鞍乗型車両
【課題】 エンジンの存在、つまりエンジンが動いているといった実感を運転者に伝えることのできる鞍乗型車両を提供する。
【解決手段】 車体フレームと、該車体フレームに搭載され複数の気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジン1の各気筒における燃焼状態を個別に制御可能な燃焼制御装置22とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置22は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、一部の運転状態においては、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させ、かつ残りの気筒の燃焼状態を安定させることにより、上記エンジンまたは車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルまたは振動レベルを自動的に変化させることを特徴としている。
。
【解決手段】 車体フレームと、該車体フレームに搭載され複数の気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジン1の各気筒における燃焼状態を個別に制御可能な燃焼制御装置22とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置22は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、一部の運転状態においては、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させ、かつ残りの気筒の燃焼状態を安定させることにより、上記エンジンまたは車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルまたは振動レベルを自動的に変化させることを特徴としている。
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗型車両に関し、詳細にはエンジンの燃焼状態の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃焼状態の制御においては、エンジンを可能な限り安定かつ円滑に回転させることを目標として制御するのが一般的である。従来例えば、エンジン始動時において、エンジン回転速度が目標アイドル回転速度となるように燃料噴射量を制御する場合に、この目標アイドル回転速度をエンジンの暖機状態の進行に伴ってきめ細かく設定するようにした例がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002-364433 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらエンジンを極めて安定かつ滑らかに回転させることが可能になってくると、エンジンが搭載される車両の種類や用途によっては、逆にエンジンが回転しているにもかかわらずエンジンが動いているという実感が得られないといった声が一部では聞かれるようになっている。特に、自動二輪車においては、エンジンが安定かつ円滑に回転するよりも、むしろエンジンが躍動していること、換言すればエンジンの存在を実感できることを望む声がある。このような要望を有するユーザー層は、エンジンが安定かつ円滑に回転するようにエンジンの燃焼状態を制御するだけでは物足りなさを感じてしまうといった恐れがある。
【0004】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、エンジンの存在、つまりエンジンが動いているといった実感を運転者に伝えることのできる鞍乗型車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車体フレームと、該車体フレームに搭載され複数の気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの各気筒における燃焼状態を個別に制御可能な燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、一部の運転状態においては、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させ、かつ残りの気筒の燃焼状態を安定させることにより、上記エンジンまたは車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルまたは振動レベルを自動的に変化させることを特徴としている。
【0006】
ここで本発明において、音圧レベルまたは振動レベルを自動的に変化させるとは、例えば、エンジンが1サイクル(1回燃焼)する間に発生する音圧レベルまたは振動レベルのピーク値が、エンジンの1サイクル毎又は複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に変化することを意味している。この場合、同じ気筒で比較して音圧レベルまたは振動レベルのピーク値が変化する場合だけでなく、異なる気筒間で比較して音圧レベルまたは振動レベルが変化する場合も含まれる。 また本発明において、可聴音波とは、人が感知し易い周波数の音、との意味であり、具体的には例えば5KHz 〜20KHz の音は本発明でいう可聴音波に含まれる。
【0007】
なお、請求項1の発明では、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させるのであるが、この場合、燃焼状態の変化程度の如何によっては失火が生じることもあり得る。
【0008】
また本発明において、エンジンの燃焼状態を安定させるとは、エンジンを可能な限り安定かつ円滑に回転させるように制御するとの意味であり、従来と同様のエンジンセフティングによる制御となる。
【0009】
請求項2の発明は、車体フレームと、該車体フレームに搭載され少なくとも1つの気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの燃焼状態を制御する燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、上記エンジンの特定気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、上記エンジンは複数の気筒を有し、上記燃焼制御装置は、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させ、残りの気筒の燃焼状態を安定させることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンへの燃料供給を停止することなく燃料供給量を変化させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの点火時期を遅角または進角させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの燃焼状態を間欠的に変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを間欠的に変化させることを特徴としている。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記制御装置は、上記エンジンの燃焼状態をランダムに変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルをランダムに変化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、一部の運転状態、例えばアイドリング運転状態では、一部気筒の燃焼状態が変化し、もって音圧レベルまたは振動レベルが1サイクル毎又は複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に変化するので、音圧レベル等が変化しない場合に比較してエンジンが回転していることを運転者が感じ取り易く、従ってエンジンが動いていることを運転者に確実に伝えることができる。特に音圧レベルを変化させるようにした場合には、運転者が車両に跨がっていない停車状態でも、エンジンが動いていることを運転者に伝えることができる。
【0016】
この場合、上記一部気筒では、燃焼状態の変化程度の如何によって失火が生じることもあるが、このようにした場合には、上記音圧レベルの変化が大きくなり、エンジンが動いていることをより一層明確に運転者に伝えることができる。
【0017】
そして上記一部気筒につては燃焼状態が変化するものの、残りの気筒については燃焼状態は安定している。このように燃焼状態を変化させる気筒と安定させる気筒とを組み合わせるようにしたので、エンジンが極端に不安定になることを抑制できる。その結果、ライダーが、上記一部気筒の燃焼状態が変化することをもってエンジン全体の異常と誤認識するのが防止できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、特定気筒の燃焼状態を変化させる場合に、該気筒で失火が生じない範囲で変化させるようにしたので、エンジンが極端に不安定になることを回避でき、ライダーが特定機能の燃焼状態の変化をもってエンジンの異常と誤認識するのを防止できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させ、残りの気筒の燃焼状態を安定させるようにしたので、つまり燃焼状態を変化させる気筒と安定させる気筒とを組み合わせるようにしたので、エンジン回転が極端に不安定になることがなく、ライダーがエンジン異常と誤認識するのをより一層確実に回避できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、エンジンへの燃料供給を停止することなく燃料供給量を変化させることによりエンジンの燃焼状態を変化させるようにしたので、安定的に燃焼状態を変化させることができ、容易に音圧レベル等を変化させることができる
請求項5の発明によれば、エンジンの点火時期を遅角または進角させることによりエンジンの燃焼状態を変化させるようにしたので、安定的に燃焼状態を変化させることができ、容易に音圧レベル等を変化させることができる
請求項6の発明よれば、エンジンの燃焼状態を間欠的に変化させることにより、また請求項7の発明によれば、エンジンの燃焼状態をランダムに変化させることにより、それぞれ上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを間欠的に又はランダムに変化させるようにしたので、全体の音圧レベル等を大きくすること無く、音圧レベル等を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図11は本発明の一実施形態を説明するための図であり、図1はその模式構成図、図2は燃焼制御領域を示す図、図3〜図8は燃焼制御と音圧レベルとの関係を示す図、図9〜図11は燃焼制御と排気ガス成分との関係を示す図である。
【0023】
図において、1は自動二輪車用V型2気筒エンジンであり、クランクケース2の上壁の前部に第1シリンダ3,第1シリンダヘッド5が、後部に第2シリンダ4,第2シリンダヘッド6が全体としてV字形をなすように配置されている。上記第1シリンダ3,第2シリンダ4の第1,第2気筒(シリンダボア)3a,4a内に摺動自在に挿入配置された第1,第2ピストン7,8は第1,第2コンロッド9,10によりクランク軸11の共通のクランクピン11aに連結されている。
【0024】
また上記第1シリンダヘッド5の燃焼室に開口するように形成された吸気ポート5a,排気ポート5bの燃焼室側開口は吸気弁12a,排気弁12bで開閉され、同様に第2シリンダヘッド6の吸気ポート6a,排気ポート6bの燃焼室側開口は吸気弁13a,排気弁13bで開閉される。また上記第1,第2シリンダヘッド5,6には第1,第2点火プラグ23,24が燃焼室内面に露出するように螺挿されている。
【0025】
上記第1,第2吸気ポート5a,6aに接続された第1,第2吸気通路5c,6cの上流端には両シリンダ共通のエアクリーナ20が接続されている。また上記第1,第2吸気通路5c,6cの途中には第1、第2燃料噴射弁14,15が配設され、該燃料噴射弁により燃料が吸気弁開口を介して燃焼室内に噴射供給されるようになっている。また上記第1,第2燃料噴射弁14,15の上流側には第1,第2スロットル弁16,17が配設されており、また図示していないが、スロットル弁16,17の軸端にはその開度を検出するスロットルセンサが配設されている。また上記両スロットル弁の上流側には吸入空気量を検出する第1,第2エアフローメータ18,19が配設されている。なお、エアフローメータに代えて吸気通路内の内圧を検出する吸気圧センサであっても勿論構わない。
【0026】
上記第1,第2エアフローメータ18,19により検出された吸入空気量信号a1,a2、クランク角センサ21により検出されたクランク角信号v及びスロットル開度センサによって検出されたスロットル開度信号はそれぞれECU22入力される。このECU22は、吸入空気量,エンジン回転速度,スロットル開度に基づいてエンジンの運転状態を検出する運転状態検出部として機能するとともに、該検出部によって検出された運転状態 (運転域) に基づいてエンジン1の燃焼状態を制御する装置として機能する。このECU22から上記第1,第2燃料噴射弁14,15に燃料噴射信号A1,A2が、第1,第2点火プラグ23,24の図示しない点火系に点火信号B1,B2がそれぞれ出力される。
【0027】
なお、図示していないが、上記エンジン1は、車体フレームに、クランク軸11を車幅方向に向けて、かつ第1シリンダ3が車両前後方向前側に、第2シリンダ4が後側にそれぞれ位置するように搭載される。該エンジン1の車載構造としては、エンジン1を車体フレームの強度メンバとなるように直結状態で搭載する場合、あるいはゴムダンパ等の弾性部材を介在させて搭載し、該エンジン1がゴムダンパの弾性の範囲で車体フレームに対して相対的に揺動可能となっている場合の両方が考えられる。
【0028】
エンジン1を車体フレームに直結した前者の場合は、運転者は、エンジンにより発生される音あるいは振動がエンジン自体から発するだけでなく、車体フレームを介しても発するように感じると考えられる。一方、エンジン1を車体フレームに弾性部材を介在させて搭載した後者の場合には、エンジンからの音や振動のうち車体フレームを介して外方に発せられる量は大幅に減じられると考えられる。このように、同じエンジンであっても車体フレームへの搭載構造によって運転者に伝わる音や振動に相違が生じる。
【0029】
そして本実施形態における燃焼制御装置(ECU)22は、上記第1,第2気筒3a,4aの燃焼状態を個別に制御可能に構成されている。詳細には、第1気筒3a,第2気筒4aの何れについても、エンジンの運転状態に基づいて、燃料供給量を変化させることにより燃焼状態を1サイクル毎,複数サイクル毎,あるいはランダムサイクル毎に変化させる変化モードと、燃料供給量を安定させることにより燃焼状態を安定させる安定モードとの何れでも選択可能になっている。
【0030】
そして本実施形態では、燃焼制御装置22は、後述する一部の運転域(変化運転域)においては、上記第1,第2気筒3a,4aのうちの一部の気筒、この例では第2気筒4aの燃焼状態を変化モードとし、かつ上記第1気筒3aの燃料状態を常に安定モードとすることにより、上記エンジン1又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルを自動的に変化させるように構成されている。
【0031】
また上記燃焼制御装置22は、上記変化運転域以外の運転域(安定運転域)においては、上記第1,第2気筒3a,4aの両方とも燃焼状態を安定させる安定モードとし、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルを自動的に安定させるように構成されている。
【0032】
ここで音圧レベルを自動的に変化させるとは、エンジンが1サイクルする間、つまり1回燃焼する間(クランク角度で720°)に発生する音圧レベルのピーク値が、エンジンの1サイクル毎又は複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に変化することを意味している。
【0033】
より詳細には、上記安定運転域では、上記第1,第2燃料噴射弁14,15から第1,第2気筒3a,4aに供給される燃料量は基準量一定とされる。一方、上記変化運転域では、上記前側に配置された第1燃料噴射弁14から第1気筒3aに供給される燃料量は基準量一定とされ、上記後側に配置された第2燃料噴射弁15から第2気筒4aに供給される燃料量が該エンジンの1サイクル(1回爆発するサイクル)毎または複数サイクル毎、あるいはランダムサイクル毎に変化され、もってエンジンの燃焼状態が変化し、その結果上記可聴音波の音圧レベルが変化する。
【0034】
具体的には、上記第2気筒4aへの燃料供給量が基準量(100%)とこれより少ない例えば80%との間で交互に変化される。この例では、燃料供給量は、100%,80%,100%,80%・・・というように1サイクル毎に変化される。勿論、100%,80%,80%,100%,80%,80%,100%・・・、や100%,100%,80%,100%,100%,80%・・・というように各種の変化形態が採用可能である。なお、上記基準量とは、例えば理論空燃比、あるいはこれより若干リッチ側の出力空燃比となる燃料噴射量を意味している。この場合、前側の第1燃料噴射弁14から第1気筒3aに供給される燃料量は、上記基準量に一定に制御される。
【0035】
上記変化モードにおける燃料噴射量の変化形態には各種の態様があり、例えば基準量(100%)と、これより多い例えば170%,200%等々との間で1サイクル毎,複数サイクル毎,あるいはランダムサイクル毎に変化する形態が採用可能である。
【0036】
なお、上記と逆に、第2気筒4aへの燃料供給量を一定とし、第1気筒3aへの燃料供給量を変化させることも可能である。
【0037】
また上記変化運転域についても各種の態様が考えられる。例えば、図2に示すように、エンジンの冷間始動直後のファーストアイドル時(S1)には上記変化モードは非採用(オフ)とされ、エンジン温度,エンジン回転速度あるいは燃料噴射指示時間等から安定したアイドリング状態と判断された場合(S2)には上記変化モードが採用(オン)される。そして空吹かしによりスロットルが開かれた時(S3)には上記変化モードはオフとされる。また変速装置が1速にされた時点(S4)では、上記変化モードはオンのままとされ、スロットルを開いて発進すると(S5)上記変化モードはオフとされる。さらに停車(車速ゼロ)した場合(S6)、変速装置がニュートラルに切り換えられた場合(S7)やアイドリングに戻った場合(S8)には、上記変化モードがオンとされる。
【0038】
なお、上記アイドリング運転域(S2)においては、常時変化モードに制御する必要は必ずしもなく、アイドリング運転域であっても例えばエンジン回転が不安定になった場合には、エンジン燃焼状態を上記変化モードにせずに安定モードにするようにしても良い。
【0039】
上記第2気筒4aの燃焼状態が変化モードとされている状態では、音圧レベル、即ち、1サイクル中での音圧のピーク値がエンジン1サイクル毎,または複数サイクル毎,あるいはランダムサイクル毎に変化するので、音圧レベルが変化しない場合に比較してエンジンが回転していることをライダーが感じ取り易く、従ってエンジンが動いていることをライダーに確実に伝えることができる。また上記変化モードでは音圧レベルが変化するので、ライダーが車両に跨がっていない停車状態でも、エンジンが動いていることをライダーに音の変化で伝えることができる。
【0040】
また、アイドリング時には第2気筒4aは変化モードとなり、音圧レベルの変化によりエンジンが動いていることがライダに確実に伝わるので、エンジンがアイドリング運転中であるにもかかわらず、ライダーがエンジン停止と勘違いしてエンジン始動スイッチを押してしまうような誤操作を回避できる。
【0041】
またアイドリング時のみ変化モードとし、発進した後は安定モードに切り換わるようになっているので、ツーリング等での定速走行中のように音や振動の変化がライダーに負担になるようなときには、音圧レベルが安定し、無用の音や振動の変化によってかえってライダーが疲れてしまうといった問題が生じるのを回避できる。
【0042】
また発進加速時,追い越し加速時等の加速走行運転域では、エンジンの燃焼状態を安定モードにするようにしたので、加速の悪化を抑制できる。即ち、燃料供給量を所定サイクル毎に減少することにより変化モードを実現した場合には、それだけエンジン出力が低下するすることとなる。従って加速走行運転域で変化モードを採用すると加速性が悪化する問題が生じるが、本実施形態では、加速走行運転域では安定モードとしているのでこのような問題は生じない。
【0043】
さらにまた、本実施形態では、変化運転域においては、第2気筒4aの燃焼状態を変化させるものの、第1気筒3aについては燃焼状態を安定させるようにしたので、エンジン全体の運転状態が極端に不安定になるのを回避できる。これによりライダーがエンジンに異常が発生したと誤認識するのを回避できる。
【0044】
なお、各気筒の燃焼状態を、変化モードと安定モードとに手動の切換えスイッチにより切換え可能とすることもでき、このようにした場合には、ライダーの好みに応じてライダーがエンジンが動いていることを感じたいと思うときだけ、エンジンの動きを伝えることができる。
【0045】
また上記エンジンに供給される燃料量を制御することによりエンジンの燃焼状態を上記変化モード又は安定モードの何れかに切り換えるようにしたので、安定的に燃焼状態を変化させることができ、容易確実に音圧レベルを変化させることができる
次に本発明の効果を確認するために行なった実験結果について説明する。この実験では、第1気筒3a,第2気筒4aの両方が安定モードである安定運転域(std)と、第1気筒3aは安定モードで、第2気筒4aは変化モードである変化運転域とにおける音圧レベルの変化状態を比較した。安定運転域(std 図3参照)では、第1,第2気筒3a,4a共に燃料噴射量を基準量(100%)一定とし、また変化運転域では、第1気筒3aについては基準量一定とし、第2気筒4aについては燃料噴射量を1サイクル毎に変化させた(図4〜図8参照)。
【0046】
上記変化運転域においては、第2気筒4aへの燃料供給量は、具体的には100%と80%との繰り返し(図4(a)参照)、100%と170%との繰り返し(図5(a)参照))、100%と200%との繰り返し(図6(a)(参照)、100%と120%との繰り返し(図7(a)参照)、200,180,100,80,60%を含むランダム(図8(a)参照)とした。
【0047】
なお、音圧レベルは、排気管の出口で計測し、周波数5KHz 〜20KHz 以外の周波数成分を除去し、該周波数5KHz 〜20KHz 成分の音圧を集計した。
【0048】
安定運転域(std) の場合(図3(b)参照)、音圧レベルのピーク値は、第1気筒,第2気筒の爆発タイミング共に概ね85〜86 dBFの間で略一定であり、音圧レベルに変化がないことが判る。
【0049】
一方、変化運転域の場合、第1気筒の爆発タイミングでの音圧レベルについてはあまり変化がないものの、第2気筒の爆発タイミングでの音圧レベルについては大きく変化している。詳細には、100−80%(図4)、100−170%(図5)100−200%(図6)の場合は何れも、1サイクル毎に概ね86〜87 dBFと89〜90 dBFとの間で変化している。また燃料噴射量をランダムに変化させた場合(図8)には、85 dBF,87 dBF,90 dBFの間で変化している。また100−120%(図7)の場合の音圧レベルの変化は、他の変化運転域の場合より小さいものの安定運転域の場合より大きい。
【0050】
上記実験結果から、第1気筒,第2気筒の何れか一方の燃料供給量を一定にするとともに、他方の気筒の燃料供給量を1サイクル毎にあるいはランダムに変化させることにより、エンジン全体の燃焼を極端に不安定にさせることなく音圧レベルが大きく変化することが判る。
【0051】
また図9〜図11は、上記安定運転域と変化運転域における排気ガス成分(CO,HC,CO2 )の計測結果を示す。なお、この排気ガス計測においては、第2気筒への燃料供給量を一定とし、第1気筒への燃料供給量を、1サイクル毎に100−80%、100−170%、100−200%、60−150%に変化させ、また200,180,100,80,60%を含むランダムとした。また図9〜図11において、「AI有り」「AIカット」とはそれぞれ排気管の途中に二次空気を供給した場合、供給しない場合を示す。
【0052】
排気ガス成分のうちCOについては、第1気筒への燃料供給量を100−170%、100−200%、60−150%とした場合は、該第1気筒(変化モード)のCOが第2気筒のCOより増加し、100−80%、及びランダムの場合には第1気筒のCOが第2気筒のCOより減少している。
【0053】
またHCについては、100−80%の場合はほとんど変化しないものの、他の場合は第1気筒のHCが第2気筒のHCより増加している。さらにまたCO2 の場合には100−80%の場合にはほとんど変化なく、他の場合には第1気筒のCO2 が第2気筒のCO2 より少し減少していることが判る。
【0054】
以上の音圧レベル,排気ガス成分の計測結果から見て、排気ガス成分を悪化させることなく、上記音圧レベルを変化させるには、燃料供給量を、基準量とこれより少ない量との間(例えば100−80%)で変化させるのが望ましいと考えられる。
【0055】
ここで、上記実施形態では、V型2気筒エンジンの場合を説明したが、本発明は3気筒以上の多気筒エンジンの場合にも適用可能である。この場合、3気筒以上のうちの一部気筒を上述の変化モードとし、残りの気筒を安定モードとすることとなり、変化モードの気筒数が多いほど上述の音圧レベル等の変化が大きくなる。
【0056】
また、上記実施形態では複数気筒の場合を説明したが、請求項2の発明は、少なくとも1つの気筒を有するエンジンであれば適用可能であり、従って単気筒エンジンにも適用可能である。そして該エンジンの特定気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることとなる。
【0057】
この場合、単気筒であっても、失火の生じない範囲で燃焼状態を変化させるようにしたので、エンジン回転が極端に不安定となることはなく、運転者が燃焼状態の変化をもってエンジン異常と誤認識するのを回避できる。
【0058】
なお、上記実施形態では、燃料供給量を変化させることにより燃焼状態を変化させ、もって音圧レベルを変化させたが、上記以外の例えば点火時期を1サイクル毎,複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に進角又は遅角させることにより燃焼状態を変化させ、もって可聴音波の音圧レベルを変化させるようにしても良い。
【0059】
また上記実施形態では、可聴音波の音圧レベルを変化させる場合を説明したが、燃焼状態を上記と同様に変化させることによりエンジン又は車体フレームから発生する振動レベルを変化させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態エンジンの燃焼制御ブロック構成図である。
【図2】上記実施形態の燃焼制御領域を示す図である。
【図3】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図4】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図5】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図6】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図7】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図8】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図9】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図10】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図11】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
22 ECU(運転状態検出部,燃焼制御装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗型車両に関し、詳細にはエンジンの燃焼状態の制御に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの燃焼状態の制御においては、エンジンを可能な限り安定かつ円滑に回転させることを目標として制御するのが一般的である。従来例えば、エンジン始動時において、エンジン回転速度が目標アイドル回転速度となるように燃料噴射量を制御する場合に、この目標アイドル回転速度をエンジンの暖機状態の進行に伴ってきめ細かく設定するようにした例がある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002-364433 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながらエンジンを極めて安定かつ滑らかに回転させることが可能になってくると、エンジンが搭載される車両の種類や用途によっては、逆にエンジンが回転しているにもかかわらずエンジンが動いているという実感が得られないといった声が一部では聞かれるようになっている。特に、自動二輪車においては、エンジンが安定かつ円滑に回転するよりも、むしろエンジンが躍動していること、換言すればエンジンの存在を実感できることを望む声がある。このような要望を有するユーザー層は、エンジンが安定かつ円滑に回転するようにエンジンの燃焼状態を制御するだけでは物足りなさを感じてしまうといった恐れがある。
【0004】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたもので、エンジンの存在、つまりエンジンが動いているといった実感を運転者に伝えることのできる鞍乗型車両を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車体フレームと、該車体フレームに搭載され複数の気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの各気筒における燃焼状態を個別に制御可能な燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、一部の運転状態においては、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させ、かつ残りの気筒の燃焼状態を安定させることにより、上記エンジンまたは車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルまたは振動レベルを自動的に変化させることを特徴としている。
【0006】
ここで本発明において、音圧レベルまたは振動レベルを自動的に変化させるとは、例えば、エンジンが1サイクル(1回燃焼)する間に発生する音圧レベルまたは振動レベルのピーク値が、エンジンの1サイクル毎又は複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に変化することを意味している。この場合、同じ気筒で比較して音圧レベルまたは振動レベルのピーク値が変化する場合だけでなく、異なる気筒間で比較して音圧レベルまたは振動レベルが変化する場合も含まれる。 また本発明において、可聴音波とは、人が感知し易い周波数の音、との意味であり、具体的には例えば5KHz 〜20KHz の音は本発明でいう可聴音波に含まれる。
【0007】
なお、請求項1の発明では、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させるのであるが、この場合、燃焼状態の変化程度の如何によっては失火が生じることもあり得る。
【0008】
また本発明において、エンジンの燃焼状態を安定させるとは、エンジンを可能な限り安定かつ円滑に回転させるように制御するとの意味であり、従来と同様のエンジンセフティングによる制御となる。
【0009】
請求項2の発明は、車体フレームと、該車体フレームに搭載され少なくとも1つの気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの燃焼状態を制御する燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、上記エンジンの特定気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることを特徴としている。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2において、上記エンジンは複数の気筒を有し、上記燃焼制御装置は、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させ、残りの気筒の燃焼状態を安定させることを特徴としている。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンへの燃料供給を停止することなく燃料供給量を変化させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴としている。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの点火時期を遅角または進角させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴としている。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの燃焼状態を間欠的に変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを間欠的に変化させることを特徴としている。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1ないし5の何れかにおいて、上記制御装置は、上記エンジンの燃焼状態をランダムに変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルをランダムに変化させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、一部の運転状態、例えばアイドリング運転状態では、一部気筒の燃焼状態が変化し、もって音圧レベルまたは振動レベルが1サイクル毎又は複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に変化するので、音圧レベル等が変化しない場合に比較してエンジンが回転していることを運転者が感じ取り易く、従ってエンジンが動いていることを運転者に確実に伝えることができる。特に音圧レベルを変化させるようにした場合には、運転者が車両に跨がっていない停車状態でも、エンジンが動いていることを運転者に伝えることができる。
【0016】
この場合、上記一部気筒では、燃焼状態の変化程度の如何によって失火が生じることもあるが、このようにした場合には、上記音圧レベルの変化が大きくなり、エンジンが動いていることをより一層明確に運転者に伝えることができる。
【0017】
そして上記一部気筒につては燃焼状態が変化するものの、残りの気筒については燃焼状態は安定している。このように燃焼状態を変化させる気筒と安定させる気筒とを組み合わせるようにしたので、エンジンが極端に不安定になることを抑制できる。その結果、ライダーが、上記一部気筒の燃焼状態が変化することをもってエンジン全体の異常と誤認識するのが防止できる。
【0018】
請求項2の発明によれば、特定気筒の燃焼状態を変化させる場合に、該気筒で失火が生じない範囲で変化させるようにしたので、エンジンが極端に不安定になることを回避でき、ライダーが特定機能の燃焼状態の変化をもってエンジンの異常と誤認識するのを防止できる。
【0019】
請求項3の発明によれば、複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させ、残りの気筒の燃焼状態を安定させるようにしたので、つまり燃焼状態を変化させる気筒と安定させる気筒とを組み合わせるようにしたので、エンジン回転が極端に不安定になることがなく、ライダーがエンジン異常と誤認識するのをより一層確実に回避できる。
【0020】
請求項4の発明によれば、エンジンへの燃料供給を停止することなく燃料供給量を変化させることによりエンジンの燃焼状態を変化させるようにしたので、安定的に燃焼状態を変化させることができ、容易に音圧レベル等を変化させることができる
請求項5の発明によれば、エンジンの点火時期を遅角または進角させることによりエンジンの燃焼状態を変化させるようにしたので、安定的に燃焼状態を変化させることができ、容易に音圧レベル等を変化させることができる
請求項6の発明よれば、エンジンの燃焼状態を間欠的に変化させることにより、また請求項7の発明によれば、エンジンの燃焼状態をランダムに変化させることにより、それぞれ上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを間欠的に又はランダムに変化させるようにしたので、全体の音圧レベル等を大きくすること無く、音圧レベル等を変化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図11は本発明の一実施形態を説明するための図であり、図1はその模式構成図、図2は燃焼制御領域を示す図、図3〜図8は燃焼制御と音圧レベルとの関係を示す図、図9〜図11は燃焼制御と排気ガス成分との関係を示す図である。
【0023】
図において、1は自動二輪車用V型2気筒エンジンであり、クランクケース2の上壁の前部に第1シリンダ3,第1シリンダヘッド5が、後部に第2シリンダ4,第2シリンダヘッド6が全体としてV字形をなすように配置されている。上記第1シリンダ3,第2シリンダ4の第1,第2気筒(シリンダボア)3a,4a内に摺動自在に挿入配置された第1,第2ピストン7,8は第1,第2コンロッド9,10によりクランク軸11の共通のクランクピン11aに連結されている。
【0024】
また上記第1シリンダヘッド5の燃焼室に開口するように形成された吸気ポート5a,排気ポート5bの燃焼室側開口は吸気弁12a,排気弁12bで開閉され、同様に第2シリンダヘッド6の吸気ポート6a,排気ポート6bの燃焼室側開口は吸気弁13a,排気弁13bで開閉される。また上記第1,第2シリンダヘッド5,6には第1,第2点火プラグ23,24が燃焼室内面に露出するように螺挿されている。
【0025】
上記第1,第2吸気ポート5a,6aに接続された第1,第2吸気通路5c,6cの上流端には両シリンダ共通のエアクリーナ20が接続されている。また上記第1,第2吸気通路5c,6cの途中には第1、第2燃料噴射弁14,15が配設され、該燃料噴射弁により燃料が吸気弁開口を介して燃焼室内に噴射供給されるようになっている。また上記第1,第2燃料噴射弁14,15の上流側には第1,第2スロットル弁16,17が配設されており、また図示していないが、スロットル弁16,17の軸端にはその開度を検出するスロットルセンサが配設されている。また上記両スロットル弁の上流側には吸入空気量を検出する第1,第2エアフローメータ18,19が配設されている。なお、エアフローメータに代えて吸気通路内の内圧を検出する吸気圧センサであっても勿論構わない。
【0026】
上記第1,第2エアフローメータ18,19により検出された吸入空気量信号a1,a2、クランク角センサ21により検出されたクランク角信号v及びスロットル開度センサによって検出されたスロットル開度信号はそれぞれECU22入力される。このECU22は、吸入空気量,エンジン回転速度,スロットル開度に基づいてエンジンの運転状態を検出する運転状態検出部として機能するとともに、該検出部によって検出された運転状態 (運転域) に基づいてエンジン1の燃焼状態を制御する装置として機能する。このECU22から上記第1,第2燃料噴射弁14,15に燃料噴射信号A1,A2が、第1,第2点火プラグ23,24の図示しない点火系に点火信号B1,B2がそれぞれ出力される。
【0027】
なお、図示していないが、上記エンジン1は、車体フレームに、クランク軸11を車幅方向に向けて、かつ第1シリンダ3が車両前後方向前側に、第2シリンダ4が後側にそれぞれ位置するように搭載される。該エンジン1の車載構造としては、エンジン1を車体フレームの強度メンバとなるように直結状態で搭載する場合、あるいはゴムダンパ等の弾性部材を介在させて搭載し、該エンジン1がゴムダンパの弾性の範囲で車体フレームに対して相対的に揺動可能となっている場合の両方が考えられる。
【0028】
エンジン1を車体フレームに直結した前者の場合は、運転者は、エンジンにより発生される音あるいは振動がエンジン自体から発するだけでなく、車体フレームを介しても発するように感じると考えられる。一方、エンジン1を車体フレームに弾性部材を介在させて搭載した後者の場合には、エンジンからの音や振動のうち車体フレームを介して外方に発せられる量は大幅に減じられると考えられる。このように、同じエンジンであっても車体フレームへの搭載構造によって運転者に伝わる音や振動に相違が生じる。
【0029】
そして本実施形態における燃焼制御装置(ECU)22は、上記第1,第2気筒3a,4aの燃焼状態を個別に制御可能に構成されている。詳細には、第1気筒3a,第2気筒4aの何れについても、エンジンの運転状態に基づいて、燃料供給量を変化させることにより燃焼状態を1サイクル毎,複数サイクル毎,あるいはランダムサイクル毎に変化させる変化モードと、燃料供給量を安定させることにより燃焼状態を安定させる安定モードとの何れでも選択可能になっている。
【0030】
そして本実施形態では、燃焼制御装置22は、後述する一部の運転域(変化運転域)においては、上記第1,第2気筒3a,4aのうちの一部の気筒、この例では第2気筒4aの燃焼状態を変化モードとし、かつ上記第1気筒3aの燃料状態を常に安定モードとすることにより、上記エンジン1又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルを自動的に変化させるように構成されている。
【0031】
また上記燃焼制御装置22は、上記変化運転域以外の運転域(安定運転域)においては、上記第1,第2気筒3a,4aの両方とも燃焼状態を安定させる安定モードとし、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベルを自動的に安定させるように構成されている。
【0032】
ここで音圧レベルを自動的に変化させるとは、エンジンが1サイクルする間、つまり1回燃焼する間(クランク角度で720°)に発生する音圧レベルのピーク値が、エンジンの1サイクル毎又は複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に変化することを意味している。
【0033】
より詳細には、上記安定運転域では、上記第1,第2燃料噴射弁14,15から第1,第2気筒3a,4aに供給される燃料量は基準量一定とされる。一方、上記変化運転域では、上記前側に配置された第1燃料噴射弁14から第1気筒3aに供給される燃料量は基準量一定とされ、上記後側に配置された第2燃料噴射弁15から第2気筒4aに供給される燃料量が該エンジンの1サイクル(1回爆発するサイクル)毎または複数サイクル毎、あるいはランダムサイクル毎に変化され、もってエンジンの燃焼状態が変化し、その結果上記可聴音波の音圧レベルが変化する。
【0034】
具体的には、上記第2気筒4aへの燃料供給量が基準量(100%)とこれより少ない例えば80%との間で交互に変化される。この例では、燃料供給量は、100%,80%,100%,80%・・・というように1サイクル毎に変化される。勿論、100%,80%,80%,100%,80%,80%,100%・・・、や100%,100%,80%,100%,100%,80%・・・というように各種の変化形態が採用可能である。なお、上記基準量とは、例えば理論空燃比、あるいはこれより若干リッチ側の出力空燃比となる燃料噴射量を意味している。この場合、前側の第1燃料噴射弁14から第1気筒3aに供給される燃料量は、上記基準量に一定に制御される。
【0035】
上記変化モードにおける燃料噴射量の変化形態には各種の態様があり、例えば基準量(100%)と、これより多い例えば170%,200%等々との間で1サイクル毎,複数サイクル毎,あるいはランダムサイクル毎に変化する形態が採用可能である。
【0036】
なお、上記と逆に、第2気筒4aへの燃料供給量を一定とし、第1気筒3aへの燃料供給量を変化させることも可能である。
【0037】
また上記変化運転域についても各種の態様が考えられる。例えば、図2に示すように、エンジンの冷間始動直後のファーストアイドル時(S1)には上記変化モードは非採用(オフ)とされ、エンジン温度,エンジン回転速度あるいは燃料噴射指示時間等から安定したアイドリング状態と判断された場合(S2)には上記変化モードが採用(オン)される。そして空吹かしによりスロットルが開かれた時(S3)には上記変化モードはオフとされる。また変速装置が1速にされた時点(S4)では、上記変化モードはオンのままとされ、スロットルを開いて発進すると(S5)上記変化モードはオフとされる。さらに停車(車速ゼロ)した場合(S6)、変速装置がニュートラルに切り換えられた場合(S7)やアイドリングに戻った場合(S8)には、上記変化モードがオンとされる。
【0038】
なお、上記アイドリング運転域(S2)においては、常時変化モードに制御する必要は必ずしもなく、アイドリング運転域であっても例えばエンジン回転が不安定になった場合には、エンジン燃焼状態を上記変化モードにせずに安定モードにするようにしても良い。
【0039】
上記第2気筒4aの燃焼状態が変化モードとされている状態では、音圧レベル、即ち、1サイクル中での音圧のピーク値がエンジン1サイクル毎,または複数サイクル毎,あるいはランダムサイクル毎に変化するので、音圧レベルが変化しない場合に比較してエンジンが回転していることをライダーが感じ取り易く、従ってエンジンが動いていることをライダーに確実に伝えることができる。また上記変化モードでは音圧レベルが変化するので、ライダーが車両に跨がっていない停車状態でも、エンジンが動いていることをライダーに音の変化で伝えることができる。
【0040】
また、アイドリング時には第2気筒4aは変化モードとなり、音圧レベルの変化によりエンジンが動いていることがライダに確実に伝わるので、エンジンがアイドリング運転中であるにもかかわらず、ライダーがエンジン停止と勘違いしてエンジン始動スイッチを押してしまうような誤操作を回避できる。
【0041】
またアイドリング時のみ変化モードとし、発進した後は安定モードに切り換わるようになっているので、ツーリング等での定速走行中のように音や振動の変化がライダーに負担になるようなときには、音圧レベルが安定し、無用の音や振動の変化によってかえってライダーが疲れてしまうといった問題が生じるのを回避できる。
【0042】
また発進加速時,追い越し加速時等の加速走行運転域では、エンジンの燃焼状態を安定モードにするようにしたので、加速の悪化を抑制できる。即ち、燃料供給量を所定サイクル毎に減少することにより変化モードを実現した場合には、それだけエンジン出力が低下するすることとなる。従って加速走行運転域で変化モードを採用すると加速性が悪化する問題が生じるが、本実施形態では、加速走行運転域では安定モードとしているのでこのような問題は生じない。
【0043】
さらにまた、本実施形態では、変化運転域においては、第2気筒4aの燃焼状態を変化させるものの、第1気筒3aについては燃焼状態を安定させるようにしたので、エンジン全体の運転状態が極端に不安定になるのを回避できる。これによりライダーがエンジンに異常が発生したと誤認識するのを回避できる。
【0044】
なお、各気筒の燃焼状態を、変化モードと安定モードとに手動の切換えスイッチにより切換え可能とすることもでき、このようにした場合には、ライダーの好みに応じてライダーがエンジンが動いていることを感じたいと思うときだけ、エンジンの動きを伝えることができる。
【0045】
また上記エンジンに供給される燃料量を制御することによりエンジンの燃焼状態を上記変化モード又は安定モードの何れかに切り換えるようにしたので、安定的に燃焼状態を変化させることができ、容易確実に音圧レベルを変化させることができる
次に本発明の効果を確認するために行なった実験結果について説明する。この実験では、第1気筒3a,第2気筒4aの両方が安定モードである安定運転域(std)と、第1気筒3aは安定モードで、第2気筒4aは変化モードである変化運転域とにおける音圧レベルの変化状態を比較した。安定運転域(std 図3参照)では、第1,第2気筒3a,4a共に燃料噴射量を基準量(100%)一定とし、また変化運転域では、第1気筒3aについては基準量一定とし、第2気筒4aについては燃料噴射量を1サイクル毎に変化させた(図4〜図8参照)。
【0046】
上記変化運転域においては、第2気筒4aへの燃料供給量は、具体的には100%と80%との繰り返し(図4(a)参照)、100%と170%との繰り返し(図5(a)参照))、100%と200%との繰り返し(図6(a)(参照)、100%と120%との繰り返し(図7(a)参照)、200,180,100,80,60%を含むランダム(図8(a)参照)とした。
【0047】
なお、音圧レベルは、排気管の出口で計測し、周波数5KHz 〜20KHz 以外の周波数成分を除去し、該周波数5KHz 〜20KHz 成分の音圧を集計した。
【0048】
安定運転域(std) の場合(図3(b)参照)、音圧レベルのピーク値は、第1気筒,第2気筒の爆発タイミング共に概ね85〜86 dBFの間で略一定であり、音圧レベルに変化がないことが判る。
【0049】
一方、変化運転域の場合、第1気筒の爆発タイミングでの音圧レベルについてはあまり変化がないものの、第2気筒の爆発タイミングでの音圧レベルについては大きく変化している。詳細には、100−80%(図4)、100−170%(図5)100−200%(図6)の場合は何れも、1サイクル毎に概ね86〜87 dBFと89〜90 dBFとの間で変化している。また燃料噴射量をランダムに変化させた場合(図8)には、85 dBF,87 dBF,90 dBFの間で変化している。また100−120%(図7)の場合の音圧レベルの変化は、他の変化運転域の場合より小さいものの安定運転域の場合より大きい。
【0050】
上記実験結果から、第1気筒,第2気筒の何れか一方の燃料供給量を一定にするとともに、他方の気筒の燃料供給量を1サイクル毎にあるいはランダムに変化させることにより、エンジン全体の燃焼を極端に不安定にさせることなく音圧レベルが大きく変化することが判る。
【0051】
また図9〜図11は、上記安定運転域と変化運転域における排気ガス成分(CO,HC,CO2 )の計測結果を示す。なお、この排気ガス計測においては、第2気筒への燃料供給量を一定とし、第1気筒への燃料供給量を、1サイクル毎に100−80%、100−170%、100−200%、60−150%に変化させ、また200,180,100,80,60%を含むランダムとした。また図9〜図11において、「AI有り」「AIカット」とはそれぞれ排気管の途中に二次空気を供給した場合、供給しない場合を示す。
【0052】
排気ガス成分のうちCOについては、第1気筒への燃料供給量を100−170%、100−200%、60−150%とした場合は、該第1気筒(変化モード)のCOが第2気筒のCOより増加し、100−80%、及びランダムの場合には第1気筒のCOが第2気筒のCOより減少している。
【0053】
またHCについては、100−80%の場合はほとんど変化しないものの、他の場合は第1気筒のHCが第2気筒のHCより増加している。さらにまたCO2 の場合には100−80%の場合にはほとんど変化なく、他の場合には第1気筒のCO2 が第2気筒のCO2 より少し減少していることが判る。
【0054】
以上の音圧レベル,排気ガス成分の計測結果から見て、排気ガス成分を悪化させることなく、上記音圧レベルを変化させるには、燃料供給量を、基準量とこれより少ない量との間(例えば100−80%)で変化させるのが望ましいと考えられる。
【0055】
ここで、上記実施形態では、V型2気筒エンジンの場合を説明したが、本発明は3気筒以上の多気筒エンジンの場合にも適用可能である。この場合、3気筒以上のうちの一部気筒を上述の変化モードとし、残りの気筒を安定モードとすることとなり、変化モードの気筒数が多いほど上述の音圧レベル等の変化が大きくなる。
【0056】
また、上記実施形態では複数気筒の場合を説明したが、請求項2の発明は、少なくとも1つの気筒を有するエンジンであれば適用可能であり、従って単気筒エンジンにも適用可能である。そして該エンジンの特定気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることとなる。
【0057】
この場合、単気筒であっても、失火の生じない範囲で燃焼状態を変化させるようにしたので、エンジン回転が極端に不安定となることはなく、運転者が燃焼状態の変化をもってエンジン異常と誤認識するのを回避できる。
【0058】
なお、上記実施形態では、燃料供給量を変化させることにより燃焼状態を変化させ、もって音圧レベルを変化させたが、上記以外の例えば点火時期を1サイクル毎,複数サイクル毎あるいはランダムサイクル毎に進角又は遅角させることにより燃焼状態を変化させ、もって可聴音波の音圧レベルを変化させるようにしても良い。
【0059】
また上記実施形態では、可聴音波の音圧レベルを変化させる場合を説明したが、燃焼状態を上記と同様に変化させることによりエンジン又は車体フレームから発生する振動レベルを変化させるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態エンジンの燃焼制御ブロック構成図である。
【図2】上記実施形態の燃焼制御領域を示す図である。
【図3】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図4】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図5】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図6】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図7】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図8】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図9】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図10】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【図11】上記実施形態の実験結果を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 エンジン
22 ECU(運転状態検出部,燃焼制御装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、該車体フレームに搭載され複数の気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの各気筒における燃焼状態を個別に制御可能な燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、一部の運転状態においては、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させ、かつ残りの気筒の燃焼状態を安定させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
車体フレームと、該車体フレームに搭載され少なくとも1つの気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの燃焼状態を制御する燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、上記エンジンの特定気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項2において、上記エンジンは複数の気筒を有し、上記燃焼制御装置は、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させ、残りの気筒の燃焼状態を安定させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンへの燃料供給を停止することなく燃料供給量を変化させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの点火時期を遅角または進角させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの燃焼状態を間欠的に変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを間欠的に変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れかにおいて、上記制御装置は、上記エンジンの燃焼状態をランダムに変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルをランダムに変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項1】
車体フレームと、該車体フレームに搭載され複数の気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの各気筒における燃焼状態を個別に制御可能な燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、一部の運転状態においては、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を変化させ、かつ残りの気筒の燃焼状態を安定させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
車体フレームと、該車体フレームに搭載され少なくとも1つの気筒を有するエンジンと、該エンジンの運転状態を検出する運転状態検出部と、上記エンジンの燃焼状態を制御する燃焼制御装置とを備えた鞍乗型車両であって、上記燃焼制御装置は、上記運転状態検出部により検出された運転状態に基づいて、上記エンジンの特定気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させることにより、上記エンジン又は車体フレームから発生する可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを自動的に変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項2において、上記エンジンは複数の気筒を有し、上記燃焼制御装置は、上記複数気筒のうちの一部の気筒の燃焼状態を失火の生じない範囲で変化させ、残りの気筒の燃焼状態を安定させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンへの燃料供給を停止することなく燃料供給量を変化させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項1ないし3の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの点火時期を遅角または進角させることによりエンジンの燃焼状態を変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかにおいて、上記燃焼制御装置は、上記エンジンの燃焼状態を間欠的に変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルを間欠的に変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1ないし5の何れかにおいて、上記制御装置は、上記エンジンの燃焼状態をランダムに変化させることにより上記可聴音波の音圧レベル又は振動レベルをランダムに変化させることを特徴とする鞍乗型車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−118389(P2006−118389A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−305222(P2004−305222)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】
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