説明

顕微鏡システムおよび顕微鏡システムの作動方法

【課題】組織に蓄積された蛍光物質を観察するための顕微鏡システムおよび顕微鏡検査方法を提供する。
【解決手段】顕微鏡システムは、可視光と蛍光との両方で同時に組織を観察することを可能にするフィルタ84を含む。一連の先に記録された蛍光像を可視光像と重ねて観察することができる。一連の像の終了は自動的に決定され得る。熱保護フィルタが、このような一連の像の自動的に決定された終了時に照射システム63のビーム路に挿入し得る。さらに、蛍光像は、そのコヒーレント蛍光部を同定するために分析され得る。コヒーレント部分の外周線の表示を生成し得、深さプロファイルデータは、コヒーレント部分からのみ得られ得る。蛍光を励起させるための照射光ビーム81は、蛍光像のコントラストを向上させるために変調させ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡システムおよび顕微鏡検査方法に関する。特に、近赤外線および/または赤外線波長での蛍光の発光を観察するのに用いることができる顕微鏡システムおよび顕微鏡検査方法に関する。
【0002】
近赤外線および/または赤外線領域の波長で蛍光を示す蛍光物質および蛍光染料は、特定タイプの組織、組織構造および組織機能を可視化するなどの各種の目的のための医学応用に用いられている。ここで、蛍光物質もしくは染料またはこのような蛍光物質もしくは染料の前駆体が検査対象の患者に適用される。染料は、特定のタイプの組織および組織構造に蓄積し、この蛍光を観察することによって、このようなタイプの組織および組織構造はそれぞれ可視化され、観察者に認識される。ときには強度の弱い蛍光を可視化するために光学器具が用いられる。
【背景技術】
【0003】
適切な蛍光物質の一例は、インドシアニングリーン(ICG)である。T.クロイワらの論文「近赤外線外科顕微鏡の開発および臨床応用:予備報告」、Minim Invas Neurosurg 2001; 44: 240-242(非特許文献1)から、この物質の蛍光を観察するための方法およびシステムが知られている。この物質の蛍光の励起波長は約780nmであり、蛍光発光波長は約835nmである。ICGが蓄積される組織を顕微鏡によって観察するために、レーザ光源またはハロゲンランプの主波長が800nmの光で組織を照射する。照射光のビーム路には、蛍光を励起させる光である760nmと810nmとの間の波長を有する光のみを通過させる帯域通過フィルタが置かれている。さらなる帯域通過フィルタが、ICGの蛍光発光光である820nmと920nmとの間の波長を有する光のみを通過させる顕微鏡光学系によってカメラに組織が結像される。カメラによって検出された像を観察することにより、蛍光物質が蓄積された組織領域を認識することができる。しかし、この組織の周囲領域を知覚することはできない。このような周囲領域は、適切な照射では可視光を放射するかもしれない。しかし、このような可視光での照射は不可能である。なぜなら、レーザー光源は、このような光を提供することなく、また、光源のビーム路は、このような可視光が組織へ入射することを阻止するからである。組織領域の外科治療を行う外科医は、第1のステップにおいて可視光で組織領域の光学像を知覚するために可視光で組織領域を照射しなければならない。そして、その後、次の第2のステップで蛍光を知覚するために蛍光像を観察しなければならない。さらに、レーザー光源の照射光ビームおよび可視光で組織領域を照射するための照射ビームは、異なる角度で表面領域に入射するので、この2つの光ビームは組織領域に異なるタイプの影を生成する。このような異なる影のために、組織領域の蛍光像の領域と可視像の領域とを正しく対応付けることが困難である。
【0004】
このような手順は、複雑であり、観察者はそれぞれ異なるタイプの照射で先に知覚された像を覚えておかなくてはならないので高い集中力が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】T.クロイワらの論文「近赤外線外科顕微鏡の開発および臨床応用:予備報告」、Minim Invas Neurosurg 2001; 44: 240-242
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、赤外線または近赤外線波長での蛍光と組み合わせて顕微鏡結像性能を向上させる顕微鏡システムおよび対応する顕微鏡検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の実施形態によると、本発明は、顕微鏡光学系、表示システムおよび照射システムを含むインドシアニングリーン(ICG)の蛍光を可視化するための顕微鏡システムを提供する。顕微鏡光学系は、物体領域を、インドシアニングリーンの発光波長または蛍光波長を含む第1の範囲の光を用いて第1のカメラの光検出構成要素上に結像するための第1のビーム路を含む。このように、第1のビーム路は、物体領域の蛍光像を生成するために設けられている。顕微鏡光学系は、少なくとも可視光を含む波長の第2の波長範囲の波長の光を用いて、物体領域の拡大された表示を提供するための第2のビーム路をさらに含む。このように、第2のビーム路が、スペクトルの可視領域の物体領域像を生成するために設けられている。
【0008】
表示システムは、使用者が蛍光像と可視光表示とを同時に知覚できるように、蛍光像を可視光表示と重ねて表示する。
【0009】
照射システムは、物体領域に向かう少なくとも1つの照射光ビームを提供する。少なくとも1つの照射光ビームは、スペクトルの可視部の光、特に青色光および/または黄色光を含み、照射光ビームはまた、インドシアニングリーンの励起波長の光を含む。
【0010】
本発明者は、上記のシステムを用いると、可視光と蛍光光の両方で同時に物体領域を観察することができることが分かった。可視光での観察と蛍光の光での観察との従来の切り換えを行う必要がない。さらに、共通の照射光ビームに可視光および励起光を備えることによって、構造化された物体上に励起光および可視光で生成される異なる影を避けることができ、励起光と可視光とのいずれにも実質的に同じ照射条件が提供される。
【0011】
好ましい実施形態によると、少なくとも1つの照射光ビームの光は、可視光およびインドシアニングリーンの励起波長の光を生成する1つの光源によって生成される。この光源は、キセノンランプおよびハロゲンランプなどの光源を含み得る。
【0012】
ここで、本発明者は、可視光の照射光ビームを生成するために従来から用いられている適切な光源が、適切なカメラで物体領域の蛍光像を記録するのに十分な強度のインドシアニングリーンの励起光を生成することができるということが分かった。従来技術において用いられてきたように、インドシアニングリーンの蛍光の励起のための、レーザ光源などの別個の光源を設けることはもはや必要ではない。
【0013】
好ましい実施形態によれば、フィルタがインドシアニングリーンの蛍光発光波長の発光波長の光を実質的に阻止するように、照射システムのビーム路にフィルタを配置する。これにより、高いコントラストの蛍光像を記録することができる。
【0014】
さらなる実施形態によると、照射システムは、人間の目によって知覚されないか、または低効率でしか知覚されないような波長を有し、主に被検物体の加熱に寄与する光を照射光ビームから排除する熱保護フィルタを含む。熱保護フィルタは、物体の蛍光像が記録される際に、照射システムのビーム路から取り除かれることができる。
【0015】
照射システムのフィルタは、透過フィルタまたは反射フィルタであり得る。
【0016】
さらなる実施形態によると、本発明は、蛍光物質の蛍光を可視化するための顕微鏡システムであって、顕微鏡システムは、顕微鏡光学系、像メモリおよび表示システムを含む。顕微鏡光学系はまた、物体領域の蛍光像をカメラ上に結像するための第1のビーム路と、物体領域の表示を少なくとも可視光を含む光で提供する第2のビーム路とを含む。
【0017】
像メモリは、ある時間間隔の間記録された物体領域の蛍光像を表す像データを保存するように構成される。
【0018】
表示システムは、物体領域の可視光像を、先に記録され保存された像データから生成された一連の像と重ねて表示するように構成される。
【0019】
このように、短期間に蛍光像に見られる物体領域の急速に変化する構造を表示することができる。このような像の急速に変化する構造は、構造の急速な変化がすでに起こった後のある時点で物体領域の可視光像との重なった関係で表示される。急速に変化している構造は、繰り返し表示することもできるし、スローモーションで表示することもできる。
【0020】
上記のシステムの好ましい応用は、動脈瘤の医学的治療である。動脈瘤は、血管壁が脆弱化したために動脈の局所的な伸長および膨張として説明され得る。血管の膨張自体は、動脈瘤の嚢と呼ばれ、親動脈から動脈瘤の嚢へと通じる入口領域は動脈瘤の首と呼ばれている。従来の外科技術によると、動脈瘤の嚢を閉じるためにクリップを用いる。その後、外科医は、動脈瘤の嚢が完全に閉じられていること、および患者の動脈および周囲の血管において十分な血管流が保証されていることを確かめなければならない。このために、インドシアニングリーンが静脈注射により患者に適用され、蛍光物質が患者および周囲の血管に入っていくプロセスがカメラにより観察される。血管に入るプロセスは、0.5から2秒程かかる。ここで、蛍光物質を有する血液が、実質的に同時に問題の血管に入ることが重要である。蛍光が周囲の血管より後にある特定の血管に見えるようになれば、これは、この特定の血管が部分的に閉塞していることを示す。
【0021】
上記の血管流の評価は、それぞれの時間間隔の間に記録された像データを繰り返し表示することおよび/またはスローモーションでもしくは物体領域の可視光像と重ねて、像データを表示することによって簡単に行うことができる。
【0022】
蛍光物質が動脈瘤の嚢に蓄積すると、これは、クリップでの動脈瘤の嚢の閉塞が不完全であることを示す。
【0023】
動脈瘤の治療後の血液流の評価に従来から用いられているX線血管造影法に比べて、上記のようなICGを伴う本方法は、いくつかの利点がある。蛍光方法は、リアルタイムで外科顕微鏡を通して行われ得るのに対し、X線血管造影法は、外科手術を行うために用いなければならない外科顕微鏡を、まず取り外し、その後X線装置を装着しなければならず、外科医は、X線像が記録されている間、部屋を離れなければならない。X線像の現像および解釈には10分ほどかかる。X線血管造影法は、結果の解釈までの時間が長いので血流評価にはあまり実用されていない。さらに、X線血管造影法に比べて、蛍光方法の方が、空間および時間のいずれの結像分解能も実質的に高い。
【0024】
好ましくは、顕微鏡システムは、蛍光物質が問題の血管に入る初期プロセスに関し保存された像を分析するためのコントローラを含む。このようなプロセスは、蛍光の強度が像のいくつかの位置で閾値を超えた時点から開始してもよい。
【0025】
コントローラはまた、蛍光強度の変化について像ごとに分析することによってこのようなプロセスの終了を決定することもでき、増加している強度の飽和が検出されると、蛍光物質が問題の血管に入るプロセスの終了となる。このとき、コントローラは、保存された像データのサブセットのみを表示システムに供給してもよい。サブセットは、蛍光物質が問題の血管に入るプロセスの開始後および/または終了前に記録されたデータを含む。
【0026】
さらなる実施形態によれば、本発明は、蛍光物質を可視化するための顕微鏡システムを提供し、この顕微鏡システムは、顕微鏡光学系、照射システムおよび表示システムを含む。顕微鏡光学系はまた、物体領域の蛍光像をカメラに結像させるための第1のビーム路および可視光での物体領域の拡大結像のための第2のビーム路を含む。表示システムはまた、物体領域の可視光像をカメラで記録された像データから生成された物体領域の蛍光像と重ねて表示する。
【0027】
照射システムは、物体領域に向かう照射光ビームを提供する。この照射光ビームは、蛍光物質の励起波長の光を含む。照射システムは、蛍光物質の励起波長の光の強度を変調させる光変調器を含む。これは、物質の蛍光の経時的な変調となり、カメラで検出された蛍光像もまた経時的に変化する。高いコントラストを有する蛍光像を生成する際にこのような既知の強度の経時的変化を考慮する。例えば、カメラで検出された像のうちで強度が変化している部分を決定することもできる。このとき、生成された蛍光像のうちこのような部分だけをより高い強度で表すことができる。
【0028】
さらなる実施形態によると、本発明は、顕微鏡光学系、照射システムおよびコントローラを含む顕微鏡システムを提供する。顕微鏡光学系はまた、顕微鏡光学系の共通の対物レンズを貫通し得る第1および第2のビーム路を含む。第1のビーム路は、物体領域を表す像データを生成するためにカメラに物体領域を結像する。照射システムは、対物領域に向かう照射ビームを提供する。照射ビームのビーム路内の第1の位置にフィルタを配置する。照射システムはさらに、フィルタがビーム路内に配置されていない第2の位置から第1の位置へとフィルタの位置を変えるためのアクチュエータを含む。
【0029】
コントローラは、カメラで記録された像データを分析し、このような分析に基づき第1の位置から第2の位置へフィルタを移動させるためのアクチュエータを制御するように構成されている。この分析は、カメラで記録された像の特定部分での光強度の決定を含むこともできる。
【0030】
好ましくは、フィルタは、所定の波長より大きな波長を有する光を照射光ビームから排除するタイプのフィルタである。所定の波長は、好ましくは690nmより大きい。さらに、所定の波長は、好ましくは、800nmより小さい。
【0031】
このようなシステムでは、システムが、カメラによって検出された物体領域の像の分析に基づきあるモードから他のモードへ自動的に切り換えられる2つの異なる照射モードを提供することが可能である。
【0032】
このような顕微鏡システムの好ましい応用は、蛍光物質が問題の特定の血管に入る上記のプロセスと組み合わせることである。このようなプロセスの終了は自動的に検出される。このとき、蛍光像の記録の間、照射光ビームは蛍光の励起のための赤外光を含む第1の照射モードでシステムを作動させることが可能である。プロセスの終了が検知されると被検物体領域の不必要な加熱を防止するために、赤外線光を含む熱放射線を照射光ビームから取り除く第2の照射モードでシステムが作動するように、熱保護フィルタを照射システムのビーム路に自動的に配置する。
【0033】
さらなる実施形態によると、本発明は、物体領域の蛍光像を生成するための第1のビーム路および可視光で見られるような物体領域の表示を提供するための第2のビーム路を有する顕微鏡光学系、ならびに蛍光像から生成された表示を物体領域の可視表示に重ねて表示するための表示システムを含んでいる顕微鏡システムを提供する。顕微鏡システムはさらに、蛍光強度が閾値を超える像のコヒーレント部分を検出するために蛍光像を分析するように構成されている。このとき、コントローラは、コヒーレント部分の外周線のみが表示上で可視であるように蛍光像を表す像データを生成する。このとき、使用者は、外周線を知覚することによって蛍光強度が閾値を超える物体領域部分を認識することができる。同時に、使用者は、コヒーレント部分内を可視像の表示として知覚することができる。
【0034】
さらなる実施形態によると、本発明は、物体から戻ってきた分析光ビームの放射線の強度を表す深さプロファイルデータを生成するための干渉計装置を有する顕微鏡システムを提供する。分析光ビームは、物体に向かい、物体の分析光ビームが向かう位置は、ビームスキャナの制御によって選択することができる。
【0035】
このような深さプロファイルデータの生成は、従来、時間がかかり、特に、従来から顕微鏡システムの物体フィールド内の実質的にすべての走査位置で深さプロファイルデータを生成する必要がある。
【0036】
本発明によると、干渉計装置を有する顕微鏡システムが提供され、この顕微鏡システムは、物体の像を蛍光で記録するカメラを含み、記録された像を分析し、像内の分析部分を決定するコントローラが設けられている。分析部分は、カメラで記録された像のうちの像の強度が閾値を超える少なくとも1つのコヒーレント部分を含む。コントローラは、分析領域内の部分での深さプロファイルデータだけが生成されるように干渉計装置を制御する。
【0037】
このように、コントローラは、癌組織などの特定の応用のための問題の組織タイプを蛍光像に応じて蛍光像から選択することができる。像の問題の組織タイプが存在する部分を分析領域として用い、深さプロファイルデータは、分析領域内の部分についてのみ生成される。分析領域外の部分については、深さプロファイルデータの生成は行わない。
【0038】
このように、使用者は、深さファイルデータが生成されるべき部分を決定する必要がなく、比較的短時間で問題の部分の深さプロファイルデータを得ることができる。
【0039】
好ましくは、深さプロファイルデータを生成するための干渉計装置は、光干渉断層撮影(OCT)装置を含む。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態による顕微鏡システムのビーム路の模式図
【図2a】図1による顕微鏡システムに用いられ得るフィルターの透過特性を示すグラフ
【図2b】図1による顕微鏡システムに用いられ得るフィルターの透過特性を示すグラフ
【図2c】図1による顕微鏡システムに用いられ得るフィルターの透過特性を示すグラフ
【図3】本発明の実施形態による顕微鏡検査方法を説明するフローチャート
【図4】本発明による顕微鏡システムのさらなる実施形態の模式図
【図5a】図4の顕微鏡システムで生成された像の模式図
【図5b】図4の顕微鏡システムで生成された像の模式図
【図6】図4による顕微鏡システムに備えられた干渉計装置の詳細な部分図
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の上記および他の利点的な特徴は、以下の図面を参照しての本発明の好適な実施形態の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【0042】
図1は、光軸7を有する対物レンズ5を含む顕微鏡光学系3を含む顕微鏡システム1を模式的に示している。被検物9は対物レンズ5の物体平面に置かれる。物体9から発散している光は、2つのズームシステム12、13が光軸7から離れて配置されている平行ビーム11を形成するように対物レンズ5によって変形される。ズームシステム12、13は、平行ビーム11の部分ビーム14および15を用い、部分ビーム14、15を接眼レンズ16および17に顕微鏡システム1の管の本体の偏向プリズム(図1に図示せず)を通して供給する。使用者は、それぞれ左眼18および右眼19で接眼レンズ16,17を見ると、物体9の拡大表示を像として知覚できる。左眼18で知覚された像は、光軸に対してαの角度で物体を見たときの像に相当し、右眼19で知覚された像は、光軸7に対して−αの角度で物体9を見たときの像に相当し、これにより、使用者は、両眼18、19での物体9の立体像を知覚する。
【0043】
部分透過ミラー21が、部分ビーム15にその光の一部がビーム23として分岐するように配置されている。ビーム23は、さらなるビームスプリッタ25で分割され、ビーム27および29を形成する。ビーム27は、カメラ32が光軸7に対し−αの観察角度で物体9の像を検出するようにカメラアダプタ光学系31を通してカメラ32の感光要素に与えられる。カメラ32で検出された像は、データ線33を介して像データとしてコントローラ35に伝達される。
【0044】
ビーム39は、部分透過ミラー37によって部分ビーム14から分岐する。ビーム39は、カメラ43が光軸7に対してαの観察角度で物体9の像を検出するように、カメラアダプタ光学系41を介してさらなるカメラ43の感光要素に与えられる。カメラ43で検出された像は、データ線45を介して像データとしてコントローラ35に伝達される。コントローラは、カメラ32、43によって検出された像を像データとして、ライン47を介して顕微鏡システム1の使用者が頭に装着した頭部装着ディスプレイ49に伝達し、図1の参照番号51および52で模式的に示された頭部装着ディスプレイ49の統合表示が、それぞれ左眼および右眼で使用者によって知覚され得るそれぞれの像を提供する。
【0045】
このように接眼レンズ16、17を直接覗き込む位置にない使用者もまた、頭部装着ディスプレイ49を用いて、物体9の可視光像の表示を観察することによって物体9の立体表示を知覚することができる。
【0046】
ビーム29は、カメラ55が物体の赤外線像を検出し得るように、カメラアダプタ光学系53を介してカメラ55の感光要素に与えられる。フィルタ57がビーム29に配置されている。フィルタ57の透過特性は、図2aにライン58として模式的に示されている。図2aの垂直線59はさらに、780nmでの蛍光物質、インドシアニングリーン(ICG)の最大励起スペクトルをあらわす。図2aの垂直線60は、835nmでのICGの対応する最大蛍光発光スペクトルをあらわす。フィルタ57の透過特性58は、約810nmで閾値61を示している。フィルタ57は、閾値より低い波長で実質的に非透過性であり、フィルタ57は、閾値より高い波長で実質的に透過性を有する。このように、物質の蛍光が、さらに以下に示すように顕微鏡システム1の照射システム63で励起する限り、カメラ55は、物体9内の蛍光物質の分散を表す物体9の像を検出する。
【0047】
カメラ55で検出した像は、データ線65を介してコントローラ35に伝達される。コントローラ35は、カメラ55で検出した像を像データとしてデータ線67を介してLCDディスプレイ69に伝達する。LCDディスプレイ69は、コリメーター光学系70および部分透過ミラー68によって部分ビーム15と重なる像として像データを表す。ディスプレイ69の像は、物体9の直接光学像と重なって、使用者の眼19によって知覚され得る。LCDディスプレイ69は、緑色などの可視の色でカメラ55によって検出される赤外光強度分布を表す。物体9を形成するヒトの組織が含む緑色は、通常比較的少量であるので、赤外線像を表すために緑色を用いるとよいかもしれない。
【0048】
コントローラは、ディスプレイ51が、カメラ55によって検出された赤外光像をカメラ32によって検出された可視光像と重ねて表示するように頭部装着ディスプレイ49のディスプレイ51に伝達される像データのデータ処理を行う。このように、ディスプレイ49を頭に装着している使用者はまた、物体の可視光像および赤外光像の重なった表示を右眼で知覚する。
【0049】
参照を簡素に分かりやすくするために、図1に図示はしていないが、さらなるビームが、左眼18に与えられる部分ビーム14から分岐してもよい。このようなさらなるビームは、部分ビーム15、LCDディスプレイ69、コリメータ光学系70および部分透過ミラー68のための上で説明した可視光の部分ビーム14と重なる像を生成するためにさらなる赤外線カメラに与えてもよい。使用者は、このとき、物体9の立体的な赤外光像を知覚する。このような付加的なカメラによって生成された像データはまた、頭部装着ディスプレイ49もまた、物体9内の蛍光物質の分散の立体表示を提供するように頭部装着ディスプレイ49のディスプレイ52に与えてもよい。
【0050】
照明システム63は、光源としてのハロゲンランプ71、反射器72,1つまたは複数のレンズ75を通り光学ファイバー束77の入端部76へと向かう平行化された光ビーム74を生成するためのコリメータ73を含み、これにより、光源71から放出された光をファイバー束77へと結合する。光は、ファイバー束77によって対物レンズ5近傍の位置まで運ばれ、ファイバー束77の出射口端部78から発散する。物体9に向かう照射光ビーム81を形成するために、発散している光を整形するためのコリメータ光学系79が設けられている。本実施形態は、光源としてハロゲンランプを用いることに限定しない。キセノンランプのような他の光源を用いてもよい。
【0051】
図1において、コリメータ光学系79は、対物レンズ5の比較的近傍に位置している。しかし、照射光ビーム81は、対物レンズ5の光軸7に対して比較的高い角度の方向に向いている。照射光ビーム81の方向と対物レンズの光軸7の方向と角度がこのように高いと、物体への照射が不十分となる虞がある。特に、動脈瘤の治療のための人間の脳にあるような体内に備わった深い空孔で外科的な方法が行われるような状況においては、互いに重なった可視光像と蛍光像の両方を知覚することができない虞がある。このような、そして他の応用において、照射光ビームが光学軸7への角度が低い方向に向いているような照射システムの構造を用いることが好ましい。これは、照射光ビームのビーム路に対物レンズを含めることによって、すなわち、照射光ビームが対物レンズを通過することによって、または、対物レンズが、照射光ビームによって貫通される開口を備えることによって、従来から達成されている場合がある。
【0052】
照射システム63は、互いに隣接して配置される2つのフィルタ84および85を有するフィルタ板83をさらに含んでいる。コントローラ35によって制御されるアクチュエータ87が、フィルタ84が板83の第1の位置でビーム74に配置され、フィルタ85が板83の第2の位置でビーム74に配置されるように、図1の双方向矢印88が示す方向にフィルタ板83を移動させるために設けられている。
【0053】
フィルタ84の透過特性を線89として図2bに示し、以下の表1に表す。
【0054】
【表1】

【0055】
フィルタ84は、可視光および波長が側面90の800nmまでの光を実質的に完全に透過し、側面90を超える波長は実質的に透過しない。フィルタ84は、被検物体9の蛍光物質の蛍光を観察するための応用においてビーム74に位置する。800nmでの側面90は、光ビーム81がカメラ55によって検出される蛍光を励起させること、および、物体の可視光像が、接眼レンズ16、17を覗き、カメラ32、43によって検出された像を観察することによって知覚されるように可視光で物体領域を照射することの両方を行うように、ICGの励起波長59より高い波長である。
【0056】
蛍光を観察することが必要でない応用において、コントローラ35は、アクチュエータ87を駆動して、フィルタ85がビーム74に配置されるようにフィルタ板83を移動させる。フィルタ85の透過特性を線91として図2cに模式的に示し、表2に表す。
【0057】
【表2】

【0058】
フィルタ85は、透過特性91の側面93までの可視光を実質的に完全に透過し、側面93を超える波長の光は実質的に透過しない。側面93は、約710nmである。フィルタ85は、物体9の不必要な加熱になるような照射光ビーム81からの放射をなくすための熱保護フィルタとして用いられる。側面93は、ICGの励起スペクトルが、710nmより下の波長にまで延びるとしても、ICGの最大励起波長59よりずっと下である。しかし、物質の蛍光は、フィルタ85がビーム74に配置されると実質的に励起しない。
【0059】
コントローラは、一連の像またはカメラ55で検出されたこのような像を表す像データを保存するための像メモリ95をさらに含む。コントローラ35は、さらに、メモリ95で保存された像メータをディスプレイ69に順次与え、ディスプレイ69は、時系列の像としてカメラ55によって先に検出された像を表示するように構成されている。一連の像はまた、頭部装着ディスプレイ49に与えられてもよい。
【0060】
時系列の像のディスプレイは、赤外光像のフィルム表示として理解することもできる。このような表示は、蛍光物質が管システムに入るというプロセスにより管システムの構造または機能の評価および確認が可能になるような状況において好適に用いられる。蛍光物質が管に入った後のある時点に、検出された像は、経時的に実質的に不動であり、赤外光像のさらなる観察から得られる付加情報は実質的にない。このような管システムへの浸入プロセスは、1秒から5秒ほどの比較的短期間であるので、外科医は、非常に高い集中力でプロセスを監視し、問題の各管のためのプロセスの時間依存を記憶しなければならない。プロセス中にカメラ55によって検出された像を保存でき、かつ保存された像をフィルムとして繰り返し表示できることは、外科医が、観察されたプロセスの完全な印象を得ることに役立つ。
【0061】
顕微鏡システム1を作動させる方法の一実施形態を図3のフローチャートを参照して以下に説明する。結像手順の初めに、熱保護フィルタ85を照射システム63のビーム路に配置し、コントローラは、ステップS1において、スイッチ97の開始ボタンまたは他の入力手段が外科医またはその助手によって作動されるのを待つ。蛍光物質が患者に注入直前または直後に開始ボタン97を作動させるのが好ましい。ステップS3において、アクチュエータが、熱保護フィルタ85をビーム路から取り除き、ビーム路に蛍光結像フィルタ84を挿入し、S5において、カウンタnをリセットする。その後、カメラ55によって検出された像B(0)をメモリ95に像データとして保存する。この像はまた、コントローラ35によってディスプレイ69に転送される。ディスプレイ69は、この像を外科医が接眼レンズ(S9)を覗き込むと物体9の可視光像と重ねてこの像を知覚するように表示する。その後,カウンタnをインクリメントさせ(S11)、次の像B(n)をカメラ55から受け取り、メモリ95に保存し(S13)、ステップS15において、この像B(n)をディスプレイ69または51に可視化する。
【0062】
観察中の管システムは、手順開始において蛍光物質を含んでいないので、最初に検出された像B(n)は、赤外光の強度を実質的に全く示していない。蛍光物質は患者の体内を伝播し、最終的に顕微鏡対物レンズ3の物体フィールドの組織領域9に入ることによって、像B(n)は、順次増加する赤外線強度を示す。コントローラ35は、像B(n)の強度を分析し、ステップS17で、その強度と第1の所定の閾値を比較する。一番最後に検出した像B(n)の強度が第1の閾値未満である場合、ステップS11に戻る。像B(n)の強度が第1の閾値より高ければ、これは、使用者に後に繰り返し表示されることになる一連の検出像の開始として用いられる時点を示している。ステップS19において、カウンタnの現在の値を変数nstartに割り当てる。
【0063】
その後、カウンタはインクリメントされ(S20)、次の像B(n)を得、保存し(S21)、表示する(S23)。ステップS25において、コントローラ35は、一番最後に検出した像B(n)の強度と最後から二番目の像B(n−1)の強度とを比較し、この2つの強度の差が、所定の第2の閾値より大きい場合、ステップS20に戻る。物質の管システムへの浸入開始直後は強度は増加し続けるので、その時点では、ステップS25の条件が満たされないように第2の閾値を選択する。ある時間が経過後、蛍光物質の濃度は飽和に近づき、次の像B(n)とB(n−1)の強度との差が第2の閾値より小さくなる。これは、一連の検出された像の終了すべき時点を示している。ステップS27において、カウンタnの現在値を変数nendeに割り当て、S29において、蛍光結像フィルタ84をビーム74から取り除き、熱保護フィルタ85をビーム74に挿入する。
【0064】
その後、ディスプレイ69または51に検出された像を繰り返し表示する手順が続く。このために、カウンタnを一連の像の開始に相当する値nstartに設定し(S31)、そこでB(n)を表示し(S33)、カウンタnをインクリメントする(S35)。ステップS37において、カウンタnの現在値が一連の像の終了時でのカウンタ値nendより低くなった場合、ステップ33に戻る。そうでなければ、ステップS39において、手順の終了を示すために再びボタン97を作動させるかどうかを判断する(S39)。手順終了が示されなければ、ステップS31に戻り、再び一連の像を表示する。
【0065】
上記の実施形態は、可視光で物体を照射する光ビームの生成および蛍光の励起のために1つの光源を用いるが、さらなる実施形態では、可視光および励起光の生成のために、それぞれの異なる光源を用いてもよい。このとき励起光を生成する光源は、応用によって電源をオンオフすることができる。
【0066】
さらなる実施形態は、1つの光源によって生成される2つまたは複数の光ビーム、あるいは各ビームが可視光および励起光を含む別個の光源を含んでもよい。
【0067】
図1から図3を参照して上で説明したの実施形態において、顕微鏡システム1は、透過フィルタであるフィルタ84および85を用いている。別の実施形態では、光源の反射器72を適切にコーティングすることによって提供され得たり、分離した反射器がコントローラ35の制御によるアクチュエータを用いてビーム路に挿入されるというような所望のフィルタ特性を有する別個の反射器によって提供され得る、相当する反射フィルタを用いてもよい。
【0068】
図1から図3を参照して上で説明した実施形態において、フィルター57、84および85ならびにそれぞれ図2a、2b、2cに示されたフィルタ特性を有する顕微鏡システム1は、インドシアニングリーンの蛍光を観察するために最適化されている。別の実施形態では、上記の原則は、特性89および58の端部90および61を別の蛍光物質の対応する励起波長および蛍光波長に当てはめることによって別の蛍光物質の観察に応用することができる。
【0069】
図4は、顕微鏡システム1のさらなる実施形態のビーム路を模式的に示している。顕微鏡システムは、複数のレンズ5および6を有する対物レンズ3を含む。レンズ5および6はレンズ表面での可視光の反射を減らすように反射防止膜で覆われている。反射防止膜は、レンズ表面での赤外光および近赤外光の反射もまた減らすように設計されてもよい。
【0070】
対物レンズ3は、対物レンズ3の物体平面11から発散している拡散ビーム9を受け入れる。拡散ビーム9は、対物レンズの下流で実質的に平行なビームを提供するために対物レンズによって変形される。対物レンズ3の下流であって、図4では対物レンズの上方に、図4に模式的に示される2つのズームシステム13および14が備えられている。各ズームシステム13、14は、それぞれ、部分ビーム15、16を用い、これをそれぞれ、顕微鏡システムの接眼レンズ17、18に与える。使用者は、それぞれ、右眼および左眼で接眼レンズ17および18を覗き込むことにより物体平面11の拡大された鮮明な像を知覚することができる。可視光は、物体平面11のこれらの像を生成するために用いられる。このために、物体平面11は、キセノンランプ23ならびにビーム整形レンズ24および26を含む照射システム21によって与えられる可視光で照射される。
【0071】
顕微鏡システム1は、可視光での物体平面の実質的に鮮明な像を検出するカメラ33をさらに有している。カメラ33は、像平面37に位置する感光基板を有するCCDカメラチップ35を含む。ビームスプリッタ29が部分ビーム16に設けられており、そこからビーム31が分岐し、ビーム31はカメラアダプタ光学系39に与えられ、次いで、ビーム31はカメラに与えられ、物体平面11の実質的に鮮明な像が像平面37に生成される。カメラ33で検出された像は、資料用に用いることもできるし、接眼レンズ17および18を直接用いない使用者のために物体平面11の像を表示するための表示装置によって表示されることもできる。カメラ33の像は、特に、使用者の頭部装着ディスプレイに与えられてもよい。
【0072】
顕微鏡システム1は、赤外線で物体平面の像を検出するためのカメラ41を含む。カメラ41は、像平面45に位置する感光基板を有するCCDカメラチップ43を含む。ビームスプリッタ49によって部分ビーム15から分岐されたビーム51をCCDカメラチップ43に与えるためにカメラアダプタ光学系47が設けられている。カメラアダプタ光学系47は、物体平面11の実質的に鮮明な像が赤外光で像平面45に生成されるように構成されている。このように、カメラ33および41は、カメラ33は、物体平面11の実質的に鮮明な像を可視光で生成し、カメラ41は、物体平面の実質的に鮮明な像を赤外光で生成するという点で互いに異なっている。従来からの定義によると、赤外光は、820nmから870nmの範囲の波長を含む。
【0073】
フィルタ53が、ビーム51中であってカメラ41の正面に配置されている。フィルタ53は、応用に用いられる蛍光物質に適合している。本実施例では、フィルタ53は、インドシアニングリーンに適合しており、実質的に820nmと870nmとの間の波長範囲の光のみを透過する。インドシアニングリーンの蛍光波長はこの波長範囲内である。
【0074】
別の実施形態によると、ビームスプリッタ49は、ビームスプリッタ49が赤外光のみを偏向させるように適切な被膜で覆われている。
【0075】
カメラ41によって検出された像は、コントローラまたはコンピュータ55に与えられる。
【0076】
ある実施形態による応用では、人間の肝臓などの被検組織を物体平面11に置く。接眼レンズ17および18によって与えられる可視光像だけで組織を観察する場合、組織を貫通して延びる血管は、実質的に不可視である。血管と周囲の肝臓組織とをこのような像から区別するのは容易ではない。ICGの静脈注射の後、蛍光物質は、周囲の組織によりも血管に高い濃度で蓄積する。820nmから870nmの波長範囲の光を用いた組織の像は、周囲の組織に比較して蛍光した管に対応する部分において高い強度を示す。
【0077】
カメラ41によって検出され、コントローラ55に与えられた像の例を図5aに模式的に示す。結像フィールド58の大部分57の強度は大変低い。部分59は、わずかに高い強度を示し、2つの部分61、62は、さらに高い強度を示している。より高い強度の赤外線を示している部分63が部分61内に存在する。部分62および63は、血管に相当し、部分57は周囲の組織に相当すると考えられる。さらに、部分59は蛍光物質が低い濃度で蓄積している周囲の組織に相当すると考えられる。
【0078】
顕微鏡システム1は、平面67に位置するLCDチップ69を含む表示システム65をさらに含む。LCDチップ69で表示された像は、投影光学系71およびビームスプリッタ73によって部分ビーム15と重ねられる。使用者は、接眼レンズ17を覗き込むと、物体平面の可視光像とディスプレイ65によって生成された像表示との重なりを知覚することができる。コントローラ55は、図5aに模式的に示すような、像をディスプレイ65に与えることができる。像が表示され、例えば青色の可視光で使用者に知覚される。このように、使用者は、可視光像と重なる赤外線像の可視的な表示が与えられる。このとき、使用者は、顕微鏡システム1の物体フィールド内に位置した血管を認識することができる。
【0079】
しかし、可視光像と図5aによる像とを重ねるために、部分61および62は、その部分内が青色で示されているので、可視光像から得られ得る情報が減少する。この状況を改善するために、コントローラ55は、カメラ41から受け取られた像の分析を行う。コントローラは、これらの所定の閾値より大きな強度を示す像のコヒーレント部分を判断する。適切な所定の閾値を用いて、血管と周囲の組織との区別を行うことができる。図5aに示す例において、閾値は、部分59における強度が閾値より低く、部分62および63内の強度が閾値より高くなるように調整されている。
【0080】
閾値を超えるコヒーレント部分を同定したあと、コントローラ55は、コヒーレント領域を囲む外周線を決定する。このような外周線は、像のコヒーレント部分と周囲部分との境界に相当する。コントローラ55は、外周線を表すデータをディスプレイ65に与える。ディスプレイは外周線の像を生成し、このような像を5bに模式的に図示するように可視光像と重ねる。この像において、部分61および62の外周線75のみが青色で示されている。このように、使用者は、外周線75の内側に位置する血管に関する情報を与えられ、使用者は、通常どおり血管の可視光像も依然として知覚することができ、これらの血管の可視光像を観察しながら、血管の外科治療を行うことができる。
【0081】
フィルタ77は、照射システム21のビーム路に配置されている。フィルタ77は、蛍光物質の蛍光発光の波長を実質的に透過しない。物質の蛍光が比較的高いコントラストおよび低いバックグラウンドでカメラ41によって検出された像において見えるように、蛍光の光で物体を照明しない。
【0082】
さらに、照明システム21のビーム路にフィルタチョッパ79が配置されている。フィルタチョッパ79は、コントローラ55によって制御されているモータ89によって回転駆動されている。フィルタチョッパは、750nmと820nmとの間の範囲の波長で実質的に透過するセクタと透過しないセクタとの複数のセクタを含む。フィルタチョッパ79のすべてのセクタは、実質的に可視光を透過する。蛍光物質の励起はフィルタチョッパ79を回転させることによって変調される。したがって、カメラ41によって検出された蛍光像の強度も経時的に変調され、コントローラ55は、蛍光像におけるノイズおよびバックグラウンドをさらに減らすためのロックイン方法などの方法によって蛍光像の時間依存を分析してもよい。
【0083】
上記の照射システムの別の実施形態は、図4の鎖線に示されている。別の照射システム90は、光源23と分離した光源91を含む。光源91は、可視光で物体を照射するために設けられており、光源23は、蛍光物質の励起光を生成するためだけに設けられている。このように、可視光での照射は励起光での照射とは独立し、チョッパホイール79の回転が、可変を変調すると、使用者が物体の可視光像を観察できない場合があることから、可視光での照射を変調しないようにしてもよい。さらなる実施形態によると、光源23は、励起光を変調するためのコントローラ55によって素早く電源のオンオフが行われるレーザ光源である。このような実施形態では、光変調チョッパを省いてもよい。
【0084】
顕微鏡システムは、分析光ビーム205を発光し、分析光ビーム205をビームスキャナ260に向ける光干渉断層撮影(OCT)装置200をさらに含む。ビームスキャナー260は、分析光ビームを物体平面11に向け、分析光ビーム205を物体平面に集束するためのミラーを含む。ビームスキャナー260は、物体平面上の分析光ビーム205が向けられる位置を選択し、これらの位置を変更するようにコントローラ55によって制御される。OCT装置200は、選択された位置で物体の深さプロファイルデータを検出し、コントローラ55に深さプロファイルデータを送る。OCT装置は当該技術分野から周知である。例えば、米国特許5、493、109号および5、795、295号があり、これらの全開示を参照により本明細書に援用する。
【0085】
図6を参照して、OCT装置200の機能を以下に簡単に説明する。装置200は、光ファイバー230に結合された放射線を発する白色光源220を含む。ビームカップラー240が、その放射線を2つの光ファイバ250および270に結合するために設けられている。ファイバ270の1つの部分ビームが、レンズ280を介して基準ミラー290に向かう。ファイバ250の部分ビームは、分析光ビーム205としてレンズ251を介して平行化され、ビームスキャナ260に向かう。ビームスキャナ260は、分析光ビーム205を被検物体255に向ける。物体から戻ってきた分析光ビーム205の放射線は、ビームスキャナ260によって逆方向にOCT装置200へと送られ、ファイバ250に結合される。ミラー290から反射し戻ってきた放射線もまた、ファイバ270に結合される。ビームカップラ240は、ファイバ250を介して物体から受け取った放射線と、ファイバ270を介してミラー290で反射し戻ってきた放射線とを重ね、重ねられた放射線をファイバ265に結合する。ファイバ265は、重ねられた放射線を光検知器275に送る。光検知器の出力は、復調器285によって復調され、アナログ・デジタル変換器295によってコンピュータ読み取り可能データに変換され、コントローラ55に送られる。
【0086】
物体255およびミラー290からの放射線を受け入れる検出器275は、ビームスプリッタ240とビームスプリッタ240での重ね合わせとで2つの部分ビームの光学波長が光源の可干渉長さ内で等しい場合、干渉によって増加する信号を検出する。このように等しい光学ビーム路を達成するために、基準ミラー290は、図6における矢印291で示される方向に移動可能である。ミラー290を移動させ、検出器275によって検出された対応する強度を記録することによって、物体255の分析光ビーム205が向かう位置での物体255の深さプロファイルを検出することが可能である。ミラー290が機械的に移動しなければならないので、このような深さプロファイルを得るには時間がかかる。
【0087】
コントローラ55は、物体の深さプロファイルを記録すべき位置に分析光ビーム205を向けるようにビームスキャナ260を制御する。コントローラ55は、図5bにおいて参照番号62および63で示される蛍光像からコントローラ55によって先に決定された部分または分析領域に関してのみ、深さプロファイルの記録を行う。
【0088】
コントローラ55は、深さプロファイルが部分62、63内の直線213に位置する複数の部分で記録されるようにビームスキャナ260を制御する。ここで、直線213は、可視フィールド58に垂直に配置され、互いに所定の距離をもって配置されている。線211に沿って記録された深さプロファイルは、顕微鏡システム1のディスプレイ207に表示される。キーボード209またはマウスなどの他の入力手段を、可視フィールド58内の直線213の構成、例えば、その向きおよび互いの距離などを選択するために用いることができる。さらに、部分62、63のうちの1つを選択して、選択された部分の深さプロファイルをディスプレイ207に示さないようにすることもできる。
【0089】
結像システム65によって深さプロファイルのうちいくつかの選択されたものを表示し、使用者が接眼レンズを通して物体の像を観察しながら深さプロファイルを分析できるように、このような表示と接眼レンズを通して知覚された可視光像とを重ねることも可能である。
【0090】
上記の実施形態では、インドシアニングリーンが蛍光物質として用いられている。しかし、他の蛍光物質を用いてもよい。特に、人体の物質の自発蛍光を観察することもできる。蛍光像の強度の分析の代わりに、またはそれに加えて、物体フィールド内の蛍光領域を互いに区別するために蛍光半減期を分析することもできる。
【0091】
さらなる実施形態によると、表示装置65によって生成された像を部分ビーム15ではなく部分ビーム16に結合する。あるいは、対応の表示を両方の部分ビームに結合してもよい。
【0092】
上記の実施形態において、外周線75は実線で表されている。さらなる実施形態によると、外周線は破線、点線、一点鎖線または他のタイプの線で表されてもよく、コヒーレント部分内を像の影領域または斜線領域として表してもよい。
【0093】
したがって、本発明は、本明細書において最も実用的で好適な実施形態であると考えられたもので示され、記載されているが、本発明の範囲内でこれらから離れることができることが理解され、したがって、本明細書中に開示された詳細に限定されるのではなく、請求項の全範囲は、いずれのおよびすべての均等な方法および装置を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検物体中のインドシアニングリーンの蛍光を可視化するための顕微鏡システムであって、
以下のものを含む顕微鏡光学系と、
すなわち、物体領域を、前記物体領域の像を表している第1の像データを生成するための第1のカメラの光検出構成要素上に、インドシアニングリーンの蛍光発光波長を含む第1の波長範囲の波長を含む光で光学的に結像するための第1のビーム路と、
前記物体領域の拡大された第1の表示を提供するための第2のビーム路であって、前記第1の表示が、前記物体領域の像を、少なくとも可視光を含む第2の波長範囲の波長を含む光で表す第2のビーム路とを含む顕微鏡光学系と、
使用者による観察のために、前記第1の像データを基準として生成された第2の表示を前記第1の表示と重ねて表示するための表示システムと、
前記物体領域上に向かう少なくとも1つの照射光ビームを提供するための照射システムであって、前記少なくとも1つの照射光ビームは、前記第2の波長範囲の波長およびインドシアニングリーンの励起波長の光を含む照射システムとを含むことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの照射光ビームの光が、1つの光源から発せられることを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項3】
前記光源が、キセノンランプおよびハロゲンランプのうちの1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の顕微鏡システム。
【請求項4】
前記照射システムが、前記照射システムのビーム路に配置される第1のフィルタを含み、前記第1のフィルタが、前記照射光ビームからインドシアニングリーンの蛍光発光波長の光を実質的に排除することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡システム。
【請求項5】
前記照射システムが、照射システムのビーム路に配置され得る第2のフィルタを含み、前記第2のフィルタは、前記照射光ビームから710nmより高い波長、特に690nmより高い波長を有する光を実質的に排除することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の顕微鏡システム。
【請求項6】
前記第1および第2のフィルタのうちの少なくとも1つが、透過フィルタまたは反射フィルタを含むことを特徴とする請求項4に記載の顕微鏡システム。
【請求項7】
被検物体中の蛍光物質の蛍光を可視化するための顕微鏡システムであって、
以下のものを含む顕微鏡光学系と、
すなわち、物体領域を、前記物体領域の像を表している第1の像データを生成するための第1のカメラの光検出構成要素上に、蛍光物質の蛍光発光波長を含む第1の波長範囲の波長を含む光で光学的に結像するための第1のビーム路と、
前記物体領域の拡大された第1の表示を提供するための第2のビーム路であって、前記第1の表示が、前記物体領域の像を、少なくとも可視光を含む第2の波長範囲の波長を含む光で表す第2のビーム路とを含む顕微鏡光学系と、
少なくとも一定期間、前記第1のカメラによって検出された1組の第1の像データを保存するための像メモリと、
前記1組の第1の像データの少なくとも1つのサブセットから生成された第2の表示のシーケンスを表示するための表示システムであって、使用者による観察のために、前記第2の表示のシーケンスが、前記第1の表示と重ねて表示される表示システムとを含むことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項8】
前記表示システムが、前記一連の第2の表示を繰り返し表示するように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の顕微鏡システム。
【請求項9】
前記1組の第1の像データからのサブセットを第1の組の第1の像データによって表された像の強度に基づいて選択するように構成されたコントローラをさらに含むことを特徴とする請求項7または8に記載の顕微鏡システム。
【請求項10】
前記1組の第1の像データからのサブセットを第1の組の第1の像データによって表された像の強度の差に基づいて選択するように構成されたコントローラをさらに含むことを特徴とする請求項7から9に記載の顕微鏡システム。
【請求項11】
被検物体中の蛍光物質の蛍光を可視化するための顕微鏡システムであって、
以下のものを含む顕微鏡光学系と、
すなわち、物体領域を、前記物体領域の像を表している第1の像データを生成するための第1のカメラの光検出構成要素上に、蛍光物質の蛍光発光波長を含む第1の波長範囲の波長を含む光で光学的に結像するための第1のビーム路と、
前記物体領域の拡大された第1の表示を提供するための第2のビーム路であって、前記第1の表示が、前記物体領域の像を、少なくとも可視光を含む第2の波長範囲の波長を含む光で表す第2のビーム路とを含む顕微鏡光学系と、
前記物体領域上に向かう少なくとも1つの照射光ビームを提供するための照射システムであって、前記少なくとも1つの照射光ビームは、前記蛍光物質の励起波長の光を含み、前記照射システムが、前記蛍光物質の励起波長の光の強度を変調するための光変調器を含む照射システムと、
使用者による観察のために、前記第1の像データを基準として生成された第2の表示を前記第1の表示と重ねて表示するための表示システムとを含むことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項12】
前記強度変調器が、フィルタチョッパを含むことを特徴とする請求項11に記載の顕微鏡システム。
【請求項13】
前記フィルタチョッパが、反射フィルタおよび透過フィルタのうちの1つを含むことを特徴とする請求項11に記載の顕微鏡システム。
【請求項14】
前記照射システムが、前記蛍光物質の励起波長の光および可視光を発する光源を含むことを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の顕微鏡システム。
【請求項15】
前記強度変調器が、変調された強度で前記蛍光物質の励起波長の光を発する第1の光源を含むことを特徴とする請求項11に記載の顕微鏡システム。
【請求項16】
前記照射システムが、前記蛍光物質の励起波長の光を含まない可視光を発する第2の光源を含むことを特徴とする請求項15に記載の顕微鏡システム。
【請求項17】
物体を検査するための顕微鏡システムであって、
物体領域を、前記物体領域の像を表している第1の像データを生成するための第1のカメラの光検出構成要素上に光学的に結像するための第1のビーム路を有する顕微鏡光学系と、
前記物体領域に向かう少なくとも1つの照射光ビームを提供する照射システムであって、前記照射システムは、第1の位置に位置付け可能な第1のフィルタを含み、その位置において前記第1のフィルタは、照射システムのビーム路内に配置されており、前記第1の
フィルタは、所定の波長より高い波長の光を前記照射光ビームから排除し、前記照射システムが、前記第1のフィルタがビーム路内に位置していない第2の位置から前記第1の位置へ前記第1のフィルタを移動させるためのアクチュエータを含む照射システムと、
前記第1のフィルタをその第2の位置からその第1の位置まで、前記第1の像データによって表された像の強度の分析に基づいて移動させるための前記アクチュエータを制御するように構成されたコントローラとを含むことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項18】
前記所定の波長が、690nm〜720nm、720nm〜750nm、750nm〜780nm、および780nm〜800nmのうちの1つの範囲内であることを特徴とする請求項17に記載の顕微鏡システム。
【請求項19】
前記第1の像データが、物体に蓄積された蛍光物質の蛍光発光波長を含む第1の波長範囲の波長を含む光での物体領域の像を表すことを特徴とする請求項17または18に記載の顕微鏡システム。
【請求項20】
前記蛍光物質の前記蛍光発光波長が、前記所定の波長より高いことを特徴とする請求項19に記載の顕微鏡システム。
【請求項21】
前記顕微鏡光学系が、前記物体領域の拡大された第1の表示を提供するための第2のビーム路をさらに含み、前記第1の表示が、前記物体領域の像を、少なくとも可視光を含む第2の波長範囲の波長を含む光で表すことを特徴とする請求項17から20のいずれかに記載の顕微鏡システム。
【請求項22】
使用者による観察のために、前記第1の像データを基準として生成された第2の表示を前記第1の表示と重ねて表示するための表示システムをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の顕微鏡システム。
【請求項23】
被検物体中の蛍光物質の蛍光を可視化するための顕微鏡システムであって、
以下のものを含む顕微鏡光学系と、
すなわち、物体領域を、前記物体領域の像を表している第1の像データを生成するための第1のカメラの光検出構成要素上に、蛍光物質の蛍光発光波長を含む第1の波長範囲の波長を含む光で光学的に結像するための第1のビーム路と、
前記物体領域の拡大された第1の表示を提供するための第2のビーム路であって、前記第1の表示が、前記物体領域の像を、少なくとも可視光の波長を含む第1の波長範囲の光で表す第2のビーム路とを含む顕微鏡光学系と、
前記物体領域の像のコヒーレント部分の少なくとも外周線を表している第2の像データを生成するように構成されたコントローラであって、前記コヒーレント部分内の像の光強度が閾値を超えるようなコントローラと、
使用者による観察のために、前記第2の像データを基準として生成された第2の表示を前記第1の表示と重ねて表示するための表示システムとを含むことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項24】
物体領域を、前記物体領域の像を表している第1の像データを生成するための第1のカメラの光検出構成要素上に、蛍光物質の蛍光発光波長を含む第1の波長範囲を含む光で光学的に結像するための第1のビーム路を有する顕微鏡光学系と、
前記第1の像データによって表された前記物体領域の像の少なくとも1つのコヒーレント部分を表している位置データを生成するように構成されたコントローラであって、前記少なくとも1つのコヒーレント部分内の像の光強度が閾値を超えるコントローラと、
前記生成された位置データに基づいて分析ビームで前記物体領域を走査するためのビームスキャナと前記物体から戻ってきた分析ビームの放射線の強度を表す深さプロファイル
データを得るための放射線検出器とを有する干渉計装置とを含むことを特徴とする顕微鏡システム。
【請求項25】
前記コントローラが、前記干渉計装置を、干渉計装置が前記少なくとも1つのコヒーレント部分においてのみ前記深さプロファイルデータを得るように制御することを特徴とする請求項24に記載の顕微鏡システム。
【請求項26】
前記干渉計装置が、光干渉断層撮影装置を含むことを特徴とする請求項24または25に記載の顕微鏡システム。
【請求項27】
前記顕微鏡光学系が、前記物体領域の拡大された第1の表示を提供する第2のビーム路をさらに含み、前記第1の表示が少なくとも可視光を含む第1の波長範囲を含む光で前記物体領域の像を表すことを特徴とする請求項24から26のいずれかに記載の顕微鏡システム。
【請求項28】
使用者による観察のために、前記深さプロファイルデータを基準として生成された第2の表示を前記第1の表示と重ねて表示するための表示システムをさらに含むことを特徴とする請求項27に記載の顕微鏡システム。
【請求項29】
前記第1のビーム路が、前記像を表すための少なくとも1つの接眼レンズを含むことを特徴とする請求項1から28のいずれかに記載の顕微鏡システム。
【請求項30】
前記表示システムが、前記第2の表示を前記接眼レンズに向けられた前記第1のビーム路に重ねるように構成されていることを特徴とする請求項28または29に記載の顕微鏡システム。
【請求項31】
前記第1のビーム路が、可視光で前記物体領域の像を表している第2の像データを生成するための第2のカメラの光検出構成要素を少なくとも1つ含み、前記第2の表示が、前記表示システムによって表示されることを特徴とする請求項1から30のいずれかに記載の顕微鏡システム。
【請求項32】
被検物体中のインドシアニングリーンの蛍光を可視化する顕微鏡検査方法であって、
使用者による観察のために第1の可視光像の表示を行うステップと、
インドシアニングリーンの蛍光発光波長を含む光で前記物体の第2の像を記録するステップと、
使用者による観察のために前記第2の像を前記第1の像と重ねて表示するステップと、
前記可視光およびインドシアニングリーンの励起波長の光を含む少なくとも1つの照射光ビームで前記物体を照射するステップとを含む顕微鏡検査方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの照射光ビームが、前記可視光および前記インドシアニングリーンの励起波長の光を発する1つの光源によって生成されることを特徴とする請求項32に記載の顕微鏡検査方法。
【請求項34】
被検物体の蛍光を可視化する顕微鏡検査方法であって、
使用者による観察のために前記物体の拡大された第1の表示を行うステップであって、前記物体の蛍光が、前記第1の表示に実質的に可視でないステップと、
一定期間、前記物体の一連の蛍光像を記録するステップと、
前記期間が経過後、前記一連の蛍光像が使用者に可視であるように、かつ前記物体の拡大された第1の表示と重ねて、前記物体の記録された一連の蛍光像を表示するステップとを含む顕微鏡検査方法。
【請求項35】
被検物体を可視化する顕微鏡検査方法であって、
所定の波長より高い波長を含む光で前記物体を照射し、前記所定の波長より高い波長の光で物体を照射している間、前記物体の一連の像を記録するステップと、
前記所定の波長より高い波長の光での物体の照射を、前記記録された像の分析に基づいて終了し、前記所定の波長より小さな波長のみを含む光で前記物体を照射するステップと、
使用者による観察のために、限定の波長より小さな波長のみを含む光で照射された物体の表示を行い、使用者による観察のために、前記記録された一連の像の分析に応じて生成された表示を行うステップとを含む顕微鏡検査方法。
【請求項36】
前記物体が、前記所定の波長より高い波長の光で照射されるときに、蛍光物質を前記物体に適用することを特徴とする請求項35に記載の顕微鏡検査方法。
【請求項37】
被検物体を可視化する顕微鏡検査方法であって、
被検物体を可視光を含む第1の波長範囲の光で照射するステップと、
前記第1の波長範囲の光で前記物体の像を生成するステップと、
前記第1の波長範囲と部分的にしか重ならないか、または前記第1の波長範囲と全く重ならない第2の波長範囲の光で前記物体の像を記録するステップと、
前記記録された像を分析し、前記記録された像の少なくとも1つのコヒーレント部分を同定するステップであって、前記少なくとも1つのコヒーレント部分内の前記像の強度の値が閾値を超えるステップと、
前記少なくとも1つのコヒーレント部分の外周の表示を生成し、この表示を前記第1の波長範囲の前記物体の像と重ねて表示するステップとを含む顕微鏡検査方法。
【請求項38】
蛍光物質の励起波長を含む光で物体フィールドの像を記録するステップと、
前記記録された像を分析し、前記記録された像の少なくとも1つのコヒーレント部分を同定するステップであって、前記少なくとも1つのコヒーレント部分内の前記記録された像の強度の値が閾値を超えるステップと、
前記少なくとも1つの同定されたコヒーレント部分に応じて決定された分析領域のみの深さプロファイルデータを得るステップであって、前記分析領域が、物体フィールドより小さいステップとを含む顕微鏡検査方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−133969(P2010−133969A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6800(P2010−6800)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【分割の表示】特願2003−304783(P2003−304783)の分割
【原出願日】平成15年8月28日(2003.8.28)
【出願人】(505398000)カール ツァイス サージカル ゲーエムベーハー (25)
【出願人】(503313395)
【Fターム(参考)】