非接触ICタグ
【課題】 元サイズの非接触ICタグと、切断した小サイズの非接触ICタグの双方が、UHF帯またはマイクロ波帯の所定の同一周波数に共振するようにされている非接触ICタグを提供する。
【解決手段】 本発明の非接触ICタグ1は、ダイバシティー機能を有するICチップ3の2以上のアンテナ入力端子に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振する2つのダイポール型平面アンテナ素子41,42が接続しており、当該ICチップ3が、いずれかの平面アンテナ素子の信号入力の大きい側を選択するようにされ、該ICチップ3に近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子を切断する一定位置の切断予定線5が設けられており、当該切断予定線5から切断後はICチップ3が無い側の平面アンテナ素子41の機能を失わせるようにされていることを特徴とする。
【解決手段】 本発明の非接触ICタグ1は、ダイバシティー機能を有するICチップ3の2以上のアンテナ入力端子に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振する2つのダイポール型平面アンテナ素子41,42が接続しており、当該ICチップ3が、いずれかの平面アンテナ素子の信号入力の大きい側を選択するようにされ、該ICチップ3に近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子を切断する一定位置の切断予定線5が設けられており、当該切断予定線5から切断後はICチップ3が無い側の平面アンテナ素子41の機能を失わせるようにされていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICタグに関する。詳しくは、ベースフィルムにICチップを中心とする双方の側に平面アンテナ素子を形成し、アンテナの受信強度に応じて、いずれかのアンテナ素子を選択できるダイバシティー機能付きICチップを装着した非接触ICタグに関し、また、平面アンテナ素子をベースフィルムと共にICチップに近接した切断予定線から切断することによって、切断前はサイズが大きく通信距離の長いタグとして機能し、切断後は同一周波数でサイズが小さく通信距離の短いタグとして機能する非接触ICタグにも関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification) とも称され、個体の識別が可能な情報を保持するICチップを備え、この情報を無線通信によって非接触で読み取りできるようにされているタグに関する。このようなICタグは、例えば、運送や流通、倉庫、工場工程管理、荷物の取り扱い等の分野で利用されている。
【0003】
近年、従来からの13.56MHz帯もしくはマイクロ波帯(2.45GHz)の非接触ICタグに加えて、わが国でも法改正によりUHF帯(952M〜955MHz)を使用することが可能になり、当該UHF帯非接触ICタグの実用化が図られている。
UHF帯ICタグは、電磁誘導方式の13.56MHz帯の非接触ICタグに比べて遠距離(3〜5メートル)からの一括読み取りが可能である。また、マイクロ波帯ICタグも1〜1.5メートルの距離の通信が可能であり、今後、それらの特徴を活かした用途での普及が見込まれている。
なお、電波の分類ではUHF帯は300M〜3GHzを指すが、非接触ICタグの場合は860M〜960MHzを使うタグを指すことが多い。上記範囲に含まれる2.45GHz帯を使うICタグはマイクロ波帯用といい、通常UHF帯ICタグとはいわない。
【0004】
UHF帯ICタグが使えるわが国の周波数帯は、2005年4月の電波法改正により高出力型が952M〜954MHzの2MHz、低出力型が952M〜955MHzの3MHzが使用可能とされている。UHF帯ICタグは、ICタグの微弱な返信波が、他のリーダライタの送信波により干渉を受ける等の問題があり、読み取りの困難性が指摘されていたが、2006年1月の法令改正によりこの干渉が防げるようになった。
【0005】
ところで、非接触ICタグラベルの使用方法として、本来サイズを2つに切断して使用する必要がある場合がある。この場合、切断前後において略同等の機能が求められる。
図15を参照して例を説明する。例えば、紳士靴や婦人靴の場合、納入品の検品等の作業の後、良品については、品番やサイズ、色柄、価格等を本来サイズの商品ラベル22に記載し、靴入りの靴箱21に当該記載した商品ラベル22を添付する(図15(A))。 商品ラベルは横長等の形状であって、靴箱に貼付して残す部分22aと、ミシン目線5等から切り取りして靴に吊るす部分22bとからなっている。当該両部分に、ほぼ同様の内容をプリンタで印字して靴箱21に添付する。靴を店頭に陳列する際は吊るし部分22bを切り取って靴20に付け(図15(C))、靴箱の方は在庫の確認等のために残った部分22aを貼り付けた状態で、所定場所に集積して保存する(図15(B))。店頭では、吊るし部分22により内容を確認することができる。
【0006】
上記は、従来の商品ラベルの使用例であるが、商品ラベルが非接触ICタグ付き(通常、ラベル紙基材の内側にフィルム状の非接触ICタグを挿入することが多い。)であれば、箱入り状態の靴を探すためにも便利である。UHF帯ICタグであれば靴の納品の際、バーコードとは異なり一括読み取り検品が可能である。また、2つに切断した後の吊るし部分22b側もICタグ機能を有していれば、陳列棚上の靴の内容調査に便利であり、靴20と靴箱21の対応関係を明確にするためにも役立つ。箱入り状態の靴箱等の探索のためには通信距離の長いタグとして機能し、店頭の靴の吊るし部分の探索時は、サイズが小さく同一周波数で通信距離の短いタグとして機能することが求められる。これには、特に遠隔リードライトも可能なUHF帯やマイクロ波帯のICタグが有利である。
【0007】
一般に、商品納入等の際、ゲート等を用いて複数のICタグを一括読み取りする場合は、タグの通信距離がある程度長い(数メートル)ことが好ましい。そのため、アンテナの利得はできる限り大きいのが良く、アンテナが占有できる面積も大きいのが望ましい。
しかし、小売店店頭などにおいて商品一つにつき一つのICタグを取り付けるような場合は、さほどの通信距離は求められない。例えば、ICタグを値札に貼り付けて用いるような使い方が想定され、タグアンテナはなるべく小型であることが望ましい。その場合、ハンディー型リーダを用いて数cm程度の距離から読み取れればよいが、ハンディー型リーダはその寸法及び電池容量の制約により電波の出力が据え置き型リーダに比べて非常に小さく、通信距離が短いのが一般的である。そのため、タグアンテナの利得は小型にしたときもなるべく低下しないことが望ましい。もちろん、ハンディ型でなく出力の大きい据え置き型リーダを用いる場合は、ハンディ型を用いる場合に比べてタグアンテナ利得値が低くても読み取りが可能であることは自明のことである。
【0008】
すなわち、ICタグを使用するシーンによって利得とサイズを任意に変化させ、かつ接続された記憶回路の内容はそのまま保持できれば使い勝手のよい非接触ICタグになる。 具体的な例として、切り取る前は、主として通信距離の大きい半波長ダイポールアンテナとして動作し、ゲートでの一括読み取りに適し、切り取り後は通信距離の小さい小型半波長ダイポールアンテナとして動作し、値札の裏または内部(紙層間)に組み込みして、ハンディー型リーダで読み取りするのに適したICタグの実現が望まれる。
出願人は、同様の目的により先に、特許文献4に掲げる特許出願をし、切断予定線からの切断前後において、同一の周波数に応答する非接触ICタグを提案している。
【0009】
ところで、近年、ダイバシティ機能を有するICチップが供給されている。ダイバシティ機能とは、チップ内にアンテナに対するスイッチ機構が内蔵されていて、2つのアンテナの入力電力の強弱を判定し、いずれか強い方を自動的に選択する機能(回路)を有することをいう。ダイバシティ機能は、携帯電話装置や車載アンテナ、各種移動体通信端末などに一般的に使用されている。ここで、当該ダイバシティ機能を使用した場合と使用しない場合のICタグのアンテナ設計について、図14を参照して説明することとする。
【0010】
図14(A)は、ダイバシティ機能を使用したICタグアンテナであり、図14(B)は、ダイバシティ機能を使用しないICタグアンテナである。後者は、前記特許文献4の提案にかかる内容である。中央の四角の形状はICチップを意味している。
図14(A)のICチップ3dは、ダイバシティ機能を有し2以上のアンテナ入力端子を有し、マイナス側はアンテナ1とアンテナ2に接続し、プラス側はアンテナ1とアンテナ2をスイッチ機構により切り替え可能にされている。図14(B)の場合は、ダイバシティ機能を持たない通常の2端子のICチップ3nを使用し、アンテナ1とアンテナ2が当該2端子に接続している。
【0011】
図14(B)のように、スイッチ機構がないICチップ3nを使用した場合(ダイバシティ機能を使用しない場合)、切断予定線5から切断前の状態では、主として大型で通信距離の長いアンテナ1が動作するが、小型で通信距離の短いアンテナ2も接続されたままなので、アンテナ2が接続されていることによる影響を加味してアンテナ設計を行う必要がある。このため、設計が難しくなる問題がある。図14(A)のように、スイッチ機構を持つICチップ3dを使用した場合(ダイバシティ機能を使用した場合)、切断前の状態でもアンテナ1またはアンテナ2のいずれかを、他方を遮断して使用するので、独立した2つのアンテナに近い特性を示すため、アンテナ設計が容易になる利点がある。
【0012】
本願に関連する先行技術として、特許文献1乃至特許文献3がある。特許文献1は、900MHz帯等の無線タグに関し、ラベルの切断に際しアンテナを切断することを記載している。しかし、同文献の無線タグでは、ダイポールアンテナの両端を切断するので、当初の無線タグと切断後の無線タグでは共振周波数が変化してしまう問題がある。共振周波数が変化すれば、2種類のリーダライタを使わなければならない問題が生じる。
特許文献2と特許文献3は、ダイバシティー動作により切替え使用するアンテナ装置等について記載している。
【0013】
【特許文献1】特開2006−203637号公報
【特許文献2】特開2001−298385号公報
【特許文献3】特開2004−260563号公報
【特許文献4】特願2006−321061
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ダイバシティ機能を有するICチップを使用し、2つのアンテナの入力信号の強弱を判定し、いずれか強い方を自動的に選択させるものである。従って、切断しない用途のICタグにおいても最良の通信状態を確保するICタグの実現を目的とする。
ICタグを切断して使用する非接触ICタグにおいて、切断前には通信距離が大きく切断後は比較的小さい通信距離で通信でき、しかも切断前後において同一周波数の電波でリードライトできる非接触ICタグの実現を目的とする。
【0015】
本発明の非接触ICタグでは、切断前においては、比較的広いアンテナ面積で動作し、ゲートでの一括読み取りに適し、切断後は小型半波長ダイポールアンテナとして動作し、値札等の用途としてハンディ型リーダで読み取るのに適したICタグの実現を図る。
また、切断前のICタグにおいて、一方側のアンテナが動作中に、他方側のアンテナが共振しないようにする短絡回路の組み込みも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、ベースフィルム面のICチップを介する双方の側に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振し、指向特性が異なる2つのダイポール型平面アンテナ素子を形成した非接触ICタグにおいて、前記ICチップは、ダイバシティー機能を有し、入力端子に接続した前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを受信強度に応じ、ICチップ内部のスイッチ機構により選択可能にされていることを特徴とする非接触ICタグ、にある。
【0017】
上記非接触ICタグにおいて、前記ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子を切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていれば、切断後に小サイズのICタグとして使用することができる。
【0018】
上記課題を解決する本発明の要旨の第2は、ダイバシティー機能を有するICチップの2以上のアンテナ入力端子に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振する2つのダイポール型平面アンテナ素子が接続しており、当該ICチップが、いずれかのダイポール型平面アンテナ素子の受信強度の大きい側を選択するようにされている非接触ICタグにおいて、該ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていることを特徴とする非接触ICタグ、にある。
【0019】
上記において、一方のアンテナ素子が動作している際に、他方のアンテナ素子が共振しないように、他方のダイポール型平面アンテナ素子の一部が一方のダイポール型平面アンテナ素子に短絡するように短絡回路が設けられていれば、共振を防止して切断前のアンテナ特性を良好にすることができる。また、切断後は、前記短絡回路が無効化されることが好ましい。
【0020】
上記において、ベースフィルムの外面にプリンタ印字可能なように紙基材が積層されていれば、紙基材にICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項を印字できる。また、切断予定線を当該紙基材とベースフィルムを貫通するように形成すれば、印字記録用ラベルとした場合も切断が容易になる。またさらに、前記切断予定線の両側の前記紙基材の印字可能面には、ICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項が印字されているようにもでき、それぞれの記録内容に間違いが生じることがない。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非接触ICタグ(請求項1)は、ダイバシティー機能を有するICチップを使用し、その双方の側に、UHF帯またはマイクロ波帯の同一周波数の電波に共振し、指向特性の異なる2つのダイポール型アンテナが形成されているので、2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを受信強度に応じて選択するので、常に最良の通信状態を確保することができる。
本発明の非接触ICタグ(請求項2)は、上記請求項1のICタグに切断予定線を設けたので、当該切断予定線から切断後には、比較的通信距離の短いアンテナ側のみが動作し、近接距離からリードライトし易いICタグとなる。
【0022】
本発明の非接触ICタグ(請求項3)は、ダイバシティ機能を有するICチップに2つの平面アンテナ素子が、切断予定線を介して接続しているが、ICチップが2つのアンテナの受信信号の強弱を判定し、いずれか強い方を自動的に選択するので、切断前にも常に最良の通信状態を確保することができ、切断後には、比較的通信距離の短いアンテナ側のみが動作し、近接距離からリードライトし易いICタグとなる。
【0023】
本発明の非接触ICタグ(請求項4)は、一方のアンテナ素子が動作中に、他方のアンテナ素子が共振しないように短絡回路が設けられているので、切断前の大きいICタグの状態で使用する際に良好な通信状態を確保できる。
【0024】
本発明の非接触ICタグがベースフィルムの外面に印字可能なように紙基材が積層されている場合(請求項6、7)には、紙基材にICチップ記録内容と共通の商品管理事項を記録が可能となる。また、切断予定線がある場合は、紙基材とベースフィルムを一緒に貫通するように切断予定線を形成することができ(請求項7)、その両側の紙基材に、ICチップ記録内容と共通の商品管理事項を記録することができ、非接触ICタグを切断した後においても、双方の対応関係の検索等を容易に行うことができる(請求項7、8)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を、さらに詳しく説明する。
図1は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の例を示す図、図2は、ICチップ装着部の詳細構造図、図3は、図1の非接触ICタグに切断予定線を設けた図、図4は、切断前の非接触ICタグの指向性を示す図、図5は、切断後の非接触ICタグの指向性を示す図、図6は、指向性の違いを説明する図、図7は、切断前の非接触ICタグの指向性を示す2次元図、図8は、切断後の非接触ICタグの指向性を示す2次元図、図9は、切断前のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図、図10は、切断後のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図、図11は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の他の例を示す図、図12は、平面アンテナからなるリーダライタの指向特性を示す図、図13は、本発明の非接触ICタグの平面外観図、である。
【0026】
図1は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の例を示す図である。本発明の非接触ICタグ1の平面アンテナ素子4は、図1のように、2つのアンテナ素子41とアンテナ素子42からなり、それぞれのアンテナ素子41,42は、ICチップ3のアンテナ入力端子に接続している。アンテナ素子41とアンテナ素子42は、共に半波長ダイポール型アンテナであるが、左側のアンテナ素子41は、右側よりもやや大きい形状にされている。左右のアンテナ素子は、その大きさや指向特性が異なるように設計でき、その場合には、いずれかの信号入力の大きいアンテナを自動選択して動作させられるという特徴がある。
なお、アンテナ素子4はベースフィルム11面に形成され、アンテナ素子4とICチップ3面は、プラスチックフィルムからなる表面保護シートで全体が被覆されている。
【0027】
このICタグ1に使用するICチップ3はダイバシティー機能を有するものであって、2以上のアンテナ入力端子を有している。ダイバシティー機能は、入力端子に接続された2つの平面アンテナ素子41,42の受信波を増幅してその強弱を判定し、スイッチングを行う。ICチップ3の2つの増幅回路は判定を正確に行うため、増幅特性、周波数特性等の電気的特性の同一性が要求される。
【0028】
ICチップ3の装着部から左側に屈折する線路(太い実線)41a,41bは、大きい通信距離のダイポールアンテナ41として機能する部分であり、線路全体の合計長が、略半波長になるようにされている。図中、一点鎖線で囲まれた部分が、その大きい状態のICタグとして動作し、二点鎖線で囲まれた部分が小さい状態のICタグとして動作する。 右側は折り畳みダイポールであるが、ICチップ3に通じる線路を含めた線路(細い実線)42a,42bの全体の合計長が略半波長にされている。ICチップ3のダイバシティ機能によって、一点鎖線部と二点鎖線部を切り替え接続することができる。
なお、図1の場合、ICチップ3は、平面アンテナ素子42の中心位置からややずれた位置に装着されている。これは、ラベル表面に印字される可能性がある部分を避けたもので、電気的な理由は特にない。
【0029】
半波長ダイポールアンテナでは、照射される電波の半波長の電流分布が生じる形状に設定されている。例えば、UHF帯を954MHzとした場合、1波長は31.4cm、半波長では15.7cmとなり、その条件を満たすとき効率よく電波との共振が生じる。
通常、ベースフィルム11の誘電率やアンテナの抵抗値も考慮して160mm程度になるように設計する。ラベルとした場合の基材サイズがあまり大きくならないように、アンテナを折り畳み形状等にして、ICタグラベルの1単位の長さが10cm、幅3cm〜5cm程度の大きさ(基材サイズ)に製造される。マイクロ波帯の場合(2.45GHz)では、より短縮された形状のアンテナになる。折り畳みダイポールの場合、原則として線路の合計長が波長に適合する長さになるが、折り畳みが接近し過ぎると空間で結合するので、設計上の工夫が必要になる。
【0030】
図1のアンテナ素子では、大きい状態のICタグ1の動作中において、共振を防止する工夫がされている。図1中、符号46,47,48の回路は短絡部を形成しているが、この短絡部が無い場合は以下の問題が生じる。すなわち、大きい状態のICタグ1を動作させようとするとき、小さい状態のICタグ2において素子として動作する小型ダイポールアンテナ42が希望の周波数に共振した状態であると、両方のアンテナとしての動作が競合し、総合的に利得の低下を招くことが生じる。そのため、大きい状態のICタグ1においては、小さい状態のICタグ2において素子として動作する部分を一部短絡化し共振周波数をずらしている。それが短絡部46,47,48であり、この短絡部はICタグを切断予定線5から切断すると同時に無効化され、小さい状態のICタグは本来の小型半波長ダイポールアンテナ42としての動作を行う。
【0031】
短絡部を設けることは、次のような副次的効果も生じる。ICチップのような半導体は一般的に静電気による高電圧がかかると破壊される危険がある。静電気は、製造工程でも実際の使用場面でも容易に発生する。そのため半導体内部にも高電圧に対する保護機構が内蔵されている場合が多いが、現実には静電気による破壊は皆無ではない。大きい状態のタグ1では、符号41a,41bの部分がICチップ3の端子に接続しているが(図2の符号31,32)、短絡部を設けることによって、41b−短絡部48−42a−42b−短絡部46−41aの経路で41b−41a間がショートされ、仮に41a−41b間に高電圧が発生しても上記経路を通じて放電され、ICチップ端子31,32間に高電圧がかかるのを防ぐことができ、これにより静電気による破壊の危険を減少させることに寄与する。この構造はアンテナ設計時にあらかじめ考慮することで、送受信の能力を阻害しないものとすることができる。
【0032】
図2は、ICチップ装着部の詳細構造図である。図2(A)では、回路状態をわかり易くするため、ICチップ3を透明に図示している。図2(B)のように、ICチップ3は3つの入力端子を有し、左側の半波長ダイポールアンテナ41は、アース端子31とアンテナ端子32に接続し、右側の半波長ダイポールアンテナ42は、アース端子31とアンテナ端子33に接続している。アース端子31は左右のアンテナについて共通である。
図2(B)では、ICチップ3のスイッチ機構34が、端子31と32を接続しているので左側の半波長ダイポールアンテナ41が動作状態にあることになる。
【0033】
図3は、図1の非接触ICタグに切断予定線5を設けた図である。図3(A)は切断前、図3(B)は切断後の非接触ICタグ、である。前記のように、アンテナ素子41とアンテナ素子42の指向特性を異なるように設計できるが、図3(A)の切断前においては、通常の非接触ICタグの読み取り状態では、指向特性が同じでもアンテナ形状の大きい左側のアンテナ素子41の入力信号が大きくなる。従って、切断前では通常の場合、一点鎖線で囲った左側のアンテナ素子41が動作し(図1参照)、切断予定線5から切断した後の小サイズ非接触ICタグ2では、勿論右側のアンテナ素子42のみが動作する。ICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子41の機能は失われる。
【0034】
一定位置の切断予定線5と表現するのは、任意位置で切断したのでは、切断後にICタグのアンテナとして十分に機能しなくなる場合があり、設計された所定位置から切断する必要があるからである。従って、切断予定線5は切り取りし易いように、予めミシン目線等により形成されている。切断予定線5は、ICチップ3に近接した位置に設ける。近接した位置とは、ICチップ3に近接するアンテナ素子42の左端から、1mm〜10mm程度の位置のことである。
【0035】
非接触ICタグ1の切断前の大きいサイズ状態では、アンテナ素子41とアンテナ素子42のいずれかかが選択されて動作するが、通常は大サイズのアンテナ素子41が選択され、半波長ダイポールアンテナとしてはたらく。切断後の小さいサイズの状態では、半波長ダイポールアンテナ42部分のみが機能する。いずれも、UHF帯またはマイクロ波帯の同一の所定周波数の電波に共振するようにされている。一般に、サイズが大きい状態では通信距離も長く、サイズが小さい状態では通信距離は短縮される。
【0036】
アンテナ4の導線は、通常の非接触ICタグのように、プリントパターンであるか金属箔のエッチングパターンである。一般に、プラスチックフィルムに金属箔(10μmから20μm程度の厚みのアルミニウム箔や銅箔)をラミネートした基材に印刷レジストを用いパターン印刷するか、感光性レジストを塗布した面にフォトマスクを介して露光し、その後、レジスト膜を介して金属箔をエッチングして作られる場合が多い。上記厚み範囲の金属箔であれば、アンテナ線路の抵抗値が適切である。印刷パターンや金属蒸着層の場合は、抵抗値が高過ぎることになる場合が多い。
【0037】
本発明の非接触ICタグ1(切断前)と小さい状態の非接触ICタグ2(切断後)は、アンテナのインピーダンスとICチップ3のインピーダンスと、両者のマッチングが取れるように調製されている。アンテナのインピーダンスのマッチング(整合)は、アンテナパターンの形状や、基材である誘電体や磁性体の組み合わせでされるが、本発明ではアンテナパターン形状によりマッチングがなされている。具体的には、ヘアピンマッチ回路(インピーダンスを複素数にするための回路)43等により整合するようにされている。
左側のアンテナ素子41の先端部のブロック状パターン44,45もインピーダンス調製のためのものである。インピーダンスが整合しない場合は、給電部で電波が反射する問題が生じる。
【0038】
図4は、切断前の非接触ICタグの指向特性を示す図、図5は、切断後の非接触ICタグの指向特性を示す図、であり、それぞれ、座標軸(A)と、3次元の指向性(B)を示している。切断前のICタグの大きい状態では、図3(B)のように、通信距離が大きくY軸を軸芯とするドーナッツ状の指向特性を示している。一方、切断後のICタグの小さい状態では、図5(B)のように、通信距離が小さくX軸を軸芯とするドーナッツ状の指向特性を示している。
【0039】
図6を参照して指向性の違いが生じる理由を説明する。大きい状態のICタグ1では、図6(A)のように、左側のアンテナ素子41が動作するが、長辺方向に配置されたダイポールアンテナと素子配置が概ね類似しているため、その指向性は長辺方向に電界面を合わせたダイポールアンテナと近いものとなる。一方、小さい状態のICタグ2では、図6(B)のように、短辺方向に広がって配置されたダイポールアンテナであり、その指向性は短辺方向に電界面を合わせたダイポールアンテナのそれと近いものとなる。一般に、電界面はダイポールアンテナの向きと一致し、磁界面は電界面に直交する。
【0040】
なお、アンテナの指向性は無限遠から見た場合を考えるのが通例である。従って、ICタグの大きさ自体は無い(点として扱う)ことになる。大きい状態のタグでは、左側のアンテナから電波がでるが、座標原点は区別して表示するようにはしていない。
図7と図8は、切断前後の非接触ICタグの指向性を示す2次元図である。図7の、切断前の非接触ICタグ1は、X−Z面が円形の利得を示し、Y−Z面が「8」の字状の利得を示す。最大利得は共に0dB近くになっている。図8の、切断後の非接触ICタグ2は、X−Z面が「8」の字状の利得を示し、Y−Z面が円形の利得を示している。アンテナの最大利得は、共に−4dBに近くなっている。
【0041】
図9は、切断前のICタグのアンテナ利得(A)とリターンロス(B)を示す図であり、図10は、同様に切断後のアンテナ利得(A)とリターンロス(B)を示す図である。 図1のアンテナについての計算値(有限要素法によるシュミレーション計算結果)である。いずれの場合も、950MHz付近でアンテナ利得が最大となり、リターンロスが最小となるようにされている。上記は、わが国のUHF帯に特性を合わせるものであるが、マイクロ波帯や他国の周波数帯に特性を合わせて調製できることは明らかである。
【0042】
なお、アンテナ利得は、アンテナが希望の方向から来る電波を受信する能力を表しており、特殊な用途を除き値が大きいほど良好な特性であるといえる。希望の周波数において最高となるように設計するのが一般的である。基準アンテナとして等方性アンテナを用いた場合を絶対利得(dBi)、ダイポールアンテナを用いた場合を相対利得(dBd)とすると、(絶対利得)=(相対利得)+2.15dB、の関係がある。
リターンロスとは、アンテナとICタグ用チップとの電気的整合の指標であり、値が低いほど良好な特性である。アンテナへの入射電力と接点での反射電力の比で表され、全反射してすべての電力が戻ってきた場合は0dB、電力が戻ってこなかった場合は−∞dBを示す。従って、希望の周波数において最低になるように設計するのが一般的である。
リターンロスはアンテナ利得にも影響を与えるパラメータであり、アンテナ利得のピークとリターンロスのピークは通常ほぼ一致する。図9、図10の場合、大サイズ状態のICタグ1と小サイズ状態のICタグ2では、アンテナ利得ピーク、リターンロスピーク共にほぼ一致しており、サイズが変わっても同じ周波数に共振していることがわかる。
【0043】
図11は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の他の例を示す図である。図11の例でも切断予定線5から切断して小サイズ非接触ICタグ2として使用することができる。
図11(A)の切断前の大きいサイズの状態では、半波長ダイポールアンテナ41が主として動作し、図11(B)の切断後の小さいサイズの状態では、半波長ダイポールアンテナ42が動作する。ICチップ3はダイバシティ機能を有するもので、図1の場合と同様に3つの端子に装着されている。平面アンテナ素子4の全体長(直線距離)も100mm以内にすることができ、幅は、30〜40mm程度にできる。その他の構成は、図1の非接触ICタグ1と同様になる。
【0044】
図12は、平面アンテナからなるリーダライタの指向特性を示す図である。1素子平面アンテナからなるものであり、図12(A)のように、平面アンテナに直交するZ軸方向に対して指向性が高くなるようにされている。図12(B)のように、Z軸の方向がICタグの方向に一致するようにすれば、長い通信距離が得られることになる。
なお、上記リーダアンテナの指向性は、直線偏波で計算しているが、円偏波でもほぼ同様の指向性となる。
【0045】
リーダライタ用のアンテナには円偏波のものと、直線偏波のものがある。以下に、最も一般的な直線偏波アンテナであるダイポールアンテナを使用したタグと組み合わせて使用する場合について述べる。これはICタグに限らず、円偏波と直線偏波の関係についての一般論と捉えることもできる。
・リーダアンテナに直線偏波のものを用いると、タグの姿勢により損失が生じ通信距離が減少することがある。この損失は、タグの姿勢と偏波の向き(電界面の向き)の角度により増減し、お互いの角度が0度であるとき損失が最小となり、お互いに直交するときに損失が最大(理論的に無限大)となる。従って、タグの姿勢と偏波の向きをできる限り一致させて使用する必要がある。
・リーダアンテナに円偏波のものを用いると、タグの姿勢により損失の変動を減少させることができる。タグを横長に置いた場合と縦長に置いた場合、原理的には損失の差、すなわち通信距離の差はない。しかし、この場合のデメリットとして、最大通信距離の減少が挙げられる。円偏波リーダアンテナを用いると原理的に3dBの損失が生じ、直線偏波のリーダアンテナを用いたときに比べ最大通信距離が約70%となる。
【0046】
実際のICタグの運用においては、タグの姿勢を指定できない場合が多いので、読み取り率を上げるために、リーダアンテナには円偏波のものを用いることが多い。しかしながら周囲の電波反射物によってICタグの位置における電界強度が複雑に変化するため、一概にどちらが良いとはいえない側面があり、場合によっては直線偏波アンテナを使用した方が良い読み取り率が得られる可能性もあると考えられる。
【0047】
実際の非接触ICタグ1は印字適性を備えさせるため、ラベル用紙等によりアンテナ面を被覆するので、通常はアンテナ線は見えないようにされている。一般的には、ブランドタグと称して、商品名や製造メーカー、商品価格等を印字した紙ラベルを、まず製造する。次に、このブランドタグの半分側の片に対して、商品タグ発行機を用いて、データ記録済みの非接触ICタグラベルをラベル貼り機を用いて貼り込みする。その後、ブランドタグをICタグを内側にして二つ折りにする。二つ折りにしないで、ICタグが片面に見えるようにする場合もある。このような状態にされた非接触ICタグ1は商品タグとも呼ばれ、印字やバーコードの記録とICチップ3に対する電子的記録との双方が可能な利点がある。これらの詳細については、出願人の先の出願(特願2005−195785号等)にも記載されており、当該製造方法により最終の製品に仕上げることもできる。
【0048】
図13は、本発明の非接触ICタグの外観図である。図13(A)は全体サイズの平面図である。非接触ICタグ1は、紙ラベルで覆われた形態なので、ICタグのアンテナ4は外面からは実際には見えない。一定位置の切断予定線5は、ICタグのベースフィルム11と表面保護シート、紙ラベルを一緒に貫通するようにミシン目線等により形成されている。切断予定線5は、通常、非接触ICタグ1の全体を分断するように形成され、その一方側は比較的に大きな面積を有し、他方側はやや小さな面積に形成されることが多い。切断予定線5を介する非接触ICタグ1の両側の紙ラベル面には、ICチップ3のメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項8が印字されている。商品管理事項8とは、商品名や製造メーカー名、サイズや形状、価格等の事項である。
【0049】
非接触ICタグ1のアンテナ4の全長(直線距離)L1(図1参照)は、100mm程度以内にされる。全長が大きければ、アンテナ設計が容易になるが、4インチ以内に納めることが、EPCグローバルにより規定されている。アンテナ2の幅L2は設計上、30mm〜40mm程度となるが、ラベル自体の全長Lと幅Hは、使用目的や使用する基材や積層する紙ラベル次第であり自由に決定できることになる。
図13(B)は、切断後の非接触ICタグ2の図である。ベースフィルム11面にアンテナ素子42に装着したICチップ3を有し、その片面または両面に紙ラベル基材が積層されている。ひも通し孔9に通した紐等により商品等に付することもできる。
【0050】
非接触ICタグ1の使用開始時に連続してデータを書き込みする場合は、ICタグ連接体を間欠的に送りながら、低出力のリーダライタの近接位置(1〜3cmの距離)に置き、対象のICタグ1にのみ電波が届くようにして書き込みする。書き込み対象のICタグ1以外をシールドして書き込みするものであってもよい。ラベル貼り機でブランドタグに貼り込みする場合は、貼り込み直前にデータを書き込みする。ブランドタグに印字するデータとのマッチングが図られ、異なるデータが書き込まれないようにされている。なお、書き込みとは、主として書き込みに使用するデータをリーダライタから受信し、ICチップ3のメモリに書き込みする意味で、ICチップ3のデータ(例えば、ユニークID)を読み取り可能なことは当然のことである。
【0051】
UHF帯ICタグが使えるわが国の周波数帯は、前記のように高出力型が、952M〜954MHzの2MHz、低出力型が952M〜955MHzの3MHzとされている。 UHF帯ICタグリーダライタには、設置型として、シンボル・テクノロジズ社の「XR480−JP」がある。このもののアンテナはかなり大型となる。
低出力ハンディ型リーダライタには、株式会社デンソーウェーブから「BHT−230QWID」(952M〜955MHz;出力10mW)が近く発売予定である。読み取り距離は、〜10cm程度と見られる。他の低出力型のUHF帯ICタグとしては、富士通株式会社のリーダライタを使用できる。例えば、Multipad本体「FHT401SS1」にUHF帯RFIDタグにアクセスするための、CFタイプリーダライタ「TFU−RW526」を本体に差し込みして使用するできる。この場合の通信距離は、約3cm〜10cmとなる。
【0052】
非接触ICタグ1の製造は、従来の非接触ICタグの製造と同一の工程により製造できる。ベースフィルム11としては、ベースフィルム面に金属箔(例えば、アルミニウムや銅箔)をラミネートした材料を使用する。この、ベースフィルム11の金属箔面に感光性フォトレジストを塗工した後、フォトマスクを用いて露光感光させてレジスト層を形成する。フォトマスクは、前記した構成のアンテナパターンを有するものとする。フォトマスクを使用しないで、レジストパターンを印刷する方法でもよい。
【0053】
次いで、金属層をエッチングして所定のパターンに形成する。エッチング後、ベースフィルム11のダイポールアンテナ2にICチップ3を異方導電性接着フィルム等により装着した後、表面保護シートをラミネートし、ベースフィルム裏面は粘着剤加工を行う。
ICチップ3には、UHF帯やマイクロ波帯対応ICチップを使用する。例えば、米インピンジ社「Monza」があり、ダイバシティ機能を使用している。
切断予定線5は、紙製のブランドタグを表面または表裏面に貼り付けした後、アンテナ線を切断しないように、アンテナ線を検知しながらミシン目線等により数値制御して形成することが必要になる。
【実施例】
【0054】
図1のアンテナパターンに基づき、設計周波数953MHzの非接触ICタグを試作した。厚み38μmの透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、厚み12μmのアルミニウム箔をラミネートし、ベースフィルム11として使用した。
その後、図1のようなアンテナパターンをレジスト印刷しエッチングした。なお、平面アンテナ素子4の全長(直線距離)L1を87.5mmとし、幅(直線距離)L2を26.0mmとし、半波長ダイポールアンテナ42の長さ(直線距離)L3を29.5mmとなるようにした。短絡部46,47,48も図1のように設けた。アンテナ素子41部分の太線の線路幅を1.0mm、アンテナ素子42部分の細線の線路幅を0.5mmとした。
【0055】
図1のアンテナ4のチップ装着部に、ダイバシティ機能を有する非接触タグ用ICチップ[米インピンジ社「Monza」]3を装着した。このICチップ3のインピーダンスは、33±j112(Ω)のものである。その後、ICチップ3と平面アンテナ素子4面に、厚み20μmの透明2軸延伸PETフィルムを表面保護シートとしてラミネートし、ベースフィルム11のアンテナ4とは反対側面に粘着剤(剥離紙付き)加工を行った。その後、1つのICタグ付きアンテナシートのサイズを35mm×95mmとなるように、剥離紙面にラベル型抜きを行った。
次いで、リーダライタ付きラベル貼り機を用いICチップ3に商品管理事項のデータを書き込みすると共に、ブランドタグ(厚み250μmのロール紙)に、同一の商品管理事項8を切断予定線5の両側に印字記録した。
【0056】
この商品管理事項8を印字済みの、ブランドタグを前記のアンテナシートの両面に、二つ折りしてラベル貼りした。その際、剥離紙は除去した。これにより、本発明の非接触ICタグ1が完成した。完成後の1つの非接触ICタグ1は、全長Lが100mm、幅Hが40mmとなった。なお、ラベル貼りの後、アンテナ線路を損傷しないように注意してミシン目線による切断予定線5と紐通し孔9を形成した。
【0057】
この非接触ICタグ1の、切断前後のICタグのアンテナ利得とリターンロスの計算値は、図9と図10のようになった。大きい状態のICタグ1では、利得は953MHzを含む920〜1000MHzの範囲でフラットな特性が得られている。また、その範囲のリターンロスは、−6dB以下となっている。小さい状態のICタグ2では、帯域は狭くなっているがアンテナ利得のピーク、リターンロスピークは共にほぼ953MHzに調製されており、サイズが変わっても953MHzに共振していることが分かる。
【0058】
完成した大きい状態の非接触ICタグ1は、4メートルの距離からの遠隔リード(シンボル・テクノロジズ社製「XR480」−JP」使用)が可能であり、切断予定線5から切断した後の小さい状態の非接触ICタグ2は、約10cmの距離からの近接リード(富士通株式会社製「FHT401SS1」使用)が可能であった。いずれの場合も、商品タグに印字記録したと同一の共通の商品管理事項を読み取りすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上記の実施例等では、わが国におけるUHF帯(952〜955MHz)について記載しているが、米国におけるUHF帯(915±14MHz)、その他のUHF帯やマイクロ波帯にもにも適用可能なことは当業者には自明のことである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】非接触ICタグの平面アンテナ素子の例を示す図である。
【図2】ICチップ装着部の詳細構造図である。
【図3】図1の非接触ICタグに切断予定線を設けた図である。
【図4】切断前の非接触ICタグの指向性を示す図である。
【図5】切断後の非接触ICタグの指向性を示す図である。
【図6】指向性の違いを説明する図である。
【図7】切断前の非接触ICタグの指向性を示す2次元図である。
【図8】切断後の非接触ICタグの指向性を示す2次元図である。
【図9】切断前のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図である。
【図10】切断後のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図である。
【図11】非接触ICタグの平面アンテナ素子の他の例を示す図である。
【図12】平面アンテナからなるリーダライタの指向特性を示す図である。
【図13】本発明の非接触ICタグの平面外観図である。
【図14】ダイバシティー機能によるアンテナ選択を説明する図である。
【図15】従来の商品ラベルの使用方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
1 非接触ICタグ
2 小サイズ非接触ICタグ
3 ICチップ
4 平面アンテナ素子、アンテナ
5 切断予定線、ミシン目線
8 商品管理事項
11 ベースフィルム
41 半波長ダイポールアンテナ、アンテナ素子
42 半波長ダイポールアンテナ、アンテナ素子
43 ヘアピンマッチ回路
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICタグに関する。詳しくは、ベースフィルムにICチップを中心とする双方の側に平面アンテナ素子を形成し、アンテナの受信強度に応じて、いずれかのアンテナ素子を選択できるダイバシティー機能付きICチップを装着した非接触ICタグに関し、また、平面アンテナ素子をベースフィルムと共にICチップに近接した切断予定線から切断することによって、切断前はサイズが大きく通信距離の長いタグとして機能し、切断後は同一周波数でサイズが小さく通信距離の短いタグとして機能する非接触ICタグにも関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification) とも称され、個体の識別が可能な情報を保持するICチップを備え、この情報を無線通信によって非接触で読み取りできるようにされているタグに関する。このようなICタグは、例えば、運送や流通、倉庫、工場工程管理、荷物の取り扱い等の分野で利用されている。
【0003】
近年、従来からの13.56MHz帯もしくはマイクロ波帯(2.45GHz)の非接触ICタグに加えて、わが国でも法改正によりUHF帯(952M〜955MHz)を使用することが可能になり、当該UHF帯非接触ICタグの実用化が図られている。
UHF帯ICタグは、電磁誘導方式の13.56MHz帯の非接触ICタグに比べて遠距離(3〜5メートル)からの一括読み取りが可能である。また、マイクロ波帯ICタグも1〜1.5メートルの距離の通信が可能であり、今後、それらの特徴を活かした用途での普及が見込まれている。
なお、電波の分類ではUHF帯は300M〜3GHzを指すが、非接触ICタグの場合は860M〜960MHzを使うタグを指すことが多い。上記範囲に含まれる2.45GHz帯を使うICタグはマイクロ波帯用といい、通常UHF帯ICタグとはいわない。
【0004】
UHF帯ICタグが使えるわが国の周波数帯は、2005年4月の電波法改正により高出力型が952M〜954MHzの2MHz、低出力型が952M〜955MHzの3MHzが使用可能とされている。UHF帯ICタグは、ICタグの微弱な返信波が、他のリーダライタの送信波により干渉を受ける等の問題があり、読み取りの困難性が指摘されていたが、2006年1月の法令改正によりこの干渉が防げるようになった。
【0005】
ところで、非接触ICタグラベルの使用方法として、本来サイズを2つに切断して使用する必要がある場合がある。この場合、切断前後において略同等の機能が求められる。
図15を参照して例を説明する。例えば、紳士靴や婦人靴の場合、納入品の検品等の作業の後、良品については、品番やサイズ、色柄、価格等を本来サイズの商品ラベル22に記載し、靴入りの靴箱21に当該記載した商品ラベル22を添付する(図15(A))。 商品ラベルは横長等の形状であって、靴箱に貼付して残す部分22aと、ミシン目線5等から切り取りして靴に吊るす部分22bとからなっている。当該両部分に、ほぼ同様の内容をプリンタで印字して靴箱21に添付する。靴を店頭に陳列する際は吊るし部分22bを切り取って靴20に付け(図15(C))、靴箱の方は在庫の確認等のために残った部分22aを貼り付けた状態で、所定場所に集積して保存する(図15(B))。店頭では、吊るし部分22により内容を確認することができる。
【0006】
上記は、従来の商品ラベルの使用例であるが、商品ラベルが非接触ICタグ付き(通常、ラベル紙基材の内側にフィルム状の非接触ICタグを挿入することが多い。)であれば、箱入り状態の靴を探すためにも便利である。UHF帯ICタグであれば靴の納品の際、バーコードとは異なり一括読み取り検品が可能である。また、2つに切断した後の吊るし部分22b側もICタグ機能を有していれば、陳列棚上の靴の内容調査に便利であり、靴20と靴箱21の対応関係を明確にするためにも役立つ。箱入り状態の靴箱等の探索のためには通信距離の長いタグとして機能し、店頭の靴の吊るし部分の探索時は、サイズが小さく同一周波数で通信距離の短いタグとして機能することが求められる。これには、特に遠隔リードライトも可能なUHF帯やマイクロ波帯のICタグが有利である。
【0007】
一般に、商品納入等の際、ゲート等を用いて複数のICタグを一括読み取りする場合は、タグの通信距離がある程度長い(数メートル)ことが好ましい。そのため、アンテナの利得はできる限り大きいのが良く、アンテナが占有できる面積も大きいのが望ましい。
しかし、小売店店頭などにおいて商品一つにつき一つのICタグを取り付けるような場合は、さほどの通信距離は求められない。例えば、ICタグを値札に貼り付けて用いるような使い方が想定され、タグアンテナはなるべく小型であることが望ましい。その場合、ハンディー型リーダを用いて数cm程度の距離から読み取れればよいが、ハンディー型リーダはその寸法及び電池容量の制約により電波の出力が据え置き型リーダに比べて非常に小さく、通信距離が短いのが一般的である。そのため、タグアンテナの利得は小型にしたときもなるべく低下しないことが望ましい。もちろん、ハンディ型でなく出力の大きい据え置き型リーダを用いる場合は、ハンディ型を用いる場合に比べてタグアンテナ利得値が低くても読み取りが可能であることは自明のことである。
【0008】
すなわち、ICタグを使用するシーンによって利得とサイズを任意に変化させ、かつ接続された記憶回路の内容はそのまま保持できれば使い勝手のよい非接触ICタグになる。 具体的な例として、切り取る前は、主として通信距離の大きい半波長ダイポールアンテナとして動作し、ゲートでの一括読み取りに適し、切り取り後は通信距離の小さい小型半波長ダイポールアンテナとして動作し、値札の裏または内部(紙層間)に組み込みして、ハンディー型リーダで読み取りするのに適したICタグの実現が望まれる。
出願人は、同様の目的により先に、特許文献4に掲げる特許出願をし、切断予定線からの切断前後において、同一の周波数に応答する非接触ICタグを提案している。
【0009】
ところで、近年、ダイバシティ機能を有するICチップが供給されている。ダイバシティ機能とは、チップ内にアンテナに対するスイッチ機構が内蔵されていて、2つのアンテナの入力電力の強弱を判定し、いずれか強い方を自動的に選択する機能(回路)を有することをいう。ダイバシティ機能は、携帯電話装置や車載アンテナ、各種移動体通信端末などに一般的に使用されている。ここで、当該ダイバシティ機能を使用した場合と使用しない場合のICタグのアンテナ設計について、図14を参照して説明することとする。
【0010】
図14(A)は、ダイバシティ機能を使用したICタグアンテナであり、図14(B)は、ダイバシティ機能を使用しないICタグアンテナである。後者は、前記特許文献4の提案にかかる内容である。中央の四角の形状はICチップを意味している。
図14(A)のICチップ3dは、ダイバシティ機能を有し2以上のアンテナ入力端子を有し、マイナス側はアンテナ1とアンテナ2に接続し、プラス側はアンテナ1とアンテナ2をスイッチ機構により切り替え可能にされている。図14(B)の場合は、ダイバシティ機能を持たない通常の2端子のICチップ3nを使用し、アンテナ1とアンテナ2が当該2端子に接続している。
【0011】
図14(B)のように、スイッチ機構がないICチップ3nを使用した場合(ダイバシティ機能を使用しない場合)、切断予定線5から切断前の状態では、主として大型で通信距離の長いアンテナ1が動作するが、小型で通信距離の短いアンテナ2も接続されたままなので、アンテナ2が接続されていることによる影響を加味してアンテナ設計を行う必要がある。このため、設計が難しくなる問題がある。図14(A)のように、スイッチ機構を持つICチップ3dを使用した場合(ダイバシティ機能を使用した場合)、切断前の状態でもアンテナ1またはアンテナ2のいずれかを、他方を遮断して使用するので、独立した2つのアンテナに近い特性を示すため、アンテナ設計が容易になる利点がある。
【0012】
本願に関連する先行技術として、特許文献1乃至特許文献3がある。特許文献1は、900MHz帯等の無線タグに関し、ラベルの切断に際しアンテナを切断することを記載している。しかし、同文献の無線タグでは、ダイポールアンテナの両端を切断するので、当初の無線タグと切断後の無線タグでは共振周波数が変化してしまう問題がある。共振周波数が変化すれば、2種類のリーダライタを使わなければならない問題が生じる。
特許文献2と特許文献3は、ダイバシティー動作により切替え使用するアンテナ装置等について記載している。
【0013】
【特許文献1】特開2006−203637号公報
【特許文献2】特開2001−298385号公報
【特許文献3】特開2004−260563号公報
【特許文献4】特願2006−321061
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ダイバシティ機能を有するICチップを使用し、2つのアンテナの入力信号の強弱を判定し、いずれか強い方を自動的に選択させるものである。従って、切断しない用途のICタグにおいても最良の通信状態を確保するICタグの実現を目的とする。
ICタグを切断して使用する非接触ICタグにおいて、切断前には通信距離が大きく切断後は比較的小さい通信距離で通信でき、しかも切断前後において同一周波数の電波でリードライトできる非接触ICタグの実現を目的とする。
【0015】
本発明の非接触ICタグでは、切断前においては、比較的広いアンテナ面積で動作し、ゲートでの一括読み取りに適し、切断後は小型半波長ダイポールアンテナとして動作し、値札等の用途としてハンディ型リーダで読み取るのに適したICタグの実現を図る。
また、切断前のICタグにおいて、一方側のアンテナが動作中に、他方側のアンテナが共振しないようにする短絡回路の組み込みも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、ベースフィルム面のICチップを介する双方の側に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振し、指向特性が異なる2つのダイポール型平面アンテナ素子を形成した非接触ICタグにおいて、前記ICチップは、ダイバシティー機能を有し、入力端子に接続した前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを受信強度に応じ、ICチップ内部のスイッチ機構により選択可能にされていることを特徴とする非接触ICタグ、にある。
【0017】
上記非接触ICタグにおいて、前記ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子を切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていれば、切断後に小サイズのICタグとして使用することができる。
【0018】
上記課題を解決する本発明の要旨の第2は、ダイバシティー機能を有するICチップの2以上のアンテナ入力端子に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振する2つのダイポール型平面アンテナ素子が接続しており、当該ICチップが、いずれかのダイポール型平面アンテナ素子の受信強度の大きい側を選択するようにされている非接触ICタグにおいて、該ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていることを特徴とする非接触ICタグ、にある。
【0019】
上記において、一方のアンテナ素子が動作している際に、他方のアンテナ素子が共振しないように、他方のダイポール型平面アンテナ素子の一部が一方のダイポール型平面アンテナ素子に短絡するように短絡回路が設けられていれば、共振を防止して切断前のアンテナ特性を良好にすることができる。また、切断後は、前記短絡回路が無効化されることが好ましい。
【0020】
上記において、ベースフィルムの外面にプリンタ印字可能なように紙基材が積層されていれば、紙基材にICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項を印字できる。また、切断予定線を当該紙基材とベースフィルムを貫通するように形成すれば、印字記録用ラベルとした場合も切断が容易になる。またさらに、前記切断予定線の両側の前記紙基材の印字可能面には、ICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項が印字されているようにもでき、それぞれの記録内容に間違いが生じることがない。
【発明の効果】
【0021】
本発明の非接触ICタグ(請求項1)は、ダイバシティー機能を有するICチップを使用し、その双方の側に、UHF帯またはマイクロ波帯の同一周波数の電波に共振し、指向特性の異なる2つのダイポール型アンテナが形成されているので、2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを受信強度に応じて選択するので、常に最良の通信状態を確保することができる。
本発明の非接触ICタグ(請求項2)は、上記請求項1のICタグに切断予定線を設けたので、当該切断予定線から切断後には、比較的通信距離の短いアンテナ側のみが動作し、近接距離からリードライトし易いICタグとなる。
【0022】
本発明の非接触ICタグ(請求項3)は、ダイバシティ機能を有するICチップに2つの平面アンテナ素子が、切断予定線を介して接続しているが、ICチップが2つのアンテナの受信信号の強弱を判定し、いずれか強い方を自動的に選択するので、切断前にも常に最良の通信状態を確保することができ、切断後には、比較的通信距離の短いアンテナ側のみが動作し、近接距離からリードライトし易いICタグとなる。
【0023】
本発明の非接触ICタグ(請求項4)は、一方のアンテナ素子が動作中に、他方のアンテナ素子が共振しないように短絡回路が設けられているので、切断前の大きいICタグの状態で使用する際に良好な通信状態を確保できる。
【0024】
本発明の非接触ICタグがベースフィルムの外面に印字可能なように紙基材が積層されている場合(請求項6、7)には、紙基材にICチップ記録内容と共通の商品管理事項を記録が可能となる。また、切断予定線がある場合は、紙基材とベースフィルムを一緒に貫通するように切断予定線を形成することができ(請求項7)、その両側の紙基材に、ICチップ記録内容と共通の商品管理事項を記録することができ、非接触ICタグを切断した後においても、双方の対応関係の検索等を容易に行うことができる(請求項7、8)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を、さらに詳しく説明する。
図1は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の例を示す図、図2は、ICチップ装着部の詳細構造図、図3は、図1の非接触ICタグに切断予定線を設けた図、図4は、切断前の非接触ICタグの指向性を示す図、図5は、切断後の非接触ICタグの指向性を示す図、図6は、指向性の違いを説明する図、図7は、切断前の非接触ICタグの指向性を示す2次元図、図8は、切断後の非接触ICタグの指向性を示す2次元図、図9は、切断前のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図、図10は、切断後のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図、図11は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の他の例を示す図、図12は、平面アンテナからなるリーダライタの指向特性を示す図、図13は、本発明の非接触ICタグの平面外観図、である。
【0026】
図1は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の例を示す図である。本発明の非接触ICタグ1の平面アンテナ素子4は、図1のように、2つのアンテナ素子41とアンテナ素子42からなり、それぞれのアンテナ素子41,42は、ICチップ3のアンテナ入力端子に接続している。アンテナ素子41とアンテナ素子42は、共に半波長ダイポール型アンテナであるが、左側のアンテナ素子41は、右側よりもやや大きい形状にされている。左右のアンテナ素子は、その大きさや指向特性が異なるように設計でき、その場合には、いずれかの信号入力の大きいアンテナを自動選択して動作させられるという特徴がある。
なお、アンテナ素子4はベースフィルム11面に形成され、アンテナ素子4とICチップ3面は、プラスチックフィルムからなる表面保護シートで全体が被覆されている。
【0027】
このICタグ1に使用するICチップ3はダイバシティー機能を有するものであって、2以上のアンテナ入力端子を有している。ダイバシティー機能は、入力端子に接続された2つの平面アンテナ素子41,42の受信波を増幅してその強弱を判定し、スイッチングを行う。ICチップ3の2つの増幅回路は判定を正確に行うため、増幅特性、周波数特性等の電気的特性の同一性が要求される。
【0028】
ICチップ3の装着部から左側に屈折する線路(太い実線)41a,41bは、大きい通信距離のダイポールアンテナ41として機能する部分であり、線路全体の合計長が、略半波長になるようにされている。図中、一点鎖線で囲まれた部分が、その大きい状態のICタグとして動作し、二点鎖線で囲まれた部分が小さい状態のICタグとして動作する。 右側は折り畳みダイポールであるが、ICチップ3に通じる線路を含めた線路(細い実線)42a,42bの全体の合計長が略半波長にされている。ICチップ3のダイバシティ機能によって、一点鎖線部と二点鎖線部を切り替え接続することができる。
なお、図1の場合、ICチップ3は、平面アンテナ素子42の中心位置からややずれた位置に装着されている。これは、ラベル表面に印字される可能性がある部分を避けたもので、電気的な理由は特にない。
【0029】
半波長ダイポールアンテナでは、照射される電波の半波長の電流分布が生じる形状に設定されている。例えば、UHF帯を954MHzとした場合、1波長は31.4cm、半波長では15.7cmとなり、その条件を満たすとき効率よく電波との共振が生じる。
通常、ベースフィルム11の誘電率やアンテナの抵抗値も考慮して160mm程度になるように設計する。ラベルとした場合の基材サイズがあまり大きくならないように、アンテナを折り畳み形状等にして、ICタグラベルの1単位の長さが10cm、幅3cm〜5cm程度の大きさ(基材サイズ)に製造される。マイクロ波帯の場合(2.45GHz)では、より短縮された形状のアンテナになる。折り畳みダイポールの場合、原則として線路の合計長が波長に適合する長さになるが、折り畳みが接近し過ぎると空間で結合するので、設計上の工夫が必要になる。
【0030】
図1のアンテナ素子では、大きい状態のICタグ1の動作中において、共振を防止する工夫がされている。図1中、符号46,47,48の回路は短絡部を形成しているが、この短絡部が無い場合は以下の問題が生じる。すなわち、大きい状態のICタグ1を動作させようとするとき、小さい状態のICタグ2において素子として動作する小型ダイポールアンテナ42が希望の周波数に共振した状態であると、両方のアンテナとしての動作が競合し、総合的に利得の低下を招くことが生じる。そのため、大きい状態のICタグ1においては、小さい状態のICタグ2において素子として動作する部分を一部短絡化し共振周波数をずらしている。それが短絡部46,47,48であり、この短絡部はICタグを切断予定線5から切断すると同時に無効化され、小さい状態のICタグは本来の小型半波長ダイポールアンテナ42としての動作を行う。
【0031】
短絡部を設けることは、次のような副次的効果も生じる。ICチップのような半導体は一般的に静電気による高電圧がかかると破壊される危険がある。静電気は、製造工程でも実際の使用場面でも容易に発生する。そのため半導体内部にも高電圧に対する保護機構が内蔵されている場合が多いが、現実には静電気による破壊は皆無ではない。大きい状態のタグ1では、符号41a,41bの部分がICチップ3の端子に接続しているが(図2の符号31,32)、短絡部を設けることによって、41b−短絡部48−42a−42b−短絡部46−41aの経路で41b−41a間がショートされ、仮に41a−41b間に高電圧が発生しても上記経路を通じて放電され、ICチップ端子31,32間に高電圧がかかるのを防ぐことができ、これにより静電気による破壊の危険を減少させることに寄与する。この構造はアンテナ設計時にあらかじめ考慮することで、送受信の能力を阻害しないものとすることができる。
【0032】
図2は、ICチップ装着部の詳細構造図である。図2(A)では、回路状態をわかり易くするため、ICチップ3を透明に図示している。図2(B)のように、ICチップ3は3つの入力端子を有し、左側の半波長ダイポールアンテナ41は、アース端子31とアンテナ端子32に接続し、右側の半波長ダイポールアンテナ42は、アース端子31とアンテナ端子33に接続している。アース端子31は左右のアンテナについて共通である。
図2(B)では、ICチップ3のスイッチ機構34が、端子31と32を接続しているので左側の半波長ダイポールアンテナ41が動作状態にあることになる。
【0033】
図3は、図1の非接触ICタグに切断予定線5を設けた図である。図3(A)は切断前、図3(B)は切断後の非接触ICタグ、である。前記のように、アンテナ素子41とアンテナ素子42の指向特性を異なるように設計できるが、図3(A)の切断前においては、通常の非接触ICタグの読み取り状態では、指向特性が同じでもアンテナ形状の大きい左側のアンテナ素子41の入力信号が大きくなる。従って、切断前では通常の場合、一点鎖線で囲った左側のアンテナ素子41が動作し(図1参照)、切断予定線5から切断した後の小サイズ非接触ICタグ2では、勿論右側のアンテナ素子42のみが動作する。ICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子41の機能は失われる。
【0034】
一定位置の切断予定線5と表現するのは、任意位置で切断したのでは、切断後にICタグのアンテナとして十分に機能しなくなる場合があり、設計された所定位置から切断する必要があるからである。従って、切断予定線5は切り取りし易いように、予めミシン目線等により形成されている。切断予定線5は、ICチップ3に近接した位置に設ける。近接した位置とは、ICチップ3に近接するアンテナ素子42の左端から、1mm〜10mm程度の位置のことである。
【0035】
非接触ICタグ1の切断前の大きいサイズ状態では、アンテナ素子41とアンテナ素子42のいずれかかが選択されて動作するが、通常は大サイズのアンテナ素子41が選択され、半波長ダイポールアンテナとしてはたらく。切断後の小さいサイズの状態では、半波長ダイポールアンテナ42部分のみが機能する。いずれも、UHF帯またはマイクロ波帯の同一の所定周波数の電波に共振するようにされている。一般に、サイズが大きい状態では通信距離も長く、サイズが小さい状態では通信距離は短縮される。
【0036】
アンテナ4の導線は、通常の非接触ICタグのように、プリントパターンであるか金属箔のエッチングパターンである。一般に、プラスチックフィルムに金属箔(10μmから20μm程度の厚みのアルミニウム箔や銅箔)をラミネートした基材に印刷レジストを用いパターン印刷するか、感光性レジストを塗布した面にフォトマスクを介して露光し、その後、レジスト膜を介して金属箔をエッチングして作られる場合が多い。上記厚み範囲の金属箔であれば、アンテナ線路の抵抗値が適切である。印刷パターンや金属蒸着層の場合は、抵抗値が高過ぎることになる場合が多い。
【0037】
本発明の非接触ICタグ1(切断前)と小さい状態の非接触ICタグ2(切断後)は、アンテナのインピーダンスとICチップ3のインピーダンスと、両者のマッチングが取れるように調製されている。アンテナのインピーダンスのマッチング(整合)は、アンテナパターンの形状や、基材である誘電体や磁性体の組み合わせでされるが、本発明ではアンテナパターン形状によりマッチングがなされている。具体的には、ヘアピンマッチ回路(インピーダンスを複素数にするための回路)43等により整合するようにされている。
左側のアンテナ素子41の先端部のブロック状パターン44,45もインピーダンス調製のためのものである。インピーダンスが整合しない場合は、給電部で電波が反射する問題が生じる。
【0038】
図4は、切断前の非接触ICタグの指向特性を示す図、図5は、切断後の非接触ICタグの指向特性を示す図、であり、それぞれ、座標軸(A)と、3次元の指向性(B)を示している。切断前のICタグの大きい状態では、図3(B)のように、通信距離が大きくY軸を軸芯とするドーナッツ状の指向特性を示している。一方、切断後のICタグの小さい状態では、図5(B)のように、通信距離が小さくX軸を軸芯とするドーナッツ状の指向特性を示している。
【0039】
図6を参照して指向性の違いが生じる理由を説明する。大きい状態のICタグ1では、図6(A)のように、左側のアンテナ素子41が動作するが、長辺方向に配置されたダイポールアンテナと素子配置が概ね類似しているため、その指向性は長辺方向に電界面を合わせたダイポールアンテナと近いものとなる。一方、小さい状態のICタグ2では、図6(B)のように、短辺方向に広がって配置されたダイポールアンテナであり、その指向性は短辺方向に電界面を合わせたダイポールアンテナのそれと近いものとなる。一般に、電界面はダイポールアンテナの向きと一致し、磁界面は電界面に直交する。
【0040】
なお、アンテナの指向性は無限遠から見た場合を考えるのが通例である。従って、ICタグの大きさ自体は無い(点として扱う)ことになる。大きい状態のタグでは、左側のアンテナから電波がでるが、座標原点は区別して表示するようにはしていない。
図7と図8は、切断前後の非接触ICタグの指向性を示す2次元図である。図7の、切断前の非接触ICタグ1は、X−Z面が円形の利得を示し、Y−Z面が「8」の字状の利得を示す。最大利得は共に0dB近くになっている。図8の、切断後の非接触ICタグ2は、X−Z面が「8」の字状の利得を示し、Y−Z面が円形の利得を示している。アンテナの最大利得は、共に−4dBに近くなっている。
【0041】
図9は、切断前のICタグのアンテナ利得(A)とリターンロス(B)を示す図であり、図10は、同様に切断後のアンテナ利得(A)とリターンロス(B)を示す図である。 図1のアンテナについての計算値(有限要素法によるシュミレーション計算結果)である。いずれの場合も、950MHz付近でアンテナ利得が最大となり、リターンロスが最小となるようにされている。上記は、わが国のUHF帯に特性を合わせるものであるが、マイクロ波帯や他国の周波数帯に特性を合わせて調製できることは明らかである。
【0042】
なお、アンテナ利得は、アンテナが希望の方向から来る電波を受信する能力を表しており、特殊な用途を除き値が大きいほど良好な特性であるといえる。希望の周波数において最高となるように設計するのが一般的である。基準アンテナとして等方性アンテナを用いた場合を絶対利得(dBi)、ダイポールアンテナを用いた場合を相対利得(dBd)とすると、(絶対利得)=(相対利得)+2.15dB、の関係がある。
リターンロスとは、アンテナとICタグ用チップとの電気的整合の指標であり、値が低いほど良好な特性である。アンテナへの入射電力と接点での反射電力の比で表され、全反射してすべての電力が戻ってきた場合は0dB、電力が戻ってこなかった場合は−∞dBを示す。従って、希望の周波数において最低になるように設計するのが一般的である。
リターンロスはアンテナ利得にも影響を与えるパラメータであり、アンテナ利得のピークとリターンロスのピークは通常ほぼ一致する。図9、図10の場合、大サイズ状態のICタグ1と小サイズ状態のICタグ2では、アンテナ利得ピーク、リターンロスピーク共にほぼ一致しており、サイズが変わっても同じ周波数に共振していることがわかる。
【0043】
図11は、非接触ICタグの平面アンテナ素子の他の例を示す図である。図11の例でも切断予定線5から切断して小サイズ非接触ICタグ2として使用することができる。
図11(A)の切断前の大きいサイズの状態では、半波長ダイポールアンテナ41が主として動作し、図11(B)の切断後の小さいサイズの状態では、半波長ダイポールアンテナ42が動作する。ICチップ3はダイバシティ機能を有するもので、図1の場合と同様に3つの端子に装着されている。平面アンテナ素子4の全体長(直線距離)も100mm以内にすることができ、幅は、30〜40mm程度にできる。その他の構成は、図1の非接触ICタグ1と同様になる。
【0044】
図12は、平面アンテナからなるリーダライタの指向特性を示す図である。1素子平面アンテナからなるものであり、図12(A)のように、平面アンテナに直交するZ軸方向に対して指向性が高くなるようにされている。図12(B)のように、Z軸の方向がICタグの方向に一致するようにすれば、長い通信距離が得られることになる。
なお、上記リーダアンテナの指向性は、直線偏波で計算しているが、円偏波でもほぼ同様の指向性となる。
【0045】
リーダライタ用のアンテナには円偏波のものと、直線偏波のものがある。以下に、最も一般的な直線偏波アンテナであるダイポールアンテナを使用したタグと組み合わせて使用する場合について述べる。これはICタグに限らず、円偏波と直線偏波の関係についての一般論と捉えることもできる。
・リーダアンテナに直線偏波のものを用いると、タグの姿勢により損失が生じ通信距離が減少することがある。この損失は、タグの姿勢と偏波の向き(電界面の向き)の角度により増減し、お互いの角度が0度であるとき損失が最小となり、お互いに直交するときに損失が最大(理論的に無限大)となる。従って、タグの姿勢と偏波の向きをできる限り一致させて使用する必要がある。
・リーダアンテナに円偏波のものを用いると、タグの姿勢により損失の変動を減少させることができる。タグを横長に置いた場合と縦長に置いた場合、原理的には損失の差、すなわち通信距離の差はない。しかし、この場合のデメリットとして、最大通信距離の減少が挙げられる。円偏波リーダアンテナを用いると原理的に3dBの損失が生じ、直線偏波のリーダアンテナを用いたときに比べ最大通信距離が約70%となる。
【0046】
実際のICタグの運用においては、タグの姿勢を指定できない場合が多いので、読み取り率を上げるために、リーダアンテナには円偏波のものを用いることが多い。しかしながら周囲の電波反射物によってICタグの位置における電界強度が複雑に変化するため、一概にどちらが良いとはいえない側面があり、場合によっては直線偏波アンテナを使用した方が良い読み取り率が得られる可能性もあると考えられる。
【0047】
実際の非接触ICタグ1は印字適性を備えさせるため、ラベル用紙等によりアンテナ面を被覆するので、通常はアンテナ線は見えないようにされている。一般的には、ブランドタグと称して、商品名や製造メーカー、商品価格等を印字した紙ラベルを、まず製造する。次に、このブランドタグの半分側の片に対して、商品タグ発行機を用いて、データ記録済みの非接触ICタグラベルをラベル貼り機を用いて貼り込みする。その後、ブランドタグをICタグを内側にして二つ折りにする。二つ折りにしないで、ICタグが片面に見えるようにする場合もある。このような状態にされた非接触ICタグ1は商品タグとも呼ばれ、印字やバーコードの記録とICチップ3に対する電子的記録との双方が可能な利点がある。これらの詳細については、出願人の先の出願(特願2005−195785号等)にも記載されており、当該製造方法により最終の製品に仕上げることもできる。
【0048】
図13は、本発明の非接触ICタグの外観図である。図13(A)は全体サイズの平面図である。非接触ICタグ1は、紙ラベルで覆われた形態なので、ICタグのアンテナ4は外面からは実際には見えない。一定位置の切断予定線5は、ICタグのベースフィルム11と表面保護シート、紙ラベルを一緒に貫通するようにミシン目線等により形成されている。切断予定線5は、通常、非接触ICタグ1の全体を分断するように形成され、その一方側は比較的に大きな面積を有し、他方側はやや小さな面積に形成されることが多い。切断予定線5を介する非接触ICタグ1の両側の紙ラベル面には、ICチップ3のメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項8が印字されている。商品管理事項8とは、商品名や製造メーカー名、サイズや形状、価格等の事項である。
【0049】
非接触ICタグ1のアンテナ4の全長(直線距離)L1(図1参照)は、100mm程度以内にされる。全長が大きければ、アンテナ設計が容易になるが、4インチ以内に納めることが、EPCグローバルにより規定されている。アンテナ2の幅L2は設計上、30mm〜40mm程度となるが、ラベル自体の全長Lと幅Hは、使用目的や使用する基材や積層する紙ラベル次第であり自由に決定できることになる。
図13(B)は、切断後の非接触ICタグ2の図である。ベースフィルム11面にアンテナ素子42に装着したICチップ3を有し、その片面または両面に紙ラベル基材が積層されている。ひも通し孔9に通した紐等により商品等に付することもできる。
【0050】
非接触ICタグ1の使用開始時に連続してデータを書き込みする場合は、ICタグ連接体を間欠的に送りながら、低出力のリーダライタの近接位置(1〜3cmの距離)に置き、対象のICタグ1にのみ電波が届くようにして書き込みする。書き込み対象のICタグ1以外をシールドして書き込みするものであってもよい。ラベル貼り機でブランドタグに貼り込みする場合は、貼り込み直前にデータを書き込みする。ブランドタグに印字するデータとのマッチングが図られ、異なるデータが書き込まれないようにされている。なお、書き込みとは、主として書き込みに使用するデータをリーダライタから受信し、ICチップ3のメモリに書き込みする意味で、ICチップ3のデータ(例えば、ユニークID)を読み取り可能なことは当然のことである。
【0051】
UHF帯ICタグが使えるわが国の周波数帯は、前記のように高出力型が、952M〜954MHzの2MHz、低出力型が952M〜955MHzの3MHzとされている。 UHF帯ICタグリーダライタには、設置型として、シンボル・テクノロジズ社の「XR480−JP」がある。このもののアンテナはかなり大型となる。
低出力ハンディ型リーダライタには、株式会社デンソーウェーブから「BHT−230QWID」(952M〜955MHz;出力10mW)が近く発売予定である。読み取り距離は、〜10cm程度と見られる。他の低出力型のUHF帯ICタグとしては、富士通株式会社のリーダライタを使用できる。例えば、Multipad本体「FHT401SS1」にUHF帯RFIDタグにアクセスするための、CFタイプリーダライタ「TFU−RW526」を本体に差し込みして使用するできる。この場合の通信距離は、約3cm〜10cmとなる。
【0052】
非接触ICタグ1の製造は、従来の非接触ICタグの製造と同一の工程により製造できる。ベースフィルム11としては、ベースフィルム面に金属箔(例えば、アルミニウムや銅箔)をラミネートした材料を使用する。この、ベースフィルム11の金属箔面に感光性フォトレジストを塗工した後、フォトマスクを用いて露光感光させてレジスト層を形成する。フォトマスクは、前記した構成のアンテナパターンを有するものとする。フォトマスクを使用しないで、レジストパターンを印刷する方法でもよい。
【0053】
次いで、金属層をエッチングして所定のパターンに形成する。エッチング後、ベースフィルム11のダイポールアンテナ2にICチップ3を異方導電性接着フィルム等により装着した後、表面保護シートをラミネートし、ベースフィルム裏面は粘着剤加工を行う。
ICチップ3には、UHF帯やマイクロ波帯対応ICチップを使用する。例えば、米インピンジ社「Monza」があり、ダイバシティ機能を使用している。
切断予定線5は、紙製のブランドタグを表面または表裏面に貼り付けした後、アンテナ線を切断しないように、アンテナ線を検知しながらミシン目線等により数値制御して形成することが必要になる。
【実施例】
【0054】
図1のアンテナパターンに基づき、設計周波数953MHzの非接触ICタグを試作した。厚み38μmの透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに、厚み12μmのアルミニウム箔をラミネートし、ベースフィルム11として使用した。
その後、図1のようなアンテナパターンをレジスト印刷しエッチングした。なお、平面アンテナ素子4の全長(直線距離)L1を87.5mmとし、幅(直線距離)L2を26.0mmとし、半波長ダイポールアンテナ42の長さ(直線距離)L3を29.5mmとなるようにした。短絡部46,47,48も図1のように設けた。アンテナ素子41部分の太線の線路幅を1.0mm、アンテナ素子42部分の細線の線路幅を0.5mmとした。
【0055】
図1のアンテナ4のチップ装着部に、ダイバシティ機能を有する非接触タグ用ICチップ[米インピンジ社「Monza」]3を装着した。このICチップ3のインピーダンスは、33±j112(Ω)のものである。その後、ICチップ3と平面アンテナ素子4面に、厚み20μmの透明2軸延伸PETフィルムを表面保護シートとしてラミネートし、ベースフィルム11のアンテナ4とは反対側面に粘着剤(剥離紙付き)加工を行った。その後、1つのICタグ付きアンテナシートのサイズを35mm×95mmとなるように、剥離紙面にラベル型抜きを行った。
次いで、リーダライタ付きラベル貼り機を用いICチップ3に商品管理事項のデータを書き込みすると共に、ブランドタグ(厚み250μmのロール紙)に、同一の商品管理事項8を切断予定線5の両側に印字記録した。
【0056】
この商品管理事項8を印字済みの、ブランドタグを前記のアンテナシートの両面に、二つ折りしてラベル貼りした。その際、剥離紙は除去した。これにより、本発明の非接触ICタグ1が完成した。完成後の1つの非接触ICタグ1は、全長Lが100mm、幅Hが40mmとなった。なお、ラベル貼りの後、アンテナ線路を損傷しないように注意してミシン目線による切断予定線5と紐通し孔9を形成した。
【0057】
この非接触ICタグ1の、切断前後のICタグのアンテナ利得とリターンロスの計算値は、図9と図10のようになった。大きい状態のICタグ1では、利得は953MHzを含む920〜1000MHzの範囲でフラットな特性が得られている。また、その範囲のリターンロスは、−6dB以下となっている。小さい状態のICタグ2では、帯域は狭くなっているがアンテナ利得のピーク、リターンロスピークは共にほぼ953MHzに調製されており、サイズが変わっても953MHzに共振していることが分かる。
【0058】
完成した大きい状態の非接触ICタグ1は、4メートルの距離からの遠隔リード(シンボル・テクノロジズ社製「XR480」−JP」使用)が可能であり、切断予定線5から切断した後の小さい状態の非接触ICタグ2は、約10cmの距離からの近接リード(富士通株式会社製「FHT401SS1」使用)が可能であった。いずれの場合も、商品タグに印字記録したと同一の共通の商品管理事項を読み取りすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0059】
上記の実施例等では、わが国におけるUHF帯(952〜955MHz)について記載しているが、米国におけるUHF帯(915±14MHz)、その他のUHF帯やマイクロ波帯にもにも適用可能なことは当業者には自明のことである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】非接触ICタグの平面アンテナ素子の例を示す図である。
【図2】ICチップ装着部の詳細構造図である。
【図3】図1の非接触ICタグに切断予定線を設けた図である。
【図4】切断前の非接触ICタグの指向性を示す図である。
【図5】切断後の非接触ICタグの指向性を示す図である。
【図6】指向性の違いを説明する図である。
【図7】切断前の非接触ICタグの指向性を示す2次元図である。
【図8】切断後の非接触ICタグの指向性を示す2次元図である。
【図9】切断前のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図である。
【図10】切断後のICタグのアンテナ利得とリターンロスを示す図である。
【図11】非接触ICタグの平面アンテナ素子の他の例を示す図である。
【図12】平面アンテナからなるリーダライタの指向特性を示す図である。
【図13】本発明の非接触ICタグの平面外観図である。
【図14】ダイバシティー機能によるアンテナ選択を説明する図である。
【図15】従来の商品ラベルの使用方法を説明する図である。
【符号の説明】
【0061】
1 非接触ICタグ
2 小サイズ非接触ICタグ
3 ICチップ
4 平面アンテナ素子、アンテナ
5 切断予定線、ミシン目線
8 商品管理事項
11 ベースフィルム
41 半波長ダイポールアンテナ、アンテナ素子
42 半波長ダイポールアンテナ、アンテナ素子
43 ヘアピンマッチ回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルム面のICチップを介する双方の側に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振し、指向特性が異なる2つのダイポール型平面アンテナ素子を形成した非接触ICタグにおいて、前記ICチップは、ダイバシティー機能を有し、入力端子に接続した前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを受信強度に応じ、ICチップ内部のスイッチ機構により選択可能にされていることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項2】
前記ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子を切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていることを特徴とする請求項1記載の非接触ICタグ。
【請求項3】
ダイバシティー機能を有するICチップの2以上のアンテナ入力端子に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振する2つのダイポール型平面アンテナ素子が接続しており、当該ICチップが、いずれかのダイポール型平面アンテナ素子の受信強度の大きい側を選択するようにされている非接触ICタグにおいて、該ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項4】
一方のアンテナ素子が動作している際に、他方のアンテナ素子が共振しないように、他方のダイポール型平面アンテナ素子の一部が一方のダイポール型平面アンテナ素子に短絡するように短絡回路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1の請求項記載の非接触ICタグ。
【請求項5】
切断予定線から切断後は、前記短絡回路が無効化することを特徴とする請求項4記載の非接触ICタグ。
【請求項6】
ベースフィルムの外面にプリンタ印字可能なように紙基材が積層され、前記紙基材には、ICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項が印字されていることを特徴とする請求項1記載の非接触ICタグ。
【請求項7】
ベースフィルムの外面にプリンタ印字可能なように紙基材が積層され、当該紙基材とベースフィルムを貫通するように前記切断予定線が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1の請求項記載の非接触ICタグ。
【請求項8】
前記切断予定線の両側の前記紙基材の印字可能面には、ICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項が印字されていることを特徴とする請求項7記載の非接触ICタグ。
【請求項1】
ベースフィルム面のICチップを介する双方の側に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振し、指向特性が異なる2つのダイポール型平面アンテナ素子を形成した非接触ICタグにおいて、前記ICチップは、ダイバシティー機能を有し、入力端子に接続した前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを受信強度に応じ、ICチップ内部のスイッチ機構により選択可能にされていることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項2】
前記ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子を切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていることを特徴とする請求項1記載の非接触ICタグ。
【請求項3】
ダイバシティー機能を有するICチップの2以上のアンテナ入力端子に、UHF帯またはマイクロ波帯の所定周波数の電波に共振する2つのダイポール型平面アンテナ素子が接続しており、当該ICチップが、いずれかのダイポール型平面アンテナ素子の受信強度の大きい側を選択するようにされている非接触ICタグにおいて、該ICチップに近接した位置に、前記2つのダイポール型平面アンテナ素子のいずれかを切断する一定位置の切断予定線が設けられており、当該切断予定線から切断後はICチップが残存しない側のダイポール型平面アンテナ素子の機能を失わせるようにされていることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項4】
一方のアンテナ素子が動作している際に、他方のアンテナ素子が共振しないように、他方のダイポール型平面アンテナ素子の一部が一方のダイポール型平面アンテナ素子に短絡するように短絡回路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1の請求項記載の非接触ICタグ。
【請求項5】
切断予定線から切断後は、前記短絡回路が無効化することを特徴とする請求項4記載の非接触ICタグ。
【請求項6】
ベースフィルムの外面にプリンタ印字可能なように紙基材が積層され、前記紙基材には、ICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項が印字されていることを特徴とする請求項1記載の非接触ICタグ。
【請求項7】
ベースフィルムの外面にプリンタ印字可能なように紙基材が積層され、当該紙基材とベースフィルムを貫通するように前記切断予定線が形成されていることを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1の請求項記載の非接触ICタグ。
【請求項8】
前記切断予定線の両側の前記紙基材の印字可能面には、ICチップのメモリに記録されている内容と少なくとも一部が共通な商品管理事項が印字されていることを特徴とする請求項7記載の非接触ICタグ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−167145(P2008−167145A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−354240(P2006−354240)
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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