説明

鞍乗型車両のサスペンション構造

【課題】車両の小型化を図ることが可能な鞍乗型車両のサスペンション構造を提供する。
【解決手段】クッションアーム55を、リヤクッションユニット51の下方において車両前後方向に延びるように配置し、前後方向に延びるリヤクッションユニット51の後端に、クッションアーム55の一端を連結する。コネクティングロッド59を、クッションアーム55の下方に配置し、クッションアーム55の他端に、コネクティングロッド59の一端を連結する。ジョイントケース10に、そのスイングアームピボット42よりも、さらに前方に延びる前方突出部60を設け、この前方突出部60を、クッションアーム55の中間部と車体との連結位置よりも下方かつ前方の位置で、コネクティングロッド59の他端に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後輪を支持するスイングアーム及びこのスイングアームの揺動を規制するクッションユニット等の部材で構成される鞍乗型車両のサスペンション構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の技術に関し、特許文献1には、床下に前後方向に延びるようにリアクッションを配置したスクータ型車両において、リアクッションの後端にリンク機構を連結し、このリンク機構にスイングアームの前方下部を連結した構造が開示されている。
【0003】
この構造では、リンク機構をアーム状の回動リンクと連結ロッドとを回動可能に連結することで構成し、回動リンクを鉛直方向に沿わせた状態で回動リンクの下端をリアクッションの後端に連結し、回動リンクの上端に連結ロッドの一端を連結して、斜め後下方に沿わせて連結ロッドの他端をスイングアームに連結させている。
(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3876627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に係る構造では、アーム状の回動リンクを鉛直方向に延びるように配置してリアクッションの後端に連結させるため、リアクッションが前方に大きく張り出し、車両前後方向に長くなり車両全体が大型化してしまう。
【0006】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであり、車両の小型化を図ることが可能な鞍乗型車両のサスペンション構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載の発明は、車両前後方向に延びるように配置され、その後部に後輪(7)を軸支し、その前部に備えたスイングアームピボット(42)によって車体(6)に上下揺動可能に軸支されるスイングアーム(S)と、車両前後方向に延びるように配置され、その前端が車体(6)に連結され、弾発部材(53)によって前記スイングアーム(S)の揺動量を規制するクッションユニット(51)と、前記スイングアームピボット(42)よりも前方の位置で、その中間部を車体(6)に回動可能に支持され、その一端を前記クッションユニット(51)の後端に連結するクッションアーム(55)と、前記クッションアーム(55)の他端に、その一端を連結し、その他端を前記スイングアーム(S)に連結するコネクティングロッド(59)と、を備えた鞍乗型車両のサスペンション構造において、前記クッションアーム(55)は、前記クッションユニット(51)の下方において車両前後方向に延びるように配置され、前記クッションユニット(51)の後端に、その一端が連結され、前記コネクティングロッド(59)は、前記クッションアーム(55)の下方に配置され、前記クッションアーム(55)の他端に、その一端が連結され、前記スイングアーム(S)は、前記スイングアームピボット(42)よりも、さらに前方に延びる前方突出部(60)を備え、前記前方突出部(60)は、前記クッションアーム(55)の中間部と車体(6)との連結位置よりも下方かつ前方の位置で、前記コネクティングロッド(59)の他端に連結されることを特徴とする鞍乗型車両のサスペンション構造を提供する。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造において、前記鞍乗型車両が、前輪(2)を含む操舵系(4)を支持し、車両幅方向中央に位置するヘッドパイプ(24)と、前記ヘッドパイプ(24)から車両幅方向中央において後下方に延びるメインフレーム(25)とを備えた車両であり、前記クッションユニット(51)の前端が、前記メインフレーム(25)の下部に支持されることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造において、前記鞍乗型車両が、運転者が着座するシート(5)と、前記シート(5)の前方に配置され運転者が足を載せることが可能な左右のステップ部(13)と、前記左右のステップ部(13)の間の車幅方向中央に配置され上方に立ち上がるトンネル部(20)と、前記トンネル部(20)内に配置されるエネルギー貯蔵庫(22)とを備えた車両であり、前記スイングアーム(S)が、パワーユニット(8)を一体的に備えるスイングユニット(U)として構成され、前記クッションユニット(51)が、前記エネルギー貯蔵庫(22)の下方に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造において、前記鞍乗型車両が、前記エネルギー貯蔵庫(22)の後方に収納ボックス(32)を有し、前記クッションアーム(55)が、前記収納ボックス(32)の下方に配置されることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造において、前記スイングアーム(S)は、その後部に左右一対の後輪(7)を支持し、この後部は、前記スイングアームピボット(42)が備えられる前記スイングアーム(S)の前部においてロール方向に回動可能に挿入されたロール軸(40)に固定されて、前記スイングアーム(S)の前部に対してロール方向に回動可能に軸支されるものであり、前記ロール軸(40)は、前記前方突出部(60)内に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造において、前記ロール軸(40)の軸中心が、前記スイングアームピボット(42)と、前記前方突出部(60)の前記コネクティングロッド(59)との連結部(60A)と、の間に通るように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、クッションユニットとスイングアームとの間に、クッションアームとコネクティングロッドを連結させたので、スイングアームの揺動特性を比較的自由に設計することができる。そして、クッションユニットとクッションアームとを前後方向に延びるように配置し、かつ上下に重ねて配置したので、クッションユニットの前端からスイングアームピボットまでの距離を詰めることができ、車両の前後長を短くして車両の小型化を図ることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、メインフレームにクッションユニットの前端が支持されるため、クッションユニットを支持するための特別な部材が必要なく、また前方に位置する強度部材であるメインフレームに直接的にクッションユニットを取付けるので、クッションユニットの前端からスイングアームピボットまでの距離をさらに詰めることができ、車両の前後長をさらに短くすることができる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、シート前方にエネルギー貯蔵庫を備える鞍乗型車両において、エネルギー貯蔵庫の下方にクッションユニットが配置されることで、シート前方にエネルギー貯蔵庫を備える構成の車両の前後長の短縮化を図ることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、収納ボックスの下方においてクッションアームを前後方向に延びるように寝かせて配置されるので、容量の大きい収納ボックスを車両に配置することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、後輪を左右一対備える鞍乗型車両において、スイングアームの後部を前部に対してロール方向に回転可能とするロール軸を、スイングアームピボットよりも前方に突出する前方突出部内に配置することで、スイングアームのスイングアームピボットよりも後方の部位の長さを短くすることができ、車両の前後長を短くすることができる。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、デッドスペースを有効利用して、ロール軸を配置できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る自動三輪車の左側面図である。
【図2】同自動三輪車の要部の左側面図である。
【図3】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図4】図2のB−B線に沿う展開断面図である。
【図5】図2のC−C線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で用いる図面において、矢印FRは車両の前方を示し、矢印UPは車両の上方を示し、矢印LHは車両の左方を示している。
【0021】
図1は本発明の実施形態に係る構造が適用された自動三輪車1を示している。自動三輪車1は1つの前輪2を回動自在に保持するとともに上部にバーハンドル3を設けた操舵系である操舵装置4を備え、操舵装置4は乗員が着座するシート5を具備した車体6の前部に操舵可能に支持されている。車体6の後方には、左右一対の後輪7,7と、これら後輪7,7を駆動するパワーユニット8とを具備したスイングアームSが配置されている。
【0022】
スイングアームSはスイングアームピボット42によって車体6に上下揺動可能に連結されている。車体6では、バーハンドル3の前方にフロントカバー11が設けられ、フロントカバー11の上部には、ウインドスクリーン12が取付けられている。また、バーハンドル3とシート5との間の下方には、乗員が足を載せる左右一対のステップフロア13,13が設けられている。ステップフロア13,13は車幅方向中央から左右に偏倚して設けられている。
【0023】
シート5の後方から左右一対の支柱14,14が立設され、ウインドスクリーン12と支柱14,14とにルーフ15が架設され、シート5の後方には荷台16が配置されている。図中符号17は、前輪2の上方を覆うフロントフェンダを示し、符号18は、ステップフロア13,13の前部から上方に延び、シート5に着座した乗員の脚部を前方から覆うレッグシールドを示している。ウインドスクリーン12、ステップフロア13、支柱14,14及びルーフ15で囲まれる空間によって、乗員が乗り込むキャビン19が形成されている。
【0024】
ステップフロア13,13の内側には、車幅方向中央に配置されて上方に立ち上がるトンネル部20が設けられ、トンネル部20の上方に乗員が足を通す足くぐり空間21が形成される。トンネル部20は車幅方向に一定の幅を有し、トンネル部20の内部にはエネルギー貯蔵庫としての燃料タンク22が収容されている。
【0025】
車体6は基本骨格をなす複数の金属製フレーム部材を溶接等して一体化した車体フレーム23を備え、車体フレーム23は、ヘッドパイプ24と、ヘッドパイプ24から下方に延びるメインフレーム25と、メインフレーム25の下部から左右に分岐した後、後方、後方斜め上方そして後方へ延びる左右一対のサイドフレーム26,26とを備えている。各フレームは、断面中空円形状の鋼管から形成されている。
【0026】
操舵装置4は、バーハンドル3と、ステアリング軸27と、フロントフォーク28,28と、リンク29,29と、フロントクッションユニット30と、前輪2とで構成されている。ヘッドパイプ24は、上記操舵装置4が備えるステアリング軸27を回動自在に支持しており、ステアリング軸27の上部に上記バーハンドル3が設けられている。ステアリング軸27の下部に左右一対のフロントフォーク28,28が設けられ、これらフロントフォーク28,28の下部にはリンク29,29が設けられている。リンク29,29によって前輪2が回動可能に支持され、リンク29とフロントフォーク28との間には、フロントクッションユニット30が介装されている。
【0027】
上述したレッグシールド18は、メインフレーム25を後方から覆うとともに、ヘッドパイプ24及びフロントフォーク28,28を両側方から覆い、その前部でフロントカバー11に連なっている。トンネル部20は、レッグシールド18の後部に連なり、後方に延びてシート5の下方に至る。
【0028】
トンネル部20の後部には、リヤサイドカバー31が連なり、シート5の下方及びサイドフレーム26,26の外側方はリヤサイドカバー31によって覆われている。リヤサイドカバー31は、サイドフレーム26,26によって支持されている。シート5の下方、かつ、燃料タンク22の後方において、リヤサイドカバー31の内側には、収納ボックス32が収容され、収納ボックス32は、リヤサイドカバー31によって支持されている。シート5はヒンジ開閉式に構成され、開かれた状態で収納ボックス32を上方に開放させる。
【0029】
サイドフレーム26は、ステップフロア13の下方に位置して略水平に延びるダウンフレーム部33と、ダウンフレーム部33の後端から後上方に延びる傾斜フレーム部34と、荷台16の下方に位置して傾斜フレーム部34の後端から後方に延びる後方フレーム部35とを有している。スイングアームSは傾斜フレーム部34の下部に連結されている。
【0030】
スイングアームSは、前部にスイングアームピボット42、後部に後輪7,7を備え、後輪7、7が上下に揺動するように、そのスイングピボット42を車体6に軸支される。詳しくは、スイングアームSは、傾斜フレーム部34の下部に上端を上下方向に揺動自在に取付けられたエンジンハンガーリンク36の下端に、スイングアームピボット42を支持されて上下方向に揺動自在に取付けられている。また、スイングアームSは、パワーユニット8を備えるスイングユニットUであり、スイングアームSの後部にはパワーユニット8が取付けられている。
【0031】
この実施形態においてスイングアームSは、スイングアームピボット42を備えるジョイントケース10と、ジョイントケース10にロール方向に揺動可能に軸支されるロール軸40と、ロール軸40にブラケット37を介して取付けられるパワーユニット8からなる。パワーユニット8は、左右一対の後輪7,7を軸支しているため、結果として、パワーユニット8と後輪7,7とは車体6に対してロール方向に揺動可能になる。
【0032】
図2は、自動三輪車1からトンネル部20、リヤサイドカバー31等のカバー類を取り外した状態を示している。スイングアームSにおけるジョイントケース10は、その内部にロール軸40を回動可能に挿入して保持し、ケース内部とロール軸40との間にダンパ部41を介在させている。ジョイントケース10の上部にはスイングアームピボット42としての軸孔が形成され、このスイングアームピボット42にエンジンハンガーリンク36の下端が連結されている。ロール軸40は、前上方に傾いて延び、側面視でスイングアームピボット42によりも前方に突出している。
【0033】
スイングアームSに取付けられるパワーユニット8は、クランクケース43及びクランクケース43から前上方に突出するシリンダ部44を備えるエンジン45と、クランクケース43の左側部から後方に延びる伝動ケース46とを備え、伝動ケース46の内部に無段変速式の変速機構を収容して後部で後輪7,7を支持している。エンジン45のシリンダ部44には、吸気装置47及び排気装置48が接続されている。パワーユニット8、吸気装置47、排気装置48、他の機能部品及び後輪7,7は、上方から樹脂材料からなるカバー49で覆われている。
【0034】
クランクケース43の下部とロール軸40とは、ブラケット37を介してリジッドに固定され、ロール軸40がジョイントケース10にロール方向に回動可能に連結されることによって、後輪7,7が車体6に対してロール軸40を軸中心にロール方向に揺動可能とされている。また、スイングアームSは、上記エンジンハンガーリンク36を介してジョイントケース10が上下方向に揺動可能に支持されることで、車体6に対して上下方向に揺動可能とされている。また、エンジンハンガーリンク36によって、パワーユニット8の振動の車体6への伝達が抑えられる。
【0035】
スイングアームSの車体6に対する上下方向の揺動量は、リヤクッションユニット51によって規制される。リヤクッションユニット51は、側面視で、トンネル部20内において燃料タンク22の下方、かつ、収納ボックス32の下方に設けられている。リヤクッションユニット51は、円筒状のダンパユニット52の周囲に弾発部材であるスプリング53を配置し、ダンパユニット52内に軸部52Aを挿通して構成されている。
【0036】
リヤクッションユニット51の一端(前端)は、メインフレーム25の下部に溶着されたブラケット54に固定され、リヤクッションユニット51は車両前後方向に延びて、その他端(後端)がサイドフレーム26,26の上方に回動可能に支持されたクッションアーム55の一端に連結されている。クッションアーム55の他端には、コネクティングロッド59の一端が連結され、コネクティングロッド59はジョイントケース10に連結される。これにより、コネクティングロッド59及びクッションアーム55を介して、ジョイントケース10からの揺動がリヤクッションユニット51に伝達される。
【0037】
クッションアーム55は、緩やかに湾曲する弧状を呈し、側面視でジョイントケース10のスイングアームピボット42よりも前方の位置で、その中間部を回動可能に支持されている。図3は、図2のA−A線の矢視断面図である。詳しくは、サイドフレーム26,26間にはクロスフレーム56が架設されており、このクロスフレーム56の車幅方向中央領域には、上方に突出する板材のステー57,57が溶着されている。ステー57,57には車幅方向に貫通する軸孔が形成され、この軸孔に通された軸58がクッションアーム55の中間部が回動自在に支持している。
【0038】
クッションアーム55は、リヤクッションユニット51の下方において車両前後方向に延びるように配置され、より詳しくは、車両前方から後上方に延びるように斜めに傾いて配置され、リヤクッションユニット51の軸部52Aの後端に、その一端(上端部55A)を回動可能に連結させている。クッションアーム55の他端(下端部55B)は、側面視で、リヤクッションユニット51及びクッションアーム55の下方に位置するコネクティングロッド59に連結されている。
【0039】
コネクティングロッド59は、クッションアーム55とジョイントケース10とを連結させている。スイングアームSの一部であるジョイントケース10において、スイングアームピボット42よりも前方の部位には、スイングアームピボット42よりも前方に突出したロール軸40を覆うとともにロール軸40を回動可能に支持する各種部材を収容した前方突出部60が形成されている。この前方突出部60は、ジョイントケース10の一部であり、クッションアーム55の中間部とステー57,57との連結位置よりも下方かつ前方の位置まで前端を延ばし、その前端部60Aをコネクティングロッド59に連結させている。なお、ロール軸40を回動可能に支持する各種部材は、図示省略するがベアリング等である。
【0040】
コネクティングロッド59は、前方から後下方に傾く姿勢の状態で、その上端(一端)をクッションアーム55の下端部55Bに連結し、その下端(他端)を前方突出部60の前端部60Aに連結させている。
【0041】
図4は図2のB−B線に沿う展開断面を示している。リヤクッションユニット51、クッションアーム55、コネクティングロッド59、及びジョイントケース10の前端部60Aは、それぞれ回動可能に連結されている。
詳しくは、リヤクッションユニット51の軸部52Aの後端には断面コ字型のブラケット61が設けられ、このブラケット61に車幅方向に軸61Aが通され、クッションアーム55の上端部55Aが回動可能に連結されている。また、コネクティングロッド59は、平行に配置した一対の短冊状の板材62,62を備え、一端及び他端側にそれぞれ貫通孔を有し、一端(前端)側の貫通孔に軸63を通して、クッションアーム55の下端部55Bと回動可能に連結し、他端(後端)側の貫通孔に軸64を通して、ジョイントケース10の前端部60Aに回動可能に連結している。
【0042】
ジョイントケース10のスイングアームピボット42と車体側との連結について詳しく説明すると、図5に示すように、上記エンジンハンガーリンク36は、車幅方向に一定幅を有する円筒状の支持部65と、支持部65の両端側に溶着されて突出する板状の一対のステー部66,66とを有し、支持部65がサイドフレーム26,26の傾斜フレーム部34,34の下部間に配置されて、支持部65に車体側ピボット軸67を通されることで車体に対して回動可能に支持されている。
【0043】
ステー部66,66の先端側には貫通孔68,68が形成され、この貫通孔68,68には、ケース側ピボット軸69が通され、このケース側ピボット軸69はジョイントケース10のスイングアームピボット42を貫通し、エンジンハンガーリンク36に対してジョイントケース10が上下方向に揺動可能に支持している。なお、左側のサイドフレーム26(傾斜フレーム部34)には、後方かつ車幅方向内側に延びるステー70が溶着され、このステー70の先端側には、エンジンハンガーリンク36から車幅方向外側に突出するプレート71を上下から挟み込む樹脂材料からなる回動規制部材72が設けられている。この回動規制部材72によってエンジンハンガーリンク36の車体に対する揺動が規制される。
【0044】
ジョイントケース10は、上述のようにしてエンジンハンガーリンク36とコネクティングロッド59とによって垂れ下がるように支持され、この状態で、図2に示すように、ジョイントケース10のロール軸40の軸線L1は、スイングアームピボット42とコネクティングロッド59の下端との間を通る。すなわち、ジョイントケース10は、ロール軸40の軸線L1、つまりロール軸中心が、スイングアームピボット42と、前方突出部60のコネクティングロッド59との連結部(前端部60A)との間に通るように形成されている。
【0045】
こうしてジョイントケース10を、リヤクッションユニット51と連結させたので、スイングアームSが車体6に対して上下方向に揺動すると、ジョイントケース10がスイングアームピボット42を軸中心に揺動する。そして、ジョイントケース10の揺動変位量が前方突出部60、コネクティングロッド59及びクッションアーム55を介して、リヤクッションユニット51に伝わることで、スイングアームSの車体6に対しての上下方向における揺動量が規制される。
【0046】
以上に記載した本発明の実施形態では、自動三輪車1において、クッションアーム55が、車両前後方向に延びるように配置されたリヤクッションユニット51の下方において車両前後方向に延びるように配置され、リヤクッションユニット51の後端にクッションアーム55の一端が連結され、コネクティングロッド59は、クッションアーム55の下方に配置され、クッションアーム55の他端が、コネクティングロッド59の一端に連結されている。そして、本実施形態では、ジョイントケース10と、ロール軸40と、ブラケット37と、パワーユニット8とがスイングアームSを構成しており、スイングアームSの一部であるジョイントケース10がスイングアームピボット42よりも、さらに前方に延びる前方突出部60を備え、この前方突出部60は、クッションアーム55の中間部と車体との連結位置よりも下方かつ前方の位置で、コネクティングロッド59の他端に連結されている。
【0047】
このような構成によれば、リヤクッションユニット51とジョイントケース10との間に、クッションアーム55とコネクティングロッド59を連結させたので、ジョイントケース10の揺動特性を比較的自由に設計することができる。そして、リヤクッションユニット51とクッションアーム55とを前後方向に延びるように配置し、かつ上下に重ねて配置したので、リヤクッションユニット51の前端からスイングアームピボット42までの距離を詰めることができ、車両の前後長を短くし車両の小型化を図ることができる。とりわけ、小型の車両に適する。
【0048】
また、本実施形態では、メインフレーム25にリヤクッションユニット51の前端が支持されている。この構成によれば、リヤクッションユニット51を支持するための特別な部材が多く用意する必要なく、リヤクッションユニット51を車体に取付けることができる。また、前方に位置する強度部材であるメインフレーム25に直接的にリヤクッションユニット51を取付けるので、リヤクッションユニット51の前端からスイングアームピボット42までの距離をさらに詰めることができ、車両の前後長をさらに短くすることができる。
【0049】
また、本実施形態では、リヤクッションユニット51が、燃料タンク22の下方に配置されている。この構成では、リヤクッションユニット51と燃料タンク22とが前後に並ぶような場合等に比べて、車両の前後長の短縮化を図ることができる。また、リヤクッションユニット51が、収納ボックス32の下方において前後方向に延びるように寝かせて配置されているので、リヤクッションユニット51が上下に延びるような場合に比べて、容量の大きい収納ボックス32を配置することができる。
【0050】
さらに、ロール軸40は、ジョイントケース10においてスイングアームピボット42よりも前方に突出する前方突出部60内に配置されている。この構成によれば、ジョイントケース10のスイングアームピボット42よりも後方の部位の長さを短くし、車両の前後長を短くすることができる。
【0051】
加えて、ロール軸40の軸線L1方向、すなわち、ロール軸40のロール軸中心が、スイングアームピボット42と前方突出部60のコネクティングロッド59との連結部との間に通るように配置されている。この構成によれば、コネクティングロッド50及びエンジンハンガーリンク36間のデッドスペースを有効利用して、ロール軸40を配置できる。
【0052】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、本発明は自動三輪車に用いられるものとして限られるものではなく、本発明でいう鞍乗型車両は、概念的に自動二輪車や電動車両や燃料電池車両を含むものである。鞍乗型車両が自動二輪車である場合、上記実施形態のように後輪7を支持可能なパワーユニット8を搭載する車両以外の車両でよい。この場合、本発明でいうスイングアームは、車体に揺動可能に支持されて後部で後輪を支持する一般的なスイングアームを意味する。また、上記実施形態では、パワーユニット8の伝動ケース46の後部に左右の後輪7,7が支持される自動三輪車を説明したが、スクータ型の自動二輪車である場合は、本発明いうスイングアーム(スイングユニット)は、上記実施形態におけるエンジン45と伝動ケース46に対応する要素を一体に備え、その前部を車体に上下に揺動可能に支持されるユニットに対応する。
【0053】
また、本発明でいうエネルギー貯蔵庫は、エンジンに燃料を供給するタンク、モータへ電力を供給するバッテリ、モータへ電力を供給するための電力を発生させる燃料電池に水素やメタノールを供給するボンベ又タンクを概念的に含むものである。そして、本発明でいうパワーユニットは、エンジン(内燃機関)及び電動モータならびに動力を後輪に伝える動力伝達機構を概念的に含むものである。
【符号の説明】
【0054】
1 自動三輪車(鞍乗型車両)
2 前輪
4 操舵装置(操舵系)
6 車体
7 後輪
8 パワーユニット
10 ジョイントケース
13 フロアステップ(ステップ部)
20 トンネル部
22 燃料タンク(エネルギー貯蔵庫)
24 ヘッドパイプ
25 メインフレーム
32 収納ボックス
37 ブラケット
45 エンジン
46 伝動ケース
42 スイングアームピボット
51 リヤクッションユニット(クッションユニット)
53 スプリング(弾発部材)
55 クッションアーム
59 コネクティングロッド
60 前方突出部
S スイングアーム
U スイングユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びるように配置され、その後部に後輪(7)を軸支し、その前部に備えたスイングアームピボット(42)によって車体(6)に上下揺動可能に軸支されるスイングアーム(S)と、車両前後方向に延びるように配置され、その前端が車体(6)に連結され、弾発部材(53)によって前記スイングアーム(S)の揺動量を規制するクッションユニット(51)と、前記スイングアームピボット(42)よりも前方の位置で、その中間部を車体(6)に回動可能に支持され、その一端を前記クッションユニット(51)の後端に連結するクッションアーム(55)と、前記クッションアーム(55)の他端に、その一端を連結し、その他端を前記スイングアーム(S)に連結するコネクティングロッド(59)と、を備えた鞍乗型車両のサスペンション構造において、
前記クッションアーム(55)は、前記クッションユニット(51)の下方において車両前後方向に延びるように配置され、前記クッションユニット(51)の後端に、その一端が連結され、
前記コネクティングロッド(59)は、前記クッションアーム(55)の下方に配置され、前記クッションアーム(55)の他端に、その一端が連結され、
前記スイングアーム(S)は、前記スイングアームピボット(42)よりも、さらに前方に延びる前方突出部(60)を備え、
前記前方突出部(60)は、前記クッションアーム(55)の中間部と車体(6)との連結位置よりも下方かつ前方の位置で、前記コネクティングロッド(59)の他端に連結されることを特徴とする鞍乗型車両のサスペンション構造。
【請求項2】
前記鞍乗型車両は、前輪(2)を含む操舵系(4)を支持し、車両幅方向中央に位置するヘッドパイプ(24)と、前記ヘッドパイプ(24)から車両幅方向中央において後下方に延びるメインフレーム(25)とを備えた車両であり、
前記クッションユニット(51)の前端は、前記メインフレーム(25)の下部に支持されることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造。
【請求項3】
前記鞍乗型車両は、運転者が着座するシート(5)と、前記シート(5)の前方に配置され運転者が足を載せることが可能な左右のステップ部(13)と、前記左右のステップ部(13)の間の車幅方向中央に配置され上方に立ち上がるトンネル部(20)と、前記トンネル部(20)内に配置されるエネルギー貯蔵庫(22)とを備えた車両であり、
前記スイングアーム(S)は、パワーユニット(8)を一体的に備えるスイングユニット(U)として構成され、
前記クッションユニット(51)は、前記エネルギー貯蔵庫(22)の下方に配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造。
【請求項4】
前記鞍乗型車両は、前記エネルギー貯蔵庫(22)の後方に収納ボックス(32)を有し、
前記クッションアーム(55)は、前記収納ボックス(32)の下方に配置されることを特徴とする請求項3に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造。
【請求項5】
前記スイングアーム(S)は、その後部に左右一対の後輪(7)を支持し、この後部は、前記スイングアームピボット(42)が備えられる前記スイングアーム(S)の前部においてロール方向に回動可能に挿入されたロール軸(40)に固定されて、前記スイングアーム(S)の前部に対してロール方向に回動可能に軸支されるものであり、
前記ロール軸(40)は、前記前方突出部(60)内に配置されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造。
【請求項6】
前記ロール軸(40)の軸中心が、前記スイングアームピボット(42)と、前記前方突出部(60)の前記コネクティングロッド(59)との連結部(60A)と、の間に通るように配置されることを特徴とする請求項5に記載の鞍乗型車両のサスペンション構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−126262(P2012−126262A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279648(P2010−279648)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】