説明

非接地電源の絶縁状態検出回路

【課題】地絡抵抗の警報レベルを小さい抵抗値に設定することができる非接地電源の絶縁状態検出回路を提供する。
【解決手段】フライングキャパシタC1が負端子側の地絡抵抗RLnに応じた電荷量で充電される第2充電回路の、負端子側の地絡抵抗RLnの抵抗値が地絡抵抗しきい値αであるときの充電抵抗値(R1+Rb+α)を、フライングキャパシタC1が直流電源Bの電圧に応じた電荷量で充電される第1充電回路の充電抵抗値(R1+R2)と一致させる。また、フライングキャパシタC1が正端子側の地絡抵抗RLpに応じた電荷量で充電される第3充電回路の、正端子側の地絡抵抗RLpが地絡抵抗しきい値βであるときの充電抵抗値(β+Ra+R2)を、第1充電回路の充電抵抗値と一致させる。第2及び第3充電回路の充電抵抗値が抵抗Ra,Rbの抵抗値を含むことから、その分だけ地絡抵抗しきい値α,βを低い抵抗値にすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接地電源の接地電位部に対する地絡や絶縁状態を検出する回路に係り、特に、フライングキャパシタを充電させてその充電電圧により地絡や絶縁状態を検出する非接地電源の絶縁状態検出回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、推進用エネルギーとして電力を利用する車両においては、高圧化(例えば200V)された直流電源を車体から絶縁して非接地電源とするのが通常である。このような非接地電源の接地電位部に対する地絡や絶縁状態の検出には、フライングキャパシタを用いた検出回路が用いられる。
【0003】
この検出回路では、内部のスイッチを切り換えつつ、フライングキャパシタを、接地電位部から絶縁した直流電源の電源電圧に応じた電荷量、直流電源の正端子側の地絡抵抗に応じた電荷量、及び、直流電源の負端子側の地絡抵抗に応じた電荷量でそれぞれ充電させる。そして、検出回路に接続したコントローラ側において、各充電電圧を計測し、その計測値に基づいて正端子側及び負端子側の地絡抵抗を算出することで、地絡や絶縁状態を検出することができる。
【0004】
ところで、近年では、フライングキャパシタとして小型で高容量のセラミックスコンデンサを用いることが望まれている。このセラミックスコンデンサについては、DCバイアスによって静電容量が大きく変わることが知られている。そこで、DCバイアスによる静電容量変化の影響を排除するために、地絡抵抗が警報レベルの値であるときのセラミックスコンデンサの充電電圧が、直流電源の電源電圧に応じた電荷量による充電電圧と等しくなるように、検出回路を構成することが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−281986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した検出回路では、地絡抵抗が警報レベルの値であるときのセラミックスコンデンサの充電電圧を、直流電源の電源電圧に応じた電荷量による充電電圧と等しくするために、直流電源でセラミックスコンデンサを充電する充電回路上に、抵抗値が同じ2つの抵抗を設けている。そして、2つの抵抗のうち一方で、直流電源の正端子側の地絡抵抗に応じた電荷量でセラミックスコンデンサを充電する充電回路の一部を構成させている。また、2つの抵抗のうち他方で、直流電源の負端子側の地絡抵抗に応じた電荷量でセラミックスコンデンサを充電する充電回路の一部を構成させている。
【0007】
このような構成であることから、上述した検出回路では、正端子側と負端子側の各地絡抵抗の警報レベルが必然的に、直流電源でセラミックスコンデンサを充電する充電回路上に2つ設けた抵抗の抵抗値と同じ値に設定されることになる。この2つの抵抗の抵抗値は、地絡抵抗を求めるためにセラミックスコンデンサの充電電圧を計測する際の直流電源に対するセラミックスコンデンサの絶縁を確保するために、それぞれ大きな値にすることが要求される。そのため、地絡抵抗の警報レベルも自ずと大きい抵抗値に設定せざるを得なくなる。
【0008】
本発明は前記事情に鑑みなされたもので、本発明の目的は、上述したセラミックスコンデンサのようなフライングキャパシタとして使用するコンデンサの充電電圧を計測する際の直流電源に対する絶縁性を確保しつつ、地絡抵抗の警報レベルを小さい抵抗値に設定することができる非接地電源の絶縁状態検出回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路は、
第1抵抗及び第2抵抗とコンデンサとの直列回路を含み、接地電位部から絶縁した直流電源の正端子及び負端子の間を予定時間に亘って接続して、前記直流電源の電源電圧に応じた電荷量で前記コンデンサを充電させる第1充電回路と、
前記第1抵抗と前記コンデンサとの直列回路を含み、前記正端子側の主回路配線と接地電位部との間を前記予定時間に亘って接続して、前記負端子側の地絡抵抗に応じた電荷量で前記コンデンサを充電させる第2充電回路と、
前記第2抵抗と前記コンデンサとの直列回路を含み、前記負端子側の主回路配線と接地電位部との間を前記予定時間に亘って接続して、前記正端子側の地絡抵抗に応じた電荷量で前記コンデンサを充電させる第3充電回路とを有し、
前記負端子側の地絡抵抗の抵抗値が、警報レベルの絶縁状態に相当する負端子側の地絡警報しきい値であるときに、前記第1充電回路で前記コンデンサが充電される際の充電抵抗値と前記第2充電回路で前記コンデンサが充電される際の充電抵抗値とが一致すると共に、
前記正端子側の地絡抵抗の抵抗値が、警報レベルの絶縁状態に相当する正端子側の地絡警報しきい値であるときに、前記第1充電回路の前記充電抵抗値と前記第3充電回路で前記コンデンサが充電される際の充電抵抗値とが一致する、
非接地電源の絶縁状態検出回路において、
前記第2充電回路及び前記第3充電回路のうち少なくとも一方は、前記第1充電回路中に存在しない調整抵抗をさらに含んでおり、
前記調整抵抗は、前記第2充電回路及び前記第3充電回路のうち少なくとも一方の前記直列回路に対して直列に接続されている、
ことを特徴とする非接地電源の絶縁状態検出回路。
【0010】
請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路によれば、第1乃至第3充電回路によって充電したコンデンサの充電電圧を計測する際の直流電源からの絶縁性を確保するために、第1充電回路に含まれる第1及び第2抵抗の各抵抗値は高い値に設定される。したがって、負端子側の地絡抵抗の抵抗値が対応する地絡警報しきい値であるときの第2充電回路の充電抵抗や、正端子側の地絡抵抗の抵抗値が対応する地絡警報しきい値であるときの第3充電回路の充電抵抗も、第1充電回路の充電抵抗と同じく高い抵抗値となる。
【0011】
そして、第2充電回路と第3充電回路の少なくとも一方は、第1抵抗又は第2抵抗とコンデンサとの直列回路に直列に接続した調整抵抗を含んでいる。このため、第2充電回路と第3充電回路の少なくとも一方については、調整抵抗がない場合に比べて、調整抵抗の抵抗値の分だけ地絡警報しきい値を下げても、第1充電回路の充電抵抗と同じ充電抵抗値を確保できるようになる。よって、コンデンサの充電電圧を計測する際の直流電源に対する絶縁性を確保しつつ、地絡警報しきい値によって定義される地絡抵抗の警報レベルを小さい抵抗値に設定することができる。
【0012】
また、請求項2に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路は、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路において、前記第2充電回路及び前記第3充電回路がそれぞれ前記調整抵抗を含んでおり、前記第1抵抗と前記第2抵抗とが同一の抵抗値であり、前記第2充電回路の前記調整抵抗と前記第3充電回路の前記調整抵抗とが同一の抵抗値であることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路によれば、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路において、第2充電回路と第3充電回路の双方の直列回路に、同じ抵抗値の調整回路をそれぞれ直列接続し、かつ、第2充電回路の直列回路が有する第1抵抗と第3充電回路の直列回路が有する第2抵抗とを同じ抵抗値にしている。
【0014】
したがって、第2充電回路の充電抵抗値と第1抵抗及び調整抵抗の抵抗値とによって定まる、直流電源の負端子側の地絡抵抗に対応する地絡警報しきい値と、第3充電回路の充電抵抗値と第2抵抗及び調整抵抗の抵抗値とによって定まる、直流電源の正端子側の地絡抵抗に対応する地絡警報しきい値とが、同じ値となる。
【0015】
よって、コンデンサの充電電圧を計測する際の直流電源に対する絶縁性を確保しつつ、地絡警報しきい値によって定義される地絡抵抗の警報レベルを、直流電源の正端子側及び負端子側の双方とも、同じ値の小さい抵抗値に設定することができる。
【0016】
さらに、請求項3に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路は、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路において、前記第2充電回路又は前記第3充電回路が前記調整抵抗を含んでいることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路によれば、請求項1に記載した本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路において、第2充電回路又は第3充電回路の直列回路にのみ調整抵抗を直列に接続している。したがって、調整抵抗を直列回路に接続した方の充電回路の充電抵抗値によって定義される地絡警報しきい値と、調整抵抗を直列回路に接続していない方の充電回路の充電抵抗値によって定義される地絡警報しきい値とが、異なる値になる。
【0018】
よって、コンデンサの充電電圧を計測する際の直流電源に対する絶縁性を確保しつつ、地絡警報しきい値によって定義される地絡抵抗の警報レベルを、直流電源の正端子側及び負端子側のうち任意の一方について選択的に、小さい抵抗値に設定することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の非接地電源の絶縁状態検出回路によれば、コンデンサの充電電圧を計測する際の直流電源に対する絶縁性を確保しつつ、地絡抵抗の警報レベルを小さい抵抗値に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る地絡検出回路を有する地絡検出ユニットを示す回路図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る地絡検出回路を有する地絡検出ユニットを示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る地絡検出回路を有する地絡検出ユニットを示す回路図である。本実施形態の地絡検出回路は、車両(図示せず)の車体等の接地電位部から絶縁された直流電源Bの正端子側の主回路配線1pや負端子側の主回路配線1nにおける地絡や絶縁状態を検出するための回路である。
【0023】
図1中引用符号RLpは正端子側の地絡抵抗、RLnは負端子側の地絡抵抗であり、それぞれ、正端子側の主回路配線1pや負端子側の主回路配線1nに地絡が発生した場合の仮想抵抗である。
【0024】
主回路配線1p,1nの地絡や絶縁状態を検出する地絡検出ユニット10は、フライングキャパシタC1(請求項中のコンデンサに相当)を含む地絡検出回路(請求項中の非接地電源の絶縁状態検出回路に相当)11と、フライングキャパシタC1の充電電圧を計測するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と略記する。)15とを有している。フライングキャパシタC1は、本実施形態では、セラミックスコンデンサを用いている。
【0025】
地絡検出回路11は、フライングキャパシタC1の他、フライングキャパシタC1を直流電源Bの正極及び負極にそれぞれ選択的に接続するスイッチS1,S2と、フライングキャパシタC1をマイコン15及び接地電位部に選択的に接続するスイッチS3,S4とを有している。フライングキャパシタC1とスイッチS1,S2との間には、抵抗R1,R2(請求項中の第1抵抗、第2抵抗に相当)がそれぞれ直列に接続されている。
【0026】
なお、後述するマイコン15によってフライングキャパシタC1の充電電圧を計測する際の直流電源Bに対する絶縁性を確保するために、抵抗R1,R2には、同じ値の高い抵抗値の抵抗が使用される。
【0027】
マイコン15は直流電源Bよりも低い低圧系の電源(図示せず)によって動作するもので、直流電源Bはマイコン15の接地電位からも絶縁されている。各スイッチS1〜S4は、例えば光MOSFETで構成されており、直流電源Bから絶縁してマイコン15によりオンオフ制御できるようになっている。
【0028】
マイコン15は(アナログ)スイッチ又はサンプルホールド回路(以下、「スイッチ等」と称する。)Saを介してスイッチS3と接続されている。スイッチ等SaとスイッチS3との接続点は、抵抗R4を介して接地されており、スイッチS4と接地電位部との間には、電流方向切替回路Yが接続されている。また、フライングキャパシタC1の一端(図1中上方の極)側のスイッチS1,S3は直列接続されており、両者の接続点とフライングキャパシタC1の一端との間には、電流方向切替回路Xが接続されている。
【0029】
電流方向切替回路Xは並列回路であり、その一つは、スイッチS1からフライングキャパシタC1の一端に向けて順方向となるダイオードD0と抵抗R1の直列回路で構成され、他の一つは、スイッチS3からフライングキャパシタC1の一端に向けて順方向となるダイオードD1と抵抗Ra(請求項中の調整抵抗に相当)の直列回路で構成され、最後の一つは、フライングキャパシタC1の一端からスイッチS3に向けて順方向となるダイオードD2と抵抗R3の直列回路で構成されている。
【0030】
また、電流方向切替回路Yも並列回路であり、その一つは、スイッチS4から接地電位部に向けて順方向となるダイオードDaと抵抗Rb(請求項中の調整抵抗に相当)との直列回路で構成され、もう一つは、接地電位部からスイッチS4に向けて順方向となるダイオードDbと抵抗R5の直列回路で構成されている。抵抗Rbの抵抗値は、電流方向切替回路Xの抵抗Raと同じ抵抗値である。
【0031】
上述した地絡検出ユニット10では、地絡や絶縁状態を検出する際に、まず、マイコン15の制御により、予め決定しておいた予定時間に亘って、スイッチS1,S2をオンさせると共にスイッチS3,S4をオフさせる。ここで、予定時間とは、フライングキャパシタC1が完全に充電されるのに要する時間よりも短い時間である。
【0032】
これにより、直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、スイッチS1、ダイオードD0、抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端(図1中上方の極)、他端(同下方の極)、抵抗R2、スイッチS2、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。以後、この充電回路を第1充電回路と称する。
【0033】
そして、この第1充電回路において、フライングキャパシタC1を直流電源Bの電圧に応じた電荷量で充電する。この充電により、フライングキャパシタC1の一端が正極、他端が負極となる。
【0034】
続いて、マイコン15の制御により、スイッチS1,S2をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせる。これにより、フライングキャパシタC1の正極が、ダイオードD2、抵抗R3、及び、スイッチS3を介してスイッチ等Saに接続され、負極がスイッチS4、ダイオードDb、及び、抵抗R5を介して接地電位部に接続される。そして、フライングキャパシタC1の充電電圧を抵抗R3,R4で分圧したうちの抵抗R3の両端電圧の差に相当する電位が、スイッチ等Saを介してマイコン15の第1A/D変換ポートA/D1に入力されて計測される。この計測値と、抵抗R3,R4の分圧比とから、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1をマイコン15で計測させる。
【0035】
そして、フライングキャパシタC1を完全に放電させた後、マイコン15の制御により、上述した予定時間に亘って、スイッチS1,S4をオンさせると共にスイッチS2,S3をオフさせる。これにより、直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、スイッチS1、ダイオードD0、抵抗R1、フライングキャパシタC1の一端、他端、スイッチS4、ダイオードDa、抵抗Rb、(接地電位部、)負端子側の地絡抵抗RLn、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。以後、この充電回路を第2充電回路と称する。
【0036】
そして、この第2充電回路において、フライングキャパシタC1を、負端子側の地絡抵抗RLnに応じた電荷量で充電する。この充電により、フライングキャパシタC1の一端が正極、他端が負極となる。
【0037】
続いて、図1に示すマイコン15の制御により、スイッチS1,S2をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせて、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1の計測の際と同じ計測回路を形成する。そして、この計測回路を用いて、負端子側の地絡抵抗RLnに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1−をマイコン15で計測させる。
【0038】
そして、フライングキャパシタC1を完全に放電させた後、マイコン15の制御により、上述した予定時間に亘って、スイッチS2,S3をオンさせると共にスイッチS1,S4をオフさせる。これにより、直流電源Bの正極から、正端子側の主回路配線1p、正端子側の地絡抵抗RLp、(接地電位部、)抵抗R4、スイッチS3、ダイオードD1、抵抗Ra、フライングキャパシタC1の一端、他端、抵抗R2、スイッチS2、及び、負端子側の主回路配線1nを経て、直流電源Bの負極に至る充電回路を形成する。以後、この充電回路を第3充電回路と称する。
【0039】
そして、この第3充電回路において、フライングキャパシタC1を、正端子側の地絡抵抗RLpに応じた電荷量で充電する。この充電により、フライングキャパシタC1の一端が正極、他端が負極となる。
【0040】
続いて、マイコン15の制御により、スイッチS1,S2,S5をオフさせると共にスイッチS3,S4をオンさせて、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1の計測の際や、負端子側の地絡抵抗RLnに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1−の計測の際と同じ計測回路を形成する。そして、この計測回路を用いて、正端子側の地絡抵抗RLpに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1+をマイコン15で計測させる。そして、フライングキャパシタC1を完全に放電させる。
【0041】
ところで、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1、負端子側の地絡抵抗RLnに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1−、及び、正端子側の地絡抵抗RLpに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1+と、正端子側の地絡抵抗RLpと負端子側の地絡抵抗RLnとの並列合成抵抗値R=(RLp+RLn)/(RLp×RLn)との間には、下記関係式
(RLp+RLn)/(RLp×RLn)={(Vc1+)+(Vc1−)}/Vc1
なる関係がある。
【0042】
そこで、マイコン15は、上記の関係式を用いて正端子側と負端子側の地絡抵抗RLp,RLnの並列合成抵抗値を算出し、直流電源Bの地絡や絶縁状態を検出することができる。
【0043】
なお、本実施形態の地絡検出回路11でフライングキャパシタC1として用いているセラミックスコンデンサは、DCバイアスによって静電容量が大きく変わる。そこで、DCバイアスによる静電容量変化の影響を排除するために、本実施形態では、第1乃至第3充電回路でフライングキャパシタC1がそれぞれ充電される際の充電抵抗値に、次のような関係が成り立つように、地絡検出回路11を構成している。
【0044】
即ち、負端子側の地絡抵抗RLnの抵抗値が警報レベルの絶縁状態に相当する負端子側の地絡抵抗しきい値であるときの第2充電回路の充電抵抗値が、第1充電回路の充電抵抗値と一致するように構成している。また、正端子側の地絡抵抗RLpの抵抗値が警報レベルの絶縁状態に相当する正端子側の地絡抵抗しきい値であるときの第3充電回路の充電抵抗値が、第1充電回路の充電抵抗値と一致するように構成している。
【0045】
ここで、第1充電回路の充電抵抗値は、第1充電回路上に直列に存在する抵抗R1及び抵抗R2の各抵抗値の合計となる。一方、第2充電回路の充電抵抗値は、第2充電回路上に直列に存在する抵抗R1、抵抗Rb、負端子側の地絡抵抗RLnの各抵抗値の合計となる。そして、負端子側の地絡抵抗RLnの抵抗値が負端子側の地絡抵抗しきい値αである場合の第2充電回路の充電抵抗値と第1充電回路の充電抵抗値とが同じであることから、
R1+R2=R1+Rb+α
となり、整理すると、
R2=Rb+α
となる。
【0046】
したがって、本実施形態の地絡検出回路11では、マイコン15によってフライングキャパシタC1の充電電圧を計測する際の直流電源Bに対する絶縁性を確保するために、抵抗R2の抵抗値を高くしても、負端子側の地絡抵抗しきい値αを、抵抗R2の抵抗値から抵抗Rbの抵抗値を差し引いた低い抵抗値に設定することができる。
【0047】
また、第3充電回路の充電抵抗値は、第3充電回路上に直列に存在する正端子側の地絡抵抗RLp、抵抗R4、抵抗Ra、抵抗R2の各抵抗値の合計となる。そして、正端子側の地絡抵抗RLpが正端子側の地絡抵抗しきい値βである場合の第3充電回路の充電抵抗値と第1充電回路の充電抵抗値とが同じであることから、
R1+R2=β+R4+Ra+R2
となり、整理すると、
R1=β+R4+Ra
となる。
【0048】
ここで、第3充電回路上の抵抗R4は、抵抗R1、抵抗R2、抵抗Ra、及び、正端子側の地絡抵抗しきい値βと比較すると非常に小さく無視できるので、さらに整理すると、
R1=β+Ra
となる。
【0049】
したがって、本実施形態の地絡検出回路11では、マイコン15によってフライングキャパシタC1の充電電圧を計測する際の直流電源Bに対する絶縁性を確保するために、抵抗R1の抵抗値を高くしても、正端子側の地絡抵抗しきい値βを、抵抗R1の抵抗値から抵抗Raの抵抗値を差し引いた低い抵抗値に設定することができる。
【0050】
なお、抵抗R1と抵抗R2とは同じ抵抗値であり、抵抗Raと抵抗Rbも同じ抵抗値であることから、本実施形態の地絡検出回路11では、負端子側の地絡抵抗しきい値αと正端子側の地絡抵抗しきい値βとが同じ抵抗値となる。このため、直流電源Bの正端子側も負端子側も、共に、直流電源Bに対するフライングキャパシタの絶縁性確保のため高抵抗値となる抵抗R1,R2に比べて、地絡抵抗しきい値α,βを低い抵抗値に設定することができる。これにより、直流電源Bに対するフライングキャパシタの絶縁性を確保しつつ、低い抵抗値を基準として地絡や絶縁状態を検出することができる。
【0051】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図2は本発明の第2実施形態に係る地絡検出回路を有する地絡検出ユニットを示す回路図である。本実施形態の地絡検出ユニット10Aでは、第1実施形態の地絡検出ユニット10の地絡検出回路11に代えて地絡検出回路11Aを設けている。地絡検出回路11Aを除く地絡検出ユニット10Aの構成は、第1実施形態の地絡検出ユニット10の地絡検出回路11を除く構成と同じである。
【0052】
地絡検出回路11Aは、スイッチS1,S3の接続点とフライングキャパシタC1の一端との間に接続した電流方向切替回路Xaの構成を、第1実施形態の地絡検出回路11の電流方向切替回路Xとは若干変えている。電流方向切替回路Xaを除く地絡検出回路11Aの構成は、第1実施形態の地絡検出回路11の地絡検出回路11を除く構成と同じである。
【0053】
そして、電流方向切替回路Xaは、第1実施形態の電流方向切替回路XにおいてダイオードD1に直列に接続した抵抗Raを省略して構成している。
【0054】
このように構成された地絡検出回路11Aを有する本実施形態の地絡検出ユニット10Aでは、マイコン15が、第1実施形態の地絡検出ユニット10において行ったのと同様のスイッチS1〜S4の切替制御を行う。
【0055】
その結果、マイコン15が予定時間に亘ってスイッチS1,S2をオンさせると共にスイッチS3,S4をオフさせて形成する第1充電回路において、フライングキャパシタC1が直流電源Bの電圧に応じた電荷量で充電される。その後、マイコン15がスイッチS1,S2をオフさせスイッチS3,S4をオンさせることで、直流電源Bの電圧に応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1がマイコン15で計測される。
【0056】
また、フライングキャパシタC1を完全に放電させた後、マイコン15が予定時間に亘ってスイッチS1,S4をオンさせると共にスイッチS2,S3をオフさせて形成する第2充電回路において、フライングキャパシタC1が、負端子側の地絡抵抗RLnに応じた電荷量で充電される。その後、マイコン15がスイッチS1,S2をオフさせスイッチS3,S4をオンさせることで、負端子側の地絡抵抗RLnに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1−がマイコン15で計測される。
【0057】
さらに、フライングキャパシタC1を完全に放電させた後、マイコン15が予定時間に亘ってスイッチS2,S3をオンさせると共にスイッチS1,S4をオフさせて形成する第3充電回路において、フライングキャパシタC1が、正端子側の地絡抵抗RLpに応じた電荷量で充電される。その後、マイコン15がスイッチS1,S2をオフさせスイッチS3,S4をオンさせることで、正端子側の地絡抵抗RLpに応じたフライングキャパシタC1の充電電圧Vc1+がマイコン15で計測される。
【0058】
そして、本実施形態では、第3充電回路の充電抵抗値が、第3充電回路上に直列に存在する正端子側の地絡抵抗RLp、抵抗R4、抵抗R2の各抵抗値の合計となる。したがって、正端子側の地絡抵抗RLpが正端子側の地絡抵抗しきい値βである場合の第3充電回路の充電抵抗値が、第1充電回路の充電抵抗値と同じであるとすると、
R1+R2=β+R4+R2
となり、整理すると、
R1=β+R4
となる。
【0059】
ここで、第3充電回路上の抵抗R4は、抵抗R1、抵抗R2、及び、正端子側の地絡抵抗しきい値βと比較すると非常に小さく無視できるので、さらに整理すると、
R1=β
となる。
【0060】
したがって、本実施形態の地絡検出回路11では、抵抗Rbを有する第2充電回路上に存在する負端子側の地絡抵抗RLnについては、対応する負端子側の地絡抵抗しきい値αを、高抵抗値とされる抵抗R1や抵抗R2よりも抵抗Rbの抵抗値を差し引いた分だけ低い抵抗値に設定することができる。一方、抵抗Raを省略した第3充電回路上に存在する正端子側の地絡抵抗RLpについては、対応する正端子側の地絡抵抗しきい値βが、高抵抗値とされる抵抗R1と同じ抵抗値に設定されることになる。
【0061】
よって、負端子側の地絡抵抗RLnに対応する負端子側の地絡抵抗しきい値αと、正端子側の地絡抵抗RLpに対応する正端子側の地絡抵抗しきい値βとを、それぞれ個別の値として、正端子側と負端子側とで地絡や絶縁状態の検出感度を異ならせることができる。
【0062】
なお、第1実施形態の電流方向切替回路Xから抵抗Raを省略して電流方向切替回路Xaを構成する代わりに、第1実施形態の電流方向切替回路Yに代えて、電流方向切替回路Yから抵抗Rbを省略した電流方向切替回路を用いるようにしてもよい。
【0063】
そのように構成した場合にも、低い抵抗値にできるのが負端子側の地絡抵抗しきい値αから正端子側の地絡抵抗しきい値βに変わる点を除いて、第2実施形態の地絡検出回路11Aと同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0064】
1n 主回路配線
1p 主回路配線
10 地絡検出ユニット
10A 地絡検出ユニット
11 地絡検出回路
11A 地絡検出回路
15 マイクロコンピュータ
A/D1 A/D変換ポート
B 直流電源
C1 フライングキャパシタ(コンデンサ)
D0 ダイオード
D1 ダイオード
D2 ダイオード
Da ダイオード
Db ダイオード
RLn 負端子側の地絡抵抗
RLp 正端子側の地絡抵抗
R1 抵抗(第1抵抗、第1充電回路、第2充電回路)
R2 抵抗(第2抵抗、第1充電回路、第3充電回路)
R3 抵抗
R4 抵抗(第3充電回路)
R5 抵抗
Ra 抵抗(調整抵抗、第3充電回路)
Rb 抵抗(調整抵抗、第2充電回路)
S1 スイッチ
S2 スイッチ
S3 スイッチ
S4 スイッチ
Sa (アナログ)スイッチ又はサンプルホールド回路
X 電流方向切替回路
Xa 電流方向切替回路
Y 電流方向切替回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1抵抗及び第2抵抗とコンデンサとの直列回路を含み、接地電位部から絶縁した直流電源の正端子及び負端子の間を予定時間に亘って接続して、前記直流電源の電源電圧に応じた電荷量で前記コンデンサを充電させる第1充電回路と、
前記第1抵抗と前記コンデンサとの直列回路を含み、前記正端子側の主回路配線と接地電位部との間を前記予定時間に亘って接続して、前記負端子側の地絡抵抗に応じた電荷量で前記コンデンサを充電させる第2充電回路と、
前記第2抵抗と前記コンデンサとの直列回路を含み、前記負端子側の主回路配線と接地電位部との間を前記予定時間に亘って接続して、前記正端子側の地絡抵抗に応じた電荷量で前記コンデンサを充電させる第3充電回路とを有し、
前記負端子側の地絡抵抗の抵抗値が、警報レベルの絶縁状態に相当する負端子側の地絡警報しきい値であるときに、前記第1充電回路で前記コンデンサが充電される際の充電抵抗値と前記第2充電回路で前記コンデンサが充電される際の充電抵抗値とが一致すると共に、
前記正端子側の地絡抵抗の抵抗値が、警報レベルの絶縁状態に相当する正端子側の地絡警報しきい値であるときに、前記第1充電回路の前記充電抵抗値と前記第3充電回路で前記コンデンサが充電される際の充電抵抗値とが一致する、
非接地電源の絶縁状態検出回路において、
前記第2充電回路及び前記第3充電回路のうち少なくとも一方は、前記第1充電回路中に存在しない調整抵抗をさらに含んでおり、
前記調整抵抗は、前記第2充電回路及び前記第3充電回路のうち少なくとも一方の前記直列回路に対して直列に接続されている、
ことを特徴とする非接地電源の絶縁状態検出回路。
【請求項2】
前記第2充電回路及び前記第3充電回路がそれぞれ前記調整抵抗を含んでおり、前記第1抵抗と前記第2抵抗とが同一の抵抗値であり、前記第2充電回路の前記調整抵抗と前記第3充電回路の前記調整抵抗とが同一の抵抗値であることを特徴とする請求項1記載の非接地電源の絶縁状態検出回路。
【請求項3】
前記第2充電回路又は前記第3充電回路が前記調整抵抗を含んでいることを特徴とする請求項1記載の非接地電源の絶縁状態検出回路。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−42268(P2012−42268A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182219(P2010−182219)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】