの投与後のTESの血漿濃度は、市販の基準調合物よりも大幅に高かった(図19)。台形法を用いて、濃度より下の部分の面積と、0〜24時間(AUC0〜24時間)の時間曲線との比率として評価された、非層状ウンデカン酸テストステロンの生体利用効率は、ファクター2.7だけ、基準と比べて大幅に(P<0.05;t−テスト)増加した。同様に、Cmaxも、2.4倍(P<0.05;t−テスト)に増加した。
【実施例20】
【0156】
(実施例20)ペプチドオクレオチド(OCT)の負荷および非層状相分散物中に調合されたOCTの経口生体利用効率
20.1 非層状ナノ粒子中におけるオクレオチドの負荷
DGMO(1.767g)、GDO(1.168g)、DOPG(0.077g)、および、OCT(0.00657g)を混合することにより、ペプチド活性オクレオチド(OCT)(ポリペプチド、スウェーデン)を含む非層状粒子の分散物を形成した。これらの成分を、70℃において5分間加熱し、ボルテックスすることにより、分子的に混合した。0.2771gのプルロニック(登録商標)F127および22.5282gの脱イオン水を含む溶液に、均質な脂質/OCT溶融物(2.505g)を滴下して加えた。結果として得られた粗分散物を、振動台(350rpm)上に置き、12時間加振することにより、白色の均質の分散物を得た。その後、分散物を、実施例2.2の方法により熱処理した。0.52gの4重量%のキトサン溶液(0.5%の酢酸に溶解されたキトサン)に、熱処理された分散物を添加し、動物に経口投与するまでの12時間、分散物を平衡状態にした。
【0157】
20.2 動物での研究−一般的な手順
実験の一日目、イソフルラン麻酔の効いたラットの頸静脈中に、シリコンカテーテル(OD、約1mm)を挿入することにより、準備を行った。カテーテルは、皮膚の下に通し、肩甲骨の間から体外に出した。手術の後、ラットには、投与を行うまで、48時間の回復期間を与えた。カテーテルを、回復期間中毎朝、1mMのEDTAを含む、0.9%のNaClですすいだ。
【0158】
約16時間の絶食(水分は摂取可能であった)後の朝に、動物に投与を行い、採血を行った。動物に、投与後は自由に水分を摂取することを許したが、食物は与えなかった。最終の試料採取の後、全ての動物を殺した。
【0159】
20.3 投与
ラットへの投与は、静脈カテーテルを通して静脈内へ、または、先端がプラスチックボール状の強制飼養管によって強制飼養することによって行った。静脈内投与されたラットには、重量1kg当たり0.2mgのOCTを含む、1.0mL/kgの滅菌した食塩水を与え、強制飼養されたラットには、OCTを含む非層状粒子の水中の分散物、または、重量1kg当たり3mgのOCTを含む食塩水(投与体積は、重量1kg当たり10mLと等しい)を与えた。経口投与は、軽いイソフルラン麻酔を掛けた上で行った。
【0160】
20.4 サンプリング
試料1mL当たり500KIEアプロチニン(トラジロール(登録商標))を含む、EDTA処理された試験管における、投与前(投与1日前)、投与10分後、30分後、1時間後、3時間後、6時間後、24時間後に、それぞれ血液試料(0.5mL)を採取した。全ての血液試料を、緩やかに混合し、氷の上に(約10分間)置き、その後、2000gで4℃で10分間遠心分離した。その直後、血漿を新しい試験管に移動し、ドライアイス上に置いた。試料は、分析まで、−80℃で保管した。
【0161】
20.5 分析
全ての血漿試料中のOCT含有量を、拮抗的イムノアッセイにより測定した。端的に言うと、マイクロプレート上に被覆されたOCTペプチドが、血漿試料中に存在するOCTと、溶液中の抗体について拮抗する。溶液中に残った抗体の一部を除去し、固定されたペプチドに結合した画分を定量化する。すると、得られたシグナルは、試料中のOCT濃度に反比例する。
【0162】
血漿OCT濃度データを、台形法により、0から6時間(AUC)の、曲線下面積を算出するために利用した。
【0163】
経口用非層状調合物中における、投与量を修正した、OCTの絶対生体利用効率は、下記のように計算される。
利用効率(F)=(AUCoral×DoseIV)/(AUCIV×Doseoral)×100
20.6 結果
上記の方法にしたがって、静脈内用のOCT溶液をラットに投与し、OCTを含む非層状粒子の分散物および食塩水中のOCTを、経口投与した。血漿OCTの含有量を分析し、OCT血漿濃度を経時的にプロットした。非層状ナノ粒子中における、経口投与したOCTの絶対生体利用効率(F)は、約0.4%で、一方、純粋な食塩水中で送られたOCTは、結果として、約0.04%の生体利用効率を生じた。したがって、非層状分散物は、純粋な食塩水と比較して、OCTの経口生体利用効率に関するファクター10などを高める効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0164】
【図1】図1は、25℃における、DGMO/GDO/水の三成分混合物の相図を示している。
【図2】図2は、DGMO/GDO/プルロニック(登録商標)F127の自己分散試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図3】図3は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/プルロニック(登録商標)F127の試料の粒子径分布を示している。
【図4】図4は、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図5】図5は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図6a】図6aは、熱処理後における、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図6b】図6bは、熱処理後における、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図7】図7は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/OA/プルロニック(登録商標)F127の試料の粒子径分布を示している。
【図8】図8は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/OA/プルロニック(登録商標)F127試料の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図9】図9は、自己分散した、DGMO/GDO/DOPG/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図10】図10は、熱処理前後における、自己分散した、DGML/GDO/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図11】図11は、熱処理前後における、自己分散した、DGMO/GDO/GO−460V試料の粒子径分布を示している。
【図12】図12は、濾過前後における、濃縮(20重量%)され、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図13】図13は、4℃および25℃における2ヶ月間の保管後における、自己分散した、DGMO/GDO/OA/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図14】図14は、25℃における6ヶ月間の保管後の、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図15】図15は、非自己分散型のGMO/プルロニック(登録商標)F127試料の粒子径分布を示している。
【図16】図16は、様々なプロポフォール負荷を有する、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料の粒子径分布を示している。
【図17】図17は、20mgのプロポフォール/mLを含む、自己分散した、DGMO/GDO/ポリソルベート80試料(100mgの両親媒性物質/mL)の低温透過型電子顕微鏡写真を示している。
【図18】図18は、非層状ナノ粒子分散物中に投与されたプロポフォール、または、フレゼニウスカビ製の市販のプロポフォールの血漿濃度を経時的に示している。
【図19】図19は、基準ウンデスターテストキャップ(Undestor Testocaps)および非層状ナノ粒子テストステロンウンデカン酸エステルの、血漿テストステロン濃度をそれぞれ経時的に示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物であって、自己分散し、水性流体に触れると、コロイド状の非層状粒子を生じることが可能である組成物。
【請求項2】
前記非層状粒子が、逆六方相液晶粒子である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
自己分散の際、成分a)、b)およびc)の少なくとも50重量%が、非層状粒子として存在する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コロイド状粒子が、平均粒子径が5μm以下の、単一モードの径分布を有する請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記成分a)が、水と接触する際にミセルまたは層状相を形成する、モノアシル脂質またはモノアシル脂質の混合物からなる請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記成分a)が、少なくとも1つのモノアシルオリゴグリセロールを含む請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記成分b)が、それぞれ、炭素数が12から22であり、不飽和数が0から3であるアシル基を有する少なくとも1つのジアシルグリセロール、または、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物を含む請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記成分b)が、水に接触する際に油またはL2相を形成し、かつジアシルグリセロール、ジアシルグリセロールの混合物、トコフェロール、およびトコフェロールの混合物から選択される少なくとも1つの成分からなる請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記成分a)が、ジグリセロールモノオレイン酸エステルを含み、前記成分b)が、ジグリセロールジオレイン酸エステルを含む請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記成分c)が、高分子細分化剤、ポリオール界面活性剤、タンパク質、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、モノアシル脂質、およびそれらの混合物から選択される請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記成分a)とb)との合計に対する前記成分a)の重量の比率である、a/(a+b)が、0.2から0.9の範囲である請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記成分a)、b)およびc)の合計に対する前記成分c)の重量の比率である、c/(a+b+c)が、0.01から0.3の範囲である請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
荷電した脂質、界面活性剤、高分子固化剤、および高分子表面改質剤から選択される少なくとも1つの成分を、付加的に含む請求項1から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
有機溶媒又はハイドロトロープを含まない請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
15重量%以下の有機溶媒を含む請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
剪断感受性および/または温度感受性活性剤を含む請求項1から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
プロゲステロン、フェノフィブレート、フルベストラント(fulvestrant)、ケトコナゾールベンジダミン、プロポフォール、オクトレオチド、およびテストステロンウンデカン酸から選択される少なくとも1つの活性剤を含む請求項1から16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記成分b)が、ジアシルグリセロールまたはその混合物からなる請求項1から17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
非層状粒子の分散物の形成方法であって、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、および
c)少なくとも1つの細分化剤、
を含む組成物を、水性流体と接触させる工程と、任意に、このように形成された混合物に、低エネルギー攪拌法を施す工程とを含む方法。
【請求項20】
前記組成物が、請求項1から18のいずれかに記載の組成物である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤、任意に水性流体を含む、コロイド状の非層状粒子。
【請求項22】
請求項1から18のいずれかに記載の組成物から形成されたか、又は形成可能な請求項21に記載のコロイド状の非層状粒子。
【請求項23】
前記粒子が、少なくとも10日間、水性溶媒中に分散された状態で、安定的に保管されている請求項21または22に記載のコロイド状の非層状粒子。
【請求項24】
細分化剤c)が、少なくとも1つのモノアシル脂質を含む請求項21から23のいずれかに記載のコロイド状の非層状粒子。
【請求項25】
非層状粒子の分散物を調製するためのキットであって、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物を含むキット。
【請求項26】
請求項1から18のいずれかに記載の組成物を含む請求項25に記載のキット。
【請求項27】
請求項1から18のいずれかに記載の組成物と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体又は補形剤とを含む医薬調合物。
【請求項28】
前記調合物が、請求項1から16のいずれかに記載されている、少なくとも50重量%の組成物と、前記組成物中に存在するいかなる溶媒も含めた、10重量%以下の全有機溶媒と、残りは水性溶媒および/または医薬的に許容可能な薬剤調合物とからなる請求項27に記載の医薬調合物。
【請求項29】
経口投与に適する請求項27または28に記載の医薬調合物。
【請求項1】
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物であって、自己分散し、水性流体に触れると、コロイド状の非層状粒子を生じることが可能である組成物。
【請求項2】
前記非層状粒子が、逆六方相液晶粒子である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
自己分散の際、成分a)、b)およびc)の少なくとも50重量%が、非層状粒子として存在する請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記コロイド状粒子が、平均粒子径が5μm以下の、単一モードの径分布を有する請求項1から3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記成分a)が、水と接触する際にミセルまたは層状相を形成する、モノアシル脂質またはモノアシル脂質の混合物からなる請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記成分a)が、少なくとも1つのモノアシルオリゴグリセロールを含む請求項1から5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記成分b)が、それぞれ、炭素数が12から22であり、不飽和数が0から3であるアシル基を有する少なくとも1つのジアシルグリセロール、または、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物を含む請求項1から6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記成分b)が、水に接触する際に油またはL2相を形成し、かつジアシルグリセロール、ジアシルグリセロールの混合物、トコフェロール、およびトコフェロールの混合物から選択される少なくとも1つの成分からなる請求項1から7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記成分a)が、ジグリセロールモノオレイン酸エステルを含み、前記成分b)が、ジグリセロールジオレイン酸エステルを含む請求項1から8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記成分c)が、高分子細分化剤、ポリオール界面活性剤、タンパク質、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、モノアシル脂質、およびそれらの混合物から選択される請求項1から9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記成分a)とb)との合計に対する前記成分a)の重量の比率である、a/(a+b)が、0.2から0.9の範囲である請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記成分a)、b)およびc)の合計に対する前記成分c)の重量の比率である、c/(a+b+c)が、0.01から0.3の範囲である請求項1から10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
荷電した脂質、界面活性剤、高分子固化剤、および高分子表面改質剤から選択される少なくとも1つの成分を、付加的に含む請求項1から12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
有機溶媒又はハイドロトロープを含まない請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
15重量%以下の有機溶媒を含む請求項1から13のいずれかに記載の組成物。
【請求項16】
剪断感受性および/または温度感受性活性剤を含む請求項1から15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
プロゲステロン、フェノフィブレート、フルベストラント(fulvestrant)、ケトコナゾールベンジダミン、プロポフォール、オクトレオチド、およびテストステロンウンデカン酸から選択される少なくとも1つの活性剤を含む請求項1から16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記成分b)が、ジアシルグリセロールまたはその混合物からなる請求項1から17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
非層状粒子の分散物の形成方法であって、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、および
c)少なくとも1つの細分化剤、
を含む組成物を、水性流体と接触させる工程と、任意に、このように形成された混合物に、低エネルギー攪拌法を施す工程とを含む方法。
【請求項20】
前記組成物が、請求項1から18のいずれかに記載の組成物である請求項19に記載の方法。
【請求項21】
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤、任意に水性流体を含む、コロイド状の非層状粒子。
【請求項22】
請求項1から18のいずれかに記載の組成物から形成されたか、又は形成可能な請求項21に記載のコロイド状の非層状粒子。
【請求項23】
前記粒子が、少なくとも10日間、水性溶媒中に分散された状態で、安定的に保管されている請求項21または22に記載のコロイド状の非層状粒子。
【請求項24】
細分化剤c)が、少なくとも1つのモノアシル脂質を含む請求項21から23のいずれかに記載のコロイド状の非層状粒子。
【請求項25】
非層状粒子の分散物を調製するためのキットであって、
a)少なくとも1つのモノアシル脂質と、
b)少なくとも1つのジアシルグリセロール、少なくとも1つのトコフェロール、またはそれらの混合物、
c)少なくとも1つの細分化剤、
および、任意に活性剤を含む組成物を含むキット。
【請求項26】
請求項1から18のいずれかに記載の組成物を含む請求項25に記載のキット。
【請求項27】
請求項1から18のいずれかに記載の組成物と、少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体又は補形剤とを含む医薬調合物。
【請求項28】
前記調合物が、請求項1から16のいずれかに記載されている、少なくとも50重量%の組成物と、前記組成物中に存在するいかなる溶媒も含めた、10重量%以下の全有機溶媒と、残りは水性溶媒および/または医薬的に許容可能な薬剤調合物とからなる請求項27に記載の医薬調合物。
【請求項29】
経口投与に適する請求項27または28に記載の医薬調合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2008−509120(P2008−509120A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524396(P2007−524396)
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003056
【国際公開番号】WO2006/013369
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(505345749)カムルス エービー (17)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003056
【国際公開番号】WO2006/013369
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(505345749)カムルス エービー (17)
【Fターム(参考)】
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